The Mineral Resource
in the Traveller space 02
The Rare Metal for Byproduct
トラベラー宇宙の鉱物資源
その4
副産物としてのレアメタル
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その4です。
 今回の考察対象も「レアメタル:Rare Metal」ですが、 今回は特に「副産物:By Product」へと、その焦点を当てました。

 これらのレアメタルはその存在率があまりにも低すぎるため、単独の専用鉱石が存在しません。
 他の金属鉱石、類似した他元素を取り出すための鉱石の中から、僅かに産出する希少元素。
 ある意味、これらの元素こそが真のレアメタルだと言えるでしょう。



 最初に「MRT01:トラベラー宇宙の考察資源、その1」では、 「貴金属」の中に含まれるレアメタル2元素、 プラチナパラジウムを考察しました。

 次の「MRT02:トラベラー宇宙の考察資源、その2」では、 「主要なレアメタル」として抜き出した7元素と、 「消費量の多いレアメタル」と見なした6元素。
 合わせて13元素を考察しています。

 3番目、「MRT03:トラベラー宇宙の考察資源、その3」では、 「希土類金属(レアアースメタル)」と呼ばれている17元素を考察しました。

 残るレアメタルの元素数は15種類です。
 これらに関しては、「消費量が少ないレアメタル」と見なした4元素と、 「副産物として得られるレアメタル」11元素。
 上記2つに分類して考察を行いました。




 目次
    ※2.消費量が少ないレアメタルの消費量
    ※3.消費量が少ないレアメタルの探索と採掘
       (1)ホウ素の採掘
       (2)水銀の採掘
       (3)ベリリウムの採掘
       (4)セシウムの採掘
       (5)流通形態と流通量
    ※4.副産物として得られるレアメタルの消費量
    ※5.主要鉱物の副産物
       (1)リチウムの副産物
       (2)アルミニウムの副産物
       (3)銅の副産物
       (4)亜鉛の副産物
       (5)ジルコニウムの副産物
       (6)ニオブの副産物
       (7)モリブデンの副産物
       (8)鉛の副産物
       (9)流通形態と流通量
    ※6.小規模鉱床の開発
       (1)採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合
       (2)採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合
       (3)採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合
       (4)採掘設備の移設経費
       (5)費用対効果の推移
       (6)落穂拾いのサンプル
    ※7.まとめ





2.消費量が少ないレアメタルの消費量


 「消費量が少ないレアメタル:Minor Rare Metal」とは、 専用鉱石から採掘されながらも、その消費量が特に少ない4種の金属、
 水銀(Hg)ホウ素(B)ベリリウム(Be)セシウム(Cs)のことである、と定義しました。
 このあたりの定義は例によって曖昧です。


 以下に、消費量が少ないレアメタルの消費量を示しました。


         表1 世界の金属消費量(消費量が少ないレアメタル)

MRT04_Fig01.gif - 5.17KB

 今回も、データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(トン)を求めています。
 人口1千人当たりの消費量は求めるだけ無駄だったので省略。
 その代り、トン当たりの価格(cr/tons)を載せておきました。

 以下で、消費量が少ないレアメタル4種を簡単に説明します。



 ホウ素(B)の大半は、セラミックやガラス製品への添加剤として用いられています。
 必要な量は微量ですが、半導体の製造にも不可欠。
 中性子を吸収しやすいため、原子炉の制御棒や核燃料の輸送容器にも重要な成分であるとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間818トンです。

 水銀(Hg)は、温度計、電極材料、触媒、電池、医薬品などに使われてきました。
 その健康被害が問題になったため、一部の先進諸国では消費量が極端に減少していますが、 その分、発展途上国での消費が増えたため、テラ全体での消費量はあまり減っていません。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間233トンです。

 ベリリウム(Be)は、鉄鋼に添加され、ベリリウム鋼を作るために使われます。
 銅に添加した場合は優れたバネ特性を発揮するため、板バネやスイッチの接点、スピーカーにも用いられます。
 ぶつかっても火花を出さないことから、爆発物を扱う現場での安全工具とての需要もありました。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間91トンです。

 セシウム(Cs)は、プラスチック製造の触媒や光ファイバーへの添加剤として使用されています。
 しかし余りにも高価な金属であるため、他の金属元素への代替手段が研究されており、需要は減少しつつあるとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界でも、年間15トンしかありませんでした。



 例によって、上記の消費量が少ないレアメタル4種は、 人口レベル7以上の世界でなければ需要が存在しません。
 次の章では消費量が少ないレアメタルの価格や採掘について考えます。





3.消費量が少ないレアメタルの探索と採掘


 今回も、レアメタルの採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)ホウ素の採掘

 ホウ素(B)の消費量は、人口10億人当たりで818トン。

 主な用途がガラスやセラミック製品です。
 ガラスの主成分は珪素(Si)ですが、 この一部をホウ素に置き換えることで膨張率を下げ、耐熱性の高いガラスを作ることができるのです。
 ガラス繊維もこの分野に含まれていますが、消費量は全体の8割ほど。
 その他は石鹸や薬品に使われたり、鉄合金に添加されたりしていました。

 消費量は少ないのですが、半導体の製造には欠かせません。
 また、中性子を吸収しやすいという性質を活かして、原子炉の制御棒や核燃料の輸送容器としても使われています。



 ホウ素は主に「コレマナイト」や「ホウ砂」と呼ばれる、 ホウ素を豊富に含んだ鉱石の中から取り出されます。
 ここでは「コレマナイト」や「ホウ砂」を一括して、 「ホウ素鉱石」と呼ぶことにしました。
 この「ホウ素鉱石」の採掘について、考えてみます。



 ホウ素を採掘するための手順は、の場合とほぼ同様です。

 「ホウ素鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(ホウ素鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ホウ素鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なホウ素鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表2 ホウ素鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT04_Fig02.gif - 4.83KB

 ホウ素鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したホウ素鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。



 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更してください。
 鉱石の密度については、1排水素トン=15重量トンという数値を用いれば良いでしょう。 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのホウ素鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「ホウ素鉱石」の品位としては、便宜上2.0%を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「ホウ素鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石(ホウ素分の少ない鉱石)を含めた平均の品位が、2.0%であると考えてください。

 「ホウ素鉱石」の品位として2.0%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、品位が20%になった「ホウ素鉱石」を 「ホウ素精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位2.0%の「ホウ素鉱石」10トンから、 品位20%の「ホウ素精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


         表3 ホウ素鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT04_Fig03.gif - 4.41KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。
 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘された「ホウ素鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「ホウ素精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり400cr。

 意外と、価値が高い鉱石です。
 ガラス製品等に添加剤として使用される場合、「ホウ素精鉱」のままの形でも全く構いません。
 流通するホウ素の半分は、実際に「ホウ素精鉱」として取引されていました。
 便宜上「ホウ砂」と呼ばれる鉱物も、 この「ホウ素精鉱」の中に含まれているものとします。 実際は全く異なるものですが、ルール的に問題はありません。



 残り半分のホウ素は、鉱山や製錬所で「ホウ酸」へと加工されます。
 品位は20%のまま変わらないのですが、不純物が除去されており、 ホウ素以外の金属元素を含まない状況となっているため、 半導体への添加物としては価値が高いのです。

 「ホウ酸」1トンを製造するためには、「ホウ素精鉱」1トンが必要です(費用は400cr)。
 精錬のためのコストは、精錬される「ホウ酸」1トン当たり200cr。
 精錬所の利益は1トン当たり200crとなります。



 前述の通り、流通するホウ素の半分は「ホウ素精鉱」のままで取引され、 残り半分も「ホウ酸」の形となっていました。。
 それらの価格はトン当たり400crと800crですので、恒星間の投機貿易に使えるとは思えません。




(2)水銀の採掘

 水銀(Hg)の消費量は、人口10億人の高人口世界では年間233万トン。

 主な用途は、温度計、電極材料、触媒、電池、医薬品などです。
 各種金属との合金(アマルガム)を作るためにも使用されていました。
 その健康被害が問題になったため、他の金属元素による代替が進められつつありますが、 どうしても替えられない用途があったり、あるいは代替手段が割高になる場合は、そのままの形で利用が続けられています。



 水銀は主に「辰砂」と呼ばれる、 硫化水銀(HgS)を含んだ鉱石の中から取り出されます。
 ここでは、硫化水銀を豊富に含んだ鉱石を一括して、 「水銀鉱石」と呼ぶことにしました。
 この「水銀鉱石」の採掘について、考えてみます。



 水銀を採掘するための手順は、ホウ素の場合とほぼ同様です。

 「水銀鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(水銀鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 水銀鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な水銀鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表4 水銀鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT04_Fig04.gif - 4.83KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=80重量トンを用いて下さい。



 探索に成功した場合は、その水銀鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「水銀鉱石」の品位としては、便宜上0.5%を用います。
 実際はもっと高い品位ですが、捨石を含めた平均の品位が、0.5%であると考えてください。

 「水銀鉱石」の品位として0.5%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、品位が50%になった「水銀鉱石」を 「水銀精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位0.5%の「水銀鉱石」100トンから、 品位50%の「水銀精鉱」1トンが得られる訳です。
 残り99トンの鉱石は捨石となり、鉱山の周辺へ廃棄されることでしょう。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表5 水銀鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT04_Fig05.gif - 4.45KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「水銀鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「水銀精鉱」として売却されます。その価格は1排水素トン当たり2,000cr。



 水銀の精錬は簡単な設備でも容易に行えますので、鉱山には精錬所が付属しているかも知れません。
 品位50%の「水銀精鉱」2トン(4,000cr相当)を精錬することで、 品位100%の純粋な「水銀」1トンを得ることができます。
 精錬に必要な費用は、「水銀」1トン当たり500cr。
 精錬所が得られる利益も、「水銀」1トン当たり500crとなるでしょう。

 「水銀精鉱」と「水銀」の価格は2,000crと5,000cr。
 投機貿易品として用いるには十分な価格ですが、市場世界での需要があるかどうかが分かりません。




(3)ベリリウムの採掘

 ベリリウム(Be)の消費量は、人口10億人当たりで91トン。

 ベリリウムは、鉄鋼に添加され、ベリリウム鋼を作るために使われます。
 銅に添加した場合は優れたバネ特性を発揮するため、板バネやスイッチの接点、スピーカー、にも用いられます。
 ぶつかっても火花を出さないことから、爆発物を扱う現場での安全工具としての利用もありました。



 ベリリウムは、「ベリル(緑柱石)」と呼ばれる、 ベリリウムを比較的、豊富に含んだ鉱石の中から取り出されます。
 ここでは、この鉱石を「ベリリウム鉱石」と呼ぶことにしました。
 この「ベリリウム鉱石」の採掘について、考えてみましょう。



 ベリリウムを採掘するための手順は、ホウ素の場合とほぼ同様です。

 「ベリリウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(ベリリウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ベリリウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なベリリウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表6 ベリリウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT04_Fig06.gif - 4.86KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更して下さい。
 鉱石の密度は、1排水素トン=25重量トンです。



 探索に成功した場合は、そのベリリウム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「ベリリウム鉱石」の品位としては、便宜上0.1%を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「ベリリウム鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、0.1%だということです。

 選鉱の後、品位が5%になった「ベリリウム鉱石」を 「ベリリウム精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位0.1%の「ベリリウム鉱石」50トンから、 品位5%の「ベリリウム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表7 ベリリウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT04_Fig07.gif - 4.44KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「ベリリウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「ベリリウム精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり2,000cr。

 この「ベリリウム精鉱」とは要するに、 不純物を取り除いた「ベリル(緑柱石)」になる訳ですが、 透明で美しいものは滅多に見つかりませんので、宝石としての転売も出来ません。
 ですが、鉱石としては十分、高価な部類に入ります。
 このままの状態で、恒星間の取引も可能でしょう。



 さらに鉱石の価値を高めるため、「ベリリウム精鉱」を精錬することが可能でした。
 「ベリリウム精鉱」4トン(8,000cr相当)に、精錬費用12,000crを費やすことで、 品位20%の「弗化ベリリウム」1トンが得られます。
 「弗化ベリリウム」の価格は1排水素トン当たり25,000crで、 精錬所の利益としては、1トン当たり5,000crが得られます。

 ベリリウムの取引は、通常、この形態で行われていました。
 純粋な「金属地金」まで精錬したベリリウムは不安定であり、 周囲の元素と化合物を作り易いため、実際に使用する直前まで「弗化物」として輸送/保管されるのです。




