横軸は、切り裂き魔と乗組員の「敏捷力ＤＭ」の差を表し、縦軸は、戦斧による攻撃の命中ＤＭを表しています。

　両者の「敏捷力ＤＭ」が対等であれば「敏捷力±０」の欄を見てください。
　標準的なキャラクターであれば、訓練や年齢効果によるUPPの増減を考慮しないのであれば、66.7%の確率で「敏捷力ＤＭ」は「１」になる筈です。
　16.7%の確率で「敏捷力ＤＭ＝２」（敏捷力10以上）のキャラクターが存在しますし、同じく16.7%の確率で「敏捷力ＤＭ＝０」（敏捷力４以下）のキャラクターも有り得るでしょう。
　ですから、「敏捷力ＤＭ」が対等である確率は50%。
　どちらか一方が１つだけ優勢である確率は、それぞれ22.2％。
　２つ優勢である確率は、2.8％ずつある訳です。

　命中ＤＭは前回の考察通り、切り裂き魔の筋力ＤＭ（＋１）、技能レベル（＋１）、攻撃された乗組員の武器「防御力−２」、防御に用いている武器の技能レベル（０）、すべてを加算したものです。
　場合によっては、両者の移動ＤＭが加算されるかも知れません。
　今回は、切り裂き魔の筋力ＤＭが＋１、技能レベルも＋１、乗組員の用いている武器（カトラス）の「防御力−２」ということで、命中ＤＭ±０の欄を用いました。
　カトラスを用いた近接戦闘の訓練を行なっている商船の乗組員には、出会ったことがありませんので、〈カトラス〉技能は０レベルと考えます。



　同じように、乗組員がカトラスで行なう反撃の有効率も評価してみました。
　乗組員の筋力ＤＭが＋１、技能レベルは０、切り裂き魔の用いている武器（戦斧）の「防御力−１」、技能レベル−１ということで、反撃は命中ＤＭ−１の欄を用います。

　　　表２　敏捷力を加えた、近接戦闘の評価（ダメージ期待値と無力化の確率）
　　　　　　カトラスを持った乗組員が、宇宙服着用の切り裂き魔に反撃した場合

　切り裂き魔と乗組員の「筋力ＤＭ」と「敏捷力ＤＭ」が等しく、技能レベルがすでに述べたような状態である場合、両者のダメージ期待値、無力化率は、赤字で示した値となります。
　切り裂き魔による攻撃は、ダメージ期待値2.8、無力化率が34.0%もありました。
　対する乗組員の反撃は、ダメージ期待値0.7、無力化率1.6%ですから、圧倒的に不利な情勢です。
　抵抗するだけ、無駄のような気がしてきました。
　自分が殺される前に切り裂き魔を倒すためには、相当の幸運（あるいは、たくさんの戦術ポイント）が必要になるでしょう。



　貴方のキャラクターが優秀で、敏捷力10以上（「敏捷力ＤＭ」＝２）、〈カトラス−２〉の技能を持っていたとします（海兵隊出身の乗組員ならば、このぐらいの技能を持っていてもおかしくないでしょう）。
　その場合、切り裂き魔は簡単に近接戦闘を行えません（成功率が41.7％に低下）。
　また、貴方のカトラス技能２レベルが、双方の命中ＤＭに影響してきます。
　両者のダメージ期待値と無力化率は、青字の値に変わりました。
　切り裂き魔による攻撃は、ダメージ期待値1.1、無力化率が11.6%に減り、乗組員の反撃は、ダメージ期待値1.4、無力化率12.0％まで増えています。
　ほぼ対等な条件にまで持っていくことが出来た、と言えるでしょう。



　反対に、貴方のキャラクターが標準的なレベルで、切り裂き魔が優秀（敏捷力10以上、〈戦斧−３〉）を備えている場合、戦闘結果は虐殺になりました。
　切り裂き魔は、近接戦闘を仕掛けてくることが容易なのです（成功率が72.2%）
　両者のダメージ期待値と無力化率は、黄色字の値に変わりました。
　切り裂き魔による攻撃は、ダメージ期待値5.1、無力化率が60.2%に急増、乗組員の反撃は、ダメージ期待値0.2、無力化率0.0%しかありません。



