The Best Weapon
35th stage ( Combat
1)
Hand-to-Hand Combat

最強兵器 決定戦
第35回(個人戦闘1)
近接戦闘

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MEGA TRAVELLER
 


 

海兵隊員カトラス
    実戦で本当に使えるものなのか?



 海賊の戦術や経済に関して色々と考察を行なってきましたが、次に気になる問題は、海賊による「乗り込み戦闘」です。

 辺境航路を航行している商船が、海賊船に襲撃された場合、速やかに降伏しなければならない(さもなければ、攻撃を受けて宇宙船ごと破壊される)という事態は明らかになりました。
 しかし、略奪のために乗り込んできた海賊に反撃し、場合によっては、相手の海賊船を拿捕してしまうということは許されないのでしょうか。
 また、乗り込んできた海賊が「切り裂き魔」だった場合、乗組員や旅客は抵抗の有無に関わらず「皆殺し」にされてしまうことが多いようです。
 そんな時に、わざわざ無抵抗で殺される筋合いもありません。

 乗り込み戦闘によって、海賊はどのくらいの負傷リスクを抱えるのか、または、抵抗する乗組員にはどのくらいの勝率があるのか、そのあたりをはっきりさせなければならないでしょう。

 そんな訳で、どうしてもメガトラの個人戦闘ルールを理解し、考察する必要が生じてしまいました。
 私は20年近く前、メガトラの個人戦闘ルールを初めて読んだ際、
「完全貫通にならなければ、ほとんどダメージを与えられないじゃないか。メガトラの個人戦闘ルールは不良品だな。」
 と思った1人です。
 そのため、メガトラは単なる設定資料集となっておりました。

 最近になってルールを読み直し、奥深さを理解し始めた訳なのですが、まだまだ個人戦闘ルールを十分に理解したとは言えません。
 そんな訳で、今回は個人戦闘ルールを考察します。



 冒頭の文は、本職の海兵隊員に見つかったら、その場で斬り捨てられてしまいそうな一文ですが、私が以前から感じていた疑問のひとつでした。
 なぜなら宇宙船内の戦闘では、敵味方の双方が「宇宙服を着用している」と思われるからです。
 宇宙服の装甲値は「5」以上、バトルドレスに至っては「10〜18」の範囲です。
 なのに、カトラスの貫通力は「3」しかありません。
 装甲値「5」の方が貫通力「3」よりも大きいのですから、その結果は「無貫通」。
 カトラスによる攻撃は、宇宙服の装甲によって阻まれてしまうのではないか、ずっと長い間、そう思ってきたのです。
 ところが、海兵隊員のキャラクターを作成して刀剣戦闘の技能を得ると、なぜか高確率で強制的に「カトラス」技能を修得させられてしまいました。

 「俺はだんびら技能が欲しかったのに〜」
 「乗り込み戦闘といったら、宇宙斧に決まっているだろうが!」

 という訳で、上記のようなプレイヤー(私だけ?)の嘆きを理不尽にも無視し続けてきた
帝国海兵隊の「カトラス」を断罪しようと思います。
 今回の考察に限って、銃器の使用は厳禁としました。



 この原稿を書き上げた時点で、内容のチェックをして頂いた橘様から、下記のような指摘を受けました。

 プレイヤーズ・マニュアル p.49 「特別ルール」海兵隊の伝統において、
 海兵隊キャラクターが〈刀剣戦闘〉の技能を習得した場合、〈大型刀剣〉を選ぶのが普通となっていました。
 〈大型刀剣〉は〈カトラス〉だけでなく〈ブロードソード(だんびら)〉〈剣(フォイル)〉を包含しています。


 おっと、どうやら〈カトラス〉が必修だったのは、CTのルールだったようです。
 メガトラのキャラクター作成ルールをほとんど読んでいないという事実が、明らかになってしまいました。
 でも、やはり斧(手斧や戦斧)は使えないのですね。

 また、これも橘様から指摘されたことですが、通常、宇宙船内の隠し棚に常備されている接近戦用武器は、カトラス
なのです(帝国百科のp.69より)。
 海兵隊員はともかくとして、海軍の乗組員や商船の乗組員も
、乗り込み戦を受けた時にカトラスを使う伝統があるのでしょうか?



