AH Cargo Ship

アケラット運輸のヘラクレス型貨物船
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 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  Metasequia

 

 

 

 

 









 
 

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Fig.1 5千トン級HA(ヘラクレス)型貨物船




1.はじめに


 「スピンワードマーチ宙域のコンテナ船」と「貨物船」の考察において、ジャンプ1の商船は、2パーセク以上の航路を航行する場合、極めて経済性が悪い、ということが明らかになりました。
 高出力のジャンプドライブ搭載を諦めて節約できる建造費は、連続ジャンプによって増加する航行時間と燃料消費(輸送コスト増)よりも小さいのです。

 1パーセクの距離しか離れていない、二星系間の航路を航行する場合(イフェイト=アレルヴィリス=ガーダ・ヴィリスライラナー=ポロズロ間の航路)ならば、問題はありません。しかし、ジャンプ1しか出来ない商船を、2パーセク以上の航路に投入した場合、採算が大きく悪化するのです。
 ジャンプ2以上の性能を持つ商船の方が、ずっと低コストで貨物を運ぶことが出来るのですから、どう努力しても、ジャンプ1商船はコスト競争で勝てません。

 ところが、私の考察結果に真正面から衝突してしまう公式設定がありました。「トラベラー・アドベンチャー」に掲載されている、アケラット運輸AH型貨物船がそれです。
 ジャンプ1の性能しか持たないという設定なのですが、連続ジャンプを平然と行い、2〜3パーセクの航路を航行しています。

 CTの基本ルールで5千トンの宇宙船を設計した場合、最大でもジャンプ2性能しか与えられないとか、シナリオの都合により連続ジャンプをさせることが必要など、大人の事情があるのでしょうが、それだけでは納得できません。
 色々と考えてみた結果ですが、このAH型貨物船の設定を説明できる理由としては、「競合相手がいない」ことがあるように思います。ジャンプ2〜3の商船が同じ航路にいなければ、高い運行コストはそれほど問題になりません。
 逆に、「ジャンプ1回で、貨物1トン当たりcr1,000の運賃」というルールから判断すればとても収益率の高い商船だとも言えそうです。貨物輸送を依頼する「荷主」の立場からすれば、とんでもない話ですが、運輸会社を経営する立場から考えるなら、当然の行動でしょう。

 今回の考察は、アケラット運輸AH型貨物船について行ないます。



 
2.ジャンプ1貨物船の収支

 これまでの考察では、自分の船で自分の貨物や旅客を運ぶ場合(船主と荷主が一致する場合)について、コスト計算を行なってきました。自社の工場で使う原料や製造した商品、貿易品、移民計画に必要な移民の場合など、輸送に関するコストは、極力小さく抑えなければなりません。
 地元で調達するよりも、恒星間の距離を運んでくる方が安いからこそ、恒星間貿易の意義があるのです。輸送コストが高騰した結果、地元産よりも高くなってしまうのであれば、恒星間貿易は利益を出せず、存続することも出来なくなるでしょう。
 しかし恒星間輸送、それ自体に利益を求める場合は、前提が変わります。

 「ジャンプ1回で、貨物1トン当たりcr1,000の運賃

 この運賃を払ってもらえるのであれば、船主(商船会社)にとって、その貨物で利益が得られるかどうかは、全く関係がなくなりました。その貨物を売却することで、輸送コスト(1ジャンプ1トン当たりcr1,000)以上の利益を得られるかどうかは、全面的に、荷主の問題となるからです。

 ジャンプ1の貨物船が、連続ジャンプを行なって、2パーセク以上の航路を航行する場合の収益を計算し、比較してみました。
 

  表2  AH型ジャンプ1貨物船の、貨物スペース1千トン当たりの収益比較

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 1ジャンプ当たりcr1,000の運賃を受け取れるということは、2回の連続ジャンプを行い、2パーセクの航路を航行すれば、1トン当たりcr2,000の運賃。
 3回の連続ジャンプを行えば、1トン当たりcr3,000の運賃。
 4回の連続ジャンプを行えば、1トン当たりcr4,000の運賃を受け取れるということを意味します。

