The Mineral Resource
in the Traveller space 03
Rare Earth Metal
トラベラー宇宙の鉱物資源
その3
レアアースメタル(希土類金属)
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その3です。
 今回の考察対象も「レアメタル:Rare Metal」の一部ですが、 特別に「レアアースメタル(希土類金属):Rare Earth Metal」と呼ばれる元素を取り上げました。

 「レアアースメタル(希土類金属)」とは、ランタノイド系列の元素15種類に、 スカンジウム(Sc)イットリウム(Y)を加えた、合計17種類の金属元素です。

 17種類と聞くと大変そうですが、実際のところ、これらの金属元素は幾つかのグループを構成しているので、 そのグループごとに考察していけば手間は大きく減ることでしょう。




 目次
    ※2.希土類金属の詳細
    ※3.希土類金属の探索と採掘
       (1)スカンジウムの採掘
       (2)希土類金属の採掘
       (3)バストネサイトの採掘
       (4)モナザイトの採掘
       (5)ゼノタイムの採掘
       (6)イオン吸着鉱の採掘
       (7)希土類金属の分離
       (8)ミッシュメタルの製造と流通
       (9)希土類金属の流通形態と流通量
    ※4.鉱山開発の現状と背景
       (1)内需による鉱床規模の制限
       (2)輸出による鉱床規模の制限
       (3)鉄鉱山の規模と経済性
       (4)銅鉱山の規模と経済性
       (5)チタン鉱山の規模と経済性
       (6)金鉱山の規模と経済性
       (7)モリブデン鉱山の規模と経済性
       (8)鉱物資源の落穂拾い
       (9)辺境世界の鉱山開発
    ※5.まとめ





2.希土類金属の詳細


 前述の通り、「レアアースメタル(希土類金属)」とは、ランタノイド系列の元素15種類に、 スカンジウム(Sc)イットリウム(Y)を加えた、合計17種類の金属元素です。
 これらの「希土類金属」は独特の電子軌道を抱えているため、ユニークな特性を発揮します。 その特性故、他の金属では代替できません。

 「希土類金属」が高価な理由のひとつとして、それらを含んだ鉱石が見つかり難いことを挙げられるでしょう。
 良く引き合いに出される話ですが、そこらに落ちている石ころの中にも「希土類金属」は含まれています。
 しかし、その含有量があまりにも小さいため、経済的に取り出すことができません。
 例えば1kg当たり2,000crのスカンジウムを石ころから取り出すため、 1kg当たり1,000,000crの経費(製錬費用)が掛かっていたら大赤字です。
 採算を得る(黒字経営を続ける)ためには、経費を1kg当たり2,000cr未満に抑える必要があることは明らかですね。
 できれば、半額(1kg当たり1,000cr)以下に抑えたいところですが。

 ふたつめの理由は、その鉱石から有用な「希土類金属」を取り出し難いこと。
 特にランタノイド系列の元素はその性質が似通っているため、一般的な方法でそれらを分離することができません。
 分離には特殊な方法が必要であり、経費と時間が掛かるものとなっています。



 生産量や消費量があまりにも少ないため、希土類金属の消費量を求めることは骨でしたが、 以下に希土類金属の消費量を示します。
 正確な数値が手に入り難かったため、推測値も多めですが。


       表1 世界の金属消費量(レアアースメタル:希土類金属)

MRT03_Fig01.gif - 13.8KB

 データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(トン)を求めています。
 人口1千人当たりの消費量は求めるだけ無駄だったので省略。
 その代り、トン当たりの価格(cr/tons)を載せておきました。 キログラム当たりの価格(cr/kg)が必要ならば、この数値を1,000で割って求めて下さい。

 御覧の通り、「希土類金属」の需要は僅かしかありません。
 例えば、とある海賊が何処かでスカンジウム=100トン(200MCr相当?)を手に入れたとしましょう。
 スカンジウムの需要は限られているので、これらを売り捌くには高人口世界を訪れなければなりません。
 また、100トンという分量は、人口100億が暮らす高人口世界の年間需要を上回っています。
 これだけ大量のスカンジウムを売り捌くには、少なくとも数年を掛けなければならないでしょうし、 当然ながら、それは非常に目立つ行為となります。
 最初の数トンを売り捌くだけで、その海賊は司法関係者に拘束されてしまうのではないでしょうか?



 それはともかく、希土類金属のそれぞれの用途は、以下のようなものです。

 スカンジウム(Sc)は、地殻中の存在率が16ppm。 コバルト(Co)並に希少な金属ですが、厄介なことに高濃度の鉱石を生成してくれません。 岩石中に0.05%(=500ppm)の濃度があれば有用な鉱石として扱ってもらえるほど、地殻中で濃縮されることが稀なのです。
 トルトバイトという鉱石に多く含まれるそうですが、この鉱石が滅多に見つかりません。 見つかったとしても僅かな量しか掘れないため、 古代テラで流通しているスカンジウムの大半はウラン製錬の副産物として得られます。

 アルミ合金を作る際、スカンジウムを0.1〜0.3%程添加すると、極めて強靭なアルミ合金が作れます。 航空機やロケット等を製造する際には、有用な金属でしょう。残念ながら無垢材で使うには高価過ぎますが。
 スカンジウムの消費量は極僅かであり、正確な統計データが見つかりません。 私は、人口10億人当たりで年間9トンであると推測しました。 非常に僅かな消費量ですが、アルミ合金として使用する際に0.1%を添加するのであれば、 9トンのスカンジウムで9,000トンのアルミ合金が得られます。 限られた需要を賄う分には、十分過ぎる量でしょう。
 ちなみにスカンジウム0.1%を添加したアルミ合金の価格はトン当たり20,999crで、 通常のアルミ(トン当たり1,000cr)の21倍になりました。0.3%を添加すると61倍の60,997cr。 これだけ価格が高騰するのですから、需要が限られてしまうのは明らかでしょう。

 スカンジウムのもうひとつの用途は、水銀灯。
 水銀灯の内部にスカンジウムを封入すると、その光が自然光に近くなるのだそうです。 トラベラー世界では、軌道都市や地下都市の照明として多用されているかも知れません。



 イットリウム(Y)は、存在率が30ppm。
 ゼノタイムという鉱石に多く含まれていますが、この鉱石も滅多に見つからないため、 採掘はイオン吸着鉱が主流となっています。
 用途は、高温半導体や永久磁石、赤色蛍光剤、レーザー発振器など。
 もう気付かれたと思いますが、地殻中の存在率と鉱石の見つけ易さ(見つけ難さ)の間には、ほとんど関連がありません。 例えば、銅(Cu)の存在率は50ppmで、銀(Ag)は0.07ppm、金(Au)は0.0011ppmですから。
 地殻中の存在率が高い癖に銀や金よりも見つけにくい元素、それが希土類金属というものなのです。



 ここからは、ランタノイド系列の15元素です。

 ランタン(La)は、存在率が32ppm。
 バストネサイトモナザイトイオン吸着鉱などから得られます。
 主な用途は、レンズ用のガラス。 酸化ランタンを混ぜて作ったガラスは屈折率が高いため、高性能なレンズとなるそうです。 その他には、緑色蛍光体や超電導体、水素吸蔵合金など。
 トラベラー世界の設定として、ランタンはジャンプ・ドライブに必要不可欠な金属である、とされています。 Starship Operation's Manualによると、 船体に埋め込まれるジャンプ・グリッドがランサナム(ランタン)製だとのことであり、 橘様の試算によれば、船体100排水素トン当たり112kgが必要になりました。 人口10億人の消費量5,300トンすべてを宇宙船の建造に割り当てれば、470万トンの宇宙船を建造できるようです。 高人口世界の造船所の大きさ(CT版:1兆クレジット艦隊)から判断すると、妥当な数字ではないでしょうか。

 セリウム(Ce)は、存在率が68ppm。
 バストネサイトモナザイトゼノタイムイオン吸着鉱など、どの鉱石からも得られます。 しかし採掘量の関係から、セリウムの大半はバストネサイトから得られていました。
 希土類金属の中では最も消費量が多い金属で、年間の消費量は10億人当たり6,000トン。
 用途の大半は、ガラスの表面を滑らかにするための研磨剤。紫外線を遮断する効果があるので、ガラスに添加されることもあります。
 ライター等の火打石に用いられるミッシュメタルは、 希土類金属を分離する前の中間生成物です。 鉱石から不純物を取り除いたものですが、その中には様々な希土類金属が入り混じった状態になっています。 主成分はセリウムランタンネオジウムなどでしょう。 希土類金属はそれぞれを分離する作業が大変(高コスト)ですので、混ざったままの状態で使ってしまうのです。

 プラセオジム(Pr)は、存在率が9.5ppm。
 イオン吸着鉱モナザイトバストネサイトから得られます。
 用途は、ガラスや陶磁器の着色(プラセオジム・イエロー)くらいしかありません。

 ネオジウム(Nd)は、存在率が38ppm。
 イオン吸着鉱モナザイトバストネサイトから得られます。
 主な用途は、永久磁石の材料。超小型モーターやスピーカーには必須の元素で、電子機器の小型化/高性能化に貢献しています。
 その他の用途は、レーザー発振器など。

 プロメチウム(Pm)は放射性の人工元素であり、鉱石から抽出することはできません。
 半減期が短いので原子力電池の燃料に使われていたようですが、 安価な核融合発電と燃料電池を実現したトラベラー世界においては、無縁の用途だと思われます。

 サマリウム(Sm)は、存在率が7.9ppm。
 イオン吸着鉱が主な供給源ですが、モナザイトバストネサイトゼノタイムからも得られます。
 主な用途はネオジウムと同じ永久磁石ですが、 サマリウムで作った磁石は高温でも強い磁性を保ち、高い耐食性を発揮するのです。 欠点は、高価であること。

 ユウロピウム(Eu)は、存在率が2.1ppm。 これもイオン吸着鉱から得られます。
 用途は赤色蛍光体や蛍光灯の蛍光塗料。トラベラー世界でも、照明器具の中に使用されている可能性があるでしょう。

 ガドリウム(Gd)は、存在率が7.7ppm。
 イオン吸着鉱モナザイトバストネサイトから得られます。
 光磁気ディスクのメモリ部分に不可欠な元素だとのこと。

 テルビウム(Tb)は、存在率が1.1ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 用途は、緑色蛍光体や光磁気ディスクなどの記憶装置、プリンタの印刷ヘッドなどでした。

 ジスプロシウム(Dy)は、存在率が6.0ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱モナザイトから得られます。
 光磁気ディスクなどの記憶装置と、停電時の蓄光剤として用いられます。

 ホルミウム(Ho)は、存在率が1.4ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 レーザー発振器に使用されますが、医療用レーザーとしての有用性が高いようです。

 エルビウム(Er)は、存在率が3.8ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 主な用途は、光ファイバーへの添加。 エルビウムを添加すると、光ファイバーによる通信距離が格段に大きくなるためです。
 他の用途は、ガラスの着色剤(桃色)。

 ツリウム(Tm)は、存在率が0.5ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 エルビウムと同じように光ファイバーへ添加されたり、 あるいは、放射線測定装置やガラスの着色に用いられます。

 イッテルビウム(Yb)は、存在率が3.3ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 用途はレーザー発振器とガラスの着色剤。

 ルテチウム(Lu)は、存在率が0.5ppm。
 ゼノタイムイオン吸着鉱から得られます。
 現時点(古代テラの2010年頃)において、有用な使い道は見つかっておりません。
 分離が難しいため極めて高価な希土類金属ですが、 その用途が存在しないため、通常はグラム単位、多くても1kg未満での取引しか行われないでしょう。



 基本的に、これらの希土類金属17種は、大規模な工業生産設備を備えた世界、 具体的には人口レベル9以上の高人口世界でなければ需要が生じません。
 しかし、それらの高人口世界ではすでに希土類金属が掘り尽くされており、 星系内での入手が困難となっている、という可能性は高いでしょう。
 そうした状況ならば、希土類金属の恒星間輸送が起こり得る筈です。

 それを念頭において、希土類金属の採掘や調達経費(コスト)、流通価格についても考えてみました。





3.希土類金属の探索と採掘


 今回も、希土類金属の採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)スカンジウムの採掘

 スカンジウム(Sc)の消費量は、人口10億人当たりで9トン。
 主な用途はアルミ合金への添加であり、その次が水銀灯(照明器具)。



 前述した通り、スカンジウムは主にウラン製錬の副産物として得られていますが、 スカンジウムを得るための専用鉱石が存在しない訳でもありません。
 その専用鉱石を、ここでは「スカンジウム鉱石」と呼ぶことにします。
 この「スカンジウム鉱石」の採掘について、考えてみました。

 採掘した「スカンジウム鉱石」を製錬してスカンジウムを取り出すための手順は、 の場合とほぼ同様です。



 「スカンジウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(スカンジウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 スカンジウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なスカンジウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表2 スカンジウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT03_Fig02.gif - 4.16KB

 スカンジウム鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したスカンジウム鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。
 見つかった鉱床は、とても投資額に引き合うものではないでしょうが。



 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更してください。
 鉱石の密度については、1排水素トン=40重量トンという数値を用いれば良いでしょう。
 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのスカンジウム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「スカンジウム鉱石」の品位(採掘した鉱石の中に含まれるスカンジウムの重量)は、 便宜上、0.1%(鉱石1トン中に1kg)を用います。
 単位をppmに直せば、この品位は1,000ppmになりますが、最低でもこのレベルまで濃縮されていないと、 「スカンジウム鉱石」としては役に立ちません。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「スカンジウム鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、0.1%であると考えてください。

 「スカンジウム鉱石」の品位として0.1%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、品位が10倍(1%)になった「スカンジウム鉱石」を 「スカンジウム精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位0.1%の「スカンジウム鉱石」10トンから、 品位1%の「スカンジウム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表3 スカンジウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT03_Fig03.gif - 4.44KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。

 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘された「スカンジウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「スカンジウム精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり10,000cr。

 「スカンジウム精鉱」は排水素トン当たりの取引価格が高いため、 恒星間の取引も可能でしょう。
 製錬所が鉱山の近くや同じ星系内に存在する必要はありません。



 「スカンジウム精鉱」から純粋な「スカンジウム地金」1トンを得るためのコストは、 「スカンジウム精鉱」100トンの購入費用1,000,000crと、製錬費用500,000crです。
 「スカンジウム地金」1トン当たりの価格は2,000,000crですから、 製錬所の利益は1トン当たり500,000crになりました。



 問題は表1へ示した通り、スカンジウムの需要が極めて小さいことでしょうか。
 表2で示したスカンジウムの鉱床は、10万トン規模が4つもあれば、 それだけで人口10億の高人口世界の需要を満たしてしまいます。
 すでに採掘を行っている鉱床が枯渇する直前にならなければ、新たな鉱床が探されることはないでしょう。
 スカンジウムの製錬所も、その採掘規模に合わせたペースでしか製錬を行っていません。
 年間の消費量が9トンであるならば、月間の消費量は0.75トン。 その世界でただ一つの製錬所が月20日のペースで稼働していたとしても、1日当たり37.5kgの処理量にしかならないのです。
 海賊が製錬所を襲撃したとしても、略奪できる「スカンジウム地金」は100kg未満だと思われます。

 古代テラの現実において、スカンジウムの採掘と精錬は上記よりもずっと高コストとなるでしょう。
 トラベラー世界ではウランの生産が制限されていると考えたため、 スカンジウムを入手しやすくするため、少し強引な数値設定を行いました。
 現実に従うのであれば、ウラン製錬の副産物としてのみ スカンジウムが手に入ることにして下さい。
 生産量の比は、ウラン=6,000トンに対して、スカンジウム=1トンの割合です。




(2)希土類金属の採掘

 スカンジウム以外の希土類金属15種は、 以下へ示した4つの鉱石から取り出されます(プロメチウム(Pm)は除外)。
 ランタン(La)だけの鉱石ユウロピウム(Eu)だけの鉱石、といった代物は存在しません。
 必要とする希土類金属だけの専用鉱石が存在しないという事実は、 希土類金属が高価で希少なものとなる理由の根本を成していますので、御注意下さい。



 希土類金属を取り出すことが、経済的に可能となっている鉱石は、 バストネサイトモナザイトゼノタイムイオン吸着鉱の4種だけです。

 以下に、各鉱石の希土類金属含有量(鉱石100万トン当たり)を示しました。
 バストネサイトイオン吸着鉱は品位50%、 モナザイトゼノタイムは品位25%で計算してあります。