(4)セシウムの採掘

 セシウム(Cs)の消費量は、人口10億人当たりで15トン。

 セシウムは様々な形の化合物として、 プラスチック製造の触媒や光ファイバーへの添加剤として使用されています。
 最も利用が多い化合物は硝酸セシウムですが、 炭酸セシウム水酸化セシウム沃化セシウム臭化セシウムといった化合物も存在します。
 特に、塩化セシウムは血清分離の触媒として有用であるとのこと。
 このようにセシウムは広い分野で活用されているのですが、 余りにも高価な金属であるため他金属への代替手段が研究されており、需要は減少しつつあるそうです。



 セシウムは、「ポルサイト」と呼ばれる、 セシウムを豊富に含んだ鉱石の中から取り出されます。
 ここでは、この鉱石を「セシウム鉱石」と呼ぶことにしますが、 この「セシウム鉱石」の採掘について、考えてみましょう。



 セシウムを採掘するための手順は、ホウ素の場合とほぼ同様です。

 「セシウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(セシウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 セシウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なセシウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が0.1MCrの場合はDM+1、
   0.01MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表8 セシウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT04_Fig08.gif - 4.85KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更して下さい。
 鉱石の密度は、1排水素トン=40重量トンです。



 探索に成功した場合は、そのセシウム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「セシウム鉱石」の品位としては、便宜上0.005%を用いることにしました。 鉱石1トン当たりに50グラムのセシウムしか含まれていない、ということです。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「セシウム鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、0.005%となるのです。

 選鉱の後、品位が5%になった「セシウム鉱石」を 「セシウム精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位1.0%の「セシウム鉱石」1,000トンから、 品位5%の「セシウム精鉱」1トンが得られる訳です。
 残りの999トンは捨石として、鉱山の周辺に廃棄されるでしょう。
 「セシウム鉱石」は地中深くの火成岩に含まれることが多いので、 採掘にはこれだけの無駄が発生してしまうのです。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


         表9 セシウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT04_Fig09.gif - 4.44KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「セシウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「セシウム精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり40,000cr。

 「セシウム精鉱」には、まだまだ多くの不純物が含まれていますが、 それを取り除くためには、それなりの設備が必要であり、この状態でも価値が大きいため、 「セシウム精鉱」の形態で取引されることも多いようです(具体的な数字は不明)。
 実際に、この価格ならば恒星間の運賃も賄えますし、投機貿易品として取り扱うこともできるでしょう。



 「セシウム精鉱」を精錬し、「塩化セシウム」として流通させることも可能です。
 生憎と純粋な「金属地金」の形態となったセシウムは極めて不安定なので、 輸送や保管には化合物の形が選ばれます。ここでは「塩化物」という形で統一しておきました。
 「セシウム精鉱」16トン(640,000cr相当)に、精錬費用80,000crを費やすことで、 品位80%の「塩化セシウム」1トンが得られます。
 「塩化セシウム」の価格は1排水素トン当たり800,000crですから、 精錬所の利益としては1トン当たり80,000crが得られるでしょう。




(5)流通形態と流通量

 以上、「ホウ素、水銀、ベリリウム、セシウム」から成る 「消費量が少ないレアメタル」4種の採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、以下にまとめます。


      表10 消費量が少ないレアメタルの流通形態と流通量、価格

MRT04_Fig10.gif - 9.67KB

 左端は金属名。次が流通形態で、鉱石精鉱化合物などの中間加工品と、最終的な地金などになります。
 流通量は10億人当たりの流通量で、重複しているものもあります。
 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。



 消費量が少ないレアメタルであっても、鉱石は基本的に安価です。

 ホウ素は「ホウ素精鉱(ホウ砂)」、 もしくは「ホウ酸」の形で流通していました。
 それらの価格はトン当たり400crと800crですので、恒星間の投機貿易に使えるとは思えません。
 ホウ素は市場世界と同じ世界上で採掘され、供給されているようです。

 水銀は「水銀精鉱(辰砂)」、 もしくは「純粋な水銀」の形で流通していました。
 その価格は2,000crと5,000cr。
 投機貿易品として用いるには十分な価格ですが、市場世界での需要があるかどうかが分かりません。

 ベリリウムは、品位20%の「弗化ベリリウム」として流通しているようです。
 その価格は25,000crですから、恒星間輸送の運賃を賄えますし、投機貿易品としても扱えます。
 問題は、その流通量がほとんど存在しないということでしょうか。

 セシウムは「セシウム精鉱」、 もしくは「塩化セシウム」として流通していました。
 その価格は40,000crと800,000cr。
 鉱石としては極めて高額ですから、恒星間輸送には何の障害もありません。投機貿易品としても魅力的です。
 しかしベリリウム以上に流通量が少ない、ということが大きな問題となっていました。



 消費量が少ないレアメタルは流通量が少ないため、真っ当な貿易品には成り難いようです。





4.副産物として得られるレアメタルの消費量


 「副産物として得られるレアメタル:Rare Metal for Byproduct」とは、 専用鉱石が存在せず、他の鉱石の副産物としてしか得られない11種の金属、
 ビスマス(Bi)セレン(Se)タンタル(Ta)インジウム(In)テルル(Te)ハフニウム(Hf)ガリウム(Ga)ゲルマニウム(Ge)タリウム(Tl)レニウム(Re)ルビジウム(Rb)、のことである、と定義しました。
 このあたりの定義は例によって曖昧ですが、専用鉱石が存在したとしても、その専用鉱石の採掘が経済的に引き合わないため、 他鉱石の採掘に依存している金属も上記に含めました。

 コバルト(Co)も、ニッケル採掘の 副産物として得られるレアメタルなのですが、 「MRT02:トラベラー宇宙の考察資源、その2」において 「主要なレアメタル」として考察済みなので、此処では省略します。



 以下に、副産物として得られるレアメタルの消費量を示しました。


      表11 世界の金属消費量(副産物として得られるレアメタル)

MRT04_Fig11.gif - 9.83KB

 今回も、データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(トン)を求めています。
 人口1千人当たりの消費量は求めるだけ無駄だったので省略。
 その代り、トン当たりの価格(cr/tons)を載せておきました。

 以下で、副産物として得られるレアメタル11種を簡単に説明します。



 ビスマス(Bi)は、鉄合金、アルミ合金への添加剤として使われる用途が主ですが、 フェライト磁石、自動消火設備(低融点金属)、高温超電導材料としても使われていました。
 消費量は、人口10億人の高人口世界でも年間980トンです。
 一応、専用鉱石も存在するのですが、専用鉱石からの精錬は割高であるため、 専ら鉛(Pb)の副産物として得られてきました。
 具体的には、を電解精錬する際に発生する不純物、 陽極スライムの中からビスマスを抽出することで、 効率的で経済的なビスマスの分離が可能となっている訳です。
 詳細については次項、(8)鉛の副産物を参照して下さい。

 セレン(Se)は、半導体やガラス、特殊な切削鋼の添加剤として利用されます。
 セレンを添加した半導体は、暗所では絶縁体ですが、光が当たると導体になるという性質を持っているため、 コピー機の回転ドラムとして使用されることが多いようです。幸い、用途が限られているため、リサイクルも盛んだとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間235トン。
 銅(Cu)、もしくは、の副産物として、 電解精錬時の不純物(陽極スライム)から分離されます。
 詳細については、(3)銅の副産物、 もしくは、(8)鉛の副産物を参照して下さい。

 タンタル(Ta)は誘電率の大きな金属で、古代テラにおける主な用途はコンデンサでした。
 トラベラー世界にはズチェイ・クリスタル(zuchai crystals)という高性能なコンデンサ材料も存在する訳ですが、 あれは高価な上、蓄電したまま放置すると数時間で爆発するという厄介な性質を持っているため、ジャンプ・ドライブ以外の用途には使い難いでしょう。
 未来世界であってもタンタルの立場は、多分、揺らがないと思われます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間139トン。
 ニオブ(Nb)を製錬する際、溶媒抽出によって不純物として分離されます。
 詳しくは(6)ニオブの副産物を参照して下さい。

 インジウム(In)は透明電極(ITO)の主な原料として使われています。
 透明な電極ですから、使うべき箇所は液晶ディスプレイや太陽電池といった、光を透過しなければならない電子機器。
 トラベラー世界であっても、その重要度は変わりません。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間55.8トン。
 亜鉛(Zn)を製錬する際に生じる不純物、残渣から分離されます。
 詳しくは(4)亜鉛の副産物を参照して下さい。

 テルル(Te)は、快削鋼を作るための添加剤として使用される他、陶磁器やガラスの着色料としても使われます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間31.3トン。
 セレンと同じように、 もしくはの副産物として、精錬時の煙塵から分離されます。
 詳しくは、(3)銅の副産物、 もしくは、(8)鉛の副産物を参照して下さい。

 ハフニウム(Hf)は、中性子の吸収率が高いため、原子炉の制御棒に使われます。
 その強度を利用して、ジェットエンジンやプラズマ加工機等に使われることも有りますが、その価格が高価なため、一般的ではありません。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間20.0トン。
 ジルコニウム(Zr)を製錬する際、不純物(塩化物)として分離されます。
 詳しくは(5)ジルコニウムの副産物を参照して下さい。

 ガリウム(Ga)は半導体の材料、特に発光ダイオードに使用されます。
 特に砒素(As)と化合させたガリウム砒素は、発熱量が小さいので高密度の集積回路に欠かせません。
 窒素(N)リン(P)と化合させれば、青、赤、黄色の発光ダイオードを作れます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間18.3トン。
 アルミニウム(Al)、もしくは、亜鉛精錬時の副産物として、 残溶液から分離されます。
 詳しくは、(2)アルミニウムの副産物、 もしくは、(4)亜鉛の副産物を参照して下さい。

 ゲルマニウム(Ge)は、プラスチックを作る際の触媒として重要です。
 他には、光ファイバーへの添加剤としての用途もありました。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間11.3トン。
 亜鉛を製錬する際の副産物として、製錬時の煙塵から分離されます。
 詳しくは(4)亜鉛の副産物を参照して下さい。

 タリウム(Tl)は、ガラス関連の添加剤として用いられていました。
 主な用途は低融点ガラス、光ファイバー、高温超電導材料などですが、毒物(殺鼠剤)としての利用もあります。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間6.7トン。
 を製錬する際の副産物として、製錬時の煙塵から分離されます。
 詳しくは(3)銅の副産物を参照して下さい。

 レニウム(Re)は、特殊な合金の添加剤として使用されます。
 超高温に晒されるジェットエンジンや火力発電所のタービンブレードなどに用いられているとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間4.7トン。
 モリブデン(Mo)を製錬する際の副産物として得られます。
 詳しくは(7)モリブデンの副産物を参照して下さい。

 ルビジウム(Rb)は、ほとんど用途がありません。
 精々、原子時計に使われている程度です。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間0.1トン。
 リチウム(Li)を製錬する際の副産物として、炭酸リチウムから分離されます。
 詳しくは(1)リチウムの副産物を参照して下さい。





 副産物として得られるレアメタル11種も、 人口レベル7以上の世界でなければ需要が存在しません。
 次の章では副産物として得られるレアメタルの価格や分離方法について考えます。





5.主要鉱物の副産物


 今回も、レアメタルの採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)リチウムの副産物

 リチウム(Li)は、精錬の際の副産物として、ルビジウム(Rb)を産出しました。

 ルビジウムは、ほとんど用途がありません。
 精々、原子時計に使われている程度です。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間0.1トン。
 ルビジウムリチウムを製錬する際の副産物として分離されますが、 主要鉱物であるリチウムと、副産物であるルビジウムの関係は、以下の通りでした。
 価格と消費量を以下に並べてみます。


              表12 リチウムの副産物

MRT04_Fig12.gif - 3.71KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。市場規模を表しているのだと考えて下さい。



 リチウムは塩湖の中に存在する、濃厚な塩湖かん水から抽出されます。
 その際、リチウムの多くは「炭酸リチウム」として運び出される訳ですが、 一部の塩湖から抽出される「炭酸リチウム」は、 その中に微量の「炭酸ルビジウム」も含んでいます。
 ですから「炭酸リチウム」を精錬する際に不純物として、 「炭酸ルビジウム」を分離することが可能になりました。

