艦名の下に書かれている括弧付きの数値は就役年です。
ですから、ドレッドノート(1906)とインヴィンシブル(1908)の2隻が、同時代に就役した戦艦と巡洋戦艦であり、
リヴェンジ(1916)とレナウン(1916)も、同時代に就役した戦艦と巡洋戦艦である、ということです。
最後のクイーン・エリザベス(1915)とフッド(1920)は少し就役年がずれていますけれど、他に適当な相手が居ないので組み合わせました。
御覧の通り、戦艦と巡洋戦艦のサイズはほとんど変わりません。
レナウンとフッドの2隻は、相方のリヴェンジとクイーン・エリザベスよりも大きなサイズとなっているほどです。
ですから、巡洋戦艦を設計する場合は遠慮なく、戦艦と同サイズか大きなサイズで設計するようにして下さい。
トラベラーの場合、宇宙船の移動速度は、ジャンプ・ドライブ、通常ドライブ、移動力の3つが存在する訳ですが、
これらはそれぞれ、恒星間の移動速度、惑星間の移動速度、戦闘時の回避能力、に該当すると考えられます。
巡洋戦艦の本来の設計思想、装甲の代わりに「速力で防御する」という思想に従うのであれば、
大臣様のハウス設定のように「移動力を向上」させるべきであることに間違いはありません。
しかし、攻撃力が劣勢な敵に対しては追撃し、攻撃力で優勢な敵からは離脱する、という作戦を想定しているのであれば、
「惑星間の移動速度=通常ドライブを向上」させる選択肢も有りでしょう。
追撃して、敵艦を射程内に収めなければ、攻撃することは出来ませんし、
反対に、離脱して敵の射程外へと逃れれば、攻撃を受けることも無いからです。
追撃のためにも、離脱のためにも、戦艦より優っている通常ドライブの性能は、極めて重要となりますし、
この場合は、無理に「移動力を向上」させる必要も無くなります。
「恒星間の移動速度=ジャンプ・ドライブを向上」させて、
都合の良い星系へジャンプ・アウトする、という巡洋戦艦も考えられます。
優勢な敵との交戦はジャンプで離脱することによって逃れる訳ですから、
運用制限は厳しいと思いますが、使い方によっては活躍するかも知れません。
※2.戦艦(主力艦)へ戻る。
(4)モニター艦の定義
「モニター艦(Monitor)」は、
南北戦争(1861〜65)の際に登場した北軍の装甲艦(USS Monitor)が始まりです。
当時、軍艦と言えば木造船が常識だった時代に、その船体の全面を装甲で覆った装甲艦は、ほぼ無敵の存在となりました。
しかし、装甲で重くなった船体と低い乾舷は、外洋で波を被ると容易に浸水して沈没する、という欠点を抱えています。
そのため「モニター艦」は、外洋での航行がほぼ不可能ともなりました。
トラベラーにおける「モニター艦」も、外洋での航行能力を持ちません。
正確には恒星間の航行能力を持たないということであり、ジャンプ・ドライブを持たない戦闘艦となるでしょう。
公式設定で明確に定義されている訳ではありませんが、巡洋艦と同規模、数万トンの船体サイズで、それなりの防御力(装甲とスクリーン)を備え、
尚且つ、主砲を搭載した戦闘艦が、トラベラーでは「モニター艦」と呼ばれているようです。
前述したバトルライダーも、輸送母艦を編成の中に含まないのであれば恒星間の移動能力を持ちませんから、
「モニター艦」として扱われるかも知れません。
※3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)へ戻る。
(5)航空戦艦の使い方
航空戦艦と言えば、大臣様も例に挙げている通り、旧日本海軍の伊勢と日向の2隻が有名でしょう。
実際の所、海軍は最後まで、伊勢と日向の2隻を「戦艦」と呼称していましたので、
この2隻を「航空戦艦」として扱って良いのか悩ましい処ではありますが。
航空戦艦の使い方については、主力の航空母艦を4隻も失った旧日本海軍が、
機動部隊で運用できる航空機の数を増やすため、応急的に建造(改装)したものだ、
ということを前提に考えるのであれば、割と合理的だったりします。
まず、当時の航空母艦1隻から一度に発進できる航空機の数は、30〜40機が上限でした。
