The Best Weapon
47th stage ( Artillery
3 )
Indirect Fire in V Dist

最強兵器 決定戦
第47回(砲兵3)
間接射撃−超遠方

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MEGA TRAVELLER
 


 

野戦砲使い方
  超遠方(50km以内)への榴弾間接射撃


 メガトラに登場する野砲の中で、口径10cm以上の迫撃砲、 口径6cm以上の低初速砲/高初速砲、口径4cm以上の質量投射砲各種MRLは、超遠方(5km〜50kmの範囲)への間接射撃が可能です。
 当然ながら、超遠方における「間接射撃」も評価しなければなりません。

 ところが、超遠方における「間接射撃」は、遠方の場合と全く同じ方法で評価ができませんでした。
 と言いますのも、メガトラの間接射撃ルールをそのまま超遠方に当てはめると、 射撃精度が「異様に高く」なり過ぎてしまうのです。

 「間接射撃」の命中判定、難易度〈難〉(DMは〈照準〉技能)に成功すれば、 砲弾は狙ったマス(15m四方)にぴたりと命中します。
 この命中率は、〈照準−4〉技能(=DM+4)を持つ兵士が照準を行なった場合、 距離に関係なく58.3%という高確率になりました。
 「間接射撃」において、砲弾の半数が15mのマス内に収まることは、とても不自然な状況です。 射撃距離がよほど短いのか、あるいは、砲弾が知能化されているのに違いありません。

 ちなみにWikipediaの記述によると、半数必中界(CEP:砲弾の半数が収まる範囲)は TL8の120mm迫撃砲射程7kmで半径640m81mm迫撃砲2kmで75m155mm榴弾砲20kmで半径300mだとのこと。
 別の資料ですが、第一次世界大戦中の18ポンド砲は、射程4kmで80mという精度を得ていました。
 遠方(射程500m〜5km)ならばともかく、超遠方で15mのマス(=半数必中界7.5メートル)に収まるルールは、余りにも精度が高過ぎますね。

 そういった事情から、超遠方における「間接射撃」の評価方法をずっと悩んでいた訳なのですが、 最近になって、プレイヤーズ・マニュアルのp.75「距離表」に、大規模戦闘用として1マス=150mの尺度を見つけました。
 都合が良いので、命中判定にはこれを使います。
 超遠方(5〜50km
)における「間接射撃」は、 命中判定に成功した場合、砲弾が150m四方のマスに落ちた、とみなせば良いのです。
 この尺度を用いると、超遠方の射撃が(1マス=150mですから)射撃距離30〜299マスになって、とても楽になりました。
 それに合わせて、時間単位は1分とします。

 このシステムを使ったとしても、射程5kmと50kmの場合を比べると射撃精度が10倍も違ってきてしまう訳なのですが、 プレイの便宜上、こういった使い分けをすることにしました。





メガトラの榴弾射撃−超遠方


 1マス=150mのマスを使って、榴弾による「間接射撃」を評価してみましょう。

 150mマスの使用で問題になることは、致傷範囲の大きさが、1マスの大きさよりもずっと小さくなってしまうことです。
 ルール上は命中したマス(150m四方)全体に「巻き添え命中」の判定を行なうことになる訳ですが、 考察の44回「擲弾筒と迫撃砲」でも述べましたように、 致傷範囲の小さな兵器(口径2cmの榴弾)が、 大きな兵器(口径16cmの榴弾)と同じ致傷範囲を持っていることに、私は耐えられません。



 幸い、レフリーズ・コンパニオン(Referees Companion)には大規模戦闘ルールの項目が存在しており、 その中にはしっかりと間接射撃のルールも(中途半端ながら)記述されていました。
 そのルールを利用して、150mマスを用いた間接射撃について、考えてみましょう。

 その間接射撃の概要は、以下のようになっています。

         表1  被弾地域(Beaten Zone)の計算方法

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 メガトラの大規模戦闘ルールにおいて、複数の砲弾(榴弾)が着弾して、炸裂した範囲のことを、 被弾地域(Beaten Zone)と定義しています。

 その計算方法は極めて単純で、表1の左端、発射した砲弾数に対応した欄を探し当て、 その右側に書かれている数字の分、砲弾1発の致傷範囲を倍増するだけ。
 被弾地域の大きさは、一辺の長さが「倍増された致傷範囲」の正方形になります。
 例えば、致傷範囲30メートルの榴弾25発を用いたら、その致傷範囲の5倍=150メートル四方の被弾地域を作り出す、という訳で。
 砲弾数が半端な場合は、少ない方の数字に合わせることになっています。 砲弾数が20発であれば、25発の欄ではなく、少ない数字、16発の欄を用いるのです。
 今更ですが、150mマスを用いるのであれば、被弾地域の大きさが150m以上になるよう、調整すべきでしょう。

 しかし、左端の砲弾数は「整数Nの二乗」ですし、被弾地域の倍数は「整数N」そのまま。
 メガトラ世界の砲弾は碁盤の目のように、等間隔で綺麗に整列して着弾するようです。 まぁ、計算が楽になるのですから、それで構いませんが(笑)。

 ルール的には、この被弾地域の中に存在する目標は、すべて命中判定を行います。
 しかも、減衰なしの完全な「貫通力」です。
 前回の考察で、歩兵が身に付けている防具の有効性を評価した際の結論は、以下のようなものでした

 命中したマス(15mマスの中)でなければ、 「完全貫通」や「部分貫通」を得られない。
 よって、間接射撃はあまり有効ではない。


 しかし、命中した150mマス全体で、減衰なしの完全な「貫通力」を用いるのであれば、その前提が大きく崩れてしまいます。
 間接射撃の嵐を浴びたユニットは、とても悲惨な運命に陥ること、間違いありません。
 間接射撃は、とても強力なのです。



 補足しておきますが、低密度−被弾地域(Dispersed Zone)と、 高密度−被弾地域(Converged Zone)の違いは文字通り、被弾地域に降り注ぐ砲弾の密度が異なる、ということだけです。
 砲弾数が半分(その代り、被弾地域の大きさは2倍)になる、低密度−被弾地域に存在するユニットは、 命中判定の難易度がひとつ上がります(被害を受けにくくなりますが、基本の命中難易度は何処にも明記されていません。苦笑)。
 砲弾数を2倍(当然、被弾地域の大きさを半分)にした、高密度−被弾地域に存在するユニットは、 命中判定を2回行うそうです(その被弾地域内のユニットの死傷/破壊率が格段に上がります)。