 貨物運賃から輸送コストを引いた金額が、1航行当たりの収益。その収益に1年間の航行回数を掛けた金額が、年間収益になりました。

 上の表2を見れば一目瞭然ですが、ジャンプ1商船は1パーセク航路を航行する場合が、最も収益が少ないのです。2〜4パーセク航路を航行する場合、収益は151〜166%に増えました。
 ジャンプ1の性能しか持たないアケラット運輸AH型貨物船が、2〜3パーセクの航路でも運行している理由が、分かってきたような気がします。

 もちろん、荷主にとっては「貨物を安く」運んでくれる方が有り難いことでしょう。しかし、アケラット運輸以外の商船(他の運輸会社や自由貿易商人)がなかなか寄港してくれない辺境星系において、選択の余地はありません。
 無責任な推測ですが、アケラット運輸(及び、親会社のテュケラ運輸)が、悪い意味の政治力を用いて、競争相手を排斥している可能性もあります。辺境星系の荷主は、他に荷物を運んでくれる商船がいないのですから、cr2,000〜3,000の運賃を支払い、アケラット運輸へ貨物輸送を頼むしかないのです。

 ところで、AH型貨物船のジャンプ能力がジャンプ2以上だった場合、上記の収支はどのように変わるのでしょうか。ジャンプ能力のみを変えて、AH型を再設計してみました。
 以下は、ジャンプ2〜4の能力を持つAH型貨物船の収益比較です。


  表3  AH型ジャンプ2貨物船の、貨物スペース1千トン当たりの収益比較
 

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 ジャンプ2の性能を持つようになったため、1〜2パーセクの距離で貨物を運ぶ場合は、貨物1トン当たりcr1,000の運賃。3〜4パーセクの距離で貨物を運ぶ場合だけ、2回の連続ジャンプを行いますから、1トン当たりcr2,000の運賃を受け取れることになりました。

 年間収益はすべての航路でジャンプ1商船の収益を下回っています。このような数字を見比べてしまうと、とてもジャンプ1AH型貨物船を手放す気にはなれませんね。


  表4  AH型ジャンプ3貨物船の、貨物スペース1千トン当たりの収益比較
 

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 今度は、ジャンプ3の性能を持ったAH型貨物船の収益比較です。1〜3パーセクの距離で貨物を運ぶ場合は、貨物1トン当たりcr1,000の運賃。4パーセクの距離で貨物を運ぶ場合だけ、1トン当たりcr2,000の運賃を受け取れることになりました。
 年間収益はさらに少なくなっています。

 実は、オベルリンズ運輸CT型貨客船がジャンプ3性能を持っていますから、その輸送コストと収益は、上記の表4と同じような数値になっていると思われます。収益比率がずっと小さくなってしまうのですが、荷主の立場からすれば、これまでcr2,000〜3,000の運賃を支払っていた航路に、cr1,000で運んでくれる商船が現われた訳ですから、文句なしに大歓迎でしょう。

 アケラット運輸AH型貨物船しか寄港していなかった星系に、もし、オベルリンズ運輸CT型貨客船が現われたならば、その星系の貨物輸送が一斉に乗り換えてしまうことも、間違いありません。オベルリンズの収益は少ないのですが、上記の事情から、船倉に空きが生じることもないでしょう。船倉が常に貨物で一杯ならば、少なくとも、赤字になることはありません。
競争に勝つためには、採算の悪化を堪えることも必要なのです。


  表5  AH型ジャンプ4貨物船の、貨物スペース1千トン当たりの収益比較
 

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 ジャンプ4の性能を持たせた結果、採算は極端に悪化しました。1トンの貨物を運ぶコストがcr1,115も掛かってしまうのですから、どうしても赤字になることは避けられません。
 貿易品などを運んでおり、1トン当たりcr1,000の貨物運賃より、利益が大きい場合ならば問題ないでしょう。しかし、一般的な商業ベースにおいては5千トン級以下の商船で、ジャンプ4性能を持つことは採算が合わないと分かりました。

