小説になってしまった(笑)
ハンスの戦争

ハンスはありふれた辺境惑星の片田舎に住む、ありふれた青年だった。  そんな彼がなぜ戦場にいるのかと言えば、仕方がなかったとしか言えない。
ハンスの家には、領主のローランド卿から給付金を頂いている祖父と祖母がいる。 募兵の知らせを無視するわけにはいかなかったのだ。
ただ、普段は電気自動車や農薬散布用のプロペラ飛行機ぐらいしか見たことのない彼にとって、反重力兵器の数々は物珍しく、それだけで来た価値があったように思えた。
「なに、俺達はただの数合わせさ。あとで帝国の観戦武官が見に来た時に、家格に応じた軍備が揃ってないと、領主様はお叱りを受けちまうからな」  
不精髭を撫でながら、帝国陸軍に15年も所属していたというオニールが、みんなに言った。ハンスのいる小隊は、いくつかの村から集まった者たちで編成されていたが、オニール以外は、老いも若いも故郷を一度も出たこともないような農民ばかりだ。   みんな塹壕の中で縮こまって、不安そうな顔を見合わせている。
「砲撃警報! みんな頭を上げるなよ!」 無線機に噛り付いていた小隊長が叫んだ。
小隊長はハンスの村の、村長の息子だった。子供時代、ハンスにババルス(子供の遊びらしいが、筆者にも詳細不明)のやり方を教えてくれた、優しい青年だ。  大学に行っていたので、士官扱いになったのだ。
「来るぜ・・・」  オニールがニヤニヤ笑いながら言った。みんなが怖がるのを見て、楽しんでいるのだ。
突然の閃光。その後、シュッと鋭い音がしたかと思うと、塹壕の上をモヤが通り抜けていった。  
何が起こったのか確かめてみようと、ハンスは頭を上げかけた。  そこをオニールに引き倒され、仰向けにひっくり返った。塹壕の上を炎の風が通過していった・・・。
「バカヤロウ! 最初に光、次に爆風、最後に遅れて炎が来るんだよ!」  大声でオニールが怒鳴っているようだったが、ハンスにはひどく聞き取りずらかった。 イヤーブラジャーが、今の爆音に合わせて遮断音量を上げた為だろう。
「スミマセン・・・」  ハンスは当分大人しくしていることにした。  

両軍の布陣から二日が経過した。
まだ本格的な戦闘は起きていない。
「ほら、あそこにいる奴ら・・・傭兵部隊だ。この戦争の主役だぜ。他は俺達も後ろの常備軍も、みんなただの飾りさ」  
オニールがしたり顔で説明する。これで五度目の解説だ。さすがにハンスはうんざりした。
「それより、今度の戦争は何で起こったんですか?」  オニールは黙り込んだ。そういうことは知らないらしい。
「それはな、ローランド様とお隣のモーガン様が、協力して国境警備用の護衛艦を建造するように、帝国から命令されたらしいんだが・・・費用をどう分担するかで喧嘩になったらしい」
「ケッ、バカらしいな」
「おい、滅多なこと言うなよ」
「そうだそうだ。それに、ローランド様が多く支払わされることになったら、俺達の税金まで高くなっちまうんだぜ」  
ハンスはみんなのやり取りを聞きながら、ここにいるのが面倒くさくなってきていた。  

両陣営はこの半月の鬱憤を晴らすように、最高に盛り上がっていた。  
士気の衰えと、かさむ戦費に耐え兼ねて、モーガン卿がついに騎動機で出撃してきたのだ。  
緑の平原の真中に、赤と白に鮮やかに塗り分けられた巨人が立つ姿は、敵味方ともに我を忘れて見とれる美しさだった。
「うちの領主様、受けて立つんだろうな?」
「そりゃ、これで逃げたら笑い者だろうよ」  と、背後の山の影から地響きと共に、すさまじい機械音が聞こえてきた。
「あれがローランド様の騎動機だ!」  

戦闘は呆気なく終わった。  一時間ばかり見合っていた両者が、突然にパッと動いたと思うと、レーザー砲で撃たれたローランドの騎動機が倒れ込んだのだ。  ただ、その直前にローランド機の大剣は、モーガン機の胴体に突き刺さっていた。  
2機は寄り添うように崩れ落ちた。
「相打ちだな・・・」
「ああ、これで戦争も終わりだろうよ。上空には帝国の停戦部隊も来てる頃さ」  
ハンスはこれでやっと家に帰れるという安堵感と、この後の税率への不安感とを交互に感じながら、ずっと倒れた2機の騎動機を眺めていた。

 

巨大ロボット使用法の一つの具体案です。  
ただ、これではロボットが本当に活躍はしていないので・・・あんまり受け入れてはもらえないかな(笑)

By 龍太郎氏