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最強兵器 決定戦
第46回(砲兵2)
間接射撃−遠方

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MEGA TRAVELLER
 


 

野戦砲使い方
  遠方(5km以内)への榴弾間接射撃



 1860年〜1914年の古代テラにおいて、遠距離〜超遠距離で対峙した野戦砲兵と、ライフル装備の歩兵が同等の攻撃力を持ってしまったため、 砲兵は極めて不利な立場に置かれてしまいました。
 1門32,500crもする8cm低初速砲が、1丁200crのライフル数十丁から 袋叩きにされているという情景は、想像するだけでも泣けてきます。

 しかし、砲兵もただ負け続けているだけではありません。
 彼らは遂に、「間接射撃」という新戦術を確立したのです。

 「間接射撃」とは、目標を視認できない砲兵から砲撃を行なう射撃方法です。
 砲兵自身は、比較的安全な後方に陣地を築き、前進した観測班からの情報に基づいて砲撃を行ないます。
 そのメリットは色々ですが、最大のメリットは目標との射撃距離を大きく取ることができることでしょう。 「間接射撃」が可能ならば、敵を視認するために前線へ出る必要も、 移動する敵を追って砲兵自身が動きまわる必要も無いのです。
 また、より多くの火力を目標に集中できるようになりました。 射程内に存在する砲をすべて、視線が通るかどうかに関わらず、特定の目標へ集中させることが可能になったからです。
 敵から見えない場所に砲兵を配置すれば、反撃を受けることも無くなり、当然、損害も出なくなりました。



 「間接射撃」を実戦で大規模に行なった最初の例は、日露戦争における日本軍だったと言われています(鴨緑江の戦い)。 もともとはドイツから学んだ理論だとのことですが。
 この技術は再びドイツにフィードバックされました。彼らは、この新兵器をベルギー国境の突破に活用します。 彼らは従来、野戦に用いることのなかった(野戦では使えなかった)150mm砲を量産しました。 そしてさらに、航空機を観測所に用い、大規模な「間接射撃」を実現したのです。


 対するフランス軍は、榴散弾を用いた「直接照準射撃」を行なうため、 多くの大砲(その口径は76mm)を用意していました。 また、ドイツ軍の新兵器「間接射撃」に対抗するため、 フランス軍独自の「間接射撃」もきちんと準備ができていました(これも口径76mm)。 従来の常識であれば、フランス軍の防衛線を打ち破るには同等以上の戦力(大砲の数と歩兵の人数)が必要だったことでしょう。
 ところがドイツ軍は、非常識なほどの遠距離から、常識外れの大火力を、待ち構えているフランス軍の上へ送り込んだのです。 防衛線は1発も撃つことなく崩壊してしまいました(若干の誇張あり)。

 初期のフランス軍敗退は、どうして生じてしまったのでしょう。
 今回の考察はその点を踏まえて、遠方までの「間接射撃」を扱います。





野砲の性能比較(テックレベル5〜6)


 メガトラで扱われている野砲には、迫撃砲低初速砲(榴弾砲)、 高初速砲(カノン砲)、質量投射砲(マス・ドライバー)の4種類が存在しました。
 ですが、今回の考察は主にテックレベル5〜6の野砲を扱いますので、質量投射砲は除外します。 その代わりに、英文エラッタの中で見つけたMRL(多連装ロケット・ランチャー)を追加しておきましょう (この考察の最後尾で紹介します)。



 以下の表1に、各種野砲から発射される榴弾の貫通力、ダメージ、致傷範囲を示します。 並べてみて、初めて気付いたことなのですが、榴弾の場合、同口径ならば迫撃砲低初速砲高初速砲も、すべて同じ諸元でした。 重量と価格だけは異なっていますが、それ以外の性能は全く同じだったのです。
 恐らく、同じ大きさ、重さの砲弾を撃ち出しているということなのでしょうが、 砲弾を撃ち出すための装薬まで同じ大きさ、重さだというのは納得できません。 装薬が要らない筈の質量投射砲まで同じ数値を使うのですから、困ったものです。

        表1 榴弾の貫通力とダメージ、致傷範囲の比較

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 榴弾の貫通力は、テックレベルが5を超える2毎に+1の修正を受けます。
 ですから、テックレベル7〜8は+1、9〜10は+2、11〜12は+3、13〜14は+4、15〜16は+5ということです。

 また、榴弾の致傷範囲は、テックレベルが5を超える3毎に+10の修正ですので、 テックレベル8〜10は+10、11〜13は+20、14〜16は+30です。
 口径2cmと4cmの榴弾は致傷範囲を持っていませんが、 この場合はプレイヤーズ・マニュアルp.74の記述より、命中したマス内(15メートル四方の範囲)だけに被害を与えられると考えます。

 テックレベル5〜6の歩兵は防具を身に付けていません(装甲値0です)ので、 致傷範囲内の目標はどんな榴弾の攻撃を受けても、「完全貫通」の被害を受けることになるでしょう。
 基本ダメージは最小サイズ(口径2cm)の榴弾でも6ですから、命中すれば確実に死亡します。 榴弾の基本ダメージはテックレベルが上昇しても変わりませんが、 貫通力や致傷範囲が変われば与えるダメージも変わりますから、これで十分だと思います。



 では、榴弾の口径による被害の大きさを比べてみましょう。
 例えば、口径2cmの榴弾は、命中した1マスの範囲に「完全貫通」の被害を与えます。
 口径6cmの榴弾は、致傷範囲が10メートル(四捨五入して1マス)ですから、隣接マスにも被害を与えられるでしょう。 隣接マスにおける貫通力は半減した「4」ですが、まだ十分に「完全貫通」が可能です。
 つまり、口径6cmの榴弾は命中したマスを含めて 9マスの範囲に「完全貫通」の被害を与えるということです。 これと同じ被害を与えるためには、口径2cmの榴弾が9発あれば十分でしょう。

 口径12cmの榴弾は、致傷範囲が25メートル(2マス)ですから、 命中したマスを含めて25マスの範囲に「完全貫通」の被害を与えます。
 これは口径6cmの榴弾3発、 または、口径2cmの榴弾25発で同火力だということになりました。

 口径20cmの榴弾は、致傷範囲が40メートル(3マス)ですから、 命中したマスを含めて49マスの範囲に「完全貫通」の被害を与えます。
 これは口径12cmの榴弾2発口径6cmの榴弾6発口径2cmの榴弾49発で同火力だと言えるでしょう。

 すると、大口径の榴弾1発を撃ち込むより、小口径の榴弾数発〜数十発を撃ち込む方が有利なのでしょうか?



