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Anti Aircraft Artillery

最強兵器 決定戦
第63回(空軍9)
対空射撃
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MEGA TRAVELLER
 


 

もっとも 手軽対空兵器


 前回の考察「空軍8:対空監視」では、目視やレーダーによる航空目標の視認等について考察を行いました。
 今回は、初歩的な防空手段である対空砲について、考察を行います。



 戦場に航空機(Aircraft)が登場すると、その航空機を利用している陣営は、 敵の陣地を偵察して弱点を見つけたり、あるいは、間接射撃を効果的に誘導して容易く敵部隊を撃破できるようになります。
 歩兵部隊が戦闘を行っている最中、その頭上で機銃掃射を行ったり、爆弾を落としたりすることも、極めて効果的な戦術であると判明しました。
 味方の陣地を偵察されたり、間接射撃を誘導されたり、爆撃されたりしている敵側はもちろん、それを黙って見送ったりなどしません。
 即座に利用できるものを掻き集め、敵の航空機を目掛けて、撃ちまくるようになります。
 これが、対空砲(Ant Aircraft Guns)の初登場。

 当初は、支援火器である機関銃を上に向けて撃つ程度のものしかありませんでした。
 やがて対空仕様の照準器が追加されたり、射撃速度を補うため多銃身化するようになります。
 しかし、いくら照準器を追加して、多銃身化にしたといっても、所詮は機関銃
 最大射程や威力に限界があります。
 必然的に、対空砲は大口径していきました。



 対空砲の発達具合は、脅威対象である航空機の発達に大きく影響を受けています。
 「CT版:傭兵部隊」の記述を参考にして、そのあたりの概略をなぞってみました。

 テックレベル5以上の軍隊ならば、敵側にも航空機の存在が当然となっているため、 最低限、自衛できるだけの対空砲を備えているでしょう。
 それらは、軽機関銃から口径8cm程度の高初速砲まで、様々なサイズと種類が混在しているかも知れません。
 このテックレベルの航空機は装甲を持たないため、 大口径の対空砲は時限信管やVT信管を用いて榴弾(HE)を炸裂させ、 その破片で航空機にダメージを与える、という運用を行っていました。

 テックレベル7になると、ジェット機や回転翼機(ヘリコプター)といった脅威に対応するため、 レーダーを用いた火器管制装置、レーダー誘導式、あるいは赤外線追尾式の対空ミサイルといったものが登場します。
 対空砲は射程不足、命中率の低さが問題となりますが、 それらの問題点を補う筈の対空ミサイルが今ひとつ使い難いため、対空砲が軽視されることはありません。

 テックレベル8になると反重力型輸送機器が登場するようになりました。
 それらの利用はまだ限定的ですが、装甲を備えた航空機が現れたということで、 対空砲の運用方法が大きく変化します。
 従来の航空機は装甲がほとんどありませんでしたから、貫通力1や2の榴弾でも問題なくダメージを与えられました。
 しかし装甲値=4のエアラフトを攻撃するのであれば、貫通力は最低でも4以上が必要。
 従来の榴弾(HE)の破片によるダメージを期待することは出来なくなり、 徹甲弾(AP)を直撃させる必要が生じてしまったという訳です。

 テックレベル10に達すると、多くの車輌が反重力化され、自由に空を飛び回るようになりました。
 通常の野砲も車載砲も、その多くが対空射撃能力を備えています。
 反重力戦車が登場し、それに対抗するための対戦車砲は、強力な対空砲とほぼ同じものだと言えるでしょう。
 強力なプラズマ砲も登場しましたが、移動や射程に制限を抱えているため、従来の対空砲はまだ有用です。

 テックレベル12以上の輸送機器は、航空機と車輌の区別が付かないレベルまで高性能化しました。
 このテックレベルになると、地上目標を攻撃する砲と、航空目標を攻撃する砲の区別もありませんが、 プラズマ砲やフュージョン砲が手軽に利用できるようになったため、従来の対空砲は姿を消します。



 この考察で主に扱う対空砲は、「COACC」のルールとデータを転用したため、 テックレベル5〜9の航空機を攻撃対象とした砲(Guns)になりました。
 プラズマ砲やフュージョン砲による対空射撃は、対戦車砲として考察することにしましょう。
 「COACC」の航空機は基本的に、装甲が無いものとして扱われていますから、 一緒に評価するのは難しいと思われるのです。

 考察の流れは、空から地上を狙い撃つ「空軍5:機銃掃射」と同じような形になると思っていたのですが、 地上から空を狙い撃つという状況は、大きく異なっていました。
 以下をご覧ください。





 目次
    ※対空砲の分類
       (1)対空砲の命中率と最大射程
       (2)小火器による対空射撃
       (3)対空砲による対空射撃
       (4)レーダーと電子妨害の効果
    ※対空射撃の命中率
       (1)小火器(照準器なし)
       (2)小火器(照準器あり)、テックレベル5〜6の火器管制装置
       (3)テックレベル7
       (4)テックレベル8
       (5)テックレベル9〜12
       (6)テックレベル13
       (7)テックレベル14〜15
    ※大きな目標への対空射撃
       (1)小火器(照準器なし)
       (2)小火器(照準器あり)、テックレベル5〜6の火器管制装置
       (3)テックレベル7
       (4)テックレベル8
       (5)テックレベル9〜12
       (6)テックレベル13
       (7)テックレベル14〜15
       (8)トラベラー世界の制空権
    ※対空砲の貫通力とダメージ期待値
       (1)テックレベル5〜6
       (2)テックレベル9
       (3)テックレベル12
       (4)テックレベル14〜15
    ※帝国とソード・ワールズ、ゾダーンとの戦力比
       (1)帝国とソード・ワールズ
       (2)帝国とゾダーン
    ※結論





対空砲の分類


 対空砲(Ant Aircraft Guns)とは、航空機などの航空目標を攻撃するための砲兵器のことです。
 空に向けて撃つことができ、航空機にダメージを与えることができるのであれば、 どんな銃器であっても、例えば歩兵が持ち歩くライフルや機関銃であっても対空砲として使える訳ですが、 移動速度の大きい航空機を追い掛けるための砲架や、専用の照準装置、火器管制レーダーなどを備えた 対空目標専用の対空砲も存在しています。
 それらの対空砲が「COACC」においてどんな扱いを受けているのか、確かめてみましょう。




(1)対空砲の命中率と最大射程

 「COACC」に掲載されている対空砲は、4つのグループに分類されています。

 その分類は、小火器軽対空砲中対空砲重対空砲という大きな括りとなっていますが、その内容については下の表を御覧下さい。

 各種対空砲の命中難易度と最大射程(高度と水平距離)を纏めました。


        表1 各種対空砲の分類(命中難易度と最大射程)

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 表の左端は対空砲の分類
 細かいことは後で説明します。

 その右側が、命中難易度
 「MT版の個人戦闘ルール」は距離帯毎に命中難易度が変わっていますが、 「COACC」は距離帯に関係なく同じ命中難易度を使用していました。
 これは「COACC」のスケールが1マス=500mであり、 射撃距離が最低でも500メートル以上となることに起因しているのでしょう。

 更にその右は、該当する対空砲の最大射程です。
 単位はメートル(m)ですが、マス数は「MT版の個人戦闘ルール」に合わせて1マス=150mで再計算しました。
 単純に射撃距離(垂直方向と水平方向の大きい方)から最大射程を制限するのではなく、 高度(垂直方向の距離)水平距離(水平方向の距離)の両方で、 別々の制限が課されています。
 それぞれの対空砲を差別化するために設定されているのでしょうか?

 表の右端はダメージ
 その対空砲が航空機に命中した際、与えられるダメージの大きさを示しています。
 ダメージの大きさはサイコロの目に左右されますので、あくまで目安にしかなりませんが。



 対空砲の分類ですが、 これについては命中難易度最大射程を絡めて説明した方が分かり易いでしょう。

 まずは小火器による対空射撃(Ground Fire)
 これは歩兵が携帯している、 ライフル軽機関銃といった銃器を用いての対空砲火を意味しています。
 軍の戦闘訓練の中にはきちんと、各自が携帯しているライフルによって、 ジェット機回転翼機を撃ち落とすというプログラムが含まれているので、 決しておかしなことではありません。
 但し、「COACC」の中にも明記されていましたが、 多くの場合、無駄な試みであり、士気を保つためだけの効果しかない、とのこと。
 命中難易度が〈至難:15+〉ですから確かにほとんど命中を期待できませんが、 命中DMが+3以上使えるのであれば、試してみる価値はあるでしょう。
 最大射程は、高度が1,000mで、水平距離が250mです。

 反対に、航空機が小火器による対空射撃を回避する場合(To Avoid Ground Fire)、 その行為判定の難易度は〈易:3+〉でした。
 「COACC」の空対地戦闘ルールによれば、地上部隊の上空1,000メートル以下を通過すると (多くの場合は機銃掃射爆撃の後に、そうしたマスを通過することになるようです)、 その地上部隊から小火器による対空射撃(Ground Fire)を受けることになる、とのこと。
 そして、その対空射撃を回避するために、 難易度〈易:3+〉の行為判定が必要なのだそうです。
 失敗する(命中する)可能性は36分の1(=2.8%)しかないのですが、無視できる大きさではありません。

 次は重機関銃による対空射撃
 大きさによるものか口径によるものか、軽対空砲に分類されている重機関銃ですが、 最大射程(水平距離)が500メートルに制限されているため、別枠へ示しました。

 軽対空砲(Light AAA)は、口径20mm〜30mmのオート・キャノンのことです。
 命中難易度は〈至難:15+〉で、最大射程は高度が1,000mで、水平距離が1,500m。
 前述したように重機関銃も含まれていますが、最大射程が異なるので別枠。

 中対空砲(Medium AAA)は、口径40mm〜60mmの高初速砲、もしくは、オート・キャノンのことを指します。
 命中難易度は〈至難:15+〉のままですが、 最大射程は高度が2,000mに倍増、水平距離は5,000mと3倍まで伸びました。

 重対空砲(Heavy AAA)は、口径80mm〜120mmの高初速砲です。残念ながら、オート・キャノンは含まれておりません。
 命中難易度は〈至難:15+〉のままで、最大射程も中対空砲と同じ数値でした。
 これは何故だろうかと思っていたら、レーダー付きの対空砲というルールがあって、即座に疑問は解決。

 レーダー付きの軽対空砲(Light AAA with Radar)は、 命中難易度が1つ下がって〈難:11+〉に変わります。
 最大射程は高度1,000mで、水平距離1,500mで変わりませんが、命中難易度が下がったことは大きなメリットでしょう。

 レーダー付きの中対空砲(Medium AAA with Radar)も、 命中難易度が1つ下がって〈難:11+〉に変わりました。
 最大射程は高度2,000m、水平距離5,000mと同じままです。

 レーダー付きの重対空砲(Heavy AAA with Radar)は、 命中難易度こそ〈至難:15+〉のままで変わりませんが、 垂直方向の最大射程(高度)が大きく増えました。高度10,000mの目標まで射撃が可能となります。
 中対空砲重対空砲では、レーダーの使い方が違うということなのでしょう。
 もしかしたら、差別化のためにこうしてあるのかも知れません。




(2)小火器による対空射撃(Ground Fire)

 これは歩兵が携帯している、 ライフル軽機関銃を用いた対空砲火です。

 具体的に、それらの貫通力や最大射程を抜粋すると、以下の通りでした。


              表2 小火器の貫通力と射程

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 表の左端はスケール武器名
 表の右側は、距離帯に対応した武器の貫通力です。
 数値がない欄は、射程外を意味しています。



 テックレベル5〜6の世界で一般的に使用されている、 SMG(短機関銃)の射程は遠距離(250m)まで。
 ライフル/オート・ライフルの射程は超遠距離(500m)まで、でした。
 その距離帯での貫通力は「0」か「1」しかありませんが、 ルール上は、これでも高度1,000メートル以下の航空機を目標にして撃てるのだそうです。
 少し納得がいきませんが、そういうことなのでしょう。

 軽機関銃の射程も超遠距離(500m)まで。

 その次は戦闘ライフル磁気ライフル
 戦闘ライフルはテックレベル10から登場。
 磁気ライフルの使用はテックレベル12以降です。
 貫通力がやや大きくなりました。磁気ライフルは遠方(5km)まで銃弾を届かせることが可能です。



 ルール的に、小火器による対空射撃(Ground Fire)の対象となっている銃器は、 表の上半分、磁気ライフルまでだと推測できました。
 と言うのも、「COACC」の中にはこんな記述があるからです。

> 地上砲火は、「速射」として扱われます。
> 地上砲火を実施しているユニットは、
> 1戦闘ラウンドでそれらの武器を空(弾切れ状態)にします。


 単発の射撃では命中し難いので、「速射」を行いなさい、ということのようです。
 しかし「MT版の個人戦闘ルール」において、 「速射」は命中難易度を1つ難しくしてしまう、使い勝手の悪い攻撃方法です。
 「速射」を行うと、却ってダメージ期待値が小さくなってしまう(当たり難くなってしまう)ことは、 考察の42回「海賊いじめ2」でも確認済みでした。
 命中率が低い目標(高速で移動する航空機)に対して「速射」を行うことは、 命中率の点だけでなく、弾薬の有効利用という点で間違っているのです。
 しかも「COACC」の場合、 それだけ(ライフルなら20発、磁気ライフルで40発)の銃弾を消費させておきながら、目標の航空機に命中判定を行える回数は1発だけ。
 高速で移動する航空機を目標にして撃つのですから当然のことだと言えるのでしょうが、あまりにも命中率が悪すぎました。
 「MT版の個人戦闘ルール」を使っているレフリーやプレイヤーにとっては、違和感が強すぎると思われます。

 ちなみにテックレベル5のボルト・アクション式ライフルは装弾数が6発しかありませんので、 射撃6発当たり1回の命中判定が行えるのであれば、妥当な数字だと言えるでしょう。
 デザイナーは、そういった情景を念頭に置いてルールを決めたのかも知れませんから。
 そういうことであるならば、フル・オート射撃ができるオート・ライフル軽機関銃戦闘ライフル磁気ライフルであれば、弾倉1つを空にすることと引き換えに、 通常のフル・オート目標数の数だけ、命中判定の回数を増やしても良いのではないしょうか。
 戦闘ライフルは、20発の弾薬消費と引き換えに命中判定を3回(1回+フル・オート目標数2回)、 磁気ライフルは、40発の弾薬消費と引き換えに命中判定を4回(1回+フル・オート目標数3回)、ということです。
 軽機関銃は速射を行えないというルールですが、 対空射撃は例外で、20発の弾薬消費で3回の命中判定をするようにしたらどうでしょうか。 オート・ライフルを使用した場合と合わせて、バランスを取っておきます。



 反対に、航空機が小火器による対空射撃を回避する場合(To Avoid Ground Fire)は、 DMなしで難易度〈易:3+〉の行為判定を行います。
 地上の歩兵が40人単位で存在していれば、その中にはDM+3以上の兵士が数人居てもおかしくはありません。
 行為判定の失敗は、そうした優秀な兵士の射撃がたまたま命中することを意味しているのでしょう。

 高度1,000メートル以下を飛行する航空機が小火器による対空射撃を受ける、というルールは、 朝鮮戦争やベトナム戦争当時の戦訓に由来しているようです。
 当時、米軍のパイロットは高度1,000メートル以下を飛行すると何処かからいきなり撃たれ、 機体を破損したり、撃墜されたりという被害を受けていたとのこと。
 本当に、それらの航空機が小火器による対空射撃を受けていたかどうかは分かりません。
 存在を発見できなかった軽対空砲の不意討ちを受けていたのではないかと考えられますが、その真偽の確認はできませんし、 小火器であれ軽対空砲であれ、低空を飛ぶ航空機が撃たれていることは事実です。
 プレイ中の緊張感を高めるためには、こういったルールが存在しても良いのかも知れません。



 ほとんど命中することはありませんが、この小火器による対空射撃について、 行為判定の難易度とDMは以下の通りだとします。
 「COACC」のスケール(1マス/1高度レベル=500m)を、 「MT版」のスケール(1マス/1高度レベル=150m)に変更しましたが、難易度とDMはそのままです。

>地上砲火を目標航空機に命中させるためには:
> 〈至難〉、〈適切な銃器技能〉、〈敏捷力〉
>
>レフリー:
> 目標の航空機は、
> 1,000メートル(6レベル)以下を飛行していなければなりません。
> 水平方向の距離は250メートル(2マス)以内でなければなりません。


 命中難易度と射程は、すでに表1で説明した通り。
 +DMは、〈銃器技能〉と〈敏捷力〉の2つです。

 そして、これに航空機の移動DMが加わる訳ですが、「MT版の個人戦闘ルール」と見比べると、 この命中難易度は以下のような状況に当てはまっていることが分かりました。


          表3 小火器の命中難易度表(中距離〜遠方)

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 表の左端は、色々と並んでいますが、一番上はスケール
 その下が命中難易度を決める武器付属品のタイプです。
 ライフルを基本として、ライフル+照準器ライフル+ジャイロライフル+照準器+ジャイロの3タイプを追加。 合わせて4タイプを並べました。
 一番下は移動速度の欄。それぞれの距離帯で適用される移動DMを求めるための移動速度を、 100km/h、200km/h、400km/h、800km/hの4パターンで示しています。

 表の横軸は距離帯です。
 交差する欄を見れば、対応する命中難易度移動DMが分かります。



 「COACC」で定義されている小火器による対空射撃の行為判定は、 「MT版の個人戦闘ルール」では、 ライフルライフル+ジャイロによる超遠距離射撃か、 ライフル+照準器+ジャイロ遠方射撃、に該当するようです。
 「速射」を行っているため、難易度が1つ上がることを前提にしているのかも知れませんが、 その場合は大きな目標を狙い撃つことによって難易度が1つ下がりますから、結局、難易度は変わりません。
 ライフル+照準器の場合は、該当する距離帯が存在しませんでした。

 移動DMの大きさは、目標航空機が400km/hで飛行しているという想定ですが、 −4−2
 このマイナス分を打ち消すためには命中DMが更に+4〜+2必要になるということで、命中はますます難しくなりました。
 仕方のないことですが。
 目標の航空機が回転翼機であり、移動速度0でホバリング(空中停止)しているのであれば 移動DM=0で、命中は易しくなるでしょう。



 キャラクターの持つ銃器と付属品のタイプが明らかになっているのであれば、表3を利用し、命中難易度を求めても構いません。
 一律に〈至難:15+〉と決めつけてしまうよりは、納得しやすい結果が出るでしょう。
 〈難:11+〉〈至難:15+〉のどちらかになる筈です。
 難易度が〈不可能:19+〉になっている条件では、射撃が行えないと言うことにした方が良いかも知れませんが。

 「COACC」の小火器による対空射撃ルールは、 あくまで簡易ルールだと考えるべきなのでしょう。
 実際の適用はテックレベル5〜8のライフル(ボルト・アクション式/セミ・オート式)に限定して、 ジャイロを内蔵している戦闘ライフルなどには適用しない方が良いのかも知れません。
 このテックレベルになると航空機車輌と区別が付かなくなりますので、 それらを目標にした射撃は小火器による対空射撃ではなく、 小火器による対戦車戦闘へと変わってしまうためです。




(3)対空砲による対空射撃(Ground-to-Air Guns)

 対空砲は、航空機を狙い撃つために設計/製造された火砲です。
 メガトラの輸送機器設計ルールにおいて対空砲に転用できる砲兵器は、 高初速砲(High Velocity Gun CPR Rounds)と、 オート・キャノン(Hiah Velocitv Autocannon)の2つしかありません。
 例外は重機関銃速射磁気砲(VRF)の2つだけで、 これらは分類上、軽対空砲の中に含まれています。

 まずは、軽対空砲の性能を見比べてみましょう。


              表4 軽対空砲の性能

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 表の左端が軽対空砲の武器名で、すぐ下に並記されている数字は弾薬1単位の弾数。
 利用できるテックレベルも併記してあります。

 上から順に、重機関銃、口径20mmのオートキャノン速射磁気砲(VRF)を並べました。
 口径20mmのオートキャノンは、単銃身3銃身6銃身と、3つのバリエーションが存在しています。
 航空機関砲として「COACC」に掲載されていた、 口径30mmのオートキャノンは航空機への搭載専用であるらしく、 軽対空砲のグループには含まれておりません。
 口径40mmのオートキャノンを使用可能な砲兵側から見ると、 口径30mmのオートキャノンは中途半端な威力だからであると思われます。

 武器名の右に書かれている数値は出力(kw)で、 その武器を使用するために必要な電力を表しています。
 速射磁気砲だけしかデータがありません。
 他の軽対空砲は反動やガス圧を利用するため、動力(電力)が必要ないのです。
 納得いかないのであれば、20mmのオート・キャノンは銃身1つ当たり5kw(単銃身で5kw、6銃身で30kw)、 という計算で、出力を求めて下さい(これはハウス・ルールです)。

