X-610G CLASS EXPRESS BOAT
X-610G 連絡船
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  Shade8 & Poser6


  

 

 

 

 

 
 








 

X-610G CLASS EXPRESS BOAT
 

 Xボートは,帝国の生命線である.光速を瞬時に超える恒星間ジャンプシステムは,銀河の海原を航海することを可能としたが,リアルタイムで恒星間通信を行うためのシステムは未だ開発されていない.

 従って情報の伝達は,小型で高いジャンプ能力を有する宇宙船かジャンプミサイルと呼ばれている小型の通信筒を介して行わざるを得ない.

 後者のジャンプミサイルは,超小型ジャンプ装置を内蔵した高価な使い捨て連絡筒であるが,質量が小さい故の宿命としてジャンプ誤差が高く,しばしば行方不明となるため,信頼性に乏しいという欠点がある.これらは主として大型の軍用艦に数発しか積まれていない.

 よって通常の帝国の通信網は前者の小型宇宙船に依存するところが大きい.こうした小型で高いジャンプ能力を持った宇宙船は一般に連絡船EXPRESS BOATと呼ばれている.最大ジャンプ能力は4パーセクであるが,近年,次々にXB-610型が就役しつつあり,最大ジャンプは6パーセクに上昇した.

 
 


 
 Xボートによる通信ネットワークは帝国首都であるキャピタルから延々と延びている.情報は指定航路に沿って分岐しながら流される.

 ある星系にXボートが到着すると積載する情報は瞬時に待機中の別のXボートに転送される.情報の転送が終了すると新しいXボートは直ぐにジャンプし,次ぎの星系へと向かうのである.残されたXボートは所定の回収システムに従いXボート母艦へと移送され,整備と燃料補給が実施される.そして次のXボートの到着を待つことになる.

 こうして情報はリレー式に次々とXボートからXボートへと引き継がれ,広大な銀河帝国中に広がってゆくわけである.

 
 

 この情報システムの維持管理を一手に担っているのが帝国偵察局IISS(Imperial Interstellar Scout Service)通信部Xボート課である.偵察局はXボート路線上に基地を持ち,帝国の大動脈となって存立基盤を支えている.

 一方,Xボート路線から外れた星系には,中継基地をハブとして,S型偵察艦がローカルネットワークを構築している.このネットワークは,通信部連絡課により運営されている.S型偵察艦は恒星間長距離航行に耐える性能を有しており,幾つもの星系を回りながら情報を伝達していくこととなる.

 
 




MASA/MASA04's XB-class EXPRESS BOAT from MASA.Ship's

 
CraftID:
X-610, Type XB, TL 15, MCr 75
Hull:
90/225, Disp= 100, Config= 1SL, Armor= 40G
Unloaded= 568 tons, Loaded= 957 tons
Power:
1/2, Fusion= 252 MW, Duration= 14/42
Loco:
2/4, Maneuver= 1
6/13, Jump= 6
NOE= 190, Cruise= 750, Top= 1000, Vacuum= 1200
Agility= 0
Commo:
Radio= System x3, Laser= System x3, Maser= System x3
Sensors:
PasEMS= Interstellar x3, ActEMS= FarOrbit x3
Densitometer= LowPen/250m x3
Neutrino= min 10kw x3
ActObjScan= Rout, ActObjPin= Rout
PasObjScan= Rout, PasObjPin= Rout
PasEngScan= Simp, PasEngPin= Rout
Off:
Def:
DefDM= +7
ArmorDM= 0, SizeCd= 1
Control:
Computer= Model/6 x3, Panels= HoloLink x2
Special: HUpHoloDisp x1
BasEnv, Bas LS, Ext LS, Grav plates, Inertial comp
Accom:
Crew= 0 (1 x 0), Staterooms= 4
Bridge= 1, Engrng= 0, Mtce= 0, Gunnery= 0, Flight= 0
Troops= 0, Command= 0, Stewards= 0, Frozen= 0, Medical= 0
HiPass= 0, MidPass= 0, LowPass= 0, LowBerth= 0, EmerLow= 2
SubCraft:
Other:
Fuel= 515 kliters, Cargo= 353 kliters
ObjSize= Average, EMLevel= Faint
Design Notes:
Mcr 60 in quantity.