        表4 鉱石100万トン当たりの希土類金属含有量

MRT03_Fig04.gif - 14.8KB

 表の左端は原子番号希土類元素名
 これだけ沢山の元素名が並んでいると、私も原子番号を付けないと区別できません。

 表の右側が鉱石100万トン当たりの希土類金属含有量で、単位はトン(tons)です。
 当初は単位をパーセント(%)にするつもりだったのですが、 サマリウム(Sm)以下の含有率があまりにも小さかったので、単位を変更することとなりました。
 モナザイトに含まれるホルミウム(Ho)の含有量20トン(=0.002%)や、 イオン吸着鉱に含まれるルテチウム(Lu)の含有量100トン(=0.01%)を きちんと表現するために、こうした示し方となった訳です。



 バストネサイトは、ランタン(La)セリウム(Ce)ネオジウム(Nd)など、 軽めの希土類金属を豊富に含んだ弗化炭酸鉱石です。

 モナザイトは、セリウムネオジウムプラセオジム(Pr)を豊富に含んだリン酸塩鉱石です。
 高価な希土類金属が多いのでとても有難い鉱石なのですが、 困ったことにトリウム(Th)も含まれているため、 製錬の際には放射性廃棄物が生じてしまいます。

 ゼノタイムは、イットリウム(Y)に加え、 テルビウム(Tb)以下の重い希土類金属から成る リン酸塩鉱石です。
 貴重な希土類金属を得られるので有難い鉱石ですが、 この鉱石自体が滅多に見つかりません。

 イオン吸着鉱は特殊な鉱床形態をしているので、簡単には説明できません。
 ランタンセリウムプラセオジムネオジウムの他、 サマリウムガドリウム(Gd)などを豊富に含んだ鉱石です。



 これら4種の鉱石は、人口10億人当たりで求めたところ、 以下のような比率で採掘されていることが分かりました。


          表5 人口10億人当たりの希土類採掘量

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 表の左端は今回も原子番号希土類元素名

 表の右側は、人口10億人当たりの希土類採掘量
 表4で示した希土類金属含有量に、表下端の採掘量を掛け合わせた数値です。
 人口10億人の高人口世界においては、バストネサイト18,000トン、 モナザイト8,000トン、ゼノタイム1,000トン、 イオン吸着鉱13,000トン、合計で40,000トンが採掘されていると分かりました。



 上記の数字から、希土類鉱床のタイプは、以下のように決めて下さい。


             表6 希土類鉱床のタイプ

MRT03_Fig06.gif - 4.17KB

 希土類鉱床を発見した場合は、上の表で2D6を振って下さい。

 サイコロの目が「4〜6」もしくは「9」であれば、 その希土類鉱床から採掘される鉱石はバストネサイトです。
 サイコロの目が「8」か「11」であれば、モナザイトです。
 サイコロの目が「12」であれば、ゼノタイム
 サイコロの目が「2、3、7、10」であれば、イオン吸着鉱ということになりました。

 実際のところ、その鉱床が存在する地形などから推測すれば、 どのタイプの希土類鉱床が存在するかは一目瞭然なのですが、 鉱床のタイプが特定の物へ偏ることを防止するため、ランダムに決定するようにした訳です。



 では、それぞれについて、実際の採掘手順を考えてみましょう。




(3)バストネサイトの採掘

 バストネサイトは、ランタン(La)セリウム(Ce)ネオジウム(Nd)など、 軽めの希土類金属を豊富に含んだ弗化炭酸鉱石です。

 採掘した「バストネサイト」から希土類金属を製錬する手順については、 (7)希土類金属の分離の項に纏めておきました。
 必要ならば、そちらを参照して下さい。



 さて、「バストネサイト」を採掘するためには、 新たな鉱床(バストネサイト鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 バストネサイト鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なバストネサイト鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



       表7 バストネサイト鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT03_Fig07.gif - 4.93KB

 埋蔵量の単位は排水素トンです。
 1排水素トンの重量は1重量トンであるということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更して下さい。
 その場合、恒星間輸送に関しては1排水素トン=40重量トンという換算式を用いることになります。
 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのバストネサイト鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「バストネサイト」の品位(採掘した鉱石の中に含まれる希土類金属の重量)は、 便宜上、5.0%(鉱石1トン中に50kg)を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「バストネサイト」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、5.0%であると考えてください。

 選鉱と簡単な製錬によって、 「バストネサイト」は50%の品位まで高められます。
 実際に鉱山から掘り出された「バストネサイト」は、採掘量の1割だけであり、 残り9割は捨石として処理される訳です。

 選鉱と簡単な製錬の後、 品位が10倍(50%)になった「バストネサイト」を 「バストネサイト酸化物」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位5%の「バストネサイト」10トンから、 品位50%の「バストネサイト酸化物」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、 採掘設備に選鉱と簡単な製錬のための設備を加えた金額です。


       表8 バストネサイト鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT03_Fig08.gif - 4.95KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 スカンジウムの場合と同様です。



 採掘された「バストネサイト」は採掘と同時に選鉱/製錬され、 品位50%の「バストネサイト酸化物」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり400crでした。

 「バストネサイト酸化物」は容積(重量)当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難でしょう。
 どうしても必要とするのであれば、貨物扱いで運ぶしかありません。
 希土類金属の鉱石は、そのままの形では恒星間の流通経路には乗りにくいようです。




(4)モナザイトの採掘

 モナザイトは、セリウムネオジウムプラセオジム(Pr)を豊富に含んだリン酸塩鉱石です。
 高価な希土類金属が多いのでとても有難い鉱石なのですが、 困ったことにトリウム(Th)も含まれているため、製錬の際には放射性の廃棄物が生じてしまいます。

 採掘した「モナザイト」から希土類金属を製錬する手順については、 (7)希土類金属の分離の項を参照して下さい。



 「モナザイト」を採掘するためには、 新たな鉱床(モナザイト鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 モナザイト鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なモナザイト鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表9 モナザイト鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT03_Fig09.gif - 4.87KB

 埋蔵量の単位は排水素トンで、 1排水素トンの重量は1重量トンです。
 納得できない方は、埋蔵量の単位を重量トンに置き換えて下さい。
 恒星間輸送を行う場合は、1排水素トン=40重量トンです。



 探索に成功した場合は、そのモナザイト鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「モナザイト」の品位は便宜上、2.5%(鉱石1トン中に25kg)としておきます。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「モナザイト」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、2.5%であると考えてください。

 選鉱と簡単な製錬によって、 「モナザイト」の品位は25%まで高められます。
 実際に鉱山から掘り出された「モナザイト」は採掘量の1割だけであり、 残り9割は捨石として処理される訳です。

 品位が10倍(25%)になった「モナザイト」は 「モナザイト塩化物」と呼ばれます(正式な呼び方ではありません)。
 品位2.5%の「モナザイト」10トンから、 品位25%の「モナザイト塩化物」1トンが得られる訳です。

 前述した通り、捨石の中には放射性のトリウムが含まれています。
 そのまま垂れ流すという選択肢もあり、その場合に処理費用は掛かりません。 必然的に周囲の環境破壊を伴いますので、個人的には耐え難い行為ですが、トラベラー的には正解なのでしょう。
 きちんと処理をするのであれば、 採掘された「モナザイト」1千トン当たり、 1トンの放射性廃棄物が発生したと考えて下さい。
 その処理費用はトン当たり10,000cr、ということにしておきます。
 「モナザイト塩化物」の価格に転嫁するのであれば、1トン当たり100crを上乗せして下さい。
 しかし、取引先が価格転嫁を受け入れてくれない可能性は高いでしょう。
 その場合は、赤字覚悟で処理費用を自己負担するか、環境破壊を黙認して垂れ流す、という選択を迫られます。
 これはこれで、良いシナリオネタになるかも知れませんね。



 以下の表に示した購入価格と維持費は、 採掘設備に選鉱と簡単な製錬のための設備を加えた金額です。


        表10 モナザイト鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT03_Fig10.gif - 4.95KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 スカンジウムの採掘設備と同様。



 採掘された「モナザイト」は、品位25%の「モナザイト塩化物」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり400crですが、 放射性廃棄物の処理費用を転嫁するのであれば、500crまで増えてしまいました。

 「モナザイト塩化物」も容積当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難だと思われます。
 元々、採算の悪い鉱石なのですが、放射性廃棄物の処理コストのため、さらに不経済となってしまうことでしょう。




(5)ゼノタイムの採掘

 ゼノタイムは、イットリウム(Y)に加え、 テルビウム(Tb)以下の重い希土類金属から成る リン酸塩鉱石です。
 貴重な希土類金属を得られるので有難い鉱石ですが、 この鉱石自体が滅多に見つかりません。

 採掘した「ゼノタイム」から希土類金属を製錬する手順については、 (7)希土類金属の分離の項を参照して下さい。



 「ゼノタイム」を採掘するためには、 新たな鉱床(ゼノタイム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ゼノタイム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なゼノタイム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表11 ゼノタイム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT03_Fig11.gif - 4.88KB

 埋蔵量の単位は排水素トンです。
 1排水素トンの重量は1重量トンですが、 納得できない方は、埋蔵量の単位を重量トンに置き換えて下さい。
 恒星間輸送を行う場合は、1排水素トン=40重量トンです。



 探索に成功した場合は、そのゼノタイム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「ゼノタイム」の品位は便宜上、2.5%(鉱石1トン中に25kg)としておきます。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「ゼノタイム」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、2.5%であると考えてください。

 選鉱と簡単な製錬によって、 「ゼノタイム」の品位は25%まで高められます。
 実際に鉱山から掘り出された「ゼノタイム」は採掘量の1割だけであり、 残り9割は捨石として処理される訳です。

 品位が10倍(25%)になった「ゼノタイム」は 「ゼノタイム塩化物」と呼ばれます(正式な呼び方ではありません)。
 品位2.5%の「ゼノタイム」10トンから、 品位25%の「ゼノタイム塩化物」1トンが得られる訳です。



 以下の表に示した購入価格と維持費は、 採掘設備に選鉱と簡単な製錬のための設備を加えた金額です。


        表12 ゼノタイム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT03_Fig12.gif - 4.95KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 スカンジウムの採掘設備と同様。



 採掘された「ゼノタイム」は、品位25%の「ゼノタイム塩化物」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり1,400cr。

 「ゼノタイム塩化物」は、 他の鉱石から得られない希土類金属を多く含んでいますので、 若干ですが、取引価格が高くなっています(需要があるので、高くなっても売れるのです)。
 それでも、この価格ではまだ恒星間の取引が困難でしょう。
 恒星間の流通経路へ乗せるためには、もう少し、価値を高めなければなりません。




(6)イオン吸着鉱の採掘

 イオン吸着鉱は特殊な鉱床形態をしているので、簡単には説明できません。
 ランタンセリウムプラセオジムネオジウムの他、 サマリウムガドリウム(Gd)などを豊富に含んだ鉱石です。

 イオン吸着鉱は、その岩盤の中に大量の硫酸を流し込み、 鉱石中の希土類金属を溶かして汲み上げる、という乱暴な方法を用いて採掘されます。
 希土類金属イオンを含んだ硫酸を汲み上げて、 それらを乾燥させれば、硫化物となった希土類金属を手軽に入手できる訳です。

 採掘した「イオン吸着鉱」から希土類金属を製錬する手順については、 (7)希土類金属の分離の項を参照して下さい。



 「イオン吸着鉱」を採掘するためには、 新たな鉱床(イオン吸着鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 イオン吸着鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なイオン吸着鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表13 イオン吸着鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT03_Fig13.gif - 4.92KB

 埋蔵量の単位は排水素トンで、 1排水素トンの重量は1重量トンです。
 納得できない方は、埋蔵量の単位を重量トンに置き換えて下さい。
 恒星間輸送を行う場合は、1排水素トン=40重量トンです。



 探索に成功した場合は、そのイオン吸着鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「イオン吸着鉱」の品位は便宜上、5.0%(鉱石1トン中に50kg)です。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「イオン吸着鉱」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、5.0%なのだと考えてください。

 選鉱と簡単な製錬によって、 「イオン吸着鉱」の品位は50%まで高められます。
 実際に鉱山から掘り出された「イオン吸着鉱」は採掘量の1割だけであり、 残り9割は捨石として処理される訳です。

 品位が10倍(50%)になった「イオン吸着鉱」は 「イオン吸着鉱酸化物」と呼ばれます(正式な呼び方ではありません)。
 品位5%の「イオン吸着鉱」10トンから、 品位50%の「イオン吸着鉱酸化物」1トンが得られる訳です。



 但し前述の通り、イオン吸着鉱の採掘はかなり乱暴な採掘方法であるため、大規模な環境破壊を伴ってしまいます。
 具体的には、採掘されるイオン吸着鉱1千トン当たり、1平方キロメートルが荒地に代わるものとして下さい。
 鉱床の規模が1万トンならば10平方キロメートルが、 規模10万トンならば100平方キロメートル、100万トンならば1,000平方キロメートルが、 不毛の荒れ地となってしまう訳です。

 これらの荒地は硫酸重金属イオンによって汚染されているため、 ほぼすべての動植物が生存不可能となるでしょう(特殊な生物ならば適応できるかも知れません)。
 おまけに、これらの環境破壊(金属イオンの汚染と、土壌・地下水の酸性化)は降雨によって下流域へと拡大してしまう可能性があります。
 必要ならば、レフリーはそれらの影響を決定して下さい。 これもシナリオネタとして使い勝手が良いのではないでしょうか。



 以下の表に示した購入価格と維持費は、 採掘設備に選鉱と簡単な製錬のための設備を加えた金額です。


        表14 イオン吸着鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT03_Fig14.gif - 5.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 スカンジウムの採掘設備と同様。



 採掘された「イオン吸着鉱」は、品位50%の「イオン吸着鉱酸化物」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり1,400cr。

 「イオン吸着鉱酸化物」も取引価格が低いので、 このままの形では恒星間を流通する投機貿易品として扱うことができません。




(7)希土類金属の分離

 ここからが希土類金属の本題です。

 希土類金属は、4種類の鉱石に、 希土類金属のほぼ全て(15種)が含まれているという、厄介な代物です。
 当然、それらを分離して単独の希土類金属へと加工しなければならない訳ですが、 お互いの性質が似通っているため、簡単には分離できません。

 幾つかの資料から、単独の希土類金属を得るためのコストは、 その希土類金属の価格の8割(80%)を占めている、と考えました。
 精錬所は、それだけのコストを掛けながら希土類金属を分離し、売却し、利益を得ている訳です。

 その実態を、希土類金属の鉱石1トン当たりで纏めてみました。



 まずは、バストネサイト=「バストネサイト酸化物」を扱う精錬所の場合から。


       表15 バストネサイト酸化物=1トンから得られる利益

MRT03_Fig15.gif - 16.5KB

 表の左端は原子番号希土類元素名
 その右側は希土類金属の価格で、単位はトン当たりのクレジット(cr/tons)

 更にその右は鉱石1トンから得られる希土類金属の含有量で、単位はキログラム(kg)

 その右に並んでいるのは価格含有量を掛けたもの。 これらの合計が精錬所の粗利となる訳です。

 最後の数値は分離コスト
 これらの合計が、希土類金属の鉱石1トンに必要な経費となりました。



 「バストネサイト酸化物」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、セリウム=250kg、ランタン=200kg、 ネオジウム=30kg、プラセオジム=15kg、 ガドリウム=5kg、サマリウム=3kg、 ホルミウム=0.4kgを得ることができる訳です。

 価格×含有量の合計は、9,150cr
 分離コストの合計は、7,320cr
 差し引き、1,830crの利益を得られました。



 次は、モナザイト=「モナザイト塩化物」を扱う精錬所の場合。


        表16 モナザイト塩化物=1トンから得られる利益

MRT03_Fig16.gif - 16.1KB

 表15と同じ形式です。



 「モナザイト塩化物」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、セリウム=100kg、ネオジウム=60kg、 ランタン=50kg、プラセオジム=20kg、 サマリウム=6kg、ガドリウム=5kg、 ジスプロシウム=1kgを得ることができました。

 価格×含有量の合計は、9,110cr
 分離コストの合計は、7,288cr
 利益の大きさは、1,822crです。



 3番目は、ゼノタイム=「ゼノタイム塩化物」を扱う精錬所の場合。


        表17 ゼノタイム塩化物=1トンから得られる利益

MRT03_Fig17.gif - 16.9KB

 表15と同じ形式です。



 「ゼノタイム塩化物」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、イットリウム=200kg、 ジスプロシウムエルビウム=15kgずつ、 セリウムイッテルビウム=10kgずつ、 テルビウムホルミウム=5kgずつ、 サマリウム=3kg、ツリウム=1.5kg、 ルテチウム=0.3kgを得ることができます。

