The Best Weapon
53rd stage (Air Force 1)
Fixed-Wing Aircrafts
and Grav Vehicles

最強兵器 決定戦
第53回(空軍1)
固定翼機と
反重力型輸送機器
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MEGA TRAVELLER
 


 

エアラフト曲がれない


 ここ最近は「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」の翻訳に嵌っています。

 大気を切り裂いて疾駆する戦闘機の編隊。
 飛び交う銃弾とミサイル。
 地上から打ち上げられる嵐のような対空砲火。
 それを回避しながら行われる対地攻撃。

 プレイアビリティが優先されているため詳細なルールだとは言えませんが、それなりの想像力を備えていれば 「COACC」のルールを使って、激しくリアルな空戦を再現できそうです。



 しかし残念ながら、メガトラの「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている輸送機器設計ルールは、 航空機(飛行型輸送機器)に関して、優しくありませんでした。

 重量と推力から求めた駆動推力。
 その駆動推力と船殻形状によって決まる最高速度。
 そして地表速度と呼ばれる、低空を飛行する際の制限速度。

 飛行型輸送機器の移動に関して与えられている性能はこれだけです。

 加減速についてのルールはどうなっているのか。
 離陸(速度ゼロ)から最高速度まで、どれぐらいの時間で到達するのか。
 旋回や高度変更はどうやって行うのか。
 地表速度は果たして高度何メートルまで適用されるのか。

 はっきり言って、分からないこと、ルールで定義されていないことが有り過ぎです。
 それならば、と答えを求めて訳し始めた「COACC」は、固定翼機やヘリコプター、飛行船といった ローテクの航空機に関してだけは詳しいものの、 反重力を用いたハイテクの飛行型輸送機器に関しては全く触れていません。

 こうなったら仕方ありません。
 飛行型輸送機器の移動に関するハウス・ルールをでっち上げてしまいましょう。
 もちろんのこと「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている輸送機器設計ルールはできる限り順守します。
 部分的には「COACC」と「ハード・タイムズ」のルールも組み込む予定。



 という訳で、今回の考察の目的は飛行型輸送機器の移動能力を確かめ、 足りない部分をハウス・ルールで補うことです。







飛行型輸送機器の最高速度


 まずは、「レフリーズ・マニュアル」の輸送機器設計ルールから、 航空機(飛行型輸送機器)飛行速度(Air Speed)を考察してみましょう。




(1)駆動推力

 「レフリーズ・マニュアル、p.90」を御覧下さい。
 滑空式(エアクッション型、反重力型を含む)の移動システムを備えた輸送機器に関して、 駆動推力を求める計算式が書かれています。

> 駆動推力     = ( 総推力  ÷ 全備重量 ) −1
> Maneuver Thrust = ( Total thrust ÷ vehicle's loaded weight ) −1


 総推力は、その輸送機器が装備している滑空式移動システムの出力です。
 単純に言えば、その移動システムが何トンの重量を持ち上げられるか、という数字だと考えてください。

 全備重量は、その輸送機器全体の重量。
 燃料は当然のこと、乗組員や貨物の重さ、戦闘車輌であれば銃弾やミサイルなどの弾薬類を含めた重量を表しています。

 総推力全備重量で割ると、加速率が出てきます。
 その加速率から輸送機器全体を浮揚させるための推力(=1G)を引いた答えが、 駆動推力になりました。



 こんな簡単な計算で良いのか。
 浮揚と推進の推力は別々に計算するべきではないのか。
 重力が異なる世界では浮揚に必要な推力も変わってくるだろう。
 
 そんな疑問を抱く方は多いと思いますが、 メガトラの滑空式移動システムは都合の良いことに、その推力を浮揚と推進のどちらにでも任意に振り向けられます
 ですから、浮揚分の移動システムと推進分の移動システムを別々に設計する必要がありません。
 GURPS Travellerの設計ルールは浮揚と推進が別々になっていましたが、 ここでそのルールを取り入れても設計と計算が面倒になるだけでしょう。
 重力が異なる世界毎に異なる性能諸元を用意するもの大変です。

 また、総推力を斜め下向きの後方へ向けた場合も、 垂直方向(浮揚分)の推力と水平方向(推進分)の推力効率良く発生できることは御存知だと思います。
 例えば2G分の総推力を30度下向きにすれば、浮揚分1Gと推進分1.73Gが得られますので、 上記の計算式よりもずっと大きな駆動推力が得られます。
 しかし、ベクトル合成まで計算すると計算が煩雑になるだけでなく、色々と面倒で仕方ありません。 ここではメガトラのルール通り、上記の駆動推力をそのまま最大速度の計算に用いることにしました。



 尚、主翼によって浮力を得る固定翼機(Fixed-Wing Aircraft)の場合は 駆動推力(Maneuver Thrust)ではなく加速率(G rate)を用います。
 計算方法は駆動推力とほぼ同じですが、輸送機器全体を浮揚させるための推力(=1G)を引く必要がありません。
 総推力全備重量で割った数字が、 そのまま加速率になりました。




(2)最高速度の計算

 今度は駆動推力から真空下での最高速度を求めます。

 これについては、「レフリーズ・マニュアル」の最高速度表を転載しました。


             表1 最高速度表(p.90から転載)

BW53_Fig01.gif - 24.7KB

 表の左端が駆動推力
 その右側は飛行型輸送機器の最高速度です。

 最高速度真空下での最高速度標準型大気中での最高速度を並記しました。
 後述しますが、この標準型大気中での最高速度は 船体形状が完全流線形(Airframe)になっている輸送機器のものです。
 非流線形(Unstreamlined)流線形(Streamlined)は その最高速度が異なっていますので、御注意下さい。

 この標準型大気中での最高速度が、個人戦闘ルールの移動速度に換算すると幾つになるのか、 それを求めたのが更に右側の数字です。
 15mマス150mマス、ついでに500mマスで求めました。
 キャラクターの歩く速度が15mマスで1マス分、走る速度が2マス分だと考えると、 飛行型輸送機器の速さが良く分かりますね。

 個人戦闘ルールのスケールで150mマスを用いる場合は、 時間単位も10倍(1戦闘ラウンド=1分)にするようにと書かれていましたが、 ここでは時間単位がそのまま(1戦闘ラウンド=6秒)で150mマスを用いています。
 エアラフトGキャリアーといった低速の飛行型輸送機器ならばともかく、 一般的な航空機(飛行型輸送機器)の移動速度を15mマスで表すことは、 スケールの関係で難しいと分かりました。

 500mマスは「COACC」のスケールです。
 時間単位はそのままで、1戦闘ラウンド=6秒。
 1マスの大きさが500mなので、移動速度250km/h毎に移動力が1というルールでした。
 計算方法に微妙な違和感がありますが、そういうルールです。



 表の右端には補足情報を書き込んでおきました。

 非流線形であるエアラフト流線形であるGキャリアーの最高速度。
 非流線形の輸送機器の最高速度。
 流線形の輸送機器の最高速度。
 完全流線形をしたスピーダーの最高速度。
 流線形である反重力戦車トレピダの最高速度。

 それらの情報は上記のようなものですが、この表1を見て、皆様は幾つかの疑問を持たれたのではないかと思います。

 例えば、駆動推力は同じ0.10なのに、
 完全流線形の輸送機器は最高速度が108km/hで、
非流線形/流線形であるエアラフトGキャリアーは 最高速度が120km/h。
 どうして、空気抵抗が少ない筈の完全流線形の最高速度が遅いのだろうか。
 といった疑問ですが、これについては船体形状による最高速度の変化を説明しなければなりません。