 
 
 
 
DECK PLAN






DECK 1

 DECK 1は制御区画である.船橋は,船内の全てをコントロールする能力がある.後部には非常用のエアロックが設けられており,MODEL6の大型のコンピュータが3台設置されている.これらのコンピューターは通常と異なり非常に大きなメモリー領域を有している.左右両舷には,通信機器が設置されている.



BRIDGE DETAIL

 船橋の左舷は船長席,希に見習操縦士が配属された場合には右舷席が使用される.これまで関係者を船橋に案内する例もあったが,現在では内規により硬く禁じられている.















DECK 2

 DECK 2はいわゆる居住区画である.4つの専用室と大きな共用室から構成されている.左舷に乗降用のエアロックが設置されている.船長の専用室は通常船首,左舷となっており,乗客スペースと隔離される.中央には船体を縦通するシャフトが貫通しており,その横には船内環境調整室がある.







STATE ROOM 01 専用室01

 X-610G連絡線には,4つの専用室が設置されている.各専用室にはコンピュータ端末,ベットが備えられている.外壁面側は壁面モニターとなっており,様々な三次元映像を映し出すことができる.船客は,偵察局員の部内移動,帝国政府の関係者,星系政府等の依頼により偵察局が認めた関係者等が主であり,商業ベースでの利用は殆ど見られない.









STATE ROOM 02 専用室02

 各専用室には,シャワー,洗面施設,トイレが一体となった衛生設備が備え付けられている.ベットは個室内でも広いスペースが確保できるように昇降式となっている.教育課は,乗員が生活の大部分を深宇宙で過ごすことに考慮して,あらゆる種類の教育プログラムを提供しており,学位,資格などの習得に役立てている.また,可能な範囲であらゆる種類のエンターテイメントを提供している.






COMMON ROOM 共用室

 長期間の孤立に起因したストレスを緩和するために,共用室も比較的広い設備が確保されている.壁面の一部は専用室と同様に三次元モニターとなっており,様々な風景を表示することができる.共用室には,膨大なメニューを誇る高級なフードディスペンサーが装備されている.各方面から,Xボートの設備が贅沢すぎるのではないかとの指摘もあるが,帝国政府は必要なスペースであるとの見解を崩していない.















DECK 3-7

 DECK 3は26tの貨物船倉となっており,緊急性を必要とする公的な貨物が輸送される.DECK 4,5は合計38tの燃料タンクとなっている.DECK6はパワープラント,DECK7はジャンプドライブとなっている.船体側面には,小型の通常ドライブポッドが4基設置されている.




 
 
 
 
 
許されざる客

■■■ 1 ■■■

 ケッシュ・スミアン(Kkessh Smianr)は,18で高校を卒業し名門モーラ工科大学に入学したが,スリットボールのサークルで当時交際していた浮気ものの男を,ものの見事に殴り倒してしまい,停学処分を食ってしまった.結果,奨学金を打ち切られ,大学をドロップアウトする羽目になった.その直後,人生を踏み外した勢いで偵察局に入隊し,今は通信部でXボートのパイロットをしている.

 ケッシュは,入隊以来,XポートやS型偵察艦に乗り組みながらキャリアを積んできたが,これまでに3回負傷した.一度は特別任務で頭に大怪我をして死に掛けた.目下の夢は偵察艦の指揮官になることだ.除隊時に偵察艦を持ちたいと考えているが,簡単に希望が通るほど組織は甘くない.自分の替えはいくらでもいるのだから.

 ケッシュは,毎年,探査部への転属願いを出していたが,これまで通った試しがない.長いジャンプ空間での余暇時間を利用して舶用制御工学の博士号もとったし,銃器の取り扱いや戦闘訓練もサボらず積極的に参加して,それなりに努力はしてきたつもりだが,どうやら今年も定期異動に名前はなく,握りつぶされたらしかった.

 ケッシュは,グリッスン星系の
バンフ宇宙港の旧セクションにあるVIP居住区を訪れていた.グリッスンは,恒星グリスを巡る小惑星帯世界である.高度な技術力を持つ工業惑星であり,スピンワードマーチの要である.ケッシュは,VIP居住区の最上階にある高級レストランで,同期入隊の元同僚と遅い昼食を採っていた.元同僚の彼女は,Xポートに乗船してきた侯爵と恋仲になり,今は引退して裕福な暮らしを謳歌している.

