The Best Weapon
55th stage (Air Force 3)
Ornithopter
and Hovercraft

最強兵器 決定戦
第55回(空軍3)
羽ばたき機と
ホバークラフト
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MEGA TRAVELLER
 


 

ホバークラフト斜面走れない


 今回も航空機(飛行型輸送機器)の移動に関する考察と ハウス・ルールの作成がメインです。
 考察対象は羽ばたき機(Ornithopter)ホバークラフト(Hovercraft)の2つにしました。



 羽ばたき機とは、映画「天空の城ラピュタ」に登場した「フラップター」のように、 その翼を羽ばたかせることで揚力と推進力を得て飛行する航空機のことです。
 「ハード・タイムズ、p.68」の中で少しだけ触れられているものの、公式ルールが全く存在しません。
 このタイプの航空機は「COACC:低軌道及び大気圏内における軍隊」にも関連情報がありませんでした。
 作りたいのであれば、ハウス・ルールを作る必要がある訳です。
 羽ばたき式航空機という代物自体が漢の浪漫をそそりますし、 何よりも面白そうですから、ハウス・ルールを作ってみることにしましょう。



 ホバークラフトは、メガトラの輸送機器設計ルールにおいて、 滑空式移動を行う輸送機器の中に含まれています。
 その滑空式移動自体は 反重力型エア・クッション型の2つに分類され、 反重力型で移動を行うのは反重力型輸送機器エア・クッション型で移動を行うのはホバークラフト、となっていました。
 一応、設計のための公式ルールが存在するものの、 飛行型輸送機器の中に含めて良いものか、その判断が難しい特殊な輸送機器です。

 ホバークラフトの設計ルールは反重力型輸送機器と酷似しているのですが、 いつでも地表すれすれしか飛行しないため地表速度を持たないこと、 最高速度が反重力型の最高速度×0.25になっていること、などが異なります。
 厳密に言えばホバークラフト航空機(飛行型輸送機器)と呼べません。
 しかし航空機(飛行型輸送機器)に類似しているところも多いので、 折角ですからホバークラフトの移動ルールについても考察しておきます。



 今回は、羽ばたき式航空機を設計するためのハウス・ルールを作成しました。
 更に、ホバークラフトの移動能力を考察します。





羽ばたき機(Ornithopter)の移動能力


 羽ばたき機(Ornithopter)についてメガトラの公式ルールの中で触れられているのは、 「ハード・タイムズ、p.68」の中に見つかった1行だけでした。

> 低重力で気圧が高い星のための、1人用羽ばたき機(オーニソプター)。

 たったこれだけの記述ですが、トラベラー世界に羽ばたき機が存在するという事実が明らかになりました。 これを拠り所にして羽ばたき機を設計するためのハウス・ルールを作っていきましょう。
 羽ばたき機の設計は、メガトラの輸送機器設計ルールに準拠することとします。
 以下に述べるハウス・ルール以外のルールに関しては、 「レフリーズ・マニュアル」の該当部分を参考にして下さい。




(1)羽ばたき機の揚力

 羽ばたき機は、その翼を上下に羽ばたかせる(Flapping)ことで、 前進するための推進力と自身を持ち上げるための揚力を得ます。

 この翼の名前を「羽ばたき翼(Flapping-wing)」と呼ぶことにしました。
 メガトラの輸送機器設計ルールにおいて、この羽ばたき翼は、 滑空式移動サスペンションとして扱われます。
 羽ばたき機を設計するのであれば、 「レフリーズ・マニュアル、p.66、6.滑空式移動サスペンション」の代わりに、 以下の表に示す羽ばたき翼を使用して下さい。



 まずは構造が単純な、その代りにエネルギー効率が低い、虫型羽ばたき翼から。
 羽ばたき翼の性能諸元は、以下のように定めました。

> このタイプの羽ばたき翼はテックレベル=10から利用可能です。
> 揚力の大きさは任意に設定して下さい。
> 但し、その最小値は10kg、最大値が500kgとなります。
> 必要な消費電力は、揚力(kg)の二乗に、0.001kwを掛けて求めます。
> 重量は、揚力100kg当たり12kg。
> 価格は、揚力100kg当たり1,200crです。


 表1に、虫型羽ばたき翼のサンプルを示しました。


            表1 羽ばたき翼(虫型)のデータ

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 表の左端は、このタイプの羽ばたき翼を初めて利用できるようになるテックレベルです。

 その右が、羽ばたき翼のタイプと発生する揚力の大きさ
 上記に示した羽ばたき翼のタイプ=虫型は、 昆虫などに良く見られる硬質の羽ばたき翼を示しています。
 構造が単純であるため低いテックレベルでも利用できますが、構造が単純であるが故に、推力方向の変更をピッチ調整でしか行えないこと、 駆動部分を翼の根本にしか設置できないことなどから、エネルギー効率が悪くなってしまいます。大型化には向きません。
 その反対に小型化した羽ばたき翼はエネルギー効率が高く、 状況によっては反重力型サスペンションよりも優れた性能を発揮できるでしょう。

 その次には、その羽ばたき翼に必要な出力(Kw)羽ばたき翼自身の重量(kg)価格(Kcr)を並べています。



 次は構造が複雑になりますが、エネルギー効率の高い鳥型羽ばたき翼です。
 羽ばたき翼の性能諸元は、以下のようにしました。

> このタイプの羽ばたき翼はテックレベル=13から利用可能。
> 揚力の大きさは任意ですが、最小値は5kg、最大値は2,000kgになりました。
> 必要な消費電力は、揚力(kg)の二乗に、0.0003kwを掛けて求めます。
> 重量は、揚力100kg当たり3kg。
> 価格は、揚力100kg当たり150crです。



            表2 羽ばたき翼(鳥型)のデータ

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 今回も表の左端は、このタイプの羽ばたき翼を初めて利用できるようになるテックレベル。

 その次は羽ばたき翼のタイプと発生する揚力の大きさ
 表1に示した上記に示した翅型とは異なって、 羽ばたき翼のタイプ=鳥型は鳥類に見られるような、 柔らかい可変型の羽ばたき翼となっています。
 その翼面積はもちろんのこと、翼の断面形状も自在に変えられますから、空気の流れを効率良く利用できるようになりました。

 表の右側は、その羽ばたき翼に必要な出力(Kw)羽ばたき翼自身の重量(kg)価格(Kcr)です。



 羽ばたき翼は、その特殊な構造から、 小さないサイズ(小さな揚力)ほどエネルギー効率が良いという特性を持ちます。
 そのため、小さなサイズ(小さな揚力)の羽ばたき翼に必要な出力(Kw)が、 揚力の大きさに比べて極めて小さな値になってしまいました。
 ですから大きなサイズ(大きな揚力)の羽ばたき翼を1つだけ装備するよりも、 小さなサイズ(小さな揚力)の羽ばたき翼を複数装備した方が、 より高い性能を得られることは明らかです。
 しかしながら一般的な飛行型輸送機器とは異なり、 羽ばたき機は上記の羽ばたき翼を1つだけしか装備できません。
 これは、その羽ばたき翼が大きく羽ばたくことで揚力を得るため、 複数の羽ばたき翼を装備した場合は、それらが干渉(衝突)してしまうためです。
 必然的に羽ばたき機の大きさは一部の特殊な例外を除き、 虫型の場合で重量500kg以下、鳥型でも重量2トン以下に 制限されてしまう訳ですが、これは仕方のないことでしょう。




(2)羽ばたき機の離陸速度と最高速度

 羽ばたき機の最高速度は、反重力型輸送機器と同じように、 駆動推力を用いて決定します。
 「COACC」で利用されていた加速率(G rate)は用いません。
 羽ばたき機に搭載される羽ばたき翼は、 前進するための推進力と自身を持ち上げるための揚力を、それ単体で発生させるためです。
 推力と揚力(浮力)が別箇に発生し、 推力と自重の比率だけで加速率を求める「COACC」の考え方は、 羽ばたき機に相応しくありません。

 羽ばたき機駆動推力は、 「レフリーズ・マニュアル、p.90」の公式をそのまま流用します。

> 駆動推力 = ( 総推力 ÷ 全備重量 )−1

 総推力は、羽ばたき翼の発生する揚力。
 全備重量は、羽ばたき機の総重量を表しています。



 上記の駆動推力は、 反重力型輸送機器回転翼機と同じように、 羽ばたき機の自重を羽ばたき翼の発生する揚力だけで賄うことを前提としています。
 ですから、羽ばたき翼の発生する揚力よりも自重が大きい羽ばたき機は 飛行することができません。

 低速で木々の間を飛び回る小鳥や昆虫のような羽ばたき機を再現するだけならばそれでも構いませんが、 猛禽類や渡り鳥のように高速で飛行する羽ばたき機を再現するにはちょっと物足りないでしょう。

 羽ばたき翼は、前進するための推進力と自身を持ち上げるための揚力を、同時に発生させます。

 その特性を再現するため、羽ばたき翼については、 特定の速度を超えると発生する揚力が5割増えるというルールを作りました。
 その速度を離陸速度と呼びますが、 離陸速度の大きさは以下の表に示した通りで、 羽ばたき翼のサイズ(発生する揚力の大きさ)によって異なります。


             表3 羽ばたき翼の離陸速度

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 表の左端は羽ばたき翼が発生する揚力の大きさ。

 その右側の数値が離陸速度です。
 羽ばたき機の飛行速度が示されている離陸速度に達した時点で、 揚力が5割増えるというルールを考案しました。 しかしながら試算の結果、その計算が実に面倒だと判明したので、ほぼ同じ内容の 駆動推力+0.50増えるルールへ変更しています。

 次章のグライダーに関する「ハウス・ルール」で後述しますが、 この離陸速度羽ばたき機が滑空する際の最低速度 =それを下回ると失速する速度、としても利用できるようにしました。
 最高速度の上限については、機体形状による制限、 非流線形は300km/h、流線形は1,000km/hというルール通りです。

 右端の数値は、離陸速度による揚力の増加(駆動推力の増加)を前提として求めた、 羽ばたき機の飛行に最低限必要な駆動推力です。



 離陸速度と揚力の増加(駆動推力の増加)のルールを作ったため、 駆動推力が0.01を下回る羽ばたき機であっても、 助走を付ける(滑走する)とか、補助的な推力装置を取り付けるといった手法で、飛行できるようになりました。
 念頭にイメージしている情景はアホウドリの助走ですが、何となく、リアルな鳥っぽくなるのではないでしょうか。

 具体的な数値を挙げると、揚力=2,000kgの羽ばたき翼を装備している羽ばたき機に 最低限必要な駆動推力は−0.25ですが、 離陸速度の75km/hを超えれば+0.50の修正を受けて+0.25となります。 最高速度75km/hで飛行できる訳ですね。
 駆動推力の−0.25を加速率に直せば0.75です。 揚力=2,000kgを0.75で割れば2,666kgでした。ですから機体重量2,666kg(揚力の1.33倍)までは飛行できるようになります。
 揚力=50kgの羽ばたき翼を装備している場合、 最低限必要な駆動推力は−0.40ですから、機体重量83.3kg(揚力の1.66倍)まで飛行可能。

 助走(滑走)についての具体的なイメージは持っていません。
 着陸脚の部分に車輪が必要になることはもちろんですが、それらの重量は機体に含まれていると考えても良いでしょう。
 拘るのであれば、車輪等搭載して下さい。変速機無しの車輪だけならば機体の1%の容積を割けば済むので、 それほど大きな負担にはならないでしょう(レフリーズ・マニュアル、p.67、車輪の項を参照。 キャタピラや脚でも構いません)。
 助走(滑走)に必要な時間と距離については、加減速の項で後述します。
 その際は、揚力で機体を支える必要がないため駆動推力ではなく、 加速率を用いることに注意して下さい。



 最初に計算した駆動推力が0.01以上になっているのであれば、 無理に離陸速度のルールを用いる必要はありません。
 その羽ばたき機離陸速度以下の低速でも問題なく飛行することができますし、 必要ならば垂直離着陸やホバリングを行うことも可能なのです。

 一定レベル以上の高速を出すのであれば、 羽ばたき機の飛行パターンは、固定翼機のそれに類似します。
 その一方、低速飛行や空中静止(ホバリング)状態における飛行パターンは、回転翼機と同等です。
 ですから羽ばたき機は、 固定翼機回転翼機の長所と短所、 その双方を合わせて持っていると言えるでしょう。



 上記で決定した駆動推力から、羽ばたき機の最高速度を求めます。
 羽ばたき機の場合も、「レフリーズ・マニュアル」の最高速度表を利用して下さい。
 但し、通常のルールとは若干異なる点があります。


            表4 羽ばたき翼の最高速度

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 表の左端は駆動推力
 その右側が飛行型輸送機器の最高速度です。

 更に右側が羽ばたき機の最高速度。
 羽ばたき機の最高速度は、エア・クッション型と同じように、

> 反重力型の最高速度×0.25を最高速度

 とすることにしました。
 そして、その最高速度の0.75倍が巡航速度です。

 この理由は説明がちょっと難しいのです。
 簡潔に述べるならば、往復運動によって推力と揚力を得る羽ばたき翼は、 飛行速度が大きくなる(早く飛ぶ)ほど推力を得ることが難しくなるためであり、それを再現しようとした結果がこうなりました。
 私も流体力学を基礎しか学んでいないので、詳しい説明はできません。
 こういうハウス・ルールなのだと納得して下さい。

 簡単に調べた結果ですが、鳥類の最高速度はグンカンドリが400km/h、鷲や鷹などの猛禽類で250km/h、アホウドリが160km/hでした。
 もっと身近な鳥だと、ツバメが200km/h、伝書鳩が160km/h、白鳥が90km/h、雀が55km/hというところ。
 この数字は瞬間的な最高速度ですから、巡航速度は4分の3(=75%)から半分ぐらいになります。
 大凡、妥当な数字なのではないでしょうか?

