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48th stage ( Artillery 4)
Direct Fire by HE

最強兵器 決定戦
第48回(砲兵4)
直接射撃−榴弾
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MEGA TRAVELLER
 


 

間接射撃駄目なら
  直接射撃をすれば良いじゃない



 砲兵による間接射撃は、その長射程故に、一方的に相手を攻撃できる大きなメリットを持っています。
 前線から離れた場所に集結中の増援部隊、司令部、補給物資のデポ。 そうした部隊が突如、榴弾による間接射撃を受けたらどうなるでしょうか。
 不意討ちされた増援部隊は、あっという間に壊滅。司令部を失った部隊は各個撃破の的ですし、 補給物資を絶たれた部隊は戦闘の継続が困難になります。

 しかしながら、強固な陣地に篭っている部隊、最前線の歩兵を間接射撃で無力化することは 不可能ではないにしろ、極めて不経済な行為であると判明しました。
 消費される砲弾の量が尋常ではないのです。
 それだけの砲弾消費が許されるならば、同じ砲弾で後方の敵砲兵や増援部隊を叩いた方がずっと経済的でしょう。



 しかし不経済であろうと非効率であろうと、目の前の陣地に篭った敵部隊(抵抗拠点)は何としても無力化しなければなりません。 敵の抵抗拠点を無力化しなければ、味方の歩兵部隊は損害を負うばかりであり、何時まで経っても前進できないのです。
 そこで再び「直接照準射撃」が脚光を浴びるようになりました。
 なんと言っても、「直接照準射撃」は命中率が高いのです。 1目標の撃破に数百から数千発の砲弾を必要とする「間接射撃」に比べ、 「直接照準射撃」は数分の1、数十分の1の砲弾消費で済むでしょう。
 この消費量ならば補給を気にせず、戦闘を継続することができるかも知れません。

 今回は、榴弾(HE)を用いた「直接照準射撃」について、考察しました。





メガトラの直接照準射撃−榴弾


 再び、テックレベル5〜8の「火器管制型」命中難易度をプレイヤーズ・マニュアルp.73から抜き出し、 ハンドガンやライフルの命中難易度と比較してみました。
 考察の45回「砲兵1、直接照準射撃−榴散弾」に掲載した表3に、 屋外戦闘マップ(150mマス)のスケールを書き加えたものです。


        表1 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方)

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 やはり何度見直してみても、火器管制型の命中率が低い(命中難易度が高い)ことに変わりはありません。 中距離から超遠方まで全ての距離帯で、歩兵の持つライフル(照準器+ジャイロ)の命中率と同じなのです。
 実際のところ、歩兵が扱うライフルの大半は最大射程が超遠距離ですから、 ライフルが届かない遠方以遠の距離から砲撃していれば傷付かずにすむのですが、 どんな戦場でもアウトレンジ攻撃ができるとは限りません。
 射線の関係で、ライフルの射程内まで近付かなければならないことも多いでしょう。
 このままですと、榴弾を発射する砲兵も歩兵のライフル(数の暴力)に制圧されてしまいます。 榴散弾を用いる場合と同じで、砲兵が活躍することはできないのでしょうか。



 しかし、ちょっと考えてみましょう。
 掲示板で少し議論しましたが(2010年の5月頃、過去ログ33番です)、 メガトラの個人戦闘ルールにおいて「榴弾は必ず、狙ったマスで爆発する」ようです。
 以下の文章を、私の投稿から抜粋しました([1094]弾丸射出火器の榴弾による「巻き添え命中」 2010/05/24)。

> そもそも今までの、私の思い込みですと、

> まず、主目標への命中を判定。
> 当たれば、主目標へのダメージを適用。
> 外れたら、何処か遠くへ銃弾(榴弾)が飛び去ってしまう。
> その後、主目標周辺に「巻き添え命中」を判定。

> という手順だったのです。
> 榴弾が「着発信管」だと決め込んでいましたので。

> ところが、メガトラの個人戦闘ルールを読み進めると、

> まず、主目標への命中を判定。
> 当たれば、主目標へのダメージを適用。
> 当たっても外れても、主目標周辺に「巻き添え命中」を判定。

> という手順になっているようですね。びっくりしました。

> つまり、主目標の居るマスで榴弾が爆発することは確定事項。
> 恐らく、致命的失敗による事故が起こらなければ、確実なのです。
> そして主目標を含めて、周辺の目標すべてに「巻き添え命中」の判定を行なう、
> ということなのではないでしょうか?
> だから、射撃の「命中判定」と、
> 爆発による「巻き添え命中判定」の基準値が同じなのでは?

> よって、弾丸射出火器から発射される榴弾は、
> 「時限信管」か「近接信管」によって、爆発タイミングを調整されている、
> ということになりそうなのです。


 以上、抜粋終わり。



 つまり、弾丸射出火器から発射された榴弾は、サイコロの目に関わらず、狙った目標のマスで必ず爆発するのです。
 外れることは、(多分)致命的失敗の目が出ない限り有り得ません。
 狙った目標そのものにはダメージを与えられるか分かりませんが、目標の周囲には巻き添え命中を与えることができるでしょう。
 ハイテクの超小型時限信管や近接信管を用いているのか、流れ弾処理のルールを省く(簡易化の)ためなのか、 その背景は分かりませんが、そうしたルールになっていると分かりました。

 個人用の弾丸射出火器が「榴弾は必ず、狙ったマスで爆発する」のですから、 操作班式の火器から発射される榴弾も「直接照準射撃」を行なう場合は、同じように処理するべきだと思います。

 擲弾筒迫撃砲は、間接射撃が専門なので除外。
 無反動ライフル無反動砲)は 「ライフル」の命中難易度を用いた「直接照準射撃」なので適用。 最大射程が超遠距離(口径10cmだけが遠方)に限られていますが、それなりに使えるでしょう。
 低初速砲高初速砲オート・キャノン質量投射砲マス・ドライバー)から発射される榴弾も、当然適用。
 車載/艦載式のレーザー砲プラズマ砲/フュージョン砲については、ちょっと悩みます。 まぁ、ルール通り「狙った目標のマスで爆発している」と解釈しておくべきでしょう。
 高速で移動する目標(車輌)や空中目標(航空機)などを攻撃した時に、色々と問題が生じそうな気もしますが。 そのあたりの問題は「対戦車戦闘」や「対空戦闘」を考察する時に考える予定。



 という訳で、榴弾を用いた「直接照準射撃」を行なった場合、 「榴弾は必ず、狙ったマスで爆発する」ことになりました(そう決めました)。
 榴弾射撃が「外れる」ことはありません。
 「間接射撃」で、狙ったマスへの命中判定を何度も行ない、 数発から十数発の砲弾を撃ち込まなければならなかったことと比べると、なんと幸せなことでしょう。

 歩兵の持つライフルは何発、何十発と撃ち込むことで命中弾を得ることができます。 そして僅かなダメージを累積させることで、前線に飛び出してきた敵砲兵を撃破してきました。

 対する砲兵も同様です。 考察の45回「砲兵1、直接照準射撃−榴散弾」で示した通り、 榴散弾(フレチェット弾)は致傷範囲こそ広いものの、1回の射撃で与えられるダメージは僅かなものでした。
 僅かなダメージを累積させなければ目標を撃破できないことは敵歩兵と同じであり、同条件であれば手数の多い歩兵側が有利だった訳です。

 しかし榴弾を用いた「直接照準射撃」は、 撃てば確実に命中し、周囲に巻き添え命中を与えることが分かりました。
 このルールを利用すれば砲兵は危険な最前線でも活躍できるのです。



 遠方/超遠方における間接射撃の必要な射撃回数と、直接照準射撃による射撃回数とを、同じ8cm口径の榴弾で比較してみました。
 口径8cmの低初速砲は10km、高初速砲は16kmの最大射程を持ちますので、 視線さえ通れば射撃は可能な筈です。


        表2 特定の命中数を得るために必要な射撃回数
            間接射撃と直接照準射撃との比較

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 考察47回「砲兵3、間接射撃−超遠方」の表9を再掲載しました。
 〈照準〉技能レベルが+6の欄を、「直接照準射撃」の必要な射撃回数に置き換えてあります。