なので、航空戦艦2隻から発進する爆撃機40機は、空母1隻分に相当します。
ですから、航空母艦1隻を新規建造することに比べれば、
戦艦2隻の改造(主砲4基8門の火力減少)は、時間的に経済的にも引き合っていました。
航空母艦を1隻建造するためには最低でも3年の時間が必要ですから、
戦艦2隻の改装期間が6ヶ月〜9ヶ月(2隻合わせて15ヶ月)で済んだことも、大きなメリットだった訳です。
次に、「伊勢」と「日向」の航空戦艦2隻は、発進した爆撃機の回収を行いません。
航空戦を一度行えば、何割かの航空機は帰って来ない(撃墜される)ことが一般的です。
ですから、航空戦艦から発進して帰還した爆撃機は、格納庫に空きの出来た航空母艦へ着艦できる筈でした。
あるいは、事前に決めておいた地上基地へ帰還する、という方法も考えられます。
ですので、砲撃戦の最中に航空機の発進や回収が行えないとか、
主砲の爆風や砲撃戦の被害によって飛行甲板が使えなくなると困るとか、
航空戦艦に搭載されている航空燃料や爆弾類が危険物であるとか、
飛行甲板のダメージが致命的だとかいった指摘は、意味がありません。
想定通りの運用をしているのであれば、
ネット上で指摘されている「航空戦艦の弱点」は、その多くが解決できる訳です。
的外れな仮想戦記の所為で、航空戦艦の運用方法が捻じ曲がって伝えられ、
間違った運用方法を前提として批判されている現状は、何とも納得がいきません。
史実では搭載する予定の爆撃機の開発が間に合わなかったとか、問題も出ていますが。
トラベラーにおいて、戦艦等の主力艦へ多数の艦載艇(戦闘艇)を搭載する場合、
発進チューブや格納庫、乗組員の居住区画が戦闘艦にとってのデッドウェイト(デッドスペース)になる、
という指摘は御尤もであります。
しかし、トラベラーの宇宙船戦闘ルールは大型艦1隻が主砲の一撃で撃破される可能性が高いので、
被害の分散を心掛ける(空母1隻を失うことで、艦隊が抱える戦闘艇の多くが失われるというリスクを避ける)のであれば、
戦艦1隻に40機程度の戦闘艇、巡洋艦1隻に10隻程度の戦闘艇、を搭載しておくことは、理に適っているとも考えました。
1万排水素トン当たり1隻の発進が可能、というルールはMT版には見当たりませんが、
その他の多くのルールがCT版宇宙海軍のものと共通している以上、
この発進設備だけルールが違うと言うことも無いでしょう。
なので私は「発進チューブ無し」でも、
20万トンの戦艦は1ターン当たり20隻、4万トンの巡洋艦は1ターン当たり4隻、の戦闘艇発進が可能だ、
という解釈をしております。
※3.戦艦ではない戦艦(非主力艦)へ戻る。
(6)巡洋艦の進化論
巡洋艦の定義については、色々な書籍で色々な方が議論されておりますので、これは私なりの定義です。
まず何より、巡洋艦は戦闘の面で最強では無い=攻撃力と防御力では戦艦に劣る、という事実が重要でしょう。
最強の戦闘艦ではありませんから、
「武装、装甲他の面で少しでも自らが劣位に立たされるような敵艦船との交戦は、その速度によりできる限り避ける」
ことが、行動方針の基本となりました。
つまり、敵の戦艦(主力艦)よりも速度で優っていることが、極めて重要になってくる訳です。
実際に初期の巡洋艦は、その速度性能を優先させるため、装甲を備えていませんでした。
巡洋艦は「装甲を持たない」ことが常識だったのです。
しかし火砲が発達してくると、流石に「装甲を持たない」ままでは、危なくなってきました。
遂に巡洋艦も「装甲を持つ」ようになります。
それらの中で、機関部等の主要部分だけを守る(Protect)ため、傾斜した甲板装甲を備えたものが
「防護巡洋艦(Protected Cruiser)」、
砲塔や艦橋など上部構造も守るため、甲板装甲に加えて舷側装甲(Armor)を備えたものが
「装甲巡洋艦(Armored Cruiser)」、でした。
巡洋艦の中で、比較的小さく、装甲で守られている部分が少なく、速度の速いものが「防護巡洋艦」、
比較的大きく、装甲で守られている部分が多く、速度は遅いけれど、