 3日前がケッシュの35才の誕生日だったので,そのお祝いに元同僚は高そうなペンダントをくれた.香水を振りまく機能を内蔵したタイプで,様々な香りや濃さを携帯端末からコントロールできた.ケッシュは,コンタクトレンズに香水発生装置の制御メニュー画面を呼び出し,視線で制御すると,お気に入りのクロソリの香りを出してみた.とたんに心が安らいだ.

 量は少ないが美味なコースの4皿目にケッシュがフォークを付けた時,ベルトに付けた通信端末が微かに震えた.ケッシュは,ゆっくりとフォークをおくと,食事の中断を元同僚に詫びた.

 通信機端末のスイッチを入れると,コンタクトレンズに画像が表示された.通信相手が顔見知りのグリッスン基地の
運航管理官であることがすぐに分かった.外耳に貼り付けた小型スピーカが彼女だけに音声を伝えた.

「スミアン船長,休暇中のところ申し訳ないが,X-678号の燃料冷却制御チップに障害が見つかった.X-610Gクラスの予備は君の船しかないので,至急出港準備にかかって欲しい.」
 ケッシュは,自らの休暇の予定に思いを巡らせた.この後,彼女は元同僚に将来の伴侶となるかもしれない実業家を紹介して貰う予定で,パークドームに行く予定だった.ケッシュは,単調なXポート任務からの降り時を思案しているところだった.

「他にもスタンバイ要員はいると思うのですが.私はスタンバイでもありません.」
 喉に貼り付けたスピーカーに静かに,しかし毅然とした口調で不満を述べた.
「それがカイラルとアニーとスカンキーも主任運航管理官の急な増便命令で出なければならなくなった.こんな無茶苦茶な運航は稀だし,私も混乱しているんだ.頼むよ」
「そんな無茶苦茶な増便が許されるなんて,,,.また乗員組合に怒鳴り込まれますよ?」
「その頃には君は既にジャンプ空間の中さ.頼むから.」
 仕方がないので,将来の伴侶はとりあえずキャンセルだ.

「了解しました.何時に?」
「運航管理室に1900出頭ではどうかな.これで出港の手続きはぎりぎりだ.今君は,, ,,えーとVIP区画だな.なんだってそんな所に.まあいい.
VIP埠頭まで迎えのボートを出す.310号だ.」
「310号了解.」

 元同僚は,事情を察してテーブルの向こうで苦虫を噛み潰している.ケッシュは,謝罪もそこそこに店を飛び出すとコンタンクレンズにガイドプログラムを呼び出した.背伸びして宿泊していた一泊Cr350のリゾートホテルまでの最短の自動歩行路を調べ,品の良い住民達を押しのけながら進んだ.部屋に戻ると歩きにくいドレスを脱ぎ捨て,サッとシャワーを浴びた.出港前に下着を真新しいものに替えるのは,長い間の宇宙船乗りの大事な習慣だった.

 ケッシュは,コンタクトレンズのモニターにオリジナルのチェックリストを呼び出し,任務に必要な持ち物を確認した.帝国市民身分証明書,偵察局局員身分証明書,
1級宇宙船操縦技量証明書(パイロットライセンス),宇宙船操縦者身体検査証明書.これらの小さなプラスチックカードをポケットに収めた.専用のバックを開け,航宙儀,航法用端末,工具箱,マニュアル,法規書,手袋,小銭など必要な手荷物を確認した.

 ぎりぎりの時間だった.ターボリフトでロビーに降りると,偵察局の制服を盾に緊急事態を宣言し,カウンターの行列に割り込みチェックアウトをした.電子決済でもいいだろうに,これだからレトロな高級ホテルは困る.人間のクラークのどこがいいのか.
 迎えの大型ボートは,急加速すると小惑星ワ=ヒンに設けられた偵察局基地に向かった.偵察局基地には100隻以上のXボートやS型偵察艦が係留されていた.大型艦バースには,1000t級XT型補給艦や2000t級大型測量艦,そして帝国外長距離探査任務に就役している30,000t級の巡洋艦ディープ=フロンティアなども停泊していた.


