The Begining of The Pirates
「海賊」の始め方
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3, Metasequia

 

 

 

 

 

 
 



 
 
 
 
 
 


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図1 乗り込んできた海賊に、反撃を仕掛ける乗組員

ガバメントとM16は「DOGAテック探検隊」、カトラスは橘様から頂きました。




1.はじめに


 これまでの考察から、スピンワードマーチの帝国領だけでも150〜250隻の海賊船が活動している、という数字が出てきました。
 今回は、これらの海賊船が何処から発生したのか、を考えてみようと思います。

 具体的な数字は出てきませんが、帝国海軍は辺境星系のパトロールを行い、発見した海賊船を退治しています。
 また、帝国法務省のエージェントと協力して、海賊の活動拠点を攻撃する作戦を度々行なっているようです。
 これらの作戦によって、宙域内で活動する海賊船の数は明らかに減少する筈ですが、実際には、ほとんど数の増減がありません。
 これはなぜでしょう。
 もちろん、次々に新しい海賊船が生まれているからです。

 これらの海賊船が何処から発生しているのか。
 また、海賊を始めるに当たって必要な装備をどうやって手に入れるか、それらの問題について考察してみます。





2.横領


 毎月の支払いに苦しんでいる貴方。
 貴方がこれほど苦しんでいるのに、毎月の取立ては容赦がありません。
 ローンの返済が出来ないと、大切な宇宙船を差し押さえられてしまう。
 そんな不安から、自由になりたくありませんか。



 上記のような会話を誰かと交わしているかどうかはともかくとして、ローンの負担に耐えかねて「横領を決意する」船長は多いようです。
 どれくらい多いかと言いますと「2Dを振って12が出たら、その商船の船長は横領を決意したか、横領して逃走中(CTとMTの公式ルール)」というほどなのです。
 ただし、2Dを振る頻度が定義されていませんから、全体の横領件数を求めることは出来ませんでした。
 帝国内(スピンワードマーチ宙域内)でどれだけの横領が発生しているのか、非常に興味深いのですが。

 さて横領された商船は、債権者(銀行や政府)からの追求を受けることになります。
 宇宙港には「指名手配」が回覧される筈ですし、賞金稼ぎ(スキップ・トレーサー)の追跡も有り得ます。
 堂々と宇宙港に入港して船荷や旅客を運び、貿易品を売買する訳にはいきません。
 となれば、海賊に転職するしかないでしょう。

 横領した商船が当局に逮捕される(あるいは逃げ切れる)可能性を、「故郷の世界」からの逃走距離に応じて計算してみました。
 このルールは、CTであっても、MTであっても全く同じです。



 実は、この「故郷の世界」というものが何なのか、良く分かりません。
 その商船の船籍が置かれた世界という意味なのか、商船の所有権を握っている銀行のある世界のことなのか、それとも最後の寄港地という意味なのか。

 とりあえず、「故郷の世界」とは、商船の購入資金を立て替えている銀行の存在する世界か、政府助成金を出している政府(惑星政府か星域政府)のある世界だとしておきます。
 毎月のローン返済は、その商船が寄港した星系の銀行で支払われるのでしょう。
 そして、その振込み通知がXボート等の郵便によって「故郷の世界」に運ばれ、銀行(もしくは政府)が、そのことを知るという仕組みだと考えました。

 予定通りに支払い通知が届かなかった場合に、銀行は横領の可能性を考える訳です。もちろん郵便の遅れに配慮して数週間は待つでしょう。しかし通常ならば、4週間以上の遅れは有り得ません。
 ここに至って、銀行は初めて「商船は横領された」と判断を下します。商船が最後に寄港した星系とその周辺に向けて「
賞金付きの指名手配」が送られます。
 この指名手配を取り消すことは大変ですから、横領の判断が慎重になることも止むを得ないことだと思います。

 その「指名手配」が届くまでの間、横領船長は自分のものになった商船を駆って、周辺星系を堂々と航行できる筈です。ローン返済をしなければ、運転資金には大きな余裕が生じますから、わずかな積荷と旅客だけで逃走することも可能でしょう。
 こうしてしばらくの間、横領商船は自由な運航を謳歌します。海賊行為を働いたら、また別の「指名手配」がなされるかも知れませんが、それはひとまず保留です。今回はとりあえず、横領による「指名手配」だけを考えました。



 上記は私の想像です。「Far Trader」にも具体的な記述はありませんでした。
 トラベラー世界の金融事情を考えると、このような悠長なシステムでローンを組んでいるとは信じ難いのですが、上記のように考えないと、宇宙船の横領は不可能になってしまいます。
 ルールに明記されているように「宇宙船の横領は可能」なのですから、それが可能な(ある意味、とてもルーズな)管理がなされていると考えるべきでしょう。
 掲示板(過去ログ32番、2009年12月頃)でも議論されましたが、決定的な答えは出ておりません。

 ふと思いついてアメリカの賞金稼ぎ制度を調べてみたところ、借金(保釈金)を踏み倒して逃走する者が多いという記述が見つかりました。そのため、賞金稼ぎの制度が立法化されている州も多いとのこと。賞金稼ぎは、踏み倒された金額の5〜10%を成功報酬として受け取る仕組みになっているようです。
 債務者の管理に掛ける予算は節約し、横領者の追跡には高額の「成功報酬」を掛けるという訳で、この制度を念頭に置くと、上記の商船ローン管理制度にも納得できるような気がします。いかがでしょう。


    表2 横領した宇宙船が、当局に逮捕される確率と逃げ切れる可能性

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 余談が長くなりましたが、逮捕される確率と逃げ切れる可能性の評価です。

 上記の数字は、「故郷の世界」からの逃走距離が5〜9パーセク(DM+1)の場合と、25〜29パーセク(DM+5)の場合、45パーセク以上(DM+9)の場合、3通りで求めました。
 1つの欄の上下に2つの数字が並んでいますが、上の数字は、2ヶ月以内に同じ星系を訪れた場合、下の数字は、毎回、異なる星系を訪れている場合を示しています。

