The Best Weapon
60th stage (Combat 10)
Wounds of Character

最強兵器 決定戦
第60回(個人戦闘10)
キャラクターの負傷
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MEGA TRAVELLER
 


 

メガトラベラーは、
    応急手当不可欠ゲーム


 多くのRPG(ロール・プレイング・ゲーム)において、 キャラクターの負傷は耐久値(HP)の減少 という形で再現されています。
 キャラクターの耐久値がゼロになれば死亡、あるいは無力化(行動不能)となる訳ですが、 耐久値がゼロになるまでは残りが僅か1ポイントであっても行動可能、というルール・システムが多いのではないのでしょうか。

 メガトラベラー(MT)の場合、耐久値(Value Point)には2つの値が設定されていました。
 「プレイヤーズ・マニュアル、p.67」の表現を借りるならば、

> 耐久値は斜線(/)で区切られたひと組の数字です。
> 左側の数字は、
> そのユニットを無力化(いわゆる意識不明や作動不能)にするのに
> 必要なダメージ・ポイント(無力化レベル)を表しています。
> 右側の数字は、
> そのユニットを殺害または破壊するのに
> 必要なダメージ・ポイント(破壊レベル)を表しています。


 ということなのですが。



 これまで考察してきた個人戦闘1〜9において、射撃の有効性を判断する基準はただ単純に、 射撃や砲撃の目標となったキャラクターが無力化されるかどうか、ということだけでした。
 リアルの戦場において、兵士が戦闘を継続できるかどうかという点は重大事です。
 ですから、その判断基準も間違ってはいないと思うのですが、リアルの戦場において負傷者は、非常に厄介な存在と成り得ました。
 例えば、必要な応急処置を施さなければ、その負傷状態は時間と共に悪化していきますし、 場合によっては感染症や失血死という事態も有り得ます。
 負傷の程度が大きい場合は、野戦病院への後送や、それが叶わない場合は、現場での手術等が必要となるでしょう。
 ゲームでは単純な耐久値の減少で表現されている負傷は、リアルでは意外とリスクの大きなことなのです。

 幸いと言うべきかどうかは分かりませんが、 メガトラベラーの個人戦闘ルールにはしっかりと、負傷に関連したルールが存在しています。
 このルールを考察することで、今回は負傷のリスクを評価してみることにしました。






 今回も、不要な部分をスキップできるようにしました。

 目次
    ※負傷の定義
    ※かすり傷の治療
    ※軽傷の治療
    ※重傷の治療
    ※死亡の治療(蘇生)

    ※魔法の薬(スロー&ファスト・ドラッグ)
    ※負傷部位の決定(ハウス・ルール)
    ※負傷と治療の実例
    ※結論





負傷の定義


 まずはプレイヤーズ・マニュアルを読み直し、 負傷の定義について、考えてみることにしましょう。




(1)負傷の分類

 「プレイヤーズ・マニュアル、pp.76-77」で述べられていることを転載しますが、 キャラクターへのダメージの適用は、以下のようなルールとなっていました。

> キャラクターが戦闘中に受けたダメージ・ポイントを合計してください。
> その合計値の数だけサイコロをふり、
> 出た目をキャラクターの筋力・敏捷力・耐久力への致傷として適用します。
> ただし、ひとつのサイコロの目の数値は、
> いずれかの特徴ポイントにまとめて適用します。
> 
> キャラクターが死亡しなかったのなら、
> 3つの特徴ポイントをすべて0にすることはできません。
> キャラクターが意識不明にならなかったのなら、
> どの特徴ポイントも0にすることはできません。
> (訳注:そのような適用の方法がどうしても不可能な場合には、
> サイコロを完全にふりなおせばよいでしょう。
> あるいは、いずれか1個の目を無視して適用するという方法もあります。
> 場合に応じてレフリーが判断して下さい)
> 
> 「負傷表」にはダメージの程度が示されています。
> これは診断や治療の目安となるものです。


 この文章のすぐ下に置かれていた表は、以下の通りでした。


              表1 負傷表(Wounds)

BW60_Fig01.gif - 6.65KB

 表の左側のダメージの程度という言葉にどんな意味が与えられているのか分かりませんが、 事故表と同じような方法で 微小重大 の4つに分類されていました。

 この表の中身は、表の右側、筋力・敏捷力・耐久力の状態だけで足りているのではないでしょうか。
 3つの特徴ポイントについて、
 ひとつも0ではない状態がかすり傷
 ひとつが0になった状態が軽傷
 2つが0になった状態が重傷
 すべてが0になった状態が死亡
 ということですので。



 このルールはちょっと分かり難くなっていますが、 クラシック・トラベラー(CT)版の負傷ルールを簡略化したものだ、 と考えれば分かり易くなると思います。
 端的に言うと、CT版のダメージサイコロ1個分が、 メガトラベラー(MT)版では1ポイントのダメージとして表現されていました。
 例えば、CT版3D6(サイコロ3個分)のダメージを与えていたライフルが、 MT版では3ポイントのダメージを与えるようになった、 ということです。
 MT版は貫通力と装甲値との対比(貫通状態)や成功の度合い(例外的成功など)によって、 与えるダメージが増減する(サイコロの数が増減する)という違いは有りますが、基本的なところは同じでした。

 どちらが優れているとかいう訳ではありませんが、 CT版のルールだと、通りすがりのNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)であっても、 きちんと特徴ポイント(UPP)を決めておかなければ戦闘に参加させることができません。
 しかしMT版のルールならば、耐久値を決めるだけで戦闘に参加させることが可能です。
 そしてダメージを適用する際も、CT版ではダメージを受ける度に 特徴ポイントを減少させていかなければならず、意識喪失となるタイミングが分かり難いのに対し、 MT版は耐久値を減らし、左側の数値がゼロになった時点で意識喪失(戦闘不能)になる、 というだけで済みました。
 プレイアビリティとして、どちらに軍配が上がるかは明らかでしょう。
 その代り、重要なキャラクターについては、 その負傷程度を明らかにするためCT版のルールに戻ってダメージを適用しなければなりませんから 却って面倒になったのかも知れませんが。

 個人的な考えですがMT版の負傷ルールは、 CT版の持ち味を殺さずにダメージ適用を簡略できるようになった、良いとこ取りのルールだと思っています。



 実際に、MT版における耐久値の減少特徴ポイント(UPP)の減少に置き換えるのであれば、以下の例のようになるでしょう。


              表2 ダメージの適用例

BW60_Fig02.gif - 6.12KB

 「レフリーズ・マニュアル、p.43」の表「11a.NPCの簡易作成(肉体的特徴)」から、 キャラクターの特徴ポイント、筋力・敏捷力・耐久力を抜粋しました。
 表「11a.NPCの簡易作成(肉体的特徴)」で振ったサイコロの目が「2」だった場合、「7」だった場合、「12」だった場合、 それぞれのキャラクターの特徴ポイント耐久値です。

 表の横軸は負傷の程度
 かすり傷軽傷重傷死亡のそれぞれについて、 キャラクターの特徴ポイント耐久値がどのように減少していくかを示しました。



 最も分かり易いサンプルは、特徴ポイント=333、 耐久値=2/2のキャラクターでしょう。
 1ポイントのダメージで負傷の程度が変わっていきますし、 サイコロの目の大きさに関するレフリーの裁量が重要な要素にもなっていました。



 このキャラクターが1ポイントのダメージを負った場合について考えてみます。
 かすり傷の欄を見て下さい。

 キャラクターの耐久値は、2/2から減少して1/2へ変わりました。
 左側の数値が0になっていませんから、まだキャラクターは 無力化(いわゆる意識不明や作動不能に)されていません。
 そして、
> キャラクターが意識不明にならなかったのなら、
> どの特徴ポイントも0にすることはできません。

 というルールがありますから、この状態はかすり傷だと言えるのです。
 キャラクターは、戦闘の継続も可能でしょう。

 この状態で戦闘が終了したのであれば、キャラクターは耐久値に受けたダメージ1ポイントに相当する サイコロ1個分のダメージを特徴ポイントに受けることとなります。
 サイコロを1個振って、任意の特徴ポイント、筋力、敏捷力、耐久力のどれか1つに、そのダメージを適用して下さい。
 但し、前述した意識不明にならなかったのなら、どの特徴ポイントも0にすることはできませんという制限から、 サイコロの目がどんなに大きくても、適用されるダメージは2以下、となりました。
 このキャラクターはどの特徴ポイントも揃って3になっていますから2以下、なのですが、もし特徴ポイントが6ならば与えられるダメージは5以下、 特徴ポイントが2ならば与えられるダメージは1のみ、となるでしょう。
 表2のサンプルでは、特徴ポイントの中から筋力を選び、2ポイントのダメージを与えることになりました (実際に振ったサイコロは4でしたが、前述の制限からそのダメージを2まで減らしました)。
 特徴ポイントは333から減少して、133となります。



 同じキャラクターが更に1ポイントの追加ダメージを受けました。 累積で2ポイントのダメージです。 今度は軽傷の欄を見て下さい。

 キャラクターの耐久値は、2/2から2ポイント減少して 0/2となってしまいました。
 左側の数値が0になりましたので、このキャラクターは 無力化(いわゆる意識不明や作動不能に)されてしまいます。
 当然ながら、戦闘の継続は不可能。
 目が覚めるまで(目が覚めれば、の話ですが)現場に転がっている、ということになるでしょう。

 この状態で戦闘が終了した場合、キャラクターは、 特徴ポイントにサイコロ2個分のダメージを受けることとなりました。
 サイコロを2個振って、任意の特徴ポイント、筋力、敏捷力、耐久力へ、そのダメージを適用して下さい。
 今回はキャラクターが無力化された(意識不明になった)ので、特徴ポイントのひとつを0にすることができます。
 1回目のサイコロは「4」が出たので筋力に適用しました。この時点での特徴ポイントは033。 すでに無力化という状況に陥っていますから、 かすり傷の時とは違って遠慮なく、 特徴ポイントをまで減らすことができるのです。
 2回目のサイコロは「2」が出たので、今度はそれを敏捷力に適用することにしました。 よって、特徴ポイントの敏捷力はからへ減少。
 特徴ポイントは033から013となります。

 もし2回目のサイコロで「3以上」が出た場合は、敏捷力もになってしまいます。
 特徴ポイントの2つが0になった状態ですから、その負傷は重傷
 軽傷重傷の境目は曖昧ですから、 キャラクターが無力化されたのと同時に重傷に陥る という状況も有っておかしくないでしょう。

 反対に、1回目と2回目のサイコロで「1」しか出なかった場合はどうでしょうか?
 特徴ポイントは合計でも2つしか減りません。
 負傷したキャラクターの特徴ポイントは133223になる訳で、 になる特徴ポイントがひとつも存在しないのです。
 この場合、2回目のサイコロの目を「2」に変更して下さい。 そうすれば特徴ポイントのひとつ(ここでは筋力)をにできるので、 かろうじてキャラクターを無力化(意識喪失)させることができるでしょう。
 キャラクターは、特徴ポイントのどれかひとつが0にならなければ、 無力化された(意識不明になった)とは見なされません。
 このあたりがレフリーの裁量ですので、気を付けて下さい。



 同じキャラクターが、一撃で3ポイントのダメージを受けた、と想定します。
 キャラクターの耐久値は3ポイント減少して0/1となりました。
 このキャラクターは無力化(いわゆる意識不明や作動不能に)されていますが、 右側の数値が残っているので、まだ死亡にはなりません。まだ生きています。

 この状態で戦闘が終了するとキャラクターは、サイコロ3個分のダメージを受けることになりました。
 1回目のサイコロは「4」が出たので、それを筋力に適用。 筋力はからへ減少します。
 2回目のサイコロは「2」が出たので、今度は敏捷力へ適用。 敏捷力はからへ減少しました。
 3回目のサイコロは「3」です。敏捷力と耐久力、どちらの特徴ポイントにダメージを適用しても良いのですが、 少しでも多くの特徴ポイントを温存しておきたかったので、 ポイントがだけ残っている敏捷力へ適用することにしました(今回も超過分は切り捨てされました)。
 敏捷力がからへ減少。
 全体の特徴ポイントは、333から003へ減少したことになります。
 3回目のサイコロを耐久力に適用したのであれば、特徴ポイントは010になるでしょう。

 但し、サイコロの目がどんなに大きくても、3つの特徴ポイントすべてがになることは有り得ません。 必要に応じて、ダメージを切り捨てるか、サイコロの目を変更して下さい。
 死亡しなかったのなら、3つの特徴ポイントをすべて0にすることはできませんというルールがあるためです。