 採算が合わない原因としては、地上宇宙港の利用を可能にする「完全流線型船体」が高価であるなど、いくつか考えられるのですが、とりあえず、ここでは考察しません。




3.貨物船のテックレベルとコンピュータモデル


 私が以前から悩んでいたことのひとつが、商船に搭載されるコンピュータのモデル数です。性能重視の軍艦ならば、入手可能な範囲で最高レベルのコンピュータを搭載して当たり前なのですが、商船の場合はどうでしょう。
 極端な例えですが、100トン級のS型偵察艦や、200トン級のA型自由貿易船に、モデル9のコンピュータを搭載することは、無駄以外の何者でもないでしょう。
 宇宙船は「予備を含めて3台のコンピュータを積む」というルールがありますから、コンピュータだけでもMCr91.5という建造費が必要になってしまいます。商船としてあまりにも不経済ですね。
 反対に、5万トンの大型商船に低いモデルのコンピュータしか搭載しない場合、処理能力が不足します。多数のコンピュータが必要になってしまいますし、管制装置(パネルとディスプレイ)や乗組員の数も膨大なものになるでしょう。

 では、経済的なコンピュータのモデル数とは、どのレベルを指すのでしょうか。その問題を、考察してみました。

 モデル数の高いコンピュータを搭載すると、まず、管制パネルと付属機器の数が少なくなります。必要な乗組員の数も、少なくなりました。乗組員に支払う給料や、生活区画の維持費も節約できます。居住区画の容積が減らせますから、その分だけ、旅客用の設備や船倉を広く取れるでしょう。
 収入が増え、必要経費が減るのですから、良いことずくめのように思えます。
 その反面、コンピュータの費用が増えますから、商船の建造費も増加しました。建造費が増えれば、当然、減価償却のための費用(毎年の支払いに必要な、建造費の20分の1)も増えてしまいます。この建造費の増加と必要経費減少のバランスが、経済性を判断する上で重要なポイントになるでしょう。

 5千トン級AH型貨物船を、ジャンプ1〜4の性能で設計します。
 建造テックレベルは、151310の3段階。さらに、搭載するコンピュータは、該当テックレベルの最高モデルから、モデル2新型までの範囲で検討しました。
 テックレベル15ならば、モデル2新型〜モデル9の範囲。テックレベル13ならば、モデル2新型〜モデル7の範囲。テックレベル10ならば、モデル2新型〜モデル4の範囲ということです。
 もちろん、ジャンプ性能以下のコンピュータを積んでも意味はありませんから、ジャンプ3の商船は下限がモデル3ジャンプ4の商船は下限がモデル4になりました。

 その結果が、以下のようになります。
 建造費、維持費、貨物積載量などの数値は、テックレベル15で建造されたAH型貨物船の数値であり、テックレベル1310の数値は、輸送コストだけを示しました。


 表6 ジャンプ1AH型貨物船が、1パーセク航路を運行した場合の貨物輸送コスト

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 テックレベル1513の貨物船は、モデル6のコンピュータ。テックレベル10の貨物船は、モデル4のコンピュータを積んだ場合が、最も安価に貨物を輸送できるということです。
 全テックレベルの範囲で最も安価な輸送船は、テックレベル10モデル4搭載型。
 2番目が、テックレベル15モデル6搭載型。
 意外なことに、3つのテックレベルの中で最も高価な輸送船が、テックレベル13モデル6搭載型となりました。

 テックレベル10の貨物船に、モデル5以上のコンピュータを搭載できたら、さらに輸送コストが下がるように思えますが、テックレベル10の制限下では不可能です。


 ジャンプ2AH型貨物船が、2パーセク航路を運行する場合も、同じように計算を行ないました。テックレベル10ジャンプ2性能の宇宙船を建造することはできませんから、比較するのはテックレベル11で建造された貨物船になります。

