LASH Ship
スピンワードマーチ宙域のLASH型商船
TITLELINE30.JPG - 1,269BYTES
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3 & Metasequia 

 

 

 

 

 







 
 


LASH_FIG01.JPG - 45,116BYTES

            図1  5万トン級LASH型商船

        4万トンの艀を連結して、ジャンプを行なう直前 




1.はじめに


 GURPS Traveller のサプリメント「 Far Trader 」の中に、LASH型商船というものが掲載されていました。
 20世紀テラの海洋でも運用されていたLASH型貨物船を、宇宙船に置き換えたものです。
 ちなみに、LASHとは Lighter Aboard Ship のことです。艀輸送船という意味で、コンテナ船のような大規模港湾設備が不要でありながら、能率の高い荷揚げ/荷積みを行なえるメリットがあります。



 GURPS Traveller 宇宙において、LASH型商船1万トン級のジャンプキャリア800トン級のライター15隻(Lighter=自走艀。合わせて1万2千トン分)を積載し、ジャンプ3性能で恒星間移動する形になります。

 LASH型商船の到着時刻に合わせて、星系外向けの貨物を積んだライターとジャンプ燃料補給用のタンカー(オイラーと呼ばれています)が100倍直径へ向かいます。
 目的星系の100倍直径にジャンプアウトしたLASH型商船は、その星系向けの貨物を積んだライター15隻を分離。
 分離されたライターは一目散に、主要世界を目指して移動します。

 LASH型商船は待ち構えていたオイラーから燃料を補給し、同じく、100倍直径で待機していた、星系外向け貨物を積んだライター15隻を連結します。
 LASH型商船は、その星系内で数時間(最大でも24時間)の滞在後、再びジャンプを行ないます。

 特殊な船体構造、ライター(自走艀)の利用、100倍直径での燃料補給など、経費は余計に掛かりますが、星系内における通常ドライブ移動、貨物の積み替えに必要な時間を大きく削減できる訳です。

 今回は、このLASH型商船の運用方法と、運行コストについて考察してみました。




 
2.LASH型商船のコスト計算

(1)ジャンプキャリアの設計

 LASH型商船の中で根幹を成すユニット。
 ジャンプキャリアについて、考察してみます。

 「Far Trader」に掲載されていたジャンプキャリアは、1万トン級の船体でした。
 ドライブ装置は、1万2千トン分のライター(自走艀)を搭載した状態で、ジャンプ3、1G加速の性能を発揮します。

 ここで早速、1つめの疑問を抱きました。
 ジャンプだけを繰り返すならば、Xボートのように通常ドライブを持たない宇宙船で十分な筈なのですが、わざわざ通常ドライブを備えているのはなぜなのでしょう。

 説明文を読んでみたところ「Far Trader」で紹介されているLASH型商船は、同じ星系内で2つの異なるジャンプポイントを利用する(2つのジャンプポイント間を移動する)ため、通常ドライブを必要としていました。
 GURPS Traveller にはジャンプ・マスクのルールが存在しますから、異なる星系へジャンプするためには、異なるジャンプポイントへ移動しなければならないことがあるのです。
 そのため、ジャンプキャリアに通常ドライブを装備したようですが、とても不経済でもったいないと感じました。

 そもそも、LASH型商船の設計思想は星系内の滞在時間を短縮し、ジャンプ回数を増やすことにあります。
 星系内の移動に時間を費やすことは、単なる無駄でしかありません。貨物を次の星系に急いで送りたいのであれば、ライター(自走艀)だけを移動させるべきでしょう。
 移動先のジャンプポイントには異なるジャンプキャリアが待機しているべきであり、わざわざジャンプキャリアが星系内を移動する必要は無いのです。

 という訳で、私の設計するジャンプキャリアは通常ドライブを搭載しませんでした。
 通常ドライブの搭載/非搭載によるコスト削減効果を、以下の表2〜5に示します。



 輸送コストの計算は、以下の条件で行ないました。
 5万トン級のLASH型商船を、ジャンプ能力1〜4の4種類で設計しています。
 商船の建造テックレベルは13です。

 LASH型商船の特性から、単純に1隻だけで輸送コストを求めることは出来ません。
 2星系間の定期航路を運行する場合、2隻のジャンプキャリアが18日周期(=ジャンプ1回6〜8日×2+星系内の滞在1日×2+時間調整0〜2日)で往復していると想定しました。片道で9日間になります。
 連続ジャンプを行なうならば、2連続ジャンプの場合で34日周期(=ジャンプ6〜8日間×4+星系内滞在1日×2+時間調整)で往復、片道は17日間。
 3連続ジャンプの場合で50日周期(=ジャンプ6〜8日間×6+星系内滞在1日×2+時間調整)で往復、片道は25日間。
 4連続ジャンプの場合で66日周期(=ジャンプ6〜8日間×8+星系内滞在1日×2+時間調整)で往復、片道は33日間。

 メガトラのルールでは、ジャンプに費やす時間は6〜8日です(帝国百科のp.93を参照。CTは7日で一定)。
 無駄な待機時間を減らすことはとても重要なのですが、ジャンプが6日で済んだからといって、時間調整無しのジャンプを繰り返すと大変です。そうした場合は、次の星系への到着時刻に大きな幅が生じてしまい、その予測が困難になってしまいました。
 そのような事態を防ぐため、ジャンプに8日が掛かることを前提としています。
 ジャンプに6〜7日しか掛からないのであれば、星系内での滞在を2〜3日に延ばさなければなりません。
 待機時間がもったいないようですが、到着時刻の予想が容易になるため、そうした方がシステム全体でのコストは下がります。

 そしてライター(自走艀)は、ジャンプキャリアに連結して輸送中のものが2組と、星系内を航行中か、宇宙港で荷揚げ/荷下ろし作業中のものが2組、合わせて4組が必要になりました。
 ジャンプキャリアに燃料補給を行なうオイラーは、2隻だけで十分です。



 航行時間(週)は、文字通り、出発星系から目的星系までの航行時間です。
 ジャンプ1回に1週間ですので、連続ジャンプを行なう場合は、2週間以上になります。
 上記の説明した通り、実際は18日周期(片道9日間)
で往復している訳ですが、便宜上、1週間として掲載しました(実際の計算は9〜33日間で行なっています)。

 貨物1千トンの輸送コスト(MCr)は、松永様の設計シートを使って求めました。
 ローンの支払いは、定期客船の原価償却を20年間と考えて、毎年、建造費の5%を支払うことにしています。
 維持費の中には、停泊料、乗組員の給料、専用室の維持費、燃料代(高純度の燃料を購入)、定期整備代などが含まれています。
 ジャンプキャリアは星系内に1〜3日の滞在しかせず、すぐに次のジャンプに入ってしまうため、乗組員に休暇を与えることが出来ません。
 そこでジャンプキャリアの乗組員にも休暇を与えるため、乗組員は2組を雇っていることにしました。
 彼らはジャンプを2回行った後、1週間前後の休暇を与えられることになります。

