「もしも月がなかったら(ニール・F・カミンズ著 竹内均監修 東京書籍)」の、読後レポート第二弾です。 この本はタイトル通り、もしも月がなかったら、この地球はどんな環境になっていただろう、という思考実験を行ない、その結果をまとめた書籍です。 それぞれの仮想地球には以下のように、それっぽい名前が与えられていました。
1.月の無い地球 ソロン 2.月がもっと地球に近かったら ルンホルム 3.地球の質量がもっと小さかったら ペティエル 4.地軸が天王星のように傾いていたら ウラニア 5.太陽の質量がもっと大きかったら ……以下略。
全部で10の仮想地球が取り上げられているのですが、今回は3番目と4番目の仮想地球を元ネタとして、大気と気温について考察してみます。 最初の2つ、地球と月との間に働く潮汐力に関しては、前回のレポート「トラベラー世界の潮汐力」をご覧下さい。
もしも地球の質量がもっと小さかったら?(仮想地球の3番目、ペティエル)
地球の質量が小さかった場合、発生するガスの量は現在の地球よりもずっと少なくなります。また、地球の表面重力も当然ながら小さくなりますから、それに伴って地球を取り巻く大気の層もずっと薄くなるそうです。 大気層が薄くなることによって、地球の姿はどう変わるのか。地球に生まれた生物はどうなっているのか、という思考実験が行なわれている訳です。
それを読んで思いついた疑問なのですが、果たして、地球の大気がどれくらいの高さまで存在するのか、考えたことはありませんか? その高さでは、大気密度(気圧)がどの程度の大きさで、気温は何度になっているのでしょう?
興味の赴くまま、理科年表を開いてみました。1976年にアメリカで発表された調査の結果が掲載されています(U.S. Standard Atmosphere
1976)。 それに拠りますと、海面高度を「0:ゼロ基準」として、その気圧を1.0
atm、その地点の気温を288K(=15℃)とした場合、
高度3kmで、気圧は0.7
atm、気温は269K(-4℃)。 高度7kmで、気圧は0.41
atm、243K(-30℃)。 高度16kmで、気圧は0.104atm、217K(-56℃)。 高度40kmで、気圧は0.003
atm。 高度200kmで、気圧は0.000000008
(10億分の8)atm。
というような数値が載っていました。
また、メガトラベラーのレフリーズ・マニュアルに掲載されている、大気レベルの定義に拠れば、
大気レベル 1 :微量大気( 0.001 〜 0.090 atm) 大気レベル2〜3:極薄大気( 0.010 〜
0.420 atm) 大気レベル4〜5:希薄大気( 0.430 〜 0.700 atm) 大気レベル6〜7:標準大気( 0.710
〜 1.490 atm) 大気レベル8〜9:濃厚大気( 1.500 〜 2.490
atm)
ということだそうです。
つまり、地球と全く同じ環境の世界であっても、標高3km以上の高山/高原地帯の大気密度(気圧)は希薄大気(レベル4〜5)に相当しており、標高7km以上の高山では、極薄大気(レベル2〜3)に相当するのです。 何となく、大気レベルのイメージが具体的に浮かんできませんか?
ヘリコプターの(大気レベル5以上の世界でなければ使用できないという)制限は、高度3km以上の高空における、飛行性能の制限を示しているのでしょう。 レシプロ機(TL5)やジェット機(TL6)の使用制限も、同じことだと思います。
極薄大気に相当する、高度7km以上の成層圏を飛行する航空機があるじゃないか、と疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。 その疑問については、高度7km以上に設置された空港は存在しないということを、指摘させて頂きます。ジェット機が巡航速度で極薄大気中を飛行することは可能でも、極薄大気中で離着陸を行なうことは困難なのです。 極薄大気で離着陸可能な航空機を開発することも可能でしょうが、現在のTLでは製造/運用コストが高く付きますし、ある程度TLが進めば反重力輸送機器が実用化されますから、その必要も無くなるのです。
さらに、標高16km以上の地点に達すれば、その地点の気圧は微量大気(レベル1)に相当することが分かりました。 流石に1Gの重力下で、エベレストの2倍の高さを持つ高山は存在しないと思われます。ですから、その高度を飛ぶ航空機の外部環境が、微量大気(レベル1)に相当するということです。 そして、その大気レベルは高度40kmまで続きます。 高度50km以上は0.001atmを下回っていましたから、ルール上は真空として扱って構わないでしょう。
もしも地軸が天王星のように傾いていたら?(4番目の仮想地球、ウラニア)
地球の地軸は公転面に対して23.4度、傾いています。 この傾斜によって気温の変動が生じ、四季が存在する訳なのですが、この地軸が天王星のように90傾いた状態になっていたら、どうなるのでしょうか? 高緯度地方においては、半年間ずつの昼と夜が繰り返され、気温の差は著しく大きなものとなります。動物達は皆、赤道を越えて移住するか、冬の間に冬眠する以外、生き残ることができません。さらに、日食や月食が春分と秋分の日にしか起こらない(稀な現象になる)などと書かれていました。
これほどまでの傾斜は極端ですが、地球のような20度前後の傾斜が惑星の温度環境にどのような影響を与えているのか、少し考えてみます。 幸い、CT「偵察局」には、惑星の気温を決定する「気温公式」が存在しますので、それを利用して考察してみましょう。 ついでに、公転軌道の離心率についても考察してみました。
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