 とは言うものの、上の表1のような書き方では今ひとつ、被弾地域の大きさが分かり難いままです。
 そこで、大規模戦闘に用いる150mマスの全体を被弾地域にするため、一体、何発の砲弾が必要なのか。 その砲弾数を求めてみました。
 その砲弾(榴弾)のテックレベルと口径ごとに分けてあります。

     表2 150mマスの全体を被弾地域にするため、必要な砲弾数

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 ぞれぞれのテックレベルにおける様々な口径の榴弾が、150mマスの全体を被弾地域にするために 必要な砲弾数を計算して、表2に示しました。

 榴弾の致傷範囲は、テックレベル5の致傷範囲を基準として、テックレベルが3上がる毎に+10メートル増えますので、 表2に示した榴弾の致傷範囲も、テックレベル3毎に区切りました。
 問題は、テックレベル5で致傷範囲を持たない、口径2〜4cmの榴弾です。 この榴弾の致傷範囲を「0メートル」と考えれば、その後、テックレベルの上昇に伴って致傷範囲は10メートルずつ増えますが、 この榴弾が致傷範囲を「持たない」と考えるならば、テックレベルが上昇しても致傷範囲は増えません。
 私は、この榴弾の致傷範囲を「0メートル」と見なして考察を進めましたが、そうでない解釈も有り得るでしょう。



 表2の「テックレベル5〜7」の範囲を見ると、 口径6cm8cmの榴弾で、必要な砲弾数の差が顕著です。
 これは、致傷範囲10メートルと20メートルの違いだとも言えるでしょう。
 致傷範囲の長さが2倍大きいのであれば、その面積は4倍になります。 必要な砲弾数は4分の1に激減しますから、致傷範囲の小さな小口径榴弾で10メートルの差は極めて重要になる訳です。

 テックレベルの上昇に伴って榴弾の致傷範囲は大きくなりますが、計算してみたところ、 致傷範囲55〜70メートルと、75〜80メートルは、必要な砲弾数が同じでした。 ですので、表を簡略化するため、その範囲の榴弾は異なる口径のものをまとめてあります。



 上記、表2の砲弾数を射撃速度で割り、必要な砲の数を求めてみました。

      表3 150mマスの全体を被弾地域にするため、必要な砲数

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  今度は、必要な砲弾数を、低初速砲の射撃速度(1分当たりに発射できる砲弾の最大値)で割ってみました。 150mマスを用いた大規模戦闘は、時間(戦闘ラウンド)の単位も1分ですから、 つまり、150mマスの全体を被弾地域にするため、何門の砲が必要になるか、ということです。
 とりあえず、低初速砲だけを比較しましたが、迫撃砲と高初速砲も同じような傾向が得られると思います。

 テックレベルによって射撃速度は大きく変わりますが、結論を先に述べてしまうと、どのテックレベルにおいても 口径8cmの低初速砲が、最も効率的です。
 数字を強調するため、口径8cmの数字を水色に変えておきました。 ご覧の通り、必要な砲数は、口径8cmで最小になっています。

 テックレベル5の8cm砲で150mマス1つ分の「標準密度−被弾地域」を作り出す場合、 必要な砲数は「3.6」でした。 およそ4門の8cm砲が必要だということです。
 同じ大きさの「被弾地域」を作るため、 16cm砲ならば7門、20cm砲で8門、30cm砲で18門が必要になるというのですから、8cm砲の効率が良く分かりました。

 テックレベル8の8cm砲になると、必要な砲数は「1.0」に減少します。 つまり1門の方だけで十分だということです。
 これは、射撃速度が毎分18発から24発に増えたことよりも、榴弾1発の致傷範囲が大きくなったことの影響が大きいでしょう。
 8cm砲1門で1マスの「被弾地域」を作れますから、テックレベル5と同じく8cm砲4門を備えた砲兵小隊は、 毎戦闘ラウンド(毎分)に4マスの「被弾地域」を作れる訳です。

 テックレベル11の8cm砲の場合、必要な砲数は「0.57」まで減りました。 つまり、1門当たり1.75マスの「被弾地域」を作り出せる訳です。
 8cm砲4門を備えた砲兵小隊は、毎戦闘ラウンド(毎分)に7マスの「被弾地域」を作れることになりました。

 最後に、テックレベル14の8cm砲になると、必要な砲数はわずか「0.30」です。 1門当たり3.33マスの「被弾地域」を作り出せる訳で、 8cm砲4門を備えた砲兵小隊は、毎戦闘ラウンド(毎分)に13マスの「被弾地域」を作り出せるのです。



 最も効率の高い低初速砲は、口径8cmのものだという結論が出ましたが、ある程度のテックレベルになれば、 オートキャノンやMRL、質量投射砲(マスドライバー)も登場します。
 特に質量投射砲は、毎分の射撃速度が「テックレベルの二乗×60発」(英文のエラッタで60倍に増えました)。 仮に、テックレベルが10だとしても、毎分6,000発の発射速度になります。 口径8cmの質量投射砲1門でも、1戦闘ラウンド(1分)で240マスの「被弾地域」を作れることになりました。
 必要な消費電力を何処から確保するのか、大きな問題を抱えていますが、洒落にならない威力です。



     表4 〈照準〉技能レベルによる、命中率とずれの分布
               難易度〈難:11+〉の場合

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 考察の46回「間接射撃−遠方」でも取り上げた、〈照準〉技能レベルによる、命中率とずれの分布、です。
 今回は1マスが150mで、砲弾(榴弾)1発の致傷範囲よりも大きくなりました。 そのため、隣接マスに着弾した砲弾は影響を及ぼしません。 狙ったマスに着弾した砲弾だけが、対象となるのです

 表4の下端に、命中率から逆算した必要砲弾数を示しました。
 150mマス1つ分の「被弾地域」を作るため、表2で求めた砲弾数の何倍が必要になるか、という数字です。

 残念ながら、命中判定の方法は、大規模戦闘ルールに記述されていません。 砲弾1発毎に命中判定のサイコロを振るのか(大規模になるほど大変な作業です)、 1マス分回の射撃を一纏めにして1回だけサイコロを振るのか、分からないのです。 後者だとすれば、判定がずいぶん楽ですね。

