The Best Weapon
61st stage (Combat 11)
Not kill,
but unconscious.

最強兵器 決定戦
第61回(個人戦闘11)
敵キャラクターを
殺さずに捕まえる方法
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MEGA TRAVELLER
 


 

メガトラ個人戦闘ルールにおいて、
   相手殺さないことは とても難しい


 個人戦闘ルールについて色々と考察を進めてきましたが、今回はちょっと趣向を変えてみました。
 今回は、如何にして「相手を殺さずに無力化するか」ということを考えてみます。



 戦闘を行うからには、死者は付き物。
 味方に死傷者が出ることは嫌ですが、戦闘相手である敵キャラクターが死亡することに関して、私はほとんど気にしていませんでした。
 情報収集のため(尋問を行うため)には生きていて貰わなければ困りますが、 そうでない場合は「運が悪かったな」で済ませています。
 敵キャラクターが「他人を殺す能力と意思」を備えている以上、 速やかに無力化しなければ、自分(プレイヤー・キャラクター)の命が危うくなることは明らか。
 生き残ることを優先しているのであれば、 そこに「手加減」や「敵キャラクターの命の尊重」は有り得ません。

 しかしながら掲示板において、私のプレイヤー・キャラクターに殺人罪が適用されるという話題が持ち上がりました。
 殺人罪で死刑になりたくなければ、海賊相手の戦闘であっても相手を殺さずに無力化しなければならないとのこと。
 長い議論を経て、この問題は正当防衛に関する解釈、世界観の違いに起因すると分かった訳ですが、 戦闘相手を殺さずに無力化する、という問題を考察することは実に面白そうです。



 今回は、メガトラの個人戦闘ルールを使って、相手を殺さずに無力化する(意識喪失状態に陥らせる)方法を考察してみました。




 目次
    ※キャラクターの耐久値
       (1)NPCの生命力と耐久値
       (2)キャラクターの生死を分ける境界線
    ※射撃戦闘における死亡率
       (1)武器が与えるダメージ
       (2)基本ダメージ=4の銃器による死亡率
       (3)基本ダメージ=3の銃器による死亡率
       (4)基本ダメージ=2の銃器による死亡率
       (5)基本ダメージ=1の銃器による死亡率
       (6)無貫通の銃器による死亡率
    ※手加減攻撃(ハウス・ルール)
       (1)目標キャラクターの生命力が5以下
       (2)目標キャラクターの生命力が9
       (3)目標キャラクターの生命力が15
       (4)目標キャラクターの生命力が18
       (5)目標キャラクターの生命力が21
       (6)目標キャラクターの生命力が24
       (7)目標キャラクターを絶対に殺さない攻撃パターン
    ※麻酔弾の使い方(公式ルール)
       (1)化学弾を使える銃器(麻酔弾とガス弾)
       (2)単発型の麻酔弾
       (3)爆発型の麻酔弾(フレチェットと榴弾)
       (4)ガス弾
    ※神経銃の使い方(公式ルール)
       (1)神経銃の命中判定とダメージ
       (2)神経銃の事故表
       (3)神経銃の死亡率
    ※結論





キャラクターの耐久値


 まずは遭遇するキャラクターの耐久値(His Point)について調べておきましょう。
 あらかじめ作成済みの特別なキャラクターを除けば、 一般的なNPCの耐久値はサイコロ2個(2D6)の目に従って、以下のように決まります。




(1)NPCの生命力と耐久値

 レフリーズ・マニュアル、p.43に掲載されている、簡易NPC作成表を転載しました。


          表1 遭遇するNPCの生命力と耐久値

BW61_Fig01.gif - 7.65KB

 表の左端がサイコロの目(=2D6)です。

 その右側が、そのNPCのUPP前半部分。左から、筋力、敏捷力、耐久力の順番で数字が並んでいます。
 UPP3つの合計が生命力
 この数値の大きさに対応して、その右側に並ぶ耐久値が決められていました。

 表の右端に追加した数値は、遭遇する確率(%)
 2D6の確率をそのまま代入しました。



 NPCで最も頻出する生命力(耐久値)は、意外なことに「15(3/3)」でした。
 次点が「27(4/6)」、3番目が平均値の「21(3/5)」となっています。

 実際には8種類のパターンが存在する訳ですが、流石に面倒なので、考察に際しては3種類に纏めてしまいました。
 サイコロの目が3〜5の範囲はそのまま「15(3/3)」で、確率が25.0%。
 6〜8の範囲(44.4%)は、 その中で最も大きな生命力(耐久値)を用いることにして「24(4/5)」。
 9〜11の範囲(25.0%)も、 最も大きな生命力(耐久値)=「30(4/7)」を用います。

 サイコロの目=の「9(2/2)」と、 12の「36(5/8)」は2.8%ずつの可能性がありますが、 数値があまりにも極端なので今回の考察では除外しました。




(2)キャラクターの生死を分ける境界線

 今度は、キャラクターの負傷状態について考えてみましょう。

 メガトラの戦闘ルールにおいて、ダメージを受けたキャラクターは、その耐久値を減らしていくことで負傷を表現しています。
 ダメージは、耐久値の左側から先に適用されていきますが、 左側の数値(無力化値)がゼロになった時点でキャラクターは無力化(意識喪失、行動不能)の状態に陥る、というルールでした。
 無力化されたキャラクターは戦闘不能になるので簡単に捕獲できるのですが、 与えたダメージがちょうど無力化値をゼロにしただけで済むことはありません。
 左側の数値(無力化値)で吸収しきれないダメージは、耐久値の右側の数値(破壊値)にも適用され、右側の数値もどんどん減らしていきます。
 最終的に、右側の数値(破壊値)がゼロになってしまえばキャラクターは死亡。
 それ以上のダメージを受けてしまえば、どんなに高度な医療手段を用いても、 蘇生できません(前回の考察「キャラクターの負傷」を参照して下さい)。



 左側の数値がゼロにならない状態は「かすり傷」です。
 数時間後はどうなっているか分かりませんが、その時点でキャラクターは何のペナルティもなく行動できます。
 つまり戦闘を継続できる訳で、まだ無力化には至りません。

 左側の数値がゼロになり、右側の数値がゼロになっていない状態が「無力化」です。
 負傷の分類では軽傷か重傷なのでしょうが、此処では拘りません。
 とにかく、キャラクターは意識を失っているか、少なくとも動けない状態に陥りました。

 右側の数値がゼロになった状態は「死亡」です。
 キャラクターは死んでしまいました。
 考察の目的である「相手を殺さずに無力化する」ということに関しては、失敗だと見なされるでしょう。



 これについて、具体的な数字を纏めると、以下の通りになりました。


            表2 キャラクターの負傷状態

BW61_Fig02.gif - 12.6KB

 今度はプレイヤーズ・マニュアル、p.67から、生命力と耐久値の表を転載しました。

 表の左端は、キャラクターの生命力
 その右側が対応する耐久値

 その右に耐えられるダメージ・ポイントの欄を追加しています。
 例えば、生命力(耐久値)が「15(3/3)」のキャラクターは、 受けたダメージが1〜2ポイントの範囲であれば「かすり傷」です。
 そのまま移動できますし、戦闘も可能な状態。
 ダメージがさらに増えて3〜5ポイントの範囲になれば「無力化」。
 キャラクターは移動も戦闘もできません。
 受けたダメージが6ポイント以上になれば、キャラクターは「死亡」。
 「相手を殺さずに無力化する」ことの失敗です。



 重要な発見を、表の右端に示しました。
 キャラクターが「死亡」するまでに耐えられるダメージ・ポイントと、 キャラクターが「かすり傷」の状態で耐えられるダメージ・ポイントとの差です。

 この数値は最大で11ポイントとなっていますが、最小では2ポイントしかありません。
 目の前で動き回っている敵のキャラクターに2ポイントのダメージを与えたら、 その場で死亡してしまうかも知れないということです。
 それを避けるためには、敵キャラクターの様子を見ながら1ポイントずつの微小なダメージを与え、 安全に無力化していくしか方法がありません。

 幸い、表1で確かめたように、生命力が「8以下」のキャラクターとは滅多に遭遇しない筈です。
 36分の1(=2.8%)の確率で、生命力(耐久値)が「9(2/2)」のキャラクターと遭遇するかも知れませんが、 このキャラクターはダメージ・ポイントの差が3ポイントでした。
 一応、一度に2ポイントのダメージを受けても死にません。無力化だけで耐えられます。
 一般的なNPCの中で遭遇する可能性が高く、生命力の低いキャラクターは、 生命力(耐久値)が「15(3/3)」のキャラクターでしょう。
 このキャラクターならばダメージ・ポイントの差は4ポイント。
 一度に3ポイントのダメージを受けても死なないということが分かりました。

 生命力(耐久値)が「24(4/5)」のキャラクターは、 「死亡」と「かすり傷」の差が6ポイントですので、 一度に5ポイントのダメージを受けても耐えられます。
 生命力(耐久値)が「30(4/7)」のキャラクターならば8ポイント。
 7ポイントまでのダメージならば、一度に受けても死なずに済む訳です。



 先程まで平然と動き回り、こちらを攻撃していた敵キャラクターが、 場合によってはわずか2ポイントのダメージを与えるだけで死亡してしまう。
 これは「相手を殺さずに無力化する」ことを優先している場合、実に重要な発見だと思われます。
 戦闘において、サイコロの目がどうであろうと1ポイントのダメージしか与えない、という条件を見つける必要が有るでしょう。

 しかし幸いなことに表1で確かめた通り、 ランダムに遭遇するNPCで生命力が「8以下」のキャラクターと遭遇することは、 レフリーがあらかじめ作成しておかない限り、有り得ません。
 最低でも生命力(耐久値)が「9(2/2)」ということになりますから、 「かすり傷」から「死亡」に至るまで、 最低でも2ポイントのダメージに耐えられる筈です。
 もっとも、生命力3(UPPの前半部分が333)というキャラクターが、戦場でどれだけ活躍できるのか怪しい訳ですが。

 そういった事情を考慮しても、実際に戦場で遭遇する敵キャラクターの生命力(耐久値)は、 最低でも「9(2/2)」以上である、と想定しておいて構わないと思います。
 彼らの耐久値を見ると、「死亡」と「かすり傷」の差は3ポイント。
 2ポイント以下のダメージならば、一度に受けたダメージであっても死なない、と考えて良いでしょう。
 以下の考察は、目標とした敵キャラクターが最低でも2ポイントのダメージには耐えられる、 という想定で進めていきます。

 もちろん、生命力8以下の敵キャラクターが戦闘に参加している可能性は否定できません。 そうなれば、この考察の大前提が崩れてしまう訳ですが、仕方ないものだと考えます。





射撃戦闘における死亡率


 「相手を殺さずに無力化する」ことが目的なのに、死亡率の考察をするのはおかしいと思われるかも知れません。
 しかし、メガトラベラーの個人戦闘ルールは死亡率が高いため、「殺さない」ことを目指すのであれば、 どういった条件で相手が死んでしまうかを考察することが不可欠なのです。
 まずは、武器が与えるダメージについて考えてみました。




(1)武器が与えるダメージ

 プレイヤーズ・マニュアル、p.78の弾丸射出武器を、それぞれの基本ダメージ毎に分類してみました。
 大半の銃器はその基本ダメージが3ですが、そうでない銃器も多く存在します。


            表3 各種銃器の基本ダメージ

BW61_Fig03.gif - 8.04KB

 表の左端が武器名
 その右側が、銃器の基本ダメージです。

 表の右側はダメージ・ポイントの範囲
 銃器の貫通状態と行為判定のサイコロの目(2D6)によって、 実際に与えるダメージ・ポイントは大きく異なってくる訳ですが、その最小値と最大値を示しました。



 結果は御覧の通り。

 基本ダメージ=4の銃器は、 「完全貫通」の最大ダメージが32ポイント、 「部分貫通」の最大ダメージが16ポイントですので、 かなりの高確率で敵キャラクターを殺してしまうことが分かりました。
 「無貫通」の状態であれば最大ダメージが4ポイントに抑えられますので、 殺してしまう可能性は低くなるでしょう。
 これらの銃器を使って「相手を殺さずに無力化する」のであれば、 命中率を低くして、1ポイントか2ポイントのダメージしか与えられない状況にしておく必要があるでしょう。
 あるいは何らかの方法で貫通状態を「無貫通」に変えてしまうという方法も考えられます。

 基本ダメージ=3の銃器も、 「完全貫通」の最大ダメージが24ポイント、 「部分貫通」の最大ダメージが12ポイントですから、 高い確率で敵キャラクターを殺してしまいます。
 「相手を殺さずに無力化する」ためには同様に命中率を低く抑えるか、 銃器の貫通状態を「無貫通」に変える必要があるでしょう。

 基本ダメージ=2の銃器はほとんど存在しませんが、 「完全貫通」の最大ダメージが16ポイント、 「部分貫通」の最大ダメージが8ポイントでした。

 基本ダメージ=1の銃器は、その多くが麻酔弾を使用しています。
 「完全貫通」の最大ダメージが8ポイント、 「部分貫通」の最大ダメージが4ポイントでしたから、必ずしも目標を殺さない訳ではありません。
 場合によっては、一撃で相手を殺してしまう可能性が存在するでしょう。



 今度は、近接戦闘に用いる生得武器や刀剣類を、基本ダメージ毎に分類してみます。

            表4 各種刀剣の基本ダメージ

BW61_Fig04.gif - 8.78KB

 表の左端が武器名
 その右が刀剣の基本ダメージ

 表の右側がダメージ・ポイントの範囲を示していることは、表3と同じです。

 刀剣の基本ダメージは3が最大値でした。
 剣やカトラス、ブロードソードなどの大型刀剣、手斧と戦斧の斧類、 槍、槍斧、矛といった長めの槍状武器が基本ダメージ=3となっています。
 そして大半の生得武器、短剣と小剣の小型刀剣類、銃剣と棍棒の槍状武器は基本ダメージ=2でした。
 英文エラッタによって、銃剣の基本ダメージは2に、 槍のダメージは3に変更されています。御了承下さい。
 最小値である基本ダメージ=1の武器は手とフォイルの1だけです。
 刀剣を使って「相手を殺さずに無力化する」場合も、命中率を下げたり、 貫通状態を「無貫通」に変える必要が見つかりました。



 今度は実際に、特定の命中難易度、命中難易度を作り出してみます。
 その条件で敵キャラクターに与えられる、ダメージ・ポイントの分布を求めてみましょう。
 目標とした敵キャラクターの生命力(耐久値)は「24(4/5)」であると考えます。




(2)基本ダメージ=4の銃器による死亡率

 まずは、基本ダメージ=4の銃器を用いた状況から考えてみました。
 磁気ライフルや散弾銃を用いた戦闘を想定して下さい。

 貫通状態は「完全貫通」。
 命中難易度は、様々な状況を加味して難易度〈並:7+〉だとしておきます。
 命中DMの大きさは、+8から−5までの範囲で様々。DMが−6以下の場合、この命中難易度で命中は有り得なくなりました。
 命中難易度が〈易:3+〉〈難:11+〉の場合は、 命中DMを4つ増減させることで対応して下さい。


        表5 基本ダメージ=4の銃器による死亡率(完全貫通)

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 表の左端は、武器の命中DMです。
 その右側は、その状態の命中率、ダメージ期待値、無力化の成功率。
 此処までは、考察の41回「海賊いじめ1」と同じ形式の表にしました。

 表の右側は新たに追加したダメージ・ポイントの分布です。
 基本ダメージ=4の銃器が「完全貫通」している場合、 与えられるダメージは2〜32ポイントの範囲に及ぶ訳ですが、具体的に何ポイントのダメージが何パーセントの確率で与えられるのか、 表の右側に並べて示した訳です。



 命中DM=+5のビアトリス(敏捷力DM=+2、技能レベル=3)がこの条件で射撃を行った場合、 目標へのダメージ期待値は16.0ポイント、無力化の成功率は97.2%でした。
 実に高い成功率です。
 敵キャラクターの無力化という点では素晴らしい数字なのですが、 「相手を殺さずに無力化する」という条件を考慮すると、実に困ったこととなりました。
 無力化された者の半数以上(具体的には72.2%)は、16ポイント以上のダメージを受けて「死亡」しています。
 残りの者(25.0%)は4〜8ポイントのダメージを受け、生きた状態で「無力化」されていますが、 無力化された者の内、4人に3人が死亡しているという状態は、好ましくありません。
 ちなみに、この大虐殺を逃れることができる者は極一部(2.8%)のみです。

