このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。
トップページ > 記事閲覧
カコセの社(やしろ)(0/8)
日時: 2003/11/18 01:19
名前: @2c

@2cがいずれやってみたいと思っている(笑)『70年代日本クトゥルフ』の
短編シナリオプロットです。日本的な恐怖(いわゆる怪談系?)の演出で。
精神的にジワジワくるようなカンジですね。まあ、オチはそれなりにつけ
たいですが、多少不条理な余韻を残したほうがいいかも…。ちなみに、プレイ
時間は3〜4時間を想定しています。
PS2のホラーアドベンチャー「零」くらいの状況描写ができたらいいんですが(笑)

(導入)
・197X年関東周縁にあるW県の山村が舞台です(このことはスタート当初は
分かりません)。
・探索者たち(お互いにまったく面識がありません)はとつぜん、自分たちが
まったく見ず知らずの座敷で倒れているのに気がつきます。どうやら眠って
いたようです。
・なぜここにいるのかサッパリ記憶にありませんが、お互いそれぞれ奇妙な歌詞の童謡
(子守歌?)を夢の中に聞いたように思えたことだけは一致します。
・座敷は10畳ほどで、清潔ですがどこかしら底冷えのする気配があります。
どうも仏間のようで、隅には妙に豪奢な仏壇があり、欄間には5つ6つ、
黒い扁額に入った老人の写真が飾られています。出入り口は仏壇の正面にある
ふすまひとつだけです…
メンテ
Page: [1]

Re: カコセの社(やしろ)(1/8 ( No.1 )
日時: 2004/02/10 20:49
名前:  2c

不審がりながら探索者たちが部屋を出ようとすると、仏壇のあたりからかぼそい声が聞こえてきます。とぎれがちで所々妙に間延びした、まるでノイズの激しいラジオから聞こえるようなそれは、薄ら寒い恐怖を背筋に上らせます(SAN0/-1d2)。そのままではまったく意味が通りませんが、<聞き耳>に成功すると、末尾の語句のみが聞き取れます。
『ゆらゆらと(雑音)紅い鼻緒(雑音)白い烏(からす)を』
仏壇からはもう何も聞こえてきません。
障子を開け部屋を出ると、目の前には高い塀で囲われた小さな庭園があります。雲行きのはっきりしない天気ですが、夜半ではないようです。枯れきった手水鉢、苔むした置き石、ひっくりかえった鹿おどしなど、人の手はまったく触れていない様子です。左右は長い渡り廊下になっており、同じような障子戸が延々と続いています。どの部屋の障子も固く閉ざされ、中を伺い知ることはできません。どこも開けることはおろか、叩き破ろうとしても不思議なことにびくともしませんが、中には障子紙を破って内部を覗くことのできる部屋があります。これらは探索者の数と同数、機会があるものとします。
1d6 光景
1  座敷。調度などはない。こちらに背を向けて並んで座っている小柄な人物。老人らしい。声をかけても決して振り向かない。ごくまれに、「る」「げまと」等何か無意味な言葉を呟いている。
2  座敷。煤けた天井と箪笥などの調度が見える。煙草盆によりかかっているぐにゃぐにゃした赤黒い不定形のもの。生きているようには見えない。浴衣のようなものを纏っている。(SAN-1/1d4)こちらを完全に無視している。
3  大広間。数十帖はありそう。お膳が無数に配されているが、誰もいない。
4  座敷。子供部屋らしくたくさんの和人形が飾ってある。よく見ると、視線が全部こちらに向けられている(SAN0/-1)。
5  土間。炊事場らしい。無人。
6  納屋。羽織一枚の若い女性がうつぶせになって倒れている。裸らしい。うつぶせのまま、こちらにじりじりと近づいてくる。そのまま離れれば何もない。様子を見るか、声を掛けるなら<幸運>ロール。失敗すると顔とおぼしき部分から、緑灰色の鱗に覆われた蠍の尾のようなものがシュッと伸びてきて障子を突き破り、探索者の顔をかすめる(1d3ダメージ、SAN-1/1d6)。青黒い粘液にまみれた傷は妙にじくじくとして治りが悪く、<応急手当>か<医学>に成功するか、最低3日経過(自然治癒)しないかぎり、ダメージと同程度のAPPを失う。1ポイントでも怪我を負わせると、女性はかき消すように消失する。
いずれの叙景も、一度経験したら二度と出現せず、似たような無人の居間が延々と続きます。
メンテ
Re: カコセの社(2/8) ( No.2 )
日時: 2004/03/08 19:56
名前: 西山  <nishiyama@kcat.zaq.ne.jp>

延々と渡り廊下を歩いて行くと先の方ににぎやかな部屋がある。
閉ざされたふすまの向こうから大勢の声で「メデタヤ」「メデタヤ」と囃している。
(いくら聞いても「メデタヤ」の繰り返しで内容はまったくない)
ふすまに手をかけると中から年寄りらしい挨拶が聞こえる。
「ここで皆様に失礼して夫婦になった二人はカコセ様の社に詣でまする。
お客様もそろそろお目覚めになる頃、追いつかれれば恐ろしいことになりますゆえ。
その間、皆様にはこの部屋で存分に楽しんでいただきたい。
今日は大ぶるまいでございます」
ふすまを開くと同時に部屋の奥のふすまが閉まる。
このとき一瞬だけちらりと新婦のものらしい白無垢が目に入る。
部屋の中はさっきまでの喧騒が嘘のように暗く静まりかえっている。
畳の上には無数の膳が並べられていて、膳の上にはままごとのように
泥や葉っぱの料理が乗せられている。
それぞれの膳の前には華美な和服で着飾った奇妙な姿の人間がずらりと
座っているが、よく見れば砂の山に服が着せられているだけである。

