アルビオン



 アルビオン(イギリスの旧名)に攻め上るローマ帝国。
南から上陸した彼らは、砦を築いて開拓地を広げていく。
途中で出会ったピクト人は友好的ならよし。そうでないなら「反乱」発生。
開拓地、バリケード、砦、生産拠点を設置しつつ、アルビオン北部に開拓地を作ることを目指す。



 ゲーム開始状態(4人プレイ時)のボードの例。
ボードは縦長ででかく、タイルを置く場所を確保しようとすれば、コタツからはみ出る。日本の住宅事情に優しいとは言えない。
プレイ時間は2時間いくかいかないか。じっくり楽しむタイプのミドル級のゲームだと言えるだろう。
 赤、青、白、黒のコマとタイルがプレイヤーで、木製のコマが置かれているのがスタート地点。ここから北部に攻め込むのだ。
コマと一緒に置かれているのはバリケードで、これのレベルがボード全体のそのプレイヤーの建物の防御力となる。
左下の丸いタイルは水産量を示し、右は木材生産量。
中央の6角形に近いタイルは砦で、レベルを上げると移動力が上がる。
 ボード各所にある黒くて丸いタイルがピクト人で、そのエリアで建物を建てると1枚表返す。
表にはそのピクト人が友好的か敵対的かが描かれており、敵対的だった場合そのエリアで反乱が発生する。
 ゲームの目的は4レベルの開拓地3つを建設することで、その内1つは翼のマークの描かれた北部エリアに建てなければならない。
ゲームの様子を紹介しながら流れを説明してみる。


 手番には移動力を好きなように割り振ってコマを動かし、移動終了時にいたエリアでアクションを行える。と言っても最初はコマは1つ、移動力も(初期数値+砦1つ分)で2しか無いので、やれることは限られている。
 画像では赤が1歩前のエリアに開拓地を建設。
1レベル開拓地を建設するとコマを1つもらえるので、赤コマが合計2個になった。
 ここでこのゲームのポイントだが、建設アクションを行ったコマはスタート地点に戻される。
新たに手に入れたコマもスタート地点に配置される。
つまりボードのどこにいようと、何かやる毎にスタート地点に戻されてしまうのだ。
おそらく開拓に必要な資材や人材、補給を表現したルールだと思うが、このおかげで北部を開拓するのが難しくなっている。

 青、白、黒も開拓地を建設。
赤は今度はピクト人生息地で砦のレベルを2に上げることにした。
ピクト人マーカーが1枚めくられ、結果は敵対的な赤で反乱が発生した。
 反乱が発生すると、そのエリアの敵対的ピクト人の合計数をそのまま戦力として、そのエリアに建物を持つプレイヤー全員に攻め込んでくる。
今回はピクト人の戦力は1だが、次に反乱が起こると今回のマーカーも持ち越されて合計2の戦力で攻めてくることになる。
スタート地点にバリケードが1つ最初から配置されているので、格プレイヤーの防御力は1。
反乱ピクト人の戦力以上なので誰も被害を受けることは無かった。
もしピクト人の戦力が上回ると、建設は失敗し、手番プレイヤー以外の建物はレベルが1つ下がってしまう。
 砦の建設に成功したので、移動力が1増える。
画面左の長方形のタイルがゲーム開始時に受け取る初期移動力マーカー。
砦が増える毎に自分の色の同様のマーカーが手に入り、その合計数が次のラウンド以降の移動力となる。
 こうしてコマの数や移動力を上げてゆき、北部に開拓地を作るのを目指すわけだが、必要な要素はこれだけではない。


 先述した水産物、木材に加え、銀(手前のエリア)と金(奧のエリア)の4種類の生産物がある。
建物を建てる場合、レベルに応じた種類の生産物を支払わなければならないのだ。
例えばレベル2からレベル3に建物をレベルアップしようと思えば、3種類の生産物が必要。
4レベルに上げようと思えば4種類全てが必要で、その為には最北部の金鉱エリアに生産拠点を建設しなければならないわけである。
 また生産物の支払い時には、先にそのエリアに建物を建てていたプレイヤーがいた場合、生産物の一部を貢ぎ物としてそのプレイヤーに渡さなければならない。
このシステムのおかげで、コマの数や移動力などをじっくりと上げてから北部に向かう戦術と、とにかくエリア一番乗りを目指す戦術の幅ができている。
 ちなみに生産は任意のラウンドに行われ、生産量レベル分の生産物が手にはいるが、そのラウンドはそれ以外は何もできない。
いつ生産を行うかも重要な選択である。

 別な要素として、ボード上に印刷された赤のピクト人マーカーが見えると思う。
これは反乱時にピクト人の戦力に追加されるもので、北部に行けば行くほど強力になってゆく。
ピクト人に対する防御力をしっかり備えていくか、タイルのめくり運にまかせて開拓を進めるかも選択肢となる。


