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The Best Weapon
45th stage ( Artillery
1)
Direct Fire by Frechets

最強兵器 決定戦
第45回(砲兵1)
直接射撃−榴散弾

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MEGA TRAVELLER
 


 

野戦砲使い方
  まずは
榴散弾による直接照準射撃から



 遠距離/超遠距離の敵兵を撃破するためには、大火力の砲兵を投入しなければなりません。
 ところが、歩兵が携行できるサイズの支援火器(擲弾筒迫撃砲)が有効に使える状況は、敵兵のテックレベルが低く、防具を身に付けていない(装甲値0の)場合だけに限られています。
 目標(敵歩兵)のテックレベルが高く、重装甲の防具を身に付けている場合、携帯式の支援火器は無力であることが判明しました。
 歩兵を殺傷する最良の手段は、強力な野砲の砲撃や航空機からの爆撃だったのです。
 もちろん、それが可能ならば、の話ですが。



 今回は、野砲の砲撃を考察することにしました。

 砲撃というと、無線で支援を要請して数分後には、敵軍の真上に大量の砲弾が降ってくる、という情景を想像してしまいます。
 私もそう思っていましたし、メガトラの特別ルールもそうした扱いをしていました(プレイヤーズ・マニュアル p.91〜92の長射程間接射撃ルール)。
 
 しかしながら、実際の砲兵は、遠く離れた後方から「間接射撃」ばかりを行っていた訳ではありません。様々な事情から、目標を直接狙って撃つ、「直接照準射撃」を強いられたことも多くあったのです。
 そのあたりの事情を、砲兵の歴史と絡めつつ考察してみました。





19世紀末(テックレベル4)までの砲兵運用


 20世紀に入るまで、大砲の運用は「直接照準射撃」が常識でした。
 理由は簡単。
 見えない場所に居る敵を、見ることができなかったからです。

 当時の技術で長射程の大砲を作れなかった訳ではありません。
 ただ、流動的な戦場において、見えない目標の位置を把握し続けることがとても困難だったのです。
 斥候が見つけた敵を砲兵隊に報告し、砲兵隊が砲撃を開始するまでの間、当然ながら敵は移動してしまいます。
 砲撃場所に何も居なくなっただけならば無駄な射撃で済みますが、退いた敵を追って味方が前進していたとしたら大変でしょう。
 その砲撃は、敵ではなく、味方を殺してしまいますから。
 砲撃中止の命令も、伝令が辿り着くまでは伝わりません。

 そんな事情から20世紀になるまで、大砲は「直接照準射撃」による火力支援しか行なえませんでした。
 目標が動かなければ(都市や城砦などの固定目標ならば)「間接射撃」も可能だったのですが(実際に1750年代のロシアが行なっているそうです)、「間接射撃」を可能にするためには、「野戦電話」や「無線通信」の実用化を待つ必要があったのです。

 ふと思ったのですが、ゾダーンやドロイン(場合によってはチャーパー)は、テックレベル4以前でも「間接射撃」による砲撃が可能かも知れません。
 「無線通信」の代わりになる超能力「テレパシー」が存在しますし、場合によっては大砲の操作員が直接、目標を「透視」することも可能でしょう。



 この時代の大砲は、主に榴散弾を使用していました。榴霰弾や葡萄弾と呼ばれたり、最近ではキャニスター弾とも呼ばれることがあるようです。メガトラにおいて、ルール上は「フレチェット弾」としてまとめられていました。
 日本語版のルールブックには該当する訳文が見当たらないのですが、英語版のプレイヤーズ・マニュアルには、フレチェット弾について、下記のような説明文が掲載されています。

 Flech: exploding rounds with antipersonnel pellets.
 フレチェット弾:対人殺傷用の散弾を詰めた榴弾(拙訳)。
 ミリヲタとしては、こんな多用な砲弾をひとまとめにされて悲しいのですが、まぁ、仕方ないことでしょう。

 それはともかく、こうした砲弾を用いて敵兵をまとめて薙ぎ払う、特大サイズの散弾銃のような使い方がなされていたのが、この時代の常識的な運用方法だったのです。
 Wikipedia から、説明図を1枚頂いてきました。


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               図1 榴散弾の運用概念図

 放物線を描いて飛翔した榴散弾は、目標の手前上空で炸裂して、対人用の散弾を円錐状の広い範囲に撒き散らします。
 もちろん、当時の技術レベルではVT信管など存在しませんから、目標までの距離に合わせて時限信管を調節することになりました(結構、その調整が面倒だったようです。時限信管の精度も不正確でした)。

 そして、この榴散弾の有効範囲(メガトラで言うところの致傷範囲)は以下のようになっております。

      表2 榴散弾の有効範囲(致傷範囲)
          1934年に出版された、砲兵戦術講授録よりの抜粋

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 砲兵戦術講授録という書籍からの抜粋です(Warbirdsのホームページより転載)。
 使われている用語は所々、メガトラの用語に修正しました。
 ただし、致傷範囲は前後方向の合計を示していますので、メガトラの致傷範囲と比較する場合は数字を半分にしてください。あるいは、メガトラの致傷範囲を2倍にして、上記の数字と比べてください。

 低初速砲(榴弾砲)は初速が遅いため、目標への落下角度が大きくなります。
 普通の榴弾ならば、落下角度が大きいと威力が増す訳ですが、榴散弾に限っては反対になりました。