部屋は広く奥に行くなら砂の山や膳をまたいでいかねばならない。
無数の突き刺さるような視線を感じながら奥に着くと、
そこには一行の人数分だけのカラの座布団と膳がある。
奥のふすまは手をかければ簡単に開く。
同時に後ろの方から「メデタヤ」と声があがる。
始めは囁く程度だが、だんだんと声も増え、耳をつんざく大きさになる。
地鳴りがおこり、明白な危険を感じる。
外に出てふすまを閉めたとたん、ずしりと重たいものがふすまにのしかかる。
わずかに開いた隙間からは砂がこぼれる。
ふすまは二度と開かない。
メンテ
カコセの社(3/8) ( No.3 )
日時: 2004/05/31 19:48
名前: 化夢宇留仁

落ち着いてまわりを見てみると、そこは短い廊下になっており、すぐ先に広い玄関があります。
履き物が置いてあるのを見て、探索者達は自分たちが靴をはいていないのに気付きます。
そこにあるのは探索者と同じ数の履き物だけで、しかも探索者はそれぞれ自分の靴が分かります。
そう言えばこの玄関から上がったような気もします。
玄関の脇にはカレンダーが貼られています。
1974年5月・・・
PC達にとって今は200X(プレイしている年)年7月です。
携帯電話を掛けようとしても、繋がりません。
衛星電話を持っていたとしても繋がりません。

玄関から外に出ると、小さな庭になっており、小道を進むと門にたどり着きます。
門を出ると森を切り開いただけの駐車場があります。
分かりにくいのですが、駐車場からは山を登る道と下る道の2つの道がのびているようです。

駐車場の隅にはボロボロの紋付き袴を来た老人がうずくまっています。
近寄ってみると、彼はよだれをたらして地面になにかを描きながら、ブツブツつぶやいています。

老人が描いているものをよく見て<アイデア>に成功した者は、それが一定の形だと分かりますが、その形がなにを示しているのかは分かりません。
後にそれに関係するものを見れば思い出すかもしれませんが。

老人は気が狂ってしまっていますが、質問にはある程度答えてくれます。
彼が答えてくれるのは、以下のような内容ですが、内容が食い違っているところがあるし、意味の分からないことも多いようです。

「カコセ様は土砂崩れで亡くなられたと当主様が言われた。」
「結納を交わした新郎と新婦はカコセ様にお参りしてそれを報告する。」
「カコセ様は昔の過ちをやりなおさせてくれるありがたい神様。」
「結婚式は滅茶苦茶じゃ。」
「加古守家はこれで終わり。」

山道を下ってゆくと、どんどん道が険しくなり、やがて道とは呼べないような状態になってゆきます。
それを無理して進む<登坂×2>と、谷底のような場所に出ます。
そこにはぐちゃぐちゃになった小型のバンがあります。
中には運転手を始めとした数人の遺体があります。
それを見たPC達は自分たちがそれに乗っていたような気がします。
谷は自力では登れそうにありません。

山道を登ってしばらくすると、前方から誰かが歩いてきます。
近寄ると、それがボロボロの人間の衣服を身につけてはいるが、人間ではないことに気付きます。
それは身体を震わせて脚を引きずりながら一行に近寄り、襲いかかってきます。

●時の狭間に溶けたもの
筋力(STR) 14 敏捷力(DEX) 6 
精神(POW) 5  サイズ(SIZ) 13
耐久力 13
溶解液 50% ダメージ 1D4※特殊
かぎ爪 40% ダメージ1D4

人間のような輪郭ですが、髪はなく、顔にも目も口もありません。
手もはっきりしない形になっており、皮膚は全てケロイドのようになっています。
「時の狭間に溶けたもの」は口から溶解液を吹き出します。
溶解液の射程は2mで、溶解液が命中すると、その部位が時間的に不安定になります。
その部位が溶けたようになり、POW×5倍ロールに失敗するとそのまま消えて無くなってしまいます。
カコセの支配する世界から脱出しない限りその部位は戻ってきません。
この攻撃で死んだ者も「時の狭間に溶けたもの」になってしまいます。

「時の狭間に溶けたもの」は半分この時空に存在していないので、全てのダメージは1/2(切り捨て)しか受けません。

「時の狭間に溶けたもの」を見た者は、正気度を(1/1D4)失います。

彼を倒さない限りはそれ以上上へは登れないでしょう。
メンテ
カコセの社(やしろ)(4/8) ( No.4 )
日時: 2005/02/26 00:44
名前: @2c

「溶けたもの」を素手や棒切れなどで攻撃した探索者は、まるで沼に浮かぶ
藻を掬うような手触りを覚え怖気をふるってしまいます(SAN-0/1、初回の
攻撃時のみ)。
HPが0になると「溶けたもの」は空間に拡散するような感じで消え去って
しまいますが、その寸前に顔とおぼしき部分に入った亀裂から、「其方当
(そのほうあたり)」、「其方当」と数回(直接攻撃に加わった探索者の
人数分)繰り返すのがはっきりと聞き取れます(キーパーは下敷などで顔を
隠し、それぞれの探索者に向かって告げて下さい)。
その声は最初に目覚めた仏間で聞こえてきたノイズに酷似しています。
この「声」を告げられた探索者は数年後、「鮠庫(はやくら)」の奈落に
堕とされ、祖母又は祖父の手により『納戸ニ従フ者』にされそうになりますが、
それはまた別の物語です。
********************************************************************
敵を倒ししばらく行くと、道は完全に下生えで埋まってしまいます。
空は血を流したような夕焼けが広がり、夕闇の紫が色濃く漂ってきます。

ここで<聞き耳>に成功(もしくはPOW×3ロール)した探索者は、妙な
民謡のような声を前方に聞きつけます(聞きつけてくれないと話が進ま
ないので、全員失敗したようであれば何らかのペナルティ−SANやHP喪失−
などを課して、『聞きつけ』させて下さいw)。そちらに向かって進むと、
先ほど見かけた白無垢の女性、紋付袴の男性がしずしずと坂道を上っていく
のが視界に入ります。ふたりの前には、身長90cmほどの、なんらかの宗教
儀礼で身に付けるような和装(<オカルト>×1/2に成功すると、W県に
伝わる秘仏を崇める山岳宗教で使用する典礼着に似ていることを思い出し
ます)を身に付けた侏儒が、調子っぱずれな裏声で、意味不明の祝詞の
ようなものを絶え間なく唄っています。侏儒はどことなく痴呆めいた、人間の
パロディのような顔の造作をしていて、見るものを非常に不快にさせます
(SAN-0/1)。3人とも、こちらの呼びかけには一切応えません。
探索者が彼等の行く手を見やると、そこには−
天からのしかかってくるような、まさに巨大な−鳥居のシルエットがありました。

