The Best Weapon
56th stage (Air Force 4)
Air Reconnaissance

最強兵器 決定戦
第56回(空軍4)
航空偵察
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MEGA TRAVELLER
 


 

高い場所から見下ろすならば
      もっと遠くまで見えるようになる


 ようやく、今回で空軍の存在意義とも言える、 航空偵察の考察を始められるようになりました。
 この考察では、主に航空機による偵察(=航空偵察)を扱います。



 まず、戦闘を始めるためには情報を得なければなりません。
 情報なしで戦闘を始めようというのであれば、余程の戦力差が無い限り、勝利は望めないでしょう。

 戦場となる場所、地形の偵察に関して今回の考察では取り扱いません。
 ソ連に攻め込んだ1936年のドイツ軍の苦労を思い起こすまでもなく、地形情報の入手はとても重要なことですが、本題ではないので省略。

 戦術的な偵察に限ったとしても、防衛拠点敵軍の配置、 その戦力規模は、状況に応じて臨機応変にその場所や規模が変化するものです。
 敵司令部や敵砲兵の陣地、補給や整備のための拠点は何処にあるのか、補給路、通信網の実態はどうなのか。
 増援部隊はどこを移動中で、何時になれば前線に到着するのか。
 こういった情報を得なければ、指揮官は部隊を動かせません。

 それらの情報に加えて、戦果確認も意外と重要です。
 航空爆撃や間接射撃で目標はどれだけの被害を被ったのか、撤退した敵の主力はどれだけ消耗しているのか。 それらの目標に対して、再度の攻撃や追撃は必要なのか。
 前線で対峙している敵の主力部隊はともかく、後方の様子は前線からでは分かりません。 それらの実態は地形や植生の陰に隠れて見えなくなっているものだからです。

 必要な情報を得ようと思えば、視点を高く持ち上げることが最善であることは明らかでしょう。
 そもそも航空機が戦場で初めに使われたのは偵察機としての利用が最初であり、そこから爆撃機が生まれ、 それらの偵察機や爆撃機を撃墜するための戦闘機が発展してきた、という歴史があったりしますから。
 航空偵察が戦場で多用されるようになったことも必然なのです。



 戦術級のシミュレーション・ゲームは多くの場合、プレイヤーが地図上すべてを見渡すことが可能です。
 敵味方ユニットの配置も、その規模も、その消耗度も一目で分かります。
 実に都合の良いことですが現実において、敵が自軍の配置や規模を教えてくれる訳がありません。
 それらの情報は味方の偵察行動(その多くは航空偵察)によって得なければならず、 必要な情報を得るため、戦場の上空には味方の偵察機が頻繁に飛び交っていなければならないのです。



 今回は航空偵察について考察してみました。
 上記のような偵察行動に従事する航空機が、どの程度の高度を飛行し、どの程度の距離を見通しているのか。
 彼らの偵察行動から逃れる地上目標は存在するのか。
 存在するとしたら、どのような方法で偵察機の目を逃れることができるのか。

 こうした疑問を解決するため、 上空から偵察機が地上目標を視認(探知/発見)する際の行為判定に関するハウス・ルールも作成してみました。





地上戦での遭遇距離


 この章の考察は、43回「個人戦闘7:遠距離/超遠距離」で少しだけ触れた、 遭遇距離に関するルールを見直したものとなっています。
 43回を考察した時点では漠然としたイメージしか持っておりませんでしたが、 無謀!掲示板で zaza 様からT2Kの遭遇距離に関するルールを教えて頂き、 新しい視点を得ることができました。
 その視点を用いて、CTとMT版の遭遇距離に関するルールを再考察した訳です。

 zaza 様から教えて頂いた情報を、以下に抜粋しました。
 日本語訳は、拙訳です。

>ENCOUNTER RANGE TABLE 遭遇距離表
> open 1D10×300m 平坦な見晴らしの良い開豁地 300〜3,000m
> hill  1D10×100m 起伏のある丘陵地      100〜1,000m
> swamp 1D10×30m 低木の生い茂る湖沼地帯    30〜 300m
> woods 1D10×10m 森林の中           10〜 100m


 ルールを要約すると、最小遭遇距離は1D10で「1」が出た場合の遭遇距離になっていました。
 その距離になると、どちらか片方が隠れるなどの回避行動を行わない限り、自動的にお互いを発見します(発見されます)。
 最大遭遇距離は1D10で「10」が出た場合であり、それ以上の遠い距離ではお互いに発見できない(発見されない)とのこと。
 戦闘を回避したい場合は、最大遭遇距離よりも遠くへ逃れれば「安全」になる。



 最大遭遇距離よりも遠くへ逃れれば「安全」になるというルールが面白いと思いました。 「安全」になるということは、その距離ならば射撃を受けることがない=視線が通らない、と解釈できるからです。

 遭遇距離表の最大距離=視線の最大距離。

 私が今まで気付かなかった視点(考え方)でした。




(1)遭遇距離の確率分布

 と言う訳で、CTとMTに共通して掲載されている遭遇距離表をもう一度見直してみました。 レフリーズ・マニュアル、p.43の遭遇距離表とDMを以下に転載します。


              表1 遭遇距離表とDM

BW56_Fig01.gif - 9.98KB

 遭遇距離は、2D6によって決定されます。
 表の右側はサイコロの目に影響を与える修正値(DM)。
 地形によって異なるDMを与えることで、その遭遇距離を変化させる訳です。 「至近距離」から「超遠距離」まで遭遇距離は様々ですが、 結果が偏らないように、きちんと工夫がされていました。



 この遭遇距離表で決定される遭遇距離の分布は、以下のようになります。
 考察の43回「個人戦闘7:遠距離/超遠距離」の表1を再掲載しました。


      表2 遭遇場所の地形によって異なる、遭遇距離の確率分布

BW56_Fig02.gif - 15.2KB

 表の左端が遭遇場所の地形

 最も確率の高い「遭遇距離」を赤字で、 それ以外でも確率が10%以上の「遭遇距離」を黄色字で示しました。

 遭遇した地形が、「市街、建物内、洞窟」「沼、沼地、湿地、極地」の場合は、 高い確率で「近距離」の遭遇になります。
 「至近距離」や「中距離」で遭遇する確率も若干ありますが、 「遠距離」以上で遭遇する確率は、ほとんど有り得ません。

 遭遇した地形が「海面下」「ジャングル、熱帯雨林」「森、林、川、小川、浅瀬」「岩地、高地、荒地、山すそ、海面上」の場合は、 「中距離」で遭遇する確率が最も高いのですが、その確率は半分以下しかありません。
 ですから、「近距離」や「遠距離」 「超遠距離」の遭遇にも備えておく必要があるでしょう。 稀に「近距離」で遭遇する可能性も存在します。

 遭遇した地形が「空き地、道路、開墾地、草原、平原、ステップ、山、高山」「砂漠、砂丘、流砂」の場合、 高い確率で「超遠距離」の遭遇になりました。
 「中距離」と「遠距離」で遭遇する確率もありますが、 「至近距離」や「近距離」での遭遇はまず有り得ません。



 ここで、距離帯の区分について再確認しておきましょう。
 プレイヤーズ・マニュアル、p.75の距離表から、地上戦で実際に使いそうな距離帯を抜き出しました。


           表3 距離表(メートル表記とマス単位)

BW56_Fig03.gif - 9.35KB

 表の左端が距離帯の区分

 その次が、メートル表記で区切られた距離帯
 境界線ぎりぎり(例えば50メートルちょうど)の場合は、どちらの距離帯に入れるか、 レフリー次第のようです。

 その右側が、屋内戦闘マップ(1マス=1.5m)のスケールで示した距離帯
 微妙にマス数が合っていないような気がします。
 例えば、このスケールの30マスは45メートルに相当するので、 遠距離が始まる50メートルには、あと3〜4マス足りません。
 とは言うものの、遠距離が34マスから始まる、 というルールは計算が面倒になりそうですから、 プレイアビリティのためには遠距離が30マスから始まる方が良いのでしょう。
 御覧の通り、距離帯の区別は基本的に10倍となっています。 遠距離超遠距離が250メートルで区切られているのは唯一の例外。
 ちなみに、このスケールを使えるのは超遠距離までです。
 その次の遠方は、マス数が300を超えるので実用的ではありません。

 表の右側は屋外戦闘マップのマス数で、スケールは3段階に分かれています。

 まずは一般的な1マス=15mのスケールが最初ですが、 これは中距離から遠方で用いるべきスケールでしょう。
 超遠方以遠の距離帯は、マス数が300を超えるので実用的ではありません。

 次は大規模戦闘で用いる1マス=150mのスケール。
 上記の通り、大規模戦闘で使用するか、あるいは考察の47回「砲兵3:間接射撃−超遠方」で述べたように、 超遠方での間接射撃に用いるべきでしょう。
 地域間以遠の距離帯は、マス数が300を超えるので実用的ではありません。

 最後は大規模戦闘で用いる1マス=1,500mのスケール。
 流石に私も、このスケールは使用したことがありませんでしたが、果たしてどのように使うべきなのか。。
 一応、遠方から地域間の範囲で用いるべきなのでしょう。
 大陸間以遠の距離帯は、マス数が300を超えるので実用的ではありません。



 距離帯の区分についてルールの復習が終わったところで、 今度は地形によって異なる「遭遇距離」の分布から、遭遇距離表の最大距離=視線が通る最大距離、を求めてみましょう。


           表4 遭遇距離表から求めた最大遭遇距離

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 表の左端は、今回も遭遇場所の地形です。
 地形区分=1〜9は、地形DMが同じ地形を纏めて、勝手に分類しました。
 同じことを何度も繰り返して書くのが面倒になってきたもので。

 その右側の欄は、遭遇距離表から求めた最大遭遇距離
 つまり、視線が通る最大の距離帯です。



 例えば、遭遇距離表のDMが「−5」である地形、市街、建物、洞窟内において、 最大遭遇距離は中距離(〜50m)でした。
 遭遇距離が遠距離になることは有り得ません。
 市街地ならば建物や様々な構造物、建物内であれば壁などの内部構造が視線を妨げ、 遠距離で視線を結ぶことを許さない訳です。
 実際、何らかのスポーツ施設や劇場でもない限り、50m以上の距離が見通せる状況は思いつきません。
 つまり、これらの地形で特定のユニットが他のユニットから遠距離以遠に離れていれば、 そのユニットが視認されることも撃たれることもない、と言えるでしょう。