 ご覧の通り、同じ「目標の撃破率」で比べると、必要な射撃回数=砲弾の消費量が激減していました。
 簡単に15mマスのスケール(中距離〜遠方、5km以内での射撃)で考えてみましょう。

 目標が無防備「巻き添え命中」の難易度が〈易:3+〉の場合は、 たった1発の榴弾で壊滅します。 直接照準射撃の命中判定が成功でも失敗でも構わないのですから、その状況や射撃側のDMは影響しません (サイコロの目が2で「致命的失敗」になった場合は流石に分かりませんが)。
 間接射撃の場合は12発1.7発が必要でした。

 目標が援護物を利用しており、「巻き添え命中」の難易度が〈並:7+〉の場合、 目標は4発の榴弾で壊滅します(97.0%が死傷します)。
 1発の榴弾で部隊の半数(58.3%)が死傷しますから、それだけでも十分ですが。
 同様の戦果を得るために、間接射撃は48発6.97発が必要です。

 目標が遮蔽物に隠れている状況、「巻き添え命中」の難易度が〈難:11+〉の場合は少し大変で、 目標の半数(58.1%)を死傷させるため、10発の榴弾が必要になりました。
 前述の数字と比べて多くなりましたが、命中精度の低い間接射撃と比べれば、まだ少ない数字ですね。
 そして、目標を完全に無力化する(96.9%を死傷させる)ためには、40発の榴弾が必要でした。
 同じく間接射撃の場合には120発17発です。



 この通り、従来の間接射撃を「直接照準射撃」に切り替えることで、 砲弾補給の負担を大きく抑えることが可能なのです。
 特に、砲兵を誘導する〈照準〉技能レベルが低い場合、その効果は顕著でした。

 要するに、間接射撃に不可欠な技能である〈照準〉技能が低い軍隊、及び、砲弾補給能力の低い軍隊は、 間接射撃への依存度を下げ、多くの砲兵を「直接照準射撃」に振り替えなければならないのです。

 第一次世界大戦当時の英仏は、砲弾補給能力の限界から、戦車(Tank)を投入しました。 英国の投入した戦車は、砲弾を使わずに鉄条網を撤去して壕を埋めるという土木作業もこなしていましたので、 補給能力の限界は大きな問題だったことが窺えます。

 そして、第二次世界大戦の独ソも砲弾節約のため、大量の戦車を前線へ投入しました。
 独国の生産力(経済力)は英仏やソ連と比べてはるかに劣っていましたので、その補給能力は大規模な砲兵隊(間接射撃)を維持できません。 必要な火力支援を得るためには、戦車を多用するしかなかったのです。
 反対にソ連軍は生産力こそ十分にあったものの、そのドクトリンは砲兵の「直接照準射撃」も重視していました。
 敵軍を圧倒的多数の野戦砲で撃滅する(射撃する砲数が多い)ことが前提でしたから、 砲弾の消費量を抑えるためには、「直接照準射撃」の併用が不可欠だったのです。
 ソ連の行っていた間接射撃の威力と練度は有名ですが、それと同程度に「直接照準射撃」も多用していました。



 反対に直接照準射撃のデメリットは、 射撃するユニットが目標を視認しなければ撃てないこと、そして、相手からの反撃を受けること、です。

 今度は、そのメリットとデメリットを考察してみましょう。





直接照準射撃の命中率と致傷力


 直接照準射撃による榴弾射撃は、 その射撃が「命中判定」に失敗しても、つまり外れたとしても、 必ず、狙ったマスで爆発してくれます。
 すでに表2で示した通り、これは非常に有難いことでして、命中が不確実な間接射撃と比べて、 砲弾の消費量を「12分の1(照準−0)」から「3分の1(照準−2)」、「5分の3(照準−4)」に抑えてくれることは間違いありません。

 しかし、この程度の節約ではまだ足りません。砲弾数をもっと劇的に節約できる方法はないものでしょうか。



 などと考えていたところ、遅まきながら「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」とか 「トーチカの銃眼を狙って撃つ」といった戦術に気付きました。
 本当に今更ですが、メガトラの個人戦闘ルールならば、こうした戦術も再現できるでしょう。

 しかし榴弾の直接照準射撃が外れても、 必ず、狙ったマスで爆発してくれるということは、
 射撃の「命中判定」に成功した場合は、 上記のような行為に成功した、ということになるのではないでしょうか?



 「火器管制型」の「直接照準射撃」は当たらない(命中しない)。
 だからこそ間接射撃に傾倒して、それを考察してきた私には、命中が何を意味するのか簡単に想像できません。
 こういう場合は、原典(ルールブック)の記述から考えてみましょう。

 プレイヤーズ・マニュアル p.70〜71 直接射撃:

> 下記のそれぞれの場合には難易度が1レベルずつ上がります。

> ・援護物に隠れており、一部が見えている目標。
> ・小型目標(バスケットボールより小さなもの)。
>  動物なら重量10キログラム以下、ロボットなら機体容量10リットル以下。
> ・速射の場合(弾倉を1戦闘ラウンドで空にする射撃)。

> 以下の場合には難易度が1レベル下がります。
> ・大型目標(自動車より大きいもの)。
>  動物なら重量500キログラム以上、ロボットなら機体容量500リットル以上。


 以上で抜粋は終わりですが、 「バスケットボールより小さなもの」という記述は「バスケットボール以下の大きさ:basketball size or less」の誤訳で、 「自動車より大きいもの」も「自動車以上の大きさ:groundcar-size or larger」の誤訳でした。
 正しい訳語は「バスケットボール以下の大きさ」と「自動車以上の大きさ」です。 御注意下さい。



 上記の記述から判断すると、直接射撃の命中判定(行為判定の難易度)は、

 バスケットボールより大きくて、自動車より小さい目標を狙った場合の難易度

 ということになりました。

 「命中判定」に成功した場合、榴弾は、 それだけのサイズを持った(恐らくデザイナーの想定は人間サイズの)目標を直撃する訳です。
 ですから「トーチカの銃眼を狙って撃つ」場合、 銃眼の大きさがバスケットボール以下の大きさであれば、難易度が1レベル上昇。
 人間が通れる窓や通路越しに打ち込むのであれば、難易度はそのまま。
 「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」場合、 その塹壕が自動車サイズのものとして狙えるのであれば、難易度が1レベル下がる。
 という解釈で良いでしょう。

 トーチカや塹壕の中に榴弾が直接撃ち込まれたのであれば、トーチカの外壁や塹壕の土壁を遮蔽物として頼っていた歩兵は、それを使えません。
 榴弾の爆発と歩兵自身の間を遮るものは何もないのですから、無防備になります。 閉鎖された空間で爆発が発生する以上、より大きな殺傷力が生じる筈ですが、そのあたりは難しい問題なので触れません。
 私のハウス・ルールである「巻き添え命中」を用いれば、 難易度〈易:3+〉で命中判定を行うことになるでしょう。
 榴弾の貫通力が「無貫通」になるほど貧弱であるか、 よほど装甲値の高い個人用防具を身に付けていない限り、トーチカや塹壕内の兵士は1発で全滅します。
 目標が大きい場合に命中難易度が1レベル下がるルールは、何とも都合が良いですね。
 直接照準射撃による榴弾射撃に、上記のような使い方が可能だとすれば、 直接照準射撃は非常に使い勝手の良い攻撃方法となります。



 直接照準射撃の命中難易度を、もう一度、評価してみましょう。

 テックレベル5〜6の火器管制型は、「中距離」での命中難易度が〈並:7+〉、 「遠距離〜超遠距離」での難易度が〈難:11+〉、 「遠方」での難易度が〈至難:15+〉となっていました。

 目標が大きい場合、この命中難易度は「中距離」で〈易:3+〉、 「遠距離〜超遠距離」で〈並:7+〉、 「遠方」で〈難:11+〉まで下がります。
 以下の表3に、目標が大きい場合の命中難易度をまとめました。


    表3 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方:目標が大きい場合)

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 敵の防衛拠点(トーチカや塹壕、砲兵陣地)や野砲、車輌等の全体を目標とした場合の命中難易度です。 直接照準射撃を行っている野砲や戦車が、敵の反撃目標となる場合も有り得るでしょう。
 ご覧の通り、目標が大きい場合の難易度修正を加えるならば、TL5〜6のローテク火器管制も、高い命中率を期待できることが判明しました。

