The Best Weapon
52nd stage (Combat 9)
Concealed and Spotting

最強兵器 決定戦
第52回(個人戦闘9)
潜伏状態と探知
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MEGA TRAVELLER
 


 

潜伏しているには、
  自分撃たれるまで気付けない。


 これまでの7回分(45〜51回)で、砲兵の圧倒的な破壊力について考察してきました。
 榴散弾による直接照準射撃榴弾を用いた間接射撃(遠方/超遠方)直接照準射撃

 榴散弾射撃はともかく、砲兵に榴弾を使用された場合、撃たれる側の歩兵には対抗手段がありません。
 砲兵の間接射撃には対砲兵射撃戦車の直接照準射撃には対戦車砲
 砲兵の一方的蹂躙には、同じ砲兵で対抗することが基本です。
 見つかってしまえば、歩兵は砲兵から一方的にやられるばかりとなるでしょう。

 そう、実はここに唯一の対抗策がありました。
 砲兵に見つかることなく、歩兵が接近できれば良いのです。



 今回は個人戦闘ルールに戻って、「プレイヤーズ・マニュアル、p.89」より、 潜伏状態(Concealed)探知(Spotting)のルールを考察してみました。

 メガトラの個人戦闘ルールで、
 歩兵がこっそりと忍び寄ることは可能なのでしょうか?
 そして忍び寄る歩兵を、砲兵や戦車側が発見することはできるのでしょうか?





潜伏状態の定義


 メガトラの個人戦闘ルールにおいて、視線は 「お互いに通るか、通らない」のどちらかしかありませんでした。

 視線が通るのであれば、両者は相手の存在を認識できますし、相手を射撃(直接射撃)することも可能です。 どちらか、あるいは双方が援護物に隠れていることも有り得ますが、 視線が通ることの恩恵は、双方が平等に被っています。

 反対に視線が通らないのであれば、両者は相手の存在を認識できません。
 視覚以外の情報から相手の存在を推測することは可能ですが、相手を射撃(直接射撃)することはできないのです。



 初心者向けのゲームであれば、そうしたルールだけで十分でしょう。
 視線が通れば相手を発見、通らなければ発見できない
 シンプルで分かり易いですから、それを不満に思わなければ何の問題もないのです。
 プレイアビリティ(遊びやすさ)という点でももっともな話だと思いますが。

 ところが現実であれば、
 片方(A)だけが相手(B)の存在に気付いており、
 もう片方(B)は相手(A)の存在に気付かない。

 といった状況は、頻繁に発生します。
 それなのに、メガトラベラーの個人戦闘ルールでは、常に双方が同時に相手を発見しているのです。
 これでは現実の戦闘を再現できません。



 「プレイヤーズ・マニュアル、p.89」に掲載されている特殊ルール、 潜伏状態(Concealed)探知(Spotting)は、

 片方(A)だけが相手(B)の存在に気付いており、
 もう片方(B)は相手(A)の存在に気付かない。


 といった状況を再現するための特別ルールです。
 このルールを用いることで個人戦闘がよりリアルになると思いますから、じっくりと考察してみましょう。
 リアルになる分、プレイがより面倒になるとも思いますが、そのあたりは甘受して下さい(苦笑)。




(1)潜伏状態の定義

 「プレイヤーズ・マニュアル、p.89」の記述によれば、 潜伏状態の定義は以下のようになっていました。

>援護物下、視認不可能(潜伏状態):
>
> 視線を遮らない物体でも、敵ユニットの視認を困難にするものがあります。
>
> キャラクターや異星生物、ロボットは、樹木や草の中では潜伏状態にあります。
> まばらな樹木と、草(まばらでも密でも)が同時に存在する地形では
> 潜伏状態にあります。
>
> また、迷彩やカモフラージュによって潜伏することも可能です。
> 戦闘の開始時にカモフラージュされていたユニットは、
> 移動や行動を行わないかぎり、潜伏状態にあるとみなされます。
>
> 薄暗がりの中では、「中距離」より遠く(「遠距離」以遠)のユニットは
> 潜伏状態にあるとみなされます。
>
> 完全な闇の中では、「近距離」より遠く(「中距離」以遠)のユニットは
> 潜伏状態にあるとみなされます。


 という訳で、潜伏状態は4つの状態に分類することが可能でしょう。



 1つ目は、樹木や草の中に潜んだ潜伏状態
 視線を完全に遮断するほど密な植生ではなくても、キャラクターや異星生物、ロボットを潜伏させることは可能なのです。
 まばらな樹木の場合は、50メートル以内「中距離以内」なら視線を引くことができますという記述がありますので、 潜伏状態になるのは50メートル以内、15メートルマスで3マス以内に限られました。 まばらな樹木のマスを4マス以上横切る視線は、遮断される訳です。
 草は、視線には影響しませんと記述されていますが、 この記述はキャラクターが立っていたり、歩いていたりする状態が前提なので、 視線には影響しないのであろうと解釈しています。 その樹木や草の中に伏せているのであれば、地面に近い部分に限っては視線を遮り、 キャラクターを潜伏状態にすることも可能なのでしょう。
 これを植生を利用した潜伏状態と呼んでおくことにしますが、 上記の異星生物やロボットは人間サイズであることが前提だと思います。
 また、樹木や草の中に潜むことが可能であるならば、 建物や地形の起伏の中に潜むことはできないのか、と疑問を感じるかも知れません。
 その場合、そのユニットは隠れている状態となり、 潜伏状態とは少し異なった扱いを受けます。詳しくは後述しますが。



 2つ目は、迷彩やカモフラージュによって獲得した潜伏状態
 残念ながら、具体的なカモフラージュの行為判定や必要な資材、費やす時間については何の情報もありません。
 英文エラッタには、レフリーが認めるのであれば、という文章が存在しましたので、 例によってレフリーの裁量に任されるということだと思いますが。
 とりあえず、移動や行動を行わないかぎりカモフラージュによる潜伏状態が続く、という情報は重要でしょう。
 逆の言い方をするのであれば、移動や行動を行なった時点でカモフラージュによる潜伏状態が解消される、 という意味になる訳ですから。



 3つ目は、薄暗がりによる状態で、 遠距離(50m〜)以上離れた距離に居れば、自動的に潜伏状態と見なされるようです。
 HJ版の説明文によれば、
> 照明が不足している場合でも、
> 完全な闇であることは少なく、薄暗がりであることが多いでしょう。
> (野外なら星や月の光があり、屋内なら非常灯がついていることが多いのです)

 なのだそうですが、上記に該当する記述が原文には見つからないので、裏付けを取れずに少し困っております。
> Partial darkness is more common than total darkness.
 と書いてありますから、完全な闇よりも薄暗がりの方が より一般的であることには間違いないのですが。



 最後の4つ目は、完全な闇による状態で、 中距離(5m〜)以上離れた距離に居れば、自動的に潜伏状態になります。
 実は私は、レフリーとしてもプレイヤーとしても完全な闇を経験したことがありません。 薄暗がりでも完全な闇でも、 暗闇へ侵入する際には照明器具が不可欠だと考えていますし、 何らかの理由で照明器具を使えない場合は、 暗視装置を携帯することにしているからです。
 それらの器具や装置が無力化されない限り、プレイヤーが完全な闇を体験することは有り得ない、 と思っているのですが、実際はどうなのでしょう。




(2)隠れているユニットの定義

 潜伏状態のユニット隠れているユニット
 この2つは日本語だと非常に紛らわしいのですが、英語の原文では明確に区別されていました。 潜伏状態のユニットConcealed Unitsと書かれ、 隠れているユニットHidden Unitsという書き方をすることで。

 はっきり言って、日本語版(HJ版)だけしか読まずに両者を区別することはとても困難だと思います。
 私は原文を入手して見比べるまで、両者が区別されていることにすら気付きませんでした。困ったものですが。

 話を元に戻しますが、隠れているユニットの定義は以下の通りでした。

>隠れているユニット:
>
> 地形によっては、ユニットは隠れている状態を
> 選択することができる場合があります。
> キャラクターや異星生物、ロボットは、建物の中、渓谷の中、要塞の中、
> 壁のすぐ後ろ、丘の稜線のすぐ後ろにいる場合に、隠れていることができます。
> 車輌は、丘の稜線の後ろにいる場合と、建物の中で停止している場合に、
> 隠れていることができます。
>
> 隠れているかどうかの選択は、そのユニットが行動を行う時点で決めてください。
> そのとき選んだ状態(隠れている・いない)が、
> つぎの戦闘ラウンドの行動するときまで持続します。
>
> 隠れているユニットでも、その存在が敵に知られていることはあります。
> 探知されているユニットは、隠れたまま移動しないかぎり探知されたままです。
> 隠れているユニットは、探知や直接射撃など、
> 付近を視認しなければ行えない行動をとることはできません。
> 隠れているユニットは“頭を低くしている”のです。