 今度は命中率を1つ下げてみましょう。
 命中DM=+4のベテラン兵士(敏捷力DM=+2、技能レベル=3)が同じ条件で射撃を行います。
 この場合、目標へのダメージ期待値は13.1ポイント、無力化の成功率は91.7%まで低下しました。
 敵を逃す可能性が3倍(8.3%)に増えてしまっています。
 しかし、無力化された者の中に含まれる「死亡者」の割合は3人中2人程度。
 僅かながら死亡率も低下してくれたようです。

 命中率を4つ下げてみました。難易度が1つ難しくなったのと同じ状況です。
 相手が遮蔽物に隠れているとか、速射を行って命中率が下がったと見なせば良いでしょう。
 この場合は命中DM=+1の欄を見ます。
 目標へのダメージ期待値は5.6ポイント、無力化の成功率は58.3%しかありません。
 これだけ命中率が下がっても無力化率が半分以上あることは素晴らしいと思います。
 無力化された者の死亡率は4人中1人まで下がりました。
 それでも、まだ「相手を殺さずに無力化する」という目標は達成できていないのです。



 目標の死亡率が0.0%になるのは、命中DM=−2の条件からでした。
 この命中率(9+で命中)ならば、目標が一撃で死亡することは有り得ません。
 しかしながら表1で考察したように、 すでに1〜3ポイントの「かすり傷」を負っている敵キャラクターが、 8ポイントのダメージを受けた際に死亡してしまう可能性が否定できません。
 また、敵キャラクターが貧弱で、「15(3/3)」の生命力(耐久値)しかないのであれば、 4ポイントのダメージでも死亡してしまいます。
 そうした事情を加味して「相手を殺さずに無力化する」ことに拘るのであれば、 目標に与えるダメージは、射撃1回当たり3ポイント以下、ということになるでしょう。

 基本ダメージ=4の銃器が「完全貫通」している場合、 その条件を満たす命中率は命中DM=−5の12+のみ。
 36分の1(=2.8%)の確率で2ポイントのダメージを与えられますが、それ以外(=97.2%)は「外れ」ということになりました。
 単純な計算ですが、生命力(耐久値)=「24(4/5)」の敵キャラクターを無力化するまで おおよそ72回の射撃が必要となるでしょう。
 「相手を殺さずに無力化する」ために最適の命中率(12+)を得ることも大変ですが、 敵キャラクター1人を無力化するために72回の射撃(72人が順番に射撃していくこと)が必要だというのは、更に大変だと思われます。

 こんな苦労はしたくありません。
 何か別の方法を見つけ出さなくてはならないでしょう。



 という訳で、今度は貫通条件を「部分貫通」に変えてみました。
 考察の42回「海賊いじめ2」において、ビアトリスβが持つ磁気ライフルを、 海賊相手に撃ちまくった時と同じ条件になります。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉のまま。


        表6 基本ダメージ=4の銃器による死亡率(部分貫通)

BW61_Fig06.gif - 18.7KB

 表の形式は表5と同じ。
 「部分貫通」なので、目標に与えられるダメージ・ポイントは半減しました。



 命中DM=+5のビアトリスが射撃を行うと、 目標へのダメージ期待値は8.0ポイントで半減しましたが、無力化の成功率は92.7%と、高い数値を保っています。
 無力化された目標の内、5人に1人(=18.2%)は「死亡」状態ですが、 「完全貫通」の際に行われた大虐殺と比べれば、ずいぶんとマシになりました。
 無力化を逃れることができる目標は12人中1人(=8.3%)。

 命中DM=+4のベテラン兵士による射撃は、 ダメージ期待値が6.6ポイントで、無力化成功率は83.3%まで下がりました。
 無力化された目標の中で「死者」は10人中1人のみ。
 ずいぶんと数値が改善されてきたと思うのですが、まだ「死亡」の可能性が残っています。

 命中DM=+1の初心者による射撃は、 ダメージ期待値が2.8ポイント、無力化の成功率は41.7%でした。
 敵キャラクターを一撃で殺してしまうことはありません。
 命中DM=+1であっても、ダメージ・ポイントの最大値は8ポイントなので、 「かすり傷」を負った敵キャラクターならば殺してしまう可能性はあります。



 基本ダメージ=4の銃器が「部分貫通」している場合、 目標に与えるダメージは射撃1回当たり3ポイント以下という条件に拘ると、 この条件を満たす命中率は、命中DM=−4の11+が最適だということになりました。
 36分の1(=2.8%)の確率で2ポイント、36分の2(=5.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 それ以外(=91.7%)は「外れ」となりますが、1ポイントのダメージを与えられる確率の分だけ 「完全貫通」よりも有利だと言えるでしょう。
 実際、敵キャラクター1人を無力化するために必要な射撃回数は、 「完全貫通」と比べて半分の36回で済む筈です。




(3)基本ダメージ=3の銃器による死亡率

 今度は基本ダメージ=3の銃器を用いることにしました。
 一般的な銃器は基本ダメージが3ですから、それほど難しい条件ではありません。

 貫通状態は今回も「完全貫通」から。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉です。


        表7 基本ダメージ=3の銃器による死亡率(完全貫通)

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 表の形式は表5と同じですが、3ポイントのダメージを与えても、 生命力(耐久値)=「24(4/5)」の敵キャラクターは無力化できません。
 そのため基本ダメージ=4の銃器と比べると、無力化の成功率が大きく下がっています。



 命中DM=+5のビアトリスが射撃を行うのであれば、 目標へのダメージ期待値は12.0ポイントで、無力化の成功率は92.7%です。
 目標の死亡率は、無力化された者の4人中3人。
 相変わらず、高い死亡率を発揮していました。

 命中DM=+4のベテラン兵士が同じ条件で射撃を行う場合、 そのダメージ期待値は9.8ポイント、無力化の成功率は83.3%でした。
 目標の死亡率は3人中2人といった具合で、 死亡率に関しては基本ダメージ=4の銃器とそう変わりがありません。

 命中DM=+1の初心者が射撃を行うと、 ダメージ期待値は4.1ポイント、無力化の成功率は41.7%まで下がりました。
 目標の死亡率も3人中1人という具合です。



 基本ダメージ=3の銃器が「完全貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ことに拘るのであれば、その命中率は11+が最適です。
 36分の1(=2.8%)の確率で3ポイント、36分の2(=5.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられました。
 それ以外(=91.7%)の射撃はすべて「外れ」となりますが、基本ダメージ=4に比べれば、 目標を不用意に殺してしまう可能性が下がったと言えるでしょう。



 再び、貫通条件を「部分貫通」に変更しました。
 考察の41回と42回「海賊いじめ1&2」において、ビアトリスαが持つ戦闘ライフルを、 海賊相手に撃った時と同じ条件です。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉のまま。


        表8 基本ダメージ=3の銃器による死亡率(部分貫通)

BW61_Fig08.gif - 17.5KB

 表の形式は表5と同じ。
 「部分貫通」なので、今回も目標に与えられるダメージ・ポイントは半減しています。



 命中DM=+5のビアトリスが射撃を行うのであれば、 目標へのダメージ期待値は6.0ポイントで、無力化の成功率は72.2%です。
 無力化された目標の死亡率は4人中1人。
 無力化を逃れることができる目標も4人中1人(=27.8%)。

 命中DM=+4のベテラン兵士が射撃を行う場合は、 ダメージ期待値が4.8ポイントで、無力化の成功率は58.3%となりました。
 無力化された目標の死亡率は7人中1人。
 無傷、もしくは「かすり傷」で無力化を逃れる目標は半分近く(=41.7%)まで増えました。

 命中DM=+1の初心者が射撃を行うと、 ダメージ期待値が1.9ポイントで、無力化の成功率は16.7%しかありません。
 ここでも敵キャラクターを一撃で殺してしまうことは無くなりました。
 しかしダメージ・ポイントの最大値は6ポイントなので、 「かすり傷」を負った敵キャラクターならば殺してしまう可能性は残っています。



 基本ダメージ=3の銃器が「部分貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−2の9+になりました。
 36分の3(=8.3%)の確率で3ポイント、36分の7(=19.4%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な射撃回数は、9回で済むでしょう。




(4)基本ダメージ=2の銃器による死亡率

 今度は基本ダメージ=2の武器です。
 基本ダメージ=2の銃器はフレチェット弾を除けばほとんど見つかりませんが、 格闘戦用の武器(生得武器や刀剣類)であれば基本ダメージ=2は珍しくありません。
 この項のタイトルは基本ダメージ=2の銃器ですが、 実際は生得武器や刀剣類による死亡率という中身になるでしょう。

 貫通状態は今回も「完全貫通」から。
 生得武器や刀剣類の命中難易度は命中難易度は〈易:3+〉が基本ですが、 比較しやすくするため、難易度を〈並:7+〉のままとしておきます。


        表9 基本ダメージ=2の銃器による死亡率(完全貫通)

BW61_Fig09.gif - 18.6KB

 表の形式は表5と同じですが、8ポイントのダメージを与えた場合、 生命力(耐久値)=「24(4/5)」の敵キャラクターは、 無力化されても「死亡」することがありません。
 基本ダメージ=3〜4の銃器と比べて、死亡率が大きく下がっています。
 その代り、無力化率も低下しているようですが。



 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合は、 基本ダメージ=4の武器が「部分貫通」している場合と、全く同じ状況になります。
 ですから考察結果も表6と変わりません。

 命中DM=+5のビアトリスが攻撃した場合のダメージ期待値は8.0ポイント。
 無力化の成功率は92.7%と優秀ですが、無力化された目標の内5人に1人(=18.2%)が「死亡」します。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃した場合のダメージ期待値は6.6ポイント。
 無力化の成功率は83.3%ですが、無力化された目標の死亡率は10人中1人です。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合のダメージ期待値は2.8ポイント。
 無力化の成功率は41.7%しかありませんが、敵キャラクターを一撃で殺してしまうことはありません。
 ダメージ・ポイントの最大値は8ポイントなので、 「かすり傷」を負った敵キャラクターを殺してしまう可能性は残っています。



 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−4の11+でした。
 36分の1(=2.8%)の確率で2ポイント、36分の2(=5.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃は、36回で済むでしょう。



 再び、貫通条件を「部分貫通」に変更しました。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉のまま。


        表10 基本ダメージ=2の銃器による死亡率(部分貫通)

BW61_Fig10.gif - 17.2KB

 表の形式は表5と同じ。
 「部分貫通」なので、今回も目標に与えられるダメージ・ポイントは半減しています。



 命中DM=+5のビアトリスが攻撃した場合のダメージ期待値は半減して4.0ポイント。
 無力化の成功率は72.2%で、無力化された目標を一撃で殺してしまうことは無くなりました。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃した場合のダメージ期待値は3.3ポイントに半減です。
 無力化の成功率は58.3%で、この条件でも無力化された目標を一撃で殺してしまうことはありません。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合のダメージ期待値は1.5ポイント。
 無力化の成功率は16.7%です。



 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−2の9+でした。
 36分の3(=8.3%)の確率で2ポイント、36分の7(=19.4%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な射撃回数は、11回になりました。




(5)基本ダメージ=1の銃器による死亡率

 今度は基本ダメージ=1の武器です。
 表3と表4へ示した通り、基本ダメージ=1の銃器は麻酔弾が専らでした。
 後は、生得武器の手が基本ダメージ=1です。
 フォイルを使っているキャラクターは、プレイヤー・キャラクターでも、NPCでも会ったことがないので除外しました。

 麻酔弾は、キャラクター(や異星生物)を殺さずに無力化できる、実に便利な銃弾です。
 武器表の弾種に「麻酔弾」が書かれていればそれを使えますし、「榴弾」を使える火器ならば「爆発型麻酔弾」というものを使えます。


> 麻酔弾は、命中した目標の血液に特殊な薬品を流し込むものです。
> 致傷範囲を持つタイプの麻酔弾は、
> 命中と同時に薬品入りの散弾を周囲にまき散らします。
> これが命中すると、薬品が血液に流れ込むのです。
> こうした爆発型麻酔弾は、そうでないものに比べて
> 命中精度にかけるきらいがあります。
>
> 麻酔薬は、さらに通常麻酔と作用調節型麻酔の2種類に分けられます。
> 作用調節型麻酔薬はテクノロジー・コードが「標準星間+」で手に入ります。
> これは、与えるダメージが一時的なものであり、
> いったん目標が意識不能になったら、
> 麻酔薬によるそれ以上のダメージはすべて無視されます。
> 通常麻酔でも与えるダメージは一時的なのですが、
> たくさん命中して死亡レベルに達した場合は、
> 薬物ショックによって死んでしまいます。


 上記2行目の致傷範囲を持つタイプの麻酔弾とは、「爆発型麻酔弾」のことです。

 英語版のプレイヤーズ・マニュアルで確かめたところ、HJ版の誤訳を発見。
 上記4行目のこれが命中すると、薬品が血液に流れ込むという文章は、 これが貫通すると、薬品が血液に流れ込むと訳すべきでした。
 「無貫通」の麻酔弾は、目標に薬品を流し込むことができないということです。
 もちろん、ダメージを一切与えられないと考えるべきでしょう。
 私とは違ったルール解釈をする方もいらっしゃるでしょうが、この考察では上記の解釈を用いています。
 御了承下さい。



 と言う訳で、麻酔弾を用いた射撃や、手による近接戦闘における目標キャラクターの死亡率を求めてみましょう。
 貫通状態は今回も「完全貫通」から。
 難易度は〈並:7+〉です。


        表11 基本ダメージ=1の銃器による死亡率(完全貫通)

BW61_Fig11.gif - 17.2KB

 表の形式は表5と同じです。



 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合、そのダメージ・ポイントの分布は 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合と、全く同じ状況です。
 考察結果も表10と同じようになりました。

 命中DM=+5のビアトリスが攻撃を行うのであれば、 目標へのダメージ期待値は4.0ポイント、無力化の成功率は72.2%で、 無力化された目標を一撃で殺してしまうことは有り得ません。
 しかし「かすり傷」を負ったキャラクターならば、殺してしまう可能性が残っています。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃を行う場合、 そのダメージ期待値は3.3ポイントで、無力化の成功率は58.3%。
 この条件でも無力化された目標を一撃で殺してしまうことはないでしょう。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合、 ダメージ期待値は1.5ポイントで、無力化の成功率は16.7%です。
 やはり一撃で殺してしまうことはありませんが、ダメージ・ポイントの最大値は4ポイントなので、 「かすり傷」を負ったキャラクターを殺してしまう可能性は残されていました。



 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−2の9+です。
 36分の3(=8.3%)の確率で2ポイント、36分の7(=19.4%)の確率で1ポイントのダメージを与えられました。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃回数は、11回です。



 貫通条件を「部分貫通」に変更しました。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉のままです。


        表12 基本ダメージ=1の銃器による死亡率(部分貫通)

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 表の形式は表5と同じ。
 「部分貫通」なので、目標に与えられるダメージ・ポイントは半減しました。
 サイコロの目が良くても与えるダメージが小さいので、これまで考察してきた状況と比べれば、安心して攻撃できると思われます。



 命中DM=+5のビアトリスが攻撃を行う場合であっても、 目標へのダメージ期待値は2.0ポイント、無力化の成功率は16.7%しかありません。
 無力化された目標を一撃で殺してしまうことは有り得ませんが、 未だ、「かすり傷」を負ったキャラクターを殺してしまう可能性が残っています。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃を行う場合は、 ダメージ期待値が1.6ポイントで、無力化の成功率は8.3%まで低下しました。
 一撃での無力化は困難になりましたが、「かすり傷」を負ったキャラクターを殺してしまうことは有り得ます。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合は、遂にキャラクターを殺してしまう可能性が無くなりました。
 その代り、ダメージ期待値は0.6ポイントしかなく、無力化の成功率は0.0%です。
 複数回の命中により、ダメージを少しずつ与えていくことで目標を無力化する、というパターンになるでしょう。



 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=+2の5+です。
 36分の10(=27.8%)の確率で2ポイント、36分の11(=30.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられました。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃回数は、なんと5回で済むでしょう。
 驚きの回数です。