 21世紀テラの海運ですと、乗組員の給料(人件費)は輸送コストの中で大きな比重を占めているものですが、トラベラー世界ではそれほど大きくありません。
 2組の乗組員を雇っても、それほどコストの上昇にはなりませんでした。



   表2 LASH型商船が1パーセク航路を運行した場合の、貨物輸送コスト

LASH_FIG02.GIF - 4,930BYTES

 苦労して計算した輸送コストですが、1パーセク航路に就航している場合、LASH型商船の輸送コストは、同規模のコンテナ船とほぼ同等か、かえって効率が悪いという結果が出てしまいました。
 それについては、きちんと解答が用意してありますが、ここでは通常ドライブの有無による輸送コストの変化だけに着目します。

 少数第2位までしか表に載せていませんので分かり難いのですが、通常ドライブの有無による輸送コストの変化は、貨物1千トン当たり0.008MCrでした。
 通常ドライブを省略しても、輸送コストは2.1%しか節約できません。
 通常ドライブの有無についてどんな評価を下すべきか、難しいところです。



   表3 LASH型商船が2パーセク航路を運行した場合の、貨物輸送コスト

LASH_FIG03.GIF - 4,985BYTES

 2パーセク航路に就航している場合、LASH型商船の輸送コストは、コンテナ船と比べて2.5〜5.4%安くなりました。
 金額に直すと、0.012〜0.026MCrの差です。
 わずかな差ではありますが、LASH型商船の高い輸送効率が見えてきました。

 通常ドライブの有無による輸送コストの変化は、0.014MCrでした。
 輸送コストの削減効果は3.0%です。



   表4 LASH型商船が3パーセク航路を運行した場合の、貨物輸送コスト

LASH_FIG04.GIF - 4,970BYTES

 3パーセク航路に就航している場合、LASH型商船の輸送コストは、コンテナ船と比べて9.4〜14.3%安くなりました。
 金額に直すと、0.059〜0.090MCrの差です。
 LASH型商船の経済性が目立つようになって来ました。

 通常ドライブの有無による輸送コストの変化は、0.031MCrでした。
 輸送コストの削減効果は5.4%です。



   表5 LASH型商船が4パーセク航路を運行した場合の、貨物輸送コスト

LASH_FIG05.GIF - 4,940BYTES

 4パーセク航路になると、LASH型商船の輸送コストはコンテナ船に比べて14.6〜19.7%安くなりました。
 金額に直すと、0.117〜0.158MCrの差です。

 CTとMTのルールにおいて、宇宙船の運行経費で大きな比重を占めるものは、宇宙船の購入費用です。
 ジャンプしていても、宇宙港に停泊していても、その購入費用を返済しなければならないことに変わりはありません。
 何をしていても返済額が変わらないのですから、ジャンプの回数を増やし、収益性を高めることは正しい選択なのです。

 1パーセク航路のLASH型商船が不経済な理由は、ジャンプキャリアが安すぎることにあるのでしょう。
 LASH型商船はジャンプキャリアやライター(自走艀)、オイラーなど、用途毎に異なる宇宙船を必要とするため、全体的な購入費用が嵩みます。
 ジャンプ1性能のジャンプキャリアのジャンプ回数を増やしても、ライター(自走艀)やオイラーのコストを挽回できません。



 4パーセク航路の場合、通常ドライブの有無による輸送コストの変化は、0.041MCrでした。
 輸送コストの削減効果は6.0%です。
 ジャンプナンバーが増えるほど、輸送コストの削減効果が大きくなるのは、ジャンプキャリア自体の大きさが大きくなるためです。
 必要なジャンプドライブと燃料タンクは、ジャンプナンバーに比例して大きくなりますから、その船体を動かすための通常ドライブも、必然的に大きなものとなります。
 ジャンプナンバーの小さなジャンプキャリアであれば、通常ドライブを搭載しても構いません(コストの差はわずかです)が、ジャンプ3以上のジャンプキャリアが通常ドライブを搭載することは慎むべきでしょう。
 移動が必要な状況になったら、タグボートを呼ぶべきなのです。




(2)ライター/バージ(艀)の設計


LASH_FIG06.JPG - 44,969BYTES

       図6 3千トン級タグボート(4万トンの艀を輸送中)

     ちなみに、バージ(艀)の船首は赤いラインの描かれている側です。
    
 船尾は黄色いラインの描かれている側で、タグボートと連結されます。



 貨物を搭載し、ジャンプキャリアに連結して輸送される宇宙船が「艀」です。

 「Far Trader」掲載のライター(自走艀)は、1隻が800トンの大きさで、1G加速のドライブ装置を備えていました。
 おまけに、大気圏への突入も可能な完全流線型船体です。

 この公式設定(?)であるライター(自走艀)について、残念なことに、大きな疑問が3つも見つかってしまいました。



 まず1つは、その大きさと数です。
 どんな宇宙船であれ、その輸送効率(経済性)は、大きさに比例します。
 800トン級のライター(自走艀)15隻よりも、1万2千トン級のライター(自走艀)を1隻だけ建造した方が、その建造費も維持費も小さくなる筈なのです。
 荷役時間を短縮できる、目的地の異なる貨物を別のライター(自走艀)に積み分けることで対応を容易にする、特殊な貨物に合わせて専用のライター(自走艀)を用意できる、などの利点は見つかりました。
 ですが、経済上のメリットを捨てるほどのことではありません。

 以下の表では合わせて4万トンのライター(自走艀)を輸送する場合のコストを示していますが、800トンのライター(自走艀)×50隻4千トンのライター(自走艀)×10隻4万トンのライター(自走艀)×1隻、以上の3パターンで求めました。



 2つ目は、通常ドライブ装置についてです。
 艀に搭載されている、1G加速のドライブも無駄に見えてきました。
 通常ドライブは、ジャンプ空間(恒星間輸送)において何の役にも立ちません。
 それどころか、ドライブ装置に必要な電力を供給するためのパワープラントと共に、非常に大きなスペースを占有してしまいます。
 建造費用も増加してしまいますから、ドライブ装置を省略しても良いでしょう。
 そもそも「艀」と呼ぶのであれば、20世紀テラの常識から考えても、無動力が当然ではないでしょうか。

 (掲示板において、カモノハシ様から「動力付きの艀」というものが存在することを教えて頂きました。そこで、Lighterのことは「自走艀」、動力無しのBargeを「」または「無動力艀」と呼んで、両者を区別することにします。正式な呼び分け方は分かりませんが、私の考察ではこのように呼び方を分けました。ご了承ください。)

