The Mineral Resource
in the Traveller space 05
The Fossil Fuel (Hydrocarbons)
トラベラー宇宙の鉱物資源
その5
化石燃料(炭化水素)
TITLELINE30.JPG - 1,269BYTES
  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その5です。
 今回の考察対象は「化石燃料:Fossil Fuel」。
 メガトラの輸送機器設計ルールでは「炭化水素:Hydrocarbons」と呼ばれている燃料です。
 ルール内で定義されている訳ではありませんが、これらの炭化水素は、 ガソリン、軽油、重油等の液体燃料、所謂、「石油:Oil」のことを指しているのでしょう。

 これだけならば、大して面白くはありません。
 考察したくなるほどの魅力は無かったのですが、メガトラの追加ルール Wet NavyWood & Wind, Steel & Steamを訳した結果、気が変わりました。
 その中には、外燃機関(蒸気機関)というパワープラントが追加されており、 ローテク(TL4以下)の外燃機関で使うための 固形燃料(Solid Hydrocarbons)というルールまで存在したのです。
 具体的には、「木材(薪):Wood」や「石炭:Coal」といった燃料のことなのですが、 私の考察意欲は俄然、勢いを増しました。
 石炭で稼働する外燃機関搭載の輸送機器ってのは、何となく格好良くありませんか?



 と言う訳で、今回は「炭化水素:Hydrocarbons」についての考察を行うことを決意しました。
 メガトラの輸送機器設計ルールで取り扱われている炭化水素石油であり、 Wet Navyで追加された炭化水素石炭です。
 上記のどちらか片方だけでは足りませんが、両方を合わせれば化石燃料の考察を行えるでしょう。
 色々と資料を集めて、纏めてみました。




 目次
    ※2.トラベラー世界の炭化水素
    ※3.炭化水素の消費量
       (1)炭化水素の消費量推移
       (2)1900年(TL4)の消費量
       (3)1930年(TL5)の消費量
       (4)1950年(TL6)の消費量
       (5)1970年(TL7)の消費量
       (6)1990年(TL8)の消費量
       (7)2005年(TL9)の消費量
       (8)2100年以降(TLA+)の消費量予測
    ※4.炭化水素の探索と採掘
       (1)石炭の採掘
       (2)石油の採掘
       (3)天然ガスの採掘
       (4)石油と天然ガスが混在した採掘
       (5)炭化水素の流通価格
    ※5.炭化水素の輸送
       (1)シャトルによる輸送(TLA+)
       (2)パイプラインによる輸送
       (3)炭化水素の海上輸送
       (4)炭化水素の陸上輸送
    ※6.炭化水素の精製と販売
       (1)石油製品の内訳と用途
       (2)原油の精製と副産物(硫黄とバナジウム)
       (3)石油の備蓄コスト
       (4)石炭と天然ガスの備蓄コスト
       (5)炭化水素の販売コスト
    ※7.まとめ





2.トラベラー世界の炭化水素


 メガトラの輸送機器設計ルールで定義されている「炭化水素:Hydrocarbons」は、 容積1.0キロリットル当たりの重量が1.0トン、価格が250クレジットである、と定義されていました。
 この炭化水素の正体が何であるのか具体的な記述は存在しませんが、 それらが内燃機関やタービンで使われていることから、引火しやすい液体燃料、であることは間違いないでしょう。

 固体の木材(薪)石炭であれば、 上記の内燃機関タービンで使用することは極めて困難ですから、固体燃料は有り得ません。

 そして、容積1.0キロリットル当たりの重量が1.0トンというデータから、 この炭化水素が気体であることも否定されました。
 天然ガス(LNG)プロパンガス(LPG)は、 液化した状態であっても、容積1.0キロリットル当たりの重量が0.6トン以下しかないのです。

 上記のような考察の結果、これらの炭化水素は、 ガソリン、軽油、重油等の液体燃料=「石油」のことを指しているのだ、と判断しました。



 ところが、メガトラの追加ルール、 Wet NavyWood & Wind, Steel & Steamでは、 パワープラントに外燃機関(蒸気機関)が追加されています。
 それに合わせて、木材(薪)石炭といった固形燃料も追加されました。
 テックレベル4以下の外燃機関は固形燃料しか使えないというルール上の制限が存在するので、 固形燃料を出さない訳にはいかなかったという事情もあったのでしょう。
 固形燃料が石炭だけでなく、きちんと木材(薪)まで含んでいる点には感心しました。

 また、液体燃料として 「エタノール(Ethanol)」と「メタノール(Methanol)」 2つのアルコール燃料が追加されていました。
 科学技術が衰退したハード・タイムス(Hard Times)な状況で、それまで石油を利用していなかった(生産していなかった)世界でも、 植物(農産物)からアルコール燃料を生産することで 内燃機関タービンを動かせるようになる、という設定のためだと思われます。



 以下に、追加された燃料、様々な炭化水素のデータを示しました。

 一番下へ並べた天然ガス(LNG)は、私が作成したハウス・ルールによるものです。 公式データではありません。


           表1 追加された燃料(炭化水素)

MRT05_Fig01.gif - 7.29KB

 表の左端は、追加された燃料(炭化水素)のタイプ
 固型か液体かという区別を先に行い、次に詳細なタイプを示しています。

 固体の炭化水素は、 木材(薪)/繊維(Wood / biofibers)石炭(Coal)の2つ。
 液体の炭化水素は、 エタノール(Ethanol)メタノール(Methanol)の2つでした。
 そして最後に、気体の天然ガス(LNG)を追加してあります。

 木材(薪)/繊維メタノールについては、 一般的な炭素基盤の生態系(carbon-based biosphere)を備えている世界であれば、容易に入手可能。
 石炭は、石油(petroleum)が存在する世界ならば、通常は入手可能であるとのこと。
 エタノールは特定の植物から生産されるため、入手困難で高価なことが普通だそうです。
 古代テラで生産されるメタノールエタノールとは、 少し生産方法が異なるのかも知れません。
 天然ガスも、石油が存在する世界ならば容易に入手可能でしょう。



 その右側は、燃料1キロリットル当たり重量(tons)

 木材(薪)/繊維エタノールメタノールの3つは、 すべて重量が1.0トンです。

 石炭だけは少し重くて2.0トンでした。
 古代テラにおいて、良質の石炭は比重が1.2程度、質の低下と共に比重は1.5〜1.8まで増えていきます。
 比重が2.0もある石炭は岩石として扱われ、取引されない筈なのですが……。
 トラベラー世界の石炭は、テラのものより少しだけ重いのかも知れませんね(苦笑)。

 天然ガスの重量は、0.5トンという設定にしました。
 もちろん、これは圧力を掛けて液化した場合の重量です。



 その右側は、同じく燃料1キロリットル当たり価格(cr)
 この表を見ただけですと、木材(薪)/繊維メタノールが安価で、 エタノールが高価だということぐらいしか判断できません。

 天然ガスの価格は、100crに設定しました。



 表の右端は、消費率(Rate)という新しい変数です。
 追加された4種の燃料は、レフリーズ・マニュアルに掲載されていた 炭化水素と比べて発熱量が少ないため、同じだけの出力を得るためには、 より多くの燃料を消費しなければなりません。
 それを表した数値が、上記の消費率です。

 木材(薪)/繊維は5倍。
 石炭は2倍。
 エタノールは3倍。
 メタノールは4倍。

 という数値になっていました。

 上記の数値を参考にして、天然ガス消費率は2倍に設定します。



 上記のデータを考察するため、上記の炭化水素を、通常の炭化水素容積重量価格と比較してみましょう。
 通常の炭化水素1キロリットルに相当する容積に換算して、 追加された炭化水素を纏めました。


              表2 炭化水素の効率比較

MRT05_Fig02.gif - 8.09KB

 表の左端は、追加された燃料(炭化水素)のタイプ
 今回は、比較の基準となる通常の炭化水素も載せてあります。



 その右側は、容積(kl)
 これは消費率をそのまま使うことになります。
 追加された炭化水素は、最低でも2倍の容積が必要でした。
 最大は木材(薪)/繊維の5倍、5キロリットルです。



 その右側は、重量(tons)
 追加された炭化水素の重量に、消費率を掛け合わせたものです。
 最小値はエタノールの3トンで、最大値は木材(薪)/繊維の5トン。
 追加された炭化水素は、重量的にかなり不利となっていました。
 天然ガスだけは重量が1トンなので、通常の炭化水素と変わりません。



 表の右端は、価格(cr)
 追加された4つの炭化水素の価格に、消費率を掛け合わせたものです。

 最低値は、木材(薪)/繊維の75cr。
 非常に安価なのですが、船舶等へ搭載するには嵩張り過ぎます(容積が5倍の5キロリットル)。
 他に使える燃料が無いから使う、という代物ではないでしょうか。

 その次に安い燃料がメタノールの120crです。
 液体の炭化水素としては最も安価ですので、 通常の炭化水素が利用できない世界においては、 メタノールの利用が主流となるかも知れません。

 ほとんど同じ価格ですが、3番目に安い燃料は石炭で150cr。
 固体ですから取り扱いは面倒ですが、同じ固体の木材(薪)/繊維よりも容積が小さくて2キロリットル。
 重量も少しだけ軽い4トンです。
 固体の燃料しか使えないテックレベル4以下の世界では、選択肢が有りませんから 輸送機器の動力源としては石炭が重宝するでしょう。

 4番目に安い、というより、2番目に高い燃料と表現した方が良いと思われます。
 レフリーズ・マニュアルに掲載されていた、通常の炭化水素は250cr。
 容積は1リットルしか使いませんし、重量は1トン。
 価格が高価であることだけを除けば、最も使い勝手の良い燃料だと考えます。

 最も高価な燃料は、エタノールの300crです。
 通常の炭化水素と比べて、嵩張り、重く、高価だという欠点だらけの燃料でした。
 まともな経済感覚を持ち合わせていれば誰もエタノールを使わないと思いますが、 政治的な理由、あるいは、他の炭化水素が入手できないといった事情があるならば、 このエタノールを使わなければならないのでしょう。

 ハウス・ルールで追加した天然ガスは200crになりました。
 重量面では同等、しかし、容積は2倍です。
 通常の炭化水素よりも若干安い、というメリットを作ったので、ある程度はリアルを再現できているでしょう。



 その世界の背景(環境やテックレベル)に合わせて、上記の炭化水素を使い分けるようにして下さい。





3.炭化水素の消費量


 炭化水素の消費量は、その社会の科学技術の進歩に伴って、大きく変化します。
 その変化を、古代テラのデータを基にして纏めてみました。

 レフリーズ・マニュアルに記載されている通り、1900年頃がテックレベル4(TL4)、1930年頃がテックレベル5(TL5)、 1950年頃がテックレベル6(TL6)、1970年頃がテックレベル7(TL7)、1990年頃がテックレベル8(TL8)であると想定しています。
 これまでの考察で用いてきた2005年のデータは、この鉱物資源シリーズの執筆を始めた時点で「信用できる」最新データだった訳ですが、 一応、クエスチョン・マーク付きでテックレベル9(TL9?)であると見なしておきました。




(1)炭化水素の消費量推移

 以下に、石炭石油天然ガスの、 年代別生産/消費量を並べています。

 まずは、石炭の年代別生産/消費量から。


            表3 石炭の年代別生産/消費量

MRT05_Fig03.gif - 8.67KB

 表の左端は、西暦(テックレベル)

