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トラベラー宇宙の
戦闘艦艇一覧
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0.はじめに


 今回は「補助艦艇(Auxiliaries)」の続編です。

 海軍の戦闘力を構成する主力艦艇にも様々な艦種が存在しますが、その名称を聞いただけでは、 具体的にどんな目的のために建造され、どんな性能を備え、どんな任務に従事しているのか、分かり難いと思われます。
 そこで大臣様に、補助艦艇と同じように、主力艦艇についても艦種の一覧と簡単な説明文を纏めて頂きました。

 以下、大臣様の書き込みを転載します。



 今回は、補助艦艇に引き続いて、主力艦艇についてを取り纏めてみました。
 その設計概念と運用を御理解頂ければ幸いです。




 目次
    ※1.帆船時代
    ※2.戦艦(主力艦)
       (1)戦艦
       (2)巡洋戦艦
    ※3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)
       (1)ポケット戦艦・装甲艦
       (2)海防戦艦(モニター艦)
       (3)航空戦艦
    ※4.巡洋艦
       (1)重巡洋艦・大型巡洋艦
       (2)軽巡洋艦
       (3)防護巡洋艦・戦列巡洋艦
       (4)装甲巡洋艦
       (5)防空巡洋艦
       (6)艦隊巡洋艦
       (7)航空巡洋艦
       (8)水雷巡洋艦
       (9)偵察巡洋艦・遠距離偵察艦
       (10)仮装巡洋艦・通商破壊巡洋艦・補助巡洋艦・特設巡洋艦
    ※5.駆逐艦
       (1)駆逐艦
       (2)嚮導駆逐艦
       (3)艦隊駆逐艦
       (4)防空駆逐艦
       (5)護衛駆逐艦
       (6)水雷艇駆逐艦
    ※6.その他の戦闘艦艇
       (1)護衛艦
       (2)フリゲート
       (3)コルベット
       (4)水雷砲艦
       (5)水雷艇・魚雷艇・ミサイル艇
       (6)駆逐艇・駆潜艇
       (7)突撃艇
       (8)浮砲台
    ※7.海防任務艦
       (1)海防艦・装甲海防艦
       (2)砲艦・装甲砲艦・ガンボート・臼砲艦(ボムケッチ)
    ※8.航空母艦
       (1)正規空母・大型空母
       (2)軽空母
       (3)護衛空母
       (4)水上機母艦
       (5)運搬艦
    ※9.哨戒艦・警備艦・巡視艦艇・カッター
    ※10.蛇足的な航空機運用について
    ※11.補足事項(山中)
       (1)帆船の等級
       (2)戦艦の火力と防御力
       (3)戦艦と巡洋戦艦のサイズ比較
       (4)モニター艦の定義
       (5)航空戦艦の使い方
       (6)巡洋艦の進化論
       (7)駆逐艦の進化論
       (8)駆逐艦未満の戦闘艦艇
       (9)惑星防衛艦
       (10)トラベラー宇宙の航空母艦
       (11)トラベラー宇宙の護衛空母
       (12)トラベラー宇宙の商船改造空母
       (13)航空母艦の運用能力
    ※12.まとめ





1.帆船時代


 帆船時代に於いては、英国等級制度として、等級分けをされております。その区分は搭載砲数です。
 砲の大きさは関係なく、長距離砲あるいは大口径砲に偏向したり、近接火力重視型だったりして、一定の思想が統一されていた訳ではないようです。

 1等艦(砲数100門以上)、2等艦(砲数90門以上100門未満)、3等艦(砲数65門以上90門未満)が戦列艦といい、 海上戦闘での砲撃船の主力を務めます。
 これを主力艦といい、つまりは砲撃によって敵戦力を撃破せしめる艦種です。
 それ以下の4等艦(46門以上65門未満)と5等艦(32門以上45門)、6等艦(20門以上31門以下)をフリゲートといい、 小型をコルベットと呼称します。
 戦列艦よりも快速・小型・軽武装で艦隊決戦以外の場面で使用される艦種です。
 特に5等艦クラスは敵国家の商船団を襲って外貨獲得を担う通商破壊任務を担います。
 等級無しのクラスでは、砲数(16門以上32門未満)はスプールと呼称し、後の砲艦や海防艦の原型に相当します。
 それ以下の砲数(6門以上15門以下)はブリッグあるいはカッターと呼称し、 後の哨戒艦や警備艦などの原型になります。

                 ※11補足事項.(1)帆船の等級へジャンプ。





2.戦艦(主力艦)


 近代以降から現代は、帆船時代を踏まえて、以下の様な区分になります。

 主力艦とは、海軍に於いて、主力艦とは「海戦で戦力主力を務める艦種」です。
 近代では、戦艦と巡洋戦艦が主力艦に相当します。

 戦艦の中にも幾つか区分されますので、各種別に御紹介致します。




(1)戦艦

 艦種コードは「BB」。
 その設計思想は、まず火力と防御力です。
 その時代の所属する国家の技術力の「最大の砲撃火力」をまず考えます。
 最新鋭であればその時に建造できる口径の砲で建造されます。
 当初は打撃力をまず考えたので、大口径であることが前提ですが、 当初の戦艦つまり前ドレットノート級の戦艦は帆船時代の戦列艦の思想を継承し、大口径砲や長射程砲、近接火力砲が混在しています。

 が、ドレットノート級(1906年)では、単一口径砲で統一し、蒸気タービンを標準装備にして、その結果、 遠距離での敵艦への命中弾を単艦砲撃の連合射撃を管制する事で得られることが判明し、 なんと弩級以前の戦艦が(開発国たる英国自身の建造中の戦艦ですら)陳腐化してしまう事態になりました。
 そこで、それ以降の戦艦はこのドレットノート級を基準にし、 これを超えた性能艦を「超弩級戦艦」と呼称し、各国は建艦計画を推進していきます。
 ちなみに超弩級戦艦の最初は同じく英国のオライオン級で、ドレットノート級の進水後わずか6年後に実用化(竣工)しています。
 それくらい造船ラッシュであったという事ですね。

 更にWW2から現代に近づくにつれ、遠距離で尚且つ命中精度の高い砲というものが望まれる様になります。
 なるべく戦隊(2隻以上の軍艦で編成)では同型艦ないし同クラスの積載砲であることが望ましく、部隊の全てを纏めて射撃管制し、 より速く正確に敵艦艇へ命中弾を得る方法が採用されています。

 また防御力は、その「自艦積載の主砲に耐え得る防御力たる装甲」を要求されます。
 ということは、その時代のその時の自国最大の砲撃火力の直撃に耐え得る装甲であること、となります。

 注意すべきは、その速力などは戦艦には二の次な性能であって、 もし高速発揮が可能ならば「高速戦艦」、中程度なら「中速戦艦」、 低速度しか発揮できない機動性なら「低速戦艦」ということになるのです。
 通例として、この区分はあまり使われませんが。
 ですので通常の呼称は「戦艦」となります。

 トラベラーに於いても、まず、主砲はその建造TLで最大の性能の主砲をまず検討し、 次にその主砲を防御でき得る装甲と防御スクリーンなどの能力を定める、という順番になります。
 結果として、大型化したりしますが、 その諸元的な要求性能(主砲・防御力)と機動性(ジャンプ能力・加速性能・移動力)をベストミックスして建造計画が立案されることになります。
 当然、全てを最高度に要求する場合もありますが、大型化が進み、費用対効果との相関性が乖離してしまうので、 どれを重視してどれを諦めるか、という選択になります。
 繰り返しになってしまいますが、この設計思想として、火力と防御力を諦めては戦艦とは言えませんので御注意願います。

             ※11補足事項.(2)戦艦の火力と防御力へジャンプ。




(2)巡洋戦艦

 艦種コードは「BC」。
 その設計思想はまず火力です。
 戦艦と同様に、可能な砲撃火力を有します。
 通常の戦艦と異なるのは、防御力を二の次にし、速力を重視した設計です。
 つまり、主砲の命中弾を装甲で防御するよりも、その軽快な速力で命中させないという思想です。
 ですので、保有する国はまず戦艦よりも高速発揮できることが設計仕様に重視する点になります。

 実はこの巡洋戦艦は、戦艦のダウンサイジングというコンセプトなのではなく、 後述の巡洋艦の内の「装甲巡洋艦の発展型」という位置になります。
 ですので、装甲度は装甲巡洋艦並で巡洋艦主砲を防御できる性能程度で、それを戦艦並の艦体にし、戦艦並の主砲を装備させたという感じになります。
 この思想からドイツでは大型巡洋艦がこの相当艦種になります(シャルンホルスト級)。これを別の国(英国)は巡洋戦艦と見做しています。

 その設計からの運用としては、
 ・主力艦隊のための純粋な偵察
 ・軽艦艇を主体とした敵警戒網を突破しての強行偵察
 ・敵戦艦の射程外においての敵弱小、中規模艦狩り
 ・遁走退却する敵の追跡と撃破
 ・シーレーン防衛
 という快速性能を活かした使い方になります。
 つまり戦艦には捕捉できない敵戦力を戦艦並の火力で撃破することを期待された艦種です。

 トラベラーでも、戦艦よりも加速性能あるいはジャンプ性能もしくは移動力を重視し、戦艦に比較して軽装甲度である設計に至ると考えられます。
 ハウス設定では、戦闘艦艇は全てジャンプ性能と加速性能を統一して運用するのが最適であると考えましたので、 移動力を戦艦よりも向上させた艦種としました。

         ※11補足事項.(3)戦艦と巡洋戦艦のサイズ比較へジャンプ。





3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)


 戦艦(主力艦)と間違えやすい艦種です。




(1)ポケット戦艦・装甲艦

 ドイツのドイッチュラント級装甲艦がこれに相当しますが、突き詰めれば重巡洋艦の火力強化型です。
 有名どころでは、アドミラル・グラーフ・シュペーでしょう。映画「戦艦シュペー号の最後」を御覧になって頂くと判り易いかと存じます。
 とても戦艦とは言えない仕様で、主たる任務は複数艦で主力艦単艦(戦艦)に対する攻撃とか海上封鎖艦艇の突破や通商破壊で、
 「武装、装甲他の面で少しでも自らが劣位に立たされるような敵艦船との交戦は、その速度によりできる限り避ける
 という使われ方が基本です。