巨大な鳥居には微細なエッチングが無数に刻まれており、謎の模様や
図形に覆われています。じっくりと見ていると、ふしぎに混乱した
頭が静かに整理されていくような、奇妙な安心感を得ることができます
(鳥居をくぐることで、狂気から来る精神錯乱の効果を鎮静することが
できます。さらに、鳥居をよく調べてみた探索者はSANを1d3ポイント
得ます)<クトゥルフ神話>に成功すると、その中に【光と闇の目】を
発見することができます。
鳥居を抜けると、木々の間をゆく、侏儒と新郎新婦の姿が見えます。
追いかければ彼らを捕まえることができそうになるのですが、追いつき
かかる間にさらに向こうに行っているといった案配でとらえようがあり
ません(キーパーは探索者にDEXの数値を訪ね、スクリーンの影で1,2回
抵抗ロールを振るフリをしてください)。
彼らがへとへとになるころ、突然視界が開けます。杜のむこうには大きな
湖がひろがっており、彼らはそこにかかる一本橋を渡っている所です。
湖水のなかほど、橋の終点には、小さな社があります。
メンテ
Re: カコセの社(やしろ)(5/8 ( No.5 )
日時: 2005/03/02 00:04
名前: K_G

 探索者が橋まで辿り着く頃には、白無垢の女性と紋付袴の男性、及び侏儒の一行は、社の中に姿を消してしまいます。その跡を追って橋を渡ってみれば、それまでの道程と似て、目測での距離とは大いに食い違う長さを歩かされている感覚を受けます。視覚や歩行感覚等、五感から得られる情報と、その歩行に関して直面している実際の困難との矛盾に脳が対応しきれずに、眩暈や船酔いに似た症状を訴える者が出るかも知れません。
 橋からは異様な臭気が放たれています。しかし一見して、何かが腐ったり、かびたりすることで生じるたぐいのものではなく、未知の木材それ自体の発するもののようで、今までに嗅いだことのない、しかし非常に不快な臭気です。

 社に近付くにつれて、再び矮人のものと思われる声が聞こえるようになってきます。多くは相変わらず意味不明の連騰じみたもので、日本語であるのかどうかさえも分かりませんが、時折、妙な訛りがあって不明瞭ながらも、日本語とわかる言葉が断片的に聞き取れることもあります。<聞き耳>に成功すれば、とりわけて「歌臼命(うたうすのみこと)の佐須良(さすら)が海に降り立ちたるの踏跡より爆ぜ生まれ出で給えしかこせ大神」云々という、謎めいた文句を聞き取ることが出来るでしょう(聞いているだけなので当然現状では、探索者に漢字表記は分かりませんが)。
 連騰には新婚の男女のものと思われる声も混ざり合うようになり、いよいよ混迷の度合いを強めていきますが、声が少しずつ大音声と化していく中、やがて唱えられる内容は、幾つかの言葉(意味不明な単語を適当に考えて下さい)に収束していきます。「かこせ! ああ、かこせ!」中でも探索者はこのカコセという単語のみに聞き覚えがある筈ですが、それもまるで、人ならざる何者かの発する言語に変質してゆきつつあるかのように、すぐに全く別の、より訳の分からない言葉のようにしか聞き取れなくなります――
「ぐが ぬぐ ずへ! いあ、ぐが ぬぐ ずへ!」
のように……。

 そして、静寂が訪れます。
メンテ
Re: カコセの社(やしろ)(6/8) ( No.6 )
日時: 2005/04/24 09:49
名前: ウルタール

薄暗い道を進むにつれて、ようやく目が暗闇に慣れてきたのか、
ここがジメジメした洞窟の中だと気づき始めます。
その不気味な洞窟を音のする方へいくばくか、
歩みを進めて行くと大きな広間に着いた事を告げます。

探索者たちは、一同息を飲み込み、あたりの様子を伺います。
薄暗がりの中、吐き気をもよおす臭気に襲われ(SAN値、マイナス)
何語ともつかぬ、その呪文めいた声の方に近づいて行きます。
(<捜索>x1/3を試み、成功すれば【忌まわしき祭壇】を発見する事になります。)
ニブイ色の深緑(ふかみどり)の鳥居に、ドス黒い赤のしめ縄がくくり付けられた祭壇の奥の方で
なにやら蠢くものが有り、その祭壇の前には、例の新郎新婦が跪いています。
矮小なる者たちは、互いに甲高い・・一種の奇声じみた呪いの言葉を撒き散らし、
巨大な洞窟内にある、この忌まわしき祭壇をいよいよ覆いつくす程の数まで増えていきます。
探索者たちの緊張感もピークを迎え、自分たちが『来てはならない場所』に
足を踏み入れてしまったのだと実感します・・。

『うぐなす・りえー=あぐあ・かこせ』
『黒き深遠なる眷属の、至高なる存在!!』
『我らが右手に座するは、歌臼命なり! 赤きつるぎを持って其の命に従い』
『我らが左手に座するは、佐須良なり! 血と肉と栄えある栄光のもとに』
『ずるたん・ぐぎん・えへ ぐが=ぬぐ・ずへ!!』
『今宵の良き日に、この者たち(新郎新婦)に永久(とわ)の祝福を・・。』
『供物(くもつ)をココに!贄(にえ)をココに!あの者達をカコセ様に!』

この一連の儀式に探索者たちは、動揺を隠しきれず自分たちが生け贄である事に初めて気づきます。



{探索者たちは、いよいよカコセ様と対面する事になるでしょう・・。}
メンテ
Re: カコセの社(やしろ)(7/8) ( No.7 )
日時: 2006/09/17 01:33
名前: @2c