 その右側は、当時の古代テラの石炭の生産/消費量で、その単位は100万トン
 1900年頃(TL4)の数字はかなり怪しいのですが、信用できるデータが他に見つかりませんでした。これで我慢して下さい。
 更に右側の数値は、同じ年代の世界人口(億人)です。

 その右側は、生産/消費量を世界人口で割って求めた、人口1千人当たりの生産/消費量
 更に右側には、人口100万人当たりの生産/消費量人口10億人当たりの生産/消費量を並べています。



 石炭の生産/消費量は時間と共に増大しているのですが、 人口1千人当たりの生産/消費量は、1930年頃(TL5)で一度ピークを迎えており、その後は減少。
 1970年頃(TL7)に754トンという値まで下がってからは、再び増加。
 2005年(TL9?)に903トンという最大値を更新している、という事実が判明しました。

 ちょっと意外だったのですが、1930年(TL5)から1970年(TL7)に掛けては、 石油の大増産(大量消費)が行われておりましたので、その所為ではないかと。
 1990年(TL8)以降は、石油の高騰から石炭の需要が復帰したということだと思われます。
 某国の大量消費が世界の統計に大きく影響しているということもあるでしょう。



 その次は、石油の年代別生産/消費量。


            表4 石油の年代別生産/消費量

MRT05_Fig04.gif - 8.54KB

 表の左端は、西暦(テックレベル)

 その右側は、当時の古代テラの石油の生産/消費量で、その単位は100万トン
 更に右側の数値は、同じ年代の世界人口(億人)です。

 その右側は、生産/消費量を世界人口で割って求めた、人口1千人当たりの生産/消費量
 更に右側には、人口100万人当たりの生産/消費量人口10億人当たりの生産/消費量を並べています。



 今回も人口1千人当たりの生産/消費量を見て行きますが、 1900年(TL4)には僅か13トンしかなかった生産/消費量が、1930年(TL5)では7倍の91トンまで激増しました。
 1950年(TL6)になると2.5倍(1900年を基準にすると17倍)に増えて、227トン。
 1970年(TL7)では更に2.8倍(1900年を基準にすると49倍)まで増えて、637トンです。

 しかし、1990年(TL8)になっても生産/消費量はほとんど変わりませんでした。
 634トンということで実際は3トンだけ減っているのですが、こんなのは誤差の内です。
 表3で触れた通り、石油価格の高騰に直面して、エネルギー消費量の増加を石炭の増産で賄ったという事なのでしょう。

 2005年(TL9?)の生産/消費量は、1990年(TL8)と比べて横這いですが、 世界人口が増えているため、人口当たりで比べると大きく減少しました。
 568トンです。
 1900年を基準にすると43倍しかありません。
 これは恐らく、石炭だけはなく、 天然ガスの生産/消費量増加が影響しているのだと思われます。



 最後は、天然ガスの年代別生産/消費量。


           表5 天然ガスの年代別生産/消費量

MRT05_Fig05.gif - 8.54KB

 表の左端は、西暦(テックレベル)

 その右側は、当時の古代テラの天然ガスの生産/消費量で、その単位は100万トン
 更に右側の数値は、同じ年代の世界人口(億人)です。

 その右側は、生産/消費量を世界人口で割って求めた、人口1千人当たりの生産/消費量
 更に右側には、人口100万人当たりの生産/消費量人口10億人当たりの生産/消費量を並べています。



 人口1千人当たりの生産/消費量について見てみると、 1900年(TL4)から1950年(TL6)まで、生産/消費量がゼロである、ということが分かりました。
 一部地域では古くから利用されている天然ガスですが、 その生産/消費量を記述した資料が存在しないため、統計的には、生産/消費量をゼロと見なさなければならない訳です。
 こういったことは本意ではないので、適切な資料を持っている方がいらっしゃるのであれば、御紹介下さい。

 私が調べられた範囲では、天然ガスの大規模な生産と消費が始まったのは1970年頃(TL7)からでした。
 テックレベルの分類を考慮すると、実際は1960年頃から始まっていたことになりそうですが、良く分かりません。
 某極東島国のエネルギー統計によれば、1960年の時点で一次エネルギー生産の0.8%を賄っていたようですが、 この程度の比率ならば無視しても(ゼロだと見なしても)構わないでしょう。
 人口1千人当たりの生産/消費量は205トンでした。

 1990年(TL8)になると、生産/消費量はほぼ2倍に増加。
 しかし世界人口が大きく増えているため、 人口1千人当たりの生産/消費量は281トンで、1.4倍しか増えていませんでした。。

 2005年(TL9?)も順調に生産/消費量は増えていますが、 人口1千人当たりの生産/消費量は316トン。
 1割程度しか増えていません(1970年を基準にすると1.5倍)。




(2)1900年(TL4)の消費量

 表3〜表5へ示した、石炭、石油、天然ガスの生産/消費量を、年代別(テックレベル別)に纏めてみました。
 それぞれのテックレベルにおいて、その世界がどのタイプの炭化水素に依存しているか、 その量がどれだけのものなのか、ということを明らかにしてみましょう。

 まずは、テックレベル4の(古代テラでは1900年頃に相当する)世界からです。


          表6 世界の資源消費量(1900年:TL4)

MRT05_Fig06.gif - 6.49KB

 表の左端は、資源名
 上から、固体燃料の石炭、液体燃料の石油、 気体燃料の天然ガス、という順番で並べてあります。

 この年代(テックレベル)において生産/消費される燃料の大半(97.9%)は、石炭でした。
 石油の生産と消費は始まったばかりであり、その比率は僅か2.1%です。

 Wet NavyおよびWood & Wind, Steel & Steamのルールにおいて 利用可能である唯一のパワープラント、外燃機関(レシプロ蒸気機関)は、 固体燃料の炭化水素=石炭しか用いることができません。
 ですから、上記の表へ示されている石油は、輸送機器以外の用途に用いられているのでしょう。




(3)1930年(TL5)の消費量

 今度は、テックレベル5の(1930年頃に相当する)世界。


          表7 世界の資源消費量(1930年:TL5)

MRT05_Fig07.gif - 6.54KB

 形式は表6と同じ。

 石油の生産と消費が大幅に増えて、全体の9.3%を占めるようになりました。
 石炭の生産と消費は全体の90.7%であり、まだまだ主力です。

 このテックレベルでは、より効率の良いレシプロ蒸気機関と、 蒸気タービンが登場しました。
 これらの外燃機関は、液体燃料の炭化水素=石油を利用することができます。
 もちろん、レフリーズ・マニュアルに掲載されている内燃機関も使えますから、 石油はそれらを備えた輸送機器において、優先的に利用されることでしょう。




(4)1950年(TL6)の消費量

 3番目は、テックレベル6の(1950年頃に相当する)世界です。


          表8 世界の資源消費量(1950年:TL6)

MRT05_Fig08.gif - 6.58KB

 形式は表6と同じ。

 石油の生産/消費量は、全体の21.9%を占めるまで増えました。
 石炭の生産/消費は若干減りましたが、全体の78.1%を占めています。

 この時代になると、多くの輸送機器の動力源は石油を利用するものに変わっているでしょう。

 テックレベル的には核分裂炉も利用可能な筈ですが、実用的なものは未だ登場していない筈です。
 Wet Navyのシナリオの中ですが、 核動力の輸送機器はテックレベル6の世界では有り得ない、という記述が見つかりました。
 地上に設置された発電所も、この時代においては実験炉止まりであり、商業的な核分裂炉発電は存在しません。
 ですから、放射性物質の需要もほぼゼロです。




(5)1970年(TL7)の消費量

 4番目は、テックレベル7の(1970年頃に相当する)世界です。


          表9 世界の資源消費量(1970年:TL7)

MRT05_Fig09.gif - 6.68KB

 形式は表6と同じ。

 天然ガスの利用が始まり、早くも消費量全体の12.9%を占めるようになりました。
 石油の生産/消費量も順調に増加を続け、全体の39.9%を占めています。
 石炭の生産/消費は減少しましたが、それでも全体の47.2%を占めていました。

 生産/消費量の首位を、未だに石炭が維持していることが意外です。
 生産/消費量を重量(トン)で比較しているためでしょうか。
 これを発生する熱量で比較したら、恐らく石油が首位になっていると思われました。



 表2で炭化水素の効率比較を行いましたが、改めて考えてみると、 石油1トン石炭4トンの発生熱量が同じだという設定は酷いです。

 化石燃料の発熱量を表す単位として、石油換算トン(toe)というものがありますが、 それによると石油1トンを燃焼させた場合に得られる熱量は 42GJ(ギガ・ジュール)であるとのこと。
 その一方、石炭1トンを燃焼させた場合に得られる熱量は29.3GJですから、 石油を基準にすると、 石炭1トンの熱量は石油0.7トン=0.7toeに相当する訳です。

 しかしWet Navyのルールにおいて、 石油1トン石炭4トンの発生熱量は同じですから、 石炭1トン=0.25toeということになっていました。
 Wet Navyにおける石炭の扱いが不遇なのではないでしょうか。
 ルールがそうなっているのですから文句は言えませんが、少し悲しいです。



 また、テックレベル7から核分裂炉が実用化されました。
 次回の考察へ回しましたので表は掲載していませんが、このテックレベルにおいて、 放射性物質の生産/消費量は、人口10億人当たり3千トン程です。
 詳しくは、次回の考察で取り扱う予定。




(6)1990年(TL8)の消費量

 5番目は、テックレベル8の(1990年頃に相当する)世界です。


          表10 世界の資源消費量(1990年:TL8)

MRT05_Fig10.gif - 6.70KB

 形式は表6と同じ。

 天然ガスが増加して、全体の消費量の15.8%を占めています。
 石油は若干減少して、全体の35.5%。
 石炭は生産/消費量も比率も増加して、全体の48.7%を占めていました。

 様々な炭化水素化石燃料の生産と消費は、 このテックレベル8が最盛期となっています。
 放射性物質の生産/消費量は、人口10億人当たり7千トン程。




(7)2005年(TL9)の消費量

 6番目は、テックレベル9の(2005年頃に相当する)世界です。


          表11 世界の資源消費量(2005年:TL9)

MRT05_Fig11.gif - 6.70KB

 形式は表6と同じ。

 天然ガスが順調に増加して、全体の消費量の19.6%を占めるようになりました。
 石油石炭は、 どちらも少しずつ減少して、それぞれが35.3%と45.0%を占めています。

 核融合炉が実用化されているかどうかは分かりません。
 古代テラの2005年に実用化も商業化もされていなかったことは明らかですが、トラベラー世界ではどうなのでしょう。

 核分裂炉に関して言えば、発電量の6分の1を賄っているというデータがありました。
 放射性物質の生産/消費量は、人口10億人当たり8千トン弱ですが、 この燃料は再利用や増殖といったことが可能なので、この数字をどの程度まで信用して良いのか分かりません。




(7)2100年以降(TLA+)の消費量予測

 最後は、テックレベルA以上の(2100年以降に相当する)世界の推測値です。


        表12 世界の資源消費量予測(2100年以降:TLA+)

MRT05_Fig12.gif - 6.47KB

 形式は表6と同じ。

 古代テラにおける、2100年の資源消費量はデータがありませんので、すべて推測値です。
 2105年のデータを基にして、発電や熱供給、輸送機器の動力源がすべて核融合炉に入れ換わったら、 炭化水素の生産と消費がどのように変わってしまうのかを推測してみました。



 まず、石炭の需要がほぼゼロになります。
 石炭の用途の多くが発電や熱供給用であること、 そして、製鉄等に不可欠な還元剤としてならばハイテク世界は黒鉛を安価に用意できること。
 この2つから、上記のように判断しました。

