ラシュシュをこえろ! 従者ロボット特集 ナアシルカのラシュシュ・シリーズと言えば、言わずと知れた従者ロボットのベストセラーだが、安くて1MCr近い価格の ロボットを、「帝国で最もありふれたロボット」とか、「中流家庭向け」とするナアシルカの宣伝には、疑問を感じる人が多 いのではないだろうか。本当のところ、ラシュシュの性能は平凡であり、決して値段に見合うほど優秀ではないと思われ るのだが。しかしそれでも、ラシュシュ・シリーズが家庭用の従者ロボットのベストセラーであるのは間違いない。 今回は、こうした消費者をラシュシュの呪縛から解放すべく、ラシュシュ以外の優秀な従者ロボットを紹介したい。 デレ・コンピュータ社 フルハウス14型 TL14 Cr33,945 重量=139.58kg 容積=96リットル 外枠型 知力=1 教育度=5 敏捷度=6 筋力=30 燃料電池=60kwh 燃料= 9L 活動時間= 36時間 移動システム= 歩行 耐久値= 19/48 腕= 軽量腕*1 中量腕*1 頭部= 20% x1 通信機50km, 触覚センサー, 動力インターフェース, 頭脳インターフェース, 聴覚センサーx1, 視覚センサーx1 音声合成装置 低データ型 基本限定命令 CPU= 感情表現 従者-2 スチュワード-2 記憶装置= 清掃-1 現在のところ、最安の家庭用ダムボット。頭脳部分の製造工程を改良すれば、20445Crまで価格を下げることも出来 るとメーカーは説明する。知力が低いため話し相手としては不自由するが、一般家庭での家事補助には全く問題はな い。 「980,000Crもするラシュシュ・モデル2を、『廉価版』と称するなんて、ナアシルカの連中の神経を疑います。」 デレ・コンピュータ副社長(販売担当)ツグノブ・モリタ氏の語気は荒い。 「ラシュシュ・モデル2を『貧乏人のラシュシュ』と呼ぶ連中も同様です。貧困がどのようなものか、分かっていないくせに 貧乏という言葉を使います。たしかに、このフルハウスも本当の貧困家庭には買えないかもしれません。しかし、家庭 用ロボットは生活レベルを向上させてくれます。いいですか、例えば、家事をロボット任せにできるようになった奥さん は、その余った時間、働いて収入を得ることが出来ます。ロボットが晩御飯を作ってくれているなら、帰宅時間を気にせ ず、『ちょっと残業』も可能です。いずれにせよ、家事に取られていた時間の分、収入は増えます。このロボットなら、何 ヶ月かで元が取れるのです。しかし、ラシュシュシリーズでは元は取れないのです。」 ポンダ技研工業 セバスチャン TL14 Cr259,100 重量=162.106kg 容積=120リットル 箱型 知力=6 教育度=5 敏捷度=15 筋力=46 燃料電池=75kwh 燃料= 10.8L 活動時間= 36時間 反重力 推力= 300kg 駆動推力= 0.850640939 耐久値= 24/60 装甲=2メッシュ 腕= 中量腕x2 頭部= 20% x1 通信機500km, 触覚センサー, 動力インターフェース, 頭脳インターフェース, 基本センサーパック, 味覚センサ ー, ビデオレコーダー, 音声合成装置 低自律型 上級命令 CPU= 感情表現 従者-3 スチュワード-3 医学-1 反重力機器-2 記憶装置= 清掃-1 こちらは、知力以外の性能はほぼラシュシュモデル2に匹敵する反面、価格は三分の一以下のポンダ技研の「セバス チャン」。移動システムに反重力を採用しているため、ロボットにつきまとう、重さで家屋の床を傷つける問題とは無縁 である。価格は26万Crであり、デレ・コンピュータのモリタ氏による生活レベル向上理論には適合しないかもしれない が、それでもラシュシュに比べればお手ごろ価格と言える。 ポンダ技研ロボット部門技術主任アブラハム・シュタイン氏は言う。 「ラシュシュシリーズの高価格は、主として電池動力に起因しています。ナアシルカは安全性を謳っていますが、きちん と密閉してある燃料電池は蓄電池並みに安全です。ロボットが歩いているような高TLの世界では、水素燃料もありふ れていますし、補給の問題もないです。水素燃料の価格が電池への充電の電気代を上回る可能性もありますが、電池 はいつか弱ってきます。そうなってくると交換が必要になり、かなり高くつくことになります。ラシュシュは頻繁に充電が必 要ですから、電池が弱るのも早いでしょう。それから、バッテリー液は猛毒ですが、燃料電池の水素は無害です。電池 が安全と言うわけではありません。」 DKロボテック 「萌え」コンパニオンロボットシリーズ さて、近日発売予定のこれらのロボットは、フルハウス14とは違った、ラシュシュを挟んだ別の対極にあり、ロボット 技術の一つの頂点を示す製品である。極めて高価であり、従者ロボットとしても有能だが、ラシュシュにはない別の「付 加価値」がある。