TRPG&GameBook TITAN




ファイティング・ファンタジー
S・ジャクソン著

シリーズ名と紛らわしいが、仕方が無い。ちなみに正式日本語タイトルは「スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー」である。

この作品はゲームブックではない。れっきとしたTRPGのルールブックである。
これまでゲームブックで培われてきたタイタン世界を、本格的にTRPGでプレイできるものとして、満を持して発売された。
しかも作者は大御所スティーブ・ジャクソン。
期待しないほうがおかしいというものだ。

・・・で、内容だが・・・
実のところ化夢宇留仁にとってはあまりよろしくなかった。
もちろん基本はおさえている。
ゲームブックしかやったことが無い人や、TRPGは初めての人でも分かりやすく、かつ楽しめるように工夫はされているし、ゲームブックのシステムをベースにしたルールにしても、破綻することなく綺麗にまとまっている。
・・・・
そうなのだ。
どうも綺麗にまとまりすぎているのである。
あのジャクソンがFFの世界のTRPGを作った!そう聞いて化夢宇留仁の期待したものは、ジャクソンらしい仕掛けの施された、驚かせてくれるゲームだったのだ。
そう考えると、ルール的にはほんとにゲームブックのシステムそのままで、TRPGらしいところと言えば、マスタリングに関しての記述があるくらいで、それもルールと言うよりも心構えに近いものだ。
シナリオは二つ入っているが、初心者向けの(これは仕方が無いが)ダンジョン探索型で、舞台ももう一つFFらしくない感じ。
またFFのTRPG化と言われ、ダンジョンなどの危険の只中以外の部分、つまりゲームブックで表現されていない部分も楽しめるものと思った訳だが、特にそういう部分のルールがあるわけでなく、これと言った記述も無い。
全体的に肩透かしをくったような感じなのだ。

そういうわけで、今ひとつ面白みにかける本である。
だからプレイもほとんどされていない・・・・・・ということはない(笑)!
むしろ化夢宇留仁やその友人達の間では、最も多くプレイされているTRPGの一つである。
これは今まで書いてきたことと矛盾しているようだが、そうではない。
この本の真の価値は、その存在自体にあったのだ。
それまでゲームブックを楽しんでいた化夢宇留仁は、本自体だけでなく、その世界観も楽しんでいた。
だがTRPGでその世界を歩いてみようとはしなかった。
歩いてみたいとは思っていたし、TRPGは勿論昔からやっていた。
つまりきっかけが無かったのだ。
本書はそのきっかけを作るのに役立った訳である。
またルールがシンプルすぎるという点は、各自がプレイ時に勝手にルールを考えたり、またはルールなんてあってなきのアドリブプレイが繰り広げられる土台として役立ったのだ(笑)!

昔友人たちが集って2〜3時間ほど空いたときなど、FFのリレーマスターゲームをプレイするのは定番だった。これは一人30分マスターを受け持って、そうでない時はプレイヤーとして参加するというもので、先の読めない展開とアドリブの面白さ、そして最後のマスターが苦労してエンディングに持ち込む様子など、すごく面白い。
これから始めようという時、誰一人本書を持っていない場合も多々あった(汗)。
それでもゲームになってしまう懐の広さ(?)もいい感じである(笑)。

こういう遊びが出来るのも、本書がシンプルな内容で、かつTRPGとして遊ぶという方向性を示してくれたおかげだと言えるだろう。
ありがたい本である(笑)。

 

 

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