The Mineral Resource
in the Traveller space 01
Iron, Base Metal, Precious Metal
トラベラー宇宙の鉱物資源
その1
鉄鋼、ベースメタル、貴金属
TITLELINE30.JPG - 1,269BYTES
  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」について、考察します。

 人類が未知なる世界を探索する際、そのきっかけとなる大きな動機のひとつとして「資源の獲得」が挙げられるでしょう。
 その「資源」とは、宝石や貴金属、石油やレアメタルなどの鉱物資源であったり、 毛皮や象牙、香料(スパイス)といった動植物であったり、はたまた、 その土地そのものやその世界に居住する人間たち(労働力や市場)であったりする訳ですが。
 そうした動機の中で鉱物資源の獲得は比較的、容易に達成できる目標だと言えます。

 当たり前の話ですが、その世界に居住する人間たちを獲得したいのであれば、 その世界に人間が居住していることが必要です。
 その世界に価値ある動植物を求めるのであれば、その世界には大気と水が必要です。

 しかし鉱物資源を目的としているのであれば、その未知なる世界が無人であっても構いません。 その世界が大気を持たない真空世界だったり、水界のない砂漠世界であっても、全く構いません。 どんな世界であっても、そこに固体の惑星(衛星)がある限り、其処に鉱物資源が存在するのです。
 鉱物資源に必ずしも、そうした環境が必要ないという事実は、 資源獲得のハードルを大きく引き下げてくれるでしょう。



 実はこの「ハウス・ルール」は、 「IST02:星系内通商について」の関連で、地方世界の産業基盤を想像するために考えました。

 プレイヤー・キャラクターが地方世界や人口6レベル以下の主要世界(非工業世界)を訪れた際、 その世界の主要産業は高い確率で「鉱業」となっている筈です。
 では、実際にどんな鉱物を掘り出しているのでしょうか?
 その鉱物の生産量(出荷量)は?
 その鉱山で働いている労働者は、何人(人口の何%)くらいなのか?

 この「ハウス・ルール」を用いることで、そうした地方生活をよりリアルに描写できることになるでしょう。



 目次
    ※2.世界の金属消費量
    ※3.鉄(鉄鉱石)の探索と採掘
    ※4.ベースメタルの内訳
       (1)銅の探索と採掘
       (2)亜鉛の探索と採掘
       (3)鉛の探索と採掘
       (4)錫の探索と採掘
    ※5.貴金属の内訳
       (1)銀の探索と採掘
       (2)金の探索と採掘
       (3)小規模鉱床の救済(選択ルール)
       (4)白金族の探索と採掘、その1
       (5)白金族の探索と採掘、その2
    ※6.軽金属の内訳
       (1)アルミの探索と採掘
       (2)トラベラー世界の発電コスト
       (3)マグネシウムの製錬
       (4)チタンの探索と採掘
    ※7.アステロイドの星系内輸送コスト
    ※8.まとめ





2.世界の金属消費量


 人類が鉱物資源の獲得を目指す背景として、まずは、 人類の鉱物資源の消費量から考えてみましょう。

 とは言うものの、鉱物資源の範囲は非常に大きなものとなってしまいます。
 今回の考察では金属資源の消費量に限定しました。


 ここで考察する主要な金属資源は、以下の通りです。


             表1 金属の分類(主要金属)

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 21世紀のテラで消費/生産されている主要な金属資源をリストにまとめました。

 表の一番上を占めている「」は、様々な種類の「鉄鋼:Iron」です。
 57世紀になっても、最も多く利用されている金属は果たして鉄なのか、という疑問を感じるかもしれませんが、 テックレベル10になって実用化される主要な構造材料は「結晶鋼:Crystaliron」です。
 テックレベル12の「超密素材:Superdense」や、 テックレベル14の「結合超密素材:Bonded Superdense」は、 「レフリーズ・コンパニオン」p.27の記述より、 特定の元素や金属を指すのではなく、加工方法を意味していることが分かりました。
 その気になれば、どんな元素(金属)からでも「超密素材」や「結合超密素材」を 作れるのでしょうが、前段階の素材調達や前加工の手軽さから「」が用いられることは必然だと考えます。
 何と言っても「鉄:Iron」は「“圧倒的に”安価」なのですから、 遠い未来になっても、主要な金属資源のトップを「」が占めることは間違いありません。



 2番目は「銅、亜鉛、鉛、錫」のグループが占めています。
 冶金学では、狭義の意味で上記4種の金属を「非鉄金属」と呼ぶとのこと。
 英語では「ベースメタル:Base Metal」という名称が与えられておりました。
 「」に比べれば少ない消費量ですが、それでも、人類社会全体では膨大な量が使用されています。
 その機能(特性)に加え、これらの金属が安価で、その調達が容易であることから、 未来社会においても「ベースメタル」の地位は揺らがないでしょう。



 3番目のグループは「金、銀、白金(プラチナ)、パラジウム他」の「貴金属:Precious Metal」。
 表1へ示した通り、その消費量はささやかなものではありますが、人類が古来から親しんできた金属として、外す訳にはいきません。
 人類は、これらの「貴金属:Precious」を手に入れるため、何度も新世界を開拓してきました。



 4番目が「アルミ、マグネシウム、チタン」から成る「軽金属」でした。
 その軽さに似合わぬ強度故、機械や電子機器に多用される金属です。



 以下に、世界の金属消費量を示します。


            表2 世界の金属消費量(主要金属)

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 このデータは、古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを用いました。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口1千人当たり、100万人当たり、10億人当たりの消費量を求めている訳です。

 トラベラーのデータ(UWP)に換算すると、人口1千人は人口レベル3、100万人は人口レベル6、10億人は人口レベル9に相当しますね。
 表に示されていない人口レベルの世界については、表の数値を10〜100倍、10分の1〜100分の1倍にすることで求めて下さい。
 そして更に人口倍率を用いるのであれば、求めた数値に人口倍率を掛け合わせることで計算できます。

 例えば、人口レベルA、人口倍率2のモーラにおけるの消費量は、 人口レベル9の消費量を(人口レベルが1つ大きいため)10倍し、 その数値に人口倍率の2を掛けることで求められるでしょう。

   141,700,000トン×10倍×2倍=2,834,000,000トン。

 モーラでは、毎年28億トンのが消費されているであろうと推測できました。
 同様に、人口レベル8、人口倍率7のリジャイナでは、

   141,700,000トン×10分の1×7倍=99,190,000トン。

 という計算式で、毎年9,920万トン。
 人口レベル3、人口倍率1のカーカでは、

   142×1倍×1倍=142トン。

 毎年142トン。
 以上のような計算になります。





3.鉄(鉄鉱石)の探索と採掘


 は、地球上でも、テックレベルの低い採掘技術でも簡単に入手できるため、昔から多用されてきました。
 人類社会で生産/消費される金属の95〜98%は「」であり、 その「」は主に鉄鉱石から生産されます。

 鉄鉱石の品位(鉱石に含まれる「鉄:Fe」の重量比)は50〜65%。
 品位50%以上の鉄鉱石は「高品位な鉄鉱石」であり、 先進諸国では「高品位な鉄鉱石」しか用いられません。
 テラに存在する(存在した)鉄鉱石の埋蔵量は、 「高品位な鉄鉱石」に限っても2,000億トンと推測されます。
 テックレベル8の大量生産/消費生活を送っていると、200年で使い尽くしてしまう分量ですね。

 品位35〜45%の「低品位な鉄鉱石」は、(某中華国家を含む)一部の発展途上国で利用されています。
 テラの埋蔵量は1兆トン。
 「高品位な鉄鉱石」を掘り尽くしても、あと400〜500年は大丈夫だと思います。

 長い歴史を持つ高人口世界や工業世界において、その世界の地表に存在する鉄鉱石の鉱脈は、 すでに掘り尽くされている可能性があるのですが、 その必要量があまりにも膨大であることから、恒星間の鉄鉱石輸入は有り得ないと考えました。
 鉄鋼の消費量が28億トン(モーラの消費量)ですから、 1排水素トンに比重7.9の鉄分だけをぎっしり詰め込んでも、2,600万排水素トンが必要です。 鉄鉱石の品位(鉄分の含有量)や荷積みの効率を考えれば、 この数値は2倍〜4倍(5,200万トン〜10,400万トン)になっていることでしょう。
 あまりにも大きすぎますね。
 この輸送量を恒星間の通商路に載せることは困難ですので、鉄鉱石の輸入が行われているとしたら、 それは惑星間や衛星間の星系内通商によるものと思われます。



 鉄鉱石の価格は、「高品位な鉄鉱石」で、 1重量トン当たり0.125cr(1980〜2000年の平均価格)でした。
 何だか途轍もない安さですが、これが相場のようです。
 製品である「鉄鋼」の価格に影響が出かねないので、 原料である「鉄鉱石」の価格を勝手に上げる訳にもいきません。
 私の考察でも、この価格を用いることにします。

 鉄鉱石の比重は5.2〜5.3の範囲ですから、隙間なく詰め込んだとしても、1排水素トン当たり70重量トンが最大でした。
 荷役作業の都合を考えれば、1排水素トン当たり40〜60重量トンになると思われます。
 1排水素トン当たりの価格は5.0〜7.5cr。とても恒星間の運賃(トン当たり1,000cr)を賄える価格ではありません。
 恒星間の投機貿易品には、決して成り得ない品物である、と断言できます。

 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中にはしっかりと、 「鉄鉱石:Ferrous Metal Ore」という品目が明記されているのですけれどね。
 こうした価格の相場を知ってしまうと、トン当たり4,000〜5,000crの定価には、とても納得できません。
 この問題には別の解答を用意してあるのですが、ここでは述べません。先送りしておきます。
 以降、私の考察では、鉄鉱石の重量を 1排水素トン当たり40重量トン、価格は5.0crと定義しました。



 鉄鉱石はあまりにも安価なので、投機貿易品として売買できないことが分かりました。 では、鉄鉱石はどのように売買されるのでしょう?
 製鉄所と鉱山が独自に契約を結び、投機貿易品ではなく船荷として、惑星間や衛星間を輸送されるのです。

 製品としての「鉄鋼」は、 1排水素トン当たり500crと極めて安価な投機貿易品(CT版の貿易品価格)ですから、 当然ながら、原料の輸入コストもそれ以下でなければなりません。
 1排水素トン当たり50crが上限でしょう(これでも、かなり高い見積もりです)。
 製鉄所は、自分で支払う輸送費を考慮しつつ、総合的に最も安価な商社(鉱業会社?)から 鉄鉱石を仕入れることになると思われます。

 もちろん、トン当たり50crという激安の運賃では、 まともな恒星間輸送ではもちろんのこと、多くの星系においては星系内輸送でも元が取れません。
 何かしら特別な輸送方法、アステロイド船体に取り外し可能なドライブを取り付けるとか、 分散構造の宇宙船の船体外部に括りつけて運んでくるなどといった工夫が必要になるでしょう。

 この問題については、小惑星帯やアステロイド・ベルトから、鉄/ニッケル系の微小惑星を運んでくるといった方法も含めて、 ※7.アステロイドの星系内輸送コストで考察しました。



 鉄鉱石の買い手は、世界に存在する製鉄所です。
 その世界に製鉄所が存在するためには最低でも人口レベル4が必要ですが、必ず存在するとは限りません。レフリーの裁量で判断してください。
 1〜3パーセクの距離に製鉄所を備えた世界が存在するのであれば、 その世界は製鉄所を設けるより、輸入する可能性が高いでしょう。 反対に、製鉄所を備えた世界が近くに見つからないのであれば、 製鉄所を建設して自給の道を選ぶかも知れません。
 人口レベルが7以上であれば、その世界には必ず製鉄所が存在します。