少女を模した擬似生物型、「抱っこ用」に体重を軽くするための反重力装置、優秀な頭脳、自由に姿 形を変更できる機能、「怪しい装備」など、DKロボテック社の先代擬似生物ロボット「アダリー」シリーズの技術を踏襲し ているのである。 つまるころ、DKロボテックなら、いつかは作ってくれると期待されていた従者ロボットである(そして、「従者」という言葉 に付きまとう、あまりよろしくないイメージや妄想を具現化している)。また、モス博士の言う「脳内補完技術」により、脚 部ユニットを最低容積以下に小型化することに成功。また、同じ技術により、実物はカタログの数値よりも小柄である。 残念ながら「怪しいワザ」プログラムは実装されていないが、清掃プログラムと引き換えに搭載可能となっている。 まずは、DKロボテック社の販促用パンフレットをご覧いただこう。 ドジッ娘 TL15 Cr7,971,090 重量=94.93575kg 容積=67.1リットル 擬似生物(人類/少女) 知力=10 教育度=5(上限13) 敏捷度=15 筋力=13 燃料電池=30kwh 燃料= 2.4L 活動時間= 24時間 反重力 推力= 110kg 脚2 耐久値=13/34 装甲=1ジャック 腕= 軽量腕x2 頭部= 12.5% x1 聴覚センサーx2, 視覚センサーx2, 味覚センサー, 怪しい装備x2, 触覚センサー, 高感度触覚センサー, 音声合成装置, 匂い放射器, 嗅覚センサー, 動力インターフェース, 頭脳インターフェース, プログラムインターフェース, 通信機50km 高自律型 上級命令 CPU= 感情表現 従者-3 スチュワード-3 反重力機器-1 運動-3 萌え(安全ドジッ娘運動)-1 記憶装置= 演芸-1 心理学-1 清掃-1 決めゼリフ:「きゃあ!」「私ってダメね…」 ドジッ娘。究極に保護本能をくすぐる言葉です。しかし、フィクションの世界ではともかく、現実にドジばかりされると、ゲ ンナリするばかりか危険ですよね。しかし、 DKロボテックの「ドジッ娘」なら大丈夫。彼女の反重力システムと運動制御 プログラムは、どんなにずっこけても、手にしたコップの水さえこぼしません!壊れ物を棚から叩き落しても、落下する 前に受け止めます!料理を焦がすときは、焦げても差し支えない材料だけを焦がしてくれます! こんなに安全な、ド ジッ娘との同居生活。あなたの夢がかないます。 注意:安全ドジッ娘運動機能を解除した場合に生じる、人命遺失も含むいかなる損害にもDKロボテック社は賠償義 務を負いません。 ツンデレ TL15 Cr7,256,290 重量=93.36075kg 容積=65.15リットル 擬似生物(人類/少女) 知力=10 教育度=4(上限11) 敏捷度=15 筋力=13 燃料電池=30kwh 燃料= 2.4L 活動時間= 24時間 反重力 推力= 95kg 脚2 耐久値= 13/34 装甲=1ジャック 腕= 軽量腕x2 頭部= 12.5% x1 聴覚センサーx2, 視覚センサーx2, 味覚センサー, 怪しい装備x2, 触覚センサー, 高感度触覚センサー, 音声合成装置, 匂い放射器, 嗅覚センサー, 動力インターフェース, 頭脳インターフェース, プログラムインターフェース, 通信機50km 高自律型 上級命令 CPU= 感情表現 従者-3 スチュワード-3 反重力機器-1 歩兵地上戦闘-1 萌え(ツンデレ思考)-1 記憶装置= 演芸-1 心理学-1 清掃-1 決めゼリフ:「か、勘違いしないでよね!」「あ、あんたなんか!」 ソロマニ伝統の理想的女性像を踏襲した、最強のコンパニオンロボットです!説明は要りません。素直じゃない感情 表現に加えて、歩兵地上戦闘技能により、安全かつ可愛らしくあなたに暴力さえ振るってくれます!! 注意:DKロボテック社は、性別によるいかなる差別にも反対しています。現実の女性に対して同じ振る舞いを求めた 場合に生じる、いかなる損害にも賠償責任は負いません。 素直クール いいんチョさん TL15 Cr8,486,590 重量=94.18575kg 容積=67.75リットル 擬似生物(人類/少女) 知力=12 教育度=4(上限14) 敏捷度=15 筋力=13 燃料電池=30kwh 燃料= 2.4L 活動時間= 24時間 反重力 推力= 95kg 脚2 耐久値= 13/34 装甲=1ジャック 腕= 軽量腕x2 頭部= 12.5% x1 聴覚センサーx2, 視覚センサーx2, 味覚センサー, 怪しい装備x2, 触覚センサー, 高感度触覚センサー, 音声合成装置, 匂い放射器, 嗅覚センサー, 動力インターフェース, 頭脳インターフェース, プログラムインターフェース, 通信機50km 高自律型 上級命令 CPU= 感情表現 教官-1 従者-3 スチュワード-3 反重力機器-1 萌え(クールに恥ずかしい台詞)-1 記憶装置= 演芸-1 心理学-1 清掃-1 決めゼリフ:「愚問だな。