The Mineral Resource
in the Traveller space 07
Halogen and Rare Gas
トラベラー宇宙の鉱物資源
その7
ハロゲンと希ガス
TITLELINE30.JPG - 1,269BYTES
  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その7です。
 今回の考察対象は「ハロゲン:Halogen」と「希ガス:Rare Gas」。

 「ハロゲン」は、 フッ素(F)塩素(Cl)など、 極めて腐食性が高い(酸化剤としての反応性が高い)元素のグループです。
 アルカリ金属(カリウム他)やアルカリ土金属(ナトリウム他)と結合して、塩を造るため、 塩を作るものという言葉を意味するハロゲン、を名付けられたとか。
 各元素の詳細については後述。

 「希ガス」は、 ヘリウム(He)ネオン(Ne)など、 極めて安定した形で存在する元素のグループです。
 その存在が希少であることから希ガスと名付けられたとのこと。
 これらについても詳細は後述します。

 「ハロゲン」の5元素、「希ガス」の6元素、 合わせて11元素について考察してみました。




 目次
    ※2.ハロゲンの詳細
    ※3.ハロゲンの探索と採掘
       (1)フッ素の採掘
       (2)塩素の採掘
       (3)臭素の採掘
       (4)ヨウ素の採掘
       (5)ハロゲンの流通形態と流通量
    ※4.希ガスの詳細
    ※5.希ガスの探索と採掘
       (1)ヘリウムの採掘
       (2)ネオン〜キセノンの製造
       (3)希ガスの輸送効率
       (4)希ガスの流通形態と流通量
    ※6.まとめ





2.ハロゲンの詳細


 前述の通り、「ハロゲン」は、 フッ素(F)塩素(Cl)臭素(Br)ヨウ素(I)アスタチン(At)の5元素から成る、 極めて腐食性が高い(酸化剤としての反応性が高い)グループです。
 アルカリ金属(カリウム他)やアルカリ土金属(ナトリウム他)と結合して、塩を造るため、 塩を作るものという言葉を意味するハロゲン、を名付けられたとのこと。



 以下に、ハロゲンの消費量を示します。


             表1 世界のハロゲン消費量

MRT07_Fig01.gif - 6.02KB

 データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(トン)を求めています。
 人口1千人当たりの消費量は求めるだけ無駄だったので今回も省略。
 その代り、トン当たりの価格(cr/tons)を載せておきました。 キログラム当たりの価格(cr/kg)が必要ならば、この数値を1,000で割って求めて下さい。



 ハロゲンのそれぞれの用途は、以下のようなものです。



 フッ素(F)は、極めて反応性の高い気体です。
 反応性が高いため、単独の形では自然界に存在しません。
 蛍石(フッ化カルシウム)や氷晶石(Na3AlF6)といった、化合物の形でのみ存在します。

 フッ素は反応性の高さを活かして、金属を製錬する際の還元剤(燐や硫黄の除去)として使われたりもします。
 高純度の金属が安価に得られるメリットは大きいのですが、 フッ素を含んだスラグ(鉱滓)が発生してしまう、環境上のデメリットもあるとのこと。
 フッ素以外の還元剤では、高純度の金属を得られてもコストが高く付くため、 フッ素の使用を止めることは出来ないようでした。

 ボーキサイトからアルミニウム(Al)を製造する際、 その融点を下げるための添加剤として、氷晶石は欠かせない存在です。
 かつては天然ものの氷晶石が利用されていましたが、最近は品質を安定させるため、蛍石から合成した氷晶石が用いられているとのこと。

 蛍石から製造されたフッ化水素(FH)は、半導体の製造に使われます。
 恐らく、これが無ければ半導体は作れません。
 様々な金属の洗浄やエッチングといった用途の他、フロンガスやフッ素樹脂の原材料としても重要。
 フロンガスは冷媒として極めて高性能ですし、フッ素樹脂は耐腐食、難燃、低摩擦などの機能に優れるため、代替製品が存在しません。
 テックレベルが進むにつれて、需要は更に増えていくことでしょう。

 フッ素の消費量は、 古代テラで採掘されている蛍石(フッ化カルシウム)の採掘量に、フッ素の比率、48.7%を掛けて求めました。
 フッ素の供給源として蛍石以外の鉱石が存在する場合には、この数値が怪しくなってきますけれど。多分、大丈夫でしょう。
 価格は、取引されている蛍石の取引価格を、そのまま載せました。
 フッ素単体での取引価格は分かりません。



 塩素(Cl)もまた、極めて反応性の高い気体です。
 反応性が高いため、単独の形では自然界に存在しません。
 海水の中に含まれる塩(塩化ナトリウム)が、一番身近な塩素の化合物ではないでしょうか。

 塩素の用途は様々です。
 殺菌剤や医薬品、漂白剤の原料、具体的には、水道水やプールの殺菌、紙の製造(漂白)など。
 塩化ビニルやウレタン樹脂、エポキシ樹脂など、塩素系樹脂の原料。 特に塩化ビニルは、貴重な石油資源を節約できるという、大きなメリットがあります。
 塩酸(塩化水素の水溶液)も、様々な工業分野で利用されていました。
 各種鉱石の製錬過程においては硫酸と並んで、欠かせない重要物質となっています。

 塩素は、塩化ナトリウムを分解して作られます。
 ですから、塩素の消費量も、 古代テラで採掘されている塩(塩化ナトリウム)の採掘量に、塩素比率、60.7%を掛けて求めました。
 しかし、この数字もかなり怪しい数字、です。
 塩の多くは、工業的に様々な用途のある苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を作るために分解される訳ですが、 その際に副産物として、塩素が発生します。
 ですから、必ずしも需要があって塩素を作り出している訳ではない、というところが大きな問題。
 発生した塩素はすぐに加工されてしまうため、 塩素単体での生産量は調べられなかったのです。
 需要よりも多くの塩素が発生しているため、廃棄方法に困っているという話も見つかりました。
 価格は、塩素単体での価格が見つからなかったため、取引されている塩の取引価格を、そのまま載せています。



 臭素(Br)は、反応性はそれほど高くありませんが、毒性の強い元素です。
 珍しいことに、単独の元素でありながら、常温で液体です。
 毒性が強いので、何らかの化合物としておいた方が安全だと思われますが。

 臭素の用途として、まず難燃剤の材料、が挙げられます。
 分子との結合力が強いので、臭素を添加した高分子材料(プラスチック)を含んだ物質は燃え難くなる、とのこと。
 鎮静効果のある医薬品や、除草剤、殺虫剤としての農薬原料。
 写真の感光剤(ブロマイドの語源は臭素)など。

 臭素は海水の中に微量ながら存在しており、製塩の際に生じる「にがり」の中から、 あるいは、特別なかん水の中から、臭化マグネシウム(MgBr2)を取り出し、分離することによって製造されています。



 ヨウ素(I)は、常温で固体の元素です。
 危険な毒物ではありますが、同時に、人間にとっては生命維持に必須の元素でもありました。
 ヨウ素の摂取量が少ない土地に住む(例えば内陸部の)住民は、 食塩や乳児用の粉ミルクにヨウ素を添加するなどして、必要な摂取量を補っているそうです。
 しかしヨウ素には過剰摂取による副作用もありますので、 既に摂取量が多い土地に住む(例えば臨海部の)住民にとって、そうした食品が健康被害を齎しかねません。
 ですから、ある土地ではヨウ素の添加が法律で強制され、 別の土地ではヨウ素の添加が法律で禁止されている、という状況が発生するでしょう。
 シナリオ・ネタとしては、面白いと思います。

 ヨウ素の用途は、消毒薬を含む医薬品が25%、家畜の飼料に添加されるものが15%、 印刷用のインクや染料に15%、工業用の触媒に15%、写真乳剤に10%、という割合になっています。
 ヨウ素が単独で用いられる訳では無く、その多くは何らかの化合物となっていますが。

 ヨウ素は、ヨウ化物を含んだ地下水などから抽出して生産されます。



 アスタチン(At)は、 ビスマス(Bi)にアルファ線を当てることで人工的に製造される、 半減期が極めて短い(最長でも8時間の)人工元素です。
 安定した同位体が存在しないため、用途は確立されていません。
 作った傍からアルファ崩壊してしまうので、アスタチンの特性を利用することすら出来ないのです。

 特殊な有機物と化合させて人体の癌細胞内部へ送り込み、その癌細胞をアルファ線で破壊する、 という方法が研究されているそうですが、実用は未だ遠い模様。
 核中和装置というアイテムの存在するトラベラー世界ならば、そのアルファ崩壊を抑えて何とか利用できるのかも知れませんが、 わざわざ、アスタチンに拘る理由が残っているかどうかは分かりません。
 ですから、アスタチンの採掘については考えませんでした。



 今度は、ハロゲンの採掘や調達経費(コスト)、流通価格についても考えてみます。





3.ハロゲンの探索と採掘


 今回も、ハロゲンの採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)フッ素の採掘

 フッ素(F)の消費量は、人口10億人当たりで197,000トン。
 主な用途は、金属精錬やアルミニウム製造の際に用いる添加剤、半導体の製造、金属の洗浄、フッ素樹脂の原料です。