 今度は、その榴弾を発射する野砲について、容積と重量、価格を比べてみます。
 まずは、牽引式架台なし(車載式)の重量と価格からです。

      表2 野砲の容積と重量、価格の比較 牽引式架台なし(車載式)

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 迫撃砲は、口径2cmと4cmが存在しませんので、空欄になっています。
 赤字で示されている数字、6cm高初速砲の価格30cm高初速砲の容積重量価格は修正しました。 英語版と日本語版で数字を見比べたところ、誤りが見つかったためです。 また、高初速砲の一番下の口径は、口径15cmではなく30cmでした(昔から、おかしい数字だとは思っていましたが)。



 今度は、牽引式架台の重量と価格を加算した数値を示します。

      表3 野砲の容積と重量、価格の比較 牽引式架台あり(牽引式)

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 低初速砲高初速砲の数値(容積、重量、価格)は、 単純に2倍にしてあるだけだと判明しました。口径による数値の変化(傾向)は全く同じです。



 表1からの考察によると、口径6cmの榴弾1発は、 口径2cmの榴弾9発と同火力になる訳なのですが、榴弾の発射装置である野砲はどうでしょう。
 表2の数値、車載式の重量で比べてみます。

 口径6cmの低初速砲1門は、重量0.24tonでした。 一方、口径2cmの低初速砲は1門が0.05ton。 それが9門ですから、9倍の0.45ton口径6cmの低初速砲1門の方が、重量面では「有利」だと分かりました。

 口径12cmの榴弾1発は、 口径6cmの榴弾3発口径2cmの榴弾25発と同火力です。
 口径12cmの低初速砲1門は、重量1.05tonでした。 口径6cmの低初速砲は3門で0.72ton口径2cmの低初速砲は25門で1.25ton。 中間の口径6cmの低初速砲3門が、最も有利なようです。
 迫撃砲の場合は、12cm砲1門が重量0.53ton6cm砲3門が0.33tonですから、 やはり6cm砲3門が有利でした。

 口径20cmの榴弾1発は、口径12cmの榴弾2発口径6cmの榴弾6発口径2cmの榴弾49発と同火力です。
 口径20cmの低初速砲1門は、重量5.50tonでした。 口径12cmの低初速砲2門は2.10ton口径6cmの低初速砲6門は1.44ton、 そして口径2cmの低初速砲49門は2.45tonです。
 迫撃砲の場合も、 20cm砲1門が重量2.75ton12cm砲2門が1.06ton6cm砲6門が0.66tonでした。
 どちらの場合も、口径6cm砲多数を用意した方が有利になりました。

 さらに、迫撃砲はとても軽いのです。
 車載式の場合、低初速砲との重量比は2倍程度ですが、 牽引式架台を追加した場合は5倍になることが判明しました。
 価格面では車載式で10倍、牽引式で11.4倍の違いがあります。
 同じ重量でも、より大口径の砲、あるいは同口径ならばより多数の砲を用意できますから、 迫撃砲はとても有利な支援火器であると確認できました。

 しかし、メガトラの迫撃砲が重すぎますね。
 第二次大戦中(TL4〜5)の米軍が使用していた60mm迫撃砲(M2)の重さが、20kg弱です。 表2で示された重量の7分の1しかありません。
 同じく81mm迫撃砲(M1)は62kgですから、これも3分の1以下です。
 プレイに用いる際には、レフリーとプレイヤーで話し合って、どちらの重量を用いるか決めておくべきでしょう。



 念のため、兵站(弾薬の補給)面についても比較しておきましょう。
 榴弾の容積と重量、価格を比べてみます。

           表4 榴弾の容積と重量、価格の比較

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 砲弾の容積はリットル(L)で示しました。
 すべての野砲で、その容積は同じです。

 砲弾の重量は、kgで示しました。
 迫撃砲の砲弾重量は容積の半分(口径30cmだけは例外)、 低初速砲高初速砲の砲弾重量は容積と同じ数字です。

 砲弾の価格は、クレジット(cr)で示しました。
 低初速砲を規準にすると、迫撃砲弾の価格は0.75倍(口径30cmだけは例外)、 高初速砲の価格は2倍です。 口径による数値の変化は、今回も全く同じです(迫撃砲の口径30cmだけが例外)。

 表1でも少し触れたことですが、同じ大きさ、重さの砲弾を撃ち出しているとして、 砲弾を撃ち出す為の装薬まで同じ大きさ、重さだというのは納得できません。
 高初速砲の砲弾容積と重量は、必要な装薬が増えていることからも、5割増しぐらいにして良かったのではないでしょうか。



 再び、表1の考察を砲弾の重量と価格に当てはめました。 主に比較したい数値は重量ですので、重量の数値だけ色を変えてあります。

 口径6cmの榴弾(低初速砲)1発は、容積6L、重量6kg、価格12crでした。
 口径2cmの榴弾(低初速砲)9発は、容積9L、重量9kg、価格18crです。

 口径12cmの榴弾1発は、容積40L、重量40kg、価格80crでした。
 口径6cmの榴弾3発で、容積18L、重量18kg、価格36cr、 口径2cmの榴弾25発は容積25L、重量25kg、価格50crです。
 迫撃砲の場合は、 12cm榴弾1発が重量20kg、価格60crで、 6cm榴弾3発が重量9kg、価格27crでした。

 口径20cmの榴弾1発は、容積120L、重量120kg、価格240crでした。
 口径12cmの榴弾2発は、容積80L、重量80kg、価格160crで、 口径6cmの榴弾6発は、容積36L、重量36kg、価格72cr、 口径2cmの榴弾49発は、容積49L、重量49kg、価格98crです。
 迫撃砲の場合も、 20cm榴弾1発が重量60kg、価格180crで、 12cm榴弾2発が重量40kg、価格120cr、 6cm榴弾6発が重量18kg、価格54crでした。