 最後は、同じキャラクターが一撃で4ポイントのダメージを受けた場合です。
 キャラクターの耐久値は4ポイント減少して0/0になりました。
 残念ながら、このキャラクターは死亡した、ということになるでしょう。

 特徴ポイントの減少について、それほど悩むことはありません。
 すべての特徴ポイント(筋力、敏捷力、耐久力)はとなるのです。




(2)負傷の診断

 治療を行うためには、その準備段階として診断が必要となります。
 診断のための行為判定は、以下のようになっていました。

> 正しい治療方法を知るためには、
> キャラクターの状態を正確に把握しなければなりません。
>
>負傷を診断する(応急手当てを施す)には:
> 並、〈医学〉、知力、2分(不確定)
>
>レフリー:
> この行為は外傷(手足や頭部へのダメージ)を診断する場合のものです。
> 傷が体内(胸部か腹部)にあるときは時間単位は2倍になり、
> 特殊な装備も必要となります。
> 行為の結果が部分的成功ならば治療はできますが、
> それは最適の療法ではありません。
> レフリーはひそかにサイコロ2個をふり、
> 「事故表」を参照して追加ダメージを決めてください。
> 負傷の程度が「大」である場合はサイコロ3個です。
>
> もしTL7〜11の医療キットが使われる場合、
> 外傷の応急手当は30秒に、内傷の手当ては1分に、時間が減少します。
> もしTL12以上の医療キットが使われる場合、応急手当は瞬間的に完了します。
> もし治療(応急手当)が野外で行われるのならば、難易度がひとつ上がります。
> かすり傷に対しては、感染症が起こらない限り、
> 次の治療(本格的な治療)は必要なく、応急手当だけで十分です。


 「プレイヤーズ・マニュアル、p.76」の記述に、 英文エラッタの追加ルールを書き加えました。

 診断と言いつつ、この行為判定には応急手当も含まれています。
 正確には、英文エラッタの修正で含まれるようになりました。
 行為判定のタイトルも、修正前の診断(Diagnosis)から、 初期診断と負傷への手当(To perform initial diagnosis / treatment for an injury)へ変更されているのです。

 困ったことに、診断不確定な行為です。
 レフリーとプレイヤー、それぞれが行為判定を行って、その双方が「成功」しなければ「完全成功」にはなりません。
 どちらか片方が「成功」しても、もう片方が「失敗」していれば「部分的成功」でペナルティが生じてしまいます。
 プレイヤーが「成功」して、レフリーが「失敗」している場合、 プレイヤーは診断が「成功」した前提で治療を進めている訳ですから、 後で生じるペナルティ(追加ダメージ)が怖いことになるでしょう。



 診断の成功率(完全成功の確率)がどれだけあるのか、 DMの大きさによる成功率の変化を、以下の表に纏めてみました。


             表3 診断の成功率(通常)

BW60_Fig03.gif - 6.45KB

 〈医学〉技能のレベルと知力によるボーナスの合計値をDMにした、診断の成功率です。

 DMが+0の場合、〈医学〉技能レベルが0、知力が4以下でボーナスもない場合、 診断の成功率(完全成功)は34.0%しかありませんでした。
 部分的成功になる確率は24.3%ですから、 プレイヤーが「成功」したと思っても、その4割は失敗している(部分的成功だった)ということになるでしょう。
 DM+0のキャラクターによる診断は、あまり信用できないのです。

 DMが+2の場合、 〈医学〉技能レベルが1で、知力ボーナスが+1(知力が5以上で9以下)の看護師(衛生兵)を想定すれば良いでしょう。
 その場合、診断の成功率(完全成功)は69.4%で、 部分的成功の確率が13.9%でした。
 プレイヤーが診断に「成功」したと思っても、 実はその内、6回中1回は失敗している(部分的成功だった)ということになります。
 DM+0の場合と比べれば信用できるでしょうが、誤診の確率が意外と高いことに驚かされました。
 ちなみに、「101ロボット」に掲載されていた46.と47.の救出ロボットは、 〈医学−1〉の技能と知力9(ボーナス+1)の頭脳を備えています。
 戦場や災害現場ではそんなものだと諦めるべきなのでしょうか。

 DMは+4以上あれば、 診断の成功率(完全成功)は94.5%でした。
 部分的成功の確率は2.7%ですから、部分的成功になる確率は36分の1程度。 気になるレベルではありませんが、無視できる訳でもありません。サイコロ2個で判定している以上、このリスクは甘受すべきなのでしょう。
 ただ、DMが+5以上であっても、成功率はこれ以上増えませんでしたし、部分的成功になるリスクも変わりません。
 現実的に、医者が2.7%も誤診していたら商売にはなりませんから、戦場での応急処置でもなければ、 きちんとした設備の整った病院で慎重に診断を行うのであれば、部分的成功の確率は無視しても良いでしょう。



 野外における診断の成功率(完全成功の確率)は難易度がひとつ上がるそうですが、 その場合の成功率も求めてみました。


             表4 診断の成功率(野外)

BW60_Fig04.gif - 6.39KB

 表3と同じ形式ですが、明らかに成功率が下がりました。
 誤診の可能性も高くなりましたが、成功すること自体、あまり期待できそうにありません。
 戦場での診断は信用できませんし、誤診の可能性が高過ぎます。
 負傷者は即座に後送して、野戦病院での診断を受けるべきなのでしょうか?

 これだけ診断の成功率が下がってしまうと、 応急処置の存在意義さえも無くなってしまうように思えます。
 治療(応急手当)が野外で行われるのならば、難易度がひとつ上がります。というルールは、 この際、無視した方が良いのではないでしょうか。



 今度は、診断に必要な時間を求めてみます。


          表5 診断の所要時間(時間単位=2分)

BW60_Fig05.gif - 4.94KB

 診断の時間単位は2分でした。
 テックレベル6以下の医療キットしか手元にない場合は、これだけの時間が必要となる訳です。
 傷が体内にあるときは時間単位は2倍になる訳ですが、今回は考慮しません。

 どれだけのDMがあっても、その3倍の時間(=6分)が「最短時間」として必要でした。
 「最長時間」はDMの大きさによって変化しますが、 DM+0で18倍の36分、DM+2で16倍の32分、 DM+4で14倍の28分、DM+8で10倍の20分となります。

 平均(期待値)は、 DM+021分、 DM+217分、 DM+413.3分、 DM+87.9分でした。
 有能な医者程、短い時間で確実な(成功率の高い)診断を行えることは明らかです。



 こちらは、時間単位が30秒になった場合の所要時間です。


          表6 診断の所要時間(時間単位=30秒)

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 テックレベル7〜11の医療キットを使用した場合、 診断の時間単位は30秒になります。
 傷が体内にあるときの時間単位は1分ですが、今回も考慮しません。

 「最短時間」はすべて共通で1.5分でした。
 「最長時間」はDMの大きさによって変化しますが、 DM+0で9分、DM+2で8分、 DM+4で7分、DM+8で5分となります。

 時間単位が小さくなったことで、同じ時間でも4倍の人数に対して 診断応急手当を行えることになりました。
 災害現場や戦場において、実に有難い話だと思います。
 ハイテク製品は素晴らしいですね。


 テックレベル12以上の医療キットを使用した場合、応急手当は瞬間的に完了するそうですが、 手当に全く時間が掛からないことは不自然ですので、ハウス・ルールとして、 怪我人1人当たり一律で30秒(=5戦闘ラウンド)を費やすことにしました。




(3)追加ダメージ

 診断に失敗して(部分的成功になって)最適ではない治療を行ってしまった場合、 もしくは、治療を行わずに負傷を放置した場合、 レフリーはひそかにサイコロ2個をふり、「事故表」を参照して追加ダメージを決めるということになっていました (重傷を負っていた場合はサイコロ3個)。
 その追加ダメージが具体的にどんなものなのか、「レフリーズ・マニュアル、p.13」を読み直して考えてみます。

 考察の55回「空軍3:羽ばたき機とホバークラフト」の表13と表14でも確認しましたが、 事故表によるダメージは意外と大きなものになっていました。
 2Dと3Dを振った場合の確率分布を以下に示します。


         表7 追加ダメージ(事故表で2Dを振った場合)

BW60_Fig07.gif - 8.01KB

 事故の程度を決定した後、キャラクターは1D〜4Dのダメージを受けることになっています。

 しかし、ここで大きな問題が見つかりました。
 1D〜4Dの追加ダメージを耐久値に受けた場合、 そのキャラクターは極めて高い確率で死亡してしまうのです。

 具体的には、以下のような確率で無力化もしくは死亡するでしょう。


     表8 追加ダメージを受けた結果による、無力化と死亡の確率

BW60_Fig08.gif - 9.05KB

 表の左端は事故の程度
 それに対応した追加ダメージの大きさが1D〜4D。
 事故表で2Dを振る場合、重大の事故を被ることはありませんが、 事故表で3Dを振ることも(重傷の追加ダメージなどで)あるため、参考に載せておきました。

 表の右側が、1D〜4Dのダメージを受けた際にキャラクターが無力化、 もしくは死亡する確率です。
 キャラクターの耐久値は、 すでにかすり傷を受けて、1ポイント減少している状態を想定しました。
 最低でも1ポイントのかすり傷を受けない限り、 診断治療も必要ないので、そういう前提にしています。



 サンプルとして用いている、特徴ポイント=333、 耐久値=2/2のキャラクターですが、 現状での耐久値は1/2です。

 このキャラクターが誤診や放置によって追加ダメージを受ける場合、 事故表の結果が「3〜6」の「微小事故」、1Dのダメージだけであっても、 無力化の確率が100%死亡の確率が66.7%もありました。
 追加ダメージのサイコロはレフリーが密かに振るものですから、プレイヤーからするとあまりにも唐突です。
 特定の時間が経過した後、いきなりレフリーから 「君のキャラクターは追加ダメージを5ポイント受けて死亡した」と言われてしまうのです。
 何だか、物凄く理不尽ですよね。

 事故表の結果が「7〜10」の「小事故」は2Dのダメージなので、 無力化の確率が100%と、 死亡の確率が97.2%
 事故表の結果が「11〜12」の「大事故」になれば3Dのダメージですから、 無力化の確率は100%で、 死亡の確率も100%

 唐突で確実な死亡が起こり得る訳で、私がプレイヤーの立場だったら間違いなく怒ります。
 「誤診や放置が問題になるのならば、もっと早く教えてくれ」と。



 耐久値がもう少し大きなキャラクター、 耐久値=2/54/8のキャラクターであっても、 それほど死亡率は変わりません。
 どう考えても、このルールは変です。
 与えられるダメージが大き過ぎて、追加ダメージを1回受けるだけでも死亡率が高くなり過ぎます。

 と、ここで思いついたことがありました。

 もしかしたら「事故表」で与えられる1D〜4Dのダメージは、 耐久値ではなく特徴ポイントに適用するのではないでしょうか?