 その一方、高初速砲(カノン砲)は初速が大きいため、砲弾が地面とほぼ並行に飛翔します。
 そのため、榴散弾を用いた場合は前後方向の致傷範囲が大きくなる訳です。

 この有効範囲内にいる敵兵は、それなりの確率で負傷するとのこと。
 前進してくる敵兵を殲滅するためには、極めて有効な兵器だと言えるでしょう。





メガトラにおける、榴散弾の有効性


 では、メガトラのルールで榴散弾フレチェット弾)を使用してみます。

 サンプルには、テックレベル4(1897年製)の76ミリ野砲を用いようと思ったのですが、メガトラの輸送機器設計ルールには該当するものが見当たりません。
 今回は、テックレベル5の8cm低初速砲を用いました。

 ルール上の注意点として、「直接射撃用なのか間接射撃用なのかを決めておくこと。両用はできない」とありますが、私から見るとナンセンスなルールです。
 極一部の例外を除けば、どんな大砲も直接射撃と間接射撃の両方が可能な筈なのですから。というか、両用が出来なければ実際の戦場で困ります。
 デザイナーは何を考えてこんなルールを作ったのか、私には分かりません。
 架台の形(対戦車砲は低く作られ、対空砲は上を向いて作られること)から、仰角が限定されると言いたかったのでしょうか。

 それはともかく、この野砲は牽引式の架台付きで重量1.16ton、価格32,500crでした。かなり重いですね。
 発射速度は毎分18発。参考にした1897年製の野砲が毎分15発の発射速度を誇っていますから、ほぼ同じ性能だと言えるでしょう。

 ちなみに、フレチェット弾1発は14kgで140crでした。重量で比べるとライフルの弾倉28個分、価格では7個分に相当します。
 早くも兵站面の負担が気になってきましたが、果たして大丈夫なのでしょうか。



 メガトラの個人戦闘ルールにおいて大砲の「直接照準射撃」は「火器管制型」の命中難易度を用いるようです(間違っていませんよね?)。
 テックレベル5〜8の「火器管制型」命中難易度をプレイヤーズ・マニュアルp.73から抜き出し、ハンドガンやライフルの命中難易度と比較してみました。

        表3 火器管制型の命中難易度表(中距離〜超遠方)

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 「火器管制型」の一番上、テックレベル5〜6の欄を見ると、その命中難易度の高さに泣きたくなります。
 「照準器+ジャイロ付きのライフル」と、全く同じではありませんか。

 テックレベルの上昇と共に、難易度〈並:7+〉の適用範囲が遠距離や超遠距離まで広がってくるのですが、私の考察したいテックレベル5〜6において、難易度〈並:7+〉は中距離だけしかありません。
 遠距離と超遠距離は難易度〈難:11+〉で、遠方は〈至難:15+〉、超遠方では〈不可能:19+〉になっています。
 こんなことで、命中を期待できるのでしょうか。


 不安になってきましたが、考察を続けます。
 今度は貫通力とダメージ、致傷範囲を調べてみました。

        表4 フレチェット弾の貫通力、ダメージ、致傷範囲
            (低初速砲と高初速砲、テックレベル5)

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 大砲の口径が大きくなるに連れて、貫通力が上がります。
 口径6cm以上ならば、「フラック・ジャケット(装甲値3)」を着用した目標にも「完全貫通」となりますし、口径8cmの砲は「極地対応戦闘スーツ(装甲値6)」を「完全貫通」、口径16cmの砲は「テックレベル12の戦闘アーマー(装甲値10)」に対して「完全貫通」を、「テックレベル14の戦闘アーマー(装甲値18)」に対しても「部分貫通」を得られました。

 与えられるダメージは、最小で2ポイント、最大で6ポイントでした。表には載せていませんが、口径30cmのフレチェット弾がダメージ6ポイントです。
 前述の通りフレチェット弾は貫通力が大きいので、目標となった歩兵は「完全貫通」のダメージを受けてしまいます。
 基本ダメージが2ポイントでも、かなりの殺傷力を発揮できるでしょう。
 低テックレベルの装甲車輌に対しても、大きな破壊力を持ちそうです。

 致傷範囲は口径によらず、一定でした。
 低初速砲は50メートル、高初速砲は150メートルで決まりです。
 主目標の居るマスの前後50メートル(3マス相当)〜150メートル(10マス)に対して、同じ貫通力で巻き添え命中の判定を行なうということですから、表2で示した数字とも合致しました。
 榴散弾フレチェット弾)による攻撃を前提とするのであれば、低初速砲よりも高初速砲を用いた方が、ずっと効率が良いということでしょう。何と言っても、致傷範囲が3倍の広さですから。
  横方向の致傷範囲は、メガトラの場合1マス分(15メートル)ありませんでしたが、プレイの利便性を考えると仕方ありませんね。



 表3の命中難易度、表4の貫通力と基本ダメージを用いて、表5にダメージ期待値と無力化率をまとめました。
 口径8cmの低初速砲とフレチェット弾(貫通力14、ダメージ2)を用いています。
 テックレベル5ですから、目標の歩兵は装甲値0だと考えました。
 貫通状態は「完全貫通」です。

 表5 命中難易度と命中DMによる、命中率とダメージ期待値、無力化率の比較
      口径2〜8cmの小口径砲、フレチェット弾、テックレベル5〜6

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 武器命中DMは「火器管制型」でも、「敏捷力DM」と「武器の技能レベル」で良いのでしょうか。
 否定する要因も見当たらないので、上記の通りで計算しました。

