In System Travelling in the Traveller space
星系内旅行について
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 今回は、星系内の移動時間について考察します。

 私のプレイではあまり利用しませんが、ジャンプで到着した星系にガス・ジャイアントが存在する場合、 商船や軍艦は、そのガス・ジャイアントで燃料補給(燃料スクープ)を行うことが、一般的になっているようです。

 この設定については「Fuel Suply:燃料供給サービス」において、ガス・ジャイアントの利用は 主要世界がガス・ジャイアントの衛星になっている星系でなければ不経済である、 という結論が出ていました。
 その理由は、同じ星系内であっても異なる公転軌道を巡っている限り、 主要世界とガス・ジャイアントとの間を移動する時間が長すぎる、ということにあります。
 ガス・ジャイアントでの燃料補給(燃料スクープ)によって浮く経費(燃料代)は、費やされる移動時間(収入の減少)に引き合いません。
 多くの星系でガス・ジャイアントは、商船から無視されることになるでしょう。

 もちろん、移動先はガス・ジャイアントだけでは有りません。
 主要世界以外の有人世界(地方世界)との行き来も重要です。

 それら地方世界までの移動時間は、どれだけの長さになるのでしょうか?
  果たして、日帰りか可能なのか?
  それとも、半日以上の時間が必要なのか?
  はたまた、船内で何日も過ごさなければならないのか?
  場合によっては、1週間以上が必要になるのでは?

 それら地方世界までの輸送コストは、どれだけのものになるのでしょうか?
  そのチケットは貧乏人でも気軽に利用できるのか?
  あるいは、裕福な立場ならば簡単に使える額面なのか?
  一生に一度という覚悟を決めなければ、利用できないのか?

 そういった事柄を考察していきます。



 目次
    ※2.移動時間のサンプル
    ※3.平均移動距離の求め方
    ※4.星系内移動の輸送コスト
       (1)惑星間の移動
       (2)衛星間の移動
       (3)旅客輸送の場合
    ※5.星系内移動の運賃
       (1)惑星間の貨物/旅客運賃
       (2)衛星間の貨物/旅客運賃
    ※6.星系内の通信について
       (1)通信機の最大通信距離
       (2)通信距離とタイムラグ
       (3)通信傍受と出力調整
    ※7.まとめ





2.移動時間のサンプル


 星系内の移動時間については、CT版:チャートブック、p.10MT版:Referee's Companion、p.21に、早見表が掲載されています。
 それらの数字を見て、考えてみましょう。

 まずはCT版:チャートブックから。


      表1 飛行時間参考表(CT版チャートブック、p.10より抜粋)

IST_Fig01.gif - 6.45KB

 CT版:チャートブック、p.10の飛行時間参考表から、移動距離が 45,000,000km 以上の範囲を抜粋しました。
 天文単位(AU)で示した移動距離は、私が追加したものです。 km単位で示されているよりも、分かり易いと思いまして。

 検算してみたところ上記の数字は概ね合っていますが、 加速度1Gを「毎秒9.8m」ではなく「毎秒10.0m」で計算していることが判明。
 大きな誤差ではありませんが、ちょっと気になります。



 飛行時間参考表には、「距離の例」というものも記されていました。
 その部分も抜粋します。


     表2 飛行時間参考表(CT版チャートブック、p.10より抜粋)

IST_Fig02.gif - 4.53KB

 上の表に示した通り、移動距離 45,000,000km は「近い隣の惑星までの一般距離」だそうです。
 km では分かり難いでしょうが、AU に直せば一目瞭然。0.3AUは、 ソル星系の地球(軌道番号3)と金星(軌道番号2)が 最接近した際の距離に相当していました。
 確かに、スペクトルG2X型の主恒星を持つ星系であれば、 隣の惑星まで最低でも、これだけの距離を移動しなければなりません。

 移動距離 255,000,000km は「遠い隣の惑星までの一般距離」でした。
 AU に直した距離1.7AUは、 地球と金星が間に太陽を挟んで反対側に位置するタイミング、最も離れている際の距離に相当します。
 要するに、「遠い隣の惑星までの一般距離」という表現は、 「隣の惑星(=金星)」が、最も「遠い」位置まで離れた状態を意味していた訳です。



 移動距離 600,000,000km は「近くのガス・ジャイアントまでの一般距離」です。
 AU に直すならば、この距離は4.0AU。 ソル星系の地球(軌道番号3)と木星(軌道番号6)が 最接近した際の距離に相当しています。
 この距離を厳密に求めると4.2AUとなるのですが、気にしてはいけません。 誤差の範囲でしょう。

 最後の移動距離 900,000,000km は「遠くのガス・ジャイアントまでの一般距離」です。
 AU に直すと6.0AUに相当するこの距離は、地球と木星が太陽を挟んだ反対側、 最も離れている際の距離に相当します。
 この距離を厳密に求めると6.2AUとなるのですが、やはり気にしてはいけません。

 ちなみに、もうひとつ外側の公転軌道(軌道番号7)を巡るガス・ジャイアントの土星は、 最接近時でも 1,350,000,000km 9.0AUの距離にあります。
 木星の最離反距離6.0AUよりも遠い距離ですね。
 移動距離が長いほど移動時間は長くなりますから、その移動が不経済となることも、明らかです。 人目を忍ぶ密輸業者海賊を除けば、 これらのガス・ジャイアントを利用しようとする者は、誰ひとりとして現れないでしょう。



 今度は、MT版:Referee's Companionからの抜粋です。


   表3 飛行時間参考表(MT版Referee's Companion、p.21より抜粋)

IST_Fig03.gif - 8.20KB

 MT版トラベラーの場合、帝国百科の中には、 主要世界からジャンプ・ポイントまでの移動時間しか記述されておりません。
 それ以外の移動時間、任意の二点間の移動時間については、MT版:Referee's Companion、p.21を参照します。
 主だった移動距離について、抜粋しました。



 MT版:Referee's Companionの飛行時間参考表は、より長い距離の移動に対応させたためか、 移動時間の単位が「日:day」になっております。

 地球から金星までの移動距離 45,000,000km 0.3AUの移動時間は、ほぼ同じ。
 地球と金星が最も離れた際の移動距離は、 MT版:Referee's Companion1.7AUの欄が存在しないため、 2.0AUの欄を抜粋しました。あまり変わりません。
 地球から木星までの移動距離 600,000,000〜900,000,000km 4.0〜6.0AUまでの移動時間も、ほぼ同じ数字でした。
 加速度1Gが「毎秒10.0m」で計算されていることも同じです。

 次の欄、移動距離 1,500,000,000km 10.0AUは、前述したとおり、地球と土星との間の距離に相当します。
 その次、移動距離 3,000,000,000km 20.0AUは、地球と天王星との距離。
 移動距離 4,500,000,000km 30.0AUは、海王星までの距離。
 最後の移動距離 6,000,000,000km 40.0AUは、冥王星までの距離に相当しています。

 御覧の通り、10.0AU以上の距離を移動するためには、1週間以上の時間を必要としていました。 多くの商船は1G加速の性能しか持っていませんから、これが一般的な移動時間となる筈です。 これだけ離れてしまうと、隣の星系に存在するのと変わりません。



 可住圏が軌道番号7以上に存在する星系、 つまり、主要世界の公転軌道半径が10.0AU以上になっている星系は、 主恒星のスペクトル型がB〜A型、もしくは、恒星規模がTa〜Vの星系です。
 これらの主恒星は、スピンワード・マーチ宙域の帝国領内には34星系(12.5%)も存在していました。 ありふれているタイプではありませんが、それほど珍しいタイプの主恒星でもないのです。





3.平均移動距離の求め方


 同じ星系内に存在する2つの世界の間を移動する場合、旅行者にとって厄介な問題がひとつ持ち上がってきました。

 それは、2つの世界がそれぞれの都合(公転周期)で移動している、ということであり、 つまり、2つの世界間の距離は時々刻々と変化を続けている、ということになるのです。

 実際に前項の表2で説明した通り、ソル星系において、 地球(軌道番号3)と金星(軌道番号2)との距離は、 0.3〜1.7AUの間で変動しています。
 また、地球(軌道番号3)と木星(軌道番号6)との距離も、 4.2〜6.2AUの間で変動していました。

 このように、世界間の距離が変化を続けている場合、移動時間をどのように求めれば良いのでしょうか?