2010.09.20 加筆修正。

 海兵隊員に宇宙服(装甲値5)を着せて、戦闘力を評価することは、海兵隊員の名誉を不当に貶めるものであるという指摘がなされたため、大幅に加筆修正を施しました。

 宇宙服を着ているキャラクターは、商船の乗組員に変更。
 海兵隊員には、バトルドレス(装甲値18)を着用させ、その戦闘力を再評価しています。





近接戦闘武器の比較


 久しぶりに、メガトラのプレイヤーズ・マニュアルを開き、近接戦闘武器の貫通力やダメージといった諸元を比較してみます。
 実際の刀剣戦闘はこんな簡単に比較できるものではありませんが、あくまでメガトラの個人戦闘ルール上での比較ですから、これで良いのです。

 どの武器も、至近距離と近距離、双方での戦闘に使用可能でしたから、射程の優劣はありません。
 個人的には、長さ3メートルの槍や矛は「2マスの距離まで届く」が、通常の刀剣類は「1マスまでしか届かない」などとハウス・ルールを付け加えたいところです。


 私の主観(趣味と偏見)によって選び出した、9種類の近接戦闘武器について、諸元を下の表1にまとめました。

2010.09.20 追加。
 「素手」と「棒きれ」を追加し、近接戦闘武器は9種類になりました。
 また、エラッタより、銃剣のダメージを「」に変更しています

       表1 近接戦闘武器の諸元(貫通力、防御力、ダメージ)

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 武器の掲載順序は、その武器が備えている貫通力を基準にしてあります。

 素手で戦うキャラクターはそうそう居ないと思いますが、他の武器が無ければ仕方ありません。
 ダメージは最低の1ですが、貫通力の低さから「無貫通」にしかなりません。
 例外的成功の1、2、4ポイントしか与えられないので、ダメージの大小は関係ないでしょう。

 棒きれ(Club)は、間に合わせで使用する鈍器類なら、すべて棒きれとして扱われます。
 ライフルの銃床で殴る、などが該当する訳です。
 原文(英語版マニュアル)を参照したところ、棍棒(cudgel)と棒きれ(club)の混同が見られましたので、ご注意ください。
 私の調べた範囲ですと、〈格闘〉技能で扱える棍棒は、棒きれ(club)の誤訳。
 槍状武器の中に書かれている棍棒は、棍棒(cudgel)で正解です。

 カトラスは、私が選び出した9種の武器の中で、素手棒きれを除けば、「最低の貫通力=3」しか備えていませんでした。
 多くの刀剣類の貫通力が「3」ですから仕方ないような気もしますが、同じ「大型刀剣」に分類されている武器で、ならば貫通力が「4」になりますし、防御効果も1つ大きい「3」になっています。
 ダメージはどちらも「3」ですから、わざわざ性能面で劣った刀剣であるカトラスを選択する必然性が分かりません。

 また、だんびら(ブロードソード)ならば、筋力10以上という制限はありますが、貫通力は「7」になりました。
 手斧戦斧ならば、筋力の制限無しで、貫通力が「6」と「8」を備えています。
 この3つの武器は装甲値「6以下」の宇宙服に対し「部分貫通」を得ていますから、より大きなダメージを与えられる点で非常に優れていると言えるでしょう。

 バトルドレス同士(装甲値が高いのでお互いに「無貫通」)ならばともかく、相手が宇宙服(装甲値6前後)を着用している場合は「部分貫通」を得る可能性のある、もう少し、貫通力の高い武器を選ぶべきではないのでしょうか。



 ところで、武器の貫通力は、目標に与えるダメージについて、どんな影響を及ぼすのでしょうか。
 実は、私も良く分かっていません。

 そこで、ダメージ3の武器を例に取り、「完全貫通」、「部分貫通」、「無貫通」の状態が与えるダメージを比べてみました。

 メガトラの個人戦闘ルールの場合、命中判定に用いたサイコロの目によって、大きくダメージが変化します。
 このルールを理解していなかったため、私は「不良品」扱いしてしまった訳なのですが、分かってくると意外に面白いルールだったのですね。


      表2 貫通状態による、ダメージの変化(ダメージ3の兵器)

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 数字はダメージポイントを表していますが、標準的な兵士(海賊)の耐久力を4/5だと考えました。
 ですから、4ポイント以上のダメージを受ければ、その兵士(海賊)は戦闘不能に陥りますし、9ポイント以上のダメージを受ければ、死亡してしまう訳です。