戦艦よりは速く動けるものが「装甲巡洋艦」に該当すると思われます。
どちらであっても、魚雷を積めば、あるいは、水雷艇を撃退するための火砲を積めば
「水雷巡洋艦(Torpedo Cruiser)」となりますし、
更に高速な速度性能を与えられれば「偵察巡洋艦(Scout Cruiser)」として活用されるでしょう。
弩級戦艦の登場以前、戦艦の最高速度は18ノット。
防護巡洋艦と装甲巡洋艦の最高速度は20〜21ノット。
偵察巡洋艦の最高速度は25ノット、という感じでした。
戦闘力で劣る巡洋艦ほど最高速度が速い=逃げることができる、ということです。
ですから、速度による棲み分けは、きちんと成立していました。
ところが巡洋戦艦の登場によって、上記の棲み分けが崩れます。
上記の中へ、最高速度25ノットの巡洋戦艦が割り込んでくることになりました。
最高速度21ノットの防護巡洋艦と装甲巡洋艦は、巡洋戦艦から逃げられません。
かろうじて、一部の偵察巡洋艦が逃げられるだけです。
巡洋戦艦に対して、火力でも防御力でも速度でも劣っている巡洋艦は、戦場で生き延びること、情報を持ち帰ることが出来なくなりました。
こうして、従来の巡洋艦は一気に旧式化してしまったのです。
そこで、巡洋戦艦と同じ技術で建造された、27ノット以上の高速を発揮できる
「軽巡洋艦(Light Cruiser)」が登場しました。
軽い(速い)「装甲巡洋艦(Armored Cruiser)」という意味合いで、
「軽巡洋艦(Light Armored Cruiser)」だったのか、
「巡洋戦艦(Battle Cruiser)」に対して、軽い(速い)という意味で、
「軽巡洋艦(Light Cruiser)」だったのか、
このあたりの事情は良く分かりません。
こうして世界各国は、手持ちの旧式巡洋艦を「軽巡洋艦」へ置き換えるようになりました。
軽巡洋艦は順調に、大型化、高速化、そして大火力化の道を歩んでいきます。
その状況が変わったのは、1922年のワシントン条約。
条約では、巡洋艦の大きさは1万トン以下であり、主砲は20cm以下の大きさしか搭載してはいけない、という制限が課されます。
条約において戦艦の新規建造を禁止したので、その制限は、既に建造済みの戦艦の存在意義を維持するためのものでもあった筈ですが、
巡洋艦は条約の枠に合わせて、歪な発達を遂げることになりました。
枠(大きさの建造制限)があるならば、その枠の中でぎりぎりの大きさを作り、出来るだけ強くしよう、という方向へ発達してしまったのです。
建造が禁止された戦艦の代わりに、今度は巡洋艦の建艦競争が始まってしまった、というオチですね。
そして1930年のロンドン条約によって、今度は巡洋艦の建造数にも制限が課せられました。
その中で、主砲口径が20センチ(6インチ)のものが
カテゴリーAの「重巡洋艦(Heavy Cruiser)」と呼ばれ、
主砲の口径が15センチ(6インチ)のものが
カテゴリーBの「軽巡洋艦(Light Cruiser)」と呼ばれるようになります。
建造数の制限は、重巡洋艦と軽巡洋艦それぞれに個別で適用されますが、主砲の口径を除けば、両者の性能に違いはありません。
ですから大臣様が書かれているように、重巡洋艦よりも大きな軽巡洋艦、という代物も建造されました。
このあたりは世界各国の巡洋艦に対する戦略や外交が関わってくるので割愛しますが、
ロンドン条約の締結前後では、軽巡洋艦の定義が大きく異なっている、ということに注意して下さい。
※4.巡洋艦へ戻る。
(7)駆逐艦の進化論
「駆逐艦(Destroyer)」の起源は、
「水雷艇駆逐艦(Torpedo Boat Destroyer)」にありました。
魚雷(魚形水雷)という、とても強力ですが射程の短い新兵器を抱えて、こっそりと戦艦へ近付いてくる水雷艇。
水雷艇は小型で動きが速いので、それを撃退するためには、それなりに強力な火力と速度を備えた戦闘艦が、多数必要です。
水雷艇と同じサイズの駆逐艇は十分な速度を発揮しますが、水雷艇を撃破するための火力が足りません。