 初心者(「敏捷力DM」=1のみ、武器技能は0レベル)が砲を扱う場合、命中DMは+1しかありません。
 強制徴募してきた若者を、6週間の集中訓練だけで最前線へ送りつけたとか、全くの素人が負傷したベテランの指示を受けながら砲を扱うとか、そんな状況でしょう。
 そう度々あるとは思いません(あっては困ります)が、その場合は命中DMが+1として扱いました。

 平均的な兵士(「敏捷力DM」=1〜2、武器技能は2〜3レベル)が砲を扱うのであれば、命中DMは+4です。
 1〜2期を勤めた下士官(伍長から軍曹)が、兵士数名を指揮して砲を操作していると考えました。

 優秀な兵士(「敏捷力DM」=2、武器技能は4レベル以上、さらに戦術ポイントを使用)は、命中DMを+7とします。



 期待値計算の結果は表5の通りでした。
 命中難易度〈難:11+〉の超遠距離(250〜500m)であれば、それなりの命中率とダメージ期待値を得られます。
 もちろん、命中DMが+1しかない素人は論外ですが、平均的な兵士は27.8%の無力化率、優秀な兵士は72.2%の無力化率を得ていました。
 これだけの高い無力化率を、致傷範囲全体で得られるのですから、フレチェット弾の威力は非常識です。
 この致傷範囲内(幅15メートル、奥行き100メートル、屋外マップで7マス分)に存在している敵兵全員の27.8%、あるいは72.2%を一撃で無力化できるのですから、大したものでしょう。
 目標(敵兵)が100人でも1,000人でも関係ありません。その数割が無力化できるのです。

 ですが、難易度〈至難:15+〉の遠方(500m〜5km)になると、かなり分が悪くなりました。
 あるいは、超遠距離でも目標が遮蔽物に隠れている場合も、難易度がひとつ上がって〈至難:15+〉になってしまいます。
 この場合、平均的な兵士による砲撃では、敵兵にほとんどダメージを与えることが出来ません。あくまで、敵兵が前進(突撃)してくることを牽制できる程度でしょう。
 優秀な兵士ならば16.7%を無力化できますから、数回の砲撃を繰り返すことで、敵兵の多くを無力化できる筈です。その代わりに、敵砲兵から集中砲撃を受けてしまうでしょうけれど。

 難易度〈不可能:19+〉の超遠方(5〜50km)は、撃つだけ無駄です。
 小口径の砲ではほとんど届かない距離ですから、不満はありません。



 今回は表にまとめませんでしたが、命中難易度が〈並:7+〉に変わる中距離砲撃(テックレベル7の場合は中距離〜遠距離砲撃、テックレベル8の場合は中距離〜超遠距離砲撃)は、単純に考えて命中率にDM+4が加算されることになります。
 命中DM+7の優秀な兵士は、DM+11に変わりました。砲撃目標になった歩兵部隊は、サイコロで2を出さない限り確実に無力化されます。
 命中DM+4の平均的な兵士も、DM+8に変わりました。遠距離砲撃における優秀な兵士レベルですから、目標の多く(83.3%)が一撃で無力化されてしまうことでしょう。
 命中DM+1の素人でも、命中DM+5の扱いを受けられますから、目標の半数近く(41.7%)を無力化できます。「引き付けてから撃て」の言葉通り、敵の接近を待つことで、素人でもそれなりの火力を発揮できることが分かりました。
 もちろん砲撃を待ち過ぎて、撃つ前に自分達が無力化されているリスクもあります。中距離まで近付けば、歩兵のライフル射撃も絶大な火力を発揮するのですから。



 ここまでの考察によって、TL5〜6における榴散弾(フレチェット弾)射撃の有効射程は、超遠距離までに限定される。できれば、命中難易度が〈並〉になる中距離まで引き付けて撃つことが望ましい。という結論が出てしまいました。
 実はこの結論、「間接射撃」が実用化されるまでの史実にも適合しております。

 1860年〜1917年(テックレベル4〜5の前半)の期間、野戦における砲兵は攻撃を行なうために最前線まで前進しなければなりませんでした。
 そうすると、ほぼ同じ有効射程を備えた敵歩兵のライフルに攻撃されてしまいます。(射撃の準備に時間が掛かる)大砲を撃つよりも先に、砲兵が大損害を被るという悲惨な目に遭うのです。
 味方戦線の後方に隠れていれば砲兵の被害は避けられますが、やはり敵を攻撃することも出来ません。
 こんなことでは、砲兵の存在意義がありませんね。
 敵を攻撃したいけれど損害も受けたくない。そうしたジレンマが「間接射撃」という新技術(新しい戦術)を産み出したのだとも言えるでしょう。

 テックレベルが7になれば、遠距離射撃の命中難易度が〈並〉になりますし、テックレベル8ですと超遠距離射撃でも〈並〉です。
 高度な「間接射撃」を用いなくても問題は解決され、砲兵は歩兵に対して優位に立てる訳なのですが、テックレベル5〜6において、その問題は深刻なようです。

 今回の考察では「間接射撃」を扱いません。
 榴散弾を用いた「直接照準射撃」によって目標(敵兵)が受けるダメージの大きさ、負傷の程度について、考察を進めていきます。





榴散弾による負傷比率


 考察の41回「海賊いじめ1」において、散弾銃のダメージ期待値を計算しました。
 その計算結果によると、散弾銃は小さなダメージを積み重ね、累積ダメージによって目標を無力化する兵器として使うべきのようです。
 致傷範囲内に目標(敵)が何人居ようと、関係ありません。