 トラベラーでも、後述する重巡洋艦を火力(主砲ではなく副砲級)を増強した設計になり、 その仕様は性能や艦体も含め、重巡洋艦に準じる型になると思われます。



(2)海防戦艦(モニター艦)

 自国の沿岸に接近する敵を撃破する目的で建造された艦種です。
 総じて巡洋艦並の艦体で、航続距離は短く、戦艦より1ランク下がりの主砲を装備した艦です。
 日本ではあまりなじみがありませんが、それはこの艦種を運用した実績がないからです。
 有名どころではノルウェーやスウェーデンが運用してWW2当時に独海軍を沿岸砲と共にバルト海で封鎖した実績があります。

 トラベラーでは、非ジャンプ艦で、戦艦より小型な型で、戦艦に相当もしくは準じた火力と防御力を有する艦種が相当するでしょう。
 星系の敵侵攻艦隊(ジャンプ艦隊)を撃退するべく、その主砲戦力を発揮することが期待されて建造されることになると思います。

          ※11補足事項.(4)ポケット戦艦とモニター艦へジャンプ。



(3)航空戦艦

 戦艦を改造して、戦艦としての砲戦力を残しつつ、航空機あるいは水上機の運用能力を保持させた艦種です。
 史上初の航空戦艦は英国のフューリアス(1917年)で前部を飛行甲板にして運用しようとしましたが、 事故の検証の結果、運用計画は頓挫し、その後は空母として改装されます。

 その後は計画こそ浮かんでは消えしますが、実現したのは日本の伊勢型戦艦、伊勢と日向を改装し、後部主砲を取り外し飛行甲板にした型です。
 搭載予定は彗星艦爆を22機で、計算上5分で全機発進可能なのですが、戦局の影響で搭載機が間に合わず、 防空能力の強化ゆえの艦隊防空艦として従事します。
 評価としては別れる処かも知れませんが、 戦艦として火力の殴り合いをする前提で運用される「主砲による主力艦同士の砲撃戦」に使うとなると、 航空機を有しているが故の構造上の脆弱さ、炎上し易い航空燃料を大量に装備する危険性、砲戦力の低下など、 戦艦としての性能価値は自ら失くした形であり、 航空機運用艦としては、空母よりも低速で搭載機数も少なくかつ機種に制限が出る、防空任務機がないなど、こちらも性能価値がないと言えます。
 つまり、地上沿岸部の敵戦力に砲撃する「砲艦」と攻撃機発進のみの限定した運用艦になるという 中途半端を通り越した艦種になったとも言えるのではないでしょうか。

 トラベラーでも戦艦に戦闘艇の高速発進能力を付与した艦種として使用できると思いますが、同様に評価が難しいかと思います。
 使い方の難しい艦種と言えるのではないでしょうか。
 ハウスとしては作っては見たモノの、個人的にはそれならば動力なりに艦体容積を廻して、移動力を高めてやりたい、 あるいは予備燃料を搭載し、ダメージを受けた時の余力に廻したい、もしくは予備システムをダメコン用に準備したい、と思いますが。

              ※11補足事項.(5)航空戦艦の使い方へジャンプ。





4.巡洋艦


 まず仕様の第一義は「外洋航行能力を有する事」です。
 戦艦あるいは巡洋戦艦に随伴することや単独で行動することも要求され、 その任務は、示威・通信伝達・索敵・通商保護・通商破壊と多岐に渡ります。
 まあ簡単に言えば、戦艦と駆逐艦の中間サイズの艦が相当とも言えるでしょう。
 所属国によって、更にその任務は多様化し、主力艦は割当できないが、植民地への圧力や叛乱抑止目的などの軍事的な示威行動なども含めて、 極めて帝国主義的な使われ方をした時代もあります。

 進化というか分岐の順は、大雑把に言えば、まず巡洋艦として後年の防護巡洋艦があり、 それに装甲を施したのが装甲巡洋艦として派生し、そこから大型化し重巡洋艦となります。
 一方、小型化して取扱いの簡便な型に指向した種は、雷撃能力に特化し、水雷巡洋艦になり、軽巡洋艦になっていくという分岐ルートになります。

 1922年のワシントン条約では、巡洋艦を搭載砲口径と基準排水量を細かく規定して、これを条約型巡洋艦と言います。
 この条約では主力艦と潜水艦の建造制限を設ける一方、巡洋艦をこのような性能制限を課し、 その範囲であれば建造数制限を受けることなく所有できるという条約でした。
 その後の条約改訂(1929年)では、各国での各艦種別に建造総トン数の制限を設けていますが、各国海軍は条約失効を睨んだ改装計画や その制限ゆえにその上限性能一杯での高性能巡洋艦の建造競争時代に突入します。
 例えば建造当初は小型砲を搭載しておき、条約失効後に大口径砲に換装するなどの方法です。

 大戦後は米露それぞれで別の進化を遂げ、ミサイル巡洋艦として現役ですが、その性格は異なります。
 米のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦はイージスシステムを搭載した「防空艦」としての任務性が高く、 装備も対艦装備よりも対電子戦対空ミサイル等に比重が置かれます。
 一方、ロシアのスラヴァ級あるいはキーロフ級ミサイル巡洋艦は防空対潜能力もさることながら、その主たるは対水上打撃力であり、 そのP700(米側呼称SS-N-19)の射程700Km超に及ぶ艦対艦ミサイルによる、米空母への直接攻撃を最大の任務としています。

 トラベラーでは巡洋艦をどう使用するかが設計仕様に大きく影響することでしょう。
 また、主力艦に随伴した艦隊行動を前提になるのならば、ジャンプ性能や加速性能や移動力も主力艦に合わせるか上回る必要があります。

 そこを踏まえて巡洋艦種を御紹介して参りましょう。




(1)重巡洋艦・大型巡洋艦

 重巡洋艦の艦種コードは「CA」。
 大型巡洋艦の艦種コードは「CC」。
 判り易い区分で言えば、巡洋艦の中でも大型の砲撃力を有する艦を指します。
 艦種コードはその前身たる装甲巡洋艦からの派生の名残です。

 トラベラーでも、主力艦に1クラス準じた主砲と火力で装甲や防御力をまず仕様要求されることでしょう。
 また、巡洋艦隊の主軸になる可能性もあるのならば、 索敵や通信能力を強化させたり、搭載艇を装備したりとバリエーションが要求されると思います。




(2)軽巡洋艦

 艦種コードは「CL」。
 後述の防護巡洋艦の後継たる艦種です。
 火砲を主兵装とし、軽度な舷側装甲を施した比較的小型の巡洋艦が相当します。

 この軽巡や重巡という区分は、第一次世界大戦後のワシントン海軍軍縮条約の結果として、統一化された世界標準です。
 条約ではカテゴリーAが重巡、カテゴリーBが軽巡となります。その前は一等二等とか、各国で勝手な区分を付けていました。
 巡洋艦級の小型艦船の機関出力が低いが為に、艦体に装甲を施すことが難しく、装甲を備えるならば大型化した装甲巡洋艦や重巡洋艦が派生し、 それとは別に舷側装甲を設けずに機関部上部などに部分的に被装甲した、軽装甲巡洋艦が登場します。

 1910年代に登場した軽巡洋艦は部分的に重装甲ではあるが、基本として装甲はなく、快速で艦隊の目としての役割の担うことになります。
 先に述べたとおり、建造当初は軽巡洋艦として配備され、条約が切れることを見越した冗長性のある設計をされている場合もあり、 排水量でいうと重巡よりも大きな軽巡も存在します。
 建造後に大口径主砲に換装してしまう訳です。
 日本の最上型や利根型はこの口です。

 WW2後は長距離ミサイルが発達しますが、当初の大型だったミサイルのプラットフォームとして巡洋艦は活用されます。
 口径による区分が消滅し、代わりにミサイル巡洋艦という艦種に発展します。

 また、軽巡はその高速発揮の性格を生かして、色々な用途に特化していきます。

 例えば日本の場合には艦隊決戦を念頭にした編成をしましたので、 軽巡には、駆逐艦を主力にした水雷戦隊を率いる指揮能力を期待され、 同時に水雷戦を自身でも行なえる戦闘能力も要求されています。
 つまり、自然と大型化、重雷装巡洋艦になっていったということです。
 軽巡洋艦級としての日本での艦種は7種類、うち2種類は重巡に転換されました。

 それとは別に英国では、まずUボートによる通商破壊作戦対策の船団護衛艦として、対潜哨戒任務という種類と、 艦隊主力艦の護衛になる任務と、 植民地警備やそこからの通商路警備という3つの任務が要求され、巡洋艦級の大量建造が急務になります。
 つまり、特色の違った3種類を同時に生産性が高い、つまり、簡便な構造での建艦思想を要求されたのです。
 また、他国の情勢から、戦闘艦船の大型化重装備化に付いていくより選択肢がなく、その経済事情への圧迫が英国を苦しめたとも言えるでしょう。
 英国の軽巡艦種は15種類にもなり、試行錯誤の跡が伺えます。

 それ以外の国では色々と御家事情が異なりますので詳細は省きますが、 大きく分けて、主力艦を主軸とした艦隊決戦用戦力への護衛任務植民地警備任務です。
 つまり、主力艦に追従できる航続距離と速度を有しているのが仕様条件であったり、 現地での整備や補給が可能であることが仕様条件であったりします。

 トラベラーでも同じことが言えると思います。
 どういう使い方をして、どういう仕様要求であるのかがまず最初に検討されて、その要求の中では、 軽巡級は速度や加速性能や移動力をまず要求され、それに見合った火力を要求され、 更にその次に装甲や防御能力が付与されるということになるでしょう。
 その範囲内でどれだけ工夫できるのか、というのが軽巡のバリエーションを多くさせることに繋がって来ます。




(3)防護巡洋艦・戦列巡洋艦

 巡洋艦の内、重巡洋艦と軽巡洋艦について述べましたが、 その前の時代も含めて以下のバリエーションがありますので、個別に述べて参りましょう。

 どちらも巡洋艦種としては最古参です。従って艦種コード自体も存在しない、敢えて言うならクルーザーの「C」です。
 特に戦列巡洋艦は艦隊決戦用の主力艦の補助火力という役割も持った艦種です。
 1920年頃には艦種自体も消滅し、重巡軽巡の区分に移行していきます。