■■■ 2 ■■■

 大型ボートが小惑星ワ=ヒンにある偵察局基地に着くと,ケッシュは運航管理室にショーアップ(出頭)した.カウンターの向こうから担当の運航管理官がすまなそうに頭を掻き名がながらやってきた.運航管理官の業務は目的地までの航行計画を立てることである.航行計画は,航行の安全性を最優先に考え,出発基地,到着基地,両星系の恒星嵐予定,惑星軌道,衛星軌道,ジャンプイン地点,ジャンプアウト地点,バースト通信の実施地点,通常ドライブによる加速,速度,ルート,船体重量,搭載燃料などが厳しくチェックされ,作成される.

 ケッシュがショーアップした時には,航行計画は運航管理官により既に完成されていた.X-610Gクラスは,従来のXボート網を無視して,
高人口世界をダイレクトに結ぶ高速通信航路に投入されている.予定された航行計画は,グリッスンからマラスタンへのジャンプ6であった.船はその後,デュアルを経てモーラへとと向かう.X-610Gクラスは1Gの通常ドライブを搭載しているのでジャンプイン地点までは自力航行する能力がある.

 ケッシュは,運航管理室のカウンターに設置されている立体ディスプレイで,
航行計画(ナビゲーションプラン)の説明を受けた.小惑星ワ=ヒンからジャンプ実施地点へ向かう航路標識の一つが部品交換の為停止していること,マラスタンでは軍事演習が行われている予定であること,マラスタン基地のドッキングベイの一部が工事中で,到着先では,ボートでの乗降となる可能性があることなどが通告された.

 運航管理官は,乗客があることを告げた.
「二人とも偵察局管理部の人間だ.扱い難い動物が一頭,こいつは完全に独立制御できる飼育コンテナに密閉してあるから,君の手間は取らせない.」
 ケッシュは,航行計画にサインすると搭乗予定のXボートに向かった.

 埠頭まで自動歩行路を急ぐと,宇宙船マニアを案内していた保安部員の敬礼を受けてボートへと入った.荷物を自室に放り込みブリッジに上がると,整備員が機器を接続して点検作業を行っているところだった.

「おはようございます.船長.燃料制御チップの誤動作が報告されたのでチェックしていたところです.X-678のことはお聞きですか?下手をすると大事故になりかねないところでした.」
「だいたいのことは聞いているわ.私の休暇をぶち壊す大事故だわ.」
「これも運命ですよ.チェックは終わりました.それよりもそろそろ慣性航法装置の分解整備が必要ですね.誤差は許容範囲ですが,だんだん標準偏差がだんだんと酷くなってます.それから宇宙服が整備周期ですから交換しておきました.確認してサインを下さい.」
「いいわ.今サインする.後で見ておくから.」
 整備員は意味ありげな笑いを浮かべながら去っていった.

 出港までにやらねばならないことは沢山あった.埠頭の外観カメラをリモートで起動して船外を目視点検し,膨大なチェックリストをコンピューターの擬似人格と共同しながら読み上げた.それから船内を巡回して各種スイッチやモニターが所定の位置にあるかを厳重に確認した.宇宙船事故の原因の多くは未だに人間による信じられないような単純なミスだった.基本に忠実であることが宇宙で生き残る秘訣だった.

 貴重な高速便用貨物コンテナが第3レベルの船倉に運びこまれ,その立会いでかなりの時間を食いつぶした.出港20分前,乗客達がやってきた.一人は
管理部副局長であるマアラギンド氏.宇宙港のチケットカウンターでは何も言わずに特等チケットを差し出されるような落ち付きと品格を持っていた.もう一人はヴァルグル人の,名前の発音がややこしいが,とにかく管理部の移送官で,モーラの宙域本部に機密書類を直接手渡しで持っていくとかで,トランクにデータベースを収納して運びこんでいた.

 Xボートは予定通り出港すると加速を開始し,バースト通信を受けるとジャンプを実施した.


■■■ 3 ■■■

 船内時刻0600起床,規則通り軽くXポート乗組員体操をすると,天井に収納していたランニングマシンを引き出し,壁面モニターの設定とシンクロさせると,30分ほどかけて5kmほど走った.シャワーを浴びて,制服に袖を通すと連絡筒を上りブリッジに上がった.

 0700,操舵席に座り,コンピューターとともにチェックリストをクリアする.スイッチの位置や計器に見落としがないかを確認した.ジャンプ空間では核融合炉の状況確認が最も重要な日課だ.電子航宙日誌に全ての記録を行う.