 逃走距離が10パーセク未満である場合、「指名手配」が届いた最初の寄港地でほぼ確実に逮捕されます。わずか1ヵ月(2回のジャンプ)を逃げ切る可能性でさえ0.7%しかありません。
 横領が発覚するまでの間に、できるだけ逃走距離を稼いでおかなければならないことは明らかです。
 指定された航路を運行している政府指定商船の場合、横領は自由航路を航行している時に決行するしかありません。指定航路を運行中の横領(逃走)は、すぐに捕まってしまうのです。
 あまり信用できない船長に商船を預ける場合は、常に「故郷の世界」から10パーセク以内を航行していること、さもなくば「横領」とみなす、といったような追加条項が必要になるかも知れません。
 しかしCTもMTも、ルールブックにそうした記述は見当たりません。追加条項を付けないことが常識なのでしょうか。そもそも、信用できない船長に商船を預けるという前提が間違っているとも考えられますが。

 逃走距離が25〜29パーセクになっても、逃げ切れる可能性は、あまり増えませんでした。
 例えば、スピンワードメインのテュレデッド星系において、商船が横領を決意したとしましょう。
 銀行のある「故郷の世界」は、モーラ星域のモーラです(そう決めました)。
 テュレデッド=モーラ間は直線距離で13パーセクしかありませんが、郵便ルートは遠回りをしていますから、Xボートを用いても10週間掛かります。
 私の想像通りならば、Xボートの往復時間+猶予期間を合わせて24週間の逃走時間がありますので、その間に商船は12パーセクを逃げることができるでしょう。
 とは言うものの、ジャイナ星系周辺で「指名手配」に追いつかれてしまうことは確実です。ジャンプ1の商船で横領をすることは、とてもリスクが高いようでした。
 「指名手配」に追いつかれれば、その後の1ヵ月を逃げ切れる横領商船はわずか6分の1(=17.4%)、3ヶ月では200分の1しか居ないのですから。

 逃走距離が45パーセク以上になれば、当局に逮捕される確率はわずかでした。1年間、逃げ切れる可能性は49.4%に増えています。
 先程の例に出した商船(「故郷の世界」がモーラ)ですと、クロナー星域のクロナーまで逃げて42パーセクですから、まだ3パーセク足りません。もっと遠くへ逃げなければならないのです。
 これだけの距離を逃げているのに、半分の商船は1年を逃げ切れずに逮捕されてしまう点が驚きでした。帝国当局とスキップ・トレーサーは、とても優秀なのです。

 横領対策がこれだけ厳しければ、横領を試みようとする者も、十中八九諦めるのではないでしょうか。また、このくらい厳しくなければ、商船の建造費に投資しようとする投資家も居なくなってしまいます。



 しかし、横領を決行した商船の船長にとってみれば、困ったことです。
 ローンの取立てを逃れることが出来ても、1年以内に刑務所に入れられてしまうのでは、勇気を出して横領を決行した船長も報われません。
 ただ逃げるだけでは駄目なのです。
 そこで、当局による逮捕を逃れる手段として、2つの方法を考えてみました。

 1つは帝国当局の手が及ばない場所、国境外へ逃げることです。これがダリアン連合など、帝国と友好的な関係を保っている国家の領域ではいけませんが、帝国と敵対している国家、ソードワールズやヴァルグル領ならば、帝国の追求もないでしょう。
 上手く計画すれば、わずか1回のジャンプ、1パーセクのジャンプで帝国の影響力を脱することが出来ますが、そんな都合の良い国境はなかなか存在しないでしょう。
 もっとも帝国の保護を受けられなくなりますから、それらの敵対政府に宇宙船を奪われる危険もありますが。

 もう1つは、新しい(偽造された)トラスポンダ船籍証明を手に入れ、異なる船に成り代わることです。この問題については、4章で考察します。





3.ハイジャック


 海賊になりたい。そう思った貴方。

 貴方がヴァルグル人であるならば、悩むことはありません。
 近くにあるヴァルグル人居留地に出掛けて行き、
おれは海賊になって儲けるぞ
 そう叫ぶだけで、宇宙船も部下も、何でも手に入ります。
 貴方にそれだけのカリスマがあれば、の話ですが。
 カリスマが低かった場合、きっと貴方はカリスマの高いリーダーに感化され、海賊のことはどうでも良くなる筈です。
 そのリーダーが海賊を始めるならば、貴方も海賊になれるでしょう。



 貴方がヴァルグル人でないならば、どうにかして、自力で宇宙船を手に入れなければなりません。
 最も手っ取り早い(と犯罪者に思われている)方法はハイジャックでしょう。
 乗客として、あるいは乗組員として宇宙船にもぐりこみ、船内から宇宙船を奪い取るのです。

 ジャンプ中の宇宙船は、外部と一切の連絡が取れません。犯罪者にとっては、格好の仕事場となる訳です。
 ハイジャックのタイミングとしては、ジャンプインの直前か、ジャンプアウトの直前が最適でしょう。
 ジャンプインの直前ならば、乗組員がジャンプの準備に忙殺されて隙が出来ますし、ハイジャックに成功したら目的地を変更して、すぐジャンプ(逃走)できます。
 ジャンプアウトの直前ならば、ハイジャッカーは何食わぬ顔で、乗組員に成り済ますことが出来るのですから。

 もちろん、宇宙船を運航する側もそのことは十分に承知しています。
 何と言っても、3Dで18が出れば(1/216=0.46%の確率で)ハイジャッカーが乗り込んでくるそうですから(これもCTとMTの公式ルールです)。
 216分の1ということは、ひとつの宇宙船だけを考えても、8〜9年に一度の頻度でハイジャック(未遂)が起きることになります。
 2週間当たりの寄港商船数が5,000隻を越えるリジャイナ星系(宇宙港規模7+)の場合、毎週12件以上のハイジャックが起きていることになるでしょう。
 スピンワードマーチ宙域全体では、1千トン級以下の商船に限っても15万隻が運行していますから、毎週350件のハイジャックが発生しています。

 その大半は未遂か失敗で終わっている筈ですが、ある意味、宇宙船のハイジャックは日常茶飯事なのです。成功した時以外は、ニュースのネタにも成りません。



 宇宙船側の対策としては、以下のようなことが行なわれていました。
 旅客は(短剣と小剣を除いて)すべての武器を、船内ロッカーに預けなければなりません。
 スチュワードのボディチェックを誤魔化し、武器を船内に持ち込むだけでも一苦労でしょう。
 さらに、宇宙船の「アンチ・ハイジャック・プログラム」を出し抜くことは、極めて困難であると思われます。
 具体的に、その成功率を評価してみました。