 フレチェット弾も同じようなものですし、また、榴散弾を装填した大砲は特大サイズの散弾銃のようなものです。
 ならば、フレチェット弾による砲撃も散弾銃と同じように、複数回の砲撃で評価するべきではないでしょうか。



 という訳で、1回の砲撃(表6:単発射撃)と3回の砲撃(表7:三連発射撃)で、ダメージ期待値や無力化率、負傷割合を比べてみました。

       表6 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (小口径砲:2〜8cm:単発射撃)

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 次に、同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合を考えてみました。

 テックレベル5、口径8cmの低初速砲は、毎分18発の発射速度を備えておりますので、毎ラウンド(6秒毎に)1発の砲撃が可能です。
 ですから、同じ大砲1門が3ラウンドを掛けて、同じ目標に3回の砲撃を行なっても良いですし、3門の大砲が一斉に同じ目標を砲撃しても構いません。

 屋外戦闘マップ(1マス15メートル)を用いると、ユニットは戦闘ラウンドに1〜2マスしか動けませんでした。
 遠距離から突撃してくる敵兵は、手榴弾を投擲したり、ライフルが圧倒的な火力を発揮できる中距離に辿り着くまで、何度でも砲撃を受ける可能性があるのです。
 こんなことでは遠距離や超遠距離(の塹壕内)に留まったまま、当てにならない射撃を繰り返すことしかできませんね。


       表7 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (小口径砲:2〜8cm:三連発射撃)

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 3回の砲撃を受けた歩兵部隊は、高確率で壊滅することが明らかになりました。

 優秀な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の87.8%は死亡。生存者は12.2%(8人に1人)しか居ない上、その多くは重傷を負っています。速やかな治療を受けられない限り、彼らもすぐに死んでしまうことでしょう。
 軽傷者と無傷の者が、合わせても1.1%(90人に1人)になりました。虐殺です。

 平均的な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の23.6%は死亡、44.0%が重傷を負います。
 戦闘可能な者は32.4%(3分の1)残っていますが、彼らの大半は1〜3ポイントの軽傷を受けていますので、ちょっとした追加ダメージでも無力化されてしまいます。
 というか、これだけの大損害を受けたら、この部隊はもう戦えません。
 速やかに撤退するか、あるいは降伏すべきでしょう。

 素人による砲撃はほとんど損害を与えられません。突撃した兵士の死者はわずか0.1%で、無力化された者も9.0%しか出ないからです。
 と思ったのですが、突撃した兵士の33.0%が軽傷を負っている状態は、大きな負担になるでしょう。その後の射撃
戦闘でばたばたと軽傷者が倒れ(重傷になり)、一気に戦力が減少してしまいます。
 素人の砲撃であっても、敵戦力を削り取る効果を発揮できると分かりました。



 今度は、難易度をひとつ上げた状態、難易度〈至難:15+〉で評価してみましょう。
 遠方(5km〜)の目標を砲撃するか、あるいは、同じ遠距離でも遮蔽物を使用しながら(隠れながら)前進してくる目標を砲撃するような場合です。

       表8 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (小口径砲:2〜8cm:単発射撃)

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 同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。
 命中難易度は〈至難:15+〉。

       表9 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (小口径砲:2〜8cm:三連発射撃)

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 難易度がひとつ上がることによって、歩兵部隊はかなり安全となりました。
 とは言っても、過信はできません。
 砲撃する兵士の技量(命中DM)によって、歩兵部隊は危うい状態にも成り得るようです。

 優秀な兵士による砲撃を受けた歩兵部隊は、その砲撃が1回だけであっても、戦力の16.7%を一度に失います。
 死者が出ないのは何よりですが、軽傷者が25.0%も出てしまいました。即座の撤退を考えたくなります。

 優秀な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の7.4%は死亡。無力化された重傷者は38.5%です。生存者は541.%(半数以上)居ますから、かろうじて戦闘は可能でしょうが、軽傷者も多いので戦力としては期待できません。
 撤退して、負傷者の後送に全力を注ぐべきでしょう。

 平均的な兵士による砲撃を受けた歩兵部隊は、その砲撃が1回だけならば、全体の8.3%が軽傷を負うだけです。まだ十分に戦えますね。

 平均的な兵士による砲撃を3回受けた場合でも、突撃した兵士から死者は出ません。無力化された重傷者も0.3%(300人に1人)だけですから、運が悪かったと言う程度です。軽傷者は22.7%ですから、その後の治療が大変ですが、無傷の兵士77.0%で戦闘は継続可能でしょう。
 とは言うものの、遠方の目標(敵兵)への砲撃は、砲側が平均的な兵士を抱えているのであれば、十分に有効だと判明しました。一撃での無力化は確かに困難なのですが、砲撃を続けることでダメージを蓄積させ、最後には無力化することが可能なのです。

 素人による砲撃は全く損害を与えられません。ゼロの3倍もゼロですから、三連発の意味もありませんでした。
 遠方の目標に対する砲撃は無駄なので諦め、遠距離で(遮蔽物から)不用意に飛び出してきた目標を「妨害」して、そのタイミングで砲撃するしかないのでしょう。