 次の石油ですが、その用途の4割は発電や熱供給、 4割が輸送機器の燃料、 残りの2割が石油化学製品の原料となります。
 ですから、核融合炉が普及したテックレベル10以降は、石油化学製品用の2割しか需要が残りません。
 上記の生産/消費量は、表11、2005年(TL9)のデータを2割まで減らした数値です。

 最後の天然ガスの用途は、発電や熱供給用が74%、 産業用が17%、石油化学製品の原料が6%、輸送機器の燃料が3%、といった比率となっていました。
 ですから、テックレベル10以降は、産業用と石油化学製品の原料用で、25%程度の需要となるでしょう。
 産業用の17%は具体的な使い方が調べられなかったため、切り捨てずに置きました。
 もしかしたら石炭と同じように他の資源で置き換え可能であるかも知れません。
 そうした場合、天然ガスの生産/消費量は表11の6%、2千万トンまで削減できる可能性があります。



 石油天然ガスの重量当たり熱量は、 メガトラベラーの輸送機器設計ルールと私のハウス・ルールの上で、 同等の大きさとして扱われています。
 ですから表12で示された石油の生産/消費量の一部、場合によっては全てを、 天然ガスのものに置き換えても構いません。
 その反対に、天然ガスの生産/消費量を石油に置き換えることも可能です。
 場合によっては、石油天然ガスの生産/消費量を、 メタノールエタノールに置き換える設定も有りでしょう。

 その世界の背景設定に合わせて、レフリーの裁量で調節して下さい。





4.炭化水素の探索と採掘


 今回は、各種炭化水素の採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)石炭の採掘

 固体燃料である炭化水素=石炭の消費量は、人口10億人当たりで6億〜9億トン
 表3でも説明しましたが、1900年頃(TL4)〜2005年頃(TL9)まで、人口当たりの消費量はそれほど変化していません。

 主な用途は、発電や熱供給。
 古代テラの資料によれば、この用途における消費量は58%(1980年)〜70%(2005年)であり、 不確定な未来予想ですが76%(2030年の予想値)という数字も存在しています。
 1970年代(TL7)以降、価格の高騰が続いている石油を嫌って、 石炭を使用する企業が増えているためだとのこと。

 他の用途としては、製鉄、窯業などの産業用、化学工業の原料などが挙げられます。
 例えば、鉄1トンを作り出すためには、鉄鉱石1.6トン、コークス0.4トン、石灰石0.1トンが必要だとのことでした(新日鐵のHPより抜粋)。
 ですから、人口10億人の高人口世界ならばの生産量は1億4千万トンですから、 消費される石炭6〜9億トンの内6千万トン(10%以下)が製鉄目的で消費されていることになる訳です。
 コークス1.0トンを製造するために必要な石炭の量は資料(石炭の質)によって異なりますから 実際の消費量はもう少し増えるかも知れません。ですが、消費量が2倍になることはないでしょう。



 前述した鉱山会社は、新たな炭鉱(石炭鉱山)を開発することにしました。
 そのためには当然のことですが、新たな炭田(石炭の鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 有望な炭田を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 この行為判定は、衛星探査簡単な地表探査によって 炭田の存在がほぼ確実であると判断された地点に対する、 本格的な探索行為を意味しています。
 そうした事前情報もなく、この行為判定を行うことはできません。



 石炭を採掘するための手順は、の場合とほぼ同様です。

 有望な炭田(石炭鉱床)を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな炭田の探索(低予算の炭田探索)には、DMが付きます。
   探索費用が5MCrの場合はDM+1、
   0.5MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな炭田の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される炭田の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表13 炭田(石炭鉱床)の探索(試掘費用と成功率)

MRT05_Fig13.gif - 5.87KB

 炭田(石炭鉱床)の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる炭田を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な炭田を発見したとしても、その炭田が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる石炭の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、炭田が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示した炭田よりも、もう一桁小さい規模の炭田が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。



 埋蔵量の単位は重量トンです。
 メガトラベラーの輸送機器設計ルールと合わせる都合上1排水素トンではなく、 キロリットル(kl)重量トンを使用しました。

 表1へ示した通り、石炭=1キロリットルの重量は2重量トンです。
 恒星間輸送を行う場合、石炭=1排水素トンの重量は27重量トンとなりました。



 探索に成功した場合は、その炭田を開発し、石炭を採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 埋蔵量は、「石炭」と土砂が混ざった状態である、 「石炭鉱石」の重量として示されています。
 「石炭鉱石」の品位としては便宜上10%を用いますが、 利用可能な「石炭」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が10%であると考えてください。

 選鉱によって、品位が100%となった「石炭」だけが売買されます。
 品位10%の「石炭鉱石」10トンから捨石9トンを選り分け、 品位100%の「石炭」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表14 炭田(石炭鉱床)の採掘(設備投資と維持費)

MRT05_Fig14.gif - 6.10KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。
 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘された「石炭鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 品位100%の「石炭」として取引されます。
 その価格は1重量トン当たり20cr。

 これを固体の炭化水素として転売するのであれば、 1重量トンあたりの売値は37.5crです。
 仕入れ値(20cr)と売値(37.5cr)の差額は17.5crしかありませんが、同一世界上で売買するのであれば、 この金額でも輸送費と販売手数料(人件費他)を支払うことは可能でしょう。



 余談ですが、上記の石炭を恒星間輸送するのであれば、 1排水素トン=27重量トンですから、 その価格は1排水素トン当たりで540crとなります(端数を丸めて500crにしても構いません)。
 しかし、メガトラベラーの輸送機器設計ルールで定義されている石炭の価格は、 1キロリットル=2重量トン当たりで75crでした。
 1排水素トン当たりで考えるなら1,012.5cr(丸めて1,000cr)にしかなりません。
 仕入れ値(500cr)と売値(1,000cr)の差額は僅か500crしかありませんので、恒星間の輸送費(排水素トン当たり1,000cr)も賄えない訳で、 トラベラー世界における石炭の恒星間輸送は、見込みが無いように思えます。




(2)石油の採掘

 液体燃料である炭化水素=石油の消費量は、 人口10億人の高人口世界では年間1,300万トン(TL4)〜6億4千万トン(TL7)であり、 年代(テックレベル)によって、その消費量が大きく変化している化石燃料でした。
 消費量の最大値が現在(2005年、TL9相当)ではない、というところが特に興味深いです。

 主な用途は、火力発電所、家庭やビルの暖房、コンロなどの熱源で、消費量の4割。
 航空機や船舶、自動車など輸送機器の燃料としての消費も4割。
 残り2割が、プラスチックやゴム、各種薬品など、石油化学製品の原料としての消費になります。
 核融合炉が普及したテックレベル(TL10以降)においては、最後の石油化学製品の原料としての需要しか残らないと思われますので、 それ以降の石油消費量はTL9の2割程度だと見ておけば良いでしょう。



 石油は、主に「油田」から採掘された、 「原油」を加工(精製)して生産されます。
 シェール・オイル(頁岩油)オイル・サンド(油砂)といった 非在来型の採掘手段については考察しておりません。

 石油を採掘するための手順は、前述した石炭の場合とほぼ同様です。

 「原油」を採掘するためには、新たな油田(石油鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 油田(石油鉱床)を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な油田(石油鉱床)を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな油田の探索(低予算の油田探索)には、DMが付きます。
   探索費用が8MCrの場合はDM+1、
   1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな油田の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される油田の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表15 油田(石油鉱床)の探索(試掘費用と成功率)

MRT05_Fig15.gif - 5.80KB

 埋蔵量の単位は、今回も重量トンです。
 メガトラベラーの輸送機器設計ルールの設定より、原油(石油)の密度は、 1キロリットル(kl)=1重量トンです。
 恒星間輸送を行う場合は1排水素トン=13.5重量トンという数値を用いて下さい。



 探索に成功した場合は、その油田(石油鉱床)を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 液体の形で採掘される「原油」の品位は100%として扱います。
 実際には、ガスや水分等を取り除いて原油が得られる訳ですが、 そういったものは、採掘と同時に分離されていると考えました(ルールを簡略化するため)。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、原油の採掘設備だけではなく、 原油からガスや水分を分離するための設備を加えた金額です。


        表16 油田(石油鉱床)の採掘(設備投資と維持費)

MRT05_Fig16.gif - 5.99KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 稼働率を上げることによって、採掘能力を2倍から4倍へ増やすこともできますが、 そうした場合のルールは上記、石炭のルールと同じです。
 場合によっては耐用期間が減少しますので、御注意下さい。



 採掘された「原油」は採掘と同時にガスや水分を分離され 1重量トン当たり60crで取引されます。
 メガトラベラーの輸送機器設計ルールで決められている炭化水素の価格は、 1キロリットル=1重量トン当たりで250cr。
 この差額190crが、原油を輸送し、精製し、販売するための経費(+利益)となるでしょう。



 上記の原油を恒星間輸送するのであれば、 1排水素トン=13.5重量トンですから、 その価格は1排水素トン当たりで810crとなります(端数を丸めて800cr?)。
 メガトラベラーの輸送機器設計ルールで定義されている石油(炭化水素)の価格は、 1キロリットル=1重量トン当たりで250cr。
 1排水素トン当たりで考えるなら3,375cr(丸めて3,000cr)となるでしょう。
 その差額は2,200cr〜2,565crですから、ジャンプ2回分の輸送費は賄えますが、 それを支払った後に精製や販売の経費を負担できるかどうかは分かりません。



 余談ですが、探索/採掘費用の出資について。

 古代テラにおいては、メジャーに代表される大企業が 複数回になるであろう探索費用と採掘設備の購入費用、維持費等をすべて負担してきました。
 地権者である産油国側は一切、資金負担を行いません
 採掘が始まると出資者である大企業は優先的に原油の提供を受け、 それは探索費用と採掘設備の購入費用の回収が終わるまで続くのです。
 出資分を回収するまでですが、優先的に原油を受け取れる訳で、 出資者にとっては実に有難い制度だと言えるでしょう。

 出資分の回収が終わると、その後に採掘された原油は、産油国と大企業の間で半分ずつに分けられます。
 大企業側の取り分は半分に減ってしまう訳ですが、地権者(産油国)に何も支払わないという訳にはいきません。
 その取り分が半分の5割であり、産油国は十分な金銭を受け取りつつ、 原油の生産量や価格決定について大きな発言権を持てるようになった、ということのようです。
 少し前の話ですが、産油国の取り分は半分(5割)ではなく1割だけだった、という時代もあるそうで、 産油国側が強くなったということなのでしょう。

 原油の価格は60crという設定にしてありますが、 地権者(産油国)への利益提供を極限まで抑えたいのであれば、20cr程度まで引き下げることも可能です (探索費用が安く済んでいるのであれば15crまでの引き下げもできます)。
 地権者側の発言権が弱いか、あるいは皆無であるならば、上記のような価格引下げも有り得るでしょう。
 あまりお勧めしませんが、革命ネタの背景としては使えるかと思います。




(3)天然ガスの採掘

 気体燃料である炭化水素=天然ガスの消費量は、 人口10億人当たりで2億(TL7)〜3億トン(TL9)
 テックレベル6以前では利用不可能な(ほとんど利用されていない)タイプの炭化水素でした。

