名誉のかけら
マイルズ・ヴォルコシガンシリーズ

小説/ロイス・マクマスター・ビジョルド/小木曽絢子訳
創元SF文庫/1997年10月24日初版発行

 


 マイルズ・ヴォルコシガンシリーズ番外編。しかし実は作者にとっては処女作らしい。
 マイルズの母親のコーデリアが主人公で、ベータ人の軍人である彼女が夫になる(つまりマイルズの父親)バラヤー軍人アラール・ヴォルコシガンと出会い、様々な苦難を乗り越えて結婚する物語。
 苦難を乗り越えて故郷に帰ってきたコーデリアが精神科医にかかるところが最大のピンチにしてスリルがある展開になっている。

おもしろさ 5

 この手の話でありがちな、最初はお互いを強く敵視していてやがて・・・という展開とは違い、最初からラブラブモード全開(笑)。
しかし小説としては実によく考えられていて面白かった。

2005.8.5
 シリーズ通して読み直したら面白さもひとしおだった。
しかし最後の方はほとんどハーレクイン状態である(笑)。


トラベラー度 3  
 

レフリー度
 世   界 2  
 ストーリー 3 様々なシチュエーションがそこそこ参考になるかな?
 フレーバー 3 前半の特殊な生態系の惑星の描写が面白い。
神経ピストルの被害も参考になる。

お気楽度 3 マイルズが活躍するシリーズ本編から読み始めた方が入りやすいと思う。

投稿者/化夢宇留仁




終わりなき索敵

小説/谷甲州
ハヤカワ文庫上下巻/1996年11月15日初版発行

 


航空宇宙軍史シリーズ。
航空宇宙軍の高速探査艦ユリシーズは、太陽系に近づく謎の重力波源の調査に向かう。
重力波源との接触は、広大な世界と遙かな未来を包括する壮大な物語の発端である。
作業用サイボーグ、人類滅亡の予言、過去への干渉、情報としての生命、記憶としての情報、超光速移動による情報のひずみ、数百年に渡って存在する宇宙軍士官、情報の流れの果 て・・・。
それらは繋がって回帰し、新たに開始される。

おもしろさ 3

リアルで痛快な宇宙戦争を描く航空宇宙軍史シリーズの一編だが、この作品はハードSF要素と観念的な表現が多く、重厚な内容になっている。
しかしそれを面白く読ませてしまうのが谷甲州のすごいところで、ハードSF火の鳥とも言える内容を、手に汗握る作品に仕上げている。
ただしキャラクターの自我よりも情報を重視し、その情報が時間や距離、科学技術、そして超光速航行により変異してゆく様をまっすぐに描いているので、結構ややこしく、油断すると何がなにやら分からなくなる。 化夢宇留仁は筒井康隆の「脱走と追跡のサンバ」を思い出した(笑)。


トラベラー度 1 類似したところも無いこともないのだが、雰囲気や基本設定が大きく異なる。
 

レフリー度
 世   界 1

超光速航行も科学技術と言うより形而上学的技術といった雰囲気で、全然違う。

 ストーリー 2 これを参考にシナリオを作ると、プレイヤーがすごくびっくりします(笑)。
 フレーバー 4 リアルな航宙の様子や、大気圏内でのローテク飛行と巨大な空中生物の描写 など。

お気楽度 1 内容的に複雑なので、上下巻一気に読まないとすぐにわけが分からなくなる。

投稿者/化夢宇留仁




歌う船

小説/アン・マキャフリー/酒匂真理子訳
創元SF文庫/1984年1月27日初版発行

 


機械の助け無しには生きていけない重度の障害を持って生まれたヘルヴァは、特殊な教育を受け、頭脳宇宙船として輝かしい人生を歩み始める。
身体は機械だが、明晰な頭脳と少女の心を併せ持つ「歌う船」の活躍を描いたシリーズ第1弾。

