The Mineral Resource
in the Traveller space 08
Chemical Fertilizer
トラベラー宇宙の鉱物資源
その8
化学肥料(肥料元素)
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その8です。
 今回の考察対象は、水素(H)窒素(N)リン(P)硫黄(S)カリウム(K)の5元素。

 これらの元素は、何の共通項も持たないバラバラの元素に見えるかも知れません。
 しかし実際は、農業生産の基本を支える「化学肥料:Chemical Fertilizer」の主原料なのです。
 私はこれらの5元素を「肥料元素」と呼ぶことにしました。



 具体的に述べると、水素窒素アンモニア(NH3を生産するための材料です。
 生産されたアンモニアの8割以上は 「窒素質肥料:Nitrogen Fertilizer」として加工され、農地へ投入されていました。
 ですから、水素窒素肥料のための元素であると断言しても、問題無いのです。

 リンは、生物の骨を作るだけでは無く、生命活動に必要不可欠な元素でもありました。
 生産されたリンの大半(8割以上)は 「リン酸質肥料:Phosphatic Fertilizer」として加工されています。
 ですからリン肥料のための元素であると断言しても、問題ありません。

 意外に思われる方は多いでしょうが、硫黄も 重要な肥料元素のひとつでした。
 「窒素質肥料」の吸収を助ける機能の他、マメ科の作物などでは大量に必要とされるとのこと。

 最後のカリウムは、根の成長を促進する他、細胞内の浸透圧調整に不可欠な元素でもあります。
 生産されたカリウムも、その大半(9割)が 「カリ質肥料:Potassic Fertilizer」に加工され、消費されていました。
 ですからカリウム肥料のための元素であると断言して問題無いのです。



 と言う訳で、今回は「肥料元素」の5元素について考察してみました。




 目次
    ※2.肥料元素の詳細
       (1)化学肥料の詳細
       (2)肥料元素の消費量
    ※3.肥料元素の探索と採掘
       (1)水素の製造
       (2)窒素の製造
       (3)アンモニアの製造
       (4)尿素の製造
       (5)リンの採掘
       (6)過リン酸石灰の製造
       (7)リン酸アンモニウムの製造
       (8)硫黄の採掘
       (9)硫酸の製造
       (10)カリウムの採掘
       (11)肥料元素の流通形態と流通量
    ※4.化学肥料の必要性
       (1)農業の現状
       (2)化学肥料が必要不可欠な背景
       (3)耕作面積が減少している理由
       (4)灌漑設備の普及と功罪
    ※5.まとめ





2.肥料元素の詳細


 前述の通り、「肥料元素」は、 水素(H)窒素(N)リン(P)硫黄(S)カリウム(K)の 5元素から成るグループです。

 しかし、これだけでは分かり難いと思うので、「化学肥料」の説明をさせて下さい。




(1)化学肥料の詳細

 「化学肥料」とは、主に鉱物資源を原料として、化学的製法で製造される、 無機質肥料(無機化合物の形で用いられる肥料)のことを指します。
 動植物を主原料とした肥料、天然肥料、有機質肥料とは、反対の位置にある、と言えるでしょう。

 初めの方にも書きましたが「化学肥料」は大きく3つに分類されていました。



 1つめは、窒素を主原料とする「窒素質肥料」。

 窒素は、植物を大きく成長させるために重要な元素です。
 もしも窒素が無ければ、植物は花や実を付けることはもちろん、葉や茎、根を伸ばすことも出来ません。
 そのくらい重要な元素なのです。
 しかし植物が吸収できる窒素は、アンモニウム・イオン(NH4+、 あるいは、硝酸イオン(NO3-の形態しかありませんでした。
 植物へ直接窒素ガスを吹き付けても、植物周辺を窒素ガスで満たしても、 その成長を促進する効果は無いのです。

 そのため、19世紀までの「窒素質肥料」は、 硝酸ナトリウム(NaNO3を原料として作られていました。
 ですが、当時の硝酸ナトリウムの供給源としてはチリ硝石ぐらいしか存在せず、 その採掘量も限られていたため、大量生産は不可能です。

 その後、ハーバー・ボッシュ法という、水素窒素から アンモニア(NH3を製造する技術が確立されました。
 20世紀以降の「窒素質肥料」は、 安価なアンモニアを原料として製造されるようになります。
 ある意味、ハーバー・ボッシュ法が「窒素質肥料」の大量生産を実現した、と述べても良いでしょう。

 アンモニアを合成するために必要な原料は 水素窒素ですから、
 「窒素質肥料」は 水素窒素の2元素が主な原料である、
 と分かりました。



 2つめは、リンを主原料とする「リン酸質肥料」。

 リンは、植物の開花や結実に大きく影響する元素です。
 植物に吸収させるため、リンを可溶性の リン酸(H3PO4形態へ加工しなければなりません。

 リンは、生物の骨や排せつ物に含まれていますが、それを集める手間や加工する費用が大変です。
 ですから、海鳥の糞が集積して生成されたグアノや、化石が元となって生成されたリン鉱石が 「リン酸質肥料」の主原料として使われてきました。
 リン鉱石は、高品位のリンを含んだリン酸塩が一カ所に大量に集積しており、 不純物となる有機物と水分が除去済みだという点で、極めて都合の良いリン資源なのです。

 リン鉱石の主成分であるリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2に、 硫酸(H2SO4水(H2O)を加えるだけで、
 リン酸一カルシウム(Ca(H2PO4)2・H2O)硫酸カルシウム(CaSO4が出来上がりました。

 これが所謂「過リン酸石灰」。

 リンが可溶性に変わるだけではなく、 硫黄まで添加されているという、素晴らしく優秀な肥料であります。
 ですから「リン酸質肥料」は、 リン硫黄の2元素が主原料であると言えるでしょう。

 リン酸アンモニウム((NH4)2HPO4という、 リンアンモニアを合成した肥料も存在するのですが、
 これも分類上「リン酸質肥料」として扱われるそうです。



 3つめは、カリウムを主原料とする「カリ質肥料」。

 カリウムは、植物の根の生長と、細胞内の浸透圧調整のために重要な元素です。
 幸い、元から水に溶けやすい元素なので、特別な加工は必要ありません。

 カリウムは、塩化カリウム(KCl)の形で採掘され、 ほぼそのまま「カリ質肥料」として利用されています。
 硫酸カリウム(K2SO4硝酸カリウム(KNO3に加工されている場合もありますが、その生産量は少なめ。

 どちらにせよ、その大半をカリウムが占めていますから 「カリ質肥料」はカリウムが主原料であると言えるでしょう。



 以下に、化学肥料の消費量を示しました。


             表1 世界の化学肥料消費量

MRT08_Fig01.gif - 4.85KB

 データは古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用。

 表の左端は化学肥料の分類
 窒素質肥料リン酸質肥料カリ質肥料の3つが並んでいます。

 表の右側は世界の化学肥料消費量(tons)
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口1千人当たり、人口100万人当たり、10億人当たりの 年間消費量(tons)を求めました。



 窒素質肥料の年間消費量は、人口10億人当たりで32,400,000トン
 3つの化学肥料の中で最も消費量が多くなっていますが、 それは窒素質肥料の主原料である窒素が、 もっとも容易に入手できる資源だから、なのでしょう。

 リン酸質肥料の年間消費量は、人口10億人当たりで24,100,000トン
 この肥料の中に含まれているリンの重量は、全体の9.4%しかありません。
 硫黄の重量は、42.3%でした。
 リン酸質肥料を名乗っておきながら、何故か元素の含有量は、 リンよりも硫黄の方が多い、のです。

 カリ質肥料の年間消費量は、人口10億人当たりで5,800,000トン
 その大半は、塩化カリウムです。



 3つの化学肥料を合わせて、人口10億人当たりの年間消費量は62,300,000トン
 100万人当たりに直すと62,300トン
 1千人当たりで62トン

 人口1人分の食糧(農作物)を生産するため、 0.062トン=62キログラム化学肥料が消費されている、 ということが分かりました。
 人間1人が生きていくためには、これだけの化学肥料を消費しなければならない、ということです。




(2)肥料元素の消費量

 表1で示した化学肥料の消費量を、 「肥料元素」の消費量へ置き換えてみました。


             表2 世界の化学肥料消費量

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 データは同じく、古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを利用しています。

 表の左端は原子番号元素名

 その右側が市場価格
 その元素の、1重量トン当たりの価格(cr/tons)です。

 右端が、人口100万人当たり、10億人当たりの年間消費量(tons)
 当時の世界人口(60〜65億人)を分母として計算しました。



 水素(H)窒素(N)の消費量は、 アンモニア(NH3の製造に必要な量を計算して求めました。
 人口10億人当たり1,837万トンのアンモニア製造が必要であり、そのためには、 324万トンの水素と1,513万トンの窒素の製造が必要である、ということです。
 他の用途に利用される水素窒素に関しては、 残念ながら、その用途も生産/消費量も把握していません。



 リン(P)の消費量は、リン鉱石の採掘量から求めました。
 採掘量にリン鉱石の品位を掛けて求めたものが、上記の数値です。
 既に述べたように、リンの大半はリン酸質肥料に加工され、消費されていました。
 ですので、上記の数値はあまり意味を持ちません。

 硫黄(S)の消費量は、硫黄の生産量そのままです。
 専ら、石油精製や製鉄の副産物として得られる硫黄ですが、 その大半は硫酸に加工され、リン酸質肥料の製造に消費されていました。
 一応、肥料元素の中では最も消費量の多い元素だと言えそうです。



 カリウム(K)の消費量は、カリ鉱石の採掘量から求めました。
 カリウムは、純粋な単独元素として利用されることが滅多にありません。
 ですから上記の数値は、価格も消費量も参考値だと考えて下さい。



 今度は、肥料元素の採掘や調達経費(コスト)、流通価格についても考えてみます。





3.肥料元素の探索と採掘


 今回も、肥料元素の製造や採掘を生業とする会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)水素の製造

 水素(H)の消費量は、人口10億人当たりで324万トン。
 その生産量のすべてが、後述するアンモニアの製造に消費されている、との想定です。
 他の用途のために生産/消費される水素も存在する筈ですが、把握していません。



 テックレベル10以上のトラベラー世界であれば、核融合炉が実用化され、普及しています。
 水素の入手に多額の費用を掛けたり、入手が困難だったりすることは滅多に無いでしょう。
 宇宙船に搭載されているものと同様の設備を利用して製造された、安価な水素が、 トン当たり100crの価格で、必要なだけ入手できる筈です。
 その世界が海洋も氷冠も持たない、水海度ゼロの砂漠世界だというのであれば、話は別ですが。



 テックレベル9の世界において、安価な水素が入手できるかどうかは、レフリーの裁量とします。
 反乱以前のトラベラー世界ならば問題無いと思いますが、ハード・タイムズに突入した場合は、 核融合炉の稼働を維持するだけで精一杯かも知れません。

 電力の生産に余裕が無いのであれば、大量に電力を消費する水素の製造は困難です。
 水を電気分解して水素を得ることは低いテックレベルでも可能ですが、 電気分解のためには最低でも50MWh、 条件によっては100MWhもの電力を必要としていました。
 この電力の得るためのコストが、核融合炉以外のパワープラントでは極めて高くつくため、 安価な水素としては利用できないのです。



 テックレベル8以下の世界では、安価な水素を製造できる=電力を安価に供給できるパワープラントは 核分裂炉だけでした。
 核分裂炉は、その放射性燃料を星系外からの供給に依存している世界が多いので、 ハード・タイムズに突入した場合は、やはり稼働を続けることが困難になるのではないでしょうか?