 天然ガスの用途は、主に発電用で52%、次点が家庭における熱供給(調理や暖房)用で22%です。
 3番目に産業用が17%を占めていますが、この内訳は良く分かりません。
 4番目は石油化学製品の原料で6%。ガスの組成によって、石油化学品の原料として使い易いものと、使えないものがあるとのこと。
 最後は輸送機器の燃料で、わずか3%でした。
 核融合炉が普及したテックレベル(TL10以降)においては、産業用と石油化学製品の原料用といった用途しか残らず、 生産/消費量が25%まで小さくなると考えています。



 天然ガスは、主に「ガス田」から直接、採掘されます。
 「原油」の副産物として得られる天然ガスについては後述。
 とりあえず、この項では「ガス田」から直接採掘される天然ガスを取り扱いました。
 メタン・ハイドレート等については考察しません。

 天然ガスを採掘するための手順は、石油(原油)の場合とほぼ同様です。

 「天然ガス」を採掘するためには、新たなガス田(ガス鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ガス田(ガス鉱床)を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なガス田(ガス鉱床)を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   規模の小さなガス田の探索(低予算のガス田探索)には、DMが付きます。
   探索費用が40MCrの場合はDM+1、
   8MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さなガス田の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見されるガス田の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



       表17 ガス田(ガス鉱床)の探索(試掘費用と成功率)

MRT05_Fig17.gif - 5.86KB

 埋蔵量の単位は重量トンです。
 メガトラベラーに合わせたハウス・ルールより、天然ガスの密度は、 液化した状態で1キロリットル(kl)=0.5重量トンという設定にしました。
 恒星間輸送を行う場合は、1排水素トン=6.75重量トンを用いて下さい。

 液化しない状態、気体のままの天然ガスの密度は 1,200キロリットル(kl)=1.0重量トンとなりますが、 この状態で天然ガスを輸送することは、パイプライン以外に有り得ないでしょう。
 どうしても恒星間輸送を行うのであれば、90排水素トン=1重量トン、です。



 探索に成功した場合は、そのガス田(ガス鉱床)を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 気体の形で採掘される「天然ガス」の品位は100%として扱います。
 実際には、二酸化炭素や硫黄化合物、水分などの不純物を取り除いて天然ガスが得られる訳ですが、 そういったものは、採掘と同時に分離されていると考えました(今回もルールを簡略化するためです)。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、天然ガスの採掘設備だけではなく、 天然ガスから不純物を分離する設備を加えた金額です。


       表18 ガス田(ガス鉱床)の採掘(設備投資と維持費)

MRT05_Fig18.gif - 5.95KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 稼働率を上げることによって、採掘能力を2倍から4倍へ増やすこともできますが、 そうした場合のルールは上記、石炭のルールと同じです。
 場合によっては耐用期間が減少しますので、御注意下さい。



 採掘された「天然ガス」は採掘と同時に不純物を分離され 1重量トン当たり60crで取引されます。
 1キロリットル=0.5重量トン当たりならば、半額の30cr。
 メガトラベラーに合わせて設定したハウス・ルールにおいて、 天然ガスの価格は1キロリットル=0.5重量トン当たりで100crですから、 差額の70crが、天然ガスを輸送し、保管し、販売するための経費(+利益)となるでしょう。



 上記の天然ガスを恒星間輸送するのであれば、 1排水素トン=6.75重量トンですから、 その価格は1排水素トン当たりで405crとなります(端数を丸めて400cr)。
 1排水素トン当たりの差額は950crですから、恒星間の輸送費を賄えそうにはありません。




(4)石油と天然ガスが混在した採掘

 上記の2つ、(2)石油の採掘(3)天然ガスの採掘のルールにおいて、 石油天然ガスは、 それぞれ異なる独立した油田(ガス田)から採掘される、という形を取ってきました。

 しかし現実において、石油を採掘するための油田から 天然ガスが噴出する、ということは良く有る事例です。
 また、天然ガスを採掘するためのガス田から 多少に関わらず石油が採掘できる、ということも同じく良く有る話です。

 採掘ルールが複雑化してしまいますが、そうした現実を再現できるようなルールも作成しました。



 石油天然ガスが混在する油田/ガス田を探索するのであれば、 表15の代わりに以下の表を用いて、行為判定を行って下さい。
 探索費用を、表15よりも若干、大きくしてあります。


 有望な油田/ガス田を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな油田/ガス田の探索には、DMが付きます。
   探索費用が8MCrの場合はDM+1、
   1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな油田/ガス田の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、油田/ガス田の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表19 油田/ガス田の探索(試掘費用と成功率)

MRT05_Fig19.gif - 6.01KB

 上記に示されている原油(石油)の埋蔵量の単位は重量トンです。
 原油(石油)の密度は1キロリットル(kl)=1重量トンであり、 恒星間輸送を行う場合は1排水素トン=13.5重量トンを用いて下さい。



 探索に成功したのであれば、そのまま原油(石油)の採掘を行うことも可能ですが、 今回は石油天然ガスが混在する油田/ガス田の探索に成功しました。
 ですから、混在している天然ガスの埋蔵量も決定しなければなりません。
 以下の表で1D6を振り、天然ガスの埋蔵量を決定して下さい。


            表20 油田/ガス田の埋蔵量決定表

MRT05_Fig20.gif - 3.62KB

 表の左端は、原油(石油)の埋蔵量
 その右側は、対応する天然ガスの埋蔵量です。

 埋蔵量の単位は原油(石油)天然ガス重量トンです。
 天然ガスの密度は液化した状態で1キロリットル(kl)=0.5重量トンですから、 恒星間輸送を行う場合は1排水素トン=6.75重量トンを用いて下さい。



 上記の表へ示した通り、天然ガスの埋蔵量は、 原油(石油)の埋蔵量の10〜60%という範囲で設定してあります。
 その結果、平均値は35%となりました。

 表6〜表8、1900年(TL4)〜1950年(TL6)へ示した通り、このテックレベル(TL4〜6)において、 天然ガスの利用はほとんど有り得ません。
 ですから、採掘される天然ガスの大部分は採掘設備の上で ガスフレア(Gas flare)として燃やされます。
 勿体無いと思いますが、安全な保管場所や輸送手段が存在しない限り、止むを得ないとのこと。

 表9、1970年(TL7)において、天然ガスの生産/消費量は 原油(石油)の生産/消費量の32.3%となっていました。
 このテックレベルならば、混在する油田/ガス田の需給は釣り合っています。
 特別な事情が無い限り、天然ガス専門のガス田を探索/採掘する必要はないでしょう。

 表10〜表12、1990年(TL8)〜2100年(TLA+)において、天然ガスの生産/消費量は 原油(石油)の生産/消費量の44.3%〜66.7%まで増加しました。
 天然ガスの生産が明らかに不足していますから、その不足分を補うため、 天然ガス専門のガス田を探索/採掘しなければなりません。
 そのためのルールは、(3)天然ガスの採掘へ示したものをそのまま用います。



 探索に成功したのであれば、その油田/ガス田を開発し、採掘することができます。
 採掘設備に関しては、表16と表18のものをそのまま購入して下さい。

 もちろん、原油(石油)の採掘のために購入する設備が表16へ示したもので、 天然ガスの採掘設備は表18へ示したものです。
 天然ガスの埋蔵量が仮に2億トンだった場合には、 埋蔵量1億トンに対応した設備(200MCr)を2個購入して下さい。
 埋蔵量が6千万トンだった場合には、埋蔵量1千万トンに対応した設備(40MCr)を6個購入する計算となりますが、 埋蔵量1億トン(200MCr)に対応した設備の方が安価なので、 1億トン対応の設備1個を購入することになるでしょう。




(5)炭化水素の流通価格

 以上、「石炭、石油、天然ガス」から成る 「炭化水素」3種の採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、以下にまとめます。


         表21 炭化水素の流通価格(重量トン当たり)

MRT05_Fig21.gif - 5.23KB

 表の左端は資源名

 その右側は、1.0重量トン当たりの 容積(kl)価格(Cr)

 表の右端は重量トンで表した、人口10億人当たりの生産/消費量です。



 上記の数値を容積(キロリットル)に直すと、以下のようになりました。


        表22 炭化水素の流通価格(キロリットル当たり)

MRT05_Fig22.gif - 5.16KB

 表の左端は資源名

 その右側は、1.0キロリットル当たりの 重量(ton)価格(Cr)

 表の右端はキロリットルで表した、人口10億人当たりの生産/消費量です。
 石炭の密度が1.0kl当たり2.0tonであるため、 キロリットルで示した生産/消費量は、半分に減少します。
 石油の密度は1.0kl当たり1.0tonであるため、生産/消費量に変わりはありません。
 天然ガスの密度は2.0kl当たり1.0tonであるため、 キロリットルで示した生産/消費量は、2倍に増加しました。



 最後は、容積(排水素トン)に直した場合の数値です。


         表23 炭化水素の流通価格(排水素トン当たり)

MRT05_Fig23.gif - 5.32KB

 表の左端は資源名

 その右側は、1排水素トン当たりの 重量(ton)価格(Cr)
 石炭の価格は、20cr/ton×27ton=540crとなる筈ですが、 今後の計算を簡単にするため、端数を切り捨てて500crと見なしました。
 石油の価格も、60cr/ton×13.5ton=810crですが、同じ理由で800cr。
 天然ガスの価格も、60cr/ton×6.75ton=405crを400crにしています。

 表の右端は排水素トンに直した、人口10億人当たりの生産/消費量です。



 排水素トン当たりの価格は、最も安価な天然ガスで400cr、 最も高価な石油(原油)で800crですから、恒星間貿易には今ひとつ、向かない印象を受けました。





5.炭化水素の輸送


 採掘された「炭化水素」は、人口の多い消費地まで輸送されます。
 炭化水素の場合、この輸送に費やされるコストが実に厄介な問題でした。
 以下の考察で、ローテク世界における輸送コストの大きさを実感して頂ければと思います。




(1)シャトルによる輸送(TLA+)

 まずは、トラベラー世界では一般的であろうと思われる、宇宙船(シャトル)による輸送から。

 テックレベル10以上の世界であれば、 シャトル徐行艦載艇を用いる事で、 採掘した炭化水素を比較的安価に輸送することができるでしょう。

 テックレベル10未満の世界であっても、採掘した炭化水素を星系外へ輸出することを目的として 軌道港まで持ち上げるためならば、問題なくシャトルを利用できます。

 そうした場合に必要な輸送コストを、以下の表に纏めました。



 以下へ示した購入価格と維持費は、 シャトル徐行艦載艇大型ボートの購入価格と維持費です。
 宇宙港等の整備/購入費用は含まれておりません。


         表24 シャトルの購入費用(炭化水素の輸送)

MRT05_Fig24.gif - 6.84KB

 表の左端はシャトルの購入費用
 上から順に、大型ボート(10MCr)徐行艦載艇(14MCr)シャトル(32MCr)を並べました。



 その右側は、炭化水素輸送能力(トン/年)です。
 採掘のルールに合わせて、単位は重量トン
 石炭石油天然ガスは密度が異なりますから、 同じ船内容積で運べる炭化水素の重量は大きく変わりました。

 例えば、埋蔵量100億トンの炭田であれば、通常は年間2,500万トンの石炭を生産しますから、 生産した石炭すべてを輸送するためには、シャトル5隻が必要です。
 埋蔵量10億トンの油田であれば、年間2,500万トンの石油生産が見込まれますので、 それらの石油を輸送するためには、シャトル10隻
 埋蔵量10億トンのガス田であれば、年間2,500万トンの天然ガスのために、 シャトル25隻が必要となるでしょう。