 価格×含有量の合計は、30,050cr
 分離コストの合計は、24,040cr
 利益の大きさは、6,010crでした。
 かなり大きな金額です。



 最後は、イオン吸着鉱=「イオン吸着鉱酸化物」を扱う精錬所の場合です。


        表18 イオン吸着鉱酸化物=1トンから得られる利益

MRT03_Fig18.gif - 16.9KB

 表15と同じ形式です。



 「イオン吸着鉱酸化物」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、ランタンネオジウム=150kgずつ、 セリウム=100kg、プラセオジム=40kg、 イットリウム=20kg、サマリウムガドリウム=15kgずつ、 ジスプロシウム=5kg、エルビウム=3kg、 ユウロピウムテルビウムイッテルビウム=2kgずつ、 ホルミウム=1kg、ツリウム=0.3kg、 ルテチウム=0.1kgを得ることができました。

 価格×含有量の合計は、29,050cr
 分離コストの合計は、23,240cr
 利益の大きさは、5,810crです。
 「イオン吸着鉱酸化物」も、大きな金額となりました。



 これら4種の希土類金属の鉱石1トンから得られる利益を纏めると、以下のようになります。
 価格×含有量の合計から、 分離コストの合計を引いた金額が利益、 という形は変わりませんが、希土類金属の鉱石1トンを購入する費用もコストに加えました。


     表19 希土類鉱石(酸化物と塩化物)=1トンから得られる利益

MRT03_Fig19.gif - 9.20KB

 表の左端は希土類鉱石のタイプ
 上から順に、バストネサイト酸化物モナザイト塩化物ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物、です。
 モナザイト塩化物の欄が2つあるのは、放射性廃棄物のことを配慮したためで、 上側が通常の数値、下側が放射性廃棄物の処理費を転嫁した場合の数値(利益)としました。

 その右側は、価格×含有量の合計。
 その次が分離コスト鉱石の価格
 最後が利益額です。



 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物、 この2つから得られる利益額が意外と小さくなっていました。
 利益の大きさは、鉱石1トン当たり、1,322〜1,430crの範囲です。

 ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物、 この2つから得られる利益額は大きくて、鉱石1トン当たり4,410〜4,610crの範囲でした。

 精錬所の立場から希土類鉱石(酸化物と塩化物)を見てみると、 得られる利益の大きさは支払える輸送費の上限だ、とも言えます。
 得られる利益より高額の輸送費を支払ってしまった場合、精錬所の経営は自動的に赤字へと陥ってしまうでしょう。
 健全な黒字経営のためには、鉱石の輸送費を利益の大きさより低く抑えなければなりません。
 もちろん、低く抑えれば抑えるほど、精錬所の最終的な利益額も大きくなるのですが。



 これらの希土類鉱石(酸化物と塩化物)が、精錬所宛ての貨物として運ばれるのであれば、 その輸送費は実際の移動距離に関係なく、ジャンプ1回に付き1排水素トン当たり1,000crです。

 表19へ示した希土類金属の鉱石1トンから得られる利益から、 恒星間の輸送費を実際に減額してみました。
 恒星間の輸送費が掛からない場合(ジャンプなし、減額なし)と、 恒星間の輸送費が掛かる場合(ジャンプ1〜4、減額=−1,000〜4,000cr)の3通りで計算してあります。


    表20 希土類鉱石(酸化物と塩化物)の恒星間輸送による、利益の減額

MRT03_Fig20.gif - 10.5KB

 表の左端は希土類鉱石のタイプ

 表の右側は、恒星間の輸送費を減額した利益の大きさです。
 その大きさが、1,000cr以上であれば水色0〜1,000cr未満は黄色−1cr以下は赤色で示しました。



 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物から得られる利益の大きさは、 鉱石1トン当たり、1,322〜1,430crの範囲です。
 ですから、恒星間の輸送費が掛からなければ、その金額をそのまま利益にできるでしょう。 (惑星間や世界上の輸送費に関しては無視しておきます)。

 しかし、恒星間を1パーセクでも(ジャンプ1回)でも輸送すれば、輸送費として1,000crが減額されてしまいます。
 減額された利益の大きさは322〜430cr
 1トン当たり数百クレジットの利益しか得られないのですから、 これらの希土類鉱石は、あまり魅力的な商品ではありません。

 ジャンプ2回以上行った場合、希土類鉱石の精錬によって利益を得ることはできなくなりました。
 精錬所の経営は赤字となります。

 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物を扱う精錬所は、 同じ星系内(できれば輸送費があまり掛からない距離)に希土類鉱床が存在しなければなりません。
 これら2つの希土類鉱石は、3.バストネサイトの採掘4.モナザイトの採掘で考察した通り、 恒星間で流通させるには価値が低過ぎるのです。



 ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物から得られる利益の大きさは、 鉱石1トン当たり4,410〜4,610crの範囲でした。
 バネトネサイト酸化物モナザイト塩化物と比べれば約3倍の利益ですから、 入手できるのであれば、精錬所はゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物を扱う方が、 より大きな利益を得られるでしょう。

 ジャンプ1回の恒星間輸送を行った場合、これらの希土類鉱石から得られる利益の大きさは 3,410〜3,610crの範囲となりました。
 この程度の減額ならば、精錬所は黒字経営を続けられます。

 ジャンプ2回の恒星間輸送を行っても、利益の大きさは2,410〜2,610crの範囲。
 ジャンプなしの場合と比べて利益の大きさは半分まで減ってしまいましたが、まだ黒字でした。

 ジャンプ4回の恒星間輸送を行ってしまうと、利益の大きさは数百クレジットのオーダーまで下がってしまいます。
 具体的には410〜610cr
 この程度の利益しか得られないのであれば、希土類鉱石が輸送されることはないでしょう。

 ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物であっても、 これらの希土類鉱石が恒星間を輸送される場合、ジャンプ3回が上限だということになりました。
 精錬所は、ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物を扱うべきなのです。
 もっとも表6で示した通り、 ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物を入手できる可能性は、 3分の1程度しかないのですが。




(8)ミッシュメタルの製造と流通

 前項、(7)希土類金属の分離で考察してきた通り、 希土類金属の鉱石は安価であり、恒星間の投機貿易品として扱うことは難しそうです。
 採掘量の3分の2を占めるバストネサイト酸化物モナザイト塩化物は、 精錬所の利益額から考えて、恒星間を輸送することができません。投機貿易品として扱うことも論外です。
 ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物ならば、 ジャンプ3回を上限として恒星間の輸送が可能ですが、これらの鉱石の流通量は、全体の3分の1しかありません。
 また、スカンジウムを得るための専用鉱石「スカンジウム精鉱」だけは、 1排水素トン当たり10,000crという高い価格から投機貿易品と成り得るのですが、 表1へ示した通り、スカンジウム自体の需要が極めて小さいため、大規模な取引は無理だと分かりました。

 つまり「レフリーズ・マニュアル、p.51」の通商・貿易フローチャート、表10b.加工品の中、 「35.希土類(Rare Earths)」に記載されている商品は、 該当する物がない、という困った状況に陥ってしまった訳です。
 何とか解決策を考えてみましょう。

 もっとも、この「希土類」という項目が表10a.天然資源の中に無かったということから、 希土類金属の鉱石が投機貿易品として扱われないことは予想できました。
 「希土類」は10b.加工品の中に記載されていたのですから、 この「希土類」は、地金として扱われている可能性もあります。
 しかし、すべての希土類金属地金として流通している状況は面白くありません。
 そうした状況は、すべての鉱山に高度な設備を備えた、とても高価な精錬所が必ず存在する、 ということを意味してしまうからです。
 流石に、それは不自然でしょう。



 そんなことを考えながら調べていたら、実に好都合な手頃な流通形態が見つかりました。
 それはミッシュメタル
 希土類金属の鉱石から不純物を取り除き、希土類金属の地金にしたようなものです。
 但し、その中に含まれている希土類金属は分離されていません。
 イットリウムや、ランタンから始まり ルテチウムで終わる希土類金属、 すべてが混ざったままの金属地金です。

 希土類金属は入り混じった様々な元素を分離することが大変なので、こういった形態での流通も有り得るでしょう。



 ミッシュメタルを製造するためには、希土類金属の鉱石酸化物ならば2トン、塩化物ならば4トン、必要です。
 精錬のコストは鉱石1トン当たり50cr、というルールにしました。
 酸化物から製造する場合は100cr、塩化物から作る場合は200crが掛かるということです。

 希土類金属の鉱石ミッシュメタルを並べた結果は以下の通り。


          表21 希土類鉱石とミッシュメタルの価格

MRT03_Fig21.gif - 6.27KB

 表の左端は希土類金属の状態
 上から順に、塩化物酸化物ミッシュメタルです。

 表の横軸は希土類鉱石のタイプ
 右から順に、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、イオン吸着鉱を並べました。

 それらの交差する欄が、希土類金属の鉱石ミッシュメタルの価格です。
 単位は1トン当たりのクレジット(cr)。
 モナザイトの欄には数字が2つありますが、上側が通常の価格。
 下側が、放射性廃棄物の処理費を転嫁した場合の価格としました。



 精錬所が、ミッシュメタルから希土類金属を分離し、 売却した場合の利益を以下に纏めてみます。
 表15〜表18と同じように、ミッシュメタル1トン当たりで纏めてみました。

 まずは、バストネサイト=「バストネサイト・ミッシュメタル」を扱う精錬所の場合から。


    表22 バストネサイト・ミッシュメタル=1トンから得られる利益

MRT03_Fig22.gif - 16.6KB

 表の左端は原子番号希土類元素名
 その右側は希土類金属の価格で、単位はトン当たりのクレジット(cr/tons)

 更にその右は鉱石1トンから得られる希土類金属の含有量で、単位はキログラム(kg)
 バストネサイト・ミッシュメタルは、バストネサイト酸化物2トンから製造されるので、 鉱石1トンから得られる希土類金属の含有量も2倍になっています。
 合計が1トン(=1,000kg)よりも少しだけ大きくなってしまいましたが、これは誤差のようなものですから、気にしないで下さい。

 その右に並んでいるのは価格含有量を掛けたもの。 これらの合計が精錬所の粗利。

 最後の数値は分離コスト
 これらの合計が、希土類金属の鉱石1トンに必要な経費です。



 「バストネサイト・ミッシュメタル」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、セリウム=500kg、ランタン=400kg、 ネオジウム=60kg、プラセオジム=30kg、 ガドリウム=10kg、サマリウム=6kg、 ホルミウム=0.8kgを得ることができました。

 「バストネサイト・ミッシュメタル」は、 セリウムを500kg(50%)、ランタンを400kg(40%)も含んでおきながら、 同じ重さのセリウムランタンと比べて、価格は10分の1(1,000cr)しかありません。
 純度が問題にならない場合、蓄電池の電極や水素吸蔵合金に用いる場合は、高純度ランタンの代わりに、 ミッシュメタルを用いることが多いそうですが、これだけの価格差があれば納得できます。

 価格×含有量の合計は、18,300cr
 分離コストの合計は、14,640cr
 利益の大きさは、3,660crでした。



 次は、モナザイト=「モナザイト・ミッシュメタル」を扱う精錬所の場合。


     表23 モナザイト・ミッシュメタル=1トンから得られる利益

MRT03_Fig23.gif - 16.5KB

 表22と同じ形式です。



 「モナザイト・ミッシュメタル」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、セリウム=400kg、ネオジウム=240kg、 ランタン=200kg、プラセオジム=80kg、 サマリウム=24kg、ガドリウム=20kg、 ジスプロシウム=4kgを得ることができました。

 価格×含有量の合計は、36,440cr
 分離コストの合計は、29,152cr
 利益の大きさは、7,288crです。

 利益が小さく、放射性廃棄物まで生じるモナザイトには魅力を感じなかったのですが、 ミッシュメタルに加工すればバストネサイトよりも高価な商品となる、 ということが判明しました。
 場合によっては、投機貿易品として使えるかも知れません。



 3番目は、ゼノタイム=「ゼノタイム・ミッシュメタル」を扱う精錬所。


     表24 ゼノタイム・ミッシュメタル=1トンから得られる利益

MRT03_Fig24.gif - 17.1KB

 表22と同じ形式です。
 重量の合計が1トン(=1,000kg)より大きくなってしまいましたが、これも誤差です。無視して下さい。



 「ゼノタイム・ミッシュメタル」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、イットリウム=800kg、 ジスプロシウムエルビウム=60kgずつ、 セリウムイッテルビウム=40kgずつ、 テルビウムホルミウム=20kgずつ、 サマリウム=12kg、ツリウム=6kg、 ルテチウム=1.2kgを得ることができます。
 「ゼノタイム・ミッシュメタル」は、 ほとんどイットリウムの塊として扱えそうな気がしてきました。

 価格×含有量の合計は、120,200cr
 分離コストの合計は、96,160cr
 利益の大きさは、24,040crです。

 元からゼノタイムは大きな利益を見込める希土類金属鉱石でしたが、 ミッシュメタルに加工することで、更に大きな利益を得られるようになりました。
 投機貿易品として扱うことも、問題なくできるでしょう。



 最後は、イオン吸着鉱=「イオン吸着鉱・ミッシュメタル」を扱う精錬所の場合です。


     表25 イオン吸着鉱・ミッシュメタル=1トンから得られる利益

MRT03_Fig25.gif - 17.2KB

 表22と同じ形式です。
 重量の合計が1トン(=1,000kg)より大きくなったのは、数字合わせのための誤差。



 「イオン吸着鉱・ミッシュメタル」を原料として希土類金属を分離した場合、 精錬所は、ランタンネオジウム=300kgずつ、 セリウム=200kg、プラセオジム=80kg、 イットリウム=40kg、サマリウムガドリウム=30kgずつ、 ジスプロシウム=10kg、エルビウム=6kg、 ユウロピウムテルビウムイッテルビウム=4kgずつ、 ホルミウム=2kg、ツリウム=0.6kg、 ルテチウム=0.2kgを得ることができます。

 価格×含有量の合計は、58,100cr
 分離コストの合計は、46,480cr
 利益の大きさは、11,620crでした。

 ゼノタイム・ミッシュメタルほどではありませんが、 イオン吸着鉱・ミッシュメタルも十分に大きな利益を期待できるのです。
 投機貿易品として流通することもあるでしょう。



 これら4種のミッシュメタル1トンから得られる利益を纏めると、以下のようになりました。
 ミッシュメタル1トンを購入する費用もコストに加えてあります。


     表26 希土類鉱石(ミッシュメタル)=1トンから得られる利益

MRT03_Fig26.gif - 9.20KB

 表19と同じ形式です。

 表の左端は希土類鉱石のタイプ
 その右側は、価格×含有量の合計。
 その次が分離コスト鉱石の価格
 最後が利益額



 精錬所が扱う鉱石を酸化物/塩化物からミッシュメタルに変更したことで、 精錬所が得られる利益の大きさは、1.8倍〜3.9倍に増大しました。
 ここで更に、恒星間の輸送費を減額して考察してみましょう。
 今回も恒星間の輸送費が掛からない場合(ジャンプなし、減額なし)と、 恒星間の輸送費が掛かる場合(ジャンプ1〜4、減額=−1,000〜4,000cr)の3通りで計算してみました。


   表27 希土類鉱石(ミッシュメタル)の恒星間輸送による、利益の減額

MRT03_Fig27.gif - 10.3KB

 表20と同じ形式で、表の左端は希土類鉱石のタイプ

 表の右側は、恒星間の輸送費を減額した利益の大きさ
 その大きさが、1,000cr以上であれば水色0〜1,000cr未満は黄色−1cr以下は赤色で示しました。



 バストネサイト・ミッシュメタルは、輸送費が掛からない場合の利益が2,660cr
 恒星間輸送もジャンプ1回だけならば1,660crですので、それなりに儲かります。
 ジャンプが2回になると660crだけになってしまうので、魅力が低下。
 ジャンプ3回以上の恒星間輸送は赤字になってしまうため、出来ません。
 現実的に可能な恒星間輸送はジャンプ1回だけということになってしまいましたが、 ジャンプ2が可能なS型偵察艦A2型外航自由貿易船は 辺境にも少なくない数が運航しています。
 精錬所の存在しない辺境星系でバストネサイトを採掘した場合は、 それをミッシュメタルに加工すれば良いのです。
 精錬所の存在する星系まで、1〜2パーセクの距離を運んでくれる宇宙船は簡単に見つかることでしょう。
 バストネサイト・ミッシュメタルの価格は、1排水素トン当たり1,000crですから、 残念ながら投機貿易品としての魅力に足りません。
 恒星間を輸送されるバストネサイト・ミッシュメタルの大半は、 精錬所を宛先とした一般的な貨物として輸送されることでしょう。
 つまり、採掘を始める前に取引先を見つけておかなければならない、ということが分かりました。