 放射性燃料の価格が古代テラと同じレベルまで上がってしまうのであれば、 核分裂炉の供給する電力も高価なものとなり、 やはり安価な水素の製造は不可能です。
 実際、古代テラにおいて電気分解は極めて割高な製造方法であり、ほとんど利用されていません。

 ですから此処では、電気分解ではない水素の製造方法について、考えます。



 古代テラにおいて水素の製造は 石炭天然ガスを用いることが一般的でした。

 石炭を利用する場合は、まず一酸化炭素(CO)を製造します
 次に、その一酸化炭素水蒸気(H2O)を接触させ、反応させることで、 二酸化炭素(CO2水素(H2を生成する、とのこと。

 天然ガスを利用する場合は、 その主成分であるメタン(CH4を700〜1,000℃まで加熱して、 水蒸気を吹き込むだけで良いそうです。
 そうすれば石炭と同じように 二酸化炭素水素が生成される、とのこと。



 最初に、石炭を利用した水素の製造設備を紹介します。


           表3 水素の製造設備(石炭→水素)

MRT08_Fig03.gif - 5.30KB

 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。

 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 最終的な製造コストは1.25倍となりますが、何らかの理由で製造量を増やすことが要求されているのであれば、考えられる選択肢です。



 参考値ですが、上記の製造設備で働いている労働者の人数は、製造設備の維持費÷0.1MCr(切捨て)で求めて下さい。
 18MCrの製造設備を購入したのであれば、年間の維持費が1.8MCrですから、 (1.8MCr÷0.1MCr=)18人の労働者を抱えています。
 労働者が2交代制ならば2倍の36人年中無休ならば72人に増えるでしょう。

 この労働者数は、テックレベル9以上の十分な機械化/自動化が成された世界を前提とした計算式です。
 テックレベル8の世界においては、労働者数を2倍(維持費が0.05MCrで労働者1人)、テックレベル7は3倍(0.033MCrで1人)、 テックレベル6は4倍(0.025MCrで1人)に増やしてください。
 テックレベル5以下の世界については、対象外とさせて頂きました。



 水素を製造する際には、石炭を消費します。
 ですから、上記の製造設備の他、十分な量の石炭を用意して下さい。
 1重量トンの水素を製造するためには、14重量トンの石炭が必要でした。

 「MRT05.html、化石燃料(炭化水素)」で説明しましたが、 石炭は、容積1.0キロリットル当たりの重量が2.0トン、価格が75crである、と設定されています。
 ですから、14重量トンの石炭は、容積7.0キロリットルを占め、その購入価格は525crになりました。



 石炭の購入費用が525crであった場合、 製造された水素の製造費用と販売価格は、以下のようになるでしょう。


      表4 水素の製造費用と販売価格(石炭から作る場合、その1)

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 表の左端は、製造設備の購入価格

 表の中央が水素1トンの製造に必要な費用の内訳で、
 左側から石炭14トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、となっています。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、水素1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。



 製造費用の半分以上(最大で75.5%)を石炭14トンの購入費用が占めています。
 その費用に製造設備の維持費他を加えて、更に製造元の利益を加算した金額が、 右端の販売価格だと考えて下さい。

 この条件では、水素の販売価格が1トン当たり800〜1,000crの範囲となりました。

 宇宙船向けの販売価格である、1トン当たり100〜500crに慣れていると、違和感のある価格帯だと思います。
 しかし史実において、古代テラの水素価格(21世紀初頭)は1トン当たり1,300〜4,500crでした。
 その金額と比べれば、それほど不自然な数値ではありません。



 上記の通り、製造費用の半分以上を石炭14トンの購入費用が占めていることは明らかです。
 ですから、製造費用を抑えたいのであれば、より安価な石炭の入手を考えるべきでしょう。

 「MRT05.html、化石燃料(炭化水素)」の表46で考察した通り、 石炭の価格を押し上げているのは、輸送コストと販売コストの2つです。
 炭田で採掘した石炭を、移動距離ゼロで水素の製造設備へ持ち込むのであれば、 この2つのコストは掛かりません。
 つまり、採掘コストのトン当たり20crのみで、石炭を購入できる筈です。



 こうして、石炭14トンの購入費用は、280crまで減少しました。

 石炭の購入費用が280crであった場合、 製造された水素の販売価格は、以下のように変わります。


      表5 水素の製造費用と販売価格(石炭から作る場合、その2)

MRT08_Fig05.gif - 5.07KB

 表の説明は、表4と同じです。

 石炭14トンの購入費用を節約できたおかげで、この条件では、 水素の販売価格が1トン当たり550〜750crとなりました。
 概ね、250crを節約できたと言えるでしょう。
 これでも未だ高価ですが、星間文明へ至らないレベルのローテク世界では、妥当な価格だと思われます。



 今度は、天然ガスを利用した水素の製造設備を紹介。


          表6 水素の製造設備(天然ガス→水素)

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 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、表3の製造設備と同様。



 この設備で水素を製造する際は、大量の天然ガスを消費します。
 ですから、十分な量の天然ガスを用意して下さい。
 1重量トンの水素を製造するためには、2.67重量トンの天然ガスが必要とされていました。

 天然ガスは、容積1.0キロリットル当たりの重量が0.5トンで、その価格が100crです。
 2.67重量トンの天然ガスは、容積5.33キロリットルで、価格が533crでした。



 天然ガスの購入費用が533crであった場合、 製造された水素の製造費用と販売価格は、以下の通りとなります。


     表7 水素の製造費用と販売価格(天然ガスから作る場合、その1)

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 表の説明は、表4と同じ。



 石炭から製造した場合(表4)と同じように、 製造費用の半分以上(最大で81.0%)を天然ガス2.67トンの購入費用が占めていました。

 この条件では、水素の販売価格が1トン当たり750〜950crの範囲となります。
 石炭から製造した場合と比べて、50crほど安くなっていますが、まだまだ高価でした。



 より安価な入手方法として今回も、ガス田で採掘した天然ガスを移動距離ゼロで 水素の製造設備へと持ち込むパターンを考えてみました。
 古代テラでは、天然ガスを産出する米国やカタールで試みられている方法ですが。 天然ガスをトン当たり60crの採掘費用だけで購入する、ということを意味しています。



 こうして、天然ガス2.67トンの購入費用は、160crまで減少しました。
 天然ガスの輸送コストは、全体のコストの中で占める割合が大きいので、輸送コストがゼロになる影響は大きいのです。

 天然ガスの購入費用が160crであった場合、 製造された水素の販売価格は、以下のように変わりました。


     表8 水素の製造費用と販売価格(天然ガスから作る場合、その2)

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 表の説明は、表4と同じです。

 この条件では、 水素の販売価格が1トン当たり400〜550crとなりました。



 電気料金の高いローテク世界では、安価な水素を入手することが難しいようです。
 トラベラー世界の水素燃料価格=トン当たり100〜500crは、 核融合炉によって供給される安価な電力が基盤となっている、ということが良く分かりました。




(2)窒素の製造

 窒素(N)の消費量は、人口10億人当たりで1,513万トン。
 その用途は、アンモニア生産のための原料が最も多く、 次に不燃性を利用した用途、加工食品への封入ガス、消火器の作動ガス、液体窒素にして冷却材としての利用、などが挙げられます。

 上記の生産量すべては、後述するアンモニアの製造に消費されている、と想定しました。
 他の用途のために生産/消費される窒素ももちろん存在していますが、 余りにも多くの場所で製造され、個別に消費されているため、全体的な統計データが見つかりません。



 窒素は、窒素を豊富に含んだ大気から製造されます。
 このあたりの事情は前回の考察「MRT07.html、ハロゲンと希ガス」でも説明した通り。
 鉱脈を探し出す必要はありません。

 その世界が大気を持っていれば、具体的には、 2(極薄、汚染)9(濃厚、汚染)の大気レベルを持っている世界であれば、 何処であっても製造が可能であるとしました。

 大気レベルが1(微量)以下の世界においては、 大気が薄過ぎるので窒素の製造ができないものとします。

 大気レベルがA(異種)以上の世界においては、レフリーの裁量としました。
 呼吸できない大気ですから、酸素が存在しない代わりに窒素の分圧が高いとか、主成分が二酸化炭素なので窒素の分圧が低いとか、 塩素ガスや硫酸が豊富に存在しているとかいった設定を考えることも出来ます。
 トラベラーの世界設定を壊すような内容でなければ、構わないでしょう。

 酸素と窒素の分圧、希ガスの存在比率は、テラの大気と全く同一である、と想定しました。
 すべての世界で分圧や存在比率がすべて一致していることは不自然だ、という意見を持たれるかも知れませんが、 存在比率が異なれば、一定量の大気から製造できる希ガスの量が変わって来ますので、 その価格や流通量が大きく変化することは必須です。
 あまり面倒なことは考えたくありません。



 鉱床の探索は不必要なので、適当な土地が確保できたら、製造設備を購入して下さい。
 それだけで、窒素の製造が可能となります。


              表9 液体窒素の製造設備

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 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 水素の製造設備と同様。

 空気の中に含まれる窒素の割合は、重量比で75%であると設定しました。
 ですから、空気13.3トンからは、10トンの液体窒素
 空気3,333万トンからは、2,500万トンの液体窒素が製造できます。

 とりあえず、1排水素トンの重さは1重量トン、で計算しておいて下さい。

 製造された「液体窒素」は、 1排水素トン当たり40cr〜200crで売却されるでしょう。
 液体窒素の生産者価格は、製造設備の規模によって様々なのです。
 消費者価格も様々であり、生産者価格と輸送コストの兼ね合いで決まるとのこと。



 あくまでも目安ですが、製造された窒素の製造費用と販売価格は、以下の通り。


            表10 窒素の製造費用と販売価格

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 表の左端は、製造設備の購入価格

 表の中央が窒素1トンの製造に必要な費用ですが、原料の購入費用が掛からないため、 製造設備の維持費他がそのまま製造費用の合計となっていました。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、窒素1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。



 上記、窒素の製造設備からは、副産物として、
 クリプトンキセノンを含んだ液体酸素
 不純物として酸素を含んだ液体アルゴン
 ヘリウム水素を含んだネオンガス
 の3つが得られます。

 これらの副産物から、特定の希ガスを取り出すためには、更に追加の設備が必要ですので、 その詳細については「MRT07.html、ハロゲンと希ガス」を参照して下さい。



 追加の設備無しであっても、不純物の混ざった状態ですが、液体酸素を売却するだけならば可能です。
 不純物が混ざっているといっても、99%以上の純度は得られている筈ですので、大きな問題にはならないでしょう。
 売値については、判断できる資料が集まっておりませんので、未定。
 一応、液体窒素よりも安く売買されている、らしいのですが。

 液体アルゴンは、酸素が混ざっているため、そのままでは売り物になりません。
 酸素の混ざった不活性ガスは、危険物なのです。
 ネオンガスも同様。



 水素窒素を用意できましたので、 次は本命であるアンモニアの製造を考えます。




(3)アンモニアの製造

 アンモニア(NH3の消費量は、人口10億人当たりで1,837万トン。

 主な用途は、尿素の生産。
 これだけでアンモニアの55%が消費されていました。
 尿素は、医薬品や化粧品(保湿クリーム)、尿素樹脂等の原材料となりますが、 その大半(アンモニア消費量の51%)は「窒素質肥料」として利用されています。

 2番目に多い用途は、硫酸アンモニウム(硫安)であり、 アンモニアの13%を消費していました。
 3番目は、硝酸アンモニウムの12%。
 4番目が、リン酸アンモニウムの7%。

 この3つとも、主な用途は「窒素質肥料」でした。
 ですから尿素の51%と合わせて、 アンモニアの84%が「窒素質肥料」として利用されている、 ということになります。
 但し、硫酸アンモニウム硝酸アンモニウムの2つは、 使い勝手の悪さから消費量が減りつつあり、その代わり尿素の生産が増えている、とのこと。