 口径2cm6cmよりも若干重く、高価になりましたが、 それ以外の場合は、小口径砲多数を用意した方が明らかに有利です。
 補給への負担、砲弾の購入費用、どれを取っても有利だと分かりました。
 砲兵の一部が損害を受けても、その被害を軽微に抑えられる(部隊の耐久力を高められる)という点においても、 小口径砲を多数用意する戦略が間違っているとは思えません。
 榴散弾(フレチェット弾)射撃だけでなく、 榴弾を用いた間接射撃であっても、小口径砲多数が有利という原則は変わりませんでした。

 つまり、第一次世界大戦の初頭におけるフランス軍の戦略(比較的、軽量の大砲を数多く揃えて、ドイツ軍を待ち受ける作戦)は正しかった訳です。
 すると、彼らの大敗原因は何だったのでしょう。



 その答えは、ドイツ軍の用いた野砲が口径150mm(メガトラでは16cmの扱いにしました)、 フランス軍の用いた野砲が口径76mm(メガトラでは8cmの扱い)だったという点にあります。
 口径の違いがどんな影響を及ぼすのか、今度は野砲の準備時間、最大射程、射撃速度に着目して、比較しました。

      表5 野砲の準備時間と最大射程、射撃速度(TL5〜6)の比較

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 準備時間は、砲の据付(射撃準備)に掛かる時間で、単位は秒になっています。
 表に示されている数値は車載式のもので、牽引式は上記の2倍になるとのこと。
 この準備時間に3D6(−DM)を掛けたものが、実際の据付(射撃準備)に費やした時間になる訳です。
 DMにもよりますが、最低3倍、最大は18倍、平均は8倍程度になるでしょう。
 口径6cmの牽引式迫撃砲で平均80秒口径12cmの車載高初速砲で平均560秒(=9分強)が必要になりました。
 幸い、車載式の直接射撃兵器は、据付(射撃準備)が不要とのことです。 戦車が搭載した戦車砲(口径12cmの高初速砲)を撃つために、停車してから9分も掛かるということはありません。
 高初速砲口径6cm24cmの準備時間が間違っていたので、修正しました。



 射程は、km単位です。
 この射程は「間接射撃」に用いる場合のみの射程だそうです。
 直接射撃の場合は最大射程を常識で判断するのだと思いますが、果たして大丈夫なのでしょうか。 今後の考察で穴が見つからないことを祈ります。
 ところで英文エラッタによると、レフリーズ・マニュアルの表に掲載されている野砲の射程(距離帯)の記述が、すべての野砲で間違っているそうです。 例えば、最大射程4kmの距離帯を「超遠距離」と記述している、などの間違いですね。 4kmの距離帯は「遠方」です。
 km表示の射程は合っていますので、それに合わせて変換してください。

 同じ種類の野砲で、最大射程を口径8cm16cmで比べてみましょう。
 迫撃砲の場合、口径8cmの射程は5kmで、 口径16cm9kmでした。
 低初速砲は10km17km、 高初速砲は16km28kmです。 最大射程の違いは明らかでした。

 フランス軍砲兵の射程外にドイツ軍砲兵が布陣している場合、フランス軍の反撃は、全く届きません。つまり、その攻撃力はゼロなのです。
 どんなに沢山の大砲を用意していても、ゼロの倍数はゼロのまま。
 フランス軍の砲兵は、射程の短い小口径砲を装備していたため、ドイツ軍の大口径砲から一方的に砲撃されてしまったという訳でした。

 世界各国の砲兵部隊が、長射程の大口径砲(大抵は155mm)と中射程の中口径砲(こちらは105mm)を混在させ、 一見すると無駄に思えるような編成をしている理由は、これらの戦訓によるものでしょう。
 射程内に収めた目標を攻撃する際には、小口径砲の方が編成(購入費用)も移動(輸送力の負担)も小さく済みます。 消費弾薬(重量とコスト)も軽く、安く済みました。
 しかし、小口径砲は射程が短いという欠点があります。
 小口径砲が目標(敵砲兵)を射程内に収められなかった場合、敵から一方的に撃たれるというリスクを抱えてしまいました。 そうしたリスクを避けるため、一部の砲兵にはコスト面で不利な大口径砲を与えなければならないのです。



 蛇足になりますが、射撃速度は毎分当たり何発の砲弾を射撃できるか、という意味の射撃速度です。
 低初速砲の射撃速度を規準にすると、高初速砲は半分。
 迫撃砲は、口径12cm以下ならば低初速砲の1.5倍、口径14cm以上は同等でした。 この違いは、口径12cmまでならば前装式が可能(発射速度が高くなる)ということによるのでしょう。 後装式の場合、低初速砲と射撃速度が変わらなくても当然です。

 射撃速度という点でも、小口径砲は有利な立場にありました。

 例えば、口径20cmの低初速砲は榴弾1発を発射するため30秒の時間が必要(毎分2発の射撃速度)ですが、 口径12cmの低初速砲ならば同じ時間(30秒)で4〜5発の榴弾を発射できます。
 同じ広さに被害を与える(同じ火力を発揮する)ために、2倍の数を用意する必要はありません。 単に、発射速度の違いを活かすだけで十分だと分かりました。
 口径6cmの低初速砲は、さらに2倍の射撃速度を持っています。 同じ時間(30秒)で13〜14発を発射できました。必要な射撃数は6倍でしたから、それを補って十分な射撃速度です。
 口径2cmの低初速砲は、射撃速度が限界(毎分30発)に達しているため、これ以上の向上が望めません。 同じ時間(30秒)で15発までしか発射できませんから、口径2cmの低初速砲は2門以上を用意する必要があるようです。



 榴弾による「間接射撃」を行なう場合でも、砲の重量や価格、砲弾コスト、砲の運用(準備時間や射撃速度)を考慮すると、 大口径砲×少数よりも、小口径砲×多数の方が多くの面で有利であることが分かりました。
 しかし唯一、小口径砲は最大射程の点、それだけで不利になっています。
 この不利は、これまでの有利をすべて覆してしまうほどの厳しいものでした。
 敵から一方的に撃破されてしまうという、大変なリスクを抱えてしまうのです。