 2D6を振って「10以上」が出れば、その塩湖から汲み出される塩湖かん水の中には、 分離することが可能なだけのルビジウムが含まれているものとします。
 サイコロの目が「9以下」であれば、 その塩湖かん水からルビジウムを分離することはできません。



 ルビジウムの分離が可能な場合、 ルビジウム1トンを得るために必要な炭酸リチウムの量は、 下の表に示した通りとなります。
 参考のため、リチウム精鉱(濃厚な塩湖かん水)水酸化リチウムも掲載しました。


         表13 ルビジウムの分離に必要なリチウムの量

MRT04_Fig13.gif - 4.99KB

 副産物であるルビジウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物であるリチウム3,000トンが必要です。
 それに対応する炭酸リチウム(品位19%)の量は15,800トンでした。
 水酸化リチウム(品位29%)に換算すれば10,350トンリチウム精鉱(品位6%)ならば50,000トンです。

 炭酸リチウム15,800トンを購入するための経費は、47.4MCrでした。
 分離して得られるルビジウム1トンの価格は10.0MCrですから、 ルビジウムだけの収支を見れば明らかに赤字です。
 ルビジウムを分離した後、 残りの炭酸リチウムを転売しなければ、元が取れません。
 リチウム精鉱(品位6%)を用いたとしても、30.0MCrの経費が掛かりますから同様。 ルビジウムを専用鉱石から取り出すことは、経済的に困難なのです。

 炭酸ルビジウムを分離して、ルビジウム地金へと還元する作業には、 得られたルビジウム1トン当たり、5.0MCrの経費が掛かることにしました。
 ルビジウムの分離を行おうとする場合には、その経費に注意して下さい。



 蛇足ですが、古代テラでルビジウムを得る場合は、リチア雲母という鉱石を用います。
 リチア雲母からリチウムを取り出し、 その精製過程でルビジウムを分離する、という段取りになっていました。 ですから実際には、塩湖かん水からルビジウムを得ることは出来ません。
 しかし、古代テラにおけるリチウム採掘の主流が塩湖かん水となっていること、 リチア雲母の採掘があまり一般的ではないことなどから、上記のようなハウス・ルールを作ることになった次第です。
 御了承下さい。




(2)アルミニウムの副産物

 アルミニウム(Al)は、ボーキサイトからアルミナを精錬する際の副産物として、 ガリウム(Ga)を産出します。

 ガリウムは半導体の材料、特に発光ダイオードに使用されます。
 特に砒素(As)と化合させたガリウム砒素は、発熱量が小さいので高密度の集積回路に欠かせません。
 窒素(N)リン(P)と化合させれば、青、赤、黄色の発光ダイオードを作れます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間18.3トン。
 ガリウムアルミニウムを製錬する際の副産物として、ボーキサイトから分離されますが、 主要鉱物であるアルミニウムとの関係は、以下の通りとなっています。
 価格と消費量を以下に並べてみました。


             表14 アルミニウムの副産物

MRT04_Fig14.gif - 3.79KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。市場規模を表しているのだと考えて下さい。



 アルミニウムは、 酸化アルミニウムを豊富に含んだボーキサイトからの製錬によって作られます。
 その際、極微量ですが、不純物としてガリウムを分離することができました。

 ガリウム1トンを得るために必要なボーキサイトの量は、 下の表に示した通りとなります。
 参考のため、アルミ地金も掲載しました。


         表15 ガリウムの分離に必要なアルミニウムの量

MRT04_Fig15.gif - 4.07KB

 副産物であるガリウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物であるアルミニウム300,000トンが必要です。
 ボーキサイト(品位25%)に換算すれば、その量は1,200,000トンとなりました。

 ボーキサイト1,200,000トンの購入費用は、24.0MCrであり、 分離して得られるガリウム1トンの価格は0.3MCrですから、 やはりガリウムだけの収支を見ると、赤字が確定します。
 ガリウムを分離した後、 アルミニウムをきちんと精錬して転売しなければ、元が取れません。 ガリウムだけを取り出すことは、経済的に困難なことなのです。

 ガリウムを分離して、地金へと還元する作業には、 得られたガリウム1トン当たり、0.15MCrの経費が掛かります。




(3)銅の副産物

 銅(Cu)は、製錬、および、精錬時の副産物として、 セレン(Se)テルル(Te)タリウム(Tl)を産出します。

 セレンは、半導体やガラス、特殊な切削鋼の添加剤として利用されます。
 セレンを添加した半導体は、暗所では絶縁体ですが、光が当たると導体になるという性質を持っているため、 コピー機の回転ドラムとして使用されることが多いようです。幸い、用途が限られているため、リサイクルも盛んだとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間235トン。
 を電解精錬する際の不純物(陽極スライム)として、セレンが分離されます。

 テルルは、快削鋼を作るための添加剤として使用される他、陶磁器やガラスの着色料としても使われます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間31.3トン。
 を精錬する際の煙塵から分離されます。

 タリウムは、ガラス関連の添加剤として用いられていました。
 主な用途は低融点ガラス、光ファイバー、高温超電導材料などですが、毒物(殺鼠剤)としての利用もあります。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間6.7トン。
 を製錬する際の煙塵から分離されます。



 上記3種類の元素は、を製錬する際の副産物として分離されますが、 主要鉱物であるとの関係は、以下の通りとなっていました。
 価格と消費量を以下に並べます。


               表16 銅の副産物

MRT04_Fig16.gif - 5.09KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。



 の消費量が220万トンも有ることに対し、セレンは235トン、 テルルは31.3トン、タリウムは6.7トンしか消費量が有りません。



 セレン1トンを得るために必要なの量は、下の表に示した通りです。
 セレンテルルはセットにして扱われることが多いため、 以下の分量のからは、テルル0.125トンが得られることにしました。


         表17 セレンとテルルの分離に必要な銅の量

MRT04_Fig17.gif - 4.01KB

 副産物であるセレン1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である10,000トンが必要です。
 銅精鉱(品位33%)に換算すれば、その量は30,000トン

 銅精鉱30,000トンの購入費用は、6.0MCrであり、 分離して得られるセレン1トンの価格は0.04MCr、 テルル0.125(8分の1)トンの価格は0.025MCrですから、 セレンテルルの売却益を合わせても、赤字確定です。
 どう考えても、セレンテルルの売却だけでは元が取れません。

 セレンを分離する経費は、セレン1トン当たり、0.02MCrが掛かります。
 テルルを分離する経費は、テルル1トン当たり、0.10MCrです。



 同様に、タリウム1トンを得るために必要なの量を、下の表に示しました。


           表18 タリウムの分離に必要な銅の量

MRT04_Fig18.gif - 4.05KB

 副産物であるタリウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である300,000トンが必要です。
 銅精鉱(品位33%)に換算すれば、その量は90,000トン

 銅精鉱30,000トンの購入費用は、180.0MCrであり、 分離して得られるタリウム1トンの価格は1.0MCrですから、 いくらタリウムが高価であっても、採算が合いません。

 タリウムを分離する経費は、タリウム1トン当たり、0.5MCrが掛かります。




(4)亜鉛の副産物

 亜鉛(Zn)は、製錬、および、精錬時の副産物として、 ガリウム(Ga)ゲルマニウム(Ge)インジウム(In)を産出します。


 ガリウムは半導体の材料、特に発光ダイオードに使用されます。
 特に砒素(As)と化合させたガリウム砒素は、発熱量が小さいので高密度の集積回路に欠かせません。
 窒素(N)リン(P)と化合させれば、青、赤、黄色の発光ダイオードを作れます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間18.3トン。
 亜鉛を製錬する際の副産物として分離されます。

 ゲルマニウムは、プラスチックを作る際の触媒として重要です。
 他には、光ファイバーへの添加剤としての用途もありました。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間11.3トン。
 亜鉛を製錬する際の副産物として、製錬時の煙塵から分離されます。

 インジウムは透明電極(ITO)の主な原料として使われています。
 透明な電極ですから、使うべき箇所は液晶ディスプレイや太陽電池といった、光を透過しなければならない電子機器。
 トラベラー世界であっても、その重要度は変わりません。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間55.8トン。
 亜鉛を製錬する際に生じる不純物、残渣から分離されます。



 上記3種類の元素は、亜鉛を製錬する際の副産物として分離されますが、 主要鉱物である亜鉛との関係は、以下の通りとなっていました。
 価格と消費量を以下に並べます。


               表19 亜鉛の副産物

MRT04_Fig19.gif - 5.26KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。



 亜鉛の消費量が1146万トンに対し、ガリウムは18.3トン、 ゲルマニウムは11.3トン、インジウムでも55.8トンの消費量しか有りません。
 


 ガリウム1トンを得るために必要な亜鉛の量は、下の表に示した通りです。
 ガリウムゲルマニウムもセットにして扱いました。
 以下の分量の亜鉛からは、ゲルマニウムも1トンが得られます。


       表20 ガリウムとゲルマニウムの分離に必要な亜鉛の量

MRT04_Fig20.gif - 4.20KB

 副産物であるガリウムとゲルマニウム各1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である亜鉛100,000トンが必要です。
 亜鉛精鉱(品位50%)に換算するならば、その量は200,000トン

 亜鉛精鉱200,000トンの購入費用は、40.0MCrであり、 分離して得られるガリウム1トンの価格は0.30MCr、 ゲルマニウム1トンの価格は1.00MCrですから、 ガリウムゲルマニウムの双方を合わせても、赤字が確定します。
 亜鉛自体の売却を行わない限り、 ガリウムゲルマニウムの生産(分離)は行えません。

 ガリウムを分離する経費は、ガリウム1トン当たり、0.15MCrが掛かります。
 ゲルマニウムを分離する経費は、ゲルマニウム1トン当たり、0.50MCrです。



 同様に、インジウム1トンを得るために必要な亜鉛の量を、下の表に示しました。


          表21 インジウムの分離に必要な亜鉛の量

MRT04_Fig21.gif - 4.03KB

 副産物であるインジウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である亜鉛20,000トンが必要です。
 亜鉛精鉱(品位50%)に換算するならば、その量は40,000トン

 亜鉛精鉱40,000トンの購入費用は、8.0MCrであり、 分離して得られるインジウム1トンの価格は0.01MCrですから、 やはりインジウム単独では採算が合いません。

 インジウムを分離する経費は、インジウム1トン当たり、0.005MCrです。




(5)ジルコニウムの副産物

 ジルコニウム(Zr)は、精錬の際の副産物として、 ハフニウム(Hf)を産出します。

 ハフニウムは、中性子の吸収率が高いため、原子炉の制御棒に使われます。
 その強度を利用して、ジェットエンジンやプラズマ加工機等に使われることも有りますが、その価格が高価なため、一般的ではありません。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間20.0トン。
 ジルコニウムを製錬する際、不純物(塩化物)として分離されますが 主要鉱物であるジルコニウムとの関係は、以下の通りとなっています。
 価格と消費量を以下に並べてみました。


             表22 ジルコニウムの副産物

MRT04_Fig22.gif - 3.64KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。市場規模を表しているのだと考えて下さい。



 ジルコニウムの大半(85%)は、ジルコニウム精鉱の形で消費されます。 金属地金まで加工されるジルコニウムが、極僅かであることに注意して下さい。
 ジルコニウム精鉱を精錬して二酸化ジルコニウムとする際に、 不純物として二酸化ハフニウムを分離することができます。

 ハフニウム1トンを得るために必要なジルコニウムの量は、 下の表に示した通りとなります。
 参考のため、ジルコニウム精鉱ジルコニウム地金も掲載しました。


        表23 ハフニウムの分離に必要なジルコニウムの量

MRT04_Fig23.gif - 4.66KB

 副産物であるハフニウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物であるジルコニウム100トンが必要です。
 二酸化ジルコニウム(品位70%)に換算すれば、その量は143トン

 二酸化ジルコニウム143トンの購入費用は、0.4MCrであり、 分離して得られるハフニウム1トンの価格が0.3MCrですから、 やはりハフニウムだけの収支を見ると、赤字が確定です。
 ジルコニウム精鉱200トンの購入費用ならば、0.04MCrしか掛かりませんが、 この費用にジルコニウム製錬のコストを上乗せすると、やはり赤字となってしまいました。