 余談ですが、プテラノドン(翼竜)の最高速度は50km/h、巡航速度は30km/hだそうです。
 どうやって計算したのか非常に興味をそそられますが、思ったほど早くないことが分かりました。




(3)羽ばたき機の加減速

 羽ばたき機の加減速能力は、同じ駆動推力から得られる最高速度が、 他の飛行型輸送機器(航空機)と比べて4分の1(=25%)に抑えられているため、相対的に大きくなりました。

 具体的には、以下の通り。
 これまで(53回、54回)の考察と同じように、 駆動推力から速度の変化量を求めてみました。


             表5 羽ばたき翼の加減速

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 表の左端が駆動推力
 その右側に並ぶ数字が速度の変化量です。

 更に、駆動推力から決まる最高速度と、 その最高速度に達するまでに必要な時間(単位は戦闘ラウンド)も示しておきました。



 駆動推力=0.01Gの7.1ラウンドと駆動推力=0.05Gの1.9ラウンドを除けば、 他の全ての駆動推力において、最高速度に達するまでに必要な時間は1.4ラウンドです。
 静止状態から一気に最高速度まで加速するような状況でない限り、 羽ばたき機の飛行速度は任意に変更できると見なしても構わないでしょう。

 正確さに拘るのであれば、羽ばたき機の飛行速度は、1戦闘ラウンド当たり、 最高速度の7割まで自由に変更できる、ということにして下さい。
 例えば、最高速度=75km/hの羽ばたき機は、 1戦闘ラウンド当たり55km/hの速度変更が可能ということです。
 離陸速度の75km/hに達するためには、2戦闘ラウンド(1.4戦闘ラウンドを切り上げ)の助走が必要だと判明しました。
 最高速度=105km/h(修正後の駆動推力が0.35)の羽ばたき機であれば、 1戦闘ラウンドの加速で離陸速度を得られるため、より機敏な動きが可能になるでしょう。




(4)羽ばたき機の旋回能力

 羽ばたき機の旋回能力は固定翼機と同じように、 旋回推力=4.0Gを想定して、その旋回能力を求めます。

 考察の53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」の表13を再掲載しました。


        表6 飛行型輸送機器の旋回に必要な最小直進距離
             (旋回推力=4.0G、15mマス)

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 表の左端は羽ばたき機の飛行速度と移動ポイント。
 スケールには15mマスを用いました。

 その右側が旋回半径(m)と、15mマスで示した最小直進距離
 最小直進距離は 45度の旋回を行う前に最低限、どれだけの距離を直進しなければならないか、ということを表した距離ですが、 この距離を2倍した数値は、45度の旋回を行うために必要な機動ポイントも表しています。
 そして、この数値が0.50であれば1戦闘ラウンドにできる旋回は2回(合計90度)、 数値が2.00ならば2戦闘ラウンドを掛けて1回の旋回しかできない、ということになります。

 右端の数値は旋回に必要な戦闘ラウンド数



 羽ばたき機固定翼機と同じように翼で大きな揚力を発生させ、 その揚力を旋回推力として利用することが可能です。
 羽ばたき機に搭載された羽ばたき翼は、 低速飛行時にも高い効率で揚力を発生することができますから、低速時の旋回性能は高いと考えました。
 その理由は羽ばたき翼の構造そのものにあります。
 羽ばたき翼は翼のピッチや断面形状を自由に変更できますから、 その飛行速度に最適なピッチや断面形状を得ることが可能。
 高速飛行(空気抵抗の低減)を最優先にデザインされた固定翼機には決して真似できません。

 そんな背景もあって、羽ばたき機旋回推力は 静止寸前の低速であっても4.0Gを確保することとしました。
 固定翼機の最低速度に相当する離陸速度も、 固定翼機ならば失速確定の超低速に設定しています。
 最高速度やエネルギー効率の面で不利なのですから、このぐらいの優位があっても然るべきでしょう。
 低速での旋回性能は、固定翼機が失速するような低速でも旋回が可能ですから、より優秀だと言えます。




(5)羽ばたき機の上昇/降下能力

 羽ばたき機の上昇/降下能力に関するハウス・ルールです。

 上昇/降下能力(高度変更)について、羽ばたき機は基本的に 固定翼機と同じルールを用いることにしました。
 羽ばたき機は垂直上昇/降下が苦手です。
 通常の飛行状態、離陸速度以上の速度で飛行している羽ばたき機は、 その駆動推力の大きさによって、高度変更に固定翼機と同様の制限を受けます。


 具体的な制限については以下の通り。
 考察の53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」の表18を再掲載しました。


      表7 飛行型輸送機器の上昇/降下能力制限(15mマス)

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 表の左端は羽ばたき機の飛行速度と移動ポイントです。
 スケールは15mマス
 飛行速度は10km/hから300km/hの範囲。

 横軸は、その羽ばたき機駆動推力
 0.1Gと0.25G、0.50G、1.0Gの4段階に分かれていますが、それぞれの駆動推力毎に、 その飛行型輸送機器が持っている移動ポイントの何パーセントを垂直移動に使えるか、 ということを示しています。
 1.0Gを超える駆動推力を持った羽ばたき機は、 制限なしで自由に垂直移動や垂直降下を行えることにしました。



 但し、低速で飛行している場合(離陸速度以下の速度で飛行している場合)、 羽ばたき機羽ばたき翼が産み出す揚力だけで自重を支えている訳であり、 そこに飛行速度によって発生する揚力は影響していません。
 ですから、羽ばたき機の挙動は回転翼機と同等であると見なします。
 低速で飛行している羽ばたき機の上昇/降下能力は、 回転翼機と同様の制限を受けることにしましょう。

 回転翼機が垂直移動に使える移動ポイントは、その飛行速度に関係なく5ポイントまで、です。

 揚力が最も大きい羽ばたき翼でも離陸速度が75km/hですから、 その移動ポイントは最大でも7ポイント。その内5ポイントを上昇/降下に使える訳です。
 離陸速度以下で飛行しているのであれば、上昇/降下に課せられる制限は無いと言っても構わないでしょう。




(6)羽ばたき機の優位

 正直なところを言ってしまうと、 飛行型輸送機器の移動システムとして羽ばたき翼を選択する利点は ほとんどありませんでした。

 発生する揚力は500キログラムから2トンが最大であるため、機体の大型化や重量物の輸送は不可能。
 エネルギー(電力)を揚力に変換する効率も悪く、省エネにはなりません。
 飛行速度(最大速度)は反重力型の最高速度×0.25を最高速度とする縛りがあるため、明らかに不利。
 旋回性能や上昇/降下性能は固定翼機回転翼機と同じ制限を課せられているため、 優位としては数えられません。

 つまり、羽ばたき機は特殊な用途でしか使われない、という結論が出てきました。
 そもそも選択する利点が多くあれば、ここまで羽ばたき機が廃れることもなかったでしょう。
 選択する利点がないから羽ばたき機は特殊な用途でしか使われず、廃れてしまったことは明らかですが。

 そうしたことを前提として、私は使えない羽ばたき翼をデザインしました。
 このハウス・ルール羽ばたき翼の欠点ばかりが目立つのは、意図的な結果です。



 余談ですが、トラベラー世界に羽ばたき機を登場させるため、 輸送機器設計ルールに羽ばたき翼を組み込むため、色々と無茶なこじつけをしてしまいました。
 粗が目立つとは思いますが、真面目な反論は御遠慮ください。
 これはあくまでゲームのためのハウス・ルールなのですから。

 特に流体力学や航空工学を勉強している方、黙認をお願いします。





滑空移動とグライダー(Glider)


 掲示板で教えて頂いた羽ばたき機のメリットのひとつとして、

> 翼を固定してグライダーのように滑空することも
> あるようなので(燃料の節約ができる)


 という話がありました。
 確かに、有り得そうな話です。
 早速、滑空のメリットについて考察しようと思ったのですが、 いつも参考にしている「COACC」の移動ルールの中に、 グライダーにも適用可能な滑空ルールは存在しませんでした。

 一応、固定翼機の移動ルールには、

> By gliding, aircraft may reduce power to idle
>  and descend 1/2 flight level per combat round
>  as well as decelerate one square per combat round.
>
> 滑空することによって、航空機は(エンジン)出力を絞り、
> 1戦闘ラウンド当たりで2分の1高度レベルを下げ、
> 1戦闘ラウンド当たり1マスの速度を落とすことができます。


 というルールが存在しているのですが上記の通り、滑空している戦闘ラウンド毎に 250km/h相当の速度を失っていくので、すぐに失速して墜落してしまいます。
 滑空専門のグライダーには使えません。
 何とかしてハウス・ルールを作らなければ、滑空を評価する事すらできないのです。




(1)牽引式のグライダー

 空気より重いけれど、動力を持たない飛行型輸送機器
 それがグライダーです。

 動力を持ちませんから、離陸の際には地上に設置されたウインチや地上車輌が必要ですが、 高所から重力を利用して(傾斜面を滑り降りることで)初速を得るという方法も有り得ます。
 離陸した後は、手ごろな上昇気流を見つけて滑翔する(高度を得る)ことになるでしょう。
 一度飛び上がってしまえば、後は自然エネルギー(風)を利用するだけで何処まででも飛べますが、 パイロットには少なからぬ技量が必要となり、都合の良い気象条件が欠かせません。

 あるいは、動力付きの固定翼機に牽引されて飛行することも考えられます。
 その場合、牽引用の固定翼機が不可欠となりますが、離陸用の設備(ウインチや車輌、傾斜面)は不要。
 滑翔するために上昇気流を探す必要もなくなります。
 飛行速度は遅くなりますが、通常の固定翼機とほぼ同様の運用が可能になりました。
 思うがまま、行きたい場所へ行けるのです。

 トラベラー世界にグライダーが登場するとすれば、 それは必然的に牽引式のグライダーという形になるでしょう。
 両者は牽引装置(ケーブル)で連結されることになります。



 グライダー固定翼機で牽引する場合、 その飛行速度(最大速度)は従来通り、加速率(G rate)を使います。

> 加速率 = 総推力 ÷ 全備重量 × 0.85

 但し、総推力は牽引する固定翼機のエンジン推力、 全備重量は牽引する固定翼機グライダーの重量を合計したもの、となりました。
 最後の修正値0.85は、機体形状から決まる推力効率(efficiency)です。 グライダーは単純(Simple)機体しか選べないことにしたので、一律に0.85となります。 面倒ならば、この修正値は無視しても構いません。

 上記の公式で求めた加速率から、 グライダーの最高速度表を用いて、その最高速度を求めます。


            表8 グライダーの最高速度表

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 表の左端が加速率
 その右側が、グライダー牽引する固定翼機最高速度
 当然ながら、両者の飛行速度は同じですが、その最高速度はグライダーの機体形状である単純機体(Simple)、 メガトラの輸送機器設計ルールでは非流線形、によって制限を受け、300km/h以下となりました。
 最低速度は特別に75km/hという設定にしてあります。 グライダーの飛行速度がこの最低速度に達していない場合、 そのグライダー失速/墜落してしまいますので御注意下さい。

 加速率=0.01〜0.09の欄も追加しましたが、あまり使えそうにありません。
 牽引時の加速率が0.15に満たない場合は飛行速度が最低速度を満足せず、 グライダー牽引する固定翼機も、 失速してしまうからです。

 両者がSTOL型の非流線形(=単純機体、Simple)であれば最低速度=75km/hとなりますので、 加速率は0.04以上あれば飛行可能ですが、それに実用性があるかどうかは分かりません。



 グライダーを牽引する飛行型輸送機器反重力型である場合も、加速率を用いて最高速度を求めますが、 その際は予め、反重力型輸送機器総推力から 反重力型輸送機器の自重(1G分)を引いておいて下さい。
 残りの推力が、加速率を計算する際の総推力となります。
 反重力型輸送機器最低速度は存在しませんので、 グライダーの運用は少しだけ楽になるでしょう。
 エアラフトGキャリアーのような反重力型輸送機器で、 グライダーを牽引するような状況が発生するかどうかはともかく。



 ここで、機体形状について「MT版輸送機器設計ルール」と 「COACC」の相違点を再確認しておきましょう。
 考察の53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」の表4を再掲載しました。


            表9 航空機の機体形状と最低速度

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 機体形状と最低速度の表を「ハード・タイムズ、p.85」から抜粋しました。
 日本語版(HJ版)の表は「COACC」が未訳だから不要だと判断されたのか、 多くの情報が省略されて(欠落して)います。
 それを補填し、「COACC」で定義されている機体形状も追加したところ、上の表のようになりました。

 繰り返すとくどくなりますので、表の説明については考察の53回を御覧下さい。



 色々と考えた結果ですが、メガトラの輸送機器設計ルールでグライダーを作成する場合、 その形状は非流線形であることにしました。
 実際のところ、その外形は空気抵抗の少ない形にデザインされているのでしょうが、ルール上は 最高速度=300km/h、最低速度=75km/hSTOL型非流線形として扱われる、 ということです。

 乱暴な言い方ですが、航空機の翼という代物は、 空気抵抗(抗力)を上方向への力(揚力)に変換する装置、に過ぎません。
 変換効率の高い翼(グライダー等で用いられる、揚抗比の高い翼)は、薄く、細長い形状をしています。 その形状故、遅い飛行速度でも十分な揚力を得ることが可能ですが、早い飛行速度には耐えられません。 強度が低いため、大きな空気抵抗を受けると翼が折れてしまうためです。
 早い飛行速度に耐えられる翼(超音速機のような翼)は、上記と反対で厚く、太く短い形状をしています。 早い飛行速度=大きな空気抵抗に耐えるため、必要な強度を得るため、こうした構造となる訳ですが、 この形状は必然的に揚抗比の低い翼となってしまいます。
 そうした翼は十分な揚力を得るためには早い飛行速度が不可欠であり、遅い飛行速度では失速してしまう、ということになりました。
 こうした航空機の翼の特徴を再現したルールが「ハード・タイムズ、p.85」の表なのでしょう。



 非流線形の機体は、最高速度として300km/hが上限であり、 滞空するためには最低速度として150km/h以上の飛行速度が必要となっています。
 STOL型機体であれば最低速度を75km/hまで半減させることが可能。
 当然ながら「ハード・タイムズ」に記載されている通り、 これは「前反重力の駆動システムを用いた輸送機器」だけに限定して適用されるルールなのでしょう。
 ルール上は同じ非流線形であっても、 P型海賊船エアラフトが揚力を得て滞空できる訳ではありません。 これらの輸送機器はきちんと1G分の推力(通常ドライブや反重力)を用い、自重を支えなければならないのです。
 メガトラの輸送機器設計ルールで羽ばたき機グライダーを作成する場合、 その形状は必ず非流線形として下さい。一部の低速な固定翼機も同様。
 その際に用いる修正値やデメリットは後述します。



 流線形の機体は、 最高速度が800km/h(ルールの解釈によっては1,000km/hか1,100km/h)に制限され、 滞空に必要な最低速度は175km/hとなっていました。
 一般的な航空機(固定翼機)をメガトラの輸送機器設計ルールで作成する場合、 その形状は流線形になることでしょう。
 「ハード・タイムズ、p.83」の記述によれば、 航空宇宙船(Lift-Assisted Launch Vehicles)として作成することも可能であり、 大気圏内では固定翼機として飛行した後、宇宙船として軌道上へ上がることができます。 但し残念ながら、大気圏への再突入はできません。
 流線形を用いる際の修正値やデメリットも後述。



 完全流線形の機体は、 最高速度が5,000km/h(音速の4倍)までで、 滞空に必要な最低速度は350km/hです。
 宇宙船の船殻形状に完全流線形を選んだのであれば、メガトラの輸送機器設計ルールより、 最高速度は無制限と考えるべきかも知れません。
 大気圏への再突入ができる唯一の形状が完全流線形です。 スペースシャトルのような形をイメージして下さい。
 再突入の高温と高圧に耐えるため、外形は空気抵抗の少ない形にデザインされ、その表面は頑丈です。
 翼も小さなものしか取り付けられないため、どうしても揚抗比は小さくなってしまいますが仕方ありません。
 完全流線形を用いる際の修正値やデメリットも後述しました。

 残念ながら、メガトラの輸送機器設計ルールで 超音速戦闘機のような固定翼機を作ることはできません。
 メガトラの輸送機器設計ルールにはこれまで述べた3種類の機体形状しか存在しませんので、 そうした固定翼機を作りたい場合は 「COACC」の超音速(Supersonic)機体を用いるべきでしょう。



 ようやくここからが本題ですが、 私のハウス・ルールにおいてグライダーを作成する場合、 その形状は非流線形に限定されています。
 その最高速度は300km/hですから、 グライダーの飛行速度は300km/hを超えることが出来ません。
 それ以上の速度で無理に牽引しようとするならば、まず安全のため牽引装置が壊れます(ケーブルが外れます)。
 牽引装置を補強して壊れないようにしたのであれば、 飛行速度300km/hを超えた時点でグライダーが空中分解するでしょう。
 そうした事故を防ぐためにも最高速度は厳守して頂きたいものです。

 グライダー牽引する固定翼機の機体形状が 非流線形であるならば、何の問題も生じません。
 牽引する固定翼機最低速度も150km/hですから、 グライダーと同時に離陸することができますし、 最高速度も同じ300km/hです。
 ちなみに、グライダー牽引する固定翼機の両者が150km/h以上で飛行するためには、 両者を連結した状態での加速率が0.15以上必要です。
 仮に固定翼機単独の最高速度が300km/h、 =単独の加速率が0.25であるならば、 グライダーの重量は、固定翼機の重量の66%以下でなければなりません。

 グライダー牽引する固定翼機の機体形状が 流線形である場合、 固定翼機は慎重に、その飛行速度を300km/h以下へ保たなければなりません。
 流線形の最低速度は175km/hですから、 両者を連結した状態での加速率が0.15以上、0.25以下であれば問題なく飛行できます。
 仮に固定翼機単独の最高速度が720km/h、 =単独の加速率が0.60であるならば、 グライダーの重量は、固定翼機の重量の3倍まで牽引可能だと分かりました。
 飛行速度は720km/hから180km/hまで激減してしまいましたが、 グライダー利用による輸送重量の増加は、非常に大きなメリットだと言えそうです。

