1920年代のアメリカのボストンが舞台のシナリオです。
あるアパートの異様な住民達と、人間とは異質の存在、ミ・ゴの恐怖を描きます。
少しの修正で、現代を舞台にしてもプレイ可能でしょう。

1.あらすじ
1920年代のアメリカボストンが舞台です。
探索者の友人のジャーナリストが変死を遂げ、自殺らしいのですが遺書も何もなく、その理由は謎でした。
しかしその友人からの手紙が探索者に届き、実は友人は調べていた事件に関わる何者かに殺されたらしと分かり、怪しいアパートの存在が浮かび上がります。
調査を進めると、アパートの住人は誰もが怪しく思え、嘘をついているように思います。
謎の正体が分かりかけた頃、探索者にも魔の手が迫ります。
最終的には探索者達は、ボストンに潜むミ・ゴの秘密と遭遇することになります。

 

2.登場人物 印刷用画像(200dpiで幅約6cm)

●チャールズ・ウォレスリー

フリージャーナリスト  35歳
探索者の友人で、実力のあるジャーナリストでした。
筋肉質でがっしりした体つきで、組織に属することを好まず、主に人々の生活に密着した事象を扱い、最近では街の底辺の生活を強いられている人々のリポートで注目を浴びました。
そんな彼は顔が広く、街の浮浪者とも仲良くしていました。
正義感にあふれる自信家でしたが、彼はビルの屋上から飛び降りて死にました。
遺書らしいものは見つかりませんでしたが、どうも自殺ということで落ち着きそうな気配です。
アルコールも甘い物も大好きでした。

●デイヴィッド・ジェンキンス

チンピラ  18歳
筋力(STR) 15  敏捷力(DEX) 9  知力(INT) 8
体力(CON) 8  外見(APP) 8  精神(POW) 7
サイズ(SIZ) 16  教養(EDU) 10
耐久力 12  追加ダメージ +1D4
言いくるめ(18) 聞き耳(59) 自動車運転(45)
忍び歩き(15)  写真術(20)  心理学(9) 精神分析(3) 電気修理(30)
値切り(61) 目星(33)  ナイフ(58) キック(61)
武器・ナイフ<(83%) ダ1D4+db 耐9>  

ひょろりと背の高い、しかし引き締まった身体をしている青年です。
町のチンピラですが、ヘマをしてグループから追い出され、ぶらぶらしているところでチャールズと知り合い、その後なんとなく助手のようなことをしていました。
チャールズがいなかったら今頃自分はのたれ死んでいると思っており、彼を強く尊敬していました。

●ビリー

浮浪者  50歳くらい
筋力(STR) 5  敏捷力(DEX) 10  知力(INT) 14
体力(CON) 5  外見(APP) 5  精神(POW) 13
サイズ(SIZ) 9  SAN値 26  教養(EDU) 22
耐久力 7  追加ダメージ -1D4
言いくるめ(48) 隠れる(60) 聞き耳(51) 忍び歩き(40)
登はん(84) 値切り(25) 博物学(16)  法律(33) 歴史(25)

チャーリーの友人で、よく情報提供をしていました。 ディヴィッドとも知り合いです。
彼にはニックという同じく浮浪者の友人がいたのですが、彼は2週間ほど前から行方不明になっています。
ビリーは友人の末路を予感させる状況に立ち会い、怯えきっています。

●マーサ・マウリー

古本屋主人  35歳
筋力(STR) 8  敏捷力(DEX) 13  知力(INT) 15
体力(CON) 8  外見(APP) 13  精神(POW) 16
サイズ(SIZ) 14  SAN値 0  教養(EDU) 15
耐久力 11
オカルト(65) クトゥルフ神話(9)
芸術「バイオリン」(82) 乗馬(26)  信用(38)
心理学(53) 図書館(63) ナビゲート(37)
値切り(16)  薬学(41)
魔道書 「無名祭祀書(ゴールデン・ゴブリン・プレス版)」
呪文・ナイフに魔力を付与する
武器・ナイフ(魔力有り)<(25%)ダ1d4+db 耐9>

背の高い上品な雰囲気の女性で、アパートの持ち主であり、1階の古本屋の主人でもあります。未亡人です。子供はいません。
長いウェーブのかかった黒髪で、細面で肌が白く、吸い込まれるような深いブラウンの瞳をしています。
いつもおだやかな微笑を浮かべ、どこか聖母を思い出させます。
実は彼女は人類という種は地球の為に滅ぶべきだという過激な自然保護主義者で、傷ついたミ・ゴを発見したときにそれこそが神からの啓示だと信じ込み、ミ・ゴを保護し、その要求を満たすのに全力を傾けています。
彼女はミ・ゴのドローンではなく、自由意志で行動しています。
魔道書は偶然店で買い入れたもので、彼女はこの本によって今の考え方を信じるようになりました。
彼女の持っているナイフは、自分で魔力を付与したものです。しかし彼女は本来の使い方を理解していないので、聖なる力が宿っていると信じています。
実際にはこのナイフは、最初に攻撃が命中した目標に対して魔法の武器として扱いますが、探索者などの普通 の人間に使われた場合はただのナイフになります。

●ウォッシュバーン夫妻

●ロビンスン・ウォッシュバーン 76歳
筋力(STR) 5  敏捷力(DEX) 9  知力(INT) 9
体力(CON) 5  外見(APP) 5  精神(POW) 14
サイズ(SIZ) 15 SAN値 0 教養(EDU) 19
耐久力 10
応急手当(67) 錠前(61) 経理(47)
重機械操作(17)  信用(69) 心理学(43) 拳銃(71)
武器・古いリボルバー<(81%)ダ1D8 15m 回数2 装弾6 耐9 故障99>

落ち着いた雰囲気の頭のはげた老人です。その禿頭に頭を真横に切ったような傷跡があります。彼は昔重機の事故に巻き込まれた傷だと説明します。
元軍人です。

●アン・ウォッシュバーン 69歳
筋力(STR) 4  敏捷力(DEX) 11  知力(INT) 16
体力(CON) 9  外見(APP) 7  精神(POW) 8
サイズ(SIZ) 9 SAN値 0  教養(EDU) 15
耐久力 9  追加ダメージ-1D4
編み物(85) 医学(24) 経理(39) 信用(57)
薬学(65) 地質学(43)  図書館(34) 料理(77)

武器・ 包丁<(40%)ダ1D4+db 耐8>
  古いアイロン<(20%)> ダ1D4+1+db 耐10>
  注射器<(※25%) ダ(※中身による)>

※注射器の命中率は、相手が自由に動けてこっちに気付いている場合のもので、そうでなければ100%です。
※注射器の中身は、特製の即効性の麻酔薬の他にアルカロイド系の猛毒も少し所持しています。

アンはきれいな白髪の老婆で、ほとんどの時間を編み物をして過ごしています。
元看護婦で、麻酔薬の調合や注射器の調達などは彼女が担当しています。

昔からの貯蓄と生活保護で暮らしています。
二人ともおだやかな表情で、ゆっくりとしゃべります。
おとなしい老夫妻に見えますが、ミ・ゴのドローンと化しています。
ドローンの前頭部には大きな傷跡があります。アンにもありますが、髪で隠しています。
ロビンスンは隠しようがないので嘘の説明をしているのです。
彼は元々銃を撃つのが大好きだったのですが、ドローンになってからそれが殺人鬼と言えるほどになっています。最近発砲する機会が無くて欲求不満になっています。
アンは内蔵マニアです。編み物もちょっと気を許すと小腸を再現していたりして、あわててほぐします。 麻酔が覚めかけている身動きできない犠牲者を切り刻んで内臓を引っ張り出すのが夢です。

●ジェイムズ・ピーターズ

労働者  47歳
筋力(STR) 13  敏捷力(DEX) 11  知力(INT) 16
体力(CON) 11  外見(APP) 14  精神(POW) 15
サイズ(SIZ) 14  SAN値 10  教養(EDU) 14
耐久力 13  追加ダメージ +1D4
応急手当(36) 大型トラック(33) 聞き耳(68)
機械修理(85) クトゥルフ神話(3)   地質学(30) ナビゲート(35)
他の言語「ドイツ語」(10)  マーシャルアーツ(3) 目星(38)
頭突き(37)

がっしりした体つきの労働者で、一人暮らしです。ぼさぼさの白髪混じりの黒髪です。
いつも目の下にクマができており、思い詰めたような顔をしています。
彼はミ・ゴのドローンですが、わずかに正気度が残っているために、普段から幻覚や頭痛に悩まされており、更に命令で行った忌まわしい行為の記憶も時には思い出しています。
もし自分の置かれた立場を正確に理解することができたら、彼は自ら命を絶つでしょう。
彼の前頭部にも傷跡がありますが、隠れています。
ただし本人も傷跡に記憶が無く、考えると恐怖のあまり混乱するので考えないようにしています。

4階の展示室2の配水管の工事は彼が行いました。

●スローカム一家

●グレッグ・スローカム
タクシー運転手 41歳
筋力(STR) 9  敏捷力(DEX) 7  知力(INT) 18
体力(CON) 10  外見(APP) 7  精神(POW) 13
サイズ(SIZ) 15  SAN値 0 教養(EDU) 15
耐久力 13
自動車運転(95) 重機械操作(3) 生物学(61)
地質学(11)  電気修理(66) 図書館(29)
他の言語「スペイン語」(25)  ライフル(60)
武器・古い22ライフル<(85%)ダ1D6+2 30m 回数1 装弾6 耐8 故障97>