表7 ジャンプ2のAH型貨物船が、2パーセク航路を運行した場合の貨物輸送コスト

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 テックレベル15の貨物船は、モデル6のコンピュータ。
 テックレベル13の貨物船は、モデル7のコンピュータ。
 テックレベル11の貨物船は、モデル4のコンピュータを積んだ場合が、最も安価に貨物を輸送できると分かりました。

 全テックレベルの範囲で最も安価な輸送船は、テックレベル15モデル6搭載型。
 2番目が、テックレベル13モデル7搭載型。
 最も高価な輸送船が、テックレベル11モデル5搭載型でした。


 次はジャンプ3AH型貨物船が、3パーセク航路を運行する場合です。テックレベル10〜11ジャンプ3性能の宇宙船を建造することはできませんから、比較するのはテックレベル12で建造された貨物船になりました。
 
表8 ジャンプ3のAH型貨物船が、3パーセク航路を運行した場合の貨物輸送コスト

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 3パーセク航路を運行する場合は、再び、順位が入れ替わります。
 テックレベル15の貨物船は、モデル6のコンピュータ。
 テックレベル1312の貨物船は、モデル6のコンピュータを積んだ場合が、最も安価に貨物を輸送できると分かりました。

 全テックレベルの範囲で最も安価な輸送船は、テックレベル13モデル6搭載型。
 2番目が、テックレベル15モデル7搭載型。
 最も高価な輸送船が、テックレベル12モデル6搭載型でした。


 最後が、ジャンプ4AH型貨物船が、4パーセク航路を運行する場合です。テックレベル12以下でジャンプ4性能の宇宙船を建造することはできませんから、比較するのはテックレベル1513
貨物船だけになりました。

表9 ジャンプ4のAH型貨物船が、4パーセク航路を運行した場合の貨物輸送コスト

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 4パーセク航路を運行する場合、テックレベル1513の貨物船は、モデル7のコンピュータを搭載したタイプが、もっとも低コストになります。輸送コストに占める維持費(乗組員の給料や生活区画)の割合が大きくなった結果でしょうか。

 最も安価な貨物船が、テックレベル13モデル7搭載型。
 2番目が、テックレベル15モデル6搭載型です。


 実は、1万トン級コンテナ船ジャンプ性能1〜4建造テックレベル10〜15の範囲)でも、同じような比較を行なっていました。その結果でも、コンピュータはモデル6〜8が最も経済的だったのです。
 とは言うものの、モデル6が経済的なコンテナ船は、テックレベル15ジャンプ1商船のみでして、ジャンプ2以上の商船はモデル7〜8が最適。テックレベル13以下は、モデル7が経済的でした。つまり、テックレベル15を除けば、最高モデルのコンピュータを積むべきだという結論になってしまい、考察として、あまり面白い結論ではありません。


 しかし今回、5千トン級AH型貨物船(ジャンプ性能1〜4と流線型船体を持つ)に関して考察してみた結果、必ずしも、最高モデルのコンピュータを積んだ場合が経済的とは限らない、という結論が出てきた訳です。 




4.ジャンプ1貨物船を運用する、恒星間運輸会社


 最近、大島様や橘様の協力を得て、非武装中立地帯(公式設定では「非武装中立地帯」と呼ばれていますが、公式設定と区別するため、オリジナル設定であることを示すために「緩衝宙域」と呼んでいます)の設定を色々と考えております。
 緩衝宙域であるため、二大勢力(帝国とゾダーン)からの干渉が制限されていたり、高TLの製品が入手困難であったり、大規模な海賊組織が存在したりするなど、とても魅力的な宙域になりました。


 上記のような状態に置かれた緩衝宙域ですから、帝国の企業(運輸会社)は新規参入について、消極的な姿勢を採っています。
 帝国のメガコーポレーション(運輸会社)は、帝国領ディノータム星系から、緩衝宙域唯一の高人口世界、アードンへのJ4航路を維持しているのみに留まりました。

