アーク級植民輸送船

タイプ: SB型植民船 TL15 MCr4014.557(3211.645)
船体: 6300/15750  排水素=7000  形状:1/流線形 装甲=58G
重量=122653t  総重量=142139.706t
パワ−: 386/515 核融合=69480Mw 航続=30/90
移動: 283/378 通常=2  473/630 ジャンプ=2
地表=190kph 最高=1000kph 巡航=750kph 移動力:0
通信: 電波式=星系内×3 レ−ザ−式=星系内×3 メ−ザ−式=星系内×3 
中間子式=星系内×3
探知機: 電子マスカー、電波妨害機=星系内×3、質量探知=1km×3
能動ESM=遠軌道×3、中性微子=10km×3、
受動ESM=遠恒星間×3 ESM妨害器=遠軌道×3
能動物体探知=並 能動物体追跡=並 受動質量探知=並 
受動エネルギ−追跡=並 受動物体追跡=並 
受動エネルギ−探知=易
攻撃:
粒子加速砲=090
ミサイル=B0
ビームレーザー=0×4
砲塔群
2
4
10
射撃可能
2
4
10
防御: DM+9
管制: コンピュ−タ=5/ファイバー×3  
 パネル=ホログラム型(リンク)×919  
 追加=ヘッドアップホロディスプレイ×2  
 環境=基本環境 基本生命 高度生命 重力プレ−ト 重力補正器 
エアロック×4
居住区: 乗組員=112(16×7)(艦橋:6、エンジニア3、維持・補修:5、
保安:5、飛行:9、指揮8、接客:3、医師:50)
専用室×76(乗員:56、一等:20)、二等寝台×1000
積載機器:95tシャトル×3
その他: 船倉=13013.7881kP 燃料精製装置(384時間) 
ミサイル格納庫=8000
燃料タンク(ジャンプ・核融合炉)=25012.8kP/14175kl 
目標サイズ=大 視認レベル=中

設定

1、武装輸送船
 アーク級植民宇宙船の原型は、第五次辺境戦争中に艦隊駆逐艦を武装輸送船に改装したものである。アーク級武装輸送船は、デノータム補給作戦用に投入された。当時、デノータムの軌道港は、ゾダーン海軍に制圧され、ゾダーンの通商破壊部隊の補給基地と化していた。帝国はイフェイトやリジャイナの防衛と通商破壊作戦の対応で手一杯で戦力に余裕が無かった。デネブ宙域の工廠で建造中の艦艇が揃う明年初めまで身動きができなかった。
ランス星域のデノータム(B739573-A スピンワードマーチ1815)には第336歩兵師団が地取り残されていた。ゾダーンの奇襲により軌道港を奪取され身動きができなくなったのである。第336歩兵師団は、ライラナーから動員した部隊である。帝国も見捨てることはできなかった。ゾダーンもデノータムを封鎖するだけで侵攻する意図はないようだった。人口30万、工業化もしていないデノータムには第336歩兵師団を養うだけの余剰生産は、存在しなかった。帝国は、犠牲を省みずに補給を継続しなわねばならなかった。
幸いにもデノータムは、ガスジャイアントの衛星であり、運用しだいで補給物資の投下を行なうことが可能だった。デノータムの海軍基地はライラナー方面で通商破壊活動を行なうゾダーン艦隊の補給基地となっていた。海軍基地は、デノータムを回る軌道港に設置されており、作戦しだいでは補給物資の投下も可能だった。帝国海軍は、戦線から抽出した護衛艦を用いて補給活動を継続していた。ゾダーンの惑星防衛艦の目を盗んで大気圏に突入し、補給物資を搭載したポッドを投下するのである。
帝国海軍は、アーク級武装輸送艦を補給作戦に投入した。アーク級輸送艦は、デノータムに強行着陸し第336歩兵師団の将兵を運び出すことである。この任務の為に用意された6隻のアーク級武装輸送艦が3隻の護衛艦艇と共に投入された。不意打ちとなった最初の作戦だけは成功したが、2度目の作戦ではゾダーンもSDBを増強しており、6隻の内の2隻が撃破され、2隻がデノータムに不時着した。最終的にはデノータムには、3000名近くの将兵が取り残され、地上制圧を試みたゾダーン軍を相手に防衛戦を行なった。余談ではあるが、不時着したアーク級武装輸送艦のクルーたちは地元住民の助けを借りて1隻だけアーク級武装輸送艦を修復している。核融合炉の出力も上がらず、兵装を使用できる状態ではなかったが、ゾダーンの裏をかき脱出に成功した。この事件は、後に映画化され「天かける箱舟」という題で上映され評判になった。