 その次、遭遇距離表のDMが「−4」である地形、沼、沼地、湿地、極地において、 遭遇距離が超遠距離になることも有り得ませんでした。
 地形の起伏や植生によって視線が妨げられている、と解釈すべきでしょう。
 ユニットを視認したり、射撃したりするためには、遠距離(〜250m)以内に近付かなければなりません。

 3番目の地形、海面下と4番目のジャングル、熱帯雨林は、遭遇距離表のDMが「−1」と「±0」でした。
 至近距離から超遠距離、幅広い距離帯での遭遇が考えられますが、 最大遭遇距離は超遠距離になりました。
 海面下は水による視界の妨害が主原因だと思います。 海面下だと光が届きにくいので、暗闇の効果も考慮すべきでしょうか。
 ジャングルと熱帯雨林は当然、その生い茂った植生による視線の妨害だと思われます。

 5番目の地形、森、林、川、小川、浅瀬、6番目の地形、岩地、高地、荒地、山すそ、 7番目の地形、海面上は、遭遇距離表のDMが「+1」から「+2」でした。
 近距離から超遠距離での遭遇が考えられ、 必然的に、この地形での最大遭遇距離も超遠距離(〜250m)であることが判明。
 しかし、見通しの良さそうな海面上であっても、遭遇の最大距離が超遠距離だったことは意外でした。
 外海の場合、波のうねりの高さは最低でも1メートル、大きい場合で5メートル以上にもなるということですから、 遭遇の相手はその起伏に隠されてしまう、ということのでしょう。
 実際、リアルで海の上に漂う特定の物体に注目していても、少し離れるだけで見えなくなってしまいますから、確かに納得はできますが。

 8番目の地形、空地、道路、開墾地、草原、平原、ステップ、山、高山のDMは「+3」です。
 遭遇距離は近距離から超遠距離の範囲でした。
 通常ならば、そのまま最大遭遇距離を超遠距離にすべきなのでしょうが、 最も発生しやすい遭遇距離が超遠距離でしたから、 その距離帯が最大遭遇距離になってしまうのも少し不自然だと感じます。
 ですから、この地形での最大遭遇距離(=視線が通る最大距離)は遠方(〜5km)にしておきました。
 市街の中でも部分的に視線が通る地形、広場(空地)や道路は、DM「+3」のこうした地形として扱われるべきなのでしょう。
 人工的に起伏が解消され、障害物の少ない地形、畑や水田は、開墾地として扱っても良いと思います。

 9番目の地形、砂漠、砂丘、流砂のDMは「+4」でした。
 これらの地形における遭遇距離は中距離から超遠距離の範囲。
 この地形も最大遭遇距離は遠方(〜5km)だと考えました。
 概ね、妥当なところではないでしょうか。



 以下の考察は、上記の結論を基に進めていきます。





高い視点での遭遇距離


 メガトラのルールに定義されている遭遇は、 視認する側がキャラクター(人間やロボット)サイズであることが大前提だと思われます。
 その視点は、恐らく地表から1.5メートル程度の高さにあるのでしょう。
 ですから、植生やちょっとした地形の起伏によって、相手が隠されてしまう(視線を妨害されてしまう)ことになるのです。
 ちなみに、古代テラ、某極東島国の「道路構造令」によれば、 道路の視界は高さ1.2メートル(車を運転している運転手の視点)が基準だとのこと。 私が想定する「地表から1.5メートル程度の高さ」に問題は無いでしょう。

 しかし、もしも視点を高い場所に移したらどうなるのでしょうか?
 視点を高い場所に移す、という行動の意味ですが、具体的には、 木によじ登る、建物の上階に上がる、丘や山に登る、などの行動が考えられますね。
 もちろん、熱気球を使って監視員を上空へ持ち上げる、偵察機を使う、などの輸送機器を利用した方法も有り得ます。

 視点を持ち上げることによって、遭遇距離(安全距離)がどう変わるのか、 視認に関するハウス・ルールを作りながら、ちょっと考察してみました。




(1)視点を持ち上げた場合の最大遭遇距離

 視点を持ち上げることができるのであれば、その分、より遠くを見通すことができます。
 まずは視点を15メートルの高さ、通常の10倍の高さまで持ち上げた場合の最大遭遇距離について考えました。


           表5 遭遇距離表から求めた最大遭遇距離

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 表の左端は遭遇場所の地形地形区分

 その右側は今回も最大遭遇距離ですが、 視点が15メートル(表4の10倍)まで高くなったため、視認できる距離も合わせて(表4の)10倍まで拡大しました。
 地面が、地形の起伏こそあれ、基本的には水平に伸びている、と言う想定ですから、 地形の中に、高い視点からの視線を妨害できるもの、具体的には高さ15メートル以上の丘陵や建物、樹木が存在しない限り、 この計算は間違っていないと思います。
 さて、最大遭遇距離はどのように変化したのでしょうか。



 その結果、1番目の地形である市街において、最大遭遇距離が超遠距離(〜500m)まで伸びております。
 市街戦において高い場所に上ることは、間違いなく効果的だと判明しました。
 敵と同じ高さ(地上から1.5メートル)で撃ち合いを行うのであれば、 市街では中距離(〜50m)までしか敵を狙い撃つことができません。
 しかし高い場所からならば10倍の距離(=超遠距離)までを撃つことが可能になりました。
 某映画で某兵士が行ったように、「教会の尖塔に上がって狙撃銃を撃つこと」は、極めて効果的な戦術なのです。
 もっとも、市街に存在する建物の高さが15メートル以上であるならば、この恩恵を受けることもないのでしょうが。

 2番目の地形、沼、沼地、湿地、極地も、最大遭遇距離が超遠距離(〜500m)まで伸びました。
 表4の最大遭遇距離は遠距離(〜250m)なので、それを10倍したら2,500メートルなのですが、 その距離に合致した距離帯が存在しないため、2倍の超遠距離に抑えてあります。

 3番目の地形、海面下は、視点を高くしても海中である以上、最大遭遇距離が伸びるとは思えませんので、除外しました。

 4番目の地形、ジャングル、熱帯雨林、5番目の地形、森、林、川、小川、浅瀬、6番目の地形、岩地、高地、荒地、山すそ、 7番目の地形、海面上は、最大遭遇距離が遠方(〜5km)まで伸びています。
 もちろん、ジャングルや熱帯雨林、森、林の植生(樹高)が高さ15メートル以上であるならば、 それらの地形で最大遭遇距離の拡大を認めるべきではないでしょう。

 8番目の地形、空地、道路、開墾地、草原、平原、ステップ、山、高山、9番目の地形、砂漠、砂丘、流砂は、 最大遭遇距離が超遠方(〜50km)まで延びました。



 次は視点を150メートルの高さ、通常の100倍の高さまで持ち上げた場合の最大遭遇距離です。


           表6 遭遇距離表から求めた最大遭遇距離

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 表の左端は遭遇場所の地形地形区分

 その右側は今回も最大遭遇距離ですが、 視点が150メートル(表4の100倍)まで高くなったことに合わせ、視認できる距離も(表4の)100倍まで拡大しています。



 1番目の地形、市街と、2番目の地形、沼、沼地、湿地、極地の最大遭遇距離は 遠方(〜5km)まで伸びました。
 建物や植生、地形の起伏のほとんどを無視して、実質的に銃器や砲兵器の最大射程である 遠方(〜5km)まで視線を引くことがきるようになったのです。
 視線を遮る障害物、建物や植生、地形の起伏のすぐ後ろを見通すことだけ出来ませんが、 ここまで広い視界を得られるのであれば、あまり気にならないことだと思われます。
 もちろん、周囲に高さ150メートル以上の建物や植生が存在している場合は例外で、この恩恵を得ることはできません。

 4番目の地形、ジャングル、熱帯雨林、5番目の地形、森、林、川、小川、浅瀬、6番目の地形、岩地、高地、荒地、山すそ、 7番目の地形、海面上は、最大遭遇距離が超遠方(〜50km)まで伸びました。

 8番目の地形、空地、道路、開墾地、草原、平原、ステップ、山、高山、9番目の地形、砂漠、砂丘、流砂は、 最大遭遇距離が地域間(〜500km)まで延びています。



 此処まで考察して、私は突然、とある重要なことに気付いてしまいました。

 過去の考察52回「個人戦闘9:潜伏状態と探知」の表13〜表14、 視線はどこまで届くのか?でも考察しましたが、 一般的な世界には地平線(水平線)が存在するのです。
 上記の表6、視点の高さを150メートルまで持ち上げた場合、 8番目と9番目の地形における最大遭遇距離が地域間(〜500km)まで延びましたが、 高さ150メートルの視点に存在する地平線は、規模Aの世界であっても、 49kmの距離(=超遠方)で視線を遮ってしまいました。
 表6で求めた最大遭遇距離は、規模Aの世界であっても超遠方しか有り得ず、 地域間という距離帯は、極めて非現実的なものだったということです。

 また、もうひとつの問題として、視認される目標の大きさがありました。
 目標の大きさによって、視認できる距離が制限される=一定の距離まで近付かなければ視認できない、ということです。
 その問題については同じ考察の表15でハウス・ルールを作成済み。

 この2つの問題も考慮して、最大遭遇距離を考え直してみましょう。




(2)地平線の存在を考慮した場合の最大遭遇距離

 考察の52回「個人戦闘9:潜伏状態と探知」の表14を、 視点の高さ=1.5m、15m、150m、1,500m、15,000mの5段階で作り直し、再掲載してみました。

 その世界が全く凹凸のない真球だと想定した場合、地平線がどれだけ遠くにあるものか、実際に計算した結果です。
 地平線までの距離をkm単位で示しました。


          表7 水平線までの距離(km表記の計算値)

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 表の縦軸に視点/目標の高さ(m)という変数を設けました。
 横軸が世界の規模です。

 世界の規模がテラと同じで、 視点の高さ1.5m(=平均的な人間の視点の高さ)だった場合、 地平線は、その位置から4.4km先に存在することになりました。

 上の表へ示されているように、視点の高さが変われば地平線までの距離も変わります。 視点が高ければ高い程、地平線までの距離は遠くなり、遠くを見渡すことができる、ということなのですから。



 表に示した数値(地平線までの距離)の色を、距離帯毎に分けました。
 地平線までの距離が250〜500mの範囲にあれば超遠距離、 500m〜5kmの範囲ならば遠方、5〜50kmの範囲ならば超遠方、 50〜500kmの範囲ならば地域間といった具合です。

 視点の高さが1.5メートルの場合は、地平線までの距離遠方に。
 視点の高さは15〜150メートルの場合は、超遠方になっている、ということが分かりました。

 視点の高さが10倍になっても、地平線までの距離は3.16倍にしかなりません。
 視点の高さが100倍になってようやく地平線までの距離は10倍となります。
 これは重要なポイントではないでしょうか。