 更に右の欄は容積(Little)重量(kg)
 上段が銃本体のデータ、下段は弾薬(ベルト他)のデータです。
 軽対空砲は牽引式と車載式、両方の使い方がありますので、砲架の容積と重量は含まれておりません。
 もしも牽引式であるならば、重量が3.5倍に増えます。

 その右側は価格(KCr)
 この欄も上段が銃本体のデータ、下段は弾薬(ベルト他)のデータです。
 相変わらず、速射磁気砲は桁違いに高価でした。
 もしも牽引式であるならば、砲架の価格が加算されますので、価格は1.25倍です。

 その右は貫通力/減衰ダメージの欄です。
 HEは榴弾、KEAPは徹甲弾を表す略号ですが、概ね、妥当な数字だと思います。
 ちょっと気になる点は、20mmのオート・キャノンの榴弾貫通力が、 単銃身の場合は「1」、3銃身と6銃身は「2」になっているところでしょうか。
 この違いについてはエラッタも見つかりませんでしたから、 テックレベルの違いが貫通力の違いをもたらしている、と解釈すべきなのだと思われます。 TL7以上の20mmオート・キャノンであれば、単銃身でも榴弾の貫通力を「2」に上げるべきでしょう。
 速射磁気砲の貫通力が圧倒的でした。

 次の射程(km)は様々ですが、「COACC」のルールで、 重機関銃は0.5km(500mマスで1マス)、 オート・キャノンが1.5km(同じくで3マス)です。
 ですから、機関銃は射程を超遠距離(500m)まで、 口径20mmのオート・キャノンは射程を遠方(1.5km)としておきました。
 速射磁気砲だけは射程が超遠方(50km)と、一線を画しております。

 最後のフルオート目標数は、軽対空砲の射撃速度から求めた数値です。
 1回の射撃で、何回の命中判定を追加で行えるかという数字ですが、「COACC」のデータが不自然であることは、 考察の57回「空軍5:機銃掃射」で述べた通りです。
 ですから「レフリーズ・マニュアル、p.82」に記されている「36.フルオート射撃数」の表に従って、修正しました。
 重機関銃は、射撃速度が40発/分。
 単銃身のオート・キャノンは、100発/分。
 3銃身のオート・キャノンは、500発/分。
 6銃身のオート・キャノンは、1,000発/分。
 となっておりますので、御注意下さい。



 次は、ひと回り大きな対空砲、中対空砲の性能です。



              表5 中対空砲の性能

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 表の形式は表4と同じ。

 「COACC」の中に中対空砲として分類されている砲は、 口径40mmと60mmのオートキャノン、2種類だけでした。
 それだけでは詰まらないので、同じ口径の高初速砲を並べ掲載しております。

 出力容積重量価格については空欄が多かったので、「レフリーズ・マニュアル」から補完しました。
 尚、牽引式の対空砲であるならば、重量が3.5倍、価格が1.25倍になることも同じです。

 貫通力/減衰ダメージは、 高初速砲オートキャノンが同じ弾薬を使っているという設定なので、全く同じとなります。

 射程は、口径40mmの高初速砲/オートキャノンが遠方(5km)。
 口径60mmの高初速砲/オートキャノンは超遠方(10km)でした。
 「COACC」のルールでは高度2,000m、水平距離5,000mまでしか届かないというルールですが、 「レフリーズ・マニュアル」のルールでは高度と水平距離が同じだけ、 それぞれ5,000m(=5km)と10,000m(=10km)まで届くことになっているのです。
 このあたりは「COACC」と「レフリーズ・マニュアル」の間で少し矛盾してしまいますから、 対空砲として用いる場合、垂直方向の最大射程(高度)は、水平距離の半分にしてみたらどうでしょうか。
 矛盾点をある程度、緩和できると思います。

 フルオート目標数は、1戦闘ラウンドにクリップ内の全弾を撃ち尽くすという想定で求めました。
 口径40mmのオートキャノンは10発なので、100発/分の欄を見て「3」。
 口径60mmのオートキャノンは5発なので、40発/分の欄を見て「2」ということになります。
 車載式のオートキャノンならば、車輌の弾薬庫から直接給弾を受け、 「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている通り、1,500発/分と930発/分の射撃速度を実現できるでしょう。
 その場合のフルオート目標数は、 口径40mmで「7(射撃速度1,280発/分以上)」、口径60mmで「6(射撃速度640発/分以上)」でした。



 最後は、より大きな対空砲、重対空砲の性能を確かめてみましょう。


              表6 重対空砲の性能

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 表の形式は表4と同じ。

 「COACC」の中で重対空砲に分類されている砲は、 口径80mmと100mm、120mmの高初速砲、3種類です。

 出力容積重量価格は同様に空欄が多く、それらを「レフリーズ・マニュアル」から補完済み。
 牽引式の対空砲は、重量が3.5倍、価格が1.25倍になります。

 貫通力/減衰ダメージは、 大口径の高初速砲なので、それなりに大きくなりました。
 榴弾(HE)であっても貫通力は14〜18で、ちょっとした装甲があっても吹き飛ばしてしまいます。
 ダメージは12〜16ですので、小型航空機が相手なら十分ですが、 一撃で大型航空機を吹き飛ばすには威力不足かも知れません。
 対装甲目標用の徹甲弾(KEAP)は貫通力が28〜33でした。
 装甲値20程度の目標であれば、簡単に貫通できそうです。

 重対空砲射程はすべて超遠方の距離帯までとなっていました。
 km表記だと様々で、口径80mmが16km、口径100mmが20km、口径120mmが22kmという具合。
 「COACC」のルールでは、高度10,000m、水平距離5,000mまでしか届かないというルールになっていますが、 「レフリーズ・マニュアル」のデータを優先すべきでしょう。
 中対空砲と同じように、垂直方向の最大射程(高度)を水平距離の半分にするのであれば、 口径80mmは高度8,000m(=8km)、口径120mmは高度11,000m(=11km)まで届くことになりました。
 少しだけ、リアリティが増すのではないでしょうか。

 口径80mm〜120mmの高初速砲は、テックレベル15になっても最大でも30発/分の射撃速度しか発揮できませんので、 フルオート目標数は付かないということになりました。
 反対に、テックレベル5の口径120mmは射撃速度が8発/分ですので、戦闘ラウンド(6秒)毎に1発というペースの射撃が行えません。
 射撃を行った次の戦闘ラウンドは、再装填のために射撃が行えないということになります。
 実質的な射撃速度は2戦闘ラウンドに1発で、10戦闘ラウンド(1分)当たり5発となってしまいますが、 ゲームのシステム上(スケールが6秒であることから)仕方がないことだと思います。



 軽対空砲〜重対空砲による対空射撃は、その命中判定を以下のような行為判定で解決します。
 「COACC」のスケール(1マス/1高度レベル=500m)を、 「MT版」のスケール(1マス/1高度レベル=150m)に変更しました。

>対空砲を目標航空機に命中させるためには:
> 〈至難〉、〈重火器、あるいは、砲術〉、〈敏捷力〉
>
>レフリー:
> 重対空砲による対空射撃は、
> 〈敏捷力〉の代わりに〈探知機〉技能を+DMとして適用します。
>
> 軽対空砲による対空射撃を行うのであれば、
> 目標の航空機は、1,000メートル(6レベル)以下を飛行しており、
> 水平方向の距離は1,500メートル(10マス)以内でなければなりません。
> 重機関銃を用いているのであれば、
> 水平方向の距離は500メートル(3マス)以内です。
>
> 中対空砲と重対空砲による対空射撃を行うのであれば、
> 目標の航空機は、2,000メートル(13レベル)以下を飛行しており、
> 水平方向の距離は5,000メートル(30マス)以内でなければなりません。
>
> 火器管制装置がレーダーを備えているのであれば、
> 軽対空砲と中対空砲の命中難易度は〈難〉に変わります。
> 重対空砲の命中難易度は変わりませんが、
> より高い高度の目標を撃てるようになりました。
> 具体的には、高度が10,000メートル(66レベル)まで届くようになります。


 命中難易度と射程は、すでに表1で説明した通りですが、ここでも同じ内容を説明しました。
 +DMは、〈銃器技能〉と〈敏捷力〉の2つです。

 そして、これに航空機の移動DMが加わる訳ですが、「MT版の個人戦闘ルール」と見比べると、 この命中難易度は以下のような状況に当てはまっていることが分かりました。


          表7 対空砲の命中難易度表(遠距離〜超遠方)

BW63_Fig07.gif - 11.4KB

 表の形式は表3と同じですが、縦軸は火器管制装置のテックレベル

 表の横軸は距離帯
 重対空砲は特に射程が長いので、中距離(5〜50m)を削り、 超遠方(5〜50km)を追加しました。
 交差する欄は、対応する命中難易度を示しています。



 上のルールで説明した通り、軽対空砲〜重対空砲による対空射撃の命中の行為判定は、 命中難易度が〈至難:15+〉、もしくは、〈難:11+〉でした。
 とある距離帯での命中難易度が〈至難:15+〉であり、 レーダーを使用すると〈難:11+〉に変わる。
 そんな状況でした。

 表7をじっくり見てみると、遠方(500m〜5km)の距離帯が条件に合致しています。
 テックレベル5〜6の火器管制装置は難易度が〈至難:15+〉で、 テックレベル7の火器管制装置は難易度が〈難:11+〉でした。
 テックレベル5〜6の火器管制装置がレーダー無しの火器管制装置であり、 テックレベル7の火器管制装置がレーダー有りの火器管制装置だと想定するならば、 この条件は軽対空砲〜重対空砲による対空射撃にぴったりと当てはまるのです。
 考察の57回「空軍5:機銃掃射」でも似たようなことを書いた覚えがありますが、 対空砲による対空射撃は、 この距離帯遠方(500m〜5km)での射撃を前提にしているのかも知れません。



 あるいは、対空射撃の目標が大型目標(自動車より大きいもの)。 動物なら重量500キログラム以上、ロボットなら機体容量500リットル以上。に分類されており、 命中難易度がひとつ低く(易しく)なる修正を受けている、という可能性も有り得ます。
 〈至難:15+〉〈難:11+〉の命中難易度は、 すでに修正済みの難易度であるのかも知れません。
 その場合、元々の命中難易度〈不可能:19+〉〈至難:15+〉になる筈で、 残念ながら該当する距離帯は見つかりませんでした。
 無理に当て嵌めるのであれば、超遠方(5km〜50km)の距離帯でしょうか。
 レーダー無しはテックレベル5〜8の火器管制装置、 レーダー有りはテックレベル9以上の火器管制装置、ということになりそうです。




(4)レーダーと電子妨害の効果

 「COACC」の地対空戦闘ルールにおける、レーダーと電子妨害の効果について、纏めてみました。


             表8 レーダーと電子妨害の効果

BW63_Fig08.gif - 8.04KB

 表の左端は対空砲の分類

 その右側が、命中難易度で、 左側にレーダー無し、右側にレーダー有りを並べてみました。



 軽対空砲〜中対空砲の命中判定は、
 レーダー無しの場合は難易度〈至難:15+〉
 レーダー有りの場合は難易度〈難:11+〉です。

 レーダーの有無は、対空射撃の難易度をひとつ変えることができました。
 レーダーというものは、それだけ劇的な効果を発揮するものなのです。

 航空機側の視点から考えれば、火器管制装置のレーダーを使用不能にするだけで、 敵の対空射撃の命中率を難易度ひとつ分下げることができる訳ですから、電子妨害の効果も明らかでしょう。



 重対空砲の場合、レーダー有りでも命中判定の難易度は変わりません。
 〈至難:15+〉のままです。
 しかしその代り、射程が伸びました。
 具体的には、垂直方向の最大射程(高度)が2,000メートル(13レベル)から10,000メートル(66レベル)まで増えます。
 レーダー無しでは、高度2,000メートル以下を飛行する航空機しか撃てません。
 高度2,000メートル超を飛行する航空機を狙い撃つためには、レーダー有りの火器管制装置が必須なのです。

 再び、航空機側の視点で考えると、火器管制装置のレーダーを使用不能にするだけで、 高度2,000メートル超を飛行する航空機は、重対空砲で撃たれる可能性が無くなります。
 対空射撃に関しては安全が確保できる訳で、電子妨害が実に有り難いものだと分かりました。



 「COACC」に掲載されていた地対空戦闘ルールから、 対空射撃に該当する部分を抜粋し、「MT版の個人戦闘ルール」と比較しました。
 その結果、小火器による対空射撃の部分は対応するものが見つかりませんでしたから、 この射撃ルールは簡易ルールとして処理されているのだと判断しています。
 その一方で、軽対空砲〜重対空砲による対空射撃は、 テックレベル5〜6の火器管制装置がレーダー無しの火器管制装置に、 テックレベル7の火器管制装置がレーダー有りの火器管制装置に、ぴたりと当てはまることを発見しました。
 レーダーの使用や電子妨害の影響を考えると、より一層、その可能性が高まっています。

 対空砲による対空射撃は、 この距離帯遠方(500m〜5km)での射撃を前提にしているのかも知れませんが、 今度は命中判定について考察を進めていきましょう。





対空射撃の命中率


 此処からは、対空射撃の命中判定に関する考察を行います。

 命中率は、使用する火器のタイプ、火器管制装置のテックレベル、距離帯によって様々に変化していました。
 具体的には、照準器なしの小火器照準器付きの小火器テックレベル5〜6の対空砲による対空射撃テックレベル7の対空砲による対空射撃テックレベル8の対空砲による対空射撃テックレベル9〜12の対空砲による対空射撃テックレベル13の対空砲による対空射撃テックレベル14〜15の対空砲による対空射撃、 8つのパターンに分類できました。
 これらのパターン毎に、命中率が最も高い距離帯を考察していきます。




(1)小火器(照準器なし)

 小火器による対空射撃の命中難易度は、 「MT版の個人戦闘ルール」において、 ライフルライフル+照準器ライフル+ジャイロライフル+照準器+ジャイロ、の4パターンが存在します。
 「COACC」に掲載されているルールはあくまで簡易ルールだと考えられますので、此処では用いません。

 その命中難易度は表3へ示した通りです。

 遠距離(50〜250m)ならば、タイプに関係なく命中難易度が〈難:11+〉

 超遠距離(250〜500m)は、照準器なしの条件、 つまりライフルライフル+ジャイロの2パターンならば、 命中難易度が〈至難:15+〉
 照準器ありの条件、 つまりライフル+照準器ライフル+照準器+ジャイロの2パターンならば、 命中難易度が〈難:11+〉のままでした。

 遠方(500m〜5km)は、ライフルライフル+照準器ライフル+ジャイロの3パターンの命中難易度が〈不可能:19+〉
 ライフル+照準器+ジャイロのパターンだけは、 命中難易度が〈至難:15+〉となります。

 超遠方(5〜50km)の距離帯になると、ほとんどの銃器は撃てません。
 その銃器の射程が超遠方まで届き、照準器ジャイロの双方を相違しているのであれば、 〈不可能:19+〉の難易度で命中判定を行えます。
 超遠方まで届く銃器はほとんど存在しないのですが、重対空砲の命中率と比較する必要があるので、 この距離帯も考察に含めることにしました。



 まずは、照準器なし小火器による対空射撃を評価します。
 この場合、命中難易度は遠距離で〈難:11+〉、超遠距離で〈至難:15+〉、 遠方では〈不可能:19+〉となっていました。

 こうした命中難易度において、距離帯ごとに異なる移動DMを加味すると、実際の命中率は以下のように変化します。
 機銃掃射の場合と同じように、移動速度を100km/h、200km/h、400km/h、800km/hの4段階に分けて、考察してみました。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表9 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig09.gif - 9.23KB

 表の左端が、対空射撃を行う距離帯と、その距離帯における移動DM
 その右側が、対空射撃の命中難易度です。

 表の右側は、銃器技能レベル+敏捷力ボーナス等の+DMによって変化する、対空射撃の命中率です。
 命中に必要な目標値と命中の可能性(%)を並記しました。



 小火器(照準器なし)が、 速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 次点が超遠距離(250〜500m)で、最後が遠方(500m〜5km)です。
 表には載せていませんが、念のため中距離(5〜50m)の命中率を求めたところ、 命中難易度は遠距離と同じ〈難:11+〉、移動DMが「−5」でしたから、 超遠距離(250〜500m)と同じ命中率になっていました。
 最も命中率が高い距離帯が遠距離であることは、中距離を考慮に入れても変わりません。
 小火器(照準器なし)が、 移動速度100km/hの目標に対して対空射撃を行うのであれば、 航空機との距離が遠距離(50〜250m)になる位置で攻撃を行うべきでしょう。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表10 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig10.gif - 9.14KB

 表9と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 その次が超遠距離(250〜500m)で、最後が遠方(500m〜5km)。
 中距離(5〜50m)は移動DMが大き過ぎるので、遠方よりも命中率が悪くなりました。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表11 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig11.gif - 8.82KB

 表9と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 唯一、命中が期待できる距離帯が超遠距離(250〜500m)でした。
 他の距離帯、中距離〜遠距離(5〜250m)、遠方(500m〜5km)では、命中弾を全く期待できません。
 照準器なし小火器による対空射撃が、 速度400km/h以上の航空機を目標とすることは、ほとんど無意味なのです。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表12 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig12.gif - 8.66KB

 表9と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 どの距離帯であっても命中させることは不可能でした。



 小火器(照準器なし)対空射撃を行うのであれば、 航空機の飛行速度が400km/h以下でなければ命中を期待できないことが分かりました。
 速度が400km/hの場合、最も命中率の高い距離帯が超遠距離(250〜500m)ですが、 命中には+DMが「+7」以上必要です。DMが「+7」に満たない場合、対空射撃は命中しません。
 速度が200km/h以下であれば、最も命中率の高い距離帯は遠距離(50〜250m)です。




(2)小火器(照準器あり)、テックレベル5〜6の火器管制装置

 今度は、照準器あり小火器による対空射撃の評価です。

 命中難易度は、表3へ示した通り。

 遠距離(50〜250m)超遠距離(250m〜500m)は、 命中難易度が〈難:11+〉

 遠方(500m〜5km)での命中難易度は、 ライフル+照準器のパターンが〈不可能:19+〉
 ライフル+照準器+ジャイロのパターンが〈至難:15+〉です。
 命中難易度が〈不可能:19+〉の場合は、 前項の小火器(照準器なし)で考察済みですから、今回は考えません。
 ライフル+照準器のパターンで遠方(500m〜5km)の航空機を射撃するのであれば、 前項の表9〜表12を参照して下さい。

 超遠方(5〜50km)で命中難易度は〈不可能:19+〉です。
 ほとんど命中することは無いのでしょうが。



 考察の57回「空軍5:機銃掃射」でも触れましたが、 この命中難易度は、テックレベル5〜6の火器管制装置と同じものとなっていました。
 ですから、この照準器あり小火器による対空射撃の評価は、 テックレベル5〜6の対空砲による対空射撃の評価としても使えます。

 DMの内訳は、〈銃器〉技能レベル+敏捷力ボーナスから、〈砲術〉技能レベル+搭載しているコンピュータ・モデル数の差、に変わりました。
 もちろん戦術ポイントも使用できます。



 早速、航空機の移動速度が100km/hだった場合から考えていきましょう。


       表13 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig13.gif - 9.80KB

 表9と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠距離(50〜250m)で、遠方(500m〜5km)、超遠方(5km〜50km)の順となります。
 上の表にも示したように、超遠方ではほとんど命中しませんでした。
 念のために計算した中距離(5〜50m)は超遠距離と同率でしたが、対空射撃を行うのであればより遠くで行うべきですから問題はありません。
 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度100km/hで飛行する航空機に対して対空射撃を行うのであれば、 航空機との距離が超遠距離(250〜500m)になる位置で攻撃を行うべきです。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表14 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig14.gif - 9.49KB

 表13と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 最後が超遠方(5〜50km)でした。
 中距離(5〜50m)は遠距離より命中率が悪くなっています。
 超遠方と比べれば少しだけ良いのですが。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表15 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig15.gif - 9.16KB

 表13と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠方(500m〜5km)、超遠方(5〜50km)の順となりますが、この速度になるとほとんど命中弾を得られません。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)は、移動DMが大き過ぎて命中不能です。



 最後が、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表16 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig16.gif - 9.07KB

 表13と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 命中DMが「+7」以上でなければ、命中を期待できません。
 最も命中率が高い距離帯はすべて同率で、 超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)が並びます。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)は、今回も移動DMが大き過ぎて命中させることが出来ませんでした。



 小火器(照準器あり)、あるいは、 TL5〜6の対空砲対空射撃を行う場合は、 超遠距離(250〜500m)で行うべきであるという結論が得られました。
 目標の飛行速度にもよりますが、超遠距離が最も命中率の高い距離帯となっております。
 他の距離帯でも同率の命中率を得られることはありますが、基本的には、この距離帯での射撃を心掛けるべきなのでしょう。