 今回の考察は、装甲値「6」の宇宙服を目標としています。
 「完全貫通」が可能な武器、つまり貫通力が12以上の近接戦闘武器は、残念ながら存在しません。
 鞭(触手)の貫通力は8ですが、あまりにも特殊な武器ですので、今回の考察では見送りました。
 ですので、「部分貫通」と「無貫通」だけを比較してみましょう。
 上から順に考察していきます。



 命中判定で振ったサイコロの目が、成功値と等しい場合、ダメージは半減されてしまいます。
 私の解釈では「かすり傷だった」ということになっておりますが。
 「部分貫通」の場合、本来3ポイントが与えられる筈のダメージは、「部分貫通」によって半減して1ポイント(端数切捨て)。
 「かすり傷」はさらに半減ですから、0ポイント(今回も端数は切捨て)まで減じてしまいました。
 せっかくの命中ですが、ダメージは与えられません。
 「無貫通」の場合も、ダメージ無しです。

 命中判定で振ったサイコロの目が、成功値より1つだけ大きい場合、通常のダメージを与えることが出来ます。
 「部分貫通」の場合、ダメージは1ポイント。
 「無貫通」の場合は、ダメージを与えられません。

 命中判定で振ったサイコロの目が、成功値より2つ以上大きい場合、2倍のダメージを与えられます。
 「部分貫通」の場合、半減したダメージの2倍ですから、元通りのダメージで2ポイントになります。
 また、最低限のダメージが1ポイントですから、「無貫通」の場合でも1ポイントのダメージを与えられました。

 命中判定で振ったサイコロの目が、成功値より4つ以上大きい場合、4倍のダメージを与えられます。
 「部分貫通」の場合、ダメージ半減の4倍ですから、結局は2倍の6ポイント
 「無貫通」の場合でも、最低限のダメージが2ポイントですから、やはり2ポイントのダメージを与えられます。

 命中判定で振ったサイコロの目が、成功値より8つ以上大きい場合、8倍のダメージを与えられます。
 「部分貫通」の場合、ダメージ半減の8倍で、基本ダメージの4倍12ポイント
 「無貫通」の場合は、4ポイントのダメージを与えられます。



 「部分貫通」の場合は当然だとして、「無貫通」の場合であっても、サイコロの目によっては、敵兵士(海賊)を一撃で無力化することも可能だと判明しました。
 おまけに、その武器兵器自身のダメージの大きさは影響しないのです。
 実に、意外な発見でした。
 「無貫通」でも良いのであれば、貫通力やダメージがさらに小さい、短剣棒切れでも構いません。
 手(素手)でも構わないのではないでしょうか。
 「素手でバトルドレスを殴り倒す」というシチュエーションはあまり見たくありませんので、私ならばレフリー権限で禁止しますが、ルール的には問題ないようです。



2010.09.20 加筆
 ルール的に問題がありました。
 エラッタより、目標が全身装甲の防具を着用している場合、装甲値の10分の1未満しかない貫通力の武器は、例外的成功を得ても、その結果を無視する(ダメージを与えられない)とのことです。
 つまり、素手(貫通力1)でバトルドレス(装甲値18)にダメージを与えることは出来ません。
 ただし、棒きれ(貫通力2)ならばダメージを与えられます(笑)。
 かなり中途半端なエラッタだと感じましたが、そういう記述でした。



 話を元に戻しましょう。
 隣り合わせに並んだ「部分貫通」と「無貫通」のダメージポイントを比べて頂ければ一目瞭然ですが、「部分貫通」が与えるダメージは、「無貫通」が与えるダメージの3倍でした(武器の持つ基本ダメージに等しい)。
 せっかく、だんびら手斧戦斧という、宇宙服に対しても「部分貫通」を得られる兵器が存在するのに、わざわざ、性能面で劣るカトラスを用いる理由が分かりません。
 カトラスを用いることによって、近接戦闘で敵に与えることのできるダメージが半減して(正確には3分の1になって)しまうのです。

 貫通力以外にも、何か理由があるのかも知れませんから、今度は命中率について考察してみましょう。





近接戦闘の命中率とダメージ
対宇宙服(装甲値6)


 商船の乗組員(宇宙服とカトラスを装備)、あるいは海兵隊員(バトルドレスとカトラスを装備)と海賊兵士(戦斧装備)が、1対1で斬り合いをする、という状況を考えてみました。

