The Best Weapon
42nd stage
 (Hunny pot for Pirates)

最強兵器 決定戦
第42回
(海賊いじめ2)

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MEGA TRAVELLER
 


 

中距離における銃撃戦
    シミュレーション(その2)



 前回(第41回)の続きです。

 海賊船に拿捕されたS1型連絡船の乗組員(ビアトリス)は、 船内に乗り込んできた海賊に対して、反撃を開始しました。

 Cデッキへ侵入してきた海賊4名を「不意討ち」で壊滅させた後、次の段階として、船倉内の海賊排除を目指します。
 流石に今回は「不意討ち」を期待できません。
 装備や技能レベルでは優っているものの、人数の上では、2対5の大きな劣勢です。
 どのようにしたら、数の劣勢を覆すことが出来るでしょうか。


 目次
    ※プロローグ
    ※今度の戦場はFデッキ
    ※「不意討ち」に成功しなければ、数の劣勢は覆せない
    ※近距離への侵入を許さない、中距離の銃撃戦
       第1戦闘ラウンド
       第2戦闘ラウンド
    ※最後の戦闘

    ※法的解釈(2012.01.22加筆)

       (5)積極的加害の意思?
       (6)賠償責任
       (7)現場検証の所要時間
    ※速射の有効性
    ※結論





プロローグ


「あー、ちょっと、なにやってるんです!」

 貨物室にビアトリスのどなり声が響く。

「そのコンテナの中身は貴重品です、丁寧に扱ってください!」

「ええ?…貨物リストでは、『ホーウッド』になってたぞ。」

 リフターを操作するハーヴィーが返した。

「ちゃんとリストを見たの!?、括弧して、『家具/建材』となってるでしょ!」

ハーヴィーは一旦手を止めて、リストを確認する。

「ああ…なってるが…それが?」

 ビアトリスはまるで、やってられない…といった風に天井を見上げて、大きなため息をついた。

「あのねえ…
 家具、建材に使うような大きな『ホーウッド』を切り出すのは大変なの。
 内部に亀裂のない木を選び出し、硬質のカッターで丁寧に切り出す…
 たった一本切り出すのに何カ月もかかるのよ。
 ダイナマイトで“採掘”した切れ端なんかと一緒にしないで頂戴。
 物によっては、そのコンテナ一杯で、宇宙船の一隻ぐらい買えるんですからね!」

 そして、更に付け加える。

「そんなことだから、食い詰めて海賊なんかすることになるのよ!」

 一方的にまくし立てられたハーヴィーには返す言葉もない。

「す、すまねぇ…」小さくそう言うと、コンテナを慎重に扱い始める。



 『レディバグ』の船倉では、貨物の搬送作業を開始して、すでに10分。
 ようやく4つのコンテナを『ジャックポット』へ移し換えたところである。
 拿捕した連絡船に乗っていた乗組員はわずか1人。
 捕虜となった…はずの、ビアトリスと名乗る少女一人だけである。

 相変わらず銃を突き付けられてはいたが、貨物室の作業の主導権はいつの間にか彼女に握られていた。
 とはいえ、彼女が作業の妨害をすることはなかったし、抵抗しようという気配も見られない。
 何も文句の付けようがないところだが…
 海賊リーダー(レックで雇われたならず者)のエゼカンブは、漠然とした不安を感じ始めていた。

 この状況での彼女の自信満々な行動に、最初のうちは(俺の女房にしたいぐらいだぜ)と思っていたが、徐々にその動きが不自然に見えてきたのだ。

 彼の構えた銃がまるで見えていないのか、時折銃口にぶつかる。普通、人間なら、突き付けられた銃を無意識に避けるものだ。
 そればかりではない。ほんの瞬間ではあるが、ときどき、意味も前触れもなく動きが止まったりするのだ。
 それは、常に油断なく彼女から目を離さなかった彼だから気がついた“違和感”だったが、結局、彼は最期までその正体に気がつくことはなかった。



「船長達、まだ戻ってこないのかな。」

 海賊のひとり、ジョイスが額の汗を拭いながら呟いた。
 宇宙服に包まれた身体が冷却されるといっても、激しい肉体労働をした時の発熱と、発汗を抑えられる訳ではない。
 身体を動かしていればしだいに熱くなるし、当然、汗もかく。
 少しでも休みながら作業できるのであれば、もう少し楽にもなるだろうが、交代要員のいない現状では休むこともできない。
 もう1台のリフトで作業をしているフランクとグレイのペアも、きっと同じ思いだろう。

 リーダーのエゼカンブは捕虜の監視と周囲への警戒に専念しており、搬送作業には携わっていないが、 少しぐらい手伝ってくれても良いと思うのである。
 捕虜を監視する作業も、交代制にすべきだったのではないだろうか。

 とはいうものの、いくら暑苦しくても宇宙服を脱ぐ気持ちにはなれなかった。
 何かの事故が起これば、船倉の気密状態は簡単に失われてしまう。
 そんな時に頼れるものは、自分の宇宙服だけなのだ。

「確かに、ちょっと遅いな。……定期連絡も無い。」

 次のコンテナにリフターのアームを押し付けながら、相方のハーヴィーが呟いた。
 作業の片手間、『ジャックポット』で監視を続けている筈の、居残り乗組員へ回線を繋ぐ。

「タッカチャティ。そっちに船長からの連絡はないのか……。
 おい、聴こえないのか。」

 連絡船『レディバグ』と『ジャックポット』の船倉は、 現在、貨物ハッチで接続されている。
 この船倉内も、『ジャックポット』のLANに取り込まれている筈なのだ。
 無線が通じない筈がない。
 居残りの乗組員がブリッジを離れているのか、あるいは、返事も出来ないほど何かのトラブルに追われているのか。

 ジョイスは宇宙服の無線を操作して、別行動中のドリンカー船長達を呼び出してみるが、同じように返事が無い。
 2人の海賊は、言い様の無い不安を感じて、顔を見合わせた。



「リーダー。ちょっと良いですか。」

 搬送作業の手を止めた2人、ハーヴィーとジョイスが揃ってエゼカンブに話しかけた。

「『ジャックポット』や船長達と連絡が取れませんか?
 さっきから何だか通話状態が悪いようで……。」

 その次の瞬間、何の予兆も無しに、船倉内が真っ暗になった。
 正確には『レディバグ』の船倉に取り付けられていた照明が一斉に消えたのである。
 『ジャックポット』側の照明で薄闇程度の明るさにはなっているが、 通常の明るさに慣れた目が、薄闇の中で物を見られるようになるには、わずかながらも時間が必要だ。
 エゼカンブは半ば驚き、半ばは予想通りだと思いながらも、身構えた。
 アクションドラマなどで突然の消灯の後に来るものは、特殊部隊の突入だと決まっている。

「敵襲だっ! 全員、武器を取れっ!」

 エゼカンブが指示を叫んだ。





 今回もプロローグ部分の執筆は、橘様によるものです。有難うございました。





今度の戦場はFデッキ


 今度は船倉(Fデッキ)内での強襲です。
 見取り図については、図1をご覧下さい。



BW42_Fig01.gif - 17.6KB

         図1 S1型連絡船の船倉(Fデッキ)見取り図

 幅6メートル、高さ6メートルの貨物船倉が、連絡船のFデッキ(図の下半分)から、ドッキングチューブ(図の上半分)を通して、 自由貿易船「ジャックポット」の船倉(図示せず)までつながっています。
 図の下端に見える緑色の部分は、まだ搬送されていない貨物コンテナです。

 左右にあるエアロックは、連絡船のエアロックです。
 左側のアイリスバルブに囲まれたエアロックが左舷エアロック、
 右側の手動ハッチに囲まれたエアロックが右舷エアロックを表しています。
 このエアロックから上方向に移動した部分、灰色に塗りつぶされたマスは船体外部、真空の宇宙空間です。



BW42_Fig02.gif - 23.2KB

            図2 船倉内で作業中の海賊配置図


 海賊達は、貨物コンテナの搬送作業を行なっていました。
 その配置は、図2の通りです。
 エゼカンブの指示に従い、オートマチック射撃や巻き添え命中の被害を減少させるため、海賊側のメンバーを広い範囲に分散させました。

 海賊のリーダー、エゼカンブ(E)は、 戦闘ライフル(高速弾:命中DM+4)を構え、油断無く周囲を見張っています。
 彼は〈リーダー3〉、〈戦術−2〉を備えた優秀な指揮官ですので、 不意討ちを狙う「レディバグ」側にとって、非常に厄介な相手です。
 おまけに、彼の扱う戦闘ライフルは「ジャイロ・スタビライザー」を装備していますから、 特別な固定物が無くても、たとえ移動中であっても、中距離射撃で高い命中率を発揮するでしょう。

 その横には、捕虜になったビアトリス(γ)が立たされています。
 何時の間にやら、コンテナの搬送作業を仕切っていたので、縛られてはいません。
 とはいっても捕虜ですから、簡単なボディチェックを受けて丸腰です。
 素手なのです。
 宇宙服も着ておりません。
 彼女の装甲値は「0」になります。
 いざとなれば、素手で近接戦闘を行なうこともできますが、装甲値「0」ですから、 攻撃(銃撃)を受けたら、一撃で倒されてしまう可能性が高いでしょう。
 監視している海賊エゼカンブ(E)が、移動して何処かへ行ってしまうか、 あるいは無力化されるまで、彼女は動けないものとして扱います。