2、軍制と第336歩兵師団
 ライラナー陸軍第336歩兵師団がデノータムに展開していた理由は、帝国の軍制にある。帝国は大規模な地上戦に備えるために統合陸軍を有している。統合陸軍は、帝都に総司令部を持ち、宙域と星域に上級司令部を有している。星域内の騒乱や侵略に即応するために星域司令部の司令官は星域公爵が兼ねることが慣わしになっている。基本的に統合陸軍は、外征部隊であるが、固有の常設部隊を持たず、平時には司令部だけが維持されている。
 統合陸軍は、戦時には星域内の星系に対して保有戦力の供出を求め、派遣部隊を集成し師団や軍団を編成する。戦力を効率的に運用するために動員と同時に星系軍は戦力の統合陸軍派遣を命じられる。星系軍の将兵も統一陸軍の軍律に基づいて行動することになる。ソロマニ戦争の戦訓により、統合陸軍は旅団規模の小さな部隊を編合して編成されることになった。この方針によって統合陸軍は、星域政府を通して星系政府に旅団を基本単位とする軍組織への改変を要請している。統合陸軍の存在は、星域レベルであるが組織や文化の均質性を高める要因になっている。統合陸軍の編成によって星系軍は、類似した組織や装備を採用することを求められた。帝国の加盟国として星系政府は、統合陸軍への兵力派遣を拒むことはできず、国威発揚と自国の政治的立場を良くする為には派遣部隊の活躍を求めるようになった。
 余談が長くなったので話を戻す。統合陸軍に召集され、ジュエル方面に配備されるはずであったライラナー陸軍第336歩兵師団は、ゾダーンの急襲によってデノータムに取り残されてしまった。当時、ライラナー星域では厭戦気分が醸成されつつあり、第336歩兵師団を見捨てることは政治的にもできなかった。かといって救出を図るだけの戦力を集めることも難しく細々と補給作戦が継続されることになった。

3、テュケラ運輸
 第五時辺境船の集結直後、テュケラ運輸の情報機関ヴィーミンは、1120年代にはスピンワードマーチ宙域で大規模な星系開発事業の再開を予想していた。彼らの計算では国暦1118年にはスピンワードマーチ宙域の戦災復興事業は一段落し、短い景気後退を経て帝国は再び辺境の開発に乗り出すと考えられていたのである。戦前に計画が立てられていたフュラーキンの開発は再開されるだろうし、宙域経済の振興のために開発植民省が大規模な星系開発計画を実施することを当然と見なしていた。ヴィーミンは、すでにオルタレ・エ・シェ社のエージェントが市場調査のために動いていることも掴んでいた。
テュケラ運輸は開発事業の再開を見越して新たな輸送船を求めた。テュケラ運輸は海軍が扱いに困ってモスボールしたアーク級武装輸送艦に注目し、払い下げを受けた。偶然ながらアーク級武装輸送艦の設計コンセプトがアスランのイハトイ級輸送船に酷似していたことも評価の対象になった。払い下げによって植民宇宙船に類別されたアーク級は、1000名の入植者と13000tの物資を輸送できた。テュケラ運輸の政治力によって武装は残され、
海賊や内乱の脅威に晒される植民地の治安を維持するために必要と判断された。払い下げられたアーク級植民輸送艦は、1116年までは武装商船として2等寝台を外して国境外交易に投入されていた。1117年以後は、ヴァルグル海賊の跳梁するコリドー宙域での交易に用いられた。デネブ海軍にチャーターされ、コリドー兵站基地への遠征にも参加している。
1120年代、オルタレ社とヴィラニ系メガコーポとの間で資産交換が行なわれ、デネブ領とヴランド宙域の間で人と物の移動が行なわれた。アーク級植民輸送船はヴァルグルに制圧されたコリドー宙域を突破しての輸送業務に投入された。