 残り16%の用途は、工業用その他と書かれているだけなので、さっぱり分かりませんでした。



 と言う訳で、アンモニアの合成です。

 前述した通り、ハーバー・ボッシュ法は、水素窒素から アンモニアを製造する技術でした。
 具体的には、水素窒素を混ぜて、 高温高圧下に置く(400〜600℃、200〜1,000atm)だけという、素晴らしい製法であります。
 実際には、反応を促進するための触媒ですとか、生成されたアンモニアを速やかに取り出さなければならないとか、 色々と苦労する問題もあるのですが、割愛。



 水素の製造設備、窒素の製造設備が準備できたら、 今度はアンモニアの製造設備を購入して下さい。


             表11 アンモニアの製造設備

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 製造設備は、その処理能力(製造能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 水素の製造設備と同様。



 アンモニアの化学式は、(NH3です。
 ですから、アンモニア1トンを作るためには、 水素(H)0.176トン(=3÷17)と、窒素(N)0.824トン(=14÷17)が必要でした。
 しかし、此処では計算を簡単にするため、 水素0.167トンと、窒素0.833トンで良いことにします。

 ですから例えば、表3と表6へ掲載した水素の製造設備の製造能力20トン/8時間のものと、
 表9へ掲載した窒素の製造設備の製造能力100トン/8時間のものが、
 セットとなって運用されることになるでしょう。
 対応するアンモニアの製造設備は、製造能力120トン/8時間のものを選んで下さい。

 水素の製造能力が20,000トンであれば、対応する窒素の製造能力は100,000トンです。
 アンモニアの製造能力は、120,000トン。



 アンモニアの密度は、液化した状態でも0.7ton/klです。
 かなり軽い液体なのですが、1排水素トンの重さは5重量トン、と設定しました。
 輸送容器自体が、船倉容積の半分近くを占めていると考えて下さい。



 製造されたアンモニアの価格は、その原料の購入費用、 特に水素の購入費用によって、最低価格が決まってきます。
 水素を安く購入(もしくは製造)出来れば、 アンモニアを安く売る(製造する)ことが出来ますし、
 水素を高く購入(もしくは製造)することしか出来なければ、 アンモニアを高く売る(製造する)ことしか出来ません。

 21世紀初頭のテラでは、中東のカタールが安価な天然ガスを用いて 安価なアンモニアを大量生産していました。
 その結果、米国と欧州のアンモニア製造業が圧迫されていましたが、 トラベラー世界でも同じようなことが起こり得るかも知れません。



 水素の購入価格によってアンモニアの価格が大きく変化することを、検証してみました。

 使用した水素の価格は、
 採掘場所から遠く離れた場所で、石炭から製造された水素(表4)。
 採掘場所のすぐ近くで、天然ガスから製造された水素(表8)。
 テックレベル10以上の世界で、電気分解によって製造された水素(100cr)。
 の3パターンです。

 アンモニアの製造費用と販売価格は、以下の通りになりました。
 まずは、採掘場所から遠く離れた場所で、石炭から製造された水素、 表4の価格を採用しています。


    表12 アンモニアの製造費用と販売価格(高価な石炭から水素を製造)

MRT08_Fig12.gif - 5.89KB

 表の左端は、製造設備の購入価格

 表の中央がアンモニア1トンの製造に必要な費用の内訳で、
 左側から水素0.17トンの購入費用窒素0.83トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、となっています。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、アンモニア1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。

 アンモニアの販売価格は、1トン当たり250〜350crとなりました。



 次は、採掘場所のすぐ近くで、天然ガスから製造された水素、 表8の価格を採用しています。


   表13 アンモニアの製造費用と販売価格(安価な天然ガスから水素を製造)

MRT08_Fig13.gif - 5.82KB

 表の説明は、表12と同じ。

 アンモニアの販売価格は、1トン当たり200〜300crとなりました。



 最後は、テックレベル10以上の世界で、電気分解によって製造された水素、 1排水素トン=100crの価格を採用しています。


      表14 アンモニアの製造費用と販売価格(テックレベルA以上)

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 表の説明は、表12と同じ。

 アンモニアの販売価格は、1トン当たり150〜225crとなりました。



 投機貿易品としてのアンモニアは、 1重量トン当たり400crで取引されているものとします。
 上記の販売価格とは大きな差が生じている場合もありますが、その際は、 競合他社を追い出すために値引き販売を行うか、大きな利益を得るか、のどちらかとなるでしょう。
 競合他社も同じレベルまで値引き販売が可能な場合は、双方が値引きを行うことで小さな利益しか得られない、ということもあるでしょう。
 その場合でも、上記の販売価格を下回る価格では、売買が行われないものとします。



 投機貿易品としてのアンモニアですが、 アンモニア=1排水素トンの重さは5重量トンです。
 なので、その価格は2,000cr
 投機貿易品としては、安過ぎるようです。
 これでは、恒星間の貨物運賃である1,000crも賄えません。




(4)尿素の製造

 と言う訳で、付加価値を更に大きくするため、 アンモニア尿素へ加工してみましょう。

 尿素の化学式は(CO(NH2)2
 白色の固体であり、肥料として使いやすくするため、適当な大きさの粒に加工されていることが多いようです。
 密度は1.32ton/kl。
 1排水素トン当たりの重さは10重量トンであるとしました。

 製造過程は、良く分かりません。
 アンモニア二酸化炭素(CO2を加えて、 どうにかすると尿素が出来上がるようです。
 2(NH3)+CO2(CO(NH2)2H2O
 という流れだと思うのですが、化学は苦手。

 計算上は、アンモニア34トンから、尿素60トンが製造できる、 筈です(変換効率は100%を想定)。
 尿素1トンを製造するためには、アンモニア0.567トンが必要、ということですね。



 尿素は、 「窒素質肥料」全体の生産/消費量の中で、ほぼ7割を占めていました。
 そして残り3割を、硫酸アンモニウム硝酸アンモニウムが分け合う形となっています。
 リン酸アンモニウムは統計上、「窒素質肥料」の中には含まれておりません。

 ですから尿素は、「窒素質肥料」の代表格、と呼んでも良いのではないでしょうか。
 この考察では、「窒素質肥料」のすべてが尿素である、と設定しておきます。
 若干のずれは生じていますが、誤差の内でしょう。



 そう考えるのであれば、尿素の消費量は、人口10億人当たりで3,240万トンとなりました。
 生産されたアンモニアのすべて(100%)が、 尿素のために消費されている、ということになってしまいましたが、見逃して下さい。

 尿素の製造には、前述した通り、
 尿素1トン当たりアンモニア0.567トンが必要です。
 また、製造設備に関しては、尿素1トン当たり50crの経費が掛かると想定しました。



 上記の想定から、尿素の製造費用と販売価格は、以下の通りになります。


            表15 尿素の製造費用と販売価格

MRT08_Fig15.gif - 5.07KB

 表の左端は、アンモニアの購入価格(cr/tons)

 表の中央が尿素1トンの製造に必要な費用の内訳で、
 左側からアンモニア0.567トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計です。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、尿素1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。

 尿素の販売価格は、1トン当たり200〜300crとなりました。
 ある程度の利益が見込めるように、定価を400crと設定しておきましょう。



 尿素=1排水素トンの重さは10重量トンですから、 その価格は排水素トン当たり4,0000cr
 ぎりぎりですが、恒星間の投機貿易品として成立しそうです。
 できる限り安く(排水素トン当たり3,000cr以下で)仕入れて、高く(4,000cr以上で)売る、といった苦労が必要になりそうですが。




(5)リンの採掘

 リン(P)の消費量は、人口10億人当たりで226万トン。
 主な用途はリン酸質肥料の原料であり、消費量の85%を占めていました。
 その他の用途としては、農薬や殺虫剤、医薬品、不凍液、マッチ、皮なめしや製紙の添加物、 ハムやチーズの結着剤、調味料、加工食品のph調整剤、などがあります。



 リンは、そのすべてがリン鉱石として、採掘されていました。
 このリン鉱石の主成分は リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2
 その品位は約50%ですから、リンだけに換算して計算すると、その品位はちょうど10%となります。

 品位が10%未満のリン鉱石は経済的に引き合わないのでしょう。
 それらが採掘されている痕跡は見つかりません。
 世界的にリン鉱石の枯渇が心配されている中、それで良いのだろうかと疑問に思わないこともないのですが。

 鶏糞を初めとする家畜のし尿から、品位50%のリン酸カルシウムを取り出せないことも無いそうです。
 ですが、不純物(有機物)の除去や乾燥にエネルギーを使うために、 リン鉱石と比べて3〜5倍の高価格になってしまうとか。
 骨粉(家畜の骨)はリン鉱石と同じような使い方が出来るのですが、十分な量が確保できません。
 下水処理場の汚泥からリンを回収する方法も、その回収コストが高いため、不経済であるとのこと。

 トラベラーの宇宙船に搭載されている生命維持装置のことを考えると、 極めて安価にリンを回収することが出来ない訳でも無さそうですが、 それを言い出すと話が始まりませんから、棚上げにしておきます。

 という訳で、「リン鉱石」の採掘について、考えてみました。
 「リン鉱石」の採掘手順は、の場合とほぼ同様です。



 「リン鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(リン鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 リン鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なリン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表16 リン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT08_Fig16.gif - 5.96KB

 リン鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したリン鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。
 見つかった鉱床は、とても投資額に引き合うものではないでしょうが。



 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更して下さい。
 「リン鉱石」の重さについては、1排水素トン=20重量トンという数値を用います。
 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのリン鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「リン鉱石」の品位(採掘した鉱石の中に含まれるリンの重量)は、 便宜上、10%(鉱石1トン中に100kg)を用います。
 「リン鉱石」は、実用上、既に十分な品位が得られているため、 選鉱によって品位を高める必要がありません。
 多くの「リン鉱石」が採掘されたそのままの形で利用されます。



 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


          表17 リン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 水素の製造設備と同様。



 採掘された「リン鉱石」は採掘された形そのままで取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり100cr。

 「リン鉱石」は排水素トン当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難です。
 農業用肥料として大量のリンを消費している星系の多くは、 同じ惑星上の何処かで「リン鉱石」を採掘していることでしょう。

 同じ惑星上の何処かで「リン鉱石」を採掘し、消費地まで輸送しているとするならば、 その輸送コストの計算も必要でしょう。
 ローテク世界の輸送コストに関しては「MRT05.html、化石燃料(炭化水素)」の表29と表30を参照して下さい。
 海上輸送が可能ならば、重量トン当たり10cr程度の輸送コストだけで済みますが、陸上輸送を用いるのであれば、輸送コストは急激に増加します。
 「リン鉱石」の価格は、トン当たり100crである、と設定しましたが、 100crの何割かは輸送コストが占めているかも知れません。
 一応、鉱山の経営は「リン鉱石」の売値が10crでも成り立つように設定してありますが。
 「リン鉱石」の採掘者は、搾取されているのかも知れません。



 もし1排水素トン=20重量トンという数値を用いるのであれば、 1排水素トン当たりの価格は2,000crまで大きくなります。
 この金額でも、恒星間の取引は困難なように思えますが、 宇宙港での買取価格を重量トン当たり50cr(排水素トン当たり1,000cr)まで抑えれば、ぎりぎりジャンプ1回分の運賃は捻出できます。
 自由貿易船の利益も考慮するのであれば、重量トン当たりの価格は40cr(排水素トン当たり800cr)まで抑えるべきでしょうか。
 それでも、自由貿易船の利益は排水素トン当たり200crしかありませんから、あまり大きな儲けにはなりません。

 鉱山から宇宙港までの輸送コスト、宇宙港で仲介するブローカーの手数料などは、重量トン当たり30cr前後を見込んでおけば良いでしょう。
 鉱山経営者の手許には、重量トン当たり10crしか残りませんが、それでも経営は黒字になっている筈です。