 砲弾の節約を念頭に考えるのであれば、難易度が〈並:7+〉になる距離まで近づくべきでしょう。
 その距離を具体的に述べると、TL5〜6においては超遠距離(250〜500m)、TL7〜8においては遠方(500m〜5km)になりますが、 射撃側のDM次第では、ほぼ確実な命中弾を得られる筈です。

 また、直接照準射撃のメリットは、敵の行動に対応できる(敵の行動を妨害できる)ことです。
 「間接射撃」は、射撃から着弾までのタイムラグが最低でも1戦闘ラウンド発生してしまいました (超遠距離では2ターン、遠方では3ターンです)。それでは敵の行動(移動や突撃)に対応できません。
 そのあたりの駆け引きも「間接射撃」の醍醐味なのですが。

 蛇足かも知れませんが、「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」射撃が実践できるのは、 塹壕の側面(塹壕の正面から60度以上回り込んだ方向)からの射撃や、高所(航空機)からの射撃に限られます。 具体的な条件は、レフリーとプレイヤーの間で話し合って下さい。



 次は、バスケットボールより大きくて、自動車より小さい目標を狙った場合の難易度です。
 これを「標準サイズの目標」と呼んでおきましょう。
 トーチカや退避壕を含む建物の出入り口、大きな窓、牽引式の小さな野砲(対戦車砲)、兵士個人を狙った場合は、この難易度になると思われます。


    表4 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方:標準サイズの目標)

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 前述の通り、標準サイズの目標を狙った場合の命中難易度。
 命中難易度がひとつ下がった(見方を変えれば元に戻った)だけなのですが、物凄く悪くなったような気がします。

 難易度が〈並:7+〉になる距離は、TL5〜6で中距離(5〜50m)、TL7で遠距離(50〜250m)、TL8で超遠距離(250m〜500m)といった具合。
 中距離や遠距離では敵歩兵の反撃が激しくなりますので、不用心にそこまで近付くことはできません。
 TL7以下の直接照準射撃に関して、 トーチカや退避壕を含む建物の出入り口、大きな窓、を狙った直接の命中弾は、あまり期待できないようです。
 もっとも「榴弾は必ず、狙ったマスで爆発」しますから、 牽引式の小さな野砲(対戦車砲)や兵士個人を狙った場合、気に病む必要はありませんが。



 最後は、バスケットボール以下の小さな目標を狙った場合です。
 トーチカの銃眼、塹壕の端から突き出している銃身、兵士の頭部を狙って撃つような場合は、この難易度になるでしょう。


    表5 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方:目標が小さい場合)

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 かなり難しい難易度となりました。
 ローテクの火器管制でバスケットボール以下の小さな目標に命中させるためには、 かなりのプラスDMが必要となるでしょう。



 上記3通りの条件で、直接照準射撃の命中難易度を求めてみました。

 前述の通り、メガトラベラーの個人戦闘ルールで榴弾を用いた「直接照準射撃」を行なった場合、 「榴弾は必ず、狙ったマスで爆発」します。
 ですから「命中判定の成功」に拘る必要性は乏しいのですが、「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」とか、 「トーチカの銃眼を狙って撃つ」場合を考慮して、命中難易度を考察した訳です。

 その結果、火器管制型の直接照準射撃で「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」ことは容易。 塹壕内に籠った歩兵を殲滅するには榴弾の直接照準射撃が最適のようです。

 反対に「トーチカの銃眼を狙って撃つ」ことは困難であると分かりました。 命中難易度が〈難:11+〉になる距離まで近づいて慎重に狙い撃てば可能かも知れませんが、容易なことではないようです。
 トーチカに隠れ潜んだ敵兵は、榴弾の直接照準射撃にとっても天敵でした。
 敵兵に反撃する力がなくて一方的に撃てる状況ならばともかく、敵兵に対戦車攻撃力がある場合は大変危険です。

 実際の過去の事例によれば、こうした堅固なトーチカの制圧は重砲による間接射撃か航空機による精密爆撃の仕事であるとのこと。
 重砲も航空機も利用できない。
 そんな極端な事情が無い限り、戦車がトーチカを攻めることは有り得ないのです。



 榴弾を用いた「直接照準射撃」に関する命中難易度は明らかになったので、 今度は必要な致傷力(貫通力とダメージ)について考えてみました。

 考察の46回「砲兵2、間接射撃−遠方」で掲載した 表1、榴弾の貫通力とダメージ、致傷範囲の比較 を見て、再考してみます。
 敵兵を一撃で吹き飛ばす(無力化する)ためには、どの程度の致傷力が必要なのでしょうか。


        表6 榴弾の貫通力とダメージ、致傷範囲の比較

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 榴弾の貫通力は、テックレベルが5を超える2毎に+1の修正を受けます。
 ですから、テックレベル7〜8は+1、9〜10は+2、11〜12は+3、13〜14は+4、15〜16は+5ということです。

 また、榴弾の致傷範囲は、テックレベルが5を超える3毎に+10の修正ですので、 テックレベル8〜10は+10、11〜13は+20、14〜16は+30です。
 口径2cmと4cmの榴弾は致傷範囲を持っていませんが、 この場合はプレイヤーズ・マニュアルp.74の記述より、命中したマス内(15メートル四方の範囲)だけに被害を与えられると考えます。



 どの口径の榴弾であれ、命中したマス内(15メートル四方の範囲)の目標すべてに被害を与えられることは確実なようですので、 今度は貫通力とダメージに注目してみましょう。
 目標としては、通常の歩兵を想定しています。
 狙ったマス以外にも榴弾の致傷範囲が及んでいる筈ですが、それはあくまで副次的な目標なので今回は無視しました。

 「CT版、傭兵部隊」の記述によれば、歩兵が身に付けている防具はテックレベル毎に決まっているようでした。
 具体的には、テックレベル5〜7の世界では防具なし(装甲値0)、 テックレベル8〜9の世界ではフラック・ジャケット(装甲値3)、 テックレベル10〜12の世界では極地対応戦闘スーツ(装甲値6)、 テックレベル13の世界では戦闘アーマー(装甲値10)、 テックレベル14〜15の世界では戦闘アーマー(装甲値18)という具合です。



 目標(敵歩兵)の装甲値と、表6の致傷力(貫通力とダメージ)を比較した結果、 榴弾を用いた「直接照準射撃」に必要な砲の口径は、以下のようになりました。


     表7 榴弾を用いた直接照準射撃(支援射撃)に必要な砲の口径

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 表の左端から、その世界のテックレベル、歩兵が身に付けている防具の名前と装甲値、 榴弾を用いた直接照準射撃(支援射撃)に必要な砲の口径と榴弾の貫通力を並べました。



 テックレベル5〜7の世界において、歩兵は基本的に防具なし(装甲値0)で戦闘に参加します。
 ヘルメットぐらいは被っている筈ですが、メガトラのルール上、その程度では防御効果(装甲値)を持たないと定義されている訳です。
 ですから、1以上の貫通力を備えた兵器ならば、そのダメージ判定は「完全貫通」の状態になり、 次の問題は一撃(1回のダメージ判定)でどれだけのダメージを与えられるかということでしょう。

 色々と考えた結果、敵歩兵を無力化するために最低限必要なダメージ量は4ポイントだと想定しました。
 3ポイントのダメージでは、生命力(前半UPPの合計値)が23以下の敵歩兵しか無力化できません。 生命力が24以上、3つの前半UPPの平均値が8以上の敵歩兵は気絶してくれないのです。
 それに対して4ポイントのダメージならば、生命力が32以下の敵歩兵を無力化することができます。 生命力33以上の敵歩兵は前半UPPの平均値が11以上ということですから、そう滅多に居るものではないでしょう。
 ですから、敵歩兵を無力化するために最低限必要なダメージ量は4ポイントなのです。

 「完全貫通」ならば武器のダメージをそのまま与えることができますが、 最低限成功、命中判定のサイコロの目(修正後)が、成功に必要な基準値と等しい場合は、 通常与えられるダメージの半分(端数切捨て)しか与えられません。
 その可能性を考慮すると、榴弾を用いた直接照準射撃に必要な砲のダメージは8ポイントということになります。
 榴弾の与えるダメージが8ポイント以上になっている方の口径は4cm以上、