　前回の考察でも感じましたが、戦斧を持った敵に対して、カトラスで反撃することは無謀としか言えません。
　他の武器が何も無ければ仕方ありませんが、できれば、そうした事態は避けたいものです。

　一応、宇宙船内に積まれていそうな銃器を選び出したつもりです。

　オート・ピストルは、治安レベル４以下の世界ならば持ち歩ける銃器ですし、ありふれたものでしょう。
　個人の趣味によっては、ボディ・ピストルやレボルバーも有り得ます。
　用いている弾薬の口径によって貫通力が分けられていますが、宇宙服（装甲値５）に対しては同じ「無貫通」の結果しか得られません。
　区別する必要がありませんので、貫通力２のデータを用いました。

　サブマシンガン（SMG）は、フルオート射撃が可能な銃器です。
　メガトラのルールではとても凶悪な兵器に成り得るのですが、治安レベルが３以下の世界ならば、所持に問題はありません。
　その貫通力は３です。

　オート・ライフルもまた、フルオート射撃が可能な銃器です。
　治安レベルが２以下の世界でなければ所持できませんが、宇宙船の乗組員ならば入手に問題はありません。
　セミオート射撃のみのライフルであれば、治安レベル５以下で大丈夫です。
　オーナーや船長の趣味（主義）によって、宇宙船にはセミオートの銃器しか積まれていない可能性もあると思います。
　ライフルの貫通力は３。
　はるかに強力な弾薬を用いている筈のライフルが、ピストルやサブマシンガンと同じ貫通力、同じダメージである点は大いに疑問なのですが、このような問題点は、すでに向こう（アメリカ）で議論され尽くしている筈だと思います。
　命中難易度の違いなどによって、両者の違いを表現できているのでしょう。

　磁気サブマシンガン（SMG）は、磁気ライフルの短銃身バージョンと呼ぶべきものでしょう。
　MAG様の投稿「バトルドレス」から拝借しました。
　どう見ても軍用兵器ですが、制限される治安レベルが２になるのか、４になるのか、私には判断が付きかねます。
　貫通力が５、フルオート目標数が＋３で、速射も可能。
　近距離戦闘では関係ありませんが、ジャイロ・スタビライザーや照準器まで付属している凶悪兵器です。

　スナッブ・ピストルは、ロケット弾を発射するピストルです。
　宇宙船内の保安用としてはガス弾や麻酔弾を装填して常備されているそうですが、そんなものは宇宙服相手に全く役立ちませんので、徹甲榴弾を装填して用います。
　ピストル扱いだとすれば、治安レベルは４以下で大丈夫の筈ですが、小さくても徹甲榴弾は爆薬なのです。
　徹甲榴弾だけは爆発物扱いをされ、治安レベル１で禁じられる可能性もありそうですが、皆様はどう思われますでしょうか？
　治外法権の宇宙港で購入するならば問題ありません。

　戦闘ライフルと磁気ライフルは、装甲値５の宇宙服を「部分貫通」できる銃器として取り上げました。
　戦闘ライフルは、高速弾を用いれば貫通力６を得られますし、磁気ライフルは元から貫通力７です。
　非常に強力な銃器ですから、基本的には軍用品として入手が制限されており、「まともな民間人」には取り扱えない武器だと思われます。
　しかし残念ながら、トラベラー世界のＰＣが「まともな民間人」であることはまず、有り得ません。
　横流し品を手に入れるとか、戦闘の結果として鹵獲したとか、様々な理由で所持している可能性は高いでしょう。