(3)テックレベル7

 テックレベル7の火器管制装置が対空射撃を行う場合、その命中難易度は表7より、 遠距離で〈並:7+〉、超遠距離〜遠方で〈難:11+〉、 超遠方で〈不可能:19+〉でした。

 この命中難易度において、距離帯ごとに異なる移動DMを加味すると、実際の命中率は以下のように変化します。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表17 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig17.gif - 9.85KB

 表9と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 次点が遠方(500m〜5km)、その次が超遠距離(250〜500m)。
 最後の超遠方(5〜50km)はほとんど命中を期待できません。
 念のために計算した中距離(5〜50m)の命中率は、遠方と同じでした。
 TL7の対空砲が、速度100km/hの航空機に対空射撃を行うのであれば、 航空機との距離が遠距離(50〜250m)になる位置で攻撃を行うべきである、ということです。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表18 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig18.gif - 9.87KB

 表17と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)の2つでした。
 この2つの距離帯では同じ命中率を得られますから、貫通力の減衰や最大射程のことを考慮するのであれば、 対空射撃の際は遠距離での攻撃を選ぶべきなのでしょうか。
 しかし、対空射撃の目的は味方の被害を未然に防ぐことにもあります。
 そのことを考慮するのであれば、出来る限り遠くで航空機を攻撃するべきであり、遠方を選ぶべきだと思われます。
 次点が僅差で超遠距離(250〜500m)。
 相変わらず、超遠方(5〜50km)と中距離(5〜50m)での対空射撃はほとんど命中しませんが、 中距離の方が、少しだけ命中率は良くなっています。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表19 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig19.gif - 9.49KB

 表17と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)になりました。
 その次が超遠距離(250〜500m)。
 対空射撃を行って、実際に命中弾が得られるのは、この2つの距離帯でしょう。
 3番目に命中率の良い遠距離(50〜250m)は、ほとんど命中を得られません。
 最後の超遠方(5〜50km)も命中DMが「+7」以上でなければ当たりませんが、 DMが「+8」であっても命中を得られない中距離(5〜50m)に比べればマシかも知れませんが。



 最後に、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表20 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig20.gif - 9.23KB

 表17と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)でした。
 命中率が高いと言っても、DM+4で8.3%、DM+8で58.3%ですから、あまり命中とダメージを期待できません。
 その次が同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)でしたが、DM+8で8.3%という命中率。ほとんど命中しないでしょう。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)では命中が有り得ません。 この2つの距離帯で行われる対空射撃は絶対に命中しないのです。



 TL7の対空砲が行う対空射撃について、 距離帯毎に異なる移動DMと、その命中率を求めてみました。

 目標の移動速度が100km/hであれば、対空射撃が最も命中しやすい距離帯は遠距離(50〜250m)です。 他の距離帯、遠方(500m〜5km)と超遠距離(250〜500m)での命中率はほぼ同じでした。
 目標の移動速度が200km/hになると、遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)が同率で一位。 その次が僅差で超遠距離(250〜500m)でした。
 400km/hになると、機銃掃射は遠方(500m〜5km)で最も良く命中するようになります。 超遠距離(250〜500m)では当たり難くなりました。
 800km/hになると命中率は全体的に悪くなりますが、遠方(500m〜5km)でしか命中を期待できません。 超遠距離(250〜500m)の射撃はほとんど当たらず、遠距離(50〜250m)は全く命中しません。

 目標の移動速度に関係なく、超遠方(5〜50km)での射撃はほとんど当たりませんでした。
 命中させるためには最低でも+DMが「+7」以上必要で、それでも2.8%や8.3%しか当たらないという状況です。
 テックレベル5〜6はともかくとして、テックレベル7になっても超遠方での対空射撃がほぼ無意味である、という考察結果は意外でした。
 史実に合致しないような気がしていますが、とりあえず、この問題は棚上げしておきましょう。

 TL7の対空砲が行う対空射撃は、 目標とする航空機の移動速度が200km/h以下の場合は遠距離(50〜250m)で、 移動速度が200km/h以上の場合は遠方(500m〜5km)で行うべきだ、という結論が出たようです。




(4)テックレベル8

 テックレベル8の対空砲対空射撃を行う場合の命中難易度は表7より、 遠距離〜超遠距離で〈並:7+〉、遠方で〈難:11+〉、 超遠方で〈不可能:19+〉でした。
 テックレベル7と比べて変わっているのは超遠距離だけです。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表21 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig21.gif - 9.93KB

 表9と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)となりました。
 超遠距離(250〜500m)の命中難易度が並〈7+〉に変わったおかげです。
 次点が僅差で遠距離(50〜250m)。
 3番目が遠方(500m〜5km)、最後が超遠方(5〜50km)でした。
 中距離(5〜50m)の命中率は、遠方よりも少し悪い程度です。
 テックレベル8になると、対空射撃に最適な距離帯は、 移動速度が100km/hであっても超遠距離(250〜500m)へと変わりました。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表22 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig22.gif - 9.85KB

 表21と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 最後の超遠方(5〜50km)は相変わらず、命中をほとんど期待できません。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表23 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig23.gif - 9.67KB

 表21と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)です。
 その次が遠方(500m〜5km)。
 3番目に命中率の良い遠距離(50〜250m)は、ほとんど命中を得られません。
 最後の超遠方(5〜50km)は、命中DMが「+7」以上あれば、命中する可能性があります。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表24 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig24.gif - 9.27KB

 表21と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で遠方(500m〜5km)と超遠距離(250〜500m)でした。
 超遠方(5〜50km)ならば、命中DMが「+7」以上という条件で命中する可能性が残されていますが、 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)で行われる対空射撃は、絶対に命中しません。
 移動DMが大きくなり過ぎるのです。



 テックレベル7の場合と異なり、TL8の対空砲は、 どんな移動速度であっても、最も命中しやすい距離帯が超遠距離(250〜500m)でした。
 移動速度が800km/hの場合だけ、遠方(500m〜5km)と同じ命中率となっていましたから、 その場合は遠方で行うべきかも知れません。
 テックレベル8になっても超遠方(5〜50km)での対空射撃がほとんど命中しない状況は、実に残念です。




(5)テックレベル9〜12

 テックレベル9以上の火器管制装置で大きく変わった点は、 超遠方(5〜50km)における命中難易度が〈至難:15+〉になったことでしょう。
 中距離〜超遠距離の命中難易度は〈並:7+〉、 遠方の命中難易度は〈難:11+〉のままですが、この変化には大きな期待ができそうです。

 今回も距離帯ごとに異なる移動DMを加味し、 移動速度を100km/h、200km/h、400km/h、800km/hの4段階に分けて、実際の命中率を考察してみました。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表25 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig25.gif - 10.0KB

 表9と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠距離(50〜250m)、3番目が遠方(500m〜5km)、最後が超遠方(5〜50km)となります。
 気になる超遠方の命中率ですが、命中DMが「+3」以上あれば命中するようになりました。
 命中DMが「+8」もあれば7+(58.3%)で命中ですから、もう無駄な射撃ではありません。
 撃てば撃つだけ、目標の航空機にダメージを与えることができるでしょう。
 念のために計算した中距離(5〜50m)の命中率は、遠方よりも少し悪い値でした。
 テックレベル9〜12の場合、目標の移動速度が100km/hであるならば 対空射撃は超遠距離(250〜500m)で行うべきだということです。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表26 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig26.gif - 10.0KB

 表25と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 最後が超遠方(5〜50km)となっています。
 中距離(5〜50m)の射撃は移動DMの影響が大きいため、そして超遠方での命中難易度が改善したため、 超遠方よりも命中率が悪くなってしまいました。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表27 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig27.gif - 9.79KB

 表25と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目が遠方(500m〜5km)、3番目が超遠方(5〜50km)です。
 最後の遠距離(50〜250m)はほとんど命中を得られませんし、中距離(5〜50m)は絶対に命中しなくなりました。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表28 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig28.gif - 9.52KB

 表25と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、 同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)の3つが並びました。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)で行われる対空射撃は、絶対に命中しません (テックレベル12の火器管制装置が中距離の航空機を撃つ場合は命中難易度が〈易:3+〉になるため、 移動DMがどんなに大きくても11+(8.3%)の確率で命中しますが、ここでは棚上げしておきました)。



 TL9〜12の対空砲が行う対空射撃の命中率は、 超遠方(5〜50km)の命中難易度が〈至難:15+〉に変わったことで、これまで大きく変化しました。
 まず何より、超遠方での射撃がそれなりに当たるようになっています。
 超遠方まで届く重対空砲も、この命中率ならば活躍できるでしょう。

 目標の移動速度に関係なく、対空射撃の命中率が最も高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 しかし、目標の移動速度が大きくなる程、遠方(500m〜5km)や超遠方(5〜50km)との差は小さくなり、 目標の移動速度が800km/hの時点では、3つの距離帯の命中率が同じ値で並びます。
 同じ命中率であるならば、敵の航空機はできるだけ遠くで撃破するべきですから、 超遠方の目標を撃てる重対空砲は頼もしい対空兵器となることでしょう。

 撃たれる側の航空機からすると、どんなに飛行速度を上げて移動DMを増やしても、回避行動をとって移動DMを2倍にしても、 超遠方では移動DMが適用されないという、とても困った状況になる訳です。
 テックレベル9以上の対空砲が待ち構えている場所へは、超低空で侵入するか、電子妨害の援護を受けなければ近づけない、と思われます。
 少しだけ、古代テラの史実に近付いたのではないでしょうか。




(6)テックレベル13

 テックレベル13以上の火器管制装置は、超遠方(5〜50km)の命中難易度が〈難:11+〉に変わります。
 他の距離帯に関しては、遠距離〜超遠距離で〈並:7+〉、 遠方で〈難:11+〉ですから、テックレベル9〜12のものと変わりません。
 結局、違いは超遠方の命中難易度だけなのですが、この違いが全体に及ぼす影響は以下の通りでした。



 まずは航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表29 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig29.gif - 10.1KB

 今回も表9と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目が遠距離(50〜250m)。3番目が同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)です。
 ちなみに中距離(5〜50m)は難易度〈易:3+〉で、命中率は超遠距離と同じになっていました。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表30 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig30.gif - 10.0KB

 表29と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目は意外なことに超遠方(5〜50km)。
 3番目が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)でした。
 番外の中距離(5〜50m)は、遠距離よりも命中率が悪くなっています。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表31 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig31.gif - 9.91KB

 表29と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)でした。
 超遠方の命中難易度が〈難:11+〉になった影響なのでしょう。
 意外な結果に思えますが、ある意味、予想できたことでもあります。
 3番目は遠方(500m〜5km)で、最後が遠距離(50〜250m)。
 テックレベル12以上の火器管制装置は中距離の命中難易度が〈易:3+〉になるので、 どんなに不利なDMが累積しても11+(8.3%)の確率で命中が得られます。
 ですから、状況によっては中距離の命中率が、遠距離の命中率よりも良くなる場合が有り得るでしょう。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表32 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

BW63_Fig32.gif - 9.60KB

 表29と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、超遠方(5〜50km)でした。
 遂に超遠方が首位に躍り出るという驚きの事態が発生です。
 2番目は同率で、遠方(500m〜5km)と超遠距離(250〜500m)。
 4番目は遠距離(50〜250m)ですが、この距離帯ではどんなに優秀なパイロットでも決して命中弾を得られません。
 中距離(5〜50m)は先程も述べたように命中難易度が〈易:3+〉になっているため、 最低でも8.3%の確率で命中します。状況によっては、遠方や超遠距離よりも高い命中率になるでしょう。



 TL13の対空砲が行う対空射撃は、 目標の移動速度によって、命中率の高い距離帯が異なっていました。
 移動速度が400km/h以下の場合、最も命中しやすい距離帯は超遠距離(250〜500m)ですが、 移動速度が400km/h以上になると、超遠方(5〜50km)となります。
 目標の移動速度が大きい場合は、超遠距離まで引きつけて撃つよりも、 超遠方の射程内に入った時点で撃ちまくる戦術の方が正しいと分かりました。
 テックレベル13の火器管制装置は、とても優秀なのです。




(7)テックレベル14〜15

 テックレベル14〜15の火器管制装置は、その命中難易度が 中距離〜遠距離で〈易:3+〉、超遠距離〜遠方で〈並:7+〉、 超遠方で〈難:11+〉になりました。
 遠距離と遠方の難易度がひとつ易しくなった訳ですが、その影響を同じ条件で考察してみましょう。



 まずは航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


       表33 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h)

BW63_Fig33.gif - 10.1KB

 今回も表9と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 その次が遠方(500m〜5km)。
 3番目が超遠距離(250〜500m)で、最後が超遠方(5〜50km)です。
 参考のために求めた中距離(5〜50m)の命中率は、3番目の超遠距離と同等でした。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


       表34 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h)

BW63_Fig34.gif - 10.1KB

 表33と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)です。
 3番目が超遠距離(250〜500m)で、最後が超遠方(5〜50km)。
 中距離(5〜50m)の命中率はかなり悪く、超遠方の命中率よりも下でした。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


       表35 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h)

BW63_Fig35.gif - 10.0KB

 表33と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)でした。
 その次が同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)。
 最後が遠距離(50〜250m)になっています。
 テックレベル14以上になると中距離〜遠距離での命中難易度が〈易:3+〉になるため、 どんなに不利な条件でも11+(8.3%)の確率で命中が得られるようになりました。
 しかしそれでも、遠方や超遠方の方が命中率が高い、という事実に驚きを隠せません。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


       表36 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h)

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 表33と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)でした。
 3番目が超遠距離(250〜500m)。
 最後の遠距離(50〜250m)は命中難易度が〈易:3+〉ですから、 条件によっては超遠距離よりも命中率が良くなりますが、やはり超遠方と遠方の命中率には敵いません。
 中距離(5〜50m)も同様です。



 TL14〜15の対空砲が行う対空射撃は、 目標の移動速度によって、最適な距離帯が目まぐるしく変化していました。

 移動速度が100km/hの場合、最も命中しやすい距離帯は遠距離(50〜250m)です。 遠方(500m〜5km)や超遠方(5〜50km)の命中率は若干劣っていましたが、この移動速度で遠距離の命中率が異様に高いことに起因しています。 他の距離帯の命中率が特に悪いということもないでしょう。
 移動速度が200km/hの場合、最も命中しやすい距離帯は同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)の2つでした。 3番目が僅差で超遠距離(250〜500m)、超遠方(5〜50km)は4番目ですが、それほど大きな差異はありません。
 移動速度が400km/hの場合、最も命中率の良い距離帯は遠方(500m〜5km)で、 次点が超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)の2つ。4番目が遠距離(50〜250m)でした。
 移動速度が800km/hの場合、最も命中率の良い距離帯は超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)の2つで、 3番目が超遠距離(250〜500m)、という具合です。

 テックレベル14〜15の火器管制装置も優秀な能力を備えておりますので、対空射撃に関しては、 できるだけ遠くで(超遠方や遠方で)早めに敵を迎撃する、という攻撃パターンが正しいと言えるでしょう。
 目標の移動速度が大きい場合は、テックレベル13の火器管制装置と同じように、 超遠距離まで引きつけて撃つよりも、超遠方の射程内に入った時点で撃ちまくることの方が正しいのです。





大きな目標への対空射撃


 テックレベル13以上の火器管制装置にとって超遠方(5〜50km)は、 対空射撃が最も当たり易い距離帯となっていました。
 テックレベル9〜12の火器管制装置にとって超遠方は、 対空射撃が当たらないこともないのですが、それほど命中率の高い距離帯という訳ではありません。
 超遠方(250〜500m)の方が、効率良く命中する距離帯です。
 テックレベル8以下の火器管制装置にとって超遠方は、対空射撃の命中がほとんど期待できない距離帯です。
 端的に言ってしまえば、撃つだけ無駄といったところでしょうか。
 最低限の命中を得るためであっても命中DMが「+7」以上必要だという条件は、達成困難です。

 しかし良く考えてみれば、航空機というものは基本的に大きな目標として扱えるのではないでしょうか。
 その条件に合致するのであれば、命中難易度がひとつ下がり、対空射撃はより命中し易くなる筈です。

 「プレイヤーズ・マニュアル、p.71」には、

> 大型目標(自動車より大きいもの)。
> 動物なら重量500キログラム以上、ロボットなら機体容量500リットル以上。


 を目標とした射撃は、その命中難易度がひとつ低く(易しく)なるというルールが存在しますから、 一般的な航空機は大きな目標として扱えることは間違いないようです。



 何度も書いていますが、HJ版のルールには誤訳が存在しました。
 「自動車より大きいもの」の原文は「groundcar-size or larger」ですから、 この部分は「自動車と同じ大きさか、より大きいもの」と訳さなければなりません。
 正しい訳語は「自動車と同じ大きさか、より大きいもの」です。御注意下さい。



 大型目標を射撃する際は命中難易度がひとつ下がる というルールを適用して、表7の命中難易度表を作り直しました。
 その実態は、以下の通りとなります。


     表54 火器管制型の命中難易度表(遠距離〜超遠方:大きな目標)

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 表7を作り直した、大きな目標を狙った場合の命中難易度表です。
 表の上端は距離帯
 その下に「ライフル」関連の命中難易度
 下半分は様々なテックレベルにおける「火器管制型」の命中難易度

 大きな目標を狙うことで、命中難易度が〈易:3+〉となる距離帯が大幅に拡大しました。

 テックレベル7は遠距離まで。
 テックレベル8〜13は超遠距離まで。
 そしてテックレベル14以上は遠方まで、といった具合です。

 命中難易度が元から〈易:3+〉だった部分は赤字で表現しました。
 元から命中難易度が〈易:3+〉だった距離帯は、 難易度が上昇する要因が存在しても、例えば「狙い撃ち」を行っても、 命中難易度は〈易:3+〉のままである、ということです。
 ただし難易度の上昇要因が2つ以上重なっている場合、 例えば更に「速射」を行うような場合は、順当に難易度が上がっていくものとしました。
 難易度の上昇要因がひとつ打ち消される、と解釈して頂けば問題ないでしょう。

 この難易度表を使って、様々なテックレベルの火器管制装置、様々な移動速度の航空機に対して行われる、 対空射撃の命中率を再評価してみました。




(1)小火器(照準器なし)

 照準器なし小火器による対空射撃の命中難易度は、 大きな目標を狙う場合、遠距離で〈並:7+〉、 超遠距離で〈難:11+〉、遠方で〈至難:15+〉に変わりました。
 この命中難易度において、距離帯ごとに異なる移動DMを加味した場合の命中率を、 移動速度=100km/h、200km/h、400km/h、800km/hの4段階に分けて、考察してみます。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表38 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

BW63_Fig38.gif - 9.56KB

 表の左端が、対空射撃を行う距離帯と、その距離帯における移動DM
 その右側が、対空射撃の命中難易度です。

 表の右側は、銃器技能レベル+敏捷力ボーナス等の+DMによって変化する、対空射撃の命中率です。
 命中に必要な目標値と命中の可能性(%)を並記しました。



 小火器(照準器なし)が、 速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)であることは変わりません。
 次点が超遠距離(250〜500m)で、最後が遠方(500m〜5km)であることも同じです。
 中距離(5〜50m)の命中率は、超遠距離(250〜500m)と同じ命中率でした。
 小火器(照準器なし)が、 移動速度100km/hの目標に対して対空射撃を行うのであれば、 目標との距離が超遠距離〜中距離(50〜500m)のいずれであっても、それなりに効果が期待できます。

 具体的な命中率は難易度がひとつ下がったおかげで大幅に向上しており、航空機の移動速度が100km/h程度であれば、 照準器なし小火器による対空射撃であっても、 多くの命中弾を与えることができるでしょう。
 飛行速度が100km/hといった低速飛行(NOE飛行?)を行っている回転翼機、 100km/hしか速度を出せないのエアラフトGキャリアーは、 歩兵部隊から小火器による対空射撃を受けた場合、かなり大きな被害を受けそうです。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表39 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

BW63_Fig39.gif - 9.52KB

 表38と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 その次が超遠距離(250〜500m)で、最後が遠方(500m〜5km)。
 中距離(5〜50m)は移動DMが大き過ぎるので、遠方よりも命中率が悪くなりました。
 命中を期待できる距離帯は、超遠距離から遠距離(50〜500m)の範囲でしょう。
 遠方と中距離も命中は可能ですが、ほとんど命中しません。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表40 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

BW63_Fig40.gif - 9.16KB

 表38と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 他の距離帯、遠距離(50〜250m)と遠方(500m〜5km)であっても、命中の可能性はあります。
 大きな目標を狙い撃つのであれば、 照準器なし小火器による対空射撃が、 速度400km/h以上の航空機を目標とすることも、決して無意味ではありません。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表41 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