 サイコロを1回振ることさえ面倒だと思っている私は、いつもの期待値を使って評価しました。 単純に、1マスの「被弾地域」を作るために必要な砲弾数を増やすだけですが、 それだけの砲弾を発射しなければ、1マス分の「被弾地域」を作れない、とするのです。
 必要砲弾数が「12倍」になるDMなしの条件は論外ですが、「3.6倍」のDM+2、 「1.7倍」のDM+4、「1.2倍」のDM+6あたりならば、十分に実用的でしょう。
 やはり、貴重な砲弾を効率良く使うためには、〈照準〉技能に優れた観測班が不可欠なのです。





砲兵の有効な使い方


 さて、レフリーズ・コンパニオンに記述されてきた大規模戦闘ルールを応用し、間接射撃の有効性を評価してきました。
 はっきり言って、間接射撃は非常識なほどに強力です。 これを防ぐ手段は、まず存在しません(拠点防御兵器:Point Defence Weapon のルールが存在しますが、その効果は不明です)。
 間接射撃を無制限に行えるのであれば、砲兵だけでも戦争に勝てるでしょう。

 しかし幸か不幸か現実問題として、砲兵は極めて高価です。
 実際は、砲兵の消費する砲弾が(輸送と兵站の面で)極めて高く付くということなのですが、それ故、砲兵を使用できる局面は限られます。
 間接射撃を無制限に連続して行うことはできないのですから、 敵の歩兵数名を無力化するために、150mマス全体を「被弾地域」に変えるような真似は、慎むべきでしょう。




(1)対砲兵戦

 大規模な近代戦において、砲兵にとっての最優先攻撃目標は「敵の砲兵」です。

 砲兵の攻撃を防ぐ方法は、ほとんど存在しません。
 ですから砲兵は、古来からの法則「撃たれる前に撃て!」を実践しなければならないのです。
 具体的には、素早く移動して射撃準備を整え、間接射撃によって敵の砲兵を撃破。 その後、敵砲兵の反撃(間接射撃)を受ける前に再び移動する、ということの繰り返しになるでしょう。

 実際に砲兵が射撃している写真を見て頂けば分かるように、第一次世界大戦(初期)まで砲兵は、 何の遮蔽物もない平地に大砲を据え付けて射撃を行なっていました。 現代でも、機動性を重視する場合はそうなります。 大砲の移動や射撃準備、弾薬補給の手間などを考えると、その方が都合良いためなのですが。
 逆に考えると、堅固に作られた砲兵陣地は航空偵察などに発見されやすいという欠点を持ちます。 よほど上手く隠蔽しておかない限り、戦闘開始と同時に間接射撃の目標となるでしょう。

 それはともかく、こうした砲兵陣地において、少し離れたところに榴弾が落下したとしても、 その爆発(破片や爆風)から大砲や砲兵を守る術はありません。


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    図5 米軍(現代)の榴弾砲(低初速砲)射撃(Wikipediaより転載)

 上図の榴弾砲は、何の遮蔽物もない平地(砂漠)で砲撃を行なっています。

 こうした状況において、大砲や砲兵に対する「命中判定」の命中難易度は〈易:3+〉になります (私のハウス・ルールですが)。
 無力化率は97.2%ですから、150mのマス内に8門の大砲があったとしても、 命中判定を1回行なうだけで、その全てが無力化/撃破されてしまうでしょう。
 大砲自体の被害判定はまだ良く分かりませんが、大砲を操作する兵員が全滅すれば(その97.2%が無力化されてしまえば) その大砲は、それ以上の砲撃が不可能になる筈です。



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    図6 米軍(沖縄戦)のカノン砲(高初速砲)射撃(これもWikipedia)

 簡単な(と言っても、構築にはそれなりの手間が掛かっている)砲兵陣地です。
 正面からの攻撃(直接射撃)は、その多くが高い盛土で防げるでしょうし、正面や側面に着弾した間接射撃からもほぼ守られています。
 陣地の中に飛び込んできた砲弾や、頭上からの航空攻撃に対しては無力ですが。

 この写真のように、多くの手間を掛けて大砲設置面を掘り下げたり、あるいは、大砲の周囲を補強した盛り土で囲んだとしましょう。
 これだけの対策をして、ようやく「命中判定」の難易度は〈並:7+〉になると考えました。 大砲の上半分(主に砲身と照準器)は外に露出していますし、射撃作業を行なう砲兵達も体の一部が露出しているからです。 まだまだ、大砲は危険な状態にあります。
 砲兵が陣地の中に伏せていれば、砲兵自身は安全(命中率が難易度〈難〉)に変わるのでしょうが、当然の如く、射撃作業は続けられません。

 こうした状況において、命中判定1回分の命中弾があったとしたら、その150mマス内にある大砲の58.3%は一撃で無力化されます。 8門の大砲があれば最低でも4門、多くて5門が無力化されてしまうのです。
 追い討ちとしてさらに命中判定4回分の命中弾を送り込まれれば、97.0%が無力化されるでしょう。 つまり全滅ですから、砲兵は中途半端な陣地に籠るよりも、さっさと移動するべきだと思います。





(2)阻止攻撃

 さて、対砲兵戦の結果、敵砲兵の多くを無力化、あるいは、撃破できたものだとしましょう。
 すると今度は、敵の指揮系統や増援部隊を叩かなければなりません。 砲兵が狙うべき次の攻撃目標は「敵の増援部隊」なのです。
 できることならば指揮系統や補給拠点も潰したいところですが、通信設備や車輌、構造物に対する攻撃力はまだルールが分かりません。
 あくまで目標が、徒歩で移動/戦闘中の歩兵である、と考えて評価しました。

 そもそも敵の防衛線に穴を開けるためには、その防衛線を守っている敵部隊よりも大規模な友軍を、攻勢正面に集めなておかなければなりません。
 そのことを知られれば、敵部隊も同じように防衛線を増強しますから、友軍の集結を隠密裏に行うことは当然として、問題はその後です。
 戦闘が始まれば、防衛線の敵部隊は当然のように増援を要請するでしょう。 それらの増援部隊が到着して、防衛線を補強してしまえば、隠密裏に集めた友軍の数的優位を維持できません。 何としても、敵の増援部隊到着を「阻止する」必要があるのです。

 敵の防衛線の後方を攻撃する手段として、間接射撃は最適です。 狙ったマスにどれだけの敵部隊が集結していようと、間接射撃には関係ありません。 かえって敵部隊の密度が高ければ高いほど、間接射撃にとっては好都合だとも言えます。 敵部隊の集結場所や移動経路には、遠慮なく砲弾を送り込みましょう。