 その右側が、年間の維持費(上の数値)と、 購入費用と維持費の合計(下の数値)です。
 これらのシャトルは、購入から40年間の継続使用を前提としていますが、 最初から乗組員4組を用意した24時間運航を想定しています。
 採掘設備のように、維持費を増やすことを代償として、稼働率を上げることは出来ません。
 「シャトル・サービス」の考察で明らかとなったように、 シャトルの運航を黒字にするためには、24時間の連続運航が不可欠なのです。



 表の右端は、炭化水素輸送コスト(cr)
 1.0重量トンの炭化水素を運ぶために、 どれだけの費用が必要になるか、どれだけの費用が加算されるか、ということを計算した数値です。

 大型ボートを用いた場合は、0.6〜3.0cr
 密度の大きな石炭が最も安価で0.6cr石油1.2cr、 密度の小さな天然ガスは、3.0crでした。

 徐行艦載艇を用いた場合は、0.4〜2.0cr
 石炭の輸送コストが0.4cr石油の輸送コストが0.8cr天然ガスの輸送コストが2.0crとなります。

 シャトルを用いた場合、輸送コストは0.2〜1.0cr
 石炭0.2cr石油0.4cr天然ガス1.0crでした。

 上記の輸送コストは、採掘場所から軌道港までの輸送、あるいは、同じ地表の1,000km圏内への輸送を想定した数値です。
 同じ地表でも、1,000kmを超えて、4,000km圏内ならば、上記の輸送コストを2倍に増やして下さい。
 4,000kmを超えて、10,000km圏内ならば、上記の輸送コストを3倍に増やします。
 10,000kmを超えた場合は、輸送コストが4倍です(規模Aの世界であっても、輸送距離の上限は25,000kmとなる筈です)。



 恐らく最も利用頻度が高いと思われるシャトルについて、 各種炭化水素の輸送コストを以下に纏めました。


           表25 炭化水素のシャトル輸送コスト

MRT05_Fig25.gif - 3.39KB

 表の左端は、輸送される炭化水素の種類

 その右側に、輸送距離毎に分けたシャトルによる輸送コストを並べました。
 輸送距離は、1,000km以下1,000km〜4,000km4,000km〜10,000km1,000km以上、の4段階。
 それぞれの距離帯について、炭化水素3種の輸送コストを cr/tonで示しています。

 ちなみに古代テラでの話ですが、東南アジアの某油田から極東島国までの移動距離は4,500km〜5,500km、 中東から極東島国までの移動距離は航路の関係で少し遠回りしていますが12,000km前後でした。




(2)パイプラインによる輸送

 採掘された「炭化水素」が 液体(石油)か気体(天然ガス)であり、 比較的近い距離の地表を輸送するのであれば、パイプラインという方法が選択できます。
 パイプラインが何であるか、という事に関しては Wikipedia等を参照して頂ければ分かり易いでしょう。

 パイプラインを設置するためのテックレベルや地形の制限等は設けません。
 不自然な設定とならないように、レフリーの裁量(良識)で判断して下さい。
 とは言うもののコストの関係から、テックレベルA以上の世界ではほとんど見られなくなるでしょう。

 パイプラインを利用した場合の輸送コストを、以下に纏めました。



 以下へ示した購入価格と維持費は、 様々な規模(サイズ)のパイプライン(長さは1,000km)を建設し、維持するための費用です。
 必要なパイプラインの長さが100km(10分の1)であるならば、これらの費用は10分に1まで減ります。
 反対に、必要なパイプラインの長さが4,000km(4倍)であるならば、費用を4倍に増やして下さい。


        表26 パイプラインの購入費用(炭化水素の輸送)

MRT05_Fig26.gif - 5.74KB

 表の左端はパイプラインの購入費用です。
 参考になるかどうか分かりませんが、
 100MCrのパイプラインは、パイプ径が5inch(=127mm)のもの、
 250MCrのパイプラインは、パイプ径が14inch(=356mm)のもの、
 1,000MCrのパイプラインは、パイプ径が48inch(=1,219mm)のものを、
 それぞれイメージしています。



 その右側は、炭化水素輸送能力(トン/年)
 今回も採掘ルールに合わせて、単位を重量トンで統一しました。
 石油は液体、天然ガスは気体での輸送を想定していますので、 やはり同じパイプ径でも、輸送できる炭化水素の重量は異なります。

 埋蔵量10億トンの油田は、生産量が年間2,500万トンの石油を輸送するため、 250MCrのパイプライン5本1,000MCrのパイプライン1本が必要でした。
 コスト的には1,000MCrのパイプライン1本の方が安価ですので、 特別な事情が無ければ通常は1,000MCrのパイプライン1本が選ばれるでしょう。
 稼働率が50%ですので若干、勿体無いとは思いますが仕方ありません。

 埋蔵量10億トンのガス田であれば、生産される年間2,500万トンの天然ガスのために、 1,000MCrのパイプライン2本+250MCrのパイプライン5本か、 1,000MCrのパイプライン3本が必要です。
 購入費用の合計を比べると明らかに1,000MCrのパイプライン3本の方が安価です。
 ガス田の場合も稼働率の低下に目を瞑って、大規模なパイプラインが選ばれることは間違いありません。



 その右側は、年間の維持費
 更に右側が、購入費用と維持費の合計です。
 パイプラインシャトルと同じように、 購入から40年間の継続使用(24時間年中無休)を前提としています。
 維持費を増やすことによる、稼働率の増加は行えません。



 表の右端は、炭化水素輸送コスト(cr)
 1.0重量トンの炭化水素を運ぶために、 どれだけの費用が必要になるか、どれだけの費用が加算されるか、ということを計算した数値です。

 100MCrのパイプラインは、 年間50万トンの石油を輸送できますが、その輸送コストは1,000km当たり25cr
 天然ガスの場合は年間10万トンまで減ってしまい、 その輸送コストは125crまで跳ね上がりました。

 250MCrのパイプラインは、 年間500万トンの石油を輸送でき、輸送コストは1,000km当たり6.25crです。
 天然ガスの場合は年間100万トンで輸送コストは31.3cr

 1,000MCrのパイプラインは、 年間5,000万トンの石油を輸送可能で、その輸送コストは1,000km当たり2.5crでした。
 天然ガスの場合は年間1,000万トンで、輸送コストは12.5crとなります。



 最も輸送効率の高い1,000MCrのパイプラインについて、 各種炭化水素の輸送コストを以下に纏めました。


          表27 炭化水素のパイプライン輸送コスト

MRT05_Fig27.gif - 3.93KB

 表の左端は、輸送される炭化水素の種類
 石炭をパイプラインで輸送することは出来ませんが、一応、並べておきました。

 その右側に、輸送距離毎に分けたパイプラインによる輸送コストを並べました。
 輸送距離は同じように、1,000km4,000km10,000km25,000km、の4段階です。
 パイプラインの建設コストは距離に比例しますから、曖昧な距離帯ではコストを計算できません。 そのためにはっきりした距離を設定しました。

 このコストを表25、炭化水素のシャトル輸送コストと比べてしまうと明らかに割高なのですが、重要な輸送コストは、 石油の輸送距離1,000kmにおける2.5crと、 天然ガスの輸送距離4,000kmにおける50.0cr、でしょう。



 輸送コストとは別の問題ですが、パイプラインによる輸送自体が、 その世界における炭化水素の需要そのものと釣り合っているのか、という疑問が生じました。
 その点について、表6〜表12、世界の資源消費量、へ示された生産/消費量を用いて、確認をした結果が以下の通りです。


         表28 パイプラインに必要な生産/消費量と人口

MRT05_Fig28.gif - 9.56KB

 表の左端は、西暦(テックレベル)

 その右側は、パイプラインの建設に必要な世界人口です。
 必要な石油の輸送量=500万トン5,000万トン石油の生産/消費量で割ることによって求めました。
 更に右側の数値は、 天然ガスの輸送量=100万トン1,000万トン天然ガスの生産/消費量で割ることによって求めた人口です。



 石油パイプラインについては、 その世界の人口が7,900万(TL7〜8)から、38億人(TL4)もあれば、 1,000MCrのパイプラインを建設しても十分に採算が取れるようです。
 250MCrのパイプラインについては、その輸送能力が10分の1ですから、 790万(TL7〜8)から、3億8千万人(TL4)となりました。
 更に規模の小さな100MCrのパイプラインは、輸送能力が更に10分の1ですから、 79万(TL7〜8)から、3,800万人(TL4)となる筈です。
 テックレベル5以上で、それなりの人口を抱えている世界ならばともかく、 テックレベル4の世界で大規模なパイプラインを建設することは難しいでしょう。

 天然ガスパイプラインについては、 その世界の人口が3,200万(TL9)から、1億人3千万(TLA+)ならば、 1,000MCrのパイプラインを建設しても採算が取れると分かりました。
 250MCrのパイプラインについては320万(TL9)から1,250万人(TLA+)であり、 更に規模の小さな100MCrのパイプラインは32万(TL9)から125万人(TLA+)となる筈です。
 天然ガスの場合、必要な人口が小さくなっていますが、 これはパイプラインの輸送能力が低い=輸送コストが高い、ということを意味していますので、 単純には喜べません。




(3)炭化水素の海上輸送

 ローテク世界において、最も安価に大量の物資を輸送できる手段は、船舶による海上輸送です。
 これらのデータはWet Navyの船舶設計ルールを用いてしっかり確認をしたいところですが、時間が無いので割愛。

 古代テラにおいて、石油の大量輸送には巨大なタンカーが利用されていました。
 石炭天然ガスも同様です。
 テックレベル9以下の世界において、炭化水素の海上輸送が積極的に行われていることは間違いありません。
 但し、プレイヤーズ・マニュアル、p.33の〈大型船舶〉技能や、 同、p.35の〈小型船舶〉技能の取得制限を見ると、 船舶の使用には最低でも水界度1以上という制限が存在しているようです。
 水兵キャラクターを作成するためには水界度3以上の湿潤世界という条件も存在しますから、 大規模な海上輸送のためには水界度3以上という制限があるのかも知れません。
 このあたりの判断はレフリーにお任せします。



 本当ならば、適当なサイズの石炭輸送船石油タンカーを1隻作って、 輸送コストを実際に求めてみたいところなのですが、前述した通り時間が無いので割愛しました。
 古代テラの輸送コストから求めた、メガトラベラー世界の輸送コストを以下へ示します。


            表29 炭化水素の海上輸送コスト

MRT05_Fig29.gif - 3.45KB

 表の左端は、輸送される炭化水素の種類
 船舶ならば石炭を輸送できますので、今回はきちんと3種類が揃っています。

 その右側に、輸送距離毎に分けた海上輸送コストを並べました。
 輸送距離は同じように、1,000km以下1,000km〜4,000km4,000km〜10,000km1,000km以上、の4段階です。
 それぞれの距離帯について、炭化水素3種の輸送コストを cr/tonで示しました。

 表25でも触れましたが古代テラにおいて、東南アジアの某油田から極東島国までの移動距離が4,500km〜5,500km、 中東から極東島国までの移動距離が12,000km前後です。



 このコストを表27、炭化水素のパイプライン輸送コストと比べてみました。

 石油の輸送距離1,000km以下における輸送コストは 2.5crであり、パイプライン輸送と同額であることが分かりました。
 つまり、パイプライン輸送が海上輸送よりもコスト的に有利である距離は1,000km以下であるということです。
 1,000kmを超えた距離であれば、パイプライン輸送よりも海上輸送の方が安上がりとなりますので、 特別な事情が無い限り、海上輸送の方が優先されることでしょう。
 古代テラにおいても、長大なパイプラインはロシアの内陸部のような特殊な状況でしか存在せず、 多くのパイプラインは採掘地と最寄りの積出港を結ぶ形で建設されています。