 次は、視認される目標の大きさに関する問題です。
 考察の52回「個人戦闘9:潜伏状態と探知」の表15を再掲載しました。
 1マス=1,500mのスケールを追加してあります。


          表8 目標の大きさによる視認距離の制限

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 表の左側は視認する目標の種類
 右側が視認できる最大距離です。単位はkmと、15m、150m、1,500mで示したマス数。



 歩兵部隊、群衆、動物の群れは、3kmの距離まで近付かないと視認できません。
 「COACC」の探知ルールで示されているように、 望遠鏡(双眼鏡)や赤外線センサー、レーダー等を使っても、地上物体をはっきりと識別するのは、この距離が限界なのでしょう。
 個人的には、視認できても敵味方を識別できなかったり、民間人を誤認したりする可能性を残しておきたいところですが、 幸か不幸かメガトラベラーの個人戦闘ルールには誤認の余地がありません。 視認(探知)に成功すれば自動的に敵味方の識別も出来るという素晴らしいルールです。安心して攻撃を始めましょう。
 あるいは、誤認の可能性なしで視認できる距離として上記の距離が定義されたのかも知れません。
 ちなみに3kmは、15mマスで数えると200マス、150mマスで20マス、1,500mマスで2マスの距離に換算できます。

 機甲部隊、車輌は、6kmの距離で視認できます。
 ということは、地上から地上目標(車輌)を攻撃する場合、対戦車砲の最大射程も6kmに制限されてしまうのでしょう。
 距離帯は超遠方(5km〜50km)に該当しました。ちょっと物足りないような複雑な気分ですが、 このルールが地上目標だけに限定されていることは有難い話です。 地対空戦闘や空対空戦闘には別の視認ルールが適用されていますから、 対戦車砲の長い射程は対空戦闘で活用できることでしょう。
 6kmは、15mマスで数えると400マス、150mマスで40マス、1,500mマスで4マスの距離に換算できました。

 砲兵部隊、簡易陣地建物/構造物は、9kmの距離から視認できます。
 普通、砲兵部隊は丘や森の向う側、視線が通りにくい場所に布陣する筈なので、 この数字は航空偵察の際に有効となることでしょう。 対砲兵戦航空偵察は必須なのです。
 建物/建築物の大きさについて制限はありませんが、どんな大きさの建物がこの距離で見えるのか、レフリーの裁量にお任せします。
 車輌並に小さな小屋ならば、上記の機甲部隊、車輌の距離を用いるべきでしょう。
 また、複数の建物が集まった場所、街や村ならば、より遠くから見えても構わない筈です。 この9kmという距離は、建物1つずつを個別に識別できる距離だと解釈すべきでしょうから。
 9kmは、15mマスで数えて600マス、150mマスで60マス、1,500mマスで6マスの距離に相当します。

 高層建築物は、12kmの距離から視認できました。
 これも、複数の高層建築物の中から特定の建物を識別できる距離だと解釈して構わないと思います。
 12kmは、15mマスで数えて800マス、150mマスで80マス、1,500mマスで8マスの距離に相当しました。



 ところで、無謀!掲示板で zaza 様から教えて頂いたT2Kの遭遇距離に関するルールによると、 以下のような条件になると、遭遇距離が2倍から4倍に拡大するようです。
 その視点を用いて、CTとMT版の遭遇距離に関するルールを再考察した訳です。

 zaza 様から教えて頂いた情報を、再び抜粋。

> 人サイズの目標もしくは5t未満の車輌は、
> 通常遭遇距離の2倍の距離で発見されます。
> 5t以上の車輌は通常遭遇距離の3倍で発見されます。
> 固定施設は遭遇距離の4倍でみつけられます。
> 移動車輌は通常遭遇距離の4倍で自動的に発見できます。


 通常遭遇距離を3kmだと想定するのであれば、5t未満の車輌が2倍の距離(=6km)で発見(視認)されたり、 5t以上の車輌は通常遭遇距離の3倍(=9km)で発見される、固定施設は遭遇距離の4倍(=12km)でみつけられるというルールは、 「COACC」のルールと相似しています。
 場合によっては、「COACC」のルールに、 移動車輌は通常遭遇距離の4倍(=12km)で自動的に発見される、という条項を追加しても良いでしょう。



 という訳で、地平線までの距離、視認される目標の大きさによる距離制限を加え、 遭遇距離表から求めた最大遭遇距離を考え直してみました。


         表9 視点の高さ=1.5mから求めた最大遭遇距離

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 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で求めてあります。
 この表はともかく、後の表で直線距離が大きくなっている箇所も存在しますが、 それはプレイヤーズ・マニュアル、p.70に掲載されている、

>射撃距離:
>
> 目標と異なる高度から射撃を行う場合、高度差(メートル、キロメートル、
> そのほかどんな単位でも)と、戦闘マップ上で表されている
> 目標までの距離とで、大きいほうを目標までの距離とします。
> たとえば、あるユニットから「中距離」(5〜50メートル)のマスの上空を
> 輸送機器が飛行しており、その高度が200メートル(遠距離)であるとき、
> この輸送機器までの距離は射撃に関しては「遠距離」になります。


 という、メガトラの射撃戦闘に関するルールに従って計算したためです。
 場合によっては誤差が1.4倍にまでなってしまうのですが、プレイアビリティのためには仕方ないことでしょう。

 その右側には、その最大遭遇距離に対応した距離帯を示しました。



 表の右側は視点の高さ=1.5mの条件で計算した、 最大遭遇距離の中の水平方向の距離です。
 単位は例によって、メートル(m)と15m、150m、1,500mで示したマス数。
 右端には補足情報として、その距離がどの地形の最大遭遇距離に相当するのか、 規模が幾つの世界での地平線までの距離になるのか、 どの程度の大きさまで目標を視認できる距離なのか、といった情報を示しています。



 それらの距離を上下に並べた結果、ほとんどの地形(地形=1〜7)において 最大遭遇距離は、地平線までの距離よりも手前にあることが判明。
 視点の高さ=1.5mであるならば、 屋外戦闘において地平線の存在をそれほど気にする必要はなさそうです。

 但し、一部の地形(地形=8〜9)において、 最大遭遇距離は、地平線までの距離よりも遠くに存在しました。
 ですから、これらの地形では最大遭遇距離地平線までの距離に制限されます。
 また、サイズの小さな目標(歩兵部隊/群衆)は、 最大遭遇距離より近くに居ても視認/射撃できない(3kmより遠くに居る)状況が発生するでしょう。



 次は、視点の高さ15mまで持ち上げた場合の最大遭遇距離です。


         表10 視点の高さ=15mから求めた最大遭遇距離

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 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で示しました。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離
 m表示と15mマス150mマス1,500mマスのスケールで示しています。



 視点の高さ15mまで持ち上げると、 常に最大遭遇距離が地平線までの距離よりも手前に存在する地形は、 極一部(地形=1〜2)だけとなりました。

 その世界の規模が2以上であれば、 多くの地形(地形=4〜7)において、 最大遭遇距離が地平線までの距離よりも手前になりますが、 世界の規模が1しかない場合は、地平線までの距離が手前です。
 多くの世界は規模が2以上ですから、それらの世界の地平線は 地形=4〜7の最大遭遇距離より遠くに存在することになるでしょう。
 そしてサイズの小さな目標(歩兵部隊/群衆)は、 最大遭遇距離より近くに居ても視認/射撃できない(3kmより遠くに居る)状況が有り得ました。

 一部の地形(地形=8〜9)において、 最大遭遇距離は常に地平線までの距離より遠くに存在しています。
 この場合、地平線までの距離は4.9〜15.5kmとなっていますので、 目標のサイズによる視認距離の制限が大きく影響するようになりました。



 今度は、視点の高さ150mまで持ち上げた場合の最大遭遇距離です。


         表11 視点の高さ=150mから求めた最大遭遇距離

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 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で示しました。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離
 m表示と15mマス150mマス1,500mマスの3スケール。



 視点の高さ=150mまで持ち上げると、大半の地形(地形=4〜9)において、 最大遭遇距離は常に地平線までの距離より遠くに存在するようになりました。
 地平線までの距離より手前に最大遭遇距離が存在する地形は、 極一部(地形=1〜2)です。
 その世界の規模が1〜A、どの規模であっても違いがありません。

 つまり、ごく一部の地形(地形=1〜2)である市街、沼、沼地、湿地、極地を除外するのであれば、 視点の高さ=150m以上になると、地形上の障害物、起伏や植生は視線を妨げなくなる、 と断言することができるのではないでしょうか?




(3)航空偵察における最大遭遇距離

 地形に妨げられず、視線を引くことができるということは、地形に関係なく相手を視認できるということになります。
 もちろんメガトラの視線と探知に関するルールとして、

>植物:
>
> 地上のユニット(あるいは超低空で飛行するユニット)は、
> 密な樹木を通しては視線を引けません。
> まばらな樹木の場合は、50メートル以内
> (「中距離」以内)なら視線を引くことができます。


 という制限があったり、

>建物:
>
> 建築は視線を妨げます。
> 建物の中にいるユニットは、1階にいるのでないかぎり、
> 地上のユニットを見下ろすことができます
> (地上の障害物に隣接しているユニットは除く)。


 という例外が存在するので、すべての障害物を無視できる訳ではありません。
 しかし、地上からの視点はより多くの障害物(建物、植生、起伏)に妨害され、 中距離(〜50m)から超遠距離(〜500m)先までしか見えなくなってしまいます。
 それに比べれば、上空へ持ち上げた視点は、多くの障害物を無視できる訳で、実に効果的な偵察が可能になりました。

 という訳で、航空偵察は常に高度150メートル以上を飛行する(視点の高さが150m以上になる)、 という条件を想定して、その有効性を評価してみます。



 視点の高さ=150mについては、すでに表11で評価済みですから、 今度は視点の高さ=1,500mの最大遭遇距離を求めます。


        表12 視点の高さ=1,500mから求めた最大遭遇距離

BW56_Fig12.gif - 24.1KB

 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で示しました。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離
 m表示と15mマス150mマス1,500mマスの3スケール。



 眼下に存在する地形がどんな地形であっても、関係なく視線を引けることが確認できました。
 また、どんな規模の世界であっても地平線までの距離は、 目標のサイズによる視認距離の制限よりも遠くに存在します。