 このリスクを避けるためには、世界各国の例に倣い、少数の大口径砲と多数の中口径砲を混在させた編成を取るべきでしょう。 多くの例では大口径砲1に対して、中口径砲2〜3という比率になっていました。
 57世紀の帝国陸軍の場合、砲兵部隊がどのような編成を取っているか、資料がないため残念ながら分かりません。





メガトラにおける、榴弾射撃の有効性


 では、メガトラのルールで榴弾を使用してみます。

 今回のサンプルには、テックレベル5(1903年製)の150ミリ榴弾砲を用いました。 メガトラでは、口径16cmの低初速砲として扱われているものだとします。
 この野砲も牽引式の架台付きで重量7.88ton、価格150,000crでした。 前回の考察で用いた8cm砲に比べ、重さで6倍、価格は5倍近くも違います。 恐らく、操作要員(砲手)の人数も5〜6倍必要になるでしょう。
 確かに強力かも知れませんが、16cm砲1門8cm砲5門の、 どちらを欲しいかと聞かれたら、当時の軍人の多くは8cm砲5門を選んだと思います。

 おまけに、砲弾重量も8cm砲弾の1発14kgに対して、 16cm砲弾は1発70kgです。 砲弾の輸送(補給)はもちろんのことですが、装填作業も大変そうですね。



 榴弾の巻き添え命中判定に関してはメガトラ・ルールに納得できないため、 39回の考察「手榴弾」で提案したハウス・ルールを使わせて頂きました。

 致傷範囲内に居る目標に対し、難易度〈易:3+〉、〈並:7+〉、〈難:11+〉のどれかで命中判定を行なうというルールです。 難易度は目標の状態(不意討ちならば〈易〉、通常の戦闘状態であれば〈並〉、塹壕などの遮蔽物に隠れていれば〈難〉)によります。

 また、今回の考察は個人で扱える「手榴弾」ではなく、 大規模戦闘の「間接射撃」を扱っています。
 命中判定のタイミングが難しくなりましたので、一律、砲弾が着弾した戦闘ラウンドの最後に判定を行なうこととしましょう。 目標マス(あるいは、致傷範囲内のマス)に居るキャラクターは、 その戦闘ラウンド中に行なった行動に合わせて、命中判定の難易度を決めることになります。

 例えば、遮蔽物から飛び出して移動(突撃)を行っていたら、戦闘ラウンドの終了時に再び遮蔽物に隠れていても 〈易:3+〉で命中判定を行なうことになります(プレイの都合上、移動中に砲撃を浴びてしまったと考える訳です)。

 遮蔽物がなくても、地面に伏せるなどして身を守っていたら〈並:7+〉で判定します。 射撃は可能ですが、恐らく、ほとんど移動は行なえないでしょう(匍匐前進でどれだけ移動できるのか不明ですが)。

 塹壕や蛸壺陣地の中から、顔と手だけを覗かせて、射撃を行なっていた場合は〈難:11+〉で判定です。

 砲撃の届かない、安全な掩蓋付きの退避壕に隠れている場合は、砲撃によって被害を受ける心配はないでしょう (実際には掩蓋を突き破った榴弾に、退避壕ごと吹き飛ばされる事例もあったようですが)。 当然ながら退避壕に隠れていると、敵を見ることも攻撃することもできません。

 こういったルール(ハウス・ルール)を用います。



 さて、目標の居るマス(15メートル四方の範囲)に、1発の榴弾が命中したとしましょう (実際は、1発の榴弾を命中させるだけでも一苦労なのですが)。
 命中した榴弾は、口径16cmの低初速砲から発射されたもの(貫通力22、基本ダメージ20、致傷範囲30)でした。
 この榴弾の致傷範囲と、その致傷範囲内における貫通力は、以下の表6に示したようになります。


       表6 致傷範囲内における、榴弾の貫通力(TL5〜6)

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 テックレベル5〜6の歩兵は通常、防具を身に付けていません。 貫通力1以上の攻撃は自動的に「完全貫通」になりました。 表6に示された数値は、すべて「完全貫通」を意味する青字になっています。
 口径2cmの榴弾は貫通力1しかありませんが、 非装甲目標(装甲値0)を攻撃するのであれば、それでも全く問題にはならないのです。
 逆に考えると、「フラック・ジャケット(装甲値3)」を身に付けるだけで、 榴弾の被害をずいぶん軽減できそうな気がしますね。 貫通力2以下ならば「無貫通」、貫通力5以下ならば「部分貫通」に変えられますので。
 あれ、大口径砲の場合はあまり変わらないのかな。



 それはともかく、榴弾の致傷範囲ですべて「完全貫通」が得られるとした場合、 目標に与えられるダメージ期待値と無力化率は以下のようになります。

     表7 榴弾の巻き添え命中による、ダメージ期待値と無力化率
        口径16cmの榴弾、テックレベル6、基本ダメージ20

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 不意討ち状態(難易度〈易:3+〉)ならば、1発の命中で97.2%の目標を無力化できます。 致傷範囲が30メートル(2マス)ということですので、15メートルの屋外戦闘マップ25マス分の範囲すべてに被害を及ぼせるでしょう。

 口径16cmの榴弾は基本ダメージが20ですから、榴散弾(フレチェット弾)のように負傷者が多く出ることはありません。 たとえかすり傷であっても、目標(敵歩兵)は10ポイントのダメージを受けて「即死」するのです。
 口径4〜14cmの榴弾ならば基本ダメージが8〜16ですので、 かすり傷(サイコロの目が命中率ちょうど)の場合、半減したダメージで生き残る可能性はあります(重傷を負って無力化された状態ですが)。
 口径2cmの榴弾は基本ダメージ6ですから、かすり傷の場合は無力化されません (ダメージ3ポイントの軽傷ですから、あと1ポイントの追加ダメージで無力化されますが)。
 ここで、大口径砲を用いるべき2つ目のメリットが見つかりました。 大口径砲は目標を確実に無力化できるのです。
 それはともかく口径16cmの榴弾が命中した場合、 この致傷範囲内に100人の敵兵が居るなら97人が、1,000人の敵兵が居るなら972人が死亡することになりました(生存者はわずか18人です)。