 グライダー牽引する固定翼機の機体形状が 完全流線形である場合、 固定翼機は飛行速度を300km/h以下へ落とすことができません。 最低速度を下回り、失速してしまうからです。
 STOL型機体であれば最低速度が175km/hまで下がるので、 流線形と同じように牽引することが可能になるでしょう。



 大きな負荷を掛けると安全装置が作動して、牽引装置は簡単に壊れてしまいます。
 そうした事態を防ぐため、グライダー牽引する固定翼機の移動は 大きな制限を受けることとなりました。
 前述した通り、最高速度は300km/hです。
 グライダー牽引する固定翼機も、その速度制限を厳守してください。

 加減速については、あまり心配しなくても構いませんが、減速については1戦闘ラウンド当たり100km/hの減速を上限とします。
 加速については、上記で求めた加速率から実際の加速を求めて下さい。

 旋回については、緩い旋回最小直進距離が通常の2倍)しか行えないものとします。 また、牽引されるグライダーは正確に 牽引する固定翼機の移動経路をなぞって下さい。

 高度変更については、加速率=0.25Gの制限、 移動ポイントの33%までしか高度変更には使えない、に従うものとします。




(2)滑空式のグライダー

 牽引する固定翼機から切り離されたグライダーや、 何らかの手段で離陸したグライダーは、動力なしでも滑空によって飛行することができます。
 その時点の速度に合わせて移動ポイントを計算し、直進や旋回を行って下さい。

 その際、グライダーが水平飛行を行うのであれば、 グライダーは毎戦闘ラウンド当たり50km/hの速度を失います。
 これは、15mマスのスケールを使っているのであれば5マス分の速度、 150mマスのスケールを使っているのであれば0.5マス分の速度を失うということです。 実際に0.5マス分の速度を表現することは難しいので、2戦闘ラウンド当たり1マス分の速度を失うということにして下さい。
 これは空気抵抗による速度の喪失を表しています。

 グライダー最低速度は75km/h。
 最高速度は300km/hですから、水平飛行を続けた場合は最大でも5戦闘ラウンド後、 グライダーの飛行速度は最低速度を下回り、失速/墜落してしまうでしょう。
 この事態を防ぐためにはどうすれば良いのか。
 機体を降下させて、高度(位置エネルギー)を速度(運動エネルギー)に変換すれば良いのです。



 現在の飛行速度を保つため、代償として支払う高度レベル数は以下の通り。
 グライダー固定翼機の持つ滑空比から、 必要な降下速度(毎戦闘ラウンド毎に失う高度レベル数)を求めました。
 滑空比とは、高度1kmから滑空を始めて、その機体が何km先まで滑空できるかを表した数値です。

 機体形状によって、滑空比は大きく変化します。
 滑空専用にデザインされたグライダーの滑空比は40、 低速向けの非流線形形状の航空機は滑空比=20、 一般的な流線形航空機は滑空比=10、 大気圏への再突入が可能な完全流線形航空機は滑空比=5であると考えました。
 揚力を増やして最低速度を半減できるSTOL機体の特典は、エンジンの稼働が前提だと思われるので滑空には影響しません。


         表10 滑空に必要な高度喪失(15mマス)

BW55_Fig10.gif - 10.6KB

 表の左端は滑空する航空機の飛行速度と移動ポイント。
 スケールは15mマスで求めました。
 喪失する高度レベルも1レベル=15mで示しています。

 喪失する高度レベルは、移動速度(移動ポイント)を滑空比で割った値に等しくなりました。
 端数は切り上げにしてあります。

 機体形状による滑空比の違いは上記の通りですが、 同じ飛行速度、例えば200km/hで滑空している航空機の挙動を比較してみましょう。

 もしも滑空専用のグライダーならば、1戦闘ラウンドに喪失する高度レベルは0.5だけです。 つまり2戦闘ラウンドに1レベル(=15m)しか高度を失いません。 高度300m(=高度レベル20)で切り離されたとしても、その高度をすべて失うまでには4分(=40戦闘ラウンド)の余裕があります。
 飛行速度200km/hで4分も飛行できるのですから、着地までに移動できる距離は12,000m(=800マス分)にもなります。
 滑空比の大きい機体は、お得ですね。

 非流線形形状の航空機は、200km/hの飛行速度で滑空する際、 毎戦闘ラウンドに1レベルの高度を失います。
 300mの高度を失うまでの時間は2分(=20戦闘ラウンド)ですから、移動可能な距離は半減して6,000m(=400マス分)になりました。

 流線形航空機は毎戦闘ラウンドに2レベルの高度を失います。
 300mの高度を失うまでの時間は1分(=10戦闘ラウンド)です。移動可能な距離は更に半減して3,000m(=200マス分)しかありません。

 完全流線形航空機は最低速度が350km/hです。 飛行速度200km/hでは失速してしまうため、その挙動を比較できません。



 スケールを150mマスに変えた場合、 現在の飛行速度を保つため、代償として支払う高度レベル数は以下のようになりました。


         表11 滑空に必要な高度喪失(150mマス)

BW55_Fig11.gif - 13.2KB

 表の左端は今回も滑空する航空機の飛行速度と移動ポイント。
 スケールは150mマスに変更しました。
 喪失する高度レベルも1レベル=150mに変わっていますが実質的な数字は変わっていません。 単位が変わっただけです。

 15mマスのスケールでは飛行速度が300km/hまでしか示されていないため 評価できなかった完全流線形航空機ですが、 飛行速度が400km/hになれば毎戦闘ラウンドの高度喪失が0.8レベル(=120m)で滑空できるようになりました。
 高度レベル300mは150mマスのスケールで高度レベル2に相当。
 完全流線形航空機は2戦闘ラウンド(=12秒)を滑空できますが、 3戦闘ラウンド目には地面に激突することになるでしょう(不時着できるかどうかは状況次第)。
 僅かに残された時間で滑空できる距離は、時速400km/h(=4マス)×2戦闘ラウンド=8マス(=1,200m)しかありません。

 完全流線形滑空比は、 スペースシャトルと比べて随分と大きな数字にしたつもりですが、 それでも完全流線形が滑空を行うことはかなり難しいことだと分かります。



 滑空移動中の最高速度は、その機体形状の最高速度となります。
 例え急降下中であっても機体形状の制限を超えることはできません。 最高速度を無理に超えようとするのであれば、機体の空中分解といったリスクを抱えることになるでしょう。

 加減速については、特殊なルールが適用されます。

 まず、水平飛行中の(グライダーを含めた)航空機は前述の通り、戦闘ラウンド毎に50km/hの速度を失います。
 この速度を補うためには、表10、表11へ示した分の高度を喪失し、運動エネルギーへと変換しなければなりません。 示された分の高度を失うのであれば、航空機はその時点での飛行速度を維持し、滑空を続けることが可能です。

 加速を望む場合、例えば飛行速度200km/hで滑空していた航空機が、 その飛行速度を300km/hに上げようとする場合は、より多くの高度を失う降下=急降下を行わなければなりません。 具体的には、滑空に必要な高度喪失を3倍に増やして下さい。
 急降下を行うことで、その航空機は飛行速度を50km/hだけ増速できます。 飛行速度を100km/h上げたいのであれば、急降下を2戦闘ラウンド行うことになりますが。
 3倍を超える急降下は意味がありませんので、御注意下さい。

 減速を望む場合は、エアブレーキ等を用いることで1戦闘ラウンド当たり50km/hの速度を落とすことができます。 水平飛行の速度喪失50km/hを合わせれば、合計で100km/hの減速になるでしょう。
 但し、表10、表11へ示した分の高度喪失を行っている場合は50km/hの速度を落とすことしかできません。 また、急降下を行っている場合の減速は不可能です(エアブレーキによって加速を打ち消しながらの急降下ならば、かろうじて可能)。

 旋回については牽引式のグライダーと同様です。
 緩い旋回最小直進距離が通常の2倍)しか行えません。

 滑空中の(グライダーを含む)航空機は、水平飛行か降下のどちらかしか選択できないことにしました。 高度を上げることは不可能なのです。
 降下に関しては、加速率=0.25Gの制限、 移動ポイントの33%までしか高度変更には使えないに従うものとします。
 ですから完全流線形航空機は、急降下による加速を行えません。




(3)羽ばたき機の滑空

 この部分は前項、(2)滑空式のグライダー、の補足ルールです。

 羽ばたき機の最低速度は、そのサイズ(重量、揚力の大きさ)によって異なりました。
 最小サイズ(揚力=20kg以下)に至っては、最低速度が20km/hという設定です。
 それらの羽ばたき機が動力なしの滑空を行う場合、水平飛行中に失う速度は50km/hより小さくなります。
 具体的には、以下の通り。

 飛行速度が 50km/h以下 戦闘ラウンド毎に 10km/h。
       51km/h〜100km/hの範囲   20km/h。
      101km/h〜150km/hの範囲  30km/h。
      151km/h〜200km/hの範囲  40km/h
      201km/h以上          50km/h。

 飛行速度が200km/hを超えている場合、通常通り、戦闘ラウンド毎に50km/hの速度を失うこととします。

 このルールはグライダーというよりも、 小型の羽ばたき機で滑空を再現するためのルール、として考えました。 最低速度が150km/h以上だと確定している固定翼機では、ほとんど使えないルールです。 最低速度が75km/hになるグライダーであれば、そこそこ使える状況が発生するでしょう。

 もし小型軽量のグライダー、ハングライダーのような特殊機体を再現したいのであれば、 表3に示した重量制限に基づいて、揚力と最低速度を適用して下さい。
 経てば、人間1人を持ち上げるだけのグライダーならば、その重量(と揚力)は101kg〜500kgの範囲に収まるでしょう。
 その場合、最低速度は60km/hで、失速寸前の飛行速度=60〜100km/hで失う速度は、戦闘ラウンド当たり20km/hとなります。
 あるいは、重量(と揚力)が20kg以下の小型羽ばたき機が滑空を行う場合、 その最低速度は30km/hですから、失速寸前の飛行速度=30〜50km/hならば、戦闘ラウンド当たり10km/hの速度しか失いません。
 それだけ長い時間の滑空が可能になる訳です。

 このルール、滑空に関してリアリティは増すのですが、飛行速度の計算が面倒になってプレイアビリティが低下します。
 御注意下さい。




(4)グライダーの着陸

 動力を持たないグライダーは、時間と共に高度を失っていきます。
 遅かれ早かれ、何処かへ着陸しなければなりません。
 そこで、グライダーが着陸を行うためのハウス・ルールを作成しました。

 ルール作成の参考にした公式ルールのひとつは、 「プレイヤーズ・マニュアル、p.72」に掲載されていたルールで、内容は以下の通り。

> 移動装置が無力化レベルに達したら、輸送機器は移動できなくなります。
> 移動装置を失った飛行中の輸送機器は、つぎの行為判定を行ってください。
>
>移動装置が無力化したとき、墜落して破壊されるのを防ぐには:
> 〈難〉、〈輸送機器〉、敏捷力、(致命的)
>
>レフリー:
> この行為は、飛行していた輸送機器が地面にぶつかる時点で行います。
>
> 移動装置を失ったあと、飛行していた輸送機器は、
> その時点での移動速度の半分で前進を続け、
> 毎秒10メートルの割合で降下していきます。


 これは主に反重力型輸送機器の墜落を想定したルールのようです。
 移動装置が無力化しても、その移動装置(反重力式サスペンション)は最小限の推力を保っており、 それをコントロールすることで辛うじて軟着陸を行える、ということなのでしょう。
 ちなみにパワープラントのダメージが無力化値を超えた場合、 移動装置への動力供給は絶たれ、行為判定を行うまでもなく墜落が確定します。 事故表で3Dのサイコロを振りなさい、と書いてありました。
 機体のダメージが無力化値を超えた場合は、飛行中の輸送機器に関する記述が見つかりません。 移動不能、行動不能になるのですから墜落の行為判定を行うべきだとは思いますが、確実な話ではないのです。
 レフリーの解釈によりますが、自動的に墜落が確定して事故表で3Dを振るか、 移動装置が無力化した場合と同じように行為判定のサイコロを振るか、そのどちらかになるでしょう。



 もうひとつ参考にした公式ルールは、「COACC、p.49」に掲載されていたもの。

>不時着を試みるために:
> 〈至難〉、〈航空機〉、敏捷力(致命的、危険)
>
>レフリー:
> 事故表でサイコロを振るのであれば、
> それぞれの乗組員毎にサイコロを振り、負傷レベルを決めてください。
>
> 事故が「重大」であるならば、乗組員は死亡します。
> 最初のサイコロが「重大」となったのであれば、すべての乗組員が死亡します。


 このルールは航空機機体に損傷を受けて、 そのダメージポイントの合計が機体の無力化値を超えた場合のルールです。
 ダメージポイントの合計が機体の無力化値を超えた場合、 乗組員は機体を捨てて脱出するか、不時着を試みるかを選択しなければなりません。 戦闘の継続や戦場からの離脱は不可能なのです。
 反重力型輸送機器の墜落にも適用したいところですが、 「COACC」のルールは航空機向けのものですから、 反重力型輸送機器にも適用できるかどうかは分かりません。



 上記の2つを比較してみたところ、どちらかといえば「COACC」のルールの方が、 グライダーの着陸に関してはふさわしいようです。
 この公式ルールの基本部分はそのままで、 難易度修正についてのハウス・ルールだけを追加することにしましょう。

 追加する難易度修正は以下の通り。

>不時着を試みるために:
> 〈至難〉、〈航空機〉、敏捷力(致命的、危険)
>
>レフリー:
> 機体の受けたダメージポイント合計が無力化値に達していなければ、
> 行為判定の難易度を1つ下げます。
>
> 安全な着陸地点を用意できるのであれば、
> 行為判定の難易度を1つ下げます。
>
> 空港のような着陸地点を用意できるのであれば、
> 行為判定の難易度を2つ下げます。
>
> 着陸を試みるのが夜間(暗闇)であれば、
> 行為判定の難易度を2つ上げます。
>
> グライダーのパイロットが暗視装置を使用していたり、
> 着陸地点が照明器具や照明弾で照らされているのであれば、
> 行為判定の難易度を1つ上げるだけで済みます。


 機体の受けたダメージポイントが無力化値に達していなければ、 そのグライダーは、より操縦が容易な筈です。
 飛行姿勢も安定している筈ですし、焦って不時着を急ぐ必要もありません。
 ですから、行為判定の難易度を1つ下げることにしました。
 難易度が〈至難:15+〉から〈難:11+〉に変わります。

 安全な着陸地点とは、起伏のない平原、刈り取りの終わった広い麦畑、などを指します。 周囲に背の高い建物が存在しないのであれば、長い直線状の道路や運動場なども含まれるでしょう。
 こうした地形を墜落の途中で探すことは困難ですが(パイロットは機体の安定を保つことで精一杯)、 空挺作戦のように事前の準備(調査)が行われている場合や、友軍の支配地域を飛行しているような場合は、 パイロットの手元に緊急時の不時着地点を記した地図が存在するかも知れません。
 もちろん、機体のダメージが少なく、即時の不時着を強いられているのでなければ、 パイロットは安全な着陸地点を自力で探し、そこへ不時着することも可能です。

