クリプトドリア級襲撃巡洋艦

タイプ: CLI型襲撃巡洋艦 TL15 MCr140858.37(同型艦割引=MCr112686.69)
船体: 27000/675000 排水素=30000 形状:1/流線形 
装甲=52G  重量=312677.2t  総重量=348927.63t 
パワ−: 1603/2138 核融合=288540MW 航続=20日(通常状態31日)
16674/22232 バッテリー=86460MW(1時間) 
移動: 3240/4320 通常=3(スラスター)2430/3240 ジャンプ=5
地表=40kph 最高=1000kph 巡航=750kph 移動力:0
通信: 電波式=星系内×3、レ−ザ−式=星系内×3 メーザー式=星系内×3
電波妨害機=星系内×3
探知機: 質量探知=1km×3 中性微子=10kw×3 EMM  能動ESM=遠軌道×3  受動ESM=遠恒星間×3 ESM妨害装置×3
能動物体探知=並 能動物体追跡=並 受動質量探知=並 受動エ0ネルギ−探知=易 受動物体追跡=並 受動エネルギ−追跡=並
攻撃:
パルス・レ−ザ−=×A0
ミサイル=×A0
中間子=J0×
粒子加速砲=090
砲塔群
6
10
1
4
射撃可能
6
9
1
4
防御: 防御DM+8  装甲DM+4  致命的命中:21
ブラック・グローブ=4(吸収限界8038553.571MWまで)
管制: コンピュ−タ=9/ファイバ−×3
パネル=ホログラム型(リンク)×2067
追加=大型ホロ゚ディスプレイ×112
環境=基本環境 基本生命維持 高度生命維持 重力プレ−ト 重力補正器
エアロック×2
居住区: 乗組員=859[艦橋33 機関416 砲術228 保安30 指揮117 接客28 医師7]
小型専用室×120 専用室=375
その他: 船倉=20.84023kP、燃料精製装置(核融合炉168時間、ジャンプ用48時間)、燃料スク−プ
燃料(ジャンプ/核融合炉)=121500/169249.6
ミサイル格納庫=442000発(通常型 442ラウンド分)
目標サイズ=大  視認レベル=中
備考: クリプトドリア級の核融合炉は、中間子副砲以外のすべての機器に十分にエネルギーを供給できる。中間子主砲を使用するには、ブラックグローブを用いてバッテリーにエネルギーを蓄えなければならない。クリプトドリア級は、バッテリーとジャンプコイルを併用して8038553.571MWまでエネルギーを蓄えることができる。理論上では自爆限界までエネルギーを蓄えた場合、中間子主砲を35回発射することができる。10125Mwを蓄えればジャンプ可能。
 また、実験艦であるために同型艦は存在しない。表の中の同型艦割引の価格は、艦政本部が参考資料の一環として算定した推定価格に過ぎない。

1、建造の背景
ロズウェル級商船の致命的な設計ミスによって開発を担当したエヴァンス設計局は解散となり、主任開発者であったマルクス・エヴァンズ博士は、バール設計局に組み込まれた。バール設計局は、カーライル級バトルライダーを開発した設計局であり、開発主任のデービット・バール博士は当時、メイス重工でも有数の開発者として見られていた。
余談であるが、メイス重工の開発体制を説明しておきたい。メイス重工は、設計主任を中心とした設計局単位で艦船の開発を行なっている。設計局では設計から一番艦の公試までを担当している。公試以降は、各造船所に完全に移管され、造船所の技術者たちが公試の結果と建造経験による細部の仕様変更を行なう体制をとっている。設計局は固有の造船施設を有するわけではなく、建造は造船所で行なわれるのであるが公試までは設計局の主動で開発が進められる。メイス重工は無数の設計局が存在するが、開発に失敗すると設計局は閉鎖され、人員は新たな設計局に配属されて離散する。一つの設計局の寿命が5年とも10年とも言われている。特異な設計を好み、技術的冒険に躊躇しないメイス重工でも開発の失敗は設計局の閉鎖によって罰せられるのである。容易に閉鎖される一方で開設も頻繁に行なわれており、開発者の特異な発想に利点が認められれば、すぐに主任に抜擢され開発局の編制を許可されることになる。
クリプトドリア級襲撃巡洋艦の開発は、マルクス・エヴァンズ博士とデービット・バール博士の共同研究に端を発する。彼らは開発されたばかりのブラック・グローブの有効利用について研究を重ねていたのである。彼らが注目したのは、ブラック・グローブが吸収した生のエネルギーをバッテリーは、650Mw/kl蓄えることができる点である。通常ならば最新型のTL15のバッテリーでも7Mw/klしか蓄えられないことを考えると異常に効率が良いことになる。彼らは、ブラック・グローブの搭載を前提にした軍艦の開発を目論んだ。  
メイス重工は、彼らの開発案を評価したが、独自開発を行なうだけの経済的余裕はなかった。そこでデービット・バール博士はカーライル級バトルライダーの開発時に知己を得たエドモンド・カーライル男爵に設計案を提示し協力を要請したのである。メイス重工の独創性を高く評価していた男爵は、艦政本部に働きかけて実験艦名目で予算を獲得してくれた。艦政本部も開発されたばかりで運用実績の無いブラック・グローブの運用経験の蓄積に興味を抱いたのである。実験艦に過ぎないのだが、予算獲得のために襲撃巡洋艦という珍妙な類別を与えられた。

