The Best Weapon
54th stage (Air Force 2)
Rotary-Wing Aircrafts
and Airships

最強兵器 決定戦
第54回(空軍2)
回転翼機と
飛行船
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MEGA TRAVELLER
 


 

NOE飛行大きな利点
     敵見つからず撃たれないこと


 前回から、航空機(飛行型輸送機器)の移動に関する考察と ハウス・ルールの作成を始めています。
 その対象は飛行型輸送機器の中でも 固定翼機(Fixed-Wing Aircrafts)反重力型輸送機器(Grav Vehicles)に限定されていますが、 その最高速度と旋回能力について考察し、 加減速、旋回能力、上昇/降下能力に関するハウス・ルールを作ることができました。



 しかし「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」に 作り方(設計ルール)が掲載されている航空機は、 固定翼機だけではありません。
 回転翼機(Rotary-Wing Aircrafts、ヘリコプター)飛行船(Airships)
 宇宙船エアラフトが飛び交うハイテクのトラベラー世界では、 ルールブックの端に少し触れられているだけでまず登場することのないであろう ローテクの飛行型輸送機器さえ作ることができるのです。
 こんな楽しいルールを見つけて放っておくのは、もったいない、ですね。



 という訳で今回は、回転翼機(ヘリコプター)ついても考察してみましょう。
 その移動メカニズムは反重力型輸送機器のものに似ていますから、 回転翼機(ヘリコプター)の移動について考察すれば、 反重力型輸送機器にも適用可能なハウス・ルールを作れるかも知れません。

 前回の考察で掘り下げなかったNOE飛行も考察します。
 NOE飛行はVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えない飛行方法だそうですが、 具体的に、その飛行方法はどんなものになるのか、興味を引かれました。

 その次に考察する対象は飛行船
 メガトラの輸送機器設計ルールでは絶対に再現できない輸送機器ですから、どのように設計しているのかとても楽しみです。
 飛行船と聞けば、大砲を山ほど搭載し、 その全面を装甲で覆った飛行戦艦ゴリアテ、のことを連想される方も多いのではないでしょう。
 そうした飛行戦艦を「COACC」のルールで再現することはできるのでしょうか。



 今回は、飛行型輸送機器の中でも 回転翼機(ヘリコプター)飛行船の移動能力を確かめ、 足りない部分をハウス・ルールで補います。





回転翼機(ヘリコプター)の移動能力


 今回は回転翼機(ヘリコプター)の移動能力から考察を始めていきましょう。

 尚、前回の考察でも触れましたが「COACC」の航空機設計ルールは、 航空機の設計に「容積」を用いません。
 「COACC」において航空機設計の基準となるものは「重量」ですので、 その違いに御注意下さい。




(1)回転翼機の揚力

 回転翼機は、その回転翼(rotor blades)を勢い良く回転させることで揚力を得ています。
 回転翼を回転させるためにはエンジンが必要ですから当然回転翼機には、適切な出力のエンジンも搭載されています。

 つまり「レフリーズ・マニュアル」の輸送機器設計ルールに言い方を合わせるのであれば、 回転翼がサスペンション、エンジンがパワー・プラントに相当する訳ですね。
 もちろんトランスミッション(変速機)も必要です。
 これらは「COACC」のルールで、 gearboxes, transmission assemblies, rotors などと呼ばれていますが、 此処では纏めて回転翼と呼んでおきましょう。

 その揚力の大きさは、回転翼機自体の重量を支えられなければなりません。
 十分な揚力を得るためには、適切な出力を備えたエンジンも必要です。
 「COACC」では、表に掲載されているエンジンを選び、 そのエンジンに見合った回転翼を追加する、というルールでした。
 更に大きな出力が必要ならば、複数のエンジンを搭載して出力を倍増させることも可能です(勿論、重量や価格も倍増しますが)。
 エンジンの種類は大小合わせて5種類。回転翼の種類は4種類ありました。
 それらの組み合わせは5種類×4種類=20種類となる訳ですが、幾つかの使用制限やデータの重複もあって、 実際に使用できる組み合わせは14種類だけです。



 以下に、エンジン回転翼の組み合わせを示しました。
 最も重要な数値は、その組み合わせによって生じる揚力の大きさですが、 単純にデータを並べるだけでは面白くありませんから、それらを組み合わせた状態での重量と価格を並記しています。

 まずはMTR/COAX配置回転翼から。


   表1 回転翼機のエンジンとローターが作り出す揚力(MTR/COAX配置)

BW54_Fig01.gif - 8.61KB

 MTR/COAX配置というのは、回転翼の配置方式です。
 正確な言い方は主ローターとテールローター配置:Main and Tail Rotor 同軸反転ローター配置:Coaxial Main Rotors でした。
 一般的なヘリコプター、機体中央に大きな主ローターを持ち、尾部に小さなテールローターを配置したものがMTR配置で、 主ローターを2枚上下(同軸)に重ね、反対方向に回転させるものがCOAX配置です。
 両者の特徴や詳細は異なっているのですが「COACC」において、 両者は性能的に同一なものとして扱われているため、此処では同じ表に纏めてしまいました。



 表の左端が、そのエンジンを利用できるテックレベル
 その次が、エンジンタイプ(Engine Type)

 その右に並ぶ数値が、その組み合わせによって生じる揚力の大きさと、 その組み合わせの合計重量、即ちエンジン回転翼の自重です。 単位はどちらもトン(ton)。
 その次が燃料消費量(L/Hour)価格(Kcr)

 最後の数値が揚力/重量比価格/揚力比で、 その組み合わせの性能を評価するために必要な数値です。
 揚力1トンを生じるために、 どれだけの重量価格が必要になるか、を求めました。



 結果は御覧の通り。
 揚力/重量比は、テックレベルの上昇と共に向上しています。
 最も揚力/重量比が大きなエンジンは、ガスタービンのように思えましたが、 1時間の飛行に必要な燃料の重量を加算したところ、高出力ガスタービンが最も大きいと判明しました。
 次点は意外なことにレシプロです。
 エンジンの性能評価は、燃料の重量を計算に入れておかないと、大きな間違いを犯すことになるでしょう。

 価格/揚力比については、 テックレベル=5〜6軽レシプロレシプロが安価で、 テックレベル=7〜8ガスタービンは高価だ、と判明しました。
 軽レシプロレシプロ揚力1トン当たりの価格5Kcr弱
 軽ガスタービンガスタービン高出力ガスタービン揚力1トン当たりの価格16〜32Kcrという範囲です。
 分かっていましたが、ガスタービンは高価なエンジンですね。
 特に軽ガスタービンは割高ですが、これは無理に軽量化を行った結果なのでしょう。



 今度はTAN配置です。


    表2 回転翼機のエンジンとローターが作り出す揚力(TAN配置)

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 TAN配置とはタンデム・ローター配置:Tandem Main Rotors のことであり、 機体の前後に同じ大きさの主ローターを1枚ずつ配置した方式です。
 回転翼は大きく重くなりますが、同じエンジン出力でも2割ほど揚力が大きくなっていました。

 揚力/重量比は、他の配置方式と比べて若干の向上。
 そして価格/揚力比も低下し、僅かながら割安となりました。

 更に、揚力が2割増えた分だけ燃費が良くなるという有難い結果にも繋がっており、 重量物の輸送、長距離の輸送にはTAN配置が好都合となっているようです。



 次はLGTA配置です。


    表3 回転翼機のエンジンとローターが作り出す揚力(LGTA配置)

BW54_Fig03.gif - 8.88KB

 実はLGTA配置には正式な名称がありません。 英文では Light Gearbox and Transmission Assemblies と書かれていますので、 強引に和訳すれば軽量回転翼となるでしょう。
 これは重量2トン以下の機体だけに使用できる回転翼ですので、 これと組み合わせたエンジンが生じる揚力も、2トン以下に抑えなければなりません。

 レシプロガスタービン高出力ガスタービンの3つは 実際に揚力を2トンまで落としてあります。
 その結果、高出力ガスタービンは、2.32トンの自重を支えることが出来ないと分かりました。 重量制限を超えているため、実際に使用することは出来ません。
 残り2つ、レシプロガスタービンも、 推力の制限に従い揚力/重量比が下がってしまったため、効率の良い組み合わせだとは言えないでしょう。
 この軽量回転翼を利用できるエンジンは、 軽レシプロ軽ガスタービンの2つだけ、なのです。

 回転翼が軽くなったおかげで、この2つの揚力/重量比は大きく向上しました。
 エンジンは1つだけしか積めませんが、小型の機体には十分です。



 折角ですから、反重力式サスペンションについても、 揚力/重量比価格/揚力比を求めて、比較してみました。


     表4 反重力式サスペンションとパワープラントが作り出す揚力

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 表の作り方はこれまでと同じですが、回転翼の代わりに反重力式サスペンションエンジンの代わりにパワープラント、具体的には核融合炉とMHDタービンを搭載した場合の 揚力重量燃料消費量(L/Hour)価格(Kcr)揚力/重量比価格/揚力比を並べました。

 実は「CT版:傭兵部隊」の中に、
> 反重力車輌の登場によりヘリコプターの活躍の場は失われますが、
> TL9の段階では反重力車輌に比べて安価なため、
> 特殊な状況下で使用されることもあります。

 という記述があったため、反重力型輸送機器のコスト・パフォーマンスがとても気になっていたのです。



 テックレベル=9の世界において、利用できる反重力式サスペンションは 消費電力の大きな標準型しか有りません。
 おまけに、利用できる核融合炉の最小サイズは10キロリットルですから、 生産される電力は40メガワットが最低ラインとなります。
 その結果、その電力全てを利用しようと思えば、その反重力型輸送機器の推力は 最低でも400トンという大きさになりました。
 核融合炉の効率を上げるため、その容積を16キロリットルまで大きくすると、その推力は960トンです。

 なるほど。回転翼機が安価である、という言葉にも納得しました。
 超大型/重量級の反重力戦車自走砲ならばともかく、 偵察や対戦車ヘリコプターの代わりを反重力型輸送機器が務めることは困難でしょう。
 揚力/重量比=7.1〜9.4という数値は、 回転翼エンジンの組み合わせで望めないレベルの高性能ですから、 反重力を利用したい気持ちはとても強いのですが。