背が高く、痩せた男で、いつも疲れたような顔をしています。
毎日仕事に出かけてゆきます。タクシーは会社に停めています。

●エミリー・スローカム
主婦 39歳
筋力(STR) 12  敏捷力(DEX) 6  知力(INT) 14
体力(CON) 7  外見(APP) 4  精神(POW) 11
サイズ(SIZ) 16  SAN値 0 教養(EDU) 9
耐久力 12  追加ダメージ +1D4
オカルト(11) 聞き耳(65) 重機械操作(18) 図書館(34)
ナビゲート(56)  母国語(69) 歴史(33)  パンチ(51)
武器・小麦のばし棒<(25%)ダ1D4+db 耐10>

でっぷり太った醜い女性です。 ロマンス小説を読むのが好きです。

●ミリー・スローカム
15歳
筋力(STR) 9  敏捷力(DEX) 7  知力(INT) 12
体力(CON) 14  外見(APP) 6  精神(POW) 14
サイズ(SIZ) 14  SAN値 0 教養(EDU) 11
耐久力 14
言いくるめ(26) 化学(30) 聞き耳(77)
忍び歩き(23)  図書館(44) 目星(45) 頭突き(59)
武器・ハサミ<(25%)ダ1D4+db 耐3>

でっぷり太った若い女性で、母親によく似ています。
しょっちゅうお菓子を食べていますが、それを母親に注意されています。
ほとんど家でごろごろしていますが、たまに学校に出かけてゆきます。
古本屋を手伝っていることもあります。

表面的にはそれなりに仲のいい一家ですが、実はお互いを軽蔑し合っています。
スローカム一家も全員ミ・ゴのドローンと化しています。
3人とも前頭部に傷跡があるのを隠しています。

●ウォーレン・ベリンガム

神秘主義者 30歳
筋力(STR) 10  敏捷力(DEX) 10  知力(INT) 12
体力(CON) 7  外見(APP) 13  精神(POW) 11
サイズ(SIZ) 14  SAN値 0 教養(EDU) 15
耐久力 11
オカルト(48) 化学(23) クトゥルフ神話(5)
考古学(16)  ジャンプ(36) 人類学(28) 登はん(47)
図書館(44)  物理学(19) 歴史(20)
武器・バット<(60%)ダ1D8+db 耐20>

背が高く、一見知性的な青年といった風貌ですが、近寄ってみると目つきが変で、いい歳をして出っ歯の矯正器をつけています。
実は自分は大いなる宇宙意志ラーの使者だと信じており、人類はやがて滅び、ラーの祝福を受けた者だけの楽園が作られると思っています。
彼もミ・ゴのドローンと化していますが、ミ・ゴの指令はラーの指令だと思いこんでおり、嬉々として指令をこなしています。 彼にミ・ゴの記憶は無いのです。
前頭部に傷跡があるのを前髪で隠しています。彼は階段から落ちたときに切った傷だと思っています。

●アルジャナン・ハガード

病人 60歳くらい?
浅黒い肌の色で、年齢も人種もはっきりしません。
ほとんど寝たきりで、MMアパートの4階に住んでいます。
特殊な病気で身体の麻痺が進んでおり、穏やかな人生の終幕を得ようとしています。
表情が乏しいのも病気のせいです。
日々の世話はマーサが行っており、それも契約の内なのです。
・・・と、いうのが表向きの設定で、実は彼は存在しません。
彼はミ・ゴが人間に化けた姿で、どうしてもアパート外の人間を4階に入れなければならない時の説明のためにマーサの意見でミ・ゴが作りました。
彼の寝室を訪れると、彼は目を覚まして苦労して上体を起こします。
顔は人形のようで動きも緩慢ですが、一応は病に冒された人間に見えます。
ミ・ゴの下半身はベッドの下の特製の箱の中で、上半身がアルジャナンを動かしています。ベッドの下の箱は普通 の衣装ケースに見えます。
彼は口をほとんど動かさず、くぐもった声でブツブツと話します。

 

3.プロローグ
ある日偶然探索者達またはその内の数人が集まっているところに、友人のチャールズが若い男と二人でやってきます。 場所はファーストフード店、本屋、どこかの路上など、誰もがぶらりと訪れて問題のないところならどこでも構いません。
フリーのジャーナリストであるチャールズは、探索者にとっては昔からの頼りになる友人です。

チャールズは連れを最近たまに仕事を手伝ってもらっているデイヴィッド・ジェンキンスだと紹介します。
デイヴィッドは少し堅くなっています。
また自然な話の流れで、最近のチャールズの仕事の話になり、彼は最近は大きなネタは特に無いので、面 白半分に街に流れる奇妙な噂の真相を追っていると話します。
例えば犬や猫が迷い込んだら出てこない場所とか。妙な物音とか。
普通は誰も気にもとめないか笑うだけですが、特定の場所やある階層の人々の間では強く信じられている事柄など。
彼はそういうの現代の都市にふさわしくない怪談めいた話を、「都市伝説」と名付けたらどうかと思っていると笑って話します。
その場は何事もありません。

 

4.導入
プロローグから2週間ほどがすぎたある日、探索者の一人にチャールズから電話がかかってきます。
なかなかゲームに入り込めないタイプのプレイヤーが多いときは、この時他の探索者も一緒にいることにしてください。
その電話は意味不明なものです。

チャールズの電話

「俺だ。チャールズだ。いきなりですまんが、よく聞いてくれ。
電話も信用できないから重要なことは話せない。ローレンス駅だ。
忘れないでくれ。ローレンス駅だ。 警察に行っても駄目だが、 一人じゃ無理だ。
仲間を集めてくれ。ローレンス駅だ。忘れるな。」

それだけ言って、探索者が何か言おうと思ったときには切れてしまいます。
ローレンス駅と言えば、ボストンの通勤電車の駅で、探索者のいるところから車で30分ほどのところです。

しかしその翌日、驚くべきニュースが目に入ります。
昨夜遅く、チャールズが4階建てのビルの屋上から飛び降りて自殺したのです。
直接の目撃者は今のところ無く、明け方に牛乳配達の少年が発見しました。
彼が飛び降り自殺するとは信じがたい話です。 そもそも遺書らしいものも見つからなかったらしく、自殺だと断言もできませんが、新聞の様子では自殺だと判断されているようです。
葬儀は2日後で、郊外の墓地で行われます。生前親しかった探索者は、当然出席することになるでしょう。

その日は仕事があり、なにもできません。
もし仕事を休んでチャールズのことを調べるという探索者がいたら、好きなようにさせてください。
その場合その探索者は自殺の現場かチャールズのアパートのどちらかに向かうかもしれませんが、どちらもその場を管理している警察が近寄らせてくれません。
チャールズの友人だと言っても同じです。

警察に向かった場合は、「5.警察」を参照してください。

ニュースを読んだその日の内に、探索者の一人(最もチャールズと親しかった者)のところに、なんとチャールズから封書が届きます。
宛名書きは非常に急いで書いた様子です。
開けてみると、中には鍵が入っています。
鍵にはナンバーのついたプレートがついています。どうもコインロッカーの鍵のようです。

もう日が暮れていますが、 車があればローレンス駅に行くことくらいはできるでしょう。

自殺の現場かチャールズのアパートに行っても、やはり警察が入れてくれません。

 

5.警察
警察でチャールズの友人だと言って頼めば、チャールズの遺体と所持品を見せてくれます。
遺体置き場には足の指にプレートを掛けられ、白いシーツをかぶせられたチャールズの遺体があります。
遺体は見たところ大きな損傷箇所はありません。
警察は死因は高所からの落下による全身打撲だと説明し、他に外傷は無かったと言います。
解剖はしないのかと聞くと、明らかな自殺の上に訴えもないのでその予定はないと言います。

チャールズの持ち物

●ハンカチ(汚れています。)
●ペン
●財布(約20$入っています。)
●チョコバー1個
●煙草とライター

※本当はメモ帳とカメラも持っていたのですが、MMアパートの住人に奪われています。

調査に警察は役に立たないどころか、邪魔になる可能性の方が高いです。
プレイヤー達の相談が警察に話そうという流れになってきたら、警察は腐敗していて信用できないと警告してあげてください。

もしチャールズからの電話のことを警察に話せば、彼はノイローゼにでもなっていたんだろうと言われます。
もし届いているならチャールズからの手紙のことを話すと、関連する物全てを没収されます。
返せと言うと、調べたあとだと言われます。
鍵を渡していた場合は、警察はロッカーの中の物を発見し、そのしばらく後で何者かに奪われます。探索者には鍵は正統な持ち主である駅に返したと言い、ロッカーの中には何もなかったと言い張ります。
ロッカーの中身を渡した場合も、警察内で何者かに奪われてしまい、探索者には調査中だと言って、いつまでたっても返してくれません。
もしロッカーの中身を警察が奪われるという展開になった場合は、MMアパートの住人には時間的余裕が出来るので、あまり無茶をしなくなるでしょう。その後の展開はキーパーに任されます。