 そうした安全な着陸地点が到達できる範囲内に存在するかどうか、パイロットが見つけられるかどうか、 難易度〈難〉の行為判定を行って下さい。
 DMはパイロットの持つ〈輸送機器〉技能と〈偵察〉技能のレベル数。
 高度150メートル以下を飛行しているのであれば、難易度が1つ上昇。 逆に高度1,500メートル以上を飛行しているのであれば、難易度が1つ下がります。
 高度が150メートルしかない場合、滑空比=40グライダーであっても、 わずか6km先まで移動することしかできません。 通常の固定翼機滑空比=10〜20)であれば、 滑空できる距離は1.5〜3kmです。安全な着陸地点を見つけてもそこまで滑空できないのであれば意味がないでしょう。
 反対に高度1,500メートル以上を飛行しているのであれば、前述した距離の10倍以上を滑空できますから、 より広い範囲から安全な着陸場所を探し出すことが出来る訳です。
 また、着陸を試みるのが夜間であれば難易度は2つ上がりますが、暗視装置や照明弾を使用していれば難易度は1つ上がるだけ済みます。
 険しい山岳地帯や密林地帯のように、どうしても安全な着陸地点が見つからない地形も存在します。 そうした地形の上空を飛行している場合は、レフリーの裁量で難易度を上下させて下さい。

 空港のような着陸地点とは文字通り、空港や宇宙港のように平坦な滑走路と誘導装置が用意された着陸地点です。
 不時着機がこうした着陸地点を利用できるのは、味方の空軍基地や空港を防衛している場合、 敵空軍の空襲に対抗して防空任務に就いている場合くらいでしょう。
 あるいは、グライダーが敵の空港や空軍基地に 強行着陸を試みるような場合が該当するかも知れません(クレタ島降下作戦の如く)。
 この難易度修正は、前述した安全な着陸地点の修正とは重複しないものとします。



 上記のハウス・ルールを追加した上で、 グライダーの不時着成功率を評価してみました。
 難易度とパイロットのDMを考慮すると、成功率は以下のようになります。


         表12 不時着の成功率(ハウス・ルール)

BW55_Fig12.gif - 8.21KB

 表の左端は不時着の行為判定の難易度です。
 表の右側は、パイロットの〈輸送機器〉技能レベルと敏捷力によるDM。
 グライダーを操縦している場合、 〈輸送機器〉技能は〈プロペラ航空機〉か〈ジェット航空機〉のものを用いて下さい。
 両者の交差する欄に、行為判定の基準値(成功値)と成功率を並記してあります。


 一番上は難易度が〈至難:15+〉、機体が破損した状態で行う緊急的な不時着。
 安全な着陸場所をじっくりと探している時間はありません。
 「COACC」に掲載されている公式ルール通りの状況で行う行為判定ですが、 「技能なし」や「DM+2」程度の技量では成功の確率が全くありません。自動的に失敗して事故が起こります。
 「DM+4」であってもわずか8.3%の成功率、「DM+8」で58.3%の成功率でした。 よほどのベテランでもなければ、事故を起こさずに不時着する、ということは難しいようです。

 二番目は、難易度が〈難:11+〉。機体が破損した状態であっても安全な着陸場所を見つけ出して行う不時着か、 あるいは、安全ではない着陸場所に対して機体が破損していない状態で行う不時着です。
 前者は、安全な着陸場所に対して着陸態勢に入ったグライダーが、 着陸の寸前に対空砲火で機体を破損させられたような状態。
 後者は機体に問題がなくても、脱出した乗組員救助のためなど何らかの理由で強引に着陸を試みたような状態でしょうか。
 この条件でも「技能なし」のパイロットは必ず事故を起こします。
 「DM+2」の成功率は27.8%ですから、着陸を試みた4機の内3機は事故を起こしますし、 「DM+4」でも成功率は58.3%ですから、4機中2機が事故を起こすでしょう。
 「DM+8」になれば成功率は97.2%で、安全な着陸ができるようになりました。 残念ながらサイコロの目が「2」だった場合、致命的失敗となった場合は事故を起こします。

 三番目は、難易度が〈並:7+〉。機体が破損した状態で空港に不時着するか、 機体が破損していない状態で安全な着陸場所に不時着する場合になります。
 グライダーが参加する空挺作戦としては、これが最も有り得る状況ではないでしょうか。 民間のグライダーでも、上昇気流が見つからなくて小学校の校庭に不時着した、という話も時々聞きますが、 私がグライダーの着陸で想定している状況は、これなのです。
 ようやく「技能なし」でも8.3%の成功率が得られるようになりましたが、やはり素人の不時着は危険でした。
 「DM+2」ならば成功率は83.3%、「DM+4」以上ならば成功率が97.2%で、ほぼ安全確実な不時着が可能となります。 この程度のリスクならば、損害をそれほど出さずに空挺作戦が可能になるのではなるでしょう。

 四番目は、難易度が〈易:3+〉。機体が破損していない状態で空港に不時着するような場合です。
 「技能なし」の成功率は58.3%ですから、素人であっても半分以上の確率で無事に着陸できることになりました。
 技能がある状態ならば一律で成功率は97.2%、致命的失敗とならない限り、事故は起こりません。



 此処までは、不時着の行為判定について、成功するか失敗するか、それだけに着眼して考察を行ってきました。
 しかし、行為判定のルールを読み直してみると、行為判定に失敗したからといって、必ずしも悲惨な状況になるとは限らないようです。
 行為判定に失敗した後のこと、「事故表でサイコロを振る」と指示されていることについて、考えてみましょう。



 行為判定に失敗した場合は、事故表で2D、もしくは3Dのサイコロを振らなければならないようです。
 私は事故表を使った経験が少ないので、「レフリーズ・マニュアル、p.13」を読み直してみました。
 その内容を以下に抜粋します。

>行為の危険度
>
>安全(Safe):
> 行為によっては、たとえ「事故」が起こっても
> 何の損害も負傷も発生しないものがあります。
> そうした行為は「安全」です。
> ただし「安全」な行為でも、致命的失敗が生じたら「微小」な損害を受けます
> (「事故表」でサイコロは振らず、自動的に「微小」になります)。
>
>危険(Hazardous):
> きわめて危険な行為で、もし失敗したら、
> かなりの確率で深刻な損害が生じるようなものです。
> 「危険」な行為では、例外的失敗になったら「事故表」で2Dを振ります。
> 致命的失敗になったら3Dを振ります。
> つまり、「危険」な行為は大きな事故を引き起こす確率が、
> 通常よりかなり大きいということです。
>
>致命的(Fateful):
> ある種の行為では、失敗すると必ず事故が起こります。
> そのような行為を「致命的」な行為と呼びます。
> たとえば「事故を回避するためには」といった類の行為がこれにあたります。
> 行為に成功すれば事故を回避できますが、失敗すれば必ず事故になるのです。
> 「致命的」な行為に失敗したら、「事故表」で2Dを振ります。
> 「致命的」かつ「危険」な行為の場合は、失敗すると「事故表」で3Dを振ります。




 「プレイヤーズ・マニュアル、p.72」に掲載されていた行為判定は「致命的」なので、 失敗すると必ず事故が起こります。事故表で2Dを振らなければなりません。
 事故表で振るサイコロが2Dの場合、その結果の多くは「微小事故」か「小事故」で、稀に「大事故」が起こります。 「重大事故」が起こることは有り得ません。
 ということは、輸送機器移動装置が無力化されたとしても、 それほど深刻な事態にはならない、ということが言えるのではないでしょうか。
 行為判定の難易度は〈難〉ですから、運が良ければ事故を起こさないで不時着することも可能ですし、 事故を起こしたとしても多くの場合、「大事故」にはなりません。
 その一方でパワープラントが機能停止した場合は、行為判定なしで墜落事故が確定。 事故表で振るサイコロも3Dですから、大変なことになりそうです。

 「COACC」の不時着ルールは「致命的」かつ「危険」ですから、 行為判定に失敗すると「事故表」で3Dを振ることとなっています。
 より危険で、深刻な事態が起こり易いということなのでしょう。

 ところで、「事故表(Mishap Table)」で振る2Dと3Dは具体的にどれだけ異なるのでしょうか。
 気になったので、事故の確率分布を求めてみました。


            表13 不時着事故の確率分布

BW55_Fig13.gif - 10.3KB

 表の左は、サイコロの目と、特定の目が出る確率です。
 比較するため、2D6(六面体のサイコロ2個)3D6(同3個)を横に並べました。

 その右側は事故の程度
 メガトラで扱われる事故は4段階に分かれていて、 軽い順に微小(Superficial)小(Minor)大(Major)重大(Destroyed)として定義されています。
 サイコロを振った場合、その目が「2」ならば振り直し、「3〜6」ならば微小事故、 「7〜10」ならば小事故、「11〜14」ならば大事故、 「15〜18」ならば重大事故になることが決められていました。
 振るサイコロが2Dだった場合、その目の最大値は「12」ですから、重大事故は起こり得ません。 重大事故が発生するためには、3Dを振る必要が有るのです。

 更に右側には事故結果の説明を転載しました。
 ルール解釈に不安が無いこともないのですが、それほど間違ってはいないと思います。



 計算の結果、「事故表」で振るサイコロが2Dか3Dであるかは、発生する事故の規模が大きく異なると判明しました。

 サイコロが2Dである場合、最も多く発生する事故は小事故で、その確率は51.4%です。
 次点は微小事故で40.0%の確率。
 最後は大事故ですが、その確率は8.6%で滅多に起こりません。
 事故の大半は微小事故小事故であるというのが、 「事故表」で2Dを振った場合の結果なのです。

 サイコロが3Dである場合は、小事故大事故が同率首位、40.7%の確率で発生します。
 次点が微小事故重大事故で、同じく9.3%ずつ。
 事故の大半は小事故大事故で、 稀に重大事故も発生するというのが、「事故表」で3Dを振った場合の結果でした。



 ところで事故結果の説明によれば、微小事故は、

> 行為に関係した器具・機器は微小な損傷を受ける。
> あるいはキャラクターが1Dのダメージを受ける。
> あるいはその両方。


 ということだそうです。
 次のページ、修理に関する項目には、

> 「微小」な損傷は外見に影響を与えるだけで、
>  器具や機器の機能そのものには影響はない。
> 「微小」な損傷を何回受けようと、修理しなくても問題は生じない。


 という情報も見つかりました。
 どうやら器具や機器に関して、微小事故は大した影響を与えないようです。
 これがグライダーだった場合は、再び牽引装置を取り付ければすぐに飛び上がれる状態だと見なせるでしょう。
 ただしハウス・ルールとして、 微小事故を起こしたグライダーに搭載されていた貨物、 車輌や武器、弾薬、燃料、食料は、2D6で「2」が出たならば、 故障や破損によって機能が損なわれた(利用できない)状態になってしまったものとします。 貨物の数が多くてサイコロを振るのが面倒な場合は、およそ3%の貨物が破損したものとして下さい。

 「事故表」で2Dを振った場合は40.0%の確率で微小事故が発生しますから、 事故を起こしても40.0%の確率で器具や機器は影響なしになる、と言えるのです。
 「事故表」で3Dを振った場合、微小事故になる確率は9.3%しかありませんでした。
 3Dを振る場合、事故が微小で済む可能性はほとんど無いのです。

 キャラクターが負傷する場合、1Dのダメージを受けまです。
 グライダーが無事でも、搭乗しているパイロットや乗客は1Dのダメージを受けてしまうということなのでしょう。
 このダメージについては、後でまとめて考察したいと思います。



 小事故は、

> 行為に関係した器具・機器は小さな損傷を受ける。
> あるいはキャラクターが2Dのダメージを受ける。
> あるいはその両方。


 ということになっていました。
 この小さな損傷の程度が具体的には分かり難いのですが、 とりあえず器具や機器の機能は停止しており、修理しなければ使えないようです(ルールの解釈に不安あり)。
 グライダーもそのままでは飛行不能でしょう。
 これもハウス・ルールですが、 小事故を起こしたグライダーに搭載されていた貨物、 車輌や武器、弾薬、燃料、食料は、2D6で「2〜4」が出たら破損します。 サイコロを振るのが面倒な場合は、およそ17%(=6分の1)の貨物が破損したものと考えて下さい。

 「事故表」で2Dを振った場合は51.4%の確率で小事故が発生します。 「事故表」で3Dを振った場合は40.7%でした。
 小事故はそれなりに発生する可能性が高く、発生した場合は厄介な問題を引き起こしそうです。

 キャラクターが受けるダメージは2Dでした。
 このダメージについても、後でまとめて考察します。



 大事故は、

> 行為に関係した器具・機器は大きな損傷を受ける。
> あるいはキャラクターが3Dのダメージを受ける。
> あるいはその両方。


 ということになっています。
 この大きな損傷小さな損傷と同じように、 器具や機器の機能は停止し、修理しなければ使えない模様(これもルール解釈に不安あり)。
 グライダーもそのままでは飛行不能です。
 ハウス・ルールである貨物の破損は、2D6で「2〜6」が出たら破損することにしました。 大雑把には35%(=3分の1)の貨物が破損したものと考えます。

 「事故表」で2Dを振った場合は8.6%の確率で大事故が発生。  「事故表」で3Dを振った場合は40.7%でした。
 2Dを振る場合は稀なことですが、3Dを振る場合は大事故も発生する可能性が高いということが分かります。

 キャラクターが受けるダメージは3Dでしたが、これも後でまとめて考察。



 重大事故は、

> 行為に関係した器具・機器は破壊されてしまう。
> あるいはキャラクターが4Dのダメージを受ける。
> あるいはその両方。


 ということです。
 「COACC」の不時着ルールでは、乗組員が全員死亡という結果を伴っていました。
 かなり悲惨な状況ですね。
 グライダーは飛行不能で修理も困難。
 ハウス・ルールである貨物の破損は、サイコロを振るまでもなく、すべてが破損したものと考えます。

 重大事故は、「危険」な行為が致命的失敗になったときか、 「致命的」かつ「危険」な行為が失敗したときにしか発生しません。
 そして、その確率は9.3%でした。
 発生する可能性は低いのですが、発生した場合は最悪の事態を引き起こすようです。
 キャラクターが受けるダメージは4Dでした。



 上記で明らかになった、キャラクターの受けるダメージについて考えます。
 事故が起きた場合、その事故の程度にもよりますが、キャラクターは1D〜4Dのダメージを受けることとなっていました。
 そのダメージが具体的にどの程度の被害をもたらすのか、ちょっと計算してみます。


       表14 不時着事故によるキャラクター負傷の確率分布

BW55_Fig14.gif - 9.18KB

 表の左端が事故の程度
 その右がキャラクターの受ける負傷で、 事故の程度に対応するサイコロの数を示しました。

 表の右側はキャラクターの耐久値(Hits Value)で、 耐久値が2/3(生命力=12〜14)のキャラクター、 耐久値が4/5(生命力=24〜26)のキャラクター、 耐久値が6/10(生命力=45以上)のキャラクター、3通りで評価しています。

 そしてその下に、1D〜4Dのダメージを受けた際に無力化される(意識を失う)確率と、死亡する確率を示しました。



 耐久値が2/3しかないキャラクターは、1D6のダメージでも 無力化の確率が83.3%、死亡の確率が33.3%になっていました。
 元から体力のないキャラクターやすでに負傷して耐久値の下がっているキャラクターは、 微小事故が起きた場合に意識を失ったり、死亡したりしてしまう可能性が高いのです。
 器具や機器が無事でも、それを扱うキャラクターが気絶してしまうのでは困りますね。

 2D6のダメージを受けた場合、 無力化の確率は100%で、死亡の確率は83.3%です。 気絶は確実で、死亡率も6人中5人という高確率でした。
 不時着は、負傷者を地上に送り届ける方法として、あまり相応しくないようです。

 3D6のダメージになると、死亡率は95.8%まで跳ね上がりました。
 20人中19人が死亡するという大参事です。

 4D6のダメージは死亡率が99.9%でした。もう何も言うことはありません。



 耐久値が4/5のキャラクターは、一般的な兵士だという想定で計算しました。
 微小事故によって1D6のダメージを受けた場合、 彼らは50.0%の確率で無力化(意識喪失)してしまいますが、幸い、死亡する者は出ません。
 グライダーの兵員輸送(降下)も、 事故が微小事故で済むのであれば、そのリスクも許容できるということでしょう。
 適切な医療措置が取られなかった場合、その全員は死亡してしまう可能性もあるのですが、此処では考えないことにしておきます。