 居住区画に下りると,朝食の準備を行った.並べておけば乗客達は勝手に食べるだろう.ケッシュは,先に朝食を済ませると船内ロッカーに行き,入れ替えたばかりの宇宙服の点検にかかった.その内の一着のサイズを調整して自分の体になじませた.

 こうして,乗客の世話の合間に雑用をこなし,バージョンアップされたシステムのマニュアルを確認していると,時刻は既に1700を回っていた.夕食の準備をするために再び居住区画に下りると,
フードディスペンサーを操作して,暖かい夕食を準備した.

 船内時刻1800,船内拡声器に夕食の知らせを流した.マアラギンド氏とヴァルグル人が船室から夕食に現れた.ヴァルグル人は生肉を好むが基本的には人類と同じ食事でOKのはずだ.両名にファストドラッグの使用について訪ねたが,今回は使用しないとのことだった.夕食は,グリッスンの食事に合わせたものであるが,中々美味で,雰囲気も和やかに進んだ.

 その雰囲気は,マアラギンド氏がポケットから物騒なものを取り出すと同時に破られた.何の脈絡もなく唐突にマアラギンドが
磁気ピストルを構えたのだ.

 ケッシュは手にしていたデザートの皿を床に落とし驚愕した.
 「冗談はやめてください.どうやってそんなものを.」
 ハイジャック防止プログラムが機能している中で,火器を持ち込むのは不可能なはずだ.
「コンピューター,
保安プログラム作動.
 ケッシュは喉から声を絞り出しながら,船内コンピューターに命令を下した.
「マアラギンド船長が非常事態を宣言されました.乗客は,船長の指示に従って下さい」

 マアラギンド氏がにやりと笑った.
「何故私が船長に成り代わったのかの謎解きは後だ.二人とも死にたくなければ,この空船室に入って頂こう.」
 マアラギンド氏の磁気ピストルに促されて,混乱するケッシュとヴァルグル人は船室に向かった.

 船室が閉鎖されると,混乱するケッシュにヴァルグル人が事態の概要を「推論であるが」と前置きして説明してくれた.
 「私の
携帯データベース端末が目当てだろう.ここにはグリッスン局の莫大な全人事データと内部監査の内容が記録されている.」
 ヴァルグル人が言うには,トランクに入れた移送中の携帯端末に大規模な内部監査情報が入っており,彼はそれを開けたがっているというのだ.偵察局内にそんな不正を行う連中がいたとは.

 組織は想像を超えて強大で,汚職は相当に進んでいるらしい.このハイジャックも整備員がプログラム自体を巧妙に書き変えたものだと聞いて,その組織の大きさを思い知らされた.ソースプログラムにアクセスして改竄し,かつ相互チェックのゲートウェイを潜り抜けられたのだから,恐ろしく巧妙な手口だった.

 ヴァルグル人は,自分がなんとかするから,くれぐれも何もしないように,英雄的な馬鹿げた行動は慎むようにと釘を刺した.それならば喜んでお任せしたいところだが,本当に見通しはあるのかと疑問を感じざるを得ない状況だった.

 それにしてもヴァルグル人と二人だけで船室に閉じ込められるのは頂けない.ケッシュは匂いにかなり敏感な方なのだ.むしろこの状況の方が急を要する.ケッシュはコンタクトレンズに表示された
香水発生装置の制御メニューを操作すると,香水の匂いを強くした.マアラギンド氏は低級な個人端末の使用をやめさせるまではしていないようだった.残念ながら船内コンピュータとのリンクは完全に絶たれているが.


■■■ 4 ■■■

 翌朝,ヴァルグル人が連れ出された.外がどうなっているのかはしらないが,ヴァルグル人と別室になれただけでも幸いだった.ケッシュの家系はやや特異体質で,通常の3倍程度嗅覚が敏感だった.自慢にはならないが,学生時代,交際相手の浮気を見破ったのもこの嗅覚のせいだった.

 ケッシュが空き船室から出されたのは更に48時間後だった.外のパーティーはかなり盛り上がっているようだった.マアラギンド氏は磁気ピストルを彼女につきつけながら,再びヴァルグル人の尋問を開始した.
「このクラスAからBのパスワードを入れろ.」
「繰り返しになるが,残念ながら,私の身分はただの移送官だ.こう言った移送任務では,移送官にデータファイルのパスワードは知らされていない.もちろん中身が何なのかもね.」
 ヴァルグル人は椅子に縛り付けられたまま答えた.相当に殴られたようだ.綺麗な毛並みが血にまみれている.