 この高度で行われる航空偵察にとって重要なことは、目標のサイズによる視認距離の制限しかありません。

 視点が移動する場合、偵察機が高度=1,500mを飛行して航空偵察を行う場合、 例えば敵ユニットの歩兵部隊/群衆が3kmより遠くに存在しても、偵察機はそれを視認することができません。
 折角、視点を高くしたのに、これは勿体無いことだと思います。
 もちろん、敵ユニットが歩兵部隊/群衆ばかりだとは限りません。
 機甲部隊、車輌砲兵部隊、簡易陣地建物/構造物高層建築物といった敵ユニットが存在しているとしても、 それらが6km、9km、12km以内に存在していなければ視認できないのです。

 地上目標を捜索する(索敵する)場合、 視点の高さ1,500m程度が適切なのでしょう。



 次は視点の高さ5,000mまで持ち上げた場合の最大遭遇距離。


         表13 視点の高さ=5,000mから求めた最大遭遇距離

BW56_Fig13.gif - 21.9KB

 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で示しました。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離
 m表示と15mマス150mマス1,500mマスの3スケール。



 目標のサイズによる視認距離の制限を端的に表すため、 視点の高さを中途半端な高さ=5,000mまで持ち上げてみました。

 視点の高さ5,000mになってしまったため、当たり前の話ですが、 偵察機から地表(敵ユニット)までの距離は5,000m(=5km)以上になってしまいました。
 目標のサイズによる視認距離の制限は、 敵ユニットが歩兵部隊/群衆である場合に3km以内というルールですので、 偵察機は地表の歩兵部隊/群衆を視認することができません。

 航空偵察の目的が索敵(地上目標の発見)だけとは限りませんが、困ったことです。
 歩兵部隊/群衆を視認(発見)したいのであれば、 偵察機は高度=3,000m以下を飛行しなければならないと確認できました。



 次は視点の高さ15,000mまで持ち上げた場合の最大遭遇距離。


        表14 視点の高さ=15,000mから求めた最大遭遇距離

BW56_Fig14.gif - 15.2KB

 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離
 目標までの直線距離を、m表示と距離帯で示しました。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離
 m表示と15mマス150mマス1,500mマスの3スケール。

 この高度を飛行する偵察機は、地表の目標を発見(視認)することができなくなりました。
 目標のサイズによる視認距離の制限を超えているためです。
 索敵(地上目標の発見)は不可能になりましたから、航空偵察の対象は地形しかありませんが、 この高度を飛行する偵察機ならば、広い範囲を一度に偵察することができるでしょう。




(4)航空偵察の限界

 地上に視点を置いた偵察(視点の高=1.5m〜15m)は、どんなに背伸びしても、 15km先(超遠方を見通すことしかできません。
 地形によっては、500m先(超遠距離)、 5km先(遠方)までしか見通せない場合もあります。

 敵は何処に居るのか。
 あの丘の向うで待ち伏せしているのではないか。
 森の陰になった場所には、砲兵が隠れているのでは?
 指揮官の悩みは尽きません。

 そんな時、助けになるのは航空偵察です。
 視点の高さ150m以上に持ち上げれば、 50km(超遠方)や155km、283km(地域間)まで見通すことが可能になり、 更にその視線は地形の影響をほとんど受けません。
 斥候を何人も送って敵の姿を探すより、偵察機1機に周辺を偵察してもらうだけで、指揮官の悩みはすべて解決してしまうでしょう。



 ついでと言っては何ですが、航空偵察がどれほど能率の高いものであるのか、 それを確認するため、1時間当たりの偵察可能面積を求めてみました。
 規模8の世界を一直線に偵察機が飛行した場合、どれだけの面積を視認できるかという計算です。


       表15 1時間当たりの偵察可能面積(規模8の世界)

BW56_Fig15.gif - 8.41KB

 表の左端は、偵察機の飛行速度(km/h)
 気球のように静止している場合、あるいは、特定地域の上空で滞空している(旋回している)場合も考慮して、 速度=0の欄も設けてあります。

 計算した結果は上記の通り。
 ちなみに、視点の高さ=1.5m、速度=0の場合、見渡せる範囲は77平方km。
 視点の高さ=15m、速度=0の場合は773平方kmでした。

 地形の種類にもよりますが、最大遭遇距離が50mや500mに制限される場合もあります。
 と言うか、視点の高さ=1.5m〜15mの場合は制限されない方が珍しいのですが、そうした場合、 見渡せる範囲は最大遭遇距離=50mで0.01平方km、 最大遭遇距離=500mで1.0平方kmしかありません。

 視点の高さ1.5mであっても、 速度=100km/hで移動するのであれば880平方kmを偵察可能ですが、 その偵察可能面積は、視点の高さ=150mの10分の1、 視点の高さ=15,000mの100分の1でしかありません。

 地形によって最大遭遇距離が制限されているのであれば、 速度=100km/hで移動しても偵察可能な面積は10〜100平方kmです。
 視点の高さ=150mの偵察可能面積と比べれるのであれば88〜876分の1、 視点の高さ=15,000mと比べれば876〜8,760分の1しかありませんでした。

 偵察機1機が偵察できる面積は、地上を走り回る斥候が偵察できる面積の10倍から1万倍に相当するということで、 偵察機の持つ高い視点は、より多くの情報を得るため、とても重要なことなのです。



 しかしながら、航空偵察には大きな欠点がありました。
 視点を高く上げ過ぎると、目標のサイズによる視認距離の制限によって、 地上目標を視認できなくなってしまうのです。

 目標のサイズを考慮するならば、視認したい目標に合わせて、 偵察機は一定の高度以下を飛行しなければなりません。
 その高度は、以下のようになります。


          表16 目標の大きさによる最大視認距離

BW56_Fig16.gif - 10.6KB

 表の左端は最大遭遇距離=視認できる最大距離と、その場合の視点の高さ
 目標までの直線距離は、同じようにm表示と距離帯で示しています。
 その右は、最大遭遇距離に対応した水平方向の距離であり、 これもm表示と15mマス150mマス1,500mマスのスケールで示しました。



 敵の歩兵部隊/群衆を捜索する場合、 偵察機は高度=3,000m以下を飛行しなければなりません。
 その際、水平方向の距離も3kmが最大値です。
 実際のところ、地上目標が水平方向に3kmの位置に存在した場合、偵察機と地上目標との間の距離は1.4倍の4.2kmになる訳ですが、

>射撃距離:
>
> 目標と異なる高度から射撃を行う場合、高度差(メートル、キロメートル、
> そのほかどんな単位でも)と、戦闘マップ上で表されている
> 目標までの距離とで、大きいほうを目標までの距離とします。
> たとえば、あるユニットから「中距離」(5〜50メートル)のマスの上空を
> 輸送機器が飛行しており、その高度が200メートル(遠距離)であるとき、
> この輸送機器までの距離は射撃に関しては「遠距離」になります。


 という、メガトラの射撃戦闘に関するルール(プレイヤーズ・マニュアル、p.70より抜粋)に従えば、 その距離は3kmにしかなりません。
 ですから、歩兵部隊/群衆の視認が可能だ、ということになる訳です。



 敵の機甲部隊、車輌を捜索する場合、 偵察機は高度=6,000m以下を飛行しなければなりません。
 砲兵部隊、簡易陣地建物/構造物を捜索する場合は 高度=9,000m以下高層建築物を捜索する場合は 高度=12,000m以下を飛行しなければならないでしょう。

 水平方向の距離も高度に合わせて、6km、9km、12kmが最大となりました。



 この高度で行われる航空偵察にとって重要なことは、目標のサイズによる視認距離の制限しかありません。

 視点が移動する場合、偵察機が高度=1,500mを飛行して航空偵察を行う場合、 例えば敵ユニットの歩兵部隊/群衆が3kmより遠くに存在しても、偵察機はそれを視認することができない、 ということなのですが、折角、視点を高くしたのに勿体無いことだと思います。
 もちろん、敵ユニットが歩兵部隊/群衆ばかりだとは限りません。
 機甲部隊、車輌砲兵部隊、簡易陣地、建物/構造物高層建築物といった敵ユニットが存在しているとしても、 それらが6km、9km、12km以内に存在していなければ視認できないのです。



 目標のサイズを考慮した場合の偵察可能面積は以下のようになりました。


       表17 1時間当たりの偵察可能面積(規模8の世界)

BW56_Fig17.gif - 8.29KB

 表の左端は、偵察機の飛行速度(km/h)

 表の右側は目標の大きさと視認距離の制限で、 偵察機の高度(視点の高さ)はほとんど影響しなくなりました。
 最低でも150mあれば、地形の障害を無視できるようになります。
 表16で確認した、目標のサイズによる視認距離の制限だけは忘れないで下さい。

 その結果は上記の通り。



 偵察機の偵察可能面積は、 捜索する目標が歩兵部隊/群衆速度=0の場合、36平方km。
 速度=100km/hで移動した場合は600平方kmでした。
 目標のサイズによる視認距離の制限を気にせず、 地平線までの距離まで問題なく見通せた場合の面積とは大きく異なります。

 視点の高さ=1.5m、速度=0で偵察可能な面積は前述の通り0.01〜1.0平方kmでした。
 偵察機の偵察可能面積と比べて36〜3,600分の1ということになします。
 視点の高さ=1.5m、速度=100km/hで偵察可能な面積は10〜100平方km。
 偵察機の偵察可能面積と比べると6〜60分の1になりますから、 歩兵部隊/群衆を捜索する場合、航空偵察の優位は縮まってしまったようです。



 捜索する目標を機甲部隊/車輌に変更するのであれば、 偵察可能面積は速度=0の場合で144平方km、 速度=100km/hの場合で1,200平方kmです。
 視点の高さ=1.5m、速度=0で偵察可能な面積は、航空偵察のそれと比べて144〜14,400分の1。 速度=100km/hの場合で12〜120分の1。
 航空偵察の優位が僅かながら回復してきたようです。



 捜索する目標が砲兵部隊/建物であれば、 偵察可能面積は速度=0の場合で256平方km、 速度=100km/hの場合で1,600平方kmに増えました。
 視点の高さ=1.5m、速度=0で偵察可能な面積は、256〜25,600分の1。 速度=100km/hの場合で16〜160分の1。

 捜索する目標が高層建築物であれば、 偵察可能面積は速度=0の場合で576平方km、 速度=100km/hの場合で2,400平方kmです。
 視点の高さ=1.5m、速度=0で偵察可能な面積は、576〜57,600分の1。 速度=100km/hの場合で24〜240分の1。



 目標のサイズによる視認距離の制限を考慮しても、 航空偵察の持つ高い視点という優位は揺らぎませんでした。
 偵察機1機が偵察できる面積は、地上を走り回る斥候が偵察できる面積の6倍から6万倍に相当しているのです。