 フッ素は主に蛍石と呼ばれる鉱石の中から取り出されます。
 この蛍石の主成分はフッ化カルシウム(CaF2であり、 そのまま炉の中へ放り込んで金属の精錬に利用するか、 硫酸と反応させてフッ化水素(HF)を取り出して利用していました。
 この蛍石を、ここでは「フッ素鉱石」と呼ぶことにします。
 この「フッ素鉱石」の採掘について、考えてみました。

 採掘した「フッ素鉱石」を製錬してフッ化カルシウムを取り出すための手順は、 の場合とほぼ同様です。



 「フッ素鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(フッ素鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 フッ素鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なフッ素鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表2 フッ素鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT07_Fig02.gif - 4.96KB

 フッ素鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したフッ素鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。
 見つかった鉱床は、とても投資額に引き合うものではないでしょうが。



 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更して下さい。
 「フッ素鉱石」の重さについては、1排水素トン=20重量トンという数値を用います。
 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのフッ素鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「フッ素鉱石」の品位(採掘した鉱石の中に含まれるフッ素の重量)は、 便宜上、2%(鉱石1トン中に20kg)を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「フッ素鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、2%であると考えてください。

 「フッ素鉱石」の品位として2%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、 ほぼ純粋なフッ化カルシウムとなった「フッ素鉱石」を 「フッ素精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 その品位は25倍の50%。
 フッ化カルシウムの中でフッ素が占める割合は48.7%ですが、 計算を簡略化するため、50%であると設定しました。
 つまり、品位2%の「フッ素鉱石」25トンから、 品位50%の「フッ素精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表3 フッ素鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT07_Fig03.gif - 5.06KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。

 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘された「フッ素鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「フッ素精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり150cr。

 「フッ素精鉱」は排水素トン当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難です。
 工業的用途にフッ素を利用している星系の大半は、 同じ惑星上の何処かで「フッ素鉱石」を採掘していることでしょう。

 1排水素トン=20重量トンという数値を用いるのであれば、 1排水素トン当たりの価格は3,000crまで大きくなります。
 この金額でも、恒星間の取引は困難ですが。



 フッ素の流通は「フッ素精鉱(フッ化カルシウム)」の形で行われることが一般的でした。
 しかしテックレベルが上がるにつれて、徐々に増えていく流通形態があります。
 それは「無水フッ酸」と言い、 フッ化水素の温度を19℃以下の低温に保つことで、液化させたものでした。

 フッ化水素の中でフッ素が占めている割合は95%。
 つまり、その品位は95%です。
 ですから、「フッ素精鉱(フッ化カルシウム)」2トンを製錬することで、 「無水フッ酸(フッ化水素)1トンが得られる計算となりました。
 「フッ素精鉱」2トンから「無水フッ酸」1トンを得るためのコストは、 「フッ素」2トンの購入費用300crと、製錬費用400crです。
 「無水フッ酸」1トン当たりの価格は800crですから、 製錬所の利益は1トン当たり100crになりました。

 「無水フッ酸」は多くの場合、金属精錬やアルミニウム製造には使えませんが、その他の用途には使えます。
 輸送に必要な容積と輸送コストが減るのであれば、恒星間の取引には有用な流通形態でしょう。

 「無水フッ酸」の重さは1排水素トン=10重量トンですから、 1排水素トン当たりの価格は8,000crとなりました。
 この金額ならば、恒星間の取引も可能でしょう。




(2)塩素の採掘

 塩素(Cl)の消費量は、人口10億人当たりで218万トン。
 主な用途は、殺菌剤や医薬品、漂白剤の原料、塩素系樹脂の原料、塩酸でした。
 世界のテックレベル(工業レベル)が発展すると、食品としての消費より、工業的用途による消費の方がはるかに大きくなるのです。



 塩素は主に、 塩(塩化ナトリウム)から苛性ソーダを製造する際の副産物、として発生します。
 他にも、塩素を含んだ鉱石を製錬(還元)すれば発生する訳ですが、とりあえず此処では、 塩素の原料としてだけを取り上げました。

 は、その多くが岩塩の形で採掘されます。
 日本人ならば、海水から塩を作る方法(天日製法)を真っ先に思い浮かべると思いますが、 世界的に見ると、海水から作られる塩は3分の1程度しかありません。
 残り3分の2は、岩塩の採掘、あるいは、地下塩水(かん水)の採取によって得られています。
 ですから此処では岩塩を取り上げ、その採掘について、考えてみました。

 天日製塩で得られるに関しては、次回以降の考察で取り上げたいと考えています(詳細は未定)。



 「岩塩」を採掘するためには、新たな鉱床(岩塩鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 岩塩鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な岩塩鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表4 岩塩鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT07_Fig04.gif - 4.97KB

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示した岩塩鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンです。
 埋蔵量の単位を重量トンに変更する場合は、 「岩塩鉱」の重さを1排水素トン=20重量トンで計算して下さい。



 探索に成功した場合は、その岩塩鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「岩塩鉱」の品位として便宜上、6%(鉱石1トン中に60kg)を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「岩塩鉱」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、6%であると考えてください。

 選鉱の後、 ほぼ純粋な塩化ナトリウムとなった「岩塩」が得られます。
 その品位は10倍の60%。
 塩化ナトリウムの中で塩素が占める割合は60.7%ですが、 計算を簡略化するため、60%であると設定しました。
 つまり、品位6%の「岩塩鉱」10トンから、 品位60%の「岩塩」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表5 岩塩鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT07_Fig05.gif - 5.09KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。



 採掘された「岩塩鉱」は採掘と同時に選鉱され、 高純度の「岩塩」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たりで40cr。

 上記の通り「岩塩」は排水素トン当たりの取引価格が低いため、 フッ素と同じように、恒星間の取引が困難です。
 恐らく、多くの世界には岩塩の鉱床が存在しており、 その世界上の消費量を賄えるだけの採掘が行われているのでしょう。

 1排水素トン=20重量トンという数値を用いるのであれば、 1排水素トン当たりの価格は800crとなりますが、やはり、恒星間の取引は困難です。



 あまり一般的ではありませんが、 「塩(塩化ナトリウム)」以外の形で流通する塩素についても、 少し触れておきます。



 純粋な「塩素ガス」として流通する塩素は、全体の2%程度でした。
 ですから、10億人当たりの流通量は45,000トン前後。
 通常は「塩素ガス」が発生した時点で即座に、塩素樹脂の製造プラント等へ送り込まれますから、 危険な「塩素ガス」の形で保管や輸送を行う必然性が無い、ということなのでしょう。
 保管や輸送の際には、高圧を掛けてガスボンベの中へ詰め込むか、(−34度以下まで)冷やして液化して、その容積を削減します。
 価格は1排水素トンの計算で、トン当たり600crでした。

 重量トンで計算するのであれば、1排水素トン=10重量トンという数値になり、 1排水素トン当たりの価格は6,000cr。
 恒星間の輸送経費を賄うこともできるでしょう。



 「塩酸(37%)」として流通する塩素の量は、全体の5%です。
 10億人当たりの流通量は約30万トン。
 価格は、1排水素トンの計算でトン当たり150crです。

 重量トンで計算するのであれば、1排水素トン=8重量トンなので、 1排水素トン当たりの価格は1,200cr。
 恒星間を輸送するには、まだ価格が安過ぎるようです。




(3)臭素の採掘

 臭素(Br)の消費量は、人口10億人当たりで85,400トン。
 その用途は、難燃剤の材料、鎮静効果のある医薬品や、除草剤、殺虫剤としての農薬原料、写真の感光剤など。



 臭素は海水やかん水の中に、臭化マグネシウム(MgBr2として存在しています。
 ですから、臭素を取り出すためには、 海水を煮詰めて、濃厚な臭化マグネシウムの水溶液を作るか、 元から濃度の高い、特別なかん水を採掘しなければなりません。
 海水そのものから臭素を取り出すことも可能ですが、その存在量があまりにも少ないため、経済的ではありません。
 幸い、製塩の際に生じる「にがり」は濃厚なマグネシウムの水溶液であるため、この中から臭素を取り出すことも容易です。
 また、元から臭素の存在量が多い、特別なかん水の中から取り出す方法も行われていました。

 この臭素の存在量が多い、特別なかん水を「臭素鉱水」と呼ぶことにしましょう。
 此処では最後の方法、「臭素鉱水」を採掘して、 その「臭素鉱水」から臭素を取り出す方法について考えます。



 「臭素鉱水」を採掘するためには、新たな鉱床(臭素鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 臭素鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な臭素鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表6 臭素鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT07_Fig06.gif - 5.01KB

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示した臭素鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンです。
 埋蔵量の単位を重量トンに変更する場合は、 「臭素鉱水」の重さを1排水素トン=10重量トンで計算して下さい。