 モナザイト・ミッシュメタルは、輸送費が掛からない場合の利益が4,888〜5,288cr
 恒星間輸送はジャンプ3〜4回までなら黒字で可能ですが、 分離による利益を半分以上残しておこうとするのであれば、ジャンプ2回が上限となります。
 ジャンプ2回なら、最大で4パーセクを輸送可能。
 辺境星系で希土類鉱石を採掘するのであれば、 モナザイトはかなり使い勝手の良い鉱石となりました。
 低人口の辺境星系ならば、放射性廃棄物の発生も気にならないでしょう。
 分離した場合に得られる利益が意外と大きいので、投機貿易品として扱うことができるかも知れません。



 ゼノタイム・ミッシュメタルは、輸送費が掛からない場合の利益が18,040cr
 これだけ利益が大きいのであれば、恒星間輸送はジャンプ5〜6回でもこなせます。
 実際問題として、イッテルビウムテルビウム以降の重希土類を入手したいのであれば、 最も効率の高い希土類鉱石ゼノタイムに間違いありません。
 滅多に見つからない希土類鉱床のタイプですから、 星域をひとつ横断するだけの遠距離を輸送したとしても、採算は合うことでしょう。
 1排水素トン当たりの価格は6,000crになっていますから、投機貿易品としても十分な価値があります。



 イオン吸着鉱・ミッシュメタルは、輸送費が掛からない場合の利益が8,620cr
 恒星間輸送はジャンプ4回まで可能。
 もちろん、ジャンプの回数が少ないほど、精錬所の利益が大きくなる訳ですが、 イオン吸着鉱ならば8パーセクの距離を輸送することが経済的に可能となりました。
 辺境星系で希土類鉱石を採掘する場合は、とても魅力的な鉱石です。
 環境破壊も、低人口の辺境星系ならば問題にはなりません。
 イオン吸着鉱・ミッシュメタルの価格は、1排水素トン当たり3,000cr。
 場合によっては投機貿易品として扱うことができるでしょう。



 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物の恒星間輸送が困難だったため、 その問題の解決手段として思いついたミッシュメタルですが、 予想以上に大きな利益を得ることができるようになりました。
 ミッシュメタルの製造は、簡易な設備でも可能でありながら、 希土類鉱石の価値を大きく高めることができます。
 トラベラー世界で希土類を流通させる形態として、 ミッシュメタルは極めて有望であると判明しました。




(9)希土類金属の流通形態と流通量

 以上、「スカンジウム、イットリウム、ランタノイド15種」から成る 「希土類」17種の採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。
 まずは、精鉱酸化物塩化物ミッシュメタルといった、中間加工品での流通から。

         表28 希土類鉱石の流通形態と流通量、価格

MRT03_Fig28.gif - 10.9KB

 左端は金属名。
 次が流通形態で、精鉱化合物(酸化物/塩化物)ミッシュメタルといった、中間加工品になります。

 流通量は10億人当たりの流通量。
 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。

 表の右端には、流通量×価格という数値を載せました。単位は(MCr)
 希土類鉱石の市場規模を表した数値のようなものです。



 「スカンジウム精鉱」は、品位1%でトン当たり10,000cr。
 「スカンジウム精鉱」は高価なので投機貿易品としても魅力的ですが、 (1)スカンジウムの採掘で論じた通り、ほとんど流通していません。
 トラベラー世界ではウラン(U)の採掘/精錬がほとんど行われていない、という事態を想定して、 スカンジウムのための専用鉱石をでっち上げましたが、 その流通量は人口10億人当たり900トンだけでした。

 「バストネサイト酸化物」は、品位50%でトン当たり400cr。
 このままでは恒星間を輸送するだけの価値もありませんが、 「バストネサイト・ミッシュメタル」に加工すれば、 その品位は100%まで上がり、価格はトン当たり1,000crとなりました。
 投機貿易品としては使えませんが、貨物としてならばジャンプ1回の距離を運べるでしょう。
 流通量は「バストネサイト酸化物」で18,000トン、 「バストネサイト・ミッシュメタル」で9,000トンです。

 「モナザイト塩化物」は、品位25%でトン当たり400cr。
 「モナザイト・ミッシュメタル」に加工すれば、 その品位は100%まで上がり、価格はトン当たり2,000crとなります。
 その場合、恒星間輸送の経済的上限はジャンプ2回まで。
 流通量は「モナザイト塩化物」で8,000トン、 「モナザイト・ミッシュメタル」で2,000トンでした。

 「ゼノタイム塩化物」も、品位25%でトン当たり1,400cr。
 「ゼノタイム・ミッシュメタル」に加工すれば、トン当たり6,000crになりました。
 ゼノタイムは比較的高価ですので、貨物としてならば塩化物でもジャンプ2回、 ミッシュメタルに加工すればジャンプ5〜6回でも輸送可能でしょう。
 流通量は「ゼノタイム塩化物」で1,000トン、 「ゼノタイム・ミッシュメタル」で250トンだけでした。

 「イオン吸着鉱酸化物」は、品位50%でトン当たり1,400cr。
 このままでもジャンプ1回くらいなら恒星間輸送が可能ですが、 「イオン吸着鉱・ミッシュメタル」に加工すれば、価格はトン当たり3,000crまで上がります。 恒星間輸送はジャンプ4回まで可能。。
 流通量は「イオン吸着鉱酸化物」で13,000トン、 「イオン吸着鉱・ミッシュメタル」で6,500トンです。

 「レフリーズ・マニュアル、p.51」の通商・貿易フローチャート、 表10b.加工品の中、「希土類(Rare Earths)」とは、 上記4種の「ミッシュメタル」には該当するのでしょう。



 流通量の合計は、精鉱/酸化物/塩化物の合計40,900トンでした。
 かなり少ない量です。
 これまでの考察で類似した数値を探すのであれば、39,700トンモリブデン精鉱38,833トン、というところでしょうか。
 流通量×価格39MCr
 大した流通量ではありませんし、市場規模も小さなものだと分かりました。

 精鉱/ミッシュメタルの合計になると、流通量は18,650トンまで半減します。
 類似した数値は、モリブデン地金21,500トンか、 チタン地金20,000トン
 流通量×価格は、少しだけ上がって43MCr
 流通量が半減したのに対し、その市場規模はわずかながら大きくなっていました。



 最後ですが、品位100%の金属地金について、その流通量と価格を纏めてみます。


          表29 希土類金属地金の流通量と価格

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 左端は金属名。
 流通形態は金属地金(品位100%)のみです。
 流通量は今回も10億人当たりの流通量で、価格は1トン当たりの取引価格(cr)。



 それぞれの「希土類金属」に関する考察は行いませんが、 それらの流通量と市場規模については、少し整理しておきたいと思います。

 流通量に関しては、ランタン=5,300トンセリウム=6,000トンネオジウム=2,900トンの3つによって、ほぼ寡占されています(合計は14,200トンで86.6%)。
 残り2,200トン(13.4%)の流通量を、残り14種類の希土類で分け合うことになる訳ですが、 それぞれの希土類は御覧の通り、わずかな流通量しかありません。
 大規模な市場を期待することは間違っているようです。

 市場規模に関しては、ネオジウム=116MCrサマリウム=150MCr ランタン=53MCrセリウム=60MCrガドリウム=66MCrの5つで、寡占状態(70.9%)でした。
 実に面白いデータです。



 例えば、最も高価な希土類は1トン当たり100MCrのプロメチウムですが、 この希土類には需要がありません。
 ですから、どんなに高価であっても、その市場規模は0MCrです。
 誰も買ってくれない、ということですね。
 もちろん、需要がない希土類を、わざわざ分離する精錬業者も居ないでしょう (実際のところ、プロメチウムは人工元素なので、分離で得ることは出来ませんが)。

 次に高価な希土類ルテチウムは1トン当たり4MCrですが、 これにも明確な需要(用途)がありません。

 希土類の価格は基本的に、流通量(需要と供給のバランス)から決まります。
 トン当たりの価格が高い希土類は流通量が少なく、 安い希土類は流通量が多い、という単純なことなのですが。





4.鉱山開発の現状と背景


 この「鉱物資源シリーズ」全てに共通していることですが、 鉱床探索の行為判定によって発見される鉱床の規模は、そのサイコロの目とDMの大きさに依存しています。

 例えば、「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表3、 鉄鉱床の探索において、探索費用として100MCrを費やした場合、 修正後のサイコロの目が「19以上」ならば10億トン、 「17〜18」ならば1億トンの鉄鉱床を発見することができました。
 しかし、サイコロの目が「15〜16」ならば1千万トンの鉱床しか発見できず、 「14以下」では探索に失敗し、何も発見できなかったことになるのです。

 レフリーの裁量で、探索に失敗した場合は、「15〜16」の欄に示した規模の鉱床よりも、 もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構わない、ということにしてありますが、この件はとりあえず保留しておきましょう。



 また、探索費用の金額が小さかった場合も、見つかる鉱床は規模の小さなものばかりとなります。
 再び上記の表3を例に用いますが、探索費用が1桁小さい10MCrの場合、発見できる鉄鉱床の規模は、 1億トン100万トンでした。
 探索費用が1MCrならば、発見できる鉄鉱床の規模は、 1千万トン10万トン
 探索費用が0.1MCrならば、発見できる鉄鉱床の規模は、 100万トン1万トンまで小さくなる訳です。



 ルールが煩雑になることを避けるため敢えて制限を設けませんでしたが、 これらの鉱山はどれだけの大きさの鉱床規模まで、その存在が許されるのでしょうか?




(1)内需による鉱床規模の制限

 まずは鉱床探索の結果について、「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表3、 鉄鉱床の探索を例に挙げて少し考えてみましょう。
 この考察の中では、レックの名士マクダフが、新たな鉄鉱山を開発する、ということになっていました。

 さて、レックの人口は、UWPデータの人口レベル=7と人口倍率=5より、5千万人です。5千万は、100万の50倍。
 の需要は、人口100万人当たり142,000トンですから、その50倍は710万トンです。
 レックにおけるの消費量は、毎年710万トンだと判明しました。

 鉱山から採掘される鉄鉱石の品位は50%です。
 ですから、年間710万トンのを生産するために必要な鉄鉱石の量は、 年間で1,420万トンになりました。
 通常、鉱山はその埋蔵量を40年間で掘り尽くします。
 1年間の採掘量は、その埋蔵量の40分の1になり、採掘中の鉱床規模(埋蔵量)は、年間採掘量の40倍。
 1,420万トンの40倍ですから、採掘中の鉱床規模はレック全体で5億6,800万トンという計算になりました。

 もちろん、この数字はすべての鉱山が通常の採掘を行っている場合です。
 何らかの理由で2交替制を行っているのであれば、採掘中の鉱床規模は半減して2億8,400万トン。
 年中無休24時間態勢で採掘しているのであれば、鉱床規模は1億4,200万トンとなるでしょう。
 多くの鉱山が2交替制年中無休24時間態勢で採掘を行っているという状況は、 需給バランスが崩れている(供給が足りない)ことを意味しています。 本来は不自然な状況ですから、あまり頻発させないようにして下さい。
 その背後には、人口の急増やテックレベルの上昇による需要増加、あるいは、 戦争や災害による鉱山の操業停止(破壊)、資源の枯渇といった原因が存在するでしょう。

 とりあえず、レックの人口やテックレベルは安定していますから、レック全体の鉱床規模は「5億6,800万トン」のままだということにしました。
 今更ですが、マクダフが開発した鉄鉱床(鉱床規模=10億トン)は、 少々、その規模が大き過ぎたようです。
 レック内に存在する他の鉄鉱山すべてを廃業させたとしても、 マクダフの鉄鉱山から掘り出される鉄鉱石は半分強しか売れません。
 レック全体の需要がそれだけしかないからです。
 鉄鉱石を星系外へ輸出することは価格面の問題から困難ですので、 彼の鉄鉱山は投資を回収することもできず廃業することとなるでしょう。
 マクダフは需要と供給のバランスを読み間違え、過剰な規模の鉱山を開発してしまった訳です。



 実を言いますと、鉄鉱床の探索表は、人口10億人の金属消費量を前提として作り上げていました。
 人口10億人の高人口世界では、年間のの消費量が1億4,200万トンです。
 そして、そこから求めた鉱床規模の総合計は113億トンでした。 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床が10個ぐらい存在する、という想定をしていた訳です。 その点を考慮するのであれば、鉄鉱床の探索表の一番下、探索費用=100MCrの欄を使えるのは、 人口10億人以上(人口レベル=9以上)の高人口世界に限る、というルールを追加すべきでした。
 今更ですが、ここでハウス・ルールの修正をしておこうと思います。

 同じように、鉄鉱床の探索表で下から2番目、探索費用=10MCrの欄を使えるのは、 人口1億人以上(人口レベル=8以上)の世界に限られる、としました。
 下から3番目、探索費用=1MCrの欄を使えるのは、人口1千万人以上(人口レベル=7以上)の世界で、 下から4番目、探索費用=0.1MCrの欄を使えるのは、人口100万人以上(人口レベル=6以上)の世界です。

 その世界の消費量を1つだけの鉱山で賄う、という方針であれば、この制限は人口レベルで1つ分緩くなります。
 鉄鉱床の探索表の一番下、 探索費用=100MCrの欄を使えるのは、人口1億人以上(人口レベル=8以上)の世界、 下から2番目、探索費用=10MCrの欄を使えるのは、人口1千万人以上(人口レベル=7以上)の世界、 下から3番目、探索費用=1MCrの欄を使えるのは、人口100万人以上(人口レベル=6以上)の世界、 下から4番目、探索費用=0.1MCrの欄を使えるのは、人口10万人以上(人口レベル=5以上)の世界、 という風に変わりました。
 しかし、たった1つの鉱山に資源の供給を委ねることは非常に危険です。
 鉱山事故が1つ発生しただけで資源供給が途絶える訳ですから、産業界全体に大きな被害が及んでしまうでしょう。
 まともな政治家や経営者が居れば、そんなリスクの高いことは行わない筈ですが、トラベラー世界では稀に起こり得るかも知れません。
 そういった時のために用意した特別ルールです。



 この人口レベルによる制限は以外の金属、亜鉛金/銀/白金族アルミ(ボーキサイト)マグネシウムチタンにも適用されます (上記はすべて「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」に掲載)。
 探索費用の金額が異なっている表もありますが、 一番下の欄を使えるのは人口レベル9以上の世界に限る、という条件に変わりはありません。

 もちろん「MRT02:トラベラー宇宙の鉱物資源、その2」に掲載されている金属、 クロムマンガンニッケルモリブデンタングステンバリウムジルコニウムストロンチウムアンチモンニオブリチウムも同様です。

 今回の考察「MRT03:トラベラー宇宙の鉱物資源、その3」に掲載されている スカンジウムの場合、鉱床の探索表に欄が2つしかありません。
 この金属はあまりにも需要が少ないので、 一番下、探索費用=1MCrの欄を使えるのは人口レベル=9以上の世界に限られ、 下から2番目、探索費用=0.1MCrの欄を使えるのは人口レベル=8以上の世界、ということになりました。 人口レベル=7以下の世界ではスカンジウムを採掘することが経済的に許されない、のです。
 他の希土類を得るための鉱石、バストネサイトボルサイトゼノタイムイオン吸着鉱も、 鉱床の探索表の欄は3つだけでした。
 つまり一番下、探索費用=1MCrの欄を使えるのは人口レベル=9以上の世界だけ、 下から2番目、探索費用=0.1MCrの欄を使えるのは人口レベル=8以上の世界だけ、 下から3番目、探索費用=0.01MCrの欄を使えるのは人口レベル=7以上の世界に限られる、ということです。 そして人口レベル=6以下の世界では、これらの希土類も採掘できません。