 再び、プレイヤース・マニュアルを開きます。
 近接戦闘の命中率は、

  難易度〈易〉、〈武器技能〉、筋力、〈防御側武器〉、1ラウンド(確定)

 となっておりました。
 難易度〈易〉なので、基本的には3+の目で命中する訳です。



 攻撃側の乗組員と海兵隊員は、カトラスについて最低限の訓練を受けていると考えますから、〈武器技能〉の技能レベルは1。
 筋力は
平均的なキャラクターだとして、その範囲5〜9と決め、DM+1とします。
 攻撃側のDMは+2になりました。

 目標となった〈防御側〉の武器技能は難しいところですが、相手側も技能レベル−1としておきましょう。
 近接戦闘武器が持っている「防御力」は、この命中判定の際に加算する、と解釈をしています。
 目標が戦斧を持っている場合、「防御力」は1ポイント。
 技能レベルと合わせて、防御側のDMは−2です。

 攻撃側と防御側のDMを足し合わせると、±0になりました。
 ですから、攻撃は3+で命中します(する筈です)。

 移動DMや回避によるマイナスDMは近接戦闘にも適用されるのですが、計算が面倒になりますので、とりあえず今回は、双方が立ち止まって(移動DM=0、回避なし)斬り合いを行なっている、と考えました。

 命中判定のサイコロの目によって変化する、「無貫通状態」の兵器によるダメージを下の表3に示します。
 

      表3 無貫通兵器のダメージ期待値(成功値が12+〜−5の範囲)

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 商船の乗組員や海兵隊員(カトラス:貫通力3)から、海賊(宇宙服:装甲値6)を攻撃した場合と、
 海賊(戦斧:貫通力8)から、海兵隊員(バトルドレス:装甲値18)を攻撃した場合に、この「無貫通」状態を参照します。



 今回のサンプル(カトラスを持った海兵隊員)は、難易度〈易〉のDM±0ですから「3+」の欄を見ます。

 サイコロ(2D6)の目が「2」(2.8%)の場合は、常に「致命的失敗」ですから、ダメージを与えられません。
 サイコロの目が「3〜4」(13.9%)の場合、命中していますが「無貫通」であるがため、ダメージを与えることができません。
 「5〜6」(25.0%)の場合、1ポイントのダメージを与えられます。
 「7〜10」(50.0%)の場合、2ポイントのダメージを与えられます。
 「11〜12」(8.3%)の場合は4ポイントのダメージを与えられますので、この目が出た時のみ、一撃で敵を無力化できるでしょう。

 与えられるダメージの平均(期待値)は1.6ポイント。
 一撃で無力化できる可能性は、8.3%です。

 貫通力3のカトラスで、宇宙服を着た相手を一撃で倒せる可能性はわずかしかありません。
 もちろん、このことは双方に言えることですので、バトルドレスを着用した海兵隊員は、貫通力8の戦斧で攻撃されても、比較的、安全です。



 次に、攻守の立場を入れ替えてみましょう。
 海賊が、商船の乗組員を攻撃する場合はどうなるでしょうか。

 攻撃側の海賊も、戦斧を扱い慣れていると考えて〈武器技能〉の技能レベルは1。
 筋力も同じように、DM+1(筋力5〜9)とします。
 攻撃側のDMは+2になりました。

 目標となった乗組員も技能レベル−1。
 カトラスを持っているので、「防御力」は2ポイント。
 技能レベルと合わせて、防御側のDMは−3です。

 攻撃側と防御側のDMを足し合わせると、−1になりました。
 ですから、攻撃は4+で命中します。
 命中率だけを比べるならば、防御力に優れたカトラスを持つ側が有利でしょう。

 命中判定のサイコロの目によって変化する、「部分貫通」状態の兵器によるダメージを下の表4に示しました。


     表4 部分貫通兵器のダメージ期待値(成功値が12+〜−5の範囲)

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 海賊(戦斧:貫通力8)から、商船の乗組員(宇宙服:装甲値6)を攻撃した場合、この「部分貫通」状態を参照します