 テックレベル5〜7の世界において、榴弾を用いた直接照準射撃(支援射撃)に必要な砲の口径は4cmです。
 2cmの砲でも高確率で無力化に成功しますが、最低限成功になった場合、確実な無力化は望めません。



 テックレベル8〜9の世界において、歩兵はフラック・ジャケット(装甲値3)を着用しています。
 「完全貫通」に必要な貫通力は2倍の6以上。 テックレベル7〜8の榴弾貫通力は+1されますので、口径4cmの榴弾でも貫通力は6。十分な数値です。
 与えるダメージについては前述の通りなので、口径4cmならばダメージも十分。

 テックレベル8〜9の世界においても、必要な砲の口径は4cmでした。



 テックレベル10〜12の世界において、歩兵は極地対応戦闘スーツ(装甲値6)を着用しています。
 「完全貫通」に必要な貫通力は2倍の12以上。 テックレベル10の榴弾貫通力は+2されていますが、口径6cm以下の榴弾では貫通力が11。 「完全貫通」には口径8cm以上が必要となりました。

 テックレベル10〜12の世界においては、歩兵の装甲化が急激に進んだため、 榴弾を用いた直接照準射撃(支援射撃)に必要な砲の口径は8cmです。



 テックレベル13の世界において、歩兵は戦闘アーマー(装甲値10)を着用しています。
 「完全貫通」に必要な貫通力は2倍の20以上。 テックレベル13の榴弾貫通力は+4されていますが、貫通力20を得るには口径10cmが必要でした。

 テックレベル13の世界において、必要な砲の口径は10cmです。



 テックレベル14〜15の世界において、歩兵は戦闘アーマー(装甲値18)を着用しています。 場合によってはバトルドレス(装甲値18)を着ている可能性もありますが、装甲値は同じなので問題ありません。
 「完全貫通」に必要な貫通力は2倍の36以上……と言いたいところですが、貫通力だけに注目していると 口径30cm以上の榴弾が必要になってしまうでしょう(テックレベル14の榴弾貫通力は+4ですから口径30cmで辛うじて貫通力36を得られるのです)。
 ここではダメージにも着目してください。口径12cm以上の榴弾はダメージが16ポイントです。 「部分貫通(ダメージ半減)」の最低限成功(ダメージ半減)でも、 4ポイントのダメージを与えることが出来るようになりました。
 つまり「完全貫通」は必要ありません。 「部分貫通」しかできない貫通力18でも十分なのです。
 貫通力が18になっている榴弾の口径は8cm以上ですから、ダメージとの兼ね合いで口径12cm以上ならば確実な無力化が可能でしょう。

 テックレベル14〜15の世界において、必要な砲の口径は12cmです。
 目標がバトルドレスを着ている場合は、少し状況が変わってくるかも知れませんが。



 対歩兵戦闘を念頭において、必要な榴弾の致傷力について考察しました。
 歩兵の装甲値から逆算して、 テックレベル5〜9の世界では口径4cmの榴弾、 テックレベル10〜12の世界では口径8cmの榴弾、 テックレベル13の世界では口径10cmの榴弾、 テックレベル14〜15の世界では口径12cmの榴弾が必要です。



 次は、「直接照準射撃」を行う砲兵ユニットの機動性について考察してみましょう。





直接照準射撃の機動性
移動DMの求め方


 「直接照準射撃」の弱点は、目標を視認しなければならない、ことです。
 ですから直接照準射撃を行う砲兵ユニットは、 目標を視認できる場所まで移動しなければなりません。

 例えば、歩兵部隊を前進させたら敵の抵抗拠点に遭遇した。 その拠点は未発見だったので、その拠点を視認(直接照準射撃)できる砲兵ユニットが存在しない。 大至急、味方の歩兵部隊が消耗しない内に砲兵ユニットを前進させなければならない。

 あるいは、敵の戦車と歩兵部隊が味方の一次防衛線を突破した。 現状の二次防衛線は戦力が乏しいので、砲兵ユニットを含む予備部隊は大至急、二次防衛線を補強するために移動しなければならない。

 こうした状況になると直接照準射撃を行う砲兵ユニットは移動を迫られる訳です。
 当たり前の話なのですが、通常の砲兵ユニットにとって移動は大変な作業でした。



 考察46回「砲兵2、間接射撃−遠方」で考察した、野砲の準備時間を再確認してみましょう。
 その中の表5を再掲載しました。説明文もほぼそのまま抜粋しています。


      表8 野砲の準備時間と最大射程、射撃速度(TL5〜6)の比較

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 準備時間は、砲の据付(射撃準備)に掛かる時間で、単位は秒になっています。
 表に示されている数値は車載式のもので、牽引式は上記の2倍になるとのこと。
 この準備時間に3D6(−DM)を掛けたものが、実際の据付(射撃準備)に費やした時間になる訳です。
 DMにもよりますが、最低3倍、最大は18倍、平均は8倍程度になるでしょう。
 口径6cmの牽引式迫撃砲で平均80秒口径12cmの車載高初速砲で平均560秒(=9分強)が必要になりました。

 上記の通り、砲の据付(射撃準備)に掛かる時間が長すぎます。
 据付中の砲から敵部隊を視認できる以上、敵部隊からも据付中の砲を視認できる訳で、 迂闊に近付いたら、射撃準備を終えるまで一方的に撃たれてしまうことは確実。 通常の砲兵は、敵部隊のライフル射撃に耐えることさえできません。
 だからこそ砲兵はその主軸を「間接射撃」へ切り換えた訳ですが、 砲弾の供給には限りがあるため、「間接射撃」の実施にも制限が課されてしまいます。

 通常の砲兵では一方的に撃たれてしまい、 肝心の直接照準射撃を行うまでに砲兵が壊滅してしまう
 「間接射撃」を行いたくても、砲弾不足で実施できない
 敵の抵抗拠点を無力化しなければ、味方の歩兵部隊は損害を負うばかりで何時まで経っても前進できない。

 どうしようもないジレンマです。
 敵が自ら視界内に入ってきてくれる状況、例えば防衛戦を戦っているとか、移動途中の敵を待ち伏せいしている状況であれば、 この据付に費やす時間はほとんど問題になりません。
 しかし攻勢に出る場合、この時間が致命的な問題を引き起こしてしまうでしょう。



 こうした無理難題を解決する方法は2つありました。
 1つは野砲の小型化と軽量化

 表8を見て頂ければ一目瞭然ですが、口径の大きな野砲ほど据付(射撃準備)に掛かる時間が長い、 という傾向があります。
 例えば、8cm砲の低初速/高初速砲は準備時間が40(牽引式は80)ですから、 牽引式は最低でも3倍の4分(=240秒)が準備時間として必要でした。平均としては10分ぐらいでしょうか。
 実際に8cm砲が敵の抵抗拠点を視認できる位置まで前進しても、 「直接照準射撃」を行うまで10分も待たなければなりません。
 その間、味方の歩兵部隊は前進できず、じりじりと消耗を続けてしまいます。 8cm砲が無事に生き延びられるかどうかも怪しい話でしょう。

 それに対して4cm砲は準備時間が20(牽引式は40)です。 同じ牽引式だとしても最短ならば2分(=120秒)、平均5分で射撃準備が完了します。
 更に小型の2cm砲は準備時間が10(牽引式でも20)しかありません。 最短での準備時間はわずか1分、平均でも2分半しか掛からないという手軽さです。

 小口径の砲は1発当たりの威力が小さいという問題点もありましたが、威力不足は手数(射撃数)で補えます。
 火力密度という観点で比べるのであれば、46回「砲兵2、間接射撃−遠方」で考察した通り、 小口径砲をたくさん用意した砲がより強力な砲撃を実施できるのです。

 貴方が最前線で戦う歩兵の1人だったとしたならば、 10分後に援護射撃を始める(かどうか当てにならない)8cm砲と、 2分半で援護射撃を始めてくれることが確実な2cm砲のどちらが有り難いでしょうか?
 最前線までの移動時間も加味されますので、この時間差は一層開くこととなります。
 そして先人たちは扱いにくい大口径砲よりも手軽な小口径砲を選びました。