 御覧の通り、潜伏状態のユニット隠れているユニットの2つは明らかに別物でした。
 この両者を混同してしまったため私のルール解釈がおかしくなり、それを正すため遂に原文翻訳まで手を出してしまった訳ですが、 結果だけ見れば原文を見て良かったと言えるでしょう。
 隠れているユニットは文字通り、 地形や構造物の陰に隠れている(=hidden)ことが分かったのですから。



 (1)潜伏状態の定義でも少し触れましたが、 樹木や草の中ではなく建物や地形の起伏の中に潜んだ状態は 隠れている状態である、と定義されていました。

 潜伏状態と大きく異なる点は、まず、 隠れているかどうかを選択できること。
 潜伏状態は、カモフラージュを除けば、ほぼ自動的に適用されます。 そのユニットが潜伏を望んでも望まなくても、その意思は配慮されません。
 移動射撃を行えば発見される確率は増えますが、それだけです。
 また、潜伏状態を暴かれた(探知された)ユニットは、 再び潜伏状態に戻ることもできません。
 探知しているユニットを撃破するか、移動や煙幕によって視線を遮ることで再度の潜伏も可能ですが、 撃破も移動もなしで潜伏状態に戻ることは不可能でした。
 しかし隠れている状態は、そのユニットが行動を行う時点で決めることができるのです。

 隠れているかどうかの選択は大きな違いですが、 この原因は建物や地形の起伏が視線を完全に遮ることにあるのでしょう。
 隠れるために用いられる建物や地形の起伏は遮蔽物です。 遮蔽物に隠れているキャラクターは、射撃することも射撃されることも有り得ません。
 ですから、遮蔽物=建物や地形の起伏の陰で“頭を低くして”いれば、隠れている状態
 遮蔽物=建物や地形の起伏から頭を出して探知したり、身を乗り出して射撃をしたりすれば、 隠れている状態ではなくなる、という訳です。



 隠れているかどうかを選択できるものですから、 それに付随して隠れている状態には厄介な問題が生じてしまいました。
 つまり、
> 隠れているユニットでも、その存在が敵に知られていることはあります。
> 探知されているユニットは、隠れたまま移動しないかぎり探知されたままです。

 という問題のことですが、これは仕方のないことでしょう。

 例えば、とある隠れている状態のユニット(A)が、 とある建物から突然現れて敵ユニット(B)を奇襲攻撃したと想定します。
 行動開始の時点でユニット(A)は隠れている状態から隠れていない状態へ、 その状態を変更しました(そうしなければユニット(A)は敵ユニット(B)を探知することも攻撃することもできません)。
 ユニット(A)は1回だけユニット(B)を攻撃すると、次の戦闘ラウンドには再び建物の中へ隠れてしまいます。
 再び隠れている状態に戻ってしまいました。

 攻撃を受けた敵ユニット(B)は反撃を試みますが、攻撃してきたユニット(A)は再び建物の陰に隠れ、 隠れている状態に戻っています。
 隠れている状態に対しては視線を引けませんから、反撃を加えることもできません。
 迂闊に動けなくなったユニット(B)は、ユニット(A)が隠れている建物を半包囲する形へ隊形を変更し、 再びユニット(A)が現れる瞬間を待ち受けることにしました。
 そこに隠れていることが分かっているのであれば、ユニット(A)の奇襲攻撃は成立しないでしょう。
 これが所謂、探知されているけれど隠れている状態、だと思われますが、 再び姿を現して隠れていない状態となってしまえば、 次の戦闘ラウンドに隠れている状態を選択するまで、隠れていない状態が続きます。
 その間に反撃を行って、ユニット(A)を殲滅してしまえば良い。
 ユニット(B)の指揮官は、そう考えました。

 此処で隠れている状態のユニット(A)はどんな行動を取るべきでしょうか?
 そのまま正直に同じ建物から姿を現したら、待ち構えている敵ユニット(B)の反撃を受け、袋叩きにされてしまうことは明らかです。
 そうした状況においてユニット(A)は、数軒隣の建物まで隠れた状態のままで移動して、 異なる方向から敵ユニット(B)を不意討ちすべきでしょう。
 あるいはこっそりと逃げ出すか。

 待ち伏せている敵ユニット(B)は、隠れている状態のユニット(A)が同じ建物に隠れたままなのか、 それとも移動して居なくなっているのか、簡単には知ることが出来ません。
 隠れている状態のユニット(A)も、敵ユニット(B)の待ち伏せ状態を確かめる(探知する)ことはできませんから、 このあたりの行動は双方の駆け引きとなるのでしょう。実に面白くなりそうですね。
 メガトラベラーの特殊ルールで追加された隠れているユニット=Hidden Unitsのルールは、 こうした戦場の駆け引きを再現するために取り入れられたルールなのです。
 ルールの内容を理解してみると、実に良く出来たルールだと思えました。




(3)潜伏しているユニットの探知

 そして英文エラッタには潜伏状態と探知に関連したルールが追加されていました。

 まずは「プレイヤーズ・マニュアル、p.90」に記載されていた部分から。

>潜伏ユニットの探知:
>
> 敵ユニットに探知されていないユニットは、
> 敵に位置を知られていないのですから、戦闘マップに置くべきではありません。
> 未探知ユニットの位置や移動は、別紙に記録しておくと良いでしょう
> (戦闘マップのコピーに書いたり、マス目に番号をうって記録するのが
>  よいでしょう)。
> あるいは、いくつかのダミー(にせもの)の駒とともに、
> 裏返した駒を地図上に置くという方法も考えられます。


 残念ながら、これだけでは意味が通りません。
 誰が読んでも、これには何か続きがある筈だ、と思うことでしょう。

 英文エラッタで追加されたルールは以下の通りです。

>潜伏ユニットの探知:
>
> 潜伏状態のユニットを探知する行為判定
>  〈難〉、〈偵察〉、1戦闘ラウンド(確定)
>
> レフリー:
>  この行為判定は、潜伏しているユニット毎にサイコロを振ってください。
>  偵察技能のDMは、潜伏しているユニットに対して、
>  潜在的に視線を引けるユニットの中から、最高の技能レベルを適用します。
>
> 以下に該当する場合は、難易度をひとつ下げてください。
>
> ・潜伏ユニットが移動している場合
>  (ただし、この場合ポップアップは移動とみなしません)。
> ・潜伏ユニットが、音光「高」の兵器で射撃を行なった場合。
>  暗闇においては、音光「中」の兵器でも適用します。
>
> 以下に該当する場合は、難易度をひとつ上げてください。
>
> ・潜伏ユニットが、カモフラージュされている場合。
> ・潜伏ユニットと潜在的視認ユニットとの距離が、超遠距離以上の場合。
>  薄暗がりの場合は中距離、完全な闇の場合は近距離でも適用されます。
> ・暗闇の中では、探知の難易度はすべてにおいて、1レベル上昇します。


 これでようやく、意味が通ったルールになりました。

 実のところ、私がずっと待ち望んでいたルールです。
 戦場における、命懸けのかくれんぼ(潜伏と探知の)ルールっ!
 これがなければ、リアルな戦場シミュレートは出来ません。

 このルールのおかげで、これまでは一方的に撃たれるままだった歩兵も、 砲兵の目を逃れる(欺く)ことができるようになりました。
 超遠距離以上の距離で塹壕に隠れていれば、まず見つからることはないでしょう。
 敵砲兵は砲弾の無駄を承知で弾幕射撃を行なうか、歩兵側が行動を開始するまで砲撃を控えていることになります。





潜伏状態の探知


 ここでは、潜伏状態にあるユニットの探知について考察します。

 潜伏状態のユニットを探知する行為判定についてはすでに説明した通りですが、その難易度は、

>  〈難〉、〈偵察〉、1戦闘ラウンド(確定)

 です。
 〈技能なし可〉という条件が付いていませんから、 〈偵察〉技能を持っていない者が潜伏状態のユニットを探知しようとしても、 その難易度は1レベル上がって〈至難:15+〉になってしまいます。
 DMはどうやっても付きませんから、素人が潜伏状態のユニットを探知するのは無理だ、ということなのでしょう。