 以下の表を御覧下さい。


         表2 船殻(機体)形状による最高速度の変化

BW53_Fig02.gif - 3.93KB

 表の左側が船殻形状(機体形状)
 表の右側が大気中の最高速度です。

 完全流線形の輸送機器が、大気中で出せる最高速度は、 真空下での最高速度に0.9を掛けた速度です。
 それに対して、非流線形流線形の輸送機器が、 大気中で出せる最高速度は、一律に300km/hと1,000km/h。
 最大速度を求めるルールはこのようになっていました。
 これが速度逆転の理由です。
 この最高速度表を作ったデザイナーは、最高速度1,000km/h以下で設計される完全流線形の輸送機器というものを、 想定していなかったのではないでしょうか。

 同じ駆動推力なのに、完全流線形の輸送機器が、 非流線形/流線形の輸送機器に最高速度で負ける、という状況に耐えられない私は、

 非流線形/流線形の輸送機器も、大気中で出せる最高速度は、 真空下での最高速度に0.9を掛けた速度まで。
 その最高速度が300km/hと1,000km/hを超えた場合は、制限以下に抑える。

 というハウス・ルールを使っていました。
 メガトラのルールそのままですと、空気抵抗を1%減らすために苦労している、 自動車屋や飛行機屋(その分野で働いている技術者という意味です)に対して、物凄く申し訳ない気がするのです。



 余談ですが、この最高速度という設定は、プレイアビリティのために設けられたものだろうと思われました。

 現実の輸送機器は、駆動推力と空気抵抗のバランスから、 その最高速度が決まります。
 その現象を単純に当て嵌めるのであればメガトラ世界において、 120km/h(完全流線形は108km/h)で飛行している輸送機器は、常に0.1G分の空気抵抗を受けながら飛行しており、 1,200km/h(完全流線形は1,080km/h)で飛行している輸送機器は、常に1.0G分の空気抵抗を受けている、ということです。
 ちょっと見ただけでも空気抵抗が大き過ぎるだろうと分かりますが、 メガトラ世界には駆動推力=6Gの輸送機器が幾らでも登場しますので、 それらの最高速度を小さく抑えておくためには仕方ないことなのでしょう。
 音速(1,225km/h)を超えるために駆動推力を1G以上必要とする、というルール設定は、 飛行機好きの方には絶え難いレベルの暴挙だと思われますが、そういうルールなので受け入れてください。
 そもそも空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなる筈なのに、メガトラの最高速度表はそうなっていません。
 これも輸送機器の設計を簡略化し、プレイアビリティを高めるためなのだと思われます。

 ちなみに、英文エラッタで追加された説明文にも、この表で求められた最高速度は 大気中での運用が前提である、と書かれていました。
 真空世界の地表で輸送機器を利用する場合は宇宙船と同じように加速度と方程式を用いて、 2点間の移動時間や移動途中の速度を計算して欲しい、とのこと。
 しかし、そんな面倒なことをするくらいならば真空中であっても最高速度表の数値を使った方が楽になると思うのですが、どうでしょう?
 実際に私は真空世界であっても、船殻形状の速度修正を除けば上記の最高速度をそのまま使っています。




(3)大気タイプが異なる場合の最高速度

 一応、メガトラの輸送機器設計ルールには異なる大気タイプ(大気密度)を飛行する輸送機器のため、 異なる大気タイプに合わせた速度修正値が用意されていました。
 しかし、これがまた当てになりません。


        表3 異なる大気タイプにおける、最高速度の変化

BW53_Fig03.gif - 6.46KB

 表の左側が大気タイプ(UWPコード)です。
 真空中(0〜3)、希薄(4〜5)、標準(6〜7)、濃密(8〜9)、超濃密(D)を並べました。
 異種(A以上)については、その大気密度をレフリーの裁量で決定するため、超濃密(D)以外は表に含めておりません。

 その右側が、最高速度の修正値。
 今回も完全流線形を前提にしています。
 真空中は、修正なしでそのまま。
 標準大気は、真空下の最高速度×0.9。
 希薄、濃密、超濃密は、標準大気中の速度を基準として、それぞれ×1.5、×0.75、×0.25、となっていました。

 分かり易いように赤字で示しましたが、 希薄大気の修正値が不自然であることに気付かれましたでしょうか?

 標準大気中の最高速度は、真空下の最高速度×0.9。
 そして希薄大気中の最高速度は、標準大気中の最高速度×1.5ですから、両者の修正値を掛け合わせると、

 希薄大気中の最高速度 = 真空下の最高速度 × 1.35

 となってしまうのです。
 希薄大気中の最高速度は、真空下の最高速度よりも早い……。
 そんな馬鹿なことは有り得ませんよね?

 英文エラッタにも上記のルールを訂正する記述は見つかりませんでしたから、このルールは正しいのです。
 しかし不自然なことは間違いないので、私は使ったことがありません。




(4)航空機の最高速度

 今回の考察の目的は、反重力を用いたハイテクの飛行型輸送機器について、 移動に関するハウス・ルールをでっち上げることでした。
 しかし「COACC」に掲載されている航空機の移動ルールが気になります。
 「ハード・タイムズ、p.85」でも断片的に触れていましたから、 その部分を私のハウス・ルールに組み込むことは不可欠なのです。

 という訳で、ここでちょっと脇道にそれてみました。
 「COACC」で取り上げられているローテクの航空機、 その中でも主翼によって揚力を得る固定翼機については、その最高速度を確認しておきましょう。

 まずは「ハード・タイムズ、p.85」で気になる部分から。


             表4 航空機の機体形状と最低速度

BW53_Fig04.gif - 8.42KB

 機体形状と最低速度の表を「ハード・タイムズ、p.85」から抜粋しました。
 日本語版(HJ版)の表は「COACC」が未訳だから不要だと判断されたのか、多くの情報が省略されて(欠落して)います。
 それを補填し、「COACC」で定義されている機体形状も追加したところ、上の表のようになりました。

 表の左側は船殻形状(機体形状)の対照です。
 メガトラの場合、船殻形状は非流線形、流線形、完全流線形の3種類しかありません。
 それに対して「COACC」の機体形状は5種類。単純(Simple)、亜音速(Fast subsonic)、 遷音速(Transonic)、超音速(Supersonic)、極超音速(Hypersonic)がリストアップされていました。
 それらの機体形状はそれぞれ、飛行に必要な最低速度と、 機体強度の制限から出せる最高速度が設定されており、 メガトラの船殻形状を無理やり機体形状に当て嵌めた、ということのようです。

 実際のところ、「COACC」の機体形状に関するルールは メガトラの輸送機器設計ルールから思い切り逸脱しているので当て嵌めるには不都合が有り過ぎるのですが……。
 まぁ、公式ルールとして認められているのですから、それで構わないのでしょう。



 メガトラの輸送機器設計ルールで固定翼機を設計するのであれば、 非流線形は、「COACC」の単純(Simple)に該当するようです。
 最低速度は150km/hですから、加速率が0.15以上あれば、 その固定翼機は空を飛ぶことが出来るでしょう。
 但し、単純(Simple)の加速率を求める場合、その加速率は航空機の全推力÷総重量×0.85で決まりますので御注意を。
 最大速度は300km/hで、その速度を得るための推力比は0.25ですが、 実際に必要な推力はもう少し大きくなる、ということです。
 0.30以上の加速率は、非流線形の場合、意味がほとんど有りません。

 最低速度を半分(75km/h)まで下げるSTOL機体ですが、これは機体重量の増加(×1.05)と機体価格の上昇(×1.30)を伴います。 また利用可能なテックレベルは6以上とのこと。
 最低速度をゼロにすることが可能なVTOL機体も機体重量の増加(×1.10)と機体価格の上昇(×1.50)が発生し 利用可能なテックレベルが7以上となっていました。 当然のことながら加速率は最低でも1.0、実用性を考えるのであれば1.1以上が必要となるでしょう。



 流線形は、「COACC」の遷音速(Transonic)に相当します。
 最低速度は175km/h。飛行に必要な加速率は0.15以上ですが、 加速率の計算は航空機の全推力÷総重量×0.95で求めますから、御注意下さい。