4、反乱と植民政策
 〈反乱〉によってデネブ領は、戦時体制に移行し大規模植民計画は凍結された。その一方で長期化する戦乱に対応するためにメガコーポレーションは防衛できなくなった資産の移動や切捨て資産を安全な星域に集中させていった。この資産の集中は、メガコーポレーションの従業員や資産の移動を発生させた。テュケラ運輸は、資産集中に伴う大規模な恒星間移動に完成したばかりのアーク級植民輸送船を投入した。デネブ領のヴィラニ系企業の従業員や資産をヴランド宙域に運び、オルタレ社やLSP社の従業員や資産をデネブ領に輸送した。ヴァルグルに封鎖されたコリドー宙域を突破するには駆逐艦並みの武装を持つアーク級植民輸送船が求められた。
メガコーポの資産集中が一段落した1128年以降、デネブ領の安全地帯には、メガコーポレーションの資産集中によって多額の資本が流入していた。デネブ領に資産を集中させたメガコーポが持ち込んだ多額の資産は、インフレを引き起こすには十分なものであった。メガコーポは多額の現金を領内に持ち込んでいた。現金の過敏供給は、インフレの原因になる。だからといって安易な金利の引き上げは好ましくなかった。デネブ財務省は、メガコーポに多額の国債を押し付けることでこの事態を解消した。彼らに対する見返りとしてデネブ政府は、多額の資金を軍需生産と国内産業の振興に費やした。ヴァルグルやアスランとの戦いに多数の艦艇が必要であるし、奪回した地域の戦災復興にも多額の資金が必要とされた。特に工業基盤の拡充は必須とされた。1120年代にはコリドー宙域やデネブ宙域の核・回転尾方向からの難民が流入し社会問題と化していた
デネブ政府は、ヴァルグルやアスランの侵入阻止に手一杯で難民の対処を星域政府に一任していた。難民の多くは、高人口世界に送られていたが難民の扱いに差別が生じていた。
受け入れ先の星系とTLが同じか近い星系の出身者は就労の機会も多く容易に移民が認められたが、著しく異なる星系の出身者は就労の機会が少なかった。就労するにしても職業訓練が必要であった。移民局が難民の出身星系によって受け入れを拒む場合もあった。貴族たちの訴えによってデネブ大公は植民開発省に難民対策部門の設置を命じた。
新設された難民対策局は、一元的に難民を管理し、難民の受け入れ先を振り分ける権限が与えられた。基本的に難民と受け入れ先の間にテクノロジーギャップが生じないように難民の振り分けを行なった。国力の小さな星系にはODAが投入され、新たな開発事業が起こされた。植民開発省は、モノカルチャーが採用された。その星系でもっとも競争力のある産業に多額の資本を投入し開発を進めようとした。
1128年には、資産の集中による混乱から回復したオルタレ社が、低開発星系向けに融資を開始したこともあり、安全地域における星系開発が活発化した。辺境からの難民の流入が著しく減少した。恒星間交易の減少によって辺境から流入する難民が減少したのである。

5、呪われた交易
 デネブ大公と彼のスタッフは、ヴァルグルとの戦闘で戦災の著しい核・回転尾方向の諸世界の放棄を決断した。デネブ皇室会議のメンバーや官僚たちの中にはデネブ大公の決断を認めつつも、贖罪のために辺境の住民を救いたいと望むものたちも多かった。彼らだけでなく開発事業に関係する産業資本家たちの後押しもあり、勇敢な商人たちは辺境との交易に乗り出していった。彼らの多くは、辺境との交易を生業とする自由貿易商人や軍人上がりの古強者である。海賊まがいの者が多かった。
彼らが行う交易は、〈呪われた交易〉と呼ばれるものである。TLの後退した星系に安全地帯や周辺地域で生産された物資を運び、その世界から難民を連れ出す。慈善事業ではないから正当な報酬を受けることになる。安全保障費が嵩むために料金設定は高額になるが、受け入れるべきリスクであると考えられた。
彼らの仕事は乗客と彼らの荷物を難民管理局の基地に連れて行くまでである。そこで植民開発省から規定の補助金を受け取ることになる。デネブ領の有識者は、呪われた交易に従事する交易商たちを「奴隷商人」と呼んで蔑んでいる。

6、ガーランド商会
 1128年、星間傭兵〈シミター〉の司令、ヴィクトル・ガーランド大佐はテュケラ運輸から3隻のアーク級植民宇宙船の払い下げを受けた。デネブ植民開発省との支援を受けて辺境地域との交易に乗り出した。デネブ領の周辺地域に位置するイナー(A310736-E 1620)に基地を設け、辺境に安全地域や周辺地域で入手した商品を運び帰りには難民を輸送する事業に乗り出した。ガーランド大佐は、コリドー宙域を守備していた第1039艦隊の生き残りである。デネブ政府や海軍に知人も多い。
ガーランド大佐が手がける交易は、呪われた交易である。TLの後退した星系に安全地帯や周辺地域で生産された物資を運び、その世界から難民を連れ出す。慈善事業ではないから正当な報酬を受けることになる。安全保障費が嵩むために料金設定は高額になるが、受け入れるべきリスクであると考えられた。ガーランド大佐は自前の護衛部隊を有しており他の海賊まがいの連中に比べて紳士的であった。ガーランド商会の活動は1131年まで続き、おびただしい数の難民を運ぶことに成功した。1130年にはデネブ領が国境を封鎖しても彼らは、〈呪われた交易〉を止めず、1131年に消息を立つまで継続した。