　最後のレーザー銃は、様々なテックレベルで製造されているレーザー・カービンや、レーザー・ライフルの総称です（そう定義しました）。
　レーザーピストルは除外しました（貫通力が低いので）。
　極めて高価な銃器ですが、その貫通力は７以上。
　ということで、対宇宙服戦闘には活躍が期待されます。
　考察には、「部分貫通」を期待できる貫通力７〜９のレーザー銃（テックレベル８〜９）と、「完全貫通」が可能な貫通力12〜20のレーザー銃（テックレベル13）の両方を用いました。



　まず最初に、宇宙服（装甲値６）を貫通できない銃器、貫通力３のピストル、SMG、ライフルによるダメージ期待値、無力化率を見てみます。
　追加した磁気SMGも、セミオート射撃の場合はここに含まれるでしょう。
　乗組員の敏捷力DMが＋１、技能レベルが０ということで、射撃の命中率は、命中DM＋１の欄を見ます。

　　表４　無貫通しか期待できない銃器（ピストル、SMG、ライフル）による
　　　　　　ダメージ期待値と無力化率の変化（基本ダメージを問わない）

　貴方達乗組員は、ピストルやライフルをそれぞれが構えて、閉じたアイリスバルブに照準を定めました。
　アイリスバルブが開くと同時に、飛び込んできた切り裂き魔に銃弾を浴びせるつもりなのです。
　貴方の待ち構えている位置から、アイリスバルブまでは「近距離」です。
　狭い船内ですから、その程度の距離しか確保できないでしょう。
　などと言い訳をしつつ、中距離以遠の射撃については次回の考察に回します。



　切り裂き魔と乗組員の「筋力ＤＭ」と「敏捷力ＤＭ」が等しく、技能レベルがすでに述べたような状態である場合、両者のダメージ期待値、無力化率は、赤字で示した値となります。

　切り裂き魔による攻撃は、ダメージ期待値4.1、無力化率が48.6%になりました。
　乗組員が、武器をカトラス「防御力２」からライフル「棒きれ扱いとして防御力０」に持ち替えた結果、切り裂き魔の命中ＤＭが２つも増えてしまったのです。
　ちなみに、メガトラの近接戦闘ルールと〈格闘〉技能の説明文を読み直した結果、棒きれを用いた近接戦闘の防御には、〈格闘〉の技能レベルを使えると判明しました。
　乗組員が〈格闘〉技能を持っているのであれば、近接戦闘を仕掛けられた際、若干の有利を得られると思います。
　まぁ、気休めにしかなりませんが。
　反対に〈格闘技能〉を持っていない場合、切り裂き魔の攻撃がとても当たり易くなります（難易度１レベルの修正）。
　とても怖いことになるでしょう。

　乗組員のライフル射撃は６＋で命中しますが、貫通力の不足から「無貫通」となってしまいました。
　ダメージ期待値は0.6、無力化率0.0%です。
　射撃効果をほとんど期待できません。
　切り裂き魔は、貴方達が必死で撃ち込む銃弾の中、ほとんど傷を受けずに飛び込んできて、貴方達を切り刻むことが明らかになりました。
　こんな状況では、カトラス（ダメージ期待値1.1、無力化率9.7%）の方がまだマシです。



　貴方のキャラクターが優秀で、敏捷力10以上（「敏捷力ＤＭ」＝２）、〈ライフル−２〉、〈格闘−２〉の技能を持っていたとします。
　その場合、ライフル射撃の命中ＤＭは＋４になります。
　命中率３＋の欄を見ると、ダメージ期待値は1.6、無力化率3.8%です。　
　命中ＤＭ＋１の時よりはマシですが、やはり、ほとんど効果はありません。
　切り裂き魔による近接戦闘の成功率は大きく下がりますが、残念ながら、劣勢を覆せるほどではありませんでした（ダメージ期待値2.0、無力化率24.3%）。
　やはりカトラスを選んだ方が良いようです。