 戦斧を持った海賊は、難易度〈易〉のDM−1ですから「4+」の欄を見ます。

 サイコロ(2D6)の目が「2」(2.8%)の場合は、常に「致命的失敗」ですから、ダメージを与えられません。これは同じです。
 サイコロの目が「3」(5.6%)の場合、攻撃は外れました。
 サイコロの目が「4」(8.3%)の場合、命中しても「かすり傷」になるため、ダメージを与えることができません。
 「5」(11.1%)の場合、「部分貫通」による通常ダメージ、1ポイントを与えられます。
 「6〜7」(30.6%)の場合、3ポイントのダメージを与えられます。
 「8〜11」(38.9%)の場合は6ポイントのダメージを与えられますので、この目が出れば、一撃で敵を無力化できるでしょう。
 「12」(2.8%)の目が出ると、12ポイントのダメージを与えられます。

 与えられるダメージの平均(期待値)は3.7ポイント。
 一撃で無力化できる可能性は、41.7%です。



 比較しやすいように表でまとめると、表5と表6のようになりました。

      表5 商船の乗組員(カトラス)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、宇宙服(装甲値6)を着用

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 前述の通り、乗組員から海賊兵士への攻撃は「無貫通」。
 海賊から乗組員への攻撃は「部分貫通」となっています。
 優位な側の数値を青字で示しました。

 「無貫通」と「部分貫通」の違いは明らかであり、両者の能力(筋力DMと技能レベル)が同等の場合、
 乗組員が海賊兵士を無力化できる確率は、8.3%しかなく、
 海賊兵士が乗組員を無力化できる確率は、41.7%もあります。
 双方が100名ずつで斬り合いを行なうのであれば、乗組員が42名も無力化されるのに対し、海賊兵士はわずか8名しか無力化できないということです。

 乗組員側が有利な戦いを行なうためには、3倍以上の兵力で海賊を迎え撃つか、技能レベルで+2以上の、優秀な人材を抱えておかなければなりません。
 ・・・・無茶な話です。



 では帝国の守護者、海兵隊員の勝率はどうなのでしょう。

      表6 海兵隊員(カトラス)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          海兵隊員はバトルドレス(装甲値18)、
          海賊兵士は宇宙服(装甲値6)を着用

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 海兵隊員から海賊兵士への攻撃は「無貫通」。
 海賊兵士から海兵隊員への攻撃も「無貫通」です。

両者の能力(筋力DMと技能レベル)が同等の場合、
 海兵隊員が海賊兵士を無力化できる確率は、8.3%のままですが、
 海賊兵士が海兵隊員を無力化できる確率は、2.8%に激減しました。
 双方が100名ずつで斬り合いを行なうのであれば、海兵隊員が3名しか無力化されないのに、海賊兵士は8名が無力化されるということです。

 倒される人数は双方とも少ないのですが、明らかに海兵隊員の方が有利でした。
 これは、どうした要素によって生じた差異なのでしょう。



 表6の命中率に注目してください。
 海兵隊員と海賊兵士の能力値や技能レベルが同等の場合、海兵隊員のカトラスによる攻撃は3+で命中、海賊兵士の戦斧による攻撃は4+で命中します。
 これは武器の持つ「防御力」によるものでした。
 カトラスの「防御力」は「2」、対する戦斧の「防御力」は「1」です。
 わずかな違いですが、「防御力2と1」の違いが命中率「3+と4+」の違いを生じさせ、ダメージ期待値や無力化率に差異を持たせているのです。

 武器の持つ「防御力」は、実際にどれだけの効果があるのでしょうか。
 表5と表6で考察した乗組員と海兵隊員の武器を、カトラス(防御2)から剣(防御3)に持ち替え、表7と表8で同じような考察を行なってみます。


      表7 商船の乗組員(剣)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、宇宙服(装甲値6)を着用。

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 商船乗組員と海賊兵士の無力化率は、乗組員側の練度が+1の状態で、対等になりました。
 剣を持った乗組員が有利な戦いを行なうためには、2倍以上の兵力で海賊を迎え撃つか、技能レベルで+1な人材を抱えておくだけで済みます。
 このぐらいならば、何とか可能なレベルの対応ではありませんか?