 実は、パワープラントとして核融合炉の代わりにMHDタービンを選択すれば、 表4で示した通り、上記の大型化問題は解決します。
 揚力/重量比6.1という高性能。 おまけに価格/揚力比も十分に安価です。
 ちょっと矛盾してしまう事態ですが、「CT版:傭兵部隊」が執筆された時点では、 メガトラの輸送機器設計ルールが存在しなかった筈なので、仕方ないことなのかも知れません。



 テックレベル=10以上の世界では、 低パワー重量型反重力式サスペンションも利用可能になりました。
 低パワー重量型の消費電力は標準型と比べて5分の1。 そのため、揚力/重量比は更に向上して14.3〜23.1です。
 価格/揚力比はちょっと高価で27Kcr前後
 低パワー重量型反重力式サスペンションを利用するのであれば、 回転翼の方が安価になることは間違いないようです。



 こうして価格/揚力比を比較してみると、 大きな容積を持つ核融合炉ほど発電効率が高い、という核融合炉の特性から、 核融合炉を搭載した輸送機器は大型化しやすい傾向にある、と言えそうです。
 大きな核融合炉を搭載した方が安く作れるのですから、当然の結果ですね。
 実際のところ、大きな核融合炉を搭載するため船殻も大型化し、重くなってしまうため、 本当にそれが安価になるかどうかは検証してみないと分かりません。
 しかし「帝国百科」に掲載されているエアラフトGキャリアースピーダーなどが揃って、標準型の反重力式サスペンションを搭載している理由は、 そのあたり(コストダウン)にあるのではないでしょうか。

 経済的な理由にせよ他の理由があるにせよ、 メガトラベラーの輸送機器設計ルールで回転翼機を作り上げる場合は、 上記、表1〜表3に掲載されたエンジン回転翼のデータを流用して下さい。
 容積については「ハード・タイムズ」に掲載されている航空機用エンジンのデータより、 エンジン回転翼の重量1トン当たり1キロリットルにしておきます。




(2)回転翼機の最高速度

 回転翼機がどうやって必要な揚力を得るのか、それが明らかになったところで今度は最高速度を求めましょう。

 回転翼機が最高速度を求める方法は、少し変わっていました。
 加速率(G rate)を使って最高速度を求めるという点は固定翼機と同じなのですが、 その加速率の求め方が

> 加速率 = ( 揚力 × 0.25 )÷ 全備重量

 という計算式となっていたのです。
 実際は上記の数字に対して、機体形状から決まる推力効率(efficiency)=0.85〜0.90を掛けることになっていますが、 この問題に関しては後述。

 回転翼が生じる揚力の4分の1が総推力に相当する、というルールですね。
 こういう訳ですから、回転翼が生じる揚力は、上の表1〜3に掲載した数値よりも3%ほど大きい数値なのでしょう。
 そして回転翼を前方へ15度傾けることで、 掲載した数値通りの揚力と、揚力の4分の1に相当する大きさの推力が作られるのです。
 回転翼を傾ける方法は、機体の姿勢をそのままで回転翼だけ傾ける方法もありますが、 安全のためには機体ごと傾ける方が良いでしょう。そうした方が回転翼の構造も単純にできますので。



 今回も航空機の最高速度表を作成しました。
 前回の考察では固定翼機だけでしたが、 今回は翻訳が進んだので回転翼機(ヘリコプター)飛行船を並記しています。
 加速率の範囲が大きく異なっているため、固定翼機の最高速度は省略していますが。


             表5 航空機の最高速度表

BW54_Fig05.gif - 11.9KB

 表の左端が加速率
 加速率=0.01〜0.09に対応する最高速度は 「レフリーズ・マニュアル」には掲載されていません。 「COACC」で初登場の数値です。
 この数値が以前から分かっていれば、この数値が「レフリーズ・マニュアル」にも掲載されていれば、 設計できる輸送機器の幅が広がっただろうと恨みがましく感じたのは、私だけではない筈。

 その右側に並ぶ数字が、回転翼機飛行船最高速度です。
 但し、機体形状に関わらず回転翼機の最高速度は300km/h飛行船の最高速度は150km/h以下に制限されているとのこと。
 必要以上に加速率を増やしても最高速度は増えません。
 まぁ、妥当なところでしょう。

 回転翼機飛行船最低速度は存在しませんでした。
 必要ならば、速度ゼロでの空中停止(ホバリング)も可能です。



 回転翼機の設計を一度でも試してみればすぐに分かることですが、 回転翼機加速率は常に0.25以上となります。
 回転翼機の総重量(全備重量)は揚力以下でなければ飛べませんし、 回転翼機の推力は揚力の4分の1だと決まっているためです。
 ですから加速率=0.01〜0.20の欄は使いません。

 「COACC」のルールに従えば、 上記の数値に機体形状による推力効率=0.85〜0.90を掛けなければなりませんから、 加速率の最低値は0.2125です。
 加速率=0.20の240km/hという最高速度だけならば使うことも有り得ますが、 やはり0.01〜0.15の範囲は使用しません。

 エアラフト駆動推力が0.1Gしかないことと比べれば、 加速率が0.25G前後の回転翼機は、十分に機敏だと言えるでしょう。
 もちろんスピーダートレピダには敵いませんが。




(3)機体形状の選択(COACC)

 さて、ここで気になったのは、回転翼機の機体を「単純(Simple)」と「亜音速(Fast subsonic)」、 2つの中から選べるという「COACC」のルールです。
 前回の考察「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」の表4でも示しましたが、 「単純(Simple)」機体の最高速度は300km/hで、「亜音速(Fast subsonic)」機体の最高速度は800km/hでした。
 確かに、より早い最高速度を求めるのであれば、より早い最高速度を持つ機体を選ばなければならないでしょう。
 しかし前述した通り、回転翼機の最高速度は300km/hです。
 わざわざ重い「亜音速(Fast subsonic)」機体を選ぶ理由が見つかりません。

 そこで、機体形状によって決まる推力効率に注目してみました。
 メガトラの輸送機器設計ルールに回転翼機を取り込むだけならば、選べる機体形状は非流線形だけで済むでしょう。 推力効率という変数も存在しませんから、面倒なことで頭を悩ませる必要もありません。

 それでも「COACC」のルールに機体を選べると書いてある以上、 そのルールの存在意義を明らかにしなければ私の気がすまないのです。
 そこに謎がある以上、解明を試みるのは我々の義務なのではないでしょうか。



 機体形状を選択することで何が変わるのか。
 その問題を明らかにしてみましょう。

 「単純(Simple)」機体は、その回転翼機の「重量」1トン当たり、 0.01トン(1%)の重量を持ち、10crの価格が必要です。 最低速度と最高速度については省略しますが、その推力効率は前述した通りの0.85でした。
 「亜音速(Fast subsonic)」機体は、「重量」1トン当たり、0.05トン(5%)の重量を持ち、20crの価格が必要です。 そして、その推力効率は0.95でした。

 つまり、回転翼機を「単純(Simple)」から「亜音速(Fast subsonic)」に変更することで、 「重量」1トン当たりの機体重量増加は0.04トン(4%)で、価格上昇がトン当たり10crということになる訳です。
 推力効率は0.85から0.90に向上しますが、元から最低速度が存在せず、 最高速度が300km/hに制限されている回転翼機にとっては、これが唯一のメリットとなるでしょう。 他の要素(重量増加と価格上昇)はデメリットにしかなりません。



 回転翼機加速率を求める式は、前述した通り

> 加速率 = ( 揚力 × 0.25 )÷ 全備重量

 なのですが、 ここに「COACC」固有のルールである推力効率を取り込むと、 以下のように変わりました。

>機体形状が「単純(Simple)」の場合
> 加速率 = ( 揚力 × 0.25 )÷ 全備重量 × 0.85
> 
>機体形状が「亜音速(Fast subsonic)」の場合
> 加速率 = ( 揚力 × 0.25 )÷ 全備重量 × 0.90




 回転翼機が貨物(武装や燃料)を最大限に積もうとする場合、 その重量は回転翼機が備えている揚力と等しくなります。
 全備重量 = 揚力 という訳で。
 機体形状が「単純(Simple)」の場合、その加速率0.21、 機体形状が「亜音速(Fast subsonic)」の場合は加速率0.23になるのです。

 表5を使って最高速度を求める場合、加速率の端数は切り捨てです。
 ですから、機体形状が「単純(Simple)」でも「亜音速(Fast subsonic)」でも 使用する加速率0.20になり、 最高速度は240km/hであると判明しました。
 機体形状が異なっていても、最高速度は同じなのです。 機体自身の重量が重い分、「亜音速(Fast subsonic)」の機体は搭載できる貨物重量が4% (「重量」1トン当たり0.04トン)も減ってしまいますから、 「亜音速(Fast subsonic)」の機体にはデメリットしかありません。



 では、最高速度として300km/hを出せる場合はどうでしょうか?
 この場合、必要な加速率0.25以上です。
 その数値を推力効率の0.85と0.90で割れば、必要な推力/重量比はそれぞれ0.295と0.278でした。
 要するに回転翼機最高速度として300km/hを出せるようになるためには、 機体形状が「単純(Simple)」の場合で揚力の85%まで、 機体形状が「亜音速(Fast subsonic)」の場合で揚力の90%までしか貨物を搭載することができないのです。


 これを表に纏めると、以下のようになりました。


         表6 回転翼機の機体形状と最高速度の関係

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 機体形状として「亜音速(Fast subsonic)」を選択することで、最高速度300km/hを出す際、 貨物(武装や燃料)を5%も余計に積めるのだと考えれば、機体形状の選択にも納得できます。

 という風に私も納得しかけたのですが、ちょっと待って下さい、
 「亜音速(Fast subsonic)」の機体には4%分 (「重量」1トン当たり0.04トン)の重量増加というデメリットがあるではありませんか。
 折角、貨物積載量が5%も増えたというのに、その内4%は機体重量の増加分で打ち消されてしまうのです。