 通常の戦闘状態、目標が地面に伏せているとか、身を低くして移動中といった状態では、難易度〈並:7+〉で命中判定を行ないます。
 1発の命中で58.3%も目標を無力化できますが、残りの41.7%は無傷です。
 敵兵力を6割も削り取れるのは立派ですが、これだけではまだ足りません。追加攻撃が必要になるでしょう。

 目標が援護物下にある、例えば塹壕の中に身を潜めている、石垣の背後に身を隠している、といった状態では、 難易度〈難:11+〉で命中判定を行ないます。
 同一マスに命中があった場合、爆発の中心から目標へ視線を引けるかどうか、判定をする必要はないでしょう。 同一マスですから、判定のやり方も分かりませんし。
 それでも援護物の効果があれば、簡単には死傷しない筈です。
 果たして、援護物下の目標は1発の榴弾で8.3%の無力化しかできませんでした。



 不意討ち状態(難易度〈易〉)はともかくとして、難易度〈並〉や〈難〉の状態では、目標の無力化率に不満が残ります。
 これを覆して、より高い無力化率を得るためには、複数の榴弾を命中させ、複数回の命中判定を行なう以外にありません。

 難易度〈並〉で、難易度〈易〉並みの無力化率97.2%を得るためには、一体、何発の榴弾を撃ち込めば良いのでしょうか。
 また、援護物に隠れている目標を、難易度〈易〉や〈並〉と同じ高確率で無力化するためには、何十発の榴弾を撃ち込まなければならないのでしょう。

 早速、計算してみました。

       表8 目標(敵歩兵)の殲滅に必要な、榴弾の命中回数
             完全貫通 基本ダメージ20の場合

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 通常の戦闘状態(難易度〈並〉)である場合、4回の命中判定を行なうことで、 難易度〈易〉とほぼ同じ、97.0%の無力化率を得られました。 不意討ち状態でなくても、4倍の榴弾を撃ち込めば同じ戦果になるのです。
 さらに戦果を確実化するため、2倍の8発を撃ち込んだ場合、無力化率は99.9%になりました。 敵兵が1,000人居たとしても、生存者は1人しかおりません。

 塹壕などの援護物に隠れている状態(難易度〈難〉)では、より多くの命中が必要になりました。
 難易度〈並〉とほぼ同じ58.1%の無力化率を得るために、10発の命中判定を行なわなければならないのです。
 10発の命中判定でやっと〈並〉と同じ無力化率ですから、 難易度〈易〉と同じ無力化率96.9%を得るためには、その4倍、40回の命中判定が必要になりました。 殲滅に相当する99.9%の無力化率は、80回の命中判定です。

 これだけの命中弾を得れば、狙ったマスとその周辺にいる目標は1,000人居ても壊滅することが分かりました。
 実用的には、97%の無力化率(1,000人中の生存者が30人)でも十分な気がしますので、 難易度〈並〉で4発、難易度〈難〉で40発の命中が得られれば良いことにしておきましょう。



 さて、4発から40発と気軽に言っても、難易度〈難〉の命中判定を用いる間接射撃ですから、それだけの命中弾を得ることは難事です。
 〈照準〉の技能レベル(+DM)によってどれだけの命中数を得られるのか、早速、計算してみました。

     表9 〈照準〉技能レベルによる、間接射撃の命中率とずれの分布

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 〈照準〉技能なしの素人は、わずか8.3%の命中率しかありません。
 支援要請に応じて発射された砲弾の多くは、射撃距離の1D%(微小事故)から2D%(小事故)、運が悪いと3D%(大事故)もずれてしまいました。

 平均的な兵士は〈照準−2〉の技能を持っていると想定します。 その場合、命中DMは+2になりました。
 命中率は素人の3.3倍で、27.8%。外れたとして、 その多くは近距離(射撃距離の1D%)しかずれず、運が悪くても2D%です。

 優秀な兵士は〈照準−4〉の技能を持っているとしました。 命中DMは+4。
 命中率は58.3%で、平均的な兵士の2倍素人の7倍です。 外れた砲弾は近距離(射撃距離の1D%)に着弾し、2D%のずれは稀にしか起こりません。
 間接射撃にとって〈照準〉技能がどれだけ重要かを、雄弁に語ってくれる数字です。



 この命中率(表9)を使って、表8で示した命中回数を得るために必要な、榴弾の射撃回数を求めました。

       表10 特定の命中数を得るために必要な、射撃回数
           隣接マスなどへの命中は考慮せず、直撃だけの計算

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 素人の射撃は、命中数1を得るためだけであっても、12回の射撃を必要とします。
 表8で考察した、命中数4を得るためには48回の射撃、 命中数40を得るためには、なんと480回の射撃が必要になりました。
 実にもったいない話です。 砲弾補給の苦労と手間を考えるのであれば、素人に前進観測(照準)を任せてはいけません。

 平均的な兵士の射撃は、命中数1を得るために3.6回(切り上げして4回)の射撃を必要としました。
 命中数4を得るためには15回、命中数40を得るためには144回の射撃が必要です。 素人に比べ、砲弾の利用効率は3倍になっていました。まぁ、妥当なところでしょう。

 優秀な兵士による射撃は、命中数1を得るために1.7回(切り上げして2回)の射撃しか必要ありません。
 命中数4を得るためには7回、命中数40を得るためには69回の射撃で十分です。



 それにしても、「間接射撃」で遠方の目標を撃破/殲滅するためには、 驚くほど多量の砲弾が必要だと判明しました。
 榴散弾フレチェット弾)による直接照準射撃の場合は、 これほど多くの砲弾を必要としなかったのに、これは大きな問題です(命中率は同じでも、判定を2回行なうことや +DMの大きさが違うことによって生じています)。
 この砲弾消費を抑える(減らす)ため、隣接マスへの命中(1マスから2マス程度、ずれた着弾)を利用できないかどうか、 考察してみましょう。





至近弾による、榴弾効率の変化


 ここでは至近弾の定義を、 狙ったマスから外れた砲弾が、致傷範囲を及ぼせる程度の近いマスに着弾すること、だとしておきます。
 サンプルに用いている16cm砲の榴弾は致傷範囲が30メートル(=2マス)ですから、 着弾の「ずれ」が2マス以内ならば「至近弾」とみなせる訳です。