 ここで、鉄鉱石の採掘を生業とする鉱山会社を想定してみましょう。
 会社の設立に伴う法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っていると考えます。

 この鉱山会社は、新たな鉱山を開発することにしました。
 そのためには当然のことですが、新たな鉄鉱石の鉱床(鉄鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 鉄鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 この行為判定は、衛星探査簡単な地表探査によって 鉱床の存在がほぼ確実であると判断された地点に対する、 本格的な探索行為を意味しています。
 そうした事前情報もなく、この行為判定を行うことはできません。


 有望な鉄鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表3 鉄鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 鉄鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示した鉄鉱床よりも、もう一桁小さい鉄鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。
 しかし、そういった小規模な鉄鉱床は、捜索に費やした投資を回収できるものではないのです。

 行為判定に適用できるDMの最大値は「+8」ですから、どんなに優秀なプロが探索を行っても、失敗の可能性は半分近く残されています。
 有望な鉱床を見つけるためには、十分な資金と技術、そして幸運が必要となるでしょう。



 探索に成功した場合は、その鉄鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。


          表4 鉄鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 大きな採掘設備ほど年間の維持費が安くなり、小さな採掘設備は維持費が高くなる、というデータを作りました。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。
 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘した鉄鉱石は、すでに述べた通り、1排水素トン当たり40重量トン、価格は5.0crで販売できます。
 しかしながら、この価格に鉱山から製鉄所までの運賃は含まれておりません。
 製鉄所が鉄鉱石を買い取ってくれるかどうかは、その運賃の大小が大きく影響するであろうと思われます。



 参考値ですが、その鉱山で働いている労働者の人数は、採掘設備の維持費÷0.1MCr(切捨て)で求めて下さい。
 100MCrの採掘設備を購入した鉱山は、年間の維持費が10MCrですから、(10MCr÷0.1MCr=)100人の労働者を抱えています。
 従業員が2交代制ならば2倍の200人年中無休ならば400人に増えるでしょう。
 10MCrの設備を購入した鉱山は維持費が1.25MCrですから、 12人25人50人の労働者。
 2MCrの設備を購入した鉱山は、 2人4人8人の労働者となります。

 0.5MCr以下の採掘設備を購入した鉱山は、年間の維持費が0.1MCrに足りませんから、労働者を雇う余裕がありません。
 鉱山主自身やその家族が採掘を行う、家族経営型の鉱山(自営業タイプ?)になるということです。

 この労働者数は、テックレベル9以上の十分な工業化が成された世界を前提とした計算式です。
 テックレベル8の世界においては、労働者数を2倍(維持費が0.05MCrで労働者1人)、テックレベル7は3倍(0.033MCrで1人)、 テックレベル6は4倍(0.025MCrで1人)に増やしてください。
 テックレベル5以下の世界については、検討中。



鉄鉱山のサンプル

 農業世界レックの名士マクダフは、新たな鉄鉱山を開発すると決意しました。
 お金持ちのマクダフは、とある有望な土地での鉄鉱床探索に、100MCrの大金を投資します。
 探索に費やした時間は3ヶ月。
 鉄鉱床の探索を任せたグループはレックで最も優秀なチーム(DM+8)でしたが、無情にもサイコロの目は「4」。 DMを加えても「12」にしかなりませんから、失敗でした。
 予想通りの場所に豊富な鉄鉱床は見つかったのですが、残念ながら地盤の深い場所に隠されており、 レックの科学技術(テックレベル6)では採掘できないことが分かったのです。

 マクダフは諦めません。
 発見した鉄鉱床が東へ向かうほど浅い場所に存在することを知って、採掘できない鉱床の東側で再び、大規模な探索を行わせました。
 探索費用は今回も100MCrで、費やした時間は5ヶ月。
 探索を任せたグループも前回と同じチーム(DM+8)です。
 今回のサイコロの目は「8」。DMを加えて「16」になりましたので、「1千万トン」の鉄鉱床を発見しました。

 マクダフは大喜びで採掘設備を購入します。
 採掘設備の購入費用は2MCr。毎年25万トンの鉄鉱石を採掘できますので、1千万トンを掘り尽くすまで40年掛かるでしょう。
 鉄鉱石の価格はトン当たり5crですから、25万トンの採掘で1.25MCr。経費(維持費0.02MCr)を差し引いて1.23MCrの収益が生じます。 40年を通して上がる収入は49.2MCr。
 これまでの投資、鉄鉱床の探索2回で200MCr(=100MCr×2)と採掘設備の2MCr、合計202MCrを回収するには、とても足りませんね。
 こういう場合、多くの投資家は手を引くのではなく、賭けに勝つまで同額を張り続けるという選択肢を取るでしょう。
 マクダフも、その方法を取ります。

 3回目の探索は、採掘している鉱山のさらに東側。
 今回も100MCrと3ヶ月を費やしましたが、サイコロの目は「6」で失敗
 辿っていた鉱脈は再び地下深くへ潜っており、採掘できる状況ではなかったのです。

 4回目の探索は、採掘している鉱山の南側。
 今回も100MCrを投資して、サイコロの目は「11」。DMを加えて「19」です。大当たりです。
 遂に「10億トン」の大規模鉱床を発見しました。
 今回の探索時間は4ヶ月でしたので、これを見つけるまで14ヶ月が掛かったようです。

 マクダフは再び、大喜びで採掘設備を購入します。
 採掘設備の購入費用は100MCr。維持費は10MCrですからテックレベル6の修正を掛けると、400人の労働者が働く大所帯です。 処理能力は毎年2,500万トンで、毎年115MCr(=125MCr−維持費10MCr)の利益を生み出してくれるでしょう。
 これまでの投資、探索4回分の400MCrと採掘設備の102MCr、合わせて502MCrを回収するまでには、5年の歳月が必要ですが。





4.ベースメタルの内訳


 「ベースメタル:Base Metal」とは、 「銅、亜鉛、鉛、錫」から成るグループのことです。
 日本語では「卑金属」とも呼ぶようですね。

 「貴金属」の対義語として「卑金属」が存在するようです。
 その意味は、一般的で、珍しくもなく、貴重でもない金属
 確かにその通りかも知れませんが、ちょっと泣きたくなりました。

 表2 世界の金属消費量(主要金属)の中から 「ベースメタル」の部分だけを抜き出して、以下に再掲載します。

           表5 世界の金属消費量(ベースメタル)

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 人類社会において、3番目に多く利用されている金属が「銅:Cu」です。
 現代社会では、送電線/回線としての用途に始まり、電子部品モーター建築材料装飾品などに用いられています。
 日本人にとって最も身近にある銅製品は、貨幣でしょうか。
 1円玉を除く貨幣(5円玉〜500円玉)は、そのすべてが銅貨ですので。
 5円玉は、亜鉛が30〜40%添加された黄銅貨10円玉は、亜鉛3〜4%、錫1〜2%が添加された青銅貨
 そして50円玉100円玉は、ニッケル25%の白銅貨500円玉はニッケル20%、亜鉛8%のニッケル黄銅貨なのです。

 5番目の金属が「亜鉛:Zn」。
 銅に添加して銅合金である黄銅(真鍮)を作ることが昔から行われておりますが、 現代における亜鉛の主な用途は、メッキなどによる鉄鋼製品の防蝕(錆び止め)です。
 トタン板、と言えばお分かりでしょうか? その他、医薬品や顔料、乾電池にも使われているとのこと。

 7番目の金属が「鉛:Pb」。
 鉛蓄電池の他、様々な物質に添加することで必要な特性を与えています。

 消費量が少なすぎるので、12番目と低い順位にある金属ですが、表5の最後は「錫:Sn」でした。
 加工の容易さと美しさから装飾品として用いられることが多いようですが、特殊な合金の成分としても重要です。 機械屋の私としては、装飾品よりも合金の方が馴染み深いですね。 「インジウム:In」との合金で作られる透明電極」も、 液晶パネルや太陽電池の製造に欠かせません。
 CT版の貿易品チャートにも掲載されているので、貿易品としては一般的な品物なのでしょう。 その価格はトン当たり9,000cr。重量トンの価格だとするならば、妥当な金額でした。




1.銅の捜索と採掘

 折角ですから、「」の採掘についても、考えてみました。
 手頃な資料がネット上に見つかったためです。

 「」を得るための鉱石には様々な種類のものが存在しますが、 それらをひとつひとつ区別することは面倒なので、架空の「銅鉱石」を設定しました。



 を採掘するための手順も、の場合とほぼ同様です。

 「銅鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(銅鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 銅鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な銅鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される銅鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



           表6 銅鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 上記の埋蔵量は、「銅鉱石」の埋蔵量であって、 「」そのものの埋蔵量ではありません。御注意下さい。

 埋蔵量の単位には、鉄鉱石と同じように排水素トンを用いましたが、ちょっと悩んでいます。
 古代テラにおけるの取り扱い単位は、当然のように重量トンでした。
 見つけた資料も「銅鉱石」や「銅精鉱」、 「銅地金」を重量トンで取り扱っています。
 ちなみに、純度99.99%以上まで精錬された銅地金の価格は、 重量トン当たり2,000〜3,000ドルでした。
 それに対して、CT版の貿易品価格では、排水素トン当たり2,000crです。

 CT版のルールは基本的に重量トン排水素トンを区別していません。
 MT版のルールに合わせるのであれば、その両者をきちんと区別しなければならないでしょう。
 しかし、1排水素トン=13.5キロリットルで、の密度8.94を考慮すれば、 最大で1排水素トン=120重量トン、価格240,000crという超高額商品になってしまうでしょう。
 これはこれで、貿易ルールの根底を揺るがしかねない高価格ですから、私は玉虫色の解答へ逃げさせて頂きました。

 鉄鉱石の場合では問題が表面化しなかったため 重量トン排水素トンを区別していましたが、 これ以降の考察において、私は重量トン排水素トンを同一のものとして扱います。 これに不満を抱かれる方は、各自の責任で両者を区別して下さい。
 区別するための指針だけは示しておきます。



 今度は、「銅鉱石」の品位(銅含有量)が気になってきますね。
 一般的な銅鉱石の品位は、0.2〜2.0%ですが、古い資料を見ると0.5〜2.0%。 最近は、低品位の銅鉱石採掘が盛んになってきたということですが。 銅資源の枯渇を実感させてくれました。
 とりあえず、ここでは平均値として、1.0%の数値を用いておきましょう。

 こうした「銅鉱石」が売買されることは滅多にありません。
 売買されるためには、あまりにも品位が少なすぎるのです。



 この「銅鉱石」を、浮遊選鉱によって、品位を20〜40%まで高めます。
 浮遊選鉱という方法は、鉱石を細かく砕いて水の中へ放り込み、 大量の気泡で砂礫(石英)銅鉱石を分別するというものです。
 水に浮いている部分はの品位が高いので、その部分だけを回収し、 水分を除去して(乾燥させて)、「銅精鉱」が出来上がりました。
 「銅精鉱」の品位としては、平均値の30%を用いることにします。



 以下の採掘設備は、鉄鉱床と同等の採掘設備に、浮遊選鉱のための設備を加えた購入費と維持費です。


           表7 銅鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は銅鉱石の分量。 処理される「銅鉱石」の30分の1が「銅精鉱」となり、 残り30分の29は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、年間で83.3トンの「銅精鉱」を生産できることになりました。
 廃棄される「捨石」の量は2,416.7トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床の場合と同じルールを用いて下さい。