 探索に成功した場合は、その臭素鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「臭素鉱水」の品位としては便宜上、0.5%(鉱水1トン中に5kg)を用います。
 品位が低過ぎると思われるかも知れませんが、海水の品位は0.0065%(海水1トン中65g)ですので、その数値と比べれば77倍。
 十分に高品位の鉱水であると分かりました。

 この「臭素鉱水」の中へ塩素ガスを吹き込んで、 純粋な臭素を取り出します。
 その品位は当然、100%。
 つまり、品位0.5%の「臭素鉱水」200トンから、 品位100%の「臭素」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表7 臭素鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT07_Fig07.gif - 5.16KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。



 採掘された「臭素鉱水」は採掘と同時に選鉱され、 高純度の「臭素」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たりで400cr。

 「臭素」も排水素トン当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難です。
 大半の世界には臭素の鉱床も存在しており、その世界の需要を満たしているのでしょう。

 重量トンで計算するのであれば、1排水素トン=25重量トンという数値になり、 1排水素トン当たりの価格は10,000cr。
 恒星間の輸送経費を賄うことが出来るかも知れません。




(4)ヨウ素の採掘

 ヨウ素(I)の消費量は、人口10億人当たりで3,910トン。
 その用途は、食品への添加の他、消毒薬などの医薬品、家畜の飼料、印刷用、工業用触媒、写真乳剤など。



 ヨウ素も、ヨウ化物を含んだかん水などから抽出して生産されます。

 海水の中にもヨウ素が含まれていますので、海水から取り出すことが出来ない訳ではありません。
 ですが、海水の中に含まれるヨウ素は、海水1トン当たりで僅か50mgしかありませんでした。
 前項の臭素でさえ、海水1トン当たり65gが含まれていた訳ですから、 その1,300分の1しかないヨウ素の希少性が良く分かります。

 かつては、海藻の中に高濃度(最大で0.1%)のヨウ素が含まれていることを利用し、 海藻からヨウ素を取り出していたとのこと。
 しかしながら特定の海藻だけを選別して集めるという大変面倒な作業が必要ですので、あまり効率は良くありません。



 ヨウ化物を豊富に含んだかん水は、かん水1トン当たり100gのヨウ素を含んでいます。
 その濃度は0.01%にしかなりませんが、海水と比べれば2千倍の濃度。
 このかん水を利用すれば、経済的にヨウ素を得ることができる訳です。

 このヨウ素の濃度が高い特別なかん水を「ヨウ素鉱水」と呼ぶことにしました。
 此処では「ヨウ素鉱水」を採掘して、 その「ヨウ素鉱水」からヨウ素を取り出す方法について考えます。



 「ヨウ素鉱水」を採掘するためには、新たな鉱床(ヨウ素鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ヨウ素鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なヨウ素鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が2MCrの場合はDM+1、
   0.2MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表8 ヨウ素鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT07_Fig08.gif - 5.04KB

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したヨウ素鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンです。
 埋蔵量の単位を重量トンに変更する場合は、 「ヨウ素鉱水」の重さを1排水素トン=10重量トンで計算して下さい。



 探索に成功した場合は、そのヨウ素鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「ヨウ素鉱水」の品位としては便宜上、0.01%(鉱水1トン中に0.1kg)を用います。
 前述した通り、この品位であっても海水の2千倍という濃度に相当しますから、品位が低過ぎるということはありません。

 この「ヨウ素鉱水」の中へ塩素ガスを吹き込んで、 純粋なヨウ素を取り出します。
 その品位はもちろん、100%。
 つまり、品位0.01%の「ヨウ素鉱水」1万トンから、 品位100%の「ヨウ素」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表9 ヨウ素鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT07_Fig09.gif - 5.17KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。



 採掘された「ヨウ素鉱水」は採掘と同時に選鉱され、 高純度の「ヨウ素」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たりで25,000cr。

 「ヨウ素」も排水素トン当たりの取引価格が高いため、恒星間の取引が可能です。
 生産地の偏りが発生して、恒星間貿易が不可欠となっていても不思議ではありません。
 前述した通り古代テラであっても、海から離れた内陸部ではヨウ素の欠乏が問題となっていたようですから、 海の狭い乾燥世界、海の無い砂漠世界では、食料に添加するためのヨウ素を、星系外から輸入している可能性があります。

 重量トンで計算するのであれば、1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。
 1排水素トン当たりの価格は1,000,000crになりました。
 極めて高価な部類の貿易品となる訳ですが、一度に取引される量は排水素トンで一桁にしかならないでしょう。




(5)ハロゲンの流通形態と流通量

 以上、「フッ素、塩素、臭素、ヨウ素」から成る 「ハロゲン」4種の採掘について考察しました。
 最後のハロゲンである「アスタチン」については、 これが人工元素であること、不安定であることから取り扱いません。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。


         表10 ハロゲンの流通形態と流通量、価格

MRT07_Fig10.gif - 7.21KB

 左端は元素名
 次が流通形態と、その品位(%)

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。
 流通量は、10億人当たりの流通量(トン)。
 1排水素トンの重さは、1重量トンで計算しています。



 「フッ素」は、その多く(80%)が 「フッ素精鉱(フッ化カルシウム)」として流通していました。
 その品位は50%で、トン当たりの価格は150cr。
 恒星間の貿易品として、全く魅力の無い商品です。

 流通量の2割を占める「無水フッ酸」は、液化したフッ化水素のことです。
 その品位は95%であり、トン当たりの価格は800cr。
 やはり、恒星間の貿易には使えません。



 「塩素」は、そのすべて(ほぼ100%)が 「塩(塩化ナトリウム)」として流通しています。
 その品位は60%で、トン当たりの価格は40cr。

 流通量の2%に相当する「液化塩素」は、純粋な「塩素」を液化したものです。
 その品位は100%であり、トン当たりの価格は600cr。

 流通量の5%に相当する「塩酸」は、「塩化水素」の水溶液です。
 選鉱を初めとする様々な鉱業用途に使えますので、低人口の辺境世界であっても需要が存在することでしょう。
 一般的な「塩酸」は、重量比で37%を「塩化水素」が占めており、 これを「塩素」の品位に換算すると、36%となりました。
 トン当たりの価格は150cr。

 残念ながら、どの流通形態の「塩素」も、恒星間の貿易には使い難い低価格です。



 「臭素」は、液体の「臭素」として流通していました。
 その品位は100%で、トン当たりの価格は400cr。
 これも、恒星間の貿易には使えません。



 最後の「ヨウ素」は、固体の「ヨウ素」として流通しているようです。
 その品位は100%で、トン当たりの価格は25,000cr。
 これだけは、恒星間の貿易を行っても、その輸送費を賄うことができそうです。



 上記の数字を、1排水素トン=8〜40重量トンで再計算してみました。。
 1排水素トン当たりの価格は大きく変わりますから、恒星間の貿易に相応しい金額となるかも知れません。


         表11 ハロゲンの流通形態と流通量、価格
            (1排水素トン=8〜40重量トン)

MRT07_Fig11.gif - 7.30KB

 左端は元素名
 次が流通形態と、その品位(%)

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。
 流通量は、10億人当たりの流通量(トン)。
 1排水素トンの重さは、8〜40重量トンとなっています。



 「フッ素」の価格は、 「フッ素精鉱(フッ化カルシウム)」がトン当たり3,000crに、 「無水フッ酸」がトン当たり8,000crに増えました。
 この価格ならば、恒星間の貿易を行っても、その輸送費を賄うことができそうです。



 「塩素」の価格は、 「塩(塩化ナトリウム)」がトン当たり800cr、 「液化塩素」がトン当たり6,000cr、」 「塩酸」がトン当たり1,200crに増えました。

 「液化塩素」だけは、恒星間の貿易品として成立するでしょう。



 「臭素」の価格は、トン当たり10,000crとなりました。
 この価格ならば、恒星間の貿易品として成立します。



 「ヨウ素」の価格はトン当たり1,000,000cr。
 かなり高価な貿易品に化けたようですが、上記の通り、流通量自体は極めて小さなものとなりました。
 御注意下さい。



 上記の元素化合物は、 「レフリーズ・マニュアル、p.51」の通商・貿易フローチャートにおいて、
 表10a.天然資源の14〜15、「非金属の鉱石(Nonmetal Ore)」、
 表10c.工業製品の11〜12、「薬品(Pharmaceuticals)」、
 このあたりに該当すると思われます。





4.希ガスの詳細


 「希ガス」とは、 ヘリウム(He)ネオン(Ne)アルゴン(Ar)クリプトン(Kr)キセノン(Xe)ラドン(Rn)の6元素から成る、グループです。

 その存在がなかなか明らかとならなかったことから「希ガス(Rare gas)」と呼ばれたり、 あるいは、化合物を作らない(他の元素と反応しない)ことから「不活性ガス(Inert gas)」と呼ばれていました。

 しかし分離や抽出の技術が進んだ結果として、それほど「希(Rare)」ではなくなったり、 また、アルゴンラドンとのフッ化物が発見されて、 必ずしも「不活性(Inert)」ではない、ということも判明。
 なので「希ガス」や「不活性ガス」という呼び方は不適切である、と指摘されているそうです。
 そのため現在は「貴ガス(Noble gas)」という呼び方になってきているとか。