 この問題について私は、 2つの世界の公転軌道を比べ、より外側を巡る世界の公転軌道半径を平均移動距離として、平均移動時間を求める、 といった解決策を用いております。

 とは言うものの、いきなり結論だけを述べても説得力がありません。
 まずは、時々刻々と移り変わる2世界の位置関係を考えてみましょう。
 下図は、地球と金星の位置関係を表しています。


IST_Fig04.gif - 22.6KB

              図4 平均移動距離の求め方


 こういった場合、地球と太陽の位置は固定しておき、金星の移動のみを考える方法が簡単でしょう。
 金星は時間と共に、太陽の周りを巡っていきますが、その位置を回転角(θ)で表します。

 地球から見て、金星が太陽の反対側、最も離反して存在する位置をθ=0度
 そして金星が太陽の手前、最も接近して存在する位置をθ=180度と定義しました。

 回転角(θ)を変数として、地球=金星間の移動時間を求めると、以下のようになります。


     表5 2つの世界間における、星系内移動時間(地球=金星間)

IST_Fig05.gif - 12.4KB

 分かり易くするため、回転角(θ)を表の左端に、15度刻みで示しました。



 その右側に示した数字が、回転角(θ)によって定まる、2世界間の移動距離です。
 前述した通り、θ=0度が最離反の位置で、移動距離は1.70AU
 θ=180度が最接近の位置で、移動距離は0.30AUになりました。

 2世界間の移動距離が外側を巡る世界の公転軌道半径と等しくなる位置は、 回転角(θ=110.5度)となっている位置です。
 この位置における移動距離は1.0AU
 私の定義した平均移動距離となります。

 すべての回転角(θ)における移動距離を平均したところ、 その平均値は1.13AUになりました。
 私の定義した平均移動距離と比べてしまうと、その誤差は1.13倍
 この数字を用いるには誤差が大き過ぎるのではないか、と不安になる方もいらっしゃるでしょうが、心配御無用です。
 次の移動時間を御覧ください。



 更に右側に示した数字は、それぞれの移動距離から求めた移動時間です。
 回転角(θ=110.5度)における移動距離1.0AUでの移動時間は 68.7時間
 すべての回転角(θ)における移動時間を平均したところ、 その平均値は71.0時間になりました。
 私の求めた平均移動時間と比べて、誤差は1.03倍まで縮まっております。
 この程度(最大3%)の誤差であれば、 私の想定した平均移動距離平均移動時間を利用しても良いのではないでしょうか。

 もっとも、最短距離での移動時間は37.6時間、最長距離での移動時間は89.6時間ですから、 移動時間の範囲は37.6〜89.6時間、平均移動距離での移動時間68.7時間を基準にすると、 0.56〜1.30倍になります。
 最接近時の移動時間が0.56倍まで小さくなるというのは魅力的な話ですが、 上の表を見直して頂けば分かるように、そうした都合の良い時間はわずかしか持続しません。
 平均よりも長い移動時間(回転角(θ))を必要とする時間の方が多いことは、平均値を見れば明らかなのです。



 参考とするため、今度はもうひとつ内側の世界、地球=水星間の移動時間を求めました。


      表6 2つの世界間における、星系内移動時間(地球=水星間)

IST_Fig06.gif - 12.4KB

 移動する世界が変わっただけで、表の示している内容は同じです。

 θ=0度が最離反で、移動距離は1.40AU
 θ=180度が最接近で、移動距離は0.60AUになりました。

 2世界間の移動距離が外側を巡る世界の公転軌道半径と等しくなる位置は、 回転角(θ=101度)の位置です。
 すべての回転角(θ)における移動距離を平均したところ、 その平均値は1.04AUになりました。誤差も小さくなって1.04倍しかありません。



 移動時間を求めると、回転角(θ=101度)における移動距離1.0AUでの移動時間は 今回も68.7時間
 すべての回転角(θ)における移動時間の平均は69.4時間でした。
 誤差は1.01倍ですから、今回も問題にはならないでしょう。

 ちなみにも、最短距離での移動時間は53.2時間、最長距離での移動時間は81.3時間ですから、 平均移動距離での移動時間68.7時間を基準にすると、0.77〜1.18倍でした。



 最後に、様々な2世界間の移動時間について計算した結果を、軌道番号を変数として以下に示します。


         表7 2つの世界間における、星系内移動時間

IST_Fig07.gif - 23.2KB

 2つの世界それぞれの軌道番号を用いて、移動距離と移動時間を参照します。
 外側の世界の軌道番号を先に決めて、次に内側の世界の軌道番号を決めて下さい。

 その右側に、最小と最大、平均の移動距離を示しました(単位はAU)。
 私の想定した平均移動距離は、外側を巡る世界の公転軌道半径です。
 その数値と平均値との比率を誤差として、その右側に示してあります。



 軌道番号が近いほど誤差も大きくなりますが、 その最大値は軌道番号3軌道番号2の間で生じる1.13
 次点が軌道番号4軌道番号3の間で1.10
 その他は、軌道番号の違いが1つであっても1.08以下です。
 軌道番号が2つ以上違う場合、 誤差の最大値は1.05以下でした。

 更に右側へ並べた数値が、最小と最大、平均の移動時間です(単位はhour)。
 私の想定した外側を巡る世界の公転軌道半径を平均移動距離として求めた平均移動時間 との誤差も、併記しました。
 軌道番号の違いが1つだけである場合、 誤差の最大値は1.03です。
 軌道番号の違いが2つ以上になると、 誤差の最大値は1.01です。



 以上、平均移動時間を簡単に求める方法として、 外側を巡る世界の公転軌道半径を平均移動距離とする方法は、妥当だと判明しました。





4.星系内移動の輸送コスト


 同じ星系内を巡る2つの世界間の移動距離について、平均移動時間を簡単に求める方法が見つかりました。
 今度は、その平均移動時間と輸送コストについて考えてみましょう。



1.惑星間の移動

 まずは2つの異なる公転軌道を巡る世界、惑星間の移動からです。


         表8 2つの世界間における、星系内移動時間

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 それぞれの平均移動距離に対応する、平均移動時間を求めました。
 宇宙船の加速度は、1G〜6Gの範囲内です。

 表に示している平均移動時間の単位は、時間(hours)。
 その時間が24時間以内であれば水色で、 48時間以内であれば黄色72時間以内であれば緑色168時間以内であれば紫色168時間以上であれば赤色で、示しています。



 星系内移動には時間が掛かるということが、確認できました。
 移動距離の最も短い、軌道番号1と軌道番号0間の移動であっても、1G加速の商船で43.5時間を費やします。
 24時間以内で移動できる距離は、ほとんど見つかりません。

 軌道番号3(地球の公転軌道)の内側を移動する場合は、68.7時間なので、約3日。
 移動時間が168時間=1週間以内で済むのは、軌道番号6(木星の公転軌道)までです。