 海賊フランク(F)は、反重力リフターを操縦しています。
 ちょうど今、「ジャックポット」の船倉へコンテナを降ろし、空荷のまま戻ってきたところです。
 反重力リフターは、縦横1.5メートル、高さ2メートル程の直方体であり、コンテナ1個を持ち上げるだけの推力を持っています。
 操縦者は立った姿勢で乗り込んで操縦する訳ですが、座席はありません。
 操縦席の横にデーターリーダなどを収める箱があり、そこに突撃ライフルが放り込まれています。

 敵襲があった場合、フランク(F)は まずリフターを停止/着地させて、行動の自由を確保(ここまでで1戦闘ラウンドを消費)。
 次に突撃ライフルを取り上げて、リフターから飛び降りることになります(ここで、さらに1戦闘ラウンドを消費)。
 リフターの装甲は薄いのですが、内部の機械類(パワープラントや反重力ユニット)などは、 弾丸射出火器や手榴弾などに対して、十分な遮蔽物と成り得ます。
 彼はあまり、射撃が得意ではありません(命中DM+1)。

 その3メートル(2マス)後ろを歩いている海賊グレイ(G)は、 リフターの移動(微妙な前進や左右の位置合わせ)を誘導したり、リフターとコンテナの接続を確認したりなどの雑用を行なっています。
 SMGは安全装置を掛けて背中に背負っていますが、 必要になれば1戦闘ラウンドでセレクターを切り替え、構えることができます。
 彼は射撃が得意です(命中DM+4)。



 エンジニアのハーヴィー(H)も、リフターを操縦しています。
 武装は突撃ライフル(命中DM+1)。
 現在は、コンテナにリフターのアームを押し付けて、そのコンテナを持ち上げようと作業しているところです。

 その作業を手伝っているのが、見習い航宙士のジョイス(J)
 彼の武装はSMG(命中DM+4)ですが、やはり作業中ですので、安全装置を掛けて、背中に回しています。





「不意討ち」に成功しなければ、
数の劣勢は覆せない


 さて、戦闘を始める上でとても重要な判定が「不意討ち」の判定ですが、 海賊リーダーエゼカンブ(E)の警戒がとても厳しい(不意討ちDM−3)ので、 今回は「不意討ち」を諦めました。

 難易度〈難〉、〈リーダー〉、〈偵察〉(対立)
 
 レディバグ側は〈リーダー−1〉と〈偵察−3〉が+DMに、 海賊側はエゼカンブの〈リーダー−3〉が−DMとして加算されます。
 難易度〈難〉でDM+1ですから、サイコロの目は10以上で成功。
 成功率は、わずか16.7%しかありません。

 今回、初めて気付いたことなのですが、
 不意討ちの成功判定に「例外的失敗」をすると 逆に「不意討ち」されてしまうそうです(プレイヤーズ・マニュアルp.68)。

 「レディバグ」側の成功率は、難易度〈難〉のDM+1ですから、成功率は10+。
 わずか16.7%しかありません。
 それに対して、例外的失敗は8−で起こりますから、その確率は72.2%。
 結構、しゃれにならないリスクだったりするのです。

 どう考えても不利になりそうなので「不意討ち」判定を諦めた訳なのですが、ルールの解釈は間違っていませんよね?



 「不意討ち」判定で「例外的失敗」を出してしまい、 相手に「不意討ちされる」リスクを冒すならば、 最初から「不意討ち」を諦めた方が良いでしょう。
 とは言うものの「不意討ち」を諦めた場合、まともに戦ったら人数面で大きく不利になってしまうのです。

 どのぐらい不利かというと、……、 試しに、左右両舷にある2つのエアロックから、ビアトリス2台を突入させてみましょうか。

 左舷のエアロック(アイリスバルブ)からビアトリス(α)を、 右舷のエアロック(手動ハッチ)からビアトリス(β)を突入させます。
 彼女達の武装は、(α)戦闘ライフル(高速弾)、 (β)磁気ライフルということにしておきます。
 高い敏捷力と技能レベルによって、彼女達の命中DMは+5になりました。




第1戦闘ラウンド

 「不意討ち」でありませんから、第1戦闘ラウンドから双方が行動します。

 どちらが先攻/後攻でも構わないのですが、ビアトリス(α、β)は、 それぞれアイリスバルブ、手動ハッチを開けるだけで1戦闘ラウンドを消費してしまいました(プレイヤーズ・マニュアルp.86)。
 アイリスバルブ、手動ハッチを通過できるのは次の戦闘ラウンドからですので、この戦闘ラウンドは射線も通らない、と解釈しておきます。

 海賊側は、まずリーダーのエゼカンブ(E)が警告を叫び、 それを聞いたフランク(F)ハーヴィー(H)の2人がリフターを停止、 グレイ(G)ジョイス(J)の2人が 各自の銃器(SMG)を用意した、と考えました。



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    図3 Fデッキの戦闘 不意討ち無しの強襲(ビアトリスの射撃線



第2戦闘ラウンド

 レディバグ側のビアトリス2台(α、β)は、射撃の命中率を僅かでも高めるため、移動速度0を宣言します。
 援護物として使えるエアロックを出るつもりはありませんので、移動できなくでも(多分)不利にはなりません。
 ビアトリス(α)は、最も危険なリーダー、エゼカンブ(E)を。
 ビアトリス(β)は、近くのジョイス(J)を撃つ予定なのです。
 ビアトリス(γ)は下手に動くと、 すぐ隣に立つエゼカンブ(E)に問答無用で撃たれそうな気がするので、動けません。

 海賊側は、リーダーのエゼカンブ(E)、 リフターを操作していたフランク(F)ハーヴィー(H)の3人が移動速度0を、 残る2人、グレイ(G)ジョイス(J)が移動速度1を宣言しました。



 戦術ポイントの多い、レディバグ側が後攻を取りました。
 これまでの考察から、相手を先に動かし、その行動を後から妨害する方が、有利だと判明しています。

 しかし人数で圧倒的な優位を誇る海賊側は、戦闘にあまり影響しないユニット、 ハーヴィー(H)を動かすことで1人分の行動を終えてしまいました。
 ハーヴィー(H)はリフターから飛び降り、 停止したリフターを遮蔽物として利用できる位置に隠れます。
 レディバグ側は、妨害を行ないません。

 次にレディバグ側は、ビアトリス(α)を行動させました。
 海賊側のエゼカンブ(E)戦闘ライフル(高速弾)のフルオート射撃で無力化しようとします。
 中距離、「ジャイロ」有りで難易度〈並〉、命中DM+5。
 「部分貫通」の命中率2+ですから、無力化率は99.9%。
 まず間違いなく、エゼカンブ(E)は無力化されてしまうでしょう。



BW42_Fig04.gif - 21.8KB

     図4 Fデッキの戦闘 海賊側の対応(妨害による移動と銃撃

 その行動に対して、すかさず海賊側が、SMG装備のグレイ(G)で 「妨害」を試みました。
 「妨害」の成功判定は難易度〈並〉ですが、 グレイ(G)は移動速度1ですからDM+1、6+(=72.2%)で成功する筈です。

 「妨害」判定に成功した場合、海賊(G)は5〜6マスを移動。
 ビアトリス(α)の至近距離まで接近し、 SMGフルオート射撃を撃ち込みます。
 上の図4では隣接マスまでしか移動していませんが、同一マスに重ねると図が見難くなりますので、ご容赦ください。
 実際には、同一マスまで移動している訳なのです。
 ハンドガンの至近距離射撃ですが、さらに至近距離なので援護物は無効化されると考えました。
 命中DM+4、移動DM−1より、差し引きDM+3。
 難易度〈易〉のDM+3、 命中率0+の「無貫通」、フルオート射撃
 無力化率99.6%ですから、ビアトリス(α)の無力化も確実です。

 「妨害」判定に失敗した場合、 グレイ(G)ビアトリス(α)の行動が終了した後に、上記と同じ行動を行ないます。

 ですから、グレイ(G)が「妨害」判定に成功しようと失敗しようと、 ビアトリス(α)の運命は決まっているのです。
 わずかな違いは、彼女が射撃を実行できるかどうかという点だけですね。
 運良く(27.8%の確率で)グレイ(G)が「妨害」判定に失敗したのであれば、 彼女は自分が倒される前に、エゼカンブ(E)を道連れに出来ます。
 運が悪ければ(72.2%ですから、こちらの方が確率は高いのです)、彼女は1発も撃つことなく、無力化されてしまうことでしょう。



 一方、右舷側エアロックに潜むビアトリス(β)と、 彼女の目標になったジョイス(J)の関係も似たようなものです。
 ビアトリス(β)ジョイス(J)を撃とうとしますが、 その行動に対して目標となったジョイス(J)が「妨害」を試みます。
 今回も、「妨害」の成功率は6+(=72.2%)。

 「妨害」判定に成功した場合、ジョイス(J)は2〜3マスを移動。
 ビアトリス(β)の至近距離まで接近して、 こちらもSMGフルオート射撃を撃ち込みます。
 グレイ(G)の射撃と同様に、命中率0+の「無貫通」。
 無力化率99.6%ですから、ビアトリス(β)の無力化も確実になりました。