グチャグチャ、ボコボコと何かが泡立つような音が足元からしたと思うと、探索者たちが立つ地面が溶解し、ずるずると中へひきずりこまれます。逃れようとする探索者は<登攀>×1/3、<ジャンプ>×1/3のロール両方に成功したなら辛くも地面から逃れ出ることができます。いずれかしか成功していない、もしくは両方とも失敗してしまった探索者はそのまま地面に埋没してしまいます。
ほうほうのていで脱出できた、幸運な探索者がその場にみたものは…彼らが最初に目覚めた屋敷の玄関前でした。
先ほどの新郎新婦、侏儒、自分たちの居た洞窟など影も形もありません。時間もさほど経っていないようで、赤い空はぼんやりとその明るさを保ったままです。屋敷の外へとつながっていた道も、今は固い下ばえに完全に埋め尽くされ、孤立した陸の孤島のような状態になっています。
老人も姿を消し、あたりは無人ですが、大きく開け放たれた屋敷の玄関からは異様に強い牽引力が発せられています。中に入った探索者は、その瞬間屋敷の位相と同化してしまいます。彼は「屋敷の眷属」に変貌してしまったのです。おそらく数日も経たない間に、これまで探索者が出会った化け物と同じような存在になってしまうことでしょう。
彼らを助け出すことができるかできないかはキーパーの裁量にかかっていますが、このシナリオにおいてはいったんゲームオーバーとなります。
中に入らなかった探索者は、しばらくすると首筋が総毛立つような恐怖感を覚えます(これは屋敷それ自体とも言える、概念の存在《カコセ》に「見られ、理解」されてしまったことから来るものですが、当然探索者には分かりません)。
正体不明の重いプレッシャー(カコセ)はそのPOW45で探索者の精神力に2回戦いを挑んで来ます。)一度でも失敗したなら、ふらふらと中に入ってしまいます。成功した探索者は玄関前に突っ立ったままとなり、地下に行った探索者が最後の冒険を首尾よく終わらせることができるまで、どこにもいけません。


ロールに失敗した探索者は、なおも抵抗するそぶりを見せようとするなら、無数の粘つく手にざわざわと下半身をなぶられ、しっかり抱えこまれる感触を覚えて発狂しそうな恐怖感に駆られます(SAN-1d3/1d20)。抵抗を見せないのであれば、そのまま静かに落ちて行くのみです。
完全に発狂してしまった(永久的狂気を発症した)探索者は引き込まれながら馬鹿笑いが止まらなくなり、その容姿はどんどんと崩れていきます。身体すらも退化するかのように縮んで行き、その姿形は_あの侏儒そのものとなります。侏儒と化した探索者の馬鹿笑いはいつしか例の祝詞や連騰のような言葉を吐き散らすのみとなります。彼・彼女はもはやカコセの世界の忠実な眷属となり、姿も溶けるように消えてしまいました。完全にゲームオーバーとなります。
探索者が完全に地面に没し、永久に続くとも、一瞬の間とも思えた時間の後、とつぜん空に投げ出されます。
真っ赤に染まった、雲のような靄のような煙が渦巻く空中に投げ出された探索者は猛スピードで落下していきます。
眼下に広がる光景は…
白灰色の濃淡を持つ、広大な泥の海でした。
メンテ
カコセの社(やしろ)(8/8) ( No.8 )
日時: 2007/08/23 01:40
名前: 秋山

《灰褐色の海を抜けた先で》
 【白い部屋】
灰褐色の泥の海に飛び込んだと思った瞬間、探索者達は、何もない真っ白な空間に立っているのに気付きます。
壁も天井も見えず、自分が立っていると言う感覚が無ければ、地面の存在さえ疑いたくなる程の白一色の空間です。
眼の焦点が合わせづらいせいか、軽い眩暈を覚えます。

探索者達が、歩いてみたり、何かを調べようとしても、何も発見出来ません。
そうこうしていると、突然何もない空間に、古い映画のような映像が映し出されます。
内容は以下の通り。

 【古い映画】
深夜。土砂降りの雨の中、山間の国道を走る一台の小型のバン。
探索者が谷底で見たバンと同じ物です。
バンに乗っているのは、(ここまでたどり着けなかった者も含めて)探索者全員です。
全員、知り合いのように打ち解けた雰囲気で話をしています。
注)最も自動車運転技能が高い探索者が、バンを運転しています。

ここで、探索者全員、この光景の事を思い出します。
これまで記憶が失われていましたが、探索者達は全員知り合いです。
200X(プレイしている年)年7月、探索者達は休みを利用して一泊二日のドライブ旅行に行ったのでした。
今見ているこの映像は、その帰り道の光景なのです。
そして、この後の展開を思い出してくるにつれて、探索者達の心中に恐怖が拡がってきます。

映像は続きます。
楽しい旅行の余韻の中、談笑が止まない車内では、運転をしている探索者も注意散漫になりがちです。
おまけに、フロントガラスに叩きつける雨で前もよく見えません。
そして、運転をしている探索者が、つい後ろの席を振り返ってしまったその時、突然前方からけたたましいクラクションと探索者達を照らし出す対向車のヘッドライトが現れます。
運転担当の探索者は、慌ててハンドルを切り損ねてしまい、探索者達を乗せた小型のバンは、ガードレールを越えて、深い谷底に落下してしまいます。
断崖を滑り転がり、何度も何度も跳ねては打ち付けられ、見るも無残な姿になったバンは、やがて谷底にぶつかり動きを止めます。
雨音とウィンカーのカチカチ言う音以外は何も音がしません。

この事故で、探索者達は全員死んでしまったのです。
この映像を最後まで見てしまった探索者は、(0/1d3)の正気度を喪失します。

 【後ろに立つ子供】
「思い出した?」
記憶が戻った探索者達の後ろから、突然子供の声がします。
振り返ると、5.6歳頃の子供(性別不明)が立っています。

この子供は、探索者達の無意識がカコセの深淵から作り出した実態を持たない存在です。
思考形態が著しく違うカコセと人間の仲介役の様な存在で、例えるならコンピューターのハードウェアと人間の仲介役であるOSの様なものです。
※シナリオの意図として、この子は、現在の探索者達が置かれている状況を説明する為の存在です。
※探索者達が質問をすれば、この子は(答えられる範囲の事は)正直に教えてくれます。