(6)無貫通の銃器による死亡率

 最後は、貫通状態が「無貫通」の銃器による死亡率を求めました。

 メガトラの個人戦闘ルールにおいて、銃器の貫通状態が「無貫通」になることは、良くあります。
 撃たれる側がちょっとした防具を着こんでしまえば、大抵の銃器は「無貫通」になりますので。
 メガトラの防具は性能が良過ぎます。
 大抵の銃器が「無貫通」であっても、きちんと戦闘が成り立っているところは凄いと思いますが。



 貫通条件が「無貫通」の場合です。
 命中難易度は難易度〈並:7+〉


         表13 「無貫通」の銃器による死亡率(部分貫通)

BW61_Fig13.gif - 15.4KB

 表の形式は表5と同じ。



 この考察を進めていて初めて気付いたのですが、「無貫通」の場合に与えられるダメージ・ポイントの大きさと分布は、 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と全く同じでした。



 命中DM=+5のビアトリスが攻撃を行う場合、 目標へのダメージ期待値は2.0ポイント、無力化の成功率は16.7%です。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃を行う場合は、 目標へのダメージ期待値は1.6ポイントで、無力化の成功率は8.3%でした。

 命中DM=+1の初心者が攻撃を行う場合は、 目標へのダメージ期待値が0.6ポイントで、無力化の成功率は0.0%です。



 貫通状態が「無貫通」である場合は、武器の基本ダメージが幾つであるかに関わらず、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=+2の5+でした。
 36分の10(=27.8%)の確率で2ポイント、36分の11(=30.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃回数は同じく5回。
 もちろん、最適の命中率を得ることができれば、という条件ですが。



 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な武器は、 相手の防具を貫通しない「無貫通」の武器、 あるいは、貫通状態が「部分貫通」となる基本ダメージ=1の武器であると分かりました。
 次点が、「完全貫通」となる基本ダメージ=1の武器か、 「部分貫通」となる基本ダメージ=2の武器。
 それ以外の武器は、相手を殺してしまう可能性が高過ぎるのです。





手加減攻撃(ハウス・ルール)


 前章、表5〜表13で考察してきた通り、メガトラの個人戦闘ルールでは簡単に人が死亡します。
 特に基本ダメージの大きな武器が「完全貫通」している場合は、 その可能性が高いでしょう。
 目標キャラクターの不本意な死亡を避けるためには、 命中率が特定の値以上になるよう、その条件を調整しなければなりません。

 しかし、そんな調整を実際に行うことは困難です。
 命中率を悪くするため、狙い撃ち速射を行う (命中難易度がひとつ難しくなるのでDM−4とほぼ同じ効果が得られます)ことは可能ですが、DMは4つ刻みでしか変えられません。
 自分が移動することで速度分の移動DMを得るといったこともできますが、 移動速度は行動の開始時に決定しなければならず、臨機応変な対応は望めないでしょう。

 そこで、相手を殺さずに無力化するためにならば、DMを任意に調整できる、 というハウス・ルールを作ってみました。

 もちろん、DMの調整は命中率を悪くする方向にしか行えません。
 命中率を良くすることは、技能レベルや戦術ポイントの消費が必要です。
 また、DMの大きさは−8から+8の範囲内という制限も守って下さい。

 命中難易度が〈易:3+〉の場合は、命中率を11+までしか上げることができません。
 場合によっては、「相手を殺さずに無力化する」ことが不可能になるでしょう。

 目標キャラクターの生命力(耐久値)から、「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率を求め、 無力化までに必要な射撃回数(攻撃回数)を計算してみました。




(1)目標キャラクターの生命力が5以下

 戦場で、相手の生命力(耐久値)を知る方法はありません。
 一応、レフリーズ・マニュアル、p.44には、相手の能力値を推測するルールが記述されているのですが、 そこに書かれている行為判定が戦場で実践できるとはとても思えないのです。
 成功率も低そうですから実践できたとしても推測値の信頼性は低いでしょう。  そうした場合、

 「殺さずに無力化したい相手」の生命力が3〜5しか無い場合、 その目標キャラクターの耐久値は「1/1」という、とても小さな値にしかなりません。
 1ポイントのダメージを受ければ、即座に意識を失って無力化
 更に1ポイントのダメージを受ければ死亡してしまいます。

 そういった相手には、丁寧に1ポイントずつのダメージを与えていくしかありません。
 サイコロ運が悪くて一度に2ポイントのダメージを与えてしまった場合、相手は死亡してしまうからです。
 面倒なことですが、目標に与えるダメージの最大値が1ポイントという条件になると、攻撃の命中率は以下の通りになりました。


          表14 目標キャラクターの生命力が5以下

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 表の左端は、武器の基本ダメージ
 これまでの考察通り、最大が4ポイント、最小が1ポイントです。

 その右側の欄は貫通状態
 欄の上が「完全貫通」で、下が「部分貫通」です。
 貫通状態が「無貫通」の場合は基本ダメージの大きさが影響しないので、 表の下端に纏めました。

 その右側は、「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率とダメージ期待値です。
 更に右側は、生命力(耐久値)が「3〜5(1/1)」のキャラクターを 無力化するために必要な攻撃回数

 表の右端は、0〜3ポイントのダメージを与えられる確率です。
 多くの場合(=91.7〜97.2%)、攻撃によって与えられるダメージは0ポイントです。つまり、攻撃が命中しません。
 そして1ポイントのダメージを与えられる確率は極僅か(=8.3〜2.8%)。
 非常に情けない命中率ですが、上記に示したより高い命中率ですと、 2ポイントのダメージを与えてしまう(=死亡させてしまう)可能性が発生してしまいました。
 殺さないことを最優先している以上、この低い命中率は仕方がないことなのです。

 基本ダメージ=4の武器が「完全貫通」している場合、 攻撃が命中すれば最低でも2ポイントのダメージを与えてしまいます。
 ですからこの条件では、生命力(耐久値)が「3〜5(1/1)」のキャラクターを 「殺さずに無力化する」ことはできません。不可能です。
 それ以外の場合、無力化に必要な攻撃回数は、12〜36回でした。




(2)目標キャラクターの生命力が9

 表1で考察した通り、生命力(耐久値)が「3〜5(1/1)」のキャラクターに遭遇することは滅多に有りません。
 ですから戦場で、生命力が5以下の敵キャラクターと相対することは考えなくても良いでしょう。

 今度は、より現実的な数値として、生命力(耐久値)が「9(2/2)」のキャラクターを想定してみました。
 NPCの遭遇表に掲載されている中で、もっとも貧弱なキャラクターの数値です。
 無力化に必要なダメージは2ポイント。
 そして、更に2ポイントのダメージを受ければ死亡してしまう訳ですが、 かすり傷の状態から2ポイントのダメージを受けても死亡には至りません。

 2ポイントのダメージを与えても死なない。

 表14の考察を振り返ってみると、この違いは非常に有難いと思います。  目標に与えるダメージの最大値が2ポイントへ増えた場合の攻撃の命中率は、以下の通りでした。


           表15 目標キャラクターの生命力が9

BW61_Fig15.gif - 11.9KB

 表の形式は表14と同じ。
 許されるダメージ・ポイントが2ポイントに増えたので、命中率を1つ〜2つ上げることが可能になりました。
 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」になっている場合は、 ダメージ期待値の分布が浅く広いので、命中率4の上昇となっています。
 残念ながら基本ダメージ=3の武器は命中率が変わりません。



 目標キャラクターの耐久値は「2/2」なので、無力化に必要なダメージは2ポイントです。
 無力化に必要な攻撃回数は、単純に考えれば2倍(24〜72回)になる筈ですが、 どうなっているのか、ひとつずつ確かめてみましょう。

 基本ダメージ=4の武器は、ダメージ期待値が上昇しました。
 そうは言っても命中率が1つ増えただけですので、目標の耐久値が2に増えた分をカバーできる程ではありません。
 無力化に必要な攻撃回数は、18〜36回です。

 基本ダメージ=3の武器は、目標に2ポイントのダメージを与えることがありません。
 1ポイントの次は3ポイントに跳んでしまうため、許されるダメージ・ポイントが2ポイントへ増えても命中率を変えられないのです。
 そのため、無力化に必要な攻撃回数が単純に、2倍の24〜72回に増えました。

 基本ダメージ=2の武器は、「完全貫通」の場合、 無力化に必要な攻撃回数が18回でした。
 表14に示された同じ条件の36回と比べると半分に減った訳ですが、まだ多い数値だと言えるでしょう。
 海賊1人を無力化するまで海兵隊員18人が手加減攻撃を行わなければならないというのは、あまりにも悠長です。
 「部分貫通」の場合、無力化に必要な攻撃回数は5.5回。
 ダメージ期待値が3倍強になったおかげでしょう。

 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合は、 上記、基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」の場合と同じ数値でした。
 無力化に必要な攻撃回数は5.5回です。

 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」の場合も、ダメージ期待値は同じになりました。
 無力化に必要な攻撃回数は2.3回。
 海賊1人を無力化するためには、海兵隊員3〜4人が順番に手加減攻撃を行えば十分だ、ということになるようです。




(3)目標キャラクターの生命力が15

 今度は遭遇する確率が最も高いキャラクター、生命力(耐久値)が「15(3/3)」を想定しています。
 無力化に必要なダメージは3ポイント。
 更に3ポイントのダメージを受ければ死亡となりますが、 一度に3ポイントのダメージを与えても死亡させる心配がありません。

 目標に与えるダメージの最大値が3ポイントへ増えると、最適な攻撃の命中率は以下の通りとなります。


           表16 目標キャラクターの生命力が15

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 表の形式は表14と同じ。
 許されるダメージ・ポイントが3ポイントに増えたので、今回は 基本ダメージ=3の武器だけ命中率が1つ〜2つ良くなっています。



 目標キャラクターの耐久値は「3/3」ですから、今回、無力化に必要なダメージは3ポイント。
 無力化に必要な攻撃回数も色々と変化しています。

 基本ダメージ=4の武器はダメージ期待値がそのまま変わりませんが、 目標の耐久値が「3/3」に増えたので、無力化に必要な攻撃回数は27〜54回です。

 基本ダメージ=3の武器はようやくダメージ期待値を増やせるようになりました。
 命中率も上げることができ、無力化に必要な攻撃回数は6.8〜21.6回です。
 「完全貫通」の21.6回はともかく、「部分貫通」の6.8回は良くなったと言えるでしょう。
 まだまだ、実用的な数値ではありませんが。

 基本ダメージ=2の武器は、無力化に必要な攻撃回数が 「完全貫通」の場合で27回、「部分貫通」の場合で8.3回でした。

 基本ダメージ=1の武器は、無力化に必要な攻撃回数が 「完全貫通」している場合で8.3回、「部分貫通」している場合で3.5回です。
 無力化に必要な攻撃回数が3.5回という数値は、実用に耐えるレベルでしょう。

 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」の場合も、 無力化に必要な攻撃回数は3.5回でした。
 目標キャラクターの耐久値が「3/3」である場合、海兵隊員3人の射撃では恐らく足りないでしょう。
 4人以上、場合によっては2人ぐらいのバックアップが加わって、順番に手加減攻撃を行うことになりそうです。




(4)目標キャラクターの生命力が18

 今度は、耐久値が「1」だけ大きい、生命力(耐久値)が「18(3/4)」のキャラクターを考えてみました。
 無力化に必要なダメージは3ポイントのままですが、死亡に必要なダメージが4ポイントなので、 一度に4ポイントのダメージを与えても死亡せずに済みます。
 今回は目標に与えるダメージの最大値が4ポイントまでということになりました。


           表17 目標キャラクターの生命力が18

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 表の形式は表14と同じですが、ダメージ・ポイント=4の欄を追加しました。

 許されるダメージ・ポイントが4ポイントまで増えたので、命中率を更に1つ〜2つ上げています。
 基本ダメージ=3の武器は、今回も残念ながら、命中率が変わっていません。
 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」になっている場合は、 命中率4の急上昇。
 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」になっている場合は、 サイコロの目が幾つであっても最大ダメージが4のままで変わりません。
 ですから、命中難易度〈並:7+〉で最も命中率が良い状態、命中DM=+8の条件、 命中率−1+でダメージ期待値を求めることにしました。



 目標キャラクターの耐久値は「3/4」なので、無力化に必要なダメージは3ポイントのままです。
 しかしダメージ期待値が大きくなったことに反比例して、無力化に必要な攻撃回数が変わりました。

 基本ダメージ=4の武器は、ダメージ期待値が2倍から6倍に増えました。
 無力化に必要な攻撃回数は、4.9〜13.5回です。

 基本ダメージ=3の武器は、ダメージ期待値が変わりません。
 無力化に必要な攻撃回数は6.8〜21.6回のままです。

 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合、 無力化に必要な攻撃回数は4.9回でした。

 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合は、 無力化に必要な攻撃回数が1.5回です。
 実際のところ確かめてみたら、2回の攻撃で無力化できる可能性が72.5%、 3回の攻撃ならば91.8%、4回の攻撃で96.8%という数値になっていました。
 これだけの好条件であっても、確実に相手を無力化したいと思ったら、 海兵隊員は3〜4人のチームを組んで、同じ相手に集中攻撃を行わなければならないようです。

 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」の場合は、 無力化に必要な攻撃回数が1.0回でした。
 一撃で無力化できる可能性は58.3%しかありませんが、 2回の攻撃を行うのであれば可能性は97.8%まで上がります。
 海兵隊員が2人で攻撃を行うのであれば、目標の無力化はほぼ確実だと言えるでしょう。




(5)目標キャラクターの生命力が21

 今度は、すべての能力値が7という平均的なキャラクターの場合です。
 能力値の合計は「7+7+7=21」。生命力が「21」ですから、対応する耐久値は「21(3/5)」となりました。
 無力化に必要なダメージは3ポイント。
 死亡に必要なダメージは5ポイントに増えたので、 一度に5ポイントのダメージを与えても死亡しません。
 もっとも、ダメージ・ポイントとして5ポイントを与えるパターンが有り得ないため、結果も変わりませんでしたが。


           表18 目標キャラクターの生命力が21

BW61_Fig18.gif - 12.7KB

 表の形式は表17と同じです。
 それぞれの命中率とダメージ期待値も表17と同じ。



 目標キャラクターの耐久値は「3/5」に増えましたが、 無力化に必要なダメージは3ポイントのままなので、 無力化に必要な攻撃回数も変わりません。

 注目すべき点も表17と同じでした。
基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合の、 無力化に必要な攻撃回数が1.5回。
 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」の場合の、 無力化に必要な攻撃回数が1.0回、です。




(6)目標キャラクターの生命力が24

 今度は、少しだけ能力値が高めのキャラクターです。
 生命力(耐久値)は「24(4/5)」、ついに無力化値が4に達しました。
 つまり、無力化に必要なダメージは4ポイントとなった訳です。
 目標に与えるダメージの最大値は5ポイントのままでした。

 生命力(耐久値)が「27(4/6)」、あるいは「30(4/7)」の場合も、 無力化値が4ですので、同じような結果となります。


           表19 目標キャラクターの生命力が24

BW61_Fig19.gif - 12.7KB

 表の形式は表17と同じです。
 ダメージ・ポイントの最大値が4ということでダメージ期待値は変わりませんが、 目標の無力化値が4に増えましたから、無力化に必要な攻撃回数が少し変化しました。



 目標キャラクターの耐久値は「4/5」から「4/7」の範囲です。
 無力化に必要なダメージ・ポイントは共通して4ポイントでした。

 基本ダメージ=4の武器は、 無力化に必要な攻撃回数が6.5〜18.0回です。

 基本ダメージ=3の武器は、 無力化に必要な攻撃回数が9.0〜28.8回でした。

 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合、 無力化に必要な攻撃回数は6.5回です。

 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合は、 無力化に必要な攻撃回数が2.0回でした。
 具体的には、2回の攻撃で無力化できる可能性が57.2%、 3回の攻撃ならば82.6%、4回の攻撃で94.5%という数値です。
 4人の海兵隊員による集中攻撃を行っても、20人に1人は取り逃がしてしまいますから、更に2人のバックアップがあれば安心かも知れません。

 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合と、 基本ダメージ=任意の武器が「無貫通」の場合は、 無力化に必要な攻撃回数が1.3回でした。
 一撃で無力化できる可能性が58.3%2回の攻撃で97.8%という数字は変わりません。
 この場合、手加減攻撃を行う海兵隊員は2人で十分でしょう。