 MT版のルールの多くはCT版から引き継がれています。
 行為判定という概念が組み込まれましたが、それでもCT版に準拠したルールは多いのです。
 デザイナーがCT版のダメージ適用(特徴ポイントへの適用)を大前提として、 「事故表」のダメージの大きさ(1D〜4D)を決めた可能性は高いでしょう。
 そもそも、行為判定のルール自体は CT版の頃(トラベラー・ダイジェスト・グランド・ツアー)から登場し、 その中で試行錯誤が行われていました。
 ダメージの大きさが特徴ポイントへの適用を前提としていても不思議はありません。



 そんなことを思いついたので、表7と表8を作り直してみました。
 特徴ポイントへ適用するダメージ1D(=サイコロ1個分)は、 耐久値へ適用するダメージ1ポイントに相当する、という考えに従ったものです。
 その結果は、以下のようになりました。


         表9 追加ダメージ(事故表で2Dを振った場合)

BW60_Fig09.gif - 8.55KB

 2Dのサイコロで事故の程度を決定し、 キャラクターは1〜4ポイントのダメージを受けることになりました。
 期待値は、2Dを振る場合で1.69ポイント、 3Dを振る場合で2.50ポイントです。
 この程度のダメージならば、キャラクターは追加ダメージを受けた途端に死亡する、 などということもなく、数回の追加ダメージを耐え抜くこともできるでしょう。



 具体的な無力化率死亡率は、以下のようになりました。


     表10 追加ダメージを受けた結果による、無力化と死亡の確率

BW60_Fig10.gif - 8.61KB

 表の左端は事故の程度
 それに対応した追加ダメージの大きさは、1〜4ポイントに変わりました。



 サンプルとして用いている、現状での耐久値=1/2のキャラクターも、簡単には死ななくなります。

 このキャラクターが誤診や放置によって追加ダメージを受ける際、 事故表の結果が「3〜6」の「微小事故」であれば、 無力化の確率は100%で確実ですが、 すぐに死亡することはありません。
 サイコロ運が良ければ、追加ダメージを毎回1ポイントで済ませることができるかも知れないのです。
 そうした場合、キャラクターは2回の追加ダメージに耐え、 3回目の追加ダメージで死亡する、ということになるでしょう。
 サイコロ運が悪くて「11〜12」の「大事故」になれば 3ポイントのダメージを受けて死亡してしまいますが、 これならば体力(耐久値)の少なさによる悲劇だと受け入れられます。

 キャラクターがかすり傷を負っている場合、 追加ダメージを受ける時間は2D時間後、その時間は最短で2時間、最長で12時間となりました。
 運が悪ければ、2時間後に3ポイントのダメージを受けて死亡するかも知れませんし、 反対に運が良ければ、12時間後に1ポイントのダメージを受けるだけで済む。 つまり、無力化される(意識を失う)だけで済むかも知れません。

 キャラクターが無力化状態に陥ると、 その負傷状態は軽傷、もしくは重傷として扱われるようになります。
 この負傷状態で追加ダメージを受ける間隔は1時間毎
 キャラクターはどんなにサイコロ運が良くても、あと2時間しか生き延びることができません。

 かすり傷状態の時間と合わせて2〜14時間の範囲が、 キャラクターが治療を受けずに生き延びられる時間、となるでしょう。
 1ポイントでもダメージを受けてしまえば、耐久値=2/2のキャラクターの余命は数時間。
 耐久値の小さいキャラクターは、例えかすり傷であっても、負傷を放置してはいけないのです。



 耐久力の大きなキャラクターであればどうでしょうか?
 極端な数字ですが、特徴ポイントの前半がFFF、 耐久値=6/10のキャラクターをサンプルとして考えてみましょう。

 1ポイントのダメージを受けたため、現状の耐久値は5/10に下がっています。
 かすり傷の追加ダメージは1〜3ポイントで、ダメージを受ける間隔は2D時間
 キャラクターは無力化されるまで2〜5回の追加ダメージを必要とするでしょう。
 その時間は最短(2D=2時間、追加ダメージで毎回3ポイントのダメージを受ける場合)で4時間。
 最長(2D=12時間、追加ダメージで毎回1ポイントのダメージしか受けない場合)で60時間となりました。
 4〜60時間という数字は範囲が広すぎて極端ですが、実際にサイコロ運次第なのです。

 無力化された後、キャラクターが追加ダメージを受ける間隔は1時間毎
 追加ダメージの大きさは、キャラクターが重傷に陥った可能性も考慮するならば、1〜4ポイントに増えました。
 キャラクターが生き延びられる時間は、最短で追加ダメージ3回分の3時間、最長で10回分の10時間です。

 かすり傷状態の時間と合わせて7〜70時間の範囲が、 キャラクターが治療を受けずに生き延びられる時間、となるでしょう。
 耐久値が人類として最大値の6/10になっているキャラクターであっても、 1ポイントのダメージを受け、かすり傷の負傷状態となってしまえば、余命は数時間〜数十時間しかありません。
 耐久値の大きいキャラクターであっても、負傷を放置してはいけないことが実感できました。

 メガトラベラーにおける負傷のリスクは、予想以上に恐ろしいものだったのです。




(4)永続的な追加ダメージ

 本格的な治療の行為判定で事故が発生した場合は、 キャラクターに永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)が与えられることがあります。

> 治療行為の判定で「微小事故」または「小事故」が起こったときは、
> 単にすでに受けているダメージに追加のダメージを受けるだけです。
>
> 「大事故」または「重大事故」が起こったときは、
> 最良・最新の治療技術をもってしても完全回復はできません。
> もう一度「事故表」でサイコロ2個をふり、このキャラクターの受けた
> 永続的ダメージ(特徴ポイントの減少)を決めてください。




 本格的な治療の行為判定で事故が発生する確率は36分の1(=2.8%)
 その中で、「大事故」が発生する確率は8.6%でした。
 それらを掛け合わせると、0.2%=2.8%×8.6%。
 本格的な治療を420回行うと、 その内1回は「大事故」が起きるという計算になりました。
 事故表で振るサイコロの数は2個なので、有難いことに「重大事故」が起こる可能性はありません。

 極めて低い確率ではありますが、 本格的な治療の行為判定で「大事故」が起きてしまった場合は、 再び「事故表」でサイコロ2個を振って、キャラクターに与えられる 永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)の大きさを決定します。

 その分布は表9にも示した通り、
 1ポイント(サイコロ1個分)のダメージになる確率が40.0%
 2ポイント(サイコロ2個分)のダメージになる確率が51.4%
 3ポイント(サイコロ3個分)のダメージになる確率が8.6%
 でした。

 耐久値に与えるダメージ1ポイントは、 特徴ポイントに与えるダメージのサイコロ1個分に相当します。
 これだけのダメージが永続的に与えられてしまう、というルールは怖いと思いました。

 ちなみに、このダメージは特徴ポイントの前半(筋力・敏捷力・耐久力)だけに適用されるとは限りません。
 ルール的には特徴ポイントの後半(知力・教育度・社会身分度)にも適用できるようです。
 頭部の負傷、薬物の誤用などによって、知力や教育度が低下することは十分に有り得ますし、 容貌の変化(顔面への火傷など)によって、実際の社会身分度が変わらなくても、周囲の人々の対応が変わってしまうことは有り得るでしょう。
 この永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)というルールは、そういったことも再現しているようです。



 負傷の分類負傷の診断追加ダメージについて、 一通りの考察が終わりましたので、今度は個別の負傷について、考えてみることにしましょう。





かすり傷の治療


 かすり傷の治療に関しては「プレイヤーズ・マニュアル、p.76」に、 以下のようなルールが記述されていました。

> かすり傷を負ったキャラクターは、
> 2D時間以内に診断を受け、少なくとも応急処置を受けなければなりません。
> もし時間内に応急処置が成功しないなら、
> サイコロ2個を振って「事故表」を参照し、
> そこに示されている追加ダメージを適用してください
> (この追加ダメージは、細菌の感染や
>  外傷の悪化などによるものと考えられます)。


 このようなルールですから、かすり傷を負ったキャラクターは 2D時間以内に診断を受け、応急処置が成功すれば、何のペナルティを受けることもないようです。
 問題は、2D時間以内に応急処置を受けなかった、 または、応急処置が失敗した場合でしょうか。



 かすり傷を負ったキャラクターが、時間がないとか、 医療キットを失くしたというような理由で応急処置を受けなかった場合。
 あるいは、応急処置を施したがサイコロ運が悪く、 間違った治療をしていた(部分的成功だった)場合。
 レフリーはひそかにサイコロを振って2D時間を求めます。
 そしてキャラクターがその時間になっても応急処置を受けないか、 応急処置をやり直さないのであれば、 容赦なく事故表で2Dを振り1〜3ポイントのダメージを与えることになるのです。
 そのダメージでキャラクターが死亡せず、それでも応急処置を受けない場合は、 更に2D時間後、事故表で2Dを振り続けます。
 上記の2D時間は、最初に振ったサイコロの目を繰り返して使えば良いでしょう。
 何度もサイコロを振るとプレイヤーが「次の追加ダメージは何時間後だ」と予測できませんので、 トラブルの元になります。
 その時間は最短で2時間、最長で12時間、平均は7時間でした。 丸一日(24時間)も経ったら、最低2回、平均3回の追加ダメージを受けていることになります。
 追加ダメージは最低でも1ポイントのダメージですから、どんなに丈夫なキャラクターでも 累積したダメージによって重態に陥っているのではないでしょうか。
 応急処置を受けない、または応急処置に失敗するということは、 とても危険なことなのです。



 2D時間が経過して感染症等を引き起こしてしまった場合、 応急処置ではない、本格的な治療が必要となるでしょう。
 追加ダメージを受けても、負傷の程度かすり傷のままであるならば、 それを治療するために以下の行為判定を行って下さい。

>かすり傷を治療するには:
> 易、〈医学〉、知力、10分。
>
>レフリー:
> 野外での治療は難易度が1レベル上がります。
> 医療キットなしで治療する場合も難易度が1レベル上がります。
> 野外で医療キットを使わずに治療するなら、難易度は2レベル上がります。


 具体的には、薬を塗り直す(再度の殺菌)とか、傷口に残っていた異物を取り出す、といった処置になるのでしょうか?

 応急処置本格的な治療に成功した後、 キャラクターの特徴ポイントは、すべてが1日に1ポイントずつ回復していきます (筋力・敏捷力・耐久力のすべてが回復するならば、合計で3ポイントが回復することが有り得るということです)。
 耐久値の回復については記述がないので分かりませんが、 すべての特徴ポイントが回復した時点で耐久値も回復すると思われます。
 ちょっと面倒ですが、その時点における特徴ポイント3つを合計し、 その数値(生命力)から現時点の耐久値を求めて下さい。

 回復(治療)のため、3Dcr分の薬品や医療器具が必要と成りますが、野外で応急処置を行った場合、 それらは医療キットの中に含まれていると思われますので、その場で支払う必要はありません。
 文明地に戻った際に消費した分を補充する、という形で費用を支払って下さい。



 かすり傷に対する本格的な治療の成功率を、以下の表に示しました。


          表11 本格的な治療の成功率(かすり傷)

BW60_Fig11.gif - 5.29KB

 〈医学〉技能のレベルと知力によるボーナスの合計値をDMにした、本格的な治療の成功率です。

 サイコロの目で「2」が出た場合(致命的失敗が起きた場合)は、「事故」が発生します。
 「事故表」で2Dを振って下さい。
 事故が「微小事故」か「小事故」である場合は、 追加ダメージを1〜2ポイント受けるだけで済みますが、 「大事故」だった場合にはキャラクターに 永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)が与えられます。



 難易度が〈易:3+〉になる条件は、 設備が整った病院で行われる本格的な治療だけでしょう。
 この条件だとDM+0の素人でもほとんど失敗することはありません。 安心して本格的な治療を受けることができる筈です。
 サイコロの目で「2」が出た時(致命的失敗が起きた時)だけは、仕方がないと諦めましょう。

 この行為判定で致命的失敗となった場合は、 「事故表」で2Dを振り、キャラクターに追加ダメージを与えて下さい。
 この追加ダメージによって、キャラクターの耐久値は1〜3ポイント、 特徴ポイントはサイコロ1〜3個分減少します。



 難易度が〈並:7+〉になる条件は、 医療キットを使って、野外で本格的な治療を行う場合、になると思います。
 設備が整った病院でありながら、医療キット(医療器具や薬品)がない状態……昔、 経済制裁を受けていた某産油国家の民間病院がそんな状態だったと聞いていますが、トラベラー世界でも有り得るのでしょうか?
 とりあえず、戦場で本格的な治療を行う場合は、これに該当するでしょう。
 野戦病院へ後送された場合は、野外(テント等)であっても、設備が整った病院として扱うべきだと思います。

 この条件下ですと、DM+0の素人だと成功率が58.3%しかありません。
 半分より少し多いだけですから、実に不安な状況です。
 しかし幸いなことに、この行為判定は危険でも致命的でもありませんでした。 事故が起こるのは致命的失敗、サイコロの目が「2」だった時だけです。 素人でも安心して失敗できるのではないでしょうか。
 致命的失敗になると、キャラクターは追加ダメージを受けてしまうのですが。

 DM+2の看護師ならば83.3%の成功率を得られました。
 この成功率ならば、2回か3回の行為判定で確実に成功できるでしょう。

 DM+4以上の医者ならば97.2%、ほぼ確実な成功を望めます。
 問題にはなりません。



 難易度が〈難:11+〉になる条件は、 医療キットが無く、野外で本格的な治療を行う場合です。
 かなり無茶な条件だと思いますが、DM+0の場合の成功率は8.3%、 DM+2の成功率は27.8%、DM+4の成功率は58.3%、 DM+8の成功率はほぼ確実な97.2%でした。
 技能レベルが高く、知力の高い医者ならば、医療キットなしでも治療が可能だというのは信じ難い話ですが、 何処かのサバイバル漫画の如く、何かを代用品として使うのでしょう。
 それはともかく、この条件で本格的な治療を行うことは、あまり成功を望めません。