 最高速度に必要な加速率を求めようとしたところで、此処でもGDWの誤植かデザイナーの勘違いを発見。
 最高速度の「800」が間違っていました。
 「COACC」の記述によれば、最高速度は「1,100」の筈です。 隣の亜音速(Fast Subsonic)と勘違いしたのでしょう。 しかしエラッタ情報が見つからないので、「800」が正しいという可能性も有り。
 最高速度が1,100km/hであるならば、その速度を得るために必要な加速率は1.0です。



 完全流線形は、「COACC」の極超音速(Hypersonic)に相当するようですが、 この形状になると最高速度の制限は意味が有りません。
 最低速度は350km/h。加速率の計算は、航空機の全推力÷総重量をそのまま用います。
 求めた速度を修正する必要はありませんので、メガトラの輸送機器設計ルールと矛盾してしまうのですが、気にしないことにしましょう。
 そうした場合、飛行に必要な加速率は0.30以上です。



 面白そうなので表1と同じように、固定翼機用の最高速度表を作ってみました。
 回転翼器(ヘリコプター)飛行船については、 ルール翻訳がそこまで進んでいないため、割愛します。


              表5 航空機の最高速度表

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 表の左端が加速率
 その右側に並ぶ数字が、固定翼機の各機体形状における最高速度です。



 各機体形状毎に示されている最高速度の中で、赤色で示されている速度は、 最低速度を下回っている速度です。
 その機体形状と加速率では、その航空機は飛べない、ということを表しています。
 STOL機体やVTOL機体を選択していれば話は違ってきますが、あまり実用的ではないでしょう。

 黄色で示した速度は、その機体形状の最高速度です。
 それ以上に加速率を増やしても、 固定翼機最高速度は増えません。
 幾つかのメリットが無い訳ではありませんが、最高速度はそのままです。



 さて、「COACC」の場合、この数値が意図的なのかどうか分かりませんが、 加速率から決まる真空下での最高速度が、とても不揃いになっていました。
 頭が痛い問題です。
 加速率1.60から1.80の間で最高速度が220km/hも増えている癖に、 その次の1.80から2.00の間では20km/hしか増えていない点。そして2.00から2.20の間では200km/hも増えているとか。
 他にもツッコミたくなる数値がいくらでも見つかります。
 青字で示した部分が、 「レフリーズ・マニュアル、p.90」の最高速度表と数値が異なっている部分ですから、 この表よりも「レフリーズ・マニュアル」の表を使った方が良いのではないでしょうか。



 数値の不自然さはともかくとして、輸送機器設計ルールに固定翼機を持ち込む場合は、 「ハード・タイムズ、p.85」に掲載されているルールのままでも良いようです。
 「COACC」に掲載されていた推力修正値、0.85、0.95、1.00は、採用してもしなくても大差ありません。
 こうした条件ならば、何とか取り込みができそうです。




(5)飛行型輸送機器の加減速

 考察の本筋に戻って、今度は航空機(飛行型輸送機器)の加減速について考えてみました。
 メガトラの個人戦闘ルールでは扱われていませんが、 飛行型輸送機器の速度はどの程度自由に変更できるものなのでしょうか?



 参考にすべき「COACC」のルールによると、

 毎戦闘ラウンド毎に、速度1を増やしたり、減らしたりできる。

 とのことでした。

 「COACC」の速度1は、1戦闘ラウンド(=6秒)で1マス(=500メートル)を移動できる速度ですから、 250km/hに相当します。
 「COACC」で扱われる航空機が、 速度ゼロの状態から最高速度の1,000km/hまで加速する場合、4戦闘ラウンドが必要になるということです。



 では、メガトラで輸送機器の加減速をルール化しようと思ったら、どうすべきなのでしょう?
 とりあえず、すでに駆動推力という数値が出ていますから、 それを加速度として速度の変化量を求めてみました。
 固定翼機の場合は、 駆動推力の代わりに加速率を用います。


            表6 飛行型輸送機器の加減速

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 表の左端が駆動推力
 その右側に並ぶ数字が速度の変化量です。

 駆動推力が0.1GしかないエアラフトGキャリアーでも、 1戦闘ラウンド(=6秒間)の加速を行うことで、その飛行速度を5.88m/sec(=21km/h)も増やすことができました。
 定番の15mマスを使うのであれば、2マス分の速度変更です。 表1で示したようにエアラフトの最高速度は120km/h。 15mマスでの速度が12マスですので、最高速度に到達するまでは6戦闘ラウンドの連続加速が必要だと分かりました。
 残念ながら150mマスを使った場合は、はっきりと分かる程の変化が現れません。 5戦闘ラウンドの連続加速でようやく速度1に達する、という感じになるのでしょう。 150mマスでの最高速度は1マスですから、それで十分なのかも知れません。

 駆動推力が1.0G。 エアラフトと比べて10倍の駆動推力を備えたスピーダーは、 1戦闘ラウンドの加速で飛行速度を58.8m/sec(=212km/h)も増やすことができます。
 15mマスを使うのであれば21マス分、150mマスを使っても2マス分になりました。
 スピーダーの最高速度は1,080km/hですから、 15mマスでの速度は108マスです。 スピーダー最高速度に到達するまでは必要な時間は、108÷21=5.14より、6戦闘ラウンドだと分かりました。
 150mマスでの最高速度は端数切捨てで10マスですから、10÷2=5.0より、5戦闘ラウンドです。

 駆動推力が1.2Gの反重力戦車トレピダは、 1戦闘ラウンドの加速で飛行速度を70.6m/sec(=254km/h)も増やせます。
 トレピダの最高速度は流線形の上限である1,000km/h。 15mマスでちょうど100マス分の速度です。
 加速能力は25マス分ですから、100÷25=4.0で、最高速度に到達するまでの時間は4戦闘ラウンドになりました。
 素晴らしい。最高速度に影響しない過大な駆動推力は、このために与えられたのですね。



 もう少し真面目に考えるのであれば、飛行型輸送機器が受ける空気抵抗は、その時点の飛行速度によって変化します。
 ですから正確な加速量は、

 加速量 = 駆動推力 − その時点での速度を出すために必要な推力

 で求めるべきでしょう。

 例えば、駆動推力が1.2Gの反重力戦車トレピダは、 速度ゼロから加速する最初の戦闘ラウンドだけは一気に250km/hの速度を得ます。
 2ラウンド目になると0.2G分の空気抵抗を受けて、加速量が1.0Gに減少。 このラウンドに得られる速度は210km/hになるので、累積した速度は460km/hになりました。
 3ラウンド目は0.4G分の空気抵抗を受けて、加速は0.8Gまで減少。 このラウンドに得られる速度は160km/hで、累積速度は620km/h。
 4ラウンド目の空気抵抗は0.5Gまで増えて、加速度は0.7G……。

 真面目に考えると加速中の速度計算がとても面倒になることが判明しました。
 どうしても拘りたいというのなら別ですが、速度ゼロの時点での加速度を全ての飛行速度でそのまま使っていても、構わないような気がします。





飛行型輸送機器の旋回能力


 今度は、飛行型輸送機器の旋回能力を考察してみましょう。

 まずは参考とすべき「COACC」のルールから。




(1)COACCにおける、航空機の旋回能力

 例によって「COACC」のルールを参考にするならば、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで45度の旋回を行える。
 但し、同じマスで2回以上の旋回は行えない。
 最低でも1マス以上の移動を行ってから、次の旋回を実行すること。

 ということだそうです。

 要するに、最大限の旋回を行う場合、
 1マス進んで(この移動で機動ポイントを1つ消費)、
  45度の旋回(この旋回で機動ポイントを更に1つ消費)。
 1マス進んで、45度の旋回。
 1マス進んで、45度の旋回、以下省略。
 を繰り返すことになる訳です。