 「銅精鉱」の品位は30%にしました。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トン、価格は200crです。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「銅精鉱」は1排水素トン=30重量トンで、 価格が6,000crとなるでしょう。



 ここから先は鉱山ではなく、精錬所の話になります。
 資料が見つかれば精錬所のルールも作りたいところですが、現時点では保留。

 精錬所では、まず「銅精鉱」の熔錬と製銅を行います。
 「銅精鉱」を加熱して「」成分を取り出す訳です。
 この熔錬/製銅行程に必要なコストは、「銅精鉱」1トン当たり90cr。
 仮に「銅精鉱」83.3トンを熔錬/製銅するのであれば、7,500crが必要になるでしょう。

 取り出された「」の品位(純度)は98.5〜99.0%で「粗銅」と呼ばれます。
 品位から逆算すると、「銅精鉱」1トンから「粗銅」0.3トンが得られる訳ですね。 「銅精鉱」83.3トンであれば「粗銅」25.0トンになります。

 しかし、まだこの品位(純度)では商品になりません。
 更に品位(純度)を高めるため、今度は電気精錬を行います。
 そうすることによって、ようやく品位(純度)99.99%以上の「銅地金」が得られるのです。

 電気精錬のコストは「粗銅」1トン当たり200cr。
 「粗銅」25.0トンならば、そのコストは5,000crになりました。
 面倒なので、重量の変化は無視してください。

 こうして、精錬所は「銅精鉱」83.3トン(16,660cr)を購入して、 「銅地金」25.0トン(売値50,000cr)を精錬することができました。
 精錬に掛かった費用は、12,500cr(=7,500+5,000)。 何と、銅地金は、価格の4分の1が精錬費用であると判明しています。
 自然銅を見つけることなど滅多にありませんから、それが現実なのでしょう。




2.亜鉛の捜索と採掘

 人類が消費している金属の中で、5番目の地位を占める金属が「亜鉛:Zn」です。
 主な用途は、メッキなどによる鉄鋼製品の防蝕(錆び止め)で、消費量の60%。
 亜鉛メッキとは、所謂トタンです。毒性があるので食器類には使えませんが、安価で、傷ついても錆びないメリットがあります。
 次が、銅やアルミとの合金(黄銅や青銅)にしての消費が15%。
 成形の容易さから、特殊な形状の部品を安価に作れるダイカスト製品としての消費が10%、酸化亜鉛等の医薬品用が10%でした。
 顔料や乾電池などの用途は、残りの5%だけとなります。

 「亜鉛」は基本的に、「閃亜鉛鉱:sphalerite」から取り出されます。
 他にも数種類の鉱石が存在しますが、古代テラで生産される「亜鉛」の大半は 「閃亜鉛鉱」から製錬されているということですので、ここではこれだけを用いましょう。
 便宜的に、鉱山から掘り出される鉱石を「亜鉛鉱石」と呼んでおきます。



 「亜鉛鉱石」を採掘するためには、新たな亜鉛鉱床を見つけ出さなければなりません。
 亜鉛鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な亜鉛鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される亜鉛鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表8 亜鉛鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig08.gif - 6.053KB

 上記の埋蔵量は、「亜鉛鉱石」の埋蔵量です。
 埋蔵量の単位には、鉄鉱石と同じように排水素トンを用いました。



 「亜鉛鉱石」の品位は、平均で2%程です。
 実際はもう少し高いのですが、採掘の手間を加味して2%にしておきました。

 こうした「亜鉛鉱石」も一般的には売買されません。
 例によって、品位が少なすぎるためです。



 この「亜鉛鉱石」も浮遊選鉱によって、その品位を50%まで高められます。
 品位が50%になった「亜鉛鉱石」を、ここでは「亜鉛精鉱」と呼ぶことにしました。

 以下の採掘設備は銅鉱床と同等で、採掘設備と選鉱設備を合わせた購入費と維持費です。


          表9 亜鉛鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig09.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は亜鉛鉱石の分量。 処理される「亜鉛鉱石」の25分の1が「亜鉛精鉱」となり、 残り25分の24は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、年間で100トンの「亜鉛精鉱」を生産でき、 廃棄される「捨石」の量は2,400トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「亜鉛精鉱」の品位は50%です。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしておきますが、その場合、価格は200crになります。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「亜鉛精鉱」は1排水素トン=30重量トンで、 価格が6,000crとなるでしょう。



 再び、精錬所の話です。

 精錬所では「亜鉛精鉱」を製錬して、 「亜鉛」を取り出します。
 この製錬に必要なコストは、「亜鉛精鉱」1トン当たり200cr。
 仮に「亜鉛精鉱」100トンを製錬するのであれば、20,000crが必要です。

 取り出される「亜鉛」は品位99.99%以上の「亜鉛地金」になりますが、 その量は、「亜鉛精鉱」の品位が50%ですから、「亜鉛精鉱」の半分。
 「亜鉛地金」1トンを得るためには、「亜鉛精鉱」2トンが必要になります。
 「亜鉛精鉱」2トンの仕入れ値が400cr、製錬コストが2トン分で400crですから、 「亜鉛地金」1トンを得るためのコストは合計で800crになりました。

 「亜鉛地金」の取引価格は、1トン当たり1,000crです。
 製錬所は、「亜鉛精鉱」100トン(20,000cr)を購入して、 「亜鉛地金」50トン(売値50,000cr)を精錬することができました。
 製錬コストは20,000crですから、製錬所の利益は10,000crになるでしょう。




3.鉛の捜索と採掘

 「鉛:Pb」の消費量は、人類が消費する金属の中で7番目となります。
 主な用途は蓄電池で、消費量が全体の80〜90%。
 残りは薬品や電子機器用のハンダですが、最近は鉛害を嫌って、それらの消費量が減りつつあるとのこと。

 また、「」のリサイクル率は高くなっています。
 消費される「」の50〜60%は回収され、再び「鉛地金」として流通していました。
 鉱山から採掘され、製錬される「」の生産量は実質的に、 表5 世界の金属消費量(ベースメタル)で示した値の40〜50%しかないと思われます。

 「」は様々な鉱石から取り出すことが可能ですが、 最も生産量の多い鉱石は「方鉛鉱:galena」と呼ばれるものです。
 ここでは、これだけを用いることにしました。
 便宜的に、鉱山から掘り出される鉱石を「鉛鉱石」と呼んでおきます。



 「鉛鉱石」を採掘するためには、新たな鉛鉱床を見つけ出さなければなりません。
 鉛鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な鉛鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉛鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表10 鉛鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig10.gif - 5.97KB

 上記の埋蔵量は、「鉛鉱石」の埋蔵量です。
 埋蔵量の単位には、鉄鉱石と同じように排水素トンを用いました。



 「鉛鉱石」の品位は、平均で1.5%程です。
 実際はもう少し高いのですが、今回も採掘の手間を加味して1.5%にしておきました。

 採掘されたままの「鉛鉱石」は、売買できません。
 売買するためには選鉱によって、品位を高める必要があるのです。

 選鉱によって、品位が60%まで高められた「鉛鉱石」を、 ここでは「鉛精鉱」と呼ぶことにしました。
 以下の採掘設備は銅鉱床と同等で、採掘設備と選鉱設備を合わせた購入費と維持費です。


          表11 鉛鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig11.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は鉛鉱石の分量。 処理される「鉛鉱石」の40分の1が「鉛精鉱」となり、 残り40分の39は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、年間で62.5トンの「鉛精鉱」を生産でき、 廃棄される「捨石」の量は2,437.5トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「鉛精鉱」の品位は60%です。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしておきますが、その場合、価格は300crになりました。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「鉛精鉱」は1排水素トン=60重量トンで、 価格が18,000crとなるでしょう。



 精錬所の話です。

 精錬所では「鉛精鉱」を製錬して、 「」を取り出します。
 この製錬に必要なコストは、「鉛精鉱」1トン当たり24cr。
 予想外な低価格でした。製錬が容易だからこそ、昔から利用されている金属なのでしょうね。 仮に「鉛精鉱」62.5トンを製錬するのであれば、1,500crが必要です。

 取り出される「」は品位98〜99%の「鉛地金」になります。 これも意外な発見でしたが、「鉛地金」はそれほど高い品位を要求されていませんでした。
 そして「鉛精鉱」の品位が60%ですから、 得られる「鉛地金」の量は「鉛精鉱」の60%。 「鉛地金」1トンを得るためには、「鉛精鉱」1.67トンが必要になります。
 「鉛精鉱」1.67トンの仕入れ値が500cr、製錬コストが1.67トン分で40crでしたから、 「鉛地金」1トンを得るためのコストは合計で540crになりました。

 「鉛地金」の取引価格は、1トン当たり600crです。
 製錬所は、「鉛精鉱」62.5トン(18,750cr)を購入して、 「鉛地金」37.5トン(売値22,500cr)を精錬することができました。
 製錬コストは1,500crですから、製錬所の利益は2,250crになるでしょう。

 「」の製錬は、あまり儲かりません。




4.錫の捜索と採掘

 「錫:Sn」の消費量は、人類が消費する金属の中で12番目となります。
 主な用途は銅合金で、青銅や白銅が作られます。消費量は全体の50%前後。
 次点がハンダで、消費量は40%。
 残りがメッキ(ブリキ)になりますが、高価な上に傷が付くとそこから簡単に錆びてしまうため、 装飾品用はアルミ・メッキで、安価な製品は亜鉛メッキで代替されつつあります。

 「」は「錫石:cassiterite」と呼ばれる鉱石から取り出されますが、 便宜的に、鉱山から掘り出される鉱石を「錫鉱石」と呼ぶことにしました。



 「錫鉱石」を採掘するためには、新たな錫鉱床を見つけ出さなければなりません。
 錫鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な錫鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される錫鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表12 錫鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig12.gif - 6.02KB

 上記の埋蔵量は、「錫鉱石」の埋蔵量です。
 埋蔵量の単位には、鉄鉱石と同じように排水素トンを用いました。



 「錫鉱石」の品位はベースメタルの中では最も低く、平均で0.1%です。
 実際は1.5〜5.0%という話ですが、採掘の手間を加味して0.1%にしておきました。

 採掘されたままの「錫鉱石」は、品位が低すぎて売買できません。
 選鉱によって、品位を高める必要があります。

 選鉱によって、品位が4%になった「錫鉱石」を、 ここでは「錫精鉱」と呼びます。
 以下の採掘設備は銅鉱床と同等で、採掘設備と選鉱設備を合わせた購入費と維持費です。


          表13 錫鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig13.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は鉛鉱石の分量。 処理される「錫鉱石」の40分の1が「錫精鉱」となり、 残り40分の39は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、年間で62.5トンの「錫精鉱」を生産でき、 廃棄される「捨石」の量は2,437.5トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「錫精鉱」の品位は4%です。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしておきますが、今回も価格は300crになりました。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「錫精鉱」は1排水素トン=30重量トンで、 価格が9,000crとなるでしょう。



 精錬所の話です。

 精錬所では「錫精鉱」を製錬して、 「」を取り出します。
 この製錬に必要なコストは、「錫精鉱」1トン当たり24cr。
 「亜鉛」と同レベルの安さでした。 仮に「錫精鉱」62.5トンを製錬するのであれば、1,500crが必要です。
 取り出される「」は、品位98〜99%の「粗錫」になりました。
 そして、「錫精鉱」の品位が4%ですから、 得られる「粗錫」の量は「錫精鉱」の25分の1。
 「粗錫」1トンを得るためには、「錫精鉱」25トンが必要になった訳です。