 

6.ローレンス駅
ローレンス駅で、送られた鍵と同じナンバーのコインロッカーを試してみると、ロッカーを開けることができます。
中にはチャールズの遺したものが入っています。「7.チャールズの遺したもの」参照。

駅で探索者が、あらかじめまわりに注意すると宣言していれば、<目星1/2>に成功すれば、タクシー乗り場の方向から視線を感じます。
しかしどのタクシー、またはどの客からかは判断できません。
宣言が無ければ変わったことは何も起こりません。

見張っているのは、マーサ・マウリーの命令で駅を見張っているグレッグ・スローカムのタクシーです。
他にもタクシーは多数停まっているので、確認は至難の業です。
彼らもチャールズがローレンス駅をうろついていたとしか分かっていないので、 ひたすら張り込んでいるのです。
グレッグは確信まではいきませんが、探索者達が怪しいとにらんでいます。

 

7.チャールズの遺したもの
ロッカーの中に入っていたのは、 チャールズの鞄です。
鞄の中には、以下のものが入っています。

●銀色の小さな銃のようなもの

25cmほどの大きさで、全体的に丸みのあるデザインです。
銃口の有るべき場所は尖っていて、銃身に当たる部分を取り囲むように突起が突きだしています。
銃だとするとグリップが小さすぎて大人の手では持ちにくいほどです。

ミ・ゴのバッテリー

ミ・ゴが自らの銃を改造して作ったもので、長寿命高出力の電源として使用できます。
これをアパートに設置されている分子振動機に使うことで、ミ・ゴの超次元的部分をこの世界と同じ状態に変異させていました。
バッテリーが無いと、分子振動機を動かすことが出来ず、次第にミ・ゴの身体は半分異次元に移行してしまい、結果 この世界の食料を食べることが出来ずに餓死することになります。

ミ・ゴのバッテリーは大きさの割りに重量があります。
引き金らしき部分を引くと、銃口に変化はありませんが、銃身に当たる部分の突起が全て中に引っ込みます。
これは分子振動機に固定するためのギミックで、<アイデア>に成功すれば他の機械に固定するギミックではないかと推測は出来ます。
バッテリーを調べて<機械修理>に成功すると、これは表面の材料は一般 的な金属ですが、その加工技術は実に高度なもので、継ぎ目がほとんど無くなっているのに驚きます。
分解すると破壊してしまうだろうということは誰の目にも明らかです。
<電気修理1/2>に成功すると、先端の鋭利な部分は変わった形状ですが、先端の筋の部分は絶縁されている様子で、これに合った他の機械と接続して通 電するように出来ているのではないかと推測できます。

しかるべき場所(大学や研究所)などに持ち込むと、出所を聞かれ、また分解させてくれと頼まれます。
分解して分かることはサイズからは想像できないほどの大出力の電力を保存するものだと分かりますが、分解されたバッテリーはもう直りません。

●写真のネガ
現像すると写真は、どこかの町並みと建物、それに建物の中らしい妙な機械の写 真数枚と、暗闇でフラッシュを焚いて撮ったらしい判別の困難なものが数枚だと分かります。

機械の写真には、人間が楽に入るような大きな金属の容器と、それに繋がる雷発生装置のようなものと、よく分からない大きな機械が写 っています。

写真

町並みの写真はMMアパートの周辺で、アパート自体も写 っています。
<知識>に成功すれば、ボストンのどこかであろうと推測できます。

機械はミ・ゴの分子振動機です。
写真をよく見て<目星>に成功すると、あの銃のような物がよく分からない大きな機械の一部に突き刺すように装着されているのが分かります。

暗闇の写真は、チャールズがアパート内をうろついているのを発見されて追われていたときにふり返って撮ったものです。
どうやら2人の人間に追われているようで、片方の人影はどうやら背が高いようですが、手ぶれが激しくはっきりしません。
<目星>に成功すると、2人の内の背が高い方が銃のような物をこちらに向けているように思います。もう一人の背の低い方も手になにか光る物を持っているようにも見えます。

●ラムの瓶
中身は半分くらい残っています。そう言えばチャールズは強い酒が好きでした。

中には特殊な麻酔薬が入っています。
追ってきたアンから奪い取ったもので、チャールズがカムフラージュのために酒瓶に入れたのです。
しかるべきところ(大学や研究所)で調べれば、それが普通の麻酔を即効性になるように調合し直したもので、これを調合するためには高度な薬剤師の知識が必要だと教えてくれます。

●猫の首輪
油紙で厳重に包まれています。
首輪には血がこびりついています。マイケルと縫いつけてあります。
血はしかるべき場所で調べれば猫の血だと分かります。
<知識1/2>に成功した者は、2週間ほど前の新聞にマイケルという名の猫を探しているという告知があったことを思い出します。 結構高額の賞金もかかっていたようです。
新聞には猫の飼い主の電話番号も載っています。
その新聞がまだ残っているかどうかは持ち主の<幸運>によりますが、もし無くなっていても新聞社に連絡すれば飼い主の電話番号を教えてくれるでしょう。

飼い主は裕福そうな一家です。
首輪の見つかった状況と、血が付いていたことを話すと、飼い主はチャールズを猫殺しのキチガイだと非難します。場合によっては探索者もその仲間だと決めつけます。
うまく話をすれば、マイケルは約20日前に車から逃げ出したと説明してくれます。
逃げ出した通りはチャールズの自殺した現場の2つ隣りのブロックです。

 

8.葬儀
雨の中、ボストン郊外の墓地で行われた葬儀には、彼の仕事上でつきあいがあった新聞社の関係者が多く来ています。
彼は独身で、両親も亡くなっており、近い親族はいなかったようです。
墓地の片隅で、葬儀をみつめながら傘もささずに泣きじゃくっている若い男がいます。デイヴィッドです。

彼はチャールズが殺されたと思っています。
彼に最近のチャールズの様子を聞くと、久しぶりに面白いヤマになってきたと楽しそうだったと話します。デイヴィッドも手伝わせてくれと頼んだのですが、まだ手伝ってもらう段階じゃない断られたと言い、また泣きます。
彼はその時に無理に頼み込んで同行を許してもらっていれば、チャールズを守ることができたはずだと思っているのです。

彼は数年前に家出した身で、ダウンタウンで半分浮浪者のような生活を送っています。
探索者達がチャールズのことを調べていると教えると、彼は手伝えることがあったらなんでも言ってくれと言い、彼を殺した奴らが分かったら教えてくれとも言います。 明らかに復讐を誓っています。

彼に最近セントメリー通りの近くで行方不明になった浮浪者がいないかと訪ねると、そう言えば浮浪者のビリーが友達が行方不明になったと言っていたのを思い出します。
ビリーがよくうろついている場所も知っています。
ちなみに彼は具体的に質問されるまで、ビリーと事件の関わりにはまったく気付きません。

 

9.ビリーの話
彼は怯えきっていて、最初は探索者からも逃げようとしますが、ディヴィッドがなだめてなんとか話が出きるようになります。

彼の友達の同じく浮浪者のニックは、ヤサを代えると言いだし、セントメリー通 りの方へ行ってみると言いました。
ビリーはあそこは変な噂があって、2月ほど前にも娼婦のブレンダが行方不明になってると言って止めたのですが、若いニックはビリーのことを迷信深いと笑って聞きませんでした。
彼が行ってしまってから心配になったビリーは、やはり連れ戻そうとセントメリー通 りに行ってみました。
しかし彼の姿はなく、呼んでも答えはありませんでした。 諦めて帰ろうとした彼に、どこからか聞こえてきたのは恐ろしい吠え声でした。
最初は死にかけの犬でもいるのかと思ったのですが、やがてそれが想像を絶する苦痛を訴える人間の、それもニックの声だと分かり、ビリーは恐怖のあまり必死でその場を逃げだしたのでした。
これが2週間ほど前の話です。

ビリーはその場所をはっきりとは覚えていませんし、絶対に近寄りません。

娼婦ブレンダのことを警察に問い合わせると、確かにそういう届けがあったが見つかっていないという返事です。

 

10.チャールズの死の真相

彼は自殺したわけではありません。
屋上に追いつめられ、逃げ場を失って飛び降りざるを得なかったのです。

そもそもは、彼が浮浪者達を中心に囁かれている噂に興味を持ったのが始まりでした。
逃げたペットや野良犬、そして迷い込んだ浮浪者が決して帰ってこない場所があると聞いたのです。
それはセントメリー通りの辺りだと言われていたのですが、やがて彼はそれがMMアパートだと突き止めました。
まず彼は周辺の住人に、この辺で犬や猫が行方不明になる事件があるが、なにか知らないかと聞いてまわりました。すると確かにそういう噂があるらしいのですが、それ以上のことは分かりませんでした。
問題のアパートを探ってみると、ゴミ捨て場で猫の首輪を見つけました。
彼はこのアパートには一種のフリーメイソンのような組織が存在し、秘密裏に楽しみのための残虐行為を行っているのではないかと推測していました。
彼は郵便配達員を装って侵入し、4階の北の部屋へ<錠前>で侵入、夜を待って外から南の部屋の物置に入り込みました。
彼はそこで分子振動機を発見し、撮影していましたが物音がしたのでとっさにバッテリーを取り、ロープを使って窓から脱出しました。
グレッグとアンに追われましたが、なんとか逃走に成功しました。
しかしその頃には彼はアパートの住人に個人情報を知られていました。
次第に彼の生活にもアパートの住人の気配が迫り始め、彼はつぶされる前に相手の秘密を暴いて突破口を開こうと決断しました。
今度は夜にロープを使ってビルの北側の3階の階段からアパートに侵入し、最初から4階の南のフロアを目指しました。
彼は展示室を目撃し、更にバスルームにうごめくミ・ゴに遭遇することになりました。
恐怖に駆られて逃げ出した彼を住人達が追い、屋上に追いつめられたのち、飛び降りたのでした。

