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最強兵器 決定戦 第45回(砲兵1) 直接射撃−榴散弾 |
MEGA
TRAVELLER |
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野戦砲の使い方 |
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理由は簡単。 見えない場所に居る敵を、見ることができなかったからです。 当時の技術で長射程の大砲を作れなかった訳ではありません。 ただ、流動的な戦場において、見えない目標の位置を把握し続けることがとても困難だったのです。 斥候が見つけた敵を砲兵隊に報告し、砲兵隊が砲撃を開始するまでの間、当然ながら敵は移動してしまいます。 砲撃場所に何も居なくなっただけならば無駄な射撃で済みますが、退いた敵を追って味方が前進していたとしたら大変でしょう。 その砲撃は、敵ではなく、味方を殺してしまいますから。 砲撃中止の命令も、伝令が辿り着くまでは伝わりません。 そんな事情から20世紀になるまで、大砲は「直接照準射撃」による火力支援しか行なえませんでした。 目標が動かなければ(都市や城砦などの固定目標ならば)「間接射撃」も可能だったのですが(実際に1750年代のロシアが行なっているそうです)、「間接射撃」を可能にするためには、「野戦電話」や「無線通信」の実用化を待つ必要があったのです。 ふと思ったのですが、ゾダーンやドロイン(場合によってはチャーパー)は、テックレベル4以前でも「間接射撃」による砲撃が可能かも知れません。 「無線通信」の代わりになる超能力「テレパシー」が存在しますし、場合によっては大砲の操作員が直接、目標を「透視」することも可能でしょう。 この時代の大砲は、主に榴散弾を使用していました。榴霰弾や葡萄弾と呼ばれたり、最近ではキャニスター弾とも呼ばれることがあるようです。メガトラにおいて、ルール上は「フレチェット弾」としてまとめられていました。 日本語版のルールブックには該当する訳文が見当たらないのですが、英語版のプレイヤーズ・マニュアルには、フレチェット弾について、下記のような説明文が掲載されています。 Flech: exploding rounds with antipersonnel pellets. フレチェット弾:対人殺傷用の散弾を詰めた榴弾(拙訳)。 ミリヲタとしては、こんな多用な砲弾をひとまとめにされて悲しいのですが、まぁ、仕方ないことでしょう。 それはともかく、こうした砲弾を用いて敵兵をまとめて薙ぎ払う、特大サイズの散弾銃のような使い方がなされていたのが、この時代の常識的な運用方法だったのです。 Wikipedia から、説明図を1枚頂いてきました。 |
図1 榴散弾の運用概念図 |
砲兵戦術講授録という書籍からの抜粋です(Warbirdsのホームページより転載)。 |
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サンプルには、テックレベル4(1897年製)の76ミリ野砲を用いようと思ったのですが、メガトラの輸送機器設計ルールには該当するものが見当たりません。 今回は、テックレベル5の8cm低初速砲を用いました。 ルール上の注意点として、「直接射撃用なのか間接射撃用なのかを決めておくこと。両用はできない」とありますが、私から見るとナンセンスなルールです。 極一部の例外を除けば、どんな大砲も直接射撃と間接射撃の両方が可能な筈なのですから。というか、両用が出来なければ実際の戦場で困ります。 デザイナーは何を考えてこんなルールを作ったのか、私には分かりません。 架台の形(対戦車砲は低く作られ、対空砲は上を向いて作られること)から、仰角が限定されると言いたかったのでしょうか。 それはともかく、この野砲は牽引式の架台付きで重量1.16ton、価格32,500crでした。かなり重いですね。 発射速度は毎分18発。参考にした1897年製の野砲が毎分15発の発射速度を誇っていますから、ほぼ同じ性能だと言えるでしょう。 ちなみに、フレチェット弾1発は14kgで140crでした。重量で比べるとライフルの弾倉28個分、価格では7個分に相当します。 早くも兵站面の負担が気になってきましたが、果たして大丈夫なのでしょうか。 メガトラの個人戦闘ルールにおいて大砲の「直接照準射撃」は「火器管制型」の命中難易度を用いるようです(間違っていませんよね?)。 テックレベル5〜8の「火器管制型」命中難易度をプレイヤーズ・マニュアルp.73から抜き出し、ハンドガンやライフルの命中難易度と比較してみました。 表3 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方) |
「火器管制型」の一番上、テックレベル5〜6の欄を見ると、その命中難易度の高さに泣きたくなります。 |