 「粗錫」を更に電気製錬して、品位を高めます。
 電気製錬のコストは、「粗錫」1トン当たり200cr。 面倒なので、重量の変化は無視して下さい。
 こうして、純度99.99%以上の「錫地金」が得られます。

 「錫精鉱」25トンの仕入れ値が7,500cr、製錬コストが25トン分で600crで、 電気製錬のコストが200crですから、 「錫地金」1トンを得るためのコストは合計で8,300crになりました。

 「錫地金」の取引価格は、1トン当たり9,000crです。
 製錬所は、「錫精鉱」62.5トン(18,750cr)を購入して、 「錫地金」2.5トン(売値22,500cr)を精錬することができました。
 製錬コストは2,000cr(=製錬1,500cr+電気精錬500cr)ですから、製錬所の利益は1,750crになるでしょう。

 「」の製錬も、あまり儲かりません。



 以上、「銅、亜鉛、鉛、錫」から成る 「ベースメタル」の採掘について考察しました。 明らかになったことは、ベースメタルの鉱石が極めて安価であることです。

 鉄鉱石の価格は、1排水素トン当たり5.0Crでした。
 「ベースメタル」の場合、選鉱によって品位を高めることが不可欠でしたが、 選鉱された後でも「銅精鉱」は1排水素トン当たり200cr、 「亜鉛精鉱」も同じく200cr、 「鉛精鉱」と「錫精鉱」は300crなのです。

 この価格では、やはり恒星間の投機貿易品には、決して成り得ません。
 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中には明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」には該当しないようです。
 惑星間の輸送コストを賄うこともできませんから、惑星間の貿易品にも成り得ません。 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得るでしょう。



 「地金」の形を取った「ベースメタル」は、 ようやく貿易品としての価格に近づいてきました。
 「銅地金」は1排水素トン当たり2,000cr、 「亜鉛地金」は1,000cr、「鉛地金」は600cr、 「錫地金」は9,000crになるのです。
 この価格ならば、「鉛地金」の600crには不満も残りますが、恒星間の貿易品として成り得ない価格でもないでしょう。

 「ベースメタル」は、「地金」の形まで製錬されない限り、 恒星間や惑星間の貿易品に成り得ないということです。



 ですから、「ベースメタル」の「精鉱」を生産する鉱山は、 同じ世界(あるいは、同じ惑星系内の衛星)に製錬所が存在しない限り、経営が成り立ちません。
 安価な「精鉱」を星系外や星系内の他の惑星へ輸出しようと考えても、その運賃を支払うことができないためです。

 製錬所の存在しない世界に「ベースメタル」の鉱山を作る場合、 鉱山主は同じ場所に製錬所を建てる必要があります。
 そうして「地金」に変えた「ベースメタル」を輸出するのでない限り、 安定した経営は期待できないことでしょう。





5.貴金属の内訳


 「貴金属:Metal」とは、 「銀、金、白金属」から成るグループのことです。
 「白金族」の中身は、「プラチナ(白金:Pt)」に始まり、 「パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)」、 合計6種類の元素からなっていました。
 これらについての需要は、説明する必要もないでしょう。



 表2 世界の金属消費量(主要金属)の中から 「貴金属」の部分だけを抜き出して、以下に再掲載しました。

            表14 世界の金属消費量(貴金属)

MRT01_Fig14.gif - 8.16KB

 消費量があまりにも少ないので、人口1千人当たりと100万人当たりの欄は、小数点以下第3位まで掲載しました。
 それでも人口1千人当たりは数字が出てきませんが、それだけ消費量=生産量が少ない金属だということです。

 特に「白金族」は消費量が少ないため、人口10億以上の高人口世界でなければ、 「プラチナ(白金)」と「パラジウム」は、トン単位の売買が可能だとは思えません。
 人口100万程度の非工業世界であれば、キログラム単位の買い手しか見つからないでしょう。

 上記以外の「白金族」、「ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム」は、 人口10億以上の高人口世界でなければ買い手が見つかりません。
 そして売買できる量も精々100キログラム程度でしょう。

 以下に「貴金属」の詳細を述べます。



 「銀(Ag)」の主な用途は、電気回路や触媒、殺菌作用を活かした衛生器具、装飾品などです。
 人口10億人当たりの消費量は、約3,000トン。
 CT版の貿易品ルールにも掲載されていましたので、トラベラー宇宙においても一般的な貿易品となっているのでしょう。
 価格は、排水素トン当たりで7,000crでした。



 「金(Au)」の主な用途は、電子機器の配線や基盤部分で、消費量の60%が充てられています。
 次に多い用途が装飾品で消費量は15%、歯科・医療用とメッキ用が合わせて15%、残り10%の消費は良く分かりませんでした。
 人口10億人当たりの消費量は、約425トン。
 色々と思うところがあって、「」の価格は1グラム当たり10cr、1トン当たり10MCrにしました。



 「パラジウム(Pd)」の主な用途は、金・銀・パラジウム合金として歯の治療用と、排気ガス浄化用の触媒です。
 内燃機関から排出される、一酸化炭素や燃え残りの炭化水素、窒素酸化物などは、 「パラジウム(Pd)」の表面で容易に、二酸化炭素と水、窒素に分解されてしまうのです。
 トラベラー世界においては、閉鎖空間(都市や宇宙船)の大気浄化システムに不可欠な元素として、大量に利用されていることでしょう。
 水素吸蔵合金としての利用価値もあるそうですが、トラベラー世界の水素は「液体水素」として利用されているので、 その可能性は否定的。
 人口10億人当たりの消費量は、約29トンでした。
 価格はトン当たり20MCr。



 「白金(Pt)」も「パラジウム(Pd)」と同じように、排気ガス浄化用の触媒が主用途です。
 装飾品としての使用も多いでしょう。
 特殊な電子回路にも利用されていました。
 人口10億人当たりの消費量は、約26トンです。
 価格はトン当たり15MCr。



 「ルテニウム(Ru)」。
 電子回路の接点、リードスイッチ、装飾品などに用いられます。
 テックレベル8の文明において、コンピュータの記憶装置(ハードディスク)の記憶容量(磁気密度)を高めるため、不可欠な元素であるとのこと。
 ただし、この金属の消費量は人口10億人当たりでも、わずか6トンです。
 コンピュータに不可欠な元素ではあるのですが、大きな需要がある訳ではありません。
 価格はトン当たり3MCr。


 「ロジウム(Rh)」。
 あまり聞かない元素名ですが、「白金」の装飾品を作る際に添加される元素だそうです。
 この金属の消費量は、人口10億人当たり4.77トン。
 価格はトン当たり50MCr。



 「イリジウム(Ir)」。
 トラベラー世界において、皇帝陛下がお掛けになる玉座は「イリジウム」製だそうです。
 某メガ・コーポレーションの発行している最上級のクレジット・カードは「イリジウム・カード」だそうですから、 「白金(プラチナ)」よりも1ランク上、といった雰囲気で扱われる貴金属なのでしょう。
 「王水」にも溶かされない耐蝕性を持ち、耐摩耗性に優れた金属ですので、 「オスミウム」との合金として、万年筆のペン先や特殊なベアリングに用いられます。
 この金属の消費量は、さらに少なくなって人口10億人当たり0.769トンでした。
 帝国は、超新星の残骸から「イリジウム」を採掘しているのでしょうか?
 価格はトン当たり15MCr。



 「オスミウム(Os)
 上で述べた「イリジウム」と同じような特性を持ち、同じ分野で利用されています。
 この金属の消費量は、人口10億人当たり0.615トン。
 価格はトン当たり15MCr。




1.銀の探索と採掘

 「」の採掘に関するルールです。

 「」を得るための鉱石には様々な種類のものが存在しますが、 やはり面倒なので、架空の「銀鉱石」を設定しました。



 を採掘する手順も、の手順とほぼ同様です。

 「銀鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(銀鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 銀鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な銀鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される銀鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表15 銀鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig15.gif - 6.01KB

 上記の埋蔵量は、「銀鉱石」の埋蔵量です。
 「銀鉱石」の品位(鉱石中の銀含有量)は、鉱石1トン当たり100グラムを想定しました。

 CT版の貿易品ルールにおいて「」は、 排水素トン当たり70,000crの商品として扱われています。
 今回も公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしました。
 「」1キログラムの価格は70crで、 鉱石1トンに含まれる「」100グラムの価格は7crになる訳です。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、 「」は密度10.5より、1排水素トン当たり100重量トン。 価格は7MCrになるでしょう。
 荷役のために、少し隙間を空けてあります。



 「銀鉱石」は品位が低いため、「銀鉱石」の形で取引されません。
 採掘された「銀鉱石」は、その場で選鉱と精錬の過程を経て、 純度99.99%以上の「銀地金」として取引されます。



 以下の採掘設備は、銅鉱床と同等の採掘設備に、選鉱と精錬のため、 更に高度な設備を追加しました。


         表16 銀鉱床の採掘と精錬(設備投資と維持費)

MRT01_Fig16.gif - 6.02KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は銀鉱石の量ですが、 処理される「銀鉱石」10,000トンで、ようやく1トンの「」を得ることができます。
 「捨石」の廃棄量は、9,999トン。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床の場合と同じルールを用いて下さい。

 精錬された「銀地金」は、1排水素トン当たり70,000crで取引されます。




2.金の探索と採掘

 今度は「」の採掘に関するルールです。

 を採掘する手順も同様ですが、の存在自体が珍しいこと、 金鉱石の探索と採掘が難しいことから、その双方でコストが大幅に上がってしまいました。

 まともな金鉱(金山)経営だけではなく、 ゴールド・ラッシュを再現できるようなルールもデザインしたいと考えておりますが、今回は見送りました。



 「」を採掘するためには、新たな鉱床(金鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 以下の行為判定を行って下さい。

 有望な金鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が100MCrの場合はDM+1、10MCrの場合はDM+2、
   1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される銀鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表17 金鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig17.gif - 5.98KB

 上記の埋蔵量は、「金鉱石」の埋蔵量です。
 「金鉱石」の品位は、鉱石1トン当たり5グラム(5ppm)にしました。

 残念ながら、CT版の貿易品ルールに「」は登場しておりません。
 しかし「MT版:ハード・タイムズ」のp.50には、「金貨」の価値が掲載されております。
 その情報によれば、「30グラムの金貨の価値は300クレジットに相当する。」とのこと。
 この「金貨」は本当に「純金製(24K)」なのか、疑問が無い訳でもないのですが、 とりあえず他に手頃な目安もないので、「」1グラムは10クレジットを用いることにしました。
 「」1トン(排水素トン)は、10MCrになります。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、 「」の密度19.3より、1排水素トン当たり200重量トン。 価格は2,000MCrということになるでしょう。
 ……しかし、こんな高価な貿易品を、排水素トン単位で売買できるものなのでしょうか?