 平均以上の技量(命中DM)を備えた兵士が大砲を扱うのであれば、命中難易度が〈至難:15+〉になる距離(状況)であっても、その火力を発揮できるようです。



 ちょっと気持ちを切り換えて、より大口径の大砲を考えてみましょう。
 具体的には、フレチェット弾でも基本ダメージ3を与えられる、口径10〜14cmの中口径砲です。
 基本ダメージ3の戦闘ライフルと、ダメージ4の磁気ライフルは、貫通状態が同じでも、目標の無力化率が大きく異なりました。
 ならば、基本ダメージの大きな(大口径の)フレチェット弾を用いることで、何かが変わるかも知れません。

 という訳で、今度は中口径砲のフレチェット弾による目標の負傷割合です。

       表10 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (中口径砲:10〜14cm:単発射撃)

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 同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。

       表11 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (中口径砲:10〜14cm:三連発射撃)

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 残念ながら、単発射撃の場合、基本ダメージ2の小口径砲(2〜8cm)とダメージ3の中口径砲(10〜14cm)との間に、無力化率の違いは見られませんでした。

 これは、ダメージのシステムによるものです。
 私は平均的な兵士の耐久ポイントを「4/5」で計算していますから、2ポイントのダメージを受けた場合でも、3ポイントのダメージを受けた場合でも、同じ軽傷として扱われます。ダメージが1ポイント増えても、無力化には寄与しません。
 攻撃を受けた兵士の耐久ポイントが「4/5」以外にも存在するのであれば、一部の兵士はより早く無力化されている、という結果が出たことでしょう。

 また、同じ無力化でもその内訳が大きく異なっていました。
 小口径砲による無力化は、例えば優秀な兵士による砲撃の場合、無力化率72.2%の多くは重傷による無力化でした。しかし中口径砲の場合、その半分以上が死亡しています。
 4倍のダメージポイントが、8ポイントで済むか、12ポイントを受けてしまうか、という違いによるものなのですが、基本ダメージ1の違いは、馬鹿に出来ません。



 3回の砲撃を受けた歩兵部隊について、まとめます。

 優秀な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の95.5%は死亡。生存者は4.5%(21人に1人)しか居ない上、その多くは重傷を負っています。速やかな治療を受けられない限り、彼らもすぐに死んでしまうことでしょう。
 軽傷者と無傷の者が、合わせても0.7%(140人に1人)になりました。さらに酷い虐殺です。

 平均的な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の43.2%は死亡、30.2%が重傷を負います。
 戦闘可能な者は26.6%(4分の1)残っていますが、やはり軽傷者ばかりです。

 素人による砲撃であっても、死者が1.2%、重傷者が10.3%になりました。
 戦闘可能な兵士は88.6%が残っていますが、その3分の1は軽傷者です。




 難易度がひとつ上がる状況、遠方への砲撃や超遠距離でも遮蔽物に隠れた目標を砲撃するような場合については、若干、無力化率が上昇していますが、劇的な変化にはなりませんでした。
 残念ですが、仕方ありません。
 中口径砲であってもダメージを累積させて、徐々に目標を無力化していくしかないのでしょう。



 最後に、基本ダメージ4の大口径砲(16〜20cm)についても評価してみました。
 これ以上の大口径砲については、評価しません。

       表12 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (大口径砲:16〜20cm:単発射撃)

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 同じ目標が3回の砲撃を受けた場合の負傷割合です。

       表13 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合
            (大口径砲:16〜20cm:三連発射撃)

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 ここまでくると、フレチェット弾の威力がオーバーキルに感じられてきました。
 
 優秀な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の98.0%は死亡。生存者は2.1%(50人に1人)。軽傷者と無傷の者が合わせて0.3%(300人に1人)です。

 平均的な兵士による砲撃を3回受けた場合、突撃した兵士の55.1%は死亡、29.0%が重傷を負います。
 戦闘可能な者は15.9%(6分の1)残っていますが、半数は軽傷者です。

 素人による砲撃であっても、死者が2.6%、重傷者が22.2%になりました。
 戦闘可能な兵士は75.3%が残っていますが、その5分の1は軽傷者です。




       表14 フレチェット弾による、目標(敵兵)の無力化率
           (小口径〜大口径砲:単発射撃と三連発射撃)

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 口径の違いによって変化する、無力化率を比べてみました。

 無力化率は、どちらかというと砲の基本ダメージよりも、砲を扱う兵士の技量(命中DM)に大きな影響を受けるようです。
 命中率が低い場合には、砲の基本ダメージの大小が無力化率に影響しました。

 また、フレチェット弾の有効射程は、命中難易度が〈難:11+〉(テックレベル5〜6の範囲では超遠距離、7〜12の範囲では遠方、13以上では超遠方)に限定されるようです。
 それ以上の距離、命中難易度が〈至難:15+〉になる状況では、命中DM+7のベテラン砲手に撃たせるか、あるいは命中DM+4程度の兵士に数を撃たせない限り、目標へのダメージを期待できないと分かりました。
 無駄ではないのですが、目標を無力化するまでにかなりの時間を要します。





フレチェット弾に対する防具の効果


 テックレベル8になると、歩兵は「フラック・ジャケット」を身に付けるようになります。
 「フラック・ジャケット」は装甲値3ですから、口径2cmのフレチェット弾(貫通力1)を「無貫通」に、口径4cmのフレチェット弾(貫通力5)を「部分貫通」に抑えることが出来るでしょう。