 問題は、敵部隊が移動中だということです。
 残念ながら、メガトラの大規模戦闘ルールにも、移動中の目標に対して行う間接射撃のルールが見つかりません。
 仕方がないので、これもハウス・ルールを作って対応することにしました。

        表7 移動目標が「被弾地域」に巻き込まれる確率

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 考えるまでもないことですが、歩兵や車輌は簡単に移動できます。
 砲兵のように、撤収に時間がかかる(口径8cmの低初速砲でも最低240秒=4分口径16cmならば最低540秒=9分)訳ではありません。 移動を決意すれば、すぐに歩いたり走ったりして、簡単に隣のマスへ(あるいは2マス以上離れた場所へも)移動できるのです。
 目標になった歩兵は、間接射撃が始まったターンに移動を開始して、目標となったマスから逃げ出してしまうかも知れません。

 仮に目標が砲兵であっても、その大砲が(準備時間の短い)小口径砲であったり、(準備時間が半分になる)車載式の自走砲であったり、 (対砲兵射撃を予期して)すでに撤収を始めていたような場合は、逃げられてしまう可能性があります。

 移動途中に「命中判定」を受ける確率について、簡単な計算をしてみました。
 最終的な移動距離と移動に費やす1マス当たりの時間が反比例すると考えましたが、 移動の始点と終点だけは、その時間を半分にしてあります。

 間接射撃の目標となっているマス「被弾地域」で移動を始めた、通過した、移動を終えたユニットは、 そのマスで過ごした時間に応じて、間接射撃の被害に遭う(=命中判定を行う)ことになるでしょう。

 例えば、とあるマスに歩兵部隊が待機していたとします。
 戦闘開始にタイミングを合わせて、敵の阻止攻撃が開始されました。
 数ラウンド後には、間接射撃が実行され、そのマスへ榴弾 (そのマスを被弾地域に変えるために十分な弾数)が降り注いできます。

 ところが同じ頃、その歩兵部隊は偶然にも移動命令を受けていました。
 間接射撃による榴弾が落ち始めた(着弾が始まった)戦闘ラウンドに、目標の歩兵は移動速度1で、隣のマスへ移動してしまいます。
 この場合、最終的な移動距離は1マスですから、 左端にある「砲撃目標の移動距離」は、「1マス」の欄を見てください。

 歩兵部隊は、移動の始点、今まで待機地点になっていたマスで、 50%の「命中判定」を受けてしまいました。
 移動途中で、しかも不意討ちですから、難易度〈易:3+〉の「命中判定」です。 歩兵部隊の半数(50.0%)は、97.2%の高確率で無力化されます。
 50.0%×97.2%=48.6%
 部隊の半分が失われてしまいました(汗)。

 一応、歩兵部隊は隣のマスへ移動できた訳ですが、人員の半分は死体となって、元のマスへ置き去りになっている、ということです。
 移動した先、移動の終点にも榴弾が降って来た場合は、移動してきた歩兵(51.4%の生存者)の半分(×50%=25.7%)が もう一度「命中判定」を受けます。



 別の例として、とある十字路(のあるマス)に、断続的な間接射撃が行なわれているとしましょう。 周囲の平地は天候のため泥濘状態になっており、車輌はもちろんのこと、歩兵が移動することも困難です。
 前線への増援部隊は、その十字路を通過しなければ戦闘に参加できません。 迂回していたら増援部隊の到着が遅れ、その間に防衛線が破られてしまいますので、 止むを得ず、増援部隊は榴弾が降り注ぐ中、十字路を強行突破することになりました(士気チェックの成功が必要だと思いますが)。

 その十字路は毎戦闘ラウンド、「標準密度の被弾地域」となっています。

 増援部隊(歩兵)は、移動速度2で突破を試みました。
 移動の始点は十字路の1マス手前、終点は十字路の反対側1マスの場所です。
 榴弾の「命中判定」を受ける場所は十字路のあるマスですから、「移動途中」の1マス目に相当します。
 最終的な移動距離が2マス、「移動途中」の1マス目ですから、 「命中判定」の確率は50%
 50.0%×撃破率97.2%=48.6%
 強行突破を行なっただけで、部隊の2分の1が消耗してしまいました。



 今度は、その増援部隊がトラックに乗っていると想定しましょう。
 トラックは非装甲ですから、乗り込んでいる兵士(歩兵)は装甲値の恩恵を受けられません。 ですが、トラックには移動速度のメリットがある筈です。
 このトラックが、移動速度6(=時速60km)で十字路を通過するとしました。
 最終的な移動距離は6マス、「移動途中」の1〜5マス目における「命中判定」の確率は16.7%です。
 16.7%×撃破率97.2%=16.2%
 トラック自体の消耗率はまだ評価できませんが、トラック上の兵士達は16.1%(6分の1)しか無力化されない(死傷しない)ことになりました。



 後方への攻撃ではありませんが、阻止砲撃には別の使い方もあります。
 味方の防衛線が、敵の攻撃を受けたとしましょう。 敵は、遠距離からの間接射撃で前線の味方砲兵を無力化し、今も防衛線を制圧しています(こうした使い方が定石ですので)。
 おまけに、敵は榴弾の中に発煙弾を混ぜているため、防衛線周辺には濃密な煙幕が立ち込めました。 恐らく、煙幕の中を敵歩兵が突撃して来ている筈ですが、それを見ることができないのです。 当然、間接射撃を要請することも出来ません。
 あるいは、攻撃を受けたのが夜間(夜襲)なので、闇にまぎれて接近してくる敵を見ることができません。
 こうした場合、味方は掩蔽壕の中に隠れ、敵歩兵が中に飛び込んでくるまで待つことしかできないのでしょうか。

 もちろん、そんなことはありません。 こうした場合も、砲兵はとても頼もしい援護射撃を行なってくれるのです。

 その名も最終防護射撃
 敵が居ても居なくても(見えなくても)関係なく、味方防衛線の正面へ大量の榴弾を撃ち込む戦術です。
 防衛線付近の味方砲兵は無力化されていますので、敵砲兵への反撃(対砲兵射撃)を行う余裕はありませんが、 防衛線付近に榴弾を撃つ程度ならば可能でしょう。
 メガトラのルールで可能かどうか、ちょっと判りかねますが、実際に行なわれている戦術ですから、多分、問題はないと思います。