 さて、上記の行為判定の難易度を上下させる要素は、以下のようになっていました。

難易度をひとつ下げる条件

> ・潜伏ユニットが移動している場合
>  (ただし、この場合ポップアップは移動とみなしません)。
> ・潜伏ユニットが、音光「高」の兵器で射撃を行なった場合。
>  暗闇においては、音光「中」の兵器でも適用します。


難易度をひとつ上げる条件

> ・潜伏ユニットが、カモフラージュされている場合。
> ・潜伏ユニットと潜在的視認ユニットとの距離が、超遠距離以上の場合。
>  薄暗がりの場合は中距離、完全な闇の場合は近距離でも適用されます。
> ・暗闇の中では、探知の難易度はすべてにおいて、1レベル上昇します。


 難易度を下げる条件が「移動」と「射撃」で2つ。
 難易度を上げる条件が「カモフラージュ」と 「両者の距離が超遠距離以上(暗闇の場合は中距離や近距離でも適用)」、 「暗闇の中」で、3つも存在します。
 これらの条件をすべて組み合わせて考察していくのは大変ですが、幾つかの場合分けを行い、何とか評価していくことにしましょう。



 折角ですから、難易度を上下させる条件と〈偵察〉技能のレベル数(=+DMの大きさ)によって、 潜伏ユニットの探知成功率がどれだけ変化するのか、ちょっと計算してみました。


            表1 潜伏ユニットの探知成功率

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 左の欄は、潜伏ユニットを探知する行為判定の難易度です。
 難易度は一番上が最も難しい〈不可能:19+〉で、その下に〈至難:15+〉〈難:11+〉〈並:7+〉と続き、 一番下が最も易しい〈易:3+〉になりました。

 右の欄は、偵察技能のレベル数に応じた成功率(%)

 技能なしの場合は容赦なく難易度がひとつ上昇する上に、+DMが適用されません。 ですから難易度が〈並:7+〉以下の条件でなければ、成功を期待できないこととなります。
 予想通り、技能なしは不利でした。 よほど都合の良い条件が揃わない限り、素人が潜伏状態のユニットを探知することは困難なのです。

 偵察技能のレベル数=+DMの大きさは、 +2+4+8、の3つを選びました。
 イメージとしては、
 一般的な練度の兵士の〈偵察〉技能レベルが2レベル=DM+2
 優秀な兵士の〈偵察〉技能レベルが4レベル=DM+4
 優秀な兵士の〈偵察〉技能に加え、優秀な指揮官が〈戦術ポイント〉をフルに使って、合計DMが+8
 という状況を想定しています。




(1)明るい場所における、潜伏と探知

 という訳で、条件が一番簡単になりそうな環境である明るい場所を想定してみました。 周囲には十分な光量が存在しているので、行為判定の難易度を上げる暗闇は存在しません。

 その場合、

難易度をひとつ下げる条件は2つのままですが、

> ・潜伏ユニットが移動している場合
>  (ただし、この場合ポップアップは移動とみなしません)。
> ・潜伏ユニットが、音光「高」の兵器で射撃を行なった場合。


難易度をひとつ上げる条件の方は、以下の2つだけに限定されました。

> ・潜伏ユニットが、カモフラージュされている場合。
> ・潜伏ユニットと潜在的視認ユニットとの距離が、超遠距離以上の場合。




 上記の中でも更に条件を限定して、潜伏状態のユニットが 樹木や草の中に潜んでいる、と想定してみましょう。
 つまり植生を利用した潜伏状態です。

 この潜伏状態は、都合の良い地形 まばらな樹木と、草(まばらでも密でも)が同時に存在する地形が存在しなければ実行できませんが、 カモフラージュのような準備は必要ありませんし、 暗闇の中のように夜間限定ということもありません。
 何より潜伏状態を継続したまま移動射撃が可能である、 というメリットはとても魅力的です。
 ある意味、戦場で最も多用される潜伏状態ではないかと思います。



 では、植生を利用した潜伏状態を探知する場合の行為判定について、成功率を求めてみましょう。


   表2 潜伏ユニットの探知成功率(明るい場所:植生を利用した潜伏状態)

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 難易度をひとつ下げる条件は前述の通り、 移動射撃の2つだけですから、
 移動射撃のどちらか片方だけを行えば難易度−1レベル、
 移動射撃の双方を行うと難易度−2レベル、
 という条件になるでしょう。
 射撃による難易度低下が、 音光「高」の兵器で射撃を行なった場合だけに限定されることに注意してください。 音光「中〜低」の兵器で射撃を行なった場合は難易度の低下が起こらないのです。

 また、難易度をひとつ上げる条件は、カモフラージュを行ってはいないため 両者の距離が超遠距離以上の1つだけしか存在していません。

 これらの条件を場合分けした結果、6通りの条件が考えられました。



 植生を利用した潜伏状態のユニットが超遠距離以上の距離に存在する場合、 技能なしの素人はもちろんのこと、 DM+2の一般的な兵士にも見つけることができません。
 DM+4の優秀な兵士に探させても8.3%の成功率です。
 1回や2回の行為判定で簡単に見つかるとは思えませんから、 この状況ならばほぼ見つからないと断言しても良いでしょう。
 DM+8で探せば半分以上の確率(=58.3%)で見つけられますが、流石にこれは例外。

 そのユニットが移動射撃のどちらか片方だけを行った場合、 探知の難易度がひとつ下がりますので、素人にはまだ見つけられませんが、 一般的な兵士には27.8%の確率で、 優秀な兵士ならば58.3%の高確率で見つけられるようになりました。
 この状況は、潜伏状態のユニットが待ち伏せに失敗して場所を変えようと移動しているか、 待ち伏せに成功して射撃を始めた、という状態だと思われます。

 同じユニットが移動射撃の双方を行った場合、難易度が2つ下がりました。
 素人でも8.3%の確率で、 一般的な兵士優秀な兵士ならば、 ほぼ確実に(=97.2%)見つけることができるでしょう。
 移動しながら射撃を実行した場合、 そのユニットが潜伏状態にある意味が無くなる、ということです。



 植生を利用した潜伏状態のユニットが遠距離以内に存在する場合、 素人は見つけられませんが、 一般的な兵士には27.8%の確率で、 優秀な兵士ならば58.3%の高確率で見つけられます。
 1〜3回の行為判定を繰り返せば、その潜伏ユニットはほぼ見つかっているでしょうから、 この距離(遠距離以内)で潜伏状態になることは、あまり賢いことではありません。

 同じユニットが遠距離以内移動射撃の片方、 あるいは双方を行った場合、そのユニットは確実に探知されてしまいます。
 やはり潜伏状態にあることが有意義だとは言えないでしょう。



 植生を利用した潜伏状態は、超遠距離以上の距離で、 移動射撃も行わない場合にのみ、効果的なようです。
 音光「中〜低」の兵器で射撃を行なうのであれば難易度の低下は起こりませんから、 それらの兵器で超遠距離以上から射撃を行う、という場合を含めても良いでしょう。
 しかし、どうやっても遠距離以内まで見つからずに接近することはできません。
 更に効果的な待ち伏せを行うためには、別の方法を考えなければならないようです。



 という訳で、今度はカモフラージュによる潜伏状態を考えてみましょう。
 カモフラージュは、戦闘の開始時にカモフラージュされていること、 そしてカモフラージュ中に何の行動もできないことを除けば、とても有用です。
 何と言っても、潜伏状態を探知する際の難易度がひとつ難しくなる(見つかり難くなる)という点が有り難い。



 カモフラージュによる潜伏状態を探知する場合の成功率は、以下の通りでした。


  表3 潜伏ユニットの探知成功率(明るい場所:カモフラージュによる潜伏状態)

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 カモフラージュ中には移動や行動を行えないという制約条件から、今回の場合分けは2つだけで済みました。
 その分け方は、両者の距離が超遠距離以上か、という条件です。



 カモフラージュによる潜伏状態のユニットが超遠距離以上の距離に存在する場合、 そのユニットは見つかることが有り得ません
 素人は当然だとして、 一般的な兵士にも優秀な兵士にも、見つけることは不可能です。 かろうじてDM+8で探せば8.3%の確率で見つけることが可能ですが、 これだけの低確率ならば見つかることが有り得ないと断言しても良いでしょう。

 同じユニットが遠距離以内に存在する場合、 素人一般的な兵士には見つけることができません。
 優秀な兵士ならば8.3%DM+8ならば58.3%の確率で見つけることが可能ですが、 この状況はほぼ見つからないと言えるでしょう。