 私のコスト計算では、4万トンのバージ(艀)で通常ドライブ無しのタイプを設計してみました。
 100倍直径と軌道宇宙港との間を移動するためタグボートが必要になってしまいますので、その分の増加コストも加えてあります。



 3つ目の疑問は、完全流線型の船体です。
 100倍直径から主要世界へ直行し、貨物の積み替え無しで地上に荷下ろしすることが目的なのでしょうが、もったいなくて仕方ありません。
 ヘラクレス型貨物船の考察で明らかになった通り、恒星間宇宙船に高価な流線型船体を与えることは、とても不経済なことなのです。

 ライター(自走艀)は恒星間宇宙船ではありませんが、ジャンプキャリアに連結して輸送される以上、恒星間宇宙船の一部であるとみなせます。
 輸送コストを削減するためには、ライター(自走艀)も、非流線型船体で我慢するべきでしょう。
 地上に貨物を降ろしたいのであれば、軌道宇宙港で積み替えれば良いのです。
 軌道宇宙港も存在しないような辺境星系で、サポート体制が不可欠なLASH型商船を運用すべきではありません。

 コスト計算では、公式設定の800トン級ライター(自走艀)だけに完全流線型の船体を与え、それ以外のライター(自走艀)には、非流線型の船体を与えてあります。
 動力無しのバージ(艀)も当然、非流線型です。



       表7  艀サイズと輸送コストの関係(1パーセク航路)

LASH_FIG07.GIF - 4,455BYTES

 ジャンプキャリアに連結される、ライター(自走艀)のサイズによる輸送コストの変化を表7に示しました。

 ライター(自走艀)のサイズが小さいほど、輸送コストは明らかに大きくなっています。
 4万トン級ライター(自走艀)の輸送コストは0.37MCrで、コンテナ船と同等ですが、4千トン級ライター(自走艀)×10隻の輸送コストは0.43MCr116%)、800トン級ライター(自走艀)×50隻の輸送コストは0.60MCr162%)でした。

 また、4万トン級のライター(自走艀)から通常ドライブを取り去った場合、輸送コストは0.30MCr81%)まで低下しました。
 コンテナ船に比べて2割も輸送コストを節約できるのです。
 十分な効果でしょう。
 表2、LASH型商船が1パーセク航路を運行した場合の、意外に高い輸送コストに対する解答が、これです。
 ライター(自走艀)を通常ドライブ無しのバージ(無動力艀)に変えるならば、1パーセク航路でも、経済的なLASH型商船運航が可能になるのです。



       表8  艀サイズと輸送コストの関係(2パーセク航路)

LASH_FIG08.GIF - 4,449BYTES

 2パーセク航路においても、ライター(自走艀)サイズによる輸送コストの傾向は変わりません。

 4万トン級ライター(自走艀)の輸送コストは0.45MCrで(95%)で、コンテナ船と比べて若干、コストが安くなりました。
 しかし4千トン級ライター(自走艀)×10隻の場合は0.51MCr106%)、800トン級ライター(自走艀)×50隻の場合は0.70MCr145%)で、割高です。

 通常ドライブ無しのバージ(無動力艀)の輸送コストは0.38MCr79%)です。



       表9  艀サイズと輸送コストの関係(3パーセク航路)

LASH_FIG09.GIF - 4,434BYTES

 3パーセク航路になると、4千トン級のライター(自走艀)であっても、コンテナ船より安価になりました。

 4万トン級ライター(自走艀)の輸送コストは0.54MCrで(86%)、4千トン級ライター(自走艀)×10隻0.60MCr95%)、コンテナ船と比べて経済的です。
 しかし、800トン級ライター(自走艀)×50隻の輸送コストは0.70MCr145%)で、まだまだコスト高でした。

 4万トン級バージ(無動力艀)の輸送コストは0.46MCr73%)です。



       表10  艀サイズと輸送コストの関係(4パーセク航路)

LASH_FIG10.GIF - 4,427BYTES

 4パーセク航路におけるコスト比較です。

 4万トン級ライター(自走艀)の輸送コストは0.64MCrで(80%)、4千トン級ライター(自走艀)×10隻0.70MCr88%)、コンテナ船と比べてずっと経済的です。
 しかし、800トン級ライター(自走艀)×50隻の輸送コストは0.94MCr117%)でした。
 メガトラのルールでは、800トン級ライター(自走艀)を用いる限り、LASH型商船の経済的運行が不可能であると判明しました。GURPSの宇宙船建造ルールはよく分かりませんが、何らかの理由で800トン級が選ばれているのでしょう。

 4万トン級バージ(無動力艀)の輸送コストは0.55MCr69%)でした。
 100倍直径で待機しているタグボートのコストを加えても、まだ安いのです。


LASH_FIG11.JPG - 44,218BYTES

  図11 定期整備のため、タグボートに連結して輸送されるジャンプキャリア

      ジャンプキャリアは、通常ドライブを搭載しておりませんので、
   100倍直径から軌道宇宙港への移動する際にも、タグボートが不可欠です。



(3)テックレベルによる輸送コストの変化

 今度は、商船を建造するテックレベルによって、有効性が変化するかどうかを調べてみました。
 商船の建造費と維持費には、CTの「1兆クレジット艦隊」に掲載されていた、為替レートのルールを適用しています。

 LASH型商船の建造テックレベルを、15、13、12、10の4段階で変更し、それぞれの輸送コストをコンテナ船のものと比較しました。


       表12 テックレベルと輸送コストの関係(1パーセク航路)

LASH_FIG11.GIF - 4,982BYTES

 1パーセク航路におけるコスト比較です。
 コンテナ船による貨物輸送をLASH型商船に置き換えることで、テックレベル12〜15の範囲では、輸送コストを80〜82%に引き下げることができました。
 テックレベル10の場合は、74%まで下がります。

 ヴィリス星系のテックレベルが10だったと思いましたが、ヴィリスとガーダ・ヴィリスを結ぶ航路には、テックレベル10のLASH型商船が運航している可能性が高いでしょう。
 テックレベル10ならば、ヴィリスの造船所でも建造と維持/修理が可能です。
 そしてその輸送コストは、テックレベル15のコンテナ船を輸入して用いるよりも、明らかに安いのです。

 テックレベル11の輸送コストは求めませんでしたが、ポロズロとライラナーの間にも、テックレベル11のLASH型商船が運航しているかも知れません。
 ポロズロのテックレベルは11ですが、Aクラスの宇宙港が存在しますので、テックレベル11のLASH型商船を建造可能です。



       表13 テックレベルと輸送コストの関係(2パーセク航路)