 残りの貨物積載量は、わずか1%(「重量」1トン当たり0.01トン)だけ。
 たったこれだけのために、機体形状を変える意味はあるのでしょうか?
 このルールの存在意義を疑いたくなります。



 回転翼機の設計ルールをメガトラに取り込む場合、 推力効率のルールまでを無理に取り込む必要はないでしょう。
 あるいは、船殻形状(非流線形/流線形/完全流線形)に関わらず、一律に0.85を掛けてしまった方が良いと思われます。




(4)回転翼機の加減速

 今度は回転翼機(ヘリコプター)の加減速について考えてみました。

 「COACC」のルールによると、回転翼機

 毎戦闘ラウンド毎に、速度1を増やしたり、減らしたりできる。

 とのこと。

 最高速度300km/hで飛行している回転翼機が、 わずか1戦闘ラウンド(=6秒)で停止状態まで速度を落とせる、というルールには違和感を抱きますが、 スケールが1マス500mの「COACC」ですから、仕方ないことかも知れません。



 スケールが15mマス150mマスのメガトラに合わせた場合、 回転翼機の加減速能力は以下のようになるでしょう。
 前回の考察と同じように、加速率から速度の変化量を求めてみました。


              表7 回転翼機の加減速

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 表の左端が加速率
 その右側に並ぶ数字が速度の変化量です。

 加速率が0.20〜0.25Gになると決まっている回転翼機は、 1戦闘ラウンド(=6秒間)の加速を行うことで、その飛行速度を11.8〜14.7m/sec(=42〜53km/h)増やすことができました。
 15mマスを使うのであれば、4〜5マス分の速度変更です。 エアラフトと比べれば2倍以上の加減速能力を持っていることが分かりました。

 回転翼機の最高速度は240〜300km/h。
 15mマスでの速度が24〜30マスですので、 最高速度に達するまでの時間が6戦闘ラウンド必要だ、という点はエアラフトと共通でした。

 150mマスを用いた場合の速度は2〜3マスです。
 1マス分の速度変更には2〜3戦闘ラウンドが必要だということが分かりました。




(5)回転翼機の旋回能力

 今度は回転翼機(ヘリコプター)の旋回能力について考察を始めますが、 例によって「COACC」のルールを参考にするならば、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで45度の旋回を行える。
 但し、同じマスで2回以上の旋回は行えない。
 最低でも1マス以上の移動を行ってから、次の旋回を実行すること。

 ということでした。
 但し、VTOL型航空機と回転翼機は例外として、

・vectored in-flight thrust capability(VIF)を備えたVTOL型の航空機は、
 パイロット/乗組員のブラックアウトを避ける行為判定なしで、
 1戦闘ラウンド当たり90度の旋回を、1機動ポイントの消費だけで実行できます。

・ヘリコプターは、1戦闘ラウンド当たり180度の旋回を行えます。


 というルールが存在しています。

 私が思うに、VTOL型航空機は90度、回転翼機は180度までの旋回は、 ホバリング状態での旋回を表現しているのではないでしょうか。
 速度ゼロの状態で旋回するのであれば、旋回角度は実質的に無制限ですし、 横方向への加速度(G)も掛かりませんからブラックアウトの心配もありません。
 VIFの能力限界を考慮してVTOL型航空機は1戦闘ラウンド当たり90度、 回転翼機は1戦闘ラウンド当たり180度の制限が付いていますが、十分に納得できる数値です。

 そして回転翼機の最高速度は300km/hですから、機動ポイントに変換すると1ポイントになりました。
 つまり500mマスを用いる「COACC」において回転翼機は、
 1マスの移動を行うか、
 その場に留まって最大180度の旋回を行うか、
 そのどちらかしか選べないということなのでしょう。

 この旋回性能はホバリング状態を表現しているという推測は間違いないようです。
 移動と旋回のどちらかしか行えない回転翼機の移動ルールは意外と不便ですが、 スケールが500mマスである以上、これも仕方のないでしょう。



 15mマス150mマスのスケールを用いる場合、 上記と同じ移動ルールでは都合が悪いので、何か別の旋回方法を考えなければなりません。

 とりあえず、固定翼機反重力型輸送機器と同じ方法で旋回を行うことにしましょう。
 回転翼機の推力(揚力の25%に相当)を旋回のための推力として転用したところ、 回転翼機の旋回能力(最小直進距離)は以下の通りになりました。


      表8 回転翼機の旋回時に必要な最小直進距離 (15mマス)

BW54_Fig08.gif - 12.0KB

 表の左端は回転翼機の飛行速度と移動ポイントです。
 飛行速度が小さいため、スケールとして15mマスを用いました。

 その右側が旋回半径(m)と、15mマスで示した最小直進距離で、 右端の数値は旋回に必要な戦闘ラウンド数

 予想通りというべきか、予想以上にと言うべきか、回転翼機の旋回性能が悪くなってしまいました。
 エアラフトの最高速度(=120km/h)で飛行している場合、 45度の旋回を行うだけでも4戦闘ラウンドが必要ですから、1戦闘ラウンド毎に1回以上旋回できるエアラフトよりも 小回りが利きません。
 回転翼機オーバードライブを使えない分だけ旋回推力が小さくなってしまい、 旋回能力という点では不利なのです。
 まぁ、ローテクの飛行型輸送機器ですから仕方ありませんね。



 ちなみに、150mマスを用いた場合の旋回能力(最小直進距離)は以下の通り。


      表9 回転翼機の旋回時に必要な最小直進距離 (150mマス)

BW54_Fig09.gif - 4.98KB

 この表のスケールは150mマスです。
 回転翼機の最高速度は300km/hなので、その速度までしか計算していません。

 現実における回転翼機の旋回性能がどの程度なのか、私は詳しくありませんが、 メガトラの個人戦闘ルールで用いる分には、この程度の旋回性能で十分だと思われます。




(6)回転翼機の上昇/降下能力

 回転翼機(ヘリコプター)最後の考察は、垂直方向の移動、上昇/降下能力に関するものです。

 「COACC」のルールでは、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を上昇できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を降下できる。

 なのだそうですから、固定翼機と同じように、

 移動ポイントを1つ消費することで
 1高度レベル(15m / 150m)を上昇/降下できる。

 というルールにすれば良いでしょう。

 1高度レベルの高さは水平方向のスケールと合わせました。
 15mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも15メートル、 150mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも150メートル、 という風に考えると、垂直方向の移動(上昇/降下)がとても楽になります。



 しかし上記のルールのままですと、垂直方向の移動に用いる移動ポイントの量に何の制限もありません。
 水平方向への移動がゼロで、垂直方向だけにしか移動しない行為。垂直上昇や垂直降下が可能です。

 確かに回転翼機は垂直上昇/降下が可能ですが、 とある戦闘ラウンドには300km/h(=30マス)の速度で直進していた回転翼機が、 次の戦闘ラウンドに前進を止め、450メートル(=30マス分)の垂直上昇を行うことは、流石に不自然です。

 それっぽい雰囲気を出すためには、回転翼機の垂直移動(上昇/降下)能力にも若干の制限を課すべきでしょう。



 回転翼機の場合、その加速率0.20〜0.30の範囲内にあります。
 貨物(燃料や武装)をほとんど積んでいない場合はもう少し大きくなることも有り得ますが、 面倒ですので一律加速率=0.25ということにしておきました。

 前回の考察では固定翼機の上昇/降下能力にも制限を設けましたが、 それに従うのであれば加速率=0.25回転翼機は、 持っている移動ポイントの3分の1(=33.3%)を垂直方向の移動に使えます。
 つまり、

 速度10〜20km/hは垂直方向の移動が不可能。
 速度30〜50km/hは垂直方向の移動に1ポイントしか使えません。
 速度60〜80km/hは垂直方向の移動に2ポイントまで使用可能。
 速度90〜100km/hは垂直方向の移動に3ポイントまで。
 ……中略……。
 速度300km/hは垂直方向の移動に10ポイントまで。

 というルールにしようと思ったのですが、やはり不自然なところが出てきてしまいました。
 固定翼機のルールをそのまま適用したところ、 回転翼機なのに垂直上昇が行えない、というルールになってしまったのです。
 さて、困りました。



 高速飛行時の垂直方向の移動能力を制限しなければならないが、低速時には垂直移動も可能。
 そうした場合は、垂直移動に使える移動ポイントを速度に関係なく制限してしまえば良いでしょう。

 此処では私の独断で、
 回転翼機が垂直移動に使える移動ポイントは、その飛行速度に関係なく5ポイントまで。
 ということにしました。

 例えば、最高速度(=300km/h)で飛行する回転翼機は、移動ポイントが30です。
 この移動ポイントの内5ポイントしか垂直方向の移動に使えないのであれば、最大限の上昇を行おうとしても、 この回転翼機は水平方向の移動(前進)に25ポイントを使わなければなりません。

 その一方で、速度を50km/hまで落としていれば、その回転翼機の移動ポイントは5しかありませんから、 そのすべてを垂直方向の移動に使うことが可能となります。
 回転翼機っぽくなったのではないでしょうか。




(7)回転翼機の優位

 さて、回転翼機反重力型輸送機器、 具体的にはエアラフトGキャリアーを比べた場合、 回転翼機が優っているのは唯一加速率と、 加速率によって決まる最高速度だけです。

 後は、最高速度×0.25(ただし航空電子機器による制限速度まで)で決まる 地表速度でしょうか。
 このレベルの加速率/駆動推力を持った反重力型輸送機器が相手であれば、 回転翼機が移動能力で優位に立つこともできるでしょう。

 もちろん、回転翼機が優位に立てるのは、 駆動推力=0.1GエアラフトGキャリアーが精々です。
 駆動推力=1.0Gスピーダー反重力戦車トレピダに 移動能力で対抗することはできません。
 相手がエアラフトGキャリアーであっても、 ローテクの回転翼機反重力型輸送機器に対抗できるだけでも十分だと思いますが。



 しかし、この地表速度が具体的にどんな速度を表しているのか。
 そのあたりを真面目に考察する必要が出てきました。





NOE飛行と地表速度


 前回の考察でも軽く触れましたが、「COACC、p.51」の記述によれば、 高度100メートル以下を飛行している状態がNOE飛行だそうです。
 NOE飛行はVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えない飛行方法ですが、 このNOE飛行の際に出せる最高速度が地表速度であるとのこと。
 「COACC」の定義で地表速度とは、 飛行型輸送機器が高度100メートル以下で出せる最高速度のこと、でした。

 この定義は、メガトラベラーの輸送機器設計ルールでデザインされる、 エアラフト宇宙船にも適用できるのでしょうか?