 「妨害」判定に失敗した場合、ジョイス(J)は行動を始める前に、 ビアトリス(β)の射撃によって無力化されることになります。

 運良く(27.8%の確率で)ジョイス(J)が「妨害」判定に失敗すれば、 ビアトリス(β)は撃たれるよりも早くジョイス(J)を無力化していますから、 恐らく無事でいるでしょう。
 運が悪ければ(72.2%の確率で)、彼女の方が先に無力化されているのですが。


      表5 第2戦闘ラウンドの結果 海賊(G、J)の武装がSMG

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 考察結果をまとめると、上の表5のようになりました。

 とても残念なことですが、海賊側の全員が無傷なのに、 レディバグ側のビアトリスが2台とも無力化されてしまう確率が、半分以上(52.2%)もあるのです。
 場合によってはビアトリス2台の全滅と引き換えに、 海賊側のリーダー、エゼカンブ(E)を負傷(死亡)させることもできますが、 その確率も5分の1(20.1%)しかありません。
 つまり、7割(72.2%)の確率で、レディバグ側はビアトリスが全滅してしまうと明らかになりました。
 エゼカンブ(E)を倒したとしても、情況はほとんど変わらないでしょう。
 ですから、海賊側の圧勝、という訳です。

 運が良ければ、ビアトリスの片方(β)だけは生き残ることが出来ます。
 それは、先手を取ってジョイス(J)を無力化できたことを意味しているのですが、 その確率は合わせても3割弱(27.8%)しかありません。
 ジョイス(J)だけの無力化に成功したとしても、 次の戦闘ラウンドにはフランク(F)ハーヴィー(H)が参戦してきますから、 エゼカンブ(E)を数に入れなくても人数比は1対3。
 さらに不利な情勢となるでしょう。
 運が良ければもう1人くらい、海賊を道連れに出来るかも知れませんが、 ビアトリス(β)の無力化も確定しています。
 5名の海賊の内、1人か2人を倒せますが、海賊側の勝利は揺らぎません。
 20.1%の確率で、海賊側の辛勝だと言えるでしょう。

 多くの幸運を必要としますが、第2戦闘ラウンドにおいて、2人の海賊、エゼカンブ(E)ジョイス(J)を無力化できる可能性もありました。
 ビアトリス(α)エゼカンブ(E)を倒し、 ビアトリス(β)ジョイス(J)を倒せた、という情況です。
 すると、次の戦闘ラウンドに戦える海賊は3人。
 対するレディバグ側は、ビアトリス(β)の1台だけではなく、 捕まっていた(γ)も戦力に数えることが出来るようになるのです。
 こうなると、まだ勝負の行く末は分かりません。
 第3戦闘ラウンドのサイコロ運によって海賊側が勝つかも知れませんが、レディバグ側が勝利する可能性も十分残されているのです。
 よって、7.7%の確率で引き分けになる、と考えました。



 「妨害」判定は、「敵の1回の攻撃、あるいは敵の1マスの移動につき、1回だけ」試みることができます。
 移動するマスが多いほど、移動距離が長いほど、「妨害」を受けやすいことは明らかですね。
 ですから、ビアトリスが「妨害」を受け難いようにするため、 わざわざ移動速度0を宣言して「移動無し」での射撃を試みたのですが、 それでも高確率で「妨害」を受けてしまいました。
 海賊側のユニットが移動速度1で移動している場合、6+(=72.2%)で「妨害」に成功してしまいますから。
 サイコロ運が良くなければ(海賊側が「妨害」に失敗しなければ)、 ビアトリス達は先に無力化されてしまい、強力な銃器、優秀な技能レベルによる先制射撃を行なえないのです。
 これでは、どんな強力な銃を持たせても、宝の持ち腐れに終わります。

 上記のように、「不意討ち」に失敗したレディバグ側がまともに戦闘を開始すると、 極めて高い確率で負けてしまうと分かりました。
 数の劣勢を覆すことは、どうにも難しいのです。



 そこで、海賊側のSMGを他の武器に変更することで、 ビアトリスの受けるダメージを減らしてみました。 具体的には、2人の武装を突撃ライフルに変えてみたのです。
 もし「妨害」を受け、先手を取られても、 ビアトリス達があまりダメージを受けず、行動を継続できるようになりました。
 その戦闘結果は表6のようになります。


   表6  第2戦闘ラウンドの結果 海賊(G、J)の武装が突撃ライフル

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 海賊側が圧勝する確率は、72.2%から、27.1%に減少。
 海賊側の辛勝は、20.1%から41.8%に増えています。
 上記2つを合わせた海賊側の勝率は、92.3%から68.9%に下がりました。

 引き分けになる確率は、7.7%から9.5%に増加。
 まだまだ勝負は分かりません。

 驚いたことに、海賊側が完敗する確率が21.7%も発生しました。

 これは裏返すと、至近距離で射撃されるSMGが、いかに強力であるかということの証明でもあるのですが。



 さて、素人が扱っても凶悪な威力を発揮するSMG
 射撃前にこれらの武器を封じ込めるためには、敵より多くの手勢を集め「妨害」合戦に勝利する必要があります。
 しかし、その手勢を集められない場合は、どうするべきなのでしょうか。

 私なりに考えた結論は、次のようになりました。





近距離への侵入を許さない、中距離の銃撃戦


 薄暗がりの中、エゼカンブ(E)は油断なく周囲を見回した。

グレイ(G)は左舷のエアロック、ジョイス(J)は右舷のエアロックを見張れっ!
 フランク(F)ハーヴィー(H)はまずリフターを停めて、バックアップしろ。」

 配置変更の命令を大声で指示することは好ましくないが、命令なしに動けるほど、彼の部下達は練度が高くないのだ。
 敵は何処かでこの指示を聞いている筈だが、止むを得ない。

「お前はそこに伏せていろ。動くなよ。」

 エゼカンブ(E)は隣に佇むビアトリス(γ)へ、床に伏せるよう指示した。
 すっかり騙されてしまったが、彼女以外の乗組員がいるのでなければ、こんなことが起こる筈がない。
 色々と問い詰めたいところだが、とりあえず、新たな敵襲を凌ぐ方が優先だ。

 連絡を取れなくなった船長達は、すでに制圧されたのだろう。 敵の武装と人数は、少なくとも4人を一瞬で制圧できるだけの火力を持っているということだ。 油断しているところを「不意討ち」された可能性も高いのだが。
 しかし、こんな小さな連絡船の、何処にそれだけの戦力が隠れていたのか。

 静まり返った船倉内に突然、アクチュエーターの作動音が響いた。
 左舷エアロックのアイリスバルブが、再び開き始めたのだ。

 フランク(F)は、反重力リフターを停めると、その正面を左舷エアロックに向けて着地させた。
 銃撃戦の際、リフターを遮蔽物として使うつもりなのである。

 グレイ(G)はSMGの安全装置を外しながら、開きつつあるアイリスバルブの脇へ素早く駆け寄った。
 アイリスバルブが開き切ると同時にエアロック内へ突入。中を掃射する予定なのだ。
 待ち伏せの体勢は完璧である。 フランク(F)突撃ライフルを準備できれば、火力は2倍に増えるだろう。

 その反対方向ではジョイス(J)が同じようにSMGを構え、 右舷のエアロックに向き直っているところだった。
 しっかりと、停止したリフターを援護物として利用している。
 戦闘経験が少ない割には、意外と良い動きだ。

 部下達が期待以上の動きをしてくれたおかげで、 エゼカンブ(E)は安心して左舷エアロックから目を離すことができた。
 右舷エアロックの手動ハッチは、動く様子が見当たらない。
 別方向からの攻撃は無いのだろうか。

 こちらの手勢は分かっているのだから、単純に左舷エアロックから敵が飛び出してくるとは思えなかった。 そんな力押しだけしかしてこないのであれば、船長以下の4人が簡単にやられる筈はないのだ。
 だとすると、何処から来るのか。

 ふと、視界の隅でかすかな動きが見えた。
 薄暗がりの中ではっきりしないが、高さ4メートルほどの位置にある壁の一部が、動いているのだ。
 エゼカンブ(E)は慌てて戦闘ライフルを構え直した。
 照準器に囲まれた小さな視野の中、60センチ四方の壁が上に跳ね上がって開くと、 その開口部からは宇宙服を着た人影の頭部と右腕が突き出される。

「畜生、上だっ! 奴らは上から来たぞっ!」

 エゼカンブ(E)の警告に素早く反応したジョイス(J)は、 SMGを構え直すと、開きつつある整備用ハッチの真下へと駆け寄った。
 ハッチ目掛けてフルオート射撃を撃ち込むが、しかし1発も当たらない。
 わずか数メートルの距離ではあるが、援護物に隠れた目標に、SMGの射撃精度ではほとんど当たらないのだ。

 整備用ハッチを開き終えた、宇宙服の頭と腕はすぐ奥に引っ込んでしまう。
 再び出てくるまで、銃撃することは出来ない。

 整備用ハッチを開けたビアトリス(α)の動きに気付いた エゼカンブ(E)の注意力も大したものだったが、実はそれが彼の限界でもあった。
 船倉の反対側でも、もうひとつの整備用ハッチが開いていたのである。
 そこからライフルを突き出したビアトリス(β)は、 ジョイス(J)の背中に照準を合わせていた。