LASH_FIG12.GIF - 5,026BYTES

 2パーセク航路の場合、LASH型商船への置き換えで、輸送コストを75〜79%に引き下げることができました。

 モーラとフォーニスを結ぶ航路、リジャイナとエクストーレイを結ぶ航路などには、テックレベル12で建造されたLASH型商船が運航しているかも知れません。



       表14 テックレベルと輸送コストの関係(3パーセク航路)

LASH_FIG13.GIF - 5,006BYTES

 3パーセク航路の場合、LASH型商船への置き換えで、輸送コストを71〜74%に引き下げることができます。
 ジャンプナンバーが大きくなるほど、LASH型商船の有効性が増す訳ですが、その点については、どのテックレベルも同じようです。

 ところで、アレルとフィーリを結ぶ航路は3パーセク航路なのですが、どちらの星系にもAクラスの宇宙港が存在しません。
 LASH型商船が運航している可能性は高いのですが、恒星間宇宙船の建造は不可能です。
 ですから艀とタグボート、オイラーの建造には問題ありませんが、ジャンプキャリアだけは、近くのイフェイト(テックレベル13)かリジャイナ(テックレベル12)で、建造してもらう必要があるでしょう。
 という訳で、LASH型商船の建造には、帝国に数多く存在するBクラス宇宙港の造船所(建造能力)を有効に活用できる、という利点が見つかりました。



       表15 テックレベルと輸送コストの関係(4パーセク航路)

LASH_FIG14.GIF - 4,955BYTES

 4パーセク航路の場合、輸送コストの削減効果は、テックレベル15〜13の範囲で69%でした。
 テックレベル12は2連続ジャンプで80%、テックレベル10は4連続ジャンプで73%の削減です。

 アラマンクスとジュニディを結ぶ4パーセク航路にとても興味があるのですが、ここを運行しているLASH型商船は、どこで建造されたものでしょうか。
 アラミス星域には、大規模なAクラス宇宙港が存在しないのです。
 そこで、隣のプレトリア星域に存在する高人口世界、Aクラス宇宙港を備えたマルツ(テックレベル10)から購入することになるでしょう。
 その場合、造船所のテックレベルは10ですから、LASH型商船にジャンプ1の能力を持たせることしか出来ません。4パーセク航路を4週間掛けて、LASH型商船が運航していることになります。
 ちょっと気にならないこともないのですが、ジャンプ1のヘラクレス型貨物船が運航している星域ですから、恐らく問題にはなりません。
 おまけにジャンプ回数が4回ですから、運輸会社は貨物1トン当たりcr4,000の運賃を受け取れます。



 余談になりますが、5〜6パーセク航路の輸送コストも計算してみました。

     表16 テックレベルと輸送コストの関係(5〜6パーセク航路)

LASH_FIG15.GIF - 4,024BYTES

 5〜6パーセク航路を在来型のコンテナ船が運航する場合、ジャンプ1回で移動することは出来ません。
 貨物運賃には、ジャンプ1回当たり1トンcr1,000という縛りが存在するため、輸送コストが運賃収入を上回り、必ず赤字になってしまうためです。
 黒字運行のためには、ジャンプ3を2回、もしくは、ジャンプ2の3連続ジャンプが必要となっていました。
 ところがLASH型商船の場合、ジャンプ6の黒字運行が可能なのです。
 実に意外な発見でした。



 もっとも、実際にジャンプ5以上の商船が運航することは有り得ないでしょう。
 帝国にとってもメガコーポレーションにとっても、情報の抑制(独占)はとても価値のあるものですから、そう簡単に民間が利用できるとは思えません。
 また、ジャンプ能力を低く抑えることによって、より多くの運賃収入を得られる点も魅力的です。

 ジャンプ6商船の場合、貨物1千トンを25回輸送しても4MCrしか稼げません。
 ジャンプ3商船の場合、(連続して2回のジャンプを行なうため)1年間で16回の輸送しかできませんが、年間収入は14.7MCrに増えます。
 もしもジャンプ2商船ならば、(3回連続のジャンプを行なうため)12回の輸送しかできませんが、年間で19.4MCrを稼ぐことができます。
 この収益にどれだけの価値があるか、投資額(建造費)との比で求めると、ジャンプ6商船は1.3%、ジャンプ3商船は6.0%、ジャンプ2商船は8.1%の利益に相当すると分かりました。
 私が株主の立場だったら、高配当を期待できないジャンプ6商船には投資しません。
 皆様はどう思われますでしょうか。

 同じ航路に競合相手がいなければ、あるいは、その競合相手と協定を結んでいるのであれば、低収益の高速商船を投入する必要はありません。
 ジャンプ2(場合によってはジャンプ1)の商船を運航させることで、情報の独占を保ち、同時により多くの収益を上げることができるのです。





3.LASH型商船の運航パターン


 LASH型商船の運航パターンを、以下で考えてみました。
 その基本は「Far Trader」に記述されていたものと同じですが、前章の考察に基づいて、若干の変更を加えてあります。



(1)LASH型商船の到着前(X-Day−1)

 星系外向け貨物を搭載した4万トンの艀A、それを輸送する3千トンのタグボート、補給用の燃料を満載した9千トンオイラーの3隻が、主要世界の軌道宇宙港を出港します。
 X-Dayとは、LASH型商船がその星系に到着する予定の日付のことを指します。
 通常の二星系間航路ならば、前回の寄港から18日後になるでしょう。

 恒星間宇宙船がジャンプ空間で過ごす時間は6〜8日間ですから、1週間よりも1日早く、あるいは1日遅く到着する可能性があります(それぞれが6分の1=16.7%の確率です)。
 到着したLASH型商船を無防備な(移動も自衛戦闘もできない)状態で放っておく訳にはいきません。
 それを出迎えるために1日早く移動して、100倍直径で待機しておかなければならないのです。

 もしLASH型商船が7日で到着したら1日、8日で到着したら2日間を、艀とタグボート、オイラーは星系外縁で何もできず、無駄に過ごしてしまうことになりますが、これは仕方ありません。
 100倍直径と主要世界(の軌道宇宙港)間を移動する時間については、ここでは考慮しないこととします。


LASH_FIG17.JPG - 54,280BYTES

     図17 軌道宇宙港を発つ、タグボート付きの艀(A)とオイラー



(2)LASH型商船の到着(X-Day−1〜+1)

 目的星系の100倍直径に、LASH型商船がジャンプアウトしてきました。
 1万トンのジャンプキャリアには、この星系向け貨物を満載した4万トンの艀Bが連結されてます。
 また、ジャンプキャリアの燃料タンクは、空になっていることでしょう。