 攻撃を受けている防衛線の正面へ榴弾を送り続けていれば、敵の歩兵部隊は前進できません。
 味方の歩兵部隊も制圧されて動けませんが、その間、敵の前進を抑えておけば良いのです。 上手くいけば、塹壕から飛び出してきた(突撃してきた)敵の歩兵を殲滅できるでしょう。
 問題は「敵が制圧射撃をしている間は、ずっと射撃を続けなければならない」ため、膨大な量の砲弾が消費されてしまう、ということですね。





(3)準備射撃

 3番目の攻撃目標は、敵の防衛線を構築する鉄条網や地雷原となります。
 メガトラベラーの個人戦闘ルールは、ユニットの移動能力がとても高いくせに、なぜか記述が少ない(軽視されている?)ようですが、 敵の移動を妨害する障害物は、戦闘において極めて重要な要素です。
 堀や土塁、塀、柵、鉄条網などの構造物によって移動を制限すれば、敵ユニットは容易い的になります。
 さらに敵の移動目的(味方への接近や迂回行動)を阻止できるのですから、味方にとってこんなに有難いものはないでしょう。

 しかし、敵の立場から見たら、これ以上に厄介な障害物はありません。
 それを排除/破壊するための砲撃が、準備射撃なのです。



 メガトラベラーの個人戦闘ルールには、鉄条網も>/FONT>、 鉄条網を破壊するためのルールも存在しません。
 今回も、ハウス・ルールを作って対応することにしました。

     表8 〈照準〉技能レベルによる、鉄条網破壊に必要な砲弾数

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 以前にも取り上げたことのある教本「砲兵戦術講授録(Warbirdsのホームページより)」によると、
 奥行10メートルで構築された防衛線(鉄条網)に、幅15メートルの開口部を切り開くためには、 口径10cmの榴弾で200〜600発、口径15cmの榴弾で100〜300発が必要だとのこと。

 数字に幅があるのは、射撃距離による増減です。
 射撃距離が遠くなるほど射撃の命中率(砲弾の収束率)は悪くなりますので、より多くの砲弾が必要になる、という理屈のようでした。

 この数値をテックレベル5の榴弾(口径10cmは致傷範囲20m、口径16cmは同30m)に置き換えてたところ、 これは「標準密度の被弾地域」を3回作れるだけの砲弾数になります。 〈照準〉の技能レベルによる命中率を加味するのであれば、必要砲弾数は口径10cmの砲で230〜691発。 15cm砲(ルール的には16cm砲とみなします)で90〜270発。見事に「砲兵戦術講授録」の記述と一致しました。

 という訳で、鉄条網を破壊するためには、 「標準密度の被弾地域」を3回作れる砲弾数が必要。
 だということにします。

 ただ、これだけの砲弾を150mマスに集中して撃ち込んでも、鉄条網には幅15メートルの開口部を切り開けるだけです。 残り135m分の鉄条網は残存し、当然のように機能を発揮し続けますので、ご注意ください。
 射撃距離が5km以内ならば15mマスのマップを使えますので、そのマス内の鉄条網は消滅した、でも構いません。 ただし、砲弾の消費量は150mマスと同じです。

 「網型に構築された鉄条網」ではなく、 「屋根型に構築された鉄条網」を破壊する場合、破壊に必要な砲弾数は3分の1にしました。
 構築が簡単な分、壊れやすいことを意味しているのでしょう。
 必要な「標準密度の被弾地域」の数は1回だけになります。





(4)支援射撃

 4番目の攻撃目標が、ようやく敵の防衛線(塹壕陣地や防御拠点)を狙った支援射撃になります。
 最前線で戦っている歩兵にとって、一番欲しいものが支援射撃なので射撃なのでしょうが、 これは砲兵にとって、一番、後回しにすべき仕事でもあるのです(苦笑)。

 そもそも、最優先の攻撃目標である敵砲兵を潰さなければ、砲兵自身の安全が確保できません。 そうならないにしても、戦闘を始めた味方歩兵の頭上に砲弾が振ってくる可能性が高いでしょう。 やはり、敵砲兵の殲滅は後回しにできません。

 また、阻止攻撃も重要です。 敵の増援を阻止しなかった場合、前進した味方歩兵は同等か、それ以上に補強された敵部隊と戦うことになってしまいます。 こうなると、支援射撃があっても勝利は難しくなります。 阻止攻撃の手抜きも出来ませんね。

 さらに、歩兵の前進を妨げる障害物の排除も欠かせません。 前進した歩兵の進路が鉄条網に塞がれてしまったら、歩兵の運命は決まってしまいます。

 という訳で、すでに述べてきた3つの目標をすべて撃破してようやく、歩兵の要求する支援射撃を実行できるようになりました。
 間接射撃は、とても強力です。
 「被弾地域(150mマス)」の中に存在する全ての目標は、 榴弾の完全な「貫通力」を用いて、「命中判定」を行うのですから、 無防備な歩兵ならば、一撃(1回の命中判定)で吹き飛びます。
 150mマスの中に、100人や500人の敵兵が居ても、すべてが吹き飛ぶのです。

 問題は、無防備ではない歩兵、つまり遮蔽物に隠れた(塹壕内に伏せた)歩兵でしょうか。
 前回の考察「46回 間接射撃−遠方」でも計算しましたが、 遮蔽物に隠れている歩兵を確実に無力化するためには、膨大な数の砲弾が必要となります。

 15mマス、および、150mマス内の目標を無力化するために必要な、砲弾数を以下の表9にまとめました。
 考察46回の表10に、150mマスを用いた場合の砲弾数を書き加えてあります。

     表9 特定の命中判定回数を得るために必要な砲弾数

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 分かりやすくするため、右端に「命中判定」の難易度と、その難易度での撃破率(無力化率)を示しました。
 特定の目標を間接射撃で撃破(無力化)するため、どれだけの砲弾が必要になるか、 その砲撃を誘導する、前進観測員(〈照準〉技能の持ち主)の技量毎に求めてみた、という訳です。