 ここで問題になることは、榴弾が2マス以内に着弾する可能性は、果たしてどれだけあるのか、ということでしょう。
 それぞれの事故の程度に応じた、「ずれ」の分布範囲を求めてみました。

   表11 事故の程度(微小〜大事故)に応じた、着弾の「ずれ」分布範囲

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 「間接射撃」の命中判定に失敗した場合は2Dを振り、事故の判定を行なわなければなりません。 その事故の度合いによって、着弾の「ずれ」を決定する訳です。

 まず、事故の度合いを決める判定は2Dですが、その際には特別に、射手の〈照準〉技能レベルをマイナスDMとして使うことができます。
 その結果が2以下であればサイコロの振り直し、3〜6は「微小事故」、7〜10は「小事故」、11〜14は「大事故」です。
 その確率分布は表9に示した通りでした。

 次に、事故の度合いに合わせて「ずれ」の大きさを決めます。

 「微小事故」の場合は射撃距離の1D%(最低でも1マス)、「小事故」は2D%(最低2マス)、 「大事故」は3D%(最低3マス)の「ずれ」を生じます。
 「手榴弾」の考察でも述べましたように、射撃距離が20マス以下であれば、 「微小事故」は1マス、「小事故」は2マス、「大事故」は3マスで簡単に処理できるのですが、 射撃距離が長い(遠い)場合はそうもいきません。



 実際に計算してみたところ、射撃距離が500メートル(30マス)の場合、 「微小事故」の「ずれ」はすべて2マス以内に収まりました(すべてが至近弾になりました)。
 「小事故」の「ずれ」は、その41.6%(2Dを振って6以下)が2マス(至近弾)になります。
 「大事故」の「ずれ」は最低でも3マスですから、至近弾には成り得ません。

 これらの至近弾を加算した結果、4回〜40回の命中判定を行なうためには、下記の表12に示しただけの射撃回数が必要です。

     表12 特定の命中数を得るために必要な、射撃回数
         射撃距離30マスで、2マス以内への至近弾を加算した場合

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 「微小事故」のすべてと「小事故」の4割が至近弾になるため、目標に有効な砲弾の数が大きく変わりました。
 特に命中率の低い素人の場合、その傾向が顕著です。 必要数の1.5倍を射撃するだけで十分な命中判定を行なえるようになりました。
 平均的な兵士の場合、必要数の1.1倍で十分です。
 また、優秀な兵士の場合は、射撃のほとんどが有効でした(80発を撃って、ほんの2発が外れる程度)。 実に優秀です。

 目標に近付き、射撃距離を縮めることは、無駄な射撃を減らすために、とても有効な戦術だと分かりました。
 問題は、敵が黙って接近させてくれるか、ということでしょう。



 今度は、射撃距離を1,500メートル(100マス)にしてみました。
 この場合、「微小事故」の「ずれ」は33.3%(1Dを振って2以下)が2マス以内の至近弾になります。
 「小事故」の「ずれ」は、2.78%(2Dを振って2だけ)が2マスの至近弾です。
 「大事故」の「ずれ」は、至近弾には成りません。

 これらの至近弾を加算した結果が、以下の表13です。

     表13 特定の命中数を得るために必要な射撃回数
         射撃距離100マスで、2マス以内への至近弾を加算した場合

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 射撃距離が3倍に広がりましたので、「ずれ」の大きさも3倍に広がりました。 目標に有効な至近弾の数が大きく減少しています。

 素人の射撃は、必要な命中数の4.6倍を射撃しなければなりません。 表12(射撃距離30マス)に比べて3倍の射撃数です。 表10の12倍に比べればまだマシですが、大変になってきたことは事実です。
 平均的な兵士の場合、必要数の2.2倍になりました。 これも射撃距離30マスの2倍です。
 優秀な兵士の場合は、必要数の1.4倍でした。 射撃距離30マスの3割増しとなっていました。

 〈照準〉技能の多寡によって、射撃距離の影響(射撃精度の低下)が極端に現われるようです。
 射撃距離20マス(300メートル)程度で撃つのであれば、素人もベテランも必要な射撃回数に大きな違いはありませんが、 射撃距離が大きくなればなるほど、素人とベテランの違いがはっきりしてきました。
 実に面白い傾向です。
 射撃距離が300マス以上(超遠方)になったら、両者の差はどうなるのでしょうか。
 次回の考察(超遠方への「間接射撃」を評価する予定)が楽しみです。





榴弾に対する防具の効果


 テックレベル8になると、歩兵は「フラック・ジャケット」を身に付けるようになりました。
 「フラック・ジャケット」は装甲値3ですから、 貫通力2以下の貫通力を「無貫通」に、 貫通力3〜5の貫通力を「部分貫通」に抑えることが出来ます。



 榴散弾(フレチェット弾)の場合と同じように、防具の効果を考察してみました。

 まず、テックレベル8の榴弾射撃で、「フラック・ジャケット(装甲値3)」を着た目標(歩兵)を攻撃してみます。


        表14 致傷範囲内における、榴弾の貫通力(TL8)

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 テックレベル8の歩兵が目標ですから、目標は「フラック・ジャケット」を着用し、装甲値が3だと想定しています。
 テックレベルが8になることで、榴弾の貫通力は+1、致傷範囲は+10メートルになりました。 そして、その貫通力が「完全貫通」する場合は青字、 「部分貫通」になる場合は黄色字、 「無貫通」にしかならない場合は赤字で示しています。



 2cm榴弾の貫通力と致傷範囲が大きく増えましたが、あまり意味はありません。 装甲値3に対して「無貫通」の結果しか得られないからです。 難易度〈難〉の命中判定において「無貫通」はダメージを全く与えられません。 2cm榴弾は非力なのです。

 4cm榴弾の致傷範囲が隣接マス(距離1マス)まで及ぶようになりました。 そして隣接マスにおける貫通力は3ですから、「部分貫通」を得られます。
 隣接マスの「部分貫通」分だけ、殺傷力が増しました。

 6cm榴弾は、元から隣接マス(10m)までの致傷範囲を持っています。 致傷範囲+10m(=20m)の恩恵はありません。 また、隣接マスにおける貫通力は4から5に増えましたが、 防具のため「完全貫通」から「部分貫通」にランクダウンしています。
 結果として、殺傷力が減ってしまいました。