 しかし、このような消極的姿勢のままでは、何時まで経っても、緩衝宙域への影響力を増やすことは出来ません。
 対照的に、様々な援助計画を実行しているゾダーン連盟は、着実に影響力を増しつつあるのです。
 帝国政府は、傘下の公的機関やメガコーポレーションを通じ、遅れを取り戻すため、大規模な援助を実施しました。

 その援助計画の中に、AH型貨物船の譲渡計画もありました。
 低いテックレベルで設計/建造されたAH型貨物船は、高テックレベル世界の存在しない緩衝宙域においても、低コストでの運用が可能だからです。
 帝国政府は、テュケラ運輸(の子会社アケラット運輸)から数隻のAH型貨物船を買い取り、アードン政府へ無償の譲渡を行なったのでした。
 アードン政府は、譲渡されたAH型貨物船を活用して、アードンを中心とした恒星間通商網を運営しています。


 という、オリジナル設定を考えてみました。
 これならば、アードンを起点とする運輸会社が、ジャンプ1のAH型貨物船を運用している必然性は、十分だと思います。

 AH型貨物船が無償譲渡されたのは、第三次辺境戦争の停戦直後、995年頃の話です。その後も、アードン政府が経営する運輸会社はAH型貨物船を使い続けてきましたが、第四次辺境戦争の後、規模を拡大しつつあるオベルリンズ運輸が緩衝宙域にも手を広げてきました。
 私が想定している時期は、第五次辺境戦争直前の1105年頃になります。


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Fig.10 非武装中立地帯(緩衝宙域) アードン周辺の星域図

 上の星域図は、アードンを中心(?)とした緩衝地帯の星域図です。
 AH型貨物船の譲渡を受けたアードン政府の運営する(と考えた)、主要な4本の通商路を、紫のライン示しました。
  アードンキャロラン間は、ジャンプ1(J1)。
  アードンザーコン間は、ジャンプ2(J2)。
  アードントレマス・デックス間は、ジャンプ3(J3)。
  アードンディノータム間は、ジャンプ4(J4)で結ばれています。

 さて、上記の航路の中で、ジャンプ1性能しか持たない、AH型貨物船の活躍できる余地は、どれだけ残されているのでしょうか。



(1)ジャンプ1航路(アードン=キャロラン間航路)

 アードン=キャロラン間の航路は、1パーセクの距離しかありません。今までの考察から考えて、当然、ジャンプ1商船が輸送の主力となる筈です。

 MAG様の投稿「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」より、アードンの宇宙港規模は6で、キャロランはでした。
 その数値から、アードンとキャロランの間を運行する商船の船腹量は(私の一存ですが)、2週間単位で1万5千トン。輸送される貨物は4,700トン、旅客は1,600人と想定しています。


    表11 ジャンプ能力1〜45千トン級貨物船
        1パーセク航路を運行した場合のコストと収益比較

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 右端の収益は、5千トン級貨物船、船倉1千トン当たりの年間収益を示しています。この数値を比較すれば明らかですが、圧倒的にジャンプ1の商船が経済的に有利な立場にありました。この航路でジャンプ2以上の能力を持つ商船は、運営コストの面で不利になるでしょう。
 普通に考えれば、ジャンプ1の商船以外、この航路では見かけなくなる筈です。ですから、AH型貨物船は十分に活躍する余地がありました。



(2)ジャンプ2航路(アードン=ザーコン間航路)

 アードン=ザーコン間の航路は、間にジーノピット星系を挟んで、2パーセクの距離があります。
 私の想定では、この航路も船腹量が2週間単位で1万5千トン。貨物は4,700トン、旅客は1,600人になります。


    表12 ジャンプ能力1〜45千トン級貨物船
        2パーセク航路を運行した場合のコストと収益比較

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 輸送コストで比較すれば、最も安価に貨物を運べる商船は、ジャンプ2の商船です。しかし右端の収益を比較した場合、最も収益の大きい商船は、ジャンプ1の商船でした。