「リーダー! エアロックの中には誰もいません。フェイントですっ!」

 グレイ(G)の報告を聞いて、 エゼカンブ(E)はエアロックの作動が囮であることを理解した。 ならば、逆にそれを利用してやるまでだ。

「グレイ! エアロックに飛び込めっ! 奴の背後に回るんだっ!」

 その指示を受けてエアロックに飛びこみかけたグレイ(G)だったが、 その背中を狙う銃口があった。
 今度はエゼカンブ(E)もそれに気付く。
 彼の位置からではほとんど命中を期待できないが、ジョイス(J)ならば、その銃を狙い撃てるだろう。

「ジョイス! 後ろだっ、背後から狙われているぞっ! 反撃しろっ!」

 声を掛けられたジョイス(J)は、反撃しようと振り向きかけたものの、その動きはあまりにも遅かった。
 ほとんど音のない銃声。
 敵は磁気ライフルを装備しているのだ。
 空気を切り裂く銃弾の飛翔音と共に、まず最初にグレイ(G)が撃たれた。
 エアロックの中へ上半身を突っ込み、下半身を船倉に残したまま、中途半端な位置で倒れ伏してしまう。
 次はジョイス(J)
 振り向きかけた体勢で銃撃を受け、独楽のように身体を回転させながら床へ倒れた。
 最後はハーヴィー(H)で、彼はろくに動けないまま、リフターへ寄りかかるようにして崩れ落ちる。

 3人の海賊がまとめて倒されたのは、ほんの一瞬の出来事だった。
 エゼカンブ(E)は唖然とするが、 もう1丁のライフルが、今度は自分の方を向いたことに気付き、気を取り直して反撃を試みる。
 しかし今度は、捕虜のビアトリス(γ)が立ち上がる気配にも気が付いた。
 どうして大人しくしていないのか。
 下手に動かなければ、撃たずに済んだのに。
 そんなことを考えながら、エゼカンブ(E)戦闘ライフルの狙いを隣のビアトリス(γ)へ向け直した。
 逃げる娘の背中を撃つこと、そして確実に殺してしまうことに、躊躇いは無い。
 そんな感傷は、この仕事に入った時から断ち切ったのだ。

 しかし、ビアトリス(γ)は逃げていなかった。
 一歩下がった位置で立ち止まり、真っ直ぐ伸ばした右腕を彼の方へ向けている。
 左手は銃身を支えるかのような形で、右肘の下へ添えられていた。
 まるで射撃の構えを取っているかのようである。

 そう、射撃姿勢だ。
 右腕が銃身で、右手が銃口。
 いや、右手はまるで骨折したかのように、有り得ない角度で捻じ曲げられている。
 右手首から突き出している棒状の物体は、断じて骨ではない。
 どう見ても、レーザー銃の銃口だ。
 この娘は右腕にレーザー銃を隠していたのか!?
 “違和感”だらけの動きは、彼女がロボットだからだったのか。

 エゼカンブ(E)が照準を付け直すよりも早く、 ビアトリス(γ)のレーザー銃が閃光を放った。
 当然である。すでに彼女は構えを取っていたのだから。
 レーザー光はエゼカンブ(E)の胸部に命中。
 宇宙服の表面装甲を瞬間的に融解させ、内部機構をも貫いた。
 余剰エネルギーがエゼカンブ(E)の胸にも食い込み、肺胞を焼き払う。
 彼は絶叫しようとしたが、肺はすでに半ば以上、その機能を止めていたのだ。
 エゼカンブ(E)は、胸の激痛に意識を失った。

 同じようなタイミングで、最後の海賊フランク(F)も、 ビアトリス(α)の銃撃で撃ち倒されていた。
 こうして、Fデッキにおける戦闘もわずか数秒で終了する。





 41回の考察で、SMGを持つ敵ユニットの移動を制限するため、馬防柵の利用を提言しました。
 しかし、プレイヤーズ・マニュアルには、そうした障害物に関するルールが存在しません。
 どうにもレフリーの自由裁量に任されているようなのですが、メガトラでレフリーの経験はおろか、 プレイヤーとしての経験も無い私が、適当なルールをでっち上げてしまうのは流石に気が引けます。

 色々と考えている内に、高度差を利用すれば良いのではないかと思いつきました。
 連絡船の船倉は、天井の高さが6〜9メートル。
 3つのデッキを貫いています。
 1つ上のデッキ、3メートルの高さにあるEデッキから銃撃すれば良いのではないでしょうか。
 そんな訳ですから、今回の情況において、Eデッキに設けられた整備用ハッチをビアトリス達に開けさせ、 そのハッチ開口部から船倉内を射撃するようにしてみました。

 この場合、デッキの床自体が有効な遮蔽物援護物)に成り得ます。
 反撃する海賊側ユニットが空を飛ばない限り、その遮蔽物を無効化して射撃することは出来ません。
 もちろん海賊側ユニットがシャフトを登るなどして同じ高さまで移動することは可能ですが、 プレイヤーズ・マニュアルp.87の記述に拠れば、ユニットは1戦闘ラウンドを掛けて、わずか1メートルの垂直移動しか出来ないとのこと。
 つまり、1つ上のデッキへ上がるだけでも3戦闘ラウンドが必要なのです。
 これだけで、SMGを用いた場合の最大メリット、 即座に至近距離まで接近して、援護物に構わずフルオート射撃を行なう、ということが不可能になりました。

 実際の戦闘シミュレーションを行なってみると、具体的には以下のようになります。




第1戦闘ラウンド

不意討ち」判定を省略して、戦闘開始(第1ラウンド)です。

 戦闘ラウンドの開始時に、各ユニットの移動速度を宣言しなければなりません(プレイヤーズ・マニュアル、p.69)。

 「不意討ち」状態ではないと言っても、海賊側がビアトリスの姿を見つけた訳ではないのです。
 これまで通りの行動を続けると想定すべきでしょう。

 ですから、エゼカンブ(E)は立ったまま 周囲と捕虜のビアトリス(γ)を監視(移動速度0)。
 フランク(F)ハーヴィー(H)は、リフターに乗ったまま(移動速度0)。
 グレイ(G)ジョイス(J)は歩いていること(移動速度1)にします。

 レディバグ側のビアトリス(α、β)は、整備用ハッチを開けるだけで行動が終わってしまうでしょう。
 整備用ハッチが開いて通れるようになるのは次の戦闘ラウンドですから、今回の戦闘ラウンドは移動速度0を宣言しておきます。
 捕虜のビアトリス(γ)は、今回も大人しくしておきます(移動速度0)。



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          図7  Fデッキの戦闘 第1戦闘ラウンド


 戦術ポイントの多い「レディバグ」側が後攻を取りました。

 海賊側は「様子見」のため、 ハーヴィー(H)にリフターを停止させ、着地させます。
 これは予定通り。
 敵襲があったのですから、リフターを降りなければ戦闘に参加できない以上、当然の行動です。

 レディバグ側は、遠隔操作でアイリスバルブを開きます(この場には居ない、本当の船長の行動です)。
 普通であれば、キャラクターやロボットがアイリスバルブに隣接していないと出来ない行動ですので、 海賊側は左舷エアロック内に誰かが潜んでいる、と判断しました。
 常識ではそうなるでしょう。
 アイリスバルブの開閉には丸々1ターンが必要であり、そこを通過できるのは次の戦闘ラウンドですから、 今回の第1戦闘ラウンドでは、アイリスバルブ越しに視線が通らない(銃撃も出来ない)としておきます。

 海賊側2人目ですが、今度はフランク(F)が同じようにリフターを停止させます。
 ルール上は何の関係もないのですが、リフターを左舷エアロックの(開きつつある)アイリスバルブに向けて着地させたことにしましょう。

 レディバグ側2人目は、ビアトリス(β)がEデッキ右舷側の整備用ハッチを開きました。
 船倉内の照明が消されており(明るかったら、すぐにばれます)、海賊側の注意がアイリスバルブに引き付けられていますから、 それに気付くためには、難易度〈難〉、〈偵察〉の成功判定が必要だと考えました。
 代表して、リーダーのエゼカンブ(E)にサイコロを振らせます。
 成功率は11+ですが、サイコロの目は「7」で失敗。
 気付きません。
 ビアトリス(β)の行動は、ハッチを開けるだけで終わりです。

 海賊側3人目はグレイ(G)が、左舷側アイリスバルブ前へ移動しました。
 このエアロック内に敵がいると判断したならば、当然の行動だと思います。
 次の戦闘ラウンドには、意図通りにエアロック内をSMGで掃射できるでしょう。

 レディバグ側3人目の行動は、ビアトリス(α)がEデッキ左舷舷側の整備用ハッチを開きました。
 今度はエゼカンブ(E)の視界内ですから、難易度〈並〉、〈偵察〉で判定します。
 偵察技能はありませんが、成功率7+のところ、サイコロの目が「8」で成功。
 エゼカンブ(E)は整備用ハッチが開いたことに気付き、警告の声を上げました。

 プレイヤーズ・マニュアルp.84「連絡の重要性」に拠ると、 お互いの距離が遠距離までならば「音声」によって連絡を取れるようです。
 これで全員が、整備用ハッチの存在に気付きました。