 カモフラージュによる潜伏状態移動射撃も行えませんが、 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢となるようです。




(2)薄暗がりにおける、潜伏と探知

 次に簡単な条件である環境、薄暗がりの中、です。

 原文では、薄暗がり=partial darkness、でした。
 HJの日本語訳では分かり難くなっていましたが、 薄暗がり暗闇(darkness)の中に含まれます。
 命中判定と探知の難易度をひとつ上げる条件の中に、薄暗がりも含まれているということで、 「プレイヤーズ・マニュアル、pp.88-89、視線−照明」の中に書かれている、

> 完全な闇の場合は、「視認と探索」ルールを適用するとともに、
> 命中判定および探索の行為の難易度を1レベル上げてください。


 の一文は、完全な闇が誤訳である、と判明しました。
 完全な闇であっても薄暗がりであっても、 命中判定と探知の難易度が1レベル上がることに変わりはない、ということです。
 この誤訳、結構重要な発見だと思いますが、どうでしょう。

 もちろん、暗闇の影響は、電子照準器や暗視ゴーグル等の装備を持っていない場合に限られますが、 そうした装備を用意できない状況、無効化できる状況であるならば、 薄暗がりの活用は戦況を大きく変えることができるでしょう。



 という訳で難易度をひとつ上げる条件である、

> ・暗闇の中では、探知の難易度はすべてにおいて、1レベル上昇します。

 の条件が自動的に適用されました。その他には

難易度をひとつ下げる条件として、

> ・潜伏ユニットが移動している場合
>  (ただし、この場合ポップアップは移動とみなしません)。
> ・潜伏ユニットが、音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合。


 の2つが存在。

難易度をひとつ上げる条件も、以下の2つだけとなります。

> ・潜伏ユニットが、カモフラージュされている場合。
> ・潜伏ユニットと潜在的視認ユニットとの距離が、中距離以上の場合。




 再び、植生を利用した潜伏状態を探知する場合から、その成功率を求めてみました。


   表4 潜伏ユニットの探知成功率(薄暗がり:植生を利用した潜伏状態)

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 難易度をひとつ下げる条件は今回も、 移動射撃の2つだけですから、
 移動射撃のどちらか片方だけを行えば難易度−1レベル、
 移動射撃の双方を行うと難易度−2レベル、です。
 今回から射撃による難易度低下が、 音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合まで拡大されたことに注意してください。 難易度の低下が起こらないのは音光「低」の兵器で射撃を行なった場合だけです。

 また、難易度をひとつ上げる条件は、カモフラージュを行っていないため 両者の距離が中距離以上の1つしか存在しませんでした。

 これらの条件を場合分けした結果、今回も6通りの条件が考えられます。



 薄暗がりにおいて、 植生を利用した潜伏状態のユニットが中距離以上の距離に存在する場合、 技能なしの素人からDM+2の一般的な兵士DM+4の優秀な兵士にも、見つけることが不可能だと判明しました。
 DM+8の状況まで持ち込んでも、成功率が8.3%しかありません。
 この条件において、潜伏状態のユニットが見つかることは有り得ない、ということです。

 このユニットが 移動射撃のどちらか片方だけを行った場合、探知の難易度はひとつ下がりますが、 それでも素人一般的な兵士に見つけることはできません。
 潜伏状態のユニットを見つけるためには、最低でも優秀な兵士が必要で、 成功率は8.3%しかありませんでした。
 DM+8で探せば58.3%の高確率で見つけられますが、これも例外とします。
 潜伏状態のユニットはほぼ見つかりません

 このユニットが移動射撃の双方を行った場合、難易度が2つ下がりました。
 一般的な兵士には27.8%の確率で、 優秀な兵士ならば58.3%の高確率で見つけられるということです。
 こうなると、そのユニットが潜伏状態にあっても、意味が無くなってしまうでしょう。



 薄暗がりにおいて、 植生を利用した潜伏状態のユニットが近距離以内に存在する場合、 素人一般的な兵士に見つけることはできず、 優秀な兵士による探知成功率も8.3%だけでした。
 近距離以内に近付いても、移動射撃を行わず、 じっとしているユニットならばほぼ見つかることは有り得ません

 同じユニットが移動射撃の片方、 あるいは双方を行った場合、そのユニットはほぼ確実に探知されてしまいます。
 潜伏状態にあることが有意義だとは思えません。



 薄暗がり中距離以遠において、 植生を利用した潜伏状態のユニットは自由に移動することが可能であり、 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なえる、ということが判明しました。
 待ち伏せ以外にも対戦車戦闘対砲兵戦に有効な状況でしょう。
 見つからずに敵に接近するということならば、中距離までは問題なく移動できます。
 相手との交戦距離を減らし、有効な打撃を与える手段としては、極めて有効だと言えるでしょう。



 今度は薄暗がりの中で、更にカモフラージュによる潜伏を試みました。
 薄暗がりの中で、 カモフラージュによる潜伏状態を探知する場合の成功率は、以下の通りです。


  表5 潜伏ユニットの探知成功率(薄暗がり:カモフラージュによる潜伏状態)

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 カモフラージュ中には移動や行動を行えないので、今回も場合分けは2つだけです。
 両者の距離が中距離以上か近距離以内か、という区別。



 薄暗がりにおいて、 カモフラージュによる潜伏状態のユニットが中距離以上の距離に存在する場合、 そのユニットは絶対に見つかることが有り得ません

 同じユニットが近距離以内に存在する場合は、 優秀な兵士にも、見つけることは不可能でした。
 DM+8で探せば8.3%の確率で見つけることもできますが、 実質的には見つかることが有り得ないと断言して良いレベルです。

 薄暗がりにおけるカモフラージュ移動射撃も行えませんが、 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢であると判明しました。



 最後は、薄暗がりそれ自体を利用した潜伏状態について、探知の成功率を求めました。
 薄暗がりの中では、「中距離」より遠く(「遠距離」以遠)のユニットは潜伏状態にあるとみなされますので、 そもそも遠距離以上の距離に存在するユニットに対しては、 視線が通らないということです。

 薄暗がりを利用した潜伏状態のユニットを探知できる確率については、以下の通り。


    表6 潜伏ユニットの探知成功率(薄暗がり:薄暗がりを利用した潜伏)

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 この表は、既出の表4とほぼ同様です。

 移動射撃のどちらか片方だけを行えば難易度−1レベル、
 移動射撃の双方を行うと難易度−2レベル。
 今回から射撃による難易度低下が、 音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合まで拡大されました。 難易度の低下が起こらないのは音光「低」の兵器で射撃を行なった場合のみ。

 この表6の条件では 植生を利用した潜伏カモフラージュによる潜伏を行っていないため、 両者の距離が中距離以内になれば、自動的に視線が通り、探知が成功 した状況になります。

 薄暗がりを利用して潜伏できるのであれば、 潜伏状態のユニットは植生を利用する必要もなく、 遠距離以上の距離帯を自由に移動することができました。
 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことも可能です。
 待ち伏せ以外にも対戦車戦闘対砲兵戦に有効な状況でしょう。
 ただし相手の中距離以内まで接近するためには、 植生の利用カモフラージュなど、 薄暗がり以外の潜伏手段が必要になるでしょう。



 それにしても夜戦という戦術は、 相手に見つからず交戦距離を縮めるため、極めて有効な戦術なのだと思い知らされました。




(3)完全な暗闇における、潜伏と探知

 最後の条件、完全な闇の中、を想定してみました。

 完全な闇の中では、「近距離」より遠く(「中距離」以遠)のユニットは潜伏状態にあるとみなされます。
 視線は「近距離」までしか届かない、ということですね。
 「中距離」以遠のユニットは自動的に潜伏状態となる訳ですが、 それら潜伏状態のユニットを探知できる可能性はどれだけあるのでしょうか?