 

11.チャールズのアパート
彼は古いアパートで一人暮らしをしていました。
彼の部屋はビルの3階で、西向きの部屋です。部屋の中に入るためには管理人に頼んで鍵を開けてもらうか、<錠前>に成功する必要があります。
管理人ビルに入ったすぐ脇の管理人室におり、チャールズの友人で自殺の原因に心当たりがあるなどと説明すれば比較的簡単(<信用>ロール)に開けてくれます。ただし探索者達をじろじろ観察し、住所氏名なども効いてくる上に、部屋の中を見ている間、管理人もつきそいます。

3階の通路の北側の突き当たりは非常階段の入り口になっており、ドアが開け放されています。
探索者がドアの向こうをよく見ると宣言すれば、<目星>を行います。
成功したら向かいの2階建てのビルの屋上の物陰に、人がいるのを発見します。双眼鏡でこっちを見ていたようですが、すぐに隠れてしまい、どんな姿だったかは分かりません。
急いで向かいのビルに行って不振な人物を捜すこともできますが、間に合いません。

双眼鏡でこっちを見張っていたのは、マーサ・マウリーに命令されたウォーレン・ベリンガムです。 特に探索者を見張っていたと言うわけではなく、チャールズの部屋を訪れる者を確認していたのです。
彼は探索者に発見されたと悟り、素早く1階に下りて、停めてあった自転車で走り去りました。

チャールズの部屋の様子は、彼が死んでから何日目に部屋に探索者が来たかで変化します。

●チャールズが死んだ日を入れて、3日以内に来た場合
チャールズの部屋は、すでに警察が調べた後ですが、おざなりな調査だったらしく、部屋は思っていたほど荒らされた形跡もありません。
部屋はどれもさっぱりしていて、物があまりありません。チャールズはほとんど寝るためだけにこのアパートを使っていたようです。
<目星>に成功すると、ベッドの脇の小さなテーブルにメモが数枚置かれているのに気付きます。
メモにはそれぞれMMアパートの住所と、それ以外には「フリーメイソン?」「生贄?」と書かれています。
ベッドの脇には郵便局の配達員の制服が脱ぎ捨てられています。

●チャールズが死んだ日を入れて、4日以降に来た場合
ドアの鍵が壊されています。
部屋は滅茶苦茶に荒らされています。クッションの類まで切り裂かれており、徹底的です。
管理人が一緒に来ていたら鍵が壊されているのを知った時点で驚き、中を見て青くなります。
上記のメモはなくなっています。

 

12.事の起こりとアパートの秘密

3年ほど前、ボストン上空の雲海の上を飛行していたミ・ゴが陸軍の航空機によって撃墜されました。
ミ・ゴは雲を抜けてMMアパートの屋上に落下。
ミ・ゴを見つけたマーサは、まさにこれこそが神の使者だと信じ、ミ・ゴを匿いました。
ミ・ゴは重傷を負っていましたが、自らを治療して命は取り留めました。
こんな町中では仲間に救出してもらうわけにも行かず、彼はこの場で人間の研究を行うことにします。
しかし大きな問題がありました。半分異次元に存在する彼は、地球上の物体を食料にできなかったのです。 そこで彼は地球上のその他の物質と同じ次元に一時的にとどまれるようになる機械、分子振動機を作りました。
彼はアパートの住人をドローンとし、食料や実験材料の調達に使うことにしました。獲物の捕獲には主に一種の麻酔薬を注射する方法を用いています。

マーサはミ・ゴを真の神の使いと信じており、命を投げ出してでもミ・ゴの力になりたいと思っています。
あたりを嗅ぎ回り始めたリチャードには、郵便局員に化けてアパートに侵入され、バッテリーを奪われるという痛い目に合わされ、バッテリーを取り戻すのと口封じのために彼を捕らえようとしました。
再びアパートに侵入を果たした彼を屋上に追いつめて殺すことは成功しましたが、問題の写 真とバッテリーが見つからずに彼女は焦っています。
新しいバッテリーを作るためには他のミ・ゴと連絡をとって材料を調達しなければならないらしく、餓死するまでに間に合いそうにありません。
ミ・ゴ自身はそれで死んでもヴァーモントに菌が保管されているので問題ないといいますが、それも彼女には尊い自己犠牲に思え、容認することは出来ません。

マーサは駅でも見かけ、あらたにこの近辺でも姿を見かけるようになった探索者達が写 真とバッテリーを持っていると確信を持ち始めています。

 

13.自殺の現場へ
チャールズが飛び降りたのは、ボストンの町の中心部からは少し外れたセントメリー通 りに面した場所にある4階建てのビルで、1階は古書店、2階以上はアパートになっています。
チャールズの残した写真を見ていれば、<アイデア>に成功するとこのあたりが写 真の場所に間違いないと分かります。

彼が落下した部分にはまだ血の跡が残っています。
よく調べれば(<目星>または<追跡>)そこから少し離れたところに道がえぐれたようになっているのが見つかります。
<アイデア>に成功すれば、これはチャールズのカメラがつけた跡ではないかと思いつきます。

古本屋の入り口のドアの横の少し離れたところに、両開きのドアがあり、こちらがアパートへの入り口のようです。 ここを入ると、側面に窓口があり、奧に登りの階段が見えます。
窓口にはマーサがいます。
この窓口は古本屋のレジスペースと繋がっており、マーサはどちらも見ることができるようになっています。
階段を上ろうとすると、マーサが愛想良く「ご用はなんでしょう?」と聞いてきます。
屋上を見たいと言うと、今は関係者以外立入禁止だと言いますが、チャールズの知り合いだと言うと、店にいたらしいミリー・スローカムにレジを任せて、屋上を案内してくれます。

マーサは自殺があった当日の夜までは屋上は警察が封鎖していたと話してくれます。
屋上までの道のりは、ひたすら階段を上るだけです。
屋上に繋がるドアには鍵がかかっており、マーサが開けてくれます。
当日鍵はどうなっていたのかと訪ねると、いつもは住人が日向ぼっこをすることがあるので開放していますと答えます。今は野次馬が勝手に上ろうとするので鍵を閉めているということです。

1階の建物に入る両開きのドアは夜には鍵を閉めているのですが、中からは誰でも開けることができるので、住人の誰かがいったん外に出た時に開いたままになっていたのではないかと推測します。

屋上は殺風景で、何本かの煙突と水のタンクくらいしかありません。
縁は1mほどの高い段になっていますが、柵などは無く、場合によっては脚を滑らせても落ちそうです。
足跡を調べると<目星1/2>で他種類の足跡に混じって先のとがった杖でもついていたような跡が何カ所も見つかります。
<クトゥルフ神話>に成功すると、それがミ・ゴの足跡の可能性があると気付きます。
どちらにしろチャールズのものと断定できる足跡は見つかりません。

屋上を捜索する内、マーサは友人の自殺を同情したふりをしながら、探索者とチャールズの関係をはじめとして、探索者達の情報を聞き出そうとします。
これは自殺ではなく殺人だとマーサに言うと、彼女は驚いて怖ろしがり、詳しい事情を聞きたがります。

 

14.古本屋
古本屋の描写は、「17.アパート」を参照してください。

マウリー古書店を一通り見終わった頃に、マーサがよろしければお茶でもいかがですかと話しかけてきます。
断ると「いつでも遠慮せずにいらっしゃってください。私も不審な点がないか注意しておきます。」と言い、なにか見つけたら連絡しますと探索者の連絡先を聞いてきます。
お茶をご馳走になる場合は、彼女はその辺をうろついていたミリーにレジを代わってもらい、店の北側の壁にある二つのドアの内の右側のドアに探索者を案内します。
そこは簡単な応接セットが置かれた居間になっており、彼女は隣りにあるらしいキッチンでお茶を入れ、お菓子と一緒に持ってきます。
お菓子は可愛いクッキーと黒いビーンズです。
マーサは(まだ探索者に言われていないのであれば) もしかしてチャールズさんは自殺ではない可能性がるのではありませんかとおそるおそる聞いてきます。
どういう展開になっても彼女はアパートの住人にそんなことをするような人はいないと信じていると言います。
ただ最近3階に住んでいるジェイムズ・ピーターズという人がいつも具合が悪そうにしており、なにか悩んでいるようだったのは気になると話します。
彼に会いたいと言うと、彼の部屋に案内してくれますが、その時彼は留守です。

 