おもしろさ 3

連作短編風長編小説とでも言うような形式で、すごく面白い話とよく分からない話と色々混ざっている。
全体的に感動的で面白いのだが、筆致が女性的すぎて、化夢宇留仁には想像できない箇所が多数あった。
特に女性キャラクターの微妙な感情表現の部分とかはなにがなにやら(汗)。
主人公ヘルヴァ自身の感情や考え方は一貫していて分かりやすく、感情移入もしやすい。


トラベラー度 2 1969年の作品なので、古くさいところは目立つが、彼女の任務はそれっぽいところも多い。
 

レフリー度
 世   界 1 似ているようで全然違う。
 ストーリー 3 参考になる部分は非常に多いが、そのままシナリオに活用できそうなストーリーは見あたらない。
 フレーバー 4 記録媒体がテープだったりと、古いところはとことん古いが、参考になるフレーバーは多い。

お気楽度 4 主人公の考え方が健全で理性的なので、読んでいて気持ちがいい。
しかし女性的な文章が苦手な人はきついかも。
投稿者/化夢宇留仁



旅立つ船

小説/アン・マキャフリー&ラッキー/赤尾秀子訳
創元SF文庫/1994年11月4日初版発行

 


前作から20年もの月日をおいて、とうとう発表された「歌う船」の続編。
ただし主人公は前作のヘルヴァに代わって、7歳で病魔により全身麻痺になってしまい、頭脳船になった少女ヒュパティア・ケイドが登場。世界は同じだが時代はずいぶん進んだようで、科学技術も飛躍的に進展している。


おもしろさ 4

冒頭語られる健康なティアの描写が実に可愛く描かれていて、 スムーズに感情移入出来る。
内容はメド・シップみたいなノリで、これまた世界とキャラクターが見事にマッチしていていい感じ。
オチは作品世界的にどうかと思わないでもなかったが・・・


トラベラー度 2 科学技術に古い感じも無くなり、それっぽさも増したと思う。
 

レフリー度
 世   界 1 似ているようで全然違う。
 ストーリー 4 前作に比べてそのままシナリオに活用できるシチュエーションが増えた。
 フレーバー 5 遺跡から感染する伝染病や、株式投資の件など、利用できる面 白いフレーバー多し。

お気楽度 4 前作にあった文章の癖もなく、読みやすい。
投稿者/化夢宇留仁



地球種族

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


様々な種族が加盟し、銀河系全域にわたる銀河連盟において、太陽系に生息する人類という種族が恒星間飛行技術を独自に開発し、アルファ・ケンタウリにたどり着いたことが確認された。
これは太陽系の後進種族が、文句無しに連盟加入の権利を勝ち取ったということを意味しており、それを連盟の評議会は称え合った。
やがて心理学者を伴う連盟の使節が人類と接触を果たすが、それは意外な結果 に終わる。 典型的ヒューマノイドと思われていた人類は、実はある点で非常に特殊な性質を備えていたのだ・・・。

おもしろさ 2

1939年末に書かれた作品で、どことなく世情を表している。
テーマ的には今となっては少々古くさいのは否めない。


トラベラー度 2 トラベラーというより、ヴィラニ人と地球人類が初めて接触した時のような展開。
 

レフリー度
 世   界 2  
 ストーリー 3 レッドゾーンの世界で独自に恒星間飛行技術が開発されたら、こんな展開になるのではないだろうか。
 フレーバー 1 宇宙人の描写くらいかな。

お気楽度 4 短篇である。
投稿者/化夢宇留仁



金星の混血児たち

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


初期短編集1に収録されていた「混血児」の続編で、混血児達が金星にたどり着いてからの出来事を描く。

おもしろさ 1

典型的な書かなきゃよかった続編。


トラベラー度 2 開拓民の雰囲気は参考になるかも。
 

レフリー度
 世   界 2  
 ストーリー 2 環境を利用した苦境からの脱出。
 フレーバー 2 妙な水棲知的生命体。

お気楽度 3 前の話を読んでいないと意味が分からないところがある上に、盛り上がらない。
投稿者/化夢宇留仁



遺伝

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


遺伝と環境と、どちらが人間を決定づけるのか?
その実験のため、ある一卵性双生児が生まれてすぐ地球とガニメデに引き離され、まったく異なる環境で青年に成長。
二人は引き合わされ、火星で共同事業を行うことにより、実験の成果を確かめることに・・・。