 旋回を繰り返す上記の航空機の軌跡は、縦横4マスずつの正方形の4隅を切り落とした形(八角形)になります。
 ざっと計算してみたところ(1マスの大きさが500メートルなので)、旋回半径は800メートルでした。
 身軽な軽戦闘機も鈍重な輸送機も、すべて同じ旋回性能を持っているという点は気に入りませんが、 「COACC」のルールは簡略化を優先しているため、こういった仕組みになっているのです。

 上記の機動ポイント(Maneuver Point)とは、メガトラ個人戦闘ルールの移動ポイント(Movement Point)とほぼ同じものでした。
 それを求める際の分母が異なっているため(250km/hと10km/hなので)、異なる名前で呼んでいるのでしょう。



 私が気にしていた航空機毎に異なる筈の旋回性能は、 その航空機の最高速度と、パイロットの耐久力で表現されていました。

 1戦闘ラウンドに2回以上の旋回を行う航空機は、
 ブラックアウトのチェックを行わなければなりません。

 というルールです。
 しかしながら、1戦闘ラウンドに2回以上の旋回を行えるのは、 機動ポイントを4ポイント以上(ルール解釈によっては3ポイント以上)持っている航空機だけですから、 このルールは1,000km/h以上(場合によっては750km/h以上)で飛行している航空機限定のルールだとも言えます。

 「COACC」において、航空機の最小旋回半径は750メートル。
 そして、飛行速度が1,000km/h以上(場合によっては750km/h以上)という条件が揃っているのであれば、 その航空機が受けている、旋回時の遠心力も計算することができるのです。

 その計算結果は以下の通り。


         表7 航空機が受ける旋回時の遠心力(G)

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 表の左端が航空機の飛行速度。
 その右側が、飛行速度を250km/hで割った、機動ポイントです。

 表の中央は、旋回時の遠心力
 単位は(m/sec2)(G)の2つで示しましたが、 ほとんどの方には(G)の方が分かり易いでしょう。

 1戦闘ラウンドに1マスしか移動できない速度(=250km/h)から、最高速度表で得られる最高速度(=3,750km/h)まで、 様々な速度で飛行している航空機を、 「COACC」のルール通りに旋回半径750メートルで強引に旋回させた場合、 その航空機が受ける旋回時の遠心力は、上記の通りでした。



 飛行速度が250〜500km/h(機動ポイント=1〜2)の場合、旋回時の遠心力は0.7G〜2.6Gの範囲。
 この程度の遠心力ならば、パイロットがブラックアウトしてしまうかどうかのチェックは必要ないでしょう。

 飛行速度が750〜1,000km/h(機動ポイント=3〜4)の場合、 旋回時の遠心力5.9G〜10.5Gまで増えました。
 この遠心力に耐えて航空機の操縦を続けるためには、それなりの体力と根性が必要でしょう。
 この飛行速度を下限としてブラックアウトのチェックを行う「COACC」のルールは、間違いなく妥当なルールなのです。

 しかしながら飛行速度が1,250km/h(機動ポイント=5)を超えた場合、 旋回時の遠心力16.4Gを超えてしまいます。
 明らかに普通の人間には耐えられない遠心力でした。
 これだけの遠心力を受けたパイロットは、行為判定の必要もなく気絶してしまうか、あるいは死亡してしまうことでしょう。

 飛行速度が1,250km/h(機動ポイント=5)以上の場合、「COACC」の旋回ルールはちょっと不自然です。



 この不自然さは航空機の旋回半径を大きくすることで解消できました。
 遠心力を求める公式を再考してみれば、旋回半径を2倍にすることで遠心力を半分に、 旋回半径を3倍にすることで遠心力を3分の1に減らせるのです。

 ですから、旋回半径750メートルで旋回できるのは、飛行速度が1,000km/hの場合だけ。
 飛行速度が1,250km/h以上の場合は、2マスを進まなければ45度の旋回ができない、あるいは3マス以上を進まなければ旋回できない、 といった「ハウス・ルール」を用いることで、不自然さが解決すると考えました。

 45度の旋回を行うために必要な移動距離を昔のゲームから覚えた概念にちなんで、 最小直進距離と呼ぶことにします。
 その航空機、もちろん飛行型輸送機器でも構いませんが、 そのユニットが45度の旋回を行う前に最低限どれだけの距離を直進しなければならないか、ということを表した距離。
 それが最小直進距離なのです。

 もちろん、その距離はただ単なる直進ではなく、旋回運動を伴った移動距離になります。
 例えば最小直進距離=3であるならば、航空機の移動は、
 1マス進んで(この移動で機動ポイントを1つ消費)、
  3分の1の旋回(この旋回で機動ポイントを更に1つ消費)。
 1マス進んで、更に3分の1の旋回(合計で3分の2)。
 1マス進んで、更に3分の1の旋回(合計で3分の3)、45度の旋回に成功。

 という手順を踏んで旋回を行うことになるでしょう。
 ちょっと面倒臭くなりましたが、リアリティのために耐えて下さい。



 航空機が受ける旋回時の遠心力を10G以下に抑えたところ、 旋回に必要な最小直進距離は以下のように求められました。


      表8 航空機の旋回時に必要な最小直進距離 (500mマス)

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 表の左端は今回も航空機の飛行速度と機動ポイントです。



 その右側が、500mマスで示した最小直進距離
 45度の旋回を行う前に最低限、どれだけの距離を直進しなければならないか、ということを表した距離ですが、 この距離を2倍した数値は、45度の旋回を行うために必要な機動ポイントも表しています。

 飛行速度が1,250km/h以上の場合、速度が250km/h増える毎に最小直進距離が1つずつ増えていました。
 最後の方、飛行速度が3,250km/hを超えると2つずつ増えていますが、大凡はこんな感じです。

 ブラックアウトのチェック(行為判定)は、飛行速度が750km/h以上の時にだけ行って下さい。
 飛行速度が750km/h以上であっても、緩い旋回を行うのであれば、チェック不要です。

 緩い旋回とは、上記で示した最小直進距離の2倍以上の距離を費やした旋回です。
 最小直進距離が2倍になれば、その航空機の旋回半径は2倍。
 旋回半径が2倍になれば、航空機とパイロットが受ける遠心力は半分に減りますので、 旋回によるブラックアウトのリスクが無くなる、と考えました。

 例えば最小直進距離が1の場合、 航空機は機動ポイント2を費やして1マスの前進と1回の45度旋回を行えます。 機動ポイント4を使えれば2マスの前進と2回の45度旋回ですね。
 緩い旋回を行った場合は、同じように機動ポイント4を消費しても、2マスの前進と1回の45度旋回しか行えません。 より正確な表現をするならば、45度旋回を2回に分けて行うので、2回の22.5度旋回ということになります。



 最後の数字は、旋回に必要な戦闘ラウンド数
 旋回に必要な機動ポイントを、その航空機が持つ機動ポイントで割った数値になります。
 この数値が小さければ小さい程、その航空機は素早い旋回が可能だ、ということになりますが、 具体的には、数値が1.00であれば旋回できる回数は1戦闘ラウンド当たり45度旋回が1回です。
 そして数値が0.50であれば1戦闘ラウンドにできる旋回は2回(合計90度)、 数値が2.00ならば2戦闘ラウンドを掛けて1回の旋回しかできません。

 この最後の数字は、私の趣味で求めています。
 実際のプレイにはあまり影響しないと思いますが、どの飛行速度が最も小回りが利く速度なのか、という答えを出してみました。

 最も小回りが利く飛行速度は1,000km/h(機動ポイント=4)で、1戦闘ラウンドに2回の旋回を行えます。
 他の飛行速度では、これほど早く旋回できません。
 航空機同士の格闘戦を行うのであれば、双方の航空機は自動的に、 この飛行速度へ落ち着くこととなるでしょう。