モニター艦のような鈍足艦は強力な火力があっても、水雷艇を追い掛けるための速度が足りません。
巡洋艦ならば火力と速度を備えていますが、大型で高価なため、十分な数を用意できません。
という背景から生まれた新しい艦種が「水雷艇駆逐艦」です。
登場してみると、性能的に「水雷艇」よりも使い勝手が良い、ということが明らかになり、
魚雷を搭載して、敵主力艦への攻撃を担当するようになりました。
この時点で、艦種名から「水雷艇」の部分が消えて、
単なる「駆逐艦」と呼ばれるようになっていたらしいです。
個人的には納得いきませんが。
「駆逐艦」は小回りが利くことから、
対潜装備(爆雷やソナー)を積んで、対潜任務も担当するようになりました。
これだけの装備があれば、通商破壊を企てる敵巡洋艦や潜水艦との交戦も可能ですから、
「護衛艦」としても使われるようになります。
高速を発揮できるので「偵察艦」としても有用。
ある意味、万能の戦闘艦である、と言えるのではないでしょうか。
もちろん、万能な「駆逐艦」は建造費が高価になりますから、
高性能のままでは必要な時に、十分な数を用意できなくなってしまいます。
ですから、艦隊決戦のために性能を極限まで高めた「艦隊駆逐艦」であっても、
数を揃えるため、故意に性能を下げる、ということは有りえるでしょう。
更に建造費を下げるため、その性能を護衛任務に就けるだけのレベルまでまで落としたものが「護衛駆逐艦」となります。
「駆逐艦」の中には、主力艦への攻撃力を諦めて、魚雷を降ろしたものも存在しました。
「駆逐艦」は、どんなに高性能であっても、数が揃わなければ使えません。
過剰な性能が無駄になるだけです。
そして同時に、数が沢山あっても、性能が低過ぎれば使えません。
そういった意味では、性能と建造費のバランスが最も難しい艦種でもあるでしょう。
※5.駆逐艦へ戻る。
(8)駆逐艦未満の戦闘艦艇
トラベラー宇宙の場合、公式設定として、
1千排水素トンの「護衛駆逐艦」が存在する一方で、
5千排水素トンの「護衛艦」が存在していたりします。
ですから、単純に大きさだけで「駆逐艦」と「護衛艦」を区別できませんでした。
少々、厄介なのです。
このあたりは、性能や運用方法で区別するしかないような気もしますが、私には上手く説明できる自信もありません。
艦隊護衛に特化しているか、あるいは万能艦か、という違いでしょうか?
「フリゲート」や「コルベット」は、
小さいサイズの「駆逐艦」か「護衛艦」、という認識で良いような気がします。
場合によっては、ジャンプ能力を持っていない、可能性さえもあるでしょう。
商船の護衛や沿岸部の哨戒といった任務を果たせるのであれば、どんな性能であっても問題はありません。
「駆逐艇」には、公式設定の「戦闘艇(Fighter)」が該当していると思います。
トラベラー宇宙の「戦闘艇」は、
20世紀テラに登場した「航空機(Airplane)」と、その性能が大きく異なっていますから。
特に大きく異なる点は、その移動速度と視界。
20世紀テラの「航空機」は、従来の艦艇と比べて、10倍〜20倍の速度で移動できます。
また、飛行する高度が高いので、水平線に邪魔されることなく、10倍以上の距離を見通すことが可能でした。
しかし、トラベラー宇宙の「戦闘艇」は他の艦艇と同じで、最大6Gの加速性能しか持ち得ません。
探知/追跡能力も他の艦艇と同じです。
ですからトラベラーの「戦闘艇」は、20世紀テラの「駆逐艇」と同じように、
水面を高速で移動する、小型軽装備の武装艇である、と考えました。
興味のある方は、Wikipediaの「高速戦闘艇(FAC:Fast Attack Craft)」も御覧下さい。
具体的なイメージが掴みやすくなると思います。
「高速戦闘艇(FAC)」の小型版が、トラベラーでは「戦闘艇」に該当し、
その大型版が、次項の「惑星防衛艦(System Defence Boat)」に該当するのでしょう。
※6.その他の戦闘艦艇へ戻る。
(9)惑星防衛艦
トラベラー独特の艦種として「惑星防衛艦(System Defence Boat)」が存在します。