 ハフニウムを分離して、地金へと還元する作業には、 得られたハフニウム1トン当たり、0.15MCrの経費が掛かります。




(6)ニオブの副産物

 ニオブ(Nb)は、精錬の際の副産物として、 タンタル(Ta)を産出します。

 タンタルは誘電率の大きな金属で、古代テラにおける主な用途はコンデンサでした。
 トラベラー世界にはズチェイ・クリスタル(zuchai crystals)という高性能なコンデンサ材料も存在する訳ですが、 あれは高価な上、蓄電したまま放置すると数時間で爆発するという厄介な性質を持っているため、ジャンプ・ドライブ以外の用途には使い難いでしょう。
 未来世界であってもタンタルの立場は、多分、揺らがないと思われます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間139トン。
 ニオブを製錬する際、溶媒抽出によって不純物として分離されますが 主要鉱物であるニオブとの関係は、以下の通りとなっています。
 価格と消費量を以下に並べてみました。


              表24 ニオブの副産物

MRT04_Fig24.gif - 3.54KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。市場規模を表しているのだと考えて下さい。



 ニオブ精鉱(品位40%)からフェロニオブ(品位63%)、 あるいはニオブ地金(品位100%)を製錬する際、 溶媒抽出によってニオブタンタルを分離します。
 高純度のニオブを得るために、 不純物であるタンタルを取り除かなければならない、ということでもあるのですが。

 タンタル1トンを得るために必要なニオブの量は以下の通り。
 参考のため、フェロニオブニオブ地金も掲載しました。


          表25 タンタルの分離に必要なニオブの量

MRT04_Fig25.gif - 4.58KB

 副産物であるタンタル1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物であるニオブ40トンが必要です。
 ニオブ精鉱(品位40%)に換算すれば、その量は100トン

 ニオブ精鉱100トンの購入費用は、0.4MCrであり、 分離して得られるタンタル1トンの価格が0.02MCrですから、 タンタルの収支だけでは赤字となりました。
 所詮、不純物だということなのでしょう。

 タンタルを分離して、地金へと還元する作業には、 得られたタンタル1トン当たり、0.01MCrの経費が掛かります。




(7)モリブデンの副産物

 モリブデン(Mo)は、精錬の際の副産物として、 レニウム(Re)を産出します。

 レニウムは、特殊な合金の添加剤として使用されます。
 超高温に晒されるジェットエンジンや火力発電所のタービンブレードなどに用いられているとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間4.7トン。
 モリブデンを製錬する際の副産物として得られます。
 モリブデン以外の鉱石からも得ることは可能なのですが、その含有率があまりにも低過ぎるため、 モリブデン以外は経済的に引き合わないということでした。

 レニウムは、モリブデンを製錬する際に分離されますが 主要鉱物であるモリブデンとの関係は、以下の通りとなっています。
 価格と消費量を以下に並べてみました。


             表26 モリブデンの副産物

MRT04_Fig26.gif - 3.58KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。市場規模を表しているのだと考えて下さい。



 モリブデン精鉱(品位60%)からモリブデン地金(品位100%)を製錬する際、 不純物としてレニウムが分離されます。

 レニウム1トンを得るために必要なモリブデンの量は以下の通り。
 参考のため、モリブデン精鉱も掲載しました。


         表27 レニウムの分離に必要なモリブデンの量

MRT04_Fig27.gif - 4.10KB

 副産物であるレニウム1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物であるモリブデン3,000トンが必要です。
 モリブデン精鉱(品位60%)に換算すると、その量は5,000トン

 モリブデン精鉱5,000トンの購入費用は、25MCrであり、 分離して得られるレニウム1トンの価格が0.05MCrですから、 レニウムの収支だけでは赤字となります。

 レニウムを分離して、地金へと還元する作業には、 得られたレニウム1トン当たり、0.025MCrの経費が掛かります。




(8)鉛の副産物

 鉛(Pb)は、製錬、および、精錬時の副産物として、 ビスマス(Bi)セレン(Se)テルル(Te)を産出します。

 ビスマスは、鉄合金、アルミ合金への添加剤として使われる用途が主ですが、 フェライト磁石、自動消火設備(低融点金属)、高温超電導材料としても使われていました。
 消費量は、人口10億人の高人口世界でも年間980トンです。
 一応、専用鉱石も存在するのですが、専用鉱石からの精錬は割高であるため、 専らの副産物として得られてきました。
 具体的には、を電解精錬する際に発生する不純物、 陽極スライムの中からビスマスを抽出することで、 効率的で経済的なビスマスの分離が可能となっている訳です。

 セレンは、半導体やガラス、特殊な切削鋼の添加剤として利用されます。
 セレンを添加した半導体は、暗所では絶縁体ですが、光が当たると導体になるという性質を持っているため、 コピー機の回転ドラムとして使用されることが多いようです。幸い、用途が限られているため、リサイクルも盛んだとのこと。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間235トン。
 を電解精錬する際の不純物(陽極スライム)として、セレンが分離されます。

 テルルは、快削鋼を作るための添加剤として使用される他、陶磁器やガラスの着色料としても使われます。
 消費量は、人口10億人の高人口世界で年間31.3トン。
 を精錬する際の煙塵から分離されます。



 上記3種類の元素は、を製錬する際の副産物として分離されますが、 主要鉱物であるとの関係は、以下の通りとなっていました。
 価格と消費量を以下に並べます。


               表28 鉛の副産物

MRT04_Fig28.gif - 4.89KB

 表の左端は原子番号金属名
 その右側は1トン当たりの価格(cr/tons)人口10億人当たりの年間消費量(tons)
 表の右端は、価格と消費量の積です。



 の消費量109万トンに対し、ビスマスは980トン、 セレンは235トン、テルルは31.3トンでした。



 ビスマス1トンを得るために必要なの量を、下の表に示しました。


           表29 ビスマスの分離に必要な鉛の量

MRT04_Fig29.gif - 3.85KB

 副産物であるビスマス1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である1,000トンが必要です。
 鉛精鉱(品位60%)に換算すれば、その量は1,667トン

 鉛精鉱1,667トンの購入費用は、0.5MCrであり、 分離して得られるビスマス1トンの価格は0.01MCrですから、やはり採算が合いません。

 ビスマスを分離する際は、ビスマス1トン当たり、0.5MCrの経費が掛かります。



 同様に、セレン1トンを得るために必要なの量も、下の表に示した通りです。
 セレンテルルはセットにして扱われることが多いため、 以下の分量のからは、テルル0.125トンが得られることにしました。


         表30 セレンとテルルの分離に必要な鉛の量

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 副産物であるセレン1トンを得る(分離する)ためには、 主要鉱物である10,000トンが必要です。
 鉛精鉱(品位60%)に換算すれば、その量は16,667トン

 鉛精鉱16,667トンの購入費用は、5.0MCrであり、 分離して得られるセレン1トンの価格が0.04MCr、 テルル0.125(8分の1)トンの価格が0.025MCrですから、赤字確定です。

 セレンを分離する経費は、セレン1トン当たり、0.02MCrが掛かりました。
 テルルを分離する経費は、テルル1トン当たり、0.10MCrです。




(9)流通形態と流通量

 以上、「ビスマス、セレン、タンタル、インジウム、テルル、ハフニウム、ガリウム、ゲルマニウム、 タリウム、レニウム、ルビジウム」から成る 「副産物として得られるレアメタル」11種の生産について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。


     表31 副産物として得られるレアメタルの流通形態と流通量、価格

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 左端は金属名。
 その右側が流通形態ですが、この表においては地金しか有り得ません。
 流通量は10億人当たりの流通量で、その価格は1トン当たりの取引価格(cr)。



 「ビスマス地金」の価格は、1トン当たり10,000cr。
 「セレン地金」の価格は、1トン当たり40,000cr。
 「タンタル地金」の価格は、1トン当たり20,000cr。
 この価格ならば恒星間の輸送費を賄えますし、投機貿易品としての取り扱いを受けることも可能でしょう。

 しかし、人口10億人当たりの消費量が100トンを超えるレアメタルは、 上記の3つだけでした。そして取引される量は、副産物として得られるレアメタルの9割を超えます。
 それでも市場規模(価格と流通量の積)は22MCr。
 何と言うか、レアメタル市場の規模の小ささを実感させてくれる数字でした。



 「インジウム地金」の価格は、1トン当たり10,000cr。
 「テルル地金」の価格は、1トン当たり200,000cr。
 「ハフニウム地金」の価格は、1トン当たり300,000cr。
 テルルから一気にトン当たりの価格が上がりました。 トン当たりの価格が20万〜30万クレジットですから、 これらのレアメタルを大量に取引できれば大金持ちになれるでしょう。
 しかし残念ながら、上記のレアメタルは 人口10億人当たりの消費量が20トン〜56トンしかありません (副産物として得られるレアメタルの7%)。
 上記3つの全てを集めたとしても、R型政府指定商船1隻の船倉を満たすことすらできない訳です。 到底、大金持ちになることは望めません。
 上記のレアメタルは投機貿易品として最適ですが、 その量は1トン〜数トン(小規模貨物)が精々でしょう。
 10トン以上の分量が投機貿易品や船荷として出回ることは、絶対に有り得ないことなのです。



 「ガリウム地金」の価格は、1トン当たり300,000cr。
 「ゲルマニウム地金」と「タリウム地金」の価格は、1トン当たり1,000,000cr。
 遂にレアメタルの価格が1トン当たり1MCrに達しました。
 もっとも希土類金属(レアアースメタル)セシウム(Cs)と同じように、 これら高価なレアメタルの需要(消費量)は極僅かしかありません。
 上記3つの消費量は6.7〜18.3トンで、 その合計は副産物として得られるレアメタルの2.4%を占めています。
 市場規模も23.5MCrですから、それほど大きなものではありません。
 これらのレアメタルはとても高価ですから、投機貿易品としての魅力は十分です。
 入手できる量は数十キログラム〜1トンにしかならないのでしょうが。



 「レニウム地金」の価格は、1トン当たり50,000cr。
 「ルビジウム地金」の価格は、1トン当たり10,000,000crでした。
 これらの流通量は極僅かなものです。
 投機貿易品としては魅力的なのですが、数キログラム〜数十キログラムの単位でしか出回ることはないでしょう。



 「副産物として得られるレアメタル」の多くは、 精錬所を備えた世界において、主要鉱物から分離されます。
 精錬所を備えた世界というのは、多くの人口と市場を抱えた世界(=高人口世界)でもある訳で、 その世界で分離されたレアメタルは、その世界で消費されることが必然なのかも知れません。
 恐らく、需要と供給のバランスは取れている筈です。

 精錬所が、高人口世界以外の世界に作られているとするのであれば、 「副産物として得られるレアメタル」は、精錬された主要鉱物と共に高人口世界へ輸出される、 ということとなるでしょう。
 ここで、「副産物として得られるレアメタル」の恒星間輸送、という状況が生じてきます。
 その多くは、製錬された主要鉱物と同じ方法で運ばれるのでしょうが、何らかの事情で輸送能力が足りなくなったり、副産物の余剰が発生すれば、 それらが自由貿易商人向けの貨物や投機貿易品として回されるかも知れません。
 その量は多くありませんが、自由貿易商人がちょっとした利益を得るには十分な金額となってる筈です。

 あるいは、精錬所が高人口世界に作られているとしても、何らかの事情で需要と供給のバランスが狂ってしまうかも知れません。
 バランスを正すため、「副産物として得られるレアメタル」の緊急的な輸出入を行わなければならないでしょう。
 ここでも、「副産物として得られるレアメタル」の恒星間輸送が生じます。
 小回りの利く自由貿易商人は、こうした事態にも容易に対応できる筈です。
 「副産物として得られるレアメタル」は主要世界間であっても、 小規模な貨物として扱われることでしょう。





6.小規模鉱床の開発


 前回の考察「MRT03:トラベラー宇宙の鉱物資源、その3」で得られた結論ですが、 規模の小さな鉱床(埋蔵量の少ない鉱床)は、 その経済性が悪い=費用対効果(ROI)が小さいため、 発見されても開発の手が付けられず、放置される可能性が高いということが判明しました。
 特に規模の小さな鉱床、例えば鉱床規模=10万トン以下の銅鉱床鉱床規模=1千トン以下のモリブデン鉱床は採算が合わないため、絶対に開発されることが有り得ない訳です。

 しかし、「トラベラー宇宙の鉱物資源、その3」の表62と表63で考察した通り、 「鉱床の探索」で発見される鉱床が経済性の良い大規模鉱床ばかりとは限りません。
 発見された大規模鉱床1つの裏側には、 1桁小さい規模の鉱床が2〜5個、2桁小さい規模の鉱床が4〜9個、 探索に失敗した場合に3桁小さい規模の鉱床が見つかることにしているのであれば、 3桁小さい規模の鉱床が5〜21個、見つかっています。

 この中で、1桁小さい規模の鉱床ならば積極的に開発が行われる可能性は高いでしょう。
 大規模鉱床には届きませんが、そこそこ経済性も良いのです。
 大企業が手を出さない場合は、下請け的な存在である中小企業が開発に乗り出すことも間違いありません。

 問題になるのは、2桁小さい規模の鉱床3桁小さい規模の鉱床です。
 経済性が悪く、全体の中でわずかな分量しか占めていないとは言え、 こうした小規模鉱床を放置しておくのは、何とも勿体無いことではないでしょうか。

 この章では、そうした小規模鉱床の開発を、いかに経済的に行っていくか、について考察しました。




(1)採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合

 採算の合う大規模鉱床に、投資家や鉱山主の関心が集まるのは仕方がありません。
 これは経済的に必然的なことなのですが、見つかった小規模鉱床が放置されてしまうのは残念です。

 採算が悪いとはいえ、それらも立派な鉱物資源。
 何とか採算が合う採掘方法を見つけたいものです。



 明らかな問題点は、
 小規模鉱床に適合している小規模な採掘設備は経済性が悪い、
 ということでしょう。

 採掘設備の能力購入費用と維持費の合計が、 そういった関係になっているのは困りますが、前項の通りに鉱山開発の現実を再現できたのですから、致命的な問題ではないと思っています。
 ということですから問題は別の要素にあるのでしょう。
 もしかしたら、採掘設備の能力採掘期間に、 採算が合わない理由が隠されているのではないでしょうか?