 でも、私のパソコンの辞書(Microsoft Office IME 2010)には、「希ガス」という呼び方しか入っていません。
 手持ちの書籍では、そのほぼすべてが「希ガス」となっていました。
 ですから、呼び方が変わったと聞かされても、全く実感できません。

 そこで最近の傾向を把握するため、ネット検索のヒット数を比べてみました。

 「稀ガス」でのヒット数が181,000件。
 「希ガス」でのヒット数が147,000件。
 「貴ガス」でのヒット数が146,000件。

 多くのページで、稀ガス/希ガス貴ガスの両方が記載されています。
 今までは希ガスでしたけれど、今後は世界標準に合わせて貴ガスへ切り替えていきます、 との補足説明付きでした。

 蛇足ながら、「不活性ガス」でのヒット数が184,000件で最大値。
 実験装置や消火設備向けの売り込みが多いので、 その特性(目的)を明確に主張するための呼び名としては、「不活性ガス」の方がより適切なのでしょう。

 とりあえず、この考察上では「希ガス」の呼び方を続けておきます。
 「貴ガス」と書いていると、どうにも違和感が拭えませんので。



 以下に、希ガスの消費量を示しました。


             表12 世界の希ガス消費量

MRT07_Fig12.gif - 6.74KB

 データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(トン)を求めています。
 市場価格は、その元素の1トン当たりの価格(cr/tons)。
 希ガスの価格は通常、リットルやキロリットルといった容積で決まっていますが、 トラベラーの貿易ルールと合わせ難いので、重量トンへ換算しました。



 希ガスのそれぞれの用途は、以下のようなものです。



 ヘリウム(He)は、極めて軽く、不活性な元素です。
 常温では気体。
 主な用途は、MRIの電磁石冷却用、光ファイバーや半導体製造時の不純物除去、リークテスト(漏れ検査)でした。
 その他の用途としては、化学分析時の不純物除去、溶接時の不活性ガス、低温工学用、飛行船などの浮遊用、があります。



 ネオン(Ne)も、軽く、不活性な元素です。
 これも、常温では気体。
 ガラス管の中に封じ込めて電気を通すと強く発光するので、ネオン管として利用されるようになりました。
 その他、プラズマ・ディスプレイや工業用レーザーとしても使われます。
 その沸点が−246度であり、ヘリウムの−269度と窒素の−196度との中間にありました。
 そのため、ヘリウムを使うよりも安く、窒素を使うよりも冷たくしたい、 という場合には、ネオンが冷却剤として利用されています。



 アルゴン(Ar)は、基本的には、不活性な元素です。
 しかし2000年になって、アルゴンフッ素水素化物(HArF)なる化合物が発見されました(合成されました)。
 常温では気体ですが、その密度は空気よりも少しだけ重くなっています(1立方メートル当たり1.78kg)。

 主な用途は、水銀灯や蛍光灯への封入、アルゴン・レーザーの原料。
 酸素や窒素との反応を防ぎたい工程においては、最も安価な不活性ガスとして アルゴンを満たした環境下で、製鋼や溶接、半導体の製造などが行われています。



 クリプトン(Kr)も、基本的には、不活性な元素です。
 1962年に、白金とフッ素を使った化合物が合成されました。
 これも常温では気体ですが、空気よりもずっと重くなっています(1立方メートル当たり3.75kg)。

 クリプトンを白熱電球へ封入した場合、 アルゴンと比べてフィラメントの温度をより高く設定できるので、 より明るく、より効率の良い、省エネ設計が可能だとのこと。
 つまり、クリプトン・ランプは高級品なのです。
 その他、ストロボやレーザー加工機の原料としても重要。



 キセノン(Xr)も、基本的には、不活性な元素です。
 1962年にクリプトンと合わせて、白金とフッ素を使った化合物が合成されました。
 常温では気体ですが、その密度は1立方メートル当たり5.90kgと、かなり重くなっています。

 キセノンを白熱電球へ封入した場合、 クリプトンよりも更に明るい、電球を得ることができます。
 キセノン・ランプが持て囃される訳ですね。
 その他の用途は、X線の検出装置やイオン・エンジンの推進剤など。
 「ハード・タイムズ」の中にイオンドライブという推進システムが存在しますが、 このシステムで使われている「イオン燃料」は水銀、セシウム、様々な希ガスが該当するそうです。
 必ずしもキセノンが使われているとは限りません。御注意下さい。



 ラドン(Rn)も基本的に不活性な元素である筈なのですが、研究が進んでいない為、その詳細は不明です。
 これも常温では気体ですが、その密度は1立方メートル当たり9.73kgでした。

 研究が進まない最大の理由は、その不安定性。
 半減期が最長でも3日弱という短さなので、試料としてラドンを入手したとしても、 1ヶ月ちょっとで1,000分の1まで減ってしまう(ポロニウムや鉛に変わってしまう)訳なのです。
 ですから、生産も消費も行われていません。
 地下水に含まれているラドンの濃度を測定することで、 間接的に地下の構造を調べるとかいった研究は行われているそうですが。



 今度は、希ガスの採掘や調達経費(コスト)、流通価格についても考えてみます。





5.希ガスの探索と採掘


 今回も、希ガスの採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)ヘリウムの採掘

 ヘリウム(He)の消費量は、人口10億人当たりで、4,710トン。
 希ガスの中では2番目に多い消費量でした。

 主な用途は、MRIの電磁石冷却用、光ファイバーや半導体製造時の不純物除去、リークテスト(漏れ検査)です。
 この4つの用途だけでも、全体の6割が消費されているとのこと。
 しかし、高温超電導の技術が確立すれば、MRIの冷却といった用途(消費量の25%)が無くなるかも知れません。

 その他の用途としては、化学分析時の不純物除去、溶接時の不活性ガス、低温工学用、飛行船などの浮遊用、があります。
 これらもヘリウムの特性上、手頃な代替物が見つからないとのことでした。



 ヘリウムは、他の元素との化合物を作りません。
 −269度という超低温の環境を作るまで、何時までも気体のままです。
 また、極めて軽い元素(キロリットル当たり0.179kg)ですので、 大気中に放出されたヘリウムは、すぐに宇宙空間へと逃れてしまうのです。

 トラベラー世界ならば、核融合炉から排出されるヘリウムを回収するだけで、 手軽に、供給過剰になるほどの量を得られるでしょう。
 公式設定として、核融合炉からヘリウムが排出される という記述は見つかりませんでしたが、恐らく、回収は可能な筈。
 あるいは、木星のようなガス・ジャイアントの大気から回収するという方法も有り得ます。
 ガス・ジャイアントの大気は、その1割から2割がヘリウムで構成されているそうですから。



 しかし、核融合炉が利用できない、あるいは、宇宙飛行を実現できないテックレベルの世界においては、 どのようにしてヘリウムを入手すれば良いのでしょうか?

 幸いなことにヘリウムは、 地殻中に存在するウラン(U)トリウム(Th)が アルファ崩壊することによって生成されています。
 その生成が地表近くで行われ、特定の場所に集まったのであれば、天然ガスと同じような方法で採掘することが可能になるでしょう。
 実際に古代テラでは、天然ガスの中に含まれるヘリウムを抽出するという方法で、 ヘリウムの採掘が行われていました。

 此処では、その方法を考察します。



 ヘリウムを採掘するために、まず、 ヘリウムを豊富に含んだ天然ガスを探し出さなければなりません。

 天然ガスは、「ガス田」から直接、採掘されます。
 天然ガスを採掘するための手順は、以下の通り。
 「MRT05:トラベラー宇宙の鉱物資源、その5」にも書いてある内容ですが、該当部分を転載しておきました。



 「天然ガス」を採掘するためには、新たなガス田(ガス鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ガス田(ガス鉱床)を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なガス田(ガス鉱床)を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   規模の小さなガス田の探索(低予算のガス田探索)には、DMが付きます。
   探索費用が40MCrの場合はDM+1、
   8MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さなガス田の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見されるガス田の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



       表13 ガス田(ガス鉱床)の探索(試掘費用と成功率)

MRT07_Fig13.gif - 5.86KB

 埋蔵量の単位は重量トンです。
 メガトラベラーに合わせたハウス・ルールより、天然ガスの密度は、 液化した状態で1キロリットル(kl)=0.5重量トンという設定にしました。
 恒星間輸送を行う場合は、1排水素トン=6.75重量トンを用いて下さい。

 液化しない状態、気体のままの天然ガスの密度は 1,200キロリットル(kl)=1.0重量トンとなりますが、 この状態で天然ガスを輸送することは、パイプライン以外に有り得ないでしょう。
 どうしても恒星間輸送を行うのであれば、90排水素トン=1重量トン、です。