 軽巡の前身とも言える艦種で、ほぼ装甲はなく、部分的に被弾し易い場所に薄く被装甲された艦です。
 その主たる任務は巡洋艦の当初任務たる、植民地警護と通商路の確保です。
 他にも発達してきた水雷攻撃任務や艦隊に先んじた偵察任務も担当します。
 よって、本国以外で使われることを念頭にした設計と大量建造が前提の艦種です。

 トラベラーでもそれに近しいのは辺境巡洋艦と言われる艦種でしょうか。
 現地での整備を念頭にした設計仕様となり、システムとしての耐久性を持つことは 戦闘時のダメージコントロールとは異なった発想になることでしょう。




(4)装甲巡洋艦

 巡洋艦種としては、先の防護巡洋艦や戦列巡洋艦から派生した次世代艦です。
 艦種コードは「CA」。
 小型で戦艦に順ずる中口径砲を搭載し、装甲防御よりも巡洋性・航行性を重視した艦が相当します。
 そしてその任務は巡洋艦の中でも特に艦隊決戦での役割を主に要求されます。
 その基本思想が装甲=防弾性を有する=射撃される可能性があるから、ですので、敵の砲銃弾を受け持つ被害担当艦の性格も合わせ持ちます。

 トラベラーでも巡洋艦種の中で装甲や防御性能に特化した艦種になると思います。
 使われ方も同じく、艦隊での行動が主で、敵戦力との艦隊決戦が主たる任務になるでしょう。




(5)防空巡洋艦

 呼称的には「防空巡洋艦」というのは存在しません。
 強いて言うなら、防空仕様の軽巡洋艦や駆逐艦などがこれに相当するでしょう。
 一般に艦隊防空を担うために機動部隊等に追従できるような高速性を要求されます。
 対艦攻撃力や対潜能力を捨てて艦隊上空に防空できる高射砲を始めとする対空火器を装備した艦種です。
 日本では直衛艦と言う名称で建造されることもありました。

 トラベラーでは空母発進あるいは基地発進の100排水素トン未満の戦闘艇が戦闘艦隊に攻撃をすることを想定して この戦闘艇群を撃破する艦種がこれに相当するでしょう。




(6)艦隊巡洋艦

 呼称的には「艦隊巡洋艦」というのは存在しません。
 なぜなら、主力艦に随伴する能力は初めから想定された戦闘艦艇であれば、他の例えば重巡洋艦などに区分されるからです。
 ですがここでは敢えて区分しておきましょう。

 トラベラーでは恐らく主力艦に随伴する性能の有無で異なると言えるでしょう。
 単艦あるいは2隻程度の戦隊での作戦行動を前提にした艦種と艦隊行動を前提にした艦種との区別があると思います。




(7)航空巡洋艦

 運用している国はロシアですが、これは別名「航空母艦」です。
 なぜ空母にしないかというと、モントルー条約でボスポラス海峡やトルコ領海を航行するのに 「空母はダメ、主力艦も1隻で護衛は2隻まで」と定められているからです。

 トラベラーでもそういう外交制限があれば、空母じゃないよ輸送艦だよ、とか航空巡洋艦だよ、と言えば良いだけです。
 が、折角の設定ですので面白くないので。
 巡洋艦つまり、主力艦に準じた主砲火力を持ち、外洋航行能力を持ち、小型戦闘艇を多数艦載し、発進チューブを搭載した艦種、ありますよね。
 攻撃巡洋艦という艦種で宇宙海軍に登場しています。
 これも航空戦艦と同じ問題点を有していますが、その一回り小さい艦種で考えて頂ければ良いかと思います。




(8)水雷巡洋艦

 19世紀末から20世紀初頭に建造された艦種です。
 発達してきた魚雷攻撃性能を付与された艦で、現在は廃れた艦種になります。
 後述する水雷艇駆逐艦・水雷砲艦・水雷艇を御参照頂くと、建造思想の苦悩がお判りになるかと存じます。
 巡洋艦ですので、もちろん、外洋航行性能は有することになります。
 武装仕様としては、自艦より小型の敵水雷艇を襲う目的で、複数の魚雷管と相応の単一の艦砲を備えておりますが、 総じて水雷艇よりも低速ですので追撃戦はできず、待ち伏せか遭遇戦が主な使い方になります。
 その後、軽巡や重巡には標準的に雷撃装備をされることになり、水雷巡洋艦は姿を消していきます。

 トラベラーでも後述する水雷艇に準じた艦種があれば、それを攻撃する専門型がそれに相当することになるでしょう。




(9)偵察巡洋艦・遠距離偵察艦

 1900年代に建造された艦種で、広義的な防護巡洋艦の範疇に入ります。
 水雷戦隊の旗艦用だったりもしますが、小型かつ高速の防護巡洋艦を特に呼称した艦種です。

 トラベラーでも小型巡洋艦のキンニール級などはこの部類になるでしょうか。
 移動力よりもジャンプ性能が高めとか、巡洋艦にしては小型とかいう仕様になるでしょう。




(10)仮装巡洋艦・通商破壊巡洋艦・補助巡洋艦・特設巡洋艦

 第一次第二次の両世界大戦において、 中立国の商船に偽装して無警戒の敵国の商船を襲撃したドイツの軍艦を仮装巡洋艦といいます。
 それ以外の国では通商破壊巡洋艦とか特設巡洋艦とか言う呼称になります。

 旅客船、油槽船、貨物船など既存の商船を改造して使用され、武装も偽装され、武装艦と容易には判明できない仕様にしております。
 甲板員も民間服を着用し、中には女装させたケースもあります。
 遠目には民間船と全く変わらない風体を装うのです。
 これで民間船を装い、敵国の標的船舶に接近し、充分に接近してから、軍艦旗を挙げ、攻撃を開始するのです。

 武装は軍艦にしては改造型ですので、貧弱ですし、民間船にしては速度発揮ができる程度の優位さですので、ともすれば逃げられてしまいます。
 ですので、砲撃するのは威嚇と逃亡を図られたときのみで、標的の民間船に接近して軍艦旗を挙げ、投降を呼びかけます。
 呼び掛けに応じたなら、ボートで標的艦に移乗し、拿捕した後に利用価値があるのなら味方港へ回航するか、 利用価値がないのならそこで爆薬などを使用するかキングストン弁を開いて自沈させます。
 補給もままならない通商破壊作戦では標的船舶の石炭や食料などは補給物資の意味を持っていました。

 トラベラーでも同様に民間船舶の貨物船などの商業船を改造して通商破壊艦に投入されると思います。
 そのバリエーションと使い方は一律ではなく、多くの現場判断があると思われます。
 仕様としては、まず民間船よりも加速度があること、それと武装が優位であることです。
 移乗用の設備や小型積載艇があると便利でしょう。

               ※11補足事項.(6)巡洋艦の進化論へジャンプ。





5.駆逐艦


 艦種コードは「DD」。
 魚雷を主兵装とし、敵の大型艦を襲撃することを任務の小型外洋航行可能な戦闘艦です。
 もともとは水雷艇が主力艦に対する脅威であったが為に、 これを駆逐する目的の艦艇で、その為に主力艦との行動ができる能力が求められてもいます。
 出現当初から第二次大戦のころまでは、軽巡洋艦より小型だが砲艦より大型で、航洋性を有しており、 軽装甲であるが高速で汎用性が高いといった仕様性能です。
 現代では兵器性能の向上と小型化が進んだ為に比較的大型艦として扱われています。
 駆逐艦にも各種の区分けがあったりしますので、これを見て参りましょう。




(1)駆逐艦

 スタンダードな駆逐艦としては、幾つかに区分けされます。
 まず水雷戦を担う艦種として、雷撃仕様を重視した型です。
 それとは別に対潜水艦を担う艦種として、爆雷投射設備や音響探知を重視した型です。
 それとは別に主力艦を護衛する艦として、対空防御機能を重視したり、対艦砲撃力に特化させたりした型です。
 つまり、その用途によって、その装備も特化した仕様になるということです。
 現代に於いては主力水上艦として扱われ、ヘリコプター搭載型もあり、対潜機能や対艦機能や対空機能を重視した型ですね。

 トラベラーでも小型艦艇の主流として多くの型が派生すると思います。
 そして、それは対艦戦闘力・対地攻撃力・対小型戦闘艇など色々なバリエーションになっていくでしょう。
 が、総じて外洋航行能力を有している性格上、ジャンプ能力を主力艦艇に追従できる範囲で有し、 加速性能や移動力もある程度の高さで有している必要性があると思います。
 一方防御力は重視されずに、装甲度も低めで防御スクリーンもある程度あるいはない場合もあるでしょう。




(2)嚮導駆逐艦

 嚮導艦とは、作戦室や無線室など艦隊指揮官用の旗艦設備を持ち、艦隊の指揮が可能な艦種です。
 一般には大型の駆逐艦か小型の巡洋艦がその任務に就くべく建造されます。

 トラベラーでは同様に駆逐艦の中でも大型で指揮通信能力を重視した艦種になると思われます。




(3)艦隊駆逐艦

 駆逐艦の中でも艦隊に随伴する型で、艦隊型駆逐艦とも言われます。
 有名処では日本海軍の島風型でしょうか。
 高速で重雷装艦として設計され、航続距離も艦隊に準じる長さを有します。

 トラベラーでも艦隊決戦を念頭に置いた海軍ならば、その設計思想がある駆逐艦種が存在し、 艦隊のワークホースとしての役割を担う事になると思われます。




(4)防空駆逐艦

 駆逐艦の中でも艦隊に随伴させ、艦隊防空を担う艦種です。
 防空巡洋艦の駆逐艦版とも言えます。

 トラベラーでも戦闘艇対応をする艦種という位置付けになるでしょう。




(5)護衛駆逐艦

 艦種コードは「DE」。
 駆逐艦の任務たる通商路の警備と通称船団の護衛に特化した駆逐艦です。
 総じて小型の駆逐艦が当てられ、対潜・対空・対小型艦艇の戦闘を念頭に設計されています。
 第二次大戦中に米国が対英輸送の護衛に付いた護衛駆逐艦は8種類、合計457隻に及び、 艦隊型駆逐艦が艦隊随伴するだけの高速力を求められるのに対し、 護衛駆逐艦は商船護衛、自衛対空戦闘および潜水艦の追尾・攻撃に必要な最低限の速力をもっていれば良いという、 性能の違いがあります。
 つまり艦隊型駆逐艦並みの速度は不要ということです。