 第二次世界大戦の序盤、世界中の軍隊が小口径砲を多数配備していたのは、これが理由です。
 当時の対戦車砲の主流が低威力の37mm砲だったのは、彼らが歩兵部隊の機動に追随するためだったのです。
 この選択は実際に戦争が始まるまで、小口径砲の通じない装甲目標が現れるまでは、 正しい選択だったと考えられてきました。



 2つ目の解決策は、砲兵の自走化です。

 塹壕や砲弾孔だらけの不整地を踏破できるようにキャタピラ式の車体へ載せられ、 同時に、敵部隊のライフル射撃から身を守れるように装甲を纏うようになったのです。
 要するに戦車の登場ですね。

 幸い、メガトラの個人戦闘ルールによれば、車載式の直接射撃兵器は、据付(射撃準備)が不要とのこと。 戦車が搭載した戦車砲(口径12cmの高初速砲)を撃つために、 停車してから9分も掛かるということはありません。
 敵の抵抗拠点を視認すれば、戦車はすぐさま直接照準射撃を実行できますし、 場合によっては行進射(移動しながらの射撃)も可能でしょう。
 こうして、戦場で戦車が活躍することとなりました。

 穿った見方をするならば、メガトラの戦闘ルールで戦車(車載式の直接射撃兵器)を活躍させるため、 このルールが考案されたと言えるのかも知れません。
 牽引式の砲は、直接射撃であれ間接射撃であれ、表8の2倍の据付(射撃準備)時間が必要なのですから。

 戦車以外にも、自走砲突撃砲歩兵支援戦闘車などといった呼び名が存在しますが、 戦車の呼称問題は厄介なので此処では触れません。 面倒なので一律に戦車と呼ぶことにしました。



 これまでは、ほとんど移動しないユニット(=静止しているユニット)のみを考察の対象にしてきましたが、 実戦では移動するユニットが頻繁に登場します。
 上記のような背景から生み出された戦車もそのひとつ。
 というか、移動できなければ戦車の存在意義はほとんど失われてしまいます。

 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、移動しているユニットは防御面で有利な、攻撃面で不利なDMを被ります。
 具体的には、ユニット移動速度10km/h毎に−1のDMでした。
 実際、考察の41回と42回「海賊いじめ」では個人しか扱っていなかったため、 その移動DMは−1−2しかありません。
 この程度ならば考察するまでもないか、と考えていたのですが、 戦車などの戦闘車輌、エアラフト、航空機などが登場してくるとなれば、移動DMの影響を考察しない訳にもいかないでしょう。
 再び、原典(ルールブック)の記述から考えてみました。



 プレイヤーズ・マニュアル p.69〜70 移動DM:

> 移動速度は、「近距離」で攻撃の目標となっているユニットにとって、
> 防御に有利なDMとして働きます。
> たとえば、走っているキャラクター(速度2)は、「近距離」から攻撃された際、
> 相手の命中判定にDM−2を適用することができます。

> 距離帯が「近距離」よりひとつ遠ざかるごとに、
> この移動DMは2分の1になります(端数切捨て)。
> すなわち、走っているキャラクターの移動DMは、
> 「中距離」で攻撃を受ける場合には1となり(速度2の半分)、
> 「長距離」では0に落ちてしまいます(1の半分)。
> このキャラクターは、「長距離」以上の距離では
> 走っていることによる移動DMを得られないのです。

> 移動中のユニットが攻撃を行うときには、そのユニットの移動速度を
> 不利なDMとして適用しなければなりません。
> したがって、走りながら(速度2で)攻撃しているキャラクターは、
> 攻撃にDM−2を適用しなければなりません。
> このDMには目標までの距離帯は関係しません。

> 攻撃側と防御側がともに移動しているときには、DMは累積します。
> 攻撃側が速度4で移動中のエアラフトに乗っており、
> 速度3で移動する動物(近距離)を撃つ場合、
> 命中判定に適用するDMは−7になるわけです。




 移動DMの求め方は上記の通りなので、実際の移動DMの大きさがどの程度のものになるのか、計算してみました。

 まずは、移動しながら射撃を行う戦車のように、攻撃側の被る移動DMから。


          表9 移動DMの影響(攻撃側/非管制)

BW48_FIG09.GIF - 9.09KB

> 移動中のユニットが攻撃を行うときには、そのユニットの移動速度を
> 不利なDMとして適用しなければなりません。
> したがって、走りながら(速度2で)攻撃しているキャラクターは、
> 攻撃にDM−2を適用しなければなりません。
> このDMには目標までの距離帯は関係しません。


 というルールなので、攻撃側の被る移動DMは距離帯に関係なく一定です。

 ちなみに、移動速度のサンプルとして挙げた10km/hはキャラクター(人間やロボット)の歩行状態を表しており、 屋内戦闘マップで10マス、屋外戦闘マップで1マスの移動が可能だと定義されていました。
 そして20km/hはキャラクターの走行、50km/hはケンタウロス型異星人ククリーの最大移動速度、 100km/hはトラベラー世界で一般的なエアラフトの飛行速度、200km/hと500km/hは適切なサンプルなし、 1,200km/hは音速ですが1Gの加速性能を備えた宇宙船の最高移動速度でもあります。

 歩行や走行であれば移動DMも−1−2程度で済んでいたのですが、 騎行やエアラフトになると−5−10、 宇宙船では−120という大きなマイナスになってしまいました。
 これだけ大きくなると、移動中の攻撃(射撃)というものは滅多に当たりません。
 トラベラー世界(メガトラ版の個人戦闘ルール)で戦車の行進射は再現できないのでしょうか?



 次は、移動する目標を攻撃した場合の移動DMです。


            表10 移動DMの影響(目標側)

BW48_FIG10.GIF - 9.43KB

> 距離帯が「近距離」よりひとつ遠ざかるごとに、
> この移動DMは2分の1になります(端数切捨て)。


 というルールなので、目標側の移動によるDMは距離帯によって大きく変化します。

 英文エラッタでは、計算を簡略化するため、

> MOVEMENT DM GUIDE (% OF TARGET SPEED)
>  移動DMガイド(目標速度の%)
>  Range Bands 距離帯
>  C/S M L VL D VD+
>  100 50 25 10 5 -
> 近/至近距離(C/S)は移動DMがそのまま(100%)で適用。
> 中距離(M)は半分(50%)、遠距離(L)は4分の1(25%)、
> 超遠距離(VL)は10分の1(10%)、遠方(D)は20分の1(5%)。
> 超遠方(VD)よりも遠い場合、移動DMは適用されず。


 というルールが追加されていました。
 まぁ、妥当なルールだと思います。



 歩行(10km/h)の場合、もともとの移動DMが−1だけでしたが、中距離以上(5m〜)に離れればDMなし。
 走行(20km/h)の場合は、至近/近距離で−2、中距離で−1、 遠距離以上(50m〜)ではDMなし。
 という感じでした。
 キャラクター(人間やロボット)の場合、歩いても走っても移動DMは大した数値になりません。 −1−2程度のDMであれば、他の要素の方が重要です。

 エアラフトの移動速度(100km/h)の場合、至近/近距離での移動DMが−10になりました。 至近距離を走り抜けるエアラフトをSMGで銃撃するような状況では、−10のDMが付いてしまう訳です。 至近/近距離での防御効果がとても高いと分かりました。
 中距離(5〜50m)になると移動DMは半減して−5。 防御効果はまだ十分に高いと思いますが、−10に比べたら見劣りします。
 そして遠距離(50〜250m)になると更に半減して−2、 超遠距離(250〜500m)では僅か−1。 100km/hで移動していても、遠距離や超遠距離になると移動DMによる防御効果はほとんど無いことが分かりました。意外です

 音速(1,200km/h)で飛行する宇宙船(航空機)の移動DMは、至近/近距離で−120でした。 とんでもない数値ですが、この移動DMをそのまま適用することは滅多にないでしょう。
 考えられるとすれば、超遠距離(250〜500m)や遠方(500m〜5km)で対空砲火の的になるような状況だと思います。 その場合、移動DMは−12〜−6。それなりの防御効果を発揮してくれるでしょう。