 原文では、完全な闇=total darkness、です。
 やはり暗闇(darkness)の中ですから、難易度をひとつ上げる条件である、

> ・暗闇の中では、探知の難易度はすべてにおいて、1レベル上昇します。

 の条件が今回も自動的に適用。その他には

難易度をひとつ下げる条件として、

> ・潜伏ユニットが移動している場合
>  (ただし、この場合ポップアップは移動とみなしません)。
> ・潜伏ユニットが、音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合。


 の2つと、

難易度をひとつ上げる条件

> ・潜伏ユニットが、カモフラージュされている場合。
> ・潜伏ユニットと潜在的視認ユニットとの距離が、近距離以上の場合。


 の2つが適用されています。



 今回も、植生を利用した潜伏状態を探知する成功率から、計算を始めました。


    表7 潜伏ユニットの探知成功率(完全な闇:植生を利用した潜伏状態)

BW52_Fig07.gif - 12.9KB

 難易度をひとつ下げる条件は今回も、 移動射撃の2つだけですから、
 移動射撃のどちらか片方だけを行えば難易度−1レベル、
 移動射撃の双方を行うと難易度−2レベル、です。
 今回も射撃による難易度低下が、 音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合まで拡大されていることに注意してください。 難易度の低下が起こらないのは音光「低」の兵器で射撃を行なった場合だけです。

 また、難易度をひとつ上げる条件は、カモフラージュを行っていないため 両者の距離が近距離以上の1つしか存在しません。

 これらの条件を場合分けした結果、今回も6通りの条件が考えられましたが、結果は表4、薄暗がりにおいて、 植生を利用した潜伏状態のユニットを探知する場合とほとんど変わりませんでした。
 唯一の相違点は両者の距離が中距離以上で難易度上昇の条件が、 両者の距離が近距離以上に変わったことだけです。



 完全な闇における近距離以上の距離帯において、 植生を利用した潜伏状態のユニットは自由に移動することが可能であり、 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことができます。
 見つからずに敵に接近するということならば、近距離までは問題なく移動できました。 完全な闇とは、実に恐ろしい状況なのです。



 完全な闇の中で、カモフラージュによる潜伏を行う場合も、 薄暗がりの場合と同様でした。


  表8 潜伏ユニットの探知成功率(完全な闇:カモフラージュによる潜伏状態)

BW52_Fig08.gif - 4.80KB

 完全な闇においてもカモフラージュによる潜伏状態のユニットは、 近距離以上の距離で発見されることは有り得ません

 同じユニットが至近距離に存在する場合は DM+8で探せば8.3%の確率で見つけることもできますが、 実質的には見つかることが有り得ないと断言して良いレベルです。

 完全な闇におけるカモフラージュも 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢です。



 完全な闇を利用した潜伏状態について、 潜伏状態にあるユニットを探知できる確率は以下の通りでした。


    表9 潜伏ユニットの探知成功率(完全な闇:完全な闇を利用した潜伏)

BW52_Fig09.gif - 10.0KB

 この表も、既出の表7とほぼ同様です。

 移動射撃のどちらか片方だけを行えば難易度−1レベル、
 移動射撃の双方を行うと難易度−2レベル。
 今回から射撃による難易度低下が、 音光「高〜中」の兵器で射撃を行なった場合まで拡大されました。 難易度の低下が起こらないのは音光「低」の兵器で射撃を行なった場合のみ。

 表9の条件では、 植生を利用した潜伏カモフラージュによる潜伏を行っていないため、 両者の距離が近距離以内になれば、自動的に視線が通り、探知が成功 した状況になります。

 完全な闇を利用して潜伏できるのであれば、 潜伏状態のユニットは植生を利用する必要もなく、 中距離以上の距離帯を自由に移動することができました。
 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことも可能です。
 ただし相手の近距離以内へ接近するためには、 植生の利用カモフラージュなど、 薄暗がり以外の潜伏が必要だと分かりました。




(4)異なる明るさが組み合わさった場所における、潜伏と探知

 薄暗がり完全な闇は視線を遮り、 遠距離以上もしくは中距離以上に存在する敵ユニットの多くを 潜伏状態へ変えてしまいます。
 薄暗がりであれ、完全な闇であれ、 とにかく暗闇は厄介なものですが、幾つかのアイテムを利用すれば 暗闇という障害を払拭することが可能でした。



 その1つは電子照準器暗視ゴーグルといった光学装置。
 プレイヤーズ・マニュアル、p.89に明記されている通り、 これらを使用しているキャラクター、ロボット、車輌は暗闇の影響を受けません。
 同じ環境でも、照明が不足している、とは見なされないのです。



 2つ目は照明装置
 当たり前の話ですが、十分な光源が存在するのであれば、そこは暗闇ではなくなります。
 暗闇ではないのですから悪い影響も受けません。
 問題は、光の届く範囲が有限である、ということでしょうか。

 このあたりはレフリーの裁量だと思いますが、 その照明装置街灯のようなものであれば、 街灯が置かれているマスは十分な明るさで、 その周囲1マスが薄暗がり、ということで良いのではないでしょうか。
 田舎で良く見かける低出力の街灯であれば、15m先はもう完全な闇です。 これで問題はないでしょう。
 もう少し出力の高い街灯が置かれている場所(都会や軍事施設)であれば、 街灯が置かれているマスと隣接したマスが十分な明るさで、 街灯から2〜3マス離れたマスが薄暗がりになるでしょう。
 都会の道路は、田舎育ちの私から見て明る過ぎます。

 参考とするため、私が「ハウス・ルール」として用いている、 街灯の効果範囲を下の表にまとめました。


       表10 街灯の効果範囲(街灯によって照明される範囲)

BW52_Fig10.gif - 4.50KB

 人口の少ない場所、あまり重要ではない場所の場合、 低出力の街灯が道路に沿って、30〜60メートル置きに設置されています。
 極端な場合、人家や交差点の近くにしか設置されていない場合もあるでしょう。
 そうした場所において、道路上の大半は薄暗がりであり、完全な闇もしばしば存在します。 道路から外れた場所は周囲の植生状況にもよりますが、大部分が完全な闇でしょう。

 人口の多い都市部、警備が不可欠な軍事施設などであれば、 高出力の街灯が道路やフェンスに沿って、15メートル置きに設置されています。
 ですから道路やフェンス全体に加えて、隣接した1マスも常に十分な明るさとなっているでしょう。
 道路やフェンスから2〜3マス(30〜45メートル)離れた場所も薄暗がりですから、 不審者や襲撃者が暗闇に身を潜める(潜伏する)ためには、 道路やフェンスから4マス(60メートル)以上離れなければなりません。
 これだけの安全距離を確保できるのであれば、防犯目的には十分ではないでしょうか。



 3つ目は投光器
 特定の場所を遠くから明るく照らし出す照明装置ですが、 これについても具体的な記述が見つからないので「ハウス・ルール」をでっち上げました。
 用いている投光器は、一応、 メガ・トラベラーの輸送機器設計ルールに掲載されているスポットライト、1.0kwを想定しています。

 投光器によって照明される範囲は指向性がありますので、散弾銃の致傷範囲に準えてみました。
 光の当たる角度によって照明される範囲は細長い楕円形となりますが、 その楕円形の大きさを、短径15メートル、長径15〜60メートルと想定することで、 ルール的には幅1マス、長さ1〜4マスの範囲が十分な明るさで照らし出されている、と考えた訳です。

 投光器は固定式でも構いませんが、プレイヤー・キャラクターが潜入するような場合は、 照明される範囲が特定のパターンに沿って移動している、という状況の方が面白いでしょう。


      表11 投光器の効果範囲(投光器によって照明される範囲)

BW52_Fig11.gif - 11.3KB

 投光器設置高さ:1.5m〜15mによって、 照明できる範囲が大きく異なります。
 基本的には、高い位置に設置された投光器ほど遠くを照らすことが可能になっていますが、 その反面、近い距離を照らした場合は角度の関係で照明できる範囲が小さく(短く)なってしまうのです。

 設置高さ:1.5m地上車ヘッドライトか、 キャラクターの抱え上げた(装備している)投光器をイメージ。
 中距離で30メートル:2マス分を照らし出すことしかできません。
 そんな小さなもので幅15メートルを十分な明るさで照らせるのか、と聞かれたら困ってしまいますが、 納得できない方は、複数のヘッドライト投光器を集めて幅15メートルを照らしている、 と解釈してください。

 設置高さ:4.5mは、平屋家屋の屋上か、 建物二階の窓やテラスに設置された投光器をイメージしています。
 中距離ならば15メートル:1マス分、 遠距離ならば45メートル:3マス分を照らし出すことができることにしました。

 設置高さ:7.5mは、二階建て家屋の屋上か、 建物三階の窓やテラスに設置された投光器をイメージ。
 中距離ならば15メートル:1マス分、遠距離ならば30メートル:2マス分、 遠距離ならば45メートル:3マス分を照らし出せることとしました。

 最後、設置高さ:15mは、城壁の上か、 高い監視塔に設置された投光器をイメージしました。
 遠距離ならば15メートル:1マス分、超遠距離ならば30メートル:2マス分、 遠方ならば60メートル:4マス分を照らし出すことができます。
 中距離を照明困難にしたのは弱点を作りたかったためですから、 レフリーが弱点は必要ないと思われるのであれば中距離でも15メートル:1マス分を照らせるようにして下さい。