 まず、タグボートは艀Aを抱えたまま、ジャンプキャリアにドッキングします。
 ジャンプキャリアは前後対称の形状にデザインされていますので、キャリアの前後、どちらに艀を連結した状態でもジャンプが可能なのです。
 流石に2つの艀を連結した状態ではジャンプできませんが、このデザインのお陰で、艀を周囲の宇宙空間に浮かべておく必要が無くなりました。

 ジャンプキャリアと艀Aの連結状態を確認した後、タグボートは艀Aを分離します。
 これで星系外向け貨物を積んだ艀Aの受け渡しが完了しました。

 身軽になったタグボートは、ジャンプキャリアの反対側へ移動。
 今度は、ジャンプキャリアに連結されたままの艀Bとドッキングします。
 タグボートと艀Bの連結状態を確認した後、ジャンプキャリアは艀Bを分離。
 艀Bの受け渡しも完了しました。
 タグボートはそのまま、主要世界へ加速を始めても良いのですが、ジャンプキャリアとオイラーの護衛をするため、その空域に留まります。



 同時に、燃料を満載したオイラーも、ジャンプキャリアとドッキングしています。
 燃料の受け渡しを行なうだけですので、燃料移送用のチューブを接続するだけでも十分だと思いますが。
 この燃料の移送には、数時間が掛かります。
 宇宙船間の燃料移送時間については、CT宇宙海軍の戦闘ルールにしか記述が見つかりませんでした。ですから、最低でも2時間ということにしておきます。



 ジャンプキャリアの乗組員は、その半分が休暇を与えられます。
 交代要員がタグボートに乗り込んでいますから、タグボートが連結した際に乗り換えれば済むでしょう。
 ニ星系間航路を運行するLASH型商船の場合、ジャンプキャリアを運行している(ジャンプ空間に滞在中の)乗組員が1組、星系上で休暇を満喫している乗組員が両方の星系に半分ずつ、全てを合わせて2組の乗組員が必要になる訳です。
 トラベラー世界の人件費は宇宙船の購入費用と比べて非常に安いので、2組の乗組員を雇っておいても、輸送コストへの影響はわずかでした。


LASH_FIG18.GIF - 38,739BYTES

     図18 100倍直径における、LASH型商船の行動手順

  この説明図は、橘様が描いてくださったものをアレンジしたものです。



(3)LASH型商船の再ジャンプ(X-Day+2)
 
 艀の受け渡しと燃料補給、乗組員交代を済ませたLASH型商船は、再度のジャンプを行ないます。

 LASH型商船が立ち去った後、艀Bを連結したタグボートと、すべての燃料を移送して燃料タンクが空になったオイラーは、主要世界(の軌道宇宙港)へと帰還します。

 次のLASH型商船が到着するまでの6日間(2隻のジャンプキャリアが18日周期で運行していますから、次の便の到着予定日はX-Day+9になります)で、艀Bは貨物を積み替え、オイラーは燃料補給を済ませておくことになるでしょう。
 乗組員の休暇も、6日間が与えられます。

 艀とタグボート、オイラーの運行パターンは、6日間の宇宙港停泊(休暇)、1日の艀受け渡し(燃料補給)作業、2日間の待機、合計9日間の繰り返しになるでしょう。
 帝国百科の記述に拠れば、商船が宇宙港に停泊する期間は、通常ならば6日間が最大のようですから、上記の日数で問題はないと思われます


LASH_FIG19.JPG - 44,098BYTES

 図19 100倍直径において、艀の交換と燃料補給を同時に行なう、LASH型商船





4.ジャンプと星系内の移動時間


(1)ジャンプ空間での滞在時間

 メガトラベラーのルールでは、ジャンプ空間内に滞在する時間が6〜8日間になっていました。
 1D6を振って、1が出れば6日間、2〜5は7日間、6が出れば8日間ということです。
 例えば、帝国暦1105年の010日にモーラを発ち、フォーニスへ向かってジャンプしたLASH型商船は、1D6を振って1が出れば(16.7%の確率で)016日に、2〜5が出れば(66.7%の確率で)017日に、6が出れば(16.7%の確率で)018日にジャンプアウトするのです。

 前章で述べた事情によって、タグボートとオイラーは016日には100倍直径で、LASH型商船が早く到着する可能性に備え、待機していなければなりません。
 もしもLASH型商船の到着が遅れた場合、66.7%の確率で1日、16.7%の確率で2日の待機を強いられてしまいます。
 この待機時間がもったいないと感じるかも知れませんが、これはジャンプ空間の特性に由来するものですから、どうしようもありません。

 私の運行パターンでは、LASH型商船の到着が早くても遅れても、次のジャンプのタイミングを同じ日時に合わせるようにしています。
 待機時間は、すでに運行スケジュールの中に組み込まれているのです。

 もしも待機時間を作らなかった場合、ジャンプ空間での滞在時間の誤差が累積して、2隻のLASH型商船がほぼ同じタイミングでジャンプアウトしてくるようになるかも知れません。
 タグボートとオイラーは、2隻のジャンプキャリアに対して1隻の比率でしか用意されていませんから、困った事態が発生してしまいます。
 貨物の輸送スケジュールも乱れてしまうでしょう。

 通常の貨物船ならば、到着が早くても遅れても、宇宙港の停泊時間を調整することで規則正しい運行スケジュールに戻れます。
 LASH型商船の場合も、時間調整を行なって運行スケジュールを一定に保つ必要があると思います。




(2)星系内の移動時間

 あまり考えたくない問題なのですが、LASH型商船に関する重要な問題ですから、この考察を避ける訳にはいきません。

 LASH型商船がジャンプアウトしてきて、艀の受け渡しや燃料補給を済ませ、再度のジャンプインを行なう空域は、100倍直径の位置です。
 主要世界が普通の惑星であれば、その軌道宇宙港から100倍直径までの移動時間は(1G加速の宇宙船であっても)8時間以内に抑えられることでしょう。
 LASH型商船の運航をサポートするタグボートとオイラーは、宇宙港での停泊時間を6日間も確保してありますから、片道8時間、往復16時間程度の移動ならば問題になりません。

 ところが、もしも主要世界が(リジャイナのような)ガスジャイアントの衛星である場合は、この移動時間が最大で18時間まで伸びてしまいます。
 それでも往復で36時間(=1日半)ならば、宇宙港での停泊時間は、まだ4日半が残っているのですが。
 これで足りなければ、100倍直径における待機時間を1日減らす(早く着き過ぎたLASH型商船は1日を単独で過ごす)などの対策を講じなければなりませんが、まだ何とかなるでしょう。