 ジョイス(J)が「妨害」判定を試みます。
 移動速度1ですからDM+1、成功率6+のところサイコロの目が「9」ですから、めでたく成功しました。
 2マスを移動して、整備用ハッチの真下へ辿り着きます。

 先程のアイリスバルブでは「射線が通らない」と書きましたが、 今回の整備用ハッチは情況が違って、押し開き式の手動ハッチです。
 誰かが手で押さないときちんと開きません。
 その手を狙って撃つのであれば、援護物下の目標として扱えるだろうと考えました。

 ジョイス(J)が素早く反応して駆け寄ってきたものの、 高低差が邪魔をしていますので、射撃距離は至近距離に成り得ません。
 近距離止まりです。
 おまけに、援護物の効果もまだ残っていました。
 ジョイス(J)からは腕だけしか見えません。
 ハンドガンの近距離射撃、援護物有り、命中DM+4、移動DM−1。
 命中難易度〈難〉のDM+3ですから、命中率8+の「無貫通」です。
 フルオート射撃のサイコロは、「3、9、8、6」。
 2発が命中したものの、「無貫通」ですから何のダメージも与えられませんでした。
 ジョイス(J)は、この地点で行動を終了。
 ビアトリス(α)の行動も、腕を引っ込めて終わりです。

 レディバグ側4人目、ビアトリス(γ)の行動は、何もせずに終了。

 海賊側最後のユニット、エゼカンブ(E)も移動速度0ですから動けませんし、 目標が引っ込んでしまいました(見えません)から、銃撃も出来ません。



 戦術ポイントの適用を忘れていましたが、あまり大きな変化は起こらないでしょう。
 レディバグ側の3ポイントで簡単に打ち消されてしまいますし。

 以上、第1戦闘ラウンドが終了。
 移動の経過、移動終了時の位置は、図7の通りです。




第2戦闘ラウンド

 海賊側は、エゼカンブ(E)グレイ(G)ジョイス(J)の3人が移動速度1を宣言。
 フランク(F)ハーヴィー(H)の2人は、 リフトから降りるだけなので、今回も移動速度0です。

 レディバグ側は、Eデッキ上のビアトリス(α、β)が移動速度0を、 捕虜のビアトリス(γ)が移動速度1を宣言しました。
 この戦闘ラウンドで決着を付けるつもりですから当然、ビアトリス(γ)も参戦するのです。

 戦術ポイントの多い「レディバグ」側が決定権を持ちますので、今回も後攻を選びました。
 必然的に、海賊側が先攻です。



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         図8  Fデッキの戦闘 第2戦闘ラウンド前半 


 海賊側は、できるだけ早くグレイ(G)を安全地帯、左舷エアロックの中に隠れさせようと考えました。
 もうアイリスバルブは完全に開いていますから、中に入ることも可能なのです。
 不穏な動きを見せるビアトリス(γ)の無力化も大事ですが、 とにかくグレイ(G)をエアロックの中に入れてしまえば、簡単にはやられません、
 シャフトを登ってEデッキのビアトリス(α)を攻撃することも出来ますし、 少なくとも、ビアトリス(α)に対して援護物を得ることが出来るからです。
 そんな意図の下、真っ先にグレイ(G)を動かしました。

 その行動をレディバグ側、ビアトリス(β)が「妨害」しました。
 成功判定は移動速度0で7+ですが、サイコロの目は「7」でぎりぎり成功です。

 さて、ビアトリス(β)は、速射可能な磁気ライフルで武装していました。
 彼女は、目標数+3のフルオート射撃に「速射」を追加して、 3人の海賊をまとめて掃射することにします。
 幸いなことに(海賊にとっては不幸なことですが)、グレイ(G)ハーヴィー(H)ジョイス(J)の3人は、 (β)から見て45度の範囲内に存在していたのです。
 中距離のライフル射撃、固定物有り、「速射」で、命中難易度は〈難〉です。
 しかし、ビアトリスの命中DMは+5ですから、命中率は6+。
 1人当たり4回の命中判定を行なえますし、おまけに磁気ライフルは 基本ダメージ4の「部分貫通」です。
 ほぼ100%の無力化率になりました。
 腕利きの射手に扱わせた磁気ライフルは、実に破壊的です。

 発見のサイコロを難易度〈並〉で振り、 海賊達は今回、ビアトリス(β)の動きに気付きました。
 3人をまとめて倒されてはかないません。
 せっかくの数の優位が失われてしまいます。
 海賊側は、ビアトリス(β)の行動を、 ジョイス(J)で「妨害」しました。
 SMGの銃撃はなかなか当たりませんが、 少なくともジョイス(J)(β)の射界45度から逃がすことが出来るでしょう。
 射撃の後、グレイ(G)の代わりに、左舷エアロックへ飛び込ませれば良いのです。

 せっかくの射撃チャンスです。逃げられてはかないません。
 レディバグ側は、ジョイス(J)の「妨害」成功判定を、 戦術ポイント3つで強引に妨げました。
 移動速度1でDM+1、戦術ポイント3でDM−3、合わせてDM−2です。
 サイコロの目は「6」が出ました。
 ジョイス(J)の「妨害」は失敗です。

 海賊側の「妨害」が失敗したので、ビアトリス(β)は行動を再開しました。
 エアロック前に居るグレイ(G)を、 磁気ライフルフルオート+速射)で射撃。
 サイコロの目は、「6、8、12、7」でした。
 全弾命中。
 それによるダメージは「1、4、8、2」で、合計15ポイント。
 グレイ(G)は即死しました。

 次の目標は、整備ハッチの真下にいるジョイス(J)です。
 サイコロの目は、「3、6、9、5」。
 命中弾は2発だけで、その内1発は「かすり傷」です。
 ダメージは「なし、1、4、なし」ですが、それでも合計は5ポイント。
 ジョイス(J)は意識を喪失して、無力化されました。

 最後の目標はリフターの陰に隠れたハーヴィー(H)ですが、 彼はビアトリス(α)のことしか意識していませんでした。
 ですから、リフターは(α)に対する遮蔽物としか使えません。 (β)からの射撃に対しては無意味です。
 サイコロの目は「10、9、7、6」。
 今回も全弾が命中。
 ダメージは「8、4、2、1」で、合計15ポイント。
 ハーヴィー(H)も即死しました。

 以上でビアトリス(β)の行動は終わりです。
 彼女は整備用ハッチの奥に引っ込みました。



 戦力の50%が死亡/無力化されましたから、海賊側は士気チェックを行ないます。

 海賊側の士気を「並士気」だと考えていますが、50%以上の損害を負ってしまったので難易度がひとつ上昇。
 難易度〈難〉、〈リーダー〉ですので、成功率が8+になりました。
 サイコロの目は「11」。
 無事、成功です。



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         図9 Fデッキの戦闘  第2戦闘ラウンド後半


 「妨害」合戦でどたばたとしましたが、 「妨害」以外で行動したのは海賊側のグレイ(G)だけでしたから、 次に行動するのは、レディバグ側のユニットです。
 レディバグ側は、2人だけ生き残った海賊で最も危険なユニット、エゼカンブ(E)を倒そうと考えました。
 ビアトリス(α)は、戦闘ライフル(高速弾)で エゼカンブ(E)を狙います。
 戦闘ライフルが「速射」可能な銃器であれば、 フランク(F)をまとめて撃つこともできるのでしょうが、 残念ながら戦闘ライフルは「速射」できません。

 中距離のライフル射撃、「ジャイロ」有り、命中DM+5。
 命中難易度〈並〉のDM+5ですから、命中率2+の「部分貫通」になりました。
 エゼカンブ(E)は確実に無力化されるでしょう。

 当然の如くエゼカンブ(E)は、 その行動に対して「妨害」を試みました。
 後が無いので、海賊側の戦術ポイント2つを使っています。
 成功率は4+で、サイコロの目は「5」でした。
 めでたく「妨害」に成功したので、彼は先手を取って動けるようになります。
 彼はまず戦闘ライフル(高速弾)でビアトリス(α)を銃撃し、 その後、自由貿易船「ジャックポット」の船倉へ逃げることにしましょう。
 中距離のライフル射撃、「ジャイロ」有り、援護物下、移動DM−1、命中DM+4ですから、 彼がビアトリス(α)を射撃するならば、命中率8+の「部分貫通」になるのです。
 その場合の無力化率は20.1%。
 無視できる確率ではありません。
 中距離射撃において、戦闘ライフルはとても強力な銃器だということですね。
 もしビアトリス(α)が無力化されなくても、 エゼカンブ(E)には逃げられてしまいます。

 そこで、エゼカンブ(E)の行動を、 今度はビアトリス(γ)が「妨害」しました。
 移動速度1でDM+1、成功率6+のところ、サイコロの目は「8」です。
 「妨害」に成功しました。
 下手に動くと自分が撃たれてしまうため、これまで大人しくしていましたが、すでに海賊側は3人が無力化されています。
 フランク(F)はまだ戦闘に参加できませんし、 戦闘可能な最後の1人であるエゼカンブ(E)は、たった今、動いてしまいました。
 ビアトリス(γ)の行動を「妨害」できる敵は、もう存在しないのです。