 その次に小回りが利く飛行速度は500km/h〜1,500km/h(機動ポイント=2〜6)の範囲で、 1戦闘ラウンド当たり1回〜1.5回の旋回を行えました。

 これ以外の飛行速度、1,750km/h以上(機動ポイント=7以上)を選択するのであれば、 その航空機が取り得る作戦は一撃離脱のみです。
 旋回して反復攻撃を試みるまでには長い時間を浪費してしまうことでしょう。

 超音速機は急に曲がれない、のです。



 上記の最小直進距離は「COACC」の移動システムに対応して、 500mマスを用いています。
 これをメガトラの個人戦闘システムに適合させるため、150mマスに変換してみました。

      表9 航空機の旋回時に必要な最小直進距離 (150mマス)

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 1マスのスケールを500mマスから150mマスに変更(30%の縮小)。
 飛行速度のスケール250km/hから100km/hに変更(40%の縮小)。
 縮小率が異なっているので若干の歪みが生じてしまっていますが、 最小直進距離のルールをメガトラの個人戦闘システムに適合させた結果は上記の通りです。

 150mマスを用いている場合、ブラックアウトのチェックは飛行速度600km/h以上で行って下さい。
 このスケールでも緩い旋回を行っているのであれば、チェックは不要になります。




(2)メガトラにおける、飛行型輸送機器の旋回能力(低速時)

 同じような方法で、航空機ではない飛行型輸送機器の旋回能力を考えてみましょう。

 しかし翼を持たない飛行型輸送機器は、旋回に必要な推力を揚力で賄うことができません。 その代りになるものは、移動システムである反重力モジュールの推力だけです。
 その上、推力の大半は浮揚分の推力として、下方向へ向けておかないといけませんでした。
 自由に使える残り推力は、総推力から浮揚分の1Gを引いたもの。
 つまり、最高速度の計算にも用いた駆動推力が旋回に使用できる推力だ、ということになります。

 最高速度が120km/hのエアラフトGキャリアーは、 旋回に使える駆動推力が0.1Gしかありません。
 最高速度が1,080km/hのスピーダーは、駆動推力が1.0G。
 反重力戦車トレピダは最高速度が1,000km/hですが、その駆動推力は1.2Gです。
 ローテクの航空機が主翼を使って、最大で10Gという高G旋回を行っていた事に比べると、 ハイテクの飛行型輸送機器は何とも大人しい旋回をしている(大人しい旋回しかできない)のだなと感じます。
 本当に、旋回に使える推力がこの程度で足りるのでしょうか?



 不安になったら、検証です。
 旋回に使える駆動推力が0.1Gしかない エアラフトGキャリアーについて、その旋回半径を求めてみました。
 同時に最小直進距離旋回に必要な戦闘ラウンド数も求めておきます。


        表10 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=0.1G、15mマス)

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 表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイントです。
 飛行速度が小さいため、スケールとして15mマスを用いました。

 その右側が旋回半径(m)と、15mマスで示した最小直進距離
 決して速いとは言えない速度(=40km/h)であっても 45度の旋回に必要な最小直進距離は6マス(=90メートル)。
 エアラフトGキャリアーの 最高速度(=120km/h)でも48マス(=720メートル)となっていました。

 右端の数値は旋回に必要な戦闘ラウンド数
 エアラフトGキャリアーが 最高速度(=120km/h)で飛行している場合、45度の旋回を行うだけでも8戦闘ラウンドが必要だと分かりました。
 Uターンは180度の旋回に相当しますから、この数字の4倍。32戦闘ラウンド(=3分強)が必要になるでしょう。
 より遅い速度(=40km/h)で飛行している場合、45度の旋回に必要な時間は3戦闘ラウンドでした。
 Uターンに必要な時間は4倍の12戦闘ラウンド(=1分強)です。

 こんな悠長なことを繰り返すのであれば、 エアラフトGキャリアーは一端、速度をゼロまで落とし、 速度ゼロの状態で方向転換を行って、再び最高速度まで加速する、という移動方法を選ぶべきでしょう。
 すでに表6で計算した通り、エアラフトGキャリアーは 速度ゼロの状態から最高速度(=120km/h)になるまで6戦闘ラウンドしか掛かりません。 より低速(=40km/hならば2戦闘ラウンドです。
 減速、速度ゼロの方向転換、再加速の手順を踏んでも、必要な時間は13戦闘ラウンド(低速で5戦闘ラウンド)でした。 Uターンの32戦闘ラウンド(低速ならば12戦闘ラウンド)と比べて半分以下の時間で済みます。
 多くのパイロットは、Uターンよりも一旦停止の移動を選ぶことでしょう。

 ついでに書いておくと、旋回に駆動推力を流用してしまった場合は、 飛行型輸送機器本来の駆動推力がゼロになってしまうため、 空気抵抗などの要因で速度がどんどん落ちていくことになります。
 旋回を長時間連続して行っている場合は、速度ゼロになることも、有り得ない訳ではないのです。



 旋回に使える駆動推力が0.1Gしかない場合、 飛行型輸送機器の旋回能力は極めて低い、ということが分かりました。
 はっきり言って、話になりません。
 エアラフトを使ったカーチェイスは、3〜8戦闘ラウンドに1回だけ45度の旋回を行うという、 どうにも緊迫感の欠けた、味気ないものとなってしまうのではないでしょうか。
 Gキャリアーが地上目標に反復攻撃を掛ける場合は、目標の上空を通り抜けた後に減速して一時停止。 停止した状態で移動方向を切り替えた後、再び加速して突っ込んでくるという、まるで闘牛のような戦い方になるでしょう。

 ……どうにも面白くありません。
 メガトラの輸送機器設計ルールに従えば上記の通りの情景しか発生しない筈ですが、私の好みには合いません。
 素早く目標に襲い掛かるため、あるいは敵の攻撃を避けるため、スリルあふれるアクションシーンを実現するため、 エアラフトGキャリアーに急旋回は不可欠です。
 何としても、これら飛行型輸送機器に急旋回を再現させてみましょう。



 此処で使えそうなネタとして、 「Starship Operator's Manual、p.03」の「通常ドライブ」に関連した記述を思い出しました。
  限られた時間(通常は5分間以内)であれば、 宇宙船は通常ドライブの出力を通常の4倍に上げられるというルールです。
 この出力増加は離着陸時にしか使えず、もちろん戦闘には利用できない。
 過負荷によるトラブルが発生するかも知れない。

 といったペナルティも存在していますが、このメカニズムが宇宙船の通常ドライブだけに適用され、 飛行型輸送機器の反重力型移動システムにも使えない、とは思えません。
 同じ方法を使って反重力型移動システムの出力を上げれば、飛行型輸送機器の旋回性能も向上することでしょう。

 具体的には、飛行型輸送機器を下から支えている推力、浮揚分の推力を増やすことにしました。
 輸送機器設計ルールで記述されている通り、滑空式(エアクッション型、反重力型を含む)の移動システムを備えた輸送機器は、 輸送機器自体を重力に逆らって支えるため、1G分の推力を割かなければなりません。
 エアラフトGキャリアーも、 スピーダー反重力戦車トレピダも、 メガトラの輸送機器設計ルールで作られている以上、必ず1G分の浮揚推力を備えているのです。

 この出力増加を「Starship Operator's Manual」では、 オーバードライブ、と呼んでいます。
 出力140%のオーバードライブであれば、それなりに高頻度で使用しても問題が起きないとのこと。
 浮揚推力の出力を140%まで上げた場合、その推力方向を45度まで傾けても、垂直方向に1G分の推力は確保できます。
 そして同時に、水平方向に対しても旋回用の推力を1Gも確保することができました。
 この推力(1G分の旋回用推力)を用いて、飛行型輸送機器の旋回能力を再計算してみましょう。


        表11 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=1.0G、15mマス)