 ピクト人への備えはバリケードだけではない。
画面の青い円盤は軍隊コマである。
開拓地を建設した時、通常の開拓者コマの代わりに軍隊コマをそのエリアに配置することができる。
軍隊コマがいるエリアの防御力は1上がる。
移動できるバリケードのようなものだが、それだけではなく、軍隊コマは移動時に裏向きのままのピクト人を一緒に連れてゆくことができる。
これによって、防御力の足りないエリアの建物を守ったり、他プレイヤーの建物のレベルを下げる可能性を高めたりすることができるのだ。

 ゲームは進み、全プレイヤーが銀鉱山を手に入れ、赤は勝利条件である翼のマークの入ったエリアに開拓地一番乗りを果たした。
画面上ではピクト人の反乱が起こり、その戦力3に対する防御力が分からないが、画面外にバリケードを4つ設置しているので被害は受けない。
しかし今後も反乱が発生するとピクト人の戦力が追加になるので、それに備えておく必要がある。


 ゲームは佳境に入り、南からどんどんローマ軍が押し寄せている。
赤が一番乗りしたエリアに青と白も建物を作り、左上では黒が金鉱一番乗りを果たしている。



 ゲーム終盤。
見にくいが、赤の開拓地の1つが4レベルとなっており、あとの2つも3レベルなのでそれらのレベルアップを果たせば勝利である。
他のプレイヤーもレベルの高い開拓地も持っているが、1や2と低いものもあるのでこのままでは逆転は難しい。

 結局赤の勝利でゲームは終了。
終盤で差がつくと逆転は難しい。
建設は1ラウンドに開拓者コマ1つにつき1回しかできないし、必要な生産物もそう簡単には手に入らない。
ピクト人の反乱でトップのレベルを下げようにも、手順が多い上に最後はタイルのめくり運次第となる上に、妨害行為に使った軍隊の分、建設のための移動力が減ってしまうのだ。
またレベル4の開拓地は、もうレベルを下げられることはないとルールに定義されている。
当然それ以外の開拓地を狙うのだが、レベル4の開拓地を持ったプレイヤーは、そこの守備に使っていた軍隊コマを他に回せるということであり、ますます反乱の成功は難しくなる。
したがって特にゲーム中盤以降では、他プレイヤーの開拓地の状況を把握し、最低限2レベル以上の差がつかないようにする必要があるだろう。

 アルビオンはその見た目の割に運の要素は裏返ったピクト人のみの、アブストラクトな要素の強いゲームである。
ウォーゲームからこの世界に入った化夢宇留仁的には、やはりマップ上のコマを動かすのは楽しく、気に入っている。
しかし今のところソロプレイしかやったことがなく、ちゃんと内容を把握しているとは言い難いのだが、問題点もいくつかあるように思う。
 上記の紹介でも伝わったかと思うが、細かい選択肢は山のようにあるのだが、勝利条件による縛りがあるので開拓地を優先せねばならず、結局似たような展開になりがちなのだ。
手順が多いゲームに多い問題だと思うが、その辺はもう少し幅があるとゲームとしての奥行きが出てくると思う。
 また建物を建てる時の生産物の扱いが、画一的なのも少々残念である。
やはり最低でも食料と資材は扱いを分けてほしかった。
資材は建物を作るために。食料は建物を維持するために使われれば、描写も増し、戦術の幅も広がったと思う。その分少々ルールは煩雑になってしまうだろうから、両刃の剣ではあるのだが。

 まだ紹介していないコンポーネントについてだが、実は生産物のマーカーがすごく凝っていて楽しい。
画像がそれで、特に魚(笑)。
実に細かい輪郭を再現し、しかも両面印刷。
長さは約1.5cm。
小っちぇえ(笑)
豪華なんだかしょぼいんだかよく分からないコンポーネントが可愛い(笑)。

 そんなわけで、少々問題もあるが、骨格はしっかり面白く作られ、コンポーネントには変にお茶目なところのある愉快なゲームである。

気楽さ 3
言語依存 0
ソロプレイのしやすさ 4
 ソロプレイに困るようなルールは1つもない。しかし状況を把握してじっくり考えた方が面白いゲームなので、集中力の問題もあって内容を完全に楽しむというわけにはいかない。
ソロプレイは大なり小なりそうなのだが。
化夢宇留仁の好き度 5

 TRPG「クトゥルフの呼び声」好きな化夢宇留仁としては、シナリオ「キャニッチの魔女団」に出てきたローマのイギリス侵攻&ピクト人というだけでわくわくするという病気も加味されている(笑)

20100206