(7)目標キャラクターを絶対に殺さない攻撃パターン

 此処までの考察で明らかになった通り、貫通状態が「完全/部分貫通」している場合、 目標キャラクターに与えられるダメージは、簡単にキャラクターの耐久値を上回ります。
 そうなると攻撃された相手は死亡してしまう訳で、 「相手を殺さずに無力化する」ことが目的である以上、こうした状況が頻発することはとても困る訳です。

 そこで目標キャラクターの死亡を防ぐため、故意に命中率を悪くする(大きなダメージを与えないようにする)、 手加減攻撃というハウス・ルールを作ってみました。
 目標キャラクターを絶対に殺さないダメージ・ポイントの最大値は幾つになるのか。
 その制限を守りつつ、ダメージ期待値が最も大きくなる命中率は幾つなのか。
 そうして求めた結果が表14から表19の考察結果ですが、貫通状態が「完全/部分貫通」となっている場合は、 武器の基本ダメージが大きい程、命中率を悪くする必要がありました。
 攻撃の命中率を12+や11+、9+といったレベルまで悪くしなければならず、必然的にダメージ期待値が小さくなっていました訳です。

 しかし「無貫通」の状態ならば、そこまで手加減する必要はありません。
 目標キャラクターに与えられるダメージは4ポイントが最大です。
 ルール的には、命中判定で振ったサイコロの目(+DM)が必要な値より2以上大きければ1ポイントのダメージ、 4以上大きければ2ポイントのダメージ、8以上大きければ4ポイントのダメージを与えるということになっていました。
 具体的には、命中率が9+〜10+ならば目標に与える最大ダメージを1ポイントに、 命中率が5+〜8+ならば最大ダメージを2ポイントに抑えられるということです。



 あらかじめ目標キャラクターの生命力(耐久値)を知っているのであればともかく、 戦場で初めて遭遇した相手を無力化しようとする場合、相手の生命力(耐久値)を推し量る手段は存在しません。
 ですから、絶対に「相手を殺さずに無力化」しようと考えているのであれば、 相手に与えるダメージの大きさは最大で1ポイントしか許されないということになります。

 考察する前から薄々分かっていたことですが、 メガトラの個人戦闘ルールで「相手を殺さずに無力化」しようと試みる場合、 貫通状態が「無貫通」となる武器を用いることが最善のようでした。

 武器が「無貫通」の状態となっている場合、目標に与えるダメージ期待値はどうなっているのか、 また、様々な生命力(耐久値)の目標キャラクターを無力化するために必要な攻撃回数が何回になるのか、 計算してみました。
 目標キャラクターに与えるダメージの最大値は1ポイント。
 どんなキャラクターが目標になっていても、絶対に殺さない、安心確実な攻撃パターンです。


       表20 目標キャラクターを絶対に殺さない攻撃パターン

BW61_Fig20.gif - 6.62KB

 武器の貫通状態が「無貫通」となっている場合、 基本ダメージの大きさは任意です。
 ですから、与えるダメージの大きさと基本ダメージの大きさに関連はありません。

 表の右端は命中率で、その右側が対応するダメージ期待値
 命中率=9+の場合は0.083、12分の1(=8.3%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 命中率=10+の場合は0.028、36分の1(=2.8%)の確率で1ポイントのダメージを与えられるということになっていました。
 命中率=11+と12+の場合、ダメージ期待値は0です。目標にダメージを与えられる可能性は存在しません。

 その右側の欄は、 耐久値が「(1/1)」から「(5/7)」の6パターンについて計算した、 無力化に必要な攻撃回数です。
 例えば、命中率が9+で、目標キャラクターの耐久値が「(1/1)」だった場合、 無力化に必要な攻撃回数12回
 命中率が10+で、目標キャラクターの耐久値が「(5/7)」の場合は、 無力化に必要な攻撃回数180回ということになりました。

 耐久値が「(1/1)」の12回はともかくとして、 その周囲の欄に示されている24回36回という数字は大き過ぎるでしょう。
 48回180回の部分については論外。
 敵対するキャラクター1人を無力化するために、180人の集中射撃が必要だという状況は、何処かおかしいと思うのです。
 1人のキャラクター攻撃できる位置に、それだけ大人数の味方キャラクターを集めることから困難ですし、 敵キャラクターが散弾銃や榴弾などの火器を持っていれば、わずか1度の反撃であっても、多くの味方が死傷してしまうでしょうから。



 そういった問題を解決するため、攻撃の命中率をもう少し高めてみました。
 目標キャラクターに与えるダメージの最大値は2ポイントまで増えてしまいますが、ダメージ期待値はそれ以上に増加しています。
 ダメージの最大値が2ポイントですから、 耐久値が「(1/1)」のキャラクターを殺してしまう可能性、 が生じていることに注意して下さい。
 この攻撃パターンは、 目標キャラクターの生命力が9以上、すなわち、耐久値が「(2/2)」以上であることを確信しているか、 あるいは、生命力が8以下、耐久値が「(2/1)」以下の目標キャラクターならば 殺してしまう可能性があることを自覚して実行しなければなりません。


    表21 目標キャラクターの生命力が9以上だと想定した攻撃パターン

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 表の形式は表20と同じ。
 但し、目標に与えるダメージの最大値が2ポイントに増えたので、命中率5+から8+の範囲が追加されました。

 無力化に必要な攻撃回数は、 命中率が5+で、目標キャラクターの耐久値が「(1/1)」だった場合の1.2回から、 命中率が8+で、目標キャラクターの耐久値が「(5/7)」だった場合の25.7回まで。



 貫通状態を「無貫通」に変え、命中率を調整しても、 「相手を殺さずに無力化」することは困難な行為であることに変わりはありませんが、 無力化に必要な攻撃回数は、ある程度、実用的な数字へ落ち着くようです。





麻酔弾の使い方(公式ルール)


 メガトラの個人戦闘ルールにおいて「相手を殺さずに無力化」するための手段としては (5)基本ダメージ=1の銃器による死亡率でも触れた通り、 麻酔弾という手段も存在します。
 この麻酔弾によって与えられるダメージは一時的なものであり、相手を殺すことがありません。
 実に有難い兵器です。
 麻酔弾が無条件に使えるのであれば、武器の貫通状態を「無貫通」にすることも、 わざわざ命中率を調整する必要もないでしょう。

 しかし、この麻酔弾、対人戦闘ではほとんど使えません。
 その理由を此処で考察していきたいと思います。




(1)化学弾を使える銃器(麻酔弾とガス弾)

 まずは、麻酔弾そのものを定義したルールから確かめて行きましょう。
 MT版プレイヤーズ・マニュアル、pp.94-95を御覧下さい。
 特殊なダメージ−−化学弾という項目が存在します。

 最初の段落に書かれている通り、麻酔弾ガス弾を含む化学弾は、 ロボットに対して効果がありません。
 わざわざ明記することでも無いと思いますが、ルールに書いてあるのですから、それなりに理由があるのでしょう。
 マングース版で取り扱われている有機型ロボットの場合、 これら化学弾の影響はどうなるのか、とても興味がありますが、 MT版に登場するロボットは電気駆動式の無機ロボットばかりですから、 化学弾が効かないことは当然だと思います。



 次の段落は、化学弾のデータ、使用の可否や貫通力、致傷範囲等に関する説明です。
 そのまま転載しました。

> 「武器表」にガス弾や麻酔弾のデータが書かれている火器については、
> そのデータを用いてください。


 上記の通り、「武器表」にガス弾(gas)麻酔弾(tranq)のデータが記されていれば、 書かれている通りにガス弾麻酔弾が使えるとのこと。
 プレイヤーズ・マニュアル、p.78の「武器表(弾丸射出武器)」を調べてみると、

 スナッブ・ピストル/オート・スナッブ・ピストル(麻酔弾ガス弾の両方)、
 磁気ピストル(麻酔弾)、
 ライフル(9mm、麻酔弾)、
 狩猟用ライフル(13mm、麻酔弾)、
 磁気ライフル(麻酔弾)、
 散弾銃/自動散弾銃(麻酔弾ガス弾の両方)、
 戦闘ライフル(7mm/9mm、麻酔弾
 軽突撃銃(麻酔弾)、

 といった風に、11種類(数え方によっては8種類)の銃器で麻酔弾が、 4種類(同2種類)の銃器でガス弾が使えることになっていました。
 化学弾という特殊な弾丸を使うので、発射装置である銃器が限られてしまうということなのでしょう。
 あらゆる銃器から麻酔弾を発射できるという状況も不自然ですから、これが正しいのだと思われます。



 長い間、私はそう思っていたのですが、最近になって該当部分を読み直し、同じ段落に続きがあることを発見しました。
 再び、該当部分を転載します。

> データが書かれていない火器でも、フレチェット弾を発射できるものなら、
> 特殊な爆発型麻酔弾を、フレチェット弾と同じ貫通力・致傷範囲で使用できます。
> フレチェット弾が発射できなくても、榴弾が発射できるものなら、特殊な麻酔弾
> (貫通力が2で、致傷範囲は榴弾と同じ)を使用することができます。
> また、榴弾を発射できる火器ならばどれでも、
> 榴弾と同じ致傷範囲のガス弾を発射することができます。


 フレチェット弾を発射できる銃器は、 フレチェット弾のような爆発型麻酔弾を使用できるそうです。
 そのデータ、貫通力と致傷範囲はフレチェット弾のものと同等。
 小さな麻酔針(麻酔弾)がフレチェットのように発射されると考えれば良いのでしょう。
 ダメージの大きさがルールで定義されていない点は問題だと思いますが、 これもフレチェット弾のダメージを使えば良いのでしょうか?

 また、榴弾を発射できる銃器は、 榴弾のような爆発型麻酔弾を使用できるとのこと。
 貫通力は一律で「2」、致傷範囲は榴弾のデータと同じ。
 これは命中地点を中心として、小型の麻酔弾を飛散させるということなのでしょう。
 これもダメージの大きさがルールで定義されていませんから、困ってしまいます。

 更に、榴弾を発射できる銃器は、 榴弾と同じ致傷範囲のガス弾を使用できるとのこと。
 ガス弾が目標にダメージを与える方法については未だルールを把握しておりませんが、 後でじっくりと考察してみたいと思います。




(2)単発型の麻酔弾(individual tranq rounds)

 プレイヤーズ・マニュアル、p.94に書かれている次の段落は、 麻酔弾が与えるダメージに関する説明文です。

> 麻酔弾は、命中した目標の血液に特殊な薬品を流し込むものです。
> 致傷範囲を持つタイプの麻酔弾は、
> 命中と同時に薬品入りの散弾を周囲にまき散らします。
> これが命中すると、薬品が血液に流れ込むのです。
> こうした爆発型麻酔弾は、そうでないものに比べて
> 命中精度にかけるきらいがあります。


 英語版のプレイヤーズ・マニュアルで確かめたところ、 上記4行目のこれが命中すると、薬品が血液に流れ込むという文章は、 これが貫通すると、薬品が血液に流れ込むの誤訳でした。
 「無貫通」の麻酔弾は、目標に薬品を流し込むことができないということです。
 私のルール解釈ですと、「無貫通」の麻酔弾は目標に一切のダメージを与えられません。
 無謀!掲示板でも相談しましたが、この解釈で良さそうでした。

 爆発型麻酔弾の欠点は、集団の中から特定の1人だけを狙えない、ということでしょうか。
 致傷範囲内のすべての目標に薬品入りの散弾(tranq pellets)を撒き散らしてしまいますから、 その致傷範囲内に耐久値の低いキャラクターや、すでに無力化済みの目標が居た場合、それらのキャラクターにも追い打ちを掛けてしまいます。
 麻酔弾の効果については後述しますが、 テックレベル10以下の世界や通常型麻酔しか用意できない状況では、相手を殺してしまう可能性が高くなりました。
 これが上記の説明文で、命中精度にかける、と語られている背景なのでしょう。



 無謀!掲示板と言えば、TNEConspiracy X 2.0に記載されている情報を、 zaza様から教えて頂きました。
 トラベラー世界の麻酔弾は、以下のような形で運用されているようです。

> TL6-8では、薬剤の投与量を測定された、皮膚下注射弾で、
> 能力を低下させるために減速された速さ、
> 最小の組織の破壊のために、低圧で発砲されます。
> TL9以上で、目標の皮膚を通して薬の吸収を助けるために、
> 測定された量の薬と運搬合成物を含んでいる、
> 細い壁のプラスティックカプセルから構成されています。


 テックレベル6〜8のローテク世界では、麻酔薬入りの注射器が発射されていますが、 テックレベル9以上の世界になると、皮膚から浸透するタイプの麻酔薬が詰まった、潰れやすいカプセルを発射するタイプに変わるとのこと。
 何処かのSFでは薬剤自体を針状に加工してあり、刺さった部分が溶けて浸透するという描写を読んだ記憶があります。
 ルール上の運用はともかくとして、こうした説明文があると、プレイする際にイメージしやすいですね。
 情報提供、有難うございました。



 では、これから具体的な麻酔弾の使い方について考えてみます。
 プレイヤーズ・マニュアル、p.78の「武器表(弾丸射出武器)」より、 麻酔弾を使用可能な弾丸射出武器を抜粋しました。


         表22 各種麻酔弾の基本ダメージ(単発型)

BW61_Fig22.gif - 7.59KB

 表の左端が武器名
 その右側が、銃器の貫通力基本ダメージです。

 表の右側はダメージ・ポイントの範囲
 銃器の貫通状態と行為判定のサイコロの目(2D6)によって、 実際に与えるダメージ・ポイントは大きく異なってくる訳ですが、その最小値と最大値を示しました。
 貫通状態が「無貫通」の場合、麻酔弾は目標にダメージを与えることができません。
 ですから、貫通状態は「完全貫通」と「部分貫通」の2つだけです。



 麻酔弾の貫通力は、1〜3の範囲です。
 注射器の針が刺さるとか、カプセル入りの薬剤が浸透するとか、そういった状況を考えると貫通力=3という数値は凄いものだと思いました。
 貫通力=3の麻酔弾で装甲値=0の目標を撃った場合、 目標(キャラクターや異星生物)に物理的なダメージは発生しないのでしょうか?