 「命中判定」の難易度は、考察の39回「個人戦闘5 手榴弾」で説明した通りですが、 間接射撃に相応しく、以下のように再定義しておきます。

 難易度〈易〉は、基本的に開豁地の目標や、移動中/戦闘中の歩兵に適用されます。
 残念ながら、移動中の「回避」は、榴弾の命中難易度を下げるためには役立ちません。

 難易度〈並〉は、援護物に隠れて戦闘中の歩兵に適用します。
 直接射撃の場合、遮蔽物に隠れているキャラクターは視認されることも、攻撃されることもありません。 唯一、自分のターンに遮蔽物から身を乗り出し、 援護物に隠れた状態とならない限り、安全なのです。
 しかし榴弾の「命中判定」は、戦闘ラウンドの終了時に行うため、 まず間違いなく、すべてのキャラクターが遮蔽物に隠れた状態となってしまいます。 それらのキャラクターは安全なままでしょう。これでは間接射撃の恐ろしさを実感できません。
 そこで榴弾の「命中判定」について、その戦闘ラウンド中、 一度でも援護物状態になったキャラクターは、ターンの終了時、遮蔽物に隠れていても 難易度〈並〉で「命中判定」を行うこととしました。
 つまり、塹壕(遮蔽物)の中に隠れているキャラクターは、 一度でも射撃や視認(索敵/探知)を行えば、危険な状態になるということです。
 ちょっとやり過ぎな感もありますが、この程度のルールを使わないと、間接射撃の脅威を再現できません。

 難易度〈難〉遮蔽物に隠れ、 その戦闘ラウンドの間、一度も身を乗り出さなかった歩兵に適用します。
 つまり射撃も視認もできないということで、その歩兵は戦闘に参加できないことになります。 もちろん、間接射撃の誘導(〈照準〉技能の使用)もできません。

 150mマスを使用する場合、間接射撃が着弾したマスとユニット(キャラクター)の居るマスは、同じマスになります。
 榴弾の爆発(炸裂)に対して、どのユニットが援護物状態にあり、 どのユニットが遮蔽物状態にあるのか、常識で判断してください。
 私は上記のような区別を用いています。



 ご覧の通り、〈照準〉技能のDMが小さい場合はとんでもない数の砲弾が必要になっていますが、 150mマスを用いた場合はDMが大きくても、それなりの砲弾数が必要だということが判明しました。
 〈照準〉技能のDMが「+4」の場合で比較しますが、射撃距離が5km以内の場合(15mマスを用います)、 遮蔽物に隠れた(「命中判定」の難易度が〈難〉の)目標を58.1%の確率で撃破するためには、 17発の砲弾が、96.9%の確率で撃破するためには、69発の砲弾が必要です。
 そして、射撃距離が5km〜50kmの範囲(150mマスを用います)になると、必要な砲弾数は58.1%の撃破率で1,088発。 96.9%の撃破率で4,352発が必要だ、と分かりました。

 砲弾の消費量については、後の章でも触れますが、はっきり言って非常識な数です。
 日露戦争から第二次世界大戦までの戦記やドクトリンを調べたところ、 歩兵1個大隊が担当する戦線(戦区)の幅は、300〜600mだとのこと(場合によっては幅1kmも有り得るようです)。
 ですから、幅150mの戦線(150mマス1つ)は、大隊の半分から4分の1が配備されていることになりました。
 最前線の塹壕線に配備されている部隊が、大隊の3分の1だとしましょう(3分の1は予備として後方に待機、残り3分の1は後方で休息中)。
 すると、砲撃目標となった150mマスの中に居る敵兵の数は、 1個大隊の6分の1から、12分の1(80〜40人)しかありません。 もちろん、もっと少ないことも有り得ます(敵軍が砲撃を警戒している場合は特にそうでしょう)。
 たったそれだけの人数を無力化するために、1,000発以上の砲弾を撃ち込むのは、流石に勿体無いですね。
 そのマス内にせめて500人(大隊規模)の敵兵が待ち受けているような状況でもなければ、これだけの砲弾を注ぎ込むことはできません。
 間接射撃は確かに強力なのですが、遮蔽物に隠れた目標を吹き飛ばすには、効率が悪いようです。

 だとすると、間接射撃は単なる虚仮脅しなのでしょうか。
 大規模な物量作戦を実施しなければ(それには潤沢な砲弾補給が不可欠です)、間接射撃は役に立たないのでしょうか。

 もちろん、そんなことはありません。
 間接射撃だけで塹壕内の目標を撃破しようと期待することが、そもそも無茶な話なのです。
 榴弾による間接射撃という新兵器も、相手が塹壕や退避壕を用意してしまえば、それほどの威力は発揮できません。
 敵防衛線の重要拠点(砲兵陣地や司令部)ならばともかく、最前線の歩兵陣地を間接射撃でひとつずつ潰してく作戦、 第一次世界大戦当時のような真似は、とても不経済なのです。

 米ソの砲兵隊は例外です。米軍は工業力の高いお金持ち国家で、人命の損失(歩兵の消耗)を極端に嫌っていますし、 旧ソ連軍は人命損失を嫌う以上に、兵隊の質(歩兵の教育と練度)を信用していませんから。





(5) 制圧射撃

 間接射撃は強力ですが、それだけで塹壕内の敵兵を撃破(無力化)することは、とても大変です。 というか、完全な撃破に要する砲弾数が膨大なものに成ってしまいました。

 この問題は、間接射撃が始まった頃から分かっていたことですので、当然、解決策も講じてあります。
 ですので間接射撃は塹壕内の敵兵を制圧する(移動も射撃も視認もできないように、伏せさせる)だけに留め、 制圧した敵兵の無力化は、前進した歩兵に任せる、という方法を取るようになったのです。

 具体的には、前進する味方歩兵の前方(150mマスで1マスの距離)を「被弾地域」にして、 そのマス内の敵兵を制圧(隠れていない敵兵は、高い確率で吹き飛ばされます)。
 味方歩兵の前進に合わせて、「被弾地域」も同じ速度で前進。
 敵兵の潜むマスへ突入した味方歩兵は、制圧されている敵兵にトドメを刺すことになります。
 具体的には、頭を抱えて伏せている敵兵を背後から撃ち殺すとか、塹壕の中に手榴弾を放り込む、という行為になるでしょう。

 砲撃が止んだ時こそ敵兵の突入タイミングだから、それを待ち構えていれば良いだろう、という考えもあります。
 しかし、そういった兵士は小休止の後、塹壕に隠れていた敵兵が飛び出してくるのに合わせたタイミングで再開された砲撃に、 吹き飛ばされる運命を辿るでしょう。
 こういったフェイントを何度か繰り返しておけば、砲撃が止んだ瞬間に飛び出してくる敵兵は、確実に居なくなりますね。
 という訳で、制圧射撃は有効な砲撃方法となりました。

