混血児

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「カリストの脅威 アシモフ初期作品集1」
早川文庫SF/1996年3月15日初版発行


原子力の研究にいそしむ科学者が、地球人と火星人の混血児が虐められている現場に行き当たり、彼を助けたことから家に住まわせるようになる。 やがてその混血児はすばらしい知能を発揮し、彼の研究を完成させる。
虐げられている混血児が、実は素晴らしい能力を秘めていることに気付いた主人公は、彼らの援助に力を入れてゆく。
素晴らしい向上を見せる混血児達の環境だったが、その日が迫りつつあった・・・。
おもしろさ 5

アシモフ原作の映画「アンドリューNDR114」を思わせる感動的ストーリー。 化夢宇留仁は実に気に入りました。
混血は出てくるのに火星人は一切出てこないし、どういう存在なのかもほとんど語られないのも面 白い。
また原子力に関しては、この作品世界では発明されたのが列強諸国が永久平和を成し遂げた後のことになっており、現実と比較して、人類の愚かさを切なく思わされる面 もあった。


トラベラー度 1 世界観が全然違う。
 

レフリー度
 世   界 1 レッドゾーン世界の物語とすれば面白いかも。
 ストーリー 3 上記と同じ。
 フレーバー 3 意外な混血による優れた人種というのは使えるのでは?

お気楽度 4 短編のわりにそこそこ長いが、面白いので一気に読めてしまえると思う。

投稿者/化夢宇留仁



秘密の感覚

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「カリストの脅威 アシモフ初期作品集1」
早川文庫SF/1996年3月15日初版発行


火星人は色を識別することが出来ず、音の感覚も地球人に比べて極めて鈍く、嗅覚に至っては存在さえしていなかった。
地球人のフィールズに、音楽をはじめとする芸術が理解できないことは嘆かわしいと言われた火星人のガース・ヤンは、思わず秘密の感覚の存在を口走ってしまう。
興味を持ってくいさがったフィールズに、ガース・ヤンは5分間だけそれを体感することが出来るが、それは地獄の始まりだと宣言するのだった・・・
おもしろさ 2

様々な視点を考える機会の多い現在に至っては、そう新鮮なものではないが、今でも着眼点の面 白さは評価できる。


トラベラー度 1

プレイヤーの立場としてはほとんど参考にならないだろう。

 

レフリー度
 世   界 1 地球人と火星人の話である。
 ストーリー 2 設定を変えれば、シナリオの一部としては面 白くなりそう。
 フレーバー 3 地球人には知覚できない楽器や、雷盲という表現などが、面 白い。

お気楽度 4  

投稿者/化夢宇留仁


 

銀河の荒鷲シーフォート1
大いなる旅立ち

小説/デイヴィッド・ファインタック/野田昌宏訳
早川文庫SF上下巻/1996年3月1日初版発行

 


先任士官候補生のニコラス・シーフォートが乗艦したのは、植民惑星へ片道約2年の航天に向かう国連宇宙軍軍艦ハイバーニア。
彼は厳しい士官のしごきに耐えながら、少しずつ士官としての能力を身につけてゆくが、突然の事故により艦長以下主要な士官が死亡し・・・。
おもしろさ 5

宇宙船の中という密閉空間の中で、ひたすら軍の階級性による縦社会が描写される。
これが滅法面白い。
その面白さは、どちらかと言えばストーリーを楽しむというよりも、そのシーン毎に感情や空気の変化する描写 を楽しむとでもいう感じで、結果まったく弛みが発生せず、常時読者に緊張感を与えるのに成功している。
また山のように登場するキャラクターが、どれも実にいい感じで描写されており、誰も彼もに愛着がもてる。
軍隊しごきSFと言うと、宇宙の戦士が思い浮かぶが、化夢宇留仁のイメージで最も近いのは「ヤマト新たなる旅立ち」だった(笑)。
今まで化夢宇留仁が読んだSF小説の中でもベスト3に入る面白さ。
ヴァクス・ホルサー最高(笑)!
あとは表紙がもっと趣味に合っておれば・・・・・(汗)


トラベラー度 5

宇宙海軍の運行はほとんどそのままで、ジャンプ中は外界と完全に遮断される上に時間もかかり、超高速通 信は存在しないというところなど、むしろトラベラーを参考に書いたのではないかと思わされる。

 

レフリー度
 世   界 3 地球は宗教色の強い国連に支配されており、異星人は出てこない。
恒星間航行はまだ個人では無理で、植民地の補給や船客も軍艦が運んでいる。
 ストーリー 3 シリーズ第1巻である本書では、基本的にハイバーニアの旅が描かれるだけだが、事件は様々なものがてんこ盛りで、もちろん宇宙海軍に関してはあらゆる点で参考になる。
最初の内は特にSFにする必要も感じなかったが、次第にそれっぽい事件も出てきて、後半ではまさにSFな展開に。
 フレーバー 5 ほとんどトラベラー世界と同じなので、その描写 の仕方は実に参考になる。
ただしコールドスリープの要素は無いようだ。