 狩猟用ライフル(13mm)と戦闘ライフル(9mm)で使用される麻酔弾は、 装甲(メッシュやクロース)を身に纏った異星生物を対象としているのでしょうか?
 あるいは、同じく装甲(メッシュやクロース)を装備したキャラクターを対象としているのか。
 その存在意義を悩んでおります。

 磁気ピストル、磁気ライフル、戦闘ライフル(7mm)、軽突撃銃で使用される麻酔弾は、貫通力が2でした。
 個人的に麻酔弾の貫通力はこれだけあれば十分だと思っています。

 スナッブ・ピストル/オート・スナッブ・ピストル、ライフル(9mm)、 散弾銃/自動散弾銃で使用される麻酔弾は、その貫通力が1しかありません。
 しかし、ちょっと検討してみたところ、あまり不都合はなさそうです。



 麻酔弾が特定の防具に対してどんな貫通状態を得られるのか、ちょっと検討してみました。


         表23 麻酔弾の貫通状態(単発型麻酔弾)

BW61_Fig23.gif - 9.47KB

 表の左側は武器名
 単発型麻酔弾を使用可能な弾丸射出型銃器を、貫通力毎に分類しました。

 表の右側は麻酔弾の貫通状態
 特定の防具に対して、どれだけの貫通状態を得られるのか、ということを比較しています。
 防具名の右側、括弧の内側に示した数値は、その防具の装甲値
 ジャック、アブラット、リフレックの装甲値は、銃器に対する数値を示しています。



 狩猟用ライフル(13mm)、戦闘ライフル(9mm)から発射される 貫通力=3麻酔弾の貫通状態は、 ジャック、アブラット、リフレックに対してならば「完全貫通」、 メッシュ、フラック・ジャケットに対しては「部分貫通」となっていました。
 狙い撃ちで装甲値を半減させるのであれば、 クロースや宇宙服(テックレベル8と12)に対しても「部分貫通」が得られます。
 宇宙服着用の海賊たちを無力化できる手段が存在していたことに驚きました。
 その命中率やダメージ期待値はかなり厳しいこととなりますから、試す気分にはなれませんが。

 磁気ピストル、磁気ライフル、戦闘ライフル(7mm)、 軽突撃銃から発射される貫通力=2麻酔弾は、 ジャック、アブラット、リフレックに対して「完全貫通」、 メッシュに対して「部分貫通」となっていました。
 フラック・ジャケットに対しては狙い撃ちを行うことでかろうじて「部分貫通」となりますが、 クロースや宇宙服に対してはどう頑張っても「無貫通」のままです。

 スナッブ・ピストル/オート・スナッブ・ピストル、ライフル(9mm)、 散弾銃/自動散弾銃から発射される貫通力=1麻酔弾は、 ジャックとリフレックに対してのみ「完全貫通」、 アブラットに対して「部分貫通」でした。
 狙い撃ちを行っても、「部分貫通」を得られるのはメッシュまで。
 フラック・ジャケットやクロース、宇宙服に対しては「無貫通」のままでした。



 ここで述べた通り、麻酔弾の貫通状態はかなり悪いものと成ります。
 通常の弾頭ならば「無貫通」でもある程度のダメージを相手に与えられますが、 麻酔弾はその特性故、「無貫通」でのダメージを期待できません。
 狙い撃ちをすれば良いという話もありますが、狙い撃ちを選択することによって命中難易度はひとつ上がります。 DMに直せば−4と同じレベルの不利な修正です。
 表5〜表12で考察してきた通り、DMが−4も付いたら射撃の有効性(ダメージ期待値)は大きく減少してしまうのです。

 麻酔弾は、防具を付けていないキャラクター、装甲値の小さなキャラクターにしか効果が無い。

 そう断言してしまっても問題はないでしょう。
 少なくとも私はそう考えています。



 次は、麻酔弾によるダメージの適用について。
 プレイヤーズ・マニュアルから、続きの部分を転載しました。

> 麻酔弾に詰まっている薬品は、大きく分けて2種類あります。
> 致死毒物と麻酔薬です。
>
> 致死毒物が血液に流れ込むと、キャラクターは
> 1戦闘ラウンドにつき1ポイントのダメージを受け、やがて死に至ります。
>
> 麻酔薬は、さらに通常麻酔と作用調節型麻酔の2種類に分けられます。
> 作用調節型麻酔薬はテクノロジー・コードが「標準星間+」で手に入ります。
> これは、与えるダメージが一時的なものであり、
> いったん目標が意識不能になったら、
> 麻酔薬によるそれ以上のダメージはすべて無視されます。
> 通常麻酔でも与えるダメージは一時的なのですが、
> たくさん命中して死亡レベルに達した場合は、
> 薬物ショックによって死んでしまいます。




 ツッコミどころ満載のルールですが、まずは1〜2行目。
 麻酔弾に詰まっている薬品(tranq agents)は、大きく分けて 致死毒物(lethal)麻酔薬(nonlethal)の2種類があるそうです。

 この致死毒物が素敵だと思いました。
 麻酔弾を使用した射撃が命中、貫通した時点で、目標キャラクターの血液には致死毒物が流れ込みます。
 その後、キャラクターは毎戦闘ランド、1ポイントのダメージを受けてしまいますので、早ければ1ラウンド、遅くても6ラウンドで意識を喪失。
 更に1分(=10戦闘ラウンド)が過ぎた頃には、毒殺死体がひとつ転がっている、ということになりそうです。
 時間は掛かりますが、当たらない銃撃を続けるよりは効果的なのではないでしょうか。
 この麻酔弾を用いた射撃が、目標キャラクターの防具(装甲)を貫通している、という条件付きですが。
 その反面、対抗手段がルール化されていないため、敵方に使用された場合にはとても怖いことが起こるでしょう。
 レフリーとプレイヤーは共にジュネーブ条約を批准して(お互いに化学兵器の使用を禁じて)から、キャンペーンを始めるべきかも知れません。



 麻酔薬が与えるダメージは一時的なものです。
 具体的な運用方法については記述がありませんが、貫通力(貫通状態)とダメージの大きさ、命中判定に用いたサイコロの目を使って、 通常通りにダメージ・ポイントを求めれば良いのでしょう。

 通常と異なる点は、そのダメージが一時的(temporary)なものであるということ。

 この一時的がどれぐらいの時間を意味しているのか具体的な記述はありませんが、 前回の考察「個人戦闘10(キャラクターの負傷)」を見直してみたところ、 軽傷を負ったキャラクターは3D分間重傷を負ったキャラクターは1D時間の間、意識を失っているそうです。
 麻酔薬の効果も、上記と同じぐらいの時間は効いている、と考えるべきでしょう。
 具体的には、最低でも3分以上、最大で6時間まで、という数値になりました。
 zaza様から教えて頂いた情報によると、TNEの麻酔弾は効果が1D分間Conspiracy X 2.0の麻酔弾はものによりますが、とある薬品の効果は15分間であるとのこと。

 面倒ですから、MT版の場合麻酔弾の効果時間は、 軽傷と同じ3D分間で良いのではないでしょうか。
 ある程度、麻酔弾による攻撃でかすり傷を負っても、 3D分間を逃げ回ることに成功すれば、そのダメージは消え失せるということです。
 軽傷になって意識を失えば、気絶から回復した時点でダメージも消えています。
 重傷を負った場合は、意識を失っている間(1D時間)に効果が無くなっている訳で、 やはり目を覚ました時点でダメージが消えているのでしょう。
 ダメージが消えるということは、応急手当も不要になると考えて良いのだと思われます。
 麻酔弾で無力化した相手には応急手当や治療を施さなくても良い、というのは大きなメリットですね。

 余談ですが、通常の攻撃によるダメージと麻酔薬によるダメージが混在している場合は、 それぞれのダメージ・ポイントをきちんと記録しておくべきでしょう。
 通常の攻撃によるダメージは、応急手当を施さないと悪化して、追加ダメージを引き起こす原因となります。
 しかし麻酔薬によるダメージは、 効果時間(此処では3D分間を提案)が過ぎれば消えてしまいます。



 麻酔弾は、キャラクター(や異星生物)を殺さずに無力化できる、実に便利な銃弾ですが、 場合によっては相手を殺してしまうことも有り得ます。
 上記の抜粋にもありますが、

> 通常麻酔でも与えるダメージは一時的なのですが、
> たくさん命中して死亡レベルに達した場合は、
> 薬物ショックによって死んでしまいます。


 というルールになっていました。
 薬物ショック(overdose)だそうです。
 現実世界の麻酔薬事情を考えると、物凄く尤もなルールだと感じました。
 映画や小説の中で、気軽に麻酔薬を使っている方がおかしい。
 zaza様から提供された情報の中にもありましたが、 心臓や呼吸の停止(ただちに医療を施さないと窒息死)というような状況は十分に有り得ることでしょう。

 テックレベル11以上で利用できる作用調節型麻酔はともかくとして、 通常麻酔を使った場合は無力化した後の手当(治療)が不要になるだけで、 相手を殺さないというメリットはほとんどないようです。
 応急手当が不要=負傷後の追加ダメージを受ける心配が無い、という意味では大きなメリットなのですけれど。



 具体的なダメージの期待値を見てみましょう。
 (4)基本ダメージ=2の銃器による死亡率(5)基本ダメージ=1の銃器による死亡率の表9〜表12を再掲載してみました。



 貫通状態は「完全貫通」。
 命中難易度は、様々な状況を加味して難易度〈並:7+〉を想定してあります。
 命中難易度が〈易:3+〉〈難:11+〉の場合は、 命中DMを4つ増減させることで対応して下さい。


        表9 基本ダメージ=2の銃器による死亡率(完全貫通)

BW61_Fig09.gif - 18.6KB

 表の左端は、武器の命中DMです。
 その右側は、その状態の命中率、ダメージ期待値、無力化の成功率。

 表の右側はダメージ・ポイントの分布。
 基本ダメージ=2の銃器が「完全貫通」している場合、 与えられるダメージが具体的に何ポイントのダメージが何パーセントの確率で与えられるのか、表の右側に並べました。

 基本ダメージ=2の麻酔弾を使う弾丸射出武器は、狩猟用ライフル(13mm)しかありません。
 次項のフレチェット弾や榴弾の代わりに用いる爆発型麻酔弾についてはコメントを保留。



 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合、 その無力化率死亡率は以下の通りです。
 例によって、3通りの命中DMを例に挙げて数値を比べました。

 命中DM=+5のビアトリスが攻撃した場合のダメージ期待値は8.0ポイント。
 無力化の成功率は92.7%と優秀ですが、無力化された目標の内5人に1人(=18.2%)が「死亡」します。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃した場合のダメージ期待値は6.6ポイント。
 無力化の成功率は83.3%ですが、無力化された目標の死亡率は10人中1人です。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合のダメージ期待値は2.8ポイント。
 無力化の成功率は41.7%しかありませんが、敵キャラクターを一撃で殺してしまうことは無くなりました。
 ダメージ・ポイントの最大値は8ポイントなので、 「かすり傷」を負った敵キャラクターを殺してしまう可能性は残っています。



 基本ダメージ=2の武器が「完全貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−4の11+でした。
 36分の1(=2.8%)の確率で2ポイント、36分の2(=5.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃は、36回で済むでしょう。



 次は貫通条件を「部分貫通」に変更した場合。
 あるいは、貫通条件は「完全貫通」のまま、 基本ダメージに減らした場合の死亡率です。


        表10 基本ダメージ=2の銃器による死亡率(部分貫通)

BW61_Fig10.gif - 17.2KB

 表の形式は表9と同じ。
 「部分貫通」に変わったため、あるいは、 基本ダメージに減ったため、 目標に与えられるダメージ・ポイントは半減しています。



 命中DM=+5のビアトリスが攻撃した場合のダメージ期待値は半減して4.0ポイント。
 無力化の成功率は72.2%で、無力化された目標を一撃で殺してしまうことは無くなりました。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃した場合のダメージ期待値は3.3ポイントに半減です。
 無力化の成功率は58.3%で、この条件でも無力化された目標を一撃で殺してしまうことはありません。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合のダメージ期待値は1.5ポイント。
 無力化の成功率は16.7%です。



 基本ダメージ=2の武器が「部分貫通」している場合、あるいは、 基本ダメージ=1の武器が「完全貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=−2の9+でした。
 36分の3(=8.3%)の確率で2ポイント、36分の7(=19.4%)の確率で1ポイントのダメージを与えられます。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な射撃回数は、11回になりました。



 最後は基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」しているです。
 難易度は〈並:7+〉のまま。


        表12 基本ダメージ=1の銃器による死亡率(部分貫通)

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 表の形式は表9と同じ。
  目標に与えられるダメージ・ポイントは、更に半減しています。



 命中DM=+5のビアトリスが攻撃を行う場合であっても、 目標へのダメージ期待値は2.0ポイント、無力化の成功率は16.7%しかありません。
 無力化された目標を一撃で殺してしまうことは有り得ませんが、 未だ「かすり傷」を負ったキャラクターを殺してしまう可能性が残っていました。

 命中DM=+4のベテラン兵士が攻撃を行う場合は、 ダメージ期待値が1.6ポイントで、無力化の成功率は8.3%まで低下しました。
 一撃での無力化は困難になりましたが、「かすり傷」を負ったキャラクターを殺してしまうことは有り得ます。

 命中DM=+1の初心者が攻撃した場合は、遂にキャラクターを殺してしまう可能性が無くなりました。
 その代り、ダメージ期待値は0.6ポイントしかなく、無力化の成功率は0.0%です。
 複数回の命中により、ダメージを少しずつ与えていくことで目標を無力化する、というパターンになるでしょう。



 基本ダメージ=1の武器が「部分貫通」している場合、 「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率は、命中DM=+2の5+です。
 36分の10(=27.8%)の確率で2ポイント、36分の11(=30.6%)の確率で1ポイントのダメージを与えられました。
 敵キャラクター1人を無力化するために必要な攻撃回数は5回だけで済むでしょう。



 基本ダメージ=1の麻酔弾を使う弾丸射出武器は、表22で示した通り10種類(7種類)もありました。
 唯一の例外は狩猟用ライフル(13mm)のみ。
 ですから、一般的に使われる麻酔弾基本ダメージは、 だということになります。
 それでも表10、表12へ示した通り、相手を殺してしまう可能性はそこそこ存在しますから、 「相手を殺さずに無力化する」手段として麻酔弾は相応しくないでしょう。

 麻酔弾が対人戦闘ではほとんど使えないと私が結論した、もうひとつの理由がこれです。
 相手を殺してしまう可能性が残っているのでは、命中DMを気にせず攻撃する、という訳にはいきません。
 結局、普通の攻撃と同じように命中率を調整しなければならないのです。

 わざわざ命中率を下げなければいけないのであれば、麻酔弾ではなく、普通の銃弾を使った方が良いでしょう。
 特に、無力化したい相手が装甲値の大きな防具を着用している場合は、その傾向が顕著となります。



 テクノロジー・コードが「標準星間+」、 =テックレベル11以上の世界で入手できる作用調節型麻酔薬(dosecontrolled agents)ならば、 ある程度、この問題を解決できるでしょう。
 作用調節型麻酔薬によるダメージは、 いったん目標が意識不能になったら、麻酔薬によるそれ以上のダメージはすべて無視されるとのこと。
 相手が薬物ショックによって死ぬ心配はありません。
 貫通力と装甲値の問題はどうしようもありませんが、薬物ショックの問題だけは免れることができるのです。




(3)爆発型の麻酔弾(bursting tranq rounds)

 今度は、フレチェット弾や榴弾の代わりに使用できる、 爆発型麻酔弾(bursting tranq rounds)について考えてみましょう。

 該当部分の記述を再度、転載しました。

> データが書かれていない火器でも、フレチェット弾を発射できるものなら、
> 特殊な爆発型麻酔弾を、フレチェット弾と同じ貫通力・致傷範囲で使用できます。
> フレチェット弾が発射できなくても、榴弾が発射できるものなら、特殊な麻酔弾
> (貫通力が2で、致傷範囲は榴弾と同じ)を使用することができます。


 フレチェット弾を発射できる銃器は、 フレチェット弾のような爆発型麻酔弾を使用できるとのこと。
 そのデータ、貫通力と致傷範囲はフレチェット弾のものと同等です。
 小さな麻酔針(麻酔弾)がフレチェットのように発射されると考えれば良いのでしょう。

 また、榴弾を発射できる銃器は、 榴弾のような爆発型麻酔弾を使用できるそうです。
 貫通力は一律で「2」、致傷範囲は榴弾のデータと同じでした。
 これは命中地点を中心として、小型の麻酔弾を飛散させるということなのだと思われます。



 どちらの爆発型麻酔弾も、 ダメージの大きさがルールで定義されていないという点が問題となりました。
 ダメージ期待値を求めてみたところ、フレチェット弾や榴弾のデータ(同じダメージ)を使ってしまうと、 無力化したい相手に対して、あまりにも大きなダメージを与え過ぎるという事実が判明。
 最低でも4ポイントのダメージを与えてしまうとか、最大で80ポイントのダメージを与えてしまう場合もあるとか、 「相手を殺さずに無力化する」手段である筈の麻酔弾が、 大量殺戮兵器となってしまっていました。

 作用調節型麻酔薬が利用できるのであれば、それでも問題ない(殺してしまうことはない)のかも知れません。
 しかし私は色々と考察した結果、爆発型麻酔弾基本ダメージを、 一律に修正することで、対応することにしました。
 もちろん、爆発型麻酔弾の中に致死毒物を詰め込むのであれば話は変わってきます。



 以下に、爆発型麻酔弾を使用可能な弾丸射出武器、擲弾筒、無反動ライフルを抜粋しました。
 まずは、フレチェット弾の代わりに発射される爆発型麻酔弾から。


    表24 各種麻酔弾の基本ダメージ(爆発型麻酔弾−フレチェット)

BW61_Fig24.gif - 5.00KB

 表の左端が武器名
 その右側が、銃器の貫通力基本ダメージ、 最後が致傷範囲です。
 基本ダメージの欄に示した括弧内の数値は、フレチェット弾の基本ダメージ
 爆発型麻酔弾基本ダメージとしては、 一律というルール解釈を採用しています。