      表8 海兵隊員(剣)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          海兵隊員はバトルドレス(装甲値18)、
          海賊兵士は宇宙服(装甲値6)を着用

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 同様に海兵隊員がカトラス(防御2)を剣(防御3)に持ち替えた場合ですと、海兵隊員の優位がさらに増してきます。
 海兵隊員が一撃で倒される(無力化される)確率はゼロにまで減じました。
 長期戦になっても、海兵隊員が受ける損害は4分の3以下に減少します。

 海兵隊員の練度が上回っていれば、さらに圧倒的な勝利を得ることが可能でしょう。
 有り得ないことですが、海兵隊員の練度が海賊兵士より1つ劣っていたとしても、対等の戦いが可能になるのです。
 武器の持つ「防御力」は、意外と重要なのではないでしょうか。

 宇宙船内で近接戦闘に用いる武器として、カトラスが最適の選択だとは思えません。
 どうせ「無貫通」の結果しか得られないのですから、防御力の高いを選択したり、あるいはライフルに装着したまま扱える銃剣を用いたりすべきだと思うのです。



 ついでに、銃器戦闘を行なっているキャラクターが敵から近接戦闘を挑まれた場合、どの程度の防御が可能か、考察してみましょう。
 銃剣の付いていないライフルなどで近接戦闘を行なう場合、その武器は「棒きれ」とみなされます(ですから〈格闘〉技能を用いることになります)。
 棒きれの防御力は「0」でした。
 身を守る手段としては、かなり貧弱です。


      表9 商船の乗組員(棒きれ)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、宇宙服(装甲値6)を着用。

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 棒きれで近接戦闘を行なう場合、防御力が「0」であるため、多くの場合、乗組員一撃で殺されてしまうようです。
 何とかして先制攻撃を仕掛け、ライフル射撃で敵を無力化する必要があるでしょう。
 それが可能かどうかは、次回の考察次第ですが。


      表10 海兵隊員(棒きれ)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          海兵隊員はバトルドレス(装甲値18)、
          海賊兵士は宇宙服(装甲値6)を着用

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 海兵隊員の場合は、装甲値18のバトルドレスで守られているため、まだ、それほど危険なことにはなりません。
 万が一、ライフルなどを構えている海兵隊員が海賊に近接戦闘を挑まれても、大きな損害は受けずに済むでしょう。
 磁気ライフルや磁気SMGは強力な銃器ですから、海賊を無力化できる可能性も高いのです。
 そうすれば、上記のリスクも回避できますから。



 近接戦闘を行なうキャラクターが、その武器の技能や、〈格闘〉技能を持っていない場合の考察は省略しました。
 技能なしの場合、難易度が1つ上下しますから、技能なしのキャラクターは近接戦闘で虐殺されてしまう可能性が高いようです。

 技能なしのキャラクターは、間違っても近接戦闘に巻き込まれないよう、注意しましょう。
 また、近接戦闘を挑まれてしまった場合は、すみやかに降伏すべきだと思います(相手も技能なしの場合は除く)。





近接戦闘の命中率とダメージ
対宇宙服(装甲値3以下)


 ふと思いついたのですが、カトラスの有効性を議論する上で、防御側が宇宙服(装甲値6)を着用している、と想定したことが間違いだったのかも知れません。
 防御側が(攻撃側である商船の乗組員も)宇宙服を着ておらず、もっと軽くて動きやすい防具を着用しているとした場合、斬り合いの結果はどのように変わるでしょうか。

 双方が宇宙服を着用していないのであれば、船内の空気を抜くといった荒業はどちらも実行できなくなります。
 もっとも中には、味方を犠牲にしても敵の全滅を謀ろうとする海賊がいるかも知れませんが。


 再び、商船の乗組員(カトラス装備)と海賊兵士(戦斧装備)の斬り合いを、考えてみましょう。
 海兵隊員がバトルドレスを脱いで戦うことは、必然性がないので考えません。
 双方の防具は、装甲値2〜3のメッシュやフラック・ジャケットを想定します。
 この場合、カトラス(貫通力3)は、それらの装甲に対して「部分貫通」となりました。
 その代わり、戦斧(貫通力8)の攻撃は、同じ防具を「完全貫通」してしまう訳なのですが。



 部分貫通の兵器によるダメージは表4にて掲載済みですから、今度は「完全貫通」によるダメージのみを表11に示しました。 

     表11 完全貫通兵器のダメージ期待値(成功値が12+〜−5の範囲)

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 戦斧を持った海賊は、難易度〈易〉のDM−1ですから再び「4+」の欄を見ます。