 小事故によって2D6のダメージを受けた場合、 兵士たちの無力化率は91.7%で、10人の内9人が無力化(意識喪失)の事態となりました。
 おまけに死亡率が27.8%ですから、無力化した9人の内2〜3人は即死しています。
 グライダーが着地に失敗して小事故を起こしてしまった場合、 上記の死傷率から考えて、降下作戦は失敗したと言えるでしょう。

 大事故になると3D6のダメージですから、 兵士たちの無力化率は99.5%で、ほぼ全員が無力化。 死亡率が62.5%なので、10人の内6人以上が即死してしまいました。

 重大事故のダメージは4D6で、 兵士たちは確実に全員が無力化(無力化率=100%)、 ほぼ全員が死亡している(死亡率=96.0%)という大参事です。
 「COACC」の不時着ルールで、 事故が「重大」であるならば、乗組員は死亡します。 と書いてあることも当然だと納得できました。



 耐久値が6/10のキャラクターについては 半ば冗談で無力化率死亡率を求めてみました。

 事故が微小事故ならば、6人中1人が意識を失うだけで済むようです (無力化率=16.7%)。死者は出ません。

 小事故になると無力化率は72.2%に急上昇。 まだ死者は出ませんが、これだけ大勢の負傷者が出てしまうのであれば、作戦を続けることは困難でしょう。

 大事故無力化率は95.4%で、 ほとんどの兵士が無力化されてしまうと分かりました。 わずかですが死者も出てしまいます(死亡率は4.6%)。

 重大事故無力化率は99.6%。
 死亡率も33.6%まで上がりました。
 即死するのは3人中1人だけですが、全員が意識を失っていますので、死亡するのは時間の問題となるのでしょう。



 グライダーの着陸に関連してハウス・ルールを作成しました。
 その行為判定の失敗について考察するため、「事故表」の確率分布まで計算してしまいましたが、結論として、
 事故の物的損傷は怖くない(軽微である)。
 しかし人的被害は恐ろしい(甚大である)。

 ということが分かっています。

 グライダーによる空挺作戦は、 簡単に損傷しない物資(車輌や武器、弾薬、燃料、食料)に限って行うべきであり、 脆弱な人員はパラシュート等による降下を行うべきだということなのでしょう。
 今回の考察では見送りましたが、機体を捨てる脱出の行為判定は、 〈難〉、耐久力(致命的、危険)となっていました。 不時着よりも難易度がひとつ低く、必要な技能もないので「技能なし」による不利な修正も存在しません。 不時着より安全確実な着陸が行えることは間違いないでしょう。
 史実通りの結論がメガトラ、及び「COACC」のルールで確認できたことは嬉しく思います。




(5)船殻(Hull)と機体(Aieframe)、再び

 考察の53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」でも触れましたが、 「レフリーズ・マニュアル」に掲載されている輸送機器設計ルールと、 「COACC」の航空機設計ルールは、基本部分こそ類似しているものの、 その船殻(Hull)と機体(Airframe)の部分に関しては、その概念が全く異なっていました。

 輸送機器設計ルールの場合、設計の基準となるものは「容積」。
 その一方で「COACC」において、航空機の設計基準となるものは「重量」。
 この2つのルールはどう考えても相容れないのです。

 などと考えていたのですが、羽ばたき機グライダーのために ハウス・ルールを作り始めた以上、何時までも相容れないとは言っていられません。
 色々と試行錯誤して何とか整合性のあるハウス・ルールを作ってみました。

 「レフリーズ・マニュアル、p.62、5.船体の形状と流線形化」の部分に以下の表を適用して下さい。
 船体の重量と価格、装甲の素材、装甲修正については、 「レフリーズ・マニュアル」のルールをそのまま適用します。


         表15 機体(Air Frame)の重量、価格修正値

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 表の左端は、メガトラの輸送機器設計ルールで示されている3つの船殻形状と、今回新たに追加した滑空機(グライダー)形状。
 それらに相当する「COACC」の機体形状も並記していますが、あまり参考にはなりません。

 その次の欄は、その機体形状に必要な装甲値。
 音速に近い高速を出すため、あるいは大気圏再突入の熱と衝撃に耐えるため、必要だと思われる装甲値です。
 非流線形の航空機は装甲値=2以上が必要であり、 流線形の航空機は装甲値=4以上完全流線形の航空機は装甲値=12以上が必要だと考えました。
 「COACC」の航空機設計ルールには装甲値の概念がありませんでしたが、 機体重量に装甲修正値を掛けて求めると、ルール上の整合性が取れることに気が付いたのです。
 そんな訳で、それぞれの機体形状には最低限度の必要な装甲値を設定することにしました。
 グライダーだけは特別に装甲値=1でも設計が可能です。

 機体重量の修正値はすべて×1.0
 機体価格の修正値は流線形×1.5完全流線形×2.0です。

 VTOL型航空機やSTOL型航空機として設計する場合は、更に以下の修正値を加えて下さい。
 「ハード・タイムズ、p.83」に記載されているルールです。

> VTOL船体はTL7から設計可能で、
>  船体重量が10%増し、船体価格が50%増しになります。
> STOL船体はTL6から設計可能で、
>  船体重量が5%増し、船体価格が30%増しになります。




 上記の修正値を用いて求めた航空機の機体重量と価格は、メガトラの輸送機器設計ルールで以下のようになりました。
 船殻容積が1排水素トン(=13.5KL)の数値です。


     表16 機体(Air Frame)の重量と価格、機体容積1排水素トン

BW55_Fig16.gif - 7.56KB

 表の左端は、4種類の機体形状。
 その次は機体容積で、すべて1排水素トン(=13.5キロリットル)に統一してあります。

 表中央の重量は、機体そのものの重量(機体重量)と、 航空機が離陸可能な重量(最大離陸重量)の2つがありますが、 後者はその航空機に取り付けられる装備の上限にもなっています。

 揚力に頼る航空機として設計した場合、その重量を超えた航空機は飛行できません。 容積1排水素トン(=13.5kl)の機体で生じる揚力は、最大で15トンしかないということです。 「COACC」の航空機設計ルールとの兼ね合いで、そうした制限を設けました。
 「帝国百科」のデータも確認しましたが、1排水素トンの船体が15重量トンの揚力を発生すると考えるならば、 S型偵察艦A型自由貿易船R型政府指定商船など、 ほとんどの完全流線形をした宇宙船が350km/h以上で、揚力を用いた飛行を行えるようになります。
 一部の小艇は総重量が重すぎて揚力が足りなくなってしまいますが、そのあたりの問題は保留。

 表右端の価格も、装甲修正値を掛けることで 「COACC」の価格により近付きました。





ホバークラフト(Hovercraft)の移動能力


 ホバークラフトの移動能力に関する考察です。

 ですが、そもそもホバークラフトとは何なのか?
 メガトラ世界に存在するホバークラフトの定義について、
 ちょっと調べてみましょう。



 まずは「プレイヤーズ・マニュアル、p.39、〈ホバークラフト〉技能」の説明文から。

> この技能を習得するためには、
> キャラクターの出身世界のテクノロジー・コードが「前星間」で、
> 「標準」または「濃密」の大気でなければなりません。


 こういった記述がありますので、メガトラ世界のホバークラフトは基本的に、 テックレベルが6〜8で、大気レベルが5〜9の世界にしか存在しない、と言えるようです。



 また、「レフリーズ・マニュアル、p.57、移動システム」の項には、以下のような説明文が見つかりました。

>エア・クッション型
> エア・クッション(AC)による移動は、
> ファンを使って圧縮空気を噴き出し、地上から1メートルほど浮かび上がります。
> 反重力と異なり、エア・クッションは真空中では効果がありません。
> エア・クッションによる移動の性能は、反重力よりも劣ります。


 メガトラ世界のホバークラフトは、 地上から1メートルほど浮かび上がって移動する。
 これは、考察を進めるに当たって重要な情報です。しっかり覚えておきましょう。




(1)ホバークラフトの最高速度

 ホバークラフトは、 専用の滑空式移動サスペンション、エア・クッションよって、 その機体を持ち上げ、推進します。
 その性能諸元は以下の通り。

>テックレベル7 エア・クッション
> 消費電力 0.100 Mw  容積 0.200 KL  重量 0.300 ton
>  価格  30,000 cr  最低容積 0.010 KL(推力0.05ton)


 上記の値は推力1トン当たりのデータです。 エア・クッションの最低容積は0.010KLなので、最低推力は0.05トンということになりました。
 推力1トン当たりに必要なエア・クッションの重量が0.3トンなので、 推力重量比はどんなに頑張っても(機体やパワープラントの重量を無視しても)3.3までしか上がりません。
 このあたりからすでにエア・クッションの限界が見えているような気がしました。

 ちなみに、エア・クッションを利用できるテックレベルは7からです。
 テックレベル6の世界に存在するホバークラフトは、テックレベルが高い世界からの輸入品なのでしょう。



 ホバークラフトの最高速度は駆動推力を用いて決定します。 今回も「レフリーズ・マニュアル、p.90」の公式を転載しておきますが、

> 駆動推力 = ( 総推力 ÷ 全備重量 )−1

 この公式で求めた駆動推力を、以下の最高速度表に当て嵌めて、 ホバークラフトの最高速度を決定して下さい。
 但し、以下の特別ルールが存在しますので、御注意を。

>滑空式移動:
> エアクッション型の場合は、巡航速度と最高速度だけを記入します
> (いつでも地表すれすれしか飛行しないので、
>  特に地表速度を求める必要がありません)。
> ……中略……
> エア・クッション移動の場合、
> 反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてください
> (反重力型の地表速度が、エア・クッション型の最高速度となるのです)。
> そして、その最高速度の0.75倍が巡航速度となります。


 また、上記の公式の中の総推力は、 ホバークラフトエア・クッションが発生する総推力。
 全備重量は、ホバークラフトの総重量。



 「レフリーズ・マニュアル」の最高速度表を転載しました。
 ホバークラフト向けの修正を施した最高速度も並記しています。


             表17 ホバークラフトの最高速度表

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 表の左端が駆動推力
 その右側は反重力型輸送機器の最高速度

 実に有難い話ですが、ホバークラフト航空電子機器を搭載する必要はありません。 ホバークラフトの移動に地表速度が存在しないからです。
 そのため、ホバークラフトの移動速度が 航空電子機器の性能に制限されることもなくなりました。



 そんなホバークラフトですが、 反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてください、という制限について考えてみましょう。
 反重力型輸送機器ホバークラフト、 この2つの輸送機器を、同じ飛行速度で並べてみました。
 その速度を出すために必要な駆動推力を以下に示します。


      表18 反重力型輸送機器とホバークラフトの最高速度の比較

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 今回、表の左端は最高速度です。
 その右に並ぶ数値が反重力型輸送機器駆動推力で、 更に右側がホバークラフト駆動推力
 右端には、両者の駆動推力の比率をパーセント(%)で示しました。

 最高速度が120km/h〜300km/hの範囲ならば駆動推力の比率は25.0%で、 反重力型の最高速度×0.25というルールに一致しています。

 最高速度が75km/h〜80km/hの範囲、ホバークラフトの最高速度が75km/h、 反重力型輸送機器の最高速度が80km/hという範囲において、 駆動推力の比率は20.0%でした。少しだけ小さくなっています。
 最高速度が60km/hの場合、駆動推力の比率はわずか5.0%。
 最高速度が45km/h以下の場合は比率を計算できませんでした。



 比率を求めてみれば明らかですが、ルールに設定されている以上に ホバークラフトの推進効率が悪いことが判明しました。

 エア・クッション型の性能諸元に示されている推力の大きさは、 恐らく地面効果(Ground Effect)を含めた推力なのでしょう。 機体の浮揚に使われる推力であれば地面効果込みの推力を使用できるのです。
 その反面、機体推進用の推力としてエア・クッションを用いることは考え物でした。 推進には地面効果を利用できず、どうしても推進効率が悪くなってしまうのですから。

 表18の数値から考えて、 ホバークラフトの最高速度に関する特別ルール、 反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてくださいは、 推進に用いるエア・クッションの効率が4分の1(=0.25)しかないことを示している、 と考えても良いでしょう。
 輸送機器設計ルールを簡略化するため反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてくださいと書かれている訳ですが、 実際は推進効率が悪い(浮揚に用いる場合と比べて0.25の効率しかない)と考えた方がすっきりします。
 しかしルールでそれを再現するためには、駆動推力の計算式と最高速度表を別個に作らなければなりませんし、色々と手間が掛かります。
 そうした状況と比べれば、反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてくださいという特別ルールは 実に単純であり、分かり易いと言えるでしょう。
 私の私的解釈になりますが、反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてくださいという特別ルールと、 エア・クッションの推進効率が4分の1(=0.25)しかないという解釈は、 矛盾しないのです。



 輸送機器設計ルールに示されているように、エア・クッションを用いて出せる最高速度は、 反重力型の最高速度×0.25しかありません。
 そういうことならば、古代テラの某国で使用されていたホバークラフトのように、 浮揚だけにエア・クッションを利用し、推進には別形式の推進装置を用いる、 ということも可能なのではないでしょうか。




(2)固定翼機用エンジンの推進効率

 ちょっと考えてみましたが、ルール的に不可能ではないようです。

 機体の浮揚にはエア・クッションを使用し、その推力は機体の総重量以上でなければなりません。
 推進用の推力は別形式の推進装置、例えば固定翼機用のプロペラや宇宙船用のロケットエンジンを使用することになります。
 その際、最高速度を求めるためには、駆動推力ではなく 加速率を用いることになるでしょう。

> 加速率 = ( 総推力 ÷ 全備重量 )

 という公式を使って、加速率を求めて下さい。
 この加速率と最高速度表から、 そのホバークラフトの最高速度を求めることになります。



 まずは比較のため、エア・クッションの推力重量比を求めてみました。
 考察の54回「空軍2:回転翼機と飛行船」の表1〜表4と同じように、 揚力1トンを生じるため、 どれだけの重量価格が必要になるか、を求めています。


             表19 エア・クッションの推力重量比

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 表の左側にテックレベル
 その次にエア・クッションと組み合わせることのできる パワープラント(Power Plant)を示しました。
 ホバークラフトを利用している世界はテックレベル7〜8という狭い範囲ですので、 組み合わせられるパワープラントも、 ガス・タービンMHDタービンの2つしかありません。



 その右に並ぶ数値が、その組み合わせによって生じる推力の大きさと、 その組み合わせの合計重量、 即ちパワープラントエア・クッションの自重です。 単位はどちらもトン(ton)。
 その次が燃料消費量(L/Hour)価格(Kcr)

 最後の数値が推力/重量比価格/推力比で、 その組み合わせの性能を評価するために必要な数値です。



 エア・クッションと組み合わせられる2種類のタービンは、 その容積が0.10キロリットル以下になると効率が減少し、出力を×0.33倍に修正しなければなりません。
 その場合の推力が、それぞれの欄で一番上にある推力0.2トンと0.25トンの欄です。
 タービンの容積が0.10キロリットルを超え、11キロリットル未満になっている場合の出力修正はありません。 その場合の推力が、それぞれの欄の中央になる推力1トンです。
 タービンの容積が11キロリットル以上になれば効率が上がり、出力は×1.5倍の修正を受けます。 それぞれの欄で一番下にある推力99トンと132トンが出力増加の恩恵を被る最低推力。



 推力/重量比は概ね2.1〜2.6の範囲でした。
 あまり良くありません。
 旅客や貨物、武装や装甲を一切搭載しない、という無茶な条件を選んだとしても、 駆動推力1.0Gが限界です(理論的には1.6Gも可能ですが)。