「それから既にお試しのように,自白剤等による強要は無理だ.その辺の薬に対しては全て抗体を持っている.拷問もいいが,私は幾つか神経系を改良しているし,時間的にどうかと思うよ.」
マアラギンド氏はニヤリと笑いながらケッシュの方を見た.
「その辺のところは良く分かった.でこの女だ.素直にパスワードを渡さなければこの女を殺す.」
「私とこの女とは無関係だ.参考までに言っておくが,少なくともこの女がヴァルグル人の匂いに良い感情を持っているようには私には到底思えないがね.」

 どうやらケッシュが香水を濃くした行動はお見通しだったようだが,それどころではない.マアラギンド氏が彼女の額に強く磁気ピストルを押し当てたのだ.体中から汗が吹き出る.ケッシュはパニックになった.
「まずはこの女に死んで貰う.」
「私はパスワードなど知らない.」

 ケッシュはパニックを起こしながらもとにかく口を開いた.完全に声が裏返っている.
「あー.マアラギンドさん.今ならまだ罪は軽いと思いますから,,,それにジャンプアウトしたら向こうの星系で全てがばれてしまうのでは.」
「黙れ.既に前の便で急使を出して移送官のすりかわりの準備はした.君達は人知れず宇宙の闇に消えてもらう.コンピュータの書き変えもするし跡形もなくなる.しかし今ここで協力してくれれば命だけは助けよう.」

 マアラギンド氏はグイっと銃口を額に食いこませる.ケッシュはヴァルグル人に助けを求めた.
「早くパスワードを言って.人の命がかかってるのよ.」
 状況は絶望的だ.なんとかすると言ったでしょう,ヴァルグル人.

「まずはこの女に死んで貰う.」
「私はパスワードなど知らない.」
 それしか言えないのか,ヴァルグル人.

「どうかな」
「頭の足りないヒューマノイドだ.やめておけ,火傷するぞ.」
 何てことを言うのヴァルグル人.犯人を刺激してどうする.

 そうだ香水だ.ケッシュは,ペンダントに内蔵された香水発生装置の制御メニューをコンタクトレンズに慌てて呼び出した.あった.
不審者撃退用の強烈な匂い設定.視線を僅かにずらしてスイッチを入れた.マアラギンド氏が強烈なその匂いにのけぞった.ケッシュは息を止めながら,銃を奪い取ろうと掴みかかり,マアラギンド氏に向けて強烈な必殺パンチを繰り出した.

 かつて浮気男を一撃で葬ったことのあるその必殺パンチは,見事にマアラギンド氏の顔面を通過し,空を切った.マアラギンド氏は軽くパンチをかわすと,磁気ピストルでケッシュの頭を強打した.目から火花が飛び散った.残念ながら人はそう簡単には英雄にはなれないようだ.そして立場が元に戻った.
 呻くケッシュの目の前で,マアラギンド氏がにたにたと笑いながら再び磁気ピストルを構え,そして引き金を絞った.目の前で火花が散った.


■■■ 5 ■■■

 目の前で火花が散ったのは確かだったが,崩れ落ちたのはマアラギンド氏だった.ケッシュは訳もわからず,とにかくマアラギンド氏から磁気ピストルを奪い取ると,膝立ちで構えた.磁気ピストルの先がガタガタと震えている.
「どういうこと?」

 ヴァルグル人は溜息をつくと,何回か首を横に振り,するすると自分で縄をほどき毛づくろいをはじめた.
「ちょっとした細工をさせて貰った.この船の船内ロッカーの銃器は私の発するパスワードで,引き金を絞ると使用者に電撃を与えるモードに移行するようにプログラムされている特注品だ.」
 ヴァルグル人は,自らの身なりを整えると手馴れた手つきでマアラギンド氏を縛り上げた.