 次に、この平均移動時間を用いて、輸送コストの計算をしてみましょう。
 貨物1トンを運ぶために、どれだけのコストが掛かるかという計算です。


        表9 2つの世界間における、星系内輸送コスト

IST_Fig09.gif - 11.1KB

 輸送コストの計算に用いた宇宙船は4種類。
 40トン級徐行艦載艇40トン級艦載艇95トン級シャトル200トン級A型自由貿易船です。

 40トン級徐行艦載艇の加速度は2G。建造費は8.60MCrで、 例によって20年掛かりで建造費を返済するため、毎年、建造費の20分の1(=430KCr)を支払います。
 乗組員2人分の給料と定期整備代、燃料代などを合わせて、維持費は年間196KCr。合計で626KCrになりました。
 航行時間が1日(=24時間)を超えているため、乗組員の休憩用に小型専用室を1つ(容積2トン)追加してあります。
 残りのペイロード容積は28トン。片道一度の航海で、最大28トンの貨物を輸送できる訳です。

 40トン級艦載艇の加速度は5G。  40トン級徐行艦載艇と、加速度による輸送コストの違いを比較するために用いました。 建造費は12.22MCrで、毎年、建造費の20分の1(=611KCr)を支払います。
 乗組員2人分の給料と定期整備代、燃料代などを合わせて、維持費は年間207KCr。合計で818KCrになりました。
 40トン級艦載艇も、小型専用室を1つ追加してあります。
 残りのペイロード容積は22トン。大出力のパワープラントと通常ドライブ、燃料タンクに圧迫されて、貨物の最大輸送量は減少しました。

 95トン級シャトルの加速度は3G。建造費は18.80MCrで、毎年、建造費の20分の1(=940KCr)を支払います。
 乗組員2人分の給料と定期整備代、燃料代などを合わせて、維持費は年間116KCr。合計で1,056KCrになりました。
 95トン級シャトルも、小型専用室を1つ追加してあります。
 残りのペイロード容積は70トン。最も輸送効率が高いだろうと思われます。

 最後は200トン級A型自由貿易船で、加速度は1G。
 CT版トラベラー・アドベンチャーにも記述されていたように、暇を持て余した商船が 星系内の輸送任務を引き受けることは珍しくないようです。ですので、これも輸送コストを比較するために用いました。
 建造費は41.1MCrで、建造費の20分の1は2,055KCr。 乗組員4人分の給料と定期整備代、燃料代などを合わると年間の維持費は345KCr。合計で2,400KCrになりました。
 旅客用の専用室6つと二等寝台20は、それぞれ貨物スペースに換算してありますので、 本来の貨物スペース82トンと併せて126トンの貨物を運べる計算です。



 星系内移動を行う宇宙船は、出発地と目的地の間を最大加速度で移動します。
 乗組員は、最後の200トン級A型自由貿易船を除けばどれも2人ですから、12時間交代で当直に就きます。
 出発地と目的地での停泊時間は、色々と悩んだ末、3日に決めました。
 その3日間で貨物の積み下ろしや燃料補給、必要な整備を済ませた後、宇宙船は再び次の目的地へと向かうのです。

 計算した輸送コストは貨物1トン当たりの輸送コストであり、単位はクレジット(cr)で示しました。 旅客の輸送コストはまた変わった数値になると思いますので、別項で計算しましょう。
 また、この金額は宇宙船を運航するために必要な、最低限の輸送コストです。
 船倉が満杯ではなかった場合や、宇宙船の故障に備えた修理費の積み立てを行うのであれば、この金額の2〜3倍は必要になるでしょう。
 ご注意下さい。



 移動距離の最も短い、軌道番号1と軌道番号0間の移動において、貨物1トンの輸送コストは175〜409crでした。
 輸送コストは95トン級シャトルが最も低コストであり、次がA型自由貿易船、 3番目が僅差で徐行艦載艇、最後が艦載艇になります。
 宇宙船の加速度が大きい場合、移動時間を短縮できても輸送コストはずっと高くなることが分かりました。
 旅客輸送専門でもない限り、星系内移動に高加速度の宇宙船は使われないと思われます。
 厄介なことですが、この輸送コストによって、水素燃料を惑星間輸送することの問題が明らかになっています。
 低純度燃料(トン当たり100cr)を輸送したのでは、とても採算が合いません。
 高純度燃料(トン当たり500cr)を輸送する場合でも、かなり厳しいことになるでしょう。

 軌道番号3(地球の公転軌道)の内側を移動する場合、輸送コストは201〜459crです。 スペクトルG型やK型、M型の恒星系であれば、この範囲が一般的な移動範囲になるのではないでしょうか。

 軌道番号6(木星の公転軌道)まで移動すると、輸送コストは296〜630crまで増えました。

 軌道番号7〜8(土星〜天王星の公転軌道)まで移動するならば、輸送コストは359〜930crです。
 この距離になると、1G〜3G加速のA型自由貿易船95トン級シャトルは、 1週間以上の移動時間を必要とするようになりました。
 トラベラー世界の公式設定ですと、星系内移動時間が1週間を超えた場合、星系内でもジャンプ移動を行うようになると書かれていましたが、 計算してみたところ、A型自由貿易船の星系内ジャンプによる輸送コストは貨物1トン当たり762crです。
 つまり場合によっては1週間以上の時間が掛かっても、A型自由貿易船で貨物を運ぶより、 95トン級シャトルで貨物を運ぶ方が安い、ということが判明しました。

 軌道番号10以上(冥王星の公転軌道以遠)については未検証ですが、 6G加速の宇宙船を使っても1週間以上の遠距離に、通常ドライブで移動する必要はないでしょう。
 これらの公転軌道を巡る惑星は、隣の星系にあるも同然なのです。




2.衛星間の移動

 今度は、同じ惑星の周囲を巡る2つの世界、衛星間の移動を考えてみましょう。

 詳しいことは「レフリーズ・マニュアル、p.29」に記述されていますが、

   規模1〜Aの惑星は、1D−3個の衛星を持ちます。
   小型ガス・ジャイアントは2D−4個の衛星を持ちます。
   大型ガス・ジャイアントは2D個の衛星を持ちます。


 星系内には上記で示した通りの数だけ衛星が存在するのですから、当然、衛星同士、 あるいは、惑星と衛星を結ぶ星系内通商も行われていることでしょう。



 衛星の軌道半径は、その衛星が巡る惑星半径の倍数で表されます。
 ですから、我々が使い慣れているジャンプ・ポイントの100倍直径は、 軌道番号200(=半径の200倍)に相当する訳です。
 ガス・ジャイアントの場合も同様。
 小型ガス・ジャイアントの直径は2万〜6万km(半径1万〜3万km)、 大型ガス・ジャイアントの直径は6万〜12万km(半径3万〜6万km)と定義されていますが、以下の計算において、 小型・ガスジャイアントの直径は5万km(半径2.5万km)、大型ガス・ジャイアントの直径は10万km(半径5万km)の数値を用いています。

 衛星の軌道番号はランダムに決められますが、幾つかのルールが決められていました。

   最初に2D6を振って、
   7以下(58.3%)ならば近軌道、8以上(41.7%)ならば遠軌道。
   ただしガス・ジャイアントの場合、12(2.8%)が出たら超遠軌道になります。

   近軌道の範囲は軌道番号3〜13で、平均値は8。
   遠軌道の範囲は軌道番号15〜65で、平均値は40。
   超遠軌道の範囲は軌道番号75〜325で、平均値は200。