 4つ目、最後の光源は照明弾
 「レフリーズ・マニュアル、pp76-78」に記載されている通り、 迫撃砲低初速砲高初速砲は、 照明弾を用いた射撃を行うことが可能です。
 明記されていませんがオート・キャノン質量投射砲照明弾を利用可能でしょう。

 照明弾は、その口径とテックレベルに応じた効果範囲を備えています。
 この効果範囲は照明弾を中心とした球状の空間であり、 その内側が十分な明るさで照明されているのだと考えれば良いでしょう。
 現実において照明弾は、 パラシュートに吊り下げられた状態でゆっくりと(秒速10メートル前後の速度で)落ちてくるようですが、 そのあたりは面倒ですから考えなくても良いでしょう。 時間と共に明るさや効果範囲が変化する照明弾などという代物は、確実にプレイアビリティを損ねます。
 照明弾の効果が発揮される時間は何処にも記述が見つかりませんでしたが、 現実の資料を参考にすると1分〜2分の間は十分な光を放ち続けるようですから、単純に、
 照明弾1分間(=10戦闘ラウンド)の間、空中に浮かんで照明効果を発揮する。
 1分間が過ぎたら、そのまま跡を残さずに消滅する。

 という使い方で構わないと思います。



 以下に照明弾の効果範囲を纏めました。
 迫撃砲低初速砲高初速砲と、 撃ち出すが異なっても、照明弾の効果範囲は同じです。
 変数は口径とテックレベルだけでした。


       表12 照明弾の効果範囲(照明弾によって照明される範囲)

BW52_Fig12.gif - 9.04KB

 照明弾の効果範囲はテックレベルが1つ上がる毎に5メートル増える、 というルールですから、テックレベル=5テックレベル=15の間では、 効果範囲に50メートルの違いがありました。
 燃焼させている材料の違い、ということなのでしょうか。

 例えば60メートル(4マス)の効果範囲が欲しい場合、 テックレベル=5ならば口径=10cmが必要となりますが、 テックレベル=15になると口径=4cmで十分である、ということが分かりました。

 口径=2cm照明弾は、効果範囲を持ちません。
 けれどテックレベルが1つ上がる毎に効果範囲が5メートル増えるのであれば、 口径=2cm照明弾も効果範囲を持つのではないかと考え、 効果範囲を求めています。
 この解釈が正しいのかどうか心配ですが。




(5)潜伏の有用性と危険性のまとめ

 それぞれの潜伏状態について、潜伏状態のユニットを探知できる確率について考察しました。


 十分に明るい場所における 植生を利用した潜伏状態は、超遠距離以上の距離で、 移動射撃も行わない場合にのみ、効果的なようです。
 音光「中〜低」の兵器で射撃を行なうのであれば難易度の低下は起こりませんから、 それらの兵器で超遠距離以上から射撃を行う、という場合を含めても良いでしょう。
 しかし、どうやっても遠距離以内まで見つからずに接近することはできません。

 カモフラージュによる潜伏状態は、戦闘の開始時にカモフラージュされていること、 そして移動射撃もできないことを除けば、とても有用です。
 何と言っても、潜伏状態を探知する際の難易度がひとつ難しくなる(見つかり難くなる)ため、 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢となるでしょう。



 薄暗がり中距離以遠において、 植生を利用した潜伏状態のユニットは自由に移動することが可能であり、 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なえる、ということが判明しました。
 待ち伏せ以外にも対戦車戦闘対砲兵戦に有効な状況でしょう。
 見つからずに敵に接近するということならば、中距離までは問題なく移動できます。
 相手との交戦距離を減らし有効な打撃を与える手段としては、極めて有効だと言えるでしょう。

 薄暗がりにおけるカモフラージュは 実質的に見つかることが有り得ないレベルです。
 移動射撃も行えませんが、 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢であると判明しました。

 薄暗がりの中では、 遠距離以上のユニットに対して視線が通りません
 薄暗がりを利用して潜伏できるのであれば、 潜伏状態のユニットは植生を利用する必要もなく、 遠距離以上の距離帯を自由に移動することができました。
 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことも可能です。



 完全な闇における近距離以上の距離帯において、 植生を利用した潜伏状態のユニットは自由に移動することが可能であり、 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことができます。
 見つからずに敵に接近するということならば、近距離までは問題なく移動できました。

 完全な闇におけるカモフラージュも 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢です。 至近距離に存在しても、まず見つかることが有り得ませんので。

 完全な闇の中では、 中距離以上のユニットに対して視線が通りません
 完全な闇を利用して潜伏できるのであれば、 潜伏状態のユニットは植生を利用する必要もなく、 中距離以上の距離帯を自由に移動することができました。
 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なう、ことも可能です。





視線はどこまで届くのか?


 考察の51回、「砲兵7:対戦車砲」では、 テックレベル=14〜15において、対戦車戦闘が行われる距離帯は超遠方〜遠方である、 ということが明らかになりました。
 ダメージ期待値の大きさから、多くの戦車は遠方で撃破されている、と推測できた訳ですが、 ここで新たな疑問が生じました。

 遠方(500m〜5km)や超遠方(5km〜50km)といった遠い場所に対して、直接射撃は可能なのでしょうか?

 そもそも直接射撃を行う大前提として、 攻撃ユニットが目標を視認できなければなりません。
 対戦車砲の射程がどれだけ大きくても、例え超遠方や地域間距離まで届くとしても、 何らかの理由で目標が超遠距離までしか視認できないとしたら、 その対戦車砲も超遠距離までしか撃つことができない、のです。

 目標を見ることができなければ、その目標を撃つこともできない。

 実に当たり前の話ですが、メガトラベラーの個人戦闘ルールは愚直にそれを実践していることが分かりました。
 そのルールに縛られて、対戦車砲の最大射程も、目標を視認できる距離に制限されてしまう訳です。

 それでは、目標を視認できる最大距離、はどうやって決まるのでしょう?
 その問題を解決できれば、

 遠方(500m〜5km)や超遠方(5km〜50km)といった遠い場所に対して、直接射撃は可能なのか?

 といった疑問も自動的に解決することでしょう。

 この章では新たな疑問を解消するため、視線は何処まで届くのか? という問題を考察してみようと思います。




(1)地平線までの距離

 山や丘陵、背の高い植物、建築物などに視線を遮られるのでない限り、視線は地平線まで届きます。
 つまり目標を視認できる最大距離は、地平線までの距離に等しい、と考えることが出来る訳です。

 メガトラベラーの世界において地平線はどれだけ遠くにあるものなのか、それについての一覧表が見つかりました。

 「レフリーズ・マニュアル、p23、地平線表」を以下に転載します。


        表13 地平線までの距離(距離帯表記の公式ルール)

BW52_Fig13.gif - 4.57KB

 残念ながら地平線に関する情報は、この表以外に見つかりません。
 何の補足説明もなく、上記の表が示されているだけなのです。
 ですから、距離帯で示された地平線までの距離を具体的にどう用いれば良いのかも分かりませんでした。

 計算値と比べての推測ですが、その世界の地平線が上記の距離帯に存在しており、 それより遠くの距離帯は見えない(地平線の下に隠れている)という解釈をすれば良いのでしょうか?
 あるいは、上記の距離帯が見えない(隠れている)と解釈すべきなのか。



 それにしても、メガトラベラー世界の地平線は不自然です。
 規模が大きな世界では遠くに在り過ぎますし、 反対に規模の小さな世界では近くに在り過ぎました。
 規模の大きな世界、小さな世界、それぞれでエキゾチックな雰囲気を演出するための誇張ルールなのでしょうが、 私のような設定マニアには興醒めしてしまうレベルの拙い演出です。

 その世界が全く凹凸のない真球だと想定した場合、地平線がどれだけ遠くにあるものか、実際に計算してみました。
 以下に地平線までの距離をkm単位で示します。


          表14 水平線までの距離(km表記の計算値)

BW52_Fig14.gif - 9.07KB

 表の縦軸に視点/目標の高さ(m)という変数を設けました。
 横軸が世界の規模です。

 世界の規模がテラと同じで、 視点の高さ1.5m(=平均的な人間の視点の高さ)だった場合、 地平線は、その位置から4.4km先に存在することになりました。

 上の表へ示されているように、視点の高さが変われば地平線までの距離も変わります。
 例えば視点の高さ=3mであれば地平線までの距離=6.2km視点の高さ=50mであれば地平線までの距離=25kmとなる訳です。
 見張り台や天守閣が高く建てられているのは視点の高さをできるだけ高くする、 という目的があった訳ですが、この数字を見ればその必要性は明らかでしょう。
 視点が高ければ高い程、地平線までの距離は遠くなり、遠くを見渡すことができる、ということなのですから。