 探索に成功した場合は、そのガス田(ガス鉱床)を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 気体の形で採掘される「天然ガス」の品位は100%として扱います。
 実際には、二酸化炭素や硫黄化合物、水分などの不純物を取り除いて天然ガスが得られる訳ですが、 そういったものは、採掘と同時に分離されていると考えました(今回もルールを簡略化するためです)。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、天然ガスの採掘設備だけではなく、 天然ガスから不純物を分離する設備を加えた金額です。


       表14 ガス田(ガス鉱床)の採掘(設備投資と維持費)

MRT07_Fig14.gif - 5.95KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 稼働率を上げることによって、採掘能力を2倍から4倍へ増やすこともできますが、 そうした場合のルールは、フッ素等のルールと同じです。
 場合によっては耐用期間が減少しますので、御注意下さい。



 採掘された「天然ガス」は採掘と同時に不純物を分離され 1重量トン当たり60crで取引されます。
 1キロリットル=0.5重量トン当たりならば、半額の30cr。
 メガトラベラーに合わせて設定したハウス・ルールにおいて、 天然ガスの価格は1キロリットル=0.5重量トン当たりで100crですから、 差額の70crが、天然ガスを輸送し、保管し、販売するための経費(+利益)となるでしょう。



 転載部分は此処まで。
 以下が、追加された新しい採掘手順です。



 次は、「天然ガス」の中から、ヘリウムを取り出さなければなりません。
 採掘のペースに合わせて、以下の抽出設備を購入して下さい。

 「天然ガス」の中に含まれるヘリウムの品位は、 便宜上、0.1%(天然ガス1トン中に1kg)を用います。

 この「天然ガス」を冷やして液化すると、 残った気体部分がヘリウムだけになる、という方法で分離します。
 窒素等も分離しなければなりませんが、そのあたりの詳細は割愛。

 取り出されたヘリウムの品位は100%。
 つまり、品位0.1%の「天然ガス」1千トンから、 品位100%の「ヘリウム」1トンが得られる訳です。
 残った「天然ガス」の量は少しだけ減って999トンとなりますが、 計算が複雑になるので、1千トンのままで計算して下さい。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、分離のための設備を加えた金額です。


          表15 ヘリウムの抽出(設備投資と維持費)

MRT07_Fig15.gif - 5.01KB

 抽出設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。

 1億トンのガス田(天然ガス鉱床)から得られる「ヘリウム」の量は、年間2,500トンとなります。
 これだけで、人口5億人強が消費する量に相当しますので、採掘の際は過剰生産に御注意下さい。
 1排水素トンの重さは1重量トン、ということにしています。



 抽出された「ヘリウム」は、 1排水素トン当たり10,000crで売却されます。

 表12の市場価格である20,000crとの差額は、その輸送経費。
 極めて軽い元素である「ヘリウム」は、重量当たりの輸送コストが高いのです。
 詳細は後述しますが、トン当たりの輸送コストが最大で10,000crに達するかも知れない、ということを承知しておいて下さい。



 重量トンで計算するのであれば、1排水素トン=0.25重量トンを用います。
 ですから1排水素トン当たりの価格は2,500cr。
 一応、14.7MPa(150気圧)の高圧ガスボンベに充填した状態での輸送を想定していましたが、それでも、まだ軽過ぎです。




(2)ネオン〜キセノンの製造

 ネオン(Ne)の消費量は、人口10億人当たりで87.8トン。
 主な用途は、ネオン管、プラズマ・ディスプレイ、工業用レーザー。
 空気中に、0.000127重量%(0.00182容積%)の割合で含まれています。

 アルゴン(Ar)の消費量は、人口10億人当たりで12万8千トン。
 主な用途は、最も安価な不活性ガスとして、製鋼、溶接、半導体の製造など。
 空気中に、1.28重量%(0.93容積%)の割合で含まれています。

 クリプトン(Kr)の消費量は、人口10億人当たりで20.3トン。
 主な用途は、不活性ガスとして白熱電球(クリプトン・ランプ)への封入、ストロボ、レーザー加工機など。
 空気中に、0.000331重量%(0.000114容積%)の割合で含まれています。

 キセノン(Xr)の消費量は、人口10億人当たりで2.53トン。
 主な用途は、これも不活性ガスとして白熱電球(キセノン・ランプ)の封入、 X線の検出装置、イオン・エンジンの推進剤など。
 空気中に、0.000037重量%(0.0000087容積%)の割合で含まれていました。



 上記4種類の希ガスは、空気を冷やし、液化することによって得られます。

 それぞれの元素(分子)が液化する温度の違い(沸点の温度差)を利用して、分離する訳ですが、その具体的な数値は以下の通り。


              表16 希ガスの沸点と融点

MRT07_Fig16.gif - 9.62KB

 表の左端は温度(℃)

 その右側が、原子番号元素名(分子名)
 希ガスだけではなく、原料となる空気中に含まれている他の分子も書き加えています。

 表の右端は、元素(分子)の状態
 その元素(分子)が、液化する温度を液化、 固体化する温度を固体化、と書いて示しました。
 厳密には凝縮点や凝固点と書くべきなのでしょうが、分かり易さを優先した結果です。



 まず、空気の温度を−183度まで下げると、酸素(O2液化が始まりました。
 窒素(N2アルゴン(Ar)など、 他の元素(分子)は未だ気体のままですから、此処で、 液体酸素だけを取り出すことが出来るのです。

 実際には、この液体酸素の中には、 固体化したクリプトン(Kr)キセノン(Xr)が混ざっていました。
 今度は逆にゆっくりと温度を上げていくことで酸素だけを気化させ、 クリプトンキセノンを分離することが出来ます。
 メタン等の不純物は、触媒の働きによって 二酸化炭素の形に変えることで、安全な除去が可能になるとのこと。



 残った空気の温度を、更に下げます。
 温度が−186度まで下がると、今度はアルゴン(Ar)液化が始まりました。
 ですので、今度は液化したアルゴンだけを取り出すことができます。
 不純物として混ざっている液体酸素は、液化する温度が近いので簡単には除去できず、吸着剤等を使って除去するとのこと。



 残っている空気の成分は、その大半が窒素です。
 温度を−196度まで下げると、遂に窒素液化が始まりました。
 他の元素(分子)は気体のままですから、 液体窒素だけを取り出すことが出来る訳です。

 残った気体は、その大半がネオン(Ne)ですが、5%ほどのヘリウム(He)と、 微量の水素(H2が不純物として含まれていました。
 更に冷やして、温度を−246度まで下げれば、今度はネオン液化しますので、 高純度のネオンを得ることが出来ます。

 残ったヘリウムからは、吸収剤を使うことで 僅かな水素を除去することが出来るでしょう。



 以上が、空気を冷やして希ガスを製造する手順、でした。



 ちなみに、空気100万トンを液化して得られる希ガスの重量は、以下の通りとなります。


        表17 空気100万トンの液化で得られる希ガスの重量

MRT07_Fig17.gif - 6.33KB

 表の左端は、原子番号元素名(分子名)

 その右側が、その元素(分子)の存在比率(重量%)
 一般的な資料は、空気の成分を説明する際に存在比率(容積%)を使っていますので、微妙に数字が異なっています。
 微妙な違和感を抱かれるかも知れません。
 今後の計算を容易にするため、重量%を求めておきました。



 製造量が多い元素(分子)は、 窒素(N2酸素(O2です。
 この2つだけで存在比率98.7%
 確定していませんが、これらの市場価格(Cr/tons)はかなり安いでしょう。
 それでも、希ガスの製造設備は、この2つの売上が無ければ維持できません。
 ヘリウムを抽出する際に必要不可欠な、天然ガスの採掘と似たようなものです。



 3番目になって、やっと希ガスの登場です。
 アルゴン(Ar)の生産量は、12,840トン(生産量の1.28%)でした。

 4番目の元素ネオン(Ne)
 生産量は、桁が3つも小さくなって、12.7トンです。

 5番目はクリプトン(Kr)で、生産量は3.31トン。

 6番目にヘリウム(He)の生産量0.69トンとありますが、 この僅かな生産量では、人口14万人の需要を満たすことしか出来ません。
 ヘリウムの供給源として、空気は使えないことが明らかとなりました。

 7番目がキセノン(Xr)で、生産量は0.37トンです。



 アルゴンの12,840トンはともかく、 ネオンクリプトンキセノンの生産量の少なさは、 流石は希ガス(Rare Gas)と言いたくなるような数値でした。



 希ガスは、それらの元素を含んだ空気から製造されます。
 ですから希ガスを製造する場合、これまで紹介してきた他の鉱石のように、鉱脈を探し出す必要はありません。
 その世界が大気を持っていれば、具体的には、 2(極薄、汚染)9(濃厚、汚染)の大気レベルを持っている世界であれば、 何処であっても製造が可能であるとしました。