BW63_Fig41.gif - 8.97KB

 表38と同じ形式です。



 小火器(照準器なし)が、 速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合は、 命中DMが「+7」以上という条件で、超遠距離(250〜500m)と遠方(500m〜5km)においてのみ有効です。
 それ以外の条件では、どうやっても命中させることはできませんでした。
 ほとんど無意味だということですが、


 小火器(照準器なし)による対空射撃は、 大きな目標を狙うことによって、 航空機の飛行速度が800km/h以下であれば命中を期待できるようになりました。
 速度が200km/h以下であれば、最も命中率の高い距離帯は遠距離(50〜250m)。
 速度が400km/hであれば、最も命中率の高い距離帯は、超遠距離(250〜500m)に変わります。
 速度が800km/hの場合、命中を期待できる距離帯は、超遠距離(250〜500m)と遠方(500m〜5km)の2つしかありません。 そして命中には+DMが「+7」以上必要であり、DMが「+7」に満たない場合、対空射撃は命中しません。




(2)小火器(照準器あり)、テックレベル5〜6の火器管制装置

 今度は、照準器あり小火器による対空射撃の評価です。

 命中難易度は表37へ示した通りですが、大きな目標を狙っているため、 遠距離(50〜250m)超遠距離(250m〜500m)が、 〈並:7+〉に。
 遠方(500m〜5km)〈難:11+〉
 超遠方(5〜50km)〈至難:15+〉に変わりました。

 ライフル+照準器の組み合わせは、 遠方(500m〜5km)の命中難易度が〈至難:15+〉となっていますが、 その場合は前項の小火器(照準器なし)を参照して下さい。



 この命中難易度は、テックレベル5〜6の火器管制装置と同じものとなっていましたから、 この照準器あり小火器による対空射撃の評価は、 テックレベル5〜6の対空砲による対空射撃の評価としても使えます。
 DMの内訳は、〈銃器〉技能レベル+敏捷力ボーナスから、〈砲術〉技能レベル+搭載しているコンピュータ・モデル数の差、に変わりました。
 もちろん戦術ポイントも使用できます。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表42 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

BW63_Fig42.gif - 10.2KB

 表38と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)のままでした。
 その次が遠距離(50〜250m)で、遠方(500m〜5km)、超遠方(5km〜50km)の順となっています。
 順番は変わりませんでしたが、大きな目標を狙っているため、 超遠方でもそれなりの命中率を発揮できるようになりました。
 命中には+DMが「+3」以上必要ですが、「+4」ならば命中率が11+(8.3%)、 「+8」ならば7+(58.3%)という高い命中率を示しているのです。
 最も命中率の高い距離帯が超遠距離(250〜500m)だという事実に変わりはありませんが、 他の距離帯でも高い命中率が得られるようになった=他の距離帯の対空射撃も有効になった、 という事実は大きいでしょう。

 100km/hの速度で飛行しているエアラフトGキャリアーは、 歩兵部隊との距離が遠方から超遠距離(250m〜5km)であっても、大きな被害を受けそうです。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表43 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

BW63_Fig43.gif - 10.1KB

 表42と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 最後が超遠方(5〜50km)でした。
 中距離(5〜50m)は遠距離より命中率が悪くなっています。
 超遠方と比べれば少しだけ良いのですが。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表44 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

BW63_Fig44.gif - 10.0KB

 表42と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠方(500m〜5km)、超遠方(5〜50km)の順となりましたが、 難易度がひとつ下がったおかげで、+DMが大きければ、まだ命中を期待できます。
 遠距離(50〜250m)は、移動DMが大き過ぎて命中不能です。
 中距離(5〜50m)は命中難易度が〈易:3+〉に変わったため、 どんなに悪い条件であっても11+(8.3%)の命中率が保障されるようになりました。
 +DMが小さい場合は、遠方と同程度の命中率を発揮できるでしょう。



 最後が、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表45 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

BW63_Fig45.gif - 9.66KB

 表42と同じ形式です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 命中DMが「+3」以上であれば、命中を期待できるようになりました。
 最も命中率が高い距離帯はすべて同率で、 超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)が並びます。
 遠距離(50〜250m)は今回も移動DMが大き過ぎて命中させることが出来ません。
 中距離(5〜50m)は11+(8.3%)の命中率が保障されています。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 最も命中率の高い距離帯は超遠距離(250〜500m)ですが、他の距離帯もそれなりの命中率が得られるようになりました。
 目標の移動速度が200km/h以下の場合は、遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)も高い命中率です。
 目標の移動速度が400km/h以上の場合は、超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)の命中率が良くなっています。

 大きな目標を狙うことで、 超遠方における命中難易度が〈至難:15+〉に変わりました。
 移動DMの影響を全く受けない超遠方の射撃が、命中DM「+3」でも命中するようになったおかげで、 超遠方まで届く重対空砲が、その存在意義が大きく主張できるようになっています。
 重対空砲は超遠方の航空機に向かって対空射撃を行い、 射程の短い軽〜中対空砲が超遠距離〜遠方での対空射撃を担当する。
 TL5〜6の対空砲は、そういった使い分けがなされていることでしょう。




(3)テックレベル7

 テックレベル7の火器管制装置が大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 その命中難易度は表37より、遠距離で〈易:3+〉、超遠距離〜遠方で〈並:7+〉、 超遠方で〈至難:15+〉に変わりました。

 この命中難易度において、距離帯ごとに異なる移動DMを加味すると、実際の命中率は以下のように変化します。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表46 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

BW63_Fig46.gif - 10.2KB

 表38と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠距離(50〜250m)でした。
 命中難易度が〈易:3+〉に変わったので、その命中率は極めて高いものとなっています。
 次点が遠方(500m〜5km)、その次が超遠距離(250〜500m)。
 この距離帯も命中率も高いので、TL7の対空砲に狙われた航空機は、この距離帯で撃破されてしまうことでしょう。
 最後の超遠方(5〜50km)は少し命中率が良くなりました。
 念のために計算した中距離(5〜50m)の命中率は、超遠距離と同じです。
 TL7の対空砲が、速度100km/hの航空機に対空射撃を行う場合は、 遠方から超遠距離(250m〜5km)で攻撃が始まって、遠距離(50〜250m)では確実に撃破されている、というパターンになりそうです。



 次は、航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表47 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

BW63_Fig47.gif - 10.2KB

 表46と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)でした。
 次点が僅差で超遠距離(250〜500m)。
 大きな目標を狙っていることもあって、 遠方から超遠距離(50m〜5km)の命中率は、安定して高い数値となっています。
 超遠方(5〜50km)の命中率は難易度ひとつ分だけ悪いといった感じですが、命中しない訳ではありません。 対空砲の射程が届くのであれば、早期撃破や牽制を目的として、積極的な射撃が行われる筈です。



 次は、航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表48 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

BW63_Fig48.gif - 10.1KB

 表46と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)になりました。
 その次が超遠距離(250〜500m)、3番目が遠距離(50〜250m)で、4番目が超遠方(5〜50km)です。
 近付かれれば近付かれるほど命中率が落ちていきますので、 対空射撃は超遠方か遠方で始まり、命中弾の多くは遠方で得られる、ということになるでしょう。



 最後に、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表49 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

BW63_Fig49.gif - 10.0KB

 表46と同じ形式です。



 TL7の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)。
 次点は同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)。
 遠距離(50〜250m)は命中が有り得ませんが、中距離(5〜50m)は11+(8.3%)の命中率が保障されています。

 TL7の対空砲は、超遠方(5〜50km)で対空射撃を開始。
 命中率が最も高くなる遠方(500m〜5km)で対空射撃は最も激しくなりますが、撃たれるのは超遠距離(250〜500m)まで。
 遠距離(50〜250m)より内側に飛び込まれたら(接近されたら)諦める。
 という射撃パターンが正しい戦術でしょう。
 機銃掃射爆撃を終えた航空機に対しては、 距離が超遠距離(250〜500m)になるのを待って、背後から対空砲を撃ち込んでやるべきです。
 そうしなければ、命中を期待できませんので。



 大きな目標を狙っているため、TL7の対空砲であっても、 超遠方(5〜50km)の射撃がそれなりに効果のあるものとなりました。
 対空砲が届くのであれば、超遠方から目標への対空射撃を開始するべきです。
 最も命中率の高い距離帯は遠方(500m〜5km)ですから、 防空網は、遠方に火力を集中できるように構成されるべきでしょう。

 表9〜表36までの考察で、テックレベル5〜8の対空砲が超遠方の目標に対して行う対空射撃はほぼ無意味である、 という哀しい結論が出ていた訳ですが、 大きな目標の難易度修正を考慮したことで、この問題は解決したと言えそうです。
 史実にも合致していますので、問題はありません。




(4)テックレベル8

 テックレベル7の火器管制装置が大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 その命中難易度は表37より、遠距離〜超遠距離で〈易:3+〉、遠方で〈並:7+〉、 超遠方で〈至難:15+〉に変わりました。
 テックレベル7と比べて命中難易度が異なっている距離帯は、超遠距離だけです。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表50 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

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 表38と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)です。
 次点が僅差で遠距離(50〜250m)。
 3番目が遠方(500m〜5km)、最後が超遠方(5〜50km)でした。
 目標の移動速度が100km/hである場合、対空射撃に最適な距離帯は、超遠距離から遠距離(50〜500m)ですが、 遠方(500m〜5km)の命中率が悪いという訳ではありません。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表51 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

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 表50と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 対空射撃は主に、遠方から遠距離(50m〜5km)の間で行われている筈ですが、 超遠方(5〜50km)でも命中が期待できるようになりました。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表52 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

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 表50と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)です。
 その次が遠方(500m〜5km)。
 3番目に命中率の良い遠距離(50〜250m)は命中率が下がりましたが、まだまだ高い値を保っています。
 最後の超遠方(5〜50km)で命中に必要なDMは「+3」以上。
 すべての距離帯で命中を期待できますが、効果のある対空射撃は 遠方から超遠距離(250m〜5km)の範囲内で行われていることでしょう。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表53 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

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 表50と同じ形式です。



 TL8の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で遠方(500m〜5km)と超遠距離(250〜500m)でした。
 超遠方(5〜50km)でも命中DMが「+3」以上あれば命中を期待できますので、積極的な射撃を行うべきでしょう。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)で行われる対空射撃は、 移動DMが非常に大きくなっているため通常ならば絶対に命中しないところですが、 命中難易度が〈易:3+〉になっているため、 最低でも11+(8.3%)の命中率が保障されるようになりました。



 TL8の対空砲は、どんな移動速度であっても、最も命中しやすい距離帯が超遠距離(250〜500m)でした。
 その傾向に変化はないのですが、大きな目標を狙っていることで、命中率が全体的に上がっています。
 移動速度が200km/h以下の場合は、遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)も命中率が高くなっており、 移動速度が400km/h以上になると、遠方(500m〜5km)が同じように高い命中率となっていました。
 テックレベル8であっても、対空射撃が最も激しく行われる距離帯は 遠方から超遠距離(250m〜5km)である、ということに変わりはありません。
 超遠方(5〜50km)の対空射撃もそれなりに命中するようになりましたし、この距離帯は移動DMの影響を受けませんから、 超遠方まで対空砲が届くのであれば、この距離帯でも積極的な対空射撃が行われることでしょう。




(5)テックレベル9〜12

 テックレベル9以上の火器管制装置になると、 超遠方(5〜50km)における命中難易度が〈至難:15+〉に変わります。
 大きな目標による修正を加えれば、命中難易度は〈難:11+〉
 中距離〜超遠距離の命中難易度は〈易:3+〉で、 遠方の命中難易度は〈並:7+〉のまま。
 テックレベル8のものと比べて違っている距離帯は超遠方だけですが、この変化がどんな影響を及ぼすのか確かめてみましょう。

 今回も距離帯ごとに異なる移動DMを加味し、 移動速度を100km/h、200km/h、400km/h、800km/hの4段階に分けて、実際の命中率を考察してみました。



 まずは、航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表54 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

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 表38と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠距離(50〜250m)、3番目が遠方(500m〜5km)、最後が超遠方(5〜50km)となります。
 肝心の、超遠方における命中率ですが、命中DMが「−1」以上あれば命中するようになりました。
 命中DMが「+2」でも9+(27.8%)、 「+4」でも7+(58.3%)ですから、決して無駄な射撃だとは言えないでしょう。
 超遠距離や遠距離の命中率が極端に高いのでそちらに注目してしまうのでしょうが、 この命中率があれば一方的な超遠方からのアウトレンジ攻撃が可能となります。
 この事実が空軍戦略に与える影響は極めて大きいと思われますが、とりあえず棚上げしておきました。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表55 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

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 表54と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 最後が超遠方(5〜50km)となっています。
 対空射撃は超遠方(5〜50km)から開始され、遠方(500m〜5km)になると激しくなり、 超遠距離(250〜500m)へ到達した航空機は即座に撃墜されるでしょう。
 命中率が高くなったため、対空射撃の情景はこんな感じになる筈です。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表56 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

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 表54と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目が遠方(500m〜5km)、3番目が超遠方(5〜50km)です。
 最後の遠距離(50〜250m)はほとんど命中を得られません。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表57 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

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 表54と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、 同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)の3つが並びました。
 遠距離(50〜250m)と中距離(5〜50m)で行われる対空射撃は、 命中難易度が〈易:3+〉になっているため、 移動DMがどんなに大きくても最低限、11+(8.3%)の命中率が保障されています。



 TL9〜12の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 超遠方(5〜50km)での命中難易度が〈難:11+〉に変わった影響は極めて大きいと言えるでしょう。
 命中DMが「+2」でも9+(27.8%)、「+4」でも7+(58.3%)ですから、 これだけの命中率があれば前述したように、一方的な超遠方からのアウトレンジ攻撃が可能となります。
 航空機は、それがどんなに高速で飛行していても(1,200km/hを超える超音速であっても)、 対空射撃によって超遠方(5〜50km)で撃墜される可能性が高いことが判明しました。
 テックレベル9以上の世界においては地対空ミサイルの登場を待つまでもなく、 航空機による敵地への高空侵入は否定されているということでしょう。
 航空機が敵地へ侵入するためには、地形(地平線)を利用した超低空侵入しか残されていない、ということなのですが、 空軍戦略の転換を強いる存在が、地対空ミサイルではなく、 TL9以上の対空砲だという点が少し納得いきません。
 テックレベル8で登場する質量投射砲(Mass Driver Guns)や、 テックレベル10で登場する高エネルギー兵器のことを考えてみると、 やはりトラベラー世界には地対空ミサイルの存在価値が無いと納得できないこともないのですが。

 対空射撃が超遠方(5〜50km)で有効になっているとしても、 その砲火を潜り抜けた航空機は、遠方(500m〜5km)や超遠距離(250〜500m)まで飛び込んできます。
 あるいは電子妨害等によって、超遠方での対空射撃を受けずに接近してきたのかも知れません。
 そうした場合であっても、対空射撃は遠方や超遠距離で高い命中率を発揮するでしょう。




(6)テックレベル13

 テックレベル13以上の火器管制装置は、超遠方(5〜50km)の命中難易度が〈難:11+〉に変わります。
 大きな目標による修正を加えれば〈並:7+〉になる訳ですが、 テックレベル5〜6の火器管制装置を見慣れている私からすれば、羨ましい限りです。
 この命中難易度によって、どれだけ高い命中率を得られるのか、考察が楽しみになりました。

 他の距離帯に関しては、遠距離〜超遠距離の命中難易度が〈易:3+〉、 遠方での命中難易度が〈並:7+〉となります。
 テックレベル9〜12の火器管制装置と異なるのは、超遠方だけでした。



 まずは航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表58 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

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 今回も表38と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠距離(50〜250m)。3番目が同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)です。

 超遠方と遠方の命中率は極めて高く、命中DMが「+2」でも5+(83.3%)、 「+4」では3+(97.2%)にまで達していました。
 これは、TL7〜8の対空砲による遠方(500m〜5km)の射撃、 TL5〜6の対空砲による超遠距離(250m〜500m)の射撃にほぼ等しい命中率です。
 TL13以上の対空砲に狙われた航空機は、その射程内へ入った途端に射撃を受け、 極めて短時間に多くの命中弾を受けて撃破される、という運命が確定してしまいました。
 これを防ぐためには、電子妨害で照準されないようにする、地形を利用して撃たれないように隠れる、 などといった対策しか有り得ないのではないでしょうか。

 ちなみに中距離(5〜50m)は難易度が〈易:3+〉でしたが、 移動DMの影響が大きいため、命中率は遠方や超遠方よりも悪い数値になっていました。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表59 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

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 表58と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目は超遠方(5〜50km)で、3番目が同率で遠方(500m〜5km)と遠距離(50〜250m)。
 他の距離帯の命中率が目標の移動速度に比例して下がっていくのに対し、超遠方は移動DMの影響を受けないため命中率が変わりません。
 目標の移動速度が大きい程、超遠方の命中率が有利になっていく訳です。
 テックレベル13の火器管制装置は、遠距離と超遠方の命中難易度が1つしか違わないので、 ほんの少し移動DMが増えるだけでも命中率の優劣が逆転してしまうのでしょう。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表60 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

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 表58と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)でした。
 3番目は遠方(500m〜5km)で、4番目が遠距離(50〜250m)。
 最後の遠距離だけはあまり命中しませんが、他の距離帯はすべて高い命中率になっていました。
 テックレベル13の火器管制装置に狙われた目標は、どんなに速度を出しても、その射撃を躱しきれないということです。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表61 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

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 表58と同じ形式です。



 TL13の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、超遠方(5〜50km)でした。
 2番目が同率で、遠方(500m〜5km)と超遠距離(250〜500m)。
 4番目は遠距離(50〜250m)。命中難易度が〈易:3+〉になっているため、 最低でも8.3%の確率で命中しますが、それでも命中率の順位は4番でした。
 それだけ、他の距離帯の命中率が高いということなのでしょう。



 TL13の対空砲大きな目標に対して行う対空射撃は、 それが超遠方(5〜50km)で行われているとしても、極めて高い命中率を発揮していました。
 超遠方における命中率は、命中DMが「+2」でも5+(83.3%)、 「+4」では3+(97.2%)という高水準です。
 TL9〜12の対空砲の項でも同じようなことを書きましたが、 テックレベルが13になれば更に一方的な超遠方からのアウトレンジ攻撃が可能となるようです。
 対抗手段は電子妨害か地形の活用ぐらいしかありませんので、手数の多さが勝敗を決めるのでしょう。
 テックレベル13の火器管制装置は、とても優秀でした。




(7)テックレベル14〜15

 テックレベル14〜15の火器管制装置が大きな目標を狙い撃つ場合、その命中難易度は 中距離〜遠距離で〈易:3+〉、超遠距離〜遠方で〈易:3+〉、 超遠方だけが〈並:7+〉となりました。
 遠距離と遠方の難易度がひとつ易しくなった訳ですが、その影響を同じ条件で考察してみましょう。



 まずは航空機の移動速度が100km/hだった場合から。


    表62 対空射撃の命中率(移動DMの影響:100km/h:大きな目標)

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 今回も表38と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度100km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)でした。
 ほとんど差はありませんが、2番目が超遠距離(250〜500m)、3番目が遠距離(50〜250m)です。
 最後が超遠方(5〜50km)。
 移動速度が100km/hしかない場合、移動DMが小さいため、超遠方の利点が活かされないということですね。
 それでも中距離(5〜50m)の命中率は、超遠方より悪い命中率になっているのですが。



 次は航空機の移動速度が200km/hだった場合。


    表63 対空射撃の命中率(移動DMの影響:200km/h:大きな目標)

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 表62と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度200km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)で、2番目が超遠距離(250〜500m)でした。
 3番目は超遠方(5〜50km)で、4番目が遠距離(50〜250m)です。
 中距離(5〜50m)の命中率はかなり悪く、遠距離の命中率よりずっと下でした。



 次は航空機の移動速度が400km/hだった場合。


    表64 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

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 表62と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は遠方(500m〜5km)でした。
 その次が同率で超遠方(5〜50km)と超遠距離(250〜500m)です。
 最後が遠距離(50〜250m)でした。
 テックレベル14以上になると超遠距離〜遠方での命中難易度が〈易:3+〉に、 中距離〜遠距離での命中難易度が〈易:3+〉になるため、 どんなに不利な条件でも11+(8.3%)の確率で命中が得られるようになりました。
 しかし、そのメリットを活かせるのは移動DMが大きな中距離〜遠距離の距離帯だけです。
 おまけに、他の距離帯と比べてあまりにも命中率が低過ぎるので、考慮には値しないでしょう。



 最後は、航空機の移動速度が800km/hだった場合。


    表65 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

BW63_Fig65.gif - 10.2KB

 表62と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)でした。
 3番目が超遠距離(250〜500m)。
 最後の遠距離(50〜250m)は命中難易度が〈易:3+〉ですが、 どんな条件であっても超遠距離よりも命中率が良くなることは有り得ないでしょう。
 それほど、超遠方から超遠距離における命中率が高いのです。
 中距離(5〜50m)も同様でした。