BW53_Fig11.gif - 11.7KB

 表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイントです。
 スケールは今回も15mマス

 旋回半径(m)は旋回推力=0.1Gの場合と比べて、およそ10分の1に縮まりました。
 15mマスで示した最小直進距離も、ほぼ10分の1となっています。
 旋回に必要な戦闘ラウンド数も同様に激減。

 最小直進距離の欄に示した「0.5」という数値は、同じ1マスで90度の旋回が可能だ、という意味です。
 1マスの前進に使われる移動ポイントは1、90度の旋回に使われる移動ポイントも1ですから、 移動と旋回の繰り返しで2ポイントの移動ポイントを消費することに変わりはありませんが、より急激な旋回が可能になりました。



 エアラフトGキャリアーの場合、 最高速度(=120km/h)での最小直進距離が5マスですから、 毎戦闘ラウンドに1回以上の45度旋回が可能となりました。
 Uターン(180度旋回)に費やす時間は4戦闘ラウンド。
 旋回ではなく、減速、速度ゼロの方向転換、再加速の手順を踏んだ場合に必要な時間は13戦闘ラウンドですから、 この旋回性能ならばUターンの方が早くなりました。闘牛のような一撃離脱に拘らなくても、より早い反復攻撃が可能になるでしょう。

 より低速(=40km/h)の場合、最小直進距離は1マスでした。
 毎戦闘ラウンドに2回の45度旋回を行えますから、Uターンには2戦闘ラウンドしか要りません。
 やはり、減速、速度ゼロの方向転換、再加速の移動方式よりも早い反復攻撃が可能になったようです。



 オーバードライブは400%の出力増加が可能なのに、140%だけの出力増加では役不足です。
 折角ですから、出力200%の場合と、出力400%の場合についても、旋回能力を求めてみましょう。

 まずは出力200%のオーバードライブから。
 この場合、飛行型輸送機器の傾きは60度前後となり、垂直成分(浮揚のため)の推力は1Gを確保。 水平成分(旋回のため)の推力としては2.0G(厳密には1.73G)を確保できました。

 2.0Gの旋回用推力を用いた場合、飛行型輸送機器の旋回能力は以下のようになります。


        表12 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=2.0G、15mマス)

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 旋回推力0.1Gから1.0Gまで増えた場合に比べてしまうと それほど劇的な変わり方ではありませんが、旋回半径はほぼ半分に、最小直進距離も半分前後まで減りました。



 4.0Gの旋回用推力を用いた場合、飛行型輸送機器の傾きは約75度。 垂直成分(浮揚のため)の推力として1Gを確保しつつ、水平成分(旋回のため)の推力は4.0G(厳密には3.86G)を確保できるでしょう。
 旋回能力は以下のようになります。


        表13 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=4.0G、15mマス)

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 実に素晴らしい旋回能力ですが、200%の場合も400%の場合も、 オーバードライブには何らかのペナルティを設けておくべきでしょう。
 オーバードライブを用いた戦闘の後、基地に帰還したら数時間の整備が必要だとか、若干の修理費が掛かるとか。
 素人が200%や400%のオーバードライブの使用を試みた場合は、 事故を起こす可能性も考慮に入れるべきだと思います。

 出力140%までのオーバードライブであれば、それほどの問題は起こりません。
 操縦者がその飛行型輸送機器を操縦する技能を備えていて、 きちんと定期整備を受けている輸送機器であれば、ペナルティを気にする必要はないでしょう。

 このあたり、適当な「ハウス・ルール」を思いつかなかったので、レフリーの裁量にお任せしますが。




(3)メガトラにおける、飛行型輸送機器の旋回能力(高速時)

 飛行型輸送機器がより高速(具体的には300km/h以上?)で飛行する場合、 その移動を15mマスで表現することが難しくなってきます。
 そこで今度はスケールを150mマスへ変更して、 飛行型輸送機器最小直進距離を求めてみました。



 まずは、移動システムに掛ける負荷が少なくて済む、出力140%のオーバードライブから。
 この状態では、1G分の推力を旋回に用いることができます。


        表14 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=1.0G、150mマス)

BW53_Fig14.gif - 14.2KB

 表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイントです。
 スケールは今回から150mマス
 飛行速度100km/hから300km/hの範囲は15mマスのスケールと重複していますが、敢えて載せました。

 1,000km/hで飛行するスピーダー反重力戦車トレピダは、 36マスの最小直進距離で45度の旋回が可能です。
 45度の旋回を1回行うために必要な時間は8戦闘ラウンド。
 1分弱の時間を掛けて45度の旋回ですから、Uターンには29戦闘ラウンド(=3分弱)が掛かります。

 何だか再び、泣きたくなるような低レベルの旋回能力になってきました。
 表9で示したように、 同じ速度(1,000km/h)で飛行する航空機最小直進距離は4マスで、 毎戦闘ラウンドに1回以上の頻度で旋回することが可能なのですが。



 出力140%のオーバードライブでは足りません。
 旋回推力を2.0Gに増やすため、今度はオーバードライブを出力200%にしてみます。


        表15 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=2.0G、150mマス)

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 旋回推力が2倍に増えた御蔭で、旋回半径はほぼ半分に、最小直進距離も半分に減りました。
 しかし1,000km/hで飛行する場合の最小直進距離は18マスで、Uターンには15ターンが必要です。
 航空機並みの旋回能力には未だ届きません。



 今度は、出力400%のオーバードライブで旋回能力を評価してみます。


        表16 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=4.0G、150mマス)

BW53_Fig16.gif - 13.7KB

 旋回推力を4.0Gまで増やしても、1,000km/hで飛行するスピーダー反重力戦車トレピダは、 最小直進距離が10マスまでしか減りませんでした。
 かろうじて、2戦闘ラウンドに1回の45度旋回が可能というレベルです。
 同じ速度で飛行する航空機の旋回能力、 最小直進距離が4マスにはとても敵いません。




(4)飛行型輸送機器の旋回能力(揚力と反重力の併用)

 スピーダー反重力戦車トレピダの旋回能力が、 同じ速度で飛行する航空機の旋回能力に全く敵わない。
 という現状は面白くありません。
 もう少し工夫して飛行型輸送機器の旋回能力を高めてみましょう。



 工夫といっても大したことではありません。
 反重力型移動システムのオーバードライブによる旋回推力4.0Gに、揚力による旋回推力6.0Gを加えるだけです。

 実は「帝国百科、p.77」に掲載されているスピーダーのイラストには、 しっかりと翼が描かれていました。これは翼で発生させた揚力を旋回に用いなさい、という神(デザイナー)からの啓示なのです。
 その一方で「同、pp.76-77」の エアラフト2種とGキャリアーには見当たりませんが、 これらの飛行型輸送機器は飛行速度が遅すぎるため、 翼を付けても旋回推力としては役に立たないということなのでしょう。
 おや? 「反乱軍ソースブック」の反重力戦車トレピダにも翼がありませんでした。
 被発見率や被弾率の増加を考えると、反重力戦車に翼を付けることは不都合だということなのかも知れません。

 という訳で、飛行型輸送機器の旋回推力に、翼によって生じる揚力6.0Gを追加することとしました。
 オーバードライブ400%によって発生する4.0Gと合わせれば、合計で10.0Gです。
 これだけ大きな旋回推力ならば、航空機と同等の旋回能力を発揮できるのではないでしょうか。



 もちろん、飛行型輸送機器の旋回推力に6.0G分の揚力を追加できるのは、 その世界の大気レベルが4(希薄)以上で、飛行速度が600km/h以上の場合のみです。
 大気が薄すぎれば翼による揚力を得ることができません(航空機の利用制限も大気レベル4以上)。
 飛行速度が遅すぎれば翼が発生する揚力も小さくなるため、得られる旋回推力も小さくなってしまうのです。