 8cm榴弾は、致傷範囲が2マス(30m)まで拡大しました。 隣接マスまでの貫通力は「完全貫通」のまま変わりませんが、 2マス目の「部分貫通」分だけ、殺傷力が増しています。



 同じことの繰り返しになるので省略しますが、様々な口径の榴弾をテックレベル5〜6のもの(目標の防具無し)と、 テックレベル8(目標の装甲値3)を比較すると、

 2cm榴弾は「無貫通」となり、 「フラック・ジャケット」でほぼ完全に防がれてしまうことが分かりました。
 口径4cm、8cm、10cm、18cm、20cmの榴弾は、致傷範囲が拡大して、 「部分貫通」の分だけ、わずかに殺傷力が増加しています。
 口径6cm、12cm、14cm、16cm、24cm、30cmの榴弾は、致傷範囲の最外縁部での 「完全貫通」が「部分貫通」に変わり、殺傷力が減少していました。
 と思ったのですが、口径12cm以上の榴弾は、基本ダメージが16以上です。 これが何を意味するかというと、「部分貫通(ダメージ半減)」の 「かすり傷(サイコロの目が命中率と同じ、ダメージ半減)」であっても、 目標に最低限、4ポイントのダメージが与えられると判明しました。 目標が標準的な歩兵(人間)であるならば、まず確実に重傷を負って無力化されるでしょう。
 つまり歩兵を目標としている場合、口径12cm以上の榴弾は 「部分貫通」であっても「完全貫通」と同じ確率で無力化できるのです。 その範囲、「部分貫通」ですが目標を確実に無力化できる数値を、緑字で示しました。
 この修正を加えると、12cm、14cm、16cm、24cm、30cmの榴弾は殺傷力が変わらず、 18cm、20cmの榴弾は致傷範囲が1マス分拡大したことになるのです。



 今度はテックレベル10の歩兵「極地戦闘スーツ(装甲値6)」を目標にしてみましょう。
 榴弾の貫通力は+2、致傷範囲は+10メートルになっています。

        表15 致傷範囲内における、榴弾の貫通力(TL10)

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 今度は装甲値6の「極地対応戦闘スーツ」が目標です。



 2cm榴弾は、相変わらず無力でした。貫通力が致命的なまでに不足しています。
 フレチェット弾と同じように、数を撃ち込めば何とかなるかも知れませんが。

 4cm榴弾の貫通力がさらに上がりましたが、 同一マスで「部分貫通」しか得られません。 隣接マスは「無貫通」ですから、実質的な殺傷力を発揮できるのは命中したマスだけの範囲となります。
 6cm榴弾も同様。

 8cm以上の榴弾でようやく「完全貫通」を得られました。 その範囲は8〜10cmの榴弾で同一マス、 12〜14cmの榴弾で隣接マス、16〜30cmの榴弾で2マスまでです。
 テックレベル8の表14と見比べると顕著に表れますが、「極地対応戦闘スーツ」は、 榴弾による「間接射撃」の殺傷力を、大きく低減できることが分かりました。



 今度はテックレベル13の歩兵「戦闘アーマー(装甲値10)」を目標にしてみましょう。
 榴弾の貫通力は+3、致傷範囲は+20メートルになっています。

        表16 致傷範囲内における、榴弾の貫通力(TL13)

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 装甲値10の「戦闘アーマー」が目標です。



 2cm榴弾に加えて4cm榴弾までもが、歩兵に無力となりました。

 6cm榴弾8cm榴弾は、 同一マスで「部分貫通」しか得られません。

 10cm以上の榴弾で「完全貫通」を得られます。 その範囲は10〜30cmの榴弾で同一マスしかありませんでした。 口径12cm以上ならば、無力化の確実な「部分貫通」が隣接マスに及びます。
 「戦闘アーマー」は「極地対応戦闘スーツ」よりも 更に「間接射撃」の殺傷力を低減してしまいました。



 最後に、テックレベル15の歩兵「戦闘アーマー(装甲値18)」を目標にしてみましょう。
 榴弾の貫通力は+5、致傷範囲は+30メートルになっています。

        表17 致傷範囲内における、榴弾の貫通力(TL15)

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 装甲値18の「戦闘アーマー」が目標です。



 2cm〜8cmの榴弾は、歩兵に無力でした。

 10cm〜24cmの榴弾は、 同一マスで「部分貫通」しか得られません。
 ですが口径18cm以上ならば基本ダメージが24ですから、 「部分貫通」の「かすり傷」でも6ポイント以上のダメージを与え、 確実な無力化が可能でしょう。

 30cmの榴弾だけが同一マスで「完全貫通」を得られます。
 更に隣接マスで、「部分貫通」になりました。

 こういう状態になってしまうと、対歩兵戦闘に榴弾を使うことがとても虚しくなりますね。
 命中したマスだけでしか「完全貫通」や「部分貫通」を得られないのであれば、 致傷範囲内で貫通力が変わらない榴散弾フレチェット弾)の方が有効に思えます。
 あるいは、歩兵向けに対戦車兵器徹甲榴弾)を 撃ちまくらなければならないということなのでしょうか。





MRL(多連装ロケット・ランチャー)の紹介


 しばらく前から予告しておりましたが、ようやくMRLの紹介をさせて頂きます。
 英文エラッタの中に掲載されていたものですが、残念ながら、これだけでは使えません。 CT「傭兵部隊」の記述などを元にして、具体的な運用方法を考える必要があるでしょう。

 弾頭は、榴弾、徹甲弾、徹甲榴弾の中から選びます。
 その貫通力、ダメージ、致傷範囲については、同口径の迫撃砲弾のものを用いてください、とのこと。

      表18 MRLの諸元 容積、重量、価格、最大射程など。

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 18cmMRL−6は、テックレベル6から利用可能なロケット・ランチャーです。
 口径が18cmということですので、米軍の7.2インチ・ロケット弾発射機を モデルにしているのではないかと推測しております。この兵器の射程も3種類がありました。