 しかし幸いなことに、致命的失敗が起こらない限り、 本格的な治療に失敗してもキャラクターが死ぬことはありません。
 何度でもやり直すことが可能ですから、成功するまで本格的な治療の行為判定を繰り返せば良いのです。
 行為判定の時間単位が10分で、平均は105分〜40分でした。
 「 8時間にも及んだ難しい手術」というような言い方が小説やドラマでなされていますが、 それをメガトラベラーで再現すると「十数回の行為判定を繰り返して、ようやく成功した手術」になる、 のではないでしょうか。
 メガトラベラーのルールは、現実を上手く再現してあるものだと感心します。



 今度は、本格的な治療に必要な時間を求めてみました。


        表12 本格的な治療の所要時間(時間単位=10分)

BW60_Fig12.gif - 5.11KB

 本格的な治療の時間単位は、 治療の難易度や負傷の程度に関わらず、 10分でした。

 「最短時間」として30分が必要です。
 「最長時間」はDMの大きさによって変化しますが、180分(=3時間)〜100分(=1時間40分)でした。

 かすり傷であるにも関わらず、応急処置を受けなかったり、 あるいは、応急処置に失敗した場合は、本格的な治療を必要とします。
 本格的な治療は時間も掛かり、野外では失敗する可能性も高いので、 かすり傷は出来る限り早めに応急処置を受け、 それに成功しておくべきだ、と言えるでしょう。
 かすり傷を放置して良い理由など、何処にもないのです。



 診断の行為判定が面倒に感じるのであれば、 かすり傷に対する応急処置は自動的に成功する、ということにしても良いでしょう。
 〈医学〉技能の持ち主が、医療キットを用いて行う、という条件は守るべきですが。
 そうすることによって、プレイアビリティは改善されると思われます。
 薬品や医療器具の費用は3D6crですが、簡略化する場合は一律で10crにして下さい。





軽傷の治療


 軽傷は、キャラクターの特徴ポイントひとつが0になった状態です。
 そのキャラクターは必ず、意識を失っていることでしょう (ルール上、意識を失わなければ特徴ポイントのひとつが0になることは有り得ません)。

 軽傷の治療に関するルールは、 「プレイヤーズ・マニュアル、p.76」に記述されている通りです。

> 軽傷を受けたキャラクターは、
> 1D×10分以内に診断を受け、少なくとも応急処置を受けなければなりません
> (このキャラクターは3D分間、意識不明のままです)。
> もし時間内に応急処置が成功しなかったなら、
> 「事故表」でサイコロ2個をふって、そこに示されている
> 追加ダメージをキャラクターに適用してください
> (この追加ダメージは、細菌の感染や
>  外傷の悪化などによるものと考えられます)。
> その後も手当を受けるか、あるいは死亡するまで、
> 1時間ごとにサイコロをふり続けてください。
> 
> 銃撃や刀剣、破片などによる傷は、簡単な外科手術が必要です。
> レーザー火器やエネルギー火器による火傷には外科手術は必要ありません。
> 
> 軽傷のキャラクターは、2D日のあいだ絶対安静にしていなければなりません。
> このキャラクターを他の人が動かすことはできますが、
> ベッドで横になったままでなくてはなりません。
> 安静が必要な時期には、3つの特徴ポイントは負傷時の値と最初の値の
> ちょうど中間までしか回復しません。
> この期間がすぎたあとは、すべての特徴ポイントが完全に回復していきます。


 今更ですが、意識を失っている時間がはっきりと明記されていました。
 軽傷を受けたキャラクターは3D分間意識不明のまま、であるとのこと。
 3D分間ですから、最短でも3分、最長で18分です。
 最短の3分でも戦闘ラウンドに直せば30戦闘ラウンドですから、多分、戦闘中に目を覚ますことはないでしょう。
 サイコロを振ることが面倒な場合は、一律10分間にしても良いのではないでしょうか。

 診断応急処置は、 1D×10分以内に行わなければなりません。
 1D×10分以内ですから、最短で10分、最長でも60分(=1時間)以内です。
 かすり傷2D時間以内とは単位から違いました。
 のんびりと2時間以内に応急処置を受ければ良いという訳にはいかないのです。
 サイコロ運が悪い場合は負傷してから10分後に、追加ダメージを受けるかも知れません。
 その後、2回目以降の追加ダメージは1時間ごとですが、 早急に診断応急処置を受けなければならないことは明らかです。
 負傷した状態を放置していたら、軽傷を受けたキャラクターは2〜3時間で死亡してしまうでしょう。
 診断応急処置に失敗した場合も同様です。

 診断応急処置を受けた後も、キャラクターは自力で動くことができません。
 ベッドで横になったままということですから、担架などで運ばれることになります。
 その際には行動可能(戦闘可能)な兵士2人分の手を煩わせてしまう訳で、 軽傷を受けたキャラクターだけでなく、合わせて3人分の戦力が使えなくなってしまいました。
 やはり、負傷者の発生という事態は厄介です。



 診断応急処置に成功したからと言って、それで安心することは出来ません。
 軽傷を受けたキャラクターに本格的な治療を行うため、 以下の行為判定を行って下さい。

>軽傷を治療するには:
> 並、〈医学〉、知力、10分。
>
>レフリー:
> 野外での治療は難易度が1レベル上がります。
> 医療キットなしで治療する場合も難易度が1レベル上がります。
> 野外で医療キットを使わずに治療するなら、難易度は2レベル上がります。


 戦場における軽傷の多くは、銃撃や刀剣、破片などによる傷でしょう。
 その場合、簡単ではありますが外科手術が必要になります。
 外科手術が必要になったとしても、ルール上は治療費が高額になるだけですが。

 レーザー火器やエネルギー火器による火傷は手術が不要でした。
 しかし、それらの武器によるダメージは死亡率が高いので、手術自体が不要になっている可能性が高いでしょう。

 治療費と言えば、HJ社の誤訳があります。
 軽傷の治療費は、
>外科手術をするならCr2D×10、しないのならCr1D×500。
 と「プレイヤーズ・マニュアル、p.76」に書かれていましたが、これは逆でした。
 正しい訳は、
>外科手術をするならCr1D×500で、手術をしないならCr2D×10。
 なのです。御注意を。



 外科手術を含む本格的な治療を終えたキャラクターは、 2D日のあいだ、絶対安静となります。
 2D日の期間を決める際は、 前半の1D日後半の1D日が区別できるようにして、 サイコロを振って下さい。
 前半の1D日後半の1D日は入院費用が異なるので、区別は重要です。
 前半の1D日の入院費用は1日500cr、 後半の1D日の入院費用は1日100crでした。
 軽傷の場合、経済効果はほとんどありませんが、 後半の1D日を病院で過ごさず、自宅療養を行うこともできます。
 その場合の費用は1日当たり50crでした。

 軽傷を受けたキャラクターの特徴ポイントは、 プレイヤーの選択した特徴ポイント1つが、1日に1ポイントずつ回復していきます。
 しかし安静が必要な間、特徴ポイントは負傷時の値と最初の値のちょうど中間までしか回復しません
 特徴ポイント=333のキャラクターが 軽傷を負って013になったのならば、 2D日の安静期間が終了した時点で、 特徴ポイントは123までしか回復しない、ということです。
 安静期間が終了した後、残りの特徴ポイントは同じペースで回復していきますから、 上記のキャラクターが全快するまでには3日が必要になるでしょう。
 特徴ポイントの負傷時の値と最初の値との差が奇数である場合、端数は切り捨てにしました。
 耐久値の回復はかすり傷と同じように、 その時点での特徴ポイントの合計から求めれば良いでしょう。

 特徴ポイントが大きいキャラクターは、安静期間の日数より回復すべき特徴ポイントの方が多い、という状況が有り得ます。
 特徴ポイント=CCCのキャラクターが 軽傷を負って05Cになった時などが、それに相当するでしょう。
 安静期間の日数は2D日ですが、 上記のキャラクターが回復すべき特徴ポイントは、筋力の6と敏捷力の3を合わせて9ポイント。
 2D日のサイコロが8以下だった場合は、明らかに日数が足りなくなるのです。
 そうした場合は、これもハウス・ルールですが、 安静最後の日に残りの特徴ポイントが一気に回復する、ということにしました。
 安静期間の日数へ回復する特徴ポイントを均等に割り振るよりも手軽です。

 安静期間の終了後、このキャラクターの特徴ポイントは68Cまで回復しています。
 全快してCCCに戻るまで、更に10日間という日数が必要となるでしょう。



 軽傷を受けたキャラクターが戦線に復帰するためには、 最低でも2D日の絶対安静が必要だと判明しました。
 MT版における耐久値の減少で表現するならば、 左側の数値がゼロになって無力化されたキャラクターは、 2D日の間、戦闘に参加できない訳です。
 軽傷であっても、負傷者の発生は大きな戦力ダウンを招くことが実感できました。



 軽傷本格的な治療する場合の成功率を、以下に示します。


           表13 本格的な治療の成功率(軽傷)

BW60_Fig13.gif - 5.27KB

 〈医学〉技能のレベルと知力によるボーナスの合計値をDMにした、本格的な治療の成功率です。

 サイコロの目で「2」が出た場合(致命的失敗が起きた場合)は、「事故」が発生します。
 「事故表」で2Dを振って下さい。
 事故が「微小事故」か「小事故」である場合は、 追加ダメージを1〜2ポイント受けるだけで済みますが、 「大事故」だった場合にはキャラクターに 永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)が与えられます。



 軽傷を治療する場合、最適な条件であっても難易度は〈並:7+〉です。
 設備が整った病院であってもDM+0の素人では成功率が半分くらい、58.3%でした。
 追加ダメージの間隔が1時間と短いので、やり直している余裕はありません。
 他に人が居なければ仕方ありませんが、DM+0の素人に治療を任せることは、リスクが高過ぎるようです。

 DM+2の看護師になると、成功率は83.3%まで上がりますが、まだリスクがありました。

 DM+4以上の医者ならば97.2%、ほぼ確実な成功を望めます。
 問題にはなりません。



 医療キットを使って、野外で本格的な治療を行う場合、 具体的には戦場で本格的な治療を行う場合になりますが、 治療の難易度は〈難:11+〉になります。
 DM+0の場合の成功率は8.3%、 DM+2の成功率は27.8%、 DM+4の成功率は58.3%
 軽傷を受けたキャラクターを後送できない、という状況でもなければ、治療をしたい成功率ではありませんでした。
 DM+8の医者ならば成功率は97.2%、ほぼ確実な成功を望めるでしょう。
 戦場での本格的な治療は、名医の領分なのです。



 医療キットが無く、野外で本格的な治療を行う場合は、 難易度が〈至難:15+〉になりました。
 DMが+2以下の場合、成功率は0.0%
 DMが+4でも成功率は8.3%
 DMが+8になっても成功率は58.3%までしか増えません。



 蛇足ですが、軽傷治療費について、 最も多く掛かった場合と、最も少なく済んだ場合の数字を計算で求め、以下に纏めてみました。


               表14 軽傷の治療費

BW60_Fig14.gif - 6.94KB

 手術あり手術なしの場合。
 それぞれについて、最大値(サイコロの目がすべて「6」だった場合)と、 最小値(サイコロの目がすべて「1」だった場合)の治療費を求め、合計した結果が上の表になりました。

 まず、治療に手術を伴った場合の治療(手術)費用が高額でした。
 1D6×500crですので、当然と言えば当然なのですが。

 また、意外と入院費用も高くなっています。
 前半の1D日は1日当たり500crも掛かってしまいますので、 サイコロの目で「6」が出ると3,000crも掛かってしまうのです。
 手術ありの場合で半分以上、 手術なしの場合だと9割以上が入院費用でした。

 軽傷治療費は、 手術ありの場合で1,050〜6,600cr、手術なしの場合で570〜3,720cr。
 平均値は、手術ありの場合で3,825cr手術なしの場合で2,145crです。
 かすり傷と比べると、治療費が一気に高騰してしまいました。





重傷の治療


 重傷は、キャラクターの特徴ポイント2つが0になった状態でした。

 重傷の治療に関するルールを、以下に抜粋します。

> 重傷を受けたキャラクターは、
> 2D分以内に診断を受け、少なくとも応急処置を受けなければなりません
> (このキャラクターは1D時間、意識不明のままです)。
> もし時間内に応急処置が成功しなかったなら、
> 「事故表」でサイコロ3個をふって、そこに示されている
> 追加ダメージをキャラクターに適用してください
> (この追加ダメージは、出血多量や
>  外傷の悪化などによるものと考えられます)。
> その後も、手当を受けるか、あるいは死亡するまで、
> 1時間ごとにサイコロをふり続けてください。
> 
> 重傷の治療には必ず外科手術が必要です。
> 
> 重傷のキャラクターは、1D×10日のあいだ
> 絶対安静にしていなければなりません。
> このキャラクターを他の人が動かすことはできません。
> しかも、ベッドで横になったままでなくてはなりません。
> 安静にしていなければならない期間中には、すべての特徴ポイントが
> 負傷時の値と最初の値のちょうど中間までしか回復しません。
> この期間がすぎたあとは、すべての特徴ポイントが完全に回復していきます。