 大気レベルが1(微量)以下の世界では、 大気が薄過ぎるので希ガスを製造できない、とします。

 大気レベルがA(異種)以上の世界においては、レフリーの裁量としました。
 呼吸できない大気ですから、酸素が存在しない代わりに窒素の分圧が高いとか、メタンやアンモニアが豊富に存在しているとか、 塩素ガスや硫酸が豊富に存在している、などといった設定を考えることが出来ます。
 ひょっとしたら、希ガスの存在比率が高くて、それらを安価に製造できるかも知れません。
 トラベラーの世界設定を壊すような内容でなければ、構わないでしょう。

 酸素分圧や希ガスの存在比率は、テラの大気と全く同一である、と想定しました。
 すべての世界で分圧や存在比率がすべて一致していることは不自然だ、という意見を持たれるかも知れませんが、 存在比率が異なれば、一定量の大気から製造できる希ガスの量が変わって来ますので、 その価格や流通量が大きく変化することは必須です。
 あまり面倒なことは考えたくありません。



 鉱床の探索は不必要なので、適当な土地が確保できたら、製造設備を購入して下さい。
 まずは、液体窒素の製造から始めましょう。


              表18 液体窒素の製造設備

MRT07_Fig18.gif - 6.16KB

 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。

 空気の中に含まれる窒素の割合は、重量比で75%であると設定しました。
 ですから、空気10トンからは、7.5トンの液体窒素
 空気10万トンからは、7万5千トンの液体窒素が製造できます。

 とりあえず、1排水素トンの重さは1重量トン、で計算しておいて下さい。

 製造された「液体窒素」は、 1排水素トン当たり40cr〜200crで売却されるでしょう。
 液体窒素の生産者価格は、製造設備の規模に因って様々なのです。
 消費者価格も様々であり、生産者価格と輸送コストの兼ね合いで決まるとのこと、でした。



 上記、液体窒素の製造設備からは、副産物として、
 クリプトンキセノンを含んだ液体酸素
 不純物として酸素を含んだ液体アルゴン
 ヘリウム水素を含んだネオンガス
 の3つが得られます。

 これらの副産物から、特定の希ガスを取り出すためには、更に追加の設備が必要です。
 製造のペースに合わせて、以下の製造設備を購入して下さい。
 表18の液体窒素設備と、設備の規模(処理能力)が違っても構いませんが、 液体窒素設備の副産物を利用しているため、規模(処理能力)が大きくても意味がありません。
 液体窒素設備の規模より、希ガスの製造設備の規模を小さくすることならば、可能です。



 生産量が多い、アルゴンの製造設備は、以下の通りです。


             表19 液体アルゴンの製造設備

MRT07_Fig19.gif - 4.81KB

 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。

 空気の中に含まれるアルゴンの割合は、重量比で1.2%であると設定しました。
 ですから、空気1千トンからは、12トンの液体アルゴンが、 空気10万トンからは、1,200トンの液体アルゴンが製造できる訳です。

 規模の小さい製造設備、処理能力が8時間当たり1,000トン未満、年間25万トン未満の製造設備は、存在しません。

 1排水素トンの重さも1重量トン、で計算しておいて下さい。

 製造された「液体アルゴン」は、 1排水素トン当たり5,000crで売却されます。



 最後は、ネオンクリプトンキセノンの製造設備。

 クリプトンキセノンを含んでいるのは、 液体窒素製造の早い段階で分離される液体酸素であり、
 ネオンは、窒素が液化した後に残された気体から取り出しますので、 厳密に考えるならば、別の製造設備と考えるべきです。
 しかし、あまりにも小規模な設備となってしまったので、統合してしまいました。


         表20 ネオン、クリプトン、キセノンの製造設備

MRT07_Fig20.gif - 4.82KB

 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 フッ素の採掘設備と同様。



 空気の中に含まれるネオンの割合は、重量比で0.0012%であると設定しました。
 ですから、空気1千トンからは、0.012トン(=12kg)のネオンが、 空気10万トンからは、1.2トンのネオンが製造できます。

 空気の中に含まれるクリプトンの割合は、重量比で0.0003%であると設定しました。
 空気1千トンからは、0.003トン(=3kg)のクリプトンが、 空気10万トンからは、0.3トンのクリプトンが製造できます。

 空気の中に含まれるキセノンの割合は、重量比で0.000032%であると設定しました。
 空気1万トンからは、0.0032トン(=3.2kg)のキセノンが、 空気10万トンからは、0.032トン(=32kg)のキセノンが製造できます。



 処理能力が8時間当たり1,000トン未満、年間25万トン未満の、 ネオンクリプトンの製造設備は、存在しません。
 処理能力が8時間当たり1万トン未満、年間25万トン未満の、キセノンの製造設備は、存在しません。
 存在量の少ない希ガスを、実験室レベルでは無く、経済的に製造するためには、 ある程度の大きさを持った設備が必要不可欠だということです。

 上記3種類の希ガス1排水素トン当たりの重さは、 すべて1重量トンで計算しておいて下さい。



 製造された「液体ネオン」は、 1排水素トン当たり20,000crで売却されます。
 製造された「液体クリプトン」は、 1排水素トン当たり100,000crで売却されます。
 製造された「液体キセノン」は、 1排水素トン当たり500,000crで売却されます。



 以下に、希ガスの製造量を纏めてみました。

 まずは、8時間当たりの製造量から。


           表21 希ガスの製造量(8時間当たり)

MRT07_Fig21.gif - 4.58KB

 表の左端は、製造設備の処理能力(トン/8時間)

 表の右側は、8時間当たりの希ガスネオンキセノン)製造量。

 前述した通り、処理能力が8時間当たり1,000トン未満の製造設備で、 ネオンクリプトンを製造することは出来ません。
 処理能力が8時間当たり1万トン未満の製造設備で、キセノンを製造することは出来ません。



 今度は、1年間(8時間×250日)当たりの製造量。


           表22 希ガスの製造量(1年間当たり)

MRT07_Fig22.gif - 4.58KB

 表の左端は、製造設備の処理能力(トン/1年間)

 表の右側は、1年当たりの希ガスネオンキセノン)製造量。

 前述した通り、処理能力が1年間当たり25万トン未満の製造設備で、 ネオンクリプトンを製造することは出来ません。
 処理能力が1年間当たり250万トン未満の製造設備で、キセノンを製造することは出来ません。



 ちなみに、処理能力が8時間当たり10万トン、年間2,500万トンの製造設備1基が稼働するだけであっても、 アルゴンならば人口23億人分、クリプトンならば37億人分の需要を満たせます。
 人口200億を抱えたモーラ星系であっても、この製造設備が9基、あるいは、6基で、供給過剰になってしまう状況でした。

 キセノンを製造できる設備の規模は、 最低でも処理能力が8時間当たり1万トン、1年間当たり250万トンですから、 人口2億〜3億以下の世界でキセノンを製造することは極めて困難です。

 ネオンクリプトンを製造できる設備の規模は、 最低でも処理能力が8時間当たり1千トン、1年間当たり25万トンですから、 人口2千万〜4千万以下の世界でネオンクリプトンを製造することは困難です。
 製造した希ガスの大半を輸出に回すのであれば製造も可能ですが、あまり経済的ではありません。

 つまり、人口2億〜3億以下の世界はキセノンを星系外から輸入している。
 そして、人口2千万〜4千万以下の世界は、他の希ガスネオンクリプトンも星系外から輸入している。
 ということが言える訳です。



 では、希ガスの輸入方法、流通形態について、調べてみましょう。




(3)希ガスの輸送効率

 以上、「ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン」から成る 「希ガス」5種の採掘と製造について考察しました。
 最後の希ガスである「ラドン」については、 これが不安定な元素であり、その製造方法も用途も確立していないことから、取り扱いません。



 希ガスの流通について、何が問題になるかと言えば、 希ガスが常温において、気体であることだ、と言えるでしょう。
 気体は極めて軽いため、とても嵩張るのです。

 前述したハロゲンにも、 幾つか気体状態の元素(フッ素塩素)は存在していましたが、 それらの大半は 安定した固体化合物(フッ化カルシウム塩化ナトリウム)として流通していますので、 気体である問題点は解決されているのです。

 しかしながら希ガスは孤高な元素。
 簡単には化合物を作ってくれません。
 仕方がないので、気体のままの希ガスを流通させてみましょう。



 まずは、1重量トン希ガスが占める容積について纏めました。


         表23 希ガスの輸送効率(常温1気圧の気体)

MRT07_Fig23.gif - 6.02KB

 左端は元素名
 流通形態は、常温1気圧の気体で統一しています。
 品位は、不純物無しの100%。

 密度は、1キロリットル当たりの重量で、気体ですからキログラムで表記しました。
 標準型(大気レベル6)の空気は、1キロリットル当たり1.3kgですので、希ガスの軽さと重さが良く分かるかと。

 表の右端は、輸送時の容積
 1重量トンの希ガスを輸送するために必要な容積を、 キロリットル排水素トンで示しました。



 ヘリウム(He)の密度は0.179kg/klしかありません。
 ですから、1重量トンのヘリウムは、 5,599キロリットル、あるいは、414.7排水素トンを占めます。
 軽い希ガスは、実に嵩張るものだということを実感しました。