 幸いなことにタービン系パワープラントは燃費が良いので、 4時間や8時間分の燃料を搭載しても推力/重量比が大きく変化することはありません。
 4〜8時間分の燃料を搭載した状態では1.9〜2.5、 24時間分の燃料を搭載して1.6〜2.2という数字に収まります。 元々の数値が悪いのですが、十分な燃料を搭載しても数字が極端に下がらないという事実は、実に有難い話です。
 しかしパワープラント容積が0.10キロリットル以下の場合、タービンの効率が減少するので 推力/重量比は更に低下して燃料無しでも1.2〜1.5というレベル。
 4〜8時間分の燃料を搭載した状態では1.0〜1.4ですから、どう考えても実用的な数値にはなりませんでした。

 価格/推力比30.6〜33.8の範囲でしたが、あまりにも高価過ぎます。
 反重力回転翼の方がずっと安く済むでしょう。

 エア・クッションを用いるホバークラフトが、 テックレベル9以上の世界で早々に廃れてしまった理由は明らかです。
 メガトラの輸送機器設計ルールは、リアルでも明らかになっているエア・クッションの問題点、 その性能の低さと価格の高さを誤魔化すつもりがないと分かりました。



 さて、では次に航空機用のエンジンを考えてみましょう。
 同じような評価方法で、「COACC」に掲載されていた固定翼機向け、 飛行船向けの推進用エンジンを並べてみました。


           表20 固定翼機用エンジンの推力重量比

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 例によって、表の左端はテックレベル
 その右側にエンジン・タイプ(Engine Type)を並べてあります。
 所々「ハード・タイムズ、p.84」で見たことのある名前も見つかりました。
 但し、ロケットエンジンとラムジェットは除いてあります。

 「COACC」を見て初めて知ったことですが、 幾つかのエンジンには使用速度の上限が存在しました。
 ディーゼルと軽プロペラは、最高速度300km/hまでしか使用できません。
 プロペラ、高出力プロペラ、高出力ターボブロップ、ターボブロップ、軽ターボブロップは、最高速度800km/hまでしか使用できません。
 他のエンジンも、最高速度2,800km/hまでの使用が限界です。
 この速度制限、重要なルールだと思いますが、何故か「ハード・タイムズ」には記載されていませんでした。 常識で判断しなさいということなのかも知れませんが、それに気付かなかったら超音速のプロペラ機を作れてしまう訳で、ちょっと心配です。



 テックレベル4のプロペラ、テックレベル5のディーゼルと軽プロペラは 推力/重量比が揃って2.0ですから、あまり性能が良いとは言えません。
 数少ない長所としては、価格/推力比が低い=安いという点が挙げられるでしょうか。
 低速の固定翼機(プロペラ機)飛行船にしか使えない エンジンですが、ローテク世界では選択肢がありません。

 軽プロペラは、小型軽量であることだけが唯一のメリットです。
 軽プロペラを2つ装備するよりも、プロペラ1つを装備する方が明らかに有利でしたから、 軽プロペラを装備する航空機は小型機しか有り得ません。

 ディーゼルはプロペラに比べて3倍も高価ですが、その低燃費性能はとても魅力的でしょう。 プロペラは1トン(=1,000リットル)の燃料で7時間弱の連続運転しかできませんが、 ディーゼルならば67時間の連続運転が可能なのです。
 対潜哨戒機や飛行船のように長い航続時間が必要な航空機に搭載すれば、そのメリットを活かせると思われます。



 テックレベル6の高出力プロペラは推力/重量比6.4まで向上。 燃費も良いので、既出のプロペラ、軽プロペラよりも明らかに優れたエンジンです。 燃費の良さは、表に掲載したすべてのエンジンの中で2番目でした。
 もちろん、燃費が良いと言っても既出のディーゼルほどではありません(ディーゼルの燃費は世界一)。 航続時間が10時間以上になると、燃料の重量を含めた推力/重量比はディーゼルよりも悪くなってしまいます。 これについては、ディーゼルの燃費性能が異常なのでしょうけれど。

 高出力ターボブロップは推力/重量比15.0
 実に優秀なエンジンですが、推力1トン当たりの価格で考えると高出力プロペラの2倍になりました。 これまで登場してきたプロペラ系エンジンの中では高価なものだと言えるでしょう。
 高出力になった反面、燃費性能は悪化しています。
 具体的には航続時間=4時間以上の燃料を搭載した場合、 推力/重量比が高出力プロペラより悪くなってしまいました。

 初登場のジェット・エンジンである高出力ターボジェット。
 推力/重量比は驚きの18.0ですが燃費性能が極端に悪いので、 この性能を額面通りに発揮できるのは燃料切れになる直前、30分ぐらいのことでしょう。
 1トン(=1,000リットル)の燃料を28分で使い切るという、大喰らいです。
 しかしテックレベル6の時点において、亜音速(800km/h)より早く飛ぼうとしたら、 このエンジンを選ぶことしかできません。



 テックレベル7のターボブロップ、軽ターボブロップは、プロペラ系エンジンの最終形態です。
 特に優れた性能は存在せず、ほぼすべての点で既出の高出力ターボブロップに劣っていました。
 敢えて挙げるのであれば、ターボブロップは推力が2割下がった分だけ安価になり、 軽ターボブロップはより小さな(軽い)プロペラ機にも搭載可能となった、ということぐらいでしょうか。
 残念なことですが、推力/重量比でも燃費性能でも、劣った点ばかりが目に付きます。

 ターボジェットと軽ターボジェットは若干ですが、既出の高出力ターボジェットより性能が良くなりました。特に燃費の向上が目立ちます。
 ターボジェットの推力/重量比15.0ですが、 1時間分の燃料を搭載すれば高出力ターボジェットよりも推力/重量比が大きくなりました。
 燃料を使い切る直前ならば高出力ターボジェットの方が優位ですが、優位な時間は長く続かないのです。
 軽ターボジェットは小型軽量であることが唯一の存在意義でしょう。 このジェット・エンジンは、小型機に1つだけ搭載する、という使い方しか有り得ません。 軽ターボジェットを2つ搭載するよりも、ターボジェットを1つだけ搭載する方が明らかに高性能(高出力、高燃費、安価)だからです。

 ターボファン、高出力ターボファンは、テックレベル7で初登場のジェット・エンジンです。
 推力/重量比18.0〜21.0。 燃費も良くて、悪いところと言えばちょっと高くなってしまった価格ぐらいでしょうか。
 このジェット・エンジンが手に入るのであれば、ターボジェットは廃れてしまうような気がします。
 実際のところ、古代テラ(TL8)においてもターボジェットは一部の特殊機体を除いて搭載されなくなりましたから、妥当な性能なのでしょう。



 テックレベル8になると、高バイパス比ターボファンが利用できるようになります。 これはジェット・エンジンの最終形態だと言えるでしょう。
 エンジン1基当たりの推力は50トンもあり、ジャンボジェットや戦略級の重爆撃機に搭載することが前提だと思われますが、 実はジェット・エンジンの中で最も燃費の良いエンジンでした。
 エンジン単独の推力/重量比12.5しかありませんが、 4時間分の燃料を搭載した際の推力/重量比2.58で最高の数値。 それ以上の燃料を搭載するのであれば、更に差が開きます。
 長時間/長距離を飛行する大型機に最適なジェット・エンジンであることが分かりました。



 ホバークラフトに別形式の推進用エンジンを搭載するのであれば、 その用途にはターボファン、もしくは高出力ターボファンが最適でしょう。
 推力/重量比が大きいので、高速で移動するホバークラフトを再現できる筈です。
 ルールには記述されていませんが、騒音などの問題を気にするのであれば高出力ターボブロップや高出力プロペラも有用でしょう。 これらのエンジンは燃費も良いので、航続時間(航続距離)を伸ばすためにも有用です。




(3)アフターバーナーとロケット

 更なる脱線だと分かっていますが、せっかく此処まで考察を進めたのですから、 アフターバーナー(Afterburners)ロケット(rockets)についても 少しだけ考えておきましょう。



 「COACC」の中に記載されているエンジン関連のルールには、以下のような記述がありました。

> アフターバーナーを、ターボジェットと
> ターボファンエンジンに追加することができます。
> 追加のコストは掛かりません。
> アフターバーナーの使用によって、推力が10トン増えます。
> その代り、燃料消費量を2倍に増やして下さい。


 アフターバーナーを使うと推力が10トン増えます。
 そして、燃料消費量が2倍に増えます。
 これがルールの要点ですね。

 表20、固定翼機用エンジンの推力重量比の中からターボジェットとターボファンエンジンだけを抜粋し、 それらの推力を10トン増加、燃料消費量を2倍に増やした結果は、以下の通りでした。


    表21 固定翼機用エンジンの推力重量比(アフターバーナー使用時)

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 表左端のテックレベルエンジン・タイプ(Engine Type)については、 これまでと同様。

 推力は前述した通り、 アフターバーナーを使用して、10トン増えた数値を示しています。
 その隣の増加率は、 アフターバーナーの使用によって推力が何倍に増加したのか、を示した数値。

 重量は表17と同じ。

 燃料消費量は、アフターバーナーの使用によって2倍に跳ね上がりました。
 燃料の重量を計算に含めると、推力/重量比が急激に下がっていきます。

 推力が10トン増えたおかげで、推力/重量比がとんでもない数値になりました。
 その範囲は25.0〜32.0
 高バイパス比ターボジェットだけは15.0にしかなりませんが、これは元々の推力が大きいためで、 増加した10トンの推力が、全体から見ると2割の増加にしかなっていないためです。

 アフターバーナーを取り付けるための経費は不要なのですが、 推力が10トンずつ増えているので価格/推力比も良くなります。大きな変化ではありませんが。



 それにしても、TL7の軽ターボジェットにアフターバーナーは、効率が良過ぎます。
 燃料消費は2.00倍ですが、推力が2.67倍(燃費が良くなってしまう)という結果に……。
 「推力が10トン増えます」ではなく、 素直に「推力が1.2倍に増えます」というルールにしておくべきだったのではないでしょうか?


 その次はロケットと、 何処に含めれば良いか分からないラムジェット(ramjets)です。
 表20と同じような形式でまとめました。


           表22 ロケットとラムジェットの推力重量比

BW55_Fig22.gif - 9.75KB

 左端のテックレベルエンジン・タイプ(Engine Type)は同様。
 但しラムジェットは、飛行速度が800km/h以上でなければ使えません。
 ロケットは、真空や異種大気の中でも使用できる、ということがルールの中で強調されていました。

 推力重量燃料消費量価格等の数値は上記の通りです。
 色々と怪しい数字が見つかっていますが、上記に関するエラッタ情報が存在しないので、そのままを転載しました。
 ロケットに関しては上記を信用しない方が良いでしょう。 それでもロケットを搭載したいのであれば、 「ハード・タイムズ、p.84」を参考にすべきだと思います。 そちらの数字は何度かエラッタで訂正されていますから。

 ラムジェットは推力/重量比が大きく、 2,800km/h以上の飛行速度を得るためには必要不可欠なエンジンですが、燃料消費量が膨大です。
 燃費が悪すぎるので、あまり長時間の飛行はできません。
 2つのラムジェット、通常型と高出力型のラムジェットを比較するのであれば、高出力型の方が優れた性能を備えていました。
 推力/重量比はより大きく、価格/推力比はより安価、なのです。
 ついでに確認したところ、燃費も若干ですが、高出力型の方が良くなっていました。

 ロケットは、ラムジェットの数字をそのままコピーして、燃料消費量を2倍にしただけ、に思えます。
 ラムジェットの空気取り入れ口に酸化剤のタンクを取り付けたと考えれば確かにその通りなのでしょうが、もう少し数字を工夫して欲しかった。
 前述の通り、空気の無いところでも使用可能であり、ラムジェットのような速度制限(800km/h未満では使用不可)もありません。




(4)ホバークラフトと地面の傾斜

 ホバークラフトは数多くの欠点を持ちますが、その中でも重要なひとつが、 斜面を移動できないことでしょう。
 斜面を登れないではなく、 移動できないというところが、何とも言い難い哀しい現実でした。

 そもそもホバークラフトは、その車体(船体)を 圧縮した空気エア・クッションの上に置いて、自重を支えています。
 自重を支えるものが空気ですから、それに摩擦力は発生しません。
 本来はこれがホバークラフトの長所でもある訳ですが、 斜面を移動する場合、これは大きな欠点となってしまいました。
 斜面を移動するホバークラフトは重力に引かれるまま、斜面の下へと滑り落ちてしまうのです。

 移動中でなくても、エア・クッションを使って浮揚していれば同じことです。
 車輪/キャタピラ/脚のような接地式移動システムであれば、 そのような事態には陥らないのですが。



 傾斜面を移動するホバークラフトに対して、 斜面の下向きにどれだけの力が加わっているのか、具体的に計算してみました。


           表23 ホバークラフトと地形の傾斜

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 表の左端はホバークラフトの移動能力で、輸送機器設計ルールを使って求めた 駆動推力最高速度を並べてあります。

 その次の欄が傾斜加速度
 とある傾斜面を移動するホバークラフトに対して、 斜面の下へ滑り落とそうと働く重力加速度の大きさを示しています。
 ホバークラフトが滑り落ちないで移動するためには、 最低でも傾斜加速度と同じ大きさの駆動推力を持っていなければなりません。
 単位は駆動推力と同じG:Gal
 前述したようにホバークラフトが浮揚と推進に利用するエア・クッションは、 その推進効率が4分の1(=0.25)しかありませんので、 傾斜加速度駆動推力の4分の1(=0.25)になりました。

 その次が地形の傾斜角度(Deg)
 地面がどれだけ傾いているか、を表す数値です。
 某極東島国の道路規格によると、道路の傾斜は前後方向で最大で9〜12度。駐車場等で17度の傾斜までが許されているとのこと。
 左右方向の傾斜は2度までです。
 一般的な地上車(車輪型輸送機器)は、17度までの傾斜面ならば日常的に移動できるということが分かりました。
 また、とある資料で調べたところ、戦車(軍用のキャタピラ型輸送機器)は30度(短い距離であれば45度)までの斜面を移動できるとのこと。
 ホバークラフトはどの程度の斜面まで移動できるのでしょうか?