 重傷の場合、意識を失っている時間は1D時間まで延びました。
 最短でも1時間ですから、治療に成功しない限り意識は戻らない(意識不明の重態が続いてしまう)のでしょう。
 気味が悪いくらい、妙にリアルなルールです。

 診断応急処置は、 2D分以内に行わなければならない、とのこと。
 かなり厳しいです。
 戦闘が終了したら、軍医は真っ先に重傷を受けたキャラクターの元へ走らなければならないようです。
 テックレベル6以下の医療キットしか手元にない場合、診断の所要時間から考えて、 軍医1人は重傷を受けたキャラクター1人を助けることしかできません。
 テックレベル7〜11の医療キットがあれば助けられる重傷患者は3〜4人まで増えるかも知れませんが、 それが時間との競争であることに違いはないようです。

 重傷の追加ダメージは「事故表」で3Dを振ることになっていますから、追加ダメージも多くなりました。
 重傷を受けたキャラクターが1回でも追加ダメージに耐えることができるのか、実に怪しい話です。
 追加ダメージを1回でも受けたら、死亡が確定してしまうのではないでしょうか。

 診断応急処置を受けた後も、キャラクターは自力で動くことができません。
 さらに、担架などで運ぶことも禁じられてしまいました。
 無理に運べないこともないのでしょうが、 応急処置を行った後でも後送中に傷が開く(追加ダメージを受ける)、 という事態が起こりそうな気がします。
 戦場で重傷を受けるということは、 ほとんど死亡の宣告に等しいのではないでしょうか。



 重傷からの回復には手術が必要不可欠だそうですが、 本格的な治療を行う際には、以下の行為判定を行って下さい。

>重傷を治療するには:
> 難、〈医学〉、知力、10分。
>
>レフリー:
> 野外での治療は難易度が1レベル上がります。
> 医療キットなしで治療する場合も難易度が1レベル上がります。
> 野外で医療キットを使わずに治療するなら、難易度は2レベル上がります。


 御覧の通り、かなり難易度が高くなってきました。
 成功率がどれだけあるのか、心配です。

 それはともかく、治療費(手術費用)は1D6×1,000crでした。



 安静期間は1D6×10日です。
 入院費用が異なる日数については、同じサイコロの目を使って、 1日500crの入院期間は1D×1日、1日100crの入院期間は1D×9日とすれば良いでしょう。
 後半の1D×9日は、自宅療養を行うことで費用を1日50crまで抑えることもできます。 重傷の場合は入院日数が長いので、自宅療養による費用低減効果もそれなりにありました。



 重傷を受けたキャラクターの特徴ポイントも、 プレイヤーの選択した特徴ポイント1つが、1日に1ポイントずつ回復していきます。
 安静が必要な間、特徴ポイントは負傷時の値と最初の値のちょうど中間までしか回復しません
 特徴ポイント=333のキャラクターが 重傷を受けて003になったのならば、 1D×10日の安静期間が終了するまで、 特徴ポイントは113までしか回復しない、ということです。
 結構、じれったいですね。
 今回も特徴ポイントの負傷時の値と最初の値との差が奇数である場合、端数は切り捨てにしました。



 戦場で重傷を受けたキャラクターは、病院へ運ぶ(後送する)だけでも一苦労でしょう。
 よほど恵まれた環境でもない限り、重傷になるということは 死亡の一歩手前に居るということを意味します。
 運良く生き残れたとして、戦線に復帰するためには1D×10日の安静期間が必要ですから、 当分の間は戦場に立つこともできません。



 重傷を受けたキャラクターに対する本格的な治療の成功率を、以下に示しました。


           表15 本格的な治療の成功率(重傷)

BW60_Fig15.gif - 5.54KB

 〈医学〉技能のレベルと知力によるボーナスの合計値をDMにした、本格的な治療の成功率です。

 サイコロの目で「2」が出た場合(致命的失敗が起きた場合)は、「事故」が発生します。
 「事故表」で2Dを振って下さい。
 事故が「微小事故」か「小事故」である場合は、 追加ダメージを1〜2ポイント受けるだけで済みますが、 「大事故」だった場合にはキャラクターに 永続的なダメージ(回復できない特徴ポイントの減少)が与えられます。



 重傷を治療する場合、 最適な条件での難易度が〈難:11+〉になってしまいました。
 DM+0の場合の成功率は8.3%、 DM+2の成功率は27.8%、 DM+4の成功率は58.3%
 重傷を受けたキャラクターの治療には、DM+5以上の名医が不可欠なようです。
 DM+8の医者ならば成功率は97.2%、ほぼ確実な成功を望めました。



 医療キットを使って、野外で本格的な治療を行う場合、 戦場で本格的な治療を行う場合の難易度は、〈至難:15+〉です。
 DMが+2以下の場合、成功率は0.0%
 DMが+4でも成功率は8.3%
 DMが+8の名医でも成功率は58.3%、半分程度しかありませんでした。



 医療キットが無く、野外で本格的な治療を行う場合は、 難易度が〈不可能:19+〉になりました。
 成功を期待することは無駄だと思います。
 行為判定を繰り返しても構いませんが、 成功するよりも先に致命的失敗の追加ダメージで死んでしまう可能性が高いのではないでしょうか。



 重傷治療費について、 最も多く掛かった場合と、最も少なく済んだ場合の数字を以下に纏めました。


              表16 重傷の治療費

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 重傷の場合、自動的に手術ありとなります。
 最大値(サイコロの目がすべて「6」だった場合)と、 最小値(サイコロの目がすべて「1」だった場合)の治療費を求めました。

 今回も入院費用が高額でした。
 治療費全体の半分以上を占めているのではないでしょうか。

 治療(手術)費用も嵩んでいます。

 重傷治療費は、1,950〜14,400cr。
 平均値は、8,175crでした。
 重傷を受けたキャラクターは、治療費の捻出にも苦労するような気がします。





死亡の治療(蘇生)


 メガトラベラーにおいて、死は必ずしも絶対的なものではありません。
 耐久値の右側の数字がゼロになった場合、そのキャラクターは死亡する訳ですが、 高度な医療設備、豊富な資金、そして幸運(サイコロ運)があれば、キャラクターは生き返る(蘇生する)ことも可能なのです。

 この章では、その復活ルール(死亡の治療)について考察することにしました。
 例によって、「プレイヤーズ・マニュアル、p.77」から引用します。

> キャラクターの特徴ポイントがすべてゼロになったからと言って、
> 即座に死んでしまうわけではありません。
> 1D分以内に診断すれば、かろうじて命を取り留めることが
> −−少なくとも、あとでテクノロジー・レベル9+の病院施設で治療を受けたり、
> 2等寝台で輸送したりできるくらいには−−できるでしょう。
> 
> このキャラクターが2等寝台の中やテクノロジー・レベル9+の
> 病院施設にいるあいだは、特徴ポイントは0のままです。
> そして、生命維持の処置がわずかでも切れれば
> (激しい揺れや酸素供給の途切れなど)、ただちに死が訪れます。
> 医療看護が続けられ、生命維持が脅かされない限り、
> この状態を2D月間続けることができます。
> 
> このキャラクターを回復させるためには、テクノロジー・レベルが
> 少なくとも13以上の病院で診断し、治療することが必要です。
> 2D月の期間中に治療が成功しない場合、このキャラクターは死んでしまいます。
> 
> 施設のテクノロジー・レベルが13を上回っているならば、
> 超過の1ポイントごとにDM+1を診断・治療に適用することができます。
> 治療が成功すると、キャラクターは昏睡状態のままですが、
> 3つの肉体的特徴ポイントがすべて1に戻ります。
> 
> 治療を受けたあと、すべての特徴ポイントは4まで戻り
> (最初の値が4より小さければその値まで)、
> 制限はあるものの、肉体的な負担のかからない活動を再開することができます。


 引用してみましたが少し分かり難いので、段階を追って考えていきます。
 英文エラッタで補足されている部分についても考察してみました。




(1)応急処置

 キャラクターの耐久値が0/0に、 特徴ポイント(筋力、敏捷力、耐久力)が000になった時点で、 そのキャラクターは死亡します。
 実際にサイコロを振っているとなかなかタイミングが合いませんが、ルール的に考えれば、 耐久値と特徴ポイントは同時にすべてがとなるでしょう。

 死亡したキャラクターに対する診断応急処置は 前述の通り、1D分以内に成功しなければなりません。
 また、その際にはテックレベル12以上の医療キットが必要であるとのこと。

 応急処置に成功したのであれば、キャラクターをある程度、動かすことが可能になります。
 1D日以内に、キャラクターをTL9+の医療設備(あるいは二等寝台)に収容して下さい (これらは英文エラッタで追加された条項です)。




(2)保存と輸送

 死亡したキャラクターは、二等寝台かTL9+の医療設備に収容することで、 2D月間、その状態を続けることができます。
 その2D月間に、キャラクターをよりテクノロジー・レベルが高い世界へ運んでいくか、 あるいは必要な治療費を掻き集める、ということになるでしょう。

 この状態のキャラクターは、非常に脆弱です。
 キャラクターの特徴ポイントは0のままですし、 生命維持が不安定になれば(例えば激しい振動、酸素供給の途絶などが起きれば)すぐに死んでしまいます。

 この期間の治療費(生命維持費)は、1週間当たり1,000crでした。
 テクノロジー・レベル9+の病院施設にいるあいだ2等寝台で輸送している期間も、 同じ金額で構わないと思います。
 2等寝台で輸送しているのであれば、別口で旅費(二等チケット)を買わなければなりませんが。




(3)治療(蘇生)

 本格的な治療(蘇生)は、 テクノロジー・レベルが13以上の病院でのみ、行うことができます。
 以下の行為判定を行って下さい。

>死亡を治療するには:
> 至難、〈医学〉、知力、10分。
>
>レフリー:
> 施設のテクノロジー・レベルが13を上回っているならば、
> 超過の1ポイントごとにDM+1を治療に適用することができます。


 この治療(蘇生)は前項で求めた2D月間以内に行って下さい。
 その2D月間以内に行えなかったのであれば、キャラクターは本当に死んでいます。

 この治療(蘇生)に失敗した場合も、本当の死亡となります。
 やり直しは効きません。
 行為判定の難易度は〈至難:15+〉ですが、 この治療(蘇生)の成功率は、以下のようになりました。


           表17 本格的な治療の成功率(死亡)

BW60_Fig17.gif - 3.14KB

 〈医学〉技能のレベルと知力によるボーナスの合計値をDMにした、治療(蘇生)の成功率です。



 御覧の通り、DMが+2以下の場合、成功率は0.0%です。
 DMが+4でも成功率は8.3%
 DMが+8の名医に治療をさせても成功率は58.3%しかありませんでした。
 DMの上限が+8ですから、どうやってもこれ以上の成功率は望めないのです。



 治療(蘇生)の費用は、一律で250,000crでした。

 この行為判定に成功すれば、キャラクターは治療(蘇生)に成功した、ということになります。
 キャラクターは昏睡状態のままですが、3つの肉体的特徴ポイントがすべて1に戻りました。
 次の段階に進んで下さい。




(4)昏睡状態からの回復

 治療(蘇生)の後、キャラクターの特徴ポイントは、 1ヶ月に1ポイントのペースで回復していきます。
 プレイヤーは任意の特徴ポイントを選んでサイコロを振って下さい。
 サイコロの目が「9+」であれば、特徴ポイントが1つ回復します。
 施設のテクノロジー・レベルが12を超える1毎に、DM+1が適用できます(13ならば+1、15ならば+3ということ)。

> 治療を受けたあと、すべての特徴ポイントは4まで戻り
> (最初の値が4より小さければその値まで)、
> 制限はあるものの、肉体的な負担のかからない活動を再開することができます。


 とありましたが、この手順は英文エラッタで訂正されています。
 すべての特徴ポイントが4に戻ること、それ自体が結構大変になりました。
 そのキャラクターの特徴ポイントがすべて4以上で、毎回、回復の判定に成功したという想定ですが、 最低でも9ヶ月の回復期間(回復の判定を9回行うだけの期間)が必要です。
 反対に、元々の特徴ポイントが3以下であれば、必要な回復期間は短くなるのですが、 例えば、特徴ポイント=333のキャラクターであれば、 必要な回復期間は6ヶ月(回復の判定が6回)で済むでしょう。
 回復の判定に失敗すれば、必要な回復期間はもっと伸びてしまう訳ですが。