 無反動ライフルは、テックレベル7のものでなければフレチェット弾を使えません。
 必然的に爆発型麻酔弾を使えるテックレベルも7になりました。
 口径についての制限はありませんから、口径6cmから口径10cmまで、 すべての無反動ライフルで爆発型麻酔弾が使えます。
 貫通力は、すべての口径ででした。
 基本ダメージの大きさはでしたが、 前述した理由により一律に変更してあります。
 致傷範囲45〜180メートル



 擲弾筒、ライフル擲弾筒は、テックレベルや口径が様々ですので、各種擲弾筒という分類で纏めました。
 フレチェット弾を使える擲弾筒は、テックレベル9以降のRAM擲弾筒、テックレベル8以降の自動RAM擲弾筒、 テックレベル8以降のライフルRAM擲弾筒、となっています。
 テックレベル8のRAM擲弾筒にフレチェット弾のデータがないのは不思議ですが、本題ではないので棚上げしておきましょう。
 それらの貫通力は、テックレベル8〜9の範囲で、 テックレベル10〜11の範囲で、テックレベル13以上でとなっていました。
 貫通力=4の麻酔弾というのはちょっと怖いようですが、擲弾筒は間接射撃専用なので、狙い撃ちができません。
 装甲値=5以上のクロースや宇宙服を着用していれば、麻酔弾によるダメージは受けない筈です。
 この貫通力はルール的に許容範囲でしょう。
 擲弾筒の基本ダメージは一律ででしたが、 無反動ライフルと同じ理由でへ変更しました。
 擲弾筒の致傷範囲90〜150メートルです。



 最後は軽突撃銃。
 この弾丸射出武器は単発型麻酔弾の他、2種類の爆発型麻酔弾を使えるという、 麻酔弾使用の観点から見て、非常に優れた武器でした。
 此処ではフレチェット弾の代わりに使える爆発型麻酔弾に注目してみましょう。
 爆発型麻酔弾貫通力基本ダメージ致傷範囲30メートル、という具合です。
 ちなみに、単発型麻酔弾貫通力基本ダメージという数値でした。BR>  複数の麻酔弾を発射する爆発型麻酔弾の方が威力が大きい (=基本ダメージが大きい)という、不思議な逆転現象が生じています。
 こういった状況はどう考えても不自然ですので、私は爆発型麻酔弾基本ダメージを、 一律にするという対策を取りました。
 見比べてみると、それほど不自然な数値ではないと思います。



 今度は、榴弾の代わりに発射される爆発型麻酔弾を使用できる武器のリスト。


      表25 各種麻酔弾の基本ダメージ(爆発型麻酔弾−榴弾)

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 表の形式は表24と同じです。
 表24に、突撃ロケット・ランチャーと戦闘ライフル(9mm)、スナッブ・ピストルを追加したような形になりました。

 プレイヤーズ・マニュアルの記述通り、 貫通力は、すべての武器で一律としてあります。
 基本ダメージに関する記述がないので、ここでも一律でを適用。
 致傷範囲だけは榴弾のデータを流用することになりました。



 無反動ライフルから発射される榴弾タイプの爆発型麻酔弾は、テックレベル6であっても問題なく使用できます。
 フレチェット弾タイプの爆発型麻酔弾が利用できるのはテックレベル7からですので、 テックレベル6の無反動ライフルで麻酔弾を使いたいと思ったら、このタイプしか有り得ません。
 致傷範囲15〜30メートル
 その範囲をフレチェット弾の致傷範囲と比べてみると、 フレチェット弾の致傷範囲は 幅15メートル×奥行105〜375メートル(15mマスで1マス×7〜25マス)と帯状に伸びているのに対し、 榴弾の致傷範囲は 45メートル〜75メートル四方(15mマスで3マス×3マス〜5マス×5マス)と円形(マップ上では正方形)に広がっていることでしょう。
 その面積は概ね等しくなっていることが判明しました。バランスはきちんと考えてあるようです。



 各種擲弾筒の場合、榴弾タイプの爆発型麻酔弾を使用できるのは、 テックレベル7以降の擲弾筒/自動擲弾筒、テックレベル6以降のライフル擲弾筒です。
 その致傷範囲1.5〜30メートルでした。
 テックレベル6〜7のライフル擲弾筒は致傷範囲1.5メートルしかありません。
 異様に小さな致傷範囲なのですが、ローテクの手榴弾も致傷範囲が狭いので、妥当な数値なのでしょう。
 テックレベル8以降に登場するフレチェット弾の致傷範囲と比べたところ、 擲弾筒においてもその面積はほぼ一致していました。



 突撃ロケット・ランチャーは榴弾を使用可能な武器なので、榴弾タイプの爆発型麻酔弾を使用できます。
 その致傷範囲3メートル
 中途半端な広さですが、これを逆手に取って、他者を巻き添えにしない麻酔弾攻撃を行うこともできるでしょう。



 戦闘ライフル(9mm)と軽突撃銃、(オート・スナッブ・ピストルを含む)スナッブ・ピストルは、 通常の麻酔弾に加えて、榴弾タイプの爆発型麻酔弾を使用することができました。
 それら通常の麻酔弾は、貫通力1〜3基本ダメージです。
 此処でも、複数の麻酔弾を発射する爆発型麻酔弾の方が、 威力(=基本ダメージ)が大きくなるという逆転現象が生じていますので、 爆発型麻酔弾基本ダメージを一律にする対策は、 正しかったということでしょう。
 スナッブ・ピストルの場合は貫通力さえも逆転していますが、 この問題は麻酔弾ばかりではなく、徹甲榴弾でも生じていますので、 今更突っ込む気にはなれません。
 無理をすると他の武器とのバランスが崩れてしまいますから、どちらでも良いでしょう。
 致傷範囲は、どの武器も1.5メートルでした。



 これらの爆発型麻酔弾によるダメージ期待値と目標の死亡率は、 表11 基本ダメージ=1の銃器による死亡率(完全貫通)と、 表12 基本ダメージ=1の銃器による死亡率(部分貫通)と同じになります。
相手を殺さずに無力化する」手段として、爆発型麻酔弾は今ひとつのようです。
 テックレベル11以上の作用調節型麻酔薬を利用できるようになるまで、 薬物ショックによる死亡の可能性を免れることはできません。




(4)ガス弾(Gas Rounds)

 最後は、ガス弾(Gas Rounds)です。
 ガス弾を使用できる武器は、武器表に明記されている通り、 スナッブ・ピストル/オート・スナッブ・ピストル、散弾銃/自動散弾銃の4種類(数え方によっては2種類)に加えて、
 また、榴弾を発射できる火器ならばどれでも、榴弾と同じ致傷範囲のガス弾を発射することができます。 と書かれているので、戦闘ライフル(9mm)、突撃ロケット・ランチャー、軽突撃銃、各種擲弾筒、無反動ライフルなどでも使用できました。



 ガス弾の使い方やダメージの適用については、 再び、プレイヤーズ・マニュアルの該当部分を参照することにしましょう。

> ガス弾は命中とともにガスを吹き出すもので、必ず致傷範囲が定められています。
> 致傷範囲内にいるユニットは、自動的にガスの影響を受けます
> (巻き添えの命中判定は不要)。
> 大きく分けて、ガスには浮遊型と定着型の2種類があります。


 ガス弾は、自動的に命中するそうです。
 非常に厄介な武器ですね。
 何と言っても命中判定は不要というところが怖いです。
 命中判定のサイコロで「2」が出れば外れる、といった幸運は期待できません。



 ところで、聞き慣れない単語が2つ登場しました。
 浮遊型定着型のガスとは、一体、どういう代物なのでしょうか?
 次の段落を読んでみましょう。

> 浮遊型ガスは、風に乗って流れていき、やがて戦場から消えてしまいます。
> 命中した戦闘ラウンドに致傷範囲の大きさに広がったガスは、
> それから1ターンにつき100メートルの割合で風下に流れていきます
> (大きさは変わりません)。
> 屋内では、1ラウンドに1マス、無作為の方向に漂い流れます。


 この部分を原文と読み比べてみたところ、
> ガスが漂う方向を無作為に決める際は、
> 間接射撃のずれと同じ方法を用いてください。
> ガスの移動は、それぞれの戦闘ラウンドの開始時に行われます。

 という訳文が欠落していました。
 HJのミスだと思われますので、補足しておいて下さい。

 それはともかく、浮遊型ガス(Nonpersistent Agents)は、 一般的なイメージのガスを想像しておけば良いようです。
 ガスは風に流されていき、流された後を移動しても、キャラクターはガスの影響を受けません。
 1ターンにつき100メートルという速度(≒60km/h)には疑問を感じますので、 この数字の桁がひとつ違っているか、単位(スケール)を間違えているのではないでしょうか。
 煙や煙幕と同じように、1戦闘ラウンド当たり1マス(=15m)という速度が妥当だと思います。
 屋内では1ラウンド当たり1マス(=1.5m?)の速度で漂い流れるそうですが、密室で流れる先が無い場合は、その場所に留まり続けるのでしょう。
 ガスの効果時間は定義されていませんから、換気されるまで、 その密室には効力のあるガスが充満していることになる訳で、ちょっと怖いです。



 定着型ガス(Persistent Agents)ですが、これに関する説明文は以下の通り。

> 定着型ガスは、接触した場所を汚染します。
> 汚染の効果は、1日(あるいは洗浄されるまで)持続します。
> 命中した戦闘ラウンドに致傷範囲まで広がったガスは、
> ただちにその範囲を汚染します。
> 次のターンには、致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れ、
> 通過した範囲すべてを汚染します。
> 定着型ガスはこの2戦闘ラウンドで消滅しますが、
> 汚染されたマスに入ったユニットは、ガスによる影響を受けます。


 効果時間が、1日(あるいは洗浄されるまで)、と明記されていました。
 定着型ガスの持続性が怖いです。
 辞書を引いてみたところ、Persistent という単語には、 しつこいとかねばっこいという意味もあるそうで、すんなりと納得できました。

 定着型ガスが汚染する範囲は、ガス弾の致傷範囲を少し大きくした広さになります。
 次のターンには、致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れ、ということですから、 致傷範囲=30メートル定着型ガス弾を使った場合は、 75メートル×150メートル(15mマスで5マス×10マス)の広さ。
 致傷範囲=15メートルの場合は、45メートル×90メートル(15mマスで3マス×6マス)の広さ、という具合。
 致傷範囲6メートル以下の場合、致傷範囲は命中したマスだけですが、 ガスの移動速度は1マス未満となるので1マス×1マスのままなのか、最低1マスは移動すると解釈して1マス×2マスになるのか、悩みます。



 浮遊型ガス定着型ガスの区別が付いたら、今度はダメージの適用です。

>ガス弾の効果:
> 
> 密閉型や加圧型の構造を持つ輸送機器の中にいるユニットは、
> ガス弾の影響を受けません。
> 宇宙服、悪環境服、戦闘アーマー、バトル・ドレスを
> 着用しているキャラクターは、ガス弾の影響を受けません。
>
> 上記以外のキャラクターも、ガス・マスクを着用していれば
> ガス弾の影響を受けません。
>
> ガス弾の効果は、麻酔弾とまったく同じです
> (致死毒物、通常麻酔、作用調節型麻酔などの効果があります)。


 上記の4行目、ガス・マスクを着用していればガス弾の影響を受けません、という部分ですが、 英文を見てみるとちょっと解釈が怪しくなります。
 原文をそのまま訳すと、ガスへの暴露を防ぐガス・マスクを着用していれば、というニュアンスになるので、 このガス・マスクとはNBC対応の防護服を意味しているのかも知れません。
 汚染大気で呼吸を可能にするための濾過マスク(Mask,Fillter)では役に立たない可能性があります。
 てっきり大丈夫かと思っていたのですが。
 使用したガス弾が呼吸器を通じて効果を発揮するタイプなのか、皮膚接触でも効果を発揮するタイプなのか、 レフリーはあらかじめ決めておく必要が有るでしょう。
 マスクの種類によっても防御できるガスと防御できないガスがあったりするのですが、ルールが複雑になるので割愛。

 テックレベル10以上の世界であれば、 戦場の歩兵は極地対応戦闘スーツ戦闘アーマーを着用している可能性が高いでしょう。
 上記の文章には書かれていませんが、 極地対応戦闘スーツ生物/化学兵器への防御力を備えています。
 極地対応戦闘スーツを着用している歩兵に、ガス弾は通用しません。



 ガス弾の効果は、麻酔弾とまったく同じです(致死毒物、通常麻酔、作用調節型麻酔などの効果があります)。 と書いてありますから、ガス弾によって与えられるダメージは 1戦闘ラウンドにつき1ポイントのダメージということで良いのでしょう。
 ルールに書かれている通り、命中判定は不要ですが。

 ダメージの与え方は共通であっても、 致死毒物のガス弾によって与えられたダメージは、治療を受けなければ治りません。
 例え1ポイントのかすり傷であっても、応急手当を施さなければ傷が悪化し、最終的には死に至ります。

 通常麻酔のガス弾によって与えられたダメージは一時的なものであり、一定の時間が経過すれば消えてしまいます。
 この時間が公式ルールには定義されていないため、私は3D分間という時間を用いることにしました。
 サイコロを振ることが面倒だと感じるのであれば、 10分とか15分という時間を用いれば良いでしょう。
 ダメージは一時的なものだと述べましたが、一時的なものであっても累積ダメージが致死レベルに達してしまった場合は、 通常麻酔のガス弾であってもキャラクターを殺してしまいます。

 キャラクターを殺すことが無い、安心して使えるガス弾は、 テックレベル11以降で利用可能な作用調節型麻酔のガス弾です。
 「相手を殺さずに無力化する」手段として用いるのであれば麻酔弾と同じように、 作用調節型麻酔のガス弾という選択肢しかありません。



 榴弾の代わりに発射されるガス弾を使用できる武器を一覧表として纏めてみました。


         表26 各種麻酔弾の基本ダメージ(ガス弾)

BW61_Fig26.gif - 6.90KB

 表の形式は表24と同じです。

 但し、ガス弾に貫通力基本ダメージは影響しませんから、 実質的に致傷範囲だけのデータとなりました。
 致傷範囲についての考察は表25で済ませているため、今回は省略。



 さて、ガス弾が与えるダメージは、一律で1戦闘ラウンドにつき1ポイント、です。
 麻酔弾の項で致死毒物について触れた際は真面目に考えていませんでしたが、 ガス弾が与えるダメージについて考察するのであれば、この問題を避ける訳にはいきません。

 と言う訳で、具体的なダメージ・ポイントの大きさと、 そのダメージによる無力化率死亡率を求めてみました。
 キャラクターの生命力(耐久値)によって 無力化死亡に必要なダメージ・ポイントが異なってきますから、 そのあたりの事情も考慮しています。

 とあるマス(15mマス)に36人(1個小隊規模)の敵キャラクターが集合している、と想定して下さい。
 敵キャラクター(NPC)の生命力(耐久値)は、表1へ示した通り、ランダムに決まります。
 36人のキャラクターが居るのであれば、その内1人だけ(2.8%)が「生命力9(耐久値2/2)」であり、 9人(25.0%)が「15(3/3)」、長くなるので途中は省きますが、 最後の1人(2.8%)が「36(5/8)」となっていることでしょう。
 実際にこうなるとは限りませんが、上記のような分布を想定しておきました。

 このマスへ、十分な致傷範囲を持つガス弾を撃ち込みます。
 今回の想定では、浮遊型ガス定着型ガスのどちらであっても問題にはなりません。
 ガス弾は命中と同時に大量のガスを噴き出し、前述のマス(15mマス)をガスの影響下に収めます。



 ガス弾が与えるダメージは前述の通り1戦闘ラウンドにつき1ポイントですが、 このダメージはガス弾が影響を与える時間=効果時間に比例することになりました。
 そのダメージによるキャラクターの無力化率死亡率を求めてみます。


       表27 ガス弾が与えるダメージ(無力化率と死亡率)

BW61_Fig27.gif - 10.2KB

 表の左端は、特定のキャラクター(NPC)と遭遇する確率で、 その右側がキャラクターの耐久値

 表の右側はガス弾の効果時間ですが、その単位は戦闘ラウンド(=6秒)
 ですから効果時間がそのまま、 キャラクターに与えられるダメージ・ポイントにもなっています。



 ガス弾の効果時間1戦闘ラウンドしかない場合、 敵キャラクターの誰一人として無力化できません。
 生命力が5以下のキャラクターならば耐久値が「(1/1)」なので、 わずか1ポイントのダメージでも無力化されてしまう訳ですが、 レフリーズ・マニュアル、p.43に掲載されている簡易NPC作成表の中には見つかりませんので、 生命力5以下のキャラクターは36人の中に含まれていない、と考えます。
 生命力5以下のキャラクターを再現するとしたら、幼児や老人、怪我人になるのではないでしょうか。