 此処で注意すべき点は、地平線までの距離が、 目標を視認できる最大距離と等しくはならない、ということでしょうか。
 極端な言い方をするのであれば、地平線までの距離とは、 地面を視認できる最大距離、のことになります。
 目標を視認できる最大距離を求めるのであれば、 今度は目標の高さ(m)によって決まる地平線までの距離を足し合わせなければなりません。

 つまり、目標を視認できる最大距離は、
 視点の高さから決まる地平線までの距離と、
 目標の高さから決まる地平線までの距離との合計、
 になりました。

 上記の例のように、まず視点の高さ=1.5mであれば、 地平線までの距離4.4kmとなります。
 そして目標の高さ1.5mであるならば、 地平線までの距離は同じく4.4km
 両者を足し合わせて、4.4km4.4km8.8km
 この8.8kmという距離が、目標を視認できる最大距離になるでしょう。



 当然のことながら、視点の高さが同じ1.5mであっても、 目標の高さが異なれば、目標を視認できる最大距離が変わります。

 例えば目標の高さがわずか0.5mしかない、 背の低い肉食獣か、身体を地面に伏せているキャラクターである場合を考えてみましょう。
 目標の高さ=0.5mであれば、 地平線までの距離2.5kmまで縮まります。
 背の低い目標を対象とした場合、目標を視認できる最大距離は、 4.4km2.5km6.9kmです。
 目標の高さ=1.5mと比べて1.9kmも近くなりました。

 反対に目標の高さ3.0m程度、 平屋の家屋か大型車両(戦車)のサイズであったらどうでしょうか。
 目標の高さ=3.0mの場合、 地平線までの距離6.2kmまで伸びました。
 背の高い目標を対象とした場合、目標を視認できる最大距離は、 4.4km6.2km10.6kmです。
 目標の高さ=1.5mと比べて1.8kmも遠くなりました。

 目標の高さ50m、12〜13階建ての建物であれば 地平線までの距離25.3kmにまで及びます。
 その場合、目標を視認できる最大距離は、 4.4km25.3km29.7kmでした。
 その高い目標は、ずっと遠くから見えるものなのです。



 ここまで細かい数字を挙げておいてなんですが、この計算、予想以上に面倒でした。
 プレイアビリティを高めるためには、 視点の高さから決まる地平線までの距離だけを求めて、 その距離を目標を視認できる最大距離として扱った方が良いかも知れません(苦笑)。
 地表の凸凹はかなり大きいので、上記のような理想的な数字にはまず成り得ないでしょう。 摩天楼の如き超高層建築物や対空目標を視認する場合を除けば、 地平線までの距離目標を視認できる最大距離という解釈で問題ないと思われます。

 そのように考えた場合、目標を視認できる最大距離は、 規模=8の世界4.4km規模=4の世界3.1km規模=1の世界1.5kmになりました。
 概ね、妥当な数字ではないでしょうか。




(2)目標の大きさによる視認距離の制限

 視線が通っても、目標の大きさによっては見えないことが有り得ます。
 例えば肉眼で100m先の蟻を見つけ出そうとしても、ほとんどの方には無理ですね。 私の視力だと10m先でも難易度〈不可能:19+〉です。
 それと同じように、人間/車輛/建物サイズの目標であっても、ある程度の距離が開いてしまうと、それらの目標を視認できなくなってしまう 「ハウス・ルール」を作ってみました。

 と言いつつも、実は「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」の探知ルールを転用しただけですが。


          表15 目標の大きさによる視認距離の制限

BW52_Fig15.gif - 9.27KB

 表の左側は視認する目標の種類
 右側が視認できる最大距離です。単位はkmと、15m、150mのマス数。



 歩兵部隊、群衆、動物の群れは、3kmの距離まで近付かないと視認できません。
 「COACC」の探知ルールで示されているように、 望遠鏡(双眼鏡)や赤外線センサー、レーダー等を使っても、地上物体をはっきりと識別するのは、この距離が限界なのでしょう。
 個人的には、視認できても敵味方を識別できなかったり、民間人を誤認したりする可能性を残しておきたいところですが、 幸か不幸かメガトラベラーの個人戦闘ルールには誤認の余地がありません。 視認(探知)に成功すれば自動的に敵味方の識別も出来るというルールです。安心して攻撃を始めましょう。
 あるいは、誤認の可能性なしで視認できる距離として上記の距離が定義されたのかも知れません。
 ちなみに3kmは、15mマスで数えると200マス、150mマスで数えれば20マスの距離に換算できます。

 機甲部隊、車輌は、6kmの距離で視認できます。
 ということは、地上から地上目標(車輌)を攻撃する場合、対戦車砲の最大射程も6kmに制限されてしまうのでしょう。
 距離帯は超遠方(5km〜50km)に該当しますが、ちょっと物足りないような複雑な気分ですが、 このルールが地上目標だけに限定されていることは有難い話です。 地対空戦闘や空対空戦闘には別の視認ルールが適用されていますから、 対戦車砲の長い射程は対空戦闘で活用できることでしょう。
 6kmは、15mマスで数えると400マス、150mマスで数えれば40マスの距離に換算できました。

 砲兵部隊、簡易陣地、建物/構造物は、9kmの距離から視認できます。
 普通、砲兵部隊は丘や森の向う側、視線が通りにくい場所に布陣する筈なので、 この数字は航空偵察の際に有効となることでしょう。 対砲兵戦航空偵察は必須なのです。
 建物/建築物の大きさについて制限はありませんが、どんな大きさの建物がこの距離で見えるのか、レフリーの裁量にお任せします。
 車輌並に小さな小屋ならば、上記の機甲部隊、車輌の距離を用いるべきでしょう。
 また、複数の建物が集まった場所、街や村ならば、より遠くから見えても構わない筈です。 この9kmという距離は、建物1つずつを個別に識別できる距離だと解釈すべきでしょうから。
 9kmは、15mマスで数えて600マス、150mマスで数えて60マスの距離に相当します。

 高層建築物は、12kmの距離から視認できました。
 これも、複数の高層建築物の中から特定の建物を識別できる距離だと解釈して構わないと思います。
 12kmは、15mマスで数えて800マス、150mマスで数えて80マスの距離に相当しました。




(3)視線を妨害する地形

 地平線と距離の他、視線を妨害する地形には以下のようなものが存在しています。
 「プレイヤーズ・マニュアル、p89」からの抜粋ですが、

>地形:
> 丘や山は視線を遮ります。
>
>植物:
> 密な樹木を通しては視線を引けません。
> まばらな樹木の場合は、50メートル以内
> (「中距離」以内)ならば視線を引くことができます。
>
>建物:
> 建物は視線を遮ります。
> 建物の中にいるユニットは、1階にいるのでないかぎり、
> 地上のユニットを見下ろすことができます
> (地上の障害物に隣接しているユニットは除く)。
>
>煙幕:
> 煙幕は視線を遮ります。
> 煙幕の高さは、15メートルです。


 上記のような地形が視線を遮る、と定義されている訳です。
 こうした記述を潜伏状態隠れているユニットの定義と比較すると、段々面白くなってきました。



 最初の
> 丘や山は視線を遮ります。
 という記述は、隠れているユニットの定義、
> 丘の稜線のすぐ後ろにいる場合に、隠れていることができます。
 と関連付けができるでしょう。
 丘や山といった地形が視線を完全に遮るからこそ、その背後に隠れることができるのです。
 ほんの少し顔を上げたり、身を乗り出したりすることで隠れている状態を解除すれば、視線を引けるようになる訳で。

 余談ですが丘の稜線の後ろに隠れている場合は、敵ユニットの視点の高さ、が重要になってくるでしょう。
 その視点の高さによって、 隠れているユニットがその状態でどれだけ前進できるのか、 反対に何処まで後退しなければ姿を見られてしまう(視線が通ってしまう)のかが決まってきますから。
 しかし、そのあたりを具体的に考えるのはかなり面倒ですから、実際のプレイでは、
「この線が稜線で、この線に隣接したマスが稜線の後ろだ」
 で終わってしまうような気もします。