地上目標の視認


 航空偵察に関して、視点の高さが持つ優位を確認することができました。
 今度は、その優位を実際に活かす方法、地上目標の視認について、 ハウス・ルールの作成と、その評価を行ってみます。




(1)地上目標を視認(探知)するために必要な行為判定

 航空機が地上目標を視認する件に関して、「COACC」の中にぴったりのルールが見つかりました。
 このルールはあくまで、航空機が地上目標を視認(探知)する行為判定であって、航空機が航空機を視認したり、 地上のユニットが地上目標を視認する場合には使えません。ご注意ください。
 以下にそのルールを転載します。



飛行中の航空機から、地上目標や施設を探知する行為判定。

>〈並〉、〈照準〉、〈偵察〉(技能なし可)
>
>レフリー:
> 目標がカムフラージュされているのであれば、この行為判定は〈難〉になります。
> 前進観測官が機上に同乗しているのであれば、DM+1。
> 前進観測官が、目標との間に視線を引けるのであれば、
> その航空前進観測官、または、地上の前進観測官の〈照準〉技能レベルを+DMに。
> 前進観測官が、目標を発煙弾でマークしたのであれば、DM+4。
> 目標がレーザー指示器でマーキングされていて、
> 探知する航空機にレーザー探知機やレーザー・レーダーが、
> 内装でも外装でも搭載されていればDM+6。




 上記ルールに対する私見ですが、これは、攻撃目標上空に滞空している(筈の)航空前進観測官や、 近くで目標を観測している地上前進観測官の「優位を強調する」ためのルールとなっているようです。
 地上前進観測官の場合、その観測官が目標を視認できるかどうかが非常に重要となってきますが。
 概ね、史実(リアル)を上手く再現している、と言えるのではないでしょうか。

 1番上の難易度が〈難〉になる話は納得。
 2番目の「前進観測官」が同乗していれば、という条件は、つまり、対地目標の探知に専念できる乗組員によるDMだと思われます。
 3番目、前進観測官の〈照準〉DMは、その航空機が前進観測官に誘導されながら目標を見つけるということでしょう。 僚機や地上部隊が目標を視認していても、すべての航空機がそれを視認(探知)していることにはならないのです。 ちょっと煩雑ですが、よりリアリティが増すルールだと思いました。
 4番目、発煙弾のマーキングについてはともかく、夜間の照明弾はDMなしなのだろうか、という疑問が発生しました。 答えを探したところ、それは下で説明されていることが判明。
 5番目は、前進観測機によるレーザー照準の効果ですので異論なし。

 52回で考察した、潜伏と探知の行為判定に良く似ていますが、 こちらのルールは(技能なし可)になっているところが大きく違います。
 航空機のパイロットや前進観測官は、〈偵察〉技能なしでも、 航空機上から地上目標を見分ける訓練を受けているのでしょうか。
 あるいは、航空機上(上空)から地上を見下ろすと、目標の見え方が異なるということなのかも知れません。



 このルールを航空偵察に適用する場合、残念ながら前進観測官の〈照準〉DMも、発煙弾のマーキングDMも、 レーザー指示器のマーキングDMも利用できません。未発見の地上目標を視認(探知)しようと試みているからです。
 偵察機に搭乗している乗組員の〈偵察〉技能のDMだけがプラスのDMとなります。
 また、パイロット以外に、通信士や砲手、エンジニアの業務を兼任していない「偵察員」が乗り込んでいれば、 前進観測官(偵察員)を乗せていることによるDM+1を得られるものとします。
 反対に、行為判定を難しくする要因は、地上目標のカモフラージュのみでした。 地上目標がカモフラージュされている場合は難易度がひとつ上がります。

 余談になりますが、 視認距離は500メートル以上の距離(距離帯で表すならば遠方以上)に限定するべきだと考えました。
 「COACC」のスケールは、 水平方向も垂直方向も1マス/1高度レベル=500mですから、 航空機と地上目標の間は最低でも500mの距離がある筈です。
 この視認ルールも、500m以上の距離で用いるべきでしょう。



 夜間用の追加ルールは以下の通りでした。

> 夜間に行われる探知の行為判定は、〈至難〉になります。
> 但し、目標が照明弾で照らし出されているのであれば、そうなりません。
> あるいは探知を試みる航空機が、受動赤外線、光量増幅、
> イメージ増幅器などを装備しているのであっても、影響なしです。
> これらの機器が使われるのであれば、夜間に行われる探知は〈難〉になります。
> 発煙弾によるマーキング(DM+4)以外、上記と同じDMが適用されます。




 夜間の探知行為は一気に難易度が2つも上がることが判明しました。
 何らかの暗視装置を用いていても、難易度が1つ上がりますから、ペナルティがない訳ではありません。
 この部分も潜伏と探知の行為判定と異なっている部分です。
 視認する距離が500m以上の遠方なので、 暗闇の影響が大きく現れていると解釈すべきでしょうか?

 逆に考えると、52回で考察した、潜伏と探知の行為判定は、 500m以内(超遠距離以内)の目標に限られるのかも知れません。
 そもそも地形の影響を考えるのであれば、地上に存在するユニット(視点の高さ=1.5mのユニット)が、 500メートル(遠方)以上の視認距離を得ることも滅多にないのですから。



 この行為判定の失敗は、航空機のパイロットや前進観測官が地上目標を視認できなかったことを意味します。
 本来ならば地上目標に対して視線を引くことが可能な筈なのに、何らかの理由によって彼らは視認できませんでした。
 その原因は、単に気付かなかったとか、他のものに気を引かれて見落としてしまった、というようなことでしょう。
 あるいは、目標をはっきりと識別できなかった、だけかも知れません。

 このあたりのルール解釈は明記されていないため判断が難しいのですが、 メガトラの視認ルールを拡大解釈する限り、行為判定が成功して視認された目標は、

 その種類と数、損害の状況、位置、速度まで、
 すべての情報が視認した相手に伝わってしまう。


 ようです。
 視認に成功した相手に対して直接射撃を可能とする、というルールになっている以上、 視認に成功すれば相手のことは何でも分かるというシステムにせざるを得ない、という事情は理解できます。
 ゲームのプレイアビリティを上げるためには仕方のないことですので、この件については文句を言わないことにしておきましょう。

 これを逆に考えてみたところ、視認されなかった目標は、単に見えなかった、気付かなかったという状況以外にも有り得ることが分かりました。
 つまり、目標の存在には気付いたけれど、種類や数を認識できなかった。
 目標の損害状況を確認できなかった。
 直接照準射撃を行えるほど、正確な位置や速度を把握できなかった。
 という状況も、視認できなかった(行為判定に失敗した)、という部類に含まれるのではないでしょうか?

 行為判定の失敗が何を意味しているのか。
 そのことを念頭に置いておくと、以下の考察が理解しやすくなるかと思いました。



 実際に計算してみた視認の成功率は、パイロットの〈偵察〉技能レベルにもよりますが、以下の通りです。


          表18 地上目標の探知成功率(COACC)

BW56_Fig18.gif - 11.6KB

 表の右端は、地上目標の探知を試みる状況。
 日中か夜間か。
 夜間ならば暗視装置=有り/無しを示しています。

 その右は地上目標の状況で、カモフラージュ=有り/無し
 カモフラージュ=有りの場合、 その地上目標は自動的に潜伏状態となる筈です。
 また、移動することもできませんし、射撃を含めた多くの行動ができなくなります(潜伏状態の定義より)。

 表の右側が、パイロットの〈偵察〉技能レベルと、その探知成功率。
 目標値と確率(%)の両方で結果を示しました。



 まずは日中、カモフラージュ=無しの場合。
 〈偵察〉技能によるDMが4以上あれば、その探知はほぼ自動的に成功します。 サイコロの目が「2」だった場合は、致命的失敗なので、残念ながら探知できませんが、 成功率は97.2%になりました。まず、失敗することはないでしょう。
 DMが+2の場合、成功率は83.3%でした。地上目標の6分の1を見逃してしまう、ということです。
 技能なしの場合の成功率は58.3%で、地上目標の半分近くを見逃してしまうことになりそうです。

 同じ日中でもカモフラージュ=有りの場合、成功率97.2%を得るためにはDM+8が必要となります。
 DMが+4の場合、探知の成功率は58.3%で、目標の半分近くを見逃してしまうでしょう。
 DMが+2の場合は27.8%で、目標の4分の3を見逃してしまいます。
 技能なしの場合はわずか8.3%、12分の1しか見つけることができません。
 カモフラージュされた地上目標を航空偵察で見つけることは、 地上ユニットが探知する場合と同じように、とても難しいことなのです。



 次は夜間、暗視装置=有りカモフラージュ=無しの場合。
 成功率については上記、日中、カモフラージュ=有りの場合と同じです。
 探知成功率97.2%を得るためにはDM+8が必要で、DM+4の成功率は58.3%、 DM+2の成功率は27.8%、技能なしの成功率は8.3%しかありませんでした。
 暗視装置=有りカモフラージュ=無しという好条件が揃っていても、 夜間の航空偵察で地上目標を探知することは難しい、と言えるでしょう。

 カモフラージュ=有りの条件に変わった場合は、探知の難易度が更にひとつ上がります。
 DMが+8であっても、探知の成功率は58.3%。目標の半分近くを見落としてしまうでしょう。 逆に考えてみると、カモフラージュされた地上目標を、 夜間でも半分以上見つけてしまうベテラン・パイロットの凄さを感じます。
 DMが+4の場合、探知の成功率は8.3%でした。地上目標の12分の1しか見つけることができません。
 DMが+2か技能なしの場合、地上目標の探知は絶対に成功しないことが分かりました。 偵察能力の低いパイロットしか居ないのであれば、偵察機を出すだけ無駄だということです。



 最後は夜間、暗視装置=無しカモフラージュ=無しの場合。
 暗視装置=無しで夜間の航空偵察を行うなんてのは、実に無茶な話だと思います。
 成功率については上記、夜間、暗視装置=有りカモフラージュ=有りの場合と同じ。
 DMが+8でも探知の成功率は58.3%しかなく、DMが+4で成功率は8.3%、DMが+2や技能なしでは地上目標を探知できません。

 暗視装置=無しカモフラージュ=有りになると条件は更に悪化しました。
 DMが+8でも探知の成功率は8.3%になり、多くの地上目標を見逃してしまうことが分かります。
 DMが+6以下の場合、探知の成功は望めません。