15. ウォーレン・ベリンガムの忠告
探索者達がアパートを出て少し行ったところで、前方の角で背の高い男がこっちに手を振っているのに気付きます。
彼は口に人差し指をあて、ついてくるように示します。探索者達が応じないようなら「あんた達のためだ。いいからこっちへ。」と言って、まわりに注意しながら路地に誘い込みます。
彼はウォーレン・ベリンガムと自己紹介し、あのアパートに住んでる者だといいます。

彼はマーサになにを聞いたか知らないが、彼女には注意した方がいいといいます。
なぜなら彼女は邪悪な魔女で、この辺で行方不明になっている犬や猫は彼女が生贄に使っており、チャールズという人は彼女の秘密を知ってしまったので殺されたんだと説明します。

なぜ彼はそんな女が管理人をしているアパートに住んでるのかと聞くと、自分は自衛する能力があるので大丈夫なんだと言います。
それはなにかと訪ねると、こっそりと「ラー」の力だと言います。「ラー」の指示で彼らの陰謀を暴くために潜入しているのです。
「ラー」は一種の精神生命体で、宇宙で唯一神と言える存在なのだそうです。
彼の情報は全て「ラー」からのお告げによるものです。
彼は気が狂っています。
彼にはミ・ゴの記憶が無く、嘘をついているつもりもありません。

 

16.調査
ここからしばらくの展開は探索者の行動と、それに対するアパート住人の反応にゆだねられます。
キーパーは状況を見て、「18.誘拐」に移行してください。
出来ればアパートの中でなんらかの忌まわしい行為が行われていことを探索者が確信したあたりがいいでしょう。
調査はプレイヤーの自由意志で行われ、その時の状況に応じた対応がなされるようになります。

アパートの住人達の典型的な対応は以下の通りです。
●マーサ・マウリー
彼女はいつも探索者に協力的で、出来うる限り彼らの望をかなえようとしてくれます。
しかし本当は彼女は探索者の情報を収集すると共に、写真とバッテリーを手に入れ、最終的には探索者全員を殺すかミ・ゴに差し出すつもりでいます。
探索者の一人が写真とバッテリーを持っており、今夜はアパートで一人でいるなどと信じ込ませれば、とたんに刺客を放ってくるでしょう。

マーサ・マウリーの視点
ウォッシュバーン夫婦 仲のいいご夫婦で、羨ましい。
ジェイムズ・ピーターズ いつも具合が悪そうで心配だ。夜出歩いたり、ちょっと不振な行動をすることがあるので、よく見張っておくようにします。
スローカム一家 ご主人が真面目に働いて家族を支えていて立派。娘さんにはよく店を手伝ってもらって感謝している。
奥さんはロマンス小説をよく買ってくれる。
ウォーレン・ベリンガム 神経質なところがあるが、本当は気の弱いいい人。
たまに店も手伝ってくれる。
アルジャナン・ハガード 資産家の方で、まだお若いのに可哀想。


●ウォッシュバーン夫婦
彼らは人のいい老夫婦を演じています。時には半分ぼけたような演技でその場を逃れることもあります。
実は主な犯罪行為の実行犯はこの二人です。写真に撮られたのもこの二人で、ロビンスンは銃を、アンは注射器を持っていました。彼らはバッテリーを奪われた失点で、マーサに生体解剖の素材にすると脅されており、なんとしてもバッテリーを持っている者を探し出して殺そうと考えています。

ウォッシュバーン夫婦の視点
マーサ・マウリー 少し変わった人のようだけど、いい大家さんだ。
ジェイムズ・ピーターズ いつも具合が悪そうで心配だ。
スローカム一家 ロビンスンは娘を甘やかしていると言い、アンがなだめます。
ウォーレン・ベリンガム 最近の若い者はよくわからん。
アルジャナン・ハガード 私たちより若いという話なのに可哀想


●ジェイムズ・ピーターズ
いつも具合が悪そうですが、ミ・ゴに操られているときには動きに自信が戻ってきます。
操られていないときは、今の状況から自分を助け出して欲しいと懇願しますが、大切なことは言えないように精神を制御されています。
彼に<精神分析>を施せば、部分的に甦った記憶を話させることが出来るかもしれません。しかし彼は記憶が戻る毎にSANチェックを行い、失敗するとSANを1D6失います。SANが0以下になってしまうと彼も完全なミ・ゴのドローンとなります。
もし探索者が彼から有益な情報を聞き出すことに成功したり、SANが0になってしまったりすると、翌日以降は彼は行方不明になります。 後にアパートの4階で、ミ・ゴの生体実験に使われて変わり果てた姿で発見されるでしょう。

ジェイムズ・ピーターズの視点
マーサ・マウリー

操られている/別に普通の人
正気が戻っている/あいつは魔女で、怪物・・・ぐがが。

ウォッシュバーン夫婦 操られている/よく知らない
正気が戻っている/ やつらは・・・がぐぐ。
スローカム一家 操られている/娘がうるさくて気に障る
正気が戻っている/やつらは・・・げげげ。
ウォーレン・ベリンガム 操られている/キチガイだ。
正気が戻っている/キチガイだ。
アルジャナン・ハガード 操られている/・・・・
正気が戻っている/ぐげががががが


●スローカム一家
グレッグはいざというときのための足として使うために、なるべく探索者とは接触しないようにして、顔を覚えられないようにしています。アパートでもそそくさと立ち去ってしまうし、タクシーに乗っているときは目深に帽子をかぶって顔を隠しています。
妻のエミリーは無愛想で、ロマンス小説以外興味がないような態度をとります(実際興味が無いのです)。
娘のミリーは探索者の前では照れたようなはにかんだような態度で、すぐに逃げ出してしまいます。彼女は古本屋を手伝っており、マーサの手足となって動いています。

スローカム一家の視点
マーサ・マウリー よくしてくれてる。ちょっと修理とかが遅いことがあるが女一人なので仕方がない。
ウォッシュバーン夫婦 仲のよい夫婦のよう。あまりつきあいはない。
ジェイムズ・ピーターズ たまに恐ろしい顔でにらまれる。若い娘もいるし、警戒している。
ウォーレン・ベリンガム フラフラしてて、変な宗教みたいなのに凝ってるらしい。
アルジャナン・ハガード 可哀想だけど、うつる病気じゃないのか心配


●ウォーレン・ベリンガム
マーサを魔女だと疑って、探索者に信頼されるように務めています。
ちょっと頭がおかしいが、正直なやつだと思われればしめたもので、探索者達を人目のないところに誘い出し、一網打尽にしようとします。
彼自身は唯一の神である「ラー」(実はミ・ゴ)の指示にしたがって行動しているので、自分の正義をまったく疑っていません。

ウォーレン・ベリンガムの視点
マーサ・マウリー 魔女。地球にとって人類は害虫だと思ってる。暗黒の神に生贄をささげて人類を滅ぼしてくれるように頼んでいる。なんとか尻尾をつかんで反撃に出なければならない。時間がない。
ウォッシュバーン夫婦 ぼけた老夫婦。価値無し。
ジェイムズ・ピーターズ 彼もマーサ・マウリーの呪いの犠牲者で、じわじわと死に向かっている。早くなんとかしなければ。
スローカム一家 唾棄すべき偽善一家。特にぶくぶく太った母娘は腐った現代社会が育てた豚の見本。
アルジャナン・ハガード マーサが慈善ぶって世話をしているが、あれもあいつの犠牲者に違いない。
そのうち「ラー」の力で助け出してやらなければ。

 

17.アパート
築50年はたっていそうなビルです。漆喰で固めたレンガ作りになっています。
アパートの中を説明します。

///////////1階///////////

古本屋とマーサの住居になっています。
A.玄関
アパートの玄関です。
入り口は木のフレームに曇りガラスがはまった両開きのドアになっています。このドアの鍵は、中からなら自由に開け閉めが出来ます。
ドアの上に「MMアパート」というプレートがあります。
玄関の西の壁には窓があり、古本屋のレジスペースからこちらが見えるようになっています。
玄関にはウォーレンの自転車が停めてあります。
B.居間
半分物置になっているようで、階段の下あたりには本の入った箱が積まれています。
簡単なイスとテーブルがあります。
C.寝室
天蓋つきのベッドがあり、落ち着いた雰囲気の部屋です。
ベッドの脇の小さな引き出しの中に、「無名祭祀書(ゴールデン・ゴブリン・プレス版)」が入っています。
D.古本屋
入り口に木の看板があり、「マウリー古書店」とあります。
古い本が山と積まれており、ゴチャゴチャしてはいますが不思議と雑然とした感じはしません。
レジスペースにはマーサがいます。
マーサがいないときは、近くにいたアパートの住人に番をしてもらっていることもあります。
よくミリー・スローカムが店内をうろついています。ウォーレン・ベリンガムもたまにオカルト関係の本を見ています。
店にあるのはいわゆる古書とペーパーバックが半々といったところで、ロマンス小説とSFやオカルト関係も店の規模の割りには揃っています。
それをマーサに言うと、ここの住人で好きな人がいるんですと言って微笑みます。

●オカルト関係の本
タイトルを名指しで探せば<図書館×2>で、この店にある本であれば、そのタイトルの本が見つかります。もちろんマーサに頼んでもかまいません。
オカルト関係のめぼしい本という感じで探すと、<図書館1/2>と<オカルト>のどちらかで成功すれば、 以下の本が見つかります。