 以下に、飛行型輸送機器の旋回推力4.0Gだけによる旋回能力と、 航空機の旋回推力8.0〜10.0Gによる旋回能力を示しました。


        表17 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=8.0G、150mマス)

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 今回も、表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイントです。
 スケールは150mマス
 飛行速度は100km/hから4,000km/hの範囲です。

 表の中央は、反重力による旋回
 400%のオーバードライブ、旋回推力4.0Gを用いた旋回能力で、 最小直進距離旋回に必要な戦闘ラウンド数を示しました。

 表の右端は、揚力による旋回
 旋回推力8.0〜10.0Gを用いた航空機の旋回能力で、 同じように最小直進距離旋回に必要な戦闘ラウンド数を示しています。



 翼を装備している飛行型輸送機器、例えばスピーダーが、 オーバードライブ400%の推力4.0Gに、翼による揚力4.0〜6.0Gを追加して旋回を行う場合、 その最小直進距離揚力による旋回の欄を使用して下さい。
 但し前述の通り、6.0G分の揚力を追加できるのは飛行速度600km/h以上で飛行している場合のみです。
 飛行速度500km/h以下の場合は反重力による旋回の欄を用いて下さい。

 ご覧の通り、飛行速度が400km/h以下であれば反重力による旋回の方が有利で、小回りが利きます。
 旋回推力(揚力)の大きさが飛行速度に依存している航空機はどうしても、 低速飛行時には揚力が減り、旋回性能が悪くなってしまいます。
 そもそも失速を免れるためには、表4へ示した最低速度150〜350km/hより早く飛行する必要がありますから、 航空機が400km/h以下の低速で飛行することは滅多にないでしょう。
 最高速度が300km/hに制限されている非流線形(「COACC」ではSimple)については、結論を保留しておきます。

 飛行速度が500km/hの場合、 反重力による旋回揚力による旋回の旋回能力は同等でした。

 飛行速度が600km/h以上の場合は、揚力による旋回の方が明らかに有利です。
 小回りが利きました。
 翼を装備しているスピーダーは、 火力や装甲といった多くの面で反重力戦車トレピダに負けていますが、 最高速度と旋回能力の面だけは優っていると言えそうです。
 その性能差を活かせば、スピーダートレピダによるカーチェイスも、 この「ハウス・ルール」によって面白くプレイできるかも知れません。



 翼を装備している飛行型輸送機器が10Gの急旋回を行った場合も、 ブラックアウトのチェックを行ってもらうつもりでしたが、 この件については橘様から加速補正器の存在を示唆されました。
 確かに加速補正器を使用すれば、 飛行型輸送機器のパイロットや乗客は加速度の影響を少しも受けずに済みます。
 「帝国百科」の記述を確認したところ、 確かに大半の飛行型輸送機器加速補正器を装備していました。

 航空機と同等の旋回性能を発揮しつつもブラックアウトのチェックが不必要。
 翼を装備している飛行型輸送機器スピーダーは空中戦において、 ローテクの航空機に対して圧倒的な優位を発揮できることでしょう。




(5)飛行型輸送機器の旋回能力のまとめ

 メガトラの輸送機器設計ルールを初めて見た時から気になっていた、 飛行型輸送機器の旋回能力について考察してみました。



 端的に言って、輸送機器設計ルールで作られた飛行型輸送機器、 反重力で飛行する輸送機器は、飛行中に旋回する能力を持ちません
 それなりの加速能力は備えていますから、飛行型輸送機器が飛行する方向を変えたい場合は、

 減速して一旦停止。
 静止した状態で方向転換。
 望む方向へ再度加速。

 という流れになるでしょう。
 物凄く間抜けな情景ですが、旋回を効率良く行うためのシステムが存在しない以上、上記以外の方向転換は有り得ないのです。



 こういった情景に対して不満を抱く私は、反重力式の移動システムを最大出力400%のオーバードライブで駆動させる、 という「ハウス・ルール」を作り、飛行型輸送機器の旋回に利用してみました。

 出力140%のオーバードライブで1.0Gの旋回推力を得るだけで、 エアラフトGキャリアーの旋回能力は劇的に向上しました。
 出力400%のオーバードライブならば旋回推力が4.0Gですので、アクションシーンも再現可能です。

 しかし高速(=1,000km/h)で飛行するスピーダートレピダの旋回能力は、 出力400%のオーバードライブを使っても、低いレベルのままです。
 同じ速度を出せる航空機と比べた場合、旋回能力では大きく劣ってしまいました。



 翼を装備している飛行型輸送機器は、600km/h以上の速度で飛行している場合に限って、 航空機と同レベルの揚力による旋回を行えるという 「ハウス・ルール」を追加し、考察してみました。

 これでようやく旋回能力が航空機と変わらなくなりましたが、 気になる点は翼を装備している反重力型の輸送機器があまり見当たらない、ということでしょうか。
 翼を装備していることがイラストで確認できた飛行型輸送機器は前述したスピーダーの他、 「帝国百科、p.80」の戦闘機、 「反乱軍ソースブック」のランパート型戦闘機ぐらいです。

 スピーダー戦闘機ランパート型戦闘機にしっかりと翼が装備されている以上、
 翼なんて飾りです。偉い人には分からんのですよ。
 ということは有り得ないでしょう。

 今後の考察で、その理由が明らかになることを期待します。





飛行型輸送機器の上昇/降下能力


 今度は飛行型輸送機器に関して、垂直方法の移動能力を考察してみました。

 「COACC」のルールを参考にすると、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を上昇できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を降下できる。

 なのだそうです。

 メガトラベラーの飛行型輸送機器も同じように、

 移動ポイントを1つ消費することで
 1高度レベル(15m / 150m)を上昇/降下できる。

 というルールにすれば問題ないと思われます。



 ちなみに、1高度レベルの高さは「COACC」の場合、1高度レベル=500メートルの高度差を表していました。
 マップの1マスの大きさ、水平方向の移動距離と同じですね。
 メガトラベラー個人戦闘ルールの場合も水平方向のスケールと合わせて、 15mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも15メートル、 150mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも150メートル、にすれば良いでしょう。

 更に余談ですが、「COACC、p.51」の記述によれば、 高度100メートル以下を飛行している状態がNOE飛行だそうです。
 NOE飛行はVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えない飛行方法ですが、 このNOE飛行の際に出せる最高速度が地表速度であるとのこと。
 これでようやく、長年の疑問がひとつ解消しました。
 地表速度とは、 飛行型輸送機器が高度100メートル以下で出せる最高速度のこと、だったのです。



 話を元に戻しますが、上記のルールのままですと、垂直移動に用いる移動ポイントの量に何の制限もありません。
 どんな航空機も、どんな飛行型輸送機器も思うがまま。 水平方向への移動がゼロで、垂直方向だけにしか移動しない行為。つまり垂直上昇や垂直降下が可能です。

 その程度にもよりますが、ある程度の移動制限は有った方が面白いでしょう。
 という訳で今度は垂直方向の移動能力、上昇と降下の能力に関して、 それを制限するための「ハウス・ルール」を作ってみました。


      表18 飛行型輸送機器の上昇/降下能力制限(15mマス)

BW53_Fig18.gif - 11.8KB

 表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイントです。
 スケールは15mマス
 飛行速度は10km/hから300km/hの範囲です。

 横軸は、その飛行型輸送機器駆動推力
 航空機の場合は加速率を使って下さい。
 0.1Gと0.25G、0.50G、1.0Gの4段階に分けました。
 それぞれの駆動推力毎に、 その飛行型輸送機器が持っている移動ポイントの何パーセントを垂直移動に使えるか、 ということを示しています。
 駆動推力=0.10Gは6分の1(=16.7%)、駆動推力=0.25Gは3分の1(=33.3%)、 駆動推力=0.50Gは2分の1(=50.0%)、駆動推力=1.00Gは4分の3(=75.0%)、 という比率にしました。
 その比率を移動ポイントに掛けた数字(端数切捨て)が、垂直移動に使える移動ポイントです。