(6)過リン酸石灰の製造

 リン酸質肥料の7割は、過リン酸石灰に加工されていました。
 ですから「リン鉱石」も、その採掘量の7割が 過リン酸石灰に加工されているものと見なします。

 リン鉱石過リン酸石灰へと加工する過程は、以下の通り。



 過リン酸石灰は、 リン酸一カルシウム(Ca(H2PO4)2・H2O)硫酸カルシウム(CaSO4との混合物、でした。
 灰褐色に見える粉末、あるいは、粒状に成形された状態で流通しています。

 密度はリン鉱石よりも僅かに軽くなっていますが、混合物ですので正確な数値は分かりません。
 とりあえず1排水素トン当たりの重さは16重量トンであると設定しました。



 その製法は、極めて単純です。
 リン鉱石の主成分である リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2へ、 水(H2O)硫酸(H2SO4を加えるだけで 出来上がる、とのこと。

 具体的には、過リン酸石灰1トンを製造するために、
 リン鉱石0.743トン水0.022トン硫酸0.235トン(硫黄換算0.078トン)
 が必要だと分かりました。

 実際は、安全に混ぜるとか、均等に撹拌するとか、色々な処置が必要なのでしょうけれど、そのあたりは良く分かりません。



 原料の購入費用から求めた、過リン酸石灰の製造費用と販売価格は、以下の通りになりました。
 製造設備の購入費用については敢えて設定せず、製造設備の維持費他が一律50crであるとの想定です。


          表18 過リン酸石灰の製造費用と販売価格

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 表の左側は、過リン酸石灰1トンの製造に必要な費用の内訳です。
 左端からリン鉱石0.743トンの購入費用硫酸0.235トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、を並べました。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、過リン酸石灰1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。



 過リン酸石灰の販売価格は、1トン当たり250crとなりました。
 製造費用の合計94crしかありませんので、 販売価格の4割、100crで売却したとしても、製造所はぎりぎり収支が取れている筈です。
 製造所から農地までの輸送コスト、販売コストなどが残り6割の150crで賄われる、という計算。



 恒星間の貿易品として過リン酸石灰を扱うのであれば、 1排水素トン当たりの重さは16重量トンですから、 1排水素トン当たりの価格は4,000crとなります。
 この価格ならば、恒星間の運賃もジャンプ1回か2回ならば、捻出できるでしょう。



 蛇足かも知れませんが、過リン酸石灰の製造に伴う、鉱物資源の消費量についても計算してみました。


           表19 過リン酸石灰の製造に必要な資源

MRT08_Fig19.gif - 4.64KB

 表の左端は資源名
 その右にあるの品位(%)ですが、過リン酸石灰とリン鉱石の品位はリンの品位で、 硫酸の品位は硫黄の品位となっています。

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。

 消費量は、過リン酸石灰の製造に必要な資源の消費量で、人口10億人当たりのトン数。
 右端は、その消費量が、流通量全体の中でどれだけの比率を占めているのかを、パーセントで示しました。



 過リン酸石灰は、人口10億人当たり2,100万トンが製造されています。

 そのために消費されているリン鉱石の量は1,580万トン
 全生産量の70.0%でした。

 同時に消費されている硫酸の量は500万トン
 全生産量の16.8%に相当しています。

 リン鉱石比率が70.0%であることは想定通りでしたが、
 硫黄比率が16.8%、約6分の1もあることは意外でした。




(7)リン酸アンモニウムの製造

 採掘された「リン鉱石」の残り3割(30%)は、 リン酸アンモニウムに加工されているものと想定しました。

 リン酸アンモニウムは、 リン酸(H3PO4の水素を、アンモニアで置換したものです。
 ですから、その置換した数によって、名称も異なっていました。
 アンモニアが1つだけならば、リン酸二水素一アンモニウム(H2(NH4)PO4
 アンモニアが2つならばリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4
 3つすべてを置き換えた場合の名称は、ちょっと分かりません。
 上記2つに倣うならばリン酸三アンモニウム((NH4)3PO4でしょうか?
 あるいは単純にリン酸アンモニウムと呼ばれるのかも知れません。



 それはさておき、リン酸質肥料リン酸アンモニウムと言えば、 通常は、リン酸水素二アンモニウムのことを指します。

 実際の所リン酸質肥料の生産量の残りは、 その19.5%がリン酸水素二アンモニウムと突出しているものの、
 6.5%がリン酸二水素一アンモニウム、1.9%がリン酸、 1.6%が純粋なリン、その他が0.5%といった具合で、僅かしかありませんでした。

 ですから、残り3割のすべてをリン酸水素二アンモニウムであると想定しても問題にはならないでしょう。



 リン酸アンモニウムを製造するためには、 その前段階としてリン酸を準備しなければなりません。

 リン酸の製造方法は、大きく分けて、2つの製法が存在していました。



 1つは乾式製造法
 手間はかかりますが、高純度のリン酸を得るためには、必要なことだそうです。

 まず、リン鉱石=リン酸カルシウムに、コークス、珪砂(SiO2)、鉄を混ぜて、 そこへ650℃程度の熱風を送り込み、燃焼させます。

 こうすることで、高純度の五酸化二リン(P2O5が得られます。
 五酸化二リンは単独だと不安定なので、2つが合わさって、1つの分子を作るとか。
 つまり十酸化四リン(P4O10となるらしい。

 次に、この五酸化二リンを水(H2O)を反応させることで、 ようやくリン酸(H3PO4を生成するとのこと。

 実に面倒な手順で、この製法が高コストになっている理由が良く分かりました。



 もう1つは湿式製造法
 低純度のリン酸しか得られませんが、低コストな製法であるとのこと。

 こちらの製法は、リン鉱石に直接水と硫酸を加えて、リン酸を製造します。
 リン鉱石と硫酸の混合によって硫酸カルシウム(石膏)が生成されますから、 その硫酸カルシウムを取り除けば、後には粗リン酸(不純物の混ざったリン酸)が残される、という理屈。

 この粗リン酸から、不純物(金属と有機物)を取り除けば、 低純度ではありますが、低コストでリン酸が得られる訳です。
 低純度と言っても、最近は技術が進歩してきたので、この製法でも乾式製造法にも劣らない、 高純度のリン酸が製造できるようになってきたそうですが。



 どちらの製法であれ、リン酸が準備できたのであれば、 これにアンモニア(NH3を加えて、 ようやくリン酸アンモニウム((NH4)2HPO4が出来上がる、ということになります。



 リン酸の製造に関しては湿式製造法を採用しました。
 原料の購入費用から求めたリン酸の製造費用と販売価格は、以下の通りです。
 製造設備の購入費用については、製造設備の維持費他が一律30crであると設定しました。


            表20 リン酸の製造費用と販売価格

MRT08_Fig20.gif - 3.24KB

 表の左側は、リン酸1トンの製造に必要な費用の内訳。
 左端からリン鉱石3.16トンの購入費用硫酸2.08トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、を並べました。
 単位はクレジット(cr)です。

 表の右端は、リン酸1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)。



 リン酸の販売価格は、1トン当たり500crです。
 製造費用の合計429crですので、 製造所の儲け(販売価格と製造費用との差額)は71crしかありません。
 古代テラ(2005)で取引されているリン鉱石やリン酸の価格をきちんと調べて計算した結果なのですが、意外。
 製造所から農地までの輸送コスト、販売コストなどがきちんと捻出できるのか、不安です。



 恒星間の貿易品としてリン酸を扱うのであれば、 1排水素トン当たりの重さとして16重量トンを用いて下さい。
 1排水素トン当たりの価格は8,000crとなります。
 販売価格と製造費用との差額は1,136crしかありませんので、 恒星間の運賃を賄うことは難しいことだと分かりました。



 では、リン酸アンモニアを加え、 リン酸アンモニウムに加工してみたらどうなるでしょうか?

 リン酸アンモニウム1トンの製造に必要なリン酸は、0.742トン。
 アンモニアは0.258トンが必要です。

 リン酸アンモニウムの製造費用と販売価格は、以下の通りでした。
 製造設備の維持費他は、一律50crであると設定しています。


         表21 リン酸アンモニウムの製造費用と販売価格

MRT08_Fig21.gif - 3.65KB

 表の左側は、リン酸アンモニウム1トンの製造に必要な費用の内訳。
 左端からリン鉱石2.35トンの購入費用硫酸1.55トンの購入費用アンモニア0.258トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、を並べました。
 単位はクレジット(cr)。

 表の右端は、リン酸アンモニウム1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)です。



 リン酸アンモニウムの販売価格は、1トン当たり750cr
 製造費用の合計450crですから、 製造所の儲け(販売価格と製造費用との差額)は300crもありました。
 これだけの差額があるならば、同一世界上における輸送コストや販売コストも十分に賄えることでしょう。



 恒星間の貿易品としてリン酸を扱う場合は、 1排水素トン当たりの重さを12重量トンとして扱います。
 1排水素トン当たりの価格は9,000cr。
 販売費用と製造費用との差額は3,600crですから、ジャンプ数回の恒星間運賃と各種コストを捻出して、 更に利益を得ることは可能だと分かりました。
 最大でジャンプ3回までの運賃を捻出することが可能なのです。



 最後は、リン酸アンモニウムの製造に伴う、鉱物資源の消費量です。


         表22 リン酸アンモニウムの製造に必要な資源

MRT08_Fig22.gif - 5.42KB

 表の左端は資源名
 その右にあるの品位(%)ですが、リン酸アンモニウムとリン鉱石の品位はリンの品位で、 硫酸の品位は硫黄の品位、 アンモニアの品位は水素窒素を合計した品位になっています。

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。

 消費量は、リン酸アンモニウムの製造に必要な資源の消費量で、人口10億人当たりのトン数。
 右端は、その消費量が、流通量全体の中でどれだけの比率を占めているのかを、パーセントで示しました。



 リン酸アンモニウムは、人口10億人当たり290万トンが製造されています。

 消費されているリン鉱石の量は680万トン
 全生産量の30.0%でした。
 採掘されたリン鉱石のすべてを使い切ったという想定。

 同時に消費されている硫酸の量は446万トン
 全生産量の15.1%に相当していまして、過リン酸石灰での消費量に比べれば若干、少な目ですが、 ほぼ同量が消費されていることが分かりました。

 アンモニアの量は74万トン
 全生産量の中の、僅か4.0%でした。




(8)硫黄の採掘

 硫黄(S)の消費量は、人口10億人当たりで1,020万トン。
 主な用途は、硫酸の製造。
 生産された硫黄の95%は、硫酸の製造に消費されているようです。
 残り5%は、黒色火薬、合成繊維、ゴムへの添加剤、漂白剤、医薬品などとして消費されていました。



 硫黄に関して興味深い点は、その生産方法というか、その供給源です。


               表23 硫黄の供給源

MRT08_Fig23.gif - 6.70KB

 表の左端は資源名
 その右側は、その資源の消費量
 人口10億人当たりのトン数で示してあります。

 その右側が、その資源の硫黄の含有量
 資源1トンの生産に伴って得られる副産物=硫黄の生産量を 重量パーセント(%)で示しました。

 その右は、その資源から得られる硫黄の生産量で、単位はトン。

 右端は、全生産量の中に占める硫黄生産の割合
 これもパーセント(%)で示しています。



 硫黄の供給源として最も比率が高いものは石油(原油)でした。

 石油(原油)の中には、平均して1.67%の硫黄が含まれています。
 そして精製(脱硫)済みの石油(原油)からは、 重量で0.8%に相当する硫黄が取り除かれていました。
 ですから硫黄の生産量は、 石油消費量の0.8%である、ということになる訳です。