 天然ガスの輸送距離1,000km〜4,000kmにおける輸送コストは 50.0crであり、パイプライン輸送4,000kmと同額になりました。
 天然ガスの輸送コストが石油と比べて、 15倍(〜1,000km)から7.5倍(〜25,000km)と大きくなっている理由は、幾つか存在します。

 まずは、天然ガス液化するためのコストが、 1重量トン当たり25crも掛かってしまうこと。

 気体状態の天然ガスは、0℃、1.0atmの状態での密度がキロリットル当たり0.85kgです。
 ですから、1.0重量トンの天然ガスは、その容積が1,176キロリットル(=87.1排水素トン)でした (数字を丸めて1,200キロリットル≒90排水素トンとして下さい)。
 天然ガスは空気よりも軽いので、これだけの容積が必要となってしまう訳ですが、 これほど嵩張ってしまうのでは、その輸送コストが膨大なものになってしまいます。
 例えば恒星間輸送を行う場合、排水素トン当たり1,000crの運賃が掛かりますので、 1.0重量トンの天然ガスの運賃は87,100crにもなりました。
 商品価値が僅か200crの天然ガスに、これだけの輸送コストは掛けられません。

 そこで液化という技術が登場する訳です。
 具体的には、−162℃以下という低温まで冷却することにより、主成分であるメタンを液体にしてしまう訳ですが、 液化によって天然ガスは、その容積を600分の1まで縮小できました。
 液化された天然ガスの密度は、キロリットル当たり0.5重量トン前後となります。
 1.0重量トン当たりの容積は2キロリットル(=0.15排水素トン)。
 これならば、単純な輸送コストは石油の2倍程度まで小さく抑えられるでしょう。

 上記の表で、液化するためのコスト25crを差し引くと、 液化された天然ガスの輸送コストは 石油の5倍となっています(そのように設定しました)。
 これは、液化されても未だ2倍の容積を占めてしまう天然ガスの嵩張り具合と、 液化された天然ガスを−162℃以下で保冷しておくための容器に掛かるコストであると考えて下さい。

 液化コストと液化された天然ガスの輸送コストは、 テックレベル7〜9の世界における金額です。
 テックレベル6の世界において、上記のコストは4倍に増やして下さい。採算が取れないレベルまで輸送コストが跳ね上がる筈です。
 そしてテックレベル5以下の世界において、天然ガス液化は行えません。



 パイプライン輸送の場合、天然ガス液化は必要ありません。
 石油と比べて1,200倍近い容積があるため輸送効率は悪くなりますが、 単位時間当たりの輸送量(容積で示した流量)を240倍まで増やすことで、 石油と比べた場合の輸送コストを5倍まで抑えることができた訳です。

 シャトルによる輸送の場合、輸送される天然ガス液化されていることが大前提ですが、 テックレベルA以上の輸送機器であれば、液化するためのコストは無視できると考えました。
 特別なコスト無しで−253℃の液体水素を燃料として積載できる訳ですから、 より高い温度でも構わない液化された天然ガスの積載には何の問題もないでしょう。




(4)炭化水素の陸上輸送

 あまり積極的に用いられる手段だとは思いませんが、パイプラインによる輸送では割に合わない、 小規模な陸上輸送手段として、タンク車等を用いた、鉄道や地上車輌による陸上輸送も考えられます。
 以下に、その輸送コストを纏めました。


            表30 炭化水素の陸上輸送コスト

MRT05_Fig30.gif - 3.94KB

 表の左端は、輸送される炭化水素の種類
 天然ガスの輸送コストは2つありますが、 上の欄は液化コスト込みの輸送コストであり、 下の欄はすでに液化された天然ガスを運ぶ場合の輸送コストです。

 輸送距離毎に分けた陸上輸送コストは、海上輸送と同じく4段階ですが、その範囲が大きく異なります。
 輸送距離は、30km以下30km〜100km100km〜300km300km〜1,000km、で設定しました。
 1,000kmを超える陸上輸送のコストは計算していません。

 輸送手段としては、鉄道やトラック等による機械力を想定しました。
 荷馬車や人力で運んでいる場合、輸送コストは更に大きくるでしょう(今回は考察の対象外)。



 パイプラインタンカー(海上輸送)を用いない場合、 炭化水素の輸送距離は100km前後が限界となる筈です。
 パイプライン海上輸送と組み合わせて、 適切な輸送経路をデザインして下さい。





6.炭化水素の精製と販売


 採掘された「炭化水素」は、無事に、人口の多い消費地まで輸送されました。
 最後のステップとして、炭化水素の精製と販売を考察します。

 炭化水素の中で、 精製という作業が必要なものは石油(原油)だけです。
 一応、石炭天然ガスについても成分の調節等が必要なのですが、 それに必要なコストは微々たる額ですから、無視することができると判断しました。

 石炭天然ガスだけを扱う場合は、不要なルールをスキップして、 (4)石炭と天然ガスの備蓄コスト(5)炭化水素の販売まで進んで下さい。




(1)石油製品の内訳と用途

 油田から採掘された石油(原油)は、一部の例外こそありますが、そのままの状態では利用することができません。
 不純物を取り除いたり、沸点の違いを利用して分離(分留)したり、熱や水素を加えて分解したりする行程を、 精製と呼びます。

 その詳細については、あまりにも膨大な文字数が必要となりますので省略しました。

 しかし、精製によって作り出される石油製品にはどんなものがあるのか。
 また、それらの用途はどうなっているのか。
 簡単ですが、少し説明をしておきたいと思います。
 ルール上はすべてが炭化水素として扱われますので、実際はフレーバー程度の意味しか無い訳ですが。

 某極東島国において石油(原油)から作り出された石油製品の量を、 その名称と用途から分類して、以下へ纏めました。
 データの項目が多くなり過ぎたので、表を2つに分割してありますが。


           表31 石油製品の内訳と用途、その1

MRT05_Fig31.gif - 8.93KB

 表の左端は、石油製品の名称

 表の右側は、石油製品の用途です。
 上の段が大まかな用途であり、此処では発電や熱供給といった用途に分類されていました。
 下の段はもう少し小分けになった用途で、電力鉱工業農林水産業家庭・業務用都市ガス、 といった形に別れています。

 石油製品の名称石油製品の用途の交差した欄が、 石油製品の消費量です。単位はパーセント(%)
 「0.0%」と示されている欄は、0.1%にも満たない量であっても、消費されていることを示します。
 それを区別するため、全く消費されていない欄は空白のままとしました。



 用途毎に見ていくと、 最初の電力分野での消費量は8.5%と意外に少な目です。
 消費される石油製品の多くは重油原油で、 それぞれの消費量は4.6%3.3%でした。 原油精製なしで利用される例外のひとつです。

 次の鉱工業分野での消費量は14.1%
 消費される石油製品の内訳は、 重油が圧倒的で8.7%
 次がLPガス3.1%、 3番目が灯油1.8%となっていました。
 4番目の潤滑油、0.5%という数字は意外でしたが、 鉱工業分野なので、生産された工業製品に消費される、ということなのでしょう。

 農林水産業分野での消費量は3.0%
 消費される石油製品の内訳は、 今回も重油が一番多くて1.8%
 次が灯油1.1%、 3番目が軽油0.1%でした。
 説明が無いので推測しかできませんが、漁船の動力やハウス栽培に用いられる燃料、なのでしょう。
 農業機械で使われている筈なのに、ガソリン欄が空白になっている点が疑問です。

 家庭・業務用分野での消費量は15.7%
 最も多く消費される石油製品は、灯油6.5%でした。
 2番目はLPガス4.6%で、 3番目が重油4.2%です。

 都市ガス分野での消費量は1.4%
 内訳は、その大半がLPガスであり、そのままの1.4%
 極僅かにナフサも利用されているようです。
 実際のところ、最近の都市ガスには 天然ガスを使用しているところが多くなっているとのこと。



 石油製品の内訳と用途、2つめの表です。


           表32 石油製品の内訳と用途、その2

MRT05_Fig32.gif - 9.84KB

 表の左端は、石油製品の名称

 表の右側は、石油製品の用途です。
 上の段が大まかな用途で、今回は輸送機器の燃料石油化学製品の原料、 2つの用途に分類できました。
 下の段は小分けになった用途で、自動車航空機運輸船舶の3つと、石油化学製品の原料の1つ、合わせて4つです。

 表の右端は、それぞれの石油製品の生産量合計を、 同じ単位のパーセント(%)で纏めました。



 再び用途毎に見ていきますが、 自動車分野での消費量は34.9%と圧倒的でした。
 消費される石油製品の内訳は ガソリンが最も多くて19.2%
 2番目が軽油14.4%
 3番目がLPガス1.0%
 この分野でも4番目に潤滑油、0.3%という数字があったりします。

 次の航空機分野は、消費量が1.7%
 消費される石油製品の大半は、 ジェット燃料であり、そのまま1.7%
 僅かながら、ガソリンも消費されているようですが、これはジェット・エンジンではなく、 レシプロ・エンジンを搭載した航空機向けの燃料なのでしょう。
 余談ですが、寒い高空を飛ぶジェット機の燃料は、しっかりと水分が抜かれたものでなければいけないそうです。
 エンジンの中で水分が凍り、その欠片がエンジンを傷つける恐れがあるからだとか。

 運輸船舶分野での消費量は2.8%
 消費される石油製品の内訳は、 重油が最も多くて2.1%
 2番目が灯油0.5%、 3番目が軽油0.1%でした。
 この分野にも4番目で、潤滑油、0.1%という数字があります。

 石油化学製品の原料分野での消費量は17.9%
 消費される石油製品の内訳は、 最も多いものがナフサ15.5%
 2番目がLPガス1.4%
 3番目が原油1.0%、となっています。
 実際の所は石油化学製品を作る作業の過程で分留や分解の処理が為されるのでしょうけれど、 これも原油精製なしで利用される例外のひとつです。



 表の右端の生産量合計についてですが、 最も消費量が多かった石油製品重油21.4%でした。
 その用途は鉱工業電力家庭・業務用
 4番目に運輸船舶分野が存在します。

 2番目に消費量の多い石油製品ガソリン19.3%
 用途の大半は自動車分野でした。

 3番目の石油製品ナフサ15.6%
 その大半が石油化学製品の原料として消費されています。

 4番目の石油製品軽油15.2%
 用途の大半は自動車分野ですが、家庭・業務用電力運輸船舶農林水産業でも利用されています。

 5番目はLPガス11.9%
 家庭・業務用の用途が最も多く、その次が鉱工業石油化学製品の原料自動車分野となっています。

 6番目の灯油9.8%
 7番目のジェット燃料1.7%
 8番目の潤滑油0.8%でした。

 原油そのままの利用は、合わせると4.3%にも達しています。
 少し意外でした。

 次の項では、ハウス・ルールによる原油の精製を説明します。




(2)原油の精製と副産物(硫黄とバナジウム)

 原油の精製を行う場合は、 その規模(精製される原油の量)に合わせて、以下の設備を購入して下さい。

 稼働率は週5日×8時間(年間250日)を想定していますので、 処理能力の1日当たり1,000トンは、年間25万トンとなります。
 埋蔵量1千万トンの油田から採掘される原油の量と同じに設定しました。
 処理能力1日当たり1万トンは年間250万トンで、埋蔵量1億トンの油田から採掘される原油の量に相当。
 処理能力1日当たり10万トンは年間2,500万トンで、埋蔵量10億トンの油田から採掘される原油の量に相当します。