 例えば、最高速度(=120km/h)で飛行するエアラフトは、移動ポイントが12。
 エアラフト駆動推力は0.10Gですから、 その6分の1(=16.7%)、2ポイントまでを垂直移動に使うことができます。 1戦闘ラウンドに変更できる高度レベルは2つ(30メートル)まで、ということになりました。
 1分(=10戦闘ラウンド)当たりの上昇能力は300メートル。 1時間当たりの上昇能力は18kmなので、8時間の連続上昇を行えば衛星軌道(高さ150km〜200km)まで上がることも可能でしょう。
 エアラフトが8時間(正確には世界の規模コードと同じ時間数)で衛星軌道の高さまで上がれるという記述が 「CT版、基本ルールブック」の中にありましたから、妥当な数字だと思われます。

 1.2G以上の大きな駆動推力を持つ飛行型輸送機器は、 制限なしで自由に垂直移動や垂直降下を行えることにしました。



 より高速で移動する飛行型輸送機器の場合、上昇/降下の能力制限は以下の通りです。


      表19 飛行型輸送機器の上昇/降下能力制限(150mマス)

BW53_Fig19.gif - 13.3KB

 今回も、表の左端は飛行型輸送機器の飛行速度と移動ポイント。
 スケールは150mマス
 飛行速度は100km/hから4,000km/hの範囲。

 横軸の数字は表18と同じで、それぞれの駆動推力毎に、 その飛行型輸送機器が持っている移動ポイントの何パーセントを垂直移動に使えるか、という値です。

 最高速度(=1,000km/h)で飛行するスピーダーは、 150mマスで示した移動ポイントが10。
 スピーダー駆動推力は1.00Gですから、 その4分の3(=75.0%)、7ポイントまでを垂直移動に使うことができました。  最大の7ポイントを上昇に用いれば、1戦闘ラウンド当たりで高度レベル7(=1,050メートル)を駆け上がることができます。
 高度1万メートルに上昇するまでの時間はわずか1分(=10戦闘ラウンド)、衛星軌道までの時間も15分弱しか掛かりません。



 この「ハウス・ルール」の上昇/降下能力制限は、あくまで雰囲気を作り出すために考えたものです。
 プレイに支障が出ると感じたのであれば、無理に採用する必要はないでしょう。





船殻(Hull)と機体(Aieframe)


 最後に、機体設計のルールについて軽く考察しておきましょう。

 「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている輸送機器設計ルールと、 「COACC」の航空機設計ルールは、基本部分こそ類似しているものの、 その船殻(Hull)と機体(Airframe)の部分に関しては、その概念が全く異なっていました。



 輸送機器設計ルールの場合、設計の基準となるものは「容積」です。
 その単位がキロリットルでも排水素トンでも構いませんが、 船殻の大きさもパワープラントの出力も「容積」から決まりました。
 ですから、「容積」4排水素トンのエアラフトや 「容積」100排水素トンの偵察艦といった風に、輸送機器の大きさも「容積」で表されます。
 船殻内に搭載できるパワープラントや移動装置、兵器、貨物の量は輸送機器の「容積」によって制限されてしまうのです。

 ところが「COACC」の航空機設計ルールは、航空機の設計に「容積」を用いません。
 「COACC」において、航空機設計の基準となるものは「重量」です。
 機体に搭載できるエンジンや燃料、兵器、貨物の量は航空機の「重量」から決まっていました。
 「COACC」において「容積」は、 航空機を収容する格納庫や建屋に必要な容積、といった意味しか持たないのです。



 また、「COACC」の機体には「装甲値」が存在しませんでした。
 コックピットとエンジン用の防弾装甲という設備が存在し、 それらにだけは「装甲値=8」という数値が割り当てられていますが、 この2つ以外の設備や機体に「装甲値」は無いのです (「装甲値=0」という意味ではなく、「装甲値」の概念自体が無いのです)。



 主に上記2つの理由から、「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている輸送機器設計ルールの船殻(Hull)と、 「COACC」の航空機設計ルールの機体(Airframe)は、全く別のものであると考えた方が良さそうです。

 この2つを無理矢理に融合させている「ハード・タイムズ、p.85」の表には色々と文句を言いたいのですが、 逆に考えれば、ここまで割り切らないと 輸送機器設計ルールでは航空機を再現できない、ということなのかも知れません。

 楽しめれば良いという見方も有りますから、これはこれで良いのでしょう。





結論


 今回は、航空機(飛行型輸送機器)飛行速度(Air Speed)について考察しました。

 「COACC」のルールを参考にしながら、航空機(飛行型輸送機器)の最高速度、 加減速、旋回能力、上昇/降下能力について、その検証と「ハウス・ルール」の作成を試みています。



 まずは輸送機器設計ルールから、ハイテク飛行型輸送機器の最高速度について検証しました。
 合わせて航空機(固定翼機)の最高速度も求めてみましたが、 輸送機器設計ルールに固定翼機を持ち込む場合は、 「ハード・タイムズ、p.85」に掲載されているルールのままでも良いようです。

 航空機(飛行型輸送機器)の加減速については、 駆動推力/加速率をそのまま適用。
 複雑なルールを作ることも検討しましたが、あまりにも煩雑になりそうなので諦めました。



 飛行型輸送機器の旋回能力について考察したところ、 反重力で飛行する輸送機器は飛行中に旋回する能力を持たないという事実が判明。
 それなりの加速能力は備えていますが、飛行型輸送機器が飛行する方向を変えたい場合は、

 減速して一旦停止。
 静止した状態で方向転換。
 望む方向へ再度加速。

 という流れになりました。
 物凄く間抜けな情景ですが、旋回を効率良く行うためのシステムが存在しない以上、上記以外の方向転換は有り得ないのです。

 こういった情景に対して不満を抱く私は、反重力式の移動システムを最大出力400%のオーバードライブで駆動させる、 という「ハウス・ルール」を作り、飛行型輸送機器の旋回に利用してみました。

 出力140%のオーバードライブで1.0Gの旋回推力を得るだけで、 エアラフトGキャリアーの旋回能力は劇的に向上しました。
 出力400%のオーバードライブならば旋回推力が4.0Gですので、アクションシーンも再現可能です。

 しかし高速(=1,000km/h)で飛行するスピーダートレピダの旋回能力は、 出力400%のオーバードライブを使っても、低いレベルのままです。
 同じ速度を出せる航空機と比べた場合、旋回能力では大きく劣ってしまいました。

 そこで、翼を装備している飛行型輸送機器は600km/h以上の速度で飛行している場合に限って、 航空機と同レベルの揚力による旋回を行えるという 「ハウス・ルール」を追加し、考察してみました。

 これでようやく旋回能力が航空機と変わらなくなりましたが、 気になる点は翼を装備している反重力型の輸送機器があまり見当たらない、ということでしょう。



 更に飛行型輸送機器の垂直移動能力を考察しました。
 この問題に関しては個人戦闘ルールに該当するものが全く存在しなかったため、「COACC」を参考にして、

 移動ポイントを1つ消費することで
 1高度レベル(15m / 150m)を上昇/降下できる。

 というルールを作成。
 1高度レベルの大きさ(高さ)は個人戦闘ルールの水平方向とスケールを合わせて、 15mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも15メートル、 150mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも150メートル、にすれば良いでしょう。
 折角ですから面白くなるように、垂直移動(上昇/降下)の能力を制限する「ハウス・ルール」も追加しました。

 高度に関しては有難いことに、 地表速度飛行型輸送機器が高度100メートル以下で出せる最高速度のこと、 であると判明しました。
 実に有難い情報です。
 今後は回転翼器(ヘリコプター)飛行船に関するルールを翻訳し、 NOE飛行地表速度についても考察していくことにしましょう。






2013.08.25 初投稿。