 「金鉱石」は更に品位が低いため、選鉱と精錬の過程を経て、 純度99.99%以上の「金地金」になってから、取引が行われます。

 の探索費用は一般的な鉱物の10倍に設定しましたが、採掘設備はさらに高価です。
 金鉱石鉄鉱石などと比べて地下深くに存在し、採掘が困難であること。 また、品位が低くて選鉱と精錬に手間が掛かることから、鉄鉱石と比べて 採掘/精錬設備は購入費が10倍、維持費が50倍になりました。
 働く労働者の人数も比例して増えるでしょう。

 採掘/精錬設備の具体的な数値は、以下の通り。


         表18 金鉱床の採掘と精錬(設備投資と維持費)

MRT01_Fig18.gif - 6.12KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は金鉱石の量ですが、 20万トンの「金鉱石」を処理しても、1トンの「」を得ることしかできません。
 結構、大変です。
 ちなみに、「捨石」の廃棄量は、199,999トン。
 環境破壊が物凄いことになりそうですね。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。

 「金地金」は、1排水素トン=1重量トン当たり10MCrで取引されます。



 余談ですが、「」は「」を精錬する際の副産物として得られることもあります。
 例えば「銅精鉱」の中には、「」を1トン当たり2グラム含んでいるものがありました。 これらの「」は精錬の過程で不純物として取り出されるため、余計な経費が掛かりません。
 前述した精錬所、「銅精鉱」83.3トンを購入して、「銅地金」25.0トンを精錬する精錬所は、 精錬の副産物として「」166.7グラム(1,667cr)を得ることができるでしょう。
 「銅地金」を売却した本業の利益(20,900cr)に比べれば微々たるものですが。

 精錬の副産物として「」が得られるかどうかについては、レフリーの裁量で判断してください。




3.小規模鉱床の救済(選択ルール)

 幾度か試して頂ければすぐに分かることだと思いますが、私の作ったハウス・ルールは、 鉱床の探索費用に最大の100MCr(白金族だけは1,000MCr)を投資して、 〈試掘〉技能と教育度のDMが「+7以上」でない限り、黒字経営を実現することができません。
 規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」をDMとして追加しているため、技能レベルと教育度の低さはカバーできるようになりましたが、 経営規模の小ささ(小規模資本の不利)を覆せるほどの効果はありません。
 参考にした資料が大規模な鉱山のデータばかりですので仕方ないとは思いますが、もう少し、小規模な鉱山経営にも希望を持たせるため、 救済ルール(選択ルール)も掲載しておきます。



 銀鉱床金鉱床の探査に成功した際、 その鉱床で採掘できる鉱石の品位を決定するため、以下の表でサイコロ(1D)を振って下さい。
 規模の小さな鉱床ほど、品位が高くなる可能性があります。


           表19 銀鉱床と金鉱床の品位決定表

MRT01_Fig19.gif - 9.73KB

 鉱床の規模とサイコロの目が交差した部分の数値が鉱石の品位(鉱石1トンに含まれるグラム数)です。
 数字は2つありますが、上側の水色の数値銀鉱石の品位、 下側の黄色の数値金鉱石の品位です。

 この数値を使って、小規模な銀鉱床金鉱床の経営を改善して下さい。




4.白金族の探索と採掘、その1

 最後は「白金族」の採掘に関するルールです。

 白金族は、その存在自体が稀であり、探索と採掘が難しいことから、 と同じような形で、高コスト構造となっています。



 「白金族」を採掘するためには、新たな鉱床(白金族鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 以下の行為判定を行って下さい。

 有望な白金族鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が100MCrの場合はDM+1、10Crの場合はDM+2、
   1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される銀鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表20 白金族鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig20.gif - 6.13KB

 上記の埋蔵量は、「パラジウム」、「プラチナ(白金)」、 「ロジウム」、3種類の「白金族を豊富に含んだ鉱石」の埋蔵量です。
 この「鉱石」の品位については後述。

 色々と調べた結果、「パラジウム」の価格は1グラム20cr、 「プラチナ(白金)」は1グラム15cr、「ロジウム」は1グラム50crに決めました。
 トン当たりの価格はそれぞれ20MCr、15MCr、50MCrになりますが、 そもそも絶対的な取引量が少ないこれらの貴金属を、トン単位で取引することは有り得ないでしょう。



 「白金族」の採掘と精錬に用いられる設備は、以下の通りです。


        表21 白金族鉱床の採掘と精錬(設備投資と維持費)

MRT01_Fig21.gif - 6.12KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 肝心な要素である「白金族」の品位は、以下の表でサイコロ(1D6)を振って決めて下さい。
 


              表22 白金族鉱床の品位決定表

MRT01_Fig22.gif - 4.96KB

 「パラジウム、プラチナ(白金)、ロジウム」、それぞれの品位(鉱石1トン当たりの含有量)を示しました。

 はっきり言って、「白金族」の採掘は儲かります。
 鉱石1トン当たりの収入は、「」を採掘する場合の2倍〜4倍になりました。
 これだけ大儲けが確実な鉱山ですので、レフリーは、白金族の鉱床が簡単に発見されないようにして下さい。



白金族鉱山のサンプル

 例えば、10億トンの「白金族」鉱床についてサイコロを1つ振り「5」の目が出たとします。
 鉱石中1トン中の品位は、「パラジウム」6グラム、「プラチナ(白金)」2グラム、 「ロジウム」1グラムになりました。
 この鉱山は年間25,000,000トンの鉱石を処理できる採掘設備を購入しましたので、製錬される「白金族」の量は、 年間で「パラジウム」150トン、「プラチナ(白金)」50トン、 「ロジウム」25トンになります。
 この鉱山から採掘される「白金族」だけで、人口20〜60億人分の需要を満たせます。
 鉱床が枯渇するまでの40年、新たな鉱床を探す必要もないくらいです。

 とある地方世界に、上記に「白金族」鉱山が置かれていると想定しました。
 この鉱山で働く労働者の人数は5,000人(=維持費500MCr÷0.1MCr)。 労働者の家族や、彼らの生活を支える民間人も含めれば数万の人口が居住していることになると思われます。

 この鉱山の生産量を金額に直してみると、年間で5,000MCrでした。
 高価な貴金属を採掘している鉱山ですから、その防衛体制も盤石です。
 鉱山の敷地内には1個大隊規模(兵員数500人)の私設軍隊が常駐しており(維持費は年間5MCr)、 その上空に小型護衛艦4隻の戦隊(維持費は年間120Mcr)が張り付いています。
 貴金属地金の輸送にも、警備のための出費を惜しむべきではないでしょう。




5.白金族の探索と採掘、その2

 残り3つの「白金族」、 「ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)」は、 それらの元素だけを目的として採掘されることが有り得ません。
 その理由は、需要が少なく安いから(ルテニウム)と、 鉱石中の品位が少な過ぎるから(イリジウム、オスミウム)です。



 「ルテニウム」の価格は、1グラム当たり3cr。
 ベースメタルや銀に比べれば十分に貴金属らしい価格ですが、鉱石1トン中に1グラム程度の品位では採算が合いません。
 確実に赤字となってしまいます。
 幸いなことに、「ルテニウム」は「ロジウム」と一緒に存在することが多いので、 採掘と選鉱費用の大半を「ロジウム」へ押し付けることが可能でした。

 ルール上、「ルテニウム」は「ロジウム」と一緒に採掘される、とします。
 レフリーが認めるのであれば、 「ロジウム」と同量の「ルテニウム」が採掘されていることにしてください。
 上記の例では、「ロジウム」の採掘量が年間25トン(1,250MCr相当)ですから、 「ルテニウム」の採掘量も年間25トン(75MCr相当)になる訳です。



 「イリジウム」の価格は、1グラム当たり15cr。
 「オスミウム」の価格も、1グラム当たり15crでした。
 この2つの元素は表22 白金族鉱床の品位決定表で「1」が出た時のみ、 鉱石1トン中0.5グラム(0.5ppm)で採掘できるものとしました。
 「イリジウム」と「オスミウム」を合わせて0.5グラムです。
 鉱石25,000,000トンを処理して、ようやく12.5トンが得られるでしょう。価格に直すと187.5MCr分でした。
 量が少なすぎるので、この2つだけでは採掘設備の維持費も捻出できないのです。



 以上、「銀、金、白金族」から成る「貴金属」の採掘について考察しました。

 貴金属の鉱石はその品位が低すぎるため、 鉱石の形で輸送することは不経済だと分かりました。
 採掘した場所(大抵は鉱山)で直ちに製錬し、高純度の地金として取引することになるでしょう。
 「貴金属」の鉱山には、必ず製錬所が付属しているのです。
 私のハウス・ルールでは、採掘/選鉱設備に製錬所が付属しているものと見なしました。

 要するに、恒星間でも惑星間でも衛星間であっても、 「貴金属」は必ず「地金」の形で取引される訳です。
 中途半端に選鉱した「鉱石」での取引は有り得ません。



 しかし、気になる情報が「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中に見つかりました。
 「表10a.天然資源」の31番に記載されている、「貴金属の原石」です。
 ちょっと分かり難い書き方ですが「貴金属の原石」は、 「貴金属の鉱石」のことを指すのでしょうか?
 もしそうだとすると、私の導き出した結論、貴金属」は必ず「地金」の形で取引されるは、 トラベラーの公式設定から否定されたことになってしまいます。

 どうにも納得できなかったので、原文を調べました。
 該当部分の原文は「Raw Precious Gems」です。
 これを日本語に訳すと「貴石(宝石)の未加工品(原石)」となる筈ですね。
 「貴金属の原石」は誤訳です。
 正しくは、「貴石の原石」と訳すべきなのです。

 という訳で、私の結論は問題ないことが分かりました。





6.軽金属の内訳


 「軽金属:Metal」とは、 「アルミ、マグネシウム、チタン」から成るグループのことです。
 「アルミ」と「マグネシウム」の2種類は、 「ベースメタル:Base Metal」に含まれることもあるようですが、冶金学を勉強していないので、詳細は分かりません。
 ここでは「軽金属:Metal」として扱っておきます。



 表2 世界の金属消費量(主要金属)の中から 「軽金属」の部分だけを抜き出して、以下に再掲載しました。

            表23 世界の金属消費量(軽金属)

MRT01_Fig23.gif - 4.74KB

 消費量が少ないので、人口1千人当たりの欄は、小数点以下第3位まで掲載しました。



 人類社会で2番目に多く利用されている金属が「アルミニウム:Al」です。
 CT版の貿易品価格では、アルミニウム(おそらく地金)は、トン当たり1,000crが基本価格でした。
 トン当たりの利益は少ないものですが、十分な数量が確保できますので、 サイコロの目によっては貨物運賃よりも儲かる商品だった、と記憶しております。
 この考察でも、アルミニウムの価格は、トン当たり1,000crという数値を用いましょう。



 「マグネシウム:Mg」の消費量は10番目。
 主な用途は、アルミ合金の添加が40%、ダイカスト製品と製鉄時の添加(脱硫)が20%ずつ、 その他の合金や薬品、難燃材として残りの20%が消費されていました。
 価格は、トン当たり2,000crです。



 「チタン:Ti」の消費量は14番目。
 主な用途は塗料や顔料で90%、残り10%が構造材料です。
 価格は、トン当たり20,000cr。




1.アルミの探索と採掘

 「アルミニウム:Al」の消費量は、人口10億人当たりで379万トンになります。
 人類が消費する金属の中で、トップのには及ばないものの、堂々たる2番目の地位を占めていました。

 基本的に構造材として使用される金属ですが、主な用途は輸送機器分野。全体の45%をこの分野で消費しています。
 輸送機器は重いものを動かすことが基本ですので、エネルギー節約や高性能化の観点からは、出来る限り軽く作った方が良いのです。 重量当たりの強度が高く、比較的安価な「アルミニウム」は、最適の材料だと言えるでしょう。
 次なる用途は、建設分野。消費量は全体の20%で、サッシやドアなどの建設資材に多用されています。 建物は動きませんが重量物を支える構造である以上、軽ければ軽いだけ都合良いのです。
 3番目が食品関連の包装容器、いわゆるアルミ缶で、消費量は全体の10%。
 残り25%は様々な金属製品、(電線を含む)電気部品、器具として消費されていました。

