IJN 大日本帝国海軍



 ホビージャパンから発売されていた、太平洋戦争時の艦隊対艦隊の戦いを再現したウォーゲームである。
太平洋戦争と言えば空母を中心とした機動艦隊の索敵に始まり、艦載機の編隊による攻撃で終わるというイメージだが、当時首脳部はまだまだ大艦巨砲主義から脱しておらず、大和をはじめとした大戦艦による砲撃戦が戦争の花だと思われていたのだ。
 その花を忘れることなくウォーゲーム化したのがこのIJN(大日本帝国海軍)で、艦隊運動を中心としたルールで、砲撃と雷撃の醍醐味を味わうことが出来る。
ルールも手軽で盛り上がるゲームである。

 このゲームではほとんどプロットをせずに(基本的に艦速のみプロットする)同時行動性を表現するために、1ターンをいくつものフェイズに分けている。
日本海軍のシークエンス
●日本海軍の第一移動
●米海軍の砲撃
●日本海軍の砲撃
●日本海軍の第二移動
●日本海軍の雷撃
●日本海軍の損害回復&次ターン艦速記入

同じ手順を日米逆にしたものを続けて、1ターンが終了となる。
こう並ぶと複雑そうだが、ファイズ進行を表示するカードも用意されており、実にプレイアブルに進行する。

 上図はシナリオ4「ソロモンの暗雲」の初期配置。
マップは全部で9枚用意されているのだが、このシナリオでは4枚しか使用しない。
右にある島はサボ島で、シナリオに応じてマップ上に配置するようになっている。

 他にも幾つか特徴的な部分があるので紹介しておく。
まず艦隊移動ルール。
艦隊に属さない船は独行艦と呼ばれ、他の艦と攻撃力を合計することが出来なくなる。
このルールによって自然に両プレイヤーとも艦隊運動を行うようになり、艦隊司令官気分が味わえるようになっている。
ただし艦隊ルールに不明瞭な点もあり、少し不満。
1ヘックス以上の間が空いた場合、縦陣形は維持されるのか???

 被害判定には追加打撃というガジェット的なルールが付け加えられている。
これは砲撃、雷撃共にダメージを受けた艦に発生する可能性があり(1ダメージにつき1/3〜1/6の確率)、艦橋被弾や電路切断、火災発生、火薬庫命中による爆発など、大きくゲームの勝敗に関わる影響が出る上に、具体的な表現力をもつので、実に盛り上がる部分である。
昔シナリオ4「ソロモンの暗雲」をプレイしたときには、史実通り「青葉」が艦橋に被弾して大いに盛り上がった。

 夜戦による展開の変化。
当時は主に直接視認による戦闘だったので、勿論昼と夜とでは戦い方が大きく異なっていた。それを再現するルールである。
まず昼なら通常35ヘックスまで見通すことが出来るのだが、夜だと6〜8ヘックスしか見えなくなってしまう。ただし砲撃の光や、火災が発生するともっと遠距離からでも発見されることになる。
その為史実では長射程、高破壊力の魚雷を持つ日本海軍が、夜戦では圧倒的に優勢だった。
ただし戦争後半になると米海軍はレーダーを実用化し、夜戦の優劣は逆転することになる。
レーダーのルールももちろんある。
日本海軍は末期の戦艦にレーダーを搭載していたが、やはり米海軍のものより性能的に劣っていた。

 こんな感じでよくできたゲームなのだが、問題点もいくつかある。
まずあからさまに変なのが、魚雷の速度である。
明らかに1ターンでは到達不可能な目標に、撃ったターンに命中してしまうのだ。
しかしこれはプレイアビリティを優先した結果として仕方がないと思う。
本格的に魚雷の移動を再現しようと思えば、どうしても別ユニットとして移動させる必要が生じ、そうなれば命中判定ルールも大きく変わってくる(見て避けることが出来るようになる)。
魚雷の隠蔽性を再現しようと思えば別にプロットまで必要になるのである。
 ちょっとだけリアルにするルールとして、魚雷の最高速度に応じて狙った目標に到達するターンをずらすというのは面白いかもしれない。
それなら速度の問題だけは解消される。ただし艦の移動による射線の変化には対応できないので、中途半端感は否めないが。

 もう一つの問題点は、サイコロゲームになりやすいというところである。
ほとんど視界を遮る物のない海面上で、しかも長射程の砲撃戦となると、ひたすら撃ち合った末にサイコロ運の強い方が勝利するという展開が多くなってしまうのだ。
これはシミュレーション性とも関わる部分なので仕方がないのだが。

 ちなみに同じくホビージャパンから後に発売された「アイアンボトム・サウンド」というゲームでは、魚雷は別ユニットとして進んでゆくし、夜戦のスポットライト照射(敵を発見しやすくなるが、照射している船もいい的になる)ルールなども完備している。
これにより遙かにリアルな戦闘を再現しているが、やはりプレイアビリティではIJNには敵わないので、もはや好みの問題だろう。
 またIJNには続編もあり、より表現力のあるルールを採用しているらしいが、化夢宇留仁はこちらはよく知らない(汗)。どんなゲームになっているのであろうか。

気楽さ 3
言語依存 3
 追加打撃の内容などは文章で表現しているものも多い。
ソロプレイのしやすさ 3
 行動プロット式の割にはソロプレイしやすい。
化夢宇留仁の好き度 4