 探知の成功率から考えて、航空偵察は日中に行うべきである、という当たり前の結論が出てきました。
 照明弾、受動赤外線、光量増幅、イメージ増幅器などの暗視装置を利用しても、 航空偵察にとって暗闇の存在は大きなペナルティとなってしまうのです。
 DM+8のベテランならば、そのペナルティを覆す事も可能なのですが、 高い〈偵察〉技能を備えたベテラン・パイロットを見つけること自体が難しいことでしょう。

 カモフラージュ有り/無しも、探知の成功率には大きく関わってきます。
 カモフラージュされた地上目標を発見するためには、日中でもDMが+4以上必要で、 確実に発見したいのであればDM+8が必要でした。
 夜間の探知であれば、DM+8であっても地上目標の半分しか探知できません。
 カモフラージュされた地上目標の半数近くを見逃してしまう訳で、航空偵察の信用にも影響しそうです。




(2)飛行速度と視認の難易度修正

 今度は、航空機の移動速度ついて考えてみましょう。
 移動速度は、視認の行為判定にどんな影響を与えるのでしょうか。

 zaza様から教えて頂いたT2Kの遭遇距離に関するルールの一部ですが、

> タスク(行為判定)の難易度は、航空機の速度によって決定されます。
> 200km未満 ESY:RCN(易:偵察)
> 201〜400 AVE:RCN(並:偵察)
> 401〜800 DIF:RCN(難:偵察)
> 800km以上の速度の航空機は6台以上の車輌、
> もしくは100人以上の兵士の縦隊以外は、
> どんな地上目標物も見つけることはできません。
> または開けた場所で、中規模、大規模な地上設備を見つけることができます。
> このタスクはESY:RCN(易:偵察)です。


 という記述が存在していました。
 移動速度が200km/h以下の場合は、行為判定(Task)の難易度が〈易〉なのに、速度が201〜400km/hになると難易度がひとつ上がって〈並〉に、 更に速度が上がって401〜800km/hになると難易度がふたつ上がって〈難〉になる、ということです。
 移動速度が速いほど、地上の物体を見つけ難くなることが分かりました。

 考えてみれば当然のことだと言えるでしょう。
 表17にも示した通り、高速で移動する航空機は広い範囲を視認することが可能ですが、 それ故に、航空機のパイロットは短時間でその範囲全てに対して視認を試みなければなりません。
 視認の成功率が低くなり(失敗しやすくなり)、見落としが増えるのは必然的なことなのです。

 例えば、400km/hで移動する偵察機がその左右3kmの範囲で歩兵部隊を捜索した場合、 偵察機は1時間当たり2,400平方kmの範囲を偵察することが可能でした。
 1時間当たり2,400平方kmですから、1分当たりの偵察面積は40平方km、1戦闘ラウンド(=6秒)当たりでも4平方kmです。
 わずか6秒で4平方kmに存在するすべてのものを視認するなんてことは不可能ですから、行為判定の難易度が上がってもおかしくないでしょう。



 偵察すべき範囲が広すぎて、目標を見落とし易くなること。
 それを再現するために、以下のハウス・ルールを追加することにしました。

> 航空機(飛行型輸送機器)の速度によって、
> 探知の行為判定は難易度が幾つか上昇します。
>
> 0〜200km/hで飛行しているならば、修正なし。
> 201〜400km/hで飛行しているならば、難易度が1つ上昇。
> 401〜800km/hで飛行しているならば、難易度が2つ上昇。
> 801km以上で飛行しているならば、難易度が3つ上昇。
> もしくは100人以上の兵士の縦隊以外は、
> どんな地上目標物も見つけることはできません。
> または開けた場所で、中規模、大規模な地上設備を見つけることができます。
> このタスクはESY:RCN(易:偵察)です。


 高速で飛行しているほど、地上目標を見つけ難く(視認し難く)しています。
 試算してみたところ、探知成功率は以下のようになりました。


       表19 地上目標の探知成功率(移動速度による修正)

BW56_Fig19.gif - 9.00KB

 表18でも考察しましたが、この状況は航空偵察に最も適した状況、 日中で、なおかつ、目標がカモフラージュされていない場合の探知成功率です。



 移動速度が201〜400km/hになると、探知の行為判定の難易度は1つ上がります。
 上記の例で言えば、〈並:7+〉から〈難:11+〉になってしまう訳ですが、 その難易度上昇によって、探知の成功率は大きく低下しました。
 具体的に述べると、技能なしの成功率は58.3%から8.3%へ、DM+2の成功率は83.3%から27.8%へ、 DM+4の成功率は97.2%から58.3%へ、DM+8の場合だけは変わらず97.2%のままです。
 DM+4以上のパイロットでない限り、201〜400km/hの移動速度を出すことは 航空偵察の成功率を大きく下げてしまうことが分かりました。
 確実な航空偵察を行うため、偵察機は200km/h以下で飛行しなければならない、 ということが言えるでしょう。

 移動速度が401〜800km/hになると、今度は行為判定の難易度が2つも上がってしまいます。
 難易度が〈至難:15+〉になるということですが、その結果、 技能なしとDM+2は成功率が0%となり、DM+4の成功率も僅か8.3%まで低下しました。
 DM+8だけは58.3%という高い成功率を保っていますが、DM+8のパイロットなど滅多に見つかりません。
 401〜800km/hの移動速度を出す偵察機は、ほとんどの地上目標を見逃してしまうのです。

 移動速度が801km/h以上になると、行為判定の難易度が3つも上がってしまうので、成功はほぼ望めません。
 DM+8であっても成功率が8.3%しかないのです。技能なし、DM+2、DM+4の場合、成功率は0%でした。

 上記のようなハウス・ルールは、 SR-71、ブラックバードのような高速偵察機の存在意義を否定してしまうことになりましたが、 トラベラー的には、こうしたルールでも構わないと思います。
 高空を高速で飛ぶ偵察機が探すべき地上目標、開けた場所で容易く見つけられる中規模、大規模な地上設備については、 別の機会に「衛星偵察」として考察する予定。




(3)樹木による視線妨害

 航空偵察を妨害する大きな要因のひとつが、植物(樹木)の存在です。
 この存在によって偵察機から目標に延びる視線が妨害されてしまう訳ですが、 樹木が具体的にどのような形で視線を妨害するのかについては、以下のルールに定義されていました。

 「プレイヤーズ・マニュアル、p.89 視線−視認と探知」より抜粋。

>植物:
>
> 樹木は視線を遮りますが、いくつか例外があります。
>
> 地上のユニット(あるいは超低空で飛行するユニット)は、
> 密な樹木を通しては視線を引けません。
> まばらな樹木の場合は、50メートル以内(「中距離」以内)なら
> 視線を引くことができます。
>
> 上空から見下ろす場合にも、樹木の影響をかなり受けます。
>
> 密な樹木の場合、地面から上空に視線を引くことはできません
> (枝や葉によって完全に遮られています)。
> 上空から地上に視線を引くこともできません。
> したがって、密な樹木の中にいるユニットは敵を視認できず、
> 視認されることもありません。
>
> まばらな樹木の場合には話は違ってきます。
> 上空を遮る障害もまばらになり、上空にいるユニットは
> 地上のユニットを見ることができるようになります。
> 上空のユニットの高度によって、見える範囲が異なります。
> ちょうど真下の地点を中心として、
> 高度の20%の半径の円内に視線を引けるのです。
> たとえば高度が250メートルなら、
> 半径50メートルの円内を見通すことができます。
>
> 樹木の高さは種類によって異なりますが、
> たいていは10〜30メートルの範囲におさまります。
> 枝葉による視線障壁は、樹木の高さのまんなかぐらいに集中しているもの
> と考えれば良いでしょう。
>
> 草は、視線には影響しません。




 HJの誤訳を発見してしまいました。

> 枝葉による視線障壁は、樹木の高さのまんなかぐらいに集中しているもの
> と考えれば良いでしょう。


 この部分の英文は
> the leaf canopy may begin at varying heights,
>  but should average half the height of the trees.

 ですから、
> 葉の生い茂る天蓋は様々な高さから始まるでしょうが、
> それは木の半分の高さから始まるとすれば良いでしょう。

 と訳すべきだと思います。
 何故「begin」が「集中している」という訳になってしまったのでしょうか?



 本題に戻りますが、植物(樹木)には2つの状態があり、 片方は密な樹木(dense trees)、 もう片方はまばらな樹木(sparse trees)と呼ばれています。
 まずは密な樹木について考えますが、

> 上空から見下ろす場合にも、樹木の影響をかなり受けます。
>
> 密な樹木の場合、地面から上空に視線を引くことはできません
> (枝や葉によって完全に遮られています)。
> 上空から地上に視線を引くこともできません。
> したがって、密な樹木の中にいるユニットは敵を視認できず、
> 視認されることもありません。


 という記述から明らかなように、密な樹木の中にいるユニットは敵を視認できず、視認されることもありません。
 具体的には、以下の図のような状況となります。

BW56_Fig20.gif - 31.6KB

         図20 植物(樹木)による視線の妨害(密な樹木)

 この図を描くまで、植物(樹木)による視線の妨害についてあまり真面目に考えていなかったのですが、 植物の中でも密な樹木徹底的に視線を妨害する、ということが判明しました。

 上図の中で、密な樹木の中に隠れた地上目標Aは、 同じ地上を移動する地上部隊B地上部隊Cのどちらからも視認されません。
 そして、こちらの方がより重要なことですが、上空から見下ろしている航空機D航空機Eのどちらからも視認されることがありませんでした。
 密な樹木の中に隠れた地上目標Aが上空から視認されるためには、 地上目標Aが自ら、密な樹木の中から出てこなければならないのです。

 また、密な樹木の中に隠れた地上目標Aは、 同じ地上を移動する部隊が隣接するマスから視認する以外、視認されることがありません。
 つまり15mの距離(=1マス、中距離)からしか視認されないということですが、ちょっと変です。
 地形=4、熱帯雨林、ジャングル地形=5、森、林における最大遭遇距離は、 表1と表2より、超遠距離(〜500m)であると定義されていましたから、矛盾してしまいました。
 これらの地形が一面の密な樹木で構成されているとしたら、 その最大遭遇距離は中距離に制限されてしまうでしょう。
 しかし実際は超遠距離まで視線が通るのですから、 表1と表2で想定されている地形=4地形=5は、 一面の密な樹木で構成されている訳ではないということになりました。
 所々に空地や草地が存在して、遠距離から超遠距離まで視線が通る、 という想定がなされているようです。
 そうでなければ、地形=4地形=5における最大遭遇距離が、 市街地や洞窟のようにもっと近くに制限されていることでしょう。