 2戦闘ラウンド目になると、敵キャラクター36人の中で1人(2.8%)だけしか居ませんが、 耐久値=「(2/2)」のキャラクターを無力化できます。
 全体の人数からすれば極一部ですので、そのキャラクターが指揮官や下士官でもない限り、戦闘にはほとんど影響しないでしょう。

 3戦闘ラウンドでは、 敵キャラクターに与えられるダメージは一律で3ポイントに達しました。
 意外なことですが、敵キャラクターの半数以上、36人の内21人(58.3%)を無力化できたようです。



 ガス弾の効果時間4戦闘ラウンドになると、状況は更に大きく変わります。
 無力化できる敵キャラクターの人数は36人中35人(97.2%)。ほぼ全てと言って良いでしょう。
 戦闘可能なキャラクターは、耐久値が「(5/8)」の一人だけ。
 これ以上、戦闘を続けることは出来ないと思われます。
 しかし、その代り、耐久値=「(2/2)」のキャラクターは ダメージが死亡値に達してしまいました。
 遂に死亡者の発生です。

 効果時間3戦闘ラウンドに抑えると、 無力化できる敵キャラクターの数が21人(58.3%)にしかならず、残り15人(41.7%)は戦闘可能なまま。
 効果時間4戦闘ラウンドまで伸ばせば、 敵キャラクターの大半(35人、97.2%)を無力化できますが、 一部のキャラクター(36人中1人、2.8%)を死亡させてしまう。
 「相手を殺さずに無力化する」という目的からすると、ちょっとしたジレンマです。
 作用調節型麻酔のガス弾という便利なものが登場すれば、解決するのですが。



 ガス弾の効果時間5戦闘ラウンド目、 遂に最後の敵キャラクター「(5/8)」を無力化できました。
 無力化率は100%です。
 死亡率は2.8%のまま。

 6戦闘ラウンド目、 耐久値=「(3/3)」の敵キャラクターが死亡しました。
 死亡率は36人中10人ということで、27.8%に急上昇。

 表には載せていませんが、7戦闘ラウンド目になると、 今度は耐久値=「(3/4)」の敵キャラクターが死亡するようになります。
 死亡率は36人中15人の41.7%。

 8戦闘ラウンド目は、 耐久値=「(3/5)」の敵キャラクターも死亡しました。
 死亡率は36人中21人で58.3%。

 少し数字を飛ばしますが、効果時間10戦闘ラウンド(=1分)に至ると、 耐久値=「(4/6)」の敵キャラクターまで死亡します。
 敵キャラクターの死亡率は、36人中の33人ですから、91.7%。
 致死毒物のガス弾通常型麻酔のガス弾は、 わずか1分の効果時間で大量虐殺を行えると判明しました。

 ついでに12戦闘ラウンド目死亡率も求めておきましょう。
 耐久値=「(4/7)」の敵キャラクターも死亡しているので、 敵キャラクターの死亡率は36人中35人の97.2%。

 12戦闘ラウンド目を迎えれば、死亡率は100%となります。
 生存者は1人も居ない、という状況ですから、下手な銃撃戦や砲爆撃よりも酷いですね。
 化学戦の恐ろしさを実感しました。

 ちなみに、麻酔ガスによって多数の死者を出したことで有名な モスクワ劇場占拠事件ですが、人質922人の内129人(14.0%)が死亡しております。
 メガトラに登場する通常型麻酔のガス弾であっても同様に、 ガス弾の効果時間によっては多数の死者を出すことが有り得るでしょう。

 完全なハウス・ルールとなりますが、 ガス弾の効果時間が2〜5戦闘ラウンドで消えてしまう(それ以上の時間が過ぎたら分解や希釈などで効果を失う)、 というルールを採用した方が良いかも知れません。
 そうすれば、非致死性の麻酔ガスで多数の死者を出すことを避けられます。
 ぜひ、ご検討下さい。



 上記、表27の結果を踏まえて、ガス弾の効果時間、というものをもう一度考えてみました。

 閉め切られた屋内はともかくとして、屋外には風というものが存在します。
 プレイヤーズ・マニュアルにも、 浮遊型ガスは、風に乗って流れていき、やがて戦場から消えてしまいます、と書いてある訳ですから、 少なくとも浮遊型ガスが風に流されていくことは間違いありません。

 浮遊型ガスが風に流されて移動するということは、 特定の場所(マス)がガス弾の効果に晒される時間も限られているということです。
 ガスの移動速度(風の強さ)が10km/h(=2.5m/sec)程度であったとしても、 ガス塊は1戦闘ラウンド(=6sec)当たり1マス(=15m)を移動していくことになりますから、 ガスの大きさが1マスだけだとしたら、特定のマスに影響を及ぼす時間はわずか1戦闘ラウンド。
 致死毒物にしろ、麻酔ガスにしろ、 そのマスに居るキャラクターはほとんど影響を受けずに済むことでしょう。

 反対に、ガスの大きさが差し渡し10マス(=150m)を覆い隠すほどの大きさであれば、 そのガス塊が特定のマスに到達し、通り過ぎるまで10戦闘ラウンドの時間が必要となります。
 作用調節型麻酔のガスを使用したのでない限り、 そのマスに居るキャラクターは大半が死亡しているということになるでしょう。

 また、ガスの移動速度(風の強さ)も大きなパラメータとなります。
 例えば、ガス塊が60km/h(=15m/sec、気象庁の定義では強い風に相当)で移動するのであれば、 差し渡し10マス(=150m)のガス塊であっても、特定のマスに影響を及ぼす時間は1〜2戦闘ラウンドでしかありません。
 もちろん、こんな台風並みの強風下でガスを使うというのは非常識な話ですが、こういった使い方もルール上では有り得る、ということです。



 ガスの大きさと移動速度(風の強さ)によって決まる、特定のマスへのガスの効果時間を、以下に纏めました。


              表28 ガスの効果時間

BW61_Fig28.gif - 9.25KB

 表の縦軸がガスの大きさ
 単位は15mマスのスケールで求めたマス数ですが、メートル単位で表したものを括弧内に併記してあります。

 表の横軸は移動速度(風の強さ)
 単位はメガトラの移動速度で、1戦闘ラウンド(=6sec)に15mマスを何マス移動できるかを表しています。 時速で表したものを括弧内に併記。

 表の中に数値は、ガスの効果時間です。
 効果時間が1〜2戦闘ラウンドならば、与えるダメージはかすり傷
 3〜5戦闘ラウンドならば、半数からほぼ全員を無力化
 6〜9戦闘ラウンドならば、死者が出ます。
 10戦闘ラウンド以上ならば大半が死亡しているでしょう。
 そういった数値を示しました。

 蛇足ですが、表の右端はその大きさのガス塊を1発で作るために必要なガス弾の致傷範囲
 致傷範囲=70〜80mのガス弾を使えば1発で11マス(165m)のガス塊を作り出せますし、 致傷範囲=10〜20mのガス弾であれば1発当たり3マス(45m)のガス塊しか作れません。



 移動しない定着型ガスとは異なって、 浮遊型ガスガスの大きさ移動速度(風の強さ)が、 その効果時間に大きな影響を与えています。
 浮遊型のガス弾で確実に相手を無力化したいと考えるのであれば、 上記の数字を参考に、発射する砲弾の数等を考えるべきでしょう。

 ちなみに上記の移動速度は、ユニットの移動速度としても使えます。
 定着型ガスの塊を突っ切る際の目安にして下さい。
 ガスの大きさが1マスであれば、1戦闘ラウンドの影響(=1ポイントのダメージ)を受けるだけで突破できるでしょう。
 走って(移動速度2で)通り抜けるのであれば、ダメージ無しで済むかも知れません。
 ガスの大きさが10マスの場合、歩き(移動速度1)での突破は10戦闘ラウンド掛かってしまうので、お勧めできません。
 走った場合(移動速度2)でも5戦闘ラウンドなので危険です。

 流れてくる浮遊型ガスを避けることが困難な場合、 キャラクターは風上に向かって走る(ガス塊を突き抜ける)ことで被害を減らせるかも知れません。
 そうした場合は、風の強さとキャラクターの移動速度を合成して下さい。



 余談ですが、定着型ガスの移動速度についても触れておきましょう。

> 定着型ガスは、接触した場所を汚染します。
> 汚染の効果は、1日(あるいは洗浄されるまで)持続します。
> 命中した戦闘ラウンドに致傷範囲まで広がったガスは、
> ただちにその範囲を汚染します。
> 次のターンには、致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れ、
> 通過した範囲すべてを汚染します。
> 定着型ガスはこの2戦闘ラウンドで消滅しますが、
> 汚染されたマスに入ったユニットは、ガスによる影響を受けます。


 定着型ガスが汚染する範囲は、命中した戦闘ラウンドがガス弾の致傷範囲と同じ。
 その次の戦闘ラウンドには致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れるということでした。
 どうやらこれ、定着型ガスの落下時間を踏まえ、簡潔に再現するためのルールだったようです。

 定着型のガス弾は粉末消火器、あるいは、消石灰のような粉末を撒き散らすものだと想像して下さい。
 その粉末は致傷範囲に撒き散らされますが、 致傷範囲と同じ高さまで垂直方向にも吹き上げられる訳です。
 当然ながら、吹き上げられた粉末が地面に降りてくるまでに必要な時間は、吹き上げられた高さが高ければ高いほど時間が掛かる訳で、 次のターンには、致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れる、という表現は、そのことを表しているのではないでしょうか。
 つまり本当ならば、定着型のガス弾は毎戦闘ラウンド、風下に1マスずつ移動していき、 その間ずっと、移動経路上のマスを汚染していくということになる筈だった、と推測しました。
 致傷範囲の直径が3マス(ガス弾の致傷範囲=15m)の場合は、落ち着くまでの時間が3戦闘ラウンド。
 致傷範囲の直径が7マス(ガス弾の致傷範囲=45m)ならば、7戦闘ラウンド。
 そう考えると、納得できます。
 ガスが落ち着くまでの時間を考えながらプレイすることは面倒ですから、次の戦闘ラウンド(ターン)、 一気に致傷範囲の直径と同じだけ風下に流れるというルールにしてしまったのではないかと。
 だからどうだという訳でもないのですが。



 折角なので、砲(迫撃砲/低初速砲/高初速砲)から発射されるガス弾の致傷範囲を纏めてみました。


       表29 ガス弾(迫撃砲/低初速砲/高初速砲)の致傷範囲

BW61_Fig29.gif - 8.48KB

 表の左端は武器名
 表の右側がテックレベル毎に修正されたガス弾の致傷範囲です。

 口径2cmと4cmの砲弾の致傷範囲については、若干の疑念がありますので、黄色で示しました。



 こちらは携帯兵器(手榴弾/擲弾筒/無反動ライフル)のガス弾です。


      表30 ガス弾(手榴弾/擲弾筒/無反動ライフル)の致傷範囲

BW61_Fig30.gif - 7.35KB

 表の左側は武器名テックレベル
 表の右側がガス弾の致傷範囲です。

 携帯火器はガス弾の致傷範囲が小さいので、屋外で使用する場合は多人数で集中攻撃を行うか、 定着型ガスに切り替える必要があるでしょう。
 屋内での使用ならば問題はありません。



 麻酔弾ガス弾について考察を纏めました。

 麻酔弾は貫通力が小さいため、 目標がちょっとした防具(メッシュ、クロース、宇宙服等)を着用しているだけで「無貫通」となり、 その効果を発揮できなくなります。
 強力な銃器(狩猟用ライフル、あるいは口径9mmの戦闘ライフル)を使用し、狙い撃ちを行えばクロース(装甲値=5)と、 テックレベル12以下の宇宙服(装甲値=6)を「貫通」できますが、 ダメージを与えるためには大きな命中DMが不可欠ですので、実用的ではありません。

 ガス弾は、ガスの効果範囲内に存在していれば命中判定なしでダメージを与えられますから、 対抗手段を備えていないキャラクターに対しては極めて有効であることが判明しました。
 その反面、ガス・マスクや宇宙服、戦闘アーマー等を着用したキャラクターには効果がありません。
 宇宙服を手軽に利用できる環境(宇宙船内など)やテックレベル10以上の戦場において、役に立つことは無いでしょう。

 麻酔弾ガス弾で使用できる麻酔薬には、 通常麻酔作用調節型麻酔の2種類がありました。
 与えるダメージが一時的な物である、という点は共通していましたが、 通常麻酔は与えたダメージが致死レベルに達した場合、 相手を薬物ショックで殺してしまいます。
 ルール的にも、通常麻酔によって大量の死者が発生することは確認できました。
 そうしたリスクを避けたいのであれば、より安全な作用調節型麻酔を用いるしかありません。
 本当の意味での麻酔薬(nonlethal)とは、 テックレベル11以上の世界でなければ入手できない、作用調節型麻酔のことを指すのでしょう。
 テックレベル10以下の世界で使われている通常麻酔は、致死率が高くて危険です。





神経銃の使い方(公式ルール)


 私は一度も使ったことがないのですが、メガトラベラーには神経銃(Neural Guns)といった兵器も存在していました。
 テックレベル16という高度な科学技術を持つ世界でしか手に入らない銃器ですが、 ナイトフォール、p.83、マッシリア宙域の科学技術によれば、

> 特に神経兵器は、傷を負わせずに犯罪者を捕えることができるうえに、
> 人質をとられた状況でも有効なので、
> 高テックレベル世界の警察用武器として好まれるようになっています。


 とのこと。
 とても重宝されているようでした。
 傷を負わせずに犯罪者を捕えることができるという特徴はもちろんのこと、 人質をとられた状況でも有効という部分にも期待できそうです。
 前章で考察してきた麻酔弾ガス弾よりも、使い易い武器なのかも知れません。
 ちょっと考えてみることにしましょう。




(1)神経銃の命中判定とダメージ

 ところで神経銃ですが、 プレイヤーズ・マニュアルには関連する情報が一切見つかりません。
 何処にあっただろうかとおぼろげな記憶を頼りに探したところ、帝国百科の中で記述を発見しました。
 特殊な兵器という扱いを受けているようです。

 帝国百科、p.72より、以下のルールを転載しました。

> 神経活動の遠隔探査や超能力ヘルメット技術の進歩によって発明された、
> 脳の神経活動を遠くから破壊できる銃です。
> 神経銃で撃たれると、人事不省(麻痺)になりますが、
> ときにはそれ以上の思いがけない効果
> (失見当識、精神錯乱、死亡)を及ぼすことがあります。
> 神経銃はきわめて高度なテックレベルの世界でしか入手できません。
> 
> 超能力の生命探知能力を持つ者は、
> 神経兵器の発射を一定の距離から感知することができます。


 今回も色々とツッコミどころが見つかりました。

 まずは3〜5行目。
 前半部分に「神経銃に撃たれると人事不省になる」などと怖いことが書いてありますが、 原文は「unconsciousness」でした。
 プレイヤーズ・マニュアルで言うところの無力化を指しています。
 括弧内に書かれている「i.e., a stun(麻痺)」という訳の方が、分かり易い表現だったのではないでしょうか。

 後半部分の「思いがけない効果(失見当識、精神錯乱、死亡)」に対応する原文は、  「random effects instead: disorientation, mind assault, or even death.」でした。
 「無作為に決まる効果(方向感覚の喪失、心理攻撃、死亡)」と訳すべきでしょう。

 そして最初の「disorientation」ですが、 次の段落ではきちんと「方向感覚を失います」と訳しているのに、 この説明文では「失見当識」と訳してしまっているあたり、訳語が統一されていないと感じました。
 間違っている訳ではありませんが、ルール解釈の混乱を防ぐためにも、訳語は統一すべきです。

 次の「mind assault」は、超能力の項にあるテレパシーの心理攻撃のことでした。
 その作用としては精神錯乱を引き起こすということで合っているのかも知れませんが、ここでは誤訳となるでしょう。
 超能力に関しては未だルールを理解していないので、これ以上のコメントは保留。