ソロモンの鍵(英語版)全2巻 1巻目は霊を扱う方法。2巻目には様々な呪文が記されています。
ノストラダムスの大予言 千篇ほども4行詩が記されており、これらは未来を予言していると言われています。
光輝の書(英語版) 中世ユダヤの神秘主義者の、瞑想と啓示を通して神に近づく努力が記されています。

これらの本の詳しい解説はルールブックを参照してください。

●クトゥルフ神話関係の本
この店のレジの後ろの壁には稀覯本がガラスケースに入れられて飾ってあるのですが、その中の上の方に「無名祭祀書」というタイトルの本が混じっています。
しかし<目星>に成功すると、それがレプリカで、本の中身は入っていないのが分かります。
「無名祭祀書」を見ていると、その探索者をマーサが目を細めて見ています。
彼女に本のことを聞くと、3年ほど前まではあったのですが、売れてしまい、展示用のレプリカだけが残っていると説明します。
またこういう本に興味があるのかと探索者に聞いてきます。その時の彼女の目はイタズラっぽく輝いています。

実は彼女は 「無名祭祀書(ゴールデン・ゴブリン・プレス版)」を持っていますが、自分の部屋に隠してあります。
店にレプリカを飾っているのは、興味を持った客には警戒すると同時に、本をエサとしておびき寄せるのにも使えるからです。

後に彼女は本を見ていた探索者に誘いをかけるかもしれません。
その場合は個人の所有なのですと説明し、よければ見にいらっしゃいませんかと言います。
店での興味があるかの質問にNOと答えていたとしても「私には分かります。あなたの目はあの本に釘付けでしたから。」という風に強引に話を進めるでしょう。

ただしこのイベントは探索者が手詰まりになった時のためにとっておいてください。

他にはこの店にはクトゥルフ神話関係の本はありません。

E.倉庫
倉庫には古本屋からしか入れないようになっています。ドアには鍵がついていますが普段は開いています。
本が箱に入って積み上げられています。裸のまま積まれているものもあります。
ここを詳しく調べるには4時間かかります。 へとへとになります。 そしてめぼしいものは見つかりません。
F.応接間
応接セットがあり、棚にはグラス類が並べられています。お菓子もあります。
普段から居間の代わりに使われているようです。
G.キッチン
よく整頓されたキッチンです。
H.物置
本以外の色々な荷物が置かれています。昔の新聞が束ねられたものがあり、これを調べると<目星>、どれも3年くらい前のもので、この近くでおこった事件が載っています。

3年前の新聞記事を総合した事件のあらまし

夜間飛行訓練中だった陸軍航空隊機に搭乗していたベイブ・スミス陸軍少尉が、ボストン上空で巨大な虫のようなものが飛んでいるのを発見し、機銃にて撃墜した。
それは雲を抜けて地表に落下。パイロットの証言により撃墜したものを探したが見つからなかった。

パイロットの証言によると、それは身体が2mほどもあり、翼長は5mを越えていた。
しかも正体不明の機械を背負っており、それが飛行を助けているようにも見えた。
身体は蟹かエビのようにも見えた。
接近しようとするとそれが武器らしきものを発砲したので、攻撃したという。

宇宙からの侵略説、隕石説、ドイツの偵察機説など、色々な噂が飛び交ったが、結局はパイロットの精神異常が原因と断定された。
まことしやかに流れた噂では、その飛行機のボディには焼き切られたような跡がついていたらしく、それがもう少し中央に寄っていたらパイロットも切り裂かれていただろうということだった。

ベイブ・スミス氏のことを調べると、その後しばらくして陸軍を除隊し、約1年後に何者かに射殺されているのが分かります。

I.バスルーム
普通のバスルームです。清潔に保たれています。
J.通路
ドアが並んでいるフローリングの通路です。
西の突き当たりには窓がありますが、磨りガラスになっています。この窓の先は路地で、隣には別 なビルが建っています。
地下に下りる階段を下りるためにもドアを開かなくてはなりません。このドアには鍵がかかっており、その鍵はマーサが持っています。

///////////地下室///////////
10×10mほどの部屋で、入ったすぐ右のところに電灯のスイッチがあります。
大きなガス式のボイラーがあります。
灯油のストックも置いてあります。
床をよく探せば<目星>マンホールがあるのが分かります。マンホールの蓋は鍵がかかるようになっていますが、開けられています。鍵は近くのタンクのあたりに転がっています。

///////////2階///////////

2階には南側にウォッシュバーン夫婦、北側にスローカム一家が住んでいます。
●ウォッシュバーン夫婦宅
きれいに片づいています。居間の半分は応接間も兼ねた書斎のようになっており、書き物机があります。その引き出しの中には古いリボルバーと弾丸が入っています。ロビンスンが持ち歩いていることもあります。どうやら元陸軍の士官だったようです。
その壁には賞状が並び、勲章もケースに入れて飾ってあります。賞状は拳銃射撃のコンテストで上位 入賞したものがほとんどです。
それを言うと、彼は「昔のことだ。」と照れ笑いします。実は腕はまったく衰えていないのですが。
そこかしこにアンが編んだものらしいショールや小物などが置いてあります。
キッチンの流しの下の物入れには、奥の方に箱があり、その中には色々な薬品と注射器が何本もあります。彼女が調合した麻酔薬も何本も用意されています。
●スローカム一家宅
恐ろしく汚れています。細かいゴミがそこら中に、食べかすなどもそのままになっています。ドアを開けた瞬間からすえた匂いがします。
食べかけのお菓子類がそこら中にあります。 部屋の隅にはロマンス小説がごろごろ転がっています。
南西の角の部屋はグレッグの部屋です。この部屋は比較的きれいです。
壁には古い22口径のライフルが飾ってあります。弾丸はその脇の棚の引き出しに入っています。
南の部屋は子供部屋で、ベッドと机が置いてありますが、ゴミと食べかすで埋もれそうになっています。

///////////3階///////////

南側にジェイムズ・ピーターズ、北側にウォーレン・ベリンガムが住んでいます。
<目星>に成功すると、2階へ降りる階段の北側の塀の縁にはなにかを引っかけたような跡が残っているのに気がつきます。これはチャールズのロープフックがかかった跡です。
●ジェイムズ・ピーターズ宅
ほとんど寝に帰っているだけのようです。酒の空瓶がそこらじゅうに隠してあります。
中身のあるものはわずかです。
居間の隅にフック付きのロープが乱雑に置かれています。
これはチャールズが2度目にアパートに侵入するのに使ったもので、マーサが手近なこの部屋に突っ込んだものです。
キッチンは 料理などしたことがないのが明らかで、 既製品食料の包みを破ったクズがごろごろしています。
バスルームの鏡の裏の薬棚にはトランキライザーがあり、ずいぶん減っています。
●ウォーレン・ベリンガム宅
いきなりドアに古き印が描かれています。もちろんそれが分かるのは<クトゥルフ神話>に成功した者だけですが、なんらかのオカルト的な印なのは一目瞭然です。
※ミ・ゴは古き印は意に介しません。
部屋の中も様々なオカルト的アイテムであふれかえっています。ただし彼は神と呼べる存在は「ラー」だけだと信じているので、それらのアイテムも半分コレクションのようなものだと言います。しかし中には効果 のあるものもあり、それは作者が知らない内に「ラー」の力を借りているのだと説明します。
部屋の隅にバットが立てかけてあります。 それを言うと、昔は野球少年だったと言います。
更にあの棒を振る行為も「ラー」の力を受ける儀式として成り立つとか、わけの分からないこ言い訳をします。
※実はルールもよく知りません。最近武器として購入したものです。
彼の居間の机の引き出しには双眼鏡が入っています。

 

///////////4階///////////

MMアパート4階は、南の部屋をアルナジャン・ハガードが使っています。 北の部屋は誰も使っておらず、綺麗に掃除されていますが埃が積もっています。
しかし<目星>に成功すると、居間から奥の通路、そして物置に足跡が残っているのに気付きます。 これはチャールズが侵入した跡です。
A.居間
現在はアルジャナン・ハガードの寝室になっています。ここに入る鍵は彼も持っていますが、主にマーサが開けます。
部屋には天蓋付きの大きなベッドがあり、その傍らに本棚とテーブルがあります。
食事はそのテーブルの上に置き、マーサが食べさせています。
テーブルの隅には電話が据え付けられています。これは緊急時にマーサ(店)に連絡する為のものということになっていますが、実際はマーサが4階に誰かが行くとミ・ゴに知らせ、アルジャナンの準備をする合図に使っています。
ベッドからドアの上の滑車までロープが張られており、ベッドでロープを引くことで滑車から下がった重りがドアを叩くようになっています。これはマーサがドアの外から開けてもいいかなどと聞いたときに返事をするためのものです。
本棚にはミステリー小説と化学や生物学関係の専門書が並んでいます。
専門書はミ・ゴの希望で、ミステリーはマーサの意見です。ミ・ゴはミステリーも一通 り目を通していますが、死に対する生物学的以外の理由には興味がないので、もしその話をするとピントの外れたものになります。
シーツで隠れているベッドの下には尿瓶と衣装ケースがあります。
衣装ケースはミ・ゴの下半身を入れるためのダミーです。