 攻撃側と目標側の移動DMは累積します。
 ですから両者が移動している場合には、それぞれ別に計算した移動DM(表9と表10の数値)を足し合わせれば良いようです。

 一目瞭然ですが、攻撃側の移動DMの影響は極めて大きくなっていました。
 目標側の移動DMは、移動速度が大きければそれなりに数値も大きいのですが、 距離による修正が適用されるため、遠距離や超遠距離、遠方になると、それほど大きな影響を与えなくなりました。

 具体例として100km/hで飛行している2機のエアラフトを想定してみましょう。
 エアラフトAが逃走している目標側、エアラフトBが追跡している攻撃側です。

 エアラフトBがエアラフトAを攻撃した場合の移動DMは、以下のようになりました。


       表11 エアラフト2機の移動DM(火器管制装置なし)

BW48_FIG11.GIF - 5.79KB

 2機のエアラフトは100km/hで飛行していますから、100km/h÷10=10で、それぞれの移動DMは−10です。 単純に足し合わせると−20ですから射撃が命中することはほとんど期待できません。
 しかし、この大きな移動DMは2機のエアラフトが接触するほどの距離、至近/近距離で攻撃した場合の移動DMです。 もう少し距離を離せば移動DMは小さくなり、もう少し射撃が命中しやすくなるのではないでしょうか?

 射撃距離を中距離まで伸ばした場合、攻撃側(エアラフトB)の移動DMは減少しませんが、目標側(エアラフトA)の移動DMは半減します。
 合計した移動DMは−15
 少し命中させやすくなったようですが、あまり変わりませんでしたね。

 射撃距離が遠距離になると、目標側の移動DMは4分の1に減少しました。合計した移動DMは−12

 射撃距離が超遠距離では、目標側の移動DMは10分の1に減少。合計の移動DMは−11

 射撃距離が遠方になって、目標側の移動DMは20分の1に。合計の移動DMはやっと−10まで下がりました。

 残念ながら、期待していたほどの移動DM低減は起こり得ませんでした。
 攻撃側の移動DMは距離による減少がありませんので−10のまま。
 その影響があまりにも大きかったのです。

 高速で移動している輸送機器から射撃(攻撃)を行った場合、その射撃はどんな目標にも命中しません。
 やはり、メガトラの個人戦闘ルールにおいて、輸送機器による空中戦(Dog Fight)の再現は不可能なのでしょうか?



 いいえ、そんなことはありません。しっかり空中戦の再現ができるようになっていました。
 そのためのルールは以下の通りです。

 プレイヤーズ・マニュアル p.70 移動方向を合わせる:

> ただし、輸送機器の操縦者が、
> 移動している目標の移動方向と自機の移動方向を合わせようとするなら、
> DMを少なくすることができるかも知れません。

> 移動目標と自機の移動方向を合わせるには:
>  並、〈輸送機器〉、移動DM(対立)
> 
> レフリー:
>  攻撃側と防御側の両方とも、その輸送機器に関する技能レベルと移動DMを、
>  この自分に有利なDMとして適用できます。
>  地上車に関しては、道路のように滑らかで固い場所を
>  走行しているのでなければ、この行為を試みることはできません。
>  この行為に成功すると、一時的に火器管制装置がついているものとみなして
>  攻撃を行うことができます。


 自機と目標の移動方向を合わせることで、攻撃の照準を合わせやすくする訳です。
 某空戦ゲームでは「追尾射撃」と表現されていましたが、一般の方にも通じるのですかね?
 気になるでしょうが、一時的に火器管制装置がついているものとみなして攻撃を行うことができる 場合のメリットについては後述。



 「移動方向を合わせる」行為判定の成功率は、 影響するDMの大きさにもよりますが、以下のようになりました。


         表12 「移動方向を合わせる」行為判定の成功率

BW48_FIG12.GIF - 3.51KB

 攻撃側のDM、〈輸送機器〉技能レベルと移動DMの合計が、目標側のDMより4以上劣っている場合、 「移動方向を合わせる」行為はほとんど成功しません。
 これだけの差が発生する状況の大半は、移動速度の差に起因するでしょう。 操縦者の技能レベルの差が4レベル以上という状況は起こりにくいと思いますので。
 さて、移動DMの差が4以上ということは、エアラフト2機の速度差が40km/h以上で、攻撃側が遅い状況を意味します。
 速度の遅い追跡側(エアラフトB)が、速度の速い目標側(エアラフトA)に追いつくことは困難ですから、こういった成功率になるのでしょう。

 ちなみに速度差が60km/h以上ある場合は、ほぼ確実に行為判定は成功しません。
 追跡側操縦者の〈輸送機器〉技能レベルが高くても、戦術ポイントを多用しても、 移動DMの−6を打ち消すことは難しいからです。
 〈輸送機器〉技能レベルの差や戦術ポイントを使って得たDM+1が、 お互いの輸送機器の速度差10km/hに相当することを忘れてはいけません。



 攻撃側のDMが目標側のDMより2だけ劣っている場合、 「移動方向を合わせる」行為の成功率は27.8%でした。
 おおよそ4分の1の成功率ということです。

 攻撃側のDMが目標側のDMと等しい場合、 「移動方向を合わせる」行為の成功率は58.3%でした。
 おおよそ2分の1の成功率です。

 攻撃側のDMが目標側のDMより2だけ優っている場合、 「移動方向を合わせる」行為の成功率は83.3%でした。
 成功率は6分の5ですから、かなり高くなっています。

 攻撃側のDMが目標側のDMより4だけ優っている場合、 「移動方向を合わせる」行為の成功率は97.2%で、ほぼ確実になりました。



 上記のような考察から、攻撃側と目標側の速度差が40km/hあれば、 「移動方向を合わせる」行為は確実に成功するか失敗する、と言えるでしょう。
 操縦者の〈輸送機器〉技能レベルや戦術ポイントを多用しても、増えたDM+1毎に10km/hの速度差があればDMは変わりません。
 圧倒的な速度差(具体的には100km/h以上の速度差)を、技能レベルと戦術ポイントでカバーすることは不可能でした。

 これは静止している目標(移動しない目標)に対しても同様で、ルールブックに明記されていませんが、 ホバリングしている航空機や反重力輸送機器、地上の構造物に対しても「移動方向を合わせる」ことは可能な筈です。
 形だけでも「移動方向を合わせ」ておけば移動DMに距離修正を行えるので、 結果、命中判定に不利なDMを小さくすることができるのです。
 飛行船や阻塞気球に銃撃を試みる航空機、対地攻撃を行うガンシップをイメージして頂けば良いでしょう。 これらに対して攻撃側が「移動方向を合わせる」行為判定に成功したのであれば、 攻撃側は「射撃/爆撃コースに入った」ということだと思います。

 速度に優る側は、メガトラの個人戦闘ルールにおいて、圧倒的な優位を得られる、ということが判明しました。



 しかしながら「移動方向を合わせる」行為は、若干のリスクも伴っているでしょう。
 攻撃側が目標側に対して「移動方向を合わせた」ということは、 目標側からの反撃も「移動方向を合わせた」状態で行われるからです。

 鈍重な爆撃機の真後ろについた戦闘機をイメージして下さい。
 戦闘機から見て爆撃機は、相対的に自機の目前から動きません。 「移動方向を合わせている」のですから当然ですが、それ故、戦闘機からの射撃を爆撃機に当て易いのです。
 ところが、同じことが爆撃機からも言えました。
 追撃してくる戦闘機は、爆撃機の真後ろにぴったりと張り付いて離れません。まるで静止目標であるかのように動かないのです。
 こんなチャンスを見逃すことはできません。 爆撃機は機体の後ろに強力な後方機銃を取り付け、追撃してくる戦闘機を迎撃するようになりました。
 爆撃機は針鼠のように多くの機銃で武装していますが、後方機銃が特に大口径である理由は それだけの必要に迫られているからです。他の機銃のように戦闘機を追い払えば良いということはありません。
 後方機銃は、真後ろの射撃位置に付いた敵戦闘機を より離れた位置で確実に撃墜しなければならず、唯一、それが可能な機銃なのです。