 そこで思いついたのは、より大規模な採掘設備小規模鉱床を開発する、という方法。
 例えば、銅鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)において、 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発した場合は、 前述した通りどうやっても採算が合いません。
 しかし、同じ鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=100万トンの採掘設備で開発した場合は、どうなるでしょうか?



 幾つかの鉱床採掘設備を使って、 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合のシミュレートを行ってみました。


       表32 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合

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 表の左端は、購入費用(初期投資)の比較。
 見つけた鉱床の規模よりも1桁大きい規模の採掘設備を購入した場合、 その購入費用(初期投資)が何倍に増えるかという問題を確認しました。
 その範囲は、4〜5倍です。

 次の項は、鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間の変化。
 鉱石を処理する能力の桁が異なる訳ですから、 1桁大きい規模の採掘設備を用いるのであれば、 鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間も大きく変化する訳です。
 具体的には、通常の運用方法(週5日×8時間(年間250日))であれば40年間のところを、4年間に短縮。
 2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、20年間が2年間に。
 年中無休24時間態勢の場合は、10年間が1年間へ縮まりました。

 購入費用と維持費の合計は、 購入費用と同じく4〜5倍です。

 重要な発見は、採掘設備の規模が1桁増えた(10倍に増えた)にも関わらず、 その購入費用購入費用と維持費の合計が、 4〜5倍にしか増えていない、ということでしょう。
 もちろん、購入費用維持費が大きく増えてしまった以上、 小規模鉱床1つで採算が取れる筈もありません。
 しかし鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間は1〜4年(10分の1)に縮まりました。
 それならば、1つの小規模鉱床を掘り尽くした後は別の小規模鉱床へ移動し、 新たな小規模鉱床を開発する、ということが繰り返せるのではないでしょうか?

 幾つかの鉱床採掘設備を使ってシミュレートしたところ、 鉱山経営を黒字にするために必要な採掘回数は、4〜8回であると判明しています。
 鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間が10分の1に減り、 状況が許すならば、10の小規模鉱床を掘り尽くすことが可能な筈ですが、 黒字に必要な採掘回数4〜8回
 残り、2〜6回の小規模鉱床から上がる利益は、丸々鉱山主の利益となるでしょう。
 それなりの利益が上がるのであれば小規模鉱床の開発は続けられますし、配当があれば投資家も文句は言いません。
 あるいは、浮いた時間を移動に使うということもできます。
 その問題については、今後も考察する予定。



 表32だけでは分かり難いと思いますので、銅鉱床をサンプルとしてみました。
 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合銅鉱床の収支は以下の通りとなります。


    表33 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合(銅鉱床)

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 表の右端は、鉱床と採掘設備の規模で、前述の通り、 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合にしました。

 採掘期間は4年間で確定。
 途中経過は省略して、鉱床を掘り尽くすまでの収支だけを計算しています。

 その4年間に得られるであろう収入、必要な維持費、 それらの差である利益採掘設備の購入費用を引いた利益は、上記の通りでした。

 これまでは採算が合わなかった鉱床規模=10万トンの銅鉱床も、 最大採掘量=100万トンの採掘設備で開発すれば、そこそこの利益が得られるようです。
 4年間の採掘だけではまだ黒字を達成できませんが、表32で考察した通り、 同じ規模の小規模鉱床を5回開発すれば、黒字を達成できるでしょう。



 上記の数値、収入維持費を5倍に増やした結果は、以下の通り。


   表34 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合(銅鉱床×5)

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 表の形式は表33と同じですが、同規模の小規模鉱床を5回掘り尽くしている、という計算をしてあります。
 採掘設備の耐用期限は40年間ですから、4年間の採掘と、 4年間の休業期間(採掘設備の移設期間)を交互に繰り返している、という想定。
 実際のところ、採掘設備の移設に4年間も必要だとは思っていませんが、 そうそうタイミング良く新しい小規模鉱床が見つかって、採掘権を手に入れる、 ということがある訳もないので、妥当なところではないでしょうか。

 鉱床規模=1万トンの銅鉱床を、最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する、 という組み合わせを除けば、すべてが黒字となりました。

 気になる費用対効果(ROI)ですが、
 鉱床規模=1億トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合の68.3%から、 最大採掘量=10億トンの採掘設備を使った場合は34.2%に減少。
 採算が悪くなりました。
 ある程度の大きさを持った銅鉱床の場合、この手法は悪手のようです。

 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合の29.2%から、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合は32.9%に、僅かながら上昇。
 少しだけ採算が良くなりました。
 しかし、設備移動のロスやリスクを抱えるほどのメリットはなさそうです。
 6回以上の開発/採掘を行えるのであれば、話は変わってくるのでしょうが。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合の4.2%から、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合は13.3%へ急上昇。
 劇的に採算が良くなりました。
 採掘設備の維持費が原因だと分かっていますが、実に面白い結果です。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=10万トンの採掘設備を使った場合の−4.2%から、 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合は0.8%へ上昇。
 赤字確定だった状況が一転して、ぎりぎりですが、採算が取れるようになった訳です。 これならば、放置されていた鉱床規模=10万トンの銅鉱床も開発の手を伸ばせることでしょう。

 前述の通り、鉱床規模=1万トンの銅鉱床を最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する、 というパターンは、赤字が確定していました。




(2)採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合

 今度は、鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備で開発した場合。
 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合のシミュレートです。


       表35 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合

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 表の形式は、表32と同じです。

 まずは購入費用(初期投資)の比較ですが、 見つけた鉱床の規模よりも2桁大きい規模の採掘設備を購入した場合、 購入費用(初期投資)20〜60倍に増えました。

 鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間は100分の1まで短縮されます。
 通常の運用方法(週5日×8時間(年間250日))ならば20週間(実稼働日数は100日)で、月に直せば5ヶ月に。
 2交代制にすれば10週間なので3ヶ月。
 年中無休24時間態勢ならば5週間(1ヶ月)でした。

 購入費用と維持費の合計は、 購入費用と同じく20〜60倍です。

 鉱山の黒字経営に必要な採掘回数は、20〜40回
 一部の鉱床では更に大きな数字が見つかっていますが(リチウム鉱床50回金・銀・白金族鉱床67回)、それらを例外とするならば、 概ね40回で元が取れてしまう計算です。
 耐用期限である40年の内に小規模鉱床を20〜40ヶ所以上見つけなければならないのも大変ですが。



 表35の内容を、銅鉱床をサンプルとして、確かめてみました。
 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合銅鉱床の収支は以下の通りとなります。


    表36 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合(銅鉱床)

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 表の右端は鉱床と採掘設備の規模で、 今回は採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合です。

 採掘期間は、通常の100分の1に当たる5ヶ月(20週間)
 途中経過は省略して、鉱床を掘り尽くすまでの収支だけを計算しました。

 その5ヶ月で得られる収入、必要な維持費利益採掘設備の購入費用を引いた利益は、上記の通り。

 これまでは採算が合わなかった鉱床規模=1万トンの銅鉱床も、 最大採掘量=100万トンの採掘設備で開発すれば、利益が得られるようになりました。
 5ヶ月間だけの採掘では黒字を達成できませんが、表35で考察した通り、 同じ規模の小規模鉱床を20〜40回開発すれば、黒字を達成できるのです。



 上記の数値、収入維持費を40倍に増やした結果は、以下の通り。


   表37 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合(銅鉱床×40)

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 表の形式は表36と同じですが、同規模の小規模鉱床を40回掘り尽くしている、という計算をしてあります。
 採掘設備の耐用期限は40年間ですから、5ヶ月の採掘と、 7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)を交互に繰り返している、という想定。
 採掘設備の移設に7ヶ月も必要ないのでしょうが、一応、上記のような想定をしました。

 今回は、鉱床規模=1千トンの銅鉱床を、最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する、 という組み合わせを除けば、すべてが黒字です。
 そもそも最大採掘量=10万トンの採掘設備が赤字の発生源ですので、 この規模の採掘設備を使っている限り、どうやっても黒字にはならないのですが。

 再び、費用対効果(ROI)の評価を行ってみましょう。

 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 26.8%に減少。
 50回以上の採掘を行えば話は変わってくるのでしょうが、40回を前提とした場合、採算が悪くなるようです。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 25.8%へ急上昇。
 実に良い数字が出てきました。
 大手企業が手を伸ばすほどではありませんが、中小企業にとっては非常に好ましい数値です。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 10.2%へ上昇。
 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合と比べて、更に採算が良くなりました。 赤字確定だった不良物件が、実に魅力的な投資対象へ化けたように思います。

 鉱床規模=1万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=100万トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 ぎりぎり0.2%で黒字に変わりました。
 ここでも採算が取れるようになり、放置されていた鉱床規模=1万トンの銅鉱床を開発可能になった訳です。

 前述の通り、鉱床規模=1千トンの銅鉱床を最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する、 というパターンは、赤字確定でした。




(3)採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合

 最後は、鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発した場合。
 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合のシミュレートです。


       表38 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合

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 表の形式は、表32と同じ。

 購入費用(初期投資)の比較ですが、 見つけた鉱床の規模よりも3桁大きい規模の採掘設備を購入した場合、 購入費用(初期投資)100〜300倍に増えています。

 鉱床を掘り尽くすまでに必要な期間は1,000分の1まで縮まりました。
 具体的には、通常の運用方法(週5日×8時間)で2週間(実稼働日数は10日)。
 2交代制で1週間、という具合。
 短くなり過ぎるので年中無休24時間態勢は選択できません。

 購入費用と維持費の合計は、同じく100〜300倍

 黒字経営に必要な採掘回数は、50〜300回でした。
 ほとんどの鉱床では、100〜200回の範囲に収まっています。



 表38の内容を、銅鉱床をサンプルに確かめました。
 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合銅鉱床の収支は以下の通りとなります。


    表39 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合(銅鉱床)

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 表の右端は鉱床と採掘設備の規模で、 今回は採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合です。

 採掘期間は、通常の1,000分の1に当たる2週間
 今回も途中経過は省略して、鉱床を掘り尽くすまでの収支だけを計算しています。

 その2週間で得られる収入、必要な維持費利益採掘設備の購入費用を引いた利益は、上記の通り。



 上記の数値、収入維持費を200倍に増やした結果は、以下の通りでした。


   表40 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合(銅鉱床×200)

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 表の形式は表39と同じですが、同規模の小規模鉱床を200回掘り尽くしている、という計算をしてあります。
 採掘設備の耐用期限は40年間ですから、2週間の採掘と、 8週間の休業期間(採掘設備の移設期間)を交互に繰り返している、という想定。
 採掘設備の移設が8週間で足りるのか少し不安ですが、とりあえず上記のような想定をしました。