 トラベラーでも同様に商船護衛の専門艦として、民間船よりも高加速であればその任務に耐えます。 当然ジャンプ能力も艦隊程の高ジャンプ性能は不要です。
 装甲度や火力も、想定される相手は通商破壊任務艦ですので、それに対抗できるだけの能力があれば問題ありません。
 しかも、この場合に敵艦に対し単艦で交戦する可能性は低く、数艦の護衛艦艇での交戦を基本に考えられることになるでしょう。




(6)水雷艇駆逐艦

 駆逐艦の前衛たる型で、艦隊に接近する水雷艇を駆逐する為の艦種です。

 トラベラーでも後述する水雷艇を御参考に対抗する駆逐艦種が相当することになるでしょう。

               ※11補足事項.(7)駆逐艦の進化論へジャンプ。





6.その他の戦闘艦艇


 戦艦・巡洋艦・駆逐艦に相当しない戦闘艦艇を紹介して参ります。




(1)護衛艦

 自衛隊の戦闘艦種を護衛艦と言いますが、当初の意味としては、 敵の通商破壊から味方の商船を守る水上護衛戦のための艦艇です。
 護衛駆逐艦の役割に重複しますので仕様はそちらを御参照して頂ければと存じます。

 トラベラーでも同様な船団護衛任務担当艦を専門で建造してあれば、護衛艦に相当するということになるでしょう。




(2)フリゲート

 多くの微細な区分違いはありますが、概ね、 駆逐艦よりも小型で、高速軽武装で、戦闘のほか哨戒、護衛などの任務に使用された艦種を呼称します。
 フリゲートはまさに船団護衛に対応する艦種で、中国では護衛艦と訳される程です。
 後述のコルベットよりも大型ではありますが、軍艦としての外洋航行力を有する艦艇としては最小級とも言えます。

 トラベラーでも船団護衛任務を念頭にした設計で、民間船相当のジャンプ能力を有し、上回る加速性能を有し、 敵通商破壊艦に対抗できる程度の戦闘力を有している戦闘艦艇です。




(3)コルベット

 フリゲート同様商船の護衛や沿岸警備等に使われる艦種です。特に主な仕事は沿岸部のパトロールです。
 一時的に消滅しましたが、現在ではフリゲートよりも小型の軍艦が相当します。
 フリゲートよりは汎用性はありませんが、建造費が安価で、民間の造船所でも建造できるような大きさと構造を持ち、大量建造に適していたが、 船型が過小で外洋での活動に支障があるという欠点を有します。
 なおナウシカで出て来る重装甲コルベットというのは現実には存在しないので、あの設定でのオリジナルですね。
 クロトワ参謀がコルベットの正しい扱い方を見せてくれます。

 トラベラーでも同様に民間船に準じたジャンプ性能で、 かつ低武装の小型艦で、加速性能を重視した艦種ということになるでしょう。
 当然装甲度も民間船並で、防御スクリーンなどは搭載しない型となるでしょう。




(4)水雷砲艦

 この艦種は砲艦の艦形に魚雷を追加装備したものであり、外洋航行性と快速が仕様としての特徴です。
 時代を経ると駆逐艦がその役割を担うことになり、歴史から姿を消します。
 後述の海防艦に砲艦の記述がありますが、こちらは外洋航行性能はなくても良い沿岸向き軍用艦ですが、 この水雷砲艦は艦隊に随伴する性能を有する、外洋航行能力は必須です。

 トラベラーでも小型艦艇でミサイル装備に特化し、ジャンプ性能は主力艦並みという艦種がこれに相当するでしょう。
 というと、インペリウムのソロマニ側の「ミサイルボート」を思い出す方もおいでかと思いますが、それに近い仕様ですね。




(5)水雷艇・魚雷艇・ミサイル艇

 基本的に水雷艇も魚雷艇も同じですが、水雷は「機雷・爆雷・魚雷」を指し、魚雷は「魚型水雷」たる「自律航行する水雷」です。
 水雷艇の初実戦は1878年と古く、小型だったために外洋航行能力が乏しいので、水雷艇母艦を要して外洋航行させたこともあります。
 船の大きさに比較して大打撃を与えられる水雷・魚雷は安価で強力な兵器として、大型戦闘艦艇を導入できない国の海軍で重用されます。
 その後、対艦ミサイルが小型化していくと、これを搭載したミサイル艇が派生します。
 対艦攻撃の際には友軍航空機より標的諸元を貰ってミサイルを発射し、ミサイル自体が索敵し標的に命中するという流れになります。

 トラベラーでも先の水雷砲艦と同じような、小型で火力特化した戦闘艦艇がこれに相当するでしょう。
 母艦を用意して多数を戦場へ投入する方法もあるでしょうし、小型艦自体にジャンプ能力を与える方法もありでしょう。




(6)駆逐艇・駆潜艇

 魚雷艇や潜水艦との戦闘を目的として建造運用された小型舟艇です。
 総じて高速発揮ができ、外洋航行能力はありません。また陸軍が運用している場合も多いです。

 トラベラーでも小型艇として軽装備の武装艇という型になるでしょう。




(7)突撃艇

 肉薄攻撃艇とも言われる型でモーターボートに爆雷を所持して投入した型です。
 マルレという愛称の方が通りがいいかも知れません。
 当然外洋航行能力はなく、日本の敗色が濃くなりつつあった段階で自然と特攻兵器になっていきますが、 建造当初は特攻など考えられてもいない仕様でした。各種で総計約3千隻が建造されています。

 トラベラーでも民間の快速ボートを改造して単発な簡易発射ミサイルを装備させた艦種で安価に大量建造できると思います。
 その戦果には責任が負えませんが。




(8)浮砲台

 これは非常に特殊なケースでしょう。
 1850年代のクリミア戦争に出現した艀に砲台を設置し、装甲化した艦種です。
 その後の米南北戦争では広く使われています。
 後の装甲艦や装甲巡洋艦へを進化する過程の艦種とも言えます。

 トラベラーでも難しい使い方になりますが、艀に砲を装備した攻撃衛星に近い使い方になるでしょう。

            ※11補足事項.(8)駆逐艦未満の戦闘艦艇へジャンプ。





7.海防任務艦


 国土の沿岸・領海警備、船団護衛、対潜哨戒などを主要な任務とする艦を総称します。
 艦の大きさや武装などによる分類は特に無く、小型艦から戦艦クラスのものまで多岐におよび、 任務の性質上、武装・装甲を重視し、速度・航洋性を犠牲にした艦が多いのが特徴です。
 戦艦の章で海防戦艦を取り上げましたが、それに準じた艦種が幾つかありますので御紹介致しましょう。




(1)海防艦・装甲海防艦

 旧式の軍艦などをこれに充てる国も多いのですが、特別に設計建造する場合もあり、一概には言えません。
 量産性を重視したり、砲戦力を重視したり、戦術的な機動性能を重視したり、 幾つものバリエーションに別れるのはその時の国がどういう相手と交戦するかによって変化していると言えるでしょう。
 一律して言えるのは、外洋航行能力はなく、沿岸警備任務であることです。

 トラベラーでも、ジャンプ能力のない非ジャンプ艦で、多くのバリエーションが派生すると思います。
 その中で重装甲化した艦や砲撃性能に特化した艦や機動性の高い艦などに別れていくでしょう。




(2)砲艦・装甲砲艦・ガンボート・臼砲艦(ボムケッチ)

 海防艦の中でも特に小型艦を呼称し、主として沿岸・河川・内水で活動する、火砲を主兵装とした水上戦闘艦艇を総称します。
 その中でも大型のものを砲艦といい、小型のものを砲艇といいます。
 装甲を施されたものを装甲砲艦といいますが、重装甲ではなく、小銃弾や小口径砲に対応するだけの装甲になります。
 河川用の砲艦などもあり、熱帯や湿地帯などで現在も盛んに使われています。
 ガンボートはこの手の小型砲艦を指し、特に大型の臼砲を装備した艦種を臼砲艦(ポムケッチ)と言います。

 海防艦を始めとする砲艦は主に、
 ・モニター艦の様に船体規模に比べ強力な火砲を備え、有事に前線での戦闘に使用する重武装の砲艦
 ・武装は比較的少ないが、強力な通信・指揮能力を備えており、平時の警備任務に重きを置いた砲艦
 に分岐します。
 前項の海防戦艦は有事向きの砲艦ですが、沿岸警備に対する艦艇は後者の平時の警備任務向きの砲艦に相当します。

 トラベラーでも非ジャンプ艦を自星系に配備するに於いて、このどちらを重きを置くかで設計仕様や配置数量が大きく変わってくることになります。
 例えば大人口星系で敵侵攻艦隊に対する防備を優先となると、大型の主砲を搭載した砲艦になるでしょうし、 星系内の警備主体となると、快速の小型艦艇を多数配備するということになります。
 その艦種の特徴も考慮して最適化した艦艇を配備するということが重要になります。

                 ※11補足事項.(9)惑星防衛艦へジャンプ。





8.航空母艦


 大型艦に航空機を搭載して作戦展開する艦艇を航空母艦と呼称しますが、それはつまり、 航空機を離艦・着艦させると同時に、航空機に対する整備能力と航空燃料や武器類の補給能力を有し、 海上において単独で航空戦を継続する能力を有する必要があります。
 その搭載する航空機によって、偵察・対艦攻撃・対地攻撃・対潜攻撃・対空攻撃を実施し、 上空警戒や航空管制も遂行し、救難・輸送活動も可能な艦艇と言えます。
 つまり、航空機を積載しただけでは航空母艦、空母とは言えず、それらを支援する機能や通信や管制も含めた性能、 艦載機群を有機的に作戦行動させて、補修修理も含め補給を実施する能力を有した艦艇であるのが航空母艦の最低条件になります。