 難しい選択問題になりました。単純に収益だけを比べるならば、ジャンプ1商船は2.5倍も儲かります。
 しかし、すでに述べてきたように「荷主」は「安く運べる商船」を選びますから、同じ航路にジャンプ2の商船が運航していたら、ジャンプ2の商船を選ぶでしょう。その結果、ジャンプ1商船は「空の船倉」を抱えて航行することになるのではないかと心配です。

 とりあえず私は、運行している商船の大部分がジャンプ1の商船であり、2回の連続ジャンプを行っているという設定にしました。商船の大部分が同じジャンプ能力なら、貨物の運賃も、少数のジャンプ2商船を除いて同じ金額になります。
 これならば、AH型貨物船の活躍には、何の問題も生じません。



(3)ジャンプ3航路(アードン=トレマス・デックス間航路)

 アードン=トレマス・デックス間の航路は、最近になって拡張された航路です。低いテックレベルでジャンプ3を行なうことはとても不経済であり、トレマス・デックスの企業部門が、小型商船をわずかに運行する以外に有りませんでした。
 ところが最近、リジャイナ星域の新興運輸会社であるオベルリンズ運輸が、ジャンプ3の商船を大量に投入し、アードンとリジャイナの間を結ぶ定期便の運行を始めたのです。
 という設定にしました。

 私の想定では、船腹量4千トン(貨物800トン、旅客400人)程度の輸送力だった航路に、オベルリンズが乗り出してきて、船腹量が9千トン(貨物2,400トン、旅客900人)まで増えたということにしてあります。


    表13 ジャンプ能力1〜45千トン級貨物船
        3パーセク航路を運行した場合のコストと収益比較

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 従来、アードンとトレマス・デックスの間で貨物を輸送する場合には、J1の商船でザーコンを経由する航路しかありませんでした。
 貨物運賃が1トン当たりcr4,000であり、片道でも5週間の時間が必要です。

 ところが、この航路にジャンプ3の商船を投入するならば、従来の4分の1という格安運賃(1トン当たりcr1,000)で貨物を運ぶことができました。オベルリンズ運輸がこの航路に乗り出すと同時に、多くの貨物がオベルリンズ運輸の商船に積み込まれたことは、当然でしょう。
 表13の通り、オベルリンズ運輸の収益は極めて小さいですが、常に貨物を満載して運行することが出来るのですから、赤字になることは心配せずに済みます。

 しかし、オベルリンズ運輸という競争相手が居なければ、1トン当たりcr4,000の運賃を受け取ることも可能だった訳です。それまで貨物輸送を独占し、暴利を貪っていた運輸会社の関係者は、オベルリンズ運輸を激しく憎むことになるでしょう。



(4)ジャンプ4航路(アードン=ディノータム間航路)

 アードン=ディノータム間の航路は、第三次辺境戦争が終わった直後から再開された航路です。
 交易品の物流量も桁違いに大きいので、アードンのテックレベルでは維持することが出来ません。この航路の維持は、帝国のメガコーポレーションによって行なわれています。
 私の想定では、船腹量が10万トン。貨物量が5万トンと、旅客が5千人でした。

 商船の大半は、2回の連続ジャンプを行うジャンプ2の貨物船ですが、旅客輸送を行なう商船だけは、ジャンプ4の性能を持っています。


    表14 ジャンプ能力1〜45千トン級貨物船
        4パーセク航路を運行した場合のコストと収益比較

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 ジャンプ4性能の5千トン級貨物船は、自動的に赤字になりました。
 黒字経営を行なうためには、ジャンプ2の貨物船を使用して、2回の連続ジャンプで貨物を輸送する以外、方法は無さそうです。

 ジャンプ1の貨物船で4回の連続ジャンプを行うならば、もう少し、収益は増えますが、まわりの商船が軒並みジャンプ2性能ですから、ジャンプ1の貨物船に貨物を預けてくれる荷主がいるとは思えません。
 運賃も輸送時間も、2倍が掛かってしまうのです。