 彼女とエゼカンブ(E)との間は1マスですから、近距離です。
 移動せずとも、攻撃を仕掛けられます。
 移動速度1を宣言したため、命中DMが1つマイナスされてしまいますが、宣言してしまったのですから、仕方ありません。
 彼女は、右腕に装備した軽レーザー溶接機レーザー・カービン扱い)で エゼカンブ(E)を攻撃します。

 ロボットだという予備知識がない限り、制服やスカートの中をいくら探しても彼女の隠し武器には誰も気付きません。
 腕の中のレーザー銃は決して見つからないのです。
 擬生物ロボットに搭載する場合、軽レーザー溶接機1つで40,000crもしますから、導入には勇気が要ることでしょうが。

 さて、レーザー・カービンとして扱いますから、貫通力は12、 装甲値6の宇宙服を「完全貫通」できます。
 近距離のライフルで命中難易度は〈並〉
 命中DM+5ですが、双方が速度1で移動しているのでDM−2、命中率は4+。
 サイコロの目は「7」でした。
 基本ダメージ3の「完全貫通」ですから、ダメージ6ポイント。
 エゼカンブ(E)も、無力化されました。
 サイコロの目が「5」以下ならば、27.8%の確率で無力化を免れることもできたのですが、彼は運がありませんでした。
 反対に「8」以上の目が出れば、12ポイント以上のダメージを受けて即死です。
 それを考えると、運が良かったと考えるべきでしょうか。



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       図10 Fデッキの戦闘 第2戦闘ラウンド 最後の射撃

 さて、ビアトリス(α)の行動を再開しましたが、 狙っていた目標の海賊リーダー、エゼカンブ(E)がすでに無力化されてしまっています。
 そこで、目標をフランク(F)に変更しました。
 フランク(F)は逃走のため「妨害」を試みますが、 移動速度0のため、サイコロの目が「6」で失敗。

 ビアトリス(α)は、戦闘ライフル(高速弾)の フルオート射撃フランク(F)を射撃します。
 サイコロの目は「6、3、9」が出ました。
 ダメージは「6、1、6」で、合計13ポイント。
 フランク(F)も即死です。



 第2戦闘ラウンドが終了しました。
 戦闘可能な海賊は1人も残っていませんから、これで戦闘は終了です。

 レディバグ側のビアトリスは、1台も被害無し。
 海賊側は、フランク(F)グレイ(G)ハーヴィー(H)の3人が死亡、 エゼカンブ(E)ジョイズ(J)の2人が重傷です。

 高度差によって、海賊側によるSMG活用の術を封じ込めたこと、 ビアトリス(β)の「速射」によって3人を一気に無力化できたことが、 この圧倒的な勝利をもたらしたのでしょう。





最後の戦闘


2012.01.29加筆

 連絡船『レディバグ』内に押し入ってきた海賊達は、その全員が無力化されました。
 その気になれば、この状態で逃げ出すことも可能でしょう。

 しかし、海賊船『ジャックポット』の居残り海賊は健在です。
 艦載兵器も使用可能のままですから、逃げ出そうとしたら、背後から撃たれてしまいます。
 『レディバグ』の安全を確保するためには、 やはり『ジャックポット』まで乗り込んで、居残り海賊を制圧しなければならないようです。

 3台のビアトリスは装備を整え、海賊船へと乗り込みます。
                           (5)積極的加害の意思?



 『ジャックポット』のブリッジで、外部の監視を行なっていたタッカチャティは、 航法コンピューターの中で、おかしなプログラムが活動していることに気が付いた。
 ウイルスだろうか。

 簡単なチェックをして、タッカチャティはウイルスの感染源を見つけ出した。
 先程、連絡船『レディバグ』から転送されてきた貨物目録と乗組員名簿の中に潜んでいたのだ。 受信時のチェックでは見つからないように巧妙に隠され、航法コンピュータの中で解凍されてから活動するように仕組まれていたらしい。
 このままでは、航法コンピュータの機能が奪われてしまう。 外部の監視はおろか、最悪の場合は、航法機能や生命維持までも危うくなるだろう。

 タッカチャティはため息をつきながら、ウイルスに感染したコンピュータの一部機能を凍結し、ワクチン処理を開始した。 コンピュータの処理能力は落ちるが、止むを得ない。
 船長にもこのことを報告し、警告しておくべきだろう。
 この連絡船は、黙って略奪されるような、大人しい商船ではなさそうだ。

 タッカチャティは、ドリンカー船長の宇宙服を呼び出した。
 しかし30秒間待っても、返事が無い。

「船長?……」

 ドリンカー船長の宇宙服を呼び出したまま、今度は船倉でコンテナの移送作業をしている筈のエゼカンプへも呼びかける。
 こちらも返事が無かった。

「どうした。連絡が取れないのか?」

 居残りのならず者、シィファーウが尋ねてきた。
 彼はコンピュータのことが分からず、探知器も扱えないので先程まで雑誌を読みふけっていたのだが、タッカチャティの深刻な雰囲気に気付いたのだ。
 タッカチャティは正直に、ウイルスと通信途絶のことを伝える。

 一瞬だけ絶句した後、シィファーウは率直な感想を述べた。

「2人の通信機が同時に故障なんて偶然は有り得ないな。
 まさか、やられたのか? たった1人の女に?」

 タッカチャティとシィファーウは、通信スクリーン越しに見た少女の顔を思い出した。
 2人は揃って、首を横に振る。
 有り得ない。 たった1人の少女が、9人の海賊を一瞬で倒せる訳がなかった。
 しかしそこですぐさま、別の可能性を思いつく。

「あのタイプの連絡船は、専用室が4つ用意されている。
 その気になれば、8人までが生活可能だ……。
 もしかして、連絡船の中に帝国海兵隊が潜んでいたとか?」

 タッカチャティが呟くと、その後をシィファーウが続けた。

「それなら、有り得ないことじゃない。
 噂でしか聞いたことはないが『Qシップ』という軍艦があるそうだ。
 外見に騙されたな。」

 2人が脳裏で『レディバグ』を海賊退治専門の『Qシップ』だと断定した頃、 コンピュータが警報を発した。
 コンピュータに向き直ったタッカチャティは表示されたデータを読み取り、 慌ててアンチ・ハイジャック・プログラムを起動させる。

「どうした?」

「侵入者だっ! 船倉に誰かが居る。」

 シィファーウの問いに、タッカチャティがスクリーンの中の映像を指差した。
 保安装置のスクリーンには、薄暗い船倉の中に侵入して何らかの作業を行っている3人の人影が映し出されている。
 その内2人は宇宙服を着ているため顔も見えないが、残る1人は船長服姿のビアトリスだ。
 ドリンカー船長やエゼカンプの姿は見当たらないが、3人が武装していることから考えて、すでに拘束されていることが確実だった。

 現在の戦力比は3対2で劣勢。しかも、相手は海賊9人を撃破するような強者である。
 シィファーウはあっさりと、侵入者の撃退を諦めた。

「逃げよう。」

「それしかないな。」

 タッカチャティも頷いた。
 すでに捕まった船長やエゼカンプたちには悪いが、複数のアイリス・バルブで侵入者を食い止め、 その間に『ジャックポット』を離脱させるのだ。
 ミサイルで『レディバグ』を破壊すれば、それ以上の追撃は無い。

 2人は瞬時に同じ結論へ達したが、その目論見は新しい警報によって阻止されてしまった。
 タッカチャティは別の管制パネルに飛びつき、コンピュータの電子防壁を立ち上げる。

「今度は何だ?」

「ハッキングだ。かなり不味い。」

 先程、船長やエゼカンプを呼び出すために開いた宇宙服2着の通信回線を通じて、ハッキング目的のデータ通信が送られてきたのだ。
 タッカチャティは通信回線の切断を指示したが、すでに別の通信回線が解放されていた。
 大容量の新しい回線を使って、更に大量のデータが通信コンピュータに送り込まれてくる。

 一通りの対処を試みたが、ハッキングプログラムは、瞬く間に通信コンピュータを占拠。
 今度は航法コンピュータへのハッキングを開始する。
 ウイルス対策で処理能力が落ちている航法コンピュータでは、ハッキングを防ぎきれない。

 真っ先に、探知機や砲塔のシステムが強制的にダウンさせられた。
 次に、待機状態だった通常ドライブやジャンプドライブが停止する。
                               (6)賠償責任

 焦るタッカチャティの背中に、シィファーウが慰めの言葉を掛けた。

「もう駄目だ。諦めようぜ。
 あいつら、船長しか知らない筈の最優先コードを使ってやがる。
 アイリス・バルブを開けて、もう、そこまで来ちまった。」

 振り返る2人の視線の先で、ブリッジのアイリスバルブが、微かな作動音と共に開いた。
 その向こうには、にこやかな表情を保ったままの少女、ビアトリス・ポートマン船長が待ち構えている。
 その手の中には、ドリンカー船長から奪ったと思われるスナッブ・ピストルが1丁。

 彼女はこの上なく嬉しそうな表情で簡潔に告げた。

「『ジャックポット』は制圧されました。
 抵抗は無駄ですので、お止めください。
 貴方方の身柄は帝国海軍に引き渡されます。」



 戦闘の6時間後、『レディバグ』はパイリーマの100倍直径において、 帝国の哨戒艦『パラディン51』と接舷しました。
 ドリンカー船長達、生き残りの海賊捕虜6名と遺体5体、戦闘行為の記録を引き渡すためです。

 『パラディン51』の艦長は、救援に駆けつけることができなかったことを詫びますが、 『レディバグ』のポートマン船長は、海賊捕縛への協力は、帝国市民の義務だと応えます。

 『パラディン51』は捕虜と戦闘記録を受け取ると、 簡単な取り調べと現場検証を行うだけで『レディバグ』を解放。
 『レディバグ』は予定に半日遅れて、目的地のパイリーマへ到着しました。
                          (7)現場検証の所要時間





法的解釈(2012.01.22加筆)


2012.01.29加筆

 今回も法的正当性について論じるため、この章を加筆しました。




(5)積極的加害の意思?