 ルール的には車載式と牽引式のどちらでも使える筈ですが、準備時間の記述がありません。 これも同口径の迫撃砲の数値、40秒を用いるのでしょうか。
 また、装填できるロケット弾の数についても記述がありませんでした。 これは流石に迫撃砲の数値、という訳にはいきませんので、CT「傭兵部隊」の記述から、40発だとしておきます。

 簡単に見比べてみたところ、同テックレベルの迫撃砲よりもわずかに重い程度です。
 これだけですと大したメリットではありませんが、 実はロケット1発の容積と重量が3〜5リットルと1〜3kgしかありません。
 直径18cmのロケット弾が容積3リットルということは、長さ12cmの円筒(円盤)形になりますね。 果たして、どうやって飛んでいくのでしょうか。少なくとも桁を1つ間違えています(30〜50リットルならば納得できるでしょう)。
 18cm迫撃砲の砲弾は、容積90リットルで重量45kgですから、このデータは絶対におかしいと思います。 新しい訂正データが出るのを待つべきだったかも知れません。



 12cm遠隔操作MRL-10は、テックレベル10から利用できるロケット・ランチャーです。 これも米軍の4.5インチ・ロケット弾をモデルにしているのではないかと思われますが、確証はありません。
 車輌や航空機で運ばれたり、場合によっては空中投下され、必要な火力支援を行なうようです。 使い捨てなので「対砲兵探知」を恐れずに使える、ということのようですが余りにももったいない使い方だと感じました。
 しかし、ロケット弾を撃ち尽くした本体は5,000crの価値しかありませんから、わざわざ回収する必要がないのでしょうか。
 準備時間や装填数の記述がありませんので、勝手に20秒と100発にしておきます。

 前項の考察によれば、テックレベル10になると12cm榴弾は 同一マスでしか「完全貫通」を得られません。 あまり有効な殺傷力を発揮できそうにありません。 だからこそ100発のロケット弾を一度に発射して、広範囲での確実な制圧(無力化)を期待するのでしょう。

 この遠隔操作MRLもロケット弾の容積と重量が不思議な数字になっています。 口径12cmのロケット弾容積が2リットルの場合、長さ18cmの円筒ですから(4リットルでも長さ35cm)。



 6cm小型MRL-11は、テックレベル11から利用できるロケット・ランチャーですが、 テックレベル15の帝国陸軍(海兵隊)でも使われ続けているようでもあります。モデルとなった兵器は見つかりません。
 非常に軽量、かつ安価ですので、車載式の支援火器として、迫撃砲の代わりに使えることでしょう。 テックレベル10以上の歩兵に対して6cm榴弾は無力の筈ですが、 数を撃つことで補うのか、あるいは徹甲榴弾の直撃を狙っているのか、どうなのでしょう。
 準備時間は5秒、装填数は100発だと考えています。
 小型MRLも、ロケット弾の容積と重量を10倍すべきでしょう。





結論


 榴弾を用いた「間接射撃」は、 遠方(500m〜5kmの範囲)において目標(敵兵)を確実に撃破(虐殺)できることが分かりました。
 開豁地に無防備で立っている(歩いている)目標は、その多くが一撃で「即死」するでしょう。 榴散弾フレチェット弾)のように 攻撃を繰り返し、少ないダメージを累積させる必要はありません。

 榴散弾フレチェット弾)を用いた 「直接照準射撃」と同じように、その火力は小口径砲を数多く用意した方が、コスト面、運用面で大きく有利です。
 しかし、大口径砲は射程が長く、場合によっては一方的な攻撃が可能になること。
 榴弾は、口径によって基本ダメージが大きく変わること。
 以上の2点から「間接射撃」には、大口径砲が有利だと判明しました。

 重い大型砲を輸送し、手間の掛かる射撃準備を行なって、必要な砲弾を大量に届けるなど、その運用は大変ですが、 自分(味方)が被害を受けず、一方的に敵を殲滅できるという点はとても魅力的です。



 その一方、「間接射撃」の問題点としては、消費される弾薬の多さが挙げられます。
 1マスの目標を撃破するため、優秀な兵士に扱わせても最低5発、 平均的な兵士ならば最大140発もの射撃が必要になることが分かりました。
 扱う兵士の技量によって、その消費弾数は大きく異なる訳ですが、兵站面への負担が心配です。
 射撃時間も大きく掛かりますから、短時間で目標を制圧したかったら、多数の砲を集中して運用する(集中射撃を行なう)か、 MRLのような多連装兵器を用いなければならないでしょう。
 しかし、大量の砲弾を消費するこれらの砲撃も、敵が頑丈な退避壕内に隠れていれば役に立ちません。 榴弾による間接射撃は確かに強力なのですが、決して、万能でも無敵でもないようです。

 あるいは、砲撃だけによる目標の撃破を諦めるべきなのかも知れません。
 第一次〜第二次世界大戦の各国が行なっていたように、弾幕射撃で敵兵を制圧しておき、 敵兵が退避壕へ隠れている隙に、味方歩兵を前進させるのです。
 退避壕に隠れている敵歩兵は、弾幕射撃が止んだと同時に、退避壕の入り口から手榴弾を投げ込まれたり、 あるいは退避壕内に突入してきた敵兵から短機関銃(SMG)で掃射されたりと、悲惨な羽目に遭うことでしょう。



 目標(敵歩兵)の装甲値によって、榴弾射撃の有効性は大きく変化します。
 テックレベル8の「フラック・ジャケット(装甲値3)」では、まだ足りませんが、 テックレベル10の「極地対応戦闘スーツ(装甲値6)」になると、榴弾射撃の有効範囲を大きく狭めることができました。
 テックレベル13の「戦闘アーマー(装甲値10)」に至っては、 命中マスと同じマス内に居る目標だけにしか、効果的な命中判定(=「完全貫通」)を行なうことができません。
 もちろん命中判定が「無貫通」であっても、 多数の命中判定を行なうことでダメージを蓄積させ、最終的には無力化することは可能です。 しかし、塹壕などの遮蔽物に隠れた目標を撃破することは、とても難しくなりました。
 ですから、テックレベル10の歩兵、あるいはテックレベル13以上の歩兵を撃破するための方策(支援火器)が、何か存在する筈です。 後の考察では、それら兵器の捜索と運用方法の発見も重要な課題になるでしょう。



2011.03.06 初投稿。
2011.12.08 致傷範囲の修正