(1)正規空母・大型空母

 航空母艦の中でもっとも一般的なのがこの級になります。
 仕様としては、多数の艦載機を運用できること、その詳細は前項の航空母艦に準じます。

 トラベラーでも発進チューブを有し、艦載戦闘艇を展開できることが第一条件になりますが、 それ以外にも艦載艇の管制や整備補給が可能な事、その作戦行動の指揮ができる事などになります。
 更に艦隊に追従できるジャンプ能力は必至でしょう。
 もしくは装甲度を捨てて分散構造にして、艦載艇を一斉に分離させる自由惑星同盟方式もありです。

 この級で別れるのは、建造最初期から空母として建造された艦か、 商船や戦艦として建造が開始されたが途中から改装された艦かによって違ってきます。
 つまり、これで何が違うかというと、航空機運用に対する設備性とか安全性とか、 艦自体の被弾時のダメージコントロールなどにも大きく影響します。
 当初から空母として建造された場合にはこれらが織り込んでの設計になっていますが、 商船改造型などでは大きさが満足していても軍艦とはその構造思想が大きく異なります。




(2)軽空母

 空母の中でも相対的に小型と見なされる空母であるが艦隊作戦行動が可能な速力を有する仕様の艦種です。
 現在では、垂直・短距離離着陸機(STOVL機)の運用を主体とし、固定翼機の運用能力を持たない艦も含みます。

 トラベラーでは、正規空母の小型版という位置づけになるでしょう。
 ですが、艦隊を編成できるだけのジャンプ能力を有していることは最低条件になります。

      ※11補足事項.(10)トラベラー宇宙の航空母艦、その1へジャンプ。




(3)護衛空母

 輸送船団を敵潜水艦から護衛するための小型空母です。
 低速で、商船構造であるなどが特徴で、遠方の基地への航空機輸送任務にも用いられます。

 トラベラーでも、商船の護衛任務という事で、商船並みのジャンプ性能で加速性能を有する艦種になり、 その艦載機での作戦行動によって敵通商破壊艦からの攻撃を防御することになります。
 大型の商船を改造して戦線に投入するということも充分に可能な艦種になります。

          ※11補足事項.(11)トラベラー宇宙の護衛空母へジャンプ。




(4)水上機母艦

 水上機を発進、洋上に着水させたものを回収、もしくは水上機の根拠地での修理、整備、補給の海上の補助施設となる艦艇です。
 発進はカタパルトを使いますが回収には水上に着水させデリッククレーンで回収しました。

 トラベラーには出てこない艦種となるでしょう。




(5)運搬艦

 航空機を別の基地や空母に運搬する為の輸送艦です。
 航空機として運用することはできません。

 トラベラーでも貨物船を改造して小型戦闘艇を輸送する場合に相当するでしょう。

      ※11補足事項.(12)トラベラー宇宙の商船改装空母へジャンプ。





9.哨戒艦・警備艦・巡視艦艇・カッター


 これらの艦種を使用する組織に海軍と沿岸警備部隊(日本で言えば海上保安庁)と海上警察などの治安維持組織があります。
 その組織の性格によって、運用もその編成も要求仕様も全く異なります。

 海軍での哨戒任務は敵戦力への哨戒行動という作戦行動の一環です。
 敵の兆候を読み取り主力部隊への警報を発したりするのが主たる任務になります。

 沿岸警備部隊の哨戒任務は軍事的な作戦行動とは異なり、国境線の海上警備つまり防犯としての警察行動に相当します。
 ですので、沿岸警備隊が出動するというのは、軍隊の行動ではないよ、と言うことになります。

 もし沿岸警備隊ではなく海軍が哨戒していて、もし敵国(軍艦旗を掲げている)からの発砲があった場合、 これは交戦規定に含まれてしまい、最悪、あっという間に交戦状態に陥ります。
 ですが、沿岸警備隊ならば、軍艦ではありませんので、 交戦規定に抵触せず、1クッション置いた交渉が可能ということになります。
 まあ現地で実弾が飛び交うのには違いないのですが。

 海上警察に於いてはもっと沿岸での活動になり、その取り締まりは純然たる警察行動ですので、犯罪行為の取り締まりに特化した活動になります。

 そうした数々の違いを念頭にして、哨戒艦・警備艦・巡視艦艇を設計し、その外洋航行性能や航続性能や加速性や武装などが決定されて行きます。
 大型の艦艇かヘリの運用ができるかなどの装備の違いがあります。

 トラベラーでもT型哨戒艦は有名ですが、 これはジャンプ性能を有する外洋哨戒艦艇であって、長時間の作戦行動が要求されます。
 それ以外にもジャンプ性能に応じた性能や加速性能や索敵性能や火力や装甲度を要求され、その性能は想定された行動に準じた使い方になります。
 もしくは非ジャンプ艦で警察行動に従事する艦艇もあるでしょう。
 そのバリエーションはその星系や恒星間国家によって大きく異なっていると言えるでしょう。





10.蛇足的な航空機運用について


 固定翼機や短距離離着陸機や垂直離着陸機や回転翼機の運用が艦船ではありますが、 大型の航空母艦と言えども、その滑走距離は飛行甲板で最長でも数百mです。
 発進には蒸気カタパルトを使用し無理やり射出、当然向かい風を狙って揚力の発生を助けます。
 着艦にはアレスティングワイヤを用い、別名、制御された墜落とも言われる方法になります。
 これはジェットの時代でもこうですが、レシプロ機の時代でも似た様な状況です。
 短距離離着陸機ではスキージャンプ台を設置し、その発進を補助します。
 どちらも陸上に対する離発着よりも高度な技術を要求され、下手をすれば海中落下する事故が発生します。

 回転翼機においては、艦船が移動しながらの発着艦ですので、こちらもまた高度な技術を要します。
 装備によってはヘリに着艦固定用の大きなシャフトを装備し、艦側の穴に無理やり差し込む固定方法などもあり、簡単な運用ではありません。
 まして哨戒艦艇や駆逐艦級にヘリを搭載するというのは、その管制や運用の資材と要員を搭載する必要があり、 更には航空燃料も余剰に搭載する必要があります。
 つまり、航空機運用艦は膨大なコストが掛かる艦艇と言えます。

 トラベラーでも余剰の容積があるから、じゃあ艦載艇を装備しよう、という構想は、その容積だけでない、 発着艦設備や艦載艇の装備品や燃料供給や管制や通信など多くの要素を満足して初めて運用が可能になる装備なのです。
 決して安易に装備して運用できるものではない、ということを念頭に設計されることをお勧め致します。

             ※11補足事項.(13)航空母艦の運用能力へジャンプ。





11.補足事項(山中)


 この章は、私(山中)が独自に加筆した考察です。
 大臣様が書かれた文章ではありません。




(1)帆船の等級

 帆船の等級は、時代に合わせて変化しております。
 なので、時代を通じて全く同じだった、という訳ではありませんが、参考までに1800年前後の帆船等級を以下に掲載しておきました。

 当時の英国で使われていた分類です。


                表1 帆船の等級

FSS_Fig01.gif - 5.20KB

 この時代ですと、1等艦から4等艦までが戦列艦、 5等艦と6等艦がフリゲート、という分類になっておりました。

                            ※1.帆船時代へ戻る。




(2)戦艦の火力と防御力

 大臣様が、戦艦の設計思想に関して書かれている、
 火力と防御力を諦めては戦艦とは言えません
 という内容について、トラベラーの設計ルールと戦闘ルールの視点から、補足します。



 残念ながら、トラベラーの宇宙船戦闘ルール(CT版「宇宙海軍」とMT版)は、戦艦が活躍し難いものとなっていました。
 プレイアビリティを追求して簡略化されたのか、あるいは、デザイナーが意図的に設定しているのかは分かりませんが。

 宇宙船の主要部分(パワープラントやドライブ装置)へのダメージは、能力値の減少やパーセントによって計算されるルールになっていました。
 そのため極端な場合、1千トンの駆逐艦であっても、100万トンの巨大戦艦であっても、同じ回数の命中弾(ダメージ)で機能を停止します。
 船体サイズが1千倍だからと言って、1千倍の命中弾(ダメージ)に耐えられる、というルールではありません。
 ドライブ装置が耐久値を持っているCT版の基本ルールであれば、巨大戦艦の主要部分を機能停止させることはとても困難だった筈なのですが。

 トラベラー宇宙の巨大戦艦は、戦闘艇の一撃で破壊されてしまうリスクを抱えた、極めて脆い存在でもあります。
 スター・ウォーズで描写された、戦闘艇の一撃で破壊されるデス・スター、という状況を再現したかったのかも知れません。

 もうひとつ、戦艦が活躍できない原因は、火力の制限です。
 トラベラー宇宙の戦闘艦は、火力の大きな主砲を1隻に1門だけしか積むことが出来ません。
 船体サイズが3万トンの巡洋艦も主砲の数は1門、50万トンの戦艦も主砲の数は1門、です。
 搭載できるパワープラントの出力から、その主砲の火力(クラス)は異なりますが、1門という条件は絶対。
 ですから、3万トンの巡洋艦を10隻建造すれば、10門の主砲を戦場へ投入できますが、 50万トンの戦艦を1隻しか建造できないのであれば、戦場へ投入できる主砲の数は1門だけなのです。

 上記2つの事情により、トラベラー宇宙の戦艦は、戦闘面で不遇な立場に置かれてしまいました。



 この問題を解決する手段が、巨大な輸送母艦に搭載されたバトルライダー、という編成です。
 ジャンプドライブを持たないので恒星間航行は行えませんが、 その分、小さい船体サイズに大きな攻撃力と防御力を詰め込んだバトルライダーを、 4隻〜10隻単位で纏めて1隻の戦艦と置き換える、と考えて下さい。

 主砲の数は、4倍〜10倍。
 敵の攻撃に対する耐久値も、4倍〜10倍。
 ジャンプドライブを備えた輸送母艦が脆弱であるため、そこが明らかな弱点となりますが、その部分に目を瞑れば、極めて強力な戦闘艦です。
 輸送母艦とバトルライダーを合わせて、1つのユニット(戦艦小艦隊)であると考えれば、 トラベラー宇宙のバトルライダーも戦艦の一種だと呼べるのではないでしょうか。
 これまでイメージされてきた戦艦とは、大きく異なった存在ですが。