 問題が見過ごせなくなるのは、(可住圏の公転軌道を巡っているであろう)主要世界が、その星系の主恒星の100倍直径内に位置する場合です。
 主恒星のスペクトル型がG5〜M9の範囲にある場合、まず確実にそうなります。
 この星系に到着する宇宙船は、主恒星の100倍直径にジャンプアウトしてこなければなりませんし、離脱する場合も同様に、主恒星の100倍直径まで離れなければなりません。
 主恒星の100倍直径は、惑星の100倍直径とは比べ物にならないほど大きいため、移動に要する時間も、とても大きいものになってしまうのです。

 下の表19に、主要世界から、主恒星の100倍直径以上の距離に離れるために必要な移動時間を示します。
 多くの商船は1G加速の性能しか持ちませんから(それ以上の加速度性能を持たせることは明らかに不経済です)、1G加速で計算しました。

 主恒星の直径や主要世界の公転半径は、CT「偵察局」と、GURPS「Far Trader」から引用しています。
 表に書き忘れましたが、恒星のスペクトル型は規模Xの主系列星だけを考えました。
 

   表20  主恒星のスペクトル型と、100倍直径までの移動に要する時間

LASH_FIG20.GIF - 9,084BYTES

 星系内の移動時間の中で「最小」と書かれた欄の数字が、主恒星の100倍直径までの片道移動に要する、最小時間になります。
 スペクトル型がG5の場合は18時間強、K5〜M0の場合は43時間弱も掛かることが明らかになりました。
 往復はこの2倍ですから、36時間強(1日半)〜86時間弱(3日半)の時間が星系内移動に費やされてしまうのです。
 宇宙港で使える時間は、4日半〜2日半しかありません。

 さらに、GURPSにはジャンプマスクというルールがありました。
 このジャンプマスクを避けるためには、最大で、主恒星の100倍直径と同じ距離を移動しなければなりません。
 これが、星系内の移動時間で「最大」と書かれた欄の数字です。
 スペクトル型M9の星系でもほぼ1日、M0ならば2日以上、F5に至っては3日以上の移動時間を必要としてしまうのです。
 往復は2倍ですから、M9でも2日、M0で4日半、F5で6日間になりました。
 宇宙港で使える時間は、M0の星系でも1日半まで減ってしまいましたし、F5以上の星系ならばゼロになってしまうのです

 大問題ですね。



 実は、LASH型商船の運行を想定しているモーラ=フォーニス間航路も、モーラの主恒星スペクトルがM4型、フォーニスの主恒星がM0型です。
 星系内移動時間の問題に直面してしまいました。
 両星系の惑星配置が都合の良い状態であっても、ニ星系間を一往復する間に、最低147時間(=6日間強)の星系内移動時間が必要なのです。
 惑星配置の都合が悪い場合は、181時間(=7日半)が必要になりました。
 都合が良くても悪くても、あまり変わらないようです。

 タグボートやオイラーの往復にそれだけの時間が掛かるのですから、100倍直径を漂うジャンプキャリアは、タグボートの到着を待っていなければなりません。
 タグボートとオイラーの都合に合わせる場合、ニ星系間の一往復には、15日前後の時間が掛かってしまうでしょう。
 すると、年間の往復回数は23回。
 ジャンプ回数は46回に減少してしまいました。
 採算が大きく悪化してしまいます。

 星系内移動に多くの時間を費やしてしまうのですから、タグボートとオイラーの数を2倍に増やしてみたらどうでしょうか。
 それによって、タグボートとオイラーの運行周期を9日から18日に伸ばすのです。
 そうした場合、主要世界と100倍直径との往復時間が9日間まで伸びても、宇宙港での滞在時間を最低6日間、確保することができるようになりました。
 宇宙港で6日間を滞在できるのであれば、貨物の積み替え等に問題は生じなくなると思います。
 若干コストは上昇しますが、この対策で何とかなるでしょう。
 タグボート(+艀)とオイラーを2つの星系に1組ずつ増やした場合の輸送コストを下の表20と表21に示しました。
 星系内の移動時間が1.5週間(1往復=5週間)でも2週間(1往復6週間)でも、LASH型商船の輸送コストは変わりません。



 この問題はLASH型商船に限らず、通常の商船でも直面する問題です。
 非LASH型の商船は、貨物だけを分離することが出来ません。
 それらの商船は長い時間を費やして星系内を移動し、主要世界の軌道宇宙港で貨物の積み下ろしをしたり、燃料補給をしたり、乗組員の休暇を取らせたりしなければなりません。
 トラベラー宇宙における商船運航の基本スタイル、1週間のジャンプと1週間の星系滞在を繰り返すことは、どう考えても不可能になるのです。
 1週間のジャンプと1.5週間の星系滞在を繰り返した場合について、コンテナ船の輸送コストを表20(1往復=5週間)に、1週間のジャンプと2週間の星系滞在を繰り返した場合については表21(1往復=6週間)に併記しておきます。
 


 LASH型商船もコンテナ船も、建造テックレベル13で輸送コストを求めました。
 LASH型商船は、ジャンプキャリアは2隻のままですが、タグボート、艀、オイラーを2隻増やし、両星系で2隻ずつが活動する形になります。

 上記のように述べた事情ですので、コンテナ船の方は、年間ジャンプ回数を20回と16回に減らしました。

   表21 ジャンプマスクによって、艀やコンテナ船の星系内の滞在時間が
       1..5週間に増えた場合の輸送コスト(コンテナ船の1往復=5週間)
       それぞれのジャンプ能力に合わせた、ニ星系間航路を想定。

LASH_FIG21.GIF - 5,304BYTES

   表22 ジャンプマスクによって、艀やコンテナ船の星系内の滞在時間が
       2週間に増えた場合の輸送コスト(コンテナ船の1往復=6週間)
       それぞれのジャンプ能力に合わせた、ニ星系間航路を想定。

LASH_FIG22.GIF - 5,333BYTES

 LASH型商船の優位が、またひとつ明らかになりました。

 星系内における移動時間が1週間近く必要になる場合、LASH型商船はタグボートと艀、オイラーのセットを余分に用意しなければなりません。
 しかし、LASH型商船の中で最も高価な構成要素であるジャンプキャリアは、移動時間の多寡に関わらず、18日間の周期でジャンプを行ない、ニ星系間を往復することができるのです。
 輸送コストの増分は、貨物1千トン当たり0.13〜0.15MCrでした。
 この増分は、余分に用意されたタグボートと艀、オイラーの購入費と維持費です。

 一方、コンテナ船はジャンプドライブも船倉も1つの船体に収められていますから、星系内の移動中はジャンプできません。
 ジャンプ回数は年間25回から20回、そして16回へと減少してしまいます。
 そのため、ジャンプ4航路では採算割れしてしまいました。
 ジャンプ3航路の採算もかなり厳しいでしょう。
 実際問題として、星系内移動時間が1週間必要になった航路では、ジャンプ2以下のコンテナ船でなければ運行できないと思われます。