 過半数の衛星は近軌道(軌道番号3〜13)を巡り、残りの衛星が遠軌道(軌道番号15〜65)を巡ることになるでしょう。
 ガス・ジャイアントであれば超遠軌道を巡る衛星も有り得ますが、その軌道を巡る衛星の数はわずか(2.8%)です。
 一部の例外を除けば、衛星の軌道番号は65以下である、ということになりました。
 衛星間の移動距離も、この範囲で計算すれば良いでしょう。

 以下の表に、移動時間の計算結果を示しました。


         表10 2つの衛星間における、星系内移動時間

IST_Fig10.gif - 14.3KB

 今回も、それぞれの平均移動距離に対応する、平均移動時間を求めています。
 宇宙船の加速度も、1G〜6Gの範囲。

 表に示している平均移動時間の単位は、今回も時間(hours)です。
 その時間が24時間以内であれば水色で、 8時間以内であれば黄色4時間以内であれば緑色で示しました。



 衛星間の移動は多くの場合、8時間以内で終了します。
 前述の通り、軌道番号65を超えた超遠軌道を巡る衛星は、ガス・ジャイアントであっても36分の1(2.8%)しか存在しません。 多くの衛星が巡る軌道は、軌道番号65が最大なのです。
 そう考えると移動時間が8時間以内に収まらない例外は、 1G加速の宇宙船が、大型ガス・ジャイアントの軌道番号45以上の衛星に寄港する場合のみとなりました。
 40トン級徐行艦載艇95トン級シャトルなど、 星系内通商に用いられる宇宙船の多くは2G以上の加速度を備えていますから、 衛星間の移動は8時間以内で終わる、と断言しても構わないでしょう。

 移動時間が4時間以内で済む場合の方が、ずっと多いかも知れません。
 例えば ガス・ジャイアントの場合、衛星の過半数は近軌道(軌道番号3〜13)を巡っています。 ガス・ジャイアントの軌道番号10の欄を見てみると、1G加速でも4時間、6G加速ならば1.1時間という数値が見つかりました。 近軌道の衛星間を移動するのであれば、移動時間は最大でも4時間しか掛からないのです。

 また、惑星(規模1〜Aの世界)を巡る衛星であれば、軌道番号65を巡っている衛星に寄港する場合であっても、 移動時間は最大でも4時間しか掛かりません。
 惑星を巡る衛星で、近軌道の衛星同士を移動するのであれば、その移動時間は1時間以内でした。

 惑星間を移動する場合と比べて、衛星間を移動する時間は実に短いことが確認できました。
 移動時間が少ないため、宇宙船はより頻繁に衛星間を移動することができます。
 衛星間の輸送コストは、惑星間よりもずっと安価になることでしょう。



 この平均移動時間を用いて、輸送コストを計算しました。


         表11 2つの衛星間における、星系内輸送コスト

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 移動時間が短いため、宇宙船の停泊時間も変更しました。
 平均移動時間24時間以内であれば停泊時間も24時間8時間以内であれば停泊時間も8時間4時間以内であれば停泊時間も4時間という具合です。

 乗組員(パイロットとエンジニア)は5交代制として、休みなしでの運航を可能にしています。
 人件費は増えていますが、輸送コストを更に下げることができました。



 平均移動時間4時間以内で済む範囲。
 惑星の遠軌道を巡る衛星間か、ガス・ジャイアントの近軌道を巡る衛星間で移動する場合、 輸送コストは95トン級シャトルで11〜14crでした。やはり安価です。 惑星間の輸送コストと比べるならば、20分の1〜50分の1というレベルでした。

 ガス・ジャイアントの遠軌道を巡る衛星間を移動する場合、軌道番号によっては 平均移動時間4時間を超えてしまいます。
 その場合、輸送コストは95トン級シャトルで17〜30crまで増えました。
 それでも惑星間の輸送コストと比べれば、まだ10分の1以下です。




3.旅客輸送の場合

 貨物の輸送コストが求められましたので、次は旅客の輸送コストです。

 旅客輸送で問題となる点は、旅客が貨物に比べて大きな容積を占有してしまうこと。
 そして、長期に渡る航行に備えた生命維持装置が必要になることです。

 例えばCT版の場合、旅客の星系内輸送には小艇用座席が必要でした。 これは抗加速座席と生命維持装置を組み合わせた設備であり、容積は0.5排水素トン。その価格は25,000crです。
 非常にコンパクトで安価な旅客用設備なのですが、あまり長い時間、旅客を乗せ続けることができません。
 CT版「宇宙海軍」のルールによると、 乗っている時間は戦闘時で12時間、平常時でも24時間が最大であり、それ以上の時間を船内で過ごそうとするのであれば、 小艇用専用室専用室といった設備が必要になっていました。



 さて、MT版のルールにおいて、そのあたりはどのように定義されているでしょう。
 以下の表に、必要な旅客用設備を一覧としてまとめました。


             表12 旅客輸送に必要な設備

IST_Fig12.gif - 8.60KB

 MT版の輸送機器設計ルールでは、宇宙船内で過ごす時間が3段階に区別されていました。
 最も短い時間は8時間以内、その次が8時間以上、24時間以内、 そして最後が24時間(1日)以上です。



 まず最初の8時間以内ですが、 宇宙船内で過ごす時間が短い場合、乗組員や旅客は最低限の設備しか必要としません。
 彼らに与えられるスペースは座席とその周りだけですが、その広さは1.0(ラッシュ)〜4.0(ゆったり)キロリットル。 以前「シャトル・サービス」で考察したこともありますが、 古代テラで行われていた航空旅客輸送、その1人分の座席スペースが1.0〜2.0キロリットルです。
 8時間以内の時間を過ごすのであれば、十分な空間だと言えるでしょう。
 価格は、その広さに関わらず10crで、維持費は不要です。

 公式設定である「帝国百科」の記述によれば、 40トン級徐行艦載艇40トン級艦載艇は、 30人〜50人分の適度な(3KLの)旅客用座席を備えていました。 95トン級シャトルは100人分のゆったりした(4KLの)旅客用座席です。



 次の24時間以内ですが、この場合、乗組員や旅客に必要なスペースは上記の2倍となります。
 本当に2倍だけで良いのかと疑問を感じないこともないのですが、増えたスペースは食事や衛生設備に充てられるのだろうと推測しています。 就寝時は、古代テラにおける航空旅客輸送と同じように、座席をリクライニングさせて対応するのでしょう。
 57世紀の宇宙にも、エコノミー症候群なる疾病が存在するかも知れませんが、それはともかく、 輸送機器設計ルールによれば容積を2倍にするだけで良いようです。価格も同じ10cr、維持費不要も同様。

 気になる点は、これら小艇用座席の維持費が不要であることでしょう。
 旅客の飲食、娯楽関連の経費は掛からないのでしょうか?
 単に面倒だからルール化されていない、という可能性も否定できませんが。



 最後の24時間(1日)以上は、最低でも寝台が必要となります。
 しかし、できれば小型専用室専用室を用意した方が良いでしょう。
 表12の占有容積を見れば一目瞭然ですが、この24時間以上を境として、必要な占有容積が激増しました。 恐らく、旅客の輸送コストも激増することでしょう。

 二等寝台は、恒星間移動にも用いられている二等寝台です。
 星系内移動には必要ないと思っていたのですが、後述するコスト計算の結果、意外な有用性が発見されました。
 維持費は2週間当たり100crですから、年間で25,000crになります。

 次は最低レベルの寝台ですが、 MT版で初めて登場した設備であるため、私には使い方が良く分かりません。
 少なくとも、旅客用としては使えないようです。
 後述する理由で、維持費は2週間当たり2,000cr、年間で50,000crにしました。