 すべての特徴ポイントが4まで戻るか、最初の値が4より小さければその値まで戻った時点で、 キャラクターは昏睡状態から回復し、意識を取り戻します。
 安静にしていなければならないことは同じですが、肉体的な負担のかからない活動を再開できるのです。

 とは言うものの、元々の特徴ポイントすべてが4より小さかった場合はどうなるのでしょう。
 後述する制限によって、すべての特徴ポイントが 最初の値が4より小さければその値まで戻るということは有り得ないのですが……。
 まぁ、その場合は例外として、それ以上回復できない状態になった時点で意識を取り戻すということで良いのでしょう。
 その解釈が一番シンプルだと思います。

 それはともかく、この部分こそが英文エラッタで大きく修正されたルール、なのではないでしょうか。
 修正前のルールだと、治療(蘇生)直後の特徴ポイントが111なのか、 それとも444なのか、分かりませんでしたから。
 この修正によって昏睡状態からの回復にも、ある程度の療養期間が必要だと明らかになりました。

 この期間の治療費(入院費用)1ヶ月当たり150,000crです。
 高額でした。
 こんな入院生活を何か月も、場合によっては何年も続けなければならないかと思うと、気が遠くなります。




(5)療養

 昏睡状態から回復した後も、キャラクターの特徴ポイントが 1ヶ月に1ポイントのペースで回復していくことは変わりません。
 前項と同じように「9+」のサイコロを振り続けて下さい。

 言うまでもないことですが、特徴ポイントの回復判定は1ヶ月に1ポイントのペースでしか行えませんので、 すべての特徴ポイントが回復するまで物凄く時間が掛かります。
 能力値=CCCのキャラクターが、444の状態から全回復するまで、 最低でも24か月(回復の判定を24回行うだけの期間)が必要なのですから。
 有難い点は、回復の判定に失敗しても入院期間を延ばせばフォローできるということでしょうか。

 もっとも、回復については以下のように、

> 3つの特徴ポイントのうち2つが最初の値に戻ると、
> 特徴ポイントの回復は止まってしまいます
> (3つめの特徴ポイントは永遠に減少したままです)。
> そうなるまで、キャラクターは安静にしていなければなりません。
> キャラクターはテクノロジー・レベル13+の世界で治療を受けたあと、
> テクノロジー・レベルの低い世界に移って入院していてもかまいません。


 という制限がありますから、実際に元の特徴ポイントCCCまで戻ることは有り得ません。 具体的には、BCCCBCCCBのどれか、ということになります。

 このあたりは、回復させる特徴ポイントの選び方次第でしょうか。
 特徴ポイントの回復を早く終わらせたかったら、ひとつの特徴ポイントを1回も回復させずに(4ポイントのままで)、 残り2つの特徴ポイントだけを回復させるという方法が存在します。
 最終的な特徴ポイントは4CCという歪な状態になりますが、 これ以上の回復を望めない状況になるのでキャラクターは退院するしかありません。
 ある程度は治療費の節約にもなるでしょう。

 この期間の治療費(入院費用)1ヶ月当たり150,000crでした。

 それにしても、テクノロジー・レベルの低い世界に移って入院していてもかまいません、 というルールに何かしらの意味はあるのでしょうか。
 テクノロジー・レベルの低い世界へ移ったら、回復の成功率が下がって効率が悪くなるだけです。
 入院期間が延びれば治療費も嵩んでしまうので、 わざわざテクノロジー・レベルの低い世界に移る理由が見つかりません。
 不思議なルールです。




(6)治療費

 最後に、死亡の治療(蘇生)治療費について考えました。
 治療費は以下のように、

> 生命維持には1週間にcr1,000が必要です。
> 治療にはcr250,000、
> 病院に入院している期間には1ヶ月あたりcr150,000が必要です。


 定義されていましたが、これを実際に適用するとなると、下の表のようになります。


              表18 死亡の治療費

BW60_Fig18.gif - 6.17KB

 死亡の治療費は、キャラクターの特徴ポイントの大きさに大きく左右されることが分かりました。
 此処では、特徴ポイント=CCCのキャラクターを最大値の計算に、 特徴ポイント=333のキャラクターを最小値の計算に、使用しています。



 生命維持費治療費の中でもわずかな比重しか占めていませんでした。
 1週間あたりcr1,000で、保存可能な期間が2D月間ですから 最長でも12ヶ月=52週間(生命維持費は52,000cr)という計算になるためです。
 2等寝台で輸送する限り、輸送費用もそれほど掛からないでしょう。

 治療(蘇生)の費用は、一律で250,000crでした。
 最初にルールを読んだ時は、なんて高い治療費だ、と思ったものですが、 回復期間の治療費(入院費用)について理解してしまった現在、それほど高額だとは思えません。

 回復期間中の入院費用、これが治療費全体を高騰させる要因です。
 1ヶ月当たり150,000crも必要ですから、 2カ月入院するだけで50週間分の生命維持費治療(蘇生)費用と同額になりました。
 入院期間が延びるほど、入院費用は嵩んでいきます。

 特徴ポイント=333のキャラクターが入院している期間は、 毎回、回復の判定に成功していると想定しても最低5ヶ月、 特徴ポイント=CCCのキャラクターが入院している期間は最低32ヶ月、でした。
 必要な入院費用は750,000cr〜4,800,000crになりますので、 治療費のほとんどを入院費用が占めていることは間違いありません。

 ちなみに、特徴ポイント=777の平均的なキャラクターが入院した場合、 その治療費は最低でも3MCr、 回復の判定成功率(テックレベル15の世界で7+)考慮するならば4.5MCrが必要になるでしょう。

 死亡状態からの復活(蘇生)は、豊富な資金を持ったキャラクターにしか許されない贅沢なのです。





魔法の薬(スロー&ファスト・ドラッグ)


 トラベラー世界には、魔法の薬だとしか思えない薬品(Drug)が幾つか存在します。

 それらの中で応急手当と治療に使えそうな薬品は、 スロー・ドラッグ(Slow Drug)ファスト・ドラッグ(Fast Drug)の2つ。
 この2つを使用した場合、服用者は外部と異なる時間を過ごせるようになるのです。

 具体的な効果は以下の通り。

>スロー・ドラッグ:
> この名前の由来は、(あくまで服用者の視点からのことですが)
> 宇宙がゆっくり動いているように見えることにあります。
> この薬品は使用者の代謝活動を加速する効果があり、
> これにより通常のほぼ2倍ほどのスピードで行動することができます。
>
> スロー・ドラッグは注射してから45秒後に効果が出はじめ、
> 10分間効果が続きます。
> 効果が切れると1Dのダメージを受けます。
> 効果が切れた使用者は(通常の2倍の速度で行動していたため)
> 極端に疲労しており、しばらく休息しなければ何もできません。
>
> 医療用のスロー・ドラッグもあります。
> これは負傷や病気からの回復を促進させるために使われます。
> 投与された者は意識を失い、1日で30日分の回復が行われます。
> 医療用スロー・ドラッグの効果が切れても、
> ダメージを受けるようなことはありません。
> しかし、医療用スロー・ドラッグを服用すると、
> 意識不明か半覚醒状態のどちらかになってしまいます。
>
>ファスト・ドラッグ:
> この名前は、宇宙が(使用者にとって)
> どんどん早く動くように見えることにちなんでつけられました。
> この薬品は服用者の代謝活動を通常時の60分の1に引き下げます。
> 服用者はそのような代謝活動が低下した状態のあいだ、
> 極めて無力な状態にありますが、肉体が老化していく速度も低下しています。
> そして、空気や食糧の消費量も、それに比例して少なくなります。
> ファスト・ドラッグは摂取するとすぐさま効果が表れます。
> 1服服用すると60日間効果が持続し、
> その期間はたった1日であるかのように感じられます。




 読めば読むほど不思議な薬です。
 デザイナーがデュマレスト・サーガのファンで、 その世界観を再現するために作られたルールだという噂も聞いておりますが、さて、どうなのでしょう。



 スロー・ドラッグは通常の2倍の速度での行動が可能になるとのこと。
 移動速度が2倍になり、攻撃回数も2倍に増えるということで、戦闘時には有用であること間違いありません。
 単純に1回の行動で2倍の距離を移動し、2回の攻撃を行えるようにすべきか。
 あるいは、通常の移動と攻撃を行った後、もう一度、移動と攻撃を行えるようにすべきか、解釈に悩みました。

 効果が切れた際に受ける1Dのダメージですが、 これは多分、CT版の負傷ルールのままです。
 CT版のルールをそのままコピーしたのだと思われますが、 このダメージは特徴ポイントに適用して下さい。
 耐久値に適用する場合は、1ポイントです。



 医療用スロー・ドラッグは、服用者の代謝を加速して、30日分の治癒を1日で済ませてしまいます。
 軽傷を負った場合、必要な安静期間は2D日
 重傷を負った場合、必要な安静期間は1D×10日
 死亡の回復期間は1ヶ月単位で半年から数年の単位。
 これだけの時間を30分の1に減らせるのであれば、意識不明や半覚醒状態になるとしても、実に有難いのではないでしょうか。

 上記の負傷状態で医療用スロー・ドラッグを使用したのであれば、
 軽傷の安静期間は1日未満で、残りの特徴ポイントも全回復できます。
 重傷の安静期間は1〜2日に縮まり、やはり、特徴ポイントも回復できるでしょう。
 死亡の場合、 この回復期間に医療用スロー・ドラッグを使って良いものかどうか悩ましいのですが、 使えるのであれば回復期間は6〜30日程度まで短縮できます。



 ファスト・ドラッグは、応急処置に失敗した場合や 応急処置が間に合わなかった場合に使えます。
 応急処置に失敗したか応急処置が間に合わなかった場合、 キャラクターは追加ダメージを受けてしまう、というルールになっていました。
 その時間は、かすり傷でも2D時間
 軽傷ならば1D×10分(2回目以降は1時間ごと)
 重傷ならば2D分(2回目以降は1時間ごと)
 という具合です。
 負傷者にファスト・ドラッグを使用したのであれば、 追加ダメージを受ける1時間は30時間まで引き延ばせます。
 本格的な医療処置を受けるまで、十分な時間でしょう。
 最初の追加ダメージも避けたい場合は、負傷した直後、あるいは、戦闘が終了した直後に服用すれば、
 軽傷1D×10分1D×5時間に、
 重傷2D分2D×0.5時間まで延びることでしょう。



 スロー・ドラッグ医療用スロー・ドラッグファスト・ドラッグを利用可能なテックレベルと価格は以下の通りでした。


        表19 ドラッグ類を利用可能なテックレベルと価格

BW60_Fig19.gif - 9.98KB

 表の左端は薬品名
 その右側が、利用可能になるテックレベル価格(Cr)
 表の右端が薬品の効果です。



 スロー・ドラッグがテックレベル8、 医療用スロー・ドラッグがテックレベル7から利用可能だという事実に、今更ながら驚いております。
 おまけに安価。
 戦闘用のスロー・ドラッグが500crというのは、短期決戦で勝利を得られると思えば安価だと思うのです。 攻撃力を2倍にすることで、見かけ上の戦力を2倍に増やせることも大きなメリットでしょう。
 医療用スロー・ドラッグは1回分が100crで、副作用(効果が切れた後のダメージ)がないと言うのであれば、 使わない方がおかしいと思うくらいに便利です。
 唯一の問題点は、効果を打ち消す対抗薬が、テックレベル10にならなければ利用できないことでしょうか。
 何か問題が起きた時、その代謝加速を打ち消せないとなると、医療用であっても使用が躊躇われます。 ブレーキの無い自動車に乗って走り出すような不安が拭えません。



 ファスト・ドラッグはテックレベル9から利用可能。
 前述した通り、負傷した際に適切な治療(応急手当、あるいは、本格的な治療)を受けるまでの時間を引き延ばしたり、 乗っている宇宙船が遭難した際は生命維持が可能な時間を引き延ばしたりと、とても有難い薬品です。
 1回分の価格も200Crと安価ですから、お守り代わりに1つ持ち歩いていたとしても、経済的な負担にはならないでしょう。
 このファスト・ドラッグは宇宙旅行に用いれば、二等寝台の代わりになると思うのですが、 トラベラーの公式設定で、ファスト・ドラッグを用いた宇宙旅行については記述が一切見つかりません。
 この理由は不明です。
 何か、宇宙旅行に使えない、不都合な副作用が存在するのでしょうか?
 二等寝台の存在価値が無くなってしまうと不都合だから、という事情なのかも知れませんが。