 制圧射撃の数少ない問題点は、外れた砲弾が少なくない確率で手前に着弾し、前進する味方歩兵を吹き飛ばしてしまう、ということでしょうか。
 このことが問題にならない訳ではないのですが、味方歩兵のすぐ前方に「被弾地域」を作らなければ、 味方歩兵の損害はかえって多くなる、という厳格な事実の下に、黙認されてしまっています。





(6) 間接射撃の「遅れ」

 「間接射撃」によって、移動する目標を攻撃することはとても困難なのですが、 それがどれだけ難しいものか、射撃の「遅れ」について考えてみましょう。
 プレイヤーズ・マニュアルの特別ルール、p.91、「長射程間接射撃」ルールには、こうありました。

 長射程火器は、要請を受けたターンにすぐ射撃を開始するわけではありません。
 射撃目標までの距離が「長距離」以内ならば、次のターンに射撃が開始されます。
 「長距離」より長い射程の射撃を要請した場合は、「長距離」を越える1距離帯につき1ターンの遅れが生じます。
 たとえば、軌道上の宇宙船に「地域間距離」の射撃を要請したら、 射撃が開始されるのは要請したターンの5ターン後です。
 要請を受けてからの4ターンが、射撃準備と、射撃が飛来するのに必要な時間なのです。


 上の文章中にある「長距離」は、「遠距離」のことです。
 困ったことに、プレイヤーズ・マニュアルやレフリーズ・マニュアルの中で、用語が統一されていません。
 私の独断で、Range「Long」を、距離帯の「遠距離」と訳すことにしました。

 「ターン:Turn」は、「戦闘ラウンド」のことだと思います。
 英文マニュアルにも「turn」と書いてありますから、何らかの意図があるのでしょうが、 もしかしたら1〜数戦闘ラウンド後の「自分のターン」を意味しているのかも知れません。
 その可能性も高いのですが、間接射撃の着弾が遅れている間に、間接射撃を行ったユニットが無力化/破壊されてしまった時に困ります。 着弾のターンが存在しなくなりますから。
 そのため、間接射撃の着弾=「命中判定」は、 戦闘ラウンドの終了時に行うこととしました(私のハウス・ルールです)。

 また、例によって誤訳が見つかりました。
> 軌道上の宇宙船に「大陸間距離」の射撃を要請したら、 射撃が開始されるのは要請したターンの5ターン後、
 という文章は、
> 軌道上の宇宙船に「地域間距離」の射撃を要請したら、 射撃が開始されるのは要請したターンの5ターン後、
 の誤りです。

 英文の該当部分には「range of regional」とありましたから、地域間距離で間違いありません。 大陸間距離の「遅れ」ならば、6ターンになる筈です。



 表10に、間接射撃の「遅れ」を距離帯毎に示しました。
 ついでに参考データとして、直接照準射撃と間接射撃の命中難易度も併記します。
 直接照準射撃は、テックレベル5〜8の火器管制型で、命中難易度が〈並:7+〉〜〈不可能:19+〉まで様々ですが、 間接射撃はテックレベル、距離帯に関わらず一定で〈難」11+〉でした。

         表10 距離帯による、間接射撃の「遅れ」

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 「間接射撃」によって、高速で移動する目標を狙うことは、とても困難です。
 敢えて移動目標を狙うのであれば、前述したように「無駄撃ち」を覚悟で、敵の予想針路上に砲弾をばら撒く以外にありません。



 とある道路を、歩兵部隊が行軍しているとします。
 歩兵の移動速度は1でした。毎戦闘ラウンドに1マスを移動している訳です。
 行軍中の歩兵部隊を敵の観測班(偵察部隊)が発見し、間接射撃を要請した、ということにしてみましょう。

 その歩兵部隊と、後方の敵砲兵との距離は、超遠方(5〜50km)でした。
 上の表10より、「間接射撃」の遅れは4ラウンド(=4分)です。 これだけの時間があれば、目標の歩兵部隊は(移動速度1でも)4マスを移動してしまうでしょう。
 ですから「間接射撃」も、それを見越して行なわなければなりません。 具体的には、目標になった歩兵部隊の移動方向、4マス先を砲撃することになります。

 間接射撃を要請してから着弾するまでの間に、歩兵部隊が移動方向を変えたり、移動速度を変えたりしたら、 (別の部隊がその場所へ来てくれない限り)間接射撃は自動的に外れます。
 道路や橋のように、移動ルートが簡単に予想でき、目標が長い縦隊で移動しているのでもなければ、なかなか役に立ちそうもありませんね。

 映画「エル・アラメイン」の中では、地雷原を通過中の敵部隊を間接射撃で殲滅するという話がありました (まず最初に、縦隊の前後を間接射撃で撃破。 砲撃の着弾点は徐々に縦隊の中央へ移動していき、最終的にはすべてを撃破できしてしまう。 左右に逃げた敵は、地雷原にやられてしまいました)。
 敵の移動方向を地雷や鉄条網で限定できるならば、移動中の目標でも間接射撃が有効になるようです。



 次は、砲弾の消費量について考えてみました。





砲弾の消費量


 第一次世界大戦以降、砲兵が戦場の主役となってからは、大きな問題が軍事関係者の頭を悩ませるようになりました。
 それは、砲弾の補給です。
 間接射撃は極めて強力なのですが、これまで述べてきたように砲弾の消費量が尋常ではありません。



 具体的な数値を見つけて、砲弾の消費量を求めてみました。

 日露戦争の奉天会戦において、日本軍は740門の大砲を集め、10日間の戦闘で34万発を発射しました。 1門当たり460発の消費量になります。
 第一次世界大戦のソンム戦で、イギリス軍は1,400門の大砲を用い、4ヶ月で砲弾を1,400万発も消費しました。 1門当たりの消費量は1万発です。1ヵ月で2,500発、1日平均で80発というところでしょうか。 実際は、1日で平均値の数倍を撃つこともあれば、全く撃たない日もあると思いますが(上記2つのデータは『第一次世界大戦』のページより)。
 別の資料から、第一次世界大戦の砲弾消費量は、1門1日当たり200〜300発だという数字も見つかりました。