 小型専用室については、英文のメガトラ・エラッタに説明文が見つかりましたので、 それを転載しました。

 居住設備表で示されている「小型専用室」は、ベッドと衛生設備を備えただけの、設備が貧弱な1人部屋です。
 通常の専用室はもっと豪華であり、小さなキッチンとラウンジ(テーブル、素敵な長椅子か椅子)などを備えているのです。
 それゆえ、大きな価格の違いがあります。
 半分サイズの専用室は小型専用室と同等ではない、ということに注意してください。
 この2つは意図的に異なっているのです。
 小型専用室は、CT版「帝国海軍」の小艇用専用室に相当します。


 という訳で小型専用室の容積は27.0KL(=2排水素トン)、価格は40,000crでした。 価格が専用室の10分の1ですから、明らかに、同質の設備であることは期待できませんね。
 維持費についての記述は何処にも見つかりませんでしたので、 専用室と同じ2週間当たり2,000cr、年間で50,000crを用います。
 小型専用室の維持費は設備の質に比例して、安価になるのではないか? という考えも浮かびましたが、 もしも維持費を安くしてしまうと、乗組員用の専用室にも旅客用と同額の維持費を適用している トラベラーの運賃体系が大きく乱れてしまいます。
 維持費を安くできる方法があるのであれば、旅客用はともかく、乗組員用に利用していてもおかしくありませんよね?
 しかし、CT版でもMT版でも、乗組員用の安価な維持費は存在しません。
 ですから寝台小型専用室を用いても、 それらの維持費は専用室と変わらないと考えました。
 納得いかない方も多いと思いますが、維持費の金額を変更してしまうとトラベラーの世界観が崩れてしまいますので、 ご注意下さい。

 専用室についての説明は省略します。



 惑星間における、旅客輸送コストについて、評価してみましょう。
 その移動時間は多くの場合1日以上となっていますので、 まずは専用室を用いた場合から。


     表13 2つの世界間における、星系内の旅客輸送コスト(専用室)

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 専用室に旅客1人を乗せ、星系内輸送を行った場合のコストを示しました。
 ただし、移動時間が24時間以内で済む範囲は、小艇用座席による輸送コストです。 40トン級徐行艦載艇40トン級艦載艇は、 適度な(3KLの)旅客用座席、 95トン級シャトルゆったりした(4KLの)旅客用座席で求めました。

 容積4トンの専用室ですから、単純計算でも貨物4トン分の輸送コストが掛かることは当然ですが、 それに加えて、専用室の建造費と維持費、厄介な2つの経費が加算されます。
 この経費の合計は年間で70,000crですから、2週間単位であれば2,800cr。1日当たり200crになりました。
 恒星間移動(1週間のジャンプと1週間の星系滞在の繰り返し)は、特等/一等チケットの内2,800crが、 星系内移動であっても移動時間1日当たり200crの経費が費やされてしまうということです。 星系内移動の場合、宇宙港に停泊中の3日間も経費に加算されますから、最低でも4日分800crの経費が掛かる訳ですね。困ったものですが。

 同じ星系内の惑星間で旅客輸送を行う場合、最短距離、軌道番号0と1の間を移動するだけであっても、 最も低コストな95トン級シャトルを用いても、1,516crのコストが掛かる訳です。
 恒星間移動について、A型自由貿易船の旅客輸送コストを求めたところ、 旅客1人当たりの輸送コストは5,048crでした。 それに対して特等/一等チケット(10,000〜8,000cr)を受け取る訳ですから、同等の利益率を惑星間移動にも期待するのであれば、 3,000〜2,400cr程度のチケット代金を期待しても良いでしょう。
 95トン級シャトルを基準として、惑星間移動の旅客チケットは、 3,000cr(軌道番号1:水星)、4,000cr(軌道番号4:火星)、6,000cr(軌道番号6:木星)、11,000cr(軌道番号8:天王星)、 この程度の価格が妥当であろうと思われます。

 しかし、高いですね。
 1週間以上の移動時間を必要とする距離は、恒星間移動と同じくらい高価な旅客チケットが必要になりました。
 意外なことに、星系内(惑星間)の旅客輸送は高く付くものなのです。



 専用室による旅客輸送は、とても高価です。
 旅客の輸送コストを少しでも下げるため、小型専用室を用いてみました。
 すでに述べた通り、小型専用室を旅客輸送に用いることはできませんから、 このコストはパイロットやエンジニアなどの乗組員に掛かる輸送コスト、と考えるべきでしょうか。


    表14 2つの世界間における、星系内の旅客輸送コスト(小型専用室)

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 小型専用室に旅客1人を乗せ、星系内輸送を行った場合のコストを示しました。
 容積2トンの小型専用室ですから、占有容積は専用室の半分。 貨物2トン分の輸送コストで済みます。
 小型専用室の建造費と維持費、この経費の合計は年間で52,000cr。 2週間単位であれば2,080cr。1日当たり149crです。専用室に掛かる経費の4分の3でした。
 期待していたほど、安くならないようです。

 それでも惑星間で旅客輸送を行う場合、95トン級シャトルを用いるのであれば、 軌道番号0=1間の旅客輸送コストは955crまで下がりました。

 実はこの輸送コストは、乗組員(スチュワード)の搭乗コストとして計算しています。
 恒星間の特等チケットと同レベルのサービスを期待するのであれば、例え星系内移動であても、 旅客8人当たりスチュワード1人が付くことは当然だと言えるでしょう。



 専用室小型専用室による旅客の輸送コストが予想以上に高かったため、 急遽、二等寝台による輸送コストを求めました。


    表15 2つの世界間における、星系内の旅客輸送コスト(二等寝台)

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 二等寝台を用い、星系内の輸送を行った場合のコストです。
 容積1トンの二等寝台ですから、貨物としての輸送コストは1トン分。 二等寝台の建造費と維持費の合計は年間5,000crですから、2週間単位であれば200cr、1日で14crしか掛かりません。
 この安さは実に魅力的ですね。

 惑星間で旅客輸送を行う場合、軌道番号0と1の間を移動する際の輸送コストは、 例によって95トン級シャトルを用いると、234crまで下がりました。
 専用室を用いた場合の7分の1、小型専用室に比べても4分の1です。
 恒星間移動について、A型自由貿易船の旅客輸送コストを求めたところ、 旅客1人当たりの輸送コストは862crでした。 二等チケットの額面は1,000crですから、同等の利益率を期待して、この惑星間の旅客チケットは300crとなります。
 95トン級シャトルを基準として、惑星間移動の旅客チケットは、 300cr(軌道番号1:水星)、350cr(軌道番号4:火星)、450cr(軌道番号6:木星)、700cr(軌道番号8:天王星)、 この程度の額面になるでしょう。軌道番号9(冥王星)までは、ジャンプよりも安価に旅客を運べるようです。
 専用室を用いた場合と比べて、驚くほど安価に旅客を運べることが明らかになりました。

 二等寝台の危険性(リスク)を声高に批判する方もいらっしゃいます。
 ですが残念ながら、安価な輸送コストはそういった批判を、すべて封じ込めてしまうことでしょう。
 少なくとも安価な労働力(食い詰めた移民)を輸送する際は、移動時間が1日ちょっとの距離であっても 小艇用座席では間に合わない以上、二等寝台が多用されることは確実です。