     表3  ハイジャッカーが宇宙船の重要区画に侵入できる可能性

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 CTのルールの場合、2Dで5以下を出せば(DMはレフリーの裁量)艦橋への侵入が果たせました。2Dで5以下ですから、10/36=27.8%になります。
 成功が3割で、失敗が7割ですね。
 失敗したハイジャッカーは、宇宙服なしでエアロックから放り出されるか、もしくは最寄りの星系で刑務所に入れられる可能性が高いと思われます。
 「俺だけは大丈夫。失敗なんかしないさ」と思うのであれば、どうぞ挑戦してみてください。
 もっとも、犯罪者の大半は「自分だけは失敗しない」と思い込んでいるから、犯罪に走るのでしょうが。



 MTルールの場合、難易度〈至難〉の不確定行為に成功しなければ、艦橋などの重要区画には侵入できません。
 +DMに使える技能は、〈侵入〉と〈戦術〉です。
 +DMが2、4、6、8の4通りで計算してみましたが、かなり難しくなりました。

 DM+2の場合、アンチ・ハイジャック・プログラムを出し抜くことは不可能です。この程度の技量でハイジャックを試みることは、無謀だとしか言いようがありません。もう少し、リスクの少ない仕事を試みるべきでしょう。

 DM+4の場合、部分的成功を含めても、成功率は12分の1(=8.3%)しかありません。
 ハイジャックを試みた者の大半(12分の11)は、閉ざされたアイリスバルブの前で立ち尽くすことが確実です。
 失敗した場合のリスクを考えると、やはり実行は止めておいた方が良いと思います。

 DM+6になってようやく成功率がCTルール並みの27.8%になりました。
 ですからCTルールは、腕利き(DM+6)のハイジャッカーがハイジャックを試みる、という前提での成功率だったと考えることができます。
 DM+6の腕利きでも、かなり難しいのですが。

 DM+8という凄腕で初めて、侵入の成功率が半分を越えました。
 これだけの+DMがあっても、成功する確率は58.3%なのです。
 私の感覚ではまだリスクが高すぎるのですが……。

 とは言うものの、船主の方は「プログラムを過信」しないようにしてください。
 大半のハイジャッカーは侵入に失敗する筈ですが、侵入に成功するハイジャッカーも少数ですが、有り得るのです。
 例えば、毎週12件のハイジャックが発生しているリジャイナ星系では、この程度の技量のハイジャッカーでも、毎週1件が部分的成功をしていました。
 完全成功はさらに12分の1ですから、3ヶ月に1件の頻度で完全成功が発生していることになります。

 再び、スピンワードマーチ宙域の全体を見てみましょう。
 毎週350件のハイジャックが発生している訳ですから、部分的成功は12分の1で毎週29件。その12分の1に当たる2.4件が完全成功
 つまり年間125隻のハイジャックが完全成功していることになりました。
 これだけ頻繁にハイジャックが成功しているのであれば、その真似をしたがる犯罪者が絶えることもないでしょう。
 貴方の商船が、その中の1隻にならないという保障は何処にもありません。



 さて、上記の評価はきちんと「アンチ・ハイジャック・プログラム」が作動している場合の侵入成功率でした。
 では、何らかの理由でプログラムが作動していなかったら、どうなるのでしょうか。
 たまたま、プログラムの作動スイッチを入れ忘れた(不注意)とか、乗組員のひとりが密かにスイッチを切ってしまった(買収/裏切り)とか、プログラムに細工がなされている(内部/外部からのハッキング)などの可能性が考えられますが、このあたりはシナリオの範疇ですね。

 プログラムが作動していない場合、DM+2の未熟なハイジャッカーでも、27.8%の成功率が存在します。
 どんなハイジャッカーであっても、最低限、DM+2程度の技能は持ち合わせていると思いますので、かなり危険です。

 DM+4のハイジャッカーは、熟練した泥棒(侵入技能4レベル)であるか、陸軍や海兵隊で数期を勤め上げた下士官クラス(侵入技能と戦術技能を2レベルずつ)だろうと考えています。
 この程度の技量の持ち主であれば、ハイジャッカーの中にごろごろと存在しても、おかしくありません。
 ハイジャッカーの平均的技量がこのレベルである場合、58.3%の成功率で重要区画への侵入を許してしまいます。
 かなり危険でしょう。

 DM+6のハイジャッカーは、特殊攻撃部隊員並みの技量を備えている、ベテランの犯罪者なのでしょう。
 アンチ・ハイジャック・プログラムが動いていなければ、彼らは83.3%の高確率で重要区画へ侵入できます。

 DM+8のハイジャッカーは、致命的失敗をしない限り97.2%で侵入に成功します。

 上記の計算結果を見て、ちょっと認識を改めました。腕利きのハイジャッカーとは、単に+DMが多いだけの犯罪者ではないようです。
 ハイジャックの遂行に当たり、武器の持ち込みやアンチ・ハイジャック・プログラムの無力化を確実にこなせるハイジャッカーのことを指すのではないでしょうか。
 プログラムが動作していないだけで、宇宙船の重要区画はとても無防備になることが判明しましたから。



 次の段階ですが、ハイジャッカーが宇宙船の重要区画への侵入に成功した場合はどうなるのでしょうか。
 以前は、ハイジャッカーが艦橋へ侵入しても当直の乗組員との間で銃撃戦が発生し、それに勝利しなければハイジャックは成功しない、と考えていました。
 銃撃戦が行なわれる場合、当然ながら、ハイジャッカーの勝利は難しいでしょう。

 ですが、最近はその考えを改めています。
 古代テラの海洋における実例を勉強してみると、海賊達に乗り込まれた船舶の乗組員が、積極的に抵抗した例はほとんどありませんでした。
 乗組員が抵抗すればハイジャッカー達は逆上して、乗組員を殺してしまうかも知れません。
 抵抗しなければ、乗組員は怪我をせずに済むのです。
 果たして、当直の乗組員が積極的に抵抗するのでしょうか?
 船長兼任の船主ならばともかく、雇われ船員が不利な立場で(自分の命を危険に曝してまで)銃撃戦を行なうとは思えません。
 ハイジャッカーが武器を向ければ、それだけで降伏するような気がします。
 当然そのためにはハイジャッカーも、抵抗しない乗組員には決して手を出さない、というルールを守る必要があるでしょうけれど。

 ハイジャックされた商船の乗組員は、「無線器を壊された」救命艇に乗せられて解放されるか、あるいは、次の寄港地で降ろされることになると思います。
 そして、身の安全を保障された乗組員が、乗組員が積極的な抵抗をしないとするならば、ハイジャッカーは重要区画への侵入に成功するだけで、目的を達成できます。
 つまり、侵入の成功判定=ハイジャックの成功判定、になりました。これはとても、可能性が高いことだと思います。