 「アルミニウム」は、様々な添加物を加えることで、色々と便利な特性を示します。 そのため、純粋な「アルミニウム」をそのまま使用することは多くありません。
 例えば、重量比で4%の「銅:Cu」を加えると、強度が劇的に上がりました(航空機用のジュラルミン)。
 1%の「マンガン:Mn」か2%の「マグネシウム:Mg」を加えると、 耐食性が増して(特に海水に対して)錆びにくくなります(建物の外装やアルミ缶)。
 12%の「珪素:Si」を加えると摩耗に強くなりますが、 その反面、腐食しやすくなります(内燃機関のシリンダーとピストン)。
 これらの添加物こそ、「アルミニウムのリサイクル」が難しい原因だったりする訳ですが。



 「アルミニウム」の採掘を行う、鉱山会社について考えます。

 「アルミニウム」を作るためには、まず「アルミニウム」を豊富に含んだ鉱石、 「ボーキサイト」の鉱床を見つけなければいけません。
 以下の行為判定を行って下さい。

 有望なボーキサイト鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表24 ボーキサイト鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig24.gif - 5.93KB

 鉄鉱床銅鉱床と比べて、探索の難易度を少し上げてあります。

 アルミニウムそのものは、惑星の地殻中に豊富に存在する元素(地殻中の重量比で8.1%)なのですが、 そのままでは有効に利用することができません。
 経済的に利用するためには、アルミニウムの品位が25%以上に濃縮された、 ボーキサイトの鉱床を見つける必要があるのです。

 ボーキサイトは、アルミニウムの豊富な岩石が風化することで生じる鉱石です。
風化作用が不可欠なので、内圏か可住圏に存在する、大気レベル4以上の世界でしか見つからない、ということにしておきました。
 少しぐらい、制限がないと面白くありませんよね。



 次の作業として、発見されたボーキサイトを掘り出します。
 必要な採掘設備を購入してください。

 以下の採掘設備は、鉄鉱床と同等のものです。
 ボーキサイト鉱床の規模に合わせて、100MCrのものが無くなり、0.02MCrが追加されていますが。


        表25 ボーキサイト鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig25.gif - 5.79KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石はボーキサイトの分量。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「ボーキサイト」の品位は、 「アルミナ(Al2O3」の含有量で評価されます。 ここでは50%にしておきました。古代テラでは平均的な品位です。
 今回も公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしました。価格は20crです。
 後述しますが、鉱床の探索費用とリスクを鉱山会社が抱えているのであれば、価格は2倍の40crが適当だと思われました。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「ボーキサイト」は1排水素トン当たり20重量トン。 価格は400crにしておきます(2倍にすると800cr)。



 ここから先は、精錬所の話です。

 とある精錬所が、「ボーキサイト」1,000トンを購入して、 アルミニウムの精錬を行うと想定しましょう。

 精錬所では、まず「ボーキサイト」から「アルミナ」を取り出します。
 「ボーキサイト」を細かく砕き、水酸化ナトリウム溶液で溶かした後、 その水溶液だけを回収、乾燥させることで高純度の「アルミナ」が得られるとのこと。
 品位が50%ですから、「ボーキサイト」1,000トンは、 「アルミナ」500トンに姿を変えました。
 「ボーキサイト」の残り500トンは、利用価値のない「捨石」となりますが、 結構、この「捨石」の処理が大変だそうです。

 次に、「アルミナ」を溶かして炭素電極を差し込み、「アルミナ」の抽出を行います。 プラス極には溶解した酸素が集まってきて、二酸化炭素に変化。 マイナス極には高純度のアルミニウムが析出するというメカニズム。
 「アルミナ」の中に含まれるアルミニウムは約50%ですから、 「アルミナ」500トンからは「アルミ地金」250トンが得られることになります (正確には違いますが、面倒なので50%として扱いました。)

 精錬所が、「ボーキサイト」から「アルミ地金」を得るために 必要な精錬費用は、 「ボーキサイト」1トン当たり200cr、「アルミ地金」1トン当たり800crです。
 CT版の貿易品価格において、アルミ地金は、トン当たり1,000crになっていましたから、 取引価格の8割が精錬費用になる訳です。
 銅地金よりも極端な話になってきました。

 精錬所は「ボーキサイト」1,000トン(20,000cr)を購入して、 「アルミニウム」250トン(売値250,000cr)を精錬することができます。
 精錬に掛かった費用は200,000crですから、精錬所の利益は30,000crでした。



 「ボーキサイト」1,000トンから得られる精錬所の利益は30,000crしかありませんが、 経営規模を拡大して「ボーキサイト」1,000,000トンを精錬すれば、利益は30MCrまで拡大します。
 「ボーキサイト鉱床」を探索し、鉱山会社を設立するための投資は、十分に回収できるでしょう。

 もしも精錬所がリスクを避け、鉱床の探索費用とリスクを鉱山側が受け持つとしたら、 取引される「ボーキサイト」の価格は2倍、トン当たり40crに跳ね上がります。
 精錬所の利益は、「ボーキサイト」1,000トン当たり10,000crまで減少しますが、 投資とリスクを避けたいのであれば、仕方のないことでしょう。



 ところで、「アルミニウム」は「電気の缶詰である」という言い回しを御存知でしょうか。
 「ボーキサイト」から「アルミニウム」を作り出す際、 大量の電気を消費することから、それを強調するために考えられた言葉のようです。
 「アルミニウム」の取引価格1,000crの内、700crは電気代だと聞きました。
 実際のところ、「アルミニウム」1トンを作り出すために必要な電力は18.8Mwhにもなるようで、 これだけの電力を21世紀テラの某極東島国(1Mwh当たり100cr)で賄おうとしたら、1,880crを電力会社に支払わなければなりません。
 取引価格1,000crの「アルミニウム」を作るのに、電気代1,880crを払っていたら、考えるまでもなく赤字になります。
 某極東島国で「アルミニウム」の製造が行われなくなったのも、当たり前のことなのでしょう。
 電気代がもっと安い国や世界であれば、取引価格1,000crでも元が取れるようになる筈です。 上記の精錬費用は、その内700Crが電気代だという想定ですから。




2.トラベラー世界の発電コスト

 さて、トラベラー世界における電気代は、幾らぐらいなのでしょうか?
 「アルミニウム」の精錬費用は、その内700Crが電気代だという想定に従えば、 その精錬所が置かれた世界の電気代は、1Mwh当たり37.2cr(=700cr÷18.8Mwh)ということになりそうですが。
 実際のところは?

 輸送機器の設計ルールを利用して、1Mwhの電力を得るための発電コストを求めてみました。
 パワープラントの耐用年数は20年。毎日24時間×20年間の連続運転を行うために必要な経費を、1時間当たりで割った値を示しています。


       表26 トラベラー世界の発電コスト(1MW×1時間)

MRT01_Fig26.gif - 9.68KB

 表の右端から、その世界のテックレベルとパワープラントの種別。
 1Mwを生産するために必要な、パワープラントの容積(KL)と重量(ton)、価格(KCr)。
 最も経済的な発電コストを求めるため、発電効率が最大となるサイズを前提にしました。 ですから、このサイズのパワープラントを作れるとは限りませんし、このサイズで実際に1Mwを発電できる訳ではありません。御了承下さい。

 次が、1時間の運転に必要な燃料の容積(L)と、その価格(Cr)。

 最後が、購入費用(価格)の1時間分、燃料代の合計。
 要するに、1Mwを1時間発電するために必要なコストとなります。
 単純化するため、人件費や送電設備の経費は考慮していません。



 テックレベル5の「内燃機関」は、発電コストが20.02Cr、 テックレベル6の「改良型内燃機関」は、10.44Cr
 テックレベル7の「ガス・タービン」は、発電コストが11.14Cr、 テックレベル8の「MHDタービン」は、7.34Crでした。

 これら「内燃機関」に共通する特徴は、 発電コストの大部分を「燃料代」が占めていることでしょう。
 ですから、稼働率を少しぐらい減らしても(例えば、1日の内8時間程度しか全力運転をしなくても)発電コストは変わりません。
 時間帯によって発電量が大きく変化する発電所用としては、都合の良い特徴ですね。

 その反面、燃料価格の高騰が発電コストに大きく影響しました。
 「燃料代」が2倍になれば、発電コストも2倍になるのです。
 トラベラー世界の燃料価格は常に安定していますから問題にはなりませんが、現実社会においては深刻でしょう。

 前述したように、21世紀テラの某極東島国における電力価格は、1Mwh当たり100crです。
 「内燃機関」による発電コストは7.34Cr〜20.02Crという範囲ですので、 電力価格の8〜9割は、送電網を建設/維持するための送電コストであるのかも知れません。



 テックレベル6の「核分裂炉」は、発電コストが0.39crでした。
 英文エラッタによって、「核分裂炉」の燃料消費量が 「1時間当たり」から「1ヶ月当たり」に変更されたため、 「内燃機関」に比べて驚くほど安価に変わっています。
 トラベラー世界において、「核分裂炉」は安価な発電手段だと言えるのでしょう。
 使用済みの燃料=放射性廃棄物の処理を無視すれば、と条件が必要ですが。

 トラベラー世界で「核分裂炉」が一般的なものかどうか、実は良く分かっておりません。 テックレベル6〜8において、最も経済的な発電手段であることは間違いないのですが。



 テックレベル9〜16の「核融合炉」は、発電コストが0.21cr〜0.07crの範囲でした。 発電コストが更に安価となっています。
 「核分裂炉」と「核融合炉」の共通項は、 パワープラント自体の価格に比べて、「燃料代」が安価なことでしょう。
 稼働時間が減ると(発電しない時間が増えると)、発電コストが上がってしまうのです。
 例えば、稼働時間を毎日8時間に減らした場合、発電コストは2.5倍〜2.8倍に上がりました。 それでも「核融合炉」が格安であることに違いはないのですが。



 「アルミニウム」の精錬に必要な電気代700crから思い付き、 トラベラー世界の電気代を求めてみようと試みたのですが、どうにも上手くいきません。
 テックレベルの発展と共に発電コストが劇的に下がっているにも関わらず、 「アルミニウム」の取引価格が1,000crで固定されていることが原因のようです。



 余談になりますが、「アルミニウム」のスクラップは、トン当たり500cr程度で取引されているようでした。
 すでに作られた「アルミニウム」を再生するために必要な電気代は、 「ボーキサイト」から作り出す場合のわずか3%で済みます。
 トン当たり20crですね。
 問題点としては、回収してきた「アルミニウム」のスクラップには銅やマグネシウムなどの不純物が多く含まれており、 用いる用途が限られることが挙げられます。
 この銅やマグネシウムは「アルミニウム」を有用な合金にするために添加されているので、 スクラップを綺麗に洗ったぐらいでは除去できません。
 純粋な「アルミニウム」を得るためには、 「ボーキサイト」から作り出す場合以外に方法がないと言う事実は明らかに、リサイクルを妨げる要素のひとつでしょう。




3.マグネシウムの製錬

 「マグネシム:Mg」の消費量は10番目で、人口10億人当たりで6万1千トンです。
 主な用途は、アルミ合金への添加。その次がダイカスト製品と製鉄時の添加(脱硫)で、その他の合金や薬品、難燃材となっていました。
 価格は、トン当たり2,000crです。