 スロー・ドラッグファスト・ドラッグのメカニズムや副作用については、 考えるだけ無駄だと思われます。
 以前、掲示板で議論してみましたが、その効果があまりにも御都合主義的なので、議論にもなりませんでした。
 血行障害や熱放射などの諸問題を解決できているからこそ、これらの薬は実用化されているのであり、 これらを生産することすらできない未開人がどうこう言っても始まらないのです。
 我々には理解できないメカニズムで作用する、魔法的な薬である、と考えておく方が良いでしょう。





負傷部位の決定(ハウス・ルール)


 メガトラベラーにおいて、キャラクターの負傷状態は前述の通り、 耐久値と特徴ポイントの減少という形で表現されていました。
 ルールは分かり易くなっていますし、プレイアビリティも高いのですが、その反面、ロールプレイには物足りなさを感じます。
 映画や小説では、負傷によって「利き腕が使えなくなった(戦えなくなった)、」とか 「歩けなくなった(逃げられなくなった)、」とか、 非常に盛り上がる状況である筈なのに、MT版の戦闘ルールでは 「ダメージが2ポイント、あと1ポイントで戦闘不能だ、」という表現しかできません。
 もちろん、レフリーとプレイヤーが慣れていれば、 単なる耐久値と特徴ポイントの減少からでも面白いプレイが出来ると思うのですが、私には無理です。

 そこで、せめて負傷した部位だけは決定できるように 「ハウス・ルール」を作ってみました。
 参考文献は「本当の戦争、クリス・ヘッジズ、集英社」です。



 キャラクターが負傷した際は2Dを振り、以下の表を用いて負傷部位を決めて下さい。
 キャラクターの負傷がかすり傷軽傷であれば、表の左側を、
 キャラクターの負傷が重傷死亡であれば、表の右側を用います。


          表20 負傷部位の決定(ハウス・ルール)

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 負傷部位は、 頭部・頸部、胸部(胴体の上半身側)、腹部(胴体の下半身側)、腕部、脚部の5つに細分しました。
 腕部と脚部については、左右の区別もありますが、そのあたりは適当に決めて下さい。
 正面から撃たれた場合は、1D6を振って1〜3が右側で、4〜6が左側。
 右方向から撃たれた場合は、1D6を振って1〜4が右側で、5〜6が左側、という感じでどうでしょうか。



 キャラクターの負傷がかすり傷軽傷であれば、表の左側を使って下さい。

 負傷する確率が最も高い部位は、脚部で確率は41.7%でした。
 その次が同率で、頭部・頸部と腕部の2つ、確率は16.7%。
 そして、胸部と腹部です。

 キャラクターの負傷が重傷死亡であれば、表の右側を用います。

 負傷する確率が最も高い部位は、頭部・頸部で41.7%。
 その次が胸部で、確率は25.0%。
 3番目が腹部で、確率は16.7%。
 最後が腕部と脚部で、確率は8.3%ずつでした。



 全体を眺めてみると、かすり傷軽傷の欄で、脚部が負傷する確率の41.7%と、 重傷死亡の欄で、頭部・頸部が負傷する確率の41.7%、 この2つが気になるかも知れません。
 特定の部位が負傷する確率としては、確かに、ちょっと大き過ぎる数字でしょう。

 この数字は、
 腕部や脚部を負傷したのであれば、かすり傷軽傷で済む可能性が高いこと。
 そして、
 頭部・頸部を負傷した場合は重傷死亡となる可能性が極めて高いこと。
 を意味しているのです。

 そのことを念頭に置くのであれば、上の表を理解しやすいのではないでしょうか。





負傷と治療の実例


 考察が一通り終わりましたから、今度はそれを実践してみましょう。

 幸い、ここまで行ってきた一連の考察の中には、個人戦闘の総まとめとも言える戦闘を扱ったものが存在しました。
 41回と42回の考察「海賊いじめ1&2:中距離における射撃シミュレーション」です。
 この2つはタイトル通り、襲ってきた海賊たちを宇宙船内の戦闘で返り討ちにしてしまうという設定ですが、 そこで生じた負傷者たち(海賊たち)に、この負傷と治療のルールを当て嵌めてみました。




(1)Cデッキの戦い

 考察の41回「海賊いじめ1」は、ブリッジを制圧するため船内を上がってきた海賊たち4人を、 待ち伏せていた乗組員2人(正確には擬生物型ロボットのビアトリス2台)が、圧倒的に不利な条件の中、 不意討ちフルオート射撃を駆使して勝利する、という流れでした。

 詳細についてはそちらを見直して頂くとして、肝心な情報は負傷者の状態です。
 海賊たち4人の負傷状態を以下の表に纏めました。


          表21 キャラクターの負傷(海賊いじめ1)

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 表の左端はキャラクター名
 「海賊いじめ1」の中で用いている略号、A〜Dも併記しました。

 キャラクター名の下に書かれている一連の数値は特徴ポイント耐久値



 一番上に書かれている海賊兵士Aアトキンズですが、 彼はビアトリスαからの銃撃に意識を手放さずに耐えてしまった(かすり傷で済んでしまった)ため、 ビアトリスβからの集中射撃を受けてしまいます。
 その結果、被ったダメージは累積で21ポイント。
 彼の耐久値は4/6ですから、左右双方の値がゼロ、0/0となっても、 まだ11ポイントのダメージが残っています。
 これ以上のダメージは適用する術がないのですが、「レフリーズ・マニュアル、p.30」には、

> 異星生物を殺害するのに必要なダメージ・ポイント(耐久値の合計)の
> 2倍以上のダメージを与えると、その生物の体は完全に破壊され、
> 食糧や毛皮としての価値がなくなってしまいます。


 というルールが書かれていますので、これだけのダメージを受けてしまったアトキンズの体も 手の施しようがないほどボロボロになっている、のではないでしょうか。

 ルール解釈はともかく、耐久値が0/0となったアトキンズの負傷状態は、 「死亡」です。
 負傷箇所は、表20より
 最初の一撃が脚部(表の左側でサイコロの目が「9」)で右脚、
 次の集中射撃が胸部(表の右側でサイコロの目が「8」)だった、
 ということになりました。



 その下に書かれているのは海賊兵士Bバクスター
 ビアトリスαからの銃撃で一度に6ポイントのダメージを受けています。
 彼の耐久値は4/7でしたが、6ポイントのダメージなので0/5へ減少。
 彼は無力化されてしまいました。

 無力化(意識喪失)となったので、 バクスターの負傷状態は軽傷重傷のどちらかです。
 この2つの負傷は特徴ポイントのひとつが0になったか、それとも2つが0になったか、 ということで区別されますから、負傷状態が軽傷重傷のどちらであるかを決めるためには、 特徴ポイントにもダメージを反映させなければ分かりません。

 早速、ダメージ・ポイントと同じ数だけのサイコロを振ってみましょう。
 サイコロの目は「2、5、5、4、4、6」でした。
 バクスターの元々の特徴ポイントはCB8です。
 1つめのサイコロ「2」は筋力に、次のサイコロ「5」は敏捷力に、3つめのサイコロ「6」も敏捷力に、 4つめのサイコロ「4」も敏捷力に適用しました(敏捷力の残りは1ポイントですが、超過分の3ポイントは切捨て)。

 サイコロ3個分(2つめ〜4つめ)を集中的に敏捷力へ適用したことが不自然に感じられるかもしれませんが、 彼は4ポイントのダメージで無力化されています
 ですから、ルール的には4ポイントめのダメージを適用した時点で 特徴ポイントのどれかが「」にならなければならないのです。

 CT版のルールならば、 3つの特徴ポイントへ万遍なくダメージを分散することで、 ぎりぎりまで無力化(意識喪失)を遅らせることもできたのですが、 MT版のルールではそうもいきません。
 というか、ぎりぎりまで無力化を遅らせたことで僅かな追加ダメージでも死んでしまうという事態を防ぐために、 MT版では、こういう形のルールになったのではないかと私は考えています。
 実際はどうなのでしょうか。

 それはともかく、残りのダメージ、5つめのサイコロ「4」は筋力、6つめのサイコロ「6」は耐久値、 という順番で適当にダメージを適用した結果、彼の特徴ポイントは602まで減少しました。
 0になっている特徴ポイントはひとつだけなので、彼の負傷は「軽傷」です。

 負傷箇所は表20でサイコロの目「4」の欄を見て、頭部・頸部に決まりました。



 三番目の元海兵隊員Cクレメンツは、12ポイントのダメージを受けました。
 彼の耐久値は4/5でしたが、 受けたダメージが12ポイントもあるので0/0になってしまいます。
 こうして、彼も「死亡」しました。
 負傷箇所は表20でサイコロを振り、その目「6」から頭部・頸部となります。



 四番目の船長Dアル・ドリンカーはダメージを受けていません。
 他の3人が死傷した時点で戦闘継続の士気チェックを行い、それに失敗したためです。
 彼はダメージを受ける前に降伏したため、負傷状態は「無傷」でした。



 上記の中で応急処置が必要なキャラクターは、 海賊兵士Bバクスターだけです。
 海賊兵士A、アトキンズ元海兵隊員C、クレメンツの両名は、 戦闘終了の次点で死亡してしまっていますから、今更、何をしても手遅れでしょう。
 MT版の負傷ルールでは 死亡したキャラクターを治療(蘇生)することも可能です。
 しかし私個人の感情として、そこまでして彼らを助ける必要を感じなかったため、応急処置なしで放置しています。
 死亡したキャラクターが自分の身内ならばともかく、自分たちに襲い掛かってきた海賊ですから。



 さて、バクスターの負傷状態は軽傷なので、 1D×10分以内に応急処置を施さなければなりません。
 サイコロを振った結果は「5」でしたから、その時間は50分
 応急処置に必要な時間は、それを行ったビアトリスβの+DMが「+4」であることから、 最短で6分、最長で28分、平均は13.3分でした。
 彼に応急処置を施さなければならない時間は50分以内ですから、十分な余裕があります。
 実際にサイコロを振った結果は「12」で、16分しか掛かりませんでした。
 行為判定は難易度が〈並:7+〉でDM+4ですから、ほぼ自動的に成功します。
 サイコロの目は、プレイヤー側が「10」で、レフリー側は「6」。
 完全成功となったので、問題は発生しません。




(2)Fデッキの戦い

 考察の42回「海賊いじめ2」は、船倉内で略奪作業を続ける海賊たち5人を、 乗組員3人(ビアトリス3台)で逆襲する、という流れでした。

 負傷者の状態は、以下の通りです。


          表22 キャラクターの負傷(海賊いじめ2)

BW60_Fig22.gif - 9.65KB

 表の左端は今回もキャラクター名であり、 「海賊いじめ2」の中で用いている略号、E〜Jも併記しています。

 キャラクター名の下に書かれている数値は、特徴ポイント耐久値



 一番上の海賊指揮官Eエゼカンプは、 ビアトリスγからの銃撃で6ポイントのダメージを受けています。
 彼の耐久値は5/7でしたが、6ポイントのダメージなので0/6に減少。
 彼は無力化されてしまいました。

 無力化(意識喪失)となったので、 エゼカンプの負傷状態は軽傷重傷のどちらかです。

 ダメージ・ポイントと同じ数だけのサイコロを振ってみると、その目は「4、2、6、4、6、2」でした。
 エゼカンプの特徴ポイントは元がDBAです。
 1つめのサイコロ「4」は筋力に、2つめのサイコロ「2」は敏捷力に、3つめのサイコロ「6」は耐久力に適用しました。
 この時点でも特徴ポイントは994まで減少しています。 負傷状態は「かすり傷」なので、ひとつも0ではありません

 4つめのサイコロは「4」ですが、これは筋力か敏捷力のどちらかに適用しなければなりません。
 現時点での耐久力は4なので、このサイコロの目を適用すると「0」になり、軽傷となってしまうからです。
 エゼカンプ無力化(意識喪失)まで まだ1ポイントのダメージに耐えなければなりませんから、4ポイントめのダメージで特徴ポイントのどれかが「0」になっては困るのです。
 という訳で、4つめのサイコロ「4」のダメージは筋力へ適用することにしました。
 特徴ポイントは594ですから、まだ「かすり傷」のままです。