 未投稿ですが、「MRT04:トラベラー宇宙の鉱物資源、その4」に掲載されている、 ホウ素水銀ベリリウムセシウムも欄が3つしかありませんので、同様の制限が課せられます。
 実際のところ、人口レベル=6以下の非工業世界であっても、 ホウ素水銀だけは需要がありそうに思えますが、 私の作ったハウス・ルールではそれを再現できないのです。
 そのあたりの事情はレフリーの裁量にお任せすることにしました。

 とにかく、その鉱山から産出する鉱石をすべて星系内で消費するという想定であれば、 その鉱山の採掘量(鉱床規模)は、その世界の人口によって制限を受けます。
 上記の制限に従って下さい。
 従わなかった場合、その鉱山で採掘した鉱石すべてを売り捌くことは出来ません。
 不良在庫と化した鉱石の山を抱え、やがて鉱山は倒産してしまうことでしょう。
 さもなくば倒産しないように何かの行動を始めるかも知れませんが、 それはそれで面白いシナリオネタになると思います。




(2)輸出による鉱床規模の制限

 鉱石を輸出するのであれば、少ない内需に固執する理由はありません。
 もちろん、輸出先の世界の需要というものは考えておかなければなりませんが、輸出先が人口10億人以上の高人口世界であるのならば、 鉱床の探索表は問題なく、一番下の欄を使用可能になるです。

 しかし内需の場合とは異なって、恒星間輸送の経費、という大きな問題が生じてしまいました。
 鉱石自体の価格によって、恒星間輸送が経済的に制限されてしまうのです。

 例えばの原料である鉄鉱石は、1排水素トン当たり5crという低価格ですので、 ニッケル/コバルトを豊富に含んだアステロイドという形でなければ、 恒星間を輸送することができませんでした。

 これまでの考察を見直すと、消費量(生産量)の多い金属(鉱石)ほど価格が安価であり、恒星間輸送には向いていないことが分かりました。 鉱山経営を試みる場合、採掘する鉱石が恒星間輸送に見合うものか、しっかりと検討して下さい。
 採掘を始めてから「採算が合わない」ことに気付いてしまうと、悲惨です。



 もう1つの制限は、その星系に寄港する宇宙船の輸送能力。

 掘り出した鉱石は、星系外へ運ばなければならない訳ですが、鉱石が自力で移動してくれることはありません。
 必ず、恒星間を移動できる宇宙船が必要となります。
 その輸送力を制限する要素が、寄港する宇宙船の輸送能力。
 どれだけの鉱石を掘り出しても、それを運ぶ宇宙船が存在しなければ、鉱石を輸出することはできないのです。

 星系に寄港する宇宙船の数と大きさ、輸送能力については、 MAG様の力作「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」を御覧下さい。

 要点だけ抜粋するならば、宇宙港規模=6の星系は、貨物量が年間で100万トンでした。 その星系において、年間100万トン以上の鉱石を採掘することは無意味です。
 もっとも、その星系に寄港する全ての商船の船倉を押さえることは困難でしょう。
 実際に採掘できる鉱石の量は、もう少し少なくなる筈です。

 同様に、宇宙港規模=5の星系は、貨物量が年間10万トン
 宇宙港規模=4の星系は、貨物量が年間1万トンとなります。

 鉱山の開発を試みる世界が主要世界ではなく地方世界である場合は、 宇宙港規模3以下になることも十分に有り得るでしょう。
 宇宙港規模=3の世界は、貨物量が年間1千トンで、 宇宙港規模=2の世界は、貨物量が年間100トンしかありません。
 その貨物量(輸出量)の制限に見合った規模の鉱山を開発するように心掛けて下さい。



 (1)内需による鉱床規模の制限と違って具体的な制限が分かり難いため、 それぞれの金属名宇宙港規模から、 経営可能な鉱山の最大規模を早見表に纏めました。

 まずは主要金属から。


    表30 輸出を前提とした、経営可能な鉱山の最大規模(主要金属)

MRT03_Fig30.gif - 13.1KB

 縦軸が、金属名
 横軸が、その星系、あるいは、その地方世界の宇宙港規模です。

 表の中に示した数字は、経営可能な鉱山の最大規模

 その数値の色は様々ですが「白色」で示した数値は、 鉱石加工品金属地金の取引価格が安価であるため 恒星間輸送の経費を賄えない、ということを意味しています。
 何度も引き合いに出していますが、縦軸の一番上、がそれに該当していました。
 の原料である鉄鉱石は、1排水素トン当たり5crという低価格ですので、 ニッケル/コバルトを豊富に含んだアステロイドという形でなければ、 恒星間を輸送することができません。
 精錬して鉄/鋼鉄(Iron/Steel)という形に変えても、まだ安過ぎます。
 一応、「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中には 「鉄/鋼鉄(Iron/Steel)」が明記されているのですが、 私の「ハウス・ルール」では恒星間輸送に見合わない品物だ、ということになってしまいました。
 数値が「白色」で示されている金属の鉱山を開発しても、 その鉱山の利益はすべてが恒星間輸送の経費に費やされてしまい、経営はすぐに行き詰ってしまうでしょう。

 「青色」で示した数値は、 鉱石加工品の取引価格が安価であるため、 金属地金でなければ恒星間の輸送経費を賄えない、ということを意味しています。
 亜鉛といったベースメタルは、 精錬済みの金属地金の形態でのみ恒星間輸送が可能でした。 これらの鉱山には必ず精錬所が付属していなければなりません。
 アルミニウムマグネシウム、2つの軽金属も、 金属地金の形態まで精錬しなければ、恒星間輸送を行えませんでした。
 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リスト、加工品の中には 「アルミニウム(Aluminum)銅(Copper)錫(Tin)亜鉛(Zinc)」が明記されているので、公式ルールとの矛盾もないでしょう。
 金/銀/白金族については、採掘と同時に製錬を済ませてしまう方式を取っていますので、 恒星間を輸送される鉱石自体が存在しません。これらも金属地金として輸送されることになりました。
 投機貿易品リスト、加工品の中には「金(Gold)銀(Silver)貴金属(Precious Metals)」なども明記されています。

 「黄色」で示した数値は、 鉱石の形でも恒星間輸送が可能な金属を意味しています。
 上記、表30の中では、チタンだけしか該当しません。
 チタンは「合成ルチル」という半加工品の鉱石として恒星間輸送可能となりますが、 これを作るためにも精錬所は不可欠です。

 「赤色」で示した数値は、 鉱床規模が小さ過ぎて、開発しても採算が合わない鉱山を意味しています。
 通常、こうした鉱床が開発されることはありません。
 後で詳しく「(3)鉄鉱山〜(7)モリブデン鉱山の規模と経済性」というテーマで考察しますが、 現時点では棚上げしておきます。



 次は、主要なレアメタル


   表31 輸出を前提とした、経営可能な鉱山の最大規模(主要なレアメタル)

MRT03_Fig31.gif - 8.41KB

 表30と同じ形式です。
 経営可能な鉱山の最大規模を示す色についても同様。

 クロムマンガンニッケルモリブデンバナジウムタングステンコバルト」から成る主要なレアメタル7種は、 高価なモリブデン精鉱タングステン精鉱の2つ以外、 鉱石のままでは恒星間輸送を行えませんでした。
 クロムマンガンは精錬しても安価なままであるため、 鉄鉱石と同じように、恒星間の輸送ができません。
 ニッケルは、製錬すれば金属地金の形態で恒星間輸送が可能となりますが、前述した通り、 ニッケル/コバルトを豊富に含んだアステロイドという競争相手が存在しますので、 恒星間輸送を行うことは難しいかも知れません。
 逆に考えれば、アステロイドという形態での恒星間輸送は大いに有り得る訳です。
 バナジウムコバルトは 他の鉱物の副産物として得られるレアメタルですから、専用鉱石が存在しません。

 これらの金属は、「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」として扱われます。



 3番目は、消費量の多いレアメタルです。


 表32 輸出を前提とした、経営可能な鉱山の最大規模(消費量の多いレアメタル)

MRT03_Fig32.gif - 8.28KB

 表30と同じ形式です。
 経営可能な鉱山の最大規模を示す色についても同様。

 バリウムジルコニウムストロンチウムアンチモンニオブリチウムから成る 消費量の多いレアメタル6種は、その用途から、 金属地金としての流通がほとんど存在しません。
 バリウムストロンチウムの2つは安価であるため、恒星間の輸送が困難でした。
 ジルコニウムアンチモンニオブリチウムの4つは、それぞれ二酸化ジルコニウム三酸化アンチモンニオブ精鉱フェロニオブ炭酸リチウム水酸化リチウムの形態で、恒星間を輸送できます。



 4番目は、希土類


     表33 輸出を前提とした、経営可能な鉱山の最大規模(希土類)

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 表30と同じ形式です。
 経営可能な鉱山の最大規模を示す色についても同様。

 希土類であるスカンジウムイットリウムランタノイド系列の合計17元素は、 金属地金ミッシュメタルの形で恒星間を運ばれることが多いでしょう。



 最後は、消費量の少ないレアメタルです。


 表34 輸出を前提とした、経営可能な鉱山の最大規模(消費量の少ないレアメタル)

MRT03_Fig34.gif - 6.60KB

 表30と同じ形式です。
 経営可能な鉱山の最大規模を示す色についても同様。

 ホウ素水銀ベリリウムセシウムから成る消費量が少ないレアメタル4種の場合、 ホウ素だけが恒星間輸送に見合わない安さでしたが、 水銀ベリリウムセシウムの3つは、 精鉱弗化物/塩化物の形で恒星間輸送が可能でした。



 輸出を前提とした鉱山経営を行うのであれば、この項で述べた制限に従うようにして下さい。
 ここで挙げた経営可能な鉱山の最大規模は、その星系(主要世界)、 あるいは、地方世界に寄港する商船の船倉をすべて独占できるという仮定に基づいています。
 宇宙港規模世界の人口が大きくなる程、独占は難しくなりますので、 独占できなかった場合は、更に規模を1桁小さくして下さい。




(3)鉄鉱山の規模と経済性

 規模の小さい鉱床は経済性が悪いため、開発されることが滅多にありません。
 探索費用と開発資金を投資しても、採算が取れないという困った事態が発生しやすい上に、採算が取れたとしても見返りが小さいからです。
 直接的な見返りを期待しない、何らかの意図を持った投資家でなければ、そうした鉱床に投資を行うことはないでしょう。

 この項では、採掘規模の経済性について考察してみました。



 小規模鉱床の開発の開発がどれだけ不経済なのか、そのあたりを具体的に確かめてみましょう。
 まずは、「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表4、 鉄鉱床の採掘を、以下に再掲載してみました。

 実は、鉱床の規模こそ異なるものの、 これと同じ表が「トラベラー宇宙の鉱物資源」シリーズの中では各所に流用されています。
 それらのデータを統合したものが、以下の表となりました。


           表35 採掘設備の規模と経済性−1

MRT03_Fig35.gif - 8.44KB

 表の左は、採掘設備の規模
 耐用年数全般に渡る最大採掘量(鉱床規模)と、 購入費用(初期投資)の金額で示しました。

 表の右は、採掘設備の能力
 鉱石の処理能力は、8時間(1日)当たりのトン数と、 年間のトン数で示してあります。
 その右側は年間の維持費(MCr)と、 耐用年数全般に渡る維持費購入費用の合計。



 上記の表は、鉄鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 ボーキサイト鉱床(1万〜1億トン)ニッケル鉱床(1万〜1億トン)ジルコニウム鉱床(1万〜1億トン)水銀鉱床(1万〜100万トン)でも使用していました。
 水銀鉱床だけは「MRT04:トラベラー宇宙の鉱物資源、その4」で登場しますので、 現時点では見つけることができない筈です。「MRT04」を書き上げるまでお待ち下さい。

 さて、上の表の右端、購入費用と維持費の合計を見て頂ければ分かると思いますが、 この金額は、採掘設備の規模と正確には比例していません。
 採掘設備の規模が10倍になっても、 購入費用と維持費の合計は4倍〜8倍しか増えていないのです。
 逆の見方をするならば、採掘設備の規模が10分の1になっても、 購入費用と維持費の合計は4分の1〜8分の1にしか減っていないということですが、 こうしたハウス・ルールによって、 私は小規模な採掘設備の低い経済性を再現してみました。



 様々な規模の鉄鉱床を例に挙げ、実際にその経済性を確かめてみましょう。
 まずは、最も採掘規模が大きい鉱床規模=10億トンの鉄鉱床から。


        表36 鉄鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10億トン)

MRT03_Fig36.gif - 6.80KB

 表の左端は、採掘期間です。
 採掘期間は、1年間、4年間、10年間、40年間の4段階で計算しました。

 採掘期間の右は採掘量(トン)
 採掘設備の処理能力に、採掘期間を掛けた結果です。

 その右側は、鉱山の収入(MCr)
 鉄鉱石の価格は1トン当たり5crですから、 価格と採掘量の積が、鉱山の収入となる訳です。
 収入は1年間で125MCr、4年間で500MCr、10年間で1,250MCr、40年間で5,000MCrと、 採掘期間に比例していました。

 維持費(MCr)は、鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の場合、年間10MCrです。
 この金額も採掘期間に比例しますから、 1年間で10MCr、4年間で40MCr、10年間で100MCr、40年間で400MCrとなっていました。

 その右側が、鉱山の利益(MCr)
 単純に、鉱山の収入から維持費を引いた金額です。
 これも採掘期間に比例して、年間115MCrの利益を上げられました。 その大きさは、1年間で115MCr、4年間で460MCr、10年間で1,150MCr、40年間で4,600MCrです。

 最後は、採掘設備の購入費を引いた利益(MCr)
 初期投資である採掘設備の購入費用を、何年で回収できるのか。
 回収した後も、どれだけの利益を得られるのか、ということを示した数値です。

 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床を開発した場合、 採掘を開始して僅か1年で、初期投資の回収ができると判明しました。
 実に効率の良い投資だと思います。
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床を発見するためには、探索費用が最低でも100MCr掛かりますから、 探索費用を含めて黒字になるためには、更に数年を必要とするでしょう。
 例に挙げたマクダフの鉄鉱山は、 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床を発見するまで、4回の探索を行いました。
 探索費用の合計は400MCrですから、黒字を達成するまでには更に4年が必要だということになるでしょう。
 合わせて5年となります。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、45.0倍でした。
 投資対効果(ROI)という言葉で表すならば、4,500%(1年当たり112.5%)の高利回り物件、ということです。
 鉄鉱床に関しては、他の金属よりも見返りを大きく設定しました。
 鉄鉱石は星系外への輸出が困難ですから、このぐらいの利益を期待させなければ、 誰も鉄鉱床を開発してくれない、と考えたためです。
 ちょっと大き過ぎたかなと思わないこともないのですが。



 次は、採掘規模が2桁小さくなった鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床です。


        表37 鉄鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1千万トン)

MRT03_Fig37.gif - 6.78KB

 表36と同じ形式ですが、採掘規模が2桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入(MCr)が100分の1に減少しました。

 維持費(MCr)は、鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の場合、年間0.2MCrです。
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床と比べて50分の1です。100分の1ではありません。
 僅かな違いかも知れませんが、この違いが最終的な利益を大きく減じることになりました。

 鉱山の利益(MCr)は、年間で1.05MCrです。
 鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床を100個開発しても 利益の合計は105MCr
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床1個の利益115MCrに劣っていました。

 購入費を引いた利益(MCr)は、 初期投資である採掘設備の購入費用が2MCrであることから、更に小さくなりました。
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の初期投資は100MCrでしたから、初期投資も50分の1となっている訳です。
 そのため、初期投資の回収に必要な採掘期間は2年間。
 これに探索費用も加えるのであれば、マクダフの鉄鉱山と同じように探索を4回繰り返したと仮定して、 黒字経営の達成までに、6年が必要となるでしょう。
 合わせて8年となります。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、20.0倍でした。
 投資対効果(ROI)に直すと、年間50.0%。
 他の金属と比べた場合は十分な金額なのですが、 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床と比べてしまうと、大きく見劣りすることは明らかです。
 投資家に開発を賛同してもらうためには、何か別の理由が必要となるでしょう。



 今度は、採掘規模が3桁小さくなった鉱床規模=100万トンの鉄鉱床です。


        表38 鉄鉱床の開発と採掘(鉱床規模=100万トン)

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 表36と同じ形式ですが、採掘規模が3桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1,000分の1に減少しました。
 収入維持費利益の単位も KCr(キロ・クレジット)に変更しています。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり125KCr。
 これは採掘期間に比例しますので、4年間で500KCr、10年間で1,250KCr、40年間で5,000KCrとなりました。
 前述の通り、収入鉱床規模=10億トンの鉄鉱床と比べて、1,000分の1です。