 次はまばらな樹木の場合ですが、それについては、

> まばらな樹木の場合には話は違ってきます。
> 上空を遮る障害もまばらになり、上空にいるユニットは
> 地上のユニットを見ることができるようになります。
> 上空のユニットの高度によって、見える範囲が異なります。
> ちょうど真下の地点を中心として、
> 高度の20%の半径の円内に視線を引けるのです。
> たとえば高度が250メートルなら、
> 半径50メートルの円内を見通すことができます。


 ということになりました。
 具体的には、下図のように表せます。

BW56_Fig21.gif - 31.4KB

       図21 植物(樹木)による視線の妨害(まばらな樹木)

 まばらな樹木も、密な樹木ほどではありませんが、 広い範囲で視線を妨害します。

 上図の中で、まばらな樹木の中に隠れた地上目標Aは、 地上を移動する地上部隊Bから視認されます。
 まばらな樹木の場合は、50メートル以内(「中距離」以内)なら視線を引くことができるためで、 これを屋外戦闘マップの15mマスに換算すれば3マスに相当しますから、 視線がまばらな樹木を3マスしか横切らない地上部隊Bは、 地上目標Aを視認できるのです。
 その一方で、視線がまばらな樹木を4マス以上横切ることになっている地上部隊Cは、 地上目標Aを視認することができません。

 そして、上空から見下ろしている航空機Dは、 その位置が特別な条件を満たしていれば、地上目標Aを視認できるようになりました。
 その条件とは、ちょうど真下の地点を中心として、 高度の20%の半径の円内地上目標Aが存在すること。
 例にもあるように、航空機Dが高度250メートルを飛行していれば、その円の半径は50メートルです。 視認できる範囲はずいぶんと狭くなりましたが、密な樹木のように完全な視線妨害を受けるよりはマシでしょう。
 特別な条件を満たさない位置を飛行している航空機Eは、 地上目標Aを視認することができませんでした。 航空機E地上目標Aを視認するためには、 航空機Dと同じように、特別な条件を満たす位置まで移動する必要があるのです。



 という訳で、まばらな樹木の樹冠を通して、樹木の下を視認できる範囲について、 色々な要素を加味した上で、最大遭遇距離=視認できる最大距離を考え直してみました。


   表22 樹冠を通して見通せる範囲の広さ(視点の高さ=15m〜15,000m)

BW56_Fig22.gif - 20.6KB

 表の左端は視点の高さ
 目標までの垂直距離(高さ)を、m表示と距離帯で示しました。
 目標までの水平距離は、まばらな樹木の樹冠を通して視認するため、垂直距離の5分の1以下、となります。
 ですから例によってプレイヤーズ・マニュアル、p.70に掲載されているルール、

>射撃距離:
>
> 目標と異なる高度から射撃を行う場合、高度差(メートル、キロメートル、
> そのほかどんな単位でも)と、戦闘マップ上で表されている
> 目標までの距離とで、大きいほうを目標までの距離とします。
> たとえば、あるユニットから「中距離」(5〜50メートル)のマスの上空を
> 輸送機器が飛行しており、その高度が200メートル(遠距離)であるとき、
> この輸送機器までの距離は射撃に関しては「遠距離」になります。


 によって、目標までの直線距離は、垂直距離と同じ距離だと解釈すべきなのです。



 表の右側は様々な視点の高さで計算した、 「まばらな樹木」の下を見通せる範囲水平方向の距離
 単位は、メートル(m)と15m、150m、1,500mで示したマス数。
 右端には補足情報として、どの程度の大きさまで目標を視認できる距離なのか、といった情報を示しました。
 視点の眼下は、一面をまばらな樹木が埋め尽くしている、という想定です。

 視点の高さ=15〜50mの場合、3〜10mの水平距離しか見通すことができませんでした。
 15mマスで1マスにも満たない狭い範囲です。
 表10での考察によれば、視点の高さ=15mの場合、 5kmの距離(遠方)までは視線を伸ばせた筈なのですが、 まばらな樹木の樹冠を通した視線は3〜10mまでしか届きません。
 航空偵察にとって樹木の存在は、まばらな樹木であっても大きな妨害要素なのです。

 視点の高さ150〜500mまで持ち上げても、 見通せる水平距離は30〜100mにしか増えてくれませんでした。
 15mマスで2〜7マスという短距離です。
 視点の高さを地表まで降ろした場合、水平方向に見通せる距離は50m(=3マス)でした。
 それに比べれば、まだ遠くまで見通せると言えそうですが、 表10で考察したような、劇的なレベルで遠くを見通せるという可能性が否定されてしまいます。

 視点の高さ1,500〜3,000mまで持ち上げると、 見通せる水平距離は300〜600mになりました。15mマスで20〜40マス、150mマスで2〜4マスに相当。
 右端にも記載してある通り、歩兵部隊/群衆を視認できる最大距離でもあります。
 歩兵部隊/群衆を視認するためには高度=3,000m以下を飛行しなければならない、 という制限については表12と表13でも考察済みでしたが、地表がまばらな樹木で覆われている場合は 見通せる水平距離が300〜600mしかない、という制限も課されてしまう訳で、航空偵察はその視野が狭くなるという事実を思い知らされました。
 地表が樹木で覆われていなければ、見通せる水平距離は3,000m(上記の5〜10倍)はあった筈なのですが。

 視点の高さ5,000〜15,000mまで持ち上がっても、状況は変わりません。
 見通せる水平距離は1,000〜3,000mですから、15mマスで67〜200マス、150mマスで7〜20マス、1,500mマスで1〜2マスに相当します。
 これだけの広い範囲を見通せるようになったのですが、すでに歩兵部隊/群衆を視認することはできなくなりました。
 視点の高さが高くなる程、機甲部隊/車輌砲兵部隊/建物高層建築物を視認できなくなりますので、 航空偵察の中の索敵という側面が意味を失くしてしまうでしょう。



 ここまで考察して今更ながら、表4〜表6で考察した、 地形=4、熱帯雨林、ジャングル地形=5、森、林における最大遭遇距離が、 視点の高さを持ち上げることで大きくなるものかどうか、不安になってきました。
 私は単なる障害物だとしか思っていなかったのですが、植物(樹木)による視線の妨害は、 地上から見通す場合よりも、上空から見下ろす場合の方が影響が大きいのです。
 あたり一面を植物(樹木)が覆っているような地形において、 視点の高さを持ち上げることは、却って視線の妨害を増やすことに繋がっているのかも知れません。
 少しどころではなく、不安です。
 具体的な樹木の高さや分布を考察してみないと断言できませんが、 私が表4〜表6でイメージしていた熱帯雨林、ジャングル、森、林といった地形は、 視点の高さを持ち上げても、最大遭遇距離が変わらないか、 場合によっては、近くなってしまうことが有り得るのです。




(4)雲による視線妨害

 航空偵察を妨害する要因としてもうひとつ、の存在が挙げられるでしょう。

 残念ながら、に関する公式ルールはほとんど見つかりません。
 CT版の冒険型シナリオで、その場所(惑星図マップのヘクス)の天気を決定するルールは存在するのですが、 そのルールで決まるのは天気であり、の有無や状態ではないのです。
 しかし色々と探し回った結果、「CT版:偵察局、p.28」に、雲量表という表が見つかりました。 これを参考にして、偵察機が飛び回る戦場(マップ上)にが存在する可能性について考察してみます。



 「CT版:偵察局」では、以下の表を用いて、 その世界を覆っている雲の存在比率(地表の何%が雲に覆われているか)を決定していました。


            表23 世界に雲が存在する可能性

BW56_Fig23.gif - 5.88KB

 表の左端が世界の水界度
 その右側が、対応する雲量(%)となっています。

 サイコロのような不確定要素が絡むことはありませんが、大気レベルによる雲量修正が存在しました。
 具体的には、
 大気レベルA以上ならば、雲量を+40%する(最大100%)、
 大気レベル3以下ならば、雲量を−20%する(最小0%)、
 大気レベルがEならば、雲量を半分にする、
 という修正です。

 ここで、テラの雲量を求めてみましょう。
 テラの水界度は7ですから、 それに対応する雲量50%でした。
 そしてテラの大気レベルは6ですから、雲量修正はありません。
 よって、テラの雲量は50%になります。

 他にも幾つかの世界で雲量を求めてみましたが、
 水界度が5、大気レベルがA(異種大気)の非水海洋世界カーカは、 雲量修正=+40%雲量=70%
 水界度がA、大気レベルが3(極薄)の海洋世界エキストは、 雲量修正=−20%雲量=50%
 水界度が1、大気レベルが9のパイリーマは、 雲量修正なしで、雲量=0%
 となりました。

 困ったことに、このルールでは水界度=0、大気レベル=Bという金星の如き腐食大気を持った世界で、 雲量100%を再現することができません。
 現実の金星は御存知の通り、雲量100%なのですが、 このルールでは40%にしかならないのです。
 そうした世界を再現したい場合はレフリーの裁量に任される、ということになるのでしょう。



 次に、その世界の雲量(%)から戦場(マップ上)に雲が存在する可能性を決定する、 ハウス・ルールを作ってみました。


         表24 戦場(マップ上)に雲が存在する可能性

BW56_Fig24.gif - 7.06KB

 表の左端は世界の雲量(%)
 表の右側へ示してあるように2D6を振って、戦場(マップ上)の雲の有無を決定します。



 戦場(マップ上)の雲に関しては、3つの状態を想定しました。
 快晴(雲量0%)、晴れ(雲量50%)、曇り(雲量100%)の3つです。

 快晴(雲量0%)は文字通り、雲ひとつない快晴のことです。
 航空偵察を妨げる雲は存在しません。
 そして地表には、容赦なく太陽光が降り注いでいる、ということになるでしょう。

 晴れ(雲量50%)は、見上げた空の半分が雲に覆われた状態です。残り半分は青空ですが。
 航空偵察を雲の上から行った場合は、 ランダムに選んだ地上目標の半分が雲に隠れて見えない状態となるでしょう。
 太陽光も半分は雲に遮られ、地表に降り注ぐ光は半分だけになります。

 曇り(雲量100%)は、空のすべてが雲に覆われています。
 地表から空を見上げても雲しか見えませんし、航空偵察を雲の上から行っても雲の表面しか見えません。
 地上目標のすべて雲に隠れて見えない状態です。
 太陽光が地表に降り注ぐこともありません。