 ハイジャックに成功したら、ハイジャッカーは宇宙船をどう扱うのでしょうか。
 その宇宙船を使って、海賊稼業に精を出すというパターンが、本来の目的に最も合致していると思います。
 その場合は、毎年125隻以上の海賊船が海賊稼業に新規参入する、ということになるでしょう。
 腕利きのハイジャッカーが活動しているならば、その数はもっと増えます。

 あるいは、宇宙船を直ちに売り払って、報酬をメンバーで山分けにするという選択肢も有りだと思います。
 参考までに、強奪した宇宙船の売値を計算しておきました。
 「Far Trader」には、ブラック・マーケットにおける盗品の販売価格も記載されており、中古品の「10分の1」が相場だそうです。
 下記の宇宙船価格も、それを前提として求めてみました。
 S型偵察艦A型自由貿易船はともかく、R型商船M型客船のハイジャックに成功したならば、1人当たり50万〜100万クレジットの分け前も夢ではありません。
 リスクが高くても(成功率が144分の1でも)、一攫千金のチャンスです。

             表4  盗難宇宙船の売却価格

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 乗組員が反乱を起こして船を乗っ取る場合も、似たような流れになると思われます。

 ところで乗組員がハイジャックに参加していた場合、これは「ハイジャック」と呼ばれるのでしょうか、それとも「反乱」なのでしょうか。
 また、船長が参加していたら?

 「横領」と「ハイジャック」と「反乱」の区別が良く分かりません。





4.トランスポンダと船籍証明の偽造


(1)トランスポンダ

 トラベラー世界には、宇宙船の「身分証明書」に相当するものが2つありました。

 1つはトランスポンダ。
 これについては、以前、MAG様が掲示板に投稿された情報を引用します。
 
 トランスポンダは実際には特別な広域通信機です。トランスポンダは常に宇宙船の識別コードを広域ラジオで送信し続けている。このため,宇宙船が星系に侵入したならば,他の輸送機器はその存在を自動的に探知することができる。
 トランスポンダは全体が密封されたブラックボックスにおさめられている。宇宙船管理機関の正規職員以外がトランスポンダに手を出し改造を試みることは危険である。
 全ての宇宙船は,止むにやまれぬ事情があればトランスポンダ信号を切ることができる。例えば海賊船に追われている時などがそれである。ただし,それは危険な行為である。軍用艦艇の大半は,もしもトランスポンダーを発していない輸送機器を探知したのならば「まず射撃し,それから問え」と指導されているからである。

 …中略…
 海賊船のトランスポンダは船橋で色々とID設定を変更できるように違法改造されている。しかしながら,ID設定と船のパワー出力や排水素トンが異なると周囲の船から不審船として通報される危険があるので,この機能は慎重に利用されるようです。


 トランスポンダは上記のように、極めて重要なアイテムです。
 GURPSの「FarTrader」にも、わずかですが記述されていました。
 それによれば、トランスポンダは少なくとも、その宇宙船を特定(identify)できる情報、船籍世界、船体サイズ等の情報を発信しています。
 これらをひとまとめにして、船籍コードと呼んでおきましょう。
 これらの情報を常時、発信していなければならない訳ですから、その星系に指名手配情報が届いているならば、横領/ハイジャックされた宇宙船は、確実に見つかってしまいます。

 海賊行為を行なおうとしているならば、尚更です。
 海賊行為を働いている時のトランスポンダ信号は、普段の信号と異なるものでなければなりません。
 トランスポンダを切るだけで済ませる、という方法もありますが、そんなことをした場合、周囲の商船から「不審船」として警戒されることは間違いないのです。
 海軍などの艦艇に見つかったら、無警告の射撃を受けても、文句は言えません。
 トランスポンダを切った状態で海賊行為を行なうことは、とても危険なのです。

 そんな訳ですから、まず何よりも偽造船籍コードを手に入れなければなりません。
 プレイヤーズ・マニュアルの〈交渉〉技能に関する説明文には、以下のような成功判定が記されていました。
 これを、偽造船籍コードの入手判定にそのまま利用してしまいましょう。

偽造船籍コードを取り扱っている業者を見つける
 難易度〈至難〉、〈交渉〉、〈社交〉、1日

 もちろん、その星系に偽造船籍コードを売買する犯罪組織が存在しなければ、判定に成功しても船籍コードは手に入りません(これはレフリーの裁量)。

 肝心の偽造船籍コードですが、以下のような価格になっていました。
 この価格は最低の価格であって、実際は数倍の値段で取り引きされていることと思います。
 それだけの需要があり、取り引きにはリスクが伴いますので。

トランスポンダ偽造プログラム(MAG様から提供していただいた情報です)
 TL10  1偽造船籍コード Cr100,000
 TL11  2偽造船籍コード Cr150,000
 TL12  4偽造船籍コード Cr250,000

 
 このトランスポンダ偽造プログラムを商船のトランスポンダに組み込むことで、商船は宇宙空間において、別の商船に成り代わることが可能になります。
 これら、偽造船籍コードは、実在する商船の船籍コードをコピーしたものであるか、すでに喪失したり、解体された商船の船籍コードであるか、あるいは完全に架空の商船の船籍コードであるかのどれかでしょう。
 それぞれの偽造には一長一短があります。

 実在する商船の船籍コードであるならば、そのコードが偽造だとばれる危険性はほとんどありません。
 ただし、同じ船籍コードの商船が同時に2隻以上存在している訳ですから、偶然、その2隻が同じ星系で鉢合わせしてしまう可能性や、航行記録の照会などから疑いを持たれる可能性は、常に有り得ます。
 逆に考えると、すでにローンを払い終えている自由貿易船は船籍コード航海日誌をコピーしようと狙われる可能性があります。
 定期整備の際に造船所の事務員がコピーを盗み取ろうとするかも知れませんし、買収された乗組員がコピーを売り渡している可能性もあるでしょう。

 すでに喪失した商船や、解体された商船の船籍コードを利用した場合も、偽造であると疑われる可能性は低いと思います。
 船籍証明航海日誌も、その商船のものを流用することが容易ですので。
 こういうものが欲しい場合は、解体業者やジャンク・ヤードを訪ねるべきかも知れません。
 サルベージ業者やベルターは遭難して、放棄された宇宙船に遭遇することも多いでしょうから、そんな場合は小遣い稼ぎのチャンスです。