　戦術ポイントを多用し、命中ＤＭを＋８にしても、ようやくダメージ期待値は3.1、無力化率は58.3%になります。
　「無貫通」の銃器（セミオート射撃）で、突撃してくる切り裂き魔を無力化することは、とても困難だと分かりました。



　それでは、フルオート射撃を行なったらどうなるのでしょうか。
　ライフルをオート・ライフルに持ち替えて、あるいはＳＭＧのセレクター・スイッチをフルオートに切り換えて、フルオート射撃（目標数＋２）の期待値計算を行なってみましょう。

2010.09.30　加筆
　フルオート目標数が＋３の期待値計算を追加しました。
　オート・ライフルなど、目標数＋２のフルオート射撃は「目標数＋２」の欄を、ＳＭＧと磁気ＳＭＧのように目標数＋３の銃器は「目標数＋３」の欄を見てください。


　　　　表５　無貫通しか期待できない銃器（SMG、ライフル）による
　　　　　　　ダメージ期待値と無力化率の変化（目標数＋２のフルオート射撃）

　貴方のフルオート射撃によって、「無貫通」の銃器でも切り裂き魔に与えるダメージ期待値は３倍の1.8、無力化率も11.5%に増えました。
　SMGと磁気SMG、フルオート目標数が＋３の場合は、ダメージ期待値が４倍の2.3で、無力化率は21.9％です。
　セミオート射撃に比べればはるかに良い値となりましたが、切り裂き魔の戦斧による斬撃と比べれば、まだ劣っています。

　貴方のキャラクターが優秀な場合（敏捷力10以上、〈オート・ライフル、あるいはＳＭＧ−２〉を備えている場合）、ダメージ期待値は4.8、無力化率82.3%にまで増えました。
　目標数＋３の銃器ならば、ダメージ期待値が6.3、無力化率が92.3％です。
　これでしたら、かなりの高確率で切り裂き魔の突撃を阻止できるでしょう。


2010.09.30　加筆
　目標数＋３のフルオート射撃は、目標数＋２の場合と比べて、与えられるダメージの期待値が1.33倍でした。
　無力化率は、10〜20％高くなるようです。
　劇的に威力が増す訳ではありませんが、確実に威力が増していました。



　フルオート射撃はかなり有効なようです。
　「無貫通」でも構わないのですから、装甲値18のバトルドレスに対しても（着用しているキャラクターの耐久ポイントは変わりますが）ほぼ同じような期待値を得られることでしょう。
　このような結果を見てしまうと、何でもいいからフルオート射撃のできる銃が欲しくなってしまいます。
　しかし、手元にフルオート可能な銃器が無ければ仕方ありません。
　「速射」ルールを利用してみましょう。



2010.09.30　加筆
　MAG様から掲示板にて、色々と御教授頂きました。
　若干、私の解釈は間違っておりましたので、以下にその内容を転載します。

１．速射ルールについて

■速射とは「主目標を３つ選ぶ」代わりに、難易度を一つ挙げる行為です。
■速射とフルオートを組み合わせる場合には、個々の主目標に対してフルオート射撃を実施できます。
■つまり射撃判定回数は３×（１＋フルオートモード数）となります。
■「３＋フルオートモード数」という記述は日本語版にしかありません。
　該当部分は英文ルールには影も形もありません。訳者が誤解して追記したと思われます。
　この部分を頭から完全に抜き去らないとなかなか速射ルールは理解できません。

■フルオート射撃は主目標とその隣接物にしか射撃できません。
　ただし射線上はＱ＆ＡでＯＫになったはず。
■速射は45度アーク内の「３つの主目標」に対して射撃できます。
　隣接している必要はありません。
■速射とフルオートを組み合わせた場合、45度アーク内の３つの主目標とそれに隣接した目標に対してフルオート射撃可能です。
■ルールの主旨については上記の通りですが、実際の具体的な適用にあたっては色々と細かくきめなければならず、混乱が起きています。
■ダイジェストマガジンに掲載されていたものに基づいて私なりに細かい手順を整理しAutomatic Weaponに掲載してあります。
　詳細は忘れてしまいましたが、ズルができないように色々と制限があります。