 『レディバグ』船内に進入してきた海賊の無力化に成功した後も、 わざわざ海賊船『ジャックポット』へ攻め込んだ理由は、本文中で述べた通りです。
 海賊船のミサイル砲塔を無力化しない限り、『レディバグ』は逃げ出した後の安全を確保できません。

 考察41回の冒頭で説明した通り、海賊船『ジャックポット』は、 まずミサイルによる威嚇射撃を行い、その後、様々な要求を行ってきました。
 威嚇射撃で証明された通り『ジャックポット』は、 ミサイルで『レディバグ』を攻撃し、撃破する能力があります。
 海賊船『ジャックポット』が、これまでの海賊行為で殺人を犯していなくても、 実際に『レディバグ』を撃破する意図がなかったとしても、 『レディバグ』の行為は問題なく、正当防衛が認められるのです。
 今回の件で『レディバグ』のビアトリスは、海賊船『ジャックポット』まで攻め込みましたが、 これは『ジャックポット』の武装を無力化するために必要な最小限の暴力だと考えられます。
 『ジャックポット』にはミサイルが搭載されており、実際に威嚇射撃も行っているのですから、 居残りの海賊たちが「実際に撃つつもりはなかった。殺意はなかったのだ。」と証言したとしても、誰も相手にしないでしょう。



 蛇足になりますが、正当防衛には「誤想防衛」という概念があります。
 誤想防衛とは、急迫不正の侵害がないのに、これをあると誤信して防衛行為をした場合、 のことですが。

 例えば、一般市民Aが不審者Bを呼び止めたところ、その不審者Bが胸元に手を入れました。 市民Aは不審者Bにピストルで撃たれると判断して、不審者Bを殴り倒したのですが、 不審者Bはピストルを持っておらず、身分証を出そうとしているところでした。
 という状況を考えてみましょう。

 一般市民Aに実際の危険はありませんでしたから、本来ならば市民Aの行動は正当防衛になりません。
 この行動は暴行として扱われ、市民Aが罰せられてしまいます。

 しかし市民Aは「撃たれると判断して」防衛行動に出ていますから、この行動には誤想防衛が適用されます。
 市民Aの防衛行動(殴り倒したこと)が罰せられることはありません。

 実際に危害を加えられなければ正当防衛が認められないというのであれば、 そうした社会において、市民は自分自身が殺されるまで、防衛行動に出られません。
 某米国のトイガンが、どうして本物ではないと明確に識別できるデザインで製造されているのか。 そのあたりの事情を考えてみれば、問題は明らかでしょう。
 精巧なモデルガンを持った不審者が、そのモデルガンで市民を脅した場合、その不審者は市民から本物のピストルで撃ち殺されても文句を言えない (誤想であっても市民には正当防衛が認められる)ということなのです。

 もちろん「やり過ぎ」はいけません。 下手をすると過剰防衛で罰せられる可能性がありますので、ご注意を。




(6)賠償責任

 『レディバグ』の乗組員、本当の船長であるポートマン船長は、 海賊船『ジャックポット』にハッキングを仕掛け、部分的な破壊工作を行いました。
 この破壊工作によって生じる実際の損害や修理費は計算しておりませんが、 賠償責任についての疑問が提示されましたので、私なりの考えを述べておきます。

 疑問の主旨は、海賊船として利用された自由貿易船『ジャックポット』が、 まだローンの支払い中であること、にありました。
 ドリンカー氏はきちんとローン返済を続けておりましたが、疑問を提示された方が主張するには、その最終的な所有権は銀行にあるとのこと。
 ですから、『ジャックポット』の損傷した原因が、 『レディバグ』側の行動にあることは明らかである以上、 銀行から『レディバグ』船長に対して賠償要求がなされる可能性があるそうです。

 私の回答としては、そんな馬鹿なことは有り得ません、となります。
 正当防衛賠償責任が生じるとしたら、 その損害賠償を恐れるあまり、被害者は必要な抵抗も出来なくなります。 満足に自分の安全(権利)を守ることもできなくなってしまうでしょう。



 何か大きな誤解を受けているようですが『レディバグ』は、 『海賊船』でも『私掠船』でもありません。 平和的に航行している自由貿易船『ジャックポット』に、 『レディバグ』が襲いかかった訳ではないのです。
 現実は正反対であり、襲われたのは『レディバグ』の方でした。

 そもそも『ジャックポット』の船長が海賊行為を始めなければ、 『レディバグ』が反撃する必要は何処にもありません。 『ジャックポット』の不法行為が原因で生じた損害に対して、 被害者である『レディバグ』が責任を負う必要はないと考えます。
 銀行がどうしても賠償請求をしたいのであれば、『ジャックポット』のドリンカー船長に対して行うべきでしょう。 『レディバグ』のポートマン船長に対して行うことは、筋違いです。



 私が心配するのは銀行が海賊行為の共犯として訴えられないか、ということです。
 ドリンカー船長の海賊行為によって得られた利益の大半は、毎月のローン返済という形を取り、銀行の懐に入っております。 共犯の容疑を掛けるには十分ですね。
 ただ、こういうことで容疑を掛けると、辺境航路向けの商船ローンに出資してくれる銀行がますます減ってしまうことになるでしょう。 ですから慣例として、銀行は海賊行為に無関係である、という大人の対応がなされると思うのですが。
 実際はどうなのでしょうか?




(7)現場検証の所要時間

 本当の現場検証がこれだけの短時間で終わるかどうか分かりませんが、私の考えから、短時間で終わることにしました。

 検証に掛かる時間は、商船の経営に大きなマイナスになります。
 例えばA型自由貿易船の場合、1週間の足止めで4万〜5万クレジットの損失を被ります。 自由貿易船の収入がジャンプ1回(2週間)当たり12万クレジットというところですから、大損害です。

 ただでさえ苦しい自由貿易商船の経営をさらに悪化させることは、 辺境世界の安定を願う帝国にとっても好ましいことではありません。 この問題は、現場検証の手続きを簡略化させ、商船の拘束時間を短くすることで解決されるべきでしょう。
 どうせ、ジャンプ1の自由貿易船は、手続きに不備があっても遠くまで逃げられません。 1ヶ月で2パーセク、3ヶ月でも6パーセクの距離までしか移動できないのです。 交通の要所に網を張っておけば、すぐに発見できるでしょう。

 という訳で、商船の経営にマイナスを与えるほど長い時間の現場検証は行わない(行う必要がない)と判断しました。



 そんなことはない。現場検証には最低でも1週間、長い場合は1ヶ月を掛けて念入りにすべきだ、 そうでなければ、証拠不十分でしっかりした裁判を行えない、と考える方もいらっしゃるでしょう。
 そういうことであれば、たっぷりと時間を掛けた現場検証をなさって下さい。

 しかしトラベラー世界において、長期の拘束は商船の経営悪化を招きます。
 1週間ならば何とか許容できても、1ヶ月ならば確実にローン返済を滞らせて、倒産の運命が待っています。
 商船の経営者は、その未来予想を避けるため、海賊の被害届を出さないように心掛けるでしょう。
 21世紀テラの現状と同じですね。 調査や現場検証による遅滞を防ぐため、海賊被害に遭った商船の9割は被害届を出さないそうですから(苦笑)。

 被害届が出ませんから、貨物保険の保険金も下りませんし、帝国海軍による海賊対策も行われなくなるでしょう。
 結果的に、商船の経営は更に悪化し、海賊の活動は活発化します。
 商船の航行はますます不愉快なものとなっていくと思われます。
 そういった世界観のプレイを楽しまれるのであれば構いませんが。





速射の有効性


 ビアトリス(β)磁気ライフルの速射を行なわせ、 海賊3人をまとめて無力化することに成功しましたから、 ここで「速射の有効性」について、再評価してみようと思います。

 有効性の評価基準を何にするかはとても重要ですが、 ここでは、目標の無力化に成功したか、しないか、ということだけで判断することにしました。
 目標が無力化したのであれば、4ポイントちょうどのダメージで効率良く無力化されたのだとしても、 16ポイント以上のダメージを受けて即死したのだとしても、変わりはありません。
 ですから、複数の目標をどれだけ無力化できたか(できるか)という点を評価の基準とします。