 サイコロ(2D6)の目が「2」(2.8%)の場合は、常に「致命的失敗」ですから、「完全貫通」であっても、ダメージを与えられません。
 サイコロの目が「3」(5.6%)の場合、攻撃は外れです。
 サイコロの目が「4」(8.3%)の場合、「かすり傷」の命中で、ダメージは1ポイントを与えられます。
 「5」(11.1%)の場合、通常ダメージの3ポイントを与えられます。
 「6〜7」(30.6%)の場合、2倍ダメージの6ポイントを与えます。
 「8〜11」(38.9%)の場合、4倍ダメージの12ポイントを与えられました。
 戦斧で斬られた海兵隊員は、ほぼ確実に死亡するでしょう。
 「12」(2.8%)の目が出ると、8倍ダメージの24ポイントを与えられます。

 与えられるダメージの平均(期待値)は7.6ポイント。
 一撃で無力化できる可能性は、72.2%でした。



 「部分貫通」のカトラスによる攻撃結果と、「完全貫通」の戦斧による攻撃の結果を表にまとめると、表7のようになりました。

      表12 商船乗組員(カトラス)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、装甲値2〜3の防具を着用

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 両者の防具が薄く(装甲値が低く)なったため、斬り合いの戦闘結果は、かなりスプラッタな情景になってきたようです。
 商船の乗組員と海賊兵士の能力値や技能レベルが同等の場合、乗組員(カトラス)が与えるダメージの期待値は4.8、一撃で無力化できる期待値は58.3%に急増しました。
 海賊(戦斧)が与えるダメージの期待値も7.6、無力化期待値は72.2%に上昇。
 双方とも、斬り合えば目標の半数以上を戦闘不能状態に追い込めますが、その可能性はわずかながら、海賊(戦斧)側が有利です。

 乗組員の練度が1つでも高ければ、ダメージと無力化の期待値は乗組員(カトラス)側が有利になりました。



 次は、乗組員のカトラスが「完全貫通」になる場合についても考察してみます。
 目標の防具は、ジャック(装甲値1)か無し(装甲値0)でしょう。

 カトラス戦斧による攻撃結果(どちらも「完全貫通」)を表にまとめると、以下のようになります。

      表13 商船乗組員(カトラス)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、装甲値1以下の防具を着用

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 防具がさらに薄くなり、カトラス戦斧の双方が「完全貫通」になったため、戦斧のアドバンテージが失われてしまいました。
 双方が「無貫通」になる場合、乗組員側が「装甲値9以上」、海賊側が「装甲値4以上」の防具を付けている場合も同じことが言えるでしょうが、明らかに、乗組員(カトラス)側が有利です。
 これはカトラスの持つ防御力「2」(戦斧より1つ多い)によって得られた優位なのですが。
 その優位も、海賊側の練度が1つ高くなることで、簡単に失われてしまいますが。



 せっかくですから、さらに防御力の高い(防御力「3」)を用いた場合についても比較してみました。

      表14 商船乗組員(剣)と海賊兵士(戦斧)の斬り合い
          命中率とダメージ期待値、無力化期待値の比較
          両者とも、装甲値1以下の防具を着用

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 海賊兵士の練度が1つ高い場合に、剣を持った乗組員と戦斧を持った海賊兵士は、対等の命中率、ダメージ期待値、無力化期待値を持つようになりました。
 つまり、武器の持つ防御力「2」の違いは、技能レベル「1」の違いに等しいということです。

 命中判定の難易度をもう一度見てみると、キャラクターの技能レベルは、攻撃と防御の双方に用いられていました。
 ですから、2倍の価値がある訳です。

 キャラクターの筋力は攻撃のみ、武器の防御力は防御のみにしか使えませんので、上記の技能レベルと比べた場合、半分の価値しか持たないのです。





近接戦闘に入るための成功判定


 期待値計算に夢中のあまり、すっかり忘れていました。
 メガトラで近接戦闘をする場合、命中判定の前に、近接戦闘に入れるかどうかの判定を行なう必要があったのです。
 その難易度は、下記のように決められていました。

  難易度〈並〉、敏捷力(対立)、1ラウンド(確定)

 技能レベルや装備の有無は影響しませんから、標準的な(敏捷力が5〜9の範囲にある)キャラクター同士ならば、7+で成功するでしょう。
 この行為に失敗した場合は、攻撃をかわされた(もしくは、防がれた)ということになるようです。

 +DMがほとんど得られない状態で、7+の成功判定というのは、ちょっと辛い条件です。
 近接戦闘の成功率は、36分の21ですから、58.3%にまで減じてしまうでしょう。