 今回は残念ながら、鉱床規模=100〜1千トンの銅鉱床の2つが赤字となっています。

 費用対効果(ROI)の評価結果は、以下のように変わりました。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 12.2%に低下。
 400回以上の採掘を行えば数値は25%を超えますが、それが可能かどうかは分かりません。
 採掘設備の移設が3週間で済むのであれば、ぎりぎり可能となる筈です。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 11.7%と更に良くなりました。
 実に有難い数値です。

 鉱床規模=1万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 3.8%へ上昇。
 赤字確定だった不良物件が、更に魅力的な物件となりました。

 鉱床規模=1千トンの銅鉱床を、 最大採掘量=100万トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 残念ながら赤字−1.2%
 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合であっても、 鉱床規模=1千トンの銅鉱床は開発が困難でした。

 鉱床規模=100トンの銅鉱床を最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する場合も、 赤字確定で開発できません。




(4)採掘設備の移設経費

 今度は、採掘設備の移設について考えてみましょう。
 移設を制限するものは、時間費用の2つです。

 時間=移設期間については前項の通り、 規模が大きい採掘設備ほど、移設の回数が多くなってくるため、そのスケジュールが厳しくなってきました。
 銅鉱床の計算例では、規模が1桁大きい場合は4年間、 2桁大きい場合は7ヶ月(30週間)、3桁大きい場合は8週間
 これが移設期間の上限となります。

 採掘設備の移設については、以下のような行為判定を用意しました。

 採掘設備を新しい鉱床へ移設するためには:
   難易度〈易〉、〈試掘〉、教育度、1日〜1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用います。
   レフリーが認めるのであれば〈メカニクス〉等の技能で代替しても構いません。

   時間単位は採掘設備の大きさによって異なります。
   大きさが10トン未満ならば、時間単位は1日、
   10トン以上、100トン未満ならば、時間単位は3日、
   100トン以上、1,000トン未満ならば、時間単位は1週間、
   1,000トン以上ならば、時間単位は4週間(=1ヶ月)を用いて下さい。


 行為判定の難易度は〈易:3+〉ですから省略しても構いませんが、 所要時間のサイコロ(3D)だけはきちんと振って下さい。

 所要時間は、採掘設備の大きさが10トン未満の場合、最低でも3日。
 10トン以上、100トン未満の場合は最低9日、
 100トン以上、1,000トン未満は最低3週間、
 1,000トン以上の場合は最低でも12週間(=3ヶ月)、ということになりました。

 採掘設備の大きさについては、また後で考察することにします。



 もうひとつの制限要素である費用=移設経費ですが、これについては、以下のような手順で求めました。
 まず、採掘設備の大きさと重量を、その購入費用から決定します。
 この数値は、購入費用=1MCr当たりで容積=50排水素トン、重量=50トン、 ということにしました。
 購入費用が0.02MCr(=20,000cr)ならば、 容積=1排水素トン、重量=1重量トンになります。
 その大きさに、1排水素トン当たり0.001MCr(=1,000cr)を掛けたものが、 採掘設備の移設経費(MCr)となりました。
 この数値は恒星間輸送を前提としたものです。
 惑星間/衛星間の近い距離で移設するとか、同じ惑星上の近い距離で移設を行うといった場合には、 レフリーの裁量で、100分の1を下限として小さくして下さっても構いません。



 採掘設備の大きさ、重量、移設経費について、 「MRT03:トラベラー宇宙の鉱物資源、その3」の表35、表40、表45、表50、表55と同じように、 一覧表を作って纏めました。
 まずは、鉄鉱床の採掘から。


            表41 採掘設備の移設経費−1

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 表の左は、採掘設備の規模
 40年の耐用年数全般に渡る最大採掘量(鉱床規模)と、 購入費用(初期投資)の金額で示しました。

 その右の数値は、採掘設備の大きさ=容積(排水素トン)重量(重量トン)

 表の右端が、採掘設備の移設経費(MCr)
 前述の通り、恒星間輸送(ジャンプ1回)を前提とした金額です。 レフリーが認めるならば、10分の1や100分の1まで小さくしても構いません。

 この表は、鉄鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 ボーキサイト鉱床(1万〜1億トン)ニッケル鉱床(1万〜1億トン)ジルコニウム鉱床(1万〜1億トン)水銀鉱床(1万〜100万トン)でも使用します。



 前述した所要時間は、採掘設備の規模が1万〜10万トンならば時間単位が1日、 100万トンは3日、1千万〜1億トンが1週間となっています。
 この規模ならば、8週間の移設期限を守れるでしょう。
 時間的に、表40(3桁大きい場合)で示したスケジュールを実現できそうです。

 しかし採掘設備の規模が10億トンの場合、時間単位は4週間(=1ヶ月)。
 所要時間は最低でも、時間単位の3倍=12週間が必要です。
 表40で示した、2週間の採掘と、 8週間の休業期間(採掘設備の移設期間)、というパターンは実現できませんでした。
 表37(2桁大きい場合)で示した5ヶ月の採掘と、 7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)の繰り返しならば、何とかなるでしょう。



 次は、銅鉱床の採掘です。


            表42 採掘設備の移設経費−2

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 表41と同じ形式ですが、 この表は、銅鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 亜鉛鉱床(10万〜10億トン)鉛鉱床(10万〜10億トン)錫鉱床(10万〜10億トン)マグネシウム鉱床(1万〜1億トン)クロム鉱床(10万〜10億トン)マンガン鉱床(10万〜10億トン)バリウム鉱床(10万〜10億トン)ストロンチウム鉱床(1万〜1億トン)リチウム鉱床(1千〜1千万トン)バストネサイト鉱床(1万〜100万トン)モナザイト鉱床(1万〜100万トン)ホウ素鉱床(1万〜100万トン)ベリリウム鉱床(1万〜100万トン)セシウム鉱床(1万〜100万トン)でも使用しています。



 所要時間の時間単位は、採掘設備の規模が1千〜1万トンならば1日、 10万〜100万トンが3日、1千万トンが1週間でした。
 この規模ならば、表40(3桁大きい場合)で示した8週間の移設期限を守れるでしょう。

 採掘設備の規模が1億〜10億トンの場合、時間単位は4週間(=1ヶ月)ですから、 表40で示した8週間の移設期間は実現できません。
 表37(2桁大きい場合)で示した7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)ならば実現可能です。



 今度は、チタン鉱床の採掘です。


            表43 採掘設備の移設経費−3

MRT04_Fig43.gif - 6.78KB

 表41と同じ形式ですが、この表は、チタン鉱床(1万〜1億トン)の他、 銀鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)でも使用しています。



 所要時間の時間単位は、採掘設備の規模が1万トンならば1日、 10万〜100万トンが3日、1千万トンが1週間でした。
 この規模ならば、表40(3桁大きい場合)で示した8週間の移設期限を守れます。

 採掘設備の規模が1億〜10億トンならば、時間単位が4週間(=1ヶ月)ですから、 表40で示した8週間の移設期間は実現できません。
 表37(2桁大きい場合)で示した7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)ならば実現可能です。



 4番目は貴金属、金鉱床の採掘です。


            表44 採掘設備の移設経費−4

MRT04_Fig44.gif - 7.34KB

 表41と同じ形式ですが、この表は、金鉱床の採掘(鉱床規模=10万〜10億トン)の他、 白金族鉱床(10万〜10億トン)スカンジウム鉱床(1千〜10万トン)でも使用しています。



 所要時間の時間単位は、採掘設備の規模が1千〜1万トンならば1日、 10万トンならば3日、100万〜1千万トンならば1週間でした。
 この規模ならば、表40(3桁大きい場合)で示した8週間の移設期限を守れます。

 採掘設備の規模が1億〜10億トンならば、時間単位が4週間(=1ヶ月)ですから、 表40で示した8週間の移設期間は実現できません。
 表37(2桁大きい場合)で示した7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)ならば実現可能です。



 最後は、モリブデン鉱床の採掘です。


            表45 採掘設備の移設経費−5

MRT04_Fig45.gif - 5.99KB

 表41と同じ形式ですが、この表は、モリブデン鉱床の採掘(鉱床規模=1千〜1千万トン)の他、 タングステン鉱床(1千〜1千万トン)アンチモン鉱床(1千〜1千万トン)ニオブ鉱床(1千〜1千万トン)ゼノタイム鉱床(1万〜100万トン)イオン吸着鉱床(1万〜100万トン)でも使用します。



 所要時間の時間単位は、採掘設備の規模が1千〜1万トンが1日、 10万トンが3日、100万トンが1週間でした。
 この規模ならば、表40(3桁大きい場合)で示した8週間の移設期限を守れます。

 採掘設備の規模が1千万トンならば、時間単位が4週間(=1ヶ月)ですから、 表40で示した8週間の移設期間は実現できません。
 表37(2桁大きい場合)で示した7ヶ月の休業期間(採掘設備の移設期間)ならば実現可能です。



 気になる費用(cost)である移設経費ですが、 実は採掘設備の購入費用(初期投資)の20分の1(=5%)、という計算で設定してあります。



 移設経費による採算の悪化について具体的な数字を求めるため、 今回も銅鉱床を例に挙げ、計算してみました。
 まずは、採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合から。


   表46 採掘設備の規模が、鉱床規模より1桁大きい場合(銅鉱床×5)

MRT04_Fig46.gif - 7.60KB

 表の形式は表34と同じです。
 同規模の小規模鉱床を5回掘り尽くすまで採掘しているという計算で、 維持費の欄に移設経費を追加しました。
 4年間の採掘と、4年間の移設期間を繰り返しているという想定です。

 移設経費が掛かるようになったため、若干ですが、採算が悪化してしまいました。



 費用対効果(ROI)の評価を行います。

 鉱床規模=1億トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=10億トンの採掘設備を使った場合、 34.2%から33.5%に減少。
 ほんの僅かですが、採算が悪くなりました。
 元々、この組み合わせは採算が悪くなっていましたから、実際に採掘が行われることはないでしょうが、 移設経費が採算に与える影響は、僅かしかありません。

 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合、 32.9%から32.3%に低下。
 ほとんど変わりません。
 しかし、最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合の29.2%よりも 少しだけ良い数値となっていました。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合、 13.3%から12.7%へ低下。
 今回も最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合の4.2%より良い数値です。
 移設経費が採算に与える影響が小さいので、落穂拾いも容易に行えるでしょう。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合、 0.8%から0.2%へ減少しましたが、かろうじて黒字のままでした。
最大採掘量=10万トンの採掘設備を使った場合は −4.2%赤字でしたから、有難いことだと思います。

 鉱床規模=1万トンの銅鉱床を最大採掘量=10万トンの採掘設備で開発する、 というパターンは、赤字のままでした。



 鉱床規模=1億トンの銅鉱床の場合は採算が悪化。
 鉱床規模=1万トンの銅鉱床の場合は赤字確定

 鉱床規模=10万〜1千万トンの銅鉱床を開発する場合は、移設経費を加算しても、 採掘設備の規模を、鉱床規模より1桁大きくする、という方法が効果的だと判明しました。



 次は、採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合です。


   表47 採掘設備の規模が、鉱床規模より2桁大きい場合(銅鉱床×40)

MRT04_Fig47.gif - 7.81KB

 表の形式は表46と同じです。
 同規模の小規模鉱床を40回掘り尽くすという計算に、移設経費を追加。
 5ヶ月の採掘7ヶ月の移設期間を繰り返す、という想定です。

 採掘設備の移設を40回も繰り返しているため、採算の悪化が顕著になりました。



 再び、費用対効果の評価を行います。

 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 26.8%から21.8%に減少。
 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発するのであれば、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使用するべきだ、という結論が出たようです。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 25.8%から20.8%へ低下。
 それでも、最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合の12.7%より 高い数値となっていました。
 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合も、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使用するべきなのでしょう。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 10.2%から5.2%へ低下。
 素直に最大採掘量=10万トンの採掘設備を使った場合は赤字確定
 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合の費用対効果0.2%ですから、それらの数値に比べれば随分と良い数字になっている訳です。
 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発する場合は、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使用するべきだ、ということが分かりました。

 鉱床規模=1千〜1万トンの銅鉱床を開発する場合は、 移設経費の負担が大きくなり過ぎてしまいます。
 採算が取れなくなりました。



 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床の場合は採算が悪化。
 鉱床規模=1千〜1万トンの銅鉱床の場合は赤字確定