 こうしてみると、メガトラの個人戦闘ルールは良くできていますね。
 戦車(車載式の直接射撃兵器)が生み出された必然性ばかりでなく、 爆撃機に備えられた後方機銃の必要性まで再現されているとは思いませんでした。
 実に興味深くて面白い、というか、私のようなミリヲタにとって有難いルールばかりです。



 次の課題は、一時的に火器管制装置がついているものとみなして攻撃を行うことができるルールです。
 今度も該当部分のルールを抜粋してみました。

 プレイヤーズ・マニュアル p.70 火器管制:

> 火器管制装置を使用した射撃の場合は、上記の移動DMのルールは適用しません。
> かわりに、その輸送機器と目標の速度の差を、
> 「近距離」における防御側の移動DMとして使ってください。
> 通常と同じように、「近距離」を越える1距離帯ごとに
> 移動DMは半分になります。
> たとえば、火器管制装置を持つエアラフトが速度4で移動しており、
> 目標が速度3で移動しているときには、
> 目標にされた輸送機器は「近距離」では−1の移動DMしか得られず、
> 「中距離」以遠ではDMは得られません。

> 以上のルールは、移動方向が合っているときには
> 火器管制装置がなくても適用されます。


 蛇足かと思いますが、念のため。
 上記の火器管制装置を使用した射撃(Vehicles with weapon fire control)とは、 命中難易度を「管制型(Fire Controlled)」で決定する砲兵器(低初速/高初速砲、プラズマガン/フュージョンガン、レーザー砲など) のことです。
 機関銃や速射磁気砲、無反動ライフル(無反動砲)などを除けば、ほとんどの車載砲兵器はこれに含まれるのではないでしょうか。



 ここで重要な点は、(攻撃側)輸送機器と目標の速度の差を、「近距離」における防御側の移動DMとすること、 そして、「近距離」を越える1距離帯ごとに移動DMは半分になること、です。

 攻撃側と目標側が高速で移動する場合、表9で示した通り、双方の移動DMは極めて大きな数値となりますから、 その移動DMの計算基準が速度差になることは大きな変化でしょう。
 このルールのおかげで、高速で飛行する輸送機器は空中戦が可能になりました。

 また、攻撃側の移動DMが無くなったことも有難い変化です。
 移動DMを速度差から求める訳ですから、攻撃側は移動していないと見なされる訳ですね。
 従来、攻撃側の移動DMは表10に示した通り、極めて大きな要素となっていましたから、これが無くなることは実に有難いのです。
 戦車の行進射も再現できることが分かりました。



 攻撃側のエアラフトBが、目標側のエアラフトAと「移動方向を合わせる」行為に成功した場合、 あるいは火器管制装置を使用した射撃を行っている場合、移動DMは以下のように変化します。


       表13 エアラフト2機の移動DM(火器管制装置あり)

BW48_FIG13.GIF - 9.64KB

 比較するため、4つの条件で移動DMを求めました。
 1つ目は「移動方向を合わせる」行為に成功しなかった(失敗した)場合で、2つ目が行為に成功した場合です。
 3つ目は「移動方向を合わせる」行為の成功率を上げる為、攻撃側(エアラフトB)の移動速度を150km/hまで上げた場合。 一撃離脱という形になって、攻撃後の両者の距離は離れてしまいますが、再攻撃の際には反転して戻ってくれば問題ありません。 実際にも良くある状況でしょう。
 4つ目は更に成功率を上げる為、攻撃側の移動速度を200km/hまで上げた場合です。

 「移動方向を合わせる」行為に成功したのであれば、結果は御覧の通りです。
 攻撃がかすりもしないほど大きなマイナス要因だった移動DMは、表13へ示した通り、小さな数字に変化しました。
 「移動方向を合わせる」行為の成功率を上げる為、攻撃側の移動速度を上げたとして、それはあまり負担となりません。 確実に「移動方向を合わせる」ことができるのですから、総合的にはプラスでしょう。

 速度差によって僅かに発生した移動DMも、距離を離すことで低減していきます。
 攻撃を遠距離や超遠距離から行うことで、移動DMの影響をより低く抑えることができると思われました。
 こうした場合、移動DMに防御効果はほとんどありません。



 移動する輸送機器からの攻撃は、「移動方向を合わせる」ことで、移動DMの不利な影響を大きく抑えることが可能です。
 「移動方向を合わせる」ことに成功した場合、移動DMは驚くほど激減していました。
 そして「移動方向を合わせる」行為の成功率を上げる為には、 攻撃側が50km/h〜100km/h程度、目標側よりも高速であるべきでしょう。
 それだけの速度差が有れば、操縦者の〈輸送機器〉技能レベルや戦術ポイントに差があっても、確実にカバーできます。

 その輸送機器が火器管制装置を搭載している場合は、 「移動方向を合わせる」必要もありません。 火器管制装置を使用した射撃もすべて、移動DMを速度差から求めるためです。
 火器管制装置を使用できるのであれば、移動DMの存在意義もほとんど無くなるでしょう。



 存在意義が薄くなってしまった移動DMをもう一度復活させるためのルールが「回避」です。
 そのルールの内容は、以下の通り。

 プレイヤーズ・マニュアル p.70 回避:

> ユニットは移動方法のひとつとして「回避」を宣言し
> (たとえば、「移動速度1の回避を行う」)、
> 相手側の命中判定をより困難にすることができます。
> 回避しているユニットは、マスに入るのに必要な移動ポイントを、
> 通常の2倍使わなくはなりません。
> 入るのに1移動ポイントが必要なマスの場合、
> 回避をしているなら2移動ポイントが必要になるのです。

> 回避しているユニットは、近接戦闘を受けたときに
> 武器を使ってかわしたりブロックしたりすることはできません。
> 知性を持たない動物は知的な回避は行いません。

> 回避を行うと、防御側にせよ攻撃側にせよ、
> 移動速度を2倍とみなして移動DMを計算します。
> たとえば、回避しながら走っているキャラクター(速度2)は、
> 「近距離」から攻撃されたときには−4の有利なDMを受けることができます。
> 回避しながら歩いているユニットは、攻撃するときには
> −2の不利なDMを受けなければなりません。




 ルールの文面だけ見ても分かり難いだけですので、それぞれの移動速度で回避を行ったら移動DMと移動距離がどうなるのか、 簡潔に以下の表へまとめてみました。


           表14 回避している場合の移動DM

BW48_FIG14.GIF - 5.83KB

 表の左端は、表9で説明した通りの移動速度です。

 移動DMは移動速度(km/h)÷10で求めていましたが、「回避」を行った際には 移動速度を2倍とみなして移動DMを求めるので、移動DMも2倍に増えました。

 回避しているユニットの移動距離は、 マスに入るのに必要な移動ポイントを、通常の2倍使わなくはならないため、半減します。
 ジグザグに移動したり、速度を変えたりすることで、敵の攻撃が当たり難くしているためでしょう。
 1マス1.5mの屋内戦闘マップと1マス15mの屋外戦闘マップの2つで、移動できるマス数を示しました。
 移動できるマス数は基本的に端数切捨てですが、最低でも1マスの移動ができるというルールなので、歩行(10kn/h)の15mマスは例外です。



 移動速度と移動DMの関係は上記の通りでしたが、目標側の移動DMは距離が遠くなるにつれて減少します。
 その傾向を、表10と同じように並べてみました。


           表15 移動DMの影響(目標側/回避)

BW48_FIG15.GIF - 9.43KB

 当たり前の話ですが、移動DMが2倍になったので、それぞれの距離帯における移動DMも2倍です。

 歩行(10km/h)の中距離、走行(20km/h)の遠距離、騎行(50km/h)の超遠距離、エアラフト(100km/h)の遠方における移動DMが、 DMなしから−1に変わったことだけ目立っていますが、 実際問題として大きな影響にはならないでしょう。



 再び、100km/hで飛行するエアラフト2機を具体例として取り上げました。
 エアラフトAが逃走している目標側、エアラフトBが追跡している攻撃側です。

 エアラフトAは、100km/hで飛行しつつ「回避」を行っています。
 表14で示した通り、エアラフトAの移動距離は5マスになりますから、実質的な移動速度は半分の50km/hに相当すると考えて良いでしょう。 それを追跡するエアラフトBの移動速度は、併走するため50km/hまで減速しなければなりません。