　ということです。
　宜しければ、MAG様の「Automatic Weapon」も参考にしてください。
　MAG様が丁寧な説明をしてくださいましたが、せっかくの計算結果がもったいないので、考察を続けます。



　セミオートのピストルやライフルで、速射を行なった場合の期待値計算をしてみました。
　速射を行なって、１つの目標に１弾倉分の銃弾を叩きこむことはもったいないのですが、セミオートの銃器であっても、３回の命中判定を行なえるという点は魅力です。
　実際に、これがどれだけの威力を発揮できるのか、確かめてみましょう、

　命中難易度が１つ上がりますので、私の計算ではＤＭ−４として扱います（ＤＭの範囲が±８ですから、このやり方を使うと、その点を間違える危険があります。私の真似をする場合は気を付けてください）。

　　表６　無貫通しか期待できない銃器（ピストル、ライフル）による
　　　　　ダメージ期待値と無力化率の変化（同一目標に３回の射撃を浴びせる速射）

　非常に悲しいことですが、貴方の速射によって、切り裂き魔に与えるダメージ期待値と無力化率は、かえって下がってしまうことが判明しました。

　一般的なキャラクター（「敏捷力ＤＭ」＝１、〈ハンドガン、または、ライフル−０〉）の場合、射撃の命中率は６＋から10＋に上昇。
　ダメージ期待値は弾倉１個分の弾薬を消費するにも関わらず、0.6から0.1に減少。
　無力化率も0.0%のままでした。

　優秀なキャラクター（「敏捷力ＤＭ」＝２、〈ハンドガン、または、ライフル−２〉）であっても、射撃の命中率は３＋から７＋になり、ダメージ期待値は1.6から1.1へ減少、無力化率も8.3%から3.0%に下がってしまいます。

　速射はあまり役に立たないだろうと思っていましたが、これほど役立たずだったとは予想もしていませんでした。
　ちなみに、命中ＤＭが＋６以上（「敏捷力ＤＭ」＝２と〈ライフル−４〉技能？）の持ち主であれば、速射はそれなりの効果が得られるようです。
　しかし、それだけの技量を持っているキャラクターが、どれだけ存在するのでしょうか。

　セミオート射撃しかできず、貫通力の低い（宇宙服に対して「無貫通」しか期待できない）銃器だけしか手元に無い場合は、仕方ありません。
　武器としてカトラスを選ぶべきです。
　近接戦闘の際、武器の「防御力」を利用できますから、わずかながら生存率が上がると思います。
　カトラスの存在意義がようやく見つかりましたが、あまり嬉しくありません。



2010.09.30　加筆
　再び、MAG様の文章を転載します。

２．速射の効果について
　何年か前にmixiで既に定量的に書いていますがここでも整理しておきます。

■２Ｄの命中の統計分析からいって、ある程度技量が上がらないと射撃判定数が増える効果がでないのは自明です。
■貫通力が目標の装甲を下回る場合、コツコツ当てねばならないので上記期待値での議論となり技量が低いと速射の効果が出にくくなります。
■貫通力が装甲値を上回る場合、ただのフルオートでは散開した敵部隊に対して1目標しか選択できないのでオーバーキルとなるだけです。速射の方が有利です。

■ちなみに速射が有効に活用できる兵器はVRFですね。ＣＴでは車載兵器でしたが、ＭＴでは操作班武器に変わり、装弾数、設置時間等も変更されました。貫通力21は脅威です。
　ちなみに日本語版は装弾数にエラッタがあります。装弾数は30,000発です。その上の行は5,000発です。

　MAG様の御指摘通り、１目標に速射を浴びせることは無意味であることが確認できました。

　「部分貫通」が可能な銃器を扱えるのであれば、貴方は、切り裂き魔を一撃で打ち倒せる可能性を持ちます。
　その可能性は16.7%。およそ６分の１の確率です。
　あまり高くありませんが、カトラスよりも高い数値（ダメージ期待値1.9）が得られました。