 第二次世界大戦、1939年のポーランド戦において、ドイツ軍は140万発の砲弾を消費しました。
 投入した師団数が50個師団ですから、9月1日からの1ヶ月間で、1個師団当たり2万8千発の砲弾を消費したことになります。
 1個師団に所属している野砲の数は、およそ50門。 均等に割り当てると1門当たりの消費砲弾数は560発になりました。 対戦車砲や迫撃砲の消費弾薬を計算に含めると、半分の300発くらいになるでしょうか(私の推量)。
 1ヵ月の戦闘で、第一次世界大戦の1日分しか消費せずに済んだ訳です。 電撃戦が砲弾の消費を抑えるために考え出されたという説にも、これならば頷けます。

 同じ頃、某極東島国の規準によると、3〜4ヶ月間の戦闘のため、 準備すべき砲弾の備蓄量が2,000発だそうです(WarBirdsのアンスクより)。
 貧乏国家ですから、極力、砲弾を大事に使うようにするとのことですが、 2,000発も撃つと砲身が磨耗して撃てなくなる、というオチがあったりします。
 貧乏はイヤですね。



 どのぐらい、兵站(輸送や補給)の手間が増えるかというと、以下の表11に示したくらい、大変になりました。

     表11 各種野砲における、砲弾の必要な補給量(容積、重量、価格)

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 口径8cmの低初速砲16cmの低初速砲18cmのMRLそれぞれについて、容積と重量、価格の比較をしてみました(MRLの砲弾容積と重量は10倍しました)。
 右側には、兵站面の負担増(容積、重量、価格の増分)を比率で示してあります。



 一番上の数値は、砲1門だけを輸送する場合の容積、重量、価格です。
 これは考察46回の表3、表18で示した数字、そのまま(牽引式架台込みの容積、重量、価格)です。
 砲兵1個大隊は、通常、野砲12門を装備しています。
 ですから、砲兵1個中隊は野砲4門になりました。
 歩兵(1個中隊=130〜200人)や戦車(=10台前後)を運ぶ場合に比べて、実にこじんまりとした編成だと思いませんか。

 この数字に砲弾の容積、重量、価格を加えると、その下の数字に変わります。



 まずは、砲弾100発を一緒に運ぶ場合。
 第一次世界大戦の常識からして、この程度の砲弾では1日分の消費量も賄えません。 輸送部隊は1日に2〜3回、後方の補給拠点まで砲弾を取りに戻らなければならないでしょう。 あるいは、数日前から砲弾の備蓄を行なっておくか、です。
 それでも輸送量は、砲1門だけを運ぶ場合と比べて、容積で4.1〜5.2倍(MRLの2.1倍は怪しいので除外)、重量で1.9〜2.2倍になりました。
 容積はともかくとして、重量の約2倍が厳しいと思います。 大砲を運ぶのと同じだけの輸送力を、わずか100発の砲弾に割り当てなければならないのですから。

 その次は、砲弾300発を一緒に運ぶ場合。
 第一次世界大戦の砲弾消費量を規準とするならば、これでやっと1日分の砲弾です。 後方の弾薬工場から最前線まで、これだけの輸送力がなければ、砲兵が働けません。
 つまり、砲兵を最前線へ送り込むだけならば1.2〜7.9重量トンの輸送能力で足りるのですが、 砲兵が射撃を始めたならば、毎日4.2〜21.0重量トン (砲単体に比べて3.6〜2.7倍)の砲弾輸送が不可欠だということです。
 それだけの輸送力が使えない場合、砲弾を前線に備蓄する(輸送に時間を掛けることで)補うしかありません。
 適当な計算ですが、戦闘1日分の砲弾を備蓄するのに、3〜4日掛かるということになるでしょう。 1ヵ月の砲弾備蓄を行なって、ようやく7〜10日分の備蓄ができる訳で。
 砲兵の運用は大変だなということに、今更ながら、気が付きました。

 3番目は、砲弾1,000発を一緒に運ぶ場合。
 およそ3〜4日分の砲弾です。 某極東島国の陸軍は、これだけの砲弾で1〜2ヶ月を戦い抜かなければなりませんが。
 輸送力の大半(9割以上)は、砲弾の輸送に使われるようになってしまいました。 つまり、トラックが10台あったら、その内1台だけが砲を牽引していて、残り9台には砲弾しか積まれていないということです。

 4番目は、砲弾3,000発を一緒に運ぶ場合。
 2週間から1ヵ月分の砲弾です。宇宙船を使って恒星間を渡る場合は、この程度の砲弾が必要になるでしょう。
 輸送力は、容積で99.7%、重量で99.1%が、砲弾だけのために費やされています。 砲弾の山の中に、ほんの少しだけ、大砲が埋もれているといった感じでしょうか。




結論


 榴弾を用いた「間接射撃」は、 超遠方(5〜50kmの範囲)において、さらに強力な兵器となりました。
 「被弾地域」のルールによれば、150mマス内のすべての目標に対して、 完全な「貫通力」を用いた「命中判定」を行うためです。

 間接射撃に使用される榴弾(口径8〜16cm)の貫通力は14〜22で、テックレベルによって最大+5の修正が付きます。
 生身の歩兵はもちろん、非装甲車輌や軽装甲の戦闘車輌は「完全貫通」になりますし、 戦闘アーマー・レベルの装甲(装甲値10〜18)でようやく「部分貫通」として防げる程度。
 「被弾地域」内の歩兵や車輌は、確実に死亡/破壊のダメージを受けるでしょう。



 消費される砲弾の問題は、射撃距離の伸展と共に大きく増大しました。
 仮に、1マスの目標に4,000発の砲弾を撃ち込まなければならないとしたら、 その砲弾数は、砲兵1個中隊(砲数12門)が戦闘1日で消費する全弾薬の消費量に匹敵してしまいます。
 その1マス以外の目標を攻撃する余裕がなくなってしまう訳ですので、あまり好ましいことではありませんね。

 ですから砲兵隊は、対砲兵戦と制圧射撃、準備射撃、3つの砲撃だけしか行えません。
 最後の支援射撃を最後(目標の殲滅)まで行う余裕(砲弾の備蓄)は無く、簡単な制圧射撃だけで、 最後のトドメを前進した歩兵に任せなければならないのです
 この戦術は必然的に、前進した歩兵に大きな被害を負わせることになるのですが、 余裕(砲弾の備蓄)がない以上、仕方のないことでしょう。

 この問題、前進した歩兵が大きな損害を負わなければ戦線を突破できないという問題を解決するため、ついに戦車が登場します。
 これの考察は、次回に。





2011.12.18 初投稿。