 このあたりの事情は「MRT05.html、化石燃料(炭化水素)」でも紹介した通り。

 消費量の0.8%と言うと、とても小さな量だと勘違いしてしまいそうですが、
 石油(原油)の消費量は人口10億人当たり5億6,800万トンと膨大な量です。

 5億6,800万トン0.8%を掛けた結果、 石油(原油)から得られる硫黄の生産量454万トンとなり、 硫黄生産の割合44.5%を占めていました。

 ですから硫黄の供給源として石油(原油)が一番であることは間違いないのです。



 その次に比率の大きな供給源は 銅(Cu)亜鉛(Zn)鉛(Pb)

 この3つの金属は、その鉱石(精鉱)の中に大量の硫黄を含んでいました。
 目的とする金属そのものが、採掘された時点で硫化物の形を取っていることが多い、という事情による模様。

 まず、の原料である銅精鉱は、 銅精鉱1トンの中に、硫黄0.3トン(=30%)を含んでいます。
 銅精鉱1トンの中には、元から銅0.3トン(=30%)が含まれていますので、 生産量だけを比べるのであれば、の生産量と硫黄の生産量はまったく同じ。
 の生産量に対して硫黄の生産量は100%である、 ということになりました。

 次は、亜鉛の原料である亜鉛精鉱ですが、 亜鉛精鉱1トンの中には、 亜鉛0.5トン硫黄0.3トンが含まれています。
 ですから亜鉛の生産量に対して硫黄の生産量は60%である、 と言えるでしょう。

 最後の鉛精鉱も同じように、鉛精鉱1トンの中に、 亜鉛0.6トン硫黄0.18トンが含まれていました。
 亜鉛の生産量に対して硫黄の生産量は30%、となるのです。

 これら3つの金属から得られた硫黄の生産量を合計すると、その量は340万トン
 硫黄生産の割合33.4%を占めています。
 石油(原油)以外の鉱物資源から、これだけ大量の硫黄が得られるとは思いませんでした。



 残りの供給源はその他で一括りにしました。

 鉱山から直接、硫黄を採掘する方法や、 石油石炭を燃焼させた後の排気ガスから、 二酸化硫黄(SO2を回収する方法などが該当します。

 排気ガスからの硫黄生産も意外と生産量が多いらしいのですが、 具体的な情報が全く入手できないため、ハウス・ルールを作れませんでした。
 ですから、この生産方法に関しては、存在しないものとして扱います。

 硫黄生産の割合22.1%



 此処では、鉱山から硫黄を採掘する方法について、考えてみました。



 「硫黄」を採掘するためには、新たな鉱床(硫黄鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 硫黄鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望な硫黄鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



          表24 硫黄鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT08_Fig24.gif - 5.08KB

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示した硫黄鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンです。
 埋蔵量の単位を重量トンに変更する場合は、 「硫黄鉱」の重さを1排水素トン=20重量トンで計算して下さい。



 探索に成功した場合は、その硫黄鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「硫黄鉱」の品位は100%(鉱石1トンのすべてが硫黄)を用います。
 硫黄は、純度(品位)がほぼ100%の状態で採掘される、ということであり、 選鉱の作業は必要ありません。
 これは、採掘作業そのものが選鉱/製錬を兼ねているためです。



 低コストな硫黄の採掘方法は、鉱床から噴出する火山性ガスを利用していました。
 火山性ガスの中には、 硫化水素(H2S)二酸化硫黄(SO2が豊富に含まれています。
 この2つのガスをゆっくり冷却していくと、硫黄(S)と水に分離(析出)していきますので、 大きな労力を費やすことなく高純度の硫黄が手に入る、という仕組み。

 鉱床から噴出する火山性ガスの量が少ないのであれば、 火山性ガスを作ってしまえば良い、という発想で生まれた採掘方法がフラッシュ法
 これは、鉱床の中へ高温高圧の水蒸気を送り込み、 鉱床内で硫化水素二酸化硫黄を生成させます。
 生成した2つのガスは、送り込まれる水蒸気の圧力によって、別の場所から噴出。
 そのガスを回収することで、地上の冷却設備内に硫黄が析出する、という流れでした。

 どちらにせよ、低コストで高純度の硫黄が得られることに間違いはありません。



 以下の表に、硫黄の採掘設備の購入価格と維持費を示しました。


          表25 硫黄鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT08_Fig25.gif - 5.09KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 水素の製造設備と同様。



 採掘された「硫黄鉱」は、 高純度の「硫黄」として取引されます。
 その価格は1重量トン当たりで100cr。

 上記の通り「硫黄」は重量トン当たりの取引価格が低いため、 恒星間の取引が困難でした。
 1排水素トン=1重量トンのままでは、 恒星間の硫黄の流通を再現することが、経済的に難しいようです。

 1排水素トン=20重量トンという数値を用いるのであれば、 1排水素トン当たりの価格は2,000crとなりました。
 まだ安価ですが、「リン鉱石」と同じように、 宇宙港での買取価格を重量トン当たり50cr(排水素トン当たり1,000cr)まで抑えれば、ぎりぎりジャンプ1回分の運賃は賄えます。
 幾つかの条件が合うならば、恒星間輸送はジャンプ1回という制限付きですが、可能になるでしょう。




(9)硫酸の製造

 採掘された「硫黄」の大部分(95%)は、 硫酸(H2SO4に加工され、消費されます。
 この硫酸の用途は様々でした。

 とりあえずの調査で、
 リン酸質肥料の製造に30%前後が消費されていること、
 ニッケル(Ni)製錬に5%が消費されていること、
 上記2つの数字だけは明らかになっています。

 しかし、残り65%の用途は、色々と調べましたが良く分かりません。
 鉛蓄電池の電解液、潤滑油、鋼板やステンレスの洗浄、上下水道の浄化、化学繊維の製造、染料、石膏ボード、農薬、 などに消費されているようなのですが、その消費量も割合も不明でした。



 硫黄から硫酸を製造する手順は、以下の通り。

 まずは、硫黄を燃焼させることから始まります。
 硫黄(S)を燃焼させることで、二酸化硫黄(SO2が発生。
 これを更に酸化させることで(転化と呼ばれる工程)、三酸化硫黄(SO3を製造。
 最後に、この三酸化硫黄を水(H2O)と反応させることで、 硫酸(H2SO4が出来上がる訳です。
 他にも幾つか製造法が存在しますが、最も一般的であると思われる硫黄燃焼法を取り上げました。

 亜鉛から 硫黄を取り出す場合は、精錬の過程で二酸化硫黄が発生します。
 ですから、最初の燃焼行程は省けるでしょう。
 それを転化し、水と反応させることで硫酸が出来上がる、という流れは全く同じ。



 硫酸1トンの製造に必要な硫黄は、0.327トンでした。
 酸素と水も必要ですが、その購入費用はほぼゼロである、との想定をしておきます。
 真空世界や異種大気を持つ世界(非水海洋世界)では前提条件が大きく変わってくると思いますが、其処までは対応できません。
 レフリーの裁量ということで御容赦を。

 硫酸の製造費用と販売価格は、以下の通りでした。
 製造設備の維持費他は、一律12crであるとの設定です。


            表26 硫酸の製造費用と販売価格

MRT08_Fig26.gif - 4.33KB

 表の左側は、硫酸1トンの製造に必要な費用の内訳ですが、諸般の事情から、 硫黄の販売価格(購入費用)を2通りで想定しておきました。
 御覧の通り、硫黄の価格が、 1トン当たり100crの場合と60crの場合です。

 これは硫黄の輸送に伴う価格上昇(輸送コストの負担)を意味しており、
 前者(100cr)は、硫黄を輸送して、 到着した先で硫酸を製造する場合、
 後者(60cr)は、硫黄の生産地で、 輸送コストを掛けずに硫酸を製造する場合、
 のそれぞれを表します。



 内訳は、左端から硫黄0.327トンの購入費用製造設備の維持費他製造費用の合計、を並べました。
 単位はクレジット(cr)。
 変数は硫黄の購入費用しかありませんので、 製造費用の合計はそれぞれ、45crと32crとなります。



 表の右端は、硫酸1トンの販売価格
 これも単位はクレジット(cr)ですが、どちらの場合でもあっても50crと設定しました。

 ですから硫黄の価格100crの場合は、 差額の5crが販売コスト(あるいは利益)となります。
 輸送コストは硫黄の状態で支払っていますから、負担は必要ありません。

 60crの場合は、差額の18crが輸送コストと販売コストに充てられます。
 炭化水素(石油)の輸送コストを参考にするのであれば、陸上輸送で300km、海上輸送で25,000kmが上限でしょうか。
 赤字にはならないように設定しましたが、硫黄の状態で輸送するのであれば、 1トン当たり40crが輸送コストと販売コストに割り当てられる訳で、 硫酸の輸送が経済的に引き合わない、という現実を再現できたと思います。



 硫酸は、地産地消、と言って良いのか分かりませんが、その消費先で製造されることが基本でした。
 例えば、とある年度の硫酸生産量は、2億500万トンでしたが、その多くは生産した国内で消費されています。
 国境を超えて取引される硫酸の輸送量は1,300万トンであり、生産量全体の6.3%しかありません。
 海上輸送される硫酸は更に量が少なく、800万トンでした(生産量全体の3.9%)。

 要するに、硫酸の形で輸送されることは稀な状況なのです。
 多くの場合硫酸は、硫黄の形で輸送され、 現地で硫酸に加工されている、ということが分かりました。

 1トン当たり10crのコストを支払えば、地球の反対側まで海上輸送できる古代テラでもこうなのですから、 1トン当たりの1,000crの輸送コストが必要なトラベラー宇宙では、硫酸の輸送がより難しくなるでしょう。



 硫黄の生産地で硫酸を製造した場合、 製造費用の合計は1トン当たり32crでした。
 硫酸の販売価格は1トン当たり50cr
 その差額は18crしかありませんので、前述の通り、硫酸の輸送は困難です。



 恒星間の貿易品として硫酸を扱う場合は、 1排水素トン当たりの重さを15重量トンであると見なします。
 1排水素トン当たりの価格は750cr。
 恒星間の運賃を捻出することは不可能でした。
 硫酸の恒星間輸送は諦めて、何とか現地生産の方法を見つけ出さなければならないでしょう。




(10)カリウムの採掘

 カリウム(K)の消費量は、人口10億人当たりで477万トン。
 用途の大半はカリ質肥料の原料であり、消費量の93%を占めています。

 その他の用途としては、染料や触媒、爆薬、薬品など。
 塩化ナトリウムの代わりの代用塩、としての利用もあります。
 反応性が高いため、単独元素の金属カリウムとしては存在し難いのですが、 逆にその反応性を活用して、他の元素を除去するための吸収材としても使われるとか。
 これらの消費量は、残り7%が割り当てられるので、人口10億人当たりで33万トンを少し超えるくらい。
 肥料以外の用途で使われるカリウムは、意外に少ないようです。



 カリウムは、主に塩化カリウム(KCl)の形で採掘されていました。
 大昔の海洋が干上がって塩湖となり、その塩湖の中の塩水が更に乾燥して、固まったものが、その鉱床です。
 ナトリウム(Na)マグネシウム(Mg)といった不純物が、 同じ塩化物として含まれていますので、 副産物として塩(塩化ナトリウム)を産出することも有り得るとのこと。
 多くの鉱山では、不純物として廃棄、されるだけですが。

 塩化カリウムの鉱床は、 岩塩(塩化ナトリウム)の鉱床よりもずっと深い場所に存在することが多いようです。
 ですから、より深い場所まで掘らなければいけません。
 カリウムの価格が高い理由は、そのあたりの事情にあるのでしょう。



 それはさておき、「カリウム」を採掘するためには、新たな鉱床(カリウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 カリウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なカリウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、
   0.1MCrの場合はDM+2を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表27 カリウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT08_Fig27.gif - 5.02KB