 トランスポンダの使用だけを考えるのであれば、架空商船の船籍コードを用いる方法が、最も手軽で確実でしょう。
 誰かが船籍世界に問い合わせようとしない限り、偽造がばれる心配もありませんから。
 辺境星系には、そんな架空船籍を専らに扱う企業(犯罪組織)が存在するのかも知れませんね。




(2)船籍証明

 もう1つの「身分証明」は、船籍証明(ship's registry)です。
 宇宙船の型式、船体サイズ、船籍世界(Home World)、旅客と貨物の輸送能力、必要な乗組員の人数、所有者情報、搭載されている兵器の種類と数を明らかにしているそうです。

 この船籍証明は、大抵の宇宙港へ入港する際に、必ず要求されます。
 また、旅客の乗降や貨物取引、燃料や補修備品の購入などにも確認されることがあるそうです。
 治安レベルの厳しい世界では、無断出港などを防止するため、船籍証明を宇宙船から取り外し、宇宙港長(帝国領事)などに預けるように要求されるとのこと。
 出港時は、様々な手続きが済んでいることを確認してからでないと、返してもらえないそうです。

 トランスポンダを偽造しても、それだけで「指名手配」を逃れることは出来ません。
 船籍証明を要求しない田舎の宇宙港や、正体を知っても黙認してくれる海賊の避難所ばかりを選んで寄港するならば大丈夫かも知れませんが、その場合、行動範囲が極端に狭いものとなってしまうでしょう。

 ですから、ハイジャックや横領で手に入れた宇宙船ならば、船籍証明も偽造する必要があります。
 合法的に手に入れた宇宙船で海賊を行なうならば、必ずしも必要ではありませんが、あると便利な代物です。
 前述した、トランスポンダ用の偽造船籍コードを入手する際に、合わせて購入すると良いでしょう。
 この価格も最低価格ですので、数倍の値段を要求されるかも知れませんが。

偽造された船籍証明(日誌も含まれます)  cr25,000

 ただし、この船籍証明の偽造は、完璧なものではありません。
 大抵の商船ならば1週間以内の寄港で用事を済ませ、星系外へ脱出しているでしょうが、ドライブ故障などで滞在期間が延びてしまうと危険です。
 宇宙船の改造(武装の取付けや変更)、戦闘における損傷の修理、定期整備などの際には、大きな危険を冒すことになるのです。

 具体的には宇宙港に滞在する1週間が過ぎた後、その週の終わり(入港7日目)に、偽造に気付かれないための成功判定を、難易度〈並〉で行なってください。
 追加の1週間が過ぎるごとに、DM−1が累積していきます。
 入港14日目(2週目の終わり)にはDM−1、入港21日目(3週目の終わり)にはDM−2、28日目(4週目の終わり)にはDM−3と、偽造が露見する可能性は次第に高くなっていくのです。
 宇宙港の係官の〈管理〉技能レベルや宇宙港データベースの更新頻度(レフリーが判断)をマイナスDMに、乗組員の〈管理〉、〈贈賄〉技能レベルをプラスDMに用いて下さい。
 当然、それなりの必要経費(賄賂やハッキングなど)も掛かるでしょう。

 偽造が発覚した場合、逮捕を免れたとしても、周辺の宇宙港に警告が送られてしまいます。
 その船籍証明を使い続けることは、あまり賢明なことだと思えません。

 以上、GURPS Travellerの「Far Trader」に掲載されているルールを、MT向けに修正しました。

 「Far Trader」には記載されていませんでしたが、この「偽造船籍証明」を用いても、正規のルートで商船を売り払うことは出来ません。非合法のルート(売値は市価の10分の1)で売り捌くしかないでしょう。
 船籍証明を精査された場合には、誤魔化しきれないからです(偽造発覚の難易度判定をするまでもなく、露見するでしょう)。
 また、優秀なスキップ・トレーサーの追跡を逃れることもできません(素人レベルの追跡ならば誤魔化せるようです)。
 追跡を困難にすることはできるでしょうが、優秀なスキップ・トレーサーは宇宙港の入出港記録などからも、追跡対象を見つけ出してしまうのです。




(3)完璧な船籍証明の偽造

 厳重な調査を受けても偽造が発覚しない、高レベルの船籍証明も存在しますが、このような船籍証明をPCが作成/入手することは、まず不可能でしょう。
 高度な偽造設備、広範囲に渡る専門知識、データベースへの侵入などが必要なためです。
 入手に至るまでの過程は、ひとつのシナリオに成り得るほど困難ですが、もし入手できたとするならば、その対価は少なくともcr500,000以上になります。

 PCが上記の技能を修得し、必要な設備を手に入れたとしたら、多くの犯罪組織から狙われることは明らかです。
 PCは犯罪組織によって何処かへ閉じ込められて、延々と偽造書類の作成を強いられることでしょう。




(4)造船所への入渠

 海賊船は、しばしば造船所への入渠が必要とされます。
 海賊稼業を始めるために必要な改造、戦闘による損傷の修理、年に一度の定期整備には、AまたはBクラス宇宙港に存在する造船所の設備が不可欠だからです(定期整備については、次項の追加ルールも参考にしてください)。

 トラベラー宇宙ならば、武装の搭載は「帝国市民の権利だ」と簡単に言い切れそうな気がしますので問題ありません。
 しかし、戦闘による宇宙船の損傷を修理することは、当然ながら、宇宙港当局の関心を引いてしまいます。
 その修理は、海賊行為に関係している可能性があるのですから。
 何処で損傷を受けたのか、その際の戦闘記録航法日誌の提出は当然だと思います。
 もちろん、正直なことは言えないでしょう。

 宇宙船の修理に必要な期間は、MTのルールでは定義されておりません。
 しかしCTのルールを応用して、通常の損傷ならば1〜4週間。致命的損傷ならば4〜8週間が必要だと想定してみました。
 そうすると、偽装された船籍証明では、正体が露見してしまう可能性がとても高いのです。

 「Far Trader」に拠れば、そうしたリスクを冒さずに必要な改造、修理、定期整備を行えるA、Bクラス宇宙港が幾つか存在しているとのこと(海賊の避難所)。
 レフリーは敵役としての海賊船を活躍させるため、または、海賊になったプレイヤーの活動を支援するため、密かに海賊船を援助しているA、Bクラス宇宙港を登場させるべきかも知れません。