 【探索者達が置かれている状況】
◎現在、探索者達はカコセの中にいます。
◎カコセは、(ゲーム的に言えば)独立種族の一体で、物質的な本体を持たない概念の存在です。人間より遙かに高度な知性を持っている上に、人間とは思考形態が根本的に異なるので、人間がカコセの行動原理を理解する事はまず不可能と言えるでしょう。カコセは、自分以外の存在と精神的接触を行い、理解する事で、他者を同化します。すすんで他の生物を襲う習性はありませんが、何らかの強い精神波を感じ取った時、惹き付けられるようにその精神波の本体と接触を試みるのです。
◎また、概念の存在であるカコセには、時間や空間は意味を持ちません。擬人的な例えを用いるなら、過去も未来も宇宙のあらゆる場所も、カコセにとっては全て手の届く所にあるのです。その為、カコセの中では、生物の生死も曖昧なものになります。そのため、カコセと接触した人間が、時間や空間を移動してしまう事もあります。

◎探索者達が死んだ谷底は、かつて加古守村(かこすむら)があった場所の近くでした。
◎200X年現在、加古守村は既に廃村になっています。
◎加古守村は、古来よりカコセを神として祀り、数十年に一度、生贄をカコセに差し出していました。カコセも、生贄の強い恐怖心を感じ取り、接触し、同化してきました。この為、加古守村とカコセの結びつきは強いものになっていたのです。
◎谷底に落下する時の探索者達の死への恐怖を感じ取ったカコセは、探索者達との接触を試みました。
◎そして、探索者達はカコセの中に取り込まれます。
◎次々と他の探索者が、「理解」され、「同化」されて行く中で、この“白い部屋”にたどり着いた探索者達だけが、運良く同化されず(理解されず)カコセの深淵に辿り着く事が出来たのです。

 【探索者達が遭遇した悪夢的情景について】
◎仏間で目覚めてからカコセの社で地面に飲み込まれるまでに経験した悪夢的情景は、かつてカコセに同化させられた人間達の中の特に強烈な思念が固まって出来た精神世界なのです。

 【探索者達がこれから取る事が出来る事柄について】
◎「個」を見失わずに、ここまで来れた探索者なら、強い意志を持ってカコセと対峙する事で、カコセと接触する前まで時間を遡る事が出来るはず。つまり、カコセの中から脱出出来ると言う事。
◎しかし、それには一つだけ問題があります。
◎今、カコセの中の世界では、ある一人の人間の執念と言うべき強い感情が邪魔をして、誰もカコセの中から抜け出せなくなっているのです。
◎その人間の名前は、加古守 摩子(カコス マコ)。
◎摩子の感情よりも強い感情を持つ事が出来れば、カコセの中から出る事が出来るかも知れませんが、彼女の執念はとても強く、その試みが成功する望みは薄いでしょう。
◎つまり、カコセの世界から抜け出したければ、何らかの方法で摩子の問題を解決しなければならない、と言う事なのです。

 【のぞきからくり】
探索者が必要な情報をある程度ひきだしたなら、子供は探索者達に後ろを見るように言います。
「ちょっと、後ろをみてごらん」
探索者達が振り返ると、そこには人の背丈よりも大きい豪華な木製の箱があります。
探索者達側の面には、人間のこぶし程の大きさのレンズが嵌まったのぞき穴が、20個程並んでいます。
〈知識〉ロールに成功した探索者は、それが昔の“のぞきからくり”だと分かります。
箱の上部には「加古守村怨嗟之地獄(かこすむらえんさのじごく)」と演目が書いてあります。

子供は探索者達に“のぞきからくり”を覗くよう促します。
探索者が、この“のぞきからくり”について詳しい事を尋ねても、見れば分かるとしか言ってくれません。
探索者達が、のぞきからくりを覗いてみると…

《1974年》
 【仏間】
※探索者達は、一度のぞきからくりを覗くと、目を離す事が出来なくなります。
探索者達は、このシナリオの冒頭で倒れていたあの仏間を見下ろしています。
ちょうど、欄間に飾ってあった黒い扁額の老人の目から覗いているような具合です。
眼下の情景は、次々と変化していき、加古守村での惨劇に至る経緯を説明してくれます。

  (情景1)
障子が開いて、五十がらみの着物を着た男が、泣き叫ぶ若い女の髪を掴みながら仏間に入ってきます。
若い女「赤ちゃん!私の赤ちゃんを返して!!」
着物の男は、若い女の髪を掴んだまま、畳の上に力任せに放り投げます。
着物の男「何処の馬の骨とも分からん男と駆け落ちした上に、ガキまで作ってきよって!摩子、お前は加古守の血筋を汚す気か!」
遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
若い女(摩子)「ああ!赤ちゃん!赤ちゃん!」
なおも泣き叫ぶ摩子を、二度三度と平手で打ち据える着物の男。
着物の男「仙蔵!」
開いた障子の向こうから、ためらいがちに顔を覗かせる老人。
(多少雰囲気は変わっていますが、仙蔵と呼ばれたこの男が、駐車場の隅でボロボロの紋付き袴を着てうずくまっていたあの老人だと、探索者達はすぐ気付くでしょう。)
仙蔵「はい、旦那様」
着物の男「摩子を土蔵に入れて、鍵を締めておけ。私が良いと言うまで出してはならん」
仙蔵「…しかし、それでは摩子様があまりに…」
着物の男「仙蔵!私の言う事が聞けんと言うのか!」
仙蔵「い、いえ!滅相も…」
着物の男「種彦の結婚式も控えておる。面倒な事は避けたいのだ」
仙蔵「わ、わかりました…」
探索者が見下ろす光景に一瞬ノイズが走ったかと思うと…