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したカリウム鉱床よりも、もう一桁小さい規模の鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンです。
 埋蔵量の単位を重量トンに変更する場合は、 「カリウム鉱」の重さを1排水素トン=16重量トンで計算して下さい。



 探索に成功した場合は、そのカリウム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「カリウム鉱」の品位として便宜上、2%(鉱石1トン中に20kg)を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、高品位の「カリウム鉱」へ辿り着くために掘り出した、 捨石を含めた平均の品位が、2%であると考えてください。

 選鉱の後、ほぼ純粋な「塩化カリウム」が得られます。
 その品位は40倍の80%。
 塩化カリウムの中でカリウムが占める割合は82.1%ですが、 計算を簡略化するため、80%であると設定しました。
 つまり、品位2%の「カリウム鉱」40トンから、 品位80%の「塩化カリウム」1トンが得られる訳です。

 選鉱の設備を加えた、採掘設備の購入価格と維持費を、以下の表へ示しました。


         表28 カリウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定していることは、 水素の製造設備と同様。



 採掘された「カリウム鉱」は採掘と同時に選鉱され、 高純度の「塩化カリウム」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たりで250cr。
 「塩化カリウム」は排水素トン当たりの取引価格が低いため、恒星間の取引が困難です。

 1排水素トン=16重量トンという数値を用いるのであれば、 1排水素トン当たりの価格は4,000crとなり、かろうじて、恒星間の投機貿易品として成立するでしょう。




(11)肥料元素の流通形態と流通量

 以上、「水素、窒素、リン、硫黄、カリウム」の5元素から成る 「肥料元素」の製造と採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。


          表29 肥料元素の流通形態と流通量、価格

MRT08_Fig29.gif - 10.9KB

 左端は元素名
 次が流通形態と、その品位(%)

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。
 流通量は、10億人当たりの流通量(トン)。
 1排水素トンの重さは、1重量トンで計算しています。



 「水素」は、液体水素としての価格が、トン当たり500cr。
 「窒素」は、液体窒素としての価格が、トン当たり40crでした。
 どちらも恒星間を輸送するには安過ぎる価格です。

 ですから、そのすべて(100%)が「アンモニア」に合成されていると考えました。
 アンモニアは、水素窒素から合成されますので、 便宜上の品位は100%。
 トン当たりの価格は400crです。
 この価格ですと、まだまだ恒星間の貿易品としては、安過ぎました。

 「アンモニア」が、品位47%の「尿素」に加工されて流通していると考えても、 トン当たりの価格は400crしかありません。
 1排水素トン=1重量トンの計算では、どの形態であっても 「水素と窒素」の2元素を恒星間で流通させることが出来ないようです。



 「リン」は、品位10%のリン鉱石として採掘されますが、その価格はトン当たり100crでした。
 恒星間を輸送するには安過ぎる価格ですので、何らかの加工を施すべきでしょう。

 リン鉱石の70%は「過リン酸石灰」へと加工されています。
 その品位は若干下がって8%、価格はトン当たり250crまで上がりましたが、まだ安過ぎでした。

 リン鉱石の残り30%は「リン酸アンモニウム」へと加工されます。
 その品位は24%で、価格はトン当たり750cr。
 リン鉱石、過リン酸石灰の2つと比べれば何倍も高価なのですが、恒星間の貿易品とするためには、まだ足りません。

 リンの2%相当が、品位32%の「リン酸」として流通しています。
 その価格は、トン当たり500cr。

 リンの1.6%が、品位100%の純粋な「リン」として流通しています。
 トン当たりの価格は2,000crですから、「リン」の中では唯一、恒星間輸送が可能になるかも知れません。



 「硫黄」は、品位100%の「硫黄」として生産され、流通しています。
 その価格は、トン当たり100crしかありませんが、硫黄はこの形態が最も高価ですので、仕方ありません。

 硫黄の95%は「硫酸」へと加工され、消費されます。
 しかし、硫酸が恒星間を輸送されることは、滅多に無いでしょう。
 品位33%の硫酸は、価格がトン当たり50crであり、 硫黄よりも安くなっているためです。



 「カリウム」は、そのすべてが「塩化カリウム」として流通しています。
 その品位は80%で、トン当たりの価格は250crでした。
 ですから「カリウム」も、恒星間の貿易には使えません。



 上記の数字を、1排水素トン=1〜20重量トンで再計算してみました。。
 1排水素トン当たりの価格は大きく変わりますから、恒星間の貿易に相応しい金額となるかも知れません。


          表30 肥料元素の流通形態と流通量、価格
            (1排水素トン=1〜20重量トン)

MRT08_Fig30.gif - 11.1KB

 左端は元素名
 次が流通形態と、その品位(%)

 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。
 流通量は、10億人当たりの流通量(トン)。
 1排水素トンの重さは、1〜20重量トンとなっています。



 「水素」は、1排水素トンの重さが1重量トンでした。
 ですから、1排水素トン当たりの価格は、1重量トン当たりの価格と同じ500crです。

 「窒素」は、1排水素トンの重さが10重量トン
 1排水素トン当たりの価格は400crとなりました。

 どちらも、恒星間を輸送するには安過ぎる価格であることに、違いはありません。
 この問題は最初から予想されていたことですので、次のアンモニアに期待しましょう。



 「水素と窒素」から合成された「アンモニア」は、 1排水素トンの重さが5重量トンです。
 ですので、1排水素トン当たりの価格は2,000cr。

 何とか恒星間の運賃を捻出できるかなと思わないこともない価格ですが、 アンモニアの製造原価は排水素トン当たりで1,000〜1,515crでした。
 差額は最大でも1,000crですから、ジャンプ1回の運賃を支払ったら、残りはゼロです。
 差額が485crだった場合は、500cr以上の赤字。

 アンモニアを恒星間輸送することは、経済的に無理であると分かりました。
 「レフリーズ・マニュアル、p.51」の通商・貿易フローチャートにおいて、
 表10a.天然資源の32〜33、「窒素化合物(Nitrogen Compounds)」、
 がアンモニアに該当するかと期待していたのですが、残念です。

 アンモニアは、天然資源ではなく加工品だろう、というツッコミは却下。



 最後の希望は「尿素」しかありません。
 1排水素トンの重さが10重量トンですから、 1排水素トン当たりの価格は4,000cr。

 尿素の製造原価は排水素トン当たりで1,350〜2,480crでした。
 ですから、ジャンプ1回分の運賃は捻出できるでしょう。

 ようやく、恒星間の投機貿易品として扱える価格のものが見つかりました。
 恒星間を流通する「水素と窒素」の2元素は、 その多くが「尿素」に加工されているようです。

 そして「尿素」は通商・貿易フローチャートにおいて、
 表10b.加工品の63、「肥料(Fertilizers)」、
 表10c.工業製品の11〜12、「薬品(Pharmaceuticals)」、
 に該当するでしょう。



 「リン」の主要な供給源である「リン鉱石」は、 1排水素トンの重さが20重量トンでした。
 ですから、1排水素トン当たりの価格は2,000cr。
 採掘コストが幾ら掛かっているかにも因りますが、ジャンプ1回までならば、採算ギリギリで恒星間輸送も行えるでしょう。

 この場合は、通商・貿易フローチャートの、
 表10a.天然資源の14〜15、「非金属の鉱石(Nonmetal Ore)」、
 に該当している筈。



 リン鉱石の70%は「過リン酸石灰」へと加工されています。
 「過リン酸石灰」は、1排水素トンの重さが16重量トン
 1排水素トン当たりの価格は4,000crとなりましたので、恒星間輸送は問題無く行えます。
 もちろん、その輸送距離はジャンプ1回か2回が限度ですけれど。

 リン鉱石の残り30%は「リン酸アンモニウム」へと加工されます。
 「リン酸アンモニウム」は、1排水素トンの重さが12重量トン
 1排水素トン当たりの価格は9,000crとなりましたので、恒星間輸送も容易です。
 ジャンプ1回〜2回ならば余裕ですし、利益を諦めればジャンプ3回までも可能でしょう。

 上記2つの加工品は、通商・貿易フローチャートにおいて、
 表10b.加工品の63、「肥料(Fertilizers)」、
 表10c.工業製品の11〜12、「薬品(Pharmaceuticals)」、
 に該当するでしょう。



 リンの2%相当が、「リン酸」として流通していました。
 「リン酸」は、1排水素トンの重さが16重量トン
 1排水素トン当たりの価格は4,000crです。
 「過リン酸石灰」とは異なり製造原価が高くつくため、ジャンプ1回分の運賃も捻出することが出来ません。



 リンの1.6%が、品位100%の純粋な「リン」として流通しています。
 1排水素トンの重さが10重量トンなので、 1排水素トン当たりの価格は20,000cr。
 「肥料元素」の中では珍しく高価な貿易品となりましたが、 純粋な「リン」の多くは可燃性であり、 中には毒性を備えたものもあります。
 取扱いには御注意下さい。

 通商・貿易フローチャートにおいては、
 表10b.加工品の32、「非金属(Nonmetals)」、
 が該当していると思われます。



 「硫黄」は、品位100%の「硫黄」として生産され、流通しています。
 1排水素トンの重さが20重量トンなので、 1排水素トン当たりの価格は2,000crになりました。
 製造原価的には厳しいのですが、幾つかの条件が合うならば、ジャンプ1回の恒星間輸送が可能となるでしょう。

 通商・貿易フローチャートでは、
 表10a.天然資源の14〜15、「非金属の鉱石(Nonmetal Ore)」、
 表10b.加工品の32、「非金属(Nonmetals)」、
 に該当する訳ですが。



 「硫酸」は、1排水素トンの重さが15重量トンです。
 ですから、1排水素トン当たりの価格は750crとなりました。
 硫酸の恒星間輸送は、経済的に困難です。



 「カリウム」は、そのすべてが「塩化カリウム」として流通しています。
 塩化カリウムは、1排水素トンの重さが16重量トンなので、 1排水素トン当たりの価格は4,000cr。
 ジャンプ1回〜2回の範囲ならば、恒星間輸送が成り立ちます。

 通商・貿易フローチャートでは、
 表10a.天然資源の14〜15、「非金属の鉱石(Nonmetal Ore)」、
 表10b.加工品の32、「非金属(Nonmetals)」、
 表10b.加工品の63、「肥料(Fertilizers)」、
 のどれかに該当するかも知れません。





4.化学肥料の必要性


 化学肥料について情報を集めていたところ、
 化学肥料は悪い物だ、人間や土地に害がある
 という主旨の文章が見つかりました。

 化学肥料を使い続けると、土地が痩せる。
 化学肥料を使って育てた農産物は、人間にとって毒である。
 だから化学肥料を使わないようにしよう。

 三行で纏めると、こんな内容です。

 つまり、化学肥料を使わない、有機農法の売り込み、以外の何物でもない訳ですが。
 現在の農業事情、日本に限らず世界の食糧生産について知っているのであれば、到底書けないことだと思いました。
 上記のような文章が流布している事自体が許せないので、反論を書いてみることにします。




(1)農業の現状

 世界の耕作面積(農地面積)、穀物生産量、単位面積当たりの収量を、以下の表へ纏めました。


           表31 世界の耕作面積と穀物生産量

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 表の左端は、西暦(テックレベル)
 1900年(テックレベル4)1930年(テックレベル5)は、数値が見つからなかったので、 1950年(テックレベル6)以降だけを並べてあります。



 その右側は、全世界の耕作面積(農地面積)
 単位は100万ha(ヘクタール)

 耕作面積が、1990年を境に減少している、ということに注意して下さい。
 この表では1990年が最大値を迎えていますが、 実際は1980年の7億2,400万haが最大でした。
 つまり、耕作面積は確実に減少を続けている、のです。