 エアラフトBがエアラフトAを攻撃した場合の移動DMは、以下のようになりました。


      表16 エアラフト2機の移動DM(回避と火器管制装置あり)

BW48_FIG16.GIF - 13.7KB

 1番上は、エアラフトBが50km/hで追跡している状況です。
 残念ながら「移動方向を合わせる」行為判定には失敗。
 そもそもエアラフトAの移動DMが−20、エアラフトBの移動DMが−5であり、 追跡側のDMが15も負けています。これでは行為判定に成功する筈がありません。
 射撃に影響する移動DMは、至近/近距離で−25、遠距離でも−10でした。
 これだけ大きな移動DMならば、エアラフトAに射撃が命中することはないでしょう。

 2番目は、50km/hで追跡するエアラフトBに火器管制装置が積んであった場合です。
 「移動方向を合わせる」行為判定が成功する筈はないので、移動DMを小さく抑えるためには、 火器管制装置を活用するしかありません。
 実際に火器管制装置が活用された場合、射撃に影響する移動DMは、 至近/近距離で−15、遠距離で−3まで激減しました。
 やはり火器管制装置の効果は絶大であると実感できます。

 3番目は、追跡するエアラフトBが100km/hまで増速して、追いすがってきた場合です。
 射撃後のエアラフトBは目標であるエアラフトAを追い抜いてしまいますので、一撃離脱というスタイルになるのかも知れません。
 今回も移動DMの差が大きく「移動方向を合わせる」行為判定が成功する筈はないので、 火器管制装置を活用します。
 射撃に影響する移動DMは、至近/近距離で−10、遠距離で−2でした。

 4番目は、エアラフトBが更に増速して200km/hを出した場合。
 一般的なエアラフトは最高速度が100〜120km/hなので、これだけの高速が出せるエアラフトは特別製ということになるでしょう。
 実は双方の移動DMが同じ−20なので、 サイコロ運が良ければ「移動方向を合わせる」行為判定が成功します。
 エアラフトBに火器管制装置が積まれていないのであれば、 こういった方法で移動DMを抑えることも可能であると判明しました。
 実質的な移動距離は、エアラフトAが5マスで、エアラフトBが20マスです。 完全に一撃離脱のスタイルですが、これだけの速度差があれば反復攻撃が可能になるかも知れません。
 この速度差で「移動方向を合わせる」行為判定に成功したか、 火器管制装置を活用できた場合、 射撃に影響する移動DMは、どの距離帯でもなしになります。
 低速で「回避」する移動目標は、2倍以上の高速で追撃された場合、 その移動DMをほぼキャンセルされてしまうと分かりました。

 最後の5番目は、エアラフトBが100km/hで「回避」しながら、 「移動方向を合わせる」行為判定に成功した場合です。
 双方の移動DMは同じ−20でありながら、実質的な移動距離も同じ5マス。 完全な併走(追尾)に成功しているとも言えるでしょう。
 この場合も、「移動方向を合わせる」行為判定に成功したか、 火器管制装置を活用できた場合、 射撃に影響する移動DMは、どの距離帯もなしです。
 ここでエアラフトBが行っている「回避」は、 エアラフトAの「回避」に追従するための「機動」だと考えるべきでしょう。



 移動目標が「回避」を行った際の移動DMは、上記の通りとなりました。

 移動速度が十分に大きい場合、あるいは射撃距離が近い場合、「回避」による移動DMの倍増は大変効果的です。
 移動DMを2倍しただけの意義はありました。
 しかし、その倍増した移動DMも残念ながら、2倍以上の高速、 「回避」を伴った追跡によって無効化されることが判明しています。
 「移動方向を合わせる」行為判定の成功や火器管制装置の活用によって、 目標側が倍増した移動DMはほとんどなしという状況に変えられてしまいました。

 メガトラの個人戦闘ルールにおいて、空中戦(Dog Fight)は再現が可能です。
 火器管制装置を持たないローテク航空機の場合、 敵味方の航空機は互いに相手の後ろを取ろう(「移動方向を合わせよう」)と、 「回避」しながら行為判定を繰り返すことになるでしょう。
 その空中戦に参加しない航空機は、移動DMが大き過ぎるため、射撃を行うことができません。
 しかし攻撃側が移動しないのであれば(例えば対空砲など)は、移動DMの影響をほとんど受けずに射撃することが可能です。

 火器管制装置が登場すると、 空中戦であれ対空射撃であれ、移動DMは常に小さく抑えられるようになりました。
 空中戦の場合、相手とほぼ同じ速度を保てば「移動方向を合わせる」必要もありません。 空中戦の醍醐味が無くなってしまいましたが、プレイを円滑に進める為にはそうすべきかも知れませんね。

 メガトラの個人戦闘ルールにおいて、敵の攻撃に対する回避能力(移動DM)としての移動速度は、あまり意味を持たないことが判明しました。
 移動速度はあくまで有利な地形を占めるため、あるいは、敵との距離を詰める(開く)ために利用すべきものなのです。



 余談となりますが、英文エラッタに掲載されていた追加ルールには、以下のようなものも含まれていました。

> 迎撃管制装置を装備している車載兵器は、
> 移動目標を射撃する際、何のペナルティも負わない。


 このルールが採用されると、そもそも移動DMの存在自体が否定されてしまうのではないでしょうか。
 迎撃管制装置の概念から考えれば、当然のルールだとも思えますが……採用が躊躇われます。





結論


 今回は、榴弾を用いた「直接照準射撃」について考察しました。

 「直接照準射撃」による砲弾の節約効果は明らかです。
 その節約効果は、12分の1(=8.3%)から1.7分の1(=60%)。 砲兵隊の〈照準〉技能レベルが低い程、砲弾の節約効果は大きなものとなっていました。

 また「直接照準射撃」は、「塹壕の中へ直接、榴弾を撃ち込む」とか 「トーチカの銃眼を狙って撃つ」といった戦術も可能です。
 そうした場合の命中難易度についても考察しました。
 大きな目標ならばともかく、小さな目標を狙い撃つことは難しいという結果が出ていますが。

 対歩兵戦闘を念頭に、必要な榴弾の致傷力について考察しました。
 歩兵の装甲値から逆算して、 テックレベル5〜9の世界では口径4cmの榴弾、 テックレベル10〜12の世界では口径8cmの榴弾、 テックレベル13の世界では口径10cmの榴弾、 テックレベル14〜15の世界では口径12cmの榴弾が必要だと判明しました。



 後半は、「移動DM」に関連した考察です。
 私にとっては難解なルールであった移動DMの求め方を確認し、その影響を評価しました。

 基本的に攻撃側が移動している場合、「移動DM」は大きな影響を及ぼすため、攻撃側には不利です。
 反対に目標側が移動している場合、その「移動DM」は距離と共に減衰するため、 射撃距離が近いか、移動速度が極端に大きくなければ、防御側に有利なDMと成り得ません。
 攻撃側の移動は不利ですが、防御側が移動していてもあまり有利にはならないのが「移動DM」であるようです。

 攻撃側と目標側が高速で移動する場合、お互いの「移動DM」は極めて大きな数値となり、 射撃は命中を期待できません。
 しかし「移動方向を合わせる」行為判定に成功することで、 その「移動DM」を相対速度から求めた数値まで小さくすることが可能でした。
 移動速度が40km/h以上優っている側であれば、容易に「移動方向を合わせる」行為判定に成功できるでしょう。
 反対に移動速度が40km/h以上劣っている側は、「移動方向を合わせる」ことができません。
 優れた速度を持っている側は、大きなアドバンテージを持っていると言えます。

 ところが火器管制装置が使われ始めると、 「移動方向を合わせる」行為の必要がなくなります。
 「移動方向を合わせる」ことなく「移動DM」を低減できる訳ですから当然のことでしょうが、 攻撃側の輸送機器は、目標側に速度を合わせるだけで高い命中率を得ることがでいるようになりました。

 「移動DM」を倍増させる「回避」という選択肢ですが、 攻撃側の速度が優っていて簡単に「移動方向を合わせる」行為判定に成功できる場合や、 攻撃側が火器管制装置を備えている場合は、あまり意味がありませんでした。







2013.06.09 初投稿。