◆あらすじ◆

 誰もが知っている『ドラえもん』の物語から十年の月日が流れた。
 久し振りに再開したのび太達であったが、相変わらず子供っぽいのび太に対して、他の仲間達はすでに社会人や大学生として違う世界を生きていた。 自分と仲間達との間に隔たりを感じるのび太は、将来のしずかちゃんとの関係に不安をおぼえる。
 一方、そんなのび太の個人的な感情をよそに、ドラえもんの二十三世紀では恐るべき事が進行していた。
 ユートピア的な世界を好まないクトゥルフ神話上の旧支配者「ニャルラ=トテップ」(*1)の手によって、未来の歴史が変えられ、酸性雨の降る混迷した未来世界に変えられてしまったのである。時間犯罪を防ぐタイムパトロール隊(*2)も必死の抵抗を試みるが、ついにその存在を歴史上から消されてしまう。
 変わってしまった未来ではタイムパトロール隊のかわりに「時間巡ら隊」という邪悪な組織が存在し、彼らはドラえもんやのび太たちを時間犯罪者として二十三世紀に連行する。そこでのび太たちは処刑されかかるが、現地のファシスト政権に反抗するレジスタンスの手により救出される。
 だが、ジャイアンとスネ夫は逃亡中にはぐれてしまい、しずかちゃんは謎の団体「ハスター教団」に捕らえられてしまう。
 残されたのび太達はアナーキストと勘違いされ、少女活動家ティームと知り合う。そしてバラ色のアナーキズム生活に傾向して、みるみる混迷した二十三世紀に同化してしまい、のび太のしずかちゃんへの思いは失われていく。
 それを懸念する出来杉は、「ハスター教団」がクトゥルフ神話と関係があることを発見し、単身教団に乗り込むが、逆に「ニャルラ=トテップ」の策略にはまり、捕らえられてしまう。
おりしも、レジスタンスのアジトが「時間巡ら隊」のガサ入れを受け、ティームは凶弾に倒れる。のび太は彼女への淡い恋心も消し飛んで、苦悩の末にようやく自分のすべき事に目覚める。
 かつての仲間、そしてしずかちゃんを救い出すために、のび太はドラえもんと共に「ハスター教団」へ正面から殴り込む。そして、大乱闘の末に、あわや怪物との交配に使われんとするしずかや出来杉を救い出すが、「時間巡ら隊」に追い詰められ、八方塞になる。しかし、そこに出現する元の未来世界のタイムパトロール艦!それは、かつてのタイムパトロール隊が最後の手段として歴史の変革から逃れて温存していたパラドックス部隊なのだ。
 のび太達全員はタイムパトロール隊に救出され、もう一度歴史を修正して、かつてのユートピア二十三世紀にするために過去に逃げようとするが、「ニャルラ=トテップ」の時間を超越した力によって阻まれる。やがて駆け付けた「時間巡ら隊」の大艦隊の攻撃により、のび太達は息絶え、船は大爆発して時間の歪みに飲み込まれてしまう。
 デッドエンドである。
 しかし、ただ一人、人類の滅び去ったはるかな超未来に吹き飛ばされたしずかは、そこで超未来の「ニャルラ=トテップ」に対して人類を救うよう説得する。人類は頭が悪いからちょっとイジワルされただけで自ら全滅の道をたどってしまう。ユートピアぐらいの能天気な世界でちょうどいいんだと。
 実は、寂しがり屋の「ニャルラ=トテップ」は決心し、かつての「ニャルラ=トテップ」を叱りつけて、歴史を逆行させる。
 ”あとは野となれ山となれ”
 そして、すべてこの物語は無かった事に。
 当然、のび太に残されたものはいつものぐうたらな生活の再開である。
相変わらず、しずかとの関係に不安を感じつつもあるが、この生活が彼にとってのユートピアなのだ。

END

(*1) 「ニャルラ=トテップ」
      クトゥルフ神話上の悪魔的存在。混迷した世界を作るため、裏から人類を操る。クトゥルフ研究家の(マニア)の間では、アインシュタインに原爆を作らせたのも彼の悪巧みだったというのが定説である。

(*2) タイムパトロール隊
      ドラえもん(原作)に何度か登場する歴史を守る正義の人達。原作ではいつもドラえもんのピンチを救っているが、何故、二十三世紀のドラえもんが二十世紀ののび太と暮らしていることに何も言わないのか、ドラえもんマニアの間でも謎とされている。この映画でも謎のままにしておいた。
     

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