                         ※2.戦艦(主力艦)へ戻る。




(3)戦艦と巡洋戦艦のサイズ比較

 巡洋戦艦が、戦艦のダウンサイジングというコンセプトではない、という意見には賛成。
 ですが、実在する(実在した)巡洋戦艦が、戦艦と比べると小さく見える、という意見にも一理ありますので、 英国の戦艦と巡洋戦艦を就役年で並べて、比較してみます。


            表2 戦艦と巡洋戦艦のサイズ比較

FSS_Fig02.gif - 5.20KB

 艦名の下に書かれている括弧付きの数値は就役年です。
 ですから、ドレッドノート(1906)とインヴィンシブル(1908)の2隻が、同時代に就役した戦艦と巡洋戦艦であり、
 リヴェンジ(1916)とレナウン(1916)も、同時代に就役した戦艦と巡洋戦艦である、ということです。
 最後のクイーン・エリザベス(1915)とフッド(1920)は少し就役年がずれていますけれど、他に適当な相手が居ないので組み合わせました。

 御覧の通り、戦艦と巡洋戦艦のサイズはほとんど変わりません。
 レナウンとフッドの2隻は、相方のリヴェンジとクイーン・エリザベスよりも大きなサイズとなっているほどです。
 ですから、巡洋戦艦を設計する場合は遠慮なく、戦艦と同サイズか大きなサイズで設計するようにして下さい。



 トラベラーの場合、宇宙船の移動速度は、ジャンプ・ドライブ、通常ドライブ、移動力の3つが存在する訳ですが、 これらはそれぞれ、恒星間の移動速度、惑星間の移動速度、戦闘時の回避能力、に該当すると考えられます。
 巡洋戦艦の本来の設計思想、装甲の代わりに「速力で防御する」という思想に従うのであれば、 大臣様のハウス設定のように「移動力を向上」させるべきであることに間違いはありません。

 しかし、攻撃力が劣勢な敵に対しては追撃し、攻撃力で優勢な敵からは離脱する、という作戦を想定しているのであれば、 「惑星間の移動速度=通常ドライブを向上」させる選択肢も有りでしょう。
 追撃して、敵艦を射程内に収めなければ、攻撃することは出来ませんし、 反対に、離脱して敵の射程外へと逃れれば、攻撃を受けることも無いからです。
 追撃のためにも、離脱のためにも、戦艦より優っている通常ドライブの性能は、極めて重要となりますし、 この場合は、無理に「移動力を向上」させる必要も無くなります。

 「恒星間の移動速度=ジャンプ・ドライブを向上」させて、 都合の良い星系へジャンプ・アウトする、という巡洋戦艦も考えられます。
 優勢な敵との交戦はジャンプで離脱することによって逃れる訳ですから、 運用制限は厳しいと思いますが、使い方によっては活躍するかも知れません。

                         ※2.戦艦(主力艦)へ戻る。




(4)モニター艦の定義

 「モニター艦(Monitor)」は、 南北戦争(1861〜65)の際に登場した北軍の装甲艦(USS Monitor)が始まりです。
 当時、軍艦と言えば木造船が常識だった時代に、その船体の全面を装甲で覆った装甲艦は、ほぼ無敵の存在となりました。
 しかし、装甲で重くなった船体と低い乾舷は、外洋で波を被ると容易に浸水して沈没する、という欠点を抱えています。
 そのため「モニター艦」は、外洋での航行がほぼ不可能ともなりました。

 トラベラーにおける「モニター艦」も、外洋での航行能力を持ちません。
 正確には恒星間の航行能力を持たないということであり、ジャンプ・ドライブを持たない戦闘艦となるでしょう。
 公式設定で明確に定義されている訳ではありませんが、巡洋艦と同規模、数万トンの船体サイズで、それなりの防御力(装甲とスクリーン)を備え、 尚且つ、主砲を搭載した戦闘艦が、トラベラーでは「モニター艦」と呼ばれているようです。

 前述したバトルライダーも、輸送母艦を編成の中に含まないのであれば恒星間の移動能力を持ちませんから、 「モニター艦」として扱われるかも知れません。

                  ※3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)へ戻る。




(5)航空戦艦の使い方

 航空戦艦と言えば、大臣様も例に挙げている通り、旧日本海軍の伊勢と日向の2隻が有名でしょう。
 実際の所、海軍は最後まで、伊勢と日向の2隻を「戦艦」と呼称していましたので、 この2隻を「航空戦艦」として扱って良いのか悩ましい処ではありますが。



 航空戦艦の使い方については、主力の航空母艦を4隻も失った旧日本海軍が、 機動部隊で運用できる航空機の数を増やすため、応急的に建造(改装)したものだ、 ということを前提に考えるのであれば、割と合理的だったりします。

 まず、当時の航空母艦1隻から一度に発進できる航空機の数は、30〜40機が上限でした。
 なので、航空戦艦2隻から発進する爆撃機40機は、空母1隻分に相当します。
 ですから、航空母艦1隻を新規建造することに比べれば、 戦艦2隻の改造(主砲4基8門の火力減少)は、時間的に経済的にも引き合っていました。
 航空母艦を1隻建造するためには最低でも3年の時間が必要ですから、 戦艦2隻の改装期間が6ヶ月〜9ヶ月(2隻合わせて15ヶ月)で済んだことも、大きなメリットだった訳です。

 次に、「伊勢」と「日向」の航空戦艦2隻は、発進した爆撃機の回収を行いません
 航空戦を一度行えば、何割かの航空機は帰って来ない(撃墜される)ことが一般的です。
 ですから、航空戦艦から発進して帰還した爆撃機は、格納庫に空きの出来た航空母艦へ着艦できる筈でした。
 あるいは、事前に決めておいた地上基地へ帰還する、という方法も考えられます。

 ですので、砲撃戦の最中に航空機の発進や回収が行えないとか、
 主砲の爆風や砲撃戦の被害によって飛行甲板が使えなくなると困るとか、
 航空戦艦に搭載されている航空燃料や爆弾類が危険物であるとか、
 飛行甲板のダメージが致命的だとかいった指摘は、意味がありません。

 想定通りの運用をしているのであれば、 ネット上で指摘されている「航空戦艦の弱点」は、その多くが解決できる訳です。
 的外れな仮想戦記の所為で、航空戦艦の運用方法が捻じ曲がって伝えられ、 間違った運用方法を前提として批判されている現状は、何とも納得がいきません。

 史実では搭載する予定の爆撃機の開発が間に合わなかったとか、問題も出ていますが。



 トラベラーにおいて、戦艦等の主力艦へ多数の艦載艇(戦闘艇)を搭載する場合、 発進チューブや格納庫、乗組員の居住区画が戦闘艦にとってのデッドウェイト(デッドスペース)になる、 という指摘は御尤もであります。
 しかし、トラベラーの宇宙船戦闘ルールは大型艦1隻が主砲の一撃で撃破される可能性が高いので、 被害の分散を心掛ける(空母1隻を失うことで、艦隊が抱える戦闘艇の多くが失われるというリスクを避ける)のであれば、 戦艦1隻に40機程度の戦闘艇、巡洋艦1隻に10隻程度の戦闘艇、を搭載しておくことは、理に適っているとも考えました。

 1万排水素トン当たり1隻の発進が可能、というルールはMT版には見当たりませんが、 その他の多くのルールがCT版宇宙海軍のものと共通している以上、 この発進設備だけルールが違うと言うことも無いでしょう。

 なので私は「発進チューブ無し」でも、
 20万トンの戦艦は1ターン当たり20隻、4万トンの巡洋艦は1ターン当たり4隻、の戦闘艇発進が可能だ、
という解釈をしております。

                  ※3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)へ戻る。




(6)巡洋艦の進化論

 巡洋艦の定義については、色々な書籍で色々な方が議論されておりますので、これは私なりの定義です。



 まず何より、巡洋艦は戦闘の面で最強では無い=攻撃力と防御力では戦艦に劣る、という事実が重要でしょう。
 最強の戦闘艦ではありませんから、
 「武装、装甲他の面で少しでも自らが劣位に立たされるような敵艦船との交戦は、その速度によりできる限り避ける
 ことが、行動方針の基本となりました。

 つまり、敵の戦艦(主力艦)よりも速度で優っていることが、極めて重要になってくる訳です。
 実際に初期の巡洋艦は、その速度性能を優先させるため、装甲を備えていませんでした。
 巡洋艦は「装甲を持たない」ことが常識だったのです。



 しかし火砲が発達してくると、流石に「装甲を持たない」ままでは、危なくなってきました。
 遂に巡洋艦も「装甲を持つ」ようになります。

 それらの中で、機関部等の主要部分だけを守る(Protect)ため、傾斜した甲板装甲を備えたものが 「防護巡洋艦(Protected Cruiser)」、
 砲塔や艦橋など上部構造も守るため、甲板装甲に加えて舷側装甲(Armor)を備えたものが 「装甲巡洋艦(Armored Cruiser)」、でした。

 巡洋艦の中で、比較的小さく、装甲で守られている部分が少なく、速度の速いものが「防護巡洋艦」、
 比較的大きく、装甲で守られている部分が多く、速度は遅いけれど、 戦艦よりは速く動けるものが「装甲巡洋艦」に該当すると思われます。

 どちらであっても、魚雷を積めば、あるいは、水雷艇を撃退するための火砲を積めば 「水雷巡洋艦(Torpedo Cruiser)」となりますし、
 更に高速な速度性能を与えられれば「偵察巡洋艦(Scout Cruiser)」として活用されるでしょう。

 弩級戦艦の登場以前、戦艦の最高速度は18ノット。
 防護巡洋艦と装甲巡洋艦の最高速度は20〜21ノット。
 偵察巡洋艦の最高速度は25ノット、という感じでした。
 戦闘力で劣る巡洋艦ほど最高速度が速い=逃げることができる、ということです。
 ですから、速度による棲み分けは、きちんと成立していました。



 ところが巡洋戦艦の登場によって、上記の棲み分けが崩れます。
 上記の中へ、最高速度25ノットの巡洋戦艦が割り込んでくることになりました。

 最高速度21ノットの防護巡洋艦と装甲巡洋艦は、巡洋戦艦から逃げられません。
 かろうじて、一部の偵察巡洋艦が逃げられるだけです。
 巡洋戦艦に対して、火力でも防御力でも速度でも劣っている巡洋艦は、戦場で生き延びること、情報を持ち帰ることが出来なくなりました。
 こうして、従来の巡洋艦は一気に旧式化してしまったのです。