 という訳で、この航路にジャンプ1AH型貨物船は就航できないと分かりました。

    表15 ジャンプ能力1〜45万トン級コンテナ船
        4パーセク航路を運行した場合の輸送コスト

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 5千トン級の貨物船ではなく、5万トン級のコンテナ船が運航した場合の輸送コストは、表15のようになります。
 船体サイズが10倍になることで、輸送コストが大幅に低下していることが確かめられました。5万トン級ならば、ジャンプ4の能力を備えても黒字運行が可能なのです。利益率を考えたら、ジャンプ2の連続ジャンプを選んだ方が儲かりますが(表16)。

 大型商船は、とても経済的なのです。

    表16 ジャンプ能力1〜45万トン級コンテナ船
        4パーセク航路を運行した場合のコストと収益比較

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Fig.17 5千トン級HA(ヘラクレス)型貨物船



5.5kt級−ヘラクレス型貨物船(TL=10)

 「トラベラー・アドベンチャー」に掲載されていた、ジャンプ1の中型貨物船です。 テュケラ運輸の子会社であるアケラット運輸が、幹線航路から外れた星系へ貨物を運ぶために使っている、という設定でした。
 私がジャンプ1商船の経済性について、色々と思い悩む原因となった商船ですので、ある種の「思い入れ」があります。


 船体サイズは5千トン。形状は、完全流線型の針状構造(コード1)です。
 地上宇宙港を利用することはもちろん、ガス・ジャイアントや海洋での燃料スクープも行なえます。しかし、燃料精製装置は搭載していません。
 シャトル・サービスの無い宇宙港でも、直接、貨物を地上で積み下ろしできることが流線型船体を持つ目的なのではないかと思います。

 燃料タンクは672トンの容積を持ち、1パーセクのジャンプと17日間の通常航行が可能です。折り畳み式の燃料タンクが船倉内に用意されていますので、500トンの燃料を積載することで(船倉の容積はその分減ってしまいますが)追加のジャンプを1回行なうこともできました。追加できる燃料タンクの容量は1,500トンですから、最大で、3回の追加ジャンプを行なえます。

 自衛用の武装として、三連架ビーム・レーザー砲塔4基を搭載しました。

 コンピュータのモデルは4。処理能力が足りないため、予備を含めて9台のコンピュータを搭載しています。

 乗組員の必要人数は、31人。旅客を運ぶことはありません。緩衝宙域アードン仕様として、客室と二等寝台を搭載した改造型も検討中ですが。

 積載艇として、5G加速の40トン級艦載艇1隻を搭載しています。

 船倉容積は、3,676トン。前述の通り、折り畳み式の燃料タンク1,500トン分が用意されています。

Claft Id : 5k_ton Class Heracles Type Cargo Ship
 from LSP.Ship's
ID code:

Hull:


Power:

Loco:


Commo:

Sensors:



Off:



Def:

Control:




Accom:


Other:



ヘラクレス型貨物船 TL=10 MCr=1,444

4,500/11,250 排水素=5,000トン 形状=1針状構造/完全流線型
 装甲=40E 重量=33,244トン 総重量=84,092トン

154/308 核融合=13,851Mw 航続=17/51日間

90/180 ジャンプ=1
90/180 通常=1G(反重力) 移動力=0

電波式=星系内距離×2 レーザー式=星系内距離×2

受動EMS=恒星間距離×2  能動EMS=遠軌道距離×2
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並

ビーム・レーザー = X03
  砲塔群                   4
  射撃可能                4

防御DM =+2  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 14

コンピュータ=モデル4×9(標準型)  パネル=高度適応型×100
  追加=ヘッドアップ・ディスプレイ×86
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック10

乗組員31(艦橋6、エンジニア7、維持3、砲術2、艦載2、保安5、
  指揮4、接客1、医学1)  専用室=18

船倉=3,676トン  格納庫=52トン(艦載艇40トン×1)
   燃料=672トン 燃料スクープ搭載
  目標サイズ = 中  視認レベル = 強
  量産価格MCr = 1,155




2009.10.11 初投稿。