お気楽度 3

約2cmの厚みの上下巻。
この調子で全部で12冊も出ているので、 読み始めるのには覚悟がいるが、読み出せば長さによる苦労は感じない。
訳もすばらしく、雰囲気があって読みやすい。ただしとんでもない間違いが数カ所ある(主人公が似た名前の部下に向かって自分の名前を呼んだり/笑)。

投稿者/化夢宇留仁

 

銀河の荒鷲シーフォート2
チャレンジャーの死闘

小説/デイヴィッド・ファインタック/野田昌宏訳
早川文庫SF上下巻/1997年7月31日初版発行

 


新たに砲艦チャレンジャーの艦長となり、最愛の新妻は出産を控えており、シーフォートは最高の幸せ時を迎えていた。
しかし彼の新たな旅立ちは出発地点でつまずき、想像を絶する苦難の運命に導かれてゆく・・・
おもしろさ 3

その描写、展開、演出、全てにおいて前作と変わりなく高い完成度を誇っている。
しかしその内容が・・・・・・
今作はとにかく陰惨で悲痛な展開が続く。
面白いのだが、読んでいてつらいのだ。
また前作からお馴染みなのだが、自分が全部悪いと思いこむ自虐趣味の割に、 すぐにかっとして部下を致命的に傷つけてしまう悪癖が更に強化されており、少しイライラさせられもした。
だがやはり全編に緊張感が維持する濃密な文章は時間が過ぎるのを忘れさせる。

前回から思っていたのだが、このシリーズは主人公はほとんど成長せず、まわりのキャラクターがめきめき成長してゆく珍しい内容である。

追記:前巻の訳者あとがきで、訳者がトチ狂って今作のネタばらしをしている。これを読んでしまうとただでさえつらい今作がよりつらくなるので、絶対読まない方がいい。


トラベラー度 4

前作でトラベラーを参考に書いたのではないかと記したが、今作は「トップをねらえ!」を意識しているのは明らかだと思う。
特に下巻の戦闘シーンはそのままである。

 

レフリー度
 世   界 3 地表は全域がスラムと化したニューヨークなど、面 白い地球の描写が出てくる。
 ストーリー 4 もしこの作品と同じ内容をトラベラーでやったらプレイヤーは自殺するのじゃなかろうか(笑)?
 フレーバー 5 宇宙戦闘シーンの描写が興味深い。
特に武器設置点ごとに射界が限定されている描写は感涙もの。

お気楽度 3

とにかくつらいが、読み始めたら止まらない拷問のような作品である(笑)。
あ、そうそう。前回全12巻と書いたけど、7巻目(上下巻)が発売されました。
今までにも増して分厚かったです(笑)。

投稿者/化夢宇留仁


戦士志願

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド/小木曽絢子訳
創元SF文庫/1991年1月30日初版発行

 


 マイルズ・ヴォルコシガンの活躍するシリーズ第1作。
惑星バラヤーの貴族であるマイルズは、身体にハンディを持っていたが、それを補ってあまりある高い知力と決断力を備えていた。
士官候補学校への入学試験も優秀な成績で進めていたが、最後の運動能力テストで致命的な選択ミスをしてしまい、失敗する。
これからの人生設計が見つからないマイルズだったが、近衛兵の一人娘の母親を見つけだすという新たな目的を手に入れる。
苦労の末にバラヤーを後にするが、それは彼の運命を大きく変える第一歩にすぎなかった・・・。
おもしろさ 4

 持ち前の機転と行動力でピンチを切り抜け、同時に部下がどんどん増えてゆく展開はまさに立身出世物語の王道で、ワクワクすること請け合い。

2005.7.30
  後に続く作品をいくつか読んでから読み直してみた。
最初に読んだときよりもキャラクターや状況に入り込みやすく、数倍楽しめた。
さりげない描かれ方だが、後のシリーズでメインで活躍するメンバーのほとんどがすでに登場しているのには驚いた。
 また最初読んだときにはピンとこなかった貴族制度の残るマイルズの故郷バラヤーの風習についても、後のシリーズを読んでからだとまるで自分の故郷であるかのようにしっくりと収まって素直に楽しめた。
 どうやらこのシリーズを人に勧めるときは、最初に読む候補には本作は入れない方がよさそうである。