  (情景2)
同じ仏間だが、違う日のようです。
無人の仏間に、例の旦那様と呼ばれた着物の男と、その後から同じ歳位の着物の女が入ってきます。
着物の女「あなた、あの赤ん坊の事はどうなさるおつもりですか」
着物の男「…」
着物の女「何処か遠い所、目の届かない所に託しては?」
着物の男「ならん!汚れた血は存在してはならんのだ!」
着物の女「では、あなた…?」
着物の男「カコセ様の贄(にえ)にしてしまおう…」
息を呑む着物の女。
そしてまたノイズが走り…

  (情景3)
同じ仏間。違う日。
外からは雨の音。
部屋の真ん中で扁額を見上げる仙蔵。
(ちょうど探索者と目が合っている状態です。)
仙蔵「…大旦那様…」
仙蔵は、訴えかけるような思い詰めた表情で扁額を見上げます。
ゆうに5分程も、扁額を見上げていた仙蔵は、おもむろに扁額に向かって(探索者達に向かって)深々とお辞儀をした後、部屋から出ていきます。
そしてまたノイズ。

  (情景4)
同じ仏間。違う日。
夕焼けの赤い日差しが仏間に格子の影を落としています。
仏間の中は無人です。
しかし、突然部屋の外から
「私の赤ちゃんはどこ!赤ちゃんを返して!」
と、女の叫び声が響いてきます。
そして慌てふためく人の声や足音、悲鳴や怒号が聞こえた矢先、一発の銃声が鳴り響き、更に大きい悲鳴が上がります。
少し間が空いてまた一発。
更に間が空いて、もう何発かの銃声が響き、人の声や物音はほとんど聞こえなくなります。
遠くから女の声とおぼしき子守歌が微かに聞こえ、やがてそれも聞こえなくなります。
そして…

気付くと、探索者達はその仏間に立っています。
行動不能だった探索者も(永久的狂気を発症した探索者を除く)全員揃っています。
ここから、探索者は再び自由に行動出来るようになります。
注)この世界は、現実の過去(1974年5月)なのか、それともカコセの中の世界なのか、あえて明言はせず、ぼかしておいた方が良いでしょう。

 【加古守屋敷】
   (仏間)
豪奢な仏壇と欄間の扁額の他は特に何もありません。

   (廊下〜中庭)
仏間から廊下に出ると、目の前に中庭があります。
澄んだ水をたたえた手水鉢、心地よい音を響かせる鹿おどしなど、手入れの行き届いた庭です。
しかし、よく見てみれば、庭の片隅に紋付きを着た男性が倒れているのに気付きます。
後頭部には穴が開き、死亡しているのは明らかです。
死体の後頭部の穴を見た探索者は、(0/1d3)の正気度を喪失します。
〈医学〉ロールに成功した探索者は、ほんの数分前に散弾銃で近距離から撃たれた痕である事が分かります。

   (土間)
炊事場。
人の姿は見当たりません。
水道の蛇口からは勢いよく水が流れっぱなしで、作り掛けの料理もそのままになっています。

   (土蔵)
屋敷の裏手にある立派な土蔵です。
正面の扉は閉まっており、古めかしい立派な錠がしっかりと掛かっていて開きません。
しかし、土蔵の周囲を調べると、明かり取りの窓が一ヶ所、内側から壊された形跡があり、人一人が通れるほどの穴が開いています。

   (大広間)
大広間の障子は開け放たれています。
中は十数体の死体が転がり、辺り一面血の海です。
この光景を見た探索者は、(1/1d6+1)の正気度を失います。
死体から目を背けず、部屋の様子を詳しく観察した探索者は分かりますが、大広間には数十個の膳と料理と皿や椀が散らばり、死体が黒紋付を着ている事などから、結婚式の宴会の最中に乱入した何者かによって殺戮が行われた様です。
中庭の死体と同じく、散弾銃で殺されたらしく、詳しく調べれば、大広間の入り口付近に2個の空薬莢と、部屋の中に6個の空薬莢、反対側の入り口付近(玄関側)に更に2個の空薬莢が落ちているのを発見出来ます。
死体の中には、上記の(情景2)に登場した着物の女もいます。
大広間の上座に当たる場所付近に、新郎新婦の死体も横たわっています。
白無垢姿の新婦ですが、打掛と懐剣が見当たりません。
探索者は新郎の着ている紋付の家紋に見覚えがあります。
駐車場の隅でボロボロの紋付き袴を着た仙蔵老人が、地面に描いていた模様がこの加古守家の家紋だったのです。
五角形の枠の中に鳥居が描かれ、その周囲をツタを模した植物が取り囲んでいると言った図柄です。

   (玄関周辺)
玄関周辺にも、大広間と同様の死体が数体転がっています。
玄関脇のカレンダーは1974年5月のものです。
ここには、上記(情景1)に登場した、着物の男の死体があります。
彼が、この時代の加古守家の当主である事は言うまでもないでしょう。

 【仙蔵老人】
探索者達が玄関を出て門の辺りまで来ると、村の方から屋敷に向かって息せき切って駆けてくる仙蔵老人を発見します。
●仙蔵、63歳、加古守家の老僕
STR 9 CON 7 SIZ 12 INT 13 POW 10
DEX 10 APP 9 EDU 10 SAN 48 耐久力 10
ダメージ・ボーナス なし
武器 なし
技能 応急手当40%、機械修理30%、心理学40%

仙蔵老人は探索者の近くまでやってくると、息が上がって地面にへたり込んでしまいます。
慌てた様子の仙蔵は、「銃声が聞こえたが、何があったのか」と探索者に尋ねます。
※仙蔵は、見馴れない姿の探索者達を訝りながらも、非常事態である為、探索者達を信用して話をしてくれます。

 【仙蔵から得られる情報】
 (加古守家の事情)
加古守村の大地主であり、代々カコセの社の宮司も務めてきた加古守家。
その現当主である加古守孝三郎(カコス コウザブロウ)の娘、摩子が私生児を儲けた事で、怒った孝三郎は摩子を土蔵に閉じ込め、摩子の手から赤ん坊を奪ってしまいました。
孝三郎は、加古守家の跡取りである長男・種彦の結婚式が済むまで、摩子を土蔵の外には出さないよう、家の者達にきつく言い渡したのです。
そして、孝三郎は赤ん坊をカコセへの生贄にしてしまおうとしました。