 近接戦闘に入るために、まずは、難易度〈並〉で成功判定を行ない、それに成功してから、難易度〈易〉の命中判定を行なう。
 二段構えの判定を行なうことで、メガトラの近接戦闘は命中率が低い代わりに、命中した際のダメージが大きい、という風にしているのかも知れません。



 キャラクターの敏捷力の優劣によって、どの程度、近接戦闘に入れる確率が変化するのか、下の表15にまとめてみました。


        表15 近接戦闘に入れるか、入れないかの成功率

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 攻撃側と防御側の「敏捷力DM」が等しい場合、敏捷力DMは打ち消しあって「0」になりますから、成功率は〈並〉で7+のまま。
 近接戦闘に入れる確率は58.3%になります。

 もし攻撃側の「敏捷力DM」が「2」で、防御側が「1」ならば、その差は「+1」になりますから、成功率は6+、72.2%になりました。
 反対に攻撃側が「1」で、防御側が「2」ならば、差は[−1」です。
 成功率は8+で、41.7%しかありません。
 「敏捷力DM」の違いは、近接戦闘の有効性に大きく影響するようです。
 近接戦闘の成功率が1.7倍も違ってきますから。

 もし攻撃側の「敏捷力DM」が「3」で、防御側が「1」である場合、その差は「+2」になりました。成功率は5+で83.3%です。
 反対ならば、差が「−2」で成功率は9+の27.8%。
 近接戦闘の成功率が3.0倍も開きました。



 敏捷力15「敏捷力DM=3」を備えたキャラクターは、私のレフリー暦の中で1人しかおりませんが、世間にはありふれているものなのでしょうか?
 敏捷力4以下「敏捷力DM=0」というキャラクターも、戦場ではまず、遭うことがないでしょう。
 そうすると、現実的な「敏捷力DM」の差は、せいぜい「1」止まりだと思います。
 1対1の戦いでは重要な要素ですが、同じ人類同士の集団戦闘においては平均化されてしまい、それほど重要にはならないのでしょう。



 ところが、戦争に大量のロボットを投入してくる種族が2つほどありました。
 そう、ゾダニとハイブです。
 実はゾダニの戦闘ロボットは反重力駆動が基本ですから、敏捷力は15がデフォルトになりました。
 敏捷力15ということは、「敏捷力DM」は「3」。
 「敏捷力DM」の差は、基本的に「2」になります。
 帝国海兵隊(陸軍)の兵士にとって、近接戦闘でゾダニのロボットを倒すことは、至難の業だと言えるでしょう。
 反対に「敏捷力DM=3」を備えたゾダニの戦闘ロボットが、帝国海兵隊に近接戦闘を挑む場合、かなりの高確率でそれに成功します。
 帝国海兵隊の精鋭が、戦斧を持った戦闘ロボットによって、片端から斬り倒される。
 ちょっとシュールな情景ですが、ルール的には有り得ないことでも無いのです。





結論


 海兵隊員が伝統的に愛用しているカトラスは、だんびら(ブロードソード)斧類と比べて、
 攻撃目標の装甲値が1以下であるか、9以上の場合
 にのみ、有用です。
 それ以外の場合は、もっと貫通力の高い武器に持ち替えた方が良いでしょう。

 カトラスの備える防御力「2」は有用ですが、これだけではカトラスを重用する理由になりません。
 防御力だけならば、さらに優れた「3」の防御力を持つが存在するためです。

 ですから、本気で近接戦闘を考えているのであれば、カトラスの使用を止め、貫通力に優れた戦斧(個人的には宇宙斧と呼びたい)に持ち替えるべきなのです。
 あるいは、武器の防御力を活用するのであれば、防御力「3」を備えたにすべきでしょう。
 ライフルと同時に扱えるという点では、銃剣も便利です。
 棒きれと違って、防御1を備えていますので、ライフルを鈍器として振り回すよりも少しだけ、有利になります。



 海兵隊がカトラスを愛用している理由を、メガトラの個人戦闘ルールから見出すことは出来ませんでした。
 残念ながら、近接武器としてのカトラスは役立たずだ、と結論せざるを得ません。
 伝統という理不尽な理由で、帝国の海兵隊員は、実戦に不向きな武器(カトラス)の使用を強制されているようです。
 カトラスを重用するのであれば、それが必然的である理由、カトラスが有利になる特別ルールを設けて欲しいと思います。



2010.04.15 初投稿。
2010.09.20 大幅に加筆修正して、再投稿。