(1)地表速度の求め方

 「レフリーズ・マニュアル、p.90」の記述によれば、 輸送機器の地表速度の求め方は以下のようになっていました。

> 地表速度(NOE Speed) = 最高速度(Top Speed)× 0.25
>        (ただし航空電子機器による制限速度まで)


 そして、航空電子機器による制限速度は以下の通りです。
 「レフリーズ・マニュアル、p.67」の「9.航空電子機器地表最高速度を抜粋し、 「COACC」で定義されている地表速度を追加しました。


            表10 地表速度表(p.67から一部転載)

BW54_Fig10.gif - 10.2KB

 表の左端が航空電子機器の有無と、 装備している場合は航空電子機器のテックレベルを表しています。
 「COACC」のルールでは、 レーダー無しレーダー有りの二択だけでした。
 地表速度が同じであることから判断して、 「COACC」のレーダーはテックレベル=8の航空電子機器だと見なされているようです。

 表の右側は地表速度
 単位はkm/hですが、15mマス150mマス500mマスそれぞれを用いた場合の移動速度も並記しました。
 航空電子機器を持たない輸送機器の地表速度は40km/h以下も制限され、 航空電子機器を装備している輸送機器であっても地表速度の上限は120〜200km/hに制限されてしまいます。

 テックレベル=17以上の航空電子機器を搭載していれば地表速度はもう少し早くなります。
 しかし、レフリーやプレイヤーがテックレベル=17以上の輸送機器を設計したり、 操縦したりする可能性は稀ですから、此処では考慮しません。



 それでは地表速度の具体例を確認していきましょう。
 「帝国百科」と「反乱軍ソース・ブック」の中から、幾つかの輸送機器を抜粋し、 その輸送機器の地表速度をリストアップしてみました。


              表11 地表速度の実例

BW54_Fig11.gif - 8.38KB

 表の左端が、輸送機器の分類
 反重力型輸送機器と宇宙船/小艇では、駆動推力の計算方法が異なっているために、 この両者を区別して示しました。

 残念ながら「帝国百科」には、 その輸送機器が航空電子機器を搭載しているかという情報が記載されておりません。
 ですから、記載されている地表速度から、 輸送機器が航空電子機器を搭載しているかどうかを判断しなければならない訳です。

 とは言うものの、これらの輸送機器のテックレベル15であり、 その地表速度が190km/hで揃っていることから、 これらの輸送機器すべてが航空電子機器を搭載していることは間違いないでしょう。

 しかし地表速度を調べる過程で、厄介な問題に気付いてしまいました。
 「帝国百科」に記載されている エアラフト/Gキャリアー地表速度が、 ルールを使って求めた速度と大きく異なっているのです。



 上記の表11で示したように、「帝国百科」に記載されていたエアラフト2種、 及びGキャリアー地表速度は、120km/hです。
 念のために原文や英文エラッタも確認してみましたが、そのすべてに地表速度は120km/hである、と書かれていました。

 冒頭でも書きました通り、「レフリーズ・マニュアル、p.90」の記述によれば、 地表速度は以下の計算式で求められます。

> 地表速度(NOE Speed) = 最高速度(Top Speed)× 0.25
>        (ただし航空電子機器による制限速度まで)


 エアラフト/Gキャリアーの最高速度は120km/hです。
 この情報も原文で確認済みで、駆動推力=0.1Gというデータからルールに従って求めた結果も、同じ数値が出ていました。

 ということは、ルールに従えばエアラフト/Gキャリアー地表速度は、 最高速度の0.25倍、120km/h×0.25=30km/h、となる筈です。
 それなのに「帝国百科」で地表速度は120km/hだと書かれていました。

 「レフリーズ・マニュアル」のルールが間違っているのか、 「帝国百科」の地表速度が間違っているのか、 謎は深まるばかりです。



 掲示板で上記の件を相談したところ、GDWだから仕方ない、という意見を頂きました。まったくもって、同感です。

 という訳で、私は「レフリーズ・マニュアル」のルールに従い、

 エアラフトGキャリアー地表速度は、30km/hである、

 と考えることにしました。
 最高速度の0.25倍は30km/hですから、エアラフトGキャリアー航空電子機器を搭載しているかどうか、は関係が無いのです。




(2)固定翼機の超低空飛行

 地表速度とは、 飛行型輸送機器が高度100メートル以下で出せる最高速度のこと、です。
 要するに、NOE飛行を行っている際に出せる最高速度なのですが、 「COACC」によれば、 NOE飛行はVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えない、とのこと。

 このルールをそのまま素直に受け取ると、 通常型の固定翼機飛行船は高度100メートル以下には降りられない、 ということになってしまいます。
 超低空侵入(攻撃)はもちろんのこと、日常的に行われている筈の離着陸も出来ません。
 これでは困ってしまいますね。

 また、通常型の固定翼機には、最低速度というものが存在します。
 メガトラの「非流線形」に相当する機体形状の単純(Simple)、同じく「流線形」に相当する遷音速(Transonic)、 「完全流線形」相当の極超音速(Hypersonic)の最低速度は、それぞれ150km/h、175km/h、350km/hでした。
 表10へ示した通り、航空電子機器を搭載していても、これだけの速度を出してNOE飛行を行うことは困難です。
 かろうじてテックレベル=11以上の航空電子器機器を搭載していれば 150km/h(非流線形=単純の最低速度)で飛行することも可能ですし、 テックレベル=14以上の航空電子器機器を搭載していれば175km/h(流線形=遷音速の最低速度)で飛行できますが、 350km/h(完全流線形=極超音速の最低速度)を出して飛行することは絶対にできません。
 つまりルールに従うのであれば多くの場合、 固定翼機は、高度100メートル以下へ降りると自動的に失速(=墜落)してしまうことになりました。

 どう考えても、変です。

 しかし、変だからこのルールを使わない、と決めつけてしまうのも早計でしょう。  ルールブックに記述がある以上、このルールが作られたことにも何か理由がある筈。
 そのあたりを考えてみようではありませんか。



 まず何より重要な情報は、NOE飛行はVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えない、という条件。
 そして「COACC」において、 地表速度NOE飛行を行っている際に出せる最高速度であるにも関わらず、 固定翼機地表速度を持ちません。

 これを逆に考えてみると、NOE飛行を行えない固定翼機は、 高度100メートル以下の超低空を、地表速度よりも大きな速度=最高速度で飛行できる、 という解釈をするべきなのではないでしょうか?

 NOE飛行がVTOL型航空機とヘリコプターにしか行えないのであれば、 通常型の固定翼機は通常の飛行方法で超低空(高度100メートル以下)まで下りることができる、 という解釈は「COACC」の定義と矛盾しません。

 此処では、固定翼機が100メートル以下の高度を飛行することを、 超低空飛行と呼ぶことにしました。

 古代テラでストライク・イーグルが高度100メートルを亜音速で飛行するとか、 巡航ミサイル(無人の固定翼機)が高度30メートルで目標に突進する状態は 超低空飛行であって、NOE飛行ではないのです。



 私が作った超低空飛行の「ハウス・ルール」は以下の通りです。

 固定翼機にとって超低空とは、
 地表や障害物からの距離が100メートル以内である高度を意味します。

 超低空飛行を行う固定翼機は、航空電子機器を搭載していなければなりません。

 移動を開始する時点で、その戦闘ラウンドに移動する
 経路上のマスすべてを視認できていること。
 事前に詳細な地図データを入手しているのであれば、視認なしでも飛行できますが、
 その場合は予め飛行経路を決めておかなければならず、
 その経路から逸れてはいけません。

 旋回は「緩い旋回」に限定。高度変更も極力行わないこと。



 超低空が、地表や障害物からの距離が100メートル以内であるという定義は、 NOE飛行の定義である高度100メートル以下に合わせました。
 単純に高度100メートル以下としなかった理由は、 高層ビルが立ち並ぶ市街地での超低空飛行を考慮したため。
 高度150メートルを飛行していたとしても、その市街地に高さ100メートルや200メートルの高層ビルが林立していたら、 その飛行は衝突のリスクを内包している超低空飛行になると思うのです。
 ですから、障害物からの距離が100メートル以内、という定義を付け加えました。
 参考にしている「COACC」には障害物に関する記述が見つかりませんが、 その程度のことは常識に従ってレフリーが判断しなさい、ということだと思われます。

 超低空飛行を行う固定翼機が、 航空電子機器を搭載していなければならないというルールは当然ながら、 「レフリーズ・マニュアル、p.67」に

> 滑空式移動の地上機器や小艇、宇宙船が地表すれすれを高速で飛行するためには、
> 地上の起伏を正確に把握するために高度な航空電子機器を装備する必要がある。

 という記述があるためです。
 空港で離着陸を行うだけの固定翼機ならば、航空電子機器は必要ありません。
 そうした施設の周辺は平坦に整地されていますし、地上のレーダーによる飛行高度の確認や管制塔からの誘導も受けられます。
 航空電子機器は、そうした地上からの管制を受けられない状況で必要となるものなのでしょう。

 その戦闘ラウンドに移動する経路上のマスすべてを視認できることというルールは、 超低空飛行を行う固定翼機の安全を確保するために不可欠だと考えました。
 通常型の固定翼機は、前方に障害物を見つけても急停止できません。
 障害物を見つけた場合は、急上昇で避ける以外に選択肢がないのです。
 急上昇で高度を上げてしまえば超低空飛行の恩恵は受けられませんから、 移動経路の高度や障害物をきちんと把握しておく必要があるのです。
 固定翼機の運動性能を具体的に考えると、その戦闘ラウンドの移動経路だけで足りないのでしょうが、 何ラウンドも先の移動経路を予め決めておくことはとても面倒ですし、あまり意味がありません。 そこでプレイアビリティを優先して その戦闘ラウンドに移動する経路上のマスすべてを視認できれば良いこととしました。

