遺伝子の使命

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド
創元SF文庫2003年12月26日初版発行/760円

入手方法/書店で。

　傭兵艦隊は出てこないし、イーサンの視点で進むので他のシリーズ作品とは一線を画す内容となっている。
よく出来ているのだが、やはりちょっと寂しい。

バラヤー内乱

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド
創元SF文庫2000年12月22日初版発行/980円

入手方法/書店で。

　傑作。
ほんとにこの作者は人間関係を描くのがうまい。
また「名誉のかけら」「バラヤー内乱」「戦士志願」の3作で、マイルズのボディーガードだったボサリの3部作としても読むことが出来る。
これがまた切なくて面白い。

デュマレスト・サーガ1
嵐の惑星ガース

小説/E・C・タブ/鎌田三平訳
創元推理文庫1982年7月30日初版発行

入手方法/古書店など。

　恒星に接する面が固定され、昼と夜の世界に別れている惑星ガースの山岳地帯では、嵐が吹き荒れるときに「天空の歌」が聞こえるという。
嵐を前にしたガースに降り立ったのは、女性ばかりのカンド貴族階級の集団、宇宙友愛協会、 金持ちの快楽主義者、そして星から星へと旅をする渡り者達だった。
その渡り者の中に、生まれ故郷である「地球」を探し求めるアール・デュマレストも含まれていた・・・。

　記念すべきデュマレスト・サーガ第1作。

　興味深いキャラクター描写、SFガジェット、巧みなプロットがそろっており、21世紀になった今でも問題なく楽しめる。
第1作では状況描写に加えて多数の登場人物の説明が入るので、その分ストーリー的には単純だが、シリーズが進むに連れて面白さも増してゆく。

トラベラー　-小さな開拓者-
(原題　Traveller )　

小説（児童文学）/Annede Roo 著　越智道雄訳
金の星社１９８３年　(原書　１９７９年　英国)
発売当初１２００円。古書店では３００円だった

入手方法/たぶん絶版
古書のみ

　開拓時代のニュージーランドを描いた貴重な児童文学。ちなみに、「見習い(Cadet)」とは、下っ端ではなく、羊牧場の幹部候補生の意味であり、基本的に中流以上の家系の者にしか資格が無いものであり、ニュージーランドを身分の別の無い新天地だと考えていたトムが、牧場の牧童達から身分違いというので阻害されて、ショックを受ける場面が興味深いです。

デュマレスト・サーガ2
夢見る惑星フォルゴーン

小説/E・C・タブ/大西憲訳
創元推理文庫1982年9月3日初版発行

入手方法/古書店など。

　デュマレスト・サーガ第2作。
　浮遊獣の戦いが売り物のフェスティバルも終わろうとしている惑星カイルで、デュマレストはハイブという惑星の貴族の娘デライのボディーガードを依頼される。
ハイブへ向かう船の中で、彼はデライがテレパスだと知り、更に彼女を愛するようになる。
　ハイブは外資を稼げる産業と言えば蜂蜜くらいしかない世界だった。
巨大に蜂の群に襲われたりしている内に後継者争いに巻き込まれたデュマレストは、デライの家の当主の望みを叶えるため、今度は惑星フォルゴーンへ向かうことに。
そこでは望みを叶える数の限られた場所を巡り、激しい競争が行われていた・・・。

　デュマレスト・サーガの特徴の一つは、いわゆるスペースオペラの割にプロット重視の内容だということである。
本作も実に緻密なプロットが用意され、それを動かす為の効果的なキャラクターが配されている。
その分細かい描写は省かれることもあり、特に本作では3つの惑星を又に掛けた冒険なので駆け足の感があるが、物足りなさを感じさせないテンポのよさは見事としか言いようがない。
　また本作のクライマックスはいわゆる「迷宮探検競技」であり、それまでの展開もふまえてそのままゲームブックにしても名作になりそうである。
　デュマレストはテレパスのデライを愛するようになる。
これは化夢宇留仁はデライの能力の影響だと読んだが、誰か読んだ人ご意見お聞かせ下さい。