 ポンティング氏の調べによると、森林や草原を切り開いて、新規に開拓された農地の面積は、 1860年から1990年までの130年間で8億ha
 しかし、現在の農地面積は6億8,600万haしかありません。
 平均すれば、20年間で1億2,000万haずつ増えている筈の農地は、一体何処へ消えてしまったのでしょうか。
 その実態については後述。



 その右は、全世界の穀物生産量
 単位は100万トン

 此処で挙げた穀物とは、小麦、大麦、米、トウモロコシ、その他の雑穀のことです。
 生産量の方は、1950年から2005年まで、順調に増加していました。
 穀物を食べる人口も急激に増えていますから、生産量が増えてくれないと困る訳ですけれど。

 ちなみに人口1人当たりの穀物生産量は、1950年0.25トン
 2005年0.35トンでした。
 時代と共に食生活が豊かになって来ていることは間違いありません。



 表の右端は、収量
 単位面積当たりの穀物収穫量のことで、土地の生産性を表す数値です。
 単位はトン/ha(ヘクタール)

 1950年の収量は1.06トン/ha
 2005年の収量は3.27トン/ha
 わずか55年(半世紀)で、収量が3倍以上の大きさまで増加していました。

 つまり、耕作面積が減少しても、単位面積当たりの収量を増やすことで、 全体の穀物生産量を大きく増やすことが出来た、ということです。



 収量を大きく増やした理由は、大きく分けて3つ。

 1つめは、品種改良
 収量の多い品種を作り出して普及させたり、 病害虫に強い品種を作り出して、病害虫による減収を防いだり、といったことです。
 本題では無いので、此処では詳しく語りません。
 興味のある方は「緑の革命」で調べてみて下さい。

 2つめは、灌漑設備
 これによって、水の無い土地、雨の降らない土地でも、安定して大きな収量を得ることが可能になりました。
 コンクリートによる用水路の建設や揚水ポンプの普及などが不可欠ですが、 降水量に依存しない農業生産が何時でも行える、ことは大きなメリットでしょう。
 当然リスクも存在しますが、これも纏めて後述。

 3つめは、化学肥料
 痩せた土地に栄養を与えて、大きな収量を可能にした、工業製品です。
 堆肥とは異なり工業製品ですから、豊富に、安定して、安価に供給できることこそが大きなメリット。

 今回の考察の主題である訳ですが、化学肥料の必要性を更に掘り下げてみましょう。




(2)化学肥料が必要不可欠な背景

 農産物の中にどれだけの元素が含まれているのか、皆さまは御存知でしょうか?

 主要な農産物である穀物(米、小麦、トウモロコシ、大豆、ジャガイモ)、その中に含まれている 肥料元素リンカリウム)の量を、 以下の表へ纏めました。


           表32 穀物に含まれるリンとカリウムの量

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 表の左端は、穀物名
 米(玄米と精白米)、小麦、トウモロコシ、大豆の5つに、穀物ではありませんが、ジャガイモを追加してあります。

 その右側は、穀物100g当たりのリン含有量で、単位はミリグラム(mg)
 概ね、穀物100g当たり25〜580mgが含まれているとのこと。

 右端は、穀物100g当たりのカリウム含有量
 これも単位はミリグラム(mg)で、穀物100g当たりに80〜1,900mgが含まれていました。

 本題とは関係ありませんが、リンカリウムの含有量が、玄米と精白米とで 2.5倍〜3.0倍も違う、ということに気付きます。
 精米された残り物=米糠には、 大量のリンカリウムが含まれている、 ということなのでしょう。

 今回は手頃な資料が見つからなかったので上記の表には載せていませんが、麦も全粒粉やふすま入りで計算すると リンカリウムの含有量が数倍に跳ね上がりました。

 ですので、米糠やふすまを畑へ戻す(肥料として利用する)ことで、 リンカリウムに関しては、かなりの量が再利用できるのではないかと思われます。
 それが経済的に許されるかどうかはともかく。



 想定する単位がミリグラム(mg)では今ひとつ実感がわきません。
 なので、上記の重量を1万倍して、100gから1トン(tons)当たりの含有量に変更してみましょう。

 そして更に、1ヘクタール(ha)当たりの収穫量を掛けてみました。
 つまり、耕作地1haで収穫された穀物の中に、 どれだけの肥料元素リンカリウム)が含まれているか、 ということを求めてみた訳です。


            表33 穀物の収量とリンとカリウム

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 表の左端は、穀物名
 米(玄米と精白米)、小麦、トウモロコシ、大豆に加えて、ジャガイモの6つです。

 その右側は、1ヘクタール(ha)当たりの収量(tons)
 収量の多い土地から、米と小麦は7トン、トウモロコシは9トン、大豆は3トン、ジャガイモは40トン、という数字を用いました。

 その右側が、1ヘクタール(ha)当たりのリン含有量(kg)
 例えば、小麦7トンを収穫すると、その中にリンが5.3kg含まれており、 トウモロコシ9トンの中にはリンが24.3kgも含まれている、ということです。

 表の右端は、1ヘクタール(ha)当たりのカリウム含有量(kg)
 リンと同じく、収穫した小麦7トンの中にはカリウムが5.6kg含まれていて、 ジャガイモ40トンの中にはリンが136kgも含まれている、ことになります。

 これらの穀物は、その耕作地の中で消費される訳ではありません。
 国内の人口密集地(都市部)へ運ばれて消費されるか、あるいは、国外へ輸出されて消費されます。
 ですから、これらの穀物に含まれているリンカリウムは、耕作地へ戻って来ません。
 永遠に失われてしまいます。



 つまり、1ヘクタールの耕作地から穀物を収穫する度に、 毎回5〜25kgのリンと5〜136kgのカリウムが失われていることが分かりました。

 この数値は、収穫された穀物だけから求めた数値ですので、根や茎、葉なども一緒に収穫しているとしたら、 失われるリンカリウムの量は更に増えるでしょう。
 どんなに肥沃な(肥料元素の豊富な)耕作地であっても、 これだけのリンカリウムを奪われていくのでは、堪りません。
 肥料元素の補充が行われない限り、 耕作地はどんどん痩せ細っていく(肥料元素が少なくなっていく)のですから。

 ですから、高い収量を確保し続けるため、耕作地を肥沃なままで維持するために、 化学肥料=肥料元素リンカリウム)の投入は 必要不可欠な訳です。



 肥料元素の中の水素(H)硫黄(S)については、 具体的な数値が見つからないので、考察することが出来ませんでした。
 しかし窒素(N)については面白い数値が見つかったので、以下へ掲載しておきます。


             表34 窒素肥料生成量と製造量

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 この表は、古代テラにおける窒素肥料の生成と製造について、その生成量と製造量を比較したものです。

 表の左端は、その窒素肥料が自然界で生成されたか、工業的に製造されたかの区別。
 その右側は、窒素肥料の生成量/製造量で、単位は100万トン(tons)
 その右側は、テラの陸地面積/耕作面積であり、単位は100万ヘクタール(ha)
 表の右端は、陸地面積/耕作面積1ヘクタール(ha)当たりの窒素肥料生成量/製造量(kg)になっています。



 自然界においても、アンモニウム・イオン(NH4+硝酸イオン(NO3-の生成は、 放電(雷)やバクテリアの活動によって行われてきました。
 最近は、排気ガス中の窒素酸化物(NOxも貢献しているようですが、一応、 これは統計上、自然界で生成されている側へ含まれているようです。

 その生成量は、年間で2.2億トン
 バクテリア等の活動に因る生成が1.8億トンで、 放電(雷)や排気ガスによる生成が0.4億トンであるとのこと。

 この窒素肥料の生成は、テラの陸地全域で行われていることですから、 その分母として、テラの陸地面積を持って来ました。
 その広さは、147億ヘクタール(ha)

 自然界で生成された窒素肥料の2.2億トンを、 陸地面積の147億ヘクタールで割ると、 陸地面積1ヘクタール当たり15.0kgという数値が出て来ます。

 実際のところ、陸地面積の中に砂漠や永久凍土等の不毛地帯も含まれていますので、この数値は2倍以上に増えるかも知れません。
 ですが平均値では、あくまで15.0kgとなる訳です。
 この数値が小さいのか大きいのかは、 工業的に製造された窒素肥料の数値と比較することによって、判明することでしょう。



 工業的に製造される窒素肥料は、そうした自然界の活動に因らず、 人工的な手法=ハーバー・ボッシュ法で製造されたものを指します。

 その製造量は、年間で1.6億トン
 自然界で生成された量に対して7割強=0.727に相当するほど、膨大な製造量でした。

 製造された窒素肥料は、テラの耕作地で使用されます。
 ですので、分母はテラの耕作面積であり、その広さは6.86億ヘクタール
 テラの陸地面積と比べると、僅か5%弱=0.047
 この限られた面積で、全人類の食糧生産が行われている訳なのですが。

 工業的に製造された窒素肥料の1.6億トンを、 耕作面積の6.86億ヘクタールで割ると、 耕作面積1ヘクタール当たり233.2kg、という数字が出て来ました。

 既に計算した通り、自然界で生成された窒素肥料は、 陸地面積1ヘクタール当たり15.0kgという数値になっています。
 工業的に製造された窒素肥料は、 それと比べて15.6倍の高濃度で使用されている、ということが分かりました。



 リンカリウム、そして窒素
 上記3つの肥料元素の消費量と製造量から考えてみれば、
 1950年から2005年の半世紀で3倍以上の大きさにまで増えた収量は、
 化学肥料の大量使用によって支えられていることが明らかです。

 つまり、現在の農業生産は、非常に嫌な例え方ですが、 月当たりの残業時間が100〜200時間のサラリーマンのようなものだ、と言えるでしょう。

 こなさなければならない仕事(養う人口)は増えていきます。
 でも、同僚の人数(農地面積)は減っていく一方。
 そのため、サラリーマンの残業時間は増えるばかり。

 という状態で、栄養ドリンクや点滴(=化学肥料)をフル活用して、仕事をせっせとこなしているサラリーマンが、今の農業生産(=農地)の姿なのです。

 この状態で、休みを取れ、残業時間を減らせ、栄養ドリンクや点滴を止めろ、
 と言い出すことは、仕事がこなせない(食糧生産が不足する)ということを意味しています。

 化学肥料の使用を拒否することは、食糧生産を減らすことに繋がります。
 食糧生産を減らすことはつまり、その分、餓死する人口が生じるということです。

 とある学者の試算によれば、 化学肥料の使用を止めるのであれば、世界人口の3分の2に相当する50億人が餓死してしまう、とのこと。

 こうした未来をきちんと予測した上で、化学肥料の使用に反対すると言うのであれば、これ以上は何も申しません。
 覚悟があるのであれば是非とも、その信念を貫き通して欲しいと思います。




(3)耕作面積が減少している理由

 今度は 世界の耕作面積が1980年に最大値を迎えて以降、減少を続けている理由、 について調べてみました。



 以下の数値は、耕作地減少の要因(1990年までの統計)、です。
 紀元前のメソポタミア流域(メソポタミア文明)やインド北部(インダス文明)なども含まれている、かどうかは分かりません。
 世界土壌資源報というレポートが情報源なのですが、その元ネタが英文レポートであり、ネット検索しても見つからないため、未確認なのです。


              表35 耕作地減少の要因

MRT08_Fig35.gif - 9.60KB

 表の左端は、耕作地減少の要因
 レポートの公表が20世紀末なので、数値は1990年までの累積、となっています。
 1991年以降の耕作地減少は、数値に含まれておりません。

 その右側が、減少面積で、単位は100万ヘクタール(ha)