 私の個人的な考えですが、帝国海軍/惑星海軍/偵察局基地などが存在しない世界であれば、何処でも良いと思います。
 リジャイナ星域のユーキー(Bクラス宇宙港)や、ライラナー星域のフューラキン(Aクラス)などが手頃だと思いますが。




(5)辺境星系における定期整備

 「Far Trader」に掲載されていた、辺境星系において宇宙船の定期整備を行なう、特別ルールです。
 普通の商船がこれを利用しても、停泊時間が4週間に延びること(収入の減少)と、節約できる定期整備料金(整備料金の半分)のバランスが取れません。
 このルールを用いるメリットはほとんど無いでしょう。

 特別ルールは、以下のようになっています。

 宇宙船は、年に1回の定期整備を行なわなければなりません。
 このような定期整備は、購入価格の0.1%(1,000分の1)の費用と、A〜Bクラス宇宙港で2週間の時間を費やします。
 乗組員は2週間の休暇を取ることでしょう。

 この定期整備は、Cクラス以上の宇宙港において「乗組員の手によって」行なうことも出来ますが、必要な時間は2倍(4週間)になります。
 必要な部品はA〜Bクラス宇宙港であらかじめ購入しておかなければなりません。
 これらの部品は、宇宙船の船体容積の200分の1を占め、通常の定期整備にかかる費用の半額で仕入れることができます。
 乗組員は休暇を得られません。

 定期整備をD〜Eクラスの宇宙港で行なう場合、必要な時間は4倍(8週間)になります。





5.武装の入手(宇宙船用と個人用)


(1)宇宙船用の武装

 海賊稼業に不可欠な装備が、もう1つありました。
 武装です。
 何はともあれ、レーザーを1門、あるいはミサイル1門だけでも構いませんが、海賊船に武装が無ければ話になりません。
 できれば、200トン以下の商船を威圧できるように、(致命的損傷を与えられる)攻撃力3以上の兵器が欲しいところですが、贅沢は言いません(言えません)。
 ともかく、ハイジャックや横領で手に入れた商船が非武装の場合、危険を冒してでも武装を取り付けなければならないのです。

 そんな海賊船に取り付ける武装としては、いったい何が適切なのでしょう。
 いくつかの艦載兵器を、購入費に注目して比較します。

              表5 艦載兵器の価格比較
 

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 非武装の商船に新たな武装を取り付ける場合、単純に兵器の価格だけで購入費を見積もる訳にはいきません。
 そもそも、商船の運航は毎日が赤字との戦いです。
 貨物以外の物を載せる無駄な容積はもちろんのこと、兵器のために消費できる余分な電力もありません。
 ミサイルのような消費電力の少ない兵器は例外ですが、高エネルギー兵器レーザー兵器を搭載する場合は、その兵器のためのパワープラントを追加しなければならないのです。
 特にテックレベルが低い宇宙船の場合、核融合炉の効率が悪いため、追加しなければならないパワープラントの大きさと価格は、大きな負担となることでしょう。

 必要な消費電力を賄えるだけのパワープラント(核融合炉)の分を加えた、艦載兵器(単架砲塔1基)に必要な容積、重量、価格のリストが、上の表5になります。

 購入時に兵器を取り付けた場合は、その費用もローンへ組み込むことが可能ですが、毎月のローン支払いは右端の金額だけ増えます。
 例えばテックレベル15で取り付けたパルス・レーザーは、毎月のローン支払いを13.7KCrも増やしてしまうのです。
 ミサイル散乱砂砲以外の武装は、とても高価だと判明しました。



 フュージョン・ガンは、単架砲塔であっても攻撃力5を発揮する、とても強力な艦載兵器ですが、購入費も莫大です。
 テックレベル15でも7MCr以上の費用が必要ですので、貧乏な、駆け出しの海賊に買える代物ではありません。
 こういう兵器は、十分に成功した海賊が装備するものなのです。

 プラズマ・ガンの購入費も計算してみましたが、あまりメリットは無さそうです。

 ミサイルは電力をわずかしか消費しないため、ほとんどの商船では、パワープラントを追加する必要も無いでしょう。
 おかげで購入費も砲塔自体の価格、0.75MCr程しか掛かりません。
 購入費に関しては、とても安く済みますが、その代わり、射撃の度にミサイルを消費します。
 ミサイルのコストは1発当たり20,000cr(CTのルールでは5,000cr)。
 後述するパルス・レーザーと比較した場合ですが、126発のミサイルを消費すれば、購入費は対等になります。
 実際は、パワープラントの占有容積に積めなくなった貨物運賃の見込み損(ジャンプ1回毎に2トンでcr2,000)なども計算に含めるべきなのでしょうが、ミサイル1発分のコストはジャンプを10回繰り返さなければ回収できません。
 滅多に射撃を行なうことのない自由貿易船はともかく、海賊船においては必ずしも、ミサイルが安上がりだとは言い切れない気がしてきました。

 パルス・レーザーは、恐らく単架砲塔でなければ使われることのない兵器です。
 パワープラントの追加を必要としますが、テックレベルの高い造船所で取り付けられるのであれば、最も安価な艦載兵器になることでしょう。
 しかし反対にテックレベルの低い造船所で取り付ける場合、その購入費は大きな金額になってしまいます。



 貧乏な駆け出しの海賊船に装備する兵器としては、単架のミサイル砲塔が最も手頃な武装だと思われます。
 何と言っても、購入費が最も安く済む武装ですから。
 ミサイルを撃つ度に消える20,000crについては、できるだけ撃たずに事を済ませるように努力して、節約しましょう。
 上手く稼ぐことができれば、ミサイル代を節約する必要も無くなりますし、拿捕した商船からミサイルを奪っても良いのです。

 しかし、0.75MCrの購入費にも事欠く海賊船は多いでしょう。
 横領もハイジャックも、金があれば実行せずに済んだのですから。

 という訳で、安価な兵器を手に入れたい海賊のためにハウス・ルールを考えてみました。
 ハード・タイムズの記述を参考にしています。

             表6  廉価兵器の価格表

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 以下に、上記価格表の補足説明を行ないます。
 このハウス・ルールは主に砲塔の購入費に関するものですから、消耗品のミサイルに適用はできません。
 唯一の適用できるルールは故買品で、故買品のミサイルならば、新品の20%で購入することが可能です(当然、下記に記したようなリスクもあります)。