 以下の表へ、精製設備の購入価格と維持費を示しました。


             表33 石油精製設備の購入費用

MRT05_Fig33.gif - 5.33KB

 精製設備は、その処理能力(精製能力)の大きさによって区別されています。

 前述の通り、週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。
 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍の精製を8年続けた場合、少し早目に耐用年数が尽きてしまいます。
 最終的に、1重量トン当たりの精製コストが5cr増える、ということになるでしょう。
 精製コストの増加を抑えようと考えているのであれば、処理能力は2倍が限度となるように設定しました。



 原油の精製においては、幾つかの副産物が存在していますが、 その中でも非常に生産量が多く、非常に厄介な副産物として、硫黄(S)が挙げられるでしょう。

 採掘された石油(原油)の中には、 重量比で0.04〜3.33%(平均値は1.67%)硫黄が含まれていました。
 高濃度の硫黄を含んだままの状態で石油製品を使用するならば、 大気中に大量の硫黄を撒き散らすということになってしまいます。
 例えば、ガソリン重油を燃焼させる際、 大量の亜硫酸ガス(二酸化硫黄)を排出することになる訳で、これは環境保全にとって都合の悪い話です。
 この他にも、排気ガスを清浄化するための触媒に悪影響を及ぼす(浄化能力を低下させる)ことがあったり、 外燃機関のボイラーや内燃機関の燃焼室内でも悪いことが起きていたりするようなのですが、専門外なので良く分かりません。
 とにかく石油(原油)の中に含まれた高濃度の硫黄を取り除く必要がある訳で、 この行程を脱硫(Desulfurization)と呼びます。

 精製された石油製品は、 許容される硫黄濃度が製品毎に異なっていました。
 ガソリン軽油の場合は厳しくて、 重量比で0.001%(10pm)以下
 少し前までは、ガソリン=0.01%(1,000ppm)以下軽油=0.05%(5,000ppm)以下だったのですが、色々な事情で厳しくなったようです。

 灯油は少し緩くて、0.008%(80pm)以下
 こちらの規格は変わっておらず、昔から厳しかったという事情が窺がえました。

 重油は分離(分留)の過程で硫黄が集まってしまう所為か、 0.5%以下(A重油)3.5%以下(C重油)という規格が存在します。
 重油からの脱硫は手間が掛かり、高コストなので、 高濃度の硫黄を含んだままでも構わず燃やしてしまう、とのこと・

 様々な統計データから推測した結果、精製された石油(原油)から、 重量比で0.8%に相当する硫黄が取り除かれるようです。
 平均値が1.67%なので、 残りの0.87%重油アスファルトの中へ残され、 そのまま消費されてしまうのだろうと思われますが、良く分かりません。



 もうひとつの代表的な副産物は、バナジウム(V)
 鉱物資源シリーズの2番目「主要なレアメタル、MRT02.html」でも軽く触れましたが、 の生産副産物として得られるバナジウムの量はそれほど多くなりません。
 バナジウムの生産量は、実のところ、 その半分近くが原油の精製に依存しております。
 これも統計データからの推測ですが、世界全体で採掘される石油(原油)のおよそ5%は 豊富なバナジウムを含んでいました。
 その含有量は、重量比で0.01%=原油10,000トン当たり1トン、となります。



 以下は、石油(原油)の精製設備から得られる、 硫黄バナジウムを示しています。


             表34 石油精製の副産物生産量

MRT05_Fig34.gif - 4.45KB

 精製設備は、その処理能力(精製能力)の大きさによって区別されています。
 表の左端は購入費用で、その右側が処理能力
 更に右側が、副産物である硫黄バナジウム生産量

 数字を分かり易くするため、若干、数字を弄りました。

 硫黄の生産量は 石油(原油)の精製2,500万トン当たり20万トン(=石油125トン当たり硫黄1トン)の比率となっています。
 石油2,500万トンを消費する世界(人口4千万人、TL8)において、 硫黄の消費量は僅か282トン。
 年間で199,718トン(=20万トン−282トン)もの余剰が発生している訳ですが、 脱硫の必要性がある以上、仕方のないことなのでしょう。
 こうした硫黄の過剰生産が価格の暴落を引き起こしているので、状況の改善は望めません。

 バナジウムの生産量は 石油(原油)の精製2,500万トン当たり2,500トン(=石油1万トン当たりバナジウム1トン)の比率で設定しました。
 但し、油田毎にサイコロ(2D)を振り、11+が出た場合にのみ、 その石油(原油)からバナジウムが得られる、 という制限が付きます。
 2D6で11+は8.3%となりますので、リアルよりも少しは条件が良いでしょう (平均すると石油(原油)12万トン当たり1トンとなる訳です)。
 上記と同じように計算しました。
 石油2,500万トンを消費する世界(人口4千万人、TL8)において、 バナジウムの消費量は283トンです。
 生産の副産物として得られる量は155トン(54.9%)ですから、必要量を満たせません。
 ですから、石油精製の副産物として得られる208トン(73.7%)が極めて重要となってくる訳です。



 副産物の流通形態と流通量、価格について、以下へ纏めました。


        表35 石油精製の副産物の流通形態と流通量、価格

MRT05_Fig35.gif - 4.85KB

 表の左端は元素名
 その右側が流通形態で、 元素単体や様々な化合物の状態が有り得ます。
 品位は、 それらの流通形態の中で元素が占める割合をパーセント(%)で示したもの。
 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。
 流通量は10億人当たりの流通量で、重複しているものもあります。



 硫黄の価格は、最終的に買い手が支払う金額、となっているようです。
 20世紀テラにおいて、某極東島国は大量の硫黄を輸出していましたが、 トン当たり60ドルの輸送費込みで輸出価格が100ドルとなっていたようですから、ほとんど儲けは無いのでしょう。
 過剰になっている在庫を処分できる(備蓄スペースの拡大をせずに済む)ことを考えれば十分であるという可能性も考えられます。

 また、極東島国の法規制によって船積み料金は極めて高額となっていることが判明。 法規制を緩くすれば、船積み料金を引き下げて更に大量に輸出できるかも知れません。



 石油(原油)から得られるバナジウムは、 その多くが五酸化バナジウムの形を取っています。
 との化合物であるフェロバナジウムとしての取引量の方が多いので、 五酸化バナジウムからフェロバナジウムに作り変えられていることは明らかなのですが、 その詳細は良く分かりません。



 さて、採掘と異なり、原油の精製には、若干の時間が必要です。
 幾つかの資料を参照にして、30日間が必要である、という設定にしておきました。

 その間、安定した原料(原油)の供給を行うため、 次の項の石油備蓄設備を合わせて購入して下さい。




(3)石油の備蓄コスト

 原油の精製には、安定した原料(原油)の供給が不可欠です。
 此処では、そのために30日分の備蓄が必要だと考えました。

 その他、何らかの理由で供給が減少した場合(タンカーの到着が遅れる、産油国からの輸出が停まるなど)に備えて、 安定した供給を維持するための備蓄という目的もあり、米国は60日分を、 某極東島国に至っては177日分(民間備蓄83日分+国家備蓄94日分)を備蓄しています。

 トラベラー世界であっても、石油に依存した社会を築いているのであれば、 供給途絶のリスクに対して、ある程度の備蓄を行っていなければなりません。
 このハウス・ルールにおいて、その備蓄日数は30日分60日分90日分の3段階を想定しました。

 精製所の稼働に最低限必要な備蓄量が30日分であり、 どんな環境であっても(油田がすぐ隣にあるような精製所であっても)これだけの備蓄が無ければ稼働できません。

 60日分は前述した通り、某米国が蓄えている備蓄量です。
 ある程度の自給能力があっても、このレベルの備蓄は不可欠だという事なのでしょう。

 最後の90日分は、某極東島国の民間備蓄に相当しています。
 コスト的に民間では、このレベルの備蓄量が限界、なのだとのこと。
 某極東島国は、ほぼ同じ分量の国家備蓄がありますから、 両者を合わせれば180日分=半年分の備蓄を抱えていることになる訳です。



 以下の3つの表に、規模の異なる3つの精製設備に対応した、備蓄設備の購入価格と維持費を示しました。
 まず最初は、処理能力が低い購入費用=200MCrの精製設備向けの備蓄設備から。


       表36 石油備蓄設備の購入費用(精製設備200MCr向け)

MRT05_Fig36.gif - 5.27KB

 備蓄設備は、精製設備に比べれば遥かに安価です。
 購入費用8〜20MCrの範囲でしか必要とされません。

 処理能力は1日当たり1,000トンですから前述の通り、 購入費用=200MCrの精製設備、1日当たり1,000トンの処理能力に対応しています。
 備蓄量はそれぞれ20,000トン=30日分40,000トン=60日分60,000トン=90日分として設定しました。

 1日の処理能力が1,000トンならば、30日分の備蓄量は単純計算で30,000トンになる筈だと思われるでしょう。
 けれど稼働条件が週5日×8時間を前提としていますので、これで良いのです(誤差は生じますが、計算を簡略化するため無視しました)。
 精製設備の稼働率を2倍か4倍に上げる場合は、備蓄設備も2倍か4倍の数を用意して下さい。

 年間の維持費は、購入費用の10分の1で設定しました。
 この維持費を40倍(40年分)にして、購入費用を加えた金額が、 購入費用と維持費の合計です。

 購入費用と維持費の合計を、年間の取扱量1,000万トンで割った金額が トン当たりの備蓄コストとなりました。
 備蓄によるコスト増加は、表の右端へ示した通りとなっています。



 次は、購入費用=2,000MCrの精製設備に対応した備蓄設備。


       表37 石油備蓄設備の購入費用(精製設備2,000MCr向け)

MRT05_Fig37.gif - 5.37KB

 購入費用は、80〜200MCrとなりました。
 備蓄量200,000トン=30日分400,000トン=60日分600,000トン=90日分です。



 最後は、購入費用=20,000MCrの精製設備向けの備蓄設備。


       表38 石油備蓄設備の購入費用(精製設備20,000MCr向け)

MRT05_Fig38.gif - 5.69KB

 購入費用は、800〜2,000MCrです。
 備蓄量2,000,000トン=30日分4,000,000トン=60日分6,000,000トン=90日分でした。




(4)石炭と天然ガスの備蓄コスト

 石炭天然ガスに関して、 精製という行程は必要ありません。
 しかし、供給が減少したり、場合によっては途絶した場合に備えて、ある程度の備蓄は必要となります。
 某極東島国の場合、石炭については30日分天然ガスについては14日分の備蓄を義務付けているという話ですから、 その数値を目安にしてハウス・ルール備蓄日数を決めていくことにしました。



 今度は、石炭の備蓄設備を纏めました。
 以下の3つの表は、規模の異なる3つの採掘設備に対応した、石炭備蓄設備の購入価格と維持費です。
 備蓄日数は10日分20日分30日分の3段階を想定しました。

 まずは、購入費用=10MCrの採掘設備向けの備蓄設備から。


       表39 石炭備蓄設備の購入費用(採掘設備10MCr向け)

MRT05_Fig39.gif - 5.27KB

 石炭の備蓄設備も安価です。
 購入費用4〜10MCrでした。

 処理能力は1日当たり1,000トンですから前述の通り、 購入費用=10MCrの採掘設備、採掘量1日当たり1,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、7,000トン=10日分14,000トン=20日分20,000トン=30日分として設定しました。