ミ・ゴが入っていないときのアルジャナンは、ベッドに寝たままで目を覚ましません。
起き上がらせようとすると、糸の切れた操り人形のような状態で異様に軽いのに気付くはずです。
その時上半身の中は空洞です。
B.キッチン
ほとんど使われていないらしいキッチンです。食事はマーサが下で作って持ってくるということになっています。
C.寝室
この部屋は寝室としては使われていません。ミ・ゴの食料置き場になっています。
主に缶詰のスープ類で、山のように積んであります。
開けられた缶もいくつか転がっています。
マーサは最近は流動食が主な食事だと説明します。
実際ミ・ゴに歯はないので、流動食しか食べられません。
D.展示室1
この部屋には鍵がかかっています。このフロアの全ての鍵はミ・ゴとマーサが持っています。
ここには犬や猫、鳥、そして人間の様々な標本が置かれています。
この部屋の標本は全て死んでいます。
主に脊髄の標本が多いようです。どれも見事な防腐処理をされています。
ホルマリンで満たされた瓶も何本も並んでいます。中には解剖された猫や人間の性器などが保存されています。
標本には全てプレートらしきものがつけられていますが、記されているのは模様のようなパターンだけで読むことは出来ません。
この部屋の光景を目撃した探索者はSANを(0/1)失います。
探索者が捕らわれていれば、この部屋にいます。
E.展示室2
この部屋にも鍵がかかっています。
ここにも様々な標本がありますが、展示室1と違うのはその多くが生きているまたは生きていた形跡があるということです。
ガラスに切断面を密着させ、下半身だけの犬は、近くの機械のスイッチを入れると尻尾を振ります。
明らかに猫の身体は入らない小さな箱から首だけをつきだしている猫は、箱のスイッチを入れると目を開き、ものうげに鳴きます。
壁に固定されているのは浮浪者だったらしい男で、内蔵は透明ケースの中で、どうやら胃袋に直接栄養を与えることができるようになっているようです。男の顔の前には式台のようなものがあり、そこに禁制品のポルノ本が開いて置いてあります。男の性器には計りがつけられて、先端からはパイプがのびて奇妙な機械を通 して部屋の隅排水溝らしき穴に繋がっています。肛門からも管が伸びて同じ排水溝に繋がっています。
男はうつろな目でよだれをたらしています。
※彼は浮浪者のニックです。
首と手足のない女もいます。
彼女の身体にも栄養を直接与えるためらしい管がつけられています。子宮だけが体外に取り出され、ガラス製の容器に入っています。子宮の中には得体の知れない生物が丸まっており、時たま触手をうごめかせています。
※彼女は2ヶ月前に行方不明になった娼婦のブレンダです。
他にも同じように生かされていたらしい動物の死体がいくつもありますが、どれも腐ってはいません。
部屋の半分は手術室になっており、簡素なベッドと、様々な禍々しい機器が置かれています。
ほとんどはこの世界の普通の道具を改造したらしい意味不明の機械です。
ジェイムズが改造されておれば、ここにはまだ乾いていない血だまりが出来、床にしかれたシートの上を排水溝に向かって少しずつ流れています。
この光景を目撃した探索者はSANを(1/1D8)失います。
もしジェイムズが改造されていたら、彼の脳味噌も妙なガラスのケースの中に陳列されています。
彼の脳味噌はまだ生きており、しかも会話装置と聴覚装置も取り付けられているので、それぞれのスイッチを入れれば会話することも可能です。
その声は機械的で無機質ですが、そのしゃべり方は確かにジェイムズのものです。
ショックのためか一時的に正気を取り戻している彼は、感覚が無いことをうったえ、暗闇に押しつぶされそうだと言い、最終的には殺してくれと懇願します。
彼と会話すると、SANを(0/1D3)失います。
F.物置
この部屋にも鍵がかかっています。
ここにはミ・ゴを地球上の生物と同じ周波数に保つための分子振動機があります。
分子振動機はミ・ゴが入る大きな金属製の容器と、それを固定するアームに取り付けられた強い電撃を発する装置と、それらを稼動させる動力制御装置からなります。
ミ・ゴの武器を改造したバッテリーがないとこの装置は作動しません。

また探索者が見てもさっぱり分かりませんが、ドローンを操るための装置もここにあります。
見た目は金属の箱から何本ものコードが出ているだけです。
これはミ・ゴの飛行機械をベースに作られており、ドローンの脳に埋め込んだ端末から生体電気を使って送られてくる一種のデジタルデータをミ・ゴに理解できる音(ブジブジブブブジジジ)に変換し、ミ・ゴはこの装置を使って指令を与えます。
やりとりされる情報は圧縮されており、情報量は巨大で、ミ・ゴは正確に状況をつかみ、細かい指令を出すことが出来ます。
この機械は通常の電力だけで動きます。

通信機もあります。これはミ・ゴが仲間と連絡をとるためにこの世界の無線機を改造した物です。
スイッチを入れるとヴァーモントのミ・ゴのところに通じます。

またここにはチャールズのカメラとメモ帳もあります。
カメラは落下の衝撃で蓋が歪み、中のフィルムが感光してしまっています。
メモ帳には彼の調査内容が書かれています。 これには3年前の撃墜事件なども系列的に整理して書かれており、通 して読めば<クトゥルフ神話>に1%と、SANを(0/1)失います。

この部屋の窓枠を調べると、傷が付いているのが分かります。
チャールズがフックつきロープで脱出した跡です。
G.バスルーム
鍵はかかっていません。 いつもはミ・ゴはここにいます。
異様な匂いがたちこめており、地球上には通常は存在しない菌類がはびこっています。
マーサはアルジャナンは身体を拭くだけのことが多いので、かびてしまっていると説明します。

●ミ・ゴ

筋力(STR) 12  敏捷力(DEX) 12  知力(INT) 16
体力(CON) 8 精神(POW) 16  サイズ(SIZ) 15
耐久力 12 追加ダメージ+1D4
移動7(飛行不可能)

武器・ ハサミ 30% ダメージ1D6+1D4
装甲・ 半分地球上の次元に属していないので、貫通する武器は最小限のダメージしか与えられない。ただし正常に機能する分子振動機に入ったあとしばらくのミ・ゴは装甲無し。

ミ・ゴを見て失う正気度喪失は(0/1D6)。

このミ・ゴは3年前に陸軍機に機銃で撃墜されており、身体のあちこちに機械を取り付けて生き延びています。
どこかボロボロな印象を与えます。
翼も片方が半分無くなっていて、残っている方もボロボロになっています。
彼は状況によっては餓死しかかっているので、それに応じて能力値を減らしても構いません。

アルジャナンを操っていないときのミ・ゴは虫の羽音のような奇妙な音で話をします。
ミ・ゴは個性というものをほとんど理解しないので、死も怖がっておらず、人間に敵意もありません。彼にとっては興味深く必要なことを出来る範囲でやっているだけなのです。
話がかみ合わないことでしょう。

ミ・ゴと遭遇する場所やその姿は状況によって変化します。その状況はキーパーの判断に任されます。

18.誘拐
探索者の誰かの個人情報がアパートの住人に分かってしまった場合、または探索者達の調査が一段落した頃、住人達の反撃が始まります。
彼らの目的は写真とバッテリーを取り戻した上で、秘密を知った探索者全員を捕獲または抹殺することです。
例えば探索者の家が分かってしまうと、そこはもはや安全ではないでしょう。
また尾行に気付かず一人で一目のないところに行ってしまった探索者も危険な目に合うでしょう。
ポイントは彼らは通常の人間では考えられないほど我慢強いということです。
例えば探索者の一人が現れるというトイレに、3日前から閉じこもって待ち伏せするなど朝飯前です。
以下にありそうなな襲撃パターンをあげておきます。
●探索者が歩いていると・・・1
一目のないところに出たとたん、ロビンスンに背後から捕まえられ、アンに注射をされます。
意識が薄れかけたところで、すぐ横に停まったグレッグのタクシーに乗り込まされます。
●探索者が歩いていると・・・2
一目のないところに出たとたん、すぐ横にタクシーが止まり、ロビンスンに銃を向けられます。
そっちに気を取られている隙に背後からアンに注射され、タクシーに乗り込まされます。
●探索者が歩いていると・・・3
一目のないところに出たとたん、路地からウォーレン・ベリンガムがバットで不意打ちします(ノックアウトダメージ)。気絶したらそのまま路地に引っ張り込まれます。
気絶しないと、彼は降伏し、マーサに探索者を連れてこないと暗黒の神の力で殺すと言われた。「ラー」は彼女に殺されたなどと、狂ったような言い訳をします。
その間に注射器を持ったエミーが探索者の背後に近寄っています。
●探索者の家・・・1
一人暮らしの探索者が家に帰り、 ドアを開けて一歩踏み出したところで、ドアの脇からロビンスンに銃を向けられます。
そっちを向いている間に背後からアンに注射されます。
この襲撃に備えるためには、あらかじめ(家に帰る前に)プレイヤーが家での待ち伏せを警戒すると宣言しなければなりません。
警戒していた場合は、家のまわりをぐるりとまわると、個人の家か1階建てのアパートなら、窓ガラスが割られているのに気付きます。
そうでなければ管理人が探索者の叔父or祖父などだという嘘を信じて中に通 してしまっています。 どれも当てはまらない場合は、玄関のドアノブがガタガタになっているのに気付きます。鍵はかかっています。
●探索者の家・・・2
探索者が寝てから<聞き耳1/2>に成功すると、物音に気付いて目が覚めます。失敗なら眠ったままで連れ去られます。
目が覚めた探索者は、ベッドの下から出てきたアンが注射器を自分の腕に刺そうとしているのに気付きます。-SAN(0/1)
<DEX×2>ロールに成功しないと、注射されてしまいます。 針をよけるのに成功したら、次のラウンドに起きることが出来ます。そうなったら次のラウンドでアンは逃げ出します。着替えを気にしなければアンが玄関のドアの鍵を開けたところで追いつきます。ドアの外には銃を構えたロビンスンが立っています。
●探索者の家・・・3
睡眠中<聞き耳1/2>に成功すると、寝室に近いドアか窓が開けられ、そこにロビンスンが銃を構えて立っているのに気付きます。すぐ後ろから注射器を持ったアンも入ってきます。
「やれやれ起きてしまったか。」
「仕方が無いわねえ。」 ってな感じです。 おとなしくしていれば命までは奪わないと言い、注射をしようとします。ロビンスンの銃口はピタリと探索者の額に向けられています。
抵抗すると死ぬ可能性が非常に高いとプレイヤーに告げてください。
寝たままならそのまま連れ去られます。