トラベラー度 3  貴族や傭兵の様子など、ほとんどそのまんまイメージできそうなところも多い。
ただし世界の設定は大幅に異なる。
 

レフリー度
 世   界 2 全体的に似ているのだが、それだけにかえって異なる部分が目立つ。
 ストーリー 5 登場人物達の背景設定とそれぞれの自由意志が絡み合う展開は、まさにトラベラーそのもの。 特に傭兵のストーリーは参考になる。
 フレーバー 3 参考になる小道具がいくつか出てくる。

お気楽度 3 シリーズとしてのボリュームがあり、かつ登場人物も多いので、それなりに覚悟が必要か。 文章は取っつきやすい。

投稿者/化夢宇留仁



親愛なるクローン

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド/小木曽絢子訳
創元SF文庫/1993年12月24日初版発行


マイルズ・ヴォルコシガンの活躍するシリーズ第2作。
デンダリィ傭兵艦隊が発足して7年後。
マイルズはバラヤー帝国軍中尉と、傭兵艦隊提督の二重生活を送っていた。
大規模な捕虜救出作戦を終えた艦隊は、地球に立ち寄ることになる。
艦隊の報酬を受け取り、久しぶりの休養をとれるはずだったのだが、予想もしなかった地球での足止めをくらい、危うく正体がばれそうになったマイルズは、提督は自分のクローンだと言い逃れするのだが・・・
おもしろさ 4

あまりにもトントン拍子で少々あっけにとられた前作だったが、今回はそれぞれの立場も安定し、キャラクターも立っているので、安心して読むことが出来た。
新たなヒロインも魅力的だし、後半のスリルも上々。


トラベラー度 3 前作と同じだが、傭兵の運用はそのままの雰囲気である。
 

レフリー度
 世   界 2 前作と同じ。
 ストーリー 4 そのままというわけにはいかないが、部分的に利用すれば面 白いシナリオが出来るだろう。
 フレーバー 4 クローンの扱いや、不気味な科学力を誇るうさんくさい惑星など、使えるフレーバーは多い。

お気楽度 2 キャラクターになじみが出来ている分前作より読みやすいが、逆に言うと前作を読んでいないと分からない部分が多い。

投稿者/化夢宇留仁



無限の境界

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド/小木曽絢子訳
創元SF文庫/1994年7月14日初版発行


マイルズ・ヴォルコシガンの活躍するシリーズ第3作。
デンダリィ傭兵艦隊が発足してから前作「親愛なるクローン」までの7年間に起こった事件を、機密保安庁長官の要請で仕方なく語り出すマイルズ。 それら3つの事件は口を閉ざすのも無理のない大変なものばかりだった・・・
おもしろさ 5

傑作。
3つのまったく異なる物語が、それぞれ実に面白く読めた。
このシリーズは1作毎に面白くなる。次作はどうなんだろ(汗)?


トラベラー度 2 3つのストーリー毎に主人公以外はまったく異なるのでなんとも言えないが、その多様性こそがトラベラーっぽいと言えるかも。
 

レフリー度
 世   界 4 舞台も作品毎に見事にバラバラ。
最初の話の科学文明から取り残された村、2番目の高度なバイオテクノロジーを誇るが故に情報戦の最前線と化している惑星など、参考になるところは多い。
 ストーリー 4 傭兵というのはこんなにも多様なストーリーに対応できるのかと驚かされる。
化夢宇留仁の中でプレイヤーキャラクターの職業としての、傭兵の株がだいぶ上がった(笑)。
 フレーバー 4 3つ目の物語の収容所の設定や描写が圧巻。 ぜひプレイヤーキャラクターを放り込んでやりたくなる(笑)。
遺伝子改造によって生み出された強化生物も、ひねりがあって参考になる。

お気楽度 3 この本から読んでも大丈夫。

投稿者/化夢宇留仁



銀河の荒鷲シーフォート3
激闘ホープ・ネーション!

小説/デイヴィッド・ファインタック/野田昌宏訳
早川文庫SF上下巻/1998年9月30日初版発行


再び植民地ホープ・ネーションにたどり着いたシーフォートは、チャレンジャーを地獄へたたき込んだトレイメン提督と決闘し、これに勝利するが本人も重傷を負い、静養する必要が生じる。
しかしそんな時、彼を暗殺しようと暗躍する者が現れ、更に金魚までもが攻撃をしかけてきた・・・。
おもしろさ 4

相変わらずつらい(汗)。
特に今回は苦労の末に1作目のクルーと再会できるのを楽しみにしていたので、次々と叩きつけられる考え得る最悪の展開にメゲまくり。
あんまりだ〜!っと、思いつつも読むのが止められない面白さがあるというのは・・・まさに拷問である。
最後の大量の金魚との戦闘シーンは大迫力で圧巻。