 ジャンプ3〜4の航路には、連続ジャンプを行なうコンテナ船を運航させるか、またはLASH型商船が必要だと判明しました。





5.5万トン級LASH型商船(TL=12)

 オリジナル設計のLASH型商船です。

 モーラとフォーニス間の航路は、モーラ星域で最も貿易量の大きい航路です。
 つまるところ、スピンワードマーチ宙域内でも最大の貿易量を誇る、ニ星系間航路である訳ですが。
 この航路に就航しているLASH型商船は、帝国有数の運輸会社、テュケラ運輸によって運行されています(と、想定しました)。

 MAG様の投稿「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」を勝手に解釈して、私なりに当てはめてみたところ、モーラとフォーニス間の2パーセク航路には、140隻以上の5万トン級LASH型商船が運行しているという数字が出てきました。
 2週間当たりの寄港数は105便。
 つまり、毎日7〜8隻のLASH型商船が到着しているのです。
 何だか凄い話ですが、このくらい激しい往来がなければ、LASH型商船の運用は困難になってしまうでしょう。
 星系内を移動中、あるいは、宇宙港で荷揚げ/荷積み作業中の艀やタグボート、オイラーの数も、片方の星系に140隻以上が必要です。
 造船所で定期整備を行なっているものも、常に6隻はある筈です。

 ちなみに、ヴィリスとガーダ・ヴィリス間の1パーセク航路に運行しているLASH型商船は、上記の10分の1で14隻になりました。
 2週間当たりの寄港数は10便で、1日1便未満の到着しかありません。



 このLASH型商船テックレベル12(フォーニスの造船所)で建造され、ジャンプ2性能を持っています。
 キャリアも艀も、通常ドライブを装備していません。
 何か事故があった場合には、乗組員は救命艇(大型ボート)で脱出することになるでしょう。

 船体サイズは1万トン。
 4万トンの艀を連結してジャンプすることが可能ですので、その場合の船体サイズは5万トンになります。

 形状は、非流線型の分散構造(コード7)です。
 船体の75%は燃料タンク、15%はドライブ装置、残り10%に居住区画や管制装置を積んでいるという、極端なデザインになりました。
 燃料補給は、専用のオイラーを利用します。
 ガス・ジャイアントや海洋での燃料スクープは行なえませんし、燃料精製装置も備えていません。

 燃料タンクは7,532トンの容積を持ち、2パーセクのジャンプ1回に加え(100倍直径で漂うだけですが)最大8日間の通常航行が可能です。
 ジャンプ終了後は、ジャンプアウトから1日以内にオイラーとドッキングして、燃料補給を受ける段取りになっています。もしもオイラーと合流できなかった場合は、6〜8日間で燃料切れの状態となってしまうでしょう。
 通常のサポート体制が維持されていれば問題にはなりませんが、心配ならば船倉内に予備の燃料を搭載することが可能です。

 武装はありません。
 ほとんどの時間、ジャンプキャリアはジャンプ空間に滞在しているためです。
 通常空間を移動する場合はタグボートと連結していますから、タグボート側の武装を利用できると思います。

 コンピュータはモデル6が6台搭載されています。
 6台のコンピュータがある訳ですが、処理能力の不足を補うため2台1組で機能していますので、予備を含めて3組のコンピュータということになります。

 乗組員の必要人数は55人です。
 基本的に、旅客を乗せることはしませんが、ドッキングする艀内に客室を備えたり、客船をドッキングすれば運べます。

 20トンの大型ボートを4隻、搭載しています。

 船倉スペースは、602トンが用意されています。
 LASH型商船の特性上、通常の貨物を積むことはできません。
 運輸会社の方針に合わせて、高価な貨物を搭載した高加速の輸送艇や、自衛用の戦闘艇が搭載されるようです。

 改造型としては、戦時に備えてバトルライダーや惑星防衛艦を輸送可能としたモデルが存在するようですが、移動先の支援体制が期待できない場合もありますので、あまり実用的ではないでしょう。

Claft Id : 10k_ton Class LASH Jump Carrier from LSP.Ship's
ID code:

Hull:


Power:

Loco:


Commo:

Sensors:



Off:

Def:

Control:




Accom:


Other:



LASH型商船ジャンプキャリア TL=12 MCr=4,941

9,000/22,500 排水素=10,000トン 形状=7分散構造/非流線型
 装甲=40F 重量=67,262トン 総重量=75,513トン

28/56 核融合=2,511Mw 航続=14/42日間

1,350/2,700 ジャンプ=2
通常ドライブ=なし

電波式=星系内距離×3 レーザー式=星系内距離×3

受動EMS=恒星間距離×3  能動EMS=遠軌道距離×3
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並

なし

防御DM =+5  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 19

コンピュータ=モデル6×6(標準型)  パネル=高度適応型(リンク)×50
  追加=大型ホロ・ディスプレイ×8
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック20

乗組員55(艦橋12、機関29、維持1、艦載4、 指揮7、接客1、医学1)
  専用室=31

船倉=602トン  格納庫=120トン(大型ボート20トン×4)
   燃料=7,532トン
  目標サイズ = 大  視認レベル = 中
  量産価格MCr = 3,953




 下記は、オリジナル設計のLASH型商船に連結して輸送される、バージ(無動力艀)です。

 船体サイズは4万トン。
 ジャンプキャリアに連結されている場合は5万トン、タグボートに連結されている場合は4万3千トンになります。

 形状は、非流線型の分散構造です。
 燃料補給は荷揚げ/荷積み作業と同時に、軌道宇宙港で行なうことになります。

 燃料タンクは494トン。ジャンプ空間の滞在時間を含めて、14日間の通常航行が可能です。

 艀にも武装はありません。
 非武装の理由は、ジャンプキャリアと同様です。

 コンピュータは、モデル6が3台搭載されています。

 乗組員の必要人数は25人です。
 旅客輸送用に改造されたものでなければ、旅客は載せません。

 20トンの大型ボートを2隻、搭載しています。

 貨物は37,500トンを積むことができ、さらに89トン分の空きスペースが存在します。
 ほとんどのタイプはこのスペースにも貨物を積み込みますが、予備燃料を積んだり、緊急用二等寝台を載せているタイプもあります。

 改造型としては様々なバルク輸送に特化したもの、液体や気体を輸送するタンカー、多数の二等寝台と医療要員の専用室を搭載した移民輸送型などが存在しています。


Claft Id : 40k_ton Class LASH Barge from LSP.Ship's
ID code:

Hull:


Power:

Loco:


Commo:

Sensors:



Off:

Def:

Control:




Accom:


Other:



LASH型商船艀 TL=12 MCr=2,375

36,000/90,000 排水素=40,000トン 形状=7分散構造/非流線型
 装甲=40F 重量=132,020トン 総重量=639,124トン

441/882 核融合=39,690Mw 航続=14/42日間

ジャンプ=なし
通常ドライブ=なし

電波式=星系内距離×2 レーザー式=星系内距離×2

受動EMS=恒星間距離×2  能動EMS=遠軌道距離×2
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並

なし

防御DM =+5  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 22

コンピュータ=モデル6×3(標準型)  パネル=高度適応型(リンク)×25
  追加=大型ホロ・ディスプレイ×3
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック20

乗組員25(艦橋8、機関9、維持2、艦載2、 指揮3、医学1)
  専用室=14

船倉=37,500トン  格納庫=60トン(大型ボート20トン×2)
   燃料=494トン
  目標サイズ = 大  視認レベル = 強
  量産価格MCr = 1,900





6.3千トン級タグボート(TL=12)

 オリジナル設計の、LASH型商船を支援するためのタグボートです。

 船体サイズは3千トン。
 強力な通常ドライブを装備しているため、4万トンの艀を1G加速で、1万トンのジャンプキャリアを2G加速で輸送することが可能です。
 単独ならば6G加速が可能になります。

 形状は、非流線型の分散構造です。
 燃料スクープは行なえません。

 燃料タンクは870トンで、14日間(兵器を使用しなければ16日間)の通常航行が可能です。
 100倍直径までの往復には、十分過ぎる搭載量でしょう。

 自衛用の武装として、三連架ビーム・レーザー砲塔10基、三連架ミサイル・ラック10基、三連架散乱砂砲塔10基を搭載しました。
 高いコンピュータモデルとの相乗効果で、大抵の海賊船ならば、自力で排除できる筈です。

 コンピュータのモデルは6。
 乗組員の必要人数は、53人です。

 積載艇としては、20トンの大型ボート4隻を搭載しています。
 艀やジャンプキャリアとドッキングする際には、それらの小艇を展開し、ドッキングの補助を行なわせることも有り得るでしょう。

 貨物は61トンを搭載可能ですが、大抵のタグボートではジャンプキャリアの乗組員(往路は休暇を満喫した者達、復路はこれから休暇を楽しもうとする者達)を乗せるための客室に改造されています。

Claft Id : 3k_ton Class LASH Tug Boat
 from LSP.Ship's
ID code:

Hull:


Power:

Loco:



Commo:

Sensors:



Off:



Def:




Control:




Accom:


Other:



LASH型商船対応タグボート TL=12 MCr=3,152

2,700/6,750 排水素=3,000トン 形状=7分散構造/非流線型
 装甲=40F 重量=85,618トン 総重量=87,208トン

777/1,554 核融合=69,903Mw 航続=14/42日間

180/360 通常=1G 移動力=0(4万トンの艀連結時)
                    =2G 移動力=0(1万トンのジャンプキャリア連結時)
                    =6G 移動力=0(単独航行時)

電波式=星系内距離×3 遠軌道距離×3  レーザー式=遠軌道距離×2

受動EMS=恒星間距離×3  能動EMS=遠軌道距離×3
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並

ミサイル = X02  ビーム・レーザー = X03
  砲塔群       10                               10
  射撃可能     9                                 9

防御DM =+6  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 12
  散乱砂砲 = XX4
  砲塔群          10
  射撃可能        9

コンピュータ=モデル6×3(標準型)  パネル=高度適応型(リンク)×60
  追加=大型ホロ・ディスプレイ×6
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック10

乗組員53(艦橋11、エンジニア20、砲術9、艦載4、指揮7、接客1、医学1)
  専用室=30

船倉=61トン  格納庫=120トン(大型ボート20トン×4)
   燃料=870トン
  目標サイズ = 中  視認レベル = 強
  量産価格MCr = 2,522





7.9千トン級オイラー(TL=12)


 LASH型商船は、燃料タンクがほとんど空になった状態で、目的地の100倍直径へ到着します。
 貨物の積み替えは前述のタグボートによって行なわれますが、再度のジャンプに必要な燃料は別の作業船、オイラーから補給してもらわなければなりません。
 掲示板でも少し議論しましたが、燃料補給専用の宇宙船をオイラーと呼んで、区別するようです。

 5万トン級のLASH型商船が2パーセクのジャンプを行なうためには、ジャンプの度に、ジャンプ用燃料7,500トンと、パワープラント用燃料32トンの補給を必要とします。
 この9千トン級オイラーは、その燃料を1隻でまとめて輸送し、商船へ補給する能力を備えているのです。
 GURPS「Far Trader」公式設定のオイラーは800トン級なのですが、小さい船を数多く運用することは明らかに不経済ですので、1隻だけの大型艦に変更しました。
 汎用性など要りません。
 オイラーはLASH型商船への燃料補給に忙しくて、他の用途に利用している暇など
無いのです。



 オイラーの船体サイズは9千トン。
 船体形状は、非流線型の分散構造です。
 軌道宇宙港を利用することが前提ですから、燃料スクープは考えていません。

 燃料タンクは7,707トンの容積を持ち、LASH型商船に7,532トンの燃料補給を行なっても、14日間の通常航行が可能です。

 武装はありません。

 コンピュータのモデルは6。
 乗組員の必要人数は、10人です。

 積載艇には、1G加速の大型ボート1隻があります。

 貨物836トンを運ぶことが可能です。


Claft Id : 9_kt LASH Oiler from LSP Ship's
ID code:

Hull:


Power:

Loco:

Commo:

Sensors:



Off:

Def:

Control:




Accom:


Other:



LASH型商船対応オイラー  TL=12  MCr=861

8,100/20,250  排水素=9,000トン  形状=7分散構造/非流線型
  装甲=40F   重量=37,510トン  総重量=150,806トン

157/314  核融合=14,094Mw  航続=14/42日間

162/324  通常=1G  移動力=0

電波式=星系内距離×2 レーザー式=星系内距離×2

受動EMS=遠恒星間距離×2  能動EMS=遠軌道距離×2
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並 

なし

防御DM =+6  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 18

コンピュータ=モデル6×3(標準型)  パネル=高度適応型(リンク)×10
  追加=大型ホロ・ディスプレイ×1 ヘッドアップ・ディスプレイ×13
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック10

乗組員10(艦橋3、機関4、維持1、艦載1、指揮1)
  専用室=6

船倉=836トン  格納庫=30トン(大型ボート20トン×1)
   燃料=7,707トン
  目標サイズ = 中  視認レベル = 強
  量産価格MCr = 689




2011.02.06 初投稿