 但し、地形=9砂漠、砂丘、流砂地形=2の一部である極地だけは、 世界の雲量に関係なく、表の一番下砂嵐・吹雪の欄を用いて下さい。
 2D6で10〜12が出れば戦場(マップ)の上空は曇りとなり、地上目標のすべて雲に隠れて見えない状態となります。
 用語統一のためという単語を用いていますが、 それらは風に巻き上げられた砂塵(=砂嵐)や雪(=吹雪)のことです。



 レフリーが望むのであれば、戦場(マップ上)の地形に合わせてDMを適用して下さい。 地形によるDMは以下の通りです。


          表25 雲が存在する可能性の修正値(DM)

BW56_Fig25.gif - 7.84KB

 表の左端は戦場(マップ上)の地形
 その右側が対応するDMです。

 川、小川、浅瀬は、その川が流れている周囲の地形によってDMが決まります。
 空地、道路、開墾地市街地も、 それらの人工物が作られている周囲の地形からDMを求めてください。

 砂漠、砂丘、流砂極地は、 砂嵐吹雪しか発生しないので、DMが関係しません。

 建物、洞窟内は、天候が影響しない環境です。
 戦場(マップ上)の雲を決める必要がないので、DMもありません。



 世界の雲量=50%であるテラの場合、基本的に2D6で2〜5が出れば戦場(マップ)の上空は快晴になります。
 6〜8が出れば晴れ、9〜12が出れば曇りです。
 砂漠、砂丘、流砂極地は例外として平均を取れば、 世界の雲量と同じく、空の50%が雲に覆われるように、 表の数値を設定しました。

 当然ながら、世界の雲量が大きければそれだけ航空偵察がやり難くなります。
 そこで色々な対策が考えられる訳ですが、手っ取り早い解決方法は雲の下を飛ぶこと。
 雲の下を飛ぶのであれば、偵察機は視界を雲に遮られることなく地上目標を視認できるようになる訳です。

 しかし具体的に、高度何メートル以下を飛べば雲の下を飛ぶことになるのでしょう。
 今度は雲の高さを決めるためのハウス・ルールを作ってみました。


         表26 戦場(マップ)上に存在する雲の高さ

BW56_Fig26.gif - 11.2KB

 表の左端は、2D6
 但し、砂漠、砂丘、流砂極地は例外なので、サイコロを振りません。

 その右側が、対応する雲底部の高さ。単位はメートル(m)。
 雲の高さが高度何メートルから始まるか、ということを示した数字です。 高度は対地高度を想定していますが、標高の高い地形や起伏の激しい地形であれば海面からの高度を用いてください。
 サイコロの目が悪いと、高度0メートルから雲が存在することになるので、 当然ながら雲の下を飛ぶことはできません。
 砂嵐吹雪は地表の砂や雪が風に巻き上げられて発生するものですから、 常に高度0メートルから雲(のように視線を遮るもの)が存在することとなります。

 更に右側は、雲頂部の高さで、やはり単位はメートル(m)。
 1D6を振って、その数値に500メートルか1,000メートルを掛けた数字が、雲の厚さになります。
 雲底部の高さに、この数字を足して下さい。
 砂嵐吹雪の場合、掛ける数字は50メートルです。



 例えば、とある戦場(マップ上)に雲が存在して、その高さを決める必要が生じたとしましょう。

 最初に振ったサイコロ、2D6の目は「10」。
 雲底部の高さは、8,000メートルになりました。
 この高さよりも低い高度を飛ぶ偵察機は、雲の影響を受けずに航空偵察を行うことが可能です。

 次に振ったサイコロ、1D6の目は「4」。 この数字に500を掛ければ2,000ですから、雲の厚さは2,000メートル。
 雲底部の高さに2,000メートルを加えれば、雲頂部の高さは10,000メートルです。
 偵察機がこの高さよりも高い高度を飛ぶ場合、地表を視認することが出来ません。
 逆に考えるならば、偵察機が地表から視認されることもないでしょう。



 もしも最初に振ったサイコロ、2D6の目が「4」だった場合、 雲底部の高さは、1,000メートルになりました。
 航空偵察を行う偵察機は、この高さより低い高度を飛ぶことが強いられます。
 地表からの対空砲火が怖い高度ですね。
 次に振ったサイコロ、1D6の目が「3」だったとしても、雲の厚さは3,000メートル。
 雲頂部の高さは4,000メートルになりました。
 偵察機がこの高さよりも高い高度を飛ぶ場合、地表を視認することが出来ません。



 言うまでもありませんが、雲の中を飛行することはとても危険です。 言うまでもなく、砂嵐吹雪の中も同様。
 どうしても航空機が雲の中を飛行しなければならない場合、 その視界を50メートル(距離帯で表すならば中距離)に制限して下さい。
 はっきりと見えるのは5メートル(近距離)までですから、 5〜50メートル(中距離)の目標に対して行う視認や直接照準射撃の行為判定は、難易度がひとつ上がります。
 それ以外にも視界が狭いことによる問題が多発しますので、 雲の中に飛び込んでしまった場合は速やかに高度を上げて、雲の中から脱出するべきでしょう。
 雲の中に飛び込んで高度を下げる行為は、地面に衝突する可能性が高いので、とても危険です。

 地上から航空管制を受けている航空機、あるいは、航空電子機器(Avionics)、全天候型レーダー(All-weather Radar)を使用している航空機は、 雲の中を墜落のリスクなしで飛行できますが、視認や射撃に関するペナルティは上記と同じように受けてしまいます。
 目視以外の視認方法については考察が進んでいませんので、現段階ではそういうことにして下さい。




(5)雨や雪による視線妨害

 基本的に、雲の下を飛ぶのであれば、偵察機は視界を雲に遮られることなく地上目標を視認できる訳ですが、 やはり、幾つかの例外が存在します。
 それは雨や雪。
 雲が存在するのであれば、その雲の下には雨や雪が降っている可能性もあるでしょう。

 それらが降っている場合、その中を飛行する航空機の視界は500メートル(超遠距離)に制限されてしまいます。
 地表に対する航空偵察を行うのであれば、 偵察機は高度500メートル以下を飛行しなければなりませんし、水平方向の視線も500メートルまでしか届きません。
 また、物の姿形がはっきり見えるのは50メートル(中距離)までですから、 50〜500メートル(遠距離超遠距離)の目標に対して行う視認や直接照準射撃の行為判定は、 難易度がひとつ上がります。
 それ以外の問題に関しては、天候に関するハウス・ルールの作成が終わるまでお待ち下さい。



 肝心の雨や雪が降っている可能性ですが、一律に1D6で4+にするか、 あるいは、雲の厚さ÷1,000メートルを基準値として1D6で判定する、ということにしました。

 最初のルールを1D6で4+とした理由は、雨や雪が降るメカニズムをルール化することが極めて困難だと判明したからで、 端的に言ってしまえば思考放棄です。
 水蒸気の発生量や温度変化、雲の発生メカニズム等をルール化することは大変です。
 試しに作ってみましたが、非常に複雑なルールとなることが必然で、 おまけに定量的なデータが見つからないので、確率分布に裏付けのないルールとなってしまいました。
 そんなルールで運用するのであれば、一律に1D6で4+とした方がシンプルで分かり易い、という判断をした訳です。

 後者のルール、雲の厚さ÷1,000メートルを基準値として1D6で判定する、という方法ですが、 これは雲の厚さが厚いほど雨が降り易いという状況を再現してみました。
 例えば、雲の厚さが500メートルならば、雨も雪も降りません。
 雲の厚さが1,000〜1,500メートルならば、1D6で1以下が出れば雨か雪が降ります。
 同じように、雲の厚さが2,000〜2,500メートルならば、1D6で2以下。
 雲の厚さが3,000メートルならば3以下、4,000メートルならば4以下、5,000メートルならば5以下、 6,000メートルならば6以下(確実に雨か雪が降っている)ということです。
 複雑なルールをプレイ可能なレベルまで簡略化した結果がこういったルールなのですが、 低空に浮かぶ厚い雨雲は雨を降らせ易く、高空の層雲は雨を滅多に振らせない、 という状況をある程度は再現できたと思います。



 上記2つのルールのどちらか使い勝手の良い方を、レフリーとプレイヤの皆さんで相談して使って下さい。
 自分自身でもどんなルールにすれば良いのか試行錯誤している最中ですので、何か助言を頂ければ有難く思います。





結論


 今回は、航空偵察の意義と目的、そしてメガトラのルールで再現する方法について考察しました。



 まず、レフリーズ・マニュアル、p.43の遭遇距離表とDMから、 様々な地形における最大遭遇距離について考察してみました。
 トラベラーで定義されている地形には様々な種類が存在しますが、それらの地形での最大遭遇距離は、 中距離(〜50m)から超遠距離(〜500m)、でした。
 この範囲の距離帯より遠くに目標が存在する場合、その目標を視認することはできません。
 遭遇距離表の最大距離=視線の最大距離、という解釈です。
 但し、一部の地形では特例として、上記より1つ遠い距離帯、 遠方(〜5km)最大遭遇距離として想定しました。



 次に、視点を持ち上げることによって、遭遇距離(安全距離)がどう変わるのか、 視認に関するハウス・ルールを作りながら、ちょっと考察してみました。
 地平線までの距離目標のサイズによる視認距離の制限を考慮して、 考察をやり直しています。
 航空偵察を適切に行うための飛行高度や、偵察可能な面積についても面白い結論が出てきました。



 そして最後は航空偵察に不可欠な、上空から地上目標を視認するための行為判定を、 ハウス・ルールとして作成しました。
 実態は「COACC」に掲載されていた、地上目標視認ルールの作り直しですが、 その成功率についても色々な条件で評価を行っています。
 その結果、航空偵察は日中に行うべきである、という当たり前の結論が出てきました。
 また、確実な航空偵察を行うため、偵察機は200km/h以下で飛行しなければならない、ようです。

 航空偵察を妨害する要素として、植物(樹木)を取り上げてみました。
 その結果、密な樹木徹底的に視線を妨害するということ、 まばらな樹木広い範囲で視線を妨害するということ、が判明しています。
 植物(樹木)による視線の妨害は、 地上から見通す場合よりも、上空から見下ろす場合の方が影響が大きくなっていました。
 熱帯雨林、ジャングル、森、林といった地形は、 視点の高さを持ち上げても、最大遭遇距離が変わらないか、 場合によっては、近くなってしまうのかも知れません。

 雲に関しては、その世界に雲が存在する可能性から、 雲の高さ、厚さ、雨や雪が降る可能性まで、 幾つかのハウス・ルールを作成しました。
 の存在によって、空と地上との視線は遮断されます。
 航空偵察は、その実施に大きな制限を受けることになるでしょう。






2014.01.19 初投稿。