　フルオート射撃ならば、勝率はずっと上がります。
　目標数＋２の銃器でも、ダメージ期待値が5.8で、無力化率は67.1%。
　３分の２の確率で、切り裂き魔を阻止できるのです。
　目標数＋３の銃器らば、ダメージ期待値7.7で、無力化率は81.3％になりました。



　貴方が優秀なキャラクターを持っているのであれば、無力化に成功する確率はずっと高くなるでしょう。
　命中率３＋は変わりませんが、ダメージの期待値はほぼ３倍で4.8、無力化率は58.3%になりました。
　切り裂き魔の戦斧よりも、優秀です。
　フルオート射撃が可能ならば、まず確実に切り裂き魔を撃ち倒せるでしょう（ダメージ期待値14.5、無力化率99.0%、目標数＋３の銃器ならば、19.3と99.9％）。



　次に、セミオート仕様の戦闘ライフル（民間モデルということで存在するかも知れません）で、速射を行なった場合の期待値計算をしてみます。
　スナッブ・ピストルや磁気ライフルの基本ダメージは４ですから、ダメージ３の計算とは期待値が異なってきますが、そのデータの傾向は、ほぼ同じようになる筈です。

　　　　　　表８　部分貫通を期待できる銃器（戦闘ライフル？）による
　　　　　　　　　ダメージ期待値と無力化率の変化（目標数＋２の速射）

　「無貫通」の場合と同じように、速射によってダメージ期待値と無力化率は減少してしまいました。

　一般的なキャラクター（「敏捷力ＤＭ」＝１、〈ライフル−０〉）の場合、射撃によるダメージ期待値は1.9から0.4に減少、無力化率も16.7%から1.1%に下がります。

　優秀なキャラクター（「敏捷力ＤＭ」＝２、〈ライフル−２〉）であってもダメージ期待値は4.8から3.7へ減少、無力化率も58.3%から42.5%に下がってしまいました。

　単一目標に銃弾を浴びせる場合、十分な技量がなければ速射は意味がありません。
　そして、それだけの技量があるなら速射を選ばずとも、確実に目標を仕留められるのです。
　複数目標に対して行なうのでなければ、速射の意味はないのですね。

　「完全貫通」が可能な銃器によって、ようやく、切り裂き魔の戦斧と対等のダメージ期待値と、無力化率を持てるようになりました。
　一般的なキャラクターの場合、ダメージ期待値は4.1で、無力化率は41.7%。
　ダメージ期待値と無力化率は、「部分貫通」によるフルオート射撃の方が、高い数値を示しています。
　ですから「部分貫通」を与えられる、フルオート射撃の可能な銃器が手元に無いのであれば、レーザー銃で我慢することになるでしょう。