大砲の口径が大きくなるに連れて、貫通力が上がります。 |
武器命中DMは「火器管制型」でも、「敏捷力DM」と「武器の技能レベル」で良いのでしょうか。 |
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その計算結果によると、散弾銃は小さなダメージを積み重ね、累積ダメージによって目標を無力化する兵器として使うべきのようです。 致傷範囲内に目標(敵)が何人居ようと、関係ありません。 フレチェット弾も同じようなものですし、また、榴散弾を装填した大砲は特大サイズの散弾銃のようなものです。 ならば、フレチェット弾による砲撃も散弾銃と同じように、複数回の砲撃で評価するべきではないでしょうか。 という訳で、1回の砲撃(表6:単発射撃)と3回の砲撃(表7:三連発射撃)で、ダメージ期待値や無力化率、負傷割合を比べてみました。 表6 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合 (小口径砲:2〜8cm:単発射撃) |
次に、同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合を考えてみました。 |
3回の砲撃を受けた歩兵部隊は、高確率で壊滅することが明らかになりました。 |
同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。 |
難易度がひとつ上がることによって、歩兵部隊はかなり安全となりました。 |
同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。 |
残念ながら、単発射撃の場合、基本ダメージ2の小口径砲(2〜8cm)とダメージ3の中口径砲(10〜14cm)との間に、無力化率の違いは見られませんでした。 |
同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。 |
ここまでくると、フレチェット弾の威力がオーバーキルに感じられてきました。 |
口径の違いによって変化する、無力化率を比べてみました。 |
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「フラック・ジャケット」は装甲値3ですから、口径2cmのフレチェット弾(貫通力1)を「無貫通」に、口径4cmのフレチェット弾(貫通力5)を「部分貫通」に抑えることが出来るでしょう。 そこで、「部分貫通」と「無貫通」の場合について、それぞれ負傷割合を求めてみました。 表が多くなってきましたので、三連発射撃のみを掲載します。 表15 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合 「部分貫通」 (小口径砲:2〜8cm:三連発射撃) |
表16 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合 「無貫通」 |
上記の数字をまとめたものが、以下の表17になります。 |
以前にも似たような考察を行ないましたが、基本ダメージ2の兵器を用いた場合、「部分貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の半分から3分の1、「無貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の4分の1から9分の1、という結果が得られました。 |
テックレベル13の歩兵「戦闘アーマー(装甲値10)」を目標にした場合は「完全貫通」のため、貫通力22の大口径砲(16cm:基本ダメージ4)が必要になりました。 |
テックレベル14の歩兵「戦闘アーマー(装甲値18)」を目標にした場合は、どんな口径の大砲を使ってもフレチェット弾では「完全貫通」になりません。「部分貫通」と「無貫通」だけを比較します。 |
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その貫通力は2〜3で、基本ダメージも2という小さなものですが、無視できるものではないでしょう。 「無貫通」でも、累積したダメージは「バトルドレスを倒せる」のです。 以下に、擲弾筒から発射されるフレチェット弾の数値を示します。 表20 擲弾筒から発射されるフレチェット弾の、貫通力/ダメージ/致傷範囲 |
プレイヤーズ・マニュアルによると、上記のフレチェット弾を撃つ場合であっても、擲弾筒の命中判定には「間接射撃」の難易度を用いるようでした。 |
ルール上、命中DMの幅が小さく抑えられているため、兵士の技量や能力による無力化期待値の幅も小さなものになっていました。 |
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