恒星間の移動能力を放棄すること、つまり、ジャンプドライブとジャンプに必要な燃料タンクを積まないことで、
その分のスペースを装甲と武装とパワープラントに振り向けた、強力な戦闘艦のことです。
公式設定(帝国百科等)の記述によれば、ジャンプ能力を持たない戦闘艦は、
船体容積にして2倍のジャンプ能力を持つ戦闘艦と対等に戦うことが可能である、とのこと。
幾つかの戦闘艦を試作して検証してみたところ、その戦闘艦のテックレベルや備えているジャンプ能力にもよりますが、概ね、事実でした。
船体サイズが半分で済みますから、建造費もほぼ半額となります。
星系防衛に頭を悩ませる帝国政府や星系政府が、ジャンプ能力を持たない「惑星防衛艦」に飛びつくことは、
必然でしょう。
欠点としてはジャンプ能力を持たないことですが、その解決策については次項で説明します。
「惑星防衛艦」の大きさは、
帝国百科の記述によれば100トン〜5,000トンのサイズのものが存在するそうです。
このサイズを超えるものは、恐らく「モニター艦」と呼ばれるのでしょう。
そして100トン未満のものが、「戦闘艇(Fighter)」と呼ばれているようです。
但し、公式設定の「惑星防衛艦」で気になる点は、
これらの「惑星防衛艦」が艦隊戦闘に特化し過ぎていること。
平時の哨戒や不審船の臨検に用いるのであれば、海兵隊員の乗り込みが不可欠な筈です。
公式設定の通り、「惑星防衛艦」を哨戒や臨検に用いるためには、少なからぬ設計変更が必要になるでしょう。
※7.海防任務艦へ戻る。
(10)トラベラー宇宙の航空母艦
2つ前の項で述べた通り、トラベラーに登場する「戦闘艇(Fighter)」は、
「航空機(Airplane)」ではありません。
「戦艦」や「巡洋艦」、
「駆逐艦」と同レベルの速度でしか移動できない、小型軽装備の武装艇です。
20世紀テラの場合、「航空機」と「戦艦」との間には移動速度に大きな差がありますから、
「航空機」は水平線の彼方から高速で飛来して、
「戦艦」等を攻撃して、すぐさま離脱することが可能でしょう。
しかしトラベラーの場合、「戦闘艇」と「戦艦」との間には
それほど大きな速度差がありません。
通常ドライブの性能は6Gですから、両者が同じ6Gの通常ドライブを搭載していたのであれば、同じ速度での移動が可能です。
ですから、「戦闘艇」を発見した「戦艦」は、
戦況が不利だと判断すれば、別方向へ加速することで「戦闘艇」との戦闘を回避することが出来ます。
戦況が有利であるならば、離脱する「戦闘艇」を追い掛けて、空母の位置を突き止める事さえ可能でしょう。
「戦闘艇」による一方的なアウトレンジ攻撃は、トラベラーにおいて、かなり困難な戦術となりました。
つまり、トラベラーにおける「航空母艦」は、
実は、多数の艦載機を運用する「航空母艦」ではなく、
多数の艦載艇を運用する「戦闘艇母艦」だった、ということです。
この違い、結構、重要だったりしますので、御注意下さい。
離脱する「戦闘艇」を、敵の「戦艦」が追い掛けて来たら、
合流地点に居た空母が発見されて、攻撃を受けるかも知れないのですから。
※8.航空母艦へ戻る。
(11)トラベラー宇宙の護衛空母
「護衛空母(Escort Carrier)」は、
第二次世界大戦中に量産された低速の小型空母が始まりです。
輸送船団の護衛に高価な「正規空母/艦隊空母(Carrier Vessel / Fleet Carrier)」は勿体無い。
搭載機数は少なくても構わないので、船体は小型で充分。
低速の商船に随伴できれば良いので、高速の発揮は不要。
といった事情で、安価な小型空母(=護衛空母)の出番となった訳です。
大臣様の説明には「輸送船団を敵潜水艦から護衛する」と書かれていましたが、
「輸送船団を敵の航空機や通商破壊艦から護衛する」任務も担当していました。
具体的には、敵の偵察機や爆撃機を、護衛空母に搭載した戦闘機で迎撃したり、
護衛空母に搭載した偵察機や対潜哨戒機で周囲の海域を捜索して、
通商破壊艦や潜水艦を発見したら、それらの敵艦と接触しないように輸送船団の進路を変えたり、