 維持費(KCr)は年間で50KCr。
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の年間10MCrと比べて、200分の1でした。
 鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の年間0.2MCrと比べても4分の1。
 更に大きな利益の減少を引き起こす要因となりました。

 鉱山の利益(KCr)は、年間で75KCr。
 収入の4割が維持費として消えてしまっていることが分かります。
 鉱床規模=100万トンの鉄鉱床を10個開発しても、利益の合計は0.75MCrで、 鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の1.05MCrには届きません。
 小規模鉱床の開発は、どうしても利益が小さくなってしまうのです。

 購入費を引いた利益(KCr)は、赤字が目立つようになりました。
 そのため、初期投資の回収に必要な採掘期間は7年間。
 探索費用を加えると、探索を4回繰り返したと仮定して、黒字経営の達成までに12年が必要です。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、5.0倍でした。
 投資対効果(ROI)に直すと、年間12.5%にしかなりません。
 鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床と比べても、更に小さくなってしまいました。



 最後は、採掘規模が4桁小さくなった鉱床規模=10万トンの鉄鉱床


        表39 鉄鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10万トン)

MRT03_Fig39.gif - 6.63KB

 表36と同じ形式ですが、採掘規模が4桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1万分の1に減少しています。
 収入維持費利益の単位も KCr(キロ・クレジット)に変更。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり12.5KCrしかありません。
 採掘期間に比例しているので、4年間で50KCr、10年間で125KCr、40年間で500KCrです。

 維持費(KCr)は年間で10KCr。
 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の年間10MCrと比べて1,000分の1、 鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の年間0.2MCrと比べて20分の1、 鉱床規模=100万トンの鉄鉱床の年間50KCrと比べて5分の1でした。

 鉱山の利益(KCr)は、年間で2.5KCrまで小さくなりました。
 収入の8割が維持費として消費されてしまっています。
 この状態になると、鉱山経営はほとんど利益を出せません。

 購入費を引いた利益(KCr)は、40年が経過するまで赤字です。
 初期投資の回収に必要な採掘期間は40年ですから、それ以外の利益が作れません。
 探索費用を賄うこともできず、最終的な利益は40年が経っても赤字のままです。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、0.0倍でした。
 初期投資に対する見返りは、40年経っても有りません
 こうした状況で鉱床規模=100万トンの鉄鉱床に投資をする者は何処にも居ないでしょう。



 鉱山の経営を実際に試みた方は御存知だと思いますが、このような収支になるので、 鉱床規模=10万トン以下の鉄鉱床は、どうやっても採算が合いません。
 すべての金属について、上記、表36〜表39のような検証は行えませんが、 概ね、鉄鉱床と同じような傾向を示していました。

 小規模な採掘設備は、経済性が悪いのです。
 以下の考察では、鉱床規模=○○トン以下鉱床は採算が合わない、 という表現をすることにしました。




(4)銅鉱山の規模と経済性

 次は「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表7、 銅鉱床の採掘です。


           表40 採掘設備の規模と経済性−2

MRT03_Fig40.gif - 9.08KB

 表35と同じ形式です。



 上記の表は、銅鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 亜鉛鉱床(10万〜10億トン)鉛鉱床(10万〜10億トン)錫鉱床(10万〜10億トン)マグネシウム鉱床(1万〜1億トン)クロム鉱床(10万〜10億トン)マンガン鉱床(10万〜10億トン)バリウム鉱床(10万〜10億トン)ストロンチウム鉱床(1万〜1億トン)リチウム鉱床(1千〜1千万トン)バストネサイト鉱床(1万〜100万トン)モナザイト鉱床(1万〜100万トン)ホウ素鉱床(1万〜100万トン)ベリリウム鉱床(1万〜100万トン)セシウム鉱床(1万〜100万トン)でも使用していました。
 ホウ素鉱床ベリリウム鉱床セシウム鉱床の3つは「MRT04:トラベラー宇宙の鉱物資源、その4」で登場します。

 今回の表は、複数の非鉄金属レアメタルで使用されています。
 ここでも購入費用と維持費の合計採掘設備の規模と比例していません。
 やはり、小規模な採掘設備は経済性が悪い、ということなのです。



 再び、実際に様々な規模の銅鉱床を例に挙げ、その経済性を確認してみました。
 まずは、最も採掘規模が大きい鉱床規模=10億トンの銅鉱床から。


        表41 銅鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10億トン)

MRT03_Fig41.gif - 6.89KB

 表の形式は表36と同じです。
 左端は採掘期間で、1年間、4年間、10年間、40年間の4段階で計算しました。

 採掘量(トン)も、鉄鉱床の時と変わりません。

 その右側は、鉱山の収入(MCr)
 銅鉱石の価格は1トン当たり200crですが、選鉱によって、 鉱石の分量が30分の1に減少していました。 それを計算に含めると、実質的な価格は採掘した鉱石1トン当たり6.67crとなります。
 収入は1年間で167MCr、4年間で667MCr、10年間で1,667MCr、40年間で6,667Crでした。

 維持費(MCr)は年間20MCr。同規模の鉄鉱床と比べて2倍でした。
 これは選鉱設備の構造によるものですが、4年間で80MCr、10年間で200MCr、40年間で800MCrとなります。

 鉱山の利益(MCr)は年間147MCr。
 同規模の鉄鉱床と比べて、若干ですが、大きな金額です。
 採掘期間に比例して、4年間で587MCr、10年間で1,467MCr、40年間で5,867MCrでした。

 採掘設備の購入費を引いた利益(MCr)は、 初期投資である採掘設備の購入費用が大きいためでしょうか、 銅鉱床の場合、採掘期間=1年では回収できません。
 経営が黒字に転じるのは、採掘開始から2年目のこととなります。

 マクダフの鉄鉱山と同じように、 鉱床規模=10億トンの銅鉱床を見つけるまで4回の探索を行っているとしたならば、その探索費用は累計で400MCr。
 探索費用も含めて黒字を達成するためには、5年が必要になることが分かりました。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、28.3倍でした。 同規模の鉄鉱床よりも魅力に欠けますが、 投資対効果(ROI)に換算して年70.8%の見返りがある物件は、十分な優良物件だと思います。
 ちなみに、プレイヤー・キャラクターの作成時に除隊恩典として受け取る トラベラー協会員の配当は年6.0%に相当していました。
 トラベラー協会に投資するより10倍以上儲かることになりますから、十分ですよね?



 次は、採掘規模が2桁小さくなった鉱床規模=1千万トンの銅鉱床


        表42 銅鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1千万トン)

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 表41と同じ形式ですが、採掘規模が2桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入(MCr)が100分の1に減少しました。

 維持費(MCr)は、年間0.4MCrです。
 鉱床規模=10億トンの銅鉱床と比べて50分の1。100分の1ではありません。

 鉱山の利益(MCr)は、年間で1.27MCrでした。

 購入費を引いた利益(MCr)は、4年目になってようやく黒字化。
 探索費用も加えるのであれば、黒字経営の達成までに8年が必要です。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は11.7倍で、 投資対効果(ROI)に直すと年間29.2%でした。



 今度は、採掘規模が3桁小さくなった鉱床規模=100万トンの銅鉱床です。


        表43 銅鉱床の開発と採掘(鉱床規模=100万トン)

MRT03_Fig43.gif - 6.83KB

 表41と同じ形式ですが、採掘規模が3桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1,000分の1に減少しました。
 収入維持費利益の単位も KCr(キロ・クレジット)に変更しています。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり167KCr。
 維持費(KCr)は年間で100KCr。

 鉱山の利益(KCr)は、年間で67KCr。
 同規模の鉄鉱床と比べて明らかに小さな金額しか得られていませんが、 これは収入の6割が維持費として消えてしまっているためです。

 購入費を引いた利益(KCr)は、赤字が目立つようになりました。
 初期投資の回収に必要な採掘期間は16年間。
 探索費用を加えると、探索を4回繰り返したと仮定して、黒字経営の達成までに22年が必要です。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は1.7倍であり、 投資対効果(ROI)では年間4.2%。
 投資物件としての魅力はありません。



 最後は、採掘規模が4桁小さくなった鉱床規模=10万トンの銅鉱床


        表44 銅鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10万トン)

MRT03_Fig44.gif - 6.80KB

 表41と同じ形式ですが、採掘規模が4桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1万分の1に減少しています。
 収入維持費利益の単位も KCr(キロ・クレジット)に変更。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり16.7KCrでした。
 維持費(KCr)は年間で20KCr。

 鉱山の利益(KCr)は、出ていません。
 収入よりも支出(維持費)の方が大きい、赤字となってしまっています。

 そんな事情ですから、購入費を引いた利益(KCr)は、 40年が経過しても赤字のままでした。

 鉱床規模=10万トン以下銅鉱床は、採算が合わないのです。



 上記で確かめた銅鉱床と同じように、
 鉱床規模=100万トン以下クロム鉱床マンガン鉱床
 鉱床規模=10万トン以下亜鉛鉱床鉛鉱床錫鉱床バリウム鉱床
 鉱床規模=1万トン以下マグネシウム鉱床ストロンチウム鉱床リチウム鉱床
 鉱床規模=1千トン以下バストネサイト鉱床モナザイト鉱床ホウ素鉱床ベリリウム鉱床セシウム鉱床も、採算が合いませんでした。




(5)チタン鉱山の規模と経済性

 「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表30、チタン鉱床の採掘は、 既出の表40と鉱床規模=1千万トン以上の範囲で、数値が異なります。


           表45 採掘設備の規模と経済性−3

MRT03_Fig45.gif - 8.42KB

 表35と同じ形式です。



 上記の表は、チタン鉱床(1万〜1億トン)の他、 銀鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)でも使用していました。
 鉱床規模=1千万〜10億トンの範囲で数値が少し異なりますが、 小規模な採掘設備は経済性が悪い、ということに変わりはありません。



 今回も様々な規模のチタン鉱床で経済性を確認しました。
 最初は銀鉱床で計算したのですが、 思うところあってチタン鉱床へと変更した訳です。
 まずは、最も採掘規模が大きい鉱床規模=1億トンのチタン鉱床から。
 チタン鉱床の規模は、1万〜1億トンの範囲なのです。


       表46 チタン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1億トン)

MRT03_Fig46.gif - 6.75KB

 表の形式は表36と同じ。
 左端は採掘期間で、今回も1年間、4年間、10年間、40年間の4段階で計算しています。

 採掘量(トン)は、鉄鉱床の時と比べて1桁ずつ減少しました。

 その右側は、鉱山の収入(MCr)
 チタン鉱石としては、一般的なイルメナイトを想定しています。 その価格は1トン当たり200crですが、例によって鉱石の分量は10分の1に減少。 実質的な価格は採掘した鉱石1トン当たり20crとなりました。
 収入は1年間で50MCr、4年間で200MCr、10年間で500MCr、40年間で2,000Crです。

 維持費(MCr)は年間20MCr。 同規模の鉄鉱床と比べて4.8倍、銅鉱床と比べて2.4倍、でした。 今回の違いも、選鉱設備の構造によるものです。

 鉱山の利益(MCr)は年間44MCr。
 同規模の鉄鉱床と比べて4倍以上、銅鉱床と比べてもほぼ3倍。 ずいぶんと、大きな利益が上がるようになりました。
 その合計は、4年間では176MCr、10年間では440MCr、40年間で1,760MCrとなっています。

 初期投資である採掘設備の購入費用が60MCrという高額になってしまったため、 利益は大きくなったものの、採掘設備の購入費を引いた利益(MCr)は、 それほど増えていませんでした。
 チタン鉱床において、初期投資の回収には2年が必要となります。
 鉱床規模=1億トンのチタン鉱床を見つけるまで4回の探索を行っているとしたならば、その探索費用は累計で400MCr。
 探索費用も含めて黒字を達成するためには、12年が必要でした。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、28.3倍でした。
 投資対効果(ROI)に換算すれば、年間70.8%ですから、 10億トン規模の銅鉱床と同程度に、魅力のある投資物件だと言えるでしょう。



 次は、採掘規模が2桁小さくなった鉱床規模=100万トンのチタン鉱床


      表47 チタン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=100万トン)

MRT03_Fig47.gif - 6.81KB

 表46と同じ形式です。
 採掘規模が2桁小さくなったので、採掘量収入は100分の1に減少。

 維持費(MCr)は、年間0.1MCrです。
 鉱床規模=1億トンのチタン鉱床と比べて60分の1となりました。

 鉱山の利益(MCr)は、年間0.40MCrです。

 購入費を引いた利益(MCr)は、3年目で黒字化。
 探索費用も加えるのであれば、経営が黒字に転じるまで14年を必要としています。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は15.0倍、 投資対効果(ROI)に直すと年間37.5%でした。



 今度は、採掘規模が3桁小さくなった鉱床規模=10万トンのチタン鉱床です。


       表48 チタン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10万トン)

MRT03_Fig48.gif - 6.50KB

 表46と同じ形式ですが、採掘規模が3桁小さくなっています。
 採掘量(トン)収入が1,000分の1に減少しました。
 ここでも収入維持費利益の単位を KCr(キロ・クレジット)に変更しています。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり167KCr。
 維持費(KCr)は年間で100KCr。

 鉱山の利益(KCr)は、年間50KCr。
 収入の4割が維持費として費やされていました。
 累積の利益は、4年間で200KCr、10年間で500KCr、40年間で2,000KCrです。

 購入費を引いた利益(KCr)は、7年目で初めて黒字となります。
 探索費用を加えるならば、探索を4回繰り返したと仮定して、黒字経営の達成までに20年が必要。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は5.0倍でした。
 投資対効果(ROI)に直すと、年間12.5%です。



 最後は、採掘規模が4桁小さくなった鉱床規模=1万トンのチタン鉱床


       表49 チタン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1万トン)

MRT03_Fig49.gif - 6.57KB

 表46と同じ形式ですが、採掘規模が4桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1万分の1に減少しました。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり5.0KCrでした。
 維持費(KCr)は年間4.0KCr。
 収入の8割が維持費として消えてしまっています。
 はっきり言って、これでは儲かりません。

 鉱山の利益(KCr)は、年間でわずか1.0KCr。
 月当たりで計算すると83crでした。
 投資うんぬん以前に、この程度の利益しか出せない鉱山は、その存在意義がないような気がします。

 購入費を引いた利益(KCr)は、40年が経過した時点で、±0でした。
 初期投資は回収できますが、それだけです。
 見返りは期待できません。

 鉱床規模=1万トン以下チタン鉱床は、採算が合わないのです。
 同じように、鉱床規模=10万トン以下銀鉱床も採算が合いませんでした。




(6)金鉱山の規模と経済性

 4番目は貴金属、「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」の表18、 金鉱床の採掘です。


           表50 採掘設備の規模と経済性−4

MRT03_Fig50.gif - 9.12KB

 表35と同じ形式です。



 上記の表は、金鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 白金族鉱床(10万〜10億トン)スカンジウム鉱床(1千〜10万トン)でも使用していました。

 この表でも、小規模な採掘設備は経済性が悪い、ということにしてあります。



 今回も、様々な規模の金鉱床で、その経済性を確認しました。
 まずは、最も採掘規模が大きい鉱床規模=10億トンの金鉱床から。


        表51 金鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10億トン)

MRT03_Fig51.gif - 7.12KB

 表の形式は表36と同じです。
 左端は採掘期間で、1年間、4年間、10年間、40年間の4段階。

 採掘量(トン)も、鉄鉱床と同様。

 鉱山の収入(MCr)は、年間1,250MCrにまで跳ね上がりました。
 同規模の鉄鉱床と比べて10倍です。
 金鉱石は1トン当たり5グラムのを含んでいますので、 金鉱石1トンを製錬すれば5グラムのが得られました。
 の価格は1グラム当たり10crですから、 金鉱石1トンは50クレジットの収入を産み出すことになるのです。
 ですから、金鉱床収入は1年間で1,250MCr、 4年間で5,000MCr、10年間で12,500MCr、40年間で50,000Crになりました。

 維持費(MCr)は年間で500MCr。同規模の鉄鉱床と比べて50倍も掛かっていました。
 これは製錬まで済ませてしまう、選鉱設備の違いによるものです。
 累積する維持費は、4年間で2,000MCr、10年間で5,000MCr、40年間で20,000MCrでした。
 収入の内4割を維持費として費やしてしまう訳ですが、 金鉱床の場合は収入が桁違いに大きいので、これでも黒字になるのです。