トラベラー度 3 今回は特に金魚型エイリアンの活躍(?)が多く、あまりトラベラーっぽくなかった。
スタートレックTNGのボーグ編の雰囲気が出てきつつある。
 

レフリー度
 世   界 3  
 ストーリー 2 どんどんトラベラーっぽく無くなってる。
 フレーバー 3 植民地の管理と防衛と独立。独立基地の運営などのディテールが参考になると思う。

お気楽度 2 相変わらず分厚い上下巻だが、読み始めると止まらないのも同じ。
ほんとにこのシリーズの読者捕獲力は強すぎる(汗)。

投稿者/化夢宇留仁



宇宙の岩場

小説/フレッド・セーバーへーゲン
本のタイトル「バーサーカー 赤方偏移の仮面」
早川文庫SF/1980年4月30日初版発行480円


 太古に創造され、全ての生命を絶滅させることを目的とした戦闘機械。創造者は既に無く、ただプログラムだけが残されている。その戦闘機械と出会った人類は、「それ」をバーサーカー(=狂戦士)と呼び、宇宙の深淵で、植民惑星で戦いを繰り広げていた。
 そんな中、劣勢を強いられた人類は新型砲を搭載した戦闘艦を建造し、有能な指揮 官『ヨハン・カールセン』を中心に、『宇宙の岩場』と呼ばれる小惑星帯での戦闘を準備していた。
 一方、バーサーカーもカールセンの戦闘指揮能力を予測できず、あらゆる手段を用 いて決戦に臨もうとしていた。
 果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか?


おもしろさ 4

 人類とバーサーカーの戦いを描く本短編集のメイン作品。
 悪役のはっきりした戦いで、スペオペの王道を行く楽しさがある。この短編集の中 では、ちょっとご都合主義的なものもあるのだが、この作品は素直に読めるお勧めで ある。

  5

 化夢宇留仁は開戦直前の指揮官カールセンの放送にガツンとやられました。
会社帰りの電車内で読んでいて、涙を誤魔化すのに苦労したり(笑)。


トラベラー度 3  バーサーカーという設定は使うに難しいが、宇宙海軍の雰囲気とかは参考になる。
 

レフリー度
 世   界 4  割と世界が単純化されており、手軽に移植できる。
 ストーリー 4  この話はストーリーというよりも、艦隊戦や『アザンティ・ハイ・ライトニング』 の個人戦闘ルールに対応したシナリオに向いていると思う。
 フレーバー 3  

お気楽度 4  敵味方がはっきりしているので、手軽に読める。
  私は、インフルエンザの病床で読みました。

投稿者/masakiさん

※20070614 化夢宇留仁も読んだので感想と画像追加。



銀河の荒鷲シーフォート4
決戦!太陽系戦域

小説/デイヴィッド・ファインタック/野田昌宏訳
早川文庫SF上下巻/1999年8月20日初版発行

 


艦隊勤務を固辞した結果、士官学校校長に就任するシーフォート。 しかし校長という職務には、艦隊では罪悪だった政治的方法論も必要であり、とうてい彼に我慢できるものではなかった。
それでもなんとか職務に慣れてきた頃、ついに太陽系にも金魚型エイリアンの脅威が・・・。
おもしろさ 4

前作から登場し、例によってシーフォートと関わったおかげでひどい目にあったトリヴァー宙尉が、とうとう厚かましさでシーフォートをうち負かし、今作では宇宙で唯一シーフォートにつっこみを入れられるキャラクターに成長(笑)。
今までの(化夢宇留仁の)たまった鬱憤もあり、トリヴァーのセリフとそれに対するシーフォートの苦虫を噛みつぶしたような反応が痛快で、今までの作品の中ではまだしもいい気分で読むことが出来た。
トリヴァー最高(笑)!!!
しかし後半金魚の猛襲が始まって、シーフォートの作戦が発動してからは今までのマシな気分を取り戻すように(笑)、シリーズ最悪の展開に。
あんまりっす!
流石に女性ファンも減ったのでは???


トラベラー度 3

恒星間飛行の設定に関しては惑星重力の影響など、ますますトラベラーっぽい感じになってきているが、作品全体としてはどんどん遠ざかっている。

 

レフリー度
 世   界 2 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」
 ストーリー 2 士官見習生の命は地球よりも軽いのだ。
 フレーバー 4 士官候補学校の教練の様子や、荒廃したニューヨークの描写 、宇宙服での0G行動などなど。

お気楽度 1

いきなり読めと言われたら泣きたくなるが、ここまで1巻から読んできた者は、すでに逃れられない状況に追い込まれていると思われる(笑)。

投稿者/化夢宇留仁


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