 (摩子の事情)
愛した男に捨てられ、心の支えにしていた我が子まで奪われた摩子は、精神的に憔悴しきっていました。
その上、兄・種彦の結婚でお祝いムードの中、自分だけが土蔵に閉じ込められ、家人からも腫れ物を触るように扱われた摩子は、日に日に精神を病んでいったのです。

 (仙蔵の事情)
先代当主の時代から加古守家に奉公する仙蔵は、現当主の孝三郎に従いながらも、心の中では孝三郎の摩子に対する仕打ちには賛同出来ませんでした。
仙蔵は、徐々に弱っていく摩子を気遣いながら、何も出来ない自身の無力さを不甲斐なく思っていました。
そして、摩子が土蔵に幽閉されてから数日後、孝三郎は仙蔵に、摩子の子をカコセの生贄に捧げる事を告げます。
仙蔵は、それだけは思いとどまるように必死に懇願しますが、孝三郎の意思は変わりません。
そして、長男・種彦の結婚式までに赤ん坊を始末してくるよう、仙蔵に言いつけたのです。
仙蔵は悩んだ末に、生贄にしたと偽って赤ん坊を助けようと決意します。
そして仙蔵は、村外れに住んでいる、同じ年頃の赤ん坊を持つ若い夫婦に、ひとまず赤ん坊を預けました。
折りを見て赤ん坊を引き取り、山を二つ越えた村に住む親戚に預けようと、仙蔵は考えていたのです。

仙蔵は、探索者から屋敷の中の事を聞くと、血相を変えて屋敷の中に入ります。
玄関先に倒れている当主・孝三郎の亡骸にすがって嗚咽を漏らし、他の死体にも一人一人呼びかけるように名前を呟きます。
そして、大広間の凄惨な状況を目の当たりにすると、仙蔵はしばらく呆然と立ち尽くした後、慌てて屋敷の奥の土蔵に向かいます。
土蔵の窓が内側から破られているのを見た仙蔵は、全てを悟ったのか、探索者達に協力を求めます。

気が違ってしまった摩子が、土蔵にしまってあった猟銃を持ち出して、虐殺を行ったのだろうと仙蔵は言います。
そして、摩子を止めて欲しいと。

ここでまた、遠くから一発の銃声が響いてきます。
※狂った摩子が手当たり次第に村人を虐殺しているのなら、村外れの農家に預けてある我が子まで、知らずに殺してしまうかも知れない事を、プレイヤーにほのめかしてください。
我が子を殺してしまったと摩子が気付いたら、その絶望は恐ろしく深いものになるでしょう。
そうなれば、探索者達がカコセの中から出る事が出来なくなります。
言い換えれば、我が子が生きている事が分かれば、摩子の絶望は緩和され、探索者達がカコセの世界から出られるかも知れないと言う事なのです。

 【加古守村】
子供を預けてある村外れの農家までは仙蔵が案内してくれますが、仙蔵は疲れ果てていてゆっくり歩くのがやっとの状態です。
移動手段としては、屋敷の脇に停めてある日産ダットサントラック520型(3人乗りトラック)をお勧めします。
座席に乗れなかった探索者は、荷台に乗る事も出来ます。
車の鍵は仙蔵が屋敷の中から取ってきますが、仙蔵自身は車の運転が出来ません。

エンジンをかけると、車は調子よく動き始めます。
カーラジオのスイッチが入り、ロバータ・フラックの「やさしく歌って(Killing Me Softly With His Song)」が流れてきます。

  Killing me softly with his song
  He sang as if he knew me in all my dark despair
  And then he looked right through me as if I wasn't there
 (やさしく殺して あの人の歌で
  私の絶望の全てを知っているかのように あの人は歌った
  そして私などいないかのように 私を見つめた)

目的の農家に行く途中、何度も銃声を聞き、村人の死体も何体か発見します。
仙蔵の案内で近道を通れば、摩子に会わず、摩子より先に目指す農家に辿り着く事が出来ます。
※摩子は、朦朧とした意識で、目に留まった村人を片っ端から殺しながら、ふらふら彷徨っています。

目的の農家には、若夫婦と老婆がいます。
※彼らは重要なキャラクターではないので、特に個性を設定していません。
キーパーの好みで個性を付け加えてください。
若夫婦(男) STR 12 CON 11 SIZ 14 DEX 10 POW 13 耐久力 13
若夫婦(女) STR 11 CON 13 SIZ 12 DEX 14 POW 14 耐久力 13
老婆     STR 9 CON 8 SIZ 9 DEX 9 POW 12 耐久力 9
農家の木造の家の中には、若夫婦の赤ん坊と、摩子の赤ん坊が布団の上に寝かされています。

やがて、子守歌のようなメロディを口ずさみながら、ふらふらした足取りで摩子がやってきます。
派手な柄物シャツにワインレッドのミディスカート。
その上から血まみれの白打掛を羽織っています。
靴は履いておらず、ストッキングの足先が破れ、くるぶしから下は血で赤黒く染まっています。
手には水平二連の散弾銃。
真ん中で分けた長い黒髪の間に鋭く光る黒く大きな瞳。
彼女は人の姿が目に留まると、散弾銃を撃ってきます。

●加古守摩子、19歳、加古守家の一人娘
STR 12 CON 11 SIZ 10 INT 14 POW 8
DEX 11 APP 15 EDU 12 SAN 9 耐久力 11
ダメージ・ボーナス なし
武器 水平二連散弾銃 60% ダメージ4D6/2D6/1D6 射程10m/20m/50m
    (装填済みの弾丸が2発と、予備の弾丸(スカートのポケットの中)が6発、残弾合計8発)
   懐剣 25% ダメージ1D4+2+db
    (懐剣は散弾銃の弾を使いきらない限り使いません)