 次の
> 密な樹木を通しては視線を引けません。
> まばらな樹木の場合は、50メートル以内
> (「中距離」以内)ならば視線を引くことができます。

 という記述は、潜伏状態の定義、
> 視線を遮らない物体でも、敵ユニットの視認を困難にするものがあります。
>
> キャラクターや異星生物、ロボットは、樹木や草の中では潜伏状態にあります。
> まばらな樹木と、草(まばらでも密でも)が同時に存在する地形では
> 潜伏状態にあります。

 の部分と関連付けできました。

 密な樹木は視線を完全に遮ります。
 視線を引くことはできないので、潜伏状態になることもできません。

 まばらな樹木は、50メートル以上ならば、視線を完全に遮ります。
 屋外マップの15mマスならば50メートルの距離は3マスに相当しますので、 まばらな樹木を4マス以上横切る視線が遮られる、と解釈しました。
 横切るまばらな樹木のマスが3マス以内ならば、その視線は遮られないのです。

 は、視線には影響しません。
 しかしまばらな樹木と、草(まばらでも密でも)が同時に存在する地形では、 潜伏状態が発生します。
 但し前述の通り、その潜伏状態は、 まばらな樹木のマスを3マス横切る範囲内だけに限られます。 まばらな樹木を4マス以上横切る視線は遮られてしまいますから。



 3番目、
> 建物は視線を遮ります。
> 建物の中にいるユニットは、1階にいるのでないかぎり、
> 地上のユニットを見下ろすことができます
> (地上の障害物に隣接しているユニットは除く)。

 という記述も、隠れているユニットの定義、
> 建物の中、要塞の中、壁のすぐ後ろにいる場合、隠れていることができます。
 と関連付けできました。
 極端な話、要塞(field fortifications)も壁(walls)も、建物の一種(一部)ですから、 このルールには何の問題もないと思います。
 ちょっと気になったのが壁のすぐ後ろ(directly behind walls)という記述。
 わざわざ壁を強調しているのは廃墟状態、壁だけしか残っていない建物の残骸をイメージしているためではないでしょうか。

 更に気になる部分は
> 建物の中にいるユニットは、1階にいるのでないかぎり、
> 地上のユニットを見下ろすことができます
> (地上の障害物に隣接しているユニットは除く)。

 という記述。
 高い場所(建物の2階以上)から地面を見下ろす、という行為をイメージしたルールだと思われますが、 HJ版の日本語訳は意味が通り難くなっていました。
 私の翻訳だと、こうなります。
> 2階以上の高さにいるユニットは、自分より低いレベルの障害物を越えて、
> 地上のユニットを見通すことができます。
> ただし、そのユニットが遮蔽物に隣接して居る場合、
> つまり背後に隠れている場合は例外で、見通すことができません。

 ルールの意味するところが伝わり易くなったと思いますが、どうでしょう。

 建物(の2階にいるキャラクター)から外を見て、45メートル(3マス)離れた場所に高さ2メートルの塀が存在すると想定して下さい。
 塀の反対側には、複数の敵ユニット(歩兵)が存在しています。
 その塀のすぐ後ろ(directly behind)に居る敵ユニットだけは塀に遮られて視線が通りませんが、 塀から離れた位置に存在するユニットに対しては視線が通ってしまいます。
 塀に隠れたつもりの敵ユニットも、塀から離れた位置ならば高所から撃たれてしまう訳です。
 反対に、高所(建物の2階以上)にいるユニットも、同じように敵から撃たれてしまうのですが。

 高い位置から周囲を見下ろした場合、視点の高さより背の低い障害物を越えて、 障害物の向う側に存在する地上ユニットを見通すことができる、というルールは簡略化し過ぎだとも思えますが、 プレイアビリティを考えれば、このぐらいまで簡略化した方が都合良いのでしょう。
 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、視点の高いユニットは、 極めて高いアドバンテージを発揮できることが判明しました。



 4番目、
> 煙幕は視線を遮ります。
> 煙幕の高さは、15メートルです。

 という記述については残念ながら、潜伏状態の定義も、 隠れているユニットの定義も、関連付けることができません。
 まぁ、仕方ないとは思いますが。
 建物のルールと絡めてみても、煙幕の高さは、15メートルです。という記述がありますので、 よほど背の高い建物から見下ろすのでない限り、煙幕の向う側を見通すことは困難なようでした。



 上記の説明文には見当たりませんが、私の大好きな塹壕(trench)はどうやら要塞の中に含まれていたようです。
 この要塞の中に相当する原文は in field fortifications であり、 field fortifications という単語には、 軍隊が野戦を実行している際、必要に応じて攻撃・防御を問わず防護性を高めつつ戦闘力の発揮を容易にするための、 土地に施す工事とその結果建設された各種構築物、という意味がありますので。




(4)視線はどこまで届くのか?

 攻撃側と目標が地上に存在する場合、地平線までの距離を計算によって求めた結果、

 攻撃側ユニットが目標を視認できる最大距離は、 規模=8の世界4.4km規模=4の世界3.1km規模=1の世界1.5kmになりました。



 目標の大きさによる視認距離の制限を「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」の探知ルールから転用してみました。

 そのルールによれば、
 歩兵部隊、群衆、動物の群れは、3kmの距離まで近付かないと視認できません。
 機甲部隊、車輌は、6kmの距離で視認できます。
 砲兵部隊、簡易陣地、建物/構造物は、9kmの距離から視認できます。
 高層建築物は、12kmの距離から視認できました。

 地上から地上目標を攻撃する場合、直接照準射撃の最大射程は3〜12kmに制限されてしまうようです。
 しかしながら、このルールが地上目標だけに限定されていることは有難い話で、 地対空戦闘や空対空戦闘には別の視認ルールが適用される以上、 対戦車砲の長い射程は対空戦闘で活用できることでしょう。



 視線を遮る地形についても考察しましたが、結論としては、
 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、視点の高いユニットは、極めて高いアドバンテージを発揮できる、
 ということでした。

 メガトラベラー世界の空対地戦闘は、極めて無慈悲なものになりそうです。





結論


 今回は、「潜伏状態探知」について考察しました。
 最初の内は、何だか良く分からないルールだなという印象でしたが、 その内容を理解した今になってみると実に良く出来たルールだなと、逆に感心しております。



 十分に明るい場所における潜伏状態は、 カモフラージュによる潜伏状態も含めて、 移動射撃も行わない場合にのみ、効果的なようです。
 敵ユニットをを待ち伏せする際には極めて有効な選択肢となるでしょう。



 薄暗がり完全な闇の中において、 潜伏状態のユニットは自由に移動することが可能であり、 移動を諦めれば相手に見つかることなく音光「高〜中」の兵器で射撃を行なえる、ということが判明しました。
 待ち伏せ以外にも対戦車戦闘対砲兵戦に有効でしょう。
 おまけに、見つからずに敵に接近するということならば、 中距離近距離までは問題なく移動できます。

 カモフラージュによる潜伏を追加すれば、 至近距離まで接近されても見つかることが有り得ません
 移動射撃も行えませんが、 敵を待ち伏せする際には極めて有効な選択肢であると判明しました。



 視線については、その視線が地平線以外の障害物によって妨害されない限り、
 攻撃側ユニットが目標を視認できる最大距離は、 規模=8の世界4.4km規模=4の世界3.1km規模=1の世界1.5kmです。

 また、目標の大きさによる視認距離の制限を 「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」の探知ルールから転用してみたところ、
 歩兵部隊、群衆、動物の群れは、3kmの距離まで近付かないと視認できません。
 機甲部隊、車輌は、6kmの距離で視認できます。
 砲兵部隊、簡易陣地、建物/構造物は、9kmの距離から視認できます。
 高層建築物は、12kmの距離から視認できました。
 地上から地上目標を攻撃する場合、直接照準射撃の最大射程も3〜12kmに制限されてしまうようです。

 更に視線を遮る地形についても考察しましたが、
 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、視点の高いユニットは、極めて高いアドバンテージを発揮できる、
 という結論が出てきました。



 こうした結論が出てくると、探知に関する考察をもう少し掘り下げてみたくなります。
 メガトラベラーの個人戦闘ルールで極めて高いアドバンテージを発揮できる視点の高さを、 建物よりも更に高いレベルまで持ち上げたらどうなるのでしょうか?
 視点の高さは何処まで持ち上げられるのか?
 それを高くした結果、どれだけ広い視野が得られるのか?

 つまり航空偵察に関する考察となる訳ですが、どんな結果が出てくるのか楽しみです。






2013.08.04 初投稿。