ここの展開は、探索者が下手に抵抗すると命を落とす可能性が高いので、特にロビンスンの銃の腕は確からしいと彼または彼女にに分からせてください。
探索者が騒ぎ出すようなら彼らはタクシーに乗って逃げ出しますが、その前に探索者の息の根を止める可能性が高いでしょう。

グレッグはどの場合も少し離れたところに待機しており、失敗したと分かれば仲間を置いてタクシーで走り去ります。

 

19.虜
誘拐された探索者の目が覚めると、手足を縛られてころがされているのに気付きます。
ここは展示室1です。「17.アパート」を参照してください。しかし電気が消されているのでまわりにはゴチャゴチャと色々な物が置いてあるとしか分かりません。
どのくらいの時間がたったのか、昼なのか夜なのかも分かりません。
大声を上げてもどこからもなんの反応もありません。
しばらくしてから、マーサが現れます。
彼女が電気を点けると、部屋の様子が見えるようになります。 彼女は写真とバッテリーを返せば家に帰してやると言います。
どうしても言わないようなら、しゃべりたくなるように脳味噌を改造すると言われます。
もしジェイムズがすでに行方不明になっているのなら、改造された彼を紹介してくれます。
最も彼の脳の改造はずっと前であり、今回は別な手術の結果です。

●ジェイムズ・ピーターズ改
筋力(STR) 19  敏捷力(DEX) 6
体力(CON) 11
サイズ(SIZ) 14
耐久力 13  追加ダメージ +1D6
マーシャルアーツ(3)

武器・ パンチ(40%) ダ1D4+1D6 
  グラップル(20%)

うつろな目をしていて、マーサの命令に従順に従います。
髪は剃られていますが、帽子をかぶらされているのでよく分かりません。
帽子を取ると、頭が頭髪のあったあたりから無くなっています。頭の中身である脳味噌もありません。視神経や脊髄が飛び出て、小さな機械に繋がっているのが見えます。
-SAN(1/1D8)
彼の筋力が倍増しているのは限界を意識することが無いためで、パンチによって自分の腕が砕けようがお構いなしです。

マーサは使徒様がその素晴らしい知性で、彼の壊れてしまった脳味噌を別 なところに移植したと説明し、あなたの脳味噌も取り出したら話がしやすくなるかしら?と笑います。
※本当は記憶が失われる場合があるので、手術はせずに聞き出したいと思っています。

ここでプレイヤーに情報をしゃべらせるかどうか判断させては後々問題になりそうです。POWでロールなどしても同じでしょう。ですからこのシーンはここで止めてください。
次の「20.反撃」で、探索者達がなんらかの行動を起こせば、その報告を受けて尋問が中断されるという形に出来るでしょう。

 

20.反撃
探索者の一人が行方不明になっているのが発覚します。
探索者達は件のアパートに救出に向かいます。
もし探索者が警察を呼んでも、相手にしてくれないか、おざなりな調査しかされません。

探索者達が行方不明が分かっただけでさっさとアパートに行ってくれればいいのですが、そう簡単にはいかないでしょうから、いくつか探索者の決断を進める方法を記します。
●デイヴィッドが特攻する。
探索者が行方不明と知ったとたん、彼は急がないと兄貴の二の舞になると言って、武装してアパートに向かいます。
放っておけば彼は正当防衛でロビンスンかグレッグに射殺されるでしょう。そのまま彼も行方不明になる可能性もあります。
●ウォーレン・ベリンガムがやってくる
「マーサがあんた達の仲間を捕まえた!彼も暗黒の神への生贄にするつもりなんだ。僕は「ラー」の導きでこっそりと抜け出してきたんだが、すぐに戻らないとばれてしまう。どうしたらいい?どうしたらあんた達の力になれる?急いでくれ!」
これはやってくる探索者の手の内を先に知って待ち伏せしようという計略なのですが、もちろんこれを逆手にとって相手の隙をつくこともできるでしょう。
●電話がかかる
マーサから、助けて欲しければ写真とバッテリーを持ってこいという電話があります。
その場合は時間制限がつきます。制限時間が過ぎれば捕まっている探索者は生体実験の末に殺されるでしょう。

探索者が自発的に救出に向かった方が、待ち伏せの可能性が減って、危険度が少なくなるのは確かですので、なるべく上記の方法は使わないですむように誘導してください。

 

21.終結
ミ・ゴが最期を迎えると、彼(?)はマーサに全てを焼き払うようにテレパシーのようなもので指令を送ります。
これはミ・ゴの存在を人類に知られないためですが、マーサはとうとう人類に審判が下るときが来たと言って、驚喜しながらアパートに火をつけます。
その時アパートの外に出ていって、愚かな人類への嘲笑的な演説をしながら燃え尽きるようにすれば、後々の探索者達の法的安全を確保できるでしょう。
この展開にもってゆくために、なるべくマーサは最後まで生きているようにしむけましょう。

ドローンを操る機械が壊れたら、ドローン達は自分のやりたいことに向かってなんの躊躇もなく行動します。敵とか味方とかの判断はありません。
特に危険なのはウォッシュバーン夫婦で、機械が壊れると彼らは手近な標的に対して自分の欲望を発揮します。
スローカム一家がまっさきに行うのは、家族を殺すことです。グレッグが妻と娘をライフルで射殺するのに成功したら、その後自分も銃口を口にくわえて自殺します。
エミリーかミリーが生き残ったら、満足して血の海の中でそれぞれの趣味(ロマンス小説orお菓子)に没頭します。
ウォーレンは「ラー」からの通信が聞こえなくなった!「ラー」様見捨てないでください!などと泣きわめいた後に自殺します。
もしジェイムズがまだ脳味噌を摘出されないで生きていたら、しばらく正気に戻りますが、だんだん色々なことを思い出し、恐怖のあまり結局気が狂ってしまいます。

ミ・ゴを滅ぼすのに成功したら、探索者グループはSANを1D6獲得します。
しかし誘拐された探索者が救出が間に合わずに殺されてしまった場合はSANの獲得は1だけです。
誘拐されてから救出された探索者は、更に1D6のSANを獲得します。

 

22.終わりに
このシナリオは、状況と登場人物だけが用意されており、具体的な進行はあまり記されていません。 展開はキーパーに任されますが、出来るだけアパートの住人達との接触に時間をかけ、その異様な雰囲気を演出してください。
ポイントは一致団結しているように思えるアパートの住人達も、実はまったくかみ合っていないというところです。
マーサはミ・ゴのために全てを捧げようと思っていますが、ミ・ゴはそれが興味深いので言うとおりにしているだけで、死ぬ のも怖れていません。興味のあるのは研究と種の繁栄のみです。
ウォーレンはミ・ゴのことは記憶に無く、その指令は「ラー」からのものだと信じています。他の住人達は何も分からない愚民であり、マーサは暗黒の神に仕える魔女であり敵だと思っていますが、「ラー」の指示で協力している振りをしているのです。
またマーサと年齢の釣り合う探索者がいれば、彼女が誘惑するという展開も面 白いかも知れません。美貌の未亡人のアパート管理人と言えばなにかグッとくる人もいるかもしれませんし(笑)。

ミ・ゴが餓死するまでの時間は具体的には決まっていないので、それもキーパーが決定してください。あまりにストーリーの進みが遅いと感じたら、ミ・ゴの餓死が迫っているのを理由に、探索者の誘拐を早めに発生させてもいいでしょう。その場合遭遇した時のミ・ゴは死にかけていることになります。

なを、このシナリオはH・P・ラヴクラフトの「闇にささやくもの」はもちろんですが、Z級のホラー映画「新・死霊のしたたり」のフレーバーを大いに取り入れていることをお断りしておきます。



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