 最後に、2つの衛星間における旅客輸送コストを求めました。

 衛星間の移動時間は、多くの場合4時間以内です。
 大型ガス・ジャイアントの遠軌道にある衛星になって、 ようやく4時間以上、8時間以内という時間が掛かるようになり、 超遠軌道で8時間以上、24時間以内となってきました。
 その旅程には、専用室二等寝台も必要ありません。 小艇用座席だけで十分です。
 一部の例外を除けば8時間以内ですから、占有容積を2倍にする必要もないですね。
 旅客の輸送コストが、惑星間のコストに比べて、驚くほど安く済むような予感がしています。


    表16 2つの衛星間における、星系内の旅客輸送コスト(小艇用座席)

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 小艇用座席で旅客輸送を行った際の、旅客1人当たりの輸送コストです。
 40トン級徐行艦載艇40トン級艦載艇は、 適度な(3KLの)旅客用座席、 95トン級シャトルゆったりした(4KLの)旅客用座席で求めました。
 A型自由貿易船だけは小艇用座席を装備していないため、 専用室による旅客輸送を行っていますが。

 予想通り、衛星間の旅客輸送は驚くほど安価でした。
 ここでは95トン級シャトルの旅客輸送コストを基準として、その運賃(シャトル・チケット)を考えてみます。

 規模5〜Aの衛星になると、わずか3cr程度のコストしか掛かりません。
 恐らく、その運賃(シャトル・チケット)も20crを超えることはないでしょう。
 こうした世界間の移動は、経済的に見ると、地表と軌道宇宙港を結ぶシャトル・サービスと同レベルなのです。

 ガス・ジャイアントの近軌道を巡る衛星において、その輸送コストは4〜5crでした。
 シャトル・サービスに比べて時間は掛かりますが、料金はあまり変わりません。
 見込まれる乗船率にもよりますが、25〜30cr程度で良いでしょう。 以前の考察「シャトル・サービス」において、 旅客輸送の場合、旅客用シャトルへの乗船率は15%程度で十分だという数字が出ております。

 大型ガス・ジャイアントの遠軌道、小型ガス・ジャイアントの超遠軌道を巡る衛星間において、輸送コストは8〜10crに増えました。
 移動時間が4時間以上、8時間以内まで伸びたため、宇宙船のローテーションが変わったためです。
 それでも、シャトル・チケットの額面は、50〜60crで十分でしょう。



 大型ガス・ジャイアントの超遠軌道で、初めて、移動時間が8時間を超えました。
 小艇用座席の占有容積が2倍になり、また、輸送コストが上がります。
 この場合、輸送コストは35crでしたから、シャトル・チケットの額面は200cr前後だと考えられます。





5.星系内移動の運賃


 これまでの考察結果から、星系内移動における貨物輸送、旅客輸送の運賃を求めてみました。

 この運賃体系は私のハウス・ルールではありますが、 それらの宇宙船が経済的な運航を心掛けているのであれば、それほど間違っていないと思われます。




1.惑星間の貨物/旅客運賃

 まずは、遠く離れた2つの世界、惑星間での貨物/旅客運賃から。

 以下の運賃は、95トン級シャトルによる輸送を前提として求めました。
 よって、出発地と目的地、双方の宇宙港規模が4以上でなければ、この運賃体系は有り得ません。

 地方世界の宇宙港規模と寄港する宇宙船のタイプについては、次回の考察で詳しく説明します。
 今回、この場所では省略。


     表17 惑星間における、貨物/旅客運賃(95トン級シャトル)

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 95トン級シャトルを用いて、貨物や旅客を輸送した場合の運賃表です。

 移動時間が24時間以内であれば水色で、 48時間以内であれば黄色72時間以内であれば緑色168時間以内であれば紫色168時間以上であれば赤色で示しました。



 軌道番号0の場合、移動時間が24時間以内なので、 専用室二等寝台は必要ありません。
 小艇用座席による旅客輸送のみとなりますので、旅客のクラスがなくなりました。
 貨物運賃は290cr、旅客運賃も600crです。

 軌道番号1(水星)〜3(地球)の範囲において、移動時間は24時間以上、48時間以内です。
 貨物運賃は315〜360cr、旅客運賃は特等で3,000〜3,500cr、二等で300〜320crでした。

 軌道番号4(火星)〜5(小惑星帯)の範囲において、移動時間は48時間以上、72時間以内です。
 貨物運賃は400〜450cr、旅客運賃は特等で4,000〜4,500cr、二等で350〜400crでした。

 軌道番号6(木星)〜7(土星)の範囲において、移動時間は72時間以上、168時間以内です。
 貨物運賃は530〜640cr、旅客運賃は特等で6,000〜8,000cr、二等で450〜560crでした。

 軌道番号8(天王星)〜9(冥王星)の範囲において、移動時間は168時間(1週間)以上です。
 貨物運賃は820〜1,040cr、旅客運賃は特等で11,000〜14,000cr、二等で700〜900crでした。
 この距離になると、星系内移動を行うメリットはほとんどありません。 特等の旅客は、ジャンプドライブを用いた方がより早く、安価に目的地へ辿り着けます。
 貨物と二等旅客は、移動時間が長い代わりに少しだけ安く移動できますので、メリットが無い訳ではありませんが。



 次は、40トン級徐行艦載艇40トン級艦載艇を用いた場合の運賃体系です。
 貨物と旅客にはそれぞれの特性がありますので、 徐行艦載艇は貨物と二等旅客が専門、 艦載艇は特等/一等旅客が専門だと想定しています。

 この運賃体系は、出発地と目的地、双方の宇宙港規模が2以上でなければ有り得ません。
 また、どちらか宇宙港規模の低い方が3である場合は、旅客運賃が2〜5倍に膨れ上がります。
 宇宙港規模の低い方が2である場合、定期便の旅客輸送は有り得ません。不定期のチャーター便のみとなります。 旅客運賃が2〜5倍に増える点は、宇宙港規模3と同じ。


   表18 惑星間における、貨物/旅客運賃(40トン級徐行艦載艇/艦載艇)

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 40トン級徐行艦載艇/艦載艇を用いて、貨物や旅客を輸送した場合の運賃表です。

 移動時間が24時間以内であれば水色で、 48時間以内であれば黄色72時間以内であれば緑色168時間以内であれば紫色168時間以上であれば赤色で示しました。



 軌道番号0の場合、貨物運賃は500cr、旅客運賃は700crです。
 貨物運賃は1.72倍、旅客運賃は1.17倍に増加しました。やはり、小型の宇宙船は不経済ですね。
 より経済的な95トン級シャトルを利用したいところですが、 宇宙港規模3以下の世界に、その船倉を満たすだけの貨物と旅客は存在しないのです。
 不経済であっても、40トン級徐行艦載艇/艦載艇を用いなければなりません。

 軌道番号1(水星)〜3(地球)の範囲において、貨物運賃は550〜650cr、旅客運賃は特等で700〜5,500cr、二等で400〜460crです。
 運賃の増加は、貨物で1.75〜1.81倍、特等で1.57〜1.62倍、二等で1.33〜1.44倍でした。

 軌道番号4(火星)〜5(小惑星帯)の範囲において、貨物運賃は720〜830cr、旅客運賃は特等で6,000〜6,500cr、二等で600〜700crです。
 運賃の増加は、貨物で1.80〜1.84倍、特等で1.44〜1.50倍、二等で1.49〜1.50倍でした。

 軌道番号6(木星)〜7(土星)の範囲において、貨物運賃は1,000〜1,200cr、旅客運賃は特等で7,500〜9,000cr、二等で700〜900crです。
 運賃の増加は、貨物で1.88〜1.89倍、特等で1.13〜1.25倍、二等で1.56〜1.61倍でした。