2、クリプトドリア級襲撃巡洋艦
デービット・バール博士と彼の設計局は、ブラック・グローブとバッテリーの組み合わせを一つのパワープラントと見なし、その能力を最大源に生かすこと優先して設計している。その結果、設計陣は3万t級の通商破壊専用艦を選択した。帝国海軍に通商破壊専用艦は存在せず、ジャンプ能力に優れた旧式巡洋艦を通商破壊任務に投入することが多かった。基本的に重防御された星系を回避し、比較的手薄な敵の通商航路や港湾施設に対する攻撃を主任務とする通商破壊作戦では打撃力よりもジャンプ性能と秘匿性能が求められた。在来型巡洋艦では、高出力兵器を運用するために必然的に大出力核融合炉を搭載しているために秘匿性に問題を擁していた。
メイス重工の設計陣は、ブラック・グローブを有効利用する艦種として実験艦を通商破壊専用艦として設計した。ブラック・グローブを展開して背景放射に隠れてしまえば、容易に探知されることはない。もちろん、こちらのセンサー類もブラック・グローブの影響を受けて精度が落ちるが、通商破壊任務において秘匿性が高いということは、何にも勝る利点なのである。バール設計局の分析では、駆逐艦以下の艦艇にブラック・グローブを搭載するとコスト・パフォーマンスが悪化することや帝国海軍が通商破壊任務に巡洋艦を投入していた経緯から船体規模も3万t級と定められた。
クリプトドリア級は、ブラック・グローブ展開時に吸収されるエネルギーを蓄積するために大量のバッテリーを搭載している。バッテリーはブラック・グローブからもたらされるエネルギーを通常の百倍近い効率で蓄えることが知られていた。バール設計局では、ブラック・グローブとバッテリーの組み合わせを一種のパワープラントと見なし、蓄えられたエネルギーでJ級中間子砲の使用できるように設計されている。すなわち中間子砲を使用するためにはブラック・グローブを展開し、バッテリーに必要なエネルギーを蓄えるまで敵の攻撃に耐え続けなければいけないのである。この意味では中間子砲は主兵装ではなく万が一の場合に使用する副武装なのである。理論上は限界までエネルギーを蓄えた場合には35回の発射を行なうことができる。中間子砲にエネルギーを安定供給するためとブラック・グローブを有効利用するために決定されたバッテリー容積であるが、建造費の高騰と機関科の人員の増大を引き起こす原因となった。
クリプトドリア級襲撃巡洋艦は主兵装として10基のミサイル副砲と6基のレーザー副砲を装備している。巡洋艦の武装としては貧弱であるが、民間商船や防御の手薄な星系を標的とするために独力で惑星防衛艦を撃破できるだけの戦闘力を保持していれば良いためにこの程度の武装に抑えられている。特にレーザー副砲は、ゾダーンの惑星防衛艦に多い魚雷艇に対する防御を目的に備えられている。ゾダーンの惑星防衛艦は、1000t未満の船体に副砲級のミサイル発射機を軸線に固定配置しており、防衛の為にレーザー副砲は必須であった。バール設計局の技術者にとっては、軍側の要望さえなければ、核融合炉の小型化のためにレーザー副砲を搭載しなかったかもしれない。
クリプトドリア級襲撃巡洋艦の開発に携わった技官や技術者は、〈ドン亀〉の愛称をつけた。有力な敵に遭遇した場合、ブラック・グローブを張り続けエネルギーをためる様子が甲羅に身を潜める亀を創造させたからである。クリプトドリアという名前もテラに自生する亀の学名に由来する。

3、クリプトドリア級の行方
 クリプトドリア級の完成は、1117年末である。反乱の勃発による混乱の中で資料が失われており、完成後の実験の結果など一切が不明となっている。完成した以上は、運用試験が行なわれ、貴重な資料を提供したことは想像に難くない。実験艦とはいえども通商破壊専任艦であるために軍機によってその情報が秘匿されたことも想像に難くない。すべてが過去のものになった1248年現在でもクリプトドリア級の完成後の活動を示す資料は発見できない。反乱とその後の苦難の時代を通じてデネブ海軍は、ヴァルグル戦線ではデネブ兵站基地の維持を最優先していた。1120年以降には万が一に備え、兵站基地の機能の一部を後方の基地に疎開を進めており、その混乱の中でクリプトドリア級の資料が紛失したと見られる。クリプトドリア級自体が存在すればそのような混乱も生じなかったことから、1120年代に撃沈されたのでは無いか推測される。一部の識者の中には反乱の勃発によって予算と資材が他に転用され、クリプトドリア級は実際には建造されなかったという見方も存在することも併せて報告しておきたい。いずれにしろ真実は闇の中なのだ。