 表の右端が、減少面積の合計に対する割合(%)
 その耕作地減少の要因が、どれだけの割合を占めているのか、という数字です。



 結果だけを端的に述べますと、 現存する耕作地(2005年の時点で6.86億ヘクタール)の約2倍に相当する13.56億ヘクタールの耕作地が、 土壌流出(浸食)化学的土壌劣化物理的土壌劣化の3要因によって、失われていました。
 耕作地として使えない、荒地に変わってしまった、ということです。



 耕作地減少の要因としては、 土壌流出(浸食)が最も多くて、10.25億ヘクタール(全体の75.6%)
 その多くがアジア(4.05億ヘクタール)とアフリカ(2.67億ヘクタール)に集中しております。
 その次に多いのが欧州(1.32億ヘクタール)と北アメリカ(0.78億ヘクタール)。

 その内訳を見てみると、 降水による浸食(水食)が耕作地減少の主要因だ、 と断言しても良いのではないでしょうか。
 降水による浸食(水食)で失われた面積は、7.5億ヘクタール(全体の55.3%)
 別の資料では、11億ヘクタールや2億ヘクタールという数字も見つかりました。
 これは、その浸食の強度(軽度〜強度の分類が行われている)にも因るのでしょう。
 一応、私は「中度〜重度」の浸食を合算してみた訳ですが。

 「中度〜重度」の水食が最も多い地域はアジアで、3.15億ヘクタール。
 その次がアフリカの1.69億ヘクタール、3番目が欧州の0.93億ヘクタール、4番目が南アメリカの0.77億ヘクタールでした。

 日本は昔からこの問題には神経を尖らせていた筈なのですが、最近はそうでもないようですね。
 日本の耕作地においても水食による耕作地の喪失が増えているとのこと。

 海外の場合は耕作地の作り方がかなり大雑把なので色々と問題になっておりますが、 米国人的には、その耕作地が使えなくなったら、引っ越して別の場所を開拓すれば良い、のでしょうか。
 トラベラーの世界設定も、その世界が汚染などの理由で使えなくなったら別の世界に移住すれば良い、という雰囲気が感じられます。

 水食の有名な事例としては、旧ソ連のカザフ地方(現カザフスタン)の開拓地が挙げられるでしょうか。
 1954年からの開拓によって、0.40億ヘクタールの草原が農地へ変換されましたが、開拓開始の10年後、1965年には、 既にその農地の4割、0.16億ヘクタールが水食で荒地へ変わってしまったとのこと。
 開拓した農地が10年ももたないというのは酷い話ですが、 元々、農地としては不向きだった草原を強引に開拓した結果ですから、仕方のないことなのでしょう。



 強風による浸食(風食)は、米国の「ダストボウル」が有名。
 文字通り、風に吹き飛ばされて土壌が失われてしまうパターンで、 失われた面積は、2.75億ヘクタール(全体の20.3%)
 風食が最も多い地域はアフリカで0.98億ヘクタール。
 2番目がアジアの0.90億ヘクタール、3番目が欧州の0.39億ヘクタール、4番目が北アメリカの0.32億ヘクタールでした。
 興味深いのは5番目となっているオセアニアの0.27億ヘクタールですが、 オーストラリアの耕作地減少の主要因は風食である模様。
 オセアニアは元々の耕作面積が小さいので、0.27億ヘクタールの減少は大きな影響を及ぼします。

 農業というものは、土壌表面に繁茂する雑草を排除しなければ始められない訳ですから、 ある意味、風食を受けることは必然なのでしょう。
 風食を受け易い土地では、防風林を作るなどの対策が効果的だそうですが、 「ダストボウル」が発生した米国では農地の拡大が最優先され、農地の保護対策は後回しにされていたとのこと。
 当時の米国は小麦の輸出国であり、その価格が高騰していたためなのですが、やはり、人は目先の利益には弱いものだと実感しております。



 化学的土壌劣化は2番目に多く、2.39億ヘクタール(全体の17.6%)
 2番目に多い要因なのですが、減少面積の大きさは土壌流出の4分の1以下でした。

 この中で、一番多い要因が、養分流亡1.36億ヘクタール(全体の10.0%)
 南アメリカ(0.68億ヘクタール)とアフリカ(0.45億ヘクタール)で顕著となっておりますが、要は土壌の養分不足です。
 過剰な農業生産と肥料不足によって土壌の養分が失われ(補充されず)、そのまま耕作不能となってしまうパターン。
 こういった耕作地にこそ化学肥料を投入するべきだと考えますが、 それが経済的に不可能であるが故に、耕作放棄にまで至ってしまうそうです。

 その次は、塩類蓄積0.77億ヘクタール(全体の5.7%)
 地域別には、アジアの0.53億ヘクタールが目立ちます。
 次点はアフリカの0.15億ヘクタールですが、他の地域ではほとんど見られません。
 土壌の中に塩分が過剰に蓄積して、農作物を育てられなくなった状態、を意味しています。
 灌漑とも密接な繋がりがありますので、詳しくは後述。

 汚染は、重金属等の有害物質や過剰な農薬による土壌汚染、のことを指すようです。
 失われた面積は、0.21億ヘクタール(全体の1.5%)
 その内訳は、欧州が0.19億ヘクタール、アジア(の何処かは記述無し)が0.02億ヘクタール、でした。
 何となく分かるような気がします。
 2018年現在で統計を取ったら、アジアの数値が激増するかも知れません。

 酸性化は文字通り、土壌の酸性化による耕作不能状態のこと。
 失われた面積は、0.05億ヘクタール(全体の0.4%)
 酸性雨(大気汚染)が原因だとか、残留農薬が原因だとか、化学肥料の中の硫黄分が原因だとか、 元々、土壌自体が酸性化する傾向にあるとか、色々言われております。
 
 化学肥料による耕作放棄という項目は存在しませんが、敢えて見つけるならば、 汚染酸性化の項目が該当するかも知れません。
 上記2つの原因すべてが化学肥料という訳でもありませんけれど。



 物理的土壌劣化は3番目の要因で、0.92億ヘクタール(全体の6.8%)

 圧密は、主にトラクター等の農業機械によって生じるそうです。
 その重量によって、耕作地の深部が固まってしまい、水を通さなくなるとか、 反対に、深耕によって不透水層を破壊してしまうとか、のパターンだそうです。
 斜面に作られた耕作地が圧密状態になると、土壌流出(土砂崩れ?)が起こり易くなるなどとも書いてありました。
 それならば、等高線に沿って耕作するべき(段々畑を作るべき)だと言いたいところですが、 そんな面倒なことは思い付かないし、知ってもやろうとは思わないようです。
 土地に対する感覚(愛着)はこんなものなのでしょうか?
 日本の農家出身者として疑問を覚えずには居られません。
 失われた面積は、0.77億ヘクタール(全体の5.7%)
 塩分蓄積(塩害)と同じ面積ですが、これは主に欧州で発生(0.33億ヘクタール)。
 次点でアフリカ(0.18億ヘクタール)、アジア(0.10億ヘクタール)となっておりました。

 洪水は、洪水による耕作地放棄のこと。
 カトリーナ(2005)による被害もこれに含まれるべきなのでしょうが、この統計は1990年までなので、含まれていない筈。
 失われた面積は、0.11億ヘクタール(全体の0.8%)
 中央アメリカ(0.05億ヘクタール)と南アメリカ(0.04億ヘクタール)に集中しております。

 有機物の損失は、説明が無いので良く分かりません。
 土壌中の有機物が無くなって、栄養素も微生物も居なくなる。
 土壌では無くて、砂地になってしまうという意味なのかも知れませんが、不明です。
 失われた面積は、0.04億ヘクタール(全体の0.3%)
 アジアと欧州で、それぞれ0.02億ヘクタールずつです。



 という訳で、
 化学肥料を使い続けると、土地が痩せる。
 という話は、全く根拠が無い冤罪であると判明しました。

 汚染酸性化による耕作地の減少を 化学肥料が原因だと主張できないこともありませんが、 その2つの減少面積は合わせても0.26億ヘクタール
 全体の1.9%しかありません。
 おまけに、工場や鉱山からの廃水による農地汚染、農薬の過剰使用などによる耕作地の減少が、統計から存在しなくなってしまいます。
 ちょっと不自然ですね。

 その不自然さには目を瞑るとしても、
 養分流亡によって失われた1.36億ヘクタール(全体の10.0%)のように、
 化学肥料を使わない/使えないことによる減少面積の方が遥かに大きいのです。

 使うリスクよりも、使わないリスクの方が大きい。
 使わないメリットよりも、使うメリットの方が遥かに大きい。
 ということであれば、化学肥料の使用に反対する理由が分かりません。

 この章の最初に述べた通り、化学肥料を使わない、有機農法の売り込み、以外の何物でも無いのでしょう。

 既に述べたように、化学肥料の使用に反対することは、 世界人口の50億人を餓死させることでもあります。
 それだけは忘れないで頂きたい。




(4)灌漑設備の普及と功罪

 外部の水源から耕作地(農地)へ水を供給することが灌漑です。

 前述した通り、水の無い土地、雨の降らない土地でも、安定して大きな収量を得ることが可能となりました。
 雨が十分に降る土地であっても、干ばつによる被害を防止することが出来ます。
 そのため昔から灌漑自体は小規模ながら行われていたのですが、 それが広く普及するようになったのは、土木技術の発達と動力ポンプの発明以降のこと。
 科学技術の発達が農業の生産性を高めた、という一例でもあります。

 灌漑設備の普及について、以下の表へ纏めました。


              表36 灌漑設備の普及

MRT08_Fig36.gif - 5.17KB

 表の左端は、西暦(テックレベル)
 年代の範囲は、表31と同じです。



 その右側は、全世界の耕作面積(農地面積)
 単位は100万ha(ヘクタール)
 この数値の推移については表31で説明した通り。



 その右側が、全世界の灌漑面積(灌漑されている農地面積)

 1950年には0.94億ヘクタールしか存在しなかった灌漑面積が、 20年後の1970年には1.65億ヘクタールで1.75倍。
 平均すると、年間355万haの灌漑設備が新たに建設されていた、ということになります。

 更に20年後の1990年には2.45億ヘクタール
 灌漑設備の建造ペースは更に早まって年間400万ha、という勢い。

 そして15年後の2005年は2.95億ヘクタール
 灌漑設備の建造ペースは少し落ち着いて年間333万haとなっていますが、実際の所はどうなのでしょう。
 前項でも触れたように、放棄された耕作地がありますので、 400万haよりも多くの耕作地に灌漑設備が設置されているのかも知れません。



 表の右端は灌漑比率(%)
 耕作面積(農地面積)の何パーセントで灌漑が行われているかを示した比率です。

 1950年には15.9%しか存在しなかった灌漑比率が、年を追うごとに増えて行き、 2005年の時点では遂に43.0%となっていることが分かりました。

 逆に考えると、2005年の時点で全世界の耕作面積の半分以上では、 未だ灌漑が行われていないと言うことでもある訳ですが、先進国の農業を基準にしてはいけないのでしょう。



 さて、安定した農業生産を行える(安定した収量を得られる)という 素晴らしいメリットを備えた灌漑なのですが、 当然ながら、其処には厄介なリスクが存在していました。



 その1つめは、水資源の枯渇

 旧ソ連(現カザフスタンとウズベキスタンの間)に存在するアラル海の消失は有名は話ですし、 北米では複数の州に跨がって存在するオガララ帯水層の地下水位低下が問題となりました。
 あまり注目(公表)されていませんが、中国とインドでも地下水の枯渇が深刻です。



 2つめは、塩類集積

 一般的な塩類集積は、灌漑によって地下水位が上昇してくるパターンでしょうか。
 これは、地下水の塩分濃度が高い地域で起こり易いようです。
 灌漑によって土壌が常に湿った状態になると、その湿った土壌の水分が地下深くの地下水(塩分濃度=高)とくっついてしまい、 毛細管現