 軌道番号8(天王星)〜9(冥王星)の範囲において、 貨物運賃は1,550〜2,100cr、旅客運賃は特等で11,000〜14,000cr、二等で1,100〜1,500crでした。
 運賃の増加は、貨物で1.89〜2.02倍、特等は同額で1.00倍、二等で1.57〜1.67倍でした。




2.衛星間の貨物/旅客運賃

 最後は、近くに存在する2つの世界、衛星間での貨物/旅客運賃です。

 移動距離が短いため、衛星間の旅客輸送に専用室二等寝台は必要ありません。
 旅客のクラスもないので、表がコンパクトです。
 それだけでは寂しいので、95トン級シャトルを用いた場合の運賃体系と、 40トン級徐行艦載艇/艦載艇を用いた場合の運賃体系を、ひとつの表にまとめてしまいました。

 95トン級シャトルの運賃体系は、出発地と目的地、双方の宇宙港規模が4以上。 40トン級徐行艦載艇/艦載艇の運賃体系は、双方の宇宙港規模が2以上であること。
 また、どちらか宇宙港規模の低い方が2〜3である場合、旅客運賃が2〜5倍に膨れ上がることも同様です。


   表19 衛星間における、貨物/旅客運賃(徐行艦載艇/艦載艇/シャトル)

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 場合によっては、その衛星が巡っている惑星も含みますが、衛星間における星系内移動の貨物/旅客運賃です。

 表に示している平均移動時間の単位は、今回も時間(hours)です。
 その時間が24時間以内であれば水色で、 8時間以内であれば黄色4時間以内であれば緑色で示しました。



 輸送コストを求めた時点でも分かっていたことですが、衛星間の貨物/旅客輸送は、極めて安価に行えます。
 衛星間を移動するのであれば日帰りは容易ですし、毎日の通勤すら可能なのです。





6.星系内の通信について


 ちょっと違う方向に脱線しますが、星系内における通信事情を考えてみます。

 星系内(特に惑星間)で人や物を送ることが大変であることは、これまでの考察で明らかになりました。
 どんな近い距離(軌道番号の近い惑星間)であっても最低1日の時間が必要ですし、 その貨物/旅客運賃は貨物1トンで300Cr、特等旅客1人で3,000Crも掛かります。
 軌道番号7(土星)以上の距離に人や物を送るのであれば、 隣の星系に送るのと同じくらい(1週間)の時間と、貨物1トン1,000Crと特等旅客1人10,000Crの運賃が必要となるでしょう。

 こういった場合に人を送らず、通信だけで用事を済ますことはできないのでしょうか?
 流石に物を送ることの代替はできませんが、21世紀テラと同じように、 出張をテレビ会議で済ませるようなことはできないかと思うのです。
 もちろん、トラベラー宇宙に超光速通信という技術は実用化されておりません。 通信に掛かる時間の計算もしなければいけないないでしょう。




1.通信機の最大通信距離

 ここで、通信機の最大通信距離について、調べておきます。
 レフリーズ・マニュアルp.68から抜粋しました。
 最大通信距離とは文字通り、その通信機が通信可能な、最大距離を示しています。


           表20 通信機の最大通信距離(距離帯)

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 通信機の中で最も大きな最大通信距離を備えた通信機は、 その最大通信距離星系内距離(〜1,000AU)のものでした。
 そのひとつ下のランクは、最大通信距離遠軌道距離(〜500,000km)の通信機です。

 遠方(〜5km)から遠軌道距離(〜500,000km)までの通信機は、 最大通信距離が10倍に広がり、距離帯が1つ増えるだけだったのに、最後の星系内距離の通信機だけ 一気に最大通信距離が30万倍となり、距離帯が3つも増えていました。
 「Pirate06:2G加速の価値は?」において、私は衝撃を受けたと記しておりますが、色々と考えた結果、 これはすべての宇宙船に星系内距離の通信機を搭載させるためではないか、 と思い始めております。

 「Pirate08:100倍直径の彼方にて」でも確認しましたが、 主要世界の100倍直径の大きさは規模1〜Aの世界で160,000km〜1,600,000kmとなっています。
 ところが、宇宙船の装備している通信機が遠軌道距離(〜500,000km)のものだった場合、 その通信機では規模3の世界の100倍直径(=480,000km)までしか通信できません。
 規模4以上の世界において、世界と100倍直径との通信が不可能になってしまうのです。
 MT版:レフリーズ・コンパニオンによれば商船は、目的地星系にジャンプアウトした直後から 現地の通信網に組み込まれる(トランスポンダによって船籍等の情報を発信する)、ことになっていました。
 ですから、どんな規模の世界であっても、世界と100倍直径の間で通信ができなくてはならないのです。

 小型ガス・ジャイアントの100倍直径は5,000,000kmで、大型ガス・ジャイアントの100倍直径は10,000,000kmですから、 仮に超遠軌道距離(〜5,000,000km)の通信機が存在したとしても、 最大通信距離が不足します。
 また、主恒星の100倍直径にジャンプアウトすることを考慮するのであれば、 惑星間距離(〜1AU)でも足りないかも知れません (最小安全距離ならば通信距離は1AU以下で十分ですが、 MT版のルールがデザインされた時点で、デザイナーは100倍直径だけを考えていた筈です)。

 という訳で、ジャンプ・ポイントを利用する恒星間宇宙船は、ジャンプアウト直後から主要世界と通信するため、 星系内距離の通信機を搭載しなければならないのでしょう。
 超遠軌道距離惑星間距離の性能は中途半端ですから、 それらの通信機が存在したとしても、誰も使わない(宇宙船には搭載しない)のです。




2.通信距離とタイムラグ

 悩みが解決してすっきりしたところで、まずは同じ星系内における惑星間の通信から考えてみましょう。
 その通信によるタイムラグはどの程度のものになるのでしょう?
 ちょっと気になったので、計算してみました。


        表21 星系内(惑星間)の通信距離とタイムラグ

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 表の左端が軌道番号と公転軌道半径。
 その右側が、通信距離と距離帯区分
 右端の数値は通信のタイムラグで、単位は min(分)、hour(時間)、day(日)の3つです。



 軌道番号3(地球)の内側で通信を行うのであれば、距離帯は「惑星間距離」です。
 通信のタイムラグは、1分40秒〜8分20秒の範囲。妥当なところでしょうか。
 電話のように会話することはできません。動画付きのメールを遣り取りするような形になるでしょう。

 使用する通信機は惑星間距離のもので大丈夫と言いたかったのですが、 先程も説明した通り、レフリーズ・マニュアルp.68の中に、 最大通信距離が惑星間距離(〜1AU)の通信機は見つかりません。
 星系内距離(〜1,000AU)の次は、遠軌道距離(〜500,000km)です。
 惑星間の通信を試みるのであれば星系内距離の通信機を用意しなければならない、ということが分かりました。



 軌道番号3(地球)を超えて、軌道番号13までの距離帯は、 「星系内距離」です。
 通信のタイムラグは、13分20秒〜3日13時間の範囲。
 軌道番号6(木星)を超えた辺りからタイムラグは1時間より大きくなり、 軌道番号11でタイムラグはほぼ1日となります。ここまでくると、電子メールではなく、郵便物の感覚でしょうか。
 しかし、この程度のタイムラグならば、遠隔操作も大丈夫だと思われます。 場合によっては 遠隔地医療遠隔地教育が可能になるかも知れません。
 当然ながら使用される通信機は、最大通信距離が星系内距離のものになりました。