 TL14〜15の対空砲が行う対空射撃は、 基本的に、超遠方(5〜50km)で行うべきものなのでしょう。
 最も命中しやすい距離帯は、移動速度400km/h以下ならば遠方(500m〜5km)、 移動速度800km/hならば同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)の2つだったのですが、 超遠方での命中率が高いため、目標が遠方に近付くまでの間、わざわざ射撃を控える理由がありません。



 テックレベル14〜15の火器管制装置も、対空射撃に関しては、 できるだけ遠くで(超遠方や遠方で)早めに敵を迎撃する、という攻撃パターンが正しいと言えます。
 目標の航空機が装甲を備えていなければ、膨大な敵を一方的に撃破できる筈です。
 目標が装甲を備えていれば、ある程度、そのダメージを軽減できるのでしょうが、 必要な装甲値は対空砲の貫通力に依存しているので、ここでは考察できません。




(8)トラベラー世界の制空権

 小火器(照準器なし)による対空射撃は、 航空機の飛行速度が200km/h以下でなければほとんど命中を期待できません。
 最も命中率の高い距離帯は遠距離(50〜250m)です。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 最も命中率の高い距離帯は超遠距離(250〜500m)です。
 超遠方(5〜50km)の目標に対して対空射撃を行う場合は移動DMの影響を全く受けないので、 特に高速で移動する目標に対しては超遠方での射撃が効果的となるようになりました。
 超遠方まで届く重対空砲が、その存在意義が大きく主張できるようになっています。
 重対空砲は超遠方の航空機に向かって対空射撃を行い、 射程の短い軽〜中対空砲が超遠距離〜遠方での対空射撃を担当する。
 TL5〜6の対空砲は、そういった使い分けがなされていることでしょう。



 TL9以上の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 超遠方(5〜50km)での命中難易度が〈難:11+〉に変わりました。
 航空機は、それがどんなに高速で飛行していても(1,200km/hを超える超音速であっても)、 対空射撃によって超遠方(5〜50km)で撃墜される可能性が高いのです。
 テックレベル9以上の世界においては空対地ミサイルの登場を待つまでもなく、 航空機による敵地への高空侵入は否定されているということでしょう。
 遠方(500m〜5km)や超遠距離(250〜500m)においても、対空射撃は高い命中率を発揮していました。



 TL13以上の対空砲になると、超遠方(5〜50km)に存在する 大きな目標への対空射撃は、更に難易度がひとつ下がりました。
 テックレベルが13以上になれば、一方的な超遠方からのアウトレンジ攻撃が可能となるようです。
 対抗手段は電子妨害か地形の活用ぐらいしかありませんので、手数の多さが勝敗を決めるのでしょう。

 テックレベル13以上のトラベラー世界に「制空権/航空優勢」という概念は有り得ません。
 どんなに優勢な航空戦力を持っていても、それらは対空射撃によって片端から撃墜されてしまいます。

 ですから、
 反重力化された機甲部隊や歩兵部隊は、地形に隠れながら超低空をひっそりと移動。
 友軍は目標付近で集結し、圧倒的多数を以て敵軍を撃破する。
 といった戦術行動が基本となるのではないでしょうか。
 高空を移動する部隊は、周囲5〜50km以内に存在する対空砲から集中砲火を浴びてしまうため、そうせざるを得ないのです。

 地表すれすれの低空を移動する場合であっても、敵の対空砲陣地には注意を払わなければなりません。
 気付かずに、あるいは敵に誘導されて、敵の対空砲陣地のキル・ゾーンへ侵入してしまったら、味方の全滅は確実です。
 高空からの航空偵察では生存率が低すぎて、敵の発見を期待できません。
 低空を移動する斥候を放ち、積極的に敵の存在を探し求めるべきなのです。 若干の損失は、味方の全滅を防ぐための必要経費なのだと開き直りましょう。

 所在が明らかになった敵の対空砲陣地は、 味方の間接射撃(質量投射砲やMRL)によって粉砕するべきです。
 間違っても、機甲部隊を突撃させてはいけません。
 他に方法が無ければ機甲部隊の大量投入で撃破することも可能ですが、 そのためには敵を圧倒できるだけの戦力を揃え、それなりの損害を覚悟する必要があります。
 防御射撃が飽和するだけの砲弾を撃ち込めば、味方の損害なしで撃破することが可能なのですから、 貴重な機甲部隊の投入先を間違えてはいけません。
 反対に考えると、間接射撃に狙われることを避けるため、 対空砲陣地は短時間に何度も移動する必要があるでしょうが。

 このあたりは、対戦車砲陣地機甲部隊砲兵部隊の関係にそっくりだと思います。
 戦車が空を飛び、対戦車砲が対空射撃も行えるようになったこと以外、 テックレベル5〜8の史実とそう変わりはありません。



 対空射撃の命中率を考察した結果として、 トラベラー世界の「制空権/航空優勢」がどんな形に変化しているのか、知ることが出来ました。
 個人的には、これが今回の考察における最大の成果だと考えています。





対空砲の貫通力とダメージ期待値


 此処までの2章で、対空砲の命中率について考察を行ってきました。
 今度は、対空砲の貫通力(貫通状態)とダメージ期待値について考えてみます。



 対空射撃に用いる兵器、重機関銃からオート・キャノン高初速砲に至る、ローテク世界の対空砲について、 それぞれの貫通力ダメージを以下の表に纏めました。
 減衰がある兵器に関しては、距離帯毎に異なる貫通力を示してあります。


          表66 対空砲の貫通力とダメージ−1

BW63_Fig66.gif - 13.6KB

 表の左端は武器名
 前述した通り、ローテク世界で一般的な対空砲を並べました。

 表の中央は、貫通力
 距離帯は、遠距離(50〜250m)から超遠方(5〜50km)の4段階に分かれています。

 表の右端はダメージ
 ダメージ期待値を計算する際に重要となります。



 重機関銃は、遠距離での貫通力が6、 超遠距離での貫通力が3でした。
 ダメージは3で、一般的な銃器と同じ値です。

 口径20mm〜60mmのオート・キャノンは、 榴弾(HE)貫通力が2〜9、 ダメージが6〜10でした。
 「COACC」における航空機の装甲値が幾つになっているのか、 明記された文章は見つかりませんが、恐らく「2〜4」というところでしょう。
 榴弾であっても、十分に貫通できる筈です。
 貫通できない装甲目標に対しては、徹甲弾(KEAP)を用いて下さい。
 徹甲弾貫通力は8〜22で、ダメージは4〜8。
 エアラフトGキャリアーを相手にするのであれば、 貫通力は十分です。

 口径80mm以上の砲は、オート・キャノンではなく、高初速砲になりました。
 口径80mm〜120mmの高初速砲も、対空射撃には主に榴弾(HE)を用います。
 その貫通力は14〜18、ダメージが12〜16でした。
 より貫通力の大きな徹甲弾(KEAP)は、 貫通力が28〜33で、ダメージが9〜12となっています。
 エアラフトGキャリアーを相手にするのであれば、 貫通力は十分ですが、反重力戦車トレピダを相手にする場合はまだ足りません。



 今度はハイテク世界の対空砲を纏めました。
 速射磁気砲プラズマA砲フュージョンX砲(通常型と速射型の2種類)、そしてフュージョンZ砲、 最後に出力50Mwのパルス・レーザー砲を並べています。


          表67 対空砲の貫通力とダメージ−2

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 表の形式は表66と同じです。



 速射磁気砲(VRF)貫通力は、 遠距離から超遠距離で21、遠方から超遠方で10となっていました。
 ダメージは10ですから、大きなダメージを期待できます。

 プラズマA砲もテックレベル10から利用可能な兵器ですが、 その貫通力は、遠距離から遠方の範囲で44、超遠方の距離帯だけ半減して22でした。
 ダメージは20です。

 フュージョンX砲貫通力は、 遠距離から遠方の範囲で67、超遠方の距離帯で33となっています。
 ダメージは30で、プラズマ砲の1.5倍。
 速射型の高波動フュージョンX砲も貫通力とダメージは同じです。
 射撃速度だけが異なっていました。

 フュージョンZ砲はテックレベル14以上で利用可能ですが、 反重力戦車トレピダが主砲として高波動フュージョンX砲を搭載している通り、 あまり一般的な兵器ではないようです。
 貫通力は、遠距離から遠方の範囲で79、超遠方で39。
 ダメージは30でした。

 出力50Mwのパルス・レーザー砲は、 ゾダーンの反重力戦車Z80に主砲として搭載されている、という情報が存在しています。
 その貫通力は、遠距離から超遠距離の範囲で51、遠方から超遠方の範囲で25。
 ダメージは60もありました。
 考察の51回「対戦車砲」でも触れましたが、帝国が愛用しているフュージョンX砲より、 対空砲/対戦車砲として優れているのかも知れません。



 対空砲の致傷範囲は、ダメージ期待値に全く影響しないようです。
 気になったので航空機の編隊について調べてみたのですが、航空機が編隊飛行を行う際、隣り合う僚機との間隔は、 第二次世界大戦の戦闘機であっても60メートルは空いていました(ロッテ戦術など)。
 それに対して、対空砲の致傷範囲は口径120mmの高初速砲であっても25〜45メートルプラズマA砲フュージョンX砲でも15〜45メートル
 隣りの僚機を巻き添えにするためには、どう考えても致傷範囲の大きさが足りません。
 テックレベルが進むと(戦後になると)、僚機の間隔は450メートルから1,500メートルまで広がりました(フルード・フォーやアブレスト)。
 ですから対空射撃に関して、メガトラのルールでは巻き添え命中を考慮する必要はないと考えています。




(1)テックレベル5〜6

 まずは、テックレベル5〜6の対空砲について、 目標(航空機)の移動速度が400km/hであると想定して、ダメージ期待値を求めます。

 その前に命中率を確認しておきましょう。
 表44を再掲載しました。


    表44 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

BW63_Fig44.gif - 10.0KB

 表の左端が、対空射撃を行う距離帯と、その距離帯における移動DM
 その右側が、対空射撃の命中難易度です。

 表の右側は、砲術技能レベル+戦術ポイント等の+DMによって変化する、対空射撃の命中率です。
 命中に必要な目標値と命中の可能性(%)を並記しました。



 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲が、 速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 その次が遠方(500m〜5km)、超遠方(5〜50km)の順となりましたが、 難易度がひとつ下がったおかげで、+DMが大きければ、まだ命中を期待できます。
 遠距離(50〜250m)は、移動DMが大き過ぎて命中不能です。



 TL5〜6の対空砲のサンプルとして、口径40mmのオート・キャノン(榴弾)と、 口径120mmの高初速砲(榴弾)を用意しました。

 これら対空砲の貫通力が目標の装甲値未満である場合、 貫通状態は「無貫通」となります。
 「無貫通」であるならば、兵器のダメージの大きさに関係なく、一律のダメージしか与えられません。
 この場合のダメージ期待値は以下のようになりました。


   表68 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標:無貫通)

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 表の左端は、目標までの距離帯と、その距離帯における移動DMの大きさ。
 その右側が命中難易度

 表の右側が、命中DMに応じた命中率ダメージ期待値です。



 超遠方におけるダメージ期待値は、命中DMが「+4」の場合で0.00、「+8」であっても0.36しかありません。
 遠方まで近付くことでダメージ期待値は一気に大きくなりますが、それでも命中DM「+8」の0.86が最大値。
 超遠距離まで迫った航空機に対しては最大で1.58のダメージ期待値となっておりますが、 この程度のダメージ期待値では、なかなか目標の撃破に必要なダメージを与えることができません。
 例えばGキャリアーの耐久値は72/180ですから、左側の無力化値を0にするまで、 ダメージ期待値が0.36ならば200回、0.86ならば84回、1.58でも46回の射撃を行う必要があると判明しました。
 命中DMが「+8」のベテラン砲手を用意したのにも関わらず、Gキャリアー1台を撃破するために、 46回の射撃を行わなければならないというのは、実に情けない話です。
 貫通状態が「無貫通」ですから仕方ないことなのかも知れませんが。

 もっとも、テックレベル5〜6の世界で、射撃の貫通状態が「無貫通」になることは滅多にないでしょう。
 口径40mmのオート・キャノンは、榴弾(HE)であっても貫通力が5、 徹甲弾(KEAP)ならば貫通力14を備えています。
 口径120mmの高初速砲ならば、 榴弾の貫通力は18で、徹甲弾の貫通力が33。
 エアラフトGキャリアーの装甲を撃ち抜くことは容易いのです。
 実際にダメージ期待値を求めるのであれば、「無貫通」の表を参照することはほぼ有り得ません。

 但し、反重力戦車トレピダといった重装甲(装甲値=40)の反重力戦車に対して、 これらローテクの対空砲は無力であることが明らかになりました。
 超遠方における命中率が悪過ぎて、ほとんどダメージを与えられないためです。
 反対に、ハイテクの機銃掃射は超遠方でも容易く命中し、大きなダメージを与えてきますから、 それなりのダメージを与えられる遠方や超遠距離に近付くまで待っていたら、ローテクの対空砲が全滅してしまうことは明らかでしょう。



 しかし、相手が同程度のテックレベルで製造された航空機ならば、十分に勝機があります。
 ローテクの航空機が相手ならば貫通状態は最低でも「部分貫通」になると思われますので、 そうした場合のダメージ期待値を確かめてみましょう。
 まずは、口径40mmのオート・キャノン(榴弾)から。


    表69 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標)
        (40mmオート・キャノン:榴弾:部分貫通)

BW63_Fig69.gif - 9.26KB

 表の形式は、表68と同じ。
 口径40mmのオート・キャノン(榴弾)が「部分貫通」した場合のダメージ期待値です。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にして下さい。
 また、フル・オート目標数が「3」ですから、単一の目標に集中攻撃を行うのであれば、ダメージ期待値を4倍まで増やせます。



 口径40mmのオート・キャノンは最大射程が遠方(5km)であるため、遠方の距離帯までしか射撃が届きません。
 ですから超遠方(5〜50km)におけるダメージ期待値は、計算不能となっています。
 遠方(500m〜5km)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」で0.2、命中DMが「+4」で1.2でした。
 命中DMが「+8」ならば7.7。
 Gキャリアーを無力化するまで、それぞれ324回、59回、10回の射撃が必要となります。 装甲を「部分貫通」しているという想定ですが、命中DM「+8」の場合は速やかに無力化できることが分かりました。
 単一目標をフル・オート射撃で集中攻撃すれば、1戦闘ラウンドに4回の命中判定を行うことも可能です。
 命中DMが小さい場合はなかなか大変ですが、ローテクの対空砲もそれなりに強力だと言えるでしょう。

 超遠距離(250〜500m)まで接近すれば、ダメージ期待値は更に大きく、1.2、3.8、13.1まで増えました。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、59回、19回、6回です。



 今度は、口径120mmの高初速砲(榴弾)が「部分貫通」している場合。


    表70 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標)
          (120mm高初速砲:榴弾:部分貫通)

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 表の形式は、表68と同じ。
 口径120mmの高初速砲(榴弾)が「部分貫通」した場合のダメージ期待値です。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にして下さい。



 口径120mmの高初速砲は、最大射程が超遠方(22km)でした。
 超遠方(5〜50km)の距離帯まで、問題なく攻撃を行えます。
 ダメージ期待値は、命中DMが「+2」しかない場合は0.0、「+4」ならば0.4、「+8」ならば7.6でした。
 命中DMが「+4」以上あるのであれば、Gキャリアーを無力化するまでに必要な射撃回数は162回と10回。
 命中DMが「+2」以下であれば、対空砲が100門あっても無視できますが、 その100門の中に命中DM「+4」以上の射手が居れば、無視することは出来ません。
 もしも命中DM「+8」の射手が居たのであれば、Gキャリアーを 5回(完全貫通)〜10回(部分貫通)の射撃で撃墜することができるのです。
 撃たれる側にとっては堪りません。
 対空砲陣地に近付く航空機は、味方の大損害を覚悟して接近するか、 対空砲の射程外から精度の低い爆撃を行うか、という選択を迫られることになるでしょう。

 目標が遠方(500m〜5km)まで接近してきた場合、ダメージ期待値は命中DMが「+2」で0.4、 命中DMが「+4」で2.4、命中DMが「+8」で15.3まで増えました。
 口径40mmのオート・キャノン(榴弾)と比べて、ちょうど2倍の数値となります。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、162回、30回、5回。
 命中DMが「+2」しかない場合は大したことないのでしょうが、 命中DMが「+4」の対空砲が100門あれば、毎戦闘ラウンドに3〜6台のGキャリアーを撃破できます。
 命中DMが「+8」の対空砲が100門ならば、毎戦闘ラウンドに20〜40台のGキャリアーという計算。
 この距離帯、遠方における対空射撃のダメージ期待値は大きなものとなり、攻撃を試みる航空機にとっては非常に大きな脅威となり得ます。

 装甲を「貫通」すれば、という条件付きですが、 TL5〜6の対空砲も馬鹿にはできません。
 この大きな損害を防ぐためには、超遠方から対空砲陣地を一掃できる攻撃力か、 「貫通」を防げる防御力(装甲値=40)が必要となるでしょう。

 史実において、射撃回数をきちんと数えながら撃ち、更に目標の撃破をはっきりと確認できるような状況はなかなか発生していないのですが、 第一次世界大戦における欧米各国の対空射撃は、航空機1機を撃墜するために必要な射撃回数が12,000〜4,000回であると見なされていました。
 某極東島国海軍が演習(1939)の際に行った対空射撃では、口径120mmの高初速砲が、 榴弾(HE)4,000発を発射して、標的機1器を撃墜した、という記録があるようです。
 その数字と比較するのであれば前述した、無力化に必要な射撃回数が162回といった数字にも不自然な点は見当たりません。
 かえって、命中率が高過ぎるのではないかと感じるほどです。



 蛇足ですが、攻撃目標のサンプルとして耐久値=72/180のGキャリアーを用意した理由は、 帝国百科に掲載されている反重力型輸送機器の中で、最もサイズの大きなものだからです。
 TL5〜6の対空砲が与えるダメージ期待値を評価するのですから、 目標もTL5〜6の航空機を用意すべきであるのは当然ですが、生憎と手頃なデータが見つかりません。
 ですから仕方なくGキャリアーの耐久値を用いました。

 Gキャリアーの容積は8排水素トン(=108キロリットル)ですから、 同じ耐久値を持つ航空機は、最大離陸重量が1.8トンのものに相当します。
 有名な大戦機の最大離陸重量は、ゼロ戦が2.4〜3.2トン、 F6Fヘルキャットが7.0トン、B17が25〜30トンでした。
 Gキャリアーを基準とした場合、ゼロ戦であっても耐久値は1.3〜1.8倍、 B17に至っては13.9〜16.7倍という大きさになる訳です。

 こうして比較してみると「COACC」のルールで設計される航空機は、 異様に大きな耐久値を持っているように思えて仕方ありません。
 反重力型輸送機器に比べて、非常に大きな耐久値を持っていることが明らかになりましたが、 耐久値が大きければ、それだけ多くの命中弾に耐えることができます。
 「COACC」で定義されている耐久値は、 対空砲の命中率の高さとバランスを取るために故意に大きく設定されているのではないでしょうか。
 そんな気がしています。




(2)テックレベル9

 今度はテックレベル9の対空砲に関して、同じ条件(目標移動速度が400km/hであることを想定)でダメージ期待値を求めます。

 命中率を確認するため、表56を再掲載しました。


    表56 対空射撃の命中率(移動DMの影響:400km/h:大きな目標)

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 表44と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度400km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合も、 最も命中率が高い距離帯は超遠距離(250〜500m)でした。
 2番目が遠方(500m〜5km)、3番目が超遠方(5〜50km)です。
 最後の遠距離(50〜250m)はほとんど命中を得られません。

 TL5〜6の対空砲と比べた場合、 すべての距離帯における命中難易度が1つずつ易しくなっていることがお分かりでしょうか?
 この命中難易度によって、ダメージ期待値は以下のように変化します。



 今回もTL9の対空砲のサンプルとして、口径40mmのオート・キャノン(榴弾)と、 口径120mmの高初速砲(榴弾)を用意しました。

 まずは貫通状態が「無貫通」となった場合から、ダメージ期待値を求めます。


   表71 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標:無貫通)

BW63_Fig71.gif - 9.91KB

 表の形式は表68と同じ。



 超遠方におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」しかない場合でも0.08を得られるようになりました。
 まだ小さな値ですが、0.00と比べれば無限大の増加です。
 命中DMが「+4」の場合は0.36でこれも無限大、「+8」の場合は1.58で4.4倍に増えました。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、864回、200回、46回です。

 遠方まで接近すると、ダメージ期待値はそれぞれ0.36、0.86、2.36。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、200回、84回、31回へ変わりました。