 もちろん、事前に詳細な地図データを入手しているのであれば、視認の必要はありません。
 古代テラの巡航ミサイル超低空飛行を行えるのは、 事前に入手した地図データから安全に飛行できる移動経路を予め決めているからです。
 古いネタですが、デススターの心臓部に突撃したXウイングは、レーア姫から設計図を受け取っていたからこそ安全に移動経路を選択し、 あのスピードで突入することができたのでしょう。
 追撃してきた帝国戦闘機は、必要なデータを持ち合わせなかったがために障害物を回避できなかったのだと思われます。

 旋回は「緩い旋回」に限定。高度変更も極力行わないこと。
 このルールは、固定翼機の旋回が多くの場合、高度の低下を招くことから追加しました。
 高度変更なしという条件は、固定翼機の高度変更能力が低いことから必須。
 目の前に障害物が出現したから、その場に静止するとか、垂直に上昇するといったことは、 固定翼機にとって論外な行動なのです。



 上記の条件の下で、固定翼機超低空飛行を行うものだとします。

 しかし、具体的にはどのぐらいの速度で、高度何メートルを飛行できるものなのでしょうか?
 あるいは、障害物から何メートルの距離を飛行できるのでしょう?
 そして、その際のリスク(行為判定の失敗率)はどれだけなのか?

 折角ですので、その行為判定も作ってみました。



 低空飛行で衝突の危険を避ける行為判定
  〈難易度〉、〈輸送機器〉、敏捷力、1戦闘ラウンド(確定)、致命的。

 レフリー:
  この行為判定は、低空飛行を行っている戦闘ラウンド毎に
  サイコロを振ってください。
  但し、行為判定が不要になる状況もあります。

  行為判定の難易度は、低空飛行を行う固定翼機の飛行速度と、
  その飛行高度(障害物からの距離)によって決まります。

 ・飛行速度(単位はkm/h)を10で割って下さい。
  その高度(単位はm)より低い高度を飛行する場合、
  行為判定の難易度は〈並:7+〉になります。

 ・飛行速度を20で割って下さい。
  その高度より低い高度を飛行する場合、
  行為判定の難易度は〈難:11+〉になります。

 ・飛行速度を40で割って下さい。
  その高度より低い高度を飛行する場合、
  行為判定の難易度は〈至難:15+〉になります。

 ・飛行速度を100で割って下さい。
  その高度より低い高度を飛行する場合、
  行為判定の難易度は〈不可能:19+〉になります。

 ・飛行速度を10で割った高度よりも高い高度を飛行する場合、
  サイコロを振る必要はありません。

 ・地表の起伏がほとんど存在しない場合は、
  行為判定の難易度をひとつ下げて下さい。
  平原や水面、道路のような地形をイメージしています。

 ・地表からの誘導支援/管制が得られる場合も、
  行為判定の難易度をひとつ下げて下さい。

 ・強風や突風が存在する地形、悪天候で低空飛行を行う場合は、
 行為判定の難易度をひとつ上げて下さい。




 上記の行為判定の難易度を表に纏めると、以下のようになります。


      表12 飛行速度と高度によって決まる、低空飛行の難易度

BW54_Fig12.gif - 7.81KB

 表の左端が固定翼機の飛行速度。
 その右側に低空飛行の高度と、それに対応する難易度が示されています。

 速度200km/hで失速寸前の低速飛行を行っている固定翼機は、高度21メートル以上ならば判定不要。
 高度11〜20メートルの範囲で難易度〈並:7+〉の行為判定となりますが、 操縦者にプラスDMがあればまず失敗することはないでしょう。 サイコロの目で「2」が出た時、つまり致命的失敗だけが心配です。
 高度6〜10メートルを飛行する際は、難易度〈難:11+〉になるので、かなり危険になりました。
 高度3〜5メートルを飛行するのであれば、難易度は〈至難:15+〉となるので無謀です。
 高度2メートル以下を飛行するのは、難易度〈不可能:19+〉になってしまうので、 成功することは望めません。論外です。

 空挺作戦の重量物投下を超低空で行う場合、飛行速度が200km/hであれば、高度21メートル以上で行うべきでしょう。
 地表の起伏が無い地形、樹木が存在しない平原や草原などであれば難易度がひとつ下がるので、高度11メートルでも大丈夫かも知れません。
 難易度が〈易:3+〉になって、+DMが4以上あれば、サイコロを振らなくても良いでしょう。
 地表にレーダ車輌や管制官を配置すれば(配置できれば)、難易度はさらに下がります。



 この行為判定の難易度は対地高度だけでなく、障害物を回避する際にも利用できます。
 例えば、林立する高層ビル群の隙間をすり抜けるというアクションを行う場合、そのビルの隙間が30メートルであるならば、 すり抜ける固定翼機とビルとの距離は15メートル以内となる訳で、 200km/hで飛行しているのであれば恐らく、難易度〈並:7+〉の行為判定となるでしょう。

 この行為判定は、有人の輸送機器が行う超低空飛行のリスクを再現するために考えました。
 数値や難易度に納得できない状況もあるでしょうが、あくまで目安です。過度の期待は持たないで下さい(苦笑)。
 超低空飛行が長く続く場合は、1分に1回、1時間に1回のサイコロ判定でも十分だと思います。 1戦闘ラウンド(=6秒)毎にサイコロを振っていると、致命的失敗の確率が高くなり過ぎますので。

 また、対艦ミサイルが海面すれすれ(5メートル前後?)を飛翔するような状態は残念ながら、このルールでは再現できませんでした。
 地表が海面になるので、地表の起伏がほとんど存在しない場合に含め、 難易度をひとつ下げることもできそうですが、そのあたりの判断はレフリーの裁量ということで。



 超低空飛行のメリットは、敵に発見され難いこと、それだけに尽きるでしょう。
 そのメリットがなかったら、単に危険なだけの飛行方法となってしまいます。
 具体的なメリットは、2つ前の考察「52回、個人戦闘9、潜伏状態と探知」でも述べた通りです。

 規模8の世界において、地表と同じ高度(ゼロメートル)にレーダー・サイトが設置されていると仮定しましょう。
 そのレーダーは大陸間距離(〜5,000km)までの探知能力(Range)を備えています。
 そこへ3機の攻撃機がそれぞれ異なる高度を飛行して、接近していると考えて下さい。 その高度は、3,000メートル、500メートル、50メートルだとします。

 考察「52回、潜伏状態と探知」の表14より、 高度3,000メートルを飛行している攻撃機は、196kmの地域間距離でも発見されてしまいます。
 攻撃機が亜音速(800km/h)で飛行しているとしても、196kmの距離を移動するには15分が必要。
 レーダー・サイトは攻撃機を迎撃するため、15分の猶予が与えられたことになりました。
 奇襲攻撃は不可能です。レーダー・サイトの手前で迎撃機に歓迎されるのがオチでしょうか。

 高度500メートルを飛行している攻撃機は、80kmの距離に接近するまで発見されません。
 レーダー・サイト側に与えられた猶予は6分間。迎撃機のスクランブルは間に合わないでしょう。
 かなり緊迫した状況になりそうです。

 高度50メートルの超低空飛行で接近した場合、攻撃機は25kmの距離まで発見されません。
 レーダー・サイト側に与えられた猶予はわずか2分間。
 実質的に奇襲攻撃だと考えても良いのではないでしょうか。




(3)回転翼機とVTOL機のNOE飛行

 ようやく本題のNOE飛行です。
 NOE飛行の定義については掲示板でも相談しましたが、NOE飛行とは、

 地形の一部(丘や山、樹木、建物など)を
 遮蔽物(視線を遮る障害物)として利用できる飛行方法

 であると定義しました。
 英文 Wikipedia の言葉を借りるのであれば、

 梢の先端を掠めるような高度、
 小渓谷を飛ぶかのように、空地を囲む木々の高さよりも低い高度、
 送電線の上を飛び越えるのではなく、その下をくぐるような高度。

 を飛行する訳です。

 その際は上記でも定義されているように、地形の一部を遮蔽物として利用できますから、 飛行中に敵から視認されたり、攻撃されたりすることも滅多にないでしょう。
 メガトラには「妨害」というルールが存在しますので、NOE飛行であっても移動中、 敵の視界内へ入った途端に「妨害」を受け、攻撃されるという可能性もある訳ですが、 基本的には、敵から視認されることも、攻撃されることもないのがNOE飛行なのです。



 簡単なイラストで図示すると、NOE飛行の状態は以下のようになります。

BW54_Fig13.gif - 28.5KB

       図13 メガトラの視認ルールから考察したNOE飛行の利点

 図の左側に存在する回転翼機と車輌が敵ユニット
 図の右側を飛行している固定翼機と回転翼機が味方ユニット

 図の中央に存在する地形の盛り上がりが遮蔽物として扱われる地形です。
 ここでは分かり易いように丘や山を図示しましたが、 もちろん樹木や建物でも構いません。



 遮蔽物よりも低い高度を、此処ではNOE空間と呼んでおきますが、 そのNOE空間を飛行中の回転翼機は、NOE飛行を行っていると見なされます。
 飛行速度は地表速度に制限されてしまうものの、 遮蔽物の反対側に存在する敵ユニットから視認されるリスクはありません。

 その一方で、遮蔽物より高い高度を飛行する固定翼機は、 非NOE空間を飛行していることになります。
 その移動速度は通常の最高速度まで上げることが可能ですが、 遮蔽物に隠れることはできません。
 遮蔽物の反対側に存在する敵ユニットからは、 何の制限もなく視認され、攻撃される可能性があります。



 ちなみに、敵ユニット遮蔽物よりも高い位置に存在する場合、 その遮蔽物は視線を遮ることができません。
 その遮蔽物の背後に隣接している(張り付いて隠れている)ユニットを除けば、 遮蔽物の向う側に存在するユニットを「見下ろす」ことが可能になるからです。