 それはともかく、神経銃で撃たれた相手は死亡する可能性があるようです。

 ちょっと……おかしいですね。
 ナイトフォールには、傷を負わせずに犯罪者を捕えることができるとか、 人質をとられた状況でも有効といった記述が存在するのですが。

 ナイトフォールに掲載された情報が良くあるリップサービスで、 実際の神経銃は高い死傷率を持っていても、警察関係者はそれを気にしていないのか。
 それとも反対に、帝国百科の記述が死傷率を過大に述べている(危険性を強調している)だけなのか。



 この疑問を解決するため、帝国百科、p.72レフリー用註釈を参照してみました。
 すみませんが此処から先は、レフリー向けの情報となっています。
 以下に該当部分を転載。

>レフリー用註釈:
> 神経兵器はきわめて特殊な兵器であり、そのため
> プレイヤーズ・マニュアルの「武器表」には記載されていません。
> 神経ピストルの直接射撃の難易度はハンドガンと、
> 神経ライフルの難易度はライフルと同じです。
> ただしどちらの場合も、最大射程は「遠距離」までです。
> 神経兵器の貫通力は、射程距離範囲のすべてにわたって10です。
> 貫通力が目標の装甲値以上であった場合、
> ダメージ・ポイントは命中判定の成功の度合いによって決まります。
> 例外的成功ならば、目標が人事不省になります。
> 通常の成功ならば、目標は「事故表」で2Dをふります。
> 最低限命中のときは、「事故表」で3Dをふります。
> 「事故表」の結果は以下のように読み変えてください。
> 
> 微小:1戦闘ラウンドのあいだ、目標は方向感覚を失います。
> 小: 1D戦闘ラウンドのあいだ、目標は方向感覚を失います。
> 大: 〈テレパシー〉技能レベルが2Dの精神攻撃として扱います。
> 重大:目標は死亡します。


 神経銃の使用に関するルールは此処だけにしか見つかりません。
 ですから、上記のルールを優先すべきなのでしょう。

 とりあえずは、誤訳の指摘から。
 7〜8行目の「ダメージ・ポイントは命中判定の成功の度合いによって決まります」は、HJの誤訳。
 対応する原文は「handle hit damage based on the success level」でした。
 ですから正しい訳は「ダメージ・ポイント」ではなくて、単なる「ダメージ」。
 神経銃は、通常のダメージ判定を行わないのです。



 命中難易度と最大射程については、他の一般的な銃器と同じ解釈で問題ありません。
 最大射程が短いですから、残念ながら、軍事用途には向かないようです。

 貫通力は、射程距離範囲のすべてにわたって10という記述からすると、 通常の射撃で「貫通」を得るためには、目標の装甲値が10以下でなければなりません。
 狙い撃ちを行ったとしても「貫通」できるのは装甲値21以下の目標となります。
 かろうじて、テックレベル14以上の戦闘アーマー(バトル・ドレス)を貫通可能だという点は、喜ぶべきなのか嘆くべきなのか。
 磁気ライフルは「無貫通」でもダメージを与えることが可能なのに対し、 神経銃は「無貫通」の場合、一切のダメージを与えられません。



 具体的な運用方法について考察してみます。
 上記のルールから、神経銃の無力化成功率を求めてみました。


            表31 神経銃の無力化成功率(%)

BW61_Fig31.gif - 11.7KB

 表の左端は命中率
 「0+」から「12+」の範囲で、無力化率を求めました。

 その右に並ぶ数値は、神経銃の射撃が外れる確率、 最低限命中になる(=事故表で3Dを振る)確率、 通常の命中(=事故表で2Dを振る)確率、 例外的命中(=無力化に成功する)確率、です。



 いつもと同じ評価方式ですが、命中DM=+5のビアトリス(敏捷力DM=+2、技能レベル=3)が 命中難易度難易度〈並:7+〉で射撃を行った場合、無力化の成功率は91.7%でした。
 基本ダメージ=4の「部分貫通」や 基本ダメージ=2〜3の「完全貫通」に匹敵するほどの、高い成功率です。
 しかも、事故表で3Dを振る可能性がないため、死亡率はゼロ。
 実に素晴らしい結果です。

 命中DM=+4のベテラン兵士(敏捷力DM=+2、技能レベル=3)が同じ条件で射撃を行う場合、 無力化の成功率は83.3%。
 これも基本ダメージ=4の「部分貫通」や 基本ダメージ=2〜3の「完全貫通」と同じ成功率でした。
 残念ながら、若干の死亡者が発生しているようですが。

 命中DM=+1の初心者(敏捷力DM=+1、技能レベル=0)が同じ条件で射撃を行うのであっても、 無力化の成功率は41.7%でした。
 今回も基本ダメージ=4の「部分貫通」や 基本ダメージ=2〜3の「完全貫通」と同じ成功率であり、 神経銃は目標の無力化という点に関して、非常に優れていると言えそうです。
 死亡率は、命中DM=+4と比べて4倍となりました。
 これは大きな問題になりそうです。




(2)神経銃の事故表

 今度は、神経銃の事故表について、調べてみましょう。
 上記の表31でも軽く触れましたが、神経銃で撃たれた目標が死亡する可能性は、 事故表で3Dを振る場合にしか有り得ません。

 神経銃のために修正された事故表は、以下のように変わります。


              表32 神経銃の事故表

BW61_Fig32.gif - 8.47KB

 何度か使っている形式ですが、表の左側が事故の起こる確率
 2Dを振るか、3Dを振るかによって、それぞれの事故の分布が変わってきます。

 表の右側は事故の程度

 例えば微小の事故が起きた場合、撃たれたキャラクターは1戦闘ラウンドの間、方向感覚を失います。
 原文では「disorientation」と書かれていますので、 「失見当識」でも「方向感覚を失う」でも、どちらでも同じことですが。
 ちなみに「disorientation」はゼロG環境の戦闘でも同じ言葉が使われていますので、 効果も同じだと考えるべきでしょう。
 「方向感覚を失っている」キャラクターは、射撃も近接戦闘も移動もできません。

 の事故が起きた場合、撃たれたキャラクターが方向感覚を失う時間は1D6戦闘ラウンド。
 ちょっと長めになりました。

 の事故が起きた場合、 撃たれたキャラクターは精神攻撃(mind assault)を受けたものとしてダメージ判定を行います。
 超能力のルールは未だ内容を理解していないので棚上げしておきますが、重要なツッコミをひとつ。
 「mind assault」の訳語は、 プレイヤーズ・マニュアル「超能力」の記述に従えば「心理攻撃」とするべきでした。

 最後の重大な事故は、撃たれたキャラクターの死亡を意味しています。
 事故表で3Dを振るのであれば、 重大な事故が起こる可能性は9.3%
 事故表で3Dを振る場合 キャラクターの死亡率9.3%も発生している、ということになりました。




(3)神経銃の死亡率

 事故表で3Dを振る場合に、 キャラクターの死亡率9.3%も発生している、 という事実から、神経銃で撃たれたキャラクターの死亡率を求めてみます。


             表33 神経銃の死亡率(%)

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 表の左端は命中率

 その右側は、事故表で3Dを振ることになる確率。 命中判定で最低限命中となる確率でもあります。

 その右側の確率は神経銃で撃たれたキャラクターの死亡率(%)
 事故表で3Dを振る確率に、前述した9.3%を掛けた値です。
 最小でも0.26%で、最大は1.54%
 意外と高かった数字に、驚きを隠せません。

 最後は、キャラクター1人が死亡するまでに神経銃で撃たれた人数
 要するに死亡率の逆数となっている訳ですが、 最小でも389人に1人が死亡、最大の場合は65人に1人が死亡する、という事実が判明。

 トラベラー世界の警察は、このぐらいの死亡率ならば気にしないのでしょうか。



 上記の死亡率を表31に組み込んで、無力化の成功率と比較してみました。


           表34 神経銃の無力化率と死亡率(%)

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 表の左端は命中率
 「0+」から「12+」の範囲で、無力化率死亡率を比べています。

 命中率の右側に並ぶ数値は、射撃が外れる確率、目標が死亡する確率、 混乱や精神攻撃等、その他の効果を与える確率、最後は目標の無力化に成功する確率、です。



 命中率が「1+」より良い状態ならば、無力化率は97.2%という高い値となっており、 致命的失敗(サイコロの目が「2」)となる時以外、ほぼ確実に目標の無力化に成功していました。
 間違っても、目標を殺してしまうことは有り得ません。

 命中率が「2+」で、射撃は命中しても「その他の効果」しか及ぼせない、という可能性が生じてきました。

 命中率が「3+」になると、死亡率が発生。
 「その他の効果」の確率も着実に増加しています。
 それと反対に、無力化率は徐々に低下。

 命中率が「7+」の時点で死亡率は最大となりました。
 撃たれたキャラクター65人に1人が死亡しているという悲惨な状況です。
 無力化率は27.8%まで低下し、「その他の効果」を及ぼす確率の方が大きくなってしまいました。

 命中率が「11+」になると、無力化率は遂に0.0%です。
 それでも死亡率はしっかり残っている点が実に残念。
 通常の武器のように、故意に命中率を悪くして手加減をするという方法は、神経銃では使えませんでした。



 考察の結果、神経銃が必ずしも、 「相手を殺さずに無力化できる」兵器ではないことが明らかになりました。
 ナイトフォールに掲載されていた 特に神経兵器は、傷を負わせずに犯罪者を捕えることができるうえに、人質をとられた状況でも有効、という記述は、 民間人向けのリップサービスだったなのです。
 実際のところ、神経銃で撃たれたキャラクターの中には、 65人〜389人に1人という無視できないレベルで死者が発生していました。
 神経銃を使用する側(警察や軍関係者)は、 意外と高くなっている死亡率をしっかりと意識して、使用に踏み切るべきでしょう。

 撃たれる側(犯罪者やプレイヤー側?)も同様です。
 追手が持っているのは神経銃だ。
 撃たれても死なないのだから、最後まで抵抗しよう。
 などと思っていたら、次の瞬間には死んでいるかも知れません。





結論


 今回は、如何にして「相手を殺さずに無力化するか」ということを考えてみました。
 メガトラの個人戦闘ルールを使って戦闘を解決した場合、相手を殺さずに無力化する(意識喪失状態に陥らせる)ことは難しい、 というこは経験的に分かっていましたが、それを数字で明らかにしようと試みた訳です。



 まずは、NPCの生命力(耐久値)について纏めてみました。
 キャラクターの耐久値は無力化値死亡値(破壊値)に分かれていますが、 その両者の差は1ポイント〜11ポイントです。
 つまり、かすり傷の状態から死亡するまで、 1ポイント〜11ポイントのダメージにしか耐えられない、ということが分かりました。
 より一般的なキャラクターならば3〜7ポイントの範囲に収まりますが、そうであっても、 この事実は先程まで平然と動き回り、こちらを攻撃していた敵キャラクターが、 3ポイントのダメージを与えるだけで死亡してしまう、ということを意味しています。
 相手に殺さずに与えられるダメージは、最大でも2ポイントまで。
 「相手を殺さずに無力化する」ことを優先している場合、実に重要な発見です。



 次は、射撃戦闘近接戦闘について、そのダメージ期待値を調べました。
 基本ダメージ=1〜4の武器が、様々な貫通状態で命中した場合、 目標キャラクターがどれだけの確率で無力化され、 その際にどれだけの死亡率が生じるのか、ということを考えています。

 その結果、「相手を殺さずに無力化する」ために最適な武器は、 相手の防具を貫通しない「無貫通」の武器、 あるいは貫通状態が「部分貫通」となる基本ダメージ=1の武器であると分かりました。
 次点が、「完全貫通」となる基本ダメージ=1の武器か、 「部分貫通」となる基本ダメージ=2の武器。
 それ以外の武器は、相手を殺してしまう可能性が高過ぎるでしょう。



 その次は、相手を殺さずに無力化するためにならば、DMを任意に調整できる、 というハウス・ルールを作りました。
 様々な目標キャラクターの生命力(耐久値)から、「相手を殺さずに無力化する」ために最適な命中率を求め、 無力化までに必要な射撃回数(攻撃回数)を計算しています。

 目標キャラクターに与えるダメージの最大値が1ポイント。
 どんなキャラクターが目標になっていても、絶対に殺さない、安心確実な攻撃パターンを選択した場合、 最適な命中率は9+〜10+でした。
 耐久値が「(1/1)」から「(5/7)」の6パターンについて計算したところ、 無力化に必要な攻撃回数12回180回になっています。

 目標キャラクターに与えるダメージの最大値を2ポイントに増やした場合、 耐久値が「(1/1)」のキャラクターを殺してしまう可能性が生じてしまいますが、 攻撃の効率は大きく向上しました。
 相手を殺さない無力化に最適な命中率は5+〜8+。
 無力化に必要な攻撃回数は、 命中率が5+で、目標キャラクターの耐久値が「(1/1)」だった場合の1.2回から、 命中率が8+で、目標キャラクターの耐久値が「(5/7)」だった場合の25.7回まで。

 貫通状態を「無貫通」に変え、命中率を調整しても、 「相手を殺さずに無力化」することは困難な行為であることに変わりはありませんが、 無力化に必要な攻撃回数は、ある程度、実用的な数字へ落ち着くようです。



 麻酔弾ガス弾について。

 麻酔弾は貫通力が小さいため、 目標がちょっとした防具(メッシュ、クロース、宇宙服等)を着用しているだけで「無貫通」となり、 その効果を発揮できなくなります。
 強力な銃器(狩猟用ライフル、あるいは口径9mmの戦闘ライフル)を使用し、狙い撃ちを行えばクロース(装甲値=5)と、 テックレベル12以下の宇宙服(装甲値=6)を「貫通」できますが、 ダメージを与えるためには大きな命中DMが不可欠ですので、実用的ではありません。

 ガス弾は、ガスの効果範囲内に存在していれば命中判定なしでダメージを与えられますから、 対抗手段を備えていないキャラクターに対しては極めて有効であることが判明しました。
 その反面、ガス・マスクや宇宙服、戦闘アーマー等を着用したキャラクターには効果がありません。
 宇宙服を手軽に利用できる環境(宇宙船内など)やテックレベル10以上の戦場において、役に立つことは無いでしょう。

 麻酔弾ガス弾で使用できる麻酔薬には、 通常麻酔作用調節型麻酔の2種類がありました。
 与えるダメージが一時的な物である、という点は共通していましたが、 通常麻酔は与えたダメージが致死レベルに達した場合、 相手を薬物ショックで殺してしまいます。
 ルール的にも、通常麻酔によって大量の死者が発生することは確認できました。
 そうしたリスクを避けたいのであれば、より安全な作用調節型麻酔を用いるしかありません。
 本当の意味での麻酔薬(nonlethal)とは、 テックレベル11以上の世界でなければ入手できない、作用調節型麻酔のことを指すのでしょう。
 テックレベル10以下の世界で使われている通常麻酔は、致死率が高くて危険なのです。



 最後に、「相手を殺さずに無力化できる」という触れ込みの神経銃について、 その使用法と命中判定、ダメージの判定について考察しました。
 その結果、神経銃が必ずしも、 「相手を殺さずに無力化できる」兵器ではないことが明らかになっています。
 ナイトフォールに掲載されていた 特に神経兵器は、傷を負わせずに犯罪者を捕えることができるうえに、人質をとられた状況でも有効、という記述は、 民間人向けのリップサービスであり、実際のところ、神経銃で撃たれたキャラクターの中には、 65人〜389人に1人という無視できないレベルで死者が発生していました。
 神経銃を使用する側(警察や軍関係者)は、 意外と高い死亡率をしっかりと意識して、使用に踏み切るべきでしょう。



 メガトラベラーの個人戦闘ルールにおいて、 戦闘の「相手を殺さずに無力化する」ことが、極めて困難であると裏付けされました。
 通常の射撃では相手を無力化するのと同じぐらいの確率で相手を殺してしまいますし、 麻酔弾ガス弾はきちんとした防具を身に着けている相手に効果がありません。
 デザイナーの意図として、戦闘の「相手を殺さずに無力化する」ということは、ほとんど考慮されていない模様です。
 少なくともこのルール・システムで戦闘を行う限り、戦闘相手の生死に無頓着でも構わないのではないのでしょうか。






2014.07.27 初投稿。