 最後の欄は、戦闘マップ等で地形の傾斜を求める場合の数値。
 地形の傾斜角度(Deg)で表す方が簡単ですが、 戦闘マップはあくまで平面ですから、現実の斜面のようにの上で傾斜計を使ったり、 測量をしたり、という訳にはいきません。
 別の方法で地形の傾斜を計算しなければならないのです。
 そして、その計算方法がこれ。
 戦闘マップの高度差が水平方向と同じ15m単位であるという想定ですが、 1高度レベル分(=15m)の高度差に対して水平方向の移動距離がどれだけあるか、 ということで地形の傾斜を表現する方法です。
 例えば、マップ上のA地点とB地点の高度差が1レベル(=15m)だと想定して下さい。
 A地点とB地点が隣接している、両地点の距離が1マス(=15m)しか離れていない場合は、 表の右端から1.0マスの欄を探します。 その欄の2つ左に書いてある数字が地形の傾斜角度(Deg)44.4度(約45度)、 更に左側を見ると傾斜加速度0.70Gが分かるでしょう。
 A地点とB地点が5マス(=74m)離れているのであれば、 地形の傾斜角度(Deg)11.5度(約12度)傾斜加速度0.20Gになりました。
 A地点とB地点が20マス(=296m)離れているのであれば、 地形の傾斜角度(Deg)2.9度(約3度)で、 傾斜加速度0.05Gです。



 という訳で、考察の本題であるホバークラフトの移動能力ですが、予想以上に低いと判明しました。

 例えば、設計ルール上の駆動推力が0.20G、 最高速度=80km/hのホバークラフトは、 最大でも2.9度(約3度)の斜面しか移動できません。
 地面に2.9度(約3度)以上の傾斜が存在したら、斜面の下に滑り落ちてしまうのです。
 一昔前、某極東島国の大分航路に就航していたホバークラフトは最高速度が90km/hですから、 その最高速度から逆算した駆動推力は0.30G、 上記のホバークラフトに比べれば、若干マシな移動能力を持つことになります。
 しかし4.3度の傾斜までしか対応できないので、本当に平坦な地形でなければ移動できません。

 駆動推力が0.80G、 最高速度=240km/hのホバークラフトならば、 11.5度(約12度)までの斜面を移動することができるでしょう。
 一般的な道路の傾斜は12度以下ですから、道路上の移動、道路に準じた平地ならば移動可能なのです。
 しかし、これだけの駆動推力を与えても、一般的な地上車と同じ移動能力を持たせるには足りません。



 一般的な地上車(車輪型輸送機器)と同じ17度までの移動能力を持たせるためには、 そのホバークラフト駆動推力=1.20G最高速度=350km/hの移動能力が必要だと分かりました。

 戦車(軍用のキャタピラ型輸送機器)と同じ30度までの移動能力ならば、 駆動推力=2.0G最高速度=530km/hが必要です。

 表19で考察した通り、旅客や貨物、武装や装甲を一切搭載しない、という無茶な条件を選んだとしても、 ホバークラフト駆動推力1.0Gが限界でした。
 戦車の移動能力に匹敵する駆動推力=2.0Gはもちろんのこと、 一般的な地上車の移動能力である駆動推力=1.20Gを確保することも困難です。
 メガトラの輸送機器設計ルールで作られるホバークラフトは、 斜面を移動できないことが確認できました。

 地上を走るホバークラフトは、地上車や歩行者が気にしないような緩やかな起伏 (具体的には地形の傾斜角度(Deg)3〜6度以下)であっても、 その起伏が邪魔になって走れなくなる可能性が高いようです。
 具体的には、斜面に乗り上げた瞬間、起伏の低い方向へ向かって滑り落ちてしまう(外から見ていると蛇行しているように見える)か、 強制的に減速されて後戻りしてしまう(動けなくなってしまう)、ということになるのでしょう。



 こうした起伏による横滑りを防ぐため、ホバークラフトは推進力の一部を費やさなければなりません。
 前進に用いる筈の推進力が他に流用されるのですから、当然、 そのホバークラフトの最高速度は遅くなってしまいます。
 その最高速度減少を分かり易く、駆動推力の減少という形でルール化してみました。

 起伏の激しい地形を走行するホバークラフトは、 その地形の傾斜(単位はDegか%)によって、その最高速度が以下のように減少します。


          表24 地形の傾斜による最高速度の減少

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 表の左は、地形の傾斜
 角度(Deg)比率(%)の2つで示しています。
 それに傾斜加速度も追加。単位は(G)

 表の右が、対応する最高速度の修正
 それぞれ、駆動推力最高速度の減少という形で示しました。



 地形の傾斜角度=0.1〜0.6度という緩やかな条件であっても、 ホバークラフト駆動推力は0.01〜0.05Gの範囲で減少、 最高速度も15〜20km/hの範囲で遅くなってしまいました。
 古代テラの某極東島国に実在した駆動推力=0.30G、 最高速度=90km/hのホバークラフトの場合、 こうした地形を走行するだけでも最高速度が15〜22%ほど減少してしまうようです。
 結構、不便ですね。

 地形の傾斜角度=2.9度(約3度)の緩斜面になると、 駆動推力は0.20Gも低下してしまいます。最高速度は60km/hの低下。
 最高速度=90km/hのホバークラフトは、 最高速度が67%も減少してしまいました。



 ホバークラフトは基本的に、平坦な場所を移動することしかできません。 戦場となる屋外において、平坦な場所と言えば水面しか存在しないでしょう。 つまりホバークラフトは水面上で用いる船舶、なのです。
 某極東島国の法規で船舶扱いされているのも当然ですね。




(5)ホバークラフトの加減速

 さて、今度はホバークラフトの加減速について考えてみます。
 いつも通り、駆動推力を加速度として速度の変化量を求めてみました。
 但しエア・クッションの推進効率は低いので、駆動推力は、 設計ルールで求めた駆動推力の4分の1(=×0.25)で計算しています。


            表25 ホバークラフトの加減速

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 表の左端が駆動推力
 その右側に並ぶ数字が速度の変化量です。

 駆動推力=0.01G〜0.05Gの条件を除けば、 ホバークラフトが静止状態から最高速度に達するまで、 あるいは、最高速度から静止状態になるまで、5.7戦闘ラウンドが必要だと分かりました。
 駆動推力=0.05Gの場合は7.6戦闘ラウンド(=45秒強)、 駆動推力=0.01Gの場合は28.3戦闘ラウンド(=3分弱)が必要ですが、これらは例外でしょう。
 駆動推力が小さ過ぎる場合、辻褄合わせのために最高速度の数値がおかしくなっていることは明らかですので。

 ホバークラフトは、上の表21で示した通りの加減速能力を備えているとします。
 表の数値が0であっても、最低でも1の速度変更はできることにしておきましょう。



 此処でホバークラフトの使い難さを確かめるため、制動距離に関して計算してみました。
 この考察を事前にチェックしてくれた橘様から指摘を受けたことなのですが、こういった比較を行うことで感覚的に分かり易くなります。


      表26 制動距離の比較(ホバークラフトと車輪型輸送機器)

BW55_Fig26.gif - 12.1KB

 表の左側は、ホバークラフトの制動距離。
 一般的な速度、40km/hで走行していた場合、急停止に必要な時間(sec)と距離(m)を求めました。
 表の左端が、ホバークラフト駆動推力
 その右側が、対応する制動時間(sec)制動距離(m)です。

 メガトラのルールでホバークラフトが40km/hを出すためには、 駆動推力=0.15G以上が必要なのですが、 あくまで参考値ということで駆動推力=0.10G以下を掲載してあります。

 表の右側は、車輪型輸送機器の制動距離。
 とある資料に掲載されていた公式を利用して、幾つかの路面状況における急停止に必要な時間(sec)と距離(m)を求めてあります。
 移動速度は同じく40km/hを想定。
 左側が路面の状況で、 その右側が、対応する制動時間(sec)制動距離(m)



 駆動推力=0.01Gの、制動時間=454秒(7分半)と 制動距離=2,520メートルは、話にならないレベルなので論外。

 実際に40km/hを出せる駆動推力=0.20Gホバークラフトは、 制動時間=23秒で、制動距離=126メートル。
 なかなか停まれません。

 その次に停まれないのが、氷の上を走る車輪型輸送機器でした。
 制動時間は16秒で、制動距離が90メートル。
 氷の上であっても車輪型輸送機器ならば、 駆動推力=0.28Gに相当する制動力(実際は0.07G)を発揮できるようです。
 意外な数字ですね。
 そのおかげで、ホバークラフトの持つ制動力の低さが目立ってしまいましたが。

 その次は、硬くなった雪道を走る車輪型輸送機器
 制動時間が7.6秒で、制動距離は42メートルでした。

 駆動推力=0.80Gホバークラフトは、 最高速度を240km/hも出せる、強力な機体です。
 しかし、その制動時間は5.7秒で、制動距離も31メートル。
 制動距離はかなり短くなってきましたが、40km/hで走っている時の制動距離が31メートルというのは、まだ危ない数字だと思います。

 濡れたアスファルトを走る車輪型輸送機器の場合、 制動時間が2.5秒で、制動距離は14メートルでした。
 この制動力は、駆動推力=1.8G(実際は0.45G)に相当しますので、 この大きな制動力をホバークラフトが備えることはできません。。
 雨の日の道路はスリップしやすいので、いつも慎重に運転していますが、この路面状況であっても、 駆動推力=0.80Gホバークラフトに比べ、 制動距離(時間と距離)が半分以下であるという、意外な事実が判明しました。

 最後、乾燥したアスファルトを走る車輪型輸送機器は、 制動時間が1.6秒、制動距離が9メートルでした。
 素晴らしい制動性能です。
 駆動推力=2.8G(実際は0.7G)に相当しますから、 やはりホバークラフトでは実現不可能でしょう。



 上記の考察から、ホバークラフトは急に止まれない、ということが実感して頂けたかと思います。

 性能面から見て実用的なホバークラフトは、 駆動推力が0.10G〜0.30G、最高速度が30km/h〜90km/hという範囲でしょう。
 しかし、これらのホバークラフトの制動力は、上記で示したように情けないレベルでしかありません。
 氷の上を走る車輪型輸送機器よりも制動力が低い、 =制動距離が長い、という事実は大問題です。

 例えば、前方の信号が青から黄色に変わったとします。
 40km/hで移動していたホバークラフトの操縦手は停まろうとしましたが、 ホバークラフトは停止するまで23秒も掛かり、その間に126メートルの距離を進んでしまいました。
 普通の信号は、黄色に変わったら3〜4秒で赤に変わります。
 停止するまでに23秒も掛かるホバークラフトは、その速度を落とせたとしても、 信号が赤に変わった交差点へ入り込んでしまうこととなるでしょう。
 交通事故が確実に起こりますね。実に困ったことですが。

 あるいは、前方30メートルの距離で子供の飛び出しがあったとします。
 ホバークラフトの操縦手は停まろうとしますが、急停止には時間が掛かるので、 ホバークラフトはおよそ3秒後、35km/hの速度で現場を通過してしまいました。
 飛び出した子供は、ほとんど減速なしのホバークラフトに轢かれてしまうでしょう。

 駆動推力が0.80Gのホバークラフトであっても、 制動時間は5.7秒で、制動距離が31メートルでした。
 濡れたアスファルトを走る車輪型輸送機器と比べて、 2倍以上の制動時間制動距離になります。
 大凡、濡れた路面でスリップした場合の制動距離に相当するようですが、 道路を移動する輸送機器として、この制動距離が危険であることは間違いありません。

 要するに、ホバークラフトが一般の道路、特に市街地を走ることは、 駆動推力=0.80Gホバークラフトであっても、 制動距離の観点から見て、交通事故を頻発させる危険な行為だと言えるでしょう。



 ところで、この加減速ルールを応用すると、 揚陸用のホバークラフトが砂浜に上陸する際の移動距離を求めることもできました。
 水面(海面や湖面)を最大速度で疾駆しているホバークラフトが、砂浜に対して垂直に乗り上げた場合、 その勢いでどれだけの距離を進めるか(登れるか)を計算してみた訳です。

 条件は上記の通り、水面(平坦な地形)で既に最高速度を得ていること。
 砂浜(斜面)に対して垂直に乗り上げること(斜めになっていると横方向へ滑り落ちてしまいます)。
 推進装置は最大出力で稼働していること(惰性だけではありません)。
 乗り上げた砂浜は傾斜している以外に何の障害物もないこと、です。


         表27 ホバークラフトが傾斜面を登れる距離

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 表の左端は今回もホバークラフトの移動能力です。
輸送機器設計ルールを使って求めた駆動推力最高速度を並べました。

 その次の欄が砂浜(傾斜角度=5.7度)を登る際の 移動時間(sec)移動距離(m)
 先に書かれている数値が砂浜(傾斜角度=5.7度)を登る場合のもので、 右端の数値が斜路(傾斜角度=11.5度)を登る場合です。



 例えば駆動推力=0.01Gホバークラフトは最高速度が15km/hしかありません。
 そのホバークラフト砂浜に揚陸を試みた場合、 波打ち際から9.1mの距離で止まってしまうでしょう。止まるまでの時間は4.4秒です。

 ホバークラフトは少し早目に浮揚に使っているエア・クッションを切って、 船体を砂浜に設置させなければなりません。 駆動推力=0.01Gでは傾斜角度=5.7度の砂浜を登れませんから、 行き足が止まった後も浮揚を続けていると、重力に引かれて砂浜を滑り落ちてしまうのです。
 揚陸作業が終わった後、海へ帰還する行程は楽になりますが、滑り落ちてしまうのは困ります。

 同じホバークラフト斜路の登坂を試みた場合は、 4.5mしか登れません。止まるまでの時間は2.2秒。
 登れる高度さは、砂浜斜路も0.9mでした。
 ホバークラフトの船首、先端部分がその高さに到達するということですので、 船体の中央部分や船尾はまだ海に浸かったままになっているかも知れません。



 駆動推力=0.20Gホバークラフトは、最高速度が60km/h。
 砂浜を登るのであれば、止まるまでの時間は34.0秒に延びました。
 移動できる距離は最大で283mであり、高さで考えると海面から28.3mの高さまで登れます。揚陸作業には何の問題もありません。
 斜路を登る場合は11.3秒と94.5mで、高さは19.2mまで。
 きちんと斜路が用意されていて、最高速度で突っ込んで来れば、15m以上の高度差を乗り越えられるということです。
 ちょっと意外でした。




(6)ホバークラフトの旋回能力

 地面との摩擦が発生しない。
 それ故、ホバークラフトの旋回は難しいものになってしまいました。
 接地型の輸送機器は地面との摩擦を利用して、その針路を変更します。

 しかし、ホバークラフトには地面との摩擦が発生しません。
 そんな状況でホバークラフトが旋回を行うためには、推進装置から発生する推力を用いるしか無い訳です。
 無重力空間における宇宙船のような旋回方法、と言えばよいでしょうか。

 ホバークラフトの移動を、今回も最小直進距離を使って求めました。
 具体的には以下のような形になります。


       表28 ホバークラフトの旋回時に必要な最小直進距離
           (駆動推力=0.05G、15mマス)

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 表の左端はホバークラフトの飛行速度(km/h)と移動ポイント。

 その右側は、ホバークラフト駆動推力=0.05Gで旋回した場合の 旋回半径(m)15mマスで示した最小直進距離

 最後の数字は、旋回に必要な戦闘ラウンド数
 具体的には数値が1.00であれば。旋回できる回数は1戦闘ラウンド当たり45度旋回が1回です。
 そして数値が0.50であれば1戦闘ラウンドにできる旋回は2回(合計90度)、 数値が2.00ならば2戦闘ラウンドを掛けて1回の旋回しかできません。



 前述したようにホバークラフトが推進に利用しているエア・クッションは、 その推進効率が4分の1(=0.25)しかありません。ですから駆動推力=0.05Gであっても、 実際の旋回に用いている旋回推力は0.01G(正確には0.0125G)だけです。

 この性能(駆動推力=0.05G)の場合、 ホバークラフトはほとんど旋回ができません。
 前回、駆動推力が極端に小さな飛行型輸送機器 (=飛行船)の旋回能力を考察した際に実感しましたが、 駆動推力=0.05Gホバークラフトにも同じことが言えるようです。

 最高速度は20km/hで、戦闘マップ上での移動ポイントは2ポイント。 キャラクター(人間やロボット)が走る速度と同じ移動速度しかありませんでした。
 それほどの低速でしか移動できないのに、最小直進距離は14マス。
 14戦闘ラウンド(=1分半)を費やして、ようやく1回(45度)の旋回ができるという鈍重さ。
 実際の戦闘においては飛行船と同じように、ただ直進するだけしかできないのではないようです。
 怖くて実戦には投入できません。

 ちなみに、極東島国の道路設計基準によると、設計速度=20km/hの道路の屈曲部(カーブ)は、曲率半径=15mで設計されるとのこと。
 上記ホバークラフト旋回半径は315mですから、 曲率半径=15mの道路を走行することは不可能であると判明しました。



       表29 ホバークラフトの旋回時に必要な最小直進距離
           (駆動推力=0.10G、15mマス)

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 ホバークラフト駆動推力=0.10Gで旋回した場合の 旋回半径(m)最小直進距離です。

 駆動推力が2倍になったおかげで、旋回半径は4割〜5割とほぼ半減。
 それでも最高速度の30km/h(=移動ポイント3)で移動していると、最小直進距離は13マス。
 1回(45度)の旋回には13マスの直進と9戦闘ラウンド(=1分弱)の時間が必要でした。

 極東島国の道路設計基準では、設計速度=30km/hの道路の屈曲部が曲率半径=30mとなっています。
 駆動推力=0.10Gホバークラフト旋回半径=283mで、やはり道路を走行することはできません。