 貫通状態が「無貫通」であっても、このテックレベルの対空砲は馬鹿に出来ないと思います。
 射撃回数さえ得られるのであれば、重装甲(装甲値=40)の反重力戦車トレピダを 撃墜することまでも可能なのですから。
 もちろん、「完全貫通」や「部分貫通」と比べた場合、 無力化に必要な射撃回数は7〜11倍も必要ですので、装甲の存在意義が無くなる訳ではありません。
 ダメージ期待値を7分の1〜11分の1、場合によっては60分の1まで減少できるのですから、それだけの価値はあるのです。



 今度は再び「部分貫通」している、 口径40mmのオート・キャノン(榴弾)のダメージ期待値を求めました。


    表72 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標)
         (40mmオート・キャノン:榴弾:部分貫通)

BW63_Fig72.gif - 9.70KB

 表の形式は、表68と同じ。
 口径40mmのオート・キャノン(榴弾)が「部分貫通」した場合のダメージ期待値。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にします。
 単一の目標に集中攻撃を行うのであれば、フル・オート目標数が「3」ですから、ダメージ期待値を4倍に増やして下さい。



 口径40mmのオート・キャノンが、遠方の距離帯までしか届かない、 ということはTL5〜6の対空砲と変わっていませんが、 遠方(500m〜5km)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」で3.8、「+4」で7.7、「+8」ならば18.9まで増えました。
 Gキャリアーを無力化するまでに必要な射撃回数は、それぞれ19回、10回、4回まで激減。
 「完全貫通」していればダメージ期待値は2倍ですから、無力化に必要な射撃回数は半減します。

 テックレベル9の対空射撃は、それが口径40mmのオート・キャノンであっても、 極めて強力な威力を発揮することが判明しました。
 超遠距離(250〜500m)まで接近する必要はありません。
 装甲を「貫通」しているのであれば、遠方であっても十分確実に目標を撃破できることでしょう。



 今度は、テックレベル9の高初速砲(口径120mm:榴弾)が、 目標の装甲を「部分貫通」している場合のダメージ期待値。


    表73 対空射撃のダメージ期待値(400km/h:大きな目標)
          (120mm高初速砲:榴弾:部分貫通)

BW63_Fig73.gif - 10.4KB

 表の形式は、表68と同じ。
 口径120mmの高初速砲(榴弾)が「部分貫通」した場合のダメージ期待値です。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にして下さい。



 超遠方(5〜50km)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」で2.4、「+4」で7.6、「+8」で26.2でした。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、30回、10回、3回で、 口径40mmのオート・キャノンが遠方(500m〜5km)の射撃回数とほぼ同じ数値です。
 口径120mmの高初速砲は、超遠方の距離帯であっても大きなダメージを与えることができ、 それはつまり、少ない射撃回数で目標を無力化できるということになりました。
 もし100門の対空砲が一斉に射撃を行うのであれば、毎戦闘ラウンド、3機、10機、30機の目標を撃破できるでしょう。
 有効なダメージを与えるために、命中DMが「+8」のベテラン砲手を用意する必要はありません。
 命中DMが「+2」しかない一般兵でも十分なダメージを与えられるという点が、 TL9の対空砲の恐ろしいところだと思われます。
 「完全貫通」の状態ならば、ダメージ期待値は2倍なので上記の数字も2倍に増えました。

 航空機が400km/hで飛行していると想定するならば、口径120mmの高初速砲は最大射程が超遠方(22km)ですから、 対空砲の頭上に到達するまで22kmの距離を移動しなければなりません。
 移動に要する時間は、距離(=22km)を速度(=400km/h)で割れば、0.055時間という数字が出てきます。
 0.055時間は、分に直せば3.3分、メガトラの時間単位、戦闘ラウンド(6秒)に直せば33戦闘ラウンドになりました。
 航空機は対空砲の頭上に到達するまで33戦闘ラウンドの射撃に耐えなければならない訳です。
 その内、超遠方で射撃を受ける時間は25戦闘ラウンド(75%)を占めていました。
 そのため超遠方での対空射撃は、より一層、重要になってきたと言えるのではないでしょうか。

 遠方(500m〜5km)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」で7.6、「+4」で15.3、「+8」で37.8でした。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、10回、5回、2回となります。
 100門の対空砲で迎撃しているのであれば、毎戦闘ラウンド当たりの撃破数は10機、20機、50機という大きな値でした。
 超遠方の距離帯で行われる対空射撃を生き延びて遠方の距離帯に突入した航空機は、 ほとんど即座と言っても良い程の短時間に全滅してしまうような気がしてきます。



 テックレベルが9以上になると、対空射撃は命中率が大幅に高くなりました。
 元々、十分な命中率を備えていた超遠距離や遠方に大きな影響はありませんでしたが、命中率が低かった超遠方に与える影響は顕著です。
 超遠方を無防備に飛ぶ航空機は、十分な射程を備えた対空砲から集中射撃を浴び、 極めて短時間で撃破されてしまうことでしょう。
 テックレベル9以上の火器管制装置は、それだけの性能を備えているのです。

 それを防ぐためには、撃たれないという対策しかありません。
 電子妨害を行って見つからないようにする、超低空を飛行し、地形を利用して撃たれないようにする、などといった方法が考えられるでしょう。
 場合によっては、味方を囮にして、味方機が撃たれている間に接近するという戦術(飽和攻撃)も有り得ます。

 残念ながら重装甲という選択肢を選んでも正解ではありません。
 貫通状態を「無貫通」に抑えたとしても、メガトラの個人戦闘ルールではダメージが通ってしまいます。
 ダメージ期待値は7分の1〜60分の1まで小さく出来ますが、決してゼロには出来ません。
 無意味という訳ではありませんが、メガトラの装甲は無敵ではないのです。
 受けるダメージをゼロにするためには、撃たれないようにする、という方法しかないことが明らかでしょう。

 前章の最後、(8)トラベラー世界の制空権でも触れましたが、
 航空機は、それがどんなに高速で飛行していても(1,200km/hを超える超音速であっても)、 対空射撃によって超遠方(5〜50km)で撃墜される可能性が高いのです。
 どんなに高空を飛んでも、対空砲には関係ありません。
 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、射程は水平距離と垂直距離のどちらか大きい方を使用する、となっていますから、 水平距離で22kmまで届く口径120mmの高初速砲は、垂直距離も同じく22kmまで届きます。
 少し不自然な印象を受けますが、メガトラに登場する対空砲は実体弾を発射する兵器(Slug Throwers)ばかりではありません。 レーザーやプラズマを用いたエネルギー兵器(Energy Weapons)も存在する訳ですから、 プレイアビリティを考えれば、このルールは合理的だと言えるでしょう。
 高度20kmという超高高度を飛んできた偵察機も、 高度150mの超低空侵入を試みている戦略爆撃機も、何らかの対策を講じない限り、 対空砲から22kmの地点に到達した瞬間、口径120mmの高初速砲に狙い撃たれて撃破される可能性が高い、と判明しました。
 地対空ミサイルの登場を待つまでもなく、 航空機による敵地への高空侵入は困難だと否定されているのです。

 私は、垂直方向の最大射程(高度)は、水平距離の半分にするという提案も行ってみましたが、 これはあくまでハウス・ルールです。
 公式ルールではありませんから、公式の世界観は上記のようになる筈です。

 メガトラの個人戦闘ルールを解釈したところ、テックレベル9以上の世界では、航空機よりも対空砲の方が強い、 という哀しい事実が明らかとなりました。
 航空機が自由に飛び回れる範囲は、敵の対空砲火の射程外のみ。
 戦場の航空機は、敵の対空砲火を警戒しながら飛行しなければなりません。
 航空機が優位に立てるのは、敵軍が対空砲を持っていない場合か、電子妨害や奇襲によって、対空射撃を無効化できた場合だけでしょう。
 航空機が圧倒的な強者ではなくなった戦場には、とても興味をそそられます。




(3)テックレベル12

 テックレベル10以上になると、プラズマ・ガンフュージョン・ガンといった、 高エネルギー火器が登場するようになります。
 レフリーズ・マニュアルに記載されている通り、高エネルギー火器は非常に強力で、 貫通力とダメージの大きな攻撃を、高い射撃速度で目標へ与えることができました。
 数少ない欠点は、射程が短いことでしょうか。
 大きなパワープラントが必要であるという短所は、特にテックレベルが低い場合は大問題です。 燃料がある限り永遠に撃ち続けることが可能だという長所にもなりますが、欠点であることに変わりはありません。

 「CT版:傭兵部隊」の記述によると、
 このテックレベルの対空砲(直接射撃用の野砲)は、プラズマA砲からプラズマC砲、 場合によってはフュージョンX砲に進化しているそうです。
 欠点である射程距離の短さは、MRL質量投射砲によってカバーされている模様。
 戦車砲はテックレベル11でプラズマA砲。 テックレベル12でプラズマB砲が主流になるとのこと。
 飛行能力を有した反重力戦車もテックレベル10から登場。テックレベル11になると、すべての車輌が反重力化していますので、 ある意味、すべての砲は対空射撃の能力を有していなければならない、ということになりました。
 テックレベル11以降の砲はすべて、間接射撃専門の砲でない限り、対空砲としての利用が可能なのです。
 テックレベル12になると、すでに車輌と航空機の区別が存在しなくなります。
 「傭兵部隊」を読んだ時にはどんな状況なのか具体的なイメージができませんでしたが、 この「空軍9:対空射撃」の考察によって、具体的なイメージを思い描けるようになってきました。

 という訳で、今度はテックレベル9〜12の火器管制装置高エネルギー火器を組み合わせて、 ダメージ期待値を求めてみましょう。
 今回はすべての車輌が反重力化されており、車輌と航空機の区別が存在しないという公式設定から、 目標の移動速度を800km/hまで上げてみました。
 反重力戦車トレピダスピーダーの巡航速度が750km/h〜810km/hという設定ですので、 戦場での移動速度を800km/hだと想定することは間違っていないでしょう。



 目標航空機、あるいは、目標とした反重力車輌の移動速度が800km/hだった場合の命中難易度は、すでに考察した表57から求めます。
 以下に、表57を再掲載しました。


    表57 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

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 表44と同じ形式です。



 TL9〜12の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は、 同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)の3つが並びました。
 超遠距離と遠距離(50〜250m)で行われる対空射撃は、 命中難易度が〈易:3+〉になっているため、 最低でも11+(8.3%)の命中率が保障されています。



 今回はテックレベルが上がりましたのでTL12の対空砲のサンプルは、 高エネルギー兵器のプラズマA砲を用意しました。

 まずは「無貫通」の状態から、ダメージ期待値を求めます。


   表74 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標:無貫通)

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 表の形式は表68と同じです。



 命中率が同じになっているので、超遠方(5〜50km)、遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)におけるダメージ期待値は、 すべてが同じ値になっています。
 具体的には、命中DMが「+2」ならば0.08、「+4」で0.36、「+8」で1.54でした。
 前項、テックレベル9の超遠方と同じダメージ期待値、ということです。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、864回、200回、46回。

 遠距離(50〜250m)と、それより近い距離帯におけるダメージ期待値は、 最低限の命中率11+(8.3%)が保障されているものの、0.00になりました。
 遠距離での対空射撃は、「無貫通」の目標に対してダメージを与えることが出来ません。



 今度はプラズマA砲が「部分貫通」している場合のダメージ期待値です。


    表75 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標)
            (プラズマA砲:部分貫通)

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 表の形式は、表68と同じ。
 プラズマA砲が、目標の装甲を「部分貫通」した場合のダメージ期待値です。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にして下さい。
 単一の目標に集中攻撃を行うのであれば、フル・オート目標数が「2」ですからダメージ期待値を3倍に増やせます。



 命中率が同じですから「部分貫通」の状態でも、 超遠方(5〜50km)、遠方(500m〜5km)、超遠距離(250〜500m)におけるダメージ期待値は、すべてが同じ値になっていました。
 具体的な数値は、命中DMが「+2」で3.1、「+4」で9.4、「+8」で32.8。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、24回、8回、3回、に激減です。
 「無貫通」の射撃回数と比べて、36倍、25倍、15倍の効率化でした。
 目標の装甲を「完全貫通」すればダメージ期待値は2倍で、射撃回数はさらに半減するでしょう。
 フル・オート目標数が「3」ですから、ダメージ期待値を更に3倍に増やすこともできます。
 「完全貫通」の2倍と、フル・オート目標数の3倍を合わせれば、修正は6倍になりました。
 もし100門のプラズマA砲が一斉に射撃を行うのであれば、 毎戦闘ラウンド当たり12機、37機、100機のGキャリアーを撃破できる筈です。
 何というか、もう真面目に取り合うことが虚しくなる程の命中率と破壊力なのではないでしょうか。
 プラズマA砲は、とても強力な破壊兵器なのです。

 遠距離(50〜250m)の場合は、命中DMに関係なく命中率が11+(8.3%)でしたから、 ダメージ期待値も一律で0.6になりました。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、130回。
 安全だと言うことは出来ませんが、超遠方から超遠距離におけるダメージ期待値や射撃回数と比べてしまうと、明らかに見劣りしています。
 「完全貫通」とフル・オート目標数の6倍で修正をしても、ダメージ期待値は3.3。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は22回まで減りますが、 100門のプラズマA砲を用意しても戦闘ラウンド当たり4台しか撃破することが出来ません。
 プラズマA砲を装備した反重力戦車に対しては、 懐に飛び込んで攻撃を避ける、という戦術も有りなのでしょうか。
 もっとも、戦車の懐(遠距離以内)に飛び込むまで生きていられる保障はありませんが。



 テックレベルが10以上になると、プラズマA砲を筆頭とした高エネルギー火器が登場し、 航空機は対空砲に対して、更に弱い立場となることが判明しました。
 そう断言できる程、対空砲の命中率が高くなったためです。
 対空砲が射撃を行う主要な距離帯=超遠方(5〜50km)の射撃には、移動DMが影響しません。
 どんなに高速で飛び回っていても、回避行動を選択していても、高い命中率の対空砲に狙い撃たれたら意味が無いのです。
 戦場の随所に潜む対空砲から撃たれ、撃破されてしまうことを避けたいのであれば、 すべての車輌が反重力化されても(テックレベル11)、車輌と航空機の区別が存在しなくなっても(テックレベル12)、 それらの車輌は地表すれすれを飛行しなければなりません。
 こうした情景を考えると、地表すれすれの最高速度(NOE Speed)を制限する航空電子機器(Avionics)の性能が、 とても重要になってきたのではないでしょうか。
 「レフリーズ・マニュアル、p.67」に掲載されている航空電子機器
 この装置の存在意義を長い間疑っていたのですが、テックレベル10以降の軍用反重力型輸送機器にとっては、 戦場での生存率を上げるために必須の装置だったということが分かりました。
 納得です。

 遠方(500m〜5km)や超遠距離(250〜500m)になれば移動DMの恩恵を受けることもできますが、表57へ示した通り、 800km/hという高速で飛行していても、その命中率は超遠方の場合と変わりません。
 回避行動を選択すれば移動DMを2倍に増やすことは可能ですが、命中DMを「−4」下げる程度の効果しかありませんでした。
 命中率を下げ、ダメージ期待値を減らすことはできましたから、回避行動が無意味だということはありません。
 初期の高エネルギー火器(プラズマA砲)は射程が短いので、遠方が主要な射撃距離帯になりそうだと思いましたが、 この弱点は、口径120mmの高初速砲オート・キャノンによって カバーされていることでしょう。
 テックレベル10〜12の世界において、高初速砲オート・キャノンは、 まだまだ対空砲としての存在意義を主張できるようです。

 そして超遠距離以内の距離になると、命中難易度が〈易:3+〉になり、 最低限の命中率11+(8.3%)が保障されるようになるため、またもや回避行動の意味は無くなります。
 プラズマA砲高初速砲による対空射撃は、 命中率こそ低確率に下がったものの、確実に航空目標(飛行車輌)を捕え、撃破できることが明らかでした。
 航空機にとって、安全な距離帯というものは存在しないのです。

 車輌や航空機が高空を最高速度で飛び回れるのは、安全な後方地域か、味方が対空砲を徹底的に排除した後の戦場だけとなるでしょう。



 掲示板でちょっと面白いネタを教えて頂きましたので、ソード・ワールズ連合軍(以下SW軍)の対空砲が、 帝国の反重力戦車トレピダに対して、どれぐらいの破壊力を発揮するのか、計算してみました。
 SW軍のテックレベルは主に11〜12となっていますので、 テックレベル9〜12の火器管制装置を用いることに問題はありません。
 SW軍の対空砲はとりあえず、プラズマA砲を想定しています。
 「とりあえず」と書いているのは、プラズマA砲でもプラズマC砲でも、 トレピダを目標としている限り、ダメージ期待値が変わらないためです。
 一部のSW軍対空砲はダメージの大きいフュージョンX砲を使用している可能性もありますが、 その場合はダメージ期待値を1.5倍に増やして下さい。



 という訳で、SW軍の対空砲(=プラズマA砲)が、 速度800km/hで飛行している帝国軍の反重力戦車トレピダを狙い撃った場合のダメージ期待値を求めてみました。


    表76 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標)
        (プラズマA砲がトレピダを狙い撃った場合)

BW63_Fig76.gif - 10.4KB

 表の形式は、表68と同じ。

 射撃する距離帯が遠方以下(〜5km)であれば、プラズマA砲の貫通力は「44」。
 ですからトレピダの重装甲(装甲値=40)を「部分貫通」できます。

 しかし超遠方(5〜50km)になるとプラズマA砲の貫通力は半減してしまいます。
 「22」しかない貫通力でトレピダの装甲を「貫通」することはできません。
 「無貫通」の場合、ダメージ期待値はとても小さなものになってしまいますから、 対空砲としては、何としても装甲を「貫通」させなければなりません。
 そのため、超遠方において対空砲は、狙い撃ちの選択を強いられます。
 命中難易度がひとつ下がってしまいますが、仕方ありません。



 超遠方(5〜50km)において、対空射撃の命中難易度は〈難:11+〉でした。
 狙い撃ちを選択すると難易度がひとつ上がって〈至難:15+〉になります。
 命中DMが「+2」しかない場合は命中率が13+になってしまい、命中不可能。
 命中DMが「+4」ならば命中率は11+(8.3%)でダメージ期待値が0.6。
 命中DMが「+8」ならば命中率は7+(58.3%)でダメージ期待値が9.4、
 でした。

 表74と見比べて気付かれたかも知れませんが、命中DMが「+2」しかない場合は、 狙い撃ちをして無理に「部分貫通」を狙うよりも、 通常の射撃で例外的命中(ラッキー・ヒット)を狙った方が、ダメージ期待値が大きくなっています。
 狙い撃ちの場合は、ダメージ期待値が0.00。
 通常の射撃の場合は、ダメージ期待値は0.08。
 ほんの少しの違いですが、大きな違いでしょう。

 上記のダメージ期待値から考えて、超遠方において SW軍の対空砲(=プラズマA砲)が反重力戦車トレピダの無力化を試みた場合、 無力化に必要な射撃回数は、1,512回、227回、14回、でした。
 前述の通り、命中DMが「+2」しかない場合は通常の射撃によるダメージ期待値、 命中DMが「+4」と「+8」の場合は狙い撃ちによるダメージ期待値を用いています。

 SW軍の新兵(命中DM=+2)が対空砲を操作している場合、帝国軍のトレピダを無力化するまで、 1,512回の射撃が必要だということでした。
 フル・オート目標数が「2」ですから、ダメージ期待値を3倍に増やすことは可能ですが、それでも射撃回数は504回。
 不可能ではないにしろ、あまり現実的な数字だとは思えません。

 SW軍のベテラン(命中DM=+4〜+8)ならば、同じ対空砲を操作していても、必要な射撃回数は上記の通り、227回と14回でした。
 集中射撃でダメージ期待値を3倍に増やせば、射撃回数が76回と5回まで減ります。
 SW軍の対空砲が超遠方でトレピダを迎撃するためには、 命中DMが「+4」以上のベテランを用意しなければならないのでしょう。
 火器管制装置の精度(低い命中率)を、砲手の技量でカバーしなければならないということです。

 掲示板では、
 「プラズマB砲で、6kmの距離に置かれた、5メートル四方の標的」に当たれば命中扱い。
 目標(戦車)の主要装甲に着弾するので、貫通できない=「打ち破ることはできない」

 と書きましたが、これは上記の通り、SW軍の(テックレベルが10〜12の)火器管制装置と、命中DM「+2」の砲手の組み合わせでは、 超遠方での狙い撃ちで命中弾を得られない、という事実に基づいています。
 命中DMが「+4」以上のベテランならば 装甲の薄い箇所(0.5メートル四方の標的)を狙い撃ちすることも可能なのですが、 SW軍の大多数を占める新兵には、同じことができないのです。
 SW軍の新兵は狙い撃ちを諦め、車体の何処かに命中することを期待して射撃しなければなりません。
 この事実が、ダメージ期待値の大きさに影響してしまいました。