「あなた,こうなることを知っていたの?」
「コンピューター,
訓練モードを解除して船の指揮権をケッシュ船長に戻すように.承認番号DFG-892-090-87685-JVL.
「承認番号とケッシュ船長の指揮権の回復を確認しました.」

 ヴァルグル人はマアラギンド氏が操作していた端末に向かうと,幾つかのプログラムを動かして中身を確認し始めた.
「得たい情報は全て得られたよ.彼は32人の個人ファイルにアクセスして極秘ファイルをこじ開け改竄しようと努力したようだ.その過程が全て記録されている.保安課にも2人か.以外と根は深いようだな.だいたいがこちらの睨んだ通りだが,8人は新顔だな.星系局長級が3人もいる.」

「いったいこれは何なの?」
「汚職の捜査だ.私は保安課の人間だ.内定調査を行なっていた.囮情報に,凝った仕掛け,一か八かだったが思いの他上手くいったようだ.」
「なら,最初から言ってくれればいいのに.」
「君に演技を期待するのは無理というものだろう.今までに演劇や拷問の経験は?」

「あなたが誰なのかはしらないけど,とにかく乗員組合に訴えます.あなたは,必要以上に船と乗員を危険にさらしました.」
「しかし,これも任務だ.マアラギンド氏が急使を出した後,私も急使を出した.既にマラスタンでは奴の仲間が逮捕されているはずだし,任務は安全だった.君が英雄的な行動に出たのは計算外だったが.我々はこの仕掛けに6ヶ月も時間をかけてきたんだ.割り切ってくれないかな.」
「これがトラウマになったらどうしてくれるの?」
「そうならない人物を慎重に選んだつもりだ.」


■■■ 6 ■■■

 大型ボートが横付けすると,磁気ライフル戦闘アーマーで武装した保安課の課員が乗船してきて,マアラギンド氏を連行した.ケッシュとヴァルグル人はエアロックでその作業に立ち会った.ヴァルグル人が口を開いた.
「まだご機嫌は良くないようだね.」
「どう意味か分かりかねます.乗客の皆様には常に,同じ態度で接しているつもりです.ご乗船ありがとうございました.」
 自分の船で好き放題されて気分のいい船長などいないはずだ.

「まあいい.今回は君がパニックを起こさなかったおかげで仕掛けも上手くいったのだから.礼をいうよ.」
「これも任務ですから.」
「分かっていると思うが,君は何も見なかったし,何も聞かなかった.後始末は部下達が後でやりにくるから心配はいらない.」
守秘義務については良く存じております.またのご乗船をお待ちしております.」

 ケッシュは,顔に満面の笑みを浮かべながら,早く出ていけこの野郎と心の中でののしった.ヴァルグル人は笑いながら,少なくとも彼女にはそう見えたが,毛むくじゃらの手をゆっくりと差し出した.

「運用部保安課へようこそ.」
「えっ?」
「君の転属願いは受理された.辞令は追って出すが,表向きは同じ通信部の
連絡課への異動となる.とりあえず通常通り,連絡課の任務をこなしてくれればいい.必要な時はこちらからまた連絡するから.」
「ちょっと待ってください.保安課なんて希望した覚えはありません.」

 ヴァルグル人は彼女の質問を無視してエアロックの中に入って行った.呆然としているケッシュを振りかえると,笑いながら呟いた.
「そうそう,今度は
S型偵察艦を1隻任されることになるだろう.おめでとう艦長.」

 
大型ボートが加速しながら離れていくのがエアロック脇の船外モニターで確認できた.小さくなる船影を眺めていると,船のコンピューターから電子音の呼び出しが入った.
「船長,マラスタン基地から本船の係留位置と燃料再補給手続きについての指示が入っております.」

 ケッシュは,現実に引き戻された.とにかく,まだ自分はこのXボートの船長だし,モーラまでの航海は終わっていない.やらなければならない入港業務も山ほど残されているのだ.

 銀河は,今日も回り続けている.

「つないで頂戴.」


 
 
 
 
 
 

Credits
 



 

Cast

 
Kkessh Smianr:
Juddy
A Vargr:
Wolf
Gaiddin Maaragindoo:
James

 
 


 
 


 

Staff

 
Ship Design:
MAG
CG Models:
MAG
Web Master:
化夢宇留仁

 
 


 
 

Generators

 
Caractor:
MegaTraveller (c) character generation
Language:
Word
Ship Design:
Cray Bush's Worksheet for Lotus 123

 
 
 


 

3D Modeling

 
X-Boat Models:
Shade 8.5
Figures Models:
Poser 6
Window Views:
Terragen, Vue5 and Universe
Rendering:
Shade 8.5