  (彼女を殺してしまった場合)
もし、彼女を殺してしまった場合、その絶望は解消されず、探索者達がカコセの中から出る事が出来なくなり、ゲームオーバーとなります。
彼女を殺した瞬間、夕焼けで真っ赤な空と山の境目がパックリと分かれ、その闇の向こうから巨大な何者かが探索者達を見ている事に気が付きます。
その姿は見えませんが、自分たち人間よりも遙かに強大な存在である事だけは分かります。
そして突然、周囲の風景が舞台の書き割りのようにバタンバタンと倒れ始め、気付くと…
※下記【バッド・エンド】の項に続きます↓

  (運良く彼女を殺さずにすんだなら)
彼女を赤ん坊と対面させ、自分の子が生きている事を理解させ、その腕に抱かせてやる事が出来れば、問題は解決です。
彼女は、攻撃をやめて穏やかな表情で我が子を抱きます。
仙蔵が事情を説明すると、摩子は仙蔵と探索者に感謝します。
そして、仙蔵に「この子を頼みます」と言って、隠していた懐剣で自害しようとします。
探索者が彼女の行動を警戒していた場合は、自害を止める事が出来ますが、そうでなければ彼女は自身の胸に懐剣を刺して、自害が成功してしまいます。
彼女は死ぬ間際に「罪を償います…」と言い残して死んでしまいます。
彼女を止める事が出来たとしても、彼女が罪を償う為に死にたがっている事は変わりませんし、探索者達もずっとここにいる訳には行きません。
彼女の身柄は、仙蔵に任せるのが良いでしょう。

摩子の怨念が晴れた今、探索者達は現実世界に戻る方法を考えなければなりません。
(仙蔵に相談したなら)仙蔵は、「カコセ様にお頼みなさるのが宜しいでしょう」と言ってくれます。
「カコセ様は昔の過ちをやりなおさせてくれるありがたい神様ですから」と。
そして、仙蔵はカコセの社の場所を教えてくれます。

 【カコセの社】
加古守屋敷前から、山道を登るとすぐに5mほどの高さの古びた鳥居が目に入ります。
鳥居を抜けるとすぐに小さな湖が広がり、そこにかかる一本橋の終点に小さな社が見えます。
社の中に入ると、正面奥のしめ縄飾りの下に直径50cmほどの銅鏡が置かれています。
銅鏡には覆いが被せられており、その中央に加古守家の紋と同じ図柄が描かれています。
覆いを取って見ると、鏡は奇麗に磨き上げられており、のぞき込んだ探索者達の顔がはっきりと映ります。
その瞬間、探索者達は全員鏡の中に吸い込まれます。
そして…

《200X年》
 【事故直前】
鏡に吸い込まれた探索者達は、気が付くと全員が小型のバンの中にいます。
時間は深夜。土砂降りの雨の中、山間の国道を走っている途中です。
そう、探索者達は、200X(プレイしている年)年7月のあの時、事故の直前まで戻ってきたのです。
フロントガラスに叩きつける雨で前がよく見えません。
探索者達が安堵と戸惑いから抜け出せていないであろうその時、突然前方からけたたましいクラクションと探索者達を照らし出す対向車のヘッドライトが現れます。
ここで、このシナリオ最後のダイスを振らなければなりません。
運転担当の探索者は、〈自動車運転〉×2でロールをしてください。
勿論、対向車を無事に避ける事が出来るか、それとも避けきれず再び谷底に落ちてしまうかのロールです!
(×2の修正は、前回と同じような運転をすれば失敗する事を知っているからです)

 【失敗】
〈自動車運転〉×2ロールに失敗してしまったのなら、その後は言うまでも無い事ですが、前回と同じく探索者達を乗せた小型のバンは、ガードレールを越えて、深い谷底に落下してしまいます。
探索者達は、チャンスを活かせずまた死んでしまいました。
そして…
※下記【バッド・エンド】の項に続きます↓

 【バッド・エンド】
探索者達は見覚えのある場所にいる事に気付きます。
カコセの中に来て間も無い頃に入った、大勢の何者かが「メデタヤ」と囃しているあの大広間です。
以前来た時と同じく、畳の上には無数の膳が並べられていて、膳の上にはままごとのように、泥や葉っぱの料理が乗せられています。
それぞれの膳の前には華美な和服で着飾った奇妙な姿の人間がずらりと座っていますが、よく見れば砂の山に服が着せられているだけです。
探索者達がいるのは、以前来た時に一行の人数分だけのカラの座布団と膳があった場所です。
何かをしようとしても体が動かず、どうやら周りの客達と同じ姿になってしまったようです。
周りの客達の「メデタヤ」の声は次第に大きくなり、探索者達も何となくめでたい気分になり、他の事などどうでも良くなってきます。
そう、探索者達は今度こそカコセに完全に理解されてしまったのです。
そして、意識が朦朧としてきた探索者達は、思わずあの言葉を口に出しているのです。
「メデタヤ!」「メデタヤ!」
                        ……バッド・エンド

 【成功】
〈自動車運転〉×2ロールに成功したのなら、あわやと言う所で対向車を避ける事が出来ます。
探索者達が乗った小型のバンはスリップしながら急停車し、対向車の4トントラックも同じように急停車します。
4トントラックの運ちゃんが窓から身を乗り出し、
「バカヤロー!死んだらどうするんだ!!」
と怒鳴って、再びエンジンをかけ走り去っていきます。
探索者達は、幸運にも無事生きて現実世界に戻る事が出来たのです。

 【その後】
もし探索者達が、図書館やインターネットなどで加古守村について調べる事があれば、以下のような記述を見つける事が出来るでしょう。

「関東地方W県の加古守村。
1974年5月、土砂崩れにより村民の大半が死亡。
この事が原因でまもなく廃村となる」

探索者達が見てきた事とは違っています。
探索者達が幻を見たのか、それとも生き残った仙蔵老人達が事件を隠ぺいする為に、土砂崩れのせいにしたのか。
事実は薮の中です。
メンテ

Page: [1]