 遠方(500m〜5km)まで接近すると、プラズマA砲の貫通力は初期値の「44」に戻りました。
 ようやく、トレピダの重装甲(装甲値=40)を「部分貫通」できるようになります。
 狙い撃ちをして、命中率を下げる必要はありません。
 命中DMが「+2」の場合、命中率は9+(27.8%)でダメージ期待値が3.1。
 命中DMが「+4」ならば、命中率は7+(58.3%)でダメージ期待値が9.4。
 命中DMが「+8」ならば、命中率は3+(97.2%)でダメージ期待値が32.8、
 になりました。
 反重力戦車トレピダの無力化に必要な回数は42回、14回、4回、です。
 集中射撃でダメージ期待値を3倍に増やしたところ、射撃回数は14回、5回、2回まで減りました。
 超遠方におけるダメージ期待値、無力化に必要な射撃回数と比べると、雲泥の差ではないでしょうか。

 SW軍の対空砲も、遠方まで目標を引きつけて撃つのであれば、これだけの破壊力を発揮できるのです。
 命中DMが「+2」しかない場合のダメージ期待値はベテランと比べて見劣りしますが、それは仕方ありません。
 テックレベルで劣るSW軍の対空砲でも、帝国軍のトレピダを撃破できる。
 この事実を素直に喜ぶべきだと思いました。




(4)テックレベル14〜15

 テックレベル13以上になると、高エネルギー火器の主流はフュージョン・ガンに変わります。
 プラズマ・ガンと比べれば最大射程は数倍に伸びました。

 「CT版:傭兵部隊」の記述によると、
 このテックレベルの対空砲(直接射撃用の野砲)は、フュージョンY砲が用いられているものの、 飛来する砲弾やミサイルを迎撃するための拠点防衛(Point Defense Fire)にはプラズマB砲が用いられているそうです。
 速射磁気砲(VRF)では威力が足りなくなってきたということなのでしょう。
 瞬間的な火力発揮に有用なMRLが多用されているため、このテックレベルになっても、 MRLによる飽和攻撃を防ぐための拠点防衛火器は、重要な地位を保っているようです。

 戦車砲はテックレベル13でプラズマC砲フュージョンX砲
 テックレベル14以降になってもフュージョンZ砲にランクアップすることはなく、 速射型の高波動フュージョンX砲フュージョンY砲が主流になっているとのこと。
 貫通力と装甲値の競争を見る限り、その判断は正しいと思います (詳しくは、考察の51回「砲兵7:対戦車砲」を参照して下さい)。

 ちなみに、中間子砲の登場や射撃統制システムの高度化により、 遠距離からの物質発射兵器はほぼ無意味になっているとのこと。
 公式設定では小型MRLを搭載しているテックレベル15の戦闘車輌が多く存在しますので、 遠距離からの物質発射兵器はほぼ無意味であっても、その状況によっては有効に使える余地が残されているのだと思われます。

 帝国の主力戦車トレピダに搭載されている主砲は、 射撃速度に重点を置いた高波動フュージョンX砲です。
 ですから、今度はテックレベル14〜15の火器管制装置高波動フュージョンX砲を組み合わせて、ダメージ期待値を求めてみましょう。
 目標の移動速度は、テックレベル12と同じように、800km/hを想定しています。



 命中難易度については、すでに考察済みの表65を再掲載しました。


    表65 対空射撃の命中率(移動DMの影響:800km/h:大きな目標)

BW63_Fig65.gif - 10.2KB

 表44と同じ形式です。



 TL14〜15の対空砲が、速度800km/hで飛行する航空機を目標とした対空射撃を行う場合、 最も命中率が高い距離帯は同率で超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)でした。
 3番目が超遠距離(250〜500m)。
 最後の遠距離(50〜250m)は命中難易度が〈易:3+〉ですが、 どんな条件であっても超遠距離よりも命中率が良くなることは有り得ないでしょう。
 それほどまで、超遠方から超遠距離における命中率が高いのです。



 命中率がとても高いため、「無貫通」の状態であってもダメージ期待値は、それなりに大きな値となりました。


   表77 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標:無貫通)

BW63_Fig77.gif - 10.1KB

 表の形式は表68と同じです。



 命中率が同じなので、超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)におけるダメージ期待値も同じ値です。
 この2つの距離帯において、ダメージ期待値は命中DMが「+2」でも0.86、「+4」ならば1.58、「+8」で3.11もありました。
 「無貫通」の状態であっても、 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、84回、46回、24回となります。
 TL9〜12の対空砲が「無貫通」だった場合と比べて、 ダメージ期待値は10倍から2倍に拡大しました。
 特に命中DMが「+2」しかない場合、新兵に対空砲を扱わせた場合のダメージ増加が顕著です。

 超遠距離(250〜500m)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」ならば0.08、「+4」で0.36、「+8」で1.54。
 この部分だけ、TL9〜12の対空砲の「無貫通」と全く同じ値でした。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、864回、200回、46回。
 これも当然ながら、TL9〜12の対空砲と同じ射撃回数になりました。

 遠距離(50〜250m)と、それより近い距離帯におけるダメージ期待値は、 最低限の命中率11+(8.3%)が保障されているものの、0.00です。
 遠距離での対空射撃は、「無貫通」の目標にダメージを与えることが出来ないと分かりました。



 今度は、フュージョンX砲が、 目標の装甲を「部分貫通」している場合のダメージ期待値です。


    表78 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標)
           (フュージョンX砲:部分貫通)

BW63_Fig78.gif - 10.6KB

 表の形式は、表68と同じ。
 フュージョンX砲が、目標の装甲を「部分貫通」した場合のダメージ期待値です。
 「完全貫通」している場合は、数値を2倍にして下さい。
 単一目標に集中攻撃を行うのであれば、フル・オート目標数が「3」ですからダメージ期待値を4倍に増やせます。



 命中率が同じですから「部分貫通」の状態でも、 超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)におけるダメージ期待値は同じ値です。
 命中DMが「+2」の場合は28.8、「+4」で49.2、「+8」で93.3。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、3回、2回、1回に減少しました。
 一撃でGキャリアーを無力化できる可能性もかなり高くなっています。
 「完全貫通」をしているならばダメージ期待値は2倍に増えますし、 フル・オート射撃の4倍を計算に含めるのであれば、合計8倍の修正を受けられます。
 命中DMが「+8」のベテランならば、 1戦闘ラウンドに4機のGキャリアーを撃破することも不可能ではないでしょう。
 仮に100門のフュージョンX砲が一斉に射撃を行うのであれば、 毎戦闘ラウンド当たり、200機、300機、400機のGキャリアーを撃破できる筈です。
 TL12の対空砲プラズマA砲100門が撃破できるGキャリアーの数は、 毎戦闘ラウンド当たりで12機、37機、100機という数値でした。
 テックレベル14〜15の火器管制装置高波動フュージョンX砲の組み合わせが 如何に凶悪であるか、思い知らされたような気がします。
 破壊力が尋常ではありません。

 超遠距離(250〜500m)におけるダメージ期待値は、命中DMが「+2」で4.6、「+4」で14.2、「+8」で49.2。
 プラズマA砲の超遠距離におけるダメージ期待値とほぼ同じなのですが、1.5倍に増えていました。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、16回、6回、2回になってしまいます。
 「完全貫通」の2倍と、フル・オート射撃の4倍を合わせれば、ダメージ期待値は6倍に増やせますから、 100門のフュージョンX砲が一斉に射撃を行うのであれば、 毎戦闘ラウンド当たり、50機、133機、300機のGキャリアーを撃破できる計算になりました。
 超遠距離になれば命中率が落ちるので、ダメージ期待値も大きく減ると思っていたのですが、 フュージョンX砲はまだまだ強力です。

 遠距離(50〜250m)の場合は命中率が一律で11+(8.3%)でしたから、ダメージ期待値も一律で0.8です。
 Gキャリアーの無力化に必要な射撃回数は、87回。
 「完全貫通」とフル・オート目標数の8倍で修正をすれば、ダメージ期待値は6.7。
 無力化に必要な射撃回数は11回。
 100門のフュージョンX砲によって無力化できるGキャリアーの数は、 戦闘ラウンド当たり9機になりました。
 超遠方と遠方、超遠距離の破壊力に比べれば随分と見劣りしますが、遠距離まで接近しても、 フュージョンX砲は強力なのです。



 この考察で扱っているのはTL14〜15の対空砲ですが、 テックレベルが13以上になると、超遠方における命中率が更に向上します。
 その結果として引き起こされるのは、超遠方(5〜50km)の距離帯における大虐殺。
 何度も書いていますが、超遠方においては大きな移動速度も回避行動も意味がありません。

 装甲に頼ること、貫通状態を「無貫通」に変えることでダメージの低減を図るのであれば、 フュージョンX砲の貫通力を基準にしたとしても、必要な装甲値は35以上でした。
 それでも狙い撃ちをされたら、「貫通」を防げません。
 狙い撃ちによる「部分貫通」を防ぐためには装甲値70〜80が必要になりますが、 考察の49回「砲兵5:戦車の装甲値」で考察した通り、現実的ではありません。
 装甲値=70を得るだけで、反重力戦車トレピダの容積は100排水素トンに急増。 製造コストも8.86倍に膨れ上がりました。 こんな状態になるのであれば、装甲値=40のトレピダを8台用意する方が良いでしょう。
 そもそも、メガトラの輸送機器設計ルールで与えられる装甲値の上限はテックレベルの5倍
 貫通力「79」を備えたフュージョンZ砲を防ぐ装甲は、テックレベル15の世界でも作れません。
 どうやっても「貫通」を防げない以上、程々の装甲で妥協するべきなのです。

 と言う訳で、テックレベルが15になっても防御を装甲に頼ることはできませんでした。
 このテックレベルでは、敵の対空砲に見つかって、敵の対空砲の射程内を飛行しているのであれば、 その航空機(反重力型輸送機器)は即座に撃ち落とされると考えても良いようです。
 不本意な撃墜を避けたいのであれば、やはり地表すれすれを飛行しなければなりません。
 テックレベル13以上の世界でも相変わらず、あるいは、より一層、 航空電子機器の活用が重要な要素となるでしょう。



 今度は、表76に対応する考察です。
 表76の状況とは立場を入れ換えて、帝国側の対空砲が、SW軍の反重力戦車に対して、 どれぐらいの破壊力を発揮するのか、という計算を行ってみました。
 反重力戦車の設計は試みておりませんが、トレピダと同じ防御力(装甲値を備えた) 同じサイズ(耐久値)の車体である、と想定しています。
 帝国側の対空砲は、トレピダと同じようにフュージョンX砲を使用。
 火器管制装置のテックレベルは14〜15となりました。



 という訳で、ダメージ期待値の計算です。


    表79 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標)
       (フュージョンX砲がSW軍戦車を狙い撃った場合)

BW63_Fig79.gif - 11.0KB

 表の形式は、表68と同じ。

 射撃する距離帯が遠方以下(〜5km)であれば、フュージョンX砲の貫通力は「67」。
 ですから装甲値=40の重装甲であっても「部分貫通」が可能です。

 超遠方(5〜50km)になるとフュージョンX砲の貫通力は半減。
 貫通力「33」では装甲値=40を「貫通」できません。
 そのため今回も、超遠方において狙い撃ちの選択を強いられてしまいます。



 超遠方(5〜50km)における命中難易度は〈並:7+〉でしたが、 狙い撃ちを選択すると難易度がひとつ上がって〈難:11+〉になりました。
 狙い撃ちを行っても難易度が〈難:11+〉にしかならないという点は、 素直に喜ぶべきなのか、恐ろしいと嘆くべきなのか、分かりません。
 命中DMが「+2」ならば命中率が9+(27.8%)でダメージ期待値が4.6。
 命中DMが「+4」ならば命中率は7+(58.3%)でダメージ期待値が14.2。
 命中DMが「+8」ならば命中率は3+(97.2%)でダメージ期待値が49.2、
 です。
 SW軍の対空砲(テックレベル12の火器管制装置プラズマA砲)とは、 明らかにダメージ期待値の大きさが異なりました。

 帝国軍の対空砲が、超遠方において、SW軍反重力戦車の無力化を試みた場合、 無力化に必要な射撃回数は、28回、9回、3回、です。
 SW軍の対空砲がトレピダを撃つ場合の、1,512回、227回、14回、と比べてみたところ、 54分の1〜5分の1という効率の良さでした。
 フル・オート目標数も、テックレベル11のプラズマA砲は「2」で、 テックレベル14の高波動フュージョンX砲は「3」ですから、射撃速度でも負けています。
 どうにも勝ち目がありません。

 掲示板に書き込んだ、
 帝国やゾダーン軍の場合、「フュージョンX砲(50Mwのパルス・レーザー砲)で、 18kmの距離に置かれた、0.5メートル四方の標的」に当たれば命中扱い。
 目標(戦車)のコクピット、探知機、砲身、反重力ユニットなど、任意の場所に当てられる(装甲の薄い部分に着弾する)ので、 貫通可能=「打ち破れる」。

 という発言は、この考察結果によるものです。
 帝国軍の(テックレベル14〜15で製造された)火器管制装置は、最大射程ギリギリの超遠方であっても、 装甲の薄い箇所(0.5メートル四方の標的)を狙い撃ちすることも可能なのです。
 そのために、特別な技量は要りません。
 帝国軍の対空砲ならば、訓練を終えたばかりの新兵でも可能だという事実が涙を誘います。
 SW軍の過酷な訓練は何のためにあるのでしょうか。



 遠方(500m〜5km)まで接近すると、フュージョンX砲の貫通力は初期値の「67」に戻ります。
 SW軍反重力戦車の装甲値=40を「部分貫通」できるようになりました。
 狙い撃ちをする必要はありません。
 そして、命中DMが「+2」ならば命中率が5+(83.3%)でダメージ期待値が28.8。
 命中DMが「+4」ならば命中率は3+(97.2%)でダメージ期待値が49.2。
 命中DMが「+8」ならば命中率は−1+(97.2%)でダメージ期待値が93.3、
 になりました。
 SW軍反重力戦車の無力化に必要な回数は、5回、3回、2回、です。

 帝国軍の火力は圧倒的でした。
 遠方でのダメージ期待値を比較しているだけですが、命中DM「+2」の一般兵同士で比べるのであれば、 帝国軍の火力はSW軍の9倍になります。
 やはり勝ち目がありません。
 どうしたら良いものでしょうか。



 蛇足ですが、面白そうなので、ちょっと計算してみました。
 SW軍反重力戦車が、移動速度800km/hで突撃してくると想定しましょう。
 TL14〜15の対空砲として用意したものは、 トレピダと同じ主砲(=高波動フュージョンX砲)、 同じコンピュータを搭載した、自走対空砲です。
 砲手の命中DMは、「+2」を想定。

 高波動フュージョンX砲の最大射程は超遠方(18km=150mマスで120マスに相当)。
 目標であるSW軍反重力戦車の移動速度は800km/hですから、 1戦闘ラウンド(=6秒)に8マスを移動できます。
 目標が、最大射程の18kmに入ってから遠方(500m〜5km:150mマスで29マス以内)の距離帯に突入できるまで、 少なくとも11回の対空射撃を受けることとなりました。

 超遠方における対空射撃は、目標の重装甲(装甲値=40)を「貫通」するために、 狙い撃ちが不可欠です。
 命中DMが「+2」ならば、命中率は9+(27.8%)まで下がり、ダメージ期待値が4.6でした。
 高波動フュージョンX砲のフル・オート目標数は「3」ですから、実際のダメージは4倍されます。
 同一目標に集中攻撃を行うことで、ダメージ期待値は4倍の18.3。
 対するSW軍反重力戦車の耐久値は、126/290ポイントです。
 SW軍反重力戦車1台を無力化するために必要な射撃回数は7回となりました。
 帝国軍の対空砲は、11回の射撃で1台か、運が良くても2台のSW軍反重力戦車を撃破することしかできません。
 重装甲を備えたSW軍反重力戦車は、それなりに厄介な目標なのです。

 ちなみに、SW軍反重力戦車の装甲値が40未満、具体的には17〜33の範囲にある場合、 対空砲は狙い撃ちをする必要がありません。
 狙い撃ちなしでも「部分貫通」の状態を得られるからです。
 そうすると、命中率は5+(83.3%)となり、ダメージ期待値は28.8。
 フル・オート射撃の4倍で、ダメージ期待値は115まで急上昇。
 1.25回の射撃でSW軍反重力戦車1台を無力化できるということになりました。
 11回の射撃を行えるならば、9台のSW軍反重力戦車を無力化できる訳です。
 ダメージ期待値を6分の1に軽減できる装甲は、しっかりとその役目を果たしていると言えるでしょう。
 重装甲が無かったら、わずか1台の対空砲を相手に、10台の戦車中隊がほぼ全滅しています。

 更に装甲が薄い場合、具体的には装甲値が16以下の目標を撃つ場合、 対空砲は狙い撃ちなしでも「完全貫通」となりました。
 ダメージ期待値は57.5。
 フル・オート射撃の4倍で、ダメージ期待値は230です。
 SW軍反重力戦車1台の無力化に必要な射撃回数は0.75回ですから、 11回の射撃を行えるのであれば、14〜15台を撃破可能。

 SW軍反重力戦車は主砲(=プラズマA砲)の射程不足を補うため、 目標に対して急接近を試みる必要が有る訳ですが、その装甲が不十分(33以下)だった場合、 アウトレンジされる超遠方を飛行している間、対空砲1門当たり9台〜15台を撃破されてしまうことが分かりました。
 十分な装甲(34以上)を備えていれば、ある程度のダメージには耐えられますので、急接近中の損害は1〜2台に限定できるでしょう。
 戦車に装甲が必要な理由を実感できました。



 遠方(500m〜5km)の距離帯まで接近すると、 SW軍反重力戦車の主砲(=プラズマA砲)が届くようになります。
 つまり、対空砲への反撃ができるようになった訳ですが、それと同時に、 対空砲(=高波動フュージョンX砲)も熾烈になりました。
 命中率が5+(83.3%)ですから、ダメージ期待値は28.8。
 フル・オート射撃の4倍で、ダメージ期待値は115になります。
 SW軍反重力戦車の無力化に必要な射撃回数は、1.25回。
 対空砲1門が毎戦闘ラウンド当たり1台のSW軍反重力戦車を撃破できるようです。



 更なる蛇足ですが、今度はテックレベル14〜15の火器管制装置50Mwパルス・レーザー砲の組み合わせで、ダメージ期待値を求めてみました。
 もちろん、この組み合わせの真意はゾダーンの反重力戦車 Z80を評価することですが。
 目標の移動速度は今回も800km/hを想定しています。


    表80 対空射撃のダメージ期待値(800km/h:大きな目標)
      (50Mwパルス・レーザー砲がトレピダを狙い撃った場合)

BW63_Fig80.gif - 11.2KB

 表の形式は、表68と同じ。

 射撃する距離帯が超遠距離以下(〜500m)ならば、50Mwパルス・レーザー砲の貫通力は「51」。
 ですから装甲値=40の重装甲であっても「部分貫通」が可能です。

 しかし、遠方以上(5km〜)になると50Mwパルス・レーザー砲の貫通力は半減。
 貫通力「25」では装甲値=40を「貫通」できません。
 そのため超遠方と遠方においては、狙い撃ちの選択を強いられてしまいます。



 こういった状況なので、超遠方(5〜50km)と遠方(500m〜5km)における命中率は、以下のようになりました。
 命中DMが「+2」ならば命中率が9+(27.8%)でダメージ期待値が9.2。
 命中DMが「+4」ならば命中率は7+(58.3%)でダメージ期待値が28.3。
 命中DMが「+8」ならば命中率は3+(97.2%)でダメージ期待値が98.3、です。
 超遠方におけるダメージ期待値は、帝国軍の対空砲(=高波動フュージョンX砲)の2倍。
 遠方におけるダメージ期待値は、帝国軍の3分の1(命中DM「+2」)から2分の1(命中DM「+4」)、 あるいは同等(命中DM「+8」)といったところ。  SW軍の対空砲と比較した場合とは、明らかに傾向が異なります。
 帝国軍の対空砲(=高波動フュージョンX砲)よりも、 ゾダーン軍の対空砲(=50Mwパルス・レーザー砲)の方が優秀なのではないでしょうか。

 少なくとも超遠方の距離帯ならば、帝国軍の2倍のダメージを与えられます。
 遠方になると命中DMの大きさにもよりますが、3分の1〜同等のダメージしか与えられないという点で不利。
 最も使用頻度の多い距離帯が何処になるかが決め手だと思うのですが、 未だに超遠方と遠方、どちらでの戦闘頻度が多くなるのか判断できません。