デュマレスト・サーガ3
迷宮惑星トイ

小説/E・C・タブ/酒井昭伸訳
創元推理文庫1982年10月1日初版発行

入手方法/古書店など。

　デュマレスト・サーガ第3作。
　大いなる叡智を誇る巨大なコンピュータ「ライブラリー」に地球の情報が見つかるのではないかと望みを抱いて惑星トイにたどり着いたアールだが、無理矢理集団戦争ゲームに駆り立てられる。
彼の属していたチームは負けてしまい、戦場に取り残されるが、同じく敗残の生き残りのレッグインと共に脱出に成功する。
しかしデュマレストは再び捕まってしまい、奴隷闘士として戦うことになる・・・。

　今まででは最もアクションシーンの多い作品だが、その分ストーリー的には単純になった面もある。
しかしトイの産業である蜘蛛の変種が紡ぐ織物や、株主による支配、ライブラリーとサイクランの関係など、相変わらず見所は満載である。
またトイの住人が黒人ばかりというのも歴史を感じさせて興味深い。

デュマレスト・サーガ4
共生惑星ソリス

小説/E・C・タブ/佐治弓子訳
創元推理文庫1982年10月29日初版発行

入手方法/古書店など。

　デュマレスト・サーガ第4作。
　惑星ロギスに着いたデュマレストだが、丁度殺戮期に当たってしまった。
この期間は殺人をしても罪にならないのだ。
宇宙港のすぐ近くをうろついていると、赤毛の美女が暴徒に追われているのに出くわし、これを助け出す。
暴徒達は彼女は魔女だと言っていたが、それはある意味正しく、彼女カリーンは未来予知能力者だった・・・。

　惑星ロギスを皮切りに、宇宙船内での事件、漂流、惑星クロンでの巨大な怪物狩り、惑星ソリスでの謎解きと、実にめまぐるしく展開する。
しかし例によってキャラクターの立て方がうまく、様々な世界の描写も興味深いので、物足りないような気にはならない。
奴隷の勧誘が面白かった。

デュマレスト・サーガ5
キノコの惑星スカー

小説/E・C・タブ/鎌田三平訳
創元推理文庫1982年12月3日初版発行

入手方法/古書店など。

　デュマレスト・サーガ第5作。
　惑星スカーは様々な菌類の生産で有名な惑星だった。
例によって流れ着いたデュマレストは、女の所に転がり込んだり貴重なキノコを見つけだしたりするが、指輪を狙った刺客に付け狙われる・・・。

　今回は少しキャラクターが多すぎるのと、これと言ったゴールの見えないストーリーで散漫な印象を受けた。
惑星スカーの描写は興味深いのだが。

巣

小説/ブルース・スターリング
短編集本のタイトル/蝉の女王
早川書房1989年/420円

入手方法/古書店
絶版だそうです。

　寒冷、酷暑、真空、低重力といった過酷な宇宙空間にその生存圏を広げた人類は、サイバネテックな技術で人体改造を行う『機械主義者』とバイオ技術で人体改造を施した『工作者』の二大陣営に分かれて勢力争いを行っていた。

　あるとき、工作者の陣営は他星系の小惑星帯に存在する知性の無い生物たちの閉鎖生態系空間『巣』の存在を知る。この巣の中では様々な生物たちが規則正しく活動し、生態系を維持していた。
ここで得た遺伝情報を利用すれば工作者陣営は、機械主義者陣営に大きなアドバンテージを得ることが出来るのだか。そして、情報収集活動に乗り出した工作者のエージェントに対して巣が施した対策とは何か。

『巣』の生態系の描写を読んでいるだけで楽しい。もちろん、ラストのオチもセンスオブワンダーでかなり、残るものがある。サイバーパンクが宇宙に出たらという視点で是非ご一読を。

デュマレスト・サーガ6
聖なる惑星シュライン

小説/E・C・タブ/大西憲訳
創元推理文庫1982年12月31日初版発行

入手方法/古書店など。

　デュマレスト・サーガ第6作。
　酒場で偶然船の処置係が殺されたのを目撃したデュマレストは、すぐにその船の処置係の後がまに座る。
自由貿易船モーレイ号は彼を乗せて様々な惑星をまわる。
途中で立ち寄った惑星でラリアという美しい女性を助け出したデュマレストだが・・・。
　とうとうデュマレストが指輪の秘密に気付く。

　ボロボロの自由貿易船のクルーになるという今までにない展開。他のクルー達のキャラクターも面白いし、道中立ち寄る様々な惑星の描写も興味深い。