 アルミ合金への添加は、すでに「アルミニウム」で述べた通り、その耐食性を増し、加工性を良くするためのものです。
 ダイカスト製品は、要するに鋳物のようなもので、ノートパソコンやデジカメ、携帯電話といった電子機器の筐体(ケース)に使われます。 マグネシウム合金は衝撃の吸収性が高く、おまけに電磁シールドの特性まで備えているので、こうした電子機器の筐体には最適なのです。



 「マグネシウム:Mg」は一般的に、「ドロマイト:dolomite」や 「マグネサイト:magnesite」という鉱石を製錬して作られます。
 海水から抽出するという方法もあるのですが、鉱業との関係が無くなるので取り上げません。 製錬所のルールを作る際には考察しましょうか。
 完全な余談ですが、テラの海水の中には、重量比で0.127%の「マグネシウム」が含まれていますので、 海水788トンの中から「マグネシウム」1トンを取り出すことが可能だとのこと。

 それはともかく、此処では「ドロマイト」や「マグネサイト」を含む鉱石を一括して、 「マグネシウム鉱石」と呼ぶことにします。



 「マグネシウム鉱石」を採掘するためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なマグネシウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表27 マグネシウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig27.gif - 6.02KB

 上記の埋蔵量は、選鉱されていない「マグネシウム鉱石」の埋蔵量です。
 埋蔵量の単位には、これまでと同じように排水素トンを用いました。

 選鉱されていない状態における「ドロマイト」と「マグネサイト」の品位は、 それぞれ2.5%と5.0%である、と定義しておきます。
 この状態では鉱石を売買できません。
 以下の採掘/選鉱設備を用いて、品位を高めてください。

 以下の採掘設備は銅鉱床と同等で、採掘設備と選鉱設備を合わせた購入費と維持費です。
 マグネシウム鉱床の規模に合わせて、200MCrのものが無くなり、0.04MCrが追加されていますが。


        表28 マグネシウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig28.gif - 5.78KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は「ドロマイト」や「マグネサイト」の分量。 処理される「鉱石」の5分の1が 有用な「ドロマイト」や「マグネサイト」となり、 残り5分の4は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、 年間で500トンの「ドロマイト」や「マグネサイト」を生産でき、 廃棄される「捨石」の量は2,000トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「ドロマイト」の品位は12.5%とします。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしておきますが、その場合、価格は75crになります。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、比重2.9より、 「ドロマイト」の重量は1排水素トン=20重量トンで、価格が1,500crとなります。



 同様に「マグネサイト」の品位は25%としました。
 価格は200cr。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、比重3.0より、 「マグネサイト」の重量も1排水素トン=20重量トンとなり、価格は4,000crです。



 例によって、精錬所の話です。

 精錬所では、まず「ドロマイト」や「マグネサイト」を焙煎して、 高純度(品位99%以上)の「酸化マグネシウム:MgO」を作り出します。
 次に、「酸化マグネシウム」へ 「塩素:Cl」と「炭素:C」を加え、 「塩化マグネシウム:MgCl2」を取り出します。
 最後に、電気精錬で「塩化マグネシウム」を分解。 高純度の「マグネシウム地金」を得る、という段取りでした。

 「マグネシウム地金」1トンを得るためには、 「ドロマイト」ならば8.0トン(600cr相当)、 「マグネサイト」で4.0トン(800cr相当)が必要でした。
 製錬コストは、「ドロマイト」で1,200cr、「マグネサイト」で1,000cr。
 合わせて、1,800crのコストが掛かる訳です。

 「マグネシウム地金」1トンの取引価格は20,000crですから、製錬所の利益は200crでした。
 ちなみに「捨石」は、 「ドロマイト」で7.0トン、「マグネサイト」で3.0トンです。




4.チタンの探索と採掘

 「チタン:Ti」の消費量は、人口10億人当たりで2万トン。
 人類が消費する金属の中で、14番目となっています。
 主な用途は塗料や顔料で、全体の90%以上が「二酸化チタン(TiO2」として消費されていました。
 残り10%が金属としての「チタン」消費ですが、 その高い耐食性、低温強度などの特性から、石油化学プラントなどでの利用が盛んです。
 鉄と比べて比重が60%、強度が2倍という特徴を活かして、航空宇宙機器に利用されることもあるのですが、消費量は多くありません。
 金属としての消費量は、人口10億人当たりで2千トン程度でした。



 消費量が少ない原因はひとえに、その価格にあるでしょう。
 調べてみたところ、「チタン」の価格はトン当たり20,000crでしたので、 に比べて40倍、「アルミニウム」に比べても20倍の高価格となっていました。
 「チタン」は加工が難しいので、目的の形に加工するための加工費を含めれば、価格はもっと高くなるでしょう。

 「チタン」自体は、地殻中に5600ppmも存在する、比較的豊富な元素です。 と比べて73分の1しかありませんが、 の50ppmやの0.0011ppmと比べれば、圧倒的な存在量なのです。
 それなのに、どうして高価なのでしょうか?
 これから、その問題を考察していきます。



 まず、「チタン」を含んだ鉱石を経済的に採掘できる鉱床が、なかなか見つかりません。 品位95%の「ルチル」は理想的な鉱石なのですが、 鉱床が滅多に見つからないので、わずかな量しか供給されていないのです。
 そこで、品位30〜60%の「イルメナイト」という鉱石を採掘することになりました。 この「イルメナイト」もなかなか見つからないのですけれどね。



 「イルメナイト」の鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なチタン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見されるチタン鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。


 「イルメナイト」ではなく、「ルチル」の鉱床を探索する際は、 そのための探索費用が10倍に増加します。
 規模の小さな鉱床の探索に付くDMは、探索費用が100MCrでDM+1、10MCrでDM+2、1MCrでDM+3にしてください。
 探索費用が10倍になっても、「ルチル」の採掘はとても儲かります。
 テラにおける「ルチル」の供給量は、「イルメナイト」の供給量の15分の1程度ですので、 レフリーはそうしたバランスに配慮して「ルチル」鉱山の存在を設定してください。


         表29 チタン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT01_Fig29.gif - 5.89KB

 上記の埋蔵量は、選鉱されていない「イルメナイト」、あるいは「ルチル」の埋蔵量です。
 埋蔵量の単位には、これまでと同じように排水素トンを用いました。

 選鉱されていない状態における「イルメナイト」と「ルチル」の品位は、 それぞれ3.8%と9.5%である、と定義しておきます。
 この状態では鉱石を売買できません。
 以下の採掘/選鉱設備を用いて、品位を高めてください。

 以下の採掘設備は銀鉱床と同等で、採掘設備と選鉱設備を合わせた購入費と維持費です。
 チタン鉱床の規模に合わせて、500MCrのものが無くなり、0.04MCrが追加されていますが。


         表30 チタン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT01_Fig30.gif - 5.79KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 処理される鉱石は「イルメナイト」や「ルチル」の分量。 処理される「鉱石」の10分の1が 有用な「イルメナイト」や「ルチル」となり、 残り10分の9は「捨石」として廃棄されます。
 処理能力が年間2,500トンの採掘設備であれば、 年間で250トンの「イルメナイト」や「ルチル」を生産でき、 廃棄される「捨石」の量は2,250トンです。

 稼働時間や処理能力の増加については、鉄鉱床と同じルールを用いて下さい。



 「イルメナイト」の品位は40%とします。
 公式ルールとの矛盾を防ぐため、取り扱いの単位は排水素トンで、 1排水素トン=1重量トンとしておきますが、その場合、価格は200crになります。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、比重4.7より、 「イルメナイト」の重量は1排水素トン=40重量トンで、価格が8,000crとなります。



 同様に「ルチル」の品位は95%としました。
 価格は1,500cr。

 重量トン排水素トンを区別する場合は、比重4.3より、 「ルチル」の重量は1排水素トン=40重量トンで、価格が60,000crです。



 精錬所の話になります。

 今更ですが、「イルメナイト」や「ルチル」の品位は、 「二酸化チタン(TiO2」の含有量で評価されています。
 「二酸化チタン」は文字通り、 「チタン(Ti)」1つに「酸素(O)」2つが結びついた状態ですので、 品位100%の「二酸化チタン」であっても、 純粋な「チタン(Ti)」の含有量は40%しかありません。
 ややこしい話ですが、純粋な「チタン」は簡単に酸化してしまうので、こういった評価法を取っているようです。



 精錬所では、まず「イルメナイト」から不純物(など)を取り除き、 高純度(品位95%)の「合成ルチル」を作り出します。
 その方法は、酸を使って酸化鉄を溶かし去るか、あるいは、 コークスを使って酸化鉄を還元し、残ったスラグを利用するというものです。
 「イルメナイト」の中に含まれる「チタン」とは、 お互いに固く結びついているので、こうした方法でなければ品位を高めることができません。

 「合成ルチル」1トンを作り出すためには、 「イルメナイト」2.5トン(500cr相当)と製錬コストが900cr必要です。
 「合成ルチル」も天然の「ルチル」と同じようにトン当たり1,500crで取引されますから、 この段階で製錬所が得る利益はトン当たり100crになるでしょう。
 ちなみに、「捨石」は1.5トンが発生しました。



 前述の通り、「チタン」消費の90%は「二酸化チタン」の形となっていますので、 取引される「ルチル」の90%は、これ以上の製錬が必要ありません。
 金属として利用される「チタン」消費(全体の10%)だけに、 「ルチル」や「合成ルチル」から、 純粋な「チタン」を取り出すため、以下の行程が追加されます。

 「ルチル」に「塩素:Cl」と「炭素:C」を加え、 900〜1,000℃まで加熱すると、「ルチル」の主成分である「二酸化チタン」が、 「四塩化チタン:TiCl4」と「二酸化炭素」に分離。
 この「四塩化チタン」を130℃以下まで冷却すると、高純度の液体が得られる訳です。
 「二酸化炭素」はそのまま排気。

 再度、「四塩化チタン」を800℃前後まで加熱します。
 そしてそこへ液化した「マグネシウム:Mg」を投入。
 「塩素」を「マグネシウム」に奪われた「四塩化チタン」は、 多孔質で純粋な「チタン」を残します。
 この状態の「チタン」は「スポンジ・チタン」と呼ばれます。
 「塩化マグネシウム」を取り除いた後、更に「スポンジ・チタン」を加熱/溶解すると、 ようやく、高純度の「チタン地金」が得られました。

 「チタン地金」1トンを得るためには、 「ルチル」2.5トン(3,750cr相当)と精錬コスト15,000crが掛かります。
 「ルチル」の品位95%から逆算すると2.63トンが必要なのですが、複雑な計算は嫌なので2.5トンにしました。
 「チタン地金」は1トン当たり20,000crで取引されますから、製錬所の利益は1,250crです。

 問題点として、「四塩化チタン」は空気中の水分や酸素と簡単に結びついてしまうため、 これら一連の作業をすべて真空中で行わなければならないことが挙げられるでしょう。
 真空中の作業ですから、加熱方法も電気炉に限られてしまいます。電気料金が嵩みますね。
 良く考えると、真空での作業も電気料金も、トラベラー世界ならば解決済みのような気がしますが……気にしてはいけません。



 以上、「アルミ、マグネシウム、チタン」から成る 「軽金属」の採掘について考察しました。

 ここでも明らかになりましたが、軽金属の鉱石ベースメタルの鉱石並に安価です。
 「ボーキサイト」は1排水素トン当たり20〜40cr、 「マグネシウム」を取り出す 「ドロマイト」や「マグネサイト」は75〜200cr、 「チタン」のための 「イルメナイト」や「ルチル」は200〜1,500crでした。