 鉱床規模=10万〜100万トンの銅鉱床を開発する場合は、移設経費を加算しても、 採掘設備の規模を、鉱床規模より2桁大きくする、という方法が効果的でした。
 この2つの場合、採掘設備の規模を、鉱床規模より1桁大きくする方法よりも採算が良くなります。



 最後は、採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合です。


   表48 採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合(銅鉱床×200)

MRT04_Fig48.gif - 8.04KB

 表の形式は表46と同じです。
 同規模の小規模鉱床を200回掘り尽くすという計算に、移設経費を追加。
 2週間の採掘8週間の移設期間を繰り返す想定ですが、 前述の通り、最大採掘量=1億〜10億トンの採掘設備では実行できません。
 参考のため、コスト面だけの計算をしておきました。

 採掘設備の移設を200回も行っているため、 移設経費の負担が非常に大きくなり、すべての組み合わせで赤字が確定です。



 費用対効果の評価は、以下の通りでした。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 12.2%から−12.8%へ暴落。
 移設経費が、表42へ示した金額の半分以下(できれば10分の1以下)ならば、黒字を維持可能でしょう。
 近場の移設であれば移設経費を節約できますので、何とか実現可能となります。
 もっとも、そんな都合の良い小規模鉱床を200個も見つけられるのか分かりません。
 そんな苦労をするより、最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合の方(20.8%)が、 採算は良いのですが。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合の費用対効果は、 11.7%から−13.3%へ悪化。
 移設経費が表42へ示した金額の10分の1以下ならば黒字にできますが、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った方が採算を良く出来ます。

 鉱床規模=100〜1万トンの銅鉱床を開発する場合の費用対効果は、 すべてで赤字確定でした。



 鉱床規模=100〜100万トンの銅鉱床すべてで採算が悪化。赤字確定となりました。
 移設経費を加算した場合、 採掘設備の規模を、鉱床規模より3桁大きくする方法は、あまり現実的ではないということです。
   それ以前に、移設期間の問題から、 最大採掘量=1億〜10億トンの採掘設備は、この方法が使えませんでしたが。




(5)費用対効果の推移

 この章では、前回の考察「MRT03:トラベラー宇宙の鉱物資源、その3」に引き続き、 小規模鉱床を経済的に開発する方法について、考察してきました。



 小規模鉱床に適合している小規模な採掘設備は経済性が悪い、 ということを確認するため、費用対効果(ROI)というものを持ち出してみました。

 銅鉱床をサンプルとして計算してたところ、 鉱床規模=1億〜10億トンの銅鉱床を同じ規模の採掘設備で開発した場合、 その費用対効果68.3〜70.8%
 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を同じ規模の採掘設備で開発した場合は、 29.2%まで費用対効果が激減。
 鉱床規模=100万トンの銅鉱床に至っては、 費用対効果4.2%しかありません。

 ですから、費用対効果が大きい=儲かる大規模鉱床の開発は、 大手企業に独占されているだろう、と推測できました。
 というか、まともな自由競争が許されている世界であれば、必ずそうなります。
 反対に、中小企業は費用対効果が小さい =儲からない小規模鉱床の開発にしか参加できません。
 例え採算が悪くても、会社を存続させ、従業員を養っていくために、 中小企業はそうした小規模鉱床に手を出さなければならない訳です。


 しかし、採掘設備の規模を、鉱床規模より1桁〜3桁大きくする方法を取ることで、 その費用対効果を向上させる方法が見つかりました。
 それが今回の考察の本題だった訳ですが、その結果を纏めると、以下の通りとなります。



 まずは、移設経費を考慮しない場合の費用対効果から。


   表49 採掘設備の規模が、鉱床規模より1〜3桁大きい場合の費用対効果
              (銅鉱床、移設経費なし)

MRT04_Fig49.gif - 8.33KB

 表の縦軸は鉱床規模
 銅鉱床を想定しているので、その規模は1千〜10億トンの範囲になります。
 鉱床規模=100トンは計算のため、新たに設定しました。

 表の横軸が採掘設備の規模
 最大採掘量=10万トン(購入費用0.2MCr)〜 10億トン(購入費用200MCrの採掘設備となっています。



 最も費用対効果が大きいのは、前述の通りでした。
 鉱床規模=10億トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合で70.8%
 鉱床規模=1億トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合で68.3%
 この数字、恐らく50%以上の費用対効果こそが、 大手企業が手を出すか、出さないかの判断基準となっているのではないでしょうか。
 40%以上という数字でも構いませんが、鉱床規模=1千万トン以下の銅鉱床で これだけ大きな費用対効果を得ることはできませんから、大手企業による独占も必然だと思われます。

 中小企業が開発を行うべき鉱床規模=1千万トン以下の銅鉱床については、 最も良い条件、鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合で、32.9%でした。
 これに近い条件、鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備で開発する場合は29.2%最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合は26.8%です。
 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床に関しては、 採掘設備の規模を変えても、それほど費用対効果が変わりませんでした。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床は、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合が最も大きく25.8%
 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合が13.3%でした。
 最大採掘量=10億トンの採掘設備を使っても、 これ以上費用対効果が大きくなることはなく、12.2%まで下がってしまいます。
 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合は、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を利用することが最も経済的だと判明しました。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床になると、 同規模、最大採掘量=10万トンの採掘設備を使った場合、採算が合いません。
 ですが、最大採掘量=1億トンの採掘設備を使えば11.7%
 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使えば10.2%まで改善しました。
 1桁大きい規模、最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合は、 費用対効果0.8%にしかなりませんから、実に有難いことでしょう。
 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発する場合は、 最大採掘量=1千万〜1億トンの採掘設備を利用するべきなのです。

 鉱床規模=1万トンの銅鉱床は、 1桁大きい最大採掘量=10万トンの採掘設備を使っても黒字にはなりません。
 最大採掘量=100万トンの採掘設備を使って、かろうじて0.2%
 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使えば3.8%を達成できました。
 鉱床規模=1万トンの銅鉱床を開発する場合は、 最大採掘量=100万〜1千万の採掘設備を利用すれば良いのです。



 上記の考察は、あくまで移設経費を考慮しない場合の数値でした。
 今度は、移設経費を考慮した状態での費用対効果を比較します。


   表50 採掘設備の規模が、鉱床規模より1〜3桁大きい場合の費用対効果
              (銅鉱床、移設経費あり)

MRT04_Fig50.gif - 8.35KB

 表49と同じ形式です。

 移設回数が多い程、移設経費の負担が大きくなり、採算が悪化するようになりました。
 特に、採掘設備の規模が、鉱床規模より3桁大きい場合には、その傾向が顕著です。



 最も費用対効果が大きい2つの条件。
 鉱床規模=10億トンの銅鉱床を、 最大採掘量=10億トンの採掘設備で開発する場合と、 鉱床規模=1億トンの銅鉱床を、 最大採掘量=1億トンの採掘設備で開発する場合は、 その数値が68.3〜70.8%のまま変わりませんでした。
 移設回数が0ですから当然のことですが、50%以上の費用対効果を維持できているので、 大手企業による独占状態も続くでしょう。

 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発するならば、最も費用対効果が大きいのは
最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合で32.3%
 その次が僅差で最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合の29.2%でした。
 最大採掘量=10億トンの採掘設備を使った場合は 採算が悪化して21.8%にしかなりません。
 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発する場合は、移設経費に関係なく、 最大採掘量=1千万〜1億トンの採掘設備を使用するべきです。

 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った費用対効果は、 大きく減少して20.8%となりました。
 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を使った場合は12.7%に僅かながら減少。
 最大採掘量=10億トンの採掘設備を使った場合は、 −12.8%赤字となっています。
 鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発する場合は、移設経費を計算に含めても、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使うことが経済的でした。

 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発するのであれば、 最大採掘量=1億トンの採掘設備を使った場合の費用対効果は、 移設経費の影響で−13.3%まで悪化しました。
 残念ながら赤字確定ですので、この規模の採掘設備を使う訳にはいきません。
 最大採掘量=10万トンの採掘設備を使った場合は10.2%まで下がりましたが、 最も大きな費用対効果となっています。
 鉱床規模=10万トンの銅鉱床を開発する場合、移設経費を考慮するのであれば、 最大採掘量=1千万トンの採掘設備を利用するべきだと分かりました。
 ちなみに、最大採掘量=100万トンの採掘設備を使った場合の費用対効果は、 0.8%のままで変わりません。

 鉱床規模=1万トン以下の銅鉱床は、移設経費を計算に含めると、 どの規模の採掘設備を使っても赤字確定でした。




(6)落穂拾いのサンプル

 ここまで色々と考察を重ねてきましたが、この章の本来の目的は、シナリオに鉱山等を登場させる際、 その設定がリアリティを出せるようにする、ということにあります。
 折角ですから、数値が分かり易くなるように、具体例を幾つか作ってみましょう。



a.銅鉱山のサンプル(規模1千万トン)

 まずは、最大採掘量=1千万トンの採掘設備(銅鉱床)を所持している、小さな(零細)鉱山会社 ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)を想定してみます。
 その採掘設備の価格、大きさ、従業員数等のデータは、以下の通りでした。


        表51 最大採掘量=1千万トンの採掘設備(銅鉱床)

MRT04_Fig51.gif - 4.04KB

 表の左端から順番に、最大採掘量(適合している鉱床規模)購入費用(初期投資)容積(排水素トン)重量(重量トン)従業員数(人)採掘設備の移設経費(MCr)を並べました。



 最大採掘量は最初に述べた通り、1千万トンです。

 購入費用は、4MCr
 即金の購入、もしくは、頭金の20%(=0.8MCr)を支払ってのローン購入が考えられます。
 しかし、複雑なことは考えたくありません。
 これまでの積立金によって、即金で購入できた、ということにしておきましょう。

 採掘設備の大きさは、容積が200排水素トンで、重量が200重量トンでした。
 A型自由貿易船1隻と同じサイズになります。
 宇宙空間を移動するのであれば、タグボートに牽引されて、 あるいは地上を移動するのであれば、数十台のエアラフトで運ばれるという形になと思われます。
 その移設の時間単位は、容積=200排水素トンより、1週間に決まりました。
 最低でも3週間が掛かりますが、採掘能力の1,000分の1、鉱床規模=1万トンを採掘することは、 サイコロ運が良ければ可能でしょう。

 従業員数は4人
 採掘期間中は、4人の従業員を雇わなければなりません。
 その人件費は維持費の中に含まれています(維持費0.1MCrで従業員1人の計算)。
 2交代制(週5日×16時間、年間250日)で稼働させる場合には2倍の8人
 年中無休24時間態勢で稼働させるのであれば16人が必要となります。

 移設経費は移設1回当たりに必要な経費で、0.2MCrでした。
 この経費は、掘り尽くした鉱床から新しい鉱床へ、採掘設備を移設することに費やされます。
 恒星間輸送を前提としていますが、レフリーの裁量で減額して下さい。
 例えば、軌道番号9(冥王星)より内側の惑星間移動を行う場合は、 「IST01:星系内旅行について」で考察した通り、恒星間とほぼ同額の経費が掛かってしまいます。
 もし、軌道番号5(小惑星帯)より内側の惑星間移動を行うのであれば、半額にして下さい。
 ガス・ジャイアントの衛星間で衛星間移動を行うのであれば、経費は10分の1に、 惑星の衛星間で移動を行うのであれば、50分の1まで減額できます。
 同じ惑星や衛星上で移設する場合は100分の1まで減らして下さっても構いません。
 異様に安過ぎるような気もしましたが、トラベラー世界の輸送経費はこんな感じです。



 この鉱山会社は、主に鉱床規模=100万トンの銅鉱床を開発しています。
 もし採掘権を手に入れることが出来るのであれば、鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発したいところなのですが、 ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)は大手にコネを持たないため、 そうした経済性の良い鉱床の採掘権を得ることができないのです。

 ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)鉱床規模=1万〜1千万トンの銅鉱床を開発した際の経済性(=費用対効果)は 以下の通りでした。