 鉱山の利益(MCr)は年間750MCr。
 同規模の鉄鉱床と比べて、7倍もの大きな利益を上げることができました。
 累積した利益は、4年間で3,000MCr、10年間で7,500MCr、40年間で30,000MCrとなります。
 文字通り、桁が違う利益でした。

 初期投資である採掘設備の購入費用は、 鉱床規模=10億トンの金鉱床の場合、1,000MCr。
 この高額な初期投資のため、金鉱床の場合も、初期投資を1年で回収することはできません。
 経営が黒字に転じるのは、採掘開始から2年目のこととなります。
 鉱床規模=10億トンの金鉱床を見つけるまで4回の探索を行っているとしたならば、その探索費用は累計で4,000MCr。
 探索費用も含めて黒字を達成するためには7年が必要でした。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、29.0倍。
 投資対効果(ROI)に換算すると、年間72.5%。
 初期投資の金額は大きいのですが、見返りも大きな物件なのです。



 次は、採掘規模が2桁小さくなった鉱床規模=1千万トンの金鉱床


        表52 金鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1千万トン)

MRT03_Fig52.gif - 6.75KB

 表51と同じ形式ですが、採掘規模が2桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入(MCr)が100分の1に減少。

 維持費(MCr)は、年間8MCr。
 鉱床規模=10億トンの金鉱床と比べて62.5分の1。
 鉱山の利益(MCr)は、年間で4.5MCrでした。

 購入費を引いた利益(MCr)は4年目で初の黒字化。
 探索費用も加えるのであれば、黒字経営の達成までに13年が必要です。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は10.3倍。 投資対効果(ROI)に直すと、年間25.6%。



 今度は、採掘規模が3桁小さくなった鉱床規模=100万トンの金鉱床です。


        表53 金鉱床の開発と採掘(鉱床規模=100万トン)

MRT03_Fig53.gif - 6.71KB

 表51と同じ形式ですが、採掘規模が3桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1,000分の1に減少しています。

 鉱山の収入(MCr)は、1年当たり1.25MCr。
 維持費(MCr)は年間で1MCr。

 鉱山の利益(MCr)は、年間で0.25MCr。
 収入の8割が維持費として消えてしまっていますが、まだ、それなりの利益は出ていました。

 購入費を引いた利益(MCr)は、 初期投資の回収に必要な採掘期間が8年間。
 探索費用を加えると、探索を4回繰り返したと仮定して、黒字経営の達成までに24年が必要となります。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は4.0倍でした。
 投資対効果(ROI)で表すと、年間10.0%まで下がってしまいます。



 最後は、採掘規模が4桁小さくなった鉱床規模=10万トンの金鉱床


        表54 金鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10万トン)

MRT03_Fig54.gif - 6.76KB

 表51と同じ形式ですが、採掘規模が4桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1万分の1に減少しています。
 収入維持費利益の単位を KCr(キロ・クレジット)に変更しました。

 鉱山の収入(KCr)は、年間125KCrでした。
 維持費(KCr)は年間で200KCr。
 収入よりも支出(維持費)の方が大きい赤字の状態です。
 鉱山の利益(KCr)は、出ていません。

 購入費を引いた利益(KCr)も当然ながら、 40年が経過しても赤字のままとなります。

 鉱床規模=10万トン以下金鉱床は、採算が合いません。
 鉱床規模=10万トン以下白金族鉱床も、同じように採算が合いませんでした。




(7)モリブデン鉱山の規模と経済性

 最後は「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その2」の表10、 モリブデン鉱床の採掘です。


           表55 採掘設備の規模と経済性−5

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 表35と同じ形式です。



 上記の表は、モリブデン鉱床の採掘(鉱床規模=1千〜1千万トン)の他、 タングステン鉱床(1千〜1千万トン)アンチモン鉱床(1千〜1千万トン)ニオブ鉱床(1千〜1千万トン)ゼノタイム鉱床(1万〜100万トン)イオン吸着鉱床(1万〜100万トン)でも使用していました。



 最後になりますが、ここでも様々な規模のモリブデン鉱床で計算を行い、その経済性を確認しました。
 モリブデン鉱床は、その鉱床規模が1千〜1千万トンとなっているので、 最も採掘規模が大きい鉱床規模は、鉱床規模=1千万トンからとなります。


     表56 モリブデン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1千万トン)

MRT03_Fig56.gif - 6.58KB

 表の形式は表36と同じです。
 左端は採掘期間で、1年間、4年間、10年間、40年間の4段階。

 採掘量(トン)は、最も大きな鉱床規模が鉱床規模=1千万トンに制限されたため、 鉱床規模=10億トンの鉄鉱床と比べて100分の1に減少しています。

 鉱山の収入(MCr)については、 鉱石50トンを選鉱して、 モリブデン精鉱1トンが得られる訳ですが、その価格が5,000Cr。
 鉱石1トン当たりの価格は100crに相当する、という計算が出来ました。  そうして求めた収入は、金鉱床と反対に年間25MCrまで大きく減少。
 同規模、鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床と比べれば20倍ですが、 最大規模、鉱床規模=10億トンの鉄鉱床と比べた場合、5分の1まで減少しました。
 4年間で100MCr、10年間で250MCr、40年間で1,000Crの収入になります。

 維持費(MCr)は年間で5MCr。
 同規模、鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の0.2MCrと比べれば25倍ですが、 最大規模、鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の10MCrと比べた場合、4分の1に相当します。
 累積する維持費は、4年間で20MCr、10年間で50MCr、40年間で200MCrになっていました。

 肝心な利益(MCr)は年間20MCr。
 同規模、鉱床規模=1千万トンの鉄鉱床の1.05MCrと比べれば19倍で、 最大規模、鉱床規模=10億トンの鉄鉱床の115MCrと比べてしまうと、6分の1弱です。

 初期投資である採掘設備の購入費用は、 鉱床規模=1千万トンのモリブデン鉱床の場合、50MCrでした。
 モリブデン鉱床も、初期投資を1年で回収することはできません。
 経営が黒字に転じるのは、採掘開始から3年目です。
 鉱床規模=1千万トンのモリブデン鉱床を見つけるまで4回の探索を行っているとしたならば、 その探索費用は累計で80MCr。
 探索費用も含めて黒字を達成するためには、7年が必要となりました。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は、15.0倍。
 投資対効果(ROI)に換算しても年当たり37.5%にしかなりませんでした。
 あまり魅力的な物件ではないようです。



 次は、採掘規模が2桁小さくなった鉱床規模=10万トンのモリブデン鉱床


      表57 モリブデン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=10万トン)

MRT03_Fig57.gif - 6.76KB

 表56と同じ形式ですが、採掘規模が2桁小さくなったので、 今回も採掘量収入が100分の1に減少しています。
 収入維持費利益の単位は、 KCr(キロ・クレジット)に変更しました。

 維持費(MCr)は、年間80KCr。
 鉱床規模=1千万トンのモリブデン鉱床と比べて62.5分の1。
 鉱山の利益(MCr)は、年間で170KCrでした。

 購入費を引いた利益(KCr)は5年目でようやく黒字となります。
 探索費用も加えるのであれば、黒字経営の達成までに10年が必要でした。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は7.5倍で、 投資対効果(ROI)に直すと年間18.8%です。



 今度は、採掘規模が3桁小さくなった鉱床規模=1万トンのモリブデン鉱床


      表58 モリブデン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1万トン)

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 表56と同じ形式ですが、採掘規模が3桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1,000分の1に減少しています。

 鉱山の収入(KCr)は、1年当たり25KCr。
 維持費(KCr)は年間で10KCr。

 鉱山の利益(KCr)は、年間で15KCrになりました。
 収入の4割が維持費として消えている状態です。

 購入費を引いた利益(KCr)は、 初期投資の回収に必要な採掘期間が7年間。
 探索費用を加えると、黒字になるまで12年です。

 40年間の購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は5.0倍でした。
 投資対効果(ROI)に直すと、年間12.5%となります。
 レアメタル鉱床の収支は、どれもこの程度なのかも知れません。



 最後は、採掘規模が4桁小さくなった鉱床規模=1千トンのモリブデン鉱床です。


      表59 モリブデン鉱床の開発と採掘(鉱床規模=1千トン)

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 表56と同じ形式ですが、採掘規模が4桁小さくなったので、 採掘量(トン)収入が1万分の1に減少しています。

 鉱山の収入(KCr)は、年間2.5KCrでした。
 維持費(KCr)は年間で2.0KCr。
 鉱山の利益(KCr)は、年間で0.5KCrしかありません。

 初期投資を回収するためには40年が必要で、 購入費を引いた利益採掘設備の購入費用で割った数値は0.0倍です。
 見返りはありません。



 これまで考察してきた小規模鉱床と同じように、 鉱床規模=1千トン以下モリブデン鉱床は、採算が合いませんでした。
 同じように鉱床規模=1千トン以下タングステン鉱床アンチモン鉱床ニオブ鉱床も、採算が合いません。

 その一方で、ゼノタイム鉱床イオン吸着鉱床の2つは、 鉱床規模=1千トンでも黒字を達成できていました。
 探索費用の捻出はできませんが、最低限度の採算は取れているのです。




(8)鉱物資源の落穂拾い

 上記で考察してきた通り、
 大規模な採掘設備は経済性が良く、費用対効果が大きい、
 小規模な採掘設備は経済性が悪く、費用対効果が小さい、

 という事実を確認できました。

 此処でもう一度、それらを振り返ってみましょう。
 分かり易いように、(4)銅鉱山の規模と経済性(7)モリブデン鉱山の規模と経済性の考察結果を、1つの表に纏めてみました。



 銅鉱山を先に考察します。


             表60 銅鉱山の規模と経済性

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 表の左は、採掘設備の規模
 40年の耐用年数で採掘できる最大採掘量(鉱床規模)と、 購入費用(初期投資)の金額で示しました。

 その右側は鉱山経営の結果(40年間の収支)で、鉱床の探索費用(MCr)40年間の利益合計(MCr)購入費用を引いた利益(MCr)、 最後が費用対効果(ROI、%)となっています。



 こうして費用対効果(ROI、%)を並べてみると、 採掘設備の規模(鉱床規模)によって異なる、投資対象としての魅力が明らかとなりました。

 大手企業が銅鉱床を開発する場合、 鉱床規模=1億〜10億トン大規模鉱床にしか手を出さない、と思われます。
 一回り小さい規模、鉱床規模=1千万トンの銅鉱床は、 費用対効果が29.2%しかありません。
 しかし鉱床規模=1億トン以上であれば、 費用対効果は68.3〜70.8%で、その違いは2倍以上。
 儲けの少ない、費用対効果が小さい、小規模鉱床へ投資を行う必要がないのです。
 大手企業が小規模鉱床へ手を出さない理由はもうひとつありますが、それについては後述。

 中小企業は、大手企業が手を出さない(儲けの少ない=費用対効果が小さい)、 鉱床規模=100万〜1千万トン小規模鉱床しか開発できません。
 中小企業は、大企業が活動している世界において、放置された小規模鉱床を、 落穂拾いのように拾い集め、開発する以外に生きる道が無いのです。

 あるいは大企業が存在しない辺境星系で、大企業の関心を引かない程度にその規模を抑えつつ、 小規模鉱床を開発しているかも知れません。
 鉱床規模=1千万トン以下の銅鉱床を発見/開発しているのであれば、大企業が干渉してくることはないでしょう。
 これもシナリオネタですが、辺境で採掘を行っている中小企業が偶然に、 鉱床規模=1億トンの銅鉱床を発見してしまったら、どうなるでしょうか?
 大企業に知られたら、あの手この手で干渉が始まり、鉱山の採掘権を奪われてしまいます。
 その企業は、大企業の関心を引かないように、鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を装うことにしました。
採掘設備の経済性が悪いので大儲けはできませんが、大企業に奪われるよりはマシです。 実際の鉱床規模は10倍大きいので、採掘可能な期間は400年間。曾孫の代になっても掘り尽くすことはありません。
 ところが、その採掘量に不審を抱いた大企業が、その世界へ産業スパイを派遣してきます。 プレイヤー・キャラクターは、その産業スパイ、あるいは、産業スパイを撃退する立場となってシナリオを進めていくことになるでしょう。

 そして、鉱床規模=10万トン以下銅鉱床は、 採算が合わないため、誰も手を出しません。
 見返りがないのですから、投資しても無駄なのです。
 こうした小規模な鉱床は、発見されても放置されることが必然だという訳です。



 次はモリブデン鉱山の考察です。


           表61 モリブデン鉱山の規模と経済性

MRT03_Fig61.gif - 8.55KB

 表の形式は表60と同じ。



 モリブデン鉱床の場合も、 銅鉱床とは鉱床規模の桁こそ異なりますが、 費用対効果はほぼ同じ傾向を示していました。

 大手企業がモリブデン鉱床を開発する場合は、 鉱床規模=1千万トン大規模鉱床だけ、ということになるでしょう。
 しかしながら、実際に開発を行うかどうかについは自信がありません。
 モリブデン鉱床は、最大規模の鉱床規模=1千万トンであっても 費用対効果が37.5%しかないからです。
 一回り小さい規模、鉱床規模=100万トンのモリブデン鉱床は、 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床と同じで、 費用対効果が29.2%しかありませんでした。
 購入費用を引いた利益を見ると、鉱床規模=1億トンの銅鉱床より少し大きい程度。
 投資の費用対効果がそれほど大きくないのですから、大手企業が手を出さない可能性は高いのです。

 という訳で、中小企業は、 鉱床規模=1万〜100万トン小規模鉱床を開発している、と思われます。
 そして、鉱床規模=1千トン以下モリブデン鉱床には、 誰も手を出しません。



 今度は、鉱床の探索によって見つかる、鉱床の規模について考えてみましょう。


           表62 発見した鉱床の規模と分布−1

MRT03_Fig62.gif - 9.22KB

 これまでの「鉱物資源シリーズ」で用いてきた、 「鉱床の探索」表によって見つかる鉱床の規模について、 その確率と分布を求めました。

 表の左端はDMの大きさ
 DM+8からDM+6の範囲で計算しています。

 その右側は、見つかった鉱床の規模
 探索に失敗して、何も見つからなかった場合。
 1千万トンの鉱床を見つけた場合。
 1億トン10億トンの鉱床を見つけた場合。
 それぞれについて、その確率と、鉱床規模の期待値。 そして、その鉱床規模が、見つかった鉱床の規模合計(全埋蔵量)の中でどれだけの比重を占めるか、を示しました。

 鉱床の規模1千万トン10億トンの範囲になっている理由は、 分かり易いからです。
 数字の桁が多くなり過ぎましたので、鉱床規模の期待値は100万トン単位で示しましたが。



 「DM+8」の場合、鉱床規模の期待値の総合計は、105.8×100万トン(1億580万トン)です。
 その大半は鉱床規模=10億トン(78.7%)鉱床規模=1億トン(18.4%)が占めており、 鉱床規模=1千万トン小規模鉱床は 全体の中で2.9%しか存在しませんでした。

 表60と表61で考察した通り、利益や採算のことをきちんと考えている鉱山主や投資家であれば、 鉱床規模=10億トン1億トンの鉱床だけしか開発しません。
 それでも、全鉱床のほぼすべて(=97.1%)を採掘できます。
 採掘事業をほぼ独占していると言っても良いのではないでしょうか。
 表60の考察で、後述します、と言った理由がこれなのです。
 どう考えてても、無理に費用対効果の小さい鉱床を開発する必要が見つかりません。
 元々、これだけ大規模な「鉱床の探索」を行うためには、100MCrの投資が必要となっていました。
 開発しても、50MCrの利益しか望めない1千万トンの鉱床では、探索費用を回収できません。
 小規模鉱床に手を出すよりも、更に広い範囲で「鉱床の探索」を継続し、 1億〜10億トンの中/大規模鉱床を発見するべきなのです。

 こうした事情によって、総合計の中で2.9%を占めている 鉱床規模=1千万トンの小規模鉱床は放置されることとなるでしょう。
 所謂、落穂拾いの対象となるのです。



 「DM+7」の場合、鉱床規模の期待値の総合計は、44.2×100万トン(4,420万トン)、まで減少しました。
 鉱床規模=10億トンを発見できる確率が3分の1(=2.8%)まで小さくなってしまった影響が大きいようです。
 それでも鉱床規模=10億トンの占有率は総合計の中で62.9%
 まだまだ大きな比重を占めています。
 鉱床規模=1億トンを発見できる確率も13.9%で下がりましたが、 その占有率は総合計の中で31.4%まで上昇。
 開発による投資回収の重要性が増していました。
 鉱床規模=1億〜10億トンの合計は、鉱床規模合計の中で94.3%を占めています。

