ストレフォン皇帝陛下の暗殺以来，帝国の分裂と内戦に関する無数の情報がデネブ領域にもたらされいる。各情報の詳細については目下海軍情報部において分析中であるが，帝国中央から離れたスピンワード宙域は事態を静観し，外的からの自衛に努めることが得策であると考えられる。

　161-1117までに，スピンワード宙域艦隊に所属する番号艦隊の全てが，ノリス公の指揮に従い作戦行動を行うことを確認した。宙域防衛計画の対象となる主要高人口世界は下表に示す通りであるが，スピンワードマーチ宙域艦隊の再編成はこれらの地勢を考慮の上実施されねばならない。現在の宙域人口は2390億，年間海軍予算は92兆クレジット。

　宙域艦隊としては，高テクノロジーの大規模造船設備を持つトリン及びグリッスンがアスラン国境に近いことがおおいに懸念される。

　宙域艦隊再編命令（151-1117，宙艦令第525-1117号）に従い、宙域内の各艦隊は5つの方面艦隊に別れ艦隊兵力の再編成の為の移動を開始した。各グループは艦隊決戦を主任務とする基幹艦隊と側面援護に当たる警戒艦隊から構成されている。ゾダーン方面に艦隊主力を配置したが，戦況の進展に伴い戦力を抽出していく必要があるだろう。宙域予備艦隊はモーラに配置された。

　内乱を最期まで生き残るスピンワードマーチ宙域が果たしてどの程度の軍事力を有しているのかを試算してみることにしよう。

　言うまでもなく，帝国海軍の艦艇は市民の血税によって建造されるが，帝国市民一人当たりの海軍予算の支出額は，「１兆クレジット艦隊」に示されているように，年間Cr500である。

　世界規模を示すUWPはLog(人口)でありコード9及び10の高人口世界が重要な意義を持つ。表はスピンワードマーチ宙域の高人口世界と，具体的な人口を抜き出して示したもので，人口の総計は2390億人となる。

　実際の海軍予算の計算には，「１兆クレジット艦隊」に示されているように，政治形態による税収率の変動や各星系間における貨幣価値の変動などを考慮しなければならない。帝国籍のスピンワードマーチ宙域全世界についてこれらの変動係数を考慮し予算額を合計すると，年間92兆Crという数値が算出される。

　高人口以外の世界では，全予算が星系海軍の警備艇や防衛施設の整備に当たられると仮定すると，その額は減じられ87兆Crになる。帝国の国力がいかに限られた高人口世界に依存しているかが分かる。

　この額から帝国海軍の上層部が上納金として1/3を抜き，各星系，星域海軍への地方交付金をさっ引いていくと，実際の建造に当たられる予算は年間50兆Crに減少する。

　ここで艦齢40年を就役限界とし，単年度建造予算をAとすると，艦艇の年間維持費の合計は0.1×40×Aで4Aとなる。よって年間新造予算は10兆Crと求まる。

　中間子砲搭載の巡洋艦を主体に艦隊戦力を整備した例を示すと下記のようになり，これを20年分合計し編成したのが編成表である。これらが第1線級の艦であり，残りの20年分は予備艦隊を編成していると考える。
　ただし，これには第5次辺境戦争による損失を考慮せねばならない。同戦争で60%の艦が失われたと仮定すると，実際には単年度建造数に8年が乗じられる。

　一方，これらの艦の建造に必要な造船設備であるが，「１兆クレジット艦隊」に従い排水素t毎の建造期間を考慮して試算しておくと，建造スペースとして17,169,231tが必要になる。ライラナー，モーラ，グリッスン，トリンの高テクノロジー，高人口世界の建造スペースの合計は39,500,000tであるから，定期整備の艦がいることを含めても，全ての艦を最新型として建造できることが分かる。

　なお試算に用いた宙域データは「Heaven&Earth」によった。