 ネオン(Ne)の密度は0.900kg/kl
 1重量トンのネオンは、 1,111キロリットル、あるいは、82.3排水素トンを占めます。

 アルゴン(Ar)の密度は1.784kg/kl
 1重量トンのアルゴンは、 561キロリットル、あるいは、41.5排水素トンを占めます。

 クリプトン(Kr)の密度は3.749kg/kl
 1重量トンのクリプトンは、 267キロリットル、あるいは、19.8排水素トンを占めます。

 キセノン(Xe)の密度は5.897kg/kl
 1重量トンのキセノンは、 170キロリットル、あるいは、12.6排水素トンを占めます。



 上記の数字より、恒星間輸送船の船倉(1排水素トン)の中へ、 どれだけの重さの希ガスが詰め込めるものか、求めてみました。


         表24 希ガスの流通形態(常温1気圧の気体)

MRT07_Fig24.gif - 5.99KB

 左端は元素名
 密度は、1キロリットル当たりの重量で、キログラム表記。

 表の右端は、1排水素トン当たりの重量と市場価格
 重量は重量トン(tons)、価格はクレジット(Cr)で示しています。

 摘まんだりできない気体をそのまま船倉へ放り込む訳にはいかないと思いますので、 実際には、風船のような何か、気体を閉じ込めることが出来る容器の中へ希ガスを詰め込み、 その容器を船倉へ積み上げる、という形になるのではないでしょうか。



 ヘリウムは、1排水素トン当たりの重量が0.002トン(正確には2.4kg)です。
 ですから、1排水素トンのヘリウムの市場価格は、僅か48Cr
 生産者価格は半分で24Crですから、輸送経費に割り当てできる予算は、最大でも24Crということになります。
 到底、恒星間輸送の運賃を賄えるものではありません。

 ネオンは、1排水素トン当たりの重量が0.012トン(=12kg)
 1排水素トンのネオンの市場価格は480Crでした。
 まだまだ、恒星間の運賃には足りません。

 アルゴンは、1排水素トン当たりの重量が0.024トン(=24kg)
 1排水素トンのアルゴンの市場価格は、240Crになります。

 クリプトンは、1排水素トン当たりの重量が0.050トン(=50kg)
 1排水素トンのクリプトンの市場価格は、10,000Crでした。
 いきなり高額となりましたが、この価格ならば最大で5,000crを輸送費に割り当てできますから、 ジャンプ5回分を輸送可能だということになります。
 ちょっと意外な数字でした。

 キセノンは、1排水素トン当たりの重量が0.080トン(=80kg)
 1排水素トンのキセノンの市場価格は、80,000Cr
 これも恒星間輸送が成り立ってしまうようです。



 クリプトンキセノンの2つは高価なので、 常温1気圧の気体であっても恒星間輸送が成立する、という意外な発見はさておき。
 1気圧の気体をそのまま輸送するということは不経済ですから、 輸送経費を圧縮するため、常温1気圧の気体を圧縮することにしました。

 この手のガスは150気圧(14.7MPa)でボンベに詰め込むことで、その容積を150分の1まで圧縮できます。

 小さいサイズのボンベは、直径100mm×高さ650mmの円筒です。
 隙間無く並べることで、1排水素トンの船倉には、1,800本を並べることができるでしょう。
 内容量は3.3リットルですので、150気圧まで圧縮すれば0.5キロリットルの希ガスを詰め込むことができます。
 1排水素トンに1,800本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの充填量は900キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.006トンで、1排水素トン当たりの重量は10.8トンになります。

 中間サイズのボンベは、直径140mm×高さ970mmの円筒です。
 1排水素トンの船倉へ並べられる数は600本。
 内容量は10リットルですので、150気圧まで圧縮すれば1.5キロリットルの希ガスを詰め込めます。
 1排水素トンに600本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの充填量は同じく900キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.012トンで、1排水素トン当たりの重量は7.2トンとなりました。

 大きなサイズのボンベは、直径240mm×高さ1,370mmの円筒でした。
 1排水素トンの船倉に並べられる数は144本。
 内容量は46.7リットルで、150気圧に圧縮した希ガスを7.0キロリットルまで詰め込むことができます。
 1排水素トンに144本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの充填量は少し増えて1,000キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.052トンで、1排水素トン当たりの重量は7.5トンでした。



 幾つかの規格を調べてみたのですが、古代テラでは大きなサイズのボンベが最も普及しているようです。
 ですので、トラベラー世界の恒星間貿易においても、最後のサイズが最も多く使われている、ということにしましょう。
 このサイズのボンベを使って1排水素トンの中に詰め込むことができる希ガスの体積は1,000キロリットルほど。
 ボンベ自体の容積や無駄な隙間がありますので、1排水素トンの150倍=2,025キロリットルを詰め込むことは無理でした。

 150気圧で圧縮した、1重量トン希ガスが占める容積は、以下の通りです。


        表25 希ガスの輸送効率(常温150気圧の気体)

MRT07_Fig25.gif - 6.01KB

 左端は元素名
 密度は、1キロリットル当たりの重量で、キログラム表記。
 この数値は、1気圧の状態のものをそのまま転載しています。

 表の右端は、輸送時の容積
 1重量トンの希ガスを輸送するために必要な容積を、排水素トンで示しました。
 輸送に必要となる容器重量は、重量トンで示しています。



 1重量トンのヘリウムを恒星間輸送するためには、 6.00排水素トンの容積が必要です。
 輸送に不可欠なボンベの重量は45.0重量トン
 恒星間輸送される重量の大半(97.8%)を容器重量が占めているという事実が、何となく哀しいです。

 1重量トンのネオンを恒星間輸送するためには、 1.25排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は9.4重量トン

 1重量トンのアルゴンを恒星間輸送するためには、 0.63排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は4.7重量トン

 1重量トンのクリプトンを恒星間輸送するためには、 0.33排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は2.5重量トン

 1重量トンのキセノンを恒星間輸送するためには、 0.20排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は1.5重量トン



 上記の数字より、恒星間輸送船の船倉(1排水素トン)で輸送できる 希ガスの量を求めました。


        表26 希ガスの流通形態(常温150気圧の気体)

MRT07_Fig26.gif - 6.18KB

 左端は元素名
 密度は、1キロリットル当たりの重量で、キログラム表記。
 この数値は、1気圧の状態のものをそのまま転載しています。

 表の右端は、1排水素トン当たりの重量と市場価格
 重量は重量トン(tons)で、ボンベ自身の重量は含まれていません。
 市場価格はクレジット(Cr)で示しています。



 ヘリウムは、1排水素トン当たりの重量が0.167トンまで増えました。
 1排水素トンのヘリウムの市場価格は、3,333Cr
 輸送経費に割り当てできる予算は最大1,667Crなので、ジャンプ1回分の運賃ならば捻出できそうですが、それ以上の負担は無理。
 更に圧縮して、輸送経費を節約できるようにしなければなりません。

 ネオンは、1排水素トン当たりの重量が0.8トンとなり、 1排水素トン当たりの市場価格は32,000Crに増えました。
 輸送経費に割り当てできる予算は16,000Crとなったので、複数回のジャンプを経ても大丈夫でしょう。

 アルゴンは、1排水素トン当たりの重量が1.6トン
 1排水素トンのアルゴンの市場価格は、16,000Cr
 輸送経費に割り当てできる予算は、最大で8,000Crです。

 クリプトンは、1排水素トン当たりの重量が3.0トン
 1排水素トンのクリプトンの市場価格は、600,000Cr
 恒星間輸送の経費は、問題無く捻出できるでしょう。

 キセノンは、1排水素トン当たりの重量が5.0トン
 1排水素トンのキセノンの市場価格は、5,000,000Cr
 圧縮したため、排水素トン当たりの価格が1MCrを超える高額貿易品になってしまいました。
 問題はキセノンの需要がそれほどないことです。
 10億人の人口が1年間に消費するキセノンすべてを集めても、0.5排水素トン(2.5MCr相当)にしかなりません。
 ですから恒星間を輸送されるキセノンは、 精々0.01排水素トン単位、50,000Cr程度で取引されるのではないでしょうか。



 気体の容積を小さくする一番の方法は、冷却による液化、です。
 しかし、液化を実行するためには、断熱性の高い容器が高価ですし、 常に冷やし続けるための経費も掛かるようになりました。
 液化は油断すると、気化して漏洩してしまう厄介な輸送方法ですが、 大規模な輸送を行うのでしたら、確かに安上がりな方法になるようです。

 希ガスでは無く液体窒素(N2の話ですが、年間200トン〜600トン以上を消費する工場であれば、 150気圧のボンベでは無く、液体窒素を用いた方が、輸送や保管のコストが安く済むとのこと。
 年間200トンの基準を希ガスの年間消費量で計算してみると、ヘリウムは人口4千万人分、 ネオンは人口23億人分、アルゴンは人口160万人分、 クリプトンは人口99億人分、キセノンになると人口790億人分、に相当していました。
 この数字だけで考えるならば、ヘリウムアルゴン以外の液化輸送は望めない、 ような気もします。状況によってはネオンがぎりぎり可能かも知れませんが。