 そこで、「部分貫通」と「無貫通」の場合について、それぞれ負傷割合を求めてみました。
 表が多くなってきましたので、三連発射撃のみを掲載します。

   表15 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合 「部分貫通
            (小口径砲:2〜8cm:三連発射撃)

「完全貫通」した場BW45_FIG15.GIF - 10,087BYTES合のダメージ期待値

    表16 フレチェット弾による、目標(敵兵)の負傷割合 「無貫通
            (小口径砲:2〜8cm:三連発射撃)

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 上記の数字をまとめたものが、以下の表17になります。


        表17 フレチェット弾による、目標(敵兵)の無力化率
            「完全貫通」「部分貫通」「無貫通」の比較
           (目標の装甲値3〜6:単発射撃と三連発射撃)

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 以前にも似たような考察を行ないましたが、基本ダメージ2の兵器を用いた場合、「部分貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の半分から3分の1、「無貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の4分の1から9分の1、という結果が得られました
 確かに、「部分貫通」や「無貫通」は砲撃の有効率が低いのですが、数で補えない訳でもないようです。

 例えば、テックレベル8〜9の歩兵「フラック・ジャケット(装甲値3)装備」を目標にして、フレチェット弾の砲撃を行なう場合ですが。
 「完全貫通」を期待できる口径6cm(貫通力9)の大砲1門と、「部分貫通」しか望めない口径4cm(貫通力5)の大砲2〜3門、あるいは「無貫通」になる口径2cm(貫通力1)の大砲4〜9門が、ほぼ同等の攻撃力を持つことになりました。

 テックレベル10〜12の歩兵「極地対応戦闘スーツ(装甲値6)装備」を目標にするならば、
 「完全貫通」の口径8cm砲(貫通力14)1門、「部分貫通」の口径6cm砲(貫通力9)2〜3門、「無貫通」の口径2cm砲(貫通力1)4〜9門が、同等だということです。



 では、消費される砲弾の重量を比較してみましょう。
 砲弾の重量は、8cm砲弾が1発当たりで14kg、6cm砲弾が6kg、4cm砲弾が2kg、2cm砲弾が1kgでした。

 テックレベル8〜9の場合は、6cm砲弾×1発=6kg、4cm砲弾×2〜3発=4〜6kg、2cm砲弾×4〜9発=4〜9kg。あまり顕著な違いは現われませんでしたが、若干、小口径砲の方が不利です。
 テックレベル10〜12の場合、8cm砲弾×1発=14kg、6cm砲弾×2〜3発=12〜18kg、2cm砲弾×4〜9発=4〜9kg。今度は小口径砲の方が明らかに有利になりました。



        表18 フレチェット弾による、目標(敵兵)の無力化率
            「完全貫通」「部分貫通」「無貫通」の比較
            (目標の装甲値10:単発射撃と三連発射撃)

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 テックレベル13の歩兵「戦闘アーマー(装甲値10)」を目標にした場合は「完全貫通」のため、貫通力22の大口径砲(16cm:基本ダメージ4)が必要になりました。
 表18より、「部分貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の4分の1から6分の1、「無貫通」のダメージ期待値は「完全貫通」の9分の1から12分の1です。

 「完全貫通」の口径16cm砲(貫通力22)1門、「部分貫通」の口径8cm砲(貫通力14)4〜6門、「無貫通」の口径2cm砲(貫通力1)9〜12門が、同等だということになりました。

 再び消費砲弾の重量を比較すると、16cm砲弾×1発=70kg、8cm砲弾×4〜6発=56〜84kg、2cm砲弾×9〜12発=9〜12kg。
 2cmの小口径砲を用いた方が、圧倒的に有利です。



        表19 フレチェット弾による、目標(敵兵)の無力化率
               「部分貫通」「無貫通」の比較
            (目標の装甲値18:単発射撃と三連発射撃)

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 テックレベル14の歩兵「戦闘アーマー(装甲値18)」を目標にした場合は、どんな口径の大砲を使ってもフレチェット弾では「完全貫通」になりません。「部分貫通」と「無貫通」だけを比較します。
 「部分貫通」を得るためには、貫通力22の16cm砲。そして、貫通力1の2cm砲では装甲値の10分の1より小さくなり、例外的成功ダメージを与えられなくなりましたので、「無貫通」を得るために貫通力5の4cm砲を用います。

 表19より、「無貫通」のダメージ期待値は「部分貫通」の4分の1から9分の1です。
 「部分貫通」の口径16cm砲(貫通力22)1門と、「無貫通」の口径4cm砲(貫通力5)4〜9門が、同等になりました。

 例によって消費砲弾の重量を比較すると、16cm砲弾×1発=70kg、4cm砲弾×4〜9発=8〜18kg。
 今回も、小口径砲(4cm)を用いた方が有利です。



 目標が歩兵や非装甲(軽装甲)車輌の集団であり、フレチェット弾を用いて攻撃する場合、小数の大口径砲よりも、多数の小口径砲の方が、運用面、兵站(弾薬の補給)面で有利になると判明しました。
 口径が小さいことによる火力の低さは、手数で補うことが十分に可能なのです。
 装甲値18のバトルドレスを、口径2cm(貫通力1)のフレチェット弾で砲撃する場合を除きますが。
 
 例えば、テックレベル5の軍隊であれば、歩兵の火力支援用に、口径4cmのオートキャノンを用意しているかも知れません。
 毎分40発(毎ラウンド4発なので、フルオート目標数は+2)の射撃速度であっても、その1斉射で同一目標に3回の命中判定を行なえます。
 「フラック・ジャケット」を着た敵歩兵が肉薄して来たとしても、その斉射で大半を無力化できるでしょう。敵歩兵の数がずっと多い場合は、数台の火力を集中するか、時間を掛ければ対処できるのです。