 まずは、磁気ライフルの速射から。
 宇宙服(装甲値6)に対して「部分貫通」する、基本ダメージが4の銃器ということです。


        表11 磁気ライフルによる、速射の有効性評価

BW42_Fig11.gif - 13.0KB

 表の左端には、射手の命中DMを並べました。
 射手の技能レベル、敏捷力DM、移動DMなどの要素によって変わってきます。

 その右側「フルオート1目標」の欄は、通常のフルオート射撃で1つの目標に射撃を集中した場合の 命中率、ダメージ期待値、無力化率を示しています。
 近距離におけるライフル射撃、あるいは、中距離で固定物(ジャイロ)を用いた場合の 命中難易度〈並〉を、命中率の基準にしました。
 もしも命中難易度〈難〉を基準としたいのであれば、命中DMを4つ減らしてください。
 ほとんど効果は期待できないと思いますが。

 表の右半分は、フルオート射撃速射によって 異なる3つの目標へフルオート射撃を打ち込んだ場合、それぞれの命中率と無力化率を示しています。
 「速射」は難易度が1つ上昇しますから、自動的に命中率は4つ下がりました。
 当然、無力化率も下がる訳ですが、その隣の「無力化人数」を見ると、 少し考え方が変わるのではないでしょうか。

 命中DM+5のビアトリスが磁気ライフルで「速射」を行なった場合、 目標となった3人をまとめて無力化できる確率は、78.3%もあるのです。
 2人を無力化できる確率は20.0%。
 つまり、2人以上を無力化できる確率は98.3%になりました。
 1人だけを通常のフルオート射撃で狙った場合の無力化率は100%ですが、 「速射」を行なっても、まず確実に2人以上の無力化を期待できるのです。
 8割弱の確率で3人目も無力化できますから、「速射」はとても有効だ、と言えるでしょう。
 敵が分散してしまい、フルオート射撃や榴弾の「巻き添え命中」を 期待できない情況になっても、一度に複数の目標を無力化できるのです。
 唯一の問題は弾切れですが、これは仕方ありませんね。

 命中DM+4の優秀なキャラクターの場合、 目標の3人を倒せる確率は46.4%、2人を倒せる確率は40.6%になりました。
 3人と2人を倒せる確率は半々というところでしょう。
 それでも最低1人を倒せますから、「速射」はまだ有効だ、と言いたいところです。 運悪く敵の2人が生き残ってしまい、自分の銃は弾切れになる、というリスクもありますが。

 命中DM+1の標準的なキャラクターの場合、 3人を倒せる確率は0.2%、2人を倒せる確率は4.0%、1人を倒せる確率は28.3%、1人も倒せない確率が67.5%もあります。
 明らかに「速射」を試みない方が良いでしょう。
 ゆっくり1人ずつをフルオート射撃で狙っていけば、92.2%の確率で倒せるのですから。

 「速射」はサイコロを振る回数が増えますので、命中DMの差が顕著に現われるようです。



 次は、戦闘ライフル(高速弾)を評価しましょう。
 もちろん、戦闘ライフルが「速射」を行なえないことは分かっていますが、 宇宙服を「部分貫通」して、基本ダメージ3を与える銃器が他にありません。
 また、フルオート目標数が「+2」という点も重要なのです。


        表12 戦闘ライフルによる、速射の有効性評価

BW42_Fig12.gif - 12.9KB

 命中DM+5のビアトリスが戦闘ライフルで「速射」を行なった場合、 目標となった3人をまとめて無力化できる確率は、30.3%に下がりました。
 2人を無力化できる確率は44.4%。
 合わせて2人以上を無力化できる確率は、74.7%(4分の3)しかありません。
 まだ「速射」は有効だと言えますが、 磁気ライフルに比べずいぶん有効性が下がってしまったようです。

 命中DM+4の優秀なキャラクターの場合、 3人を倒せる確率はわずか7.7%、2人を倒せる確率は31.1%、1人を倒せる確率が42.2%です。
 運が悪いと19.0%の確率で1人も倒せません。
 ちょっとリスクが高いような気がします。

 命中DM+1の標準的なキャラクターの場合、 1人を倒せる確率が3.2%だけで、1人も倒せない確率は96.7%になりました。
 絶対に「速射」をしてはいけません。



 3番目は、突撃ライフルを評価します。
 宇宙服に対して「無貫通」で、フルオート目標数が「+2」という銃器です。
 「無貫通」ですから、基本ダメージの大きさは関係ありません。


        表13 突撃ライフルによる、速射の有効性評価

BW42_Fig13.gif - 12.7KB

 「無貫通」の銃器を用いた場合、「速射」の有効性はほとんどなくなりました。

 命中DM+5のビアトリスが突撃ライフルで「速射」を行なっても、 3人をまとめて無力化できる確率は0.2%、2人を無力化できる確率が3.5%、1人を無力化できる確率は26.9%。
 そして、1人も無力化できない確率が69.4%になっています。
 通常のフルオート射撃を行なえば、少なくとも1人を94.9%で無力化できる筈なのですが、 「速射」はあまりにも使えません。

 命中DM+4の優秀なキャラクターの場合は、1人以上の無力化率が8.8%。
 命中DM+1の標準的なキャラクターの場合は、1人も倒せない確率が100%です。
 話になりません。

 「無貫通」の銃器で「速射」をすることは、ほとんど何のメリットも無いのです。
 命中DMが+8以上ならば、それなりに有効ですが、そんなゴルゴ級のキャラクターはどれだけ存在するのでしょうか。



 さて、「部分貫通」できる磁気ライフル戦闘ライフルは、 腕の良い射手が扱えば、「速射」にも有効性がありました。
 そして「無貫通」の突撃ライフルは、 腕の良い射手が扱っても、「速射」の有効性がほとんどありません。
 では、「完全貫通」できる銃器で「速射」を行ったらどうなるのでしょう。
 意外に、腕の悪い射手でも有効性を発揮できるのかも知れません。

 という訳で最後に、宇宙服に対して「完全貫通」で、 基本ダメージは3、フルオート目標数が「+2」という銃器で評価を行ないます。
 手頃な銃器が見つかりませんから、仮想の銃器を想像しました。


        表14 「完全貫通」する銃器による、速射の有効性評価

BW42_Fig14.gif - 13.2KB

 「完全貫通」の銃器を用いると、「速射」の有効性はずっと大きくなりました。
 「部分貫通」する戦闘ライフルより効果的なのは当然ですが、 磁気ライフル並みの有効性を示すようになったのです。

 残念ながら命中DM+1の標準的なキャラクターでは、 「速射」の有効性を発揮できません。
 しかし、命中DM+4の優秀なキャラクターの場合は、2人から3人の目標を無力化できるようになりました。
 ここまで来ると、1人に1発だけ撃ち込んで、どれだけの多人数を無力化できるか、期待値の計算も行ないたくなりますね。



 という訳で、フルオート射撃速射で狙える最大人数、 9人を目標とした場合の無力化期待値も評価してみました。
 1人に1発を撃ち込むということです。


        表15 「完全貫通」する銃器による、速射の有効性評価

BW42_Fig15.gif - 13.7KB

 上の表15は、「完全貫通」の銃器で、多人数を「速射」する場合の有効性です。
 文字通り、掃射することになるのでしょうね。
 ただし目標が防具を着用した兵士などである場合、「完全貫通」は難しくなります。
 恐らく、この表のように「1人1発の完全貫通」を行なう情況は、 パーティー会場でテロリストが銃を乱射するとか、カジノでギャングが暴れる、などになるでしょう。

 私はそういうプレイをしたことがありませんが、そんな情況を想定してみましょう。
 パーティー会場で、テロリストが突撃ライフルを 乱射(フルオート射撃+速射)したと過程します。 距離は近距離で、命中難易度は〈並〉です。
 目標が宇宙服などを身に付けていれば「無貫通」ですが、 パーティー会場で防具を身に付けている客はほとんどいません。
 多くの客にとって、その銃撃は「完全貫通」になる筈です。

 テロリストが、命中DM+1の標準的なキャラクターであるならば、平均3.75人を無力化することが出来ました。
 しかし、命中DM+4の優秀なキャラクターであるならば、平均7.5人を無力化することが出来るでしょう。
 命中DM+5のビアトリスならば、平均8.25人です。

 情況に拠りますが、フルオート射撃+速射の攻撃は、大きな殺傷力を発揮することになりそうです。





結論


 中距離における銃撃戦を、具体的にシミュレートしてみました。



 人数が劣勢の場合、基本的には「不意討ち」が出来なければ勝利を望めません。
 相手の装備がよほど劣っているのならばともかく、正面からの戦闘では確実に負けてしまうのです。
 こちらの装備がどんなに強力であっても、「妨害」を受け、敵に行動されてしまえば終わりだと分かりました。



 数の劣勢を補う手段として、「速射」の有効性を評価しました。
 射撃線や致傷範囲などの制限が厳しいフルオート射撃榴弾に対し、 「速射」は目標の選択制限が緩くなっています。
 フルオート射撃榴弾が使えない情況であっても、 「速射」によって数の劣勢を覆すことが可能になるでしょう。
 しかし「速射」は、「無貫通」の情況ではほとんど役に立ちません。
 また、「部分貫通」や「完全貫通」でも、 命中DMが+4以上の優秀なキャラクターでなければ、あまり有効に使えないようです。



2010.06.14 初投稿。
2012.01.29 「最後の戦闘」と「法的解釈」を追加。
2014.04.06 加筆修正。