 液化した希ガスを輸送するための極低温ボンベも、3種類が存在します。

 小さいサイズのボンベは、直径500mm×高さ1,060mmの円筒です。
 隙間無く並べることで、1排水素トンの船倉には、54本を並べることができるでしょう。
 内容量は0.06キロリットル
 1排水素トンに54本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの輸送量は3.24キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.060トンで、1排水素トン当たりの重量は3.24トンになります。

 中間サイズのボンベは、直径500mm×高さ1,400mmの円筒です。
 1排水素トンの船倉へ並べられる数は36本。
 内容量は0.12キロリットル
 1排水素トンに36本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの輸送量は4.32キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.082トンで、1排水素トン当たりの重量は2.95トンとなりました。

 大きいサイズのボンベは、直径860mm×高さ1,630mmの円筒です。
 1排水素トンの船倉へ並べられる数は10本。
 内容量は0.495キロリットル
 1排水素トンに10本を並べることが出来るので、1排水素トン当たりの輸送量は4.95キロリットル
 ボンベ自体の重量は0.315トンで、1排水素トン当たりの重量は3.15トンとなります。



 やはり、古代テラでは大きなサイズのボンベが最も普及しているようです。
 ですので、トラベラー世界の恒星間貿易においても、最後のサイズが最も多く使われている、ということにしました。
 このサイズのボンベを使って1排水素トンの中に詰め込むことができる希ガスの体積は、 液化した状態で4.95キロリットルです。

 極低温で液化した、1重量トン希ガスが占める容積は、以下の通りです。


          表27 希ガスの輸送効率(極低温の液体)

MRT07_Fig27.gif - 6.12KB

 左端は元素名
 密度は、1キロリットル当たりの重量で、トンを使って示しています。

 表の右端は、輸送時の容積
 1重量トンの希ガスを輸送するために必要な容積を、排水素トンで示しました。
 輸送に必要となる容器重量は、重量トンで示しています。



 1重量トンのヘリウムを恒星間輸送するためには、 1.667排水素トンの容積が必要です。
 150気圧のボンベと比べて、容積当たりの輸送効率が3.6倍に上がりました。
 輸送に不可欠なボンベの重量は5.25重量トン
 恒星間輸送される重量の8割強(84.0%)となりましたから、重量の視点でも、輸送効率が7.4倍に跳ね上がっています。

 1重量トンのネオンを恒星間輸送するためには、 0.200排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は0.63重量トン

 1重量トンのアルゴンを恒星間輸送するためには、 0.167排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は0.52重量トン

 1重量トンのクリプトンを恒星間輸送するためには、 0.100排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は0.32重量トン

 1重量トンのキセノンを恒星間輸送するためには、 0.067排水素トンの容積が必要です。
 ボンベの重量は0.21重量トン



 上記の数字より、恒星間輸送船の船倉(1排水素トン)で輸送できる 希ガスの量を求めました。


          表28 希ガスの流通形態(極低温の液体)

MRT07_Fig28.gif - 6.19KB

 左端は元素名
 密度は、1キロリットル当たりの重量で、トンを使って示しています。

 表の右端は、1排水素トン当たりの重量と市場価格
 重量は重量トン(tons)で、ボンベ自身の重量は含まれていません。
 市場価格はクレジット(Cr)で示しています。



 ヘリウムは、1排水素トン当たりの重量が0.600トンとなりました。
 1排水素トンのヘリウムの市場価格は、12,000Cr
 輸送経費に割り当てできる予算は最大6,000Crなので、ジャンプ6回分の運賃を負担できるようになりました。
 この状態であれば、恒星間貿易の商品としてヘリウムを取り扱えるでしょう。

 ネオンは、1排水素トン当たりの重量が5.0トンとなりました。
 1排水素トン当たりの市場価格は200,000Cr
 恒星間輸送にも、経済的な問題はありません。
 しかし流通量(10億人当たり年間87.8重量トン)の問題から、1排水素トン(5.0重量トン)単位で輸送されることは有り得ない、と考えられます。

 アルゴンは、1排水素トン当たりの重量が6.0トン
 1排水素トンのアルゴンの市場価格は、60,000Cr
 恒星間輸送にも、経済的な問題はありません。

 クリプトンは、1排水素トン当たりの重量が10.0トン
 1排水素トンのクリプトンの市場価格は、2,000,000Cr
 恒星間輸送の経費については問題無いのですが、同じく流通量(10億人当たり年間20.3重量トン)の問題から、 1排水素トン(10.0重量トン)単位で輸送されることは有り得ない、と思われます。

 キセノンは、1排水素トン当たりの重量が15.0トン
 1排水素トンのキセノンの市場価格は、15,000,000Crとなりました。
 ネオンクリプトンと同じく、その流通量(10億人当たり年間2.5重量トン)の少なさ故、 1排水素トン(15.0重量トン)単位で輸送されることは無いでしょう。




(4)希ガスの流通形態と流通量

 希ガスの流通形態と流通量、価格について、まとめます。


          表29 希ガスの流通形態と流通量、価格

MRT07_Fig29.gif - 8.58KB

 左端は元素名
 次が流通形態

 その右は、1排水素トン当たりの重量と市場価格
 重量は重量トン(tons)で、ボンベ自身の重量は含まれていません。
 市場価格はクレジット(Cr)で示しています。

 表の右端は流通量で、10億人当たりの流通量(トン)になります。



 ヘリウムは、150気圧の常温気体、あるいは、極低温の液体、という形で流通しています。
 輸送効率の観点から、150気圧の常温気体での輸送は、惑星上での小規模な流通に限られるでしょう。
 恒星間や惑星間の輸送は、極低温の液体として、行われていると思われます。

 流通量は、人口10億人当たりで年間4,670トン
 極低温の液体として輸送されるのであれば、船倉を占める容積は7,783排水素トンとなりました。
 2週間当たり300排水素トン、3.6MCr相当の取引が、妥当なところでしょうか。



 ネオンは、150気圧の常温気体、という形で流通しています。
 流通量の問題から、極低温の液体として輸送される可能性は、極めて低いでしょう。

 流通量は、人口10億人当たりで年間87.8トン
 150気圧の常温気体として輸送されますので、船倉を占める容積は109.8排水素トン
 2週間当たりで4.2排水素トン、0.135MCr相当の取引が行われていると考えられます。



 アルゴンも、150気圧の常温気体、あるいは、極低温の液体、という形で流通しています。
 流通量が最も多い希ガスですから、流通形態の主流も極低温の液体となっている筈です。

 流通量は、人口10億人当たりで年間128,000トン
 極低温の液体で換算すると、船倉を占める容積は21,333排水素トンです。
 2週間当たりの取引量は820排水素トンで、その取引額は49.2MCr相当。
 希ガスの中では、最も大きな取引額なのですが、それでも小さいと思われます。



 クリプトンは、150気圧の常温気体、という形で流通しています。
 流通量の問題から、極低温の液体として輸送される可能性は、ほとんどありません。

 流通量は、人口10億人当たりで年間20.3トン
 150気圧の常温気体として輸送されますので、船倉を占める容積は6.77排水素トン
 2週間当たりで計算すると0.26排水素トン、0.156MCr相当の取引にしかなりませんでした。



 キセノンも、150気圧の常温気体、という形で流通しています。
 流通量の問題から、極低温の液体として輸送される可能性は、有り得ません。

 流通量は、人口10億人当たりで年間2.5トン
 船倉を占める容積は0.50排水素トン
 2週間当たりで計算すると0.02排水素トン、0.096MCr相当の取引になります。



 「希ガス」も重要な鉱物資源のひとつであることに間違いないのですが、 その流通量や取引価格を見る限り、あまり大きな比重を占める事態にはなっておりません。
 数ある鉱物資源のひとつ、ということでしょうか。

 一応、上記の希ガスは、 「レフリーズ・マニュアル、p.51」の通商・貿易フローチャートにおいては、
 表10a.天然資源の14〜15、「非金属の鉱石(Nonmetal Ore)」、
 表10b.加工品の32、「非金属(Nonmetal)」、
 に該当していると思われます。





6.まとめ


 今回も「鉱業」の考察を行いました。
 考察対象は、「ハロゲン:Halogen」と「希ガス:Rare Gas」。



 「ハロゲン」は、 フッ素(F)塩素(Cl)臭素(Br)ヨウ素(I)アスタチン(At)の5元素から成る、 極めて腐食性が高い(酸化剤としての反応性が高い)グループです。
 アスタチンを除く4元素について、その採掘ルールを作り、その流通について考えました。



 「希ガス」は、 ヘリウム(He)ネオン(Ne)アルゴン(Ar)クリプトン(Kr)キセノン(Xe)ラドン(Rn)の6元素から成る、不活性ガスのグループです。
 ラドンを除く5元素について、その採掘ルールを作り、その流通について考えました。
 希ガスの多くは空気から製造されますので、専ら、輸送に関する考察となっています。






 2018.05.20 初投稿