　優秀なキャラクターであれば、ダメージ期待値は9.8、無力化率は83.3%です。
　かなりの高確率で、切り裂き魔を無力化できることでしょう。



　以上の考察結果から、宇宙服（装甲値５）を着用した切り裂き魔を、近距離で攻撃する場合、このような優先順位で兵器を選ぶべきだと結論できました。

１．最善の兵器は、フルオート射撃が可能な「部分貫通」の銃器。
　　具体的には戦闘ライフル（高速弾使用）や磁気ライフル。

２．次善の兵器は、セミオート射撃しか出来ないが「完全貫通」の銃器。
　　具体的には、テックレベル13以上で製造されたレーザー銃。

３．その次は、セミオート射撃しか出来ない「部分貫通」の銃器。
　　スナッブ・ピストル、低ＴＬのレーザー銃。

４．それでも駄目ならば、フルオート射撃が可能な「無貫通」の銃器。
　　サブマシンガン（ＳＭＧ）やオート・ライフルの類。

５．「防御力」の高い近接戦闘兵器。
　　カトラスや剣など。

６．セミオート射撃しか出来ない「無貫通」の銃器。
　　ピストル、ライフル、散弾銃など。

　実際のところは、それを扱うキャラクターのUPPや、技能レベルによって変化すると思いますが、大まかなところでは、上記のように順序を付けることが出来ました。

　また、フルオート射撃は大変有用ですが、単一目標への速射はほとんど意味がない（場合によってはデメリットしかない）ということも分かっています。

　仲間の行なった射撃をものともせず、切り裂き魔は銃弾の嵐の中、平然と突き進んで来ました。
　貴方はSMGを構え、切り裂き魔を待ち受けます。
　切り裂き魔が目の前で戦斧を振り上げた瞬間、貴方は（妨害判定に成功し）飛び出しました。
　懐へ飛び込み、SMGの銃口を宇宙服に押し付けて、引き金を引きます。
　危機一髪、宇宙服を貫通こそしなかったものの、至近距離から10発の拳銃弾を浴びせられた切り裂き魔は、命中の衝撃で脳震盪を起こし、崩れ落ちました。

　個人的な印象ですが、至近距離の命中難易度〈易〉の具体的な行為は、銃口を相手の身体に押し付けて引き金を引く、というようなことだと思っています。
　ライフルのような銃身の長い銃器では難しいことですが、ピストルやSMGならば、十分に可能でしょう。



　上記の表を見比べて頂ければ分かると思いますが、難易度〈易〉で射撃を行なった場合、「無貫通」の銃器であっても、「部分貫通」（表７）並みのダメージ期待値と無力化率を得られました。
　優先順位６番だった「無貫通」のセミオート銃器が、一気に３番の「部分貫通」セミオート銃器まで、躍り出たのです。
　これは大変、重要なことでしょう。

　オート・ピストルによるセミオート射撃の場合であっても、ダメージ期待値は2.0で無力化率は16.7%です。
　これまでほとんど役立たずだったことを考えると、大きな進歩です。
　切り裂き魔を倒せる可能性が見つかったのですから。
　SMGによるフルオート射撃であれば、ダメージ期待値は5.9、無力化率は94.0%に達します。
　まず確実に、切り裂き魔を倒せるでしょう。

　優秀なキャラクターであれば、セミオート射撃であっても、ダメージ期待値は3.1、無力化率は58.3%です。
　半分以上の確率で倒せます。
　フルオート射撃を行なうならば、ダメージ期待値は9.3、無力化率は99.9%です。
　こちらは確実に、切り裂き魔を無力化できると分かりました。

　という訳ですから、サブマシンガン（SMG）は凶悪な兵器なのです。
　貫通力が小さく、すでに「無貫通」ですから、相手がこれ以上の重装甲を持ち出しても、もし仮に装甲値18のバトルドレスを着用していても、上記の確率で無力化できるでしょう。



　次に、セミオートしか出来ないオート・ピストルで、速射を行なった場合の期待値計算をしてみました。

　　　　表11　無貫通しか期待できない銃器（オート・ピストル）による
　　　　　　　　至近距離でのダメージ期待値と無力化率（目標数＋２の速射）

　今回、速射は命中ＤＭ＋２以上の範囲で、効果が上がっています。
　これは、命中の難易度が〈易〉となったため、ＤＭ＋４を得た場合と同じ効果を得られたからでしょう。
　もっとも、ＤＭ＋２や＋３で得られる効果は少ないですから、最低でもＤＭ＋４を得ている優秀なキャラクターの場合にのみ、速射を選択すべきかも知れません。



　最後に、「ハンドガン」でありながら「部分貫通」を期待できるスナッブ・ピストルのダメージ期待値を求めました。
　今回に限り、基本ダメージを４として、ダメージ期待値と無力化率を求めています。

　　　　表12　部分貫通を期待できる銃器（スナッブ・ピストル）による
　　　　　　　　至近距離でのダメージ期待値と無力化率の変化（ダメージ４）
　　　　　　　　（目標数＋２の速射も併記しました）