 もしも道路の屈曲部に半径方向の傾斜を設けるのであれば、その傾斜が車輌を屈曲部の内側に誘導してくれます。
 実質的な旋回推力(駆動推力)が2倍になったものとして計算して下さい。
 上記の表25の中で青字で示した数値は、 駆動推力=0.05Gホバークラフトが、 傾斜付きの屈曲部(カーブ)を走行した場合の旋回半径最小直進距離です。
 道路がきちんと設計され、半径方向の傾斜が設けられていれば 旋回半径は4割に減少するということが分かりました。



       表30 ホバークラフトの旋回時に必要な最小直進距離
           (駆動推力=0.20G、15mマス)

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 ホバークラフト駆動推力=0.20Gで旋回した場合の 旋回半径最小直進距離です。

 同じ飛行速度ならば旋回半径は更に小さくなりました。 残念ながら最高速度が60km/hに上がったため、その速度での旋回半径は567m、 最小直進距離も26マスに増えてしまっています。
 1回(45度)の旋回に26マスの直進と9戦闘ラウンド(=1分弱)の時間が必要であることは、 直進距離が2倍に増えただけでほぼ同じでしょう。

 極東島国の道路設計基準は、設計速度=60km/hの道路で屈曲部の曲率半径が150mでした。
 徐々に差が小さくなってきているものの、 旋回半径=567mのホバークラフトでは曲がり切れません。 やはり道路を走行することはできないようです。



       表31 ホバークラフトの旋回時に必要な最小直進距離
           (駆動推力=0.40G、15mマス)

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 今度は、ホバークラフト駆動推力=0.40Gで旋回した場合の 旋回半径最小直進距離です。

 飛行速度60km/hでの旋回半径は283mに半減、 最小直進距離も12マスまで半減しました。
 最高速度の120km/hになると、旋回半径は1,134m、 最小直進距離が50マスです。

 極東島国の道路設計基準は、設計速度=60km/hの道路で屈曲部の曲率半径が150m、120km/hの道路で710mでした。
 ホバークラフトが道路を走ることは、まだまだ難しいようです。



       表32 ホバークラフトの旋回時に必要な最小直進距離
           (駆動推力=0.80G、15mマス)

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 最後に、ホバークラフト駆動推力=0.80Gで旋回した場合の 旋回半径最小直進距離を計算しました。
 最高速度は240km/hに達していますが、その速度に対応した道路の設計基準が存在しませんので、 旋回半径最小直進距離は飛行速度=60km/hと120km/hを用いて考察します。

 飛行速度=60km/hでの旋回半径は142mまで減少。
 道路設計基準は、設計速度=60km/hの道路で曲率半径が150mですので、 ようやく道路から飛び出すことなく屈曲部(カーブ)を曲がれるようになったようです。
 最小直進距離も7マスまで小さくなりました。

 飛行速度=120km/hでの旋回半径は567mで、道路の設計基準は曲率半径が710m。
 この速度でも屈曲部を曲がれます。
 最小直進距離は26マスでした。

 要するに、某極東島国の道路設計基準は、 車輌が屈曲部で0.20G(ホバークラフト駆動推力ならば0.80G)の遠心力を受ける、 という前提で作られているのです。
 諸外国の設計基準は調査できませんでしたが、物理法則が変わらない以上、 外国であっても未来世界(57世紀)であっても、こうした設計基準が大きく変化することはないでしょう。
 トラベラーの舞台となる世界においても、道路の設計基準はこうした数値が用いられているとするならば、 ホバークラフトが道路を走行するためには駆動推力=0.80G以上が不可欠となりました。



 ところで道路の屈曲部に半径方向の傾斜が設けられている場合、その傾斜が車輌を屈曲部の内側に誘導してくれるため、 実質的な旋回推力(駆動推力)が2倍になったものとして計算できます。
 道路の屈曲部すべてに傾斜が設けられるとは限りませんが、高速道路(自動車専用道路)ならば傾斜が設けられている可能性は高いでしょう。 反対に、交差点や合流/分岐点が多く存在する都市部では傾斜を設けることが困難であるため、可能性は低いと思われます。
 屈曲部に傾斜が設けられているのであれば、その道路を走行する車輌は、受ける遠心力の半分(0.10G分)を道路の傾斜で相殺できます。 つまり、0.10Gの遠心力に耐えるだけで済むのです。
 ホバークラフトも同様で、駆動推力が0.40Gあれば十分だと分かりました。
 きちんと設計された道路を移動するのであれば、駆動推力=0.40Gでも ホバークラフトは道路を移動できるのです。



 逆の言い方をするならば、駆動推力が0.40Gに満たないホバークラフトは、 道路を移動することができません。 道路の屈曲部を曲がりきるためには、最低でも駆動推力=0.40Gが必要だからです。
 傾斜がない屈曲部であれば、その道路を曲がりきるために2倍の駆動推力0.80Gが必要となるでしょう。
 それだけの旋回性能を持たないホバークラフトは屈曲部を曲がり切れず、 道路から転がり落ちてしまうか、道路脇の建物や構造物に突っ込むような事態が頻発してしまうのです。




(7)道路の設計基準

 考察に用いた、某極東島国の道路設計基準です。

 設計速度の定義とか、普通道路小型道路の区別、 特例が適用される条件などは語り始めると長くなりますので、簡潔に数値だけを掲載しておきます。
 興味のある方はぜひ調べて見てください。
 「道路構造令」で検索すると見つかります。


         表33 某極東島国の道路規格(地形の傾斜)

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 上の表は道路の前後方向の傾斜角度です。
 上り坂、下り坂の傾斜角度は、上記に示された数値以下で設計しなければなりません。
 それができないのであれば、道路はその地形を迂回するか、あるいは折り返すことで傾斜を小さくしなければならないのです。



        表34 某極東島国の道路規格(屈曲部の曲率半径)

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 この表は、屈曲部(カーブ)の曲率半径を示しています。単位はメートル(m)

 地上車輌が屈曲部を設計速度で走り抜けた場合、その車輌が受ける遠心力も求めておきました。
 その遠心力に耐えることが出来なければ(例えば、車輪型輸送機器の車輪がスリップした場合など)、 その車輌は容赦なく屈曲部の外へ放り出されます。
 スピードの出し過ぎでカーブを曲がり切れず……と描写される状況になる訳ですね。

 道路の屈曲部には、内側に向けて6〜10%の傾斜を設けることも許されています。
 そうした傾斜角度にもしっかりと基準が作られているのですが、場合分けが面倒なので単純に、 上記の遠心力を半分に軽減できる傾斜角度だと考えてください。



 蛇足ですが、路面の強度と排水設備等について。

 ホバークラフトの接地圧は、なかなか手頃な資料が見つからないので不正確ですが、 その外形寸法と重量から、0.2〜0.5トン/平方mという数字が出てきました。
 もちろん、エア・クッションですから、その接地圧は空気を介した圧力となりますが、 大気圧の大きさが10トン/平方mなので、接地圧を追加しても大気圧が2〜5%増えるだけでしかありません。
 予想以上に小さな接地圧でした。
 ちなみに、人間戦車の接地圧は5〜10トン/平方m、 車輪型輸送機器の接地圧は50〜70トン/平方mで、 路面の強度はこの接地圧に耐えることを前提として作られています。
 文字通り桁の違う接地圧ですから、一般的な道路はホバークラフトにとって、 勿体無いほど丈夫だということになりました。
 ホバークラフトが移動する道路の強度は、 表面の埃が舞い上がらない程度に舗装してあれば、それで十分なのです。

 道路の排水設備び関連する条項ですが、道路には横方向へ1.5〜2.0%の横断勾配を設けること、となっておりました。
 道路上に雨水等が溜まらないように排水する、という配慮で作られている勾配ですが、 ホバークラフトは傾斜面に弱いので、雨水と一緒に路肩へ流されてしまいます。
 確かめてみたところ、この勾配で生じる傾斜加速度の大きさは、 ホバークラフト駆動推力、0.05G〜0.10Gに相当していました。
 表21より、そうした状況における最高速度の修正は、−20km/h〜−30km/h。
 意外な盲点でしたが、排水のための横断勾配が設けられた道路はホバークラフトにとって走り難いようです。
 ホバークラフトは路面が濡れていようと水没していようと走行に差し支えがありませんから、 排水設備(横断勾配)が無くても良いくらいなのですが。



 「道路構造令」を見ながら、ホバークラフトの走行について考察してみました。
 端的に言うならば、ホバークラフトは道路を走るべきではありません。
 ホバークラフト車輪型輸送機器は走行特性が大きく異なるので、 同じ道路を走らせようとすると不都合なことが数多く発生してしまうのです。
 ホバークラフトに道路を走らせようとするのであれば、 その走行特性を理解した上で、専用の道路を建設すべきでしょう。
 間違っても、車輪型輸送機器向けの道路を、 車輪型輸送機器と一緒に走らせるべきではありません。





結論


 今回は、羽ばたき機ホバークラフトの移動能力について考察しました。



 まず、羽ばたき機の移動システムとして羽ばたき翼を考案。
 羽ばたき機の飛行速度が離陸速度に達した時点で、 駆動推力+0.50増えるというルールを追加しています。
 駆動推力が1.01を下回る羽ばたき機であっても、 助走を付ける(滑走する)とか、補助的な推力装置を取り付けるといった手法で、飛行できるようになりました。

 しかしながら、羽ばたき機の最高速度は、エア・クッション型と同じように、 反重力型の最高速度×0.25を最高速度とします。
 そして、その最高速度の0.75倍が巡航速度になりました。

 羽ばたき機は、静止状態から一気に最高速度まで加速するような状況でない限り、 その飛行速度を任意に変更できると見なしても構いません。

 羽ばたき機旋回推力は 静止寸前の低速であっても4.0Gを確保することとしました。
 低速での旋回性能は、固定翼機が失速するような低速でも旋回が可能ですから、より優秀だと言えます。

 上昇/降下能力(高度変更)について、羽ばたき機は基本的に 固定翼機と同じルールを用いることにしました。
 羽ばたき機は垂直上昇/降下が苦手なのです。



 次は、滑空移動とグライダーに関する「ハウス・ルール」を考案しました。
 空気より重いけれど、動力を持たない飛行型輸送機器
 それがグライダーです。

 固定翼機に牽引されるグライダーの飛行方法と、 動力なしで滑空するグライダーの飛行方法について、ハウス・ルールを作成しました。

 牽引されるグライダーの飛行方法は、通常の固定翼機の飛行方法と大差ありません。
 敢えて注意するのであれば、激しい旋回、急激な高度変更ができないという制限が付く程度です。

 動力なしで滑空するグライダーも同様の飛行を行いますが、 水平飛行を行うのであれば、毎戦闘ラウンド当たり50km/hの速度を失うことにしました。
 これは空気抵抗による速度の喪失を表しています。
 速度の喪失を防ぐためには、高度(位置エネルギー)を速度(運動エネルギー)に変換しなければなりません。
 その時点で飛行速度を保つため、代償として支払う高度レベル数(=毎戦闘ラウンド毎に失う高度レベル数)を決定しました。

 グライダーの着陸に関連してハウス・ルールを作成し、 その行為判定の失敗について考察した結果、
 事故の物的損傷は怖くない(軽微である)が、人的被害は恐ろしい(甚大である)。
 ということが分かりました。
 グライダーによる空挺作戦は、 簡単に損傷しない物資(車輌や武器、弾薬、燃料、食料)に限って行うべきであり、 脆弱な人員はパラシュート等による降下を行うべきだということなのでしょう。

 「レフリーズ・マニュアル」の輸送機器設計ルールに記されている船殻(Hull)と、 「COACC」の航空機設計ルールは、基本部分こそ類似しているものの、 その機体(Airframe)の部分に関しては、その概念が全く異なっていました。
 両者に整合性はありません。
 考察の53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」で軽く触れた問題ですが、 グライダー羽ばたき機の設計を実現するために再度考察し、 両者の妥協点を見つけ出しました。
 見つけた妥協点はあくまでハウス・ルールの範疇ですが、 これを用いればメガトラの輸送機器設計ルールを活かしたまま、 グライダー羽ばたき機を設計できるでしょう。



 最後の考察は、飛行型輸送機器の中に含めて良いか判断が難しい 特殊な輸送機器のひとつであるホバークラフト(Hovercraft)について、です。

 ホバークラフトの最高速度ですが、 反重力型の最高速度×0.25を最高速度としてください、という制限から、 エア・クッションの推進効率が4分の1(=0.25)しかないという解釈に辿り着きました。
 エア・クッション型の性能諸元に示されている推力の大きさは、 恐らく地面効果(Ground Effect)を含めた推力であり、 推進には地面効果を利用できず、どうしても推進効率が悪くなってしまう、ということです。
 特別ルールの解釈も、そう考えた方が納得できるので。
 残念ながら、エア・クッションを用いるホバークラフトが、 テックレベル9以上の世界で早々に廃れてしまった理由は明らかです。
 メガトラの輸送機器設計ルールは、リアルでも明らかになっているエア・クッションの問題点、 その性能の低さと価格の高さを誤魔化すつもりがないと分かりました。

 そういう事情ですから、浮揚だけにエア・クッションを利用し、 推進には別形式の推進装置を用いる、ということも可能なのではないかと考え、航空機用エンジンの推進効率を求めてみました。
 この考察は本来、53回「空軍1:固定翼機と反重力型輸送機器」で行うべきだったのでしょうが、 色々と事情があって後回しになってしまった課題です。
 その結果ですが、ホバークラフトに別形式の推進用エンジンを搭載するのであれば、 その用途にはターボファン、もしくは高出力ターボファンが最適でした。
 推力/重量比が大きいので、高速で移動するホバークラフトを再現できる筈です。
 ルールには記述されていませんが、騒音などの問題を気にするのであれば高出力ターボブロップや高出力プロペラも有用でしょう。 これらのエンジンは燃費も良いので、航続時間(航続距離)を伸ばすためにも有用です。
 アフターバーナーやラムジェットについても考察しましたが、不自然な点が見つかりましたので結論は保留。

 ホバークラフトの登坂性能を考察した結果、 ホバークラフトは基本的に、平坦な場所を移動することしかできないことが判明しました。
 旋回性能も大きく劣り、ホバークラフトが道路を走行するためには 駆動推力=0.80G以上が不可欠なのです。
 但し、屈曲部に半径方向の傾斜が設けられているのであれば、その傾斜が車輌を屈曲部の内側に誘導してくれるため、 ホバークラフト駆動推力=0.40Gでも道路を移動できるでしょう。

 ホバークラフトの加減速性能を考察したところ、 ホバークラフトは急に止まれない、ということが実感できました。
 特にホバークラフトの制動性能は、 氷の上を走る車輪型輸送機器よりも低い、という事実が明らかになっています。
 ホバークラフトが一般の道路、特に市街地を走ることは、交通事故を頻発させる危険な行為だと言えるでしょう。

 駆動推力が0.40Gに満たないホバークラフトは、 道路を移動することができません。 道路の屈曲部を曲がりきるためには、最低でも駆動推力=0.40Gが必要だからです。
 傾斜がない屈曲部であれば、その道路を曲がりきるために2倍の駆動推力0.80Gが必要となるでしょう。
 それだけの旋回性能を持たないホバークラフトは屈曲部を曲がり切れず、 道路から転がり落ちてしまうか、道路脇の建物や構造物に突っ込む事態が頻発すると、明らかになりました。

 ホバークラフトは道路を走るべきではありません。
 ホバークラフト車輪型輸送機器は走行特性が大きく異なるので、 同じ道路を走らせようとすると不都合なことが数多く発生してしまうのです。
 ホバークラフトに道路を走らせようとするのであれば、 その走行特性を理解した上で、専用の道路を建設すべきであり、 間違っても車輪型輸送機器向けの道路を、 車輪型輸送機器と一緒に走らせるべきではありません。






2014.01.05 初投稿。