護衛船団の一部を差し向けて通商破壊艦や潜水艦を撃破したり、といったことを行います。
ですからトラベラーにおいても、輸送船団に随伴する護衛空母の主要な任務は、
搭載した戦闘艇を探知機の有効圏外まで哨戒させて、不審な船舶(=敵通商破壊艦)を遠方で早期に発見することである、と考えました。
哨戒している戦闘艇を追跡されて、護衛空母と輸送船団の位置を突き止められてしまうリスクもある訳ですが、
敵を遠方で発見できるリターンもありますので、リスクとリターンのバランスを良く考えるべきだと思います。
また「遠方の基地への航空機輸送任務にも用いられ」る件ですが、
空母の戦闘力を維持するため、前線への艦載機の輸送と補充は、極めて重要でした。
空母が艦載機を発進させて戦闘を行えば必ず、撃破されるなどの理由で空母へ帰還できない艦載機が生じます。
仮に出撃した艦載機の3割が未帰還であれば、その後、空母の攻撃力は3割が減少しますので、その影響は看過できません。
早急に消耗した艦載機を補充して、その攻撃力を回復させる必要が生じました。
艦載機を補充するためには、艦載機の在庫がある根拠地まで戻る必要があります。
しかし補充が必要になる度、正規空母を根拠地まで戻すことは、時間的に勿体無いことです。
せっかくの空母が遊兵化して、前線の空母戦力が減少してしまいますから。
なので、根拠地から前線まで、艦載機を輸送する専門の輸送艦(運搬艦)があれば良い訳です。
後述する運搬艦がそれに該当する訳ですが、
砲火の飛び交う前線で、クレーンを使ってのんびりと艦載機を移し替える時間があるとは限りません。
ですから艦載機は自力で輸送艦を発進し、正規空母へ着艦できる方が好ましいのです。
そうすれば、艦載機の移し替えに費やす時間は最小限で済みますから。
つまり、艦載機の輸送艦は、それ自身が空母であることが好ましい、ということ。
この任務に護衛空母が充てられることは、必然だと言えるでしょう。
トラベラー世界においても、戦闘艇の輸送任務には護衛空母が充てられている筈です。
3つめの任務は「艦載機による対地攻撃」。
上陸作戦を、航空機によって支援する任務であり、戦闘機による制空任務と爆撃機による対地攻撃任務の双方が考えられるでしょう。
もちろん、反撃に出てきた敵航空機や敵艦艇との戦闘も有り得ます。
こうした任務には大量の航空機が必要とされるので、正規空母だけでは数が足りません。
正規空母の数が足りているとしても、敵航空機や敵艦艇に攻撃されるリスクが極めて高いので、正規空母を失う可能性が高くなります。
という訳で、この任務も護衛空母の担当となりました。
トラベラー世界においても、高人口世界の攻略に戦闘艇は有用です。
索敵や偵察、対地攻撃、対艦攻撃、どんな任務にも対応できる戦闘艇は、役に立ちます。
しかし、敵星系の防衛艦隊を撃破した後であっても、頑強なSDBが残存していたら、それらの敵戦力逆襲を仕掛けてくるかも知れません。
その際に正規空母を撃破されたら大損害。
そのためにも、護衛空母が充てられている可能性は高いでしょう。
最初にも書いた通り、護衛空母は安価であることが最優先です。
安価な護衛空母ならば、撃破されても比較的、損害は小さくて済みますから。
※8.航空母艦へ戻る。
(12)トラベラー宇宙の商船改装空母
古代テラの史実(第二次世界大戦)で活躍した空母の中には、
改造空母というものがありました。
本来、空母ではない艦船(主に商船)を改造して、飛行甲板を設置。
その上で航空機を運用できるようにした艦船のことです。
カタパルトだけを設置して、航空機の発進だけを行えるようにした艦船(CAMシップ)も存在しますので、
これも改造空母の中へ含めておきましょう。
建造済みの商船を改造するのですから、新規に空母を建造するより早く完成します。
その建造費(改装費)も安く済むでしょう。
しかし、速度や防御力、搭載能力などは多くの場合、正規空母には及びません。
正規空母として運用される高性能な改造空母は極一部。
その多くは護衛空母として運用されています。
問題は、このタイプの改造空母をトラベラーのルールで再現できるのか? ということでしょうか。