 稼働条件が通常通りの週5日×8時間であるならば、これで問題はありません。
 精製設備の稼働率を2倍か4倍に上げる場合は、備蓄設備も2倍か4倍の数を用意して下さい。

 年間の維持費は、購入費用の10分の1で設定しました。
 この維持費を40倍(40年分)にして、購入費用を加えた金額が、 購入費用と維持費の合計です。

 購入費用と維持費の合計を、年間の取扱量1,000万トンで割った金額が トン当たりの備蓄コストとなりました。
 備蓄によるコスト増加は、表の右端へ示した通り2.0〜5.0crです。



 次は、購入費用=100MCrの採掘設備に対応した、石炭の備蓄設備。


       表40 石炭備蓄設備の購入費用(採掘設備100MCr向け)

MRT05_Fig40.gif - 5.34KB

 購入費用40〜100MCrとなりました。

 処理能力は1日当たり10,000トンですから、 購入費用=100MCrの採掘設備、採掘量1日当たり10,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、70,000トン=10日分140,000トン=20日分200,000トン=30日分を設定しました。



 最後は、購入費用=1,000MCrの採掘設備に対応した、石炭の備蓄設備。


      表41 石炭備蓄設備の購入費用(採掘設備1,000MCr向け)

MRT05_Fig41.gif - 5.62KB

 購入費用400〜1,000MCrです。

 処理能力は1日当たり100,000トンですから、 購入費用=1,000MCrの採掘設備、採掘量1日当たり1000,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、700,000トン=10日分1,400,000トン=20日分2,000,000トン=30日分に設定しました。



 某極東島国における石炭の備蓄日数は30日分でした。
 石油の備蓄日数90日分(≒83日)と比べて、3分の1しか必要とされていません。
 これは、石炭の供給が安定していることを意味するのでしょう。

 そして、トン当たりの備蓄コスト石油の半分、5cr程です。

 備蓄日数が3分の1で、備蓄コストが2分の1ですから、同じ重量を備蓄するのであれば、 石炭の備蓄コストは、石油の1.5倍となることが分かりました。
 備蓄場所については、露天でも構わないので安く済む筈ですが、 それらの搬入/搬出にはベルトコンベアのような設備が不可欠となるので、若干、割高となるようです。



 最後は、天然ガスの備蓄設備を纏めました。
 以下の3つの表は、規模の異なる3つの採掘設備に対応した、天然ガス備蓄設備の購入価格と維持費です。
 備蓄日数は5日分10日分15日分の3段階を想定しました。

 まずは、購入費用=40MCrの採掘設備に対応した備蓄設備から。


      表42 天然ガス備蓄設備の購入費用(採掘設備40MCr向け)

MRT05_Fig42.gif - 5.28KB

 天然ガスの備蓄設備は少しだけ割高となりました。
 購入費用8〜20MCr

 処理能力は1日当たり1,000トンですから今回も、 購入費用=40MCrの採掘設備、採掘量1日当たり1,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、3,500トン=5日分7,000トン=10日分10,000トン=15日分で設定しました。

 稼働条件が通常通りの週5日×8時間であるならば、これで問題はありません。
 精製設備の稼働率を2倍か4倍まで上げる場合は、備蓄設備も2倍か4倍の数を用意して下さい。

 年間の維持費は、購入費用の10分の1です。
 この維持費を40倍(40年分)して、購入費用を加えた金額が、 購入費用と維持費の合計

 購入費用と維持費の合計を、年間の取扱量1,000万トンで割った金額が トン当たりの備蓄コストです。
 備蓄によるコスト増加は、表の右端へ示しました。
 大凡、4〜10crの範囲となっています。



 次は、購入費用=200MCrの採掘設備に対応した、天然ガスの備蓄設備。


      表43 天然ガス備蓄設備の購入費用(採掘設備200MCr向け)

MRT05_Fig43.gif - 5.37KB

 購入費用80〜200MCrとなりました。

 処理能力は1日当たり10,000トンですから、 購入費用=200MCrの採掘設備、採掘量1日当たり10,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、35,000トン=5日分70,000トン=10日分100,000トン=15日分で設定しました。



 最後、購入費用=1,000MCrの採掘設備に対応した、天然ガスの備蓄設備。


     表44 天然ガス備蓄設備の購入費用(採掘設備1,000MCr向け)

MRT05_Fig44.gif - 5.58KB

 購入費用800〜2,000MCrとなりました。

 処理能力は1日当たり100,000トンですから、 購入費用=1,000MCrの採掘設備、採掘量1日当たり100,000トンに対応しています。
 備蓄量はそれぞれ、350,000トン=5日分700,000トン=10日分1,000,000トン=15日分で設定しました。



 某極東島国における天然ガスの備蓄日数は14日分でした。
 石油の備蓄日数90日分(≒83日)と比べると、僅か6分の1です。
 これは石炭と同じように、天然ガスの供給が安定していることを意味する、 と言いたいところですが、どうやら違うようでした。

 トン当たりの備蓄コスト石油と同額の10crです。

 備蓄日数が6分の1で、備蓄コストが同額ですから、同じ重量を備蓄するのであれば、 天然ガスの備蓄コストは、石油の6倍になりました。
 備蓄コストが大き過ぎるため、備蓄日数を短く抑えざるを得ない、ということなのでしょう。




(5)炭化水素の販売コスト

 コスト計算の最後の行程です。
 販売に関するルールなのですが、今回は販売コストを加算するだけに留めて簡略化しました。

 各種炭化水素の販売に必要なコストは、以下のように設定しておきます。


             表45 炭化水素の販売コスト

MRT05_Fig45.gif - 2.25KB

 表の左端は、販売される炭化水素の名称で、 その右側が炭化水素の販売コストです。
 採掘コストや輸送コスト、末端の小売価格とのバランスから設定しました。



 販売コストが最も大きい炭化水素は、 石油50cr
 モデルはガソリンの給油所なのですが、客単価が小さく、その代りに客数が極めて多いことから、 このような販売コストとなりました。

 その次に販売コストが大きいのは石炭です。
 液状の石油と比べれば輸送や管理は高く付くのですが、客単価が大きく、客数が少ないことから、 販売コストを大きく引き下げました。

 販売コストが最も小さいのは天然ガスです。
 これは店頭での販売がほぼ不可能であり、その大半がパイプラインで販売されていることから、 販売コストを小さく設定しました。



 これまで考察してきた、採掘コスト輸送コスト精製コスト備蓄コスト販売コストを合計してみましょう。


           表46 炭化水素の供給コスト内訳比較

MRT05_Fig46.gif - 6.31KB

 表の左端は、コストの内訳
 上から順に、採掘コスト輸送コスト精製コスト備蓄コスト販売コスト、 を並べています。

 この5つのコストを合わせたものがコスト合計であり、 その下へ示した小売価格の原価に相当しています。

 その下の利益は、 小売価格からコスト合計を引いた金額です。
 最後の利益率は、 利益小売価格で割った値であり、パーセントで示しました。



 表の右側には、3種類の炭化水素石炭石油天然ガスを並べてあります。

 石炭は採掘コストが20crと比較的安価でした。
 輸送コストは15crですが、備蓄コストは5crしか掛かりません。
 販売コストは30crであり、コスト合計は70crとなりました。
 利益は5crで、利益率は6.7%です。

 石油は採掘コストが60crで高価(石炭の3倍)でした。
 輸送コストは石炭と同額の15crですが、精製コストの100crが大きな比重を占めます。
 備蓄コストは10crでした。
 販売コストは50crであり、コスト合計は235crです。
 利益は15crで、利益率は6.0%でした。

 天然ガスは採掘コストが60cr、石油と同額になっています。
 輸送コストが極めて大きく、此処での想定は100cr。
 備蓄コストが10cr、販売コストが20crで、コスト合計は190crとなりました。
 利益は10crで、利益率は5.0%です。



 この表を、金額(cr)ではなくパーセント表示(%)へ直すと、 以下のように変わりました。


         表47 炭化水素の供給コスト内訳比較(%表示)

MRT05_Fig47.gif - 5.24KB

 表の左端は、同じくコストの内訳
 並んでいる順序も同じです。
 表の中身は、金額(cr)からパーセント表示(%)へ変更しました。
 その結果は御覧の通りです。



 石炭の場合、コストの多く(40.0%)を占めているのが販売コストでした。
 わずか30crと比較的小さなコストだった筈ですが、小売価格を基準にすると、その比率が明らかになっています。
 次点が、採掘コストの26.7%と輸送コストの20.0%でした。
 石炭の売買による利益を増やすためには、 その販売コスト、採掘コスト、輸送コストを如何に削減するかが重要となってくるでしょう。



 石油に関しては、精製コストが最も大きく40.0%でした。
 精製設備の規模を大きくすることで効率良く、安価な精製が可能となります(表33へ示した通り、最大規模の精製設備は、精製コストが80cr)。
 次点は、採掘コストの24.0%
 3番目が販売コストの20.0%でした。
 この2つも、コストの削減対象となるかも知れません。



 天然ガスは、輸送コストが50.0%を占めています。
 次点は、採掘コストの30.0%
 液化を行えるようになっても、原価の多くを輸送コストが占めているという現実は変えられません。
 天然ガスの売買で利益を得るためには、その輸送コストをどう抑えるかが課題となってくるでしょう。



 炭化水素の小売価格には上記のような要素が影響しますので、 炭化水素の採掘や輸送をシナリオに絡める場合は、上記の要素をきちんと考慮した背景設定をお願いします。





7.まとめ


 今回は、「石炭、石油、天然ガス」から成る 「炭化水素」の採掘について考察しました。



 まずは、メガトラの追加ルール、 Wet NavyWood & Wind, Steel & Steamにおいて、
 木材(薪)石炭といった固形燃料、
 エタノールメタノールといった液体燃料、
 これらが追加されたことから、燃料の特性比較を行っています。
 ハウス・ルールとして天然ガスも追加しました。



 次は、炭化水素の消費量について。
 これは古代テラ(19〜21世紀)の統計資料を基に、 テックレベル4〜9の世界で、 どれだけの炭化水素が生産され、消費されているかを纏めました。
 テックレベルA+の世界における生産/消費量は完全な推測値ですが、妥当な数値だと考えています。



 石炭石油天然ガスについて、従来とほぼ同じ形式の採掘ルールを作成しました。
 石炭はローリスク・ローリターンの堅実な投資。
 石油は、探索と採掘に多額の費用を必要としますが、ハイリターンが期待できる投資。
 天然ガスは、両者の中間的な投資だと言えるでしょう。

 採掘に続いて、炭化水素の輸送ルールも作成しました。
 石炭石油の輸送コストは微々たるものですが、 天然ガスの輸送コストが極めて大きいという事実が明らかになっています。

 精製は、石油だけに必要な行程です。
 意外と大きなコストが掛かっていました。
 石油製品の内訳については、 ルール上はすべてが炭化水素として扱われますので、実際はフレーバー程度の意味しか有りません。
 副産物として生産される硫黄バナジウムについても触れています。

 炭化水素の備蓄について、簡単なハウス・ルールを作成しました。
 エネルギー資源の安定供給に関して、頭の片隅に留めておいて頂ければ幸いです。

 最後は販売に関するルールですが、今回は販売コストを加算するだけです。
 石炭石油天然ガスについて、その原価の内訳を考察しました。
 それぞれの原価にどの要素が大きく影響しているかを明らかにしています。






 2016.01.24 初投稿