 フル・オート目標数は、テックレベル14の高波動フュージョンX砲も、 50Mwのパルス・レーザー砲は「3」なので、射撃速度は同等でした。

 帝国の高波動フュージョンX砲とゾダーン軍の50Mwパルス・レーザー砲
 このどちらがより優れた対空砲かという問題については、なかなか答えが出せません。



 対空砲のダメージ期待値については、期待以上に大きな数値が得られました。

 装甲を「貫通」すれば、という条件付きですが、 TL5〜6の対空砲の命中率とダメージ期待値も馬鹿にできません。
 超遠方(5〜50km)の距離帯であっても、数回〜数十回の射撃でGキャリアーを撃破できることが明らかになりました。
 対空砲陣地に近付く航空機は、味方の損害を覚悟で接近するか、対空砲の射程外から精度の低い爆撃を行うか、 という選択を迫られることになるでしょう。

 テックレベルが9以上になると、対空射撃は命中率が大幅に高くなりました。
 超遠方を無防備に飛ぶ航空機は、十分な射程を備えた対空砲から集中射撃を浴び、 極めて短時間で撃破されてしまうことでしょう。
 それを防ぐためには、電子妨害を行ったり、超低空を飛行して地形に隠れるなど、撃たれないという対策しかありません。
 厚い装甲を纏い、貫通状態を「無貫通」に抑えたとしても、 メガトラの装甲は無敵ではないということが分かりました。
 ダメージ期待値を6分の1〜60分の1まで小さくすることは出来ても、ゼロにすることまでは出来ないのです。

 プラズマA砲を筆頭とした高エネルギー火器が登場すると、 航空機は対空砲に対して、更に弱い立場となることが判明しました。
 戦場の随所に潜む対空砲から撃たれ、撃破されてしまうことを避けたいのであれば、 すべての車輌が反重力化されても(テックレベル11)、車輌と航空機の区別が存在しなくなっても(テックレベル12)、 それらの車輌は地表すれすれを飛行しなければならないようです。
 航空機にとって、安全な距離帯というものは存在しません。
 車輌や航空機が高空を最高速度で飛び回れるのは、安全な後方地域か、味方が対空砲を徹底的に排除した後の戦場だけとなるでしょう。

 テックレベルが13以上になると、超遠方における命中率が更に向上します。
 射程の長いフュージョン砲と組み合わされた結果として引き起こされるのは、 超遠方(5〜50km)の距離帯における大虐殺。
 何度も書いていますが、超遠方においては大きな移動速度も回避行動も意味がありません。
 そして、遠方におけるダメージ期待値は、テックレベル12のプラズマA砲と比べて9倍の大きさでした。
 このテックレベルでは、敵の対空砲に見つかって、敵の対空砲の射程内を飛行しているのであれば、 その航空機(反重力型輸送機器)は即座に撃ち落とされると考えても良いようです。



 また、ダメージ期待値の計算によって、 対空砲の「貫通」を防げる防御力(装甲値=40)の重要性が明らかとなりました。
 装甲値=40の重装甲でも対空砲を「貫通」を常に防げるとは限りませんが、 装甲の存在によって、ダメージ期待値を6分の1〜60分の1まで小さくできることは事実です。
 使い方によっては、十分に役立てることができるでしょう。



 蛇足ながら、「COACC」のルールで設計される航空機は、 異様に大きな耐久値を持っていることが判明しました。
 反重力型輸送機器に比べて、非常に大きな耐久値を持っていることが明らかになりましたが、 耐久値が大きければ、それだけ多くの命中弾に耐えることができます。
 「COACC」で定義されている耐久値は、 対空砲の命中率の高さとバランスを取るために故意に大きく設定されているのではないでしょうか。





帝国とソード・ワールズ、ゾダーンとの戦力比


 最後に、火器管制装置と使用する高エネルギー兵器の性能が、戦場においてどんな違いを作り出すのか。
 此処までの考察を基にして、実戦における戦力比を求めてみました。

 帝国軍とソード・ワールズ連合軍(SW軍)、もしくはゾダーン軍の反重力戦車が惑星上で対決した場合、 勝利を得るためにはどれだけの戦力比が必要か、また、その際にどれだけの損害を受けてしまうか、という計算です。
 双方の反重力戦車が、遮蔽物のない平原で、遠方(500m〜5km)の距離を保って主砲を撃ち合う想定をしました。
 帝国軍が使用している反重力戦車は公式設定通りのトレピダですが、 SW軍とゾダーン軍もほぼ同性能(容積14排水素トン、無力化までの耐久値が126、装甲値=40、コンピュータ・モデル=3)の 反重力戦車を用いていると考えています。
 反重力戦車は800km/hで飛び回っている状態を想定しました。




(1)帝国とソード・ワールズ

 まずは、帝国軍とSW軍が対決した場合から。

 前章の表75、表78で考察した通り、帝国軍の反重力戦車は テックレベル14の火器管制装置とフュージョンX砲を装備しているため、 SW軍の反重力戦車が装備している テックレベル12の火器管制装置とプラズマA砲の組み合わせと比較した場合、 9倍のダメージを与えることが出来ました。
 単純に攻撃力が9倍であると想定してみると、以下のようになります。


      表81 対空砲による目標撃破率(帝国VSソード・ワールズ)

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 表の左端は、戦車の戦力比です。
 左側が帝国軍の数で、右側がSW軍の数。
 例えば「10:10」の戦力比ならば、 帝国軍とSW軍の双方が10台ずつの戦車を用意して戦いに挑んだ、ということになります。
 「1:10」の戦力比ならば、1台の帝国軍戦車に対して、10台のSW軍戦車が襲い掛かったという形になるでしょう。

 表の右側は戦闘結果です。
 欄の上側には帝国軍の損害、下側にはSW軍の損害を並べました。



 戦力比が「10:10」〜「5:10」の場合、
 SW軍は帝国軍の戦車1台を撃破できますが、同時に帝国軍の反撃で、SW軍の戦車10台が撃破されます。
 帝国軍戦車1台の撃破と引換えにSW軍戦車は10台すべてが全滅するという意味ですが、 2倍程度の戦力比では相手にもされないという哀しい現実が明らかになりました。
 SW軍の戦車が帝国軍に対抗するためには、もっと大きな戦力比を実現しなければなりません。

 戦力比が「4:10」の場合も、戦闘結果はそれほど変わりません。
 帝国軍戦車2台を撃破する代わりに、SW軍戦車は10台が全滅しています。

 戦力比が「3:10」になって初めて、SW軍が勝利を得られるようになりました。
 帝国軍の戦車3台を撃破して、全滅させることに成功しています。
 その代償としてSW軍戦車が受けた損害は8台。戦場に投入した戦車の80%が失われてしまいました。
 「勝利」という言葉よりも、「相討ち」という言葉の方が相応しいように思えます。

 戦力比が「2:10」になると、SW軍の損害が激減しました。
 帝国軍戦車2台の撃破(全滅)と引き換えに、SW軍戦車の損害は3台まで抑えられています。
 帝国軍とSW軍の戦車が対等に戦うためには、最低でも5倍の戦力が必要であると言えるでしょう。

 戦力比が「1:10」、10倍の戦力を用意すれば、帝国軍の損害とSW軍の損害が同等になります。
 帝国軍戦車1台の撃破(全滅)と引き換えに、SW軍戦車の損害が1台になりました。

 帝国軍に一切の反撃を許さない、つまり、SW軍の損害をゼロに抑えたいのであれば、 戦力比は「1:20」が必要であると分かりました。
 あまり現実的な数字ではありませんが、テックレベルの差はこうした一方的な戦闘結果を齎してしまうようです。



 この戦闘結果は「遠方(500m〜5km)での主砲の撃ち合い」を想定しています。
 SW軍戦車がプラズマA砲の射程(5.1km)に飛び込むまで、 超遠方(5〜50km)で射程18kmのフュージョンX砲で一方的に撃たれる(アウトレンジされる) といった哀しい状況は考慮していません。
 そういった状況も計算に含めるのであれば、勝利に必要な戦力比はより大きなものとなってしまうことでしょう。

 遠方での戦闘結果はSW軍にとって明らかに不利ですが、超遠方での戦闘は一方的なアウトレンジ攻撃です。
 SW軍が勝利を得るためには、10倍以上の数を集めるだけではなく、 遮蔽物や待ち伏せなどの戦術を駆使して、帝国軍の懐(5km以内)へ飛び込む作戦が不可欠だと分かりました。




(2)帝国とゾダーン

 今度は、帝国軍のトレピダと、ゾダーン軍の反重力戦車 Z-80が対決した場合です。
 表79と表80で考察したように、50Mwパルス・レーザー砲のダメージ期待値は、 遠方(500m〜5km)においてはフュージョンX砲に劣り(3分の1)、 超遠方(5〜50km)においてはフュージョンX砲に優る(2倍)という特性を発揮していました。
 ですから戦力比の計算も、遠方と超遠方の2つの距離帯で行うことにします。

 まずは、帝国軍のフュージョンX砲が有利な、遠方での戦闘結果から。


    表82 対空砲による目標撃破率(帝国VSゾダーン:遠方)

BW63_Fig82.gif - 11.0KB

 表の形式は、表81と同じです。



 戦力比が「10:10」、同数の場合、ゾダーン軍は帝国軍の戦車3台を撃破。 そして同時に帝国軍の反撃で、ゾダーン軍の戦車10台が撃破されます。
 帝国とゾダーンのテックレベルはほとんど変わりません。
 ですから、この戦闘結果はフュージョンX砲50Mwパルス・レーザー砲より優れているということの証明でもあります。

 戦力比が「5:10」、2倍の戦車を用意できるのであれば、戦闘はゾダーン軍の勝利に終わるでしょう。
 帝国軍の戦車5台を撃破=全滅させる代わりに、ゾダーン軍戦車の損害は7台ですから、 どちらかと言えば「相討ち」と表現するべきかも知れませんが。

 戦力比が「4:10」、2.5倍の戦車を用意することで、双方が受ける損害は同等になります。
 帝国軍戦車4台の撃破と引換えにゾダーン軍が受ける損害は4台でした。
 帝国軍とゾダーン軍の戦車が「遠方」の距離帯で対等に戦うためには、 少なくとも2.5倍の戦力が必要なのです。

 戦力比が「3:10」になると、ゾダーン軍の損害の方が少なくなりました。
 帝国軍の戦車3台を撃破する代わりにゾダーン軍が受ける損害は2台のみです。

 戦力比が「2:10」になると、ゾダーン軍が圧倒的に有利となりました。
 帝国軍戦車2台の撃破(全滅)と引き換えに、ゾダーン軍戦車が受ける損害は1台のみ。
 これだけの戦力比があれば、損害を気にせず戦闘を仕掛けることができるでしょう。

 戦力比が「1:10」になると、ゾダーン軍の損害が無くなりました。
 10倍の戦力を用意することで、一方的な殲滅が可能になった訳です。



 今度は反対に、帝国軍のフュージョンX砲が不利となっている、超遠方での戦闘結果を見てみましょう。


    表83 対空砲による目標撃破率(帝国VSゾダーン:遠方)

BW63_Fig83.gif - 11.1KB

 表の形式は、表81と同じです。



 戦力比が「50:10」〜「20:10」の場合、 戦力比が2分の1〜5分の1になると、ゾダーン軍の戦車は負けてしまいます。
 帝国軍の戦車3〜8台の撃破と引き換えに、ゾダーン軍の戦車10台が全滅すると分かりました。

 戦力比が「10:10」、戦車の数が同数になれば、 ゾダーン軍は帝国軍の戦車10台を撃破=全滅させることが可能となります。
 ゾダーン軍の損害は戦車4台でした。
 超遠方においては、フュージョンX砲よりも 50Mwパルス・レーザー砲の方が優れているのです。

 戦力比が「4:10」〜「5:10」。 2〜2.5倍の戦車を用意できるのであれば、ゾダーン軍の損害は激減します。
 帝国軍の戦車4〜5台の撃破と引換えに、ゾダーン軍が受ける損害は1台のみ。
 それほど損害を気にせずに済むでしょう。

 戦力比が「3:10」、3倍の戦力比でゾダーン軍の損害は無くなります。



 帝国軍のフュージョンX砲とゾダーン軍の50Mwパルス・レーザー砲では、 距離帯による貫通力とダメージ期待値が大きく異なっているので、戦力比の計算も興味深い結果が出てきました。

 帝国軍はできる限り超遠方での戦闘を避けるべきです。
 最も有利な距離帯は遠方ですから、敵(ゾダーン軍)の懐(5km以内)まで飛び込んで戦闘を行うべきでしょう。
 そうすれば、敵より少ない戦力であっても、戦闘に勝利することが可能となります。
 戦力比が同等か優っているのであれば、味方の損害をより少なくすることができると分かりました。
 そのためには超低空を飛行し、地形を障害物として使うなどの対策が欠かせません。



 ゾダーン軍は超遠方での戦闘を上手く活用すべきでしょう。
 50Mwパルス・レーザー砲の射程は長く、125kmもあるので、広い範囲に存在する目標を狙い撃つことが可能です。
 目標が高度150m以上を飛行していれば、容易に視線を結べます。 視線さえ結べるのであれば、特定の戦場に数倍の火力を集中することも容易でしょう。

 フュージョンX砲の18kmしかない射程と比べるのであれば、 50Mwパルス・レーザー砲の長射程は大きなアドバンテージなのですが、 目標(帝国軍の戦車)が超低空を飛行している場合、そのアドバンテージはほとんど発揮できません。
 かといって目標を視認するため自身が高度を取ったら、今度は自身が集中砲火を浴びてしまいます。
 上記の通り、50Mwパルス・レーザー砲が超遠方では有利だと言っても、無敵になっている訳ではありません。 50Mwパルス・レーザー砲を搭載するゾダーン軍の反重力戦車が、 そのアドバンテージ(長い射程)を活用する機会は、なかなか巡ってこないでしょう。

 とは言え、50Mwパルス・レーザー砲の存在が、帝国軍戦車に高空飛行を躊躇わせていることは間違いのない事実です。
 そう考えると、ゾダーン軍の50Mwパルス・レーザー砲は、 帝国軍に制空権を与えないための抑止力として活用されているのではないでしょうか。
 50Mwパルス・レーザー砲が遠方における戦車戦で不利になっていることは間違いありませんが、 その一方で、帝国軍の航空偵察や安全な空輸といった事態に関しては抑止に成功しているとも言える訳です。
 抑止が目的であれば、これほど効果的な兵器は存在しません。
 ゾダーン軍の反重力戦車Z80は、明確な意図を以て設計/製造されているのだと考えることができるでしょう。





結論


 今回は、対空射撃に関する考察を行いました。



 まずは「COACC」に掲載されていた地対空戦闘ルールから対空射撃に該当する部分を抜粋し、 「MT版の個人戦闘ルール」と比較しています。
 その結果、小火器による対空射撃の部分は対応するものが見つかりませんでしたから、 この射撃ルールは簡易ルールとして処理されているのだと判断しました。
 また、軽対空砲〜重対空砲による対空射撃は、 テックレベル5〜6の火器管制装置がレーダー無しの火器管制装置に、 テックレベル7の火器管制装置がレーダー有りの火器管制装置に、ぴたりと当てはまることを発見しています。
 レーダーの使用や電子妨害の影響を考えると、より一層、その可能性が高まっていますが、対空砲による対空射撃は、 この距離帯遠方(500m〜5km)での射撃を前提にしているのかも知れません。



 次は、様々な兵器のタイプ、テックレベル、距離帯毎に異なる命中率について考察しました。

 小火器(照準器あり)、あるいは、TL5〜6の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行う場合、 最も命中率の高い距離帯は超遠距離(250〜500m)ですが、 超遠方(5〜50km)の目標に対して対空射撃を行う場合は移動DMの影響を全く受けないので、 特に高速で移動する目標に対しては超遠方での射撃が効果的となるようになりました。
 超遠方まで届く重対空砲が、その存在意義が大きく主張できるようになっています。

 TL9〜12の対空砲大きな目標に対して対空射撃を行うのであれば、 航空機は、それがどんなに高速で飛行していても(1,200km/hを超える超音速であっても)、 対空射撃によって超遠方(5〜50km)で撃墜される可能性が高くなりました。
 テックレベル9以上の世界においては空対地ミサイルの登場を待つまでもなく、 航空機による敵地への高空侵入は否定されているのです。

 TL13以上の対空砲になると、 航空機に対する一方的な超遠方からのアウトレンジ攻撃が可能となりました。
 ですから、テックレベル13以上のトラベラー世界に「制空権/航空優勢」という概念は有り得ません。
 どんなに優勢な航空戦力を持っていても、それらは対空射撃によって片端から撃墜されてしまいます。

 ですから、
 反重力化された機甲部隊や歩兵部隊は、地形に隠れながら超低空をひっそりと移動。
 友軍は目標付近で集結し、圧倒的多数を以て敵軍を撃破する。
 といった戦術行動が基本となるのではないでしょうか。
 高空を移動する部隊は、周囲5〜50km以内に存在する対空砲から集中砲火を浴びてしまうため、そうせざるを得ないのです。

 対空射撃の命中率を考察した結果、 トラベラー世界の「制空権/航空優勢」がどんな形に変化しているのか、 それを知ることが出来ました。
 個人的には、これが今回の考察における最大の成果だと考えています。



 その次は、対空射撃のダメージ期待値についての考察を行いました。

 装甲を「貫通」すれば、という条件付きですが、 TL5〜6の対空砲の命中率とダメージ期待値も馬鹿にできません。
 超遠方(5〜50km)の距離帯であっても、数回〜数十回の射撃でGキャリアーを撃破できることが明らかになりました。
 対空砲陣地に近付く航空機は、味方の損害を覚悟で接近するか、対空砲の射程外から精度の低い爆撃を行うか、 という選択を迫られることになるでしょう。

 テックレベルが9以上になると、対空射撃は命中率が大幅に高くなりました。
 超遠方を無防備に飛ぶ航空機は、十分な射程を備えた対空砲から集中射撃を浴び、 極めて短時間で撃破されてしまうことでしょう。
 それを防ぐためには、電子妨害を行ったり、超低空を飛行して地形に隠れるなど、撃たれないという対策しかありません。
 厚い装甲を纏い、貫通状態を「無貫通」に抑えたとしても、 メガトラの装甲は無敵ではないということが分かりました。
 ダメージ期待値を6分の1〜60分の1まで小さくすることは出来ても、ゼロにすることまでは出来ないのです。

 プラズマA砲を筆頭とした高エネルギー火器が登場すると、 航空機は対空砲に対して、更に弱い立場となることが判明しました。
 戦場の随所に潜む対空砲から撃たれ、撃破されてしまうことを避けたいのであれば、 すべての車輌が反重力化されても(テックレベル11)、車輌と航空機の区別が存在しなくなっても(テックレベル12)、 それらの車輌は地表すれすれを飛行しなければならないようです。
 航空機にとって、安全な距離帯というものは存在しません。
 車輌や航空機が高空を最高速度で飛び回れるのは、安全な後方地域か、味方が対空砲を徹底的に排除した後の戦場だけとなるでしょう。

 テックレベルが13以上になると、超遠方における命中率が更に向上します。
 射程の長いフュージョン砲と組み合わされた結果として引き起こされるのは、 超遠方(5〜50km)の距離帯における大虐殺。
 何度も書いていますが、超遠方においては大きな移動速度も回避行動も意味がありません。
 そして、遠方におけるダメージ期待値は、テックレベル12のプラズマA砲と比べて9倍の大きさでした。
 このテックレベルでは、敵の対空砲に見つかって、敵の対空砲の射程内を飛行しているのであれば、 その航空機(反重力型輸送機器)は即座に撃ち落とされると考えても良いようです。

 また、ダメージ期待値の計算によって、 対空砲の「貫通」を防げる防御力(装甲値=40)の重要性が明らかとなりました。
 装甲値=40の重装甲でも対空砲を「貫通」を常に防げるとは限りませんが、 装甲の存在によって、ダメージ期待値を6分の1〜60分の1まで小さくできることは事実です。
 使い方によっては、十分に役立てることができるでしょう。



 最後に、帝国軍とソード・ワールズ連合軍(SW軍)、もしくはゾダーン軍の反重力戦車が惑星上で対決した場合、 勝利を得るためにはどれだけの戦力比が必要か、また、その際にどれだけの損害を受けてしまうか、という計算をしてみました。
 SW軍はテックレベルの差を覆すため、最低でも5倍以上の戦力を用意しなければ、帝国軍に勝てません。
 ゾダーン軍の場合はテックレベルの差がほとんど無いものの、主砲の特性が異なるため、 2.5倍以上の戦力があれば帝国軍に勝てるでしょう。
 しかしながら超遠方で戦う場合は、ゾダーン軍の方が優位になります。
 ゾダーン軍の反重力戦車は同数であっても、帝国軍を圧倒できると分かりました。
 戦場で反重力戦車を運用する場合、指揮官は上記の事柄をしっかりと理解している必要があるでしょう。






2014.09.28 初投稿。