　実に恐ろしいことですが、「部分貫通」しか出来ないセミオート銃器にも関わらず、スナッブ・ピストルはほとんど一撃で、切り裂き魔を無力化できるでしょう。
　標準的なキャラクターが使用しても、ダメージ期待値は8.0、無力化率は91.7%もあります。
　優秀なキャラクターに扱わせた場合、ダメージ期待値は12.4、無力化率は97.2%で、これは命中判定でピンゾロの「２」を出さない限り、確実に無力化できる、ということです。

　優先順位の１番、「部分貫通」のフルオート銃器よりも、優秀だと言えます。
　切り裂き魔が船内に乗り込んできたら、下っ端の乗組員（技能は標準でも、標準以下でも可）にスナッブ・ピストルを持たせ、切り裂き魔に向かって突撃させるという方法が、意外と効果的かも知れませんね。
　短刀を抱えて突っ込んでいく、鉄砲玉を連想してしまいますが……。

　これは、基本ダメージ４を備えた銃器の特性かも知れません。
　上記の表でＤＭ−４を加えれば、命中難易度〈並〉の場合のダメージ期待値と無力化率も求められますが、明らかに、戦闘ライフル（「部分貫通」のセミオート銃器）よりも上です。
　どうにも気になってきたので、ついでに、基本ダメージ３と４の武器によるダメージ期待値と無力化率の比較も行なってみましょう。



　えーと、橘様から、徹甲榴弾は「巻き添え命中」の可能性がある、ということを指摘されてしまいました。
　切り裂き魔をほぼ確実に無力化できる代わりに、スナッブ・ピストルを撃った乗組員の方も、確実に重傷を負ってしまうでしょう。

　そう、メガトラのルールでは、徹甲榴弾も「巻き添え命中」が起こるのです。
　徹甲榴弾を装填したスナッブ・ピストルによる至近距離での射撃は、自殺行為に限りなく近いことなのでしょうか。
　短刀ではなく、ダイナマイトを抱えた肉迫攻撃のような……。

　基本ダメージ３と４の違いは、非常に大きいようです。
　特に命中ＤＭが小さい場合に、その違いが顕著でした。

　命中ＤＭ＋１の欄を見てみると、同じ命中率６＋のセミオート射撃であるにも関わらず、ダメージ期待値は1.9と2.7、無力化率は16.7%と41.7%になっていました。
　ダメージ期待値は1.5倍、無力化率は2.5倍ということです。
　フルオート射撃の場合は、ダメージ期待値5.8と8.0、無力化率は67.1%と84.1%でした。
　あまり違いはなさそうですが、無力化に失敗する確率に注目すると、撃ちもらしの率が半分（32.9%から15.9%）に減っていると分かります。

　優秀なキャラクターによる射撃、命中ＤＭ＋４の欄を見ると、セミオート射撃のダメージ期待値は4.8と6.5、無力化率は58.3%と83.3%になっていました。
　フルオート射撃のダメージ期待値は14.5と19.5、無力化率は99.0%と99.8%です。
　このあたりになると、すでに無力化率が十分に高くなっていることもあって、あまり恩恵を感じられません。

　技量の低いキャラクターが扱う場合、「部分貫通」が可能であるならば、基本ダメージ３の武器を持たせるよりも、基本ダメージ４の武器を持たせるほうが、ずっと効果的に切り裂き魔を倒せるようです。
　問題は、宇宙服に対して「部分貫通」が可能で、基本ダメージ４を備えた銃器がほとんどないことなのですが。
　前述のスナッブ・ピストル（徹甲榴弾）と磁気ライフル、それに加えて突撃ロケットランチャー（徹甲榴弾／徹甲弾）、軽突撃銃（徹甲弾）くらいでしょうか。
　狩猟用ライフル（13mm）もぎりぎり「部分貫通」可能ですが、誰がこんなものを宇宙船内に持ち込んでいるのやら。