中古品
 まず、中古品は多くの商船オーナーが欲しがる装備でしょう。
 耐用年数を半分以上残しており、実用上の問題が全く無いにも関わらず、価格は新規購入品の40%しか必要ないのです。
 しかしながら、需要と供給のバランスが大きく崩れているため、なかなか手に入りません。
 難易度〈難〉の成功判定を行ない、成功しなければ、購入することは出来ません。
 〈徴用〉、〈交渉〉、〈社交〉などの技能を+DMに用いてください。
 また、他の買い手が値段を吊り上げてくることも考えられます。
 中古品を購入する際は、実際の価格を(1D6+3)×10%で決定してください。
 サイコロ運が悪いと、新品を買う場合とほとんど価格が変わらなくなります。
 その価格に合わせて耐用年数も延ばしてください。
 面倒でなければ、中古品の捜索と価格交渉をロールプレイで行なっても構いません。



故買品
 誰かが盗んできた新品です。
 価格は、正規購入品の20%しか必要ありません。
 しかし、もしも2D6で11+の目が出ると、信用できない造船所(あるいは故買商)に騙されて、新品価格でジャンクを取り付けられてしまいます。
 訴えることは出来ませんし、文句を言っても聞き流されるだけでしょう。

 その点を除けばとても「お買い得」に思えますが、実は製造番号の調査をすると、難易度〈並:7+〉で盗品だとばれてしまいます。
 運が良くても故買品の没収、運が悪ければ逮捕と裁判が待っています。
 宇宙港の入港程度ならば問題ありませんが、造船所で修理や定期整備を行なうなら、露見する可能性はずっと高くなるでしょう。

 露見を防ぐため、製造番号を削り取るなどの対策を取った場合、さらに怪しくなってしまいます。
 部品の交換や書類の偽造を行なえば盗品であることを誤魔化せますが、それには多くの経費が掛かるのです。価格が(1D3+1)倍に跳ね上がり、せっかくの盗品メリットが減じてしまうでしょう。

 中古の故買品であれば、価格は中古品(40%)×故買品(20%)で、わずか8%になります(もし見つかれば、の話ですが)。
 スペアの故買品ならば4%、ジャンクの故買品は2%です。
 もちろん、故買商が品質を偽っている可能性は常に有り得ます。



スペア
 耐用年数が10年未満の兵器です。
 中古の宇宙船から外されてきて、そのまま売られているのであれば、何の問題もありません。
 しかし大抵のジャンク屋では、程度の良い部品が外されて他の宇宙船や兵器(中古品)の修理に利用されてしまっています(その方が高く売れるのです)。
 ですから、程度の悪い部品の寄せ集めになっていることがほとんどでしょう。
 1回の戦闘を終える度に2D6を振り、11+が出れば故障します。
 この故障は回路や消耗品の劣化が原因ですので、多くの部品を交換しなければ、修理できません。
 修理には、新規購入価格の1D6%が必要です。



ダミー
 これはMAG様の投稿「S型偵察艦」を見て、思いつきました。
 文字通り、外見だけを精巧に作った、実際の射撃が不可能な兵器です。
 見た目からでは、ダミーであることが分かりません。
 探知や追跡で「完全成功」が出た場合も、視認距離で確認された場合も、本物の兵器にしか見えないほど、精巧に作られた模造品なのです。



ジャンク
 ダミー兵器に似ていますが、実はスクラップ部品を組み立てています。
 使用する「直前」にサイコロを振り、7+が出たら故障します。
 修理には、新規購入価格の1D6%が必要です。
 外見から「ボロ」であることは明白ですが、それが故障しているかどうかは、分かりません。
 非武装の商船を脅すだけならば、かろうじて役に立つでしょう。
 ダミー砲塔よりも安いこと(だけ)が、セールス・ポイントです。



 このハウス・ルールを用いるならば、単架のミサイル砲塔1基の購入費が、新品の0.75MCrから、中古品の0.30MCr、スペアの0.15MCrまで節約できます。
 故買品の利用はお勧めできませんが、その場合は0.15MCr〜0.03MCrまで下がるのです。
 これならば、貧乏な海賊船でも最低限の武装を揃えられるのではないでしょうか。




(2)個人戦闘用の武装

 海賊になったからには、乗り込み戦に用いる、個人用の銃器も必要です。
 拿捕した商船に手ぶらで乗り込んで行き、乗組員の反撃にあって逮捕された、ということでは困ります。
 MT「ハードタイムズ」に記載されていた、海賊に関する情報を参考として、海賊達の武装を5つのパターンで決めてみました。

           表7  貧乏な(駆け出し)海賊の武装

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 ライフル散弾銃レボルバーは、どんな商船であっても、必ず船内ロッカーに収納されている銃器だと思われます。
 レボルバーの代わりに、オート・ピストルでも構いません。
 CTのシナリオでも、上記の銃器は大抵、船内ロッカーの欄に記載されていました。
 予備弾倉は10個分が定数になっているようですが、これらの弾薬を使い切るよりも早く、それなりの稼ぎを得て貧乏を脱していると思われます。

 これらの銃器は、宇宙服(装甲値5以上)に対して「無貫通」の結果しか得られません。
 おまけに、セミオート射撃しかできない銃器です。
 これまでの考察で、セミオートの「無貫通」銃器は「カトラスよりも役に立たない」ことが分かっていますから、貧乏な海賊や貧乏な切り裂き魔が、白兵戦武器に頼る理由も良く理解できました。



 今度は、近接戦闘武器(白兵戦武器)を比較、考察します。

         表8 近接戦闘武器(白兵戦武器)の一覧比較

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 船内戦闘で使えそうな刀剣類を抜粋しました。

 海兵隊御用達の〈大型刀剣〉は3種類。
 今回、初めて帝国百科を開き、価格の欄を調べてみましたが、カトラスは安いことが判明しました。
 1本が100crです。
 防御力の高いは1本150crで、貫通力の高いブロードソードは300crでした。
 船内の各所に隠しておくという前提ですと、あまり高い刀剣は購入できません。
 1本100crのカトラスが愛用されているのも、当然のことなのでしょうか。

 個人的に大好きな〈斧類〉は2種類です。
 宇宙服を「部分貫通」可能で、各種の作業にも便利な手斧は1本50cr。
 カトラスの半値です。
 船内の隠し棚にしまっておく刀剣は、手斧の方が良いのではないでしょうか?
 私の愛する宇宙斧(MTでは戦斧と呼ばれています)は1本200cr。
 ちょっと高めでしたが、カトラス2本分と思えばバランスは取れます。