     表52 最大採掘量=1千万トンの採掘設備(銅鉱床)の経済性

MRT04_Fig52.gif - 9.03KB

 上から順に、鉱床規模=1万〜1千万トンの銅鉱床を開発した際の経済性、 収入(MCr)維持費(MCr)利益(MCr)費用対効果です。
 鉱床規模=1万〜100万トンの銅鉱床は、欄が2つに分かれていますが、 上半分は、採掘設備の移設経費が掛からない、もしくは、無視できるほど小さい場合の数値で、 下半分は、恒星間で移設を行うため、採掘設備の移設経費が設備1トン当たり1,000cr掛かっている場合の数値です。
 惑星間や衛星間の移設で経費が減額できる場合は、各自で計算して下さい。
 表に示した2つの数値がそれぞれ上限と下限の目安となるでしょう。



 ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)が、 鉱床規模=1千万トンの銅鉱床を開発できたとしたら、 その費用対効果は29.2%となります。
 前述した通りの政治的事情で、1千万トンの銅鉱床を開発できる可能性はほとんどありませんが、 こうした零細企業が鉱床の採掘権を奪い合うという設定を作り上げれば、良いシナリオネタになるかも知れません。
 数字を見れば分かる通り、1千万トンの銅鉱床は安定した高収入が40年間も保障されるという、 零細企業にとっては夢のような物件なのです。

 ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)は、 近隣の星系で行われる銅鉱床の探索に関して、情報収集を怠りません。
 探索が失敗に終わり、大手、中小企業にとっては赤字確定小規模鉱床しか見つからなかったとしても、零細企業にとっては、十分な生活の糧となるのですから。

 そんな訳で、ミリオン・ダラー・マイニング(仮称)は普段、 鉱床規模=1万〜100万トンの銅鉱床を開発しています。
 しかし、恒星間移動を行ってまで開発が行えるのは鉱床規模=10万トン以上に限られますし、 時間的な制約から1万トンの銅鉱床が開発されることは稀でしょう。
 他の鉱床が見つからなければ(採掘権を得られなければ)生活費を得るため、仕方なく開発に着手することは十分に有り得ますが。

 プレイヤー・キャラクターがミリオン・ダラー・マイニング(仮称)に関わってくる状況は、 冒険の最中、偶然に稼働中の鉱山を見つけたとか、短期雇用の労働者として雇われた、というような場合でしょう。
 海賊として鉱山を襲撃した、という場合でも構いませんが。
 鉱山の大きさ、従業員数、そこに存在する(略奪できる)鉱石の量などは、この設定から求めることができます。



b.希土類鉱山のサンプル(規模100万トン)

 今度は、カーカで希土類採掘を行っているカーカ共同組合を想定してみましょう。
 この組合は、最大採掘量=100万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)を所持しています。
 採掘設備の価格、大きさ、従業員数等のデータは、以下の通り。


     表53 最大採掘量=100万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)

MRT04_Fig53.gif - 4.10KB

 表51と同じ形式です。



 最大採掘量は100万トン
 購入費用は6MCrなので、前述の銅鉱床よりも大きな資本が必要でした。

 採掘設備の大きさは300排水素トン300重量トン
 A型自由貿易船1隻よりも大きなサイズとなりました。
 これだけの大きな設備を移設するには、大型の輸送機器が必要と成りますから、現実的には難しいかも知れません。 年に1度、8年に1度の移設を行うため、専用の輸送機器を用意しておくのは、人口1千人のカーカにおいて明らかな贅沢です。
 カーカ共同組合が上記の設備を10〜50基ほど所有しているというのであれば話は別ですが。

 移設の時間単位は1週間です。
 採掘能力の1,000分の1、鉱床規模=1千トンの採掘にも問題はありません。

 従業員数は1人です。

 移設経費は移設1回当たり0.3MCr
 減額については、表51の説明と同じなので省略。



 カーカ共同組合は、カーカの地表で発見された 鉱床規模=1万〜100万トンのバストネサイト鉱床を開発しています。
 もちろん鉱床規模=100万トンのバストネサイト鉱床が発見されたのであれば、 その鉱床の開発に専念することでしょう。
 採掘設備の耐用期限をフルに使って、大きな利益を得られますから。
 しかし、そうではない場合、鉱床規模=10万トン以下のバストネサイト鉱床しか発見できなかった場合は、 仕方がありません。
 それらの小規模なバストネサイト鉱床を開発して、糊口をしのぐこととなるのです。

 カーカ共同組合鉱床規模=1千〜100万トンのバストネサイト鉱床を開発した際の経済性(=費用対効果)は 以下の通りでした。


  表54 最大採掘量=100万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)の経済性

MRT04_Fig54.gif - 9.03KB

 上から順に、鉱床規模=1千〜100万トンのバストネサイト鉱床を開発した際の経済性を並べました。



 もしもカーカ共同組合鉱床規模=100万トンのバストネサイト鉱床を発見し、開発できたとしたら、 その費用対効果は12.5%です。
 もちろん、100万トンのバストネサイト鉱床を発見するためには、 1MCrの探索費用を費やし、難しい行為判定に成功しなければなりませんが、 豊富な資金を用意でき、探索の行為判定に成功したとしたら、その後の40年間、 カーカ共同組合は年間0.9MCrという安定した収入を得ることができるようになるのです。



 鉱床規模=10万トンのバストネサイト鉱床しか発見できなくても、 カーカ共同組合は選り好みをしたりせず、その鉱床を開発してきました。
 採掘期間は4年間。
 新たな鉱床を発見するまでの時間稼ぎにはなるのです。
 この期間中の費用対効果は4.4〜5.0%
 カーカの地表のみで活動しているのであれば、移設経費はほとんど掛かりません。
 費用対効果は5.0%であると見なしても構わないでしょう。
 実質的な収入は年間0.9MCrですが、当然ながら、鉱床を掘り尽くしてしまえば(4年間が過ぎれば)収入は途絶えます。

 鉱床規模=1万トンのバストネサイト鉱床しか発見できなかった場合も開発を行いますが、 この場合の採掘期間は5ヶ月(=20週間)しかありません。それだけで掘り尽くしてしまう訳です。
 移設の経費はほとんど掛からないと考えていますが、その場合の費用対効果は3.5%
 採掘期間が短いので年収は0.36MCrまで小さくなってしまいましたが、採掘期間の5ヶ月だけを考えるのであれば月収0.072MCr。 それほど悪い数字ではありません。残りの7ヶ月は無収入になってしまいますから、早めに新しい鉱床を開発するべきでしょう。

 探索に失敗した場合、より規模の小さい鉱床が発見されたというルールを用いるのであれば、 鉱床規模=1千トンのバストネサイト鉱床が見つかったこととなります。
 その場合も開発を行うこととなりますが、採掘期間はわずか2週間。
 費用対効果も、わずか0.5%に下がってしまいますが、 移設経費が掛からないため、かろうじて黒字であることを喜ぶべきなのでしょう。
 移設期間が長いので、時間が勿体無いような気もします。



 最大採掘量=100万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)を所持している、 という条件で経済性を求めてみましたが、この採掘設備は購入費用が6MCrも掛かります。
 もう少し、初期投資が少なくて済むパターンを考えてみましょう。
 カーカ共同組合が所有している採掘設備の規模を、もう1桁、小さいものに変えてみました。



c.希土類鉱山のサンプル(規模10万トン)

 カーカ共同組合が所持している採掘設備が、もう1桁小さい場合です。
 採掘設備の価格、大きさ、従業員数等のデータは、以下の通り。


     表55 最大採掘量=10万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)

MRT04_Fig55.gif - 4.08KB

 表51と同じ形式です。



 最大採掘量は、1桁小さくなって10万トン
 購入費用は0.8MCrまで安くなりました。
 対応する鉱床の探索費用も0.1MCrまで下がりましたから、 合わせて1MCrもあれば開業資金としては十分でしょう。

 採掘設備の大きさは40排水素トン40重量トン
 40トン級の艦載艇1隻、もしくは、エアラフト10台分です。
 カーカの地表だけしか活動しませんので、1台のエアラフトがあれば、 同じ機体が10往復、20往復することでカバーできるかも知れません。 人口1千人のカーカでも、エアラフト1台ならば所持可能でしょう。

 移設の時間単位は3日間になりました。
 従業員数は0人ですから、鉱山主は1人で採掘作業を行わなければなりません。 従業員を雇う余裕はないのです。

 移設経費は移設1回当たり0.04MCr
 減額については、表51の説明と同じなので省略。



 規模の小さくなったカーカ共同組合は、 鉱床規模=100〜10万トンのバストネサイト鉱床を開発しています。
 探索で見つかる最大規模の鉱床は、鉱床規模=10万トン
 それほど大きな規模ではありません。
 しかし、希土類の鉱床としてはまずまずの部類となります。

 カーカ共同組合鉱床規模=100〜10万トンのバストネサイト鉱床を開発した際の経済性(=費用対効果)は 以下の通りでした。


  表56 最大採掘量=10万トンの採掘設備(バストネサイト鉱床)の経済性

MRT04_Fig56.gif - 8.79KB

 上から順に、鉱床規模=100〜10万トンのバストネサイト鉱床を開発した際の経済性です。



 カーカ共同組合鉱床規模=10万トンのバストネサイト鉱床を発見して、開発した場合、 その費用対効果は7.5%でした。
 10万トンのバストネサイト鉱床を発見するためには0.1MCrの探索費用が必要です。
 探索の行為判定に成功し、開発を行った場合、その後の40年間に得られる収入は年間0.08MCr。
 鉱山主一家の生活を支えるには十分な金額ですが、それ以上の贅沢は望めません。



 鉱床規模=1万トンのバストネサイト鉱床しか発見できなかった場合、 その鉱床の採掘期間は4年間です。
 費用対効果は1.9〜2.5%
 年収は上記と同じく0.08MCrをキープしていました。

 鉱床規模=1千トンのバストネサイト鉱床を発見、開発した場合は、 採掘期間が5ヶ月(=20週間)となり、費用対効果は1.5%
 移設経費が掛からないので黒字を維持している状態です。
 年収は0.032MCrですが、採掘期間の5ヶ月だけを考えるのであれば月収は0.006MCrとなります。 それほど悪い数字ではありません。

 探索に失敗して 鉱床規模=100トンのバストネサイト鉱床しか見つからなかった場合、その鉱床を開発しても元が取れません。
 残念ながら赤字が確定していますから、開発が行われることのない物件でしょう。



 という訳で3通りほど、小規模な鉱床開発落穂拾いのサンプルを作ってみました。
 どれも一攫千金には程遠い経済性ですし、従業員数も最大で4人までの規模しかありません。
 文字通りの落穂拾いですが、 こういった零細経営の方がトラベラーの辺境風景として相応しいのではないでしょうか。





7.まとめ


 まずは、「ホウ素、水銀、ベリリウム、セシウム」から成る 「消費量が少ないレアメタル」4種の採掘について考察しました。
 それらの流通形態、価格、流通量について纏めてありますが、これらは流通量が少ないため、真っ当な貿易品には成り難いようです。



 次に、「副産物として得られるレアメタル」の流通形態と流通量について考察してみました。
 「ビスマス、セレン、タンタル、インジウム、テルル、ハフニウム、ガリウム、ゲルマニウム、 タリウム、レニウム、ルビジウム」から成る「副産物として得られるレアメタル」は、 トン当たりの価格が高価である割に、流通量があまりにも少ないため、大規模な輸送や投機貿易には向かないという結論が出てしまいました。
 しかし、それだからこそ、自由貿易商人が扱うには面白い貨物、投機貿易品にもなると思われます。



 最後は、小規模鉱床の開発について考えました。
 規模の小さな鉱床(埋蔵量の少ない鉱床)は、 その経済性が悪い=費用対効果(ROI)が小さいため、 発見されても開発の手が付けられず、放置される可能性が高いということが分かっています。
 そうした小規模鉱床の開発を、いかに経済的に行っていくか、について考察した結果、 採掘設備の規模を、鉱床規模より1桁〜3桁大きくする方法を取ることで、 その費用対効果を向上させる方法が見つかりました。
 例えば銅鉱床の場合、 鉱床規模=1千万トンならば1桁大きい採掘設備を、 鉱床規模=10〜100万トンならば2桁大きい採掘設備を用いた方が、 費用対効果が良くなるのです。
 この方法は費用対効果の向上と引き換えに、鉱床の採掘期間が短くなりました。
 新たな鉱床を見つけ、そこへ採掘設備を移設する必要が生じてしまうのです。
 3通りほど、小規模な鉱床開発落穂拾いのサンプルを作ってみました。
 こういった零細経営の方がトラベラーの辺境風景として相応しいのではないでしょうか。






 2014.06.01 初投稿