 また、もし装甲値18の「バトルドレス」を着用した海賊に襲撃されても、口径4cmのフレチェット弾を最大の発射速度で撃ち込めば、その無力化に成功するかも知れません。
 その海賊が大人しく撃たれてくれるとは思えませんが、数台の装甲車で取り囲めば、何とかなる筈です(多分)。





擲弾筒によるフレチェット弾射撃


 ところで、テックレベル8になると、RAMP擲弾筒ライフル発射擲弾からも、フレチェット弾を撃ち出す事ができるようになりました。
 その貫通力は2〜3で、基本ダメージも2という小さなものですが、無視できるものではないでしょう。
 「無貫通」でも、累積したダメージは「バトルドレスを倒せる」のです。



 以下に、擲弾筒から発射されるフレチェット弾の数値を示します。

  表20 擲弾筒から発射されるフレチェット弾の、貫通力/ダメージ/致傷範囲

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 プレイヤーズ・マニュアルによると、上記のフレチェット弾を撃つ場合であっても、擲弾筒の命中判定には「間接射撃」の難易度を用いるようでした。
 実際の射撃距離に関わらず、命中難易度は〈難:11+〉で一定のようです。RAM擲弾筒ライフル発射擲弾筒の最大射程は遠方ですから、場合によっては、大砲の榴散弾射撃よりも命中率が高いことになるでしょう。

 また、命中DMには、射手の〈重火器〉技能だけを用いるようですね。
 〈照準〉技能や「敏捷力DM」は影響しないのでしょうか。
 擲弾筒の扱いを見ていると、単に命中難易度が〈難〉で固定された「直接照準射撃」として扱われているような気もします。

 間接射撃は、射撃が要請された次のラウンドに着弾するという記述がありますが、これは射手と照準手が一致している「直接照準射撃」にも適用されるのでしょうか。
 その場合は「射撃を要請する」必要はありません。
 単に「擲弾筒の引き金を引く」だけで済む筈です。
 擲弾の飛翔時間が6秒も必要だ、あるいは擲弾の時限信管が6秒後に設定されているということなのでしょうか。

 前回の考察で「擲弾筒」にも触れておきながら、実は擲弾筒のルールが良く分かっておりません。



 とりあえず、命中難易度は〈難:11+〉で固定。
 命中DMには、射手の〈重火器〉だけを用いて考察してみました。
 優秀な兵士が〈重火器−4〉の技能を備えていると想定した場合、命中DMは+4になります。複数目標を攻撃するためのフレチェット弾ですから、戦術ポイントは用いない方が良いでしょう。
 平均的な兵士が〈重火器−2〉の技能を備えているとするならば、命中DMは+2です。
 基礎訓練を受けただけの新米兵士は〈重火器−0〉の技能しか持っていないと考え、命中DMを0にしました。

        表21 フレチェット弾による、目標(敵兵)の無力化率
            「完全貫通」「部分貫通」「無貫通」の比較
           (擲弾筒のフレチェット弾:単発射撃と三連発射撃)

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 ルール上、命中DMの幅が小さく抑えられているため、兵士の技量や能力による無力化期待値の幅も小さなものになっていました。

 優秀な兵士による射撃は、「完全貫通」を得られる目標ならば、たった1発の射撃でも27.8%を無力化、三連発の射撃ならば67.6%を無力化できました。
 「部分貫通」の場合、ダメージ期待値は半減してしまいますから、無力化率も8.3%と33.3%に減少してしまいますが、これは数で補うことが可能でしょう。2倍の弾数を撃ち込めば良いのです。
 「無貫通」にしかならない場合、実際の戦場では、このパターンが最も多いと思われますが、「部分貫通」の2倍程度、フレチェット弾を撃ち込む必要があるでしょう。
 試しに計算してみたところ、標準的な目標(耐久ポイント4/5)ならば10発のフレチェット弾で、装甲値18のバトルドレスを着た目標(耐久ポイント6/10)でも、18発のフレチェット弾を撃ち込めば、50%の確率で無力化できると分かりました。
 無力化は大変ですが、決して不可能なことではないようです。

 平均的な兵士による射撃は「完全貫通」、「部分貫通」、「無貫通」について、ほぼ同じことが言えますが、優秀な兵士に比べて、その有効性が3分の1に減少しました。
 同じ無力化率を得るために3倍の攻撃が必要だということですので、優秀な兵士の重要性が増しています。

 素人による射撃は、「完全貫通」と「部分貫通」を得た場合でなければ、ダメージを与えられません。例外的成功を得られなくなったためです。



 視点を変えて、擲弾筒の攻撃力(ダメージ期待値と無力化率)を、大砲の攻撃力と比較してみましょう。

 前章で示した通り、テックレベル8〜9の歩兵「フラック・ジャケット(装甲値3)装備」を目標にして、フレチェット弾の砲撃を行なう場合は、
 「完全貫通」を期待できる口径6cm(貫通力9)の大砲1門と、「部分貫通」しか望めない口径4cm(貫通力5)の大砲2〜3門、「無貫通」になる口径2cm(貫通力1)の大砲4〜9門が、ほぼ同等の攻撃力を持っています。
 これにテックレベル8〜9の擲弾筒(貫通力2
)を加えると、「無貫通」なので2cm砲の数をさらに3倍した数、擲弾筒12〜27門が同等の攻撃力です。
 テックレベル10〜13の擲弾筒(貫通力3〜4)の場合は、「部分貫通」になるので4cm砲の数を3倍、擲弾筒6〜9門が同等になりました。