 そこで、巡洋戦艦と同じ技術で建造された、27ノット以上の高速を発揮できる 「軽巡洋艦(Light Cruiser)」が登場しました。
 軽い(速い)「装甲巡洋艦(Armored Cruiser)」という意味合いで、 「軽巡洋艦(Light Armored Cruiser)」だったのか、
 「巡洋戦艦(Battle Cruiser)」に対して、軽い(速い)という意味で、 「軽巡洋艦(Light Cruiser)」だったのか、
 このあたりの事情は良く分かりません。

 こうして世界各国は、手持ちの旧式巡洋艦を「軽巡洋艦」へ置き換えるようになりました。
 軽巡洋艦は順調に、大型化、高速化、そして大火力化の道を歩んでいきます。



 その状況が変わったのは、1922年のワシントン条約。
 条約では、巡洋艦の大きさは1万トン以下であり、主砲は20cm以下の大きさしか搭載してはいけない、という制限が課されます。
 条約において戦艦の新規建造を禁止したので、その制限は、既に建造済みの戦艦の存在意義を維持するためのものでもあった筈ですが、 巡洋艦は条約の枠に合わせて、歪な発達を遂げることになりました。
 枠(大きさの建造制限)があるならば、その枠の中でぎりぎりの大きさを作り、出来るだけ強くしよう、という方向へ発達してしまったのです。
 建造が禁止された戦艦の代わりに、今度は巡洋艦の建艦競争が始まってしまった、というオチですね。

 そして1930年のロンドン条約によって、今度は巡洋艦の建造数にも制限が課せられました。
 その中で、主砲口径が20センチ(6インチ)のものが カテゴリーAの「重巡洋艦(Heavy Cruiser)」と呼ばれ、
 主砲の口径が15センチ(6インチ)のものが カテゴリーBの「軽巡洋艦(Light Cruiser)」と呼ばれるようになります。

 建造数の制限は、重巡洋艦と軽巡洋艦それぞれに個別で適用されますが、主砲の口径を除けば、両者の性能に違いはありません。
 ですから大臣様が書かれているように、重巡洋艦よりも大きな軽巡洋艦、という代物も建造されました。
 このあたりは世界各国の巡洋艦に対する戦略や外交が関わってくるので割愛しますが、 ロンドン条約の締結前後では、軽巡洋艦の定義が大きく異なっている、ということに注意して下さい。

                             ※4.巡洋艦へ戻る。




(7)駆逐艦の進化論

 「駆逐艦(Destroyer)」の起源は、 「水雷艇駆逐艦(Torpedo Boat Destroyer)」にありました。

 魚雷(魚形水雷)という、とても強力ですが射程の短い新兵器を抱えて、こっそりと戦艦へ近付いてくる水雷艇。
 水雷艇は小型で動きが速いので、それを撃退するためには、それなりに強力な火力と速度を備えた戦闘艦が、多数必要です。

 水雷艇と同じサイズの駆逐艇は十分な速度を発揮しますが、水雷艇を撃破するための火力が足りません。
 モニター艦のような鈍足艦は強力な火力があっても、水雷艇を追い掛けるための速度が足りません。
 巡洋艦ならば火力と速度を備えていますが、大型で高価なため、十分な数を用意できません。

 という背景から生まれた新しい艦種が「水雷艇駆逐艦」です。
 登場してみると、性能的に「水雷艇」よりも使い勝手が良い、ということが明らかになり、 魚雷を搭載して、敵主力艦への攻撃を担当するようになりました。
 この時点で、艦種名から「水雷艇」の部分が消えて、 単なる「駆逐艦」と呼ばれるようになっていたらしいです。
 個人的には納得いきませんが。

 「駆逐艦」は小回りが利くことから、 対潜装備(爆雷やソナー)を積んで、対潜任務も担当するようになりました。
 これだけの装備があれば、通商破壊を企てる敵巡洋艦や潜水艦との交戦も可能ですから、 「護衛艦」としても使われるようになります。
 高速を発揮できるので「偵察艦」としても有用。

 ある意味、万能の戦闘艦である、と言えるのではないでしょうか。



 もちろん、万能な「駆逐艦」は建造費が高価になりますから、 高性能のままでは必要な時に、十分な数を用意できなくなってしまいます。
 ですから、艦隊決戦のために性能を極限まで高めた「艦隊駆逐艦」であっても、 数を揃えるため、故意に性能を下げる、ということは有りえるでしょう。
 更に建造費を下げるため、その性能を護衛任務に就けるだけのレベルまでまで落としたものが「護衛駆逐艦」となります。
 「駆逐艦」の中には、主力艦への攻撃力を諦めて、魚雷を降ろしたものも存在しました。

 「駆逐艦」は、どんなに高性能であっても、数が揃わなければ使えません。
 過剰な性能が無駄になるだけです。
 そして同時に、数が沢山あっても、性能が低過ぎれば使えません。
 そういった意味では、性能と建造費のバランスが最も難しい艦種でもあるでしょう。

                             ※5.駆逐艦へ戻る。




(8)駆逐艦未満の戦闘艦艇

 トラベラー宇宙の場合、公式設定として、
 1千排水素トンの「護衛駆逐艦」が存在する一方で、
 5千排水素トンの「護衛艦」が存在していたりします。
 ですから、単純に大きさだけで「駆逐艦」と「護衛艦」を区別できませんでした。
 少々、厄介なのです。
 このあたりは、性能や運用方法で区別するしかないような気もしますが、私には上手く説明できる自信もありません。
 艦隊護衛に特化しているか、あるいは万能艦か、という違いでしょうか?



 「フリゲート」や「コルベット」は、 小さいサイズの「駆逐艦」か「護衛艦」、という認識で良いような気がします。
 場合によっては、ジャンプ能力を持っていない、可能性さえもあるでしょう。
 商船の護衛や沿岸部の哨戒といった任務を果たせるのであれば、どんな性能であっても問題はありません。



 「駆逐艇」には、公式設定の「戦闘艇(Fighter)」が該当していると思います。
 トラベラー宇宙の「戦闘艇」は、 20世紀テラに登場した「航空機(Airplane)」と、その性能が大きく異なっていますから。
 特に大きく異なる点は、その移動速度と視界。

 20世紀テラの「航空機」は、従来の艦艇と比べて、10倍〜20倍の速度で移動できます。
 また、飛行する高度が高いので、水平線に邪魔されることなく、10倍以上の距離を見通すことが可能でした。
 しかし、トラベラー宇宙の「戦闘艇」は他の艦艇と同じで、最大6Gの加速性能しか持ち得ません。
 探知/追跡能力も他の艦艇と同じです。

 ですからトラベラーの「戦闘艇」は、20世紀テラの「駆逐艇」と同じように、 水面を高速で移動する、小型軽装備の武装艇である、と考えました。

 興味のある方は、Wikipediaの「高速戦闘艇(FAC:Fast Attack Craft)」も御覧下さい。
 具体的なイメージが掴みやすくなると思います。
 「高速戦闘艇(FAC)」の小型版が、トラベラーでは「戦闘艇」に該当し、 その大型版が、次項の「惑星防衛艦(System Defence Boat)」に該当するのでしょう。

                        ※6.その他の戦闘艦艇へ戻る。




(9)惑星防衛艦

 トラベラー独特の艦種として「惑星防衛艦(System Defence Boat)」が存在します。
 恒星間の移動能力を放棄すること、つまり、ジャンプドライブとジャンプに必要な燃料タンクを積まないことで、
 その分のスペースを装甲と武装とパワープラントに振り向けた、強力な戦闘艦のことです。

 公式設定(帝国百科等)の記述によれば、ジャンプ能力を持たない戦闘艦は、 船体容積にして2倍のジャンプ能力を持つ戦闘艦と対等に戦うことが可能である、とのこと。
 幾つかの戦闘艦を試作して検証してみたところ、その戦闘艦のテックレベルや備えているジャンプ能力にもよりますが、概ね、事実でした。
 船体サイズが半分で済みますから、建造費もほぼ半額となります。
 星系防衛に頭を悩ませる帝国政府や星系政府が、ジャンプ能力を持たない「惑星防衛艦」に飛びつくことは、 必然でしょう。

 欠点としてはジャンプ能力を持たないことですが、その解決策については次項で説明します。



 「惑星防衛艦」の大きさは、 帝国百科の記述によれば100トン〜5,000トンのサイズのものが存在するそうです。
 このサイズを超えるものは、恐らく「モニター艦」と呼ばれるのでしょう。
 そして100トン未満のものが、「戦闘艇(Fighter)」と呼ばれているようです。

 但し、公式設定の「惑星防衛艦」で気になる点は、 これらの「惑星防衛艦」が艦隊戦闘に特化し過ぎていること。
 平時の哨戒や不審船の臨検に用いるのであれば、海兵隊員の乗り込みが不可欠な筈です。
 公式設定の通り、「惑星防衛艦」を哨戒や臨検に用いるためには、少なからぬ設計変更が必要になるでしょう。

                           ※7.海防任務艦へ戻る。




(10)トラベラー宇宙の航空母艦

 2つ前の項で述べた通り、トラベラーに登場する「戦闘艇(Fighter)」は、 「航空機(Airplane)」ではありません。
 「戦艦」や「巡洋艦」、 「駆逐艦」と同レベルの速度でしか移動できない、小型軽装備の武装艇です。

 20世紀テラの場合、「航空機」と「戦艦」との間には移動速度に大きな差がありますから、 「航空機」は水平線の彼方から高速で飛来して、 「戦艦」等を攻撃して、すぐさま離脱することが可能でしょう。

 しかしトラベラーの場合、「戦闘艇」と「戦艦」との間には それほど大きな速度差がありません。
 通常ドライブの性能は6Gですから、両者が同じ6Gの通常ドライブを搭載していたのであれば、同じ速度での移動が可能です。
 ですから、「戦闘艇」を発見した「戦艦」は、 戦況が不利だと判断すれば、別方向へ加速することで「戦闘艇」との戦闘を回避することが出来ます。
 戦況が有利であるならば、離脱する「戦闘艇」を追い掛けて、空母の位置を突き止める事さえ可能でしょう。
 「戦闘艇」による一方的なアウトレンジ攻撃は、トラベラーにおいて、かなり困難な戦術となりました。