 次は、貧乏から抜け出した海賊達の武装を考察します。

       表9 貧乏から脱した海賊、もしくは、切り裂き魔の武装

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 ちょっとした稼ぎを得て、貧乏を脱した海賊達の武装です。
 切り裂き魔の場合は、上記が標準装備だそうですが。

 ライフルフルオート射撃の可能な突撃ライフルに、散弾銃も同じく自動散弾銃に、レボルバーオート・ピストルは至近距離射撃の王者サブマシンガンにクラスチェンジしました。
 リストに散弾銃が残されている理由は、良く分かりません。

 貧乏な話ですが、消費される弾薬代というものを考えてみましょう。
 突撃ライフルは目標数+2のフルオート射撃を行なえます。
 1回、引き金を引く度に発射される弾数は4発。
 弾薬代は30発入りの弾倉が20crですので、4発当たりは2.7cr。

 自動散弾銃も目標数+2のフルオート射撃が可能です。
 弾薬代は20発入りの弾倉が20crですので、4発当たり4cr。

 サブマシンガンの場合は、目標数+3のフルオート射撃なので1回10発。
 弾薬代は30発入りの弾倉が20crですので、10発当たり6.7cr。

 結構、弾薬代が馬鹿にならないかも知れません。
 戦闘に消費されるだけならば微々たる金額ですが、私のところのプレイヤーは「毎日実弾射撃をしないと腕が鈍るから」と言って、毎日、訓練を行なっていました(笑)。
 突撃ライフルを毎日10回撃つと、弾薬代が毎日26.7cr。
 4週間(28日)で750crも掛かってしまいます。
 これが自動散弾銃ならば毎日40crで、4週間1,120cr。
 サブマシンガンは毎日66.7crで、4週間1,870cr。
 意外と経費が掛かります。



 次は、一般的な海賊の武装です。

             表10 一般的な海賊の武装

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 PCがしばしば遭遇すると思われる、標準的な海賊の武装です。
 MTの「ハードタイムズ」では「コルセア」と呼ばれていましたが、GTになると、「コルセア」はヴァルグル海賊のことを指すようになっていました。
 混乱を防ぐため、一般的な海賊と呼んでおきます。

 主力の銃器は表8と変わっていませんが、初期テックレベルのレーザー銃軽突撃銃機関銃擲弾筒無反動ライフルなどの支援火器が追加されました。

 レーザー銃軽突撃銃は、宇宙服(装甲値5)に対しても「部分貫通」を得られる、重要な銃器となるでしょう。
 また、軽突撃銃フレチェット弾は致傷範囲が広いため、使いようによっては非常に強力となります。
 機関銃は、オートライフルのことなのか、操作班式の軽機関銃のことなのか、区別が付きません。
 それが分からないので、データも載せませんでした。
 擲弾筒無反動ライフルは、宇宙船内で扱うには難しいと思いますが、地上襲撃用の武装なのでしょうか。



 今度は、正規軍の脱走兵や落ちぶれた傭兵部隊が母体になっている、ヴァイキングの武装です。

             表11 ヴァイキングの武装

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 表10に比べて、ずいぶんと景気が良くなりました。

 主力の銃器は戦闘ライフルにレベルアップ。
 レーザー銃は、高テックレベルのレーザー銃に変わっています。
 戦闘ライフルは、宇宙服(装甲値5)に対して「部分貫通」を得られますから、支援火器のレーザー銃は「完全貫通」が可能な高TLのものでなければなりません。
 戦闘ライフルがあれば、軽突撃銃は不要だと思うのですが、なぜリストに残っているのでしょうか。
 
 支援火器としては他に、RAM擲弾筒(初期TL)戦術ミサイル速射磁気砲などが挙げられていました。
 RAM擲弾筒はともかく、戦術ミサイル速射磁気砲は、宇宙船の内部で使いませんよね?



 最後に、金回りの良いヴァイキング精鋭の武装です。

            表12 ヴァイキング精鋭の武装

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 ついに、磁気ライフルが登場です。
 正規軍(帝国陸軍/海兵隊)の現役主力小火器ですから、よほど羽振りの良い海賊(ヴァイキングの精鋭)でもなければ、入手できないのでしょう。
 突撃ロケットランチャーは、榴弾による「巻き添え命中」を狙っているのかも知れませんね。
 あるいは「ジャイロ・スタビライザー」による中距離射撃の精度アップでしょうか。

 支援火器のプラズマガンは、初期TLの12型であっても、とても強力です。



 ジェット・ライフルスナッブ・ピストルがどのあたりに含まれるのか、「ハードタイムズ」に関連する記述が無かったため、決めかねております。





6.まとめ

 良く練られた計画(武器の持ち込み)に加え、アンチ・ハイジャック・プログラムを無力化できるのであれば、ハイジャックの成功率は意外と高いことが分かりました。
 また、スピンワードマーチ宙域全体では、毎週350件ものハイジャック(未遂)が発生しており、完全成功年間125件も生じていることも驚きです。
 ひょっとしたら、もっと多いのかも知れません。

 横領のルールから、商船のローン体系を考えてみました。
 債務者の管理予算を節約し、その分、横領者の追跡に高額の「成功報酬」を掛けるという体系は、ある意味、合理的な気がします。
 サンプル・キャラクターの中には、短銃身のショットガンを振り回すハイジャッカーもどきのスキップ・トレーサーも掲載されており、アメリカ人のメンタリティに恐怖させられました。
 こういうキャラクターが活躍するのが、トラベラー宇宙だということなのでしょう。

 トランスポンダと船籍証明に関して、MAG様の情報と「Far Trader」記載の情報を整理してみました。
 偽造のトランスポンダ(船籍コード)と船籍証明を入手することは、それほど難しいことではないようです。

 ハイジャックと横領以外にも、宇宙船を手に入れる方法はいくつかあります。
 「Far Trader」には、乗組員の反乱(ハイジャックに類似)や、宇宙港での宇宙船強奪(詐欺と窃盗)が例として紹介されていました。
 しかし、それらの全てを扱いきれませんので、今回は考察しませんでした。
 面白そうなネタなのですが、とても一般化できそうにありませんので。



 最強兵器決定戦「35回」以降で、個人戦闘ルールの考察を始めました。
 その過程で、乗り込み戦の際、海賊達が持っている武器の種類を決める必要が生じています。
 そのため、MT「ハードタイムズ」を参考にして、武器類を決めてみました。
 武器の価格や入手性なども考察しています。



2010.06.06 初投稿。