お前のことを嫌いなはずはないだろう。」 「お前に愛されて、嬉しくないはずはないだろう。」 彼女はクラス委員長。冷静で知的。非の打ち所のない優秀さを持つ。でも、恋愛には素直で直球勝負! 良いです ね!!素晴らしいですね!!! もーサイコーです!!!! 有能な「いいんチョさん」は、いかなる時でもあなたをサポ ートしてくれます。 なお、それぞれイメージはデフォルトであり、お買い上げの方には漏れなく、ギャルゲーや萌えアニ(ソロマニの伝統文 化)のメーカーとタイアップした整形キットを無料で添付いたします。理想のパートナーを作成してください。 ・DKロボテック社長 ダニエル・モス博士に聞く 「萌え」シリーズ発売インタビュー 記者:ええ、まずお聞きしたいのは、このような高価な擬似生物型ロボットを三タイプも発売する判断についてです。極 めてハイリスクと思われますが、どうでしょうか? モス博士:おっしゃるとおり、並みの擬似生物型ロボットでは冒険でしょうね。しかし、私たちには「アダリー」で培ったノ ウハウがあります。そして、今回は確実に売れる線だけを押さえました。まあ、シリア文化圏出身のあなたに「萌え」の 概念を説明すると長くなるのですが、とにかく、ソロマニ人なら確実に買ってしまう、文化的なバックグラウンドがあるの です。商業上のリスクはありません。また、技術開発という点だけでも非常に有用でした。 記者:確かに、驚嘆すべき技術です。では、それぞれの技術的特徴について、差し支えない範囲で教えていただけな いでしょうか? モス博士:まあ、一番簡単だったのは「いいんチョさん」ですね。一番最初に設計しましたし。単に優秀な頭脳を持つロ ボットであれば良くて、最大の難関も、恥ずかしい台詞を入力するのをプログラマーが嫌がったくらいでしたね。 記者:なるほど。 モス博士:次に難しかったのは、「ドジッ娘」です。要するに、いかに安全にドジを踏ませるか、これが大変でした。ソフト ウェアでも、ハードウェアでも。 記者:反重力装置の出力が大きいのは、そのためですか? モス博士:その通りです。それから、一番難しかったのは、「ツンデレ」でしたね。ハードウェア的に難しさはありません。 問題は思考回路なのです。要するに素直じゃない。人間なら、口ではとんがっていながらも、内心で相手の言うことを聞 くのは造作も無いことですが、ロボットにはこれが難しい。主人の命令に否定的な反応を示しつつ、実行する。簡単なよ うですが、実は極めて危険な要素をはらんでいるのです。命令を拒みつつも実行する、をプログラムすると、主人によ る真に危険な命令、例えば犯罪なんかの拒否すべき命令も、口では拒否しつつ実行する、という事態になってしまうの です。試作段階の同居テストでも、これが問題となりました。どうやって解決したかは、残念ながら企業秘密でして…。 記者:「ツンデレ」は高度なプログラムを実装しているのですね。しかし、そのわりに教育度評価がいちばん低いです が? モス博士:法的な問題でして…。戦闘プログラムを備えているため、民間向けの制限があるのです。 記者:なるほど。ところで、同居テストとおっしゃられましたけど… モス博士:試作段階ではかなりの悪夢でしたよ(笑)。特に、安全機能が不完全だった時の「ドジッ娘」との同居は(笑)。 記者:え、博士自らもテストを? モス博士:はい。 記者:では、どれが一番気に入りましたか? モス博士:私にとっては、どれも大切な娘です。優劣はありませんよ(笑) 記者:なるほど…。あれ、でも「素直クール」だけには愛称がありますね。何故ですか? モス博士:えっ? 記者:本当は、「いいんチョさん」が一番のお気に入りだったんではないですか?(笑)博士のような知的な方とは相性が 良さそうですし(笑)。 モス博士:うっ…。現在、医療プログラムを装備した「白衣の天使」や、教官技能を強化した「女教師」も試作段階に入 っています。ご期待くださいね。 なお、このインタビューの後、記者は光栄にもモス博士の四十五歳の誕生パーティーに招待された。その席上、博士 のご息女の同級生という女子高校生と出会ったが、知的で聡明な雰囲気の美人であり、モス博士とはかなり親しげで あった。しかしこの女性、容姿に関してはメガネ以外に共通点は無かったが、話し方や態度が、端的に言って「いいん チョさん」に酷似していたことを報告しなくてはならない。実は「いいんチョさん」が最初に試作されたのは、モス博士がこ の女の子を口説く練習のためだった、とは会場で聞かれたウワサである。博士は現在独身なので、二人の交際に年齢 差以外の問題は無い。シリア人の私にも、なんとなく「萌え」の概念が理解できた気がした。 広告
後書き 「萌え」コンパニオンロボットのイラストは、 萌える!アバターメーカー http://www.moeruavatar.com/ で作成したものです。ありがとうございました。 |