 つまり、トラベラーにおける「航空母艦」は、 実は、多数の艦載機を運用する「航空母艦」ではなく、 多数の艦載艇を運用する「戦闘艇母艦」だった、ということです。
 この違い、結構、重要だったりしますので、御注意下さい。
 離脱する「戦闘艇」を、敵の「戦艦」が追い掛けて来たら、 合流地点に居た空母が発見されて、攻撃を受けるかも知れないのですから。

                            ※8.航空母艦へ戻る。




(11)トラベラー宇宙の護衛空母

 「護衛空母(Escort Carrier)」は、 第二次世界大戦中に量産された低速の小型空母が始まりです。

 輸送船団の護衛に高価な「正規空母/艦隊空母(Carrier Vessel / Fleet Carrier)」は勿体無い。
 搭載機数は少なくても構わないので、船体は小型で充分。
 低速の商船に随伴できれば良いので、高速の発揮は不要。
 といった事情で、安価な小型空母(=護衛空母)の出番となった訳です。

 大臣様の説明には「輸送船団を敵潜水艦から護衛する」と書かれていましたが、 「輸送船団を敵の航空機や通商破壊艦から護衛する」任務も担当していました。
 具体的には、敵の偵察機や爆撃機を、護衛空母に搭載した戦闘機で迎撃したり、
 護衛空母に搭載した偵察機や対潜哨戒機で周囲の海域を捜索して、 通商破壊艦や潜水艦を発見したら、それらの敵艦と接触しないように輸送船団の進路を変えたり、 護衛船団の一部を差し向けて通商破壊艦や潜水艦を撃破したり、といったことを行います。

 ですからトラベラーにおいても、輸送船団に随伴する護衛空母の主要な任務は、 搭載した戦闘艇を探知機の有効圏外まで哨戒させて、不審な船舶(=敵通商破壊艦)を遠方で早期に発見することである、と考えました。
 哨戒している戦闘艇を追跡されて、護衛空母と輸送船団の位置を突き止められてしまうリスクもある訳ですが、 敵を遠方で発見できるリターンもありますので、リスクとリターンのバランスを良く考えるべきだと思います。



 また「遠方の基地への航空機輸送任務にも用いられ」る件ですが、 空母の戦闘力を維持するため、前線への艦載機の輸送と補充は、極めて重要でした。
 空母が艦載機を発進させて戦闘を行えば必ず、撃破されるなどの理由で空母へ帰還できない艦載機が生じます。
 仮に出撃した艦載機の3割が未帰還であれば、その後、空母の攻撃力は3割が減少しますので、その影響は看過できません。
 早急に消耗した艦載機を補充して、その攻撃力を回復させる必要が生じました。

 艦載機を補充するためには、艦載機の在庫がある根拠地まで戻る必要があります。
 しかし補充が必要になる度、正規空母を根拠地まで戻すことは、時間的に勿体無いことです。
 せっかくの空母が遊兵化して、前線の空母戦力が減少してしまいますから。

 なので、根拠地から前線まで、艦載機を輸送する専門の輸送艦(運搬艦)があれば良い訳です。
 後述する運搬艦がそれに該当する訳ですが、 砲火の飛び交う前線で、クレーンを使ってのんびりと艦載機を移し替える時間があるとは限りません。
 ですから艦載機は自力で輸送艦を発進し、正規空母へ着艦できる方が好ましいのです。
 そうすれば、艦載機の移し替えに費やす時間は最小限で済みますから。

 つまり、艦載機の輸送艦は、それ自身が空母であることが好ましい、ということ。
 この任務に護衛空母が充てられることは、必然だと言えるでしょう。
 トラベラー世界においても、戦闘艇の輸送任務には護衛空母が充てられている筈です。



 3つめの任務は「艦載機による対地攻撃」。
 上陸作戦を、航空機によって支援する任務であり、戦闘機による制空任務と爆撃機による対地攻撃任務の双方が考えられるでしょう。
 もちろん、反撃に出てきた敵航空機や敵艦艇との戦闘も有り得ます。

 こうした任務には大量の航空機が必要とされるので、正規空母だけでは数が足りません。
 正規空母の数が足りているとしても、敵航空機や敵艦艇に攻撃されるリスクが極めて高いので、正規空母を失う可能性が高くなります。
 という訳で、この任務も護衛空母の担当となりました。

 トラベラー世界においても、高人口世界の攻略に戦闘艇は有用です。
 索敵や偵察、対地攻撃、対艦攻撃、どんな任務にも対応できる戦闘艇は、役に立ちます。
 しかし、敵星系の防衛艦隊を撃破した後であっても、頑強なSDBが残存していたら、それらの敵戦力逆襲を仕掛けてくるかも知れません。
 その際に正規空母を撃破されたら大損害。
 そのためにも、護衛空母が充てられている可能性は高いでしょう。

 最初にも書いた通り、護衛空母は安価であることが最優先です。
 安価な護衛空母ならば、撃破されても比較的、損害は小さくて済みますから。

                            ※8.航空母艦へ戻る。




(12)トラベラー宇宙の商船改装空母

 古代テラの史実(第二次世界大戦)で活躍した空母の中には、 改造空母というものがありました。
 本来、空母ではない艦船(主に商船)を改造して、飛行甲板を設置。
 その上で航空機を運用できるようにした艦船のことです。
 カタパルトだけを設置して、航空機の発進だけを行えるようにした艦船(CAMシップ)も存在しますので、 これも改造空母の中へ含めておきましょう。

 建造済みの商船を改造するのですから、新規に空母を建造するより早く完成します。
 その建造費(改装費)も安く済むでしょう。
 しかし、速度や防御力、搭載能力などは多くの場合、正規空母には及びません。
 正規空母として運用される高性能な改造空母は極一部。
 その多くは護衛空母として運用されています。

 問題は、このタイプの改造空母をトラベラーのルールで再現できるのか? ということでしょうか。



 トラベラー(CT版1兆クレジット艦隊)には宇宙船の改装に関して、 発進用設備(発進チューブ)を新たに取り付けたり、増やしたりすることはできません、というルールが存在していました。
 ですから史実のように、軍艦や商船を改装して飛行甲板やカタパルトを設置する、という訳にはいきません。

 最初から発進チューブを搭載した形で建造しておき、完成したら発進チューブを撤去。
 その後は発進チューブ無しの軍艦/商船として運航しているのであれば、再度の発進チューブ取付は有りでしょう。
 公式設定のライトニング級辺境巡洋艦の一部は、そんな流れで予備役化と再艤装を行っておりますが、実際に行うとなればかなり面倒です。
 発進チューブの分だけ建造費は高くなりますし、必要な時に改装可能な軍艦/商船が手元にあるとも限りません。
 史実の中にも空母への改装を前提にして建造された商船は確かに存在していますが、 それがすべてという訳でも無いのです。



 ですから、トラベラーで改造空母を登場させるのであれば、 発進用設備(発進チューブ)が不要な船体形状、形状コード7の分散構造が主流になるかも知れません。

 個人的には、装甲を追加できず、ガス・ジャイアントでの燃料スクープが行えない分散構造の空母は、 運用上のリスクが大きいと思うのですが、そのあたりの諸問題は運用を工夫することでフォローが可能。
 分散構造ならば、貨物スペースを戦闘艇の格納庫やパイロットと整備員の居住区に置き換えることで、 どんな用途の軍艦/商船であっても改造空母に転用できるということは、大きなメリットです。

 主力の正規空母が分散構造をしているのであれば、 その海軍は恐らく、分散構造の空母運用にも慣れていることでしょう。
 補助的な任務を行う改造空母が同じ分散構造をしていても、それほど問題にはならないと思われます。


                            ※8.航空母艦へ戻る。




(13)航空母艦の運用能力

 大臣様が8.航空母艦でも説明されていましたが、 航空母艦には「航空機を離艦・着艦させる」能力だけではなく、 「航空機に対する整備能力と航空燃料や武器類の補給能力を有し、海上において単独で航空戦を継続する」 能力が不可欠です。
 しかし残念ながら、トラベラーの公式ルールに「整備や補給」に関するルールはほとんど存在しないため、 それらの能力を、トラベラーの航空母艦へ反映させることが出来ません。



 例えば、戦闘を終えて航空母艦へ帰還した航空機が再出撃を行うためには、整備点検、燃料や兵器の補給、故障/損傷個所の修理が不可欠です。
 実際、航空機の設計と運用を主体とした「MT版COACC」には、 航空機1機に対して必要な「整備ポイント」が設定されており、 必要な「整備ポイント」を供給するために、十分な人数の整備員を用意しなければならない、 というルールが用意されていました。
 「整備ポイント」は概ね、「人・時間(Man Hours)」に相当していますので、 必要な「整備ポイント」が16ポイントならば、整備員2人の8時間労働か、 あるいは、整備員16人の1時間労働が必要になる、といったことを意味している訳です。

 ところが、CTやMTで取り扱われている「宇宙船」には、そういったルールが存在しません。

 整備点検に必要な時間は不明(ルール無し)。
 燃料や兵器の補給に費やされる時間も不明(ルール無し)。
 損傷個所の修理は「応急修理」だけが可能であり、 本格的な修理はAクラスかBクラスの宇宙港(造船所)を利用しなければ出来ないというルール。

 特に最後の修理に関するルールは重要で、このルールが存在する所為で、航空母艦の艦載機運用が大きく制限されてしまいました。
 史実の航空母艦の格納庫では、航空機の修理や定期整備、エンジンの交換まで可能だったのですけれど、 トラベラー世界の航空母艦とは、整備や修理の面で大きく異なっているようです。
 ですから、航空母艦の「整備・補給」能力を再現するためには、 どうしてもハウス・ルールによる対応が必要となるでしょう。


                   ※10.蛇足的な航空機運用についてへ戻る。





12.まとめ


 大臣様から頂いた原稿を基に、戦闘艦艇の概略と区別、その歴史などを纏めました。
 皆様がトラベラーをプレイするための参考資料として頂ければ幸いです。






 2018.06.24 初投稿