トラベラー(CT版1兆クレジット艦隊)には宇宙船の改装に関して、
発進用設備(発進チューブ)を新たに取り付けたり、増やしたりすることはできません、というルールが存在していました。
ですから史実のように、軍艦や商船を改装して飛行甲板やカタパルトを設置する、という訳にはいきません。
最初から発進チューブを搭載した形で建造しておき、完成したら発進チューブを撤去。
その後は発進チューブ無しの軍艦/商船として運航しているのであれば、再度の発進チューブ取付は有りでしょう。
公式設定のライトニング級辺境巡洋艦の一部は、そんな流れで予備役化と再艤装を行っておりますが、実際に行うとなればかなり面倒です。
発進チューブの分だけ建造費は高くなりますし、必要な時に改装可能な軍艦/商船が手元にあるとも限りません。
史実の中にも空母への改装を前提にして建造された商船は確かに存在していますが、
それがすべてという訳でも無いのです。
ですから、トラベラーで改造空母を登場させるのであれば、
発進用設備(発進チューブ)が不要な船体形状、形状コード7の分散構造が主流になるかも知れません。
個人的には、装甲を追加できず、ガス・ジャイアントでの燃料スクープが行えない分散構造の空母は、
運用上のリスクが大きいと思うのですが、そのあたりの諸問題は運用を工夫することでフォローが可能。
分散構造ならば、貨物スペースを戦闘艇の格納庫やパイロットと整備員の居住区に置き換えることで、
どんな用途の軍艦/商船であっても改造空母に転用できるということは、大きなメリットです。
主力の正規空母が分散構造をしているのであれば、
その海軍は恐らく、分散構造の空母運用にも慣れていることでしょう。
補助的な任務を行う改造空母が同じ分散構造をしていても、それほど問題にはならないと思われます。
※8.航空母艦へ戻る。
(13)航空母艦の運用能力
大臣様が8.航空母艦でも説明されていましたが、
航空母艦には「航空機を離艦・着艦させる」能力だけではなく、
「航空機に対する整備能力と航空燃料や武器類の補給能力を有し、海上において単独で航空戦を継続する」
能力が不可欠です。
しかし残念ながら、トラベラーの公式ルールに「整備や補給」に関するルールはほとんど存在しないため、
それらの能力を、トラベラーの航空母艦へ反映させることが出来ません。
例えば、戦闘を終えて航空母艦へ帰還した航空機が再出撃を行うためには、整備点検、燃料や兵器の補給、故障/損傷個所の修理が不可欠です。
実際、航空機の設計と運用を主体とした「MT版COACC」には、
航空機1機に対して必要な「整備ポイント」が設定されており、
必要な「整備ポイント」を供給するために、十分な人数の整備員を用意しなければならない、
というルールが用意されていました。
「整備ポイント」は概ね、「人・時間(Man Hours)」に相当していますので、
必要な「整備ポイント」が16ポイントならば、整備員2人の8時間労働か、
あるいは、整備員16人の1時間労働が必要になる、といったことを意味している訳です。
ところが、CTやMTで取り扱われている「宇宙船」には、そういったルールが存在しません。
整備点検に必要な時間は不明(ルール無し)。
燃料や兵器の補給に費やされる時間も不明(ルール無し)。
損傷個所の修理は「応急修理」だけが可能であり、
本格的な修理はAクラスかBクラスの宇宙港(造船所)を利用しなければ出来ないというルール。
特に最後の修理に関するルールは重要で、このルールが存在する所為で、航空母艦の艦載機運用が大きく制限されてしまいました。
史実の航空母艦の格納庫では、航空機の修理や定期整備、エンジンの交換まで可能だったのですけれど、
トラベラー世界の航空母艦とは、整備や修理の面で大きく異なっているようです。
ですから、航空母艦の「整備・補給」能力を再現するためには、
どうしてもハウス・ルールによる対応が必要となるでしょう。
※10.蛇足的な航空機運用についてへ戻る。
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