 最後の「ルチル」だけはトン当たり1,500crなので、鉱石のままでも恒星間の投機貿易品に使えそうですが、 他の鉱石は安過ぎるので、惑星間の貿易品にも成り得ません。
 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得るでしょう。

 軽金属の鉱石も、その多く(「ルチル」以外)は、 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中には明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」には該当しないようです。

 「合成ルチル」の場合、天然資源なのか加工品なのか判断に悩むところですが、 採掘された鉱山で「合成ルチル」まで精錬されるとしたら、 天然資源である「鉄以外の金属鉱石」の扱いで良いでしょう。



 「地金」の形を取った「軽金属」ならば、 「アルミ」と「マグネシウム」はまだ廉価ですが、恒星間の貿易品として十分です。
 「アルミニウム地金」は1排水素トン当たり1,000cr、 「マグネシウム地金」は2,000cr、 「チタン地金」は20,000crでした。

 という訳で、「軽金属」は、「地金」に製錬しない限り、 恒星間や惑星間の貿易品に成り得ません。
 「軽金属の鉱石」を生産する鉱山も、 同じ世界(あるいは、同じ惑星系内の衛星)に製錬所が存在しない限り、経営が成り立ないのです。





7.アステロイドの星系内輸送コスト


 唐突ではありますが、再び、星系内の輸送コストについて考えてみました。

 輸送コストを再考することになったきっかけは、前述 3.鉄(鉄鉱石)の探索と採掘で明らかになった、 鉄鉱石の価格にあります。
 1排水素トン当たり5.0crという低価格では、到底、星系内の貨物運賃を支払えないと考えました。
 貨物運賃を別料金で支払うとしても、1排水素トン当たり50crが上限です。

 どうにかして、IST01:星系内移動についてで考察した輸送コストよりも、 さらに安いコストで運べる方法を見出さねばなりません。
 しかし、一体どうしたら良いものでしょうね?



 ここで、CT版:宇宙海軍の後半部分、 特別サプリメント:戦闘宇宙艦を見直してみましょう。
 p.59、ジャンプ船の項に、私の求める答えが見つかりました。

 宇宙船の後部に付属している特殊なフィールド・ケーブルがジャンプ・フィールドを追加の船荷まで拡大します。
 ……中略……
 ジャンプ船は貴金属の原石、アステロイドの破片などをジャンプ・ケーブルで直接運ぶことができます。
 運ばれる物は直接真空に晒されるので丈夫な物質に限られます。


 この文面を見なくても、同じページに掲載されている加藤氏のイラストを見れば一目瞭然ですね。
 手頃な大きさのアステロイドが、ケーブルに吊るされ、運ばれています。
 真空に晒しても問題ない船荷であれば、その船荷を船体内部に収容する必要はありません。
 これを上手く利用すれば、船体サイズを小さくすることで、輸送コストを小さくできるのでは?



 ということで、500トン級−星系内専用−鉱石運搬船を設計してしまいました。
 船体サイズは500トンしかありませんが、その19倍、9,500トン分のアステロイド(鉱石)をケーブルで牽引することができます。
 ジャンプ・ドライブは搭載されていないので、星系内移動しかできません。
 通常ドライブの加速度は経済的な1G。牽引するものが何もなければ6G加速も可能です。

 乗組員は、艦橋2名、エンジニア4名、指揮1名の合計7名が必要です。
 建造費は量産割引をして273.0MCr。乗組員の給料や整備代として、年間1.420MCrを必要としています。



 この鉱石運搬船が、 主要世界鉱山の存在する地方世界の間で、 真空に晒しても問題ない船荷を、惑星間輸送した場合のコストは、以下のようになりました。
 具体的な真空に晒しても問題ない船荷とは、鉄鉱石やアステロイドの欠片になるでしょう。


        表31 アステロイドの星系内(惑星間)輸送コスト

MRT01_Fig31.gif - 10.1KB

 鉱石運搬船は、 主要世界から地方世界へ移動する際は、何も運ぶ物がないので6G加速で移動します。
 輸送機器の設計ルールから考えると、船荷の量が600トンまでならば最大加速度の6Gで移動できそうですが。

 移動先の地方世界で船荷を積み込みます。
 一般的な地方世界ならば、積み込む船荷は鉄鉱石。
 地方世界が規模0のアステロイド・ベルトならば、適切なサイズに切り出された、 アステロイドの欠片が積み込まれることになるでしょう。
 停泊時間は3日(=72時間)を想定しています。

 帰路、地方世界から主要世界へ戻る際は、 運べるだけの鉄鉱石やアステロイドの欠片を牽引している筈なので1G加速となりました。
 加速度が下がりますから、移動時間は2.5倍。

 主要世界に到着した鉱石運搬船は、船荷を降ろし、燃料補給と簡単な整備を行います。
 停泊時間は今回も3日。

 これで鉱石運搬船の1往復が終了し、 主要世界へ9,500トンの鉱石を持ち帰ったことになります。



 鉱石運搬船の往復回数は、年に一度の定期整備(2週間)を計算に含めて、14〜48回になりました。
 この往復回数で運ばれる鉱石の量は、年間133,000〜456,000トン。
 これだけの輸送量がないと、鉱石運搬船の輸送効率が悪化します。

 仮に鉱石の年間輸送量を304,000トン(軌道番号5(小惑星帯))だと想定すると、 その鉄鉱石から生産されるの量は152,000トン。
 人口100万人分の消費量に匹敵することが分かりました。
 その星系の主要世界軌道番号5の地方世界から 鉄鉱石を輸入している場合、人口100万人に付き1隻の鉱石運搬船が必要だということです。
 人口100億の地球で鉄資源が枯渇しているのであれば、軌道番号5(小惑星帯)との間を 1万隻の鉱石運搬船がひっきりなしに往復しているでしょう。
 上記の計算結果からは、そうした情景が想像できる訳です。



 肝心の輸送コストですが、1排水素トン当たり50crを達成できるのは、 軌道番号5(小惑星帯)まででした。
 主要世界地方世界のどちらかが、 軌道番号6(木星)以遠を巡っている場合、安価な鉄鉱石の輸入は困難となります。

 輸送コストを1排水素トン当たり100crまで引き上げた場合でも、 軌道番号8.5(海王星)が限界となるのです。
 宇宙船用のアステロイド船体はともかく、鉄鉱石の輸入は不可能でしょうが。



 次は、衛星間の輸送コストです。


        表32 アステロイドの星系内(衛星間)輸送コスト

MRT01_Fig32.gif - 11.1KB

 鉱石運搬船の移動パターンは、衛星間でも同じような形になりますが、 主要世界地方世界における停泊時間は半日(=12時間)ずつです。

 鉱石運搬船の往復回数は、221〜332回。
 鉱石の年間輸送量は、1,909,500〜3,154,000トンになりました。

 仮に鉱石の年間輸送量を2,280,000トン(LGGの軌道番号75)だと想定すると、 その鉄鉱石から生産されるは1,140,000トン。
 人口800万人分の消費量に匹敵するでしょう。
 もしも人口7億のリジャイナが他の衛星から鉄鉱石を輸入しているのであれば、 88隻の鉱石運搬船が往復しているということです。



 輸送コストは5〜8crしか掛かりません。
 運賃がほとんど掛からないのですから、他の衛星における鉄鉱床の探索と採掘は、積極的に行われることが確実です。





8.まとめ


 トラベラー世界の「鉱業」について、考察しました。

 21世紀のテラで消費/生産されている主要な金属資源のリストから、 トラベラー世界において消費/生産されている金属資源を推測しています。



 そのトップは、圧倒的な比率で「」でした。
 比率は92%であり、どんなに科学技術が発展したとしても、数字が大きく変わることはないでしょう。
 「」の原料となる「鉄鉱石」は、最も採掘量の多い鉱石ですが、 その膨大な採掘量故、恒星間の通商路に載せることはできません。
 鉄鉱石の輸入が行われているとしたら、それは惑星間や衛星間の星系内通商に限られます。



 次に、「ベースメタル:銅、亜鉛、鉛、錫」について調べました。
 これらの金属は、消費量で第3位、5位、7位、12位の順位を占めています。
 「」に比べれば少ない消費量ですが、それでも、人類社会全体では膨大な量が使用されています。
 その機能(特性)に加え、これらの金属が安価で、その調達が容易であることから、 未来社会においても「ベースメタル」の地位は揺らがないでしょう。

 ただし、ベースメタルの鉱石は極めて安価です。
 1排水素トン当たり200cr〜300crという価格では、やはり恒星間の投機貿易品に成り得ません。
 惑星間の輸送コストを賄うこともできませんから、惑星間の貿易品にも成り得ません。
 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得るでしょう。

 「地金」になった「ベースメタル」の価格は、 1排水素トン当たり600cr〜9,000crでした。
 「鉛地金」の600crには不満も残りますが、恒星間の貿易品として成り得ない価格でもないでしょう。

 以上のことから「ベースメタル」は、 「地金」として製錬されない限り、 恒星間や惑星間の貿易品に成り得ないと判明しました。



 3番目は「銀、金、白金族」から成る「貴金属」です。
 これらについての需要は、説明する必要もないでしょう。

 貴金属の鉱石も品位が低すぎるため、鉱石の形で輸送することは有り得ません。
 恒星間でも惑星間でも衛星間であっても、 「貴金属」は必ず「地金」の形で取引されます。



 4番目に、軽金属:アルミ、マグネシウム、チタン」を調べました。
 これらの金属は、消費量で第2位、10位、14位を占めています。
 この特性は他の金属での代替が困難であるため、未来社会であっても需要が減ることはないでしょう。

 ベースメタルと同じように、軽金属の鉱石も安価です。
 軽金属の鉱石も、その多く(「ルチル」以外)は、 恒星間の貿易品にも、惑星間の貿易品にも成り得ません。
 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得るでしょうが。

 「地金」になった「軽金属」の価格は、 1排水素トン当たり1,000cr〜20,000crでした。
 恒星間の貿易品としては、十分な価格です。

 以上のことから「軽金属」も基本的に、「ルチル」を除けば 「地金」として製錬されない限り、恒星間や惑星間の貿易品に成り得ません。



 以上、「」、「ベースメタル」、「貴金属」、 「軽金属」について調べた結果、 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中には明記されている、 「鉄鉱石:Ferrous Metal Ore」と「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」に該当する金属は、 「チタン」の原料である「ルチル」を除けば、見つかりませんでした。
 これらの金属鉱石は、鉄以外も廉価すぎて、恒星間貿易が成り立ちません。
 該当する金属が存在しない「鉄鉱石」はもちろんのこと、 該当する金属が1つしか見つからなかった「鉄以外の金属鉱石」についても、今後の継続的な考察が必要です。
 すでに執筆を始めた「MRT02:鉱物資源その2、主要なレアメタル」で幾つかの解答は出ているのですが……。



 最後に、鉄鉱石を安価に(トン当たり50cr以内の運賃で)輸送するべく、 500トン級−星系内専用−鉱石運搬船の設計を行ってみました。
 惑星間の輸送ならば、軌道番号5(小惑星帯)まで経済的な輸送が可能です。
 その際に必要な輸送量も求めています。



 次回の考察、「MRT02:鉱物資源その2、主要なレアメタル」では、 「主要なレアメタル」に分類される金属7種について調べた結果を紹介する予定。








 2012.07.15 初投稿