 テックレベル10〜12の歩兵「極地対応戦闘スーツ(装甲値6)装備」を目標にするならば、
 「完全貫通」の口径8cm砲(貫通力14)1門、「部分貫通」の口径6cm砲(貫通力9)2〜3門、「無貫通」の口径2cm砲(貫通力1)4〜9門、同じく「無貫通」の擲弾筒12〜27門が同等です。

 テックレベル13の歩兵「戦闘アーマー(装甲値10)」を目標にした場合は、
 「完全貫通」の口径16cm砲(貫通力22)1門、「部分貫通」の口径8cm砲(貫通力14)4〜6門、「無貫通」の口径2cm砲(貫通力1)9〜12門、「無貫通」の擲弾筒27〜36門が、同等になりました。

 テックレベル14の歩兵「戦闘アーマー(装甲値18)」を目標にした場合は、
 「部分貫通」の口径16cm砲(貫通力22)1門と、「無貫通」の口径4cm砲(貫通力5)4〜9門、「無貫通」の擲弾筒12〜27門が同等です。

 フレチェット弾を使用した、遠距離〜遠方での「直接照準射撃」という、限定された条件の対歩兵戦闘の話ですが、大口径砲を1門用意するより、小口径砲を多数か、またはさらに多数の擲弾筒を用意する方が、運用面や兵站面での効率は良いようです。

 もちろん、人員や機材が不足して数を用意できないような場合は仕方ありません。
 効率を無視して(犠牲にして)、大口径砲を運用するしかないのです。
 逆に考えると、擲弾筒を持った歩兵1個小隊(40名)と、大口径の大砲1門が同等の火力を備えている(大砲の使用によって、戦闘に必要な人員を大きく削減できる)とも言えるでしょう。
 ヴェネチアのように、資金は豊富だが人員が限られている、という国家(軍隊)には有利になるかも知れませんね。



 極端な例ですが、RAMP自動擲弾筒を6門も装備している「ブルーザー・ロボット」は、自動擲弾筒の発射速度を考慮して、擲弾筒18門を装備しているとみなせます。
 このロボットは1つのユニットとしてみなせますから、当然、自動擲弾筒6門を同時に射撃して、1つの目標に18回の命中判定を行なうことができるでしょう。
 先手を取った場合、フレチェット弾の致傷範囲内に居る目標(敵歩兵)は、装甲値18の「バトルドレス」を身に付けていたとしても、50%の確率で無力化できます。
 おまけに、「ブルーザー・ロボット」は15型フュージョン・ガン2門磁気ライフル6門も装備していますから、同じ戦闘ラウンドの内に生き残り(軽傷者)を片付けることも容易です。
 怖い話ですね。
 戦場でハイヴを敵に回すことは慎みましょう。





結論


 榴散弾フレチェット弾)を用いた「直接照準射撃」は、その攻撃が「完全貫通」になるのであれば、超遠距離や遠方であっても目標(敵兵)の虐殺が可能であると判明しました。
 その場合、貫通力の大きな大口径砲を用いるよりも、小口径砲を多数運用する方が、殺傷力は大きくなるようです。
 また、致傷範囲の大きさから考え、榴散弾フレチェット弾)射撃を前提とするのであれば、高初速砲を用いるべきでしょう。
 高初速砲1門は、低初速砲3門分の致傷範囲を備えていますから。



 「部分貫通」や「無貫通」にしかならない状況であっても、射撃回数を増やすことで補完は容易でした。
 しかも、フレチェット弾の致傷範囲はとても広いので、多数の目標に対して命中判定を行なえます。逆説的な言い方をすると、1つだけの目標を無力化する場合も、100以上の複数目標をまとめて無力化する場合でも、フレチェット弾を使えば、手間は同じなのです。
 集団で戦闘を行なう場合、この特性は極めて有効に働くでしょう。別の手段によって砲兵が殲滅されない限り。



 「引き付けて撃つ」=命中難易度が〈並〉になる距離でフレチェット弾を撃つことは
極めて有効な戦術です。
 テックレベル5〜6において、その距離は中距離となりました。歩兵の持つライフルが有効な距離となっていますから、砲兵にとっては危険なことですが。
 テックレベル7の遠距離射撃、テックレベル8の超遠距離射撃は、敵歩兵を一方的に攻撃できる、とても有利な戦闘が可能になるでしょう。
 この場合も、別の手段によって砲兵が殲滅されない限り、という条件が付きます。



 テックレベル8になると、RAM擲弾筒からもフレチェット弾を発射できるようになります。
 兵士の練度が低い場合は役立たずですが、兵士1人毎に1門のフレチェット弾射撃が可能になる訳で、RAM擲弾筒ライフル擲弾発射機を兵士全員に装備させたならば、絶大な火力を発揮することになるでしょう。

 携行弾数の制限(英文エラッタに掲載されているRAM擲弾筒の擲弾は1発0.4kg、ライフル発射式のRAM擲弾は1発0.6kgでした。擲弾は重いのです)から、その火力発揮は短時間に限られますが、状況とタイミングによっては極めて効果的な筈です。



2011.02.20 初投稿。