 鉱床規模=1千万トンを発見できる確率も25.0%まで下がり、 占有率は5.7%に増えました。
 しかし、やはり採算が悪いので、開発の手を付けるべきではないでしょう。
 ここでも鉱床規模=1千万トンの小規模鉱床は放置され、 落穂拾いの対象となるのです。



 「DM+6」の場合、鉱床規模の期待値の総合計は、10.3×100万トン(1,030万トン)まで減少。
 「DM+8」の総合計と比べて10分の1しかありませんでした。
 +DMが小さい状態で「鉱床の探索」を行うことは、投資を回収できないリスクが高いのです。
 鉱床規模=10億トンを発見できる確率は無くなりました。
 鉱床規模=1億トンを発見できる確率は8.3%でしたから、サイコロ運がよほど良くない限り、 この鉱床を開発しても、探索費用(初期投資)を回収できる見込みはありません。
 切ない話ですが、これが現実です。
 「DM+6」で「鉱床の探索」を試みることは慎みましょう。
 救済のため、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、+1〜+3のDMが付きます。 というルールを用意してあります。
 キャラクターの技能レベルと教育度が低い場合は、そのDMを活用し、 最終的なDMが「+7以上」になるよう、できれば「+8」にしてから「鉱床の探索」を試みて下さい。



 別件ですが、レフリーの裁量で、探索に失敗した場合は、「15〜16」の欄に示した規模の鉱床よりも、 もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構わない、というルールも用意してありました。
 上記の例で考えるならば、失敗の欄が鉱床規模=100万トンに変わる訳ですが、 そうした場合、鉱床規模の期待値の総合計や分布がどのように変わるのか、確認してみます。


           表63 発見した鉱床の規模と分布−2

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 表62と同じ形式です。

 実は、あまり変わりません。
 鉱床規模=100万トンが見つかる確率は高い(41.7〜72.2%)のですが、 その鉱床規模があまりにも小さ過ぎるため、期待値の総合計に与える影響がわずかしかないのです。
 おまけに、見つかっても見つからなくても、探索費用の回収にはほとんど影響がありません。

 探索の失敗鉱床規模=100万トンを発見に置き換えたとしても、 これらの小規模鉱床が発見者によって開発されることはほとんどないでしょう。
 理由は前述の通り、探索費用の回収には影響を与えないから、です。
 鉱床規模=100万トンの小規模鉱床も放置され、 落穂拾いの対象となりました。



 落穂拾いの対象となった小規模鉱床の採掘権が幾らで売買されているのか、 以下の表に纏めました。


              表64 採掘権の売買価格

MRT03_Fig64.gif - 11.1KB

 表の左端は探索費用
 その右側は、サイコロの目とDMの合計に対応した、 鉱床規模と、採掘権の売買価格となっています。



 ちょっと安めの価格設定をしましたが、これは最低価格です。
 実際に採掘権の売買を行う場合はサイコロを1個を振って、上記の価格を1D6倍して下さい。
 鉱床の発見者、採掘権の売り手からすると安過ぎるくらいですが、この採掘権の売買で大きな利益を得るつもりがない (=探索費用の回収を諦めている)という事情が大きく絡んでいます。
 売買価格をあまり大きくすると、採掘権の買い手の利益が小さくなり過ぎて、誰も買えないという状況になりかねません。
 それでは意味がありませんから、こうした低価格に落ち着いてしまった訳です。御了承下さい。

 重要なことですが、この表はアルミ(ボーキサイト)といった、一般的な金属を対象としたものです。
 「探索費用」が10倍に設定されている、白金族ニッケルジルコニウムストロンチウムリチウムバストネサイトモナザイトゼノタイムイオン吸着鉱ホウ素水銀ベリリウムセシウムは、 売買価格も10倍に増やして下さい。
 「探索費用」が20倍に設定されている、 モリブデンタングステンアンチモンニオブは、 売買価格も20倍です。
 「探索費用」が100倍に設定されているスカンジウムは、売買価格も100倍です。



 こうした小規模鉱床の採掘権がどれだけ売りに出されるかという問題ですが、 その星系の状況とレフリーの裁量によるでしょう。
 麦畑が存在しなければ、落穂拾いもできない、ということは確かですが、簡単には決められません。
 鉱床の規模が少しでも大きければ、小規模鉱床費用対効果が大きくなりますので、 基本的に「鉱床の探索」は、その星系や地方世界に存在を許される中で、 最も規模の大きい鉱床が探索される筈です。

 参考値ですが、「鉱床の探索」表で「DM+8」のサイコロを振った場合は 鉱床規模=10億トンの鉱床1個の発見に対して、 鉱床規模=1億トンの鉱床は2個、鉱床規模=1千万トンの鉱床は4個が発見されます。
 探索に失敗した場合に鉱床規模=100万トンの鉱床が発見された、 ということにするならば5個が見つかります。
 「DM+7」のサイコロを振った場合は 鉱床規模=10億トンの鉱床1個の発見に対して、 鉱床規模=1億トンの鉱床が5個、鉱床規模=1千万トンの鉱床が9個。
 探索に失敗した場合も含めるのであれば、 鉱床規模=100万トンの鉱床が21個が見つかります。
 その世界に存在できる鉱床の規模と数から、妥当な数値を決めて下さい。




(9)辺境世界の鉱山開発

 長々と考察を続け、色々なハウス・ルールを作ってきましたが、これらを実際に使ってみましょう。

 例によって、リジャイナ星域ランス星域ライラナー星域をジャンプ=1で結ぶ星系の連鎖、スピンワード・メインの中から、 幾つかの星系を抜き出してみました。
 それらの星系で鉱山を開発した場合、採掘できる最大の鉱床規模を求めます。



 最初に鉱山開発を考えた世界は、人口レベル7の農業世界レックでした。
 この世界は宇宙港クラスD、宇宙港規模=5で、そのテックレベルは6。
 レックで銅鉱床モリブデン鉱床を開発するとしたら、どうなるのでしょう。

 内需による鉱床規模の制限を考えるのであれば、 レックの人口レベルは7ですから、下から3番目の欄までしか使うことが出来ません。

 銅鉱床は鉱床規模が10万〜1千万トン、 探索費用が1MCrの欄を使うこととなりました。
 費用対効果が小さいので、レックの銅鉱床開発に大企業が参加することは有り得ません。 このレベルの費用対効果ならば、中小企業の担当です。
 中小企業は鉱床規模=1千万トンの銅鉱床だけを開発し、 鉱床規模=100万トン以下の銅鉱床は、発見されても放置されることとなるでしょう。
 ぎりぎり採算の取れる鉱床規模=10万トンの銅鉱床は、 より小さな企業による落穂拾いの対象となるかも知れません。

 モリブデン鉱床ならば、鉱床規模が1千〜10万トン、 探索費用が0.2MCrの欄です。
 やはり此処でも鉱床規模=10万トンのモリブデン鉱床が優先され、 鉱床規模=1万トンのモリブデン鉱床落穂拾いの対象になるでしょう。
 費用対効果の問題から、 鉱床規模=1万〜10万トンのモリブデン鉱床を開発するのは中小企業でした。
 そして鉱床規模=1千トン以下のモリブデン鉱床は採算が合わないため、放置されてしまいます。

 輸出による鉱床規模の制限を考えるのであれば、宇宙港クラスD、宇宙港規模=5のレックにおいて、 銅鉱床は最大で鉱床規模=1億トンまで、 モリブデン鉱床鉱床規模=1千万トンが最大となりました(表30と表31より)。
 鉱石を輸出することが前提であるならば、 銅鉱床の最大規模が1桁小さくなっただけで、制限はほとんどないことになります。
 レックへ乗り出してきた大手企業は鉱床規模=1億トンの銅鉱床だけを開発し、 鉱床規模=1千万トン以下の銅鉱床は、発見されても放置されることでしょう。
 採算が取れる鉱床規模=10万〜100万トンの銅鉱床は、 中小企業による落穂拾いの対象となるかも知れません。
 モリブデン鉱床は、 やはり此処でも鉱床規模=1千万トンのモリブデン鉱床だけが大手企業によって開発され、 鉱床規模=10万〜100万トンのモリブデン鉱床落穂拾いの対象になるようです。



 次は、隣の星系カーカでの鉱業を考えてみました。
 カーカは人口レベル3の低人口世界。おまけに非水海洋世界なので、農業もできません。必然的に、カーカの産業は鉱業に限られてしまう訳です。
 実際、「CT版、黄昏の峰」の中には、 この星には、山脈から希土を掘り出している鉱夫共同体があります。
 という情報が記述されていました。
 カーカの主要産業が鉱業であることは間違いないようです。

 内需による鉱床規模の制限を考えたいところですが、カーカの人口レベルは3でした。 内需を期待して鉱山開発を行うことは出来ません。
 カーカの鉱業はすべて、星系外への輸出が前提となります。

 輸出による鉱床規模の制限を考えるのであれば、カーカの宇宙港クラスはD、宇宙港規模は4。
 開発できる銅鉱床の規模は最大で鉱床規模=1千万トンモリブデン鉱床の規模も最大で鉱床規模=1千万トンになりました(表30と表31)。
 公式設定にある希土類の開発は、表33より スカンジウム鉱床の最大規模が10万トン、 他の希土類の最大規模が100万トン、ということになりました。
 元々、採掘量が少ない鉱物資源の場合は、鉱床規模の制限が存在しないようです。



 ここまでの考察を整理しますが、 人口レベル9以上の高人口世界において、内需による鉱床規模の制限は存在しません。
 その場合、「鉱床の探索」表では一番下の欄を使うことになります。
 そして鉱床は、最も規模の大きな大規模鉱床だけが大手企業によって開発されている、 と分かりました。
 規模の小さな鉱床費用対効果(ROI)が小さいため、 発見されても放置されるか、中小企業に開発が任される、ということになるでしょう。

 人口レベル7〜8の世界における内需は微妙なものとなっていました。
 「鉱床の探索」表は、下から2番目や3番目の欄までしか使えません。
 大手企業が開発を行うことはないでしょう。
 その中でも費用対効果が大きな鉱床ならば、中小企業によって開発されることがあるかも知れません。

 人口レベル6以下の非工業世界になると、内需は全く期待できません。
 完成品を星系外から輸入した方が安く付きます。
 通商路から離れた孤立星系やレッドゾーンでもない限り、内需のために鉱山開発を行うことはないでしょう。



 星系外への輸出を前提とするならば、その世界の人口は制限要素となりません。
 その世界に寄港する商船の輸送能力、宇宙港規模だけが問題となります。
 とはいうものの、実際に検証してみたのですが、極端に宇宙港規模の小さな世界でない限り、 輸出による鉱床規模の制限は無いも同然でしたが。



 鉱山の開発を制限する要因の中で最も大きなものは、経済性(=費用対効果)です。
 当然のことですが、採算が合わない小規模鉱床の開発に、 採掘設備の購入を手伝ってくれる(投資をしてくれる)資産家は存在しません。
 そうなると、鉱山主は自己資金で初期投資を賄わなければならない訳ですが、 何度も書いているように小規模鉱床は採算が合いませんので、 その鉱山主は膨れ上がる赤字によって破産してしまうこととなります。
 そして最終的には、小規模鉱床の開発を行う投資家も鉱山主も居なくなることでしょう。

 鉱山の開発は、利益率の高い大規模鉱床へ集中する。

 こうした事情を、私のハウス・ルールでも再現できたことは嬉しく思います。





5.まとめ


 今回も「鉱業」の考察をおこないましたが、 その対象は、「レアメタル:Rare Metal」の中でも特に取り扱いが難しい、 「レアアースメタル(希土類金属):Rare Earth Metal」と呼ばれる元素を扱っています。

 「レアアースメタル(希土類金属)」とは、ランタノイド系列の元素15種類に、 スカンジウム(Sc)イットリウム(Y)を加えた、合計17種類の金属元素です。
 これらの元素は性質が似通っているため、わずか5種類の鉱石を採掘/精錬するだけで、すべての元素を得ることができました。
 それらの鉱石は、スカンジウム鉱石バストネサイトモナザイトゼノタイムイオン吸着鉱、です。
 これらを分離することで、どれだけの価値を持った希土類金属が、 どれだけ得られるか、ということも考察しました。
 希土類金属が高価である理由は、見つけ難く、生産量が少ないことはもちろんですが、 分離にコストが掛かる、という要因も大きいのです。



 スカンジウムの採掘と精錬は、高コストです。
 古代テラにおいてスカンジウムは、ウラン製錬の副産物としてのみ入手可能でした。
 しかしトラベラー世界ではウランの生産が制限されていると考えたため、 スカンジウムを入手し易いよう、少し強引な数値設定を行っています。
 スカンジウム鉱石を製錬した「スカンジウム精鉱」の価格は、 品位1%でトン当たり10,000cr。
 この価格ならば投機貿易品としても魅力的ですが、ほとんど流通していません。

 バストネサイトモナザイトから精錬された バストネサイト酸化物モナザイト塩化物の価格は、1トン当たり400〜500crです。
 残念ながら、恒星間の輸送費を賄える価格ではありません。
 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物を扱う精錬所は、 同じ星系内(できれば輸送費があまり掛からない距離)に希土類鉱床が存在しなければならないのです。

 ゼノタイムイオン吸着鉱から精錬された ゼノタイム塩化物イオン吸着鉱酸化物の価格は、1トン当たり1,400cr。
 まだまだ投機貿易品として扱える価格ではありませんが、ジャンプ1〜2回の恒星間輸送は可能になりました。



 希土類金属の鉱石の価値をもっと高めるため、 ミッシュメタルを製造した場合についても考察しました。
 スカンジウムからミッシュメタルを作ることはできませんが、 バストネサイトモナザイトゼノタイムイオン吸着鉱の4つは、 酸化物や塩化物1トン当たり50crのコストでミッシュメタルにすることができます。
 不純物を取り除いたミッシュメタルは輸送費を節約できるため、より恒星間輸送に適した形態となりました。

 バストネサイト・ミッシュメタルは、ジャンプ1回だけならば恒星間輸送が可能です。
 モナザイト・ミッシュメタルの恒星間輸送は、ジャンプ2回が上限。
 ゼノタイム・ミッシュメタルは価値が高いので、恒星間輸送をジャンプ5〜6回でもこなせます。
 イオン吸着鉱・ミッシュメタルの恒星間輸送はジャンプ4回までなら可能。

 バストネサイト酸化物モナザイト塩化物の恒星間輸送が困難だったため、 その問題の解決手段として思いついたミッシュメタルですが、 予想以上に大きな利益を得ることができるようになりました。
 ミッシュメタルの製造は、簡易な設備でも可能でありながら、 希土類鉱石の価値を大きく高めることができます。
 トラベラー世界で希土類を流通させる形態として、 ミッシュメタルは極めて有望であると判明しました。



 最後になりましたが鉱床規模の制限を考察しています。

 まずは内需による鉱床規模の制限ら考察を始めたのですが、 人口レベル9以上の高人口世界において、内需による鉱床規模の制限は存在しません。
 人口レベル7〜8の世界における内需は 「鉱床の探索」表の下から2番目や3番目の欄までしか使えず、 人口レベル6以下の非工業世界になると、内需は全く期待できない、ということが明らかになりました。

 輸出による鉱床規模の制限は、 その世界に寄港する商船の船腹量、宇宙港規模だけが問題となります。
 しかし実際に検証してみると、極端に宇宙港規模の小さな世界でない限り、 輸出による鉱床規模の制限は無いも同然でした。

 鉱山の開発を制限する要因の中で最も大きなものは、経済性(=費用対効果)です。
 当然のことですが、採算が合わない小規模鉱床の開発に、 採掘設備の購入を手伝ってくれる(投資をしてくれる)資産家は存在しません。
 そうなると、鉱山主は自己資金で初期投資を賄わなければならない訳ですが、 何度も書いているように小規模鉱床は採算が合いませんので、 その鉱山主は膨れ上がる赤字によって破産してしまうこととなります。
 そして最終的には、小規模鉱床の開発を行う投資家も鉱山主も居なくなることでしょう。
 考察によって、上記の事が明らかとなりました。






 2014.05.11 初投稿
 2017.06.11 ウラン(U)の価格へ合わせるため、スカンジウム(Sc)の価格を
        トン当たり2,000,000crに修正して再投稿