 5つめのサイコロは「6」。
 耐久値が0/7となる(無力化される)ダメージなので、 今回は遠慮なく、どれかひとつの特徴ポイントを「0」にできました。
 しかし敏捷力は「9」なので、「6」のダメージでは「0」にできません。
 残りは筋力か耐久力ですが、迷った末、ダメージを耐久力へ適用することにしました。
 耐久力を4つ減らし(超過分の2ポイントは切捨て)、590となります。
 負傷状態は遂に「軽傷」。

 6つめのサイコロは「2」なので、敏捷力へ適用しました。
 最終的な特徴ポイントは570で、 エゼカンプの負傷状態は「軽傷」です。

 負傷箇所は表20、サイコロの目「6」より胸部と決まりました。



 二番目の海賊兵士Fフランクは、 13ポイントのダメージを受けて「死亡」しています。

 三番目の海賊兵士Gグレイも同様に 15ポイントのダメージを受けて「死亡」。

 四番目、エンジニアHハーヴィーも、 15ポイントのダメージを受けて「死亡」。



 最後になりますが、航宙士Jジョイスは、 5ポイントのダメージを受けました。
 彼の耐久値は3/3なので、減少した耐久値は0/1
 ぎりぎりで「死亡」を免れた状態です。

 ダメージ・ポイントと同じ数だけのサイコロを振ってみると、その目は「6、3、4、1、4」でした。
 1つめのサイコロは「6」でしたが、このダメージを適用する特徴ポイントは敏捷力しか有り得ません。
 ジョイスの元々の特徴ポイントは475でした。
 6ポイントのダメージを筋力か耐久力に適用した場合、その特徴ポイントは「0」になってしまいますが、 それは負傷状態が「軽傷」になるまで許されないことです。
 ですから、6ポイントのダメージを適用しても唯一「0」にならない特徴ポイントということで、ダメージは敏捷力に適用されるのです。
 この時点で、彼の特徴ポイントは415に減少。
 負傷状態は「かすり傷」。

 2つめのサイコロは「3」で、これは筋力に適用しました(筋力が1に減少)。
 3つめのサイコロは「4」ですが、これも筋力に適用して、特徴ポイントひとつを「0」まで減らします(超過分の3ポイントは切捨て)。
 この時点での特徴ポイントは015
 負傷状態が「軽傷」へ変わりました。

 4つめのサイコロは「1」で、これは耐久力へ適用します。
 敏捷力に適用することもできるのですが、そうした場合は特徴ポイントの2つが0になり、 負傷状態が重傷へと変わってしまうでしょう。
 それを避けるため、耐久力に適用しました。
 この時点での特徴ポイントは014ですから、まだ「軽傷」です。

 5つめのサイコロは「4」でした。
 これは敏捷力へ適用します。
 耐久力に適用しても同じ結果、特徴ポイントの2つが0になった状態=重傷、 になるだけなのですが、治療後の回復を考慮するならば敏捷力に適用した方が良いでしょう。
 この時点での特徴ポイントは004
 遂に「重傷」となってしまいました。

 負傷箇所は表20でサイコロを振り、「10」が出たので腕部です。



 上記の中で応急処置が必要なキャラクターは2人だけ。
 海賊指揮官Eエゼカンプと、 航宙士Jジョイスでした。
 他の3人は死亡しているため、応急処置に関しては無視できます。

 生存している2人の中で負傷の状態がより悪いのは、重傷ジョイスですから、 医療キットを抱えていたビアトリスβは、ジョイスへの応急処置を優先します。

 ジョイスの負傷状態は重傷なので、 2D分以内に応急処置を施さなければなりません。
 サイコロ2個を振ったところ、その目は「5」。5分以内です。
 幸い、ビアトリスβが持ち運んでいた医療キットはテックレベル15のものだったので、 応急処置は一律の30秒で完了しました。
 セーフ、です。
 彼は追加ダメージを受けずに済みました。
 ビアトリスβの持つ医療キットがテックレベル11以下のものであれば、 ビアトリスが応急処置に費やす時間は、サイコロを3個振って決めなければなりません。
 テックレベル7〜11のものならば時間単位は30秒、テックレベル6以下のものならば時間単位は2分です。
 サイコロを3個振った結果は10で、DMは「−4」。
 テックレベル7〜11のものならば応急処置に費やした時間は3分です。間に合いました。
 テックレベル6以下のものならば費やした時間は12分となり、残念ながら間に合いません。
 重傷を負ったキャラクターは、医療キットのテックレベルによって生死が別れる可能性があるのです。

 行為判定は難易度が〈並:7+〉でDM+4でした。
 サイコロの目は、プレイヤー側が「4」で、レフリー側は「7」、完全成功です。



 次なる応急処置の対象は、 軽傷を負ったエゼカンプ
 軽傷なので、 応急処置が必要な時間は1D×10分以内です。
 サイコロを振った結果は「2」で、20分以内になりました。
 医療キットのテックレベルが15(12以上)なので、 応急処置に費やされる時間はほとんどありません(一律で30秒)。
 エゼカンプへの応急処置も間に合いました。
 医療キットのテックレベルが7〜11だった場合も、ジョイスの方で3分しか時間を使っていませんから、 確実に間に合うでしょう(時間単位が30秒の場合、DM+4なので最長時間は7分です)。
 しかし医療キットのテックレベルが6以下だった場合は、ジョイスで費やした時間が12分、 残り時間が8分しかありませんので、危ないかも知れません(時間単位が2分だった場合、DMの大きさに関わらず最短時間は6分です)。

 行為判定は難易度が〈並:7+〉でDM+4。
 サイコロの目は、プレイヤー側が「11」で、レフリー側は「8」、今回も完全成功でした。




(3)本格的な治療

 応急処置が無事に済んでも、今度は本格的な治療が必要となります。
 負傷したキャラクターは、バクスターエゼカンプ、 そしてジョイスの3人でした。
 今度は、この3人への本格的な治療と、その後の回復期間について、少し考えてみましょう。



 軽傷のキャラクターに対して本格的な治療を行う場合、 その行為判定の難易度は〈並:7+〉でした。
 ビアトリスのDMは+4ですから、ほぼ自動的に成功するでしょう。
 また、行為判定の時間単位は10分、治療費は1D×500crです。
 そして、意識を喪失している時間は3D分、治療後の安静期間は2D日でした。

 バクスターへの本格的な治療を行ったところ、そのサイコロの目は「7」。 何の問題もなく、本格的な治療に成功したということです。
 所要時間のサイコロは「6」で、費やした時間は30分
 治療費のサイコロは「1」で、500crが掛かりました。
 バクスターが意識を失っている時間は15分(サイコロ3個の目が「15」)でした。
 本格的な治療を行う前に目を覚ましたというところなのでしょうが、 応急処置のついでにしっかりと拘束されてしまったので、逃亡できません。
 本格的な治療(手術)が行われた後、 今度は安静期間が6日間(サイコロ2個の目が「6」)必要になるので、再び動けなくなります。



 エゼカンプへの本格的な治療の際、サイコロの目で「2」が出てしまいました。
 滅多に起こらない(こともないですが)致命的失敗です。
 追加ダメージの判定は事故表で2Dを振った結果は「9」で小事故
 彼の耐久値には2ポイント、特徴ポイントには2Dの追加ダメージが与えられることになりました。
 そんな訳で、耐久値は0/7から0/5へ。
 特徴ポイントは追加で振ったサイコロの目が「5、4」だったので140に減少します。
 辛うじてですが、負傷状態はまだ軽傷でした。
 重傷になると行為判定の難易度が上がってしまいますから、 できる限り、キャラクターの負傷状態は軽傷に留めるべきでしょう。

 エゼカンプに、再度の行為判定を行います。
 今度のサイコロは「11」で問題なく成功しました。
 行為判定が2回になったので、所要時間のサイコロも2回振らなければなりません。
 その結果は「9」と「11」。合わせて120分=2時間の手術となってしまいました。
 治療費のサイコロは「4」で2,000cr
 意識を失っている時間は8分
 本格的な治療(手術)が行われた後の安静期間は10日間でした。



 重傷のキャラクターに対して本格的な治療を行う場合、 その行為判定の難易度は〈難:11+〉です。
 DMが+4しかない場合、この行為判定の成功率は半分ほどでした。ちょっと心配です。
 行為判定の時間単位は10分、治療費は1D×1,000crです。
 意識を喪失している時間は1D時間、治療後の安静期間は1D×10日でした。

 ジョイスに対して本格的な治療を行ったところ、そのサイコロの目は「8」でした。  難易度が〈難:11+〉でDM+4ですから、ぎりぎりの成功だと言えるでしょう。
 所要時間のサイコロは「5」で、費やした時間は30分
 治療費のサイコロは「6」で、6,000crが掛かりました。
 ジョイスが意識を失っている時間は4時間です。
 目を覚ましたら本格的な治療が済んだ状態で寝かされていた、という感じになるのでしょうか。 その2時間後には哨戒艦に引き渡されてしまう訳ですが。
 安静期間は40日間が必要でした。



 上記のような感じで、3人の本格的な治療には、 180分=3時間の時間と、8,500crの治療費が費やされたようです。
 時間はともかく、治療費は誰に請求したら良いのでしょうね。





結論


 今回は、メガトラベラーにおける負傷のリスクについて考察してみました。



 キャラクターは耐久値と特徴ポイントを持っており、 キャラクターの負傷は耐久値と特徴ポイントの減少という形で表現されています。
 その減少の程度によって負傷は、ほとんどペナルティのないかすり傷無力化(意識不明の)状態に陥る軽傷、 危篤状態とも言える重傷、 そして最後の死亡と、4段階に区別されていました。

 どの負傷であっても診断応急処置が不可欠です。
 応急処置が施されなければ、そのキャラクターは追加ダメージを受けてしまいますので、 単なるかすり傷重傷死亡に至ることも有り得るでしょう。

 応急処置が施されなければならない時間は、その負傷によって異なります。
 それはかすり傷の場合で2D時間死亡の場合で1D分以内でした。
 戦闘が終了した時点で、軍医や看護兵は負傷したキャラクターに優先順位を付け、 負傷の程度がより酷いキャラクターから先に応急処置を施さなければならないのです。
 現実を上手く再現してあるものだと感心しました。



 「事故表」でキャラクターに与えられる1D〜4Dのダメージについて、 それは特徴ポイントに与えられるダメージである、という解釈を行いました。
 このダメージをキャラクターの耐久値に適用する場合は、 1〜4ポイントのダメージに変換されるでしょう。
 そうすることによって、この負傷ルールが納得しやすいものとなるのです。

 上記の解釈によって、応急処置を受けない場合、あるいは、応急処置を失敗した場合に受ける追加ダメージは、 1〜4ポイントとなりました。
 かすり傷軽傷ならば「事故表」で2Dを振りますので、 その平均値は1.69ポイント重傷ならば3Dを振りますから、平均が2.50ポイントです。

 追加ダメージに耐えられる時間を計算してみた結果、 耐久値が人類として最大値の6/10になっているキャラクターであっても、 1ポイントのダメージを受け、かすり傷の負傷状態となってしまえば、 治療を受けずに生き延びられる時間は7〜70時間しかない、という事実が明らかになりました。
 より体力の少ない(耐久値の小さい)キャラクターであれば、2〜14時間という数字も有り得ます。
 例えかすり傷であっても、負傷を放置してはいけないことが実感できました。
 メガトラベラーにおける負傷のリスクは極めて大きかったのです。



 本格的な治療については、それぞれの負傷状態によって、その難易度が異なりました。
 負傷の程度が大きいほど難しくなるのですが、幸いなことに致命的失敗が起こらない限り、 行為判定に失敗してもキャラクターが死ぬことはありません。
 何度でもやり直すことが可能ですから、成功するまで行為判定を繰り返せば良いのでしょう。
 行為判定の時間単位が10分で、平均は105分〜40分です。
 「 8時間にも及んだ難しい手術」というような言い方が小説やドラマでなされていますが、 それをメガトラベラーで再現すると「十数回の行為判定を繰り返して、ようやく成功した手術」になる、 ということが判明しました。
 現実を上手く再現してあるものだと……以下略。



 本格的な治療治療費は、予想以上に大きなことが分かりました。
 かすり傷は3Dcr分の薬品や医療器具が必要となるだけなのですが。
 軽傷になると、 手術ありの場合で1,050〜6,600cr、手術なしの場合で570〜3,720cr。
 重傷の場合は常に手術ありで1,950〜14,400cr。
 死亡の場合は計算が難しいのですが、最低でも1MCr、多ければ5MCr以上になるようです。



 最後に、負傷した部位を決定するための「ハウス・ルール」を作ってみました。
 プレイの助けになれば、幸いです。






2014.04.06 初投稿。