おもしろさ 2

物語はそれなりには興味深いのだが、上で説明している設定が宙ぶらりんになったままで終わるのが変。
アシモフもそれを指摘されたようだが、普通書いてる内に気付くよな(汗)。


トラベラー度 1  
 

レフリー度
 世   界 2  
 ストーリー 3 砂嵐と大地震という小人口世界に致命的なイベント。
 フレーバー 4 火星の砂漠横断の描写は参考になるところある。

お気楽度 3 短編なので一応気楽に読めるが、読み終わった時の充実感がない(汗)。

投稿者/化夢宇留仁





ガニメデのクリスマス

小説/アイザック・アシモフ/浅倉久志訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


ガニメデの原住民オストリ人を労働力に使っていたはいいが、うっかりクリスマスの話をしてしまい、彼らにサンタからのプレゼントを渡す羽目に。
死ぬほどの苦労の元、なんとか成功したかに思ったが・・・

おもしろさ 3

なんとか橇とトナカイをでっちあげ、話の通りのクリスマスを演出するアイデアは面 白いが、もっと楽しく出来たように思う。
オチはなかなか効いている。


トラベラー度 2 異なる種族間の異なる文化の遭遇はいつでも興味深いし、トラベラーらしいと思う。
 

レフリー度
 世   界 1 ガニメデだし。
 ストーリー 3 こういうシチュエーションは面白いと思う。
 フレーバー 3 原住生物トゲウマがなんか可愛い。

お気楽度 3 短編なのだが、どうも描写が入りにくい。
投稿者/化夢宇留仁



新入生歓迎大会

小説/アイザック・アシモフ/冬川亘訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


このたび銀河連盟に加入を果たした地球から、アルクトゥルス大学に10人の新入生がやって来た。
地球人は集団になればなるほどパニックを起こしやすい変わった連中だと聞いていた先輩のベム達は、刺激的な歓迎を用意するが・・・
「地球種族」のしばらく後の世界が舞台。

おもしろさ 2

面白くないこともないが、面白いこともない(汗)。
長篇ジュブナイルに加筆修正したらすごく面白くなりそうだが。


トラベラー度 2 銀河連盟があまりに多種族にわたる(しかも全ての種族が自力で超光速航法を開発したらしい)。
学生がいたずらに宇宙船を動かす気になるというのもトラベラーでは考えられないところだ。
 

レフリー度
 世   界 2  
 ストーリー 3 シチュエーションは面白い。
ヤングトラベラー。
 フレーバー 1  

お気楽度 3 短編だが、この話の世界にいたる事件を扱った他作品を読んでいないと分かりにくいところもあるかも。
投稿者/化夢宇留仁



決定的!

小説/アイザック・アシモフ/浅倉久志訳
本のタイトル「ガニメデのクリスマス アシモフ初期短編集2」
早川文庫SF/1996年5月15日初版発行

 


木星の原住民族が、人類に攻撃をしかける意図を持っているらしい。
しかし彼らは高圧ガスの層に阻まれており、木星から外の世界に出てくるのは不可能だと言われていた。
しかしある種の磁場を展開することで、ガスの圧力から逃れられる可能性が示唆され・・・

おもしろさ 3

オチは効いている。しかし蛍光灯やテレビなど、今となっては当たり前のアイデアになっているような気も(汗)。


トラベラー度 1 木星原住民が出てきてしまっては・・・(汗)
 

レフリー度
 世   界 1  
 ストーリー 2 科学的視点から、他の人は持たない招来への危機感を持っているキャラクターというのは、古風ながらやはり面 白い。
 フレーバー 2 ガスジャイアントの住民のアイデアは、興味深いと言えばそうかも。

お気楽度 3  

 

投稿者/化夢宇留仁


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