 軌道番号14以上は「準恒星間距離」という距離帯です。
 星系内距離の通信機でも直接の通信はできません。
 遠距離軌道を巡る伴星の軌道番号は「1D6+13」で決まるというルールですから、 その軌道番号は最低でも14(1,229AU)、最大で19(39,322AU)になります。 遠距離軌道を巡る伴星系と情報を遣り取りするためには、 ジャンプ可能な恒星間宇宙船を使う以外に方法はないでしょう。

 しかし、1,000AU毎にリレー通信機を配置しておくとか、艦載レーザー砲で光信号を送る、といった通信方法が無い訳でもありませんので、 通信のタイムラグを求めておきました。
 そうした方法で通信を送った場合のタイムラグは、7日(1週間)〜228日(7ヶ月半)の範囲になります。



 今度は、同じ星系内でも惑星系内、衛星間の通信です


        表22 星系内(衛星間)の通信距離とタイムラグ

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 表の左端が衛星の軌道番号と公転軌道半径。
 その右側が、通信距離と距離帯区分
 右端の数値は通信のタイムラグで、day(日)単位になることはありませんから、 単位を sec(秒)、 min(分)、hour(時間)の3つに切り替えました。



 驚いたことに、規模の小さな惑星で近軌道を巡っている衛星であれば、 惑星距離(〜50,000km)の通信機でも、通信することが可能です。
 具体的には、規模5の世界で軌道番号12までの衛星や、 規模Aの世界で軌道番号6までの衛星、ということになりましたが。
 通信のタイムラグは、わずか0.2秒。少しだけ反応が遅れますが、会話は十分に可能だと思います。



 規模Aまでの世界を巡る衛星であれば、遠軌道距離(〜500,000km)の通信機でも通信が可能でした。
 ガス・ジャイアントの場合は、軌道番号10(大型GG)〜20(小型GG)の近い軌道を巡る衛星ならば、 通信可能になるようです。
 通信のタイムラグは最大で1.7秒。
 地球と月との距離が384,400kmですから、タイムラグは1.3秒。このあたりをイメージすれば良いでしょう。



 すでに述べた通り、規模4以上の世界やガス・ジャイアントにおいて、 100倍直径との通信には星系内距離の通信機が必要でした。
 通信のタイムラグは、5.3秒(規模A)〜16.7秒(小型GG)〜33.3秒(大型GG)となっています。




3.通信傍受と出力調整

 MT版:レフリーズ・コンパニオンを読み直して、厄介な記述を見つけてしまいました。
 それは、以下のようなルールです。

 無線通信機は、電波を用いて、情報を送受信します。
 情報は「放送」されます(情報は全方位に送信され、最大通信距離の中に存在する、如何なる電波受信機によっても探知されます)。


 こういう訳ですから、
 一般的な宇宙船は星系内距離の通信機を搭載していますから、宇宙船同士で通信を行う場合、 たとえ視認距離(〜50km)まで近付いて内緒話をしようと考えていても、 星系内距離(〜1,000AU)の範囲内に存在する、全ての受信機によって探知されてしまうことになるでしょう。
 「放送」された情報を探知できるのですから、当然、傍受も可能です。

 これは困りました。
 海賊船視認距離の獲物に降伏勧告を行った場合、 その降伏勧告を星系内に存在する全ての宇宙船や宇宙港が傍受してしまう、ということになりますから。



 流石に、そういった状況は不自然です。
 そこで出力調整という対策をハウス・ルールとして提案させて頂きましょう。

 最大通信距離が星系内距離の通信機であっても必要に応じて電波出力を下げられるとするのです。
 出力調整により、最大通信距離を惑星間距離(〜1AU)まで下げれば、 探知/傍受できるのは惑星間距離の中に存在する受信機のみ。
 最大通信距離を超遠軌道距離(〜5,000,000km)まで下げれば、 探知/傍受できるのは超遠軌道距離の中に存在する受信機のみ、という風に。

 このハウス・ルールを用いれば最大通信距離を遠方(〜50km)まで下げることで、 その距離まで接近した宇宙船との通信を、第三者に探知/傍受される心配はなくなります。
 現実的な対策だと思いますので、こうしたハウス・ルールも有り得るでしょう。





7.まとめ


 今回は、星系内移動に費やされる、時間とコストについて考察しました。



 同じ星系内に存在する2つの世界の間を移動する場合、旅行者にとって厄介な問題がひとつ存在します。
 それは、2つの世界がそれぞれの都合(公転周期)で移動している、ということであり、 つまり、2つの世界間の距離は時々刻々と変化を続けている、ということになるのです。
 このように、世界間の距離が変化を続けている場合、移動時間をどのように求めれば良いのでしょうか?

 この問題について私は、 2つの世界の公転軌道を比べ、より外側を巡る世界の公転軌道半径を平均移動距離として、平均移動時間を求める、 といった解決策を用いました。
 その計算過程については、考察の中で述べた通りです。
 この方法を用いれば簡単に、誤差1〜3%の精度で2世界間の平均移動時間を求めることができるでしょう。



 この方法で2世界間の平均移動時間を求め、 その数値から更に輸送コスト貨物/旅客運賃を計算しました。

 惑星間の星系内移動(通常ドライブ)で貨物や旅客を輸送する場合、経済的な距離は軌道番号6まででした。
 軌道番号7は、条件が良ければ星系内移動が経済的ですが、条件が悪ければ不経済にもなります。
 軌道番号8以上は、安価な95トン級シャトルを使用できるのであれば、 貨物輸送と二等旅客に関して軌道番号9まで経済的ですが、これは珍しい事例だと思います。 出発地と目的地の双方に宇宙港規模4以上という条件が必要ですから。

 それ以外の場合、基本的に軌道番号7以上の惑星間を輸送するのであれば、 恒星間宇宙船でジャンプを行ってしまう方が早く、安価に運べます。
 軌道番号7以上の公転軌道に存在する惑星は、 同一星系内に存在する他の惑星から見て、隣の星系にあるのも同然だ、と言えるでしょう。
 それらの惑星と人や物を遣り取りするためには、それだけの時間とコストが掛かるのです。



 反対に1つの惑星系内、同じ惑星を巡る衛星間での輸送は、極めて迅速で安価に行えることが分かりました。
 多くの場合、移動時間は4時間以内で済みますし、 極一部の例外も8時間以内に収まっているのです。
 そのため、貨物運賃は多くの場合20Cr以下。 それ以外の場合でも40Cr以下しか掛かりません。
 旅客を運ぶための設備も小艇用座席があれば十分なため、 旅客運賃も25Cr以下が一般的で、それ以外も55Crあれば十分です。
 同じ惑星系内で移動するのであれば、日帰りもできますし、毎日の通勤すら可能となるでしょう。
 衛星間の移動とは、そういうものなのです。



 星系内移動に費やされる時間とコストを求めることで、それら世界間の物理的距離、経済的距離を考えることができるようになりました。

 惑星間の移動(貨物と旅客の輸送)には、長い時間と多額のコストが必要です。
 主恒星の近く、軌道番号3以下を巡る惑星ならば、それほどのこともありませんが、 軌道番号が大きくなるにつれて、移動時間もコストも大きくなっていきます。 特に軌道番号7以上を巡る惑星は隣の星系に存在するも同然でした。
 それらの惑星が開発されるためには、その移動コストに引き合うだけの何かが必要でしょう。

 衛星間の移動(貨物と旅客の輸送)には、それほどの時間もコストも必要ありません。
 それらの世界間において、人や物の遣り取りは活発に行われている筈です。
 特に可住圏、主要世界と同じ惑星系の衛星は、その多くが開発済みとなっていることでしょう。





 2012.06.17 初投稿