 上記の考察は「プレイヤーズ・マニュアル、p.89 視線−視認と探知」のルールを拡大解釈したものですが、 それほど間違ってはいないでしょう。
 該当部分の記述は以下の通り。

>建物:
> 建築は視線を妨げます。
> 建物の中にいるユニットは、1階にいるのでないかぎり、
> 地上のユニットを見下ろすことができます
> (地上の障害物に隣接しているユニットは除く)。
> 建物の1階は、それぞれ4メートルの高さです。

 このルールは、高度差がある「視線」に関連した重要な記述です。
 というか、高所から見下ろすことのメリットが書かれている、唯一のルールではないでしょうか。
 これを拡大解釈して私は「視認と探知」の考察を書いた訳ですが、 NOE飛行のメリットを語る上で重要なルールとなります。
 つまり、丘や山、(密な、まばらな)樹木、建物を「視線の障害物」として利用するのであれば、 敵ユニット味方ユニットの双方が、 その丘や山、樹木、建物よりも低い高度に居なければならないということが、ルールで定義されているのですから。



 もし敵ユニット遮蔽物よりも高い位置に存在するのであれば、 NOE飛行の大きな利点はほとんどが失われてしまいます。

 具体的には以下の通り。

BW54_Fig14.gif - 28.3KB

       図14 メガトラの視認ルールから考察したNOE飛行の利点

 折角、飛行速度を地表速度まで抑え、 高度の低いNOE空間を飛行しているにも関わらず、 地形を遮蔽物として利用することがほとんどできません。
 遮蔽物として利用できるのは、地上の障害物に隣接しているユニットだけなのです。

 早期警戒機(AWACS)の存在意義は、メガトラにおいて、 遮蔽物の向う側を見下ろすというルールでも再現されていることが分かりました。
 高所を占めた者は「視認と探知」の観点から見て、大きな優位を得ることになるのです。




(4)NOE飛行の移動方法

 NOE飛行の定義とメリットについての考察は終わりましたので、今回は実際の移動方法について考えます。

 「COACC」のルールを参考にするならば、VTOL型航空機と回転翼機だけの特別ルールである、

・vectored in-flight thrust capability(VIF)を備えたVTOL型の航空機は、
 パイロット/乗組員のブラックアウトを避ける行為判定なしで、
 1戦闘ラウンド当たり90度の旋回を、1機動ポイントの消費だけで実行できます。

・ヘリコプターは、1戦闘ラウンド当たり180度の旋回を行えます。


 という記述を無視する訳にはいきません。
 「COACC」の移動ルールは500mマスの使用が大前提ですから、 これを150mマス15mマスのスケールに変換するためには、一工夫が必要です。



 まず、NOE飛行時の飛行速度は、地表速度が上限です。
 航空電子機器の制限によれば、それは40km/h〜200km/hの範囲に収まりますので、 150mマスのスケールならば1〜2マス、 15mマスのスケールならば4〜20マスの移動が可能となるでしょう。

 次に、飛行速度の変更(=加減速)の能力はすでに表7で計算済みですが、 最高速度の4分の1しかない地表速度の範囲内であれば、 その戦闘ラウンド中で自由に好きな飛行速度に変更できるでしょう。
 概ね、加減速能力の範囲内に地表速度が収まっていましたから。
 もしも地表速度最高速度の5分の1であったならば、 その数字が綺麗に収まっていた筈なのですが、とても残念です。
 ですから、飛行速度は静止状態であっても地表速度の最大値であっても自由に変更できる、 ということで構わないと判断しました。

 旋回能力の制限ですが、「COACC」のルールだと機動ポイントが1しかないので、 VTOL型航空機回転翼機(ヘリコプター)も1マス分の移動を行うか、 そのマスに留まって90度〜180度の旋回を行うか、そのどちらかしか選べません。
 この移動制限をメガトラにも適用するのであれば、 移動ポイントの多い150mマス15mマススケールであっても 旋回は1戦闘ラウンド中に1回しか行えない、という制限を設けるべきでしょう。
 そしてVTOL型航空機は一度に90度まで、回転翼機は一度に180度の旋回までしか行えない、 という制限をそのまま引き継ぐこととします。

 高度変更(上昇/降下)について、新たな制限は設けません。
 1移動ポイントの消費で1高度レベル(150m〜15m)の高度変更というルールのままで良いと思います。
 但し、遮蔽物を利用するのであれば、 その遮蔽物よりも高い高度を飛行してはいけません。 遮蔽物より低い高度を維持できるように注意して下さい。





飛行船の移動能力


 最後は飛行船に関する移動能力の考察で締めようと思います。




(1)飛行船の浮力

 飛行船は、浮力によってその機体を大気中へと持ち上げます。
 「COACC」において飛行船の設計は、 気嚢(Envelope)の容積を決定することから始まっていました。

 具体的には、以下の通りです。


             表15 飛行船(気嚢)の浮力

BW54_Fig15.gif - 7.15KB

 表の左端が、気嚢の中へ充填する浮揚ガス(Lifting Gases)の種類。
 その次の欄が、浮揚ガスと空気との密度差によって得られる、気嚢の浮力です。

 気嚢の容積1,000立方メートル(1,000キロリットル)当たりで得られる浮力は、 当然ながら、浮揚ガスの種類によって異なりました。
 最も軽い水素(Hydrogen)の場合、1気圧15℃の条件で重量は1,000立方メートル当たり0.085トン。 周囲に存在する空気の重量は同条件で1.226トンですから、その差、1.226−0.085=1.141トンが浮力になる訳です。
 浮揚ガスがヘリウム(Helium)の場合は重量が0.169トン。 重量の差は、1.226−0.169=1.057トンですから、浮力も1.06トンになりました。
 熱気球の場合は浮揚ガスが単なる「熱した空気(Heated Air)」ですので、 その温度(周囲より100℃高い115℃)もあって重量は0.910トン。 重量の差は、1.226−0.910=0.316トンになって、生じる浮力は0.32トンです。

 その右に書かれた数値は気嚢の重量です。
 基本的に、容積1,000立方メートル当たりの重量が0.4トンになるとのこと。
 軟式飛行船であっても硬式飛行船であっても同じ重量(=0.4トン)であるのは、 設計ルールを簡易化するという目的もあるのでしょうが、 大容積の気嚢は自動的に硬式飛行船となるからでしょう。 大容積の気嚢は表面積が減って軽量化できますが、内部構造が必要になるので全体としての重量は変わらない、のです。
 気嚢の浮力から気嚢の重量を引いた値が、 実質的な浮力=有効浮力になりました。
 その大きさは1,000立方メートル当たりの水素で0.74トン、ヘリウムで0.66トンです。

 すぐに気付かれたと思いますが、この数字は熱気球(熱した空気)が生じる浮力=0.32トンよりも重い重量でした。
 このままでは熱気球が空に浮かぶことすらできません。
 ですから熱気球は特別ルールとして気嚢の重量をゼロとして扱っています。
 あくまで特別ルールですから、これを悪用して巨大な熱気球を作ることはしない方が良いでしょう。
 熱気球の浮力より水素やヘリウムの浮力の方が明らかに大きいのですが、 軽量/低コストというメリットは大きいのです。



 「COACC」のルールをお持ちの方は上記の数字に疑問を抱くかも知れません。 「COACC」に掲載されている数字と色々なところが異なっていますから。
 実はこれらの数字は、例の英文エラッタで大きく修正されているのです。
 上記の表15には修正済みの数値を掲載しました。気圧や温度に関する条件、重量に関する考察も、その数値を基に行っています。

 ちなみに、修正前の浮力は水素で1.21トン、ヘリウムで1.13トンでした。
 これは1気圧0℃の条件で生じる浮力ですから、エラッタではその温度条件が15℃に修正された訳です。
 熱気球(熱した空気)の修正前浮力は1.00トンでしたが、 これだけの浮力を得るためには、空気を1,500℃近くまで加熱しなければなりません。
 こんな高温の空気を閉じ込めておける気嚢は存在しませんので、 修正後の浮力=0.32トンという数値は実に妥当だと思います。
 なかなか面白い考察をさせてもらいました。



 それにしても、飛行船浮力は意外と小さいものだと判明しました。
 容積1,000立方メートルといえば、排水素トンに換算して75トンの船殻に相当します。
 それを1.33倍すれば100排水素トン、S型偵察艦1隻に相当する容積なのですが、 それだけの大きさであっても、生じる浮力は重量1トンにも足りません。

 気嚢をメガトラの輸送機器設計ルールで再現してみたところ、 形状=5の球形、装甲値=1の硬鋼という条件で7.28トンになりました。
 ハイテク素材の超密鋼を使用したとしても装甲値=1で1.02トン。
 気嚢だけを空に浮かべることすらできませんでした。
 気嚢全体を装甲板で覆うなんてことは、どう頑張っても不可能ですね。



 ところで飛行船浮力は周囲の環境、 大気の密度(温度と圧力)によっても随分変わってきます。
 幸い、トラベラーのルールには大気密度を決める大気レベルというパラメータが用意されていますので、 それに合わせて飛行船浮力を再計算してみましょう。

 一応「COACC」でも、 その世界の大気レベルに合わせて飛行船浮力が増減する、 というルールにはなっているのですが、その数値にはちょっと納得がいきません。

 エラッタで修正された、大気レベルによる浮力の変化を以下に纏めました。


        表16 大気レベルによる浮力の変化(COACC)

BW54_Fig16.gif - 11.5KB

 表の左端は今回も浮揚ガス(Lifting Gases)の種類。

 その次の欄が大気レベル修正値
 大気レベル4〜5(希薄大気)の世界では、浮力が0.83倍
 大気レベル8〜9(濃厚大気)の世界では、浮力が1.27倍
 になるのだそうです。

 エラッタで修正されたものの、まだまだ上記の数字には納得できません。
 「レフリーズ・マニュアル、p.22」の記述によれば、 大気レベル4〜5(希薄大気)は、気圧が0.43〜0.70atmだと定義されております。 大気密度から考えたら、浮力の修正値はどんなに大きくても0.70倍以下になるのでは?
 その一方で、大気レベル8〜9(濃厚大気)は、気圧が1.50〜2.49atmという定義でした。 浮力の修正値はどんなに小さくても1.50倍以上になる筈なのですが。




 その次が浮揚ガスと空気との密度差によって得られる気嚢の浮力ですが、 この数値は、大気レベル6〜7(標準大気)の世界で得られる浮力に、大気レベル修正値を掛けた後の数値となります。

 その右に書かれた数値は気嚢の重量で、今回も一律に0.4トン。熱気球だけは重量無しで0.0トンでした。

 気嚢の浮力から気嚢の重量を引いた値が、 有効浮力(Useful Lift)ですが、 その大きさは1,000立方メートル当たりの水素で0.55トン(希薄)、0.74トン(標準)、1.05トン(濃厚)、 ヘリウムで0.48トン(希薄)、0.66トン(標準)、0.95トン(濃厚)、 熱気球で0.27トン(希薄)、0.32トン(標準)、0.41トン(濃厚)と、大気レベルによって大きく変化しています。



 「COACC」のルールでは、 大気レベル4〜5(希薄大気)の世界でも飛行船が利用可能になっているようです。
 「プレイヤーズ・マニュアル」の技能リストを見ると、 大気レベルレベルが6〜9(標準か濃厚大気)の世界でなければ飛行船の技能を得られないので、 大気レベル4〜5(希薄大気)の世界では飛行不能だと思っていたのですが、勘違いだったのでしょうか。



 さて、上記の大気レベル修正値に納得がいかないので、 ハウス・ルールを作ってみました。

 大気レベル4〜5(希薄大気)の世界では気圧が0.43〜0.70atmという定義ですから、平均値として0.55atmを採用。 浮力が0.55倍になると考えます。
 大気レベル8〜9(濃厚大気)の世界では気圧が1.50〜2.49atmという定義ですから、平均値は2.00atm。 浮力が2.00倍になると考えています。

 大気レベル修正値を変えた結果は以下の通り。


       表17 大気レベルによる浮力の変化(ハウス・ルール)

BW54_Fig17.gif - 11.5KB

 有効浮力が大きく変化しました。

 1,000立方メートル当たりの有効浮力は、 水素の場合で0.23トン(希薄)、0.74トン(標準)、1.88トン(濃厚)です。
 大気レベル4〜5(希薄大気)における浮力が、標準大気と比べて3分の1以下しかありません。
 これほど浮力が激減してしまうのであれば確かに、 大気レベル4〜5(希薄大気)の世界で飛行船を運用することは困難になるでしょう。

 浮揚ガスをヘリウムに変えると更に浮力は低下して、 0.18トン(希薄)、0.66トン(標準)、1.72トン(濃厚)でした。
 やはり大気レベル4〜5(希薄大気)の世界で飛行船を浮かべることは困難になります。

 気嚢の重量をゼロとして扱う熱気球でも、有効浮力は 0.18トン(希薄)、0.32トン(標準)、0.64トン(濃厚)にしかなりません。




(2)飛行船の最高速度

 今度は、飛行船の最高速度を求めます。

 飛行船が最高速度を求める方法は固定翼機と同じでした。 加速率(G rate)を使い、最高速度を求めます。
 その加速率の求め方は、

> 加速率 = 総推力 ÷ 全備重量 × 0.85

 でした。
 最後の修正値0.85は、機体形状から決まる推力効率(efficiency)ですが、 飛行船の場合は単純(Simple)機体しか選べませんので、一律に0.85となっています。



 固定翼機の項で掲載した表5、航空機の最高速度表を再掲載します。


             表5 航空機の最高速度表

BW54_Fig05.gif - 11.9KB

 表の左端が加速率
 その右側に並ぶ数字が、回転翼機飛行船最高速度
 すでに述べた通り、飛行船の最高速度は150km/h以下に制限されております。
 また、飛行船にも最低速度は存在しませんでした。
 飛行船も速度ゼロでの空中停止が可能だということです。

 ようやく加速率=0.01〜0.09の欄が使われるようになりました。
 その加速率で得られる最高速度は60km/h〜110km/hという低速でしかありませんが、 この加速率飛行船のために、 飛行船だけのために用意されたものだという事実が判明しております。



 そして気になっていた空気抵抗ですが、「COACC」のルールは、 単純(Simple)機体の推力効率=0.85を掛けるだけで済ませてしまっていました。
 実際のところ、もう少し空気抵抗を大きくしても良かったのではないかと思いますが、ルールを分かり易くするためには仕方ないことなのでしょう。

 加速率の最小値は0.01ですが、推力効率=0.85を掛けているため、 最低限必要な推力/重量比0.118(=1/85)となっています。
 「COACC」の設計ルールに、 飛行船の重量85トン毎に最低1トンの推力が必要です、と書かれていたのはこのためだったのかと納得しました。



 推力効率=0.85を計算に含めて、 推力/重量比から最高速度表を作り直した場合は、以下のようになります。


        表18 飛行船の推力/重量比と加速率、最高速度表

BW54_Fig18.gif - 7.05KB

 表の左端が推力/重量比
 その次の数値が単純(Simple)機体の推力効率=0.85
 それらを掛けた結果が、次の欄に示した加速率
 左端の数値が飛行船最高速度です。

 加速率=0.01の最高速度は60km/hです。何とも鈍重な動きだろうかと思いましたが、 加速率=0.10の最高速度120km/hと比べると、半分の速度でしかありませんね。
 加速率が10分の1しかないのに、最高速度は半分に減るだけ。
 もしかすると、低速の飛行船は物凄くコストパフォーマンスの高い飛行型輸送機器なのではないでしょうか。



 飛行船のエンジンについて、その推力/重量比を計算してみたところ、 加速率=0.01の出力ならば30日間の無補給連続飛行が可能だと判明しました。
 60km/hで720時間ですから、航続距離は43,200km。
 無補給で世界一周ができます。

 加速率0.1まで上げた場合、 最高速度は120km/hに倍増しますが、連続飛行が可能な時間は10分の1の72時間に激減してしまいます。
 120km/hで72時間ですから航続距離は8,640kmで5分の1。

 最高速度150km/hを得るため加速率0.15まで上げると、 連続飛行が可能な時間は15分の1、48時間まで減ってしまいます。
 150km/hで48時間ですから航続距離は更に減少して、7,200km(=6分の1)になりました。

 予想通り、飛行船の航続距離は低速(=低い加速率)でしか活用できません。
 飛行船の設計を行う場合は、高い加速率を与えて高速を発揮するよりも、 低い加速率で低速と長い航続時間の組み合わせを活用すべきなのでしょう。



 それにしても、最も鈍足な(経済的な)飛行船の最高速度がわずか60km/hだという考察結果は意外でした。
 飛行船に素早い移動が求められることは少ないでしょうから、経済性を重視すれば必然的に、 プレイヤーが遭遇する飛行船加速率=0.01、最高速度60km/hのものばかりになるでしょう。

 飛行船は他の航空機と比べるとはるかに低速ですので、 もしも150mマスのスケールを使った場合は、
 2〜10戦闘ラウンドを費やして、ようやく1マスを移動する、
 ということになりそうです。




(3)飛行船の加減速

 今度は、飛行船の加減速能力について考えます。

 「COACC」のルールでは飛行船

 毎戦闘ラウンド毎に、速度1を増やしたり、減らしたりできる。

 そうですが、本当でしょうか?

 加速率=0.01飛行船が、 わずか6秒(=1戦闘ラウンド)で250km/hまで加速できるという状況には、不信感を隠せません。
 「COACC」のスケールは500mマスですから、 回転翼機と同じようにこれは仕方のないことなのでしょう。



 スケールが15mマス150mマスのメガトラに合わせた場合、 飛行船の加減速能力は以下のようになるでしょう。
 同じように、加速率から速度の変化量を求めてみました。


              表19 飛行船の加減速

BW54_Fig19.gif - 9.36KB

 表の左端が加速率
 その右側に並ぶ数字が速度の変化量です。

 加速率0.01〜0.15の範囲しか使われないと思いますが、 飛行船の船倉が空になっているなどの事情で加速率が高くなっている可能性もあることから、 0.20〜0.25の範囲も追加しておきました。



 予想通りと言えば予想通りなのですが、加速率=0.01飛行船は、 1戦闘ラウンド(=6秒)の時間を使っても、その速度を2km/hしか変更できません。
 15mマスを使った場合の速度1(=10km/h)を得るまで5戦闘ラウンド(=30秒)、 最高速度である速度6(=60km/h)に達するまでは30戦闘ラウンド(=3分)も掛かります。
 鈍重ですね。

 加速率=0.05飛行船は、1戦闘ラウンド当たりの速度変化量が11km/hです。
 ですから15mマスを使った場合の速度1(=10km/h)を得るには1戦闘ラウンドの加速で十分。 最高速度80km/hに達するまでの時間も8戦闘ラウンド(=48秒)で足りるようになりました。
 ずいぶんとマシな加速性能になりましたが、 これでも固定翼機回転翼機に比べると、まだまだ鈍重だと言えるでしょう。

 加速率=0.10になってエアラフトと同レベルの加速性能を得られるようになりました。
 これだけ高い加速率を持った飛行船は、経済性が悪いのですけれど。



 5戦闘ラウンド(=30秒)を費やして速度1の増速。
 最高速度に達するまで30戦闘ラウンドも掛かる。

 これほど鈍重な飛行船を戦闘に参加させる場合、 戦闘中の加減速はできないと考えておいた方が無難なように思うのですが、皆様はいかがでしょう?




(4)飛行船の旋回能力

 今度は飛行船の旋回能力を考察しますが、 例によって「COACC」のルールを参考にするならば、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで45度の旋回を行える。
 但し、同じマスで2回以上の旋回は行えない。
 最低でも1マス以上の移動を行ってから、次の旋回を実行すること。

 ということになっています。

 飛行船の最高速度は150km/hですから、回転翼機と同様、機動ポイントは1だけです。
 ですから飛行船の旋回は、
 とある戦闘ラウンドに1マス移動したら、次の戦闘ラウンドは移動せず、そのマスの中で45度の旋回。
 というパターンの繰り返ししか有り得ません。

 しかし、2戦闘ラウンドに1回のペースで45度旋回を行う飛行船

 ちょっと動きが早過ぎますね。
 2戦闘ラウンド(=12秒)で45度旋回ですから、わずか8戦闘ラウンド(=48秒)で180度の回頭が可能。  「COACC」のルール的にはこれで正しいのですが、 飛行船の運動性能が低いことから考えると実に不自然な状況です。



 それを確かめるため例の如く飛行船加速率を旋回のための推力として転用し、 飛行船の旋回能力(最小直進距離)を求めてみました。


      表20 飛行船の旋回時に必要な最小直進距離 (15mマス)

BW54_Fig20.gif - 12.0KB

 表の左端は飛行船の飛行速度と移動ポイントです。
 飛行速度が小さいため、スケールとして15mマスを用いていますが、あまり意味はなかったかも。

 その右側が旋回半径(m)と、15mマスで示した最小直進距離で、 右端の数値は旋回に必要な戦闘ラウンド数

 加速率=0.01飛行船ですから、こんなものかなと納得はできますが、 最高速度である60km/hでの旋回半径が2,834メートルという数字には泣けてきます。
 最小直進距離が130マスで、45度の旋回に必要な戦闘ラウンド数が43(=4分強)というのも情けない。



 旋回性能を比較するため、加速率=0.10飛行船についても、 その旋回能力(最小直進距離)を求めました。


      表21 飛行船の旋回時に必要な最小直進距離 (15mマス)

BW54_Fig21.gif - 9.76KB

 今回も表の左端は飛行船の飛行速度と移動ポイント。
 その次が旋回半径(m)と、15mマスで示した最小直進距離
 最後の数値が旋回に必要な戦闘ラウンド数

 加速率0.10ですから、 反重力型輸送機器の典型であるエアラフト(但しオーバードライブなし)と同等の旋回性能を発揮しています。

 加速率が10倍になったおかげで、飛行速度が60km/hの時の旋回半径は10分の1の283メートル。
 最小直進距離は13マスで、45度旋回に必要な時間は5戦闘ラウンド(=30秒)です。

 飛行速度を最高速度の120km/hまで上げると、旋回半径は1,134メートルになりました。
 最小直進距離は50マスで、45度旋回に必要な時間は9戦闘ラウンド(=54秒)です。
 何となく、それっぽい旋回性能になったような気がします。



 ここまで計算しておいて何ですが、飛行船の旋回性能は低すぎると言っても良いレベルなので、 数戦闘ラウンド、数十戦闘ラウンドを掛けて45度旋回を行うのは面倒です。
 もういっそのこと、10戦闘ラウンドに1回、45度の旋回を行える、というルールで良いように思えるのですが、いかがでしょうか。
 上の表に示されている旋回に必要な戦闘ラウンド数から考えて、そうしても不都合が生じるようには思えません。




(5)飛行船の上昇/降下能力

 最後に、飛行船の垂直方向の移動、上昇/降下能力も考察しておきましょう。
 考えるだけ、虚しくなるような予感がしていますが。

 「COACC」のルールでは飛行船も、

 各航空機は、その速度を250km/hで割った数値と同じ機動ポイントを持つ。
 機動ポイントを1つ消費することで1マス(500m)を移動できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を上昇できる。
 機動ポイントを1つ消費することで1高度レベル(500m)を降下できる。

 というルールになっていました。
 ですから固定翼機と同じように、

 移動ポイントを1つ消費することで
 1高度レベル(15m / 150m)を上昇/降下できる。

 というルールで良いでしょう。

 今回も、1高度レベルの高さは水平方向のスケールと合わせ、 15mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも15メートル、 150mマスのスケールを用いているのであれば高度レベルも150メートル、です。



 しかし、経済的な飛行船は、最高速度が60km/hしかありません。
 15mマスのスケールを使った場合の移動速度は6マス、 150mマスのスケールを使った場合の移動速度は 2〜10戦闘ラウンドを費やして、ようやく1マスを移動する、ということになりました。
 その速度で、水平移動と同じように上昇/降下が出来るというのも不自然ではないでしょうか。

 今回も独断で、飛行船の上昇/降下能力は1戦闘ラウンド当たり15メートルである、と決めておきましょう。
 150mマスのスケールを使っている場合は、10戦闘ラウンド(=1分)当たりで150メートルになります。
 この上昇/降下は気嚢の浮力を調整することによって行われますから、移動ポイントの消費は必要ありません。




(6)飛行船ユニットの大きさ

 飛行船の最高速度を経済的な60km/hであると想定するならば、 戦闘における移動速度は、15mマスのスケールを使った場合で6マス、 150mマスのスケールを使った場合で 2戦闘ラウンドを費やして1マスということになりました。

 そこで気になったのが飛行船の現在位置を示すため、地図上に置かなければならないユニットの大きさです。

 仮に15mマスのスケールを使った場合、大概の飛行船は1マスの中に納まらないのでは?
 150mマスのスケールでも、1マスの中に収めるのは大変な気がします。



 (1)飛行船の浮力でも考察した通り、 気嚢有効浮力は、 1,000立方メートル当たりで水素が0.74トン、ヘリウムが0.66トンです。
 そして15mマスの大きさは縦横高さの3辺が15m
 ですから1マスの容積は、3,375立方メートル(=250排水素トン)しかありません。
 この容積に前述の有効浮力を掛けてみれば、 1マスの中に納まる飛行船有効浮力=最大離陸重量が、 2.23〜2.50トンしかない、という事実が分かりました。
 15mマス1つの中に納まるほど小さな飛行船は、恐らく存在しません。

 「COACC、pp.87-89」に掲載されている飛行船のサンプル、 AKRON (TL5) NONRIGID AIRSHIPCALCUTTA (TL8) HELISTATは どちらも気嚢の容積が200,000立方メートルでした。
 単純に考えても飛行船1隻は15mマスを60個も占有してしまう訳です。 飛行船気嚢は空気抵抗を減らすため、先の尖った円筒形になることが一般的ですから、 その形状を考慮するならば、占有するマスの数は4倍から10倍にまで増えるでしょう。



 150mマスを用いる場合、1マスの容積は33,375,000立方メートル(=25万排水素トン)まで拡大します。
 このスケールならば200,000立方メートルの飛行船は1マスに収まるかもしれませんが、 やはり形状によっては2マス以上を占有してしまうこともあるでしょう。

 地図上に置く飛行船ユニットの大きさは、その大きさと形状を熟慮するべきだと思われます。





結論


 今回は、回転翼機(ヘリコプター)飛行船の移動能力について考察しました。

 「COACC」のルールを参考にしながら、 回転翼機飛行船、 2つの航空機(飛行型輸送機器)について、 最高速度、加減速、旋回能力、上昇/降下能力についての考察と「ハウス・ルール」作成を試みています。



 まずは回転翼機に必須な2つの要素、 エンジン回転翼の組み合わせについて考察しました。
 その結果、 テックレベル=5〜6軽レシプロレシプロが安価で、 テックレベル=7〜8ガスタービンは高価。
 重量物の輸送、長距離の輸送にはTAN配置が好都合。
 この軽量回転翼を利用できるエンジンは、 軽レシプロ軽ガスタービンの2つだけ。
 といった結論が出ております。

 次に最高速度を求めましたが、回転翼機の推力は揚力の4分の1だと決まっているため、 その最高速度は240〜300km/hになります。
 回転翼機の最高速度の上限は300km/hであるため、 それ以上の速度になることは有り得ません。

 加減速については、固定翼機と同じルールを適用しました。

 回転翼機の旋回能力は、 最高速度を求める際に用いた加速率を旋回推力として計算しています。
 旋回に翼で発生させた揚力を用いる固定翼機オーバードライブさせた反重力式の移動システムを用いる反重力型輸送機器と比べて、 回転翼機の旋回能力は大きく劣ることが判明しました。



 NOE飛行地表速度については掲示板でも相談しましたが、 「帝国百科」に記載されていたエアラフト2種、 及びGキャリアーについて、地表速度の誤りを発見。
 これらの地表速度は30km/hです。

 地表速度を持たない固定翼機のため、 超低空飛行という「ハウス・ルール」を作成しました。

 VTOL型航空機回転翼機にしか行えないNOE飛行は、 地形の一部(丘や山、樹木、建物など)を遮蔽物(視線を遮る障害物)として利用できる飛行方法 であると定義しました。
 メガトラベラーの「視線−視認と探知」のルールから考察した結果、 NOE飛行は基本的に、敵から視認されることも攻撃されることもない、 という大きな利点を備えています。



 飛行船については、気嚢浮力を考察しました。
 気嚢の中に充填される浮揚ガスは、 水素(Hydrogen)ヘリウム(Helium)、熱した空気(Heated Air)の3種で、それぞれ特徴があります。
 浮力の計算は1気圧、15℃を条件としていることが分かりましたが、 気圧(大気レベル)が異なる場合の計算方法については、不自然な数値を発見。
 それを修正するための「ハウス・ルール」を作成しました。

 加速率と移動速度の関係から、経済性を重視すれば必然的に、 プレイヤーが遭遇する飛行船は最高速度60km/hのものばかりになる、ということが判明。
 その加減速能力も極めて低いので、飛行船を戦闘に参加させる場合、 戦闘中の加減速はできないと考えておいた方が無難なようです。

 加速率を旋回推力として計算した飛行船の旋回能力は、実に情けないレベルでした。
 ですから飛行船の旋回に関しては、 10戦闘ラウンドに1回、45度の旋回を行える、というルールで良いように思えます。
 恐らく、不都合は生じないでしょう。

 上昇/降下能力も1戦闘ラウンド当たり15メートル、に制限しました。
 150mマスのスケールを使っている場合は、10戦闘ラウンド(=1分)当たりで150メートルです。

 他にも色々と考察を行いましたが、メガトラベラーの戦闘ルールで飛行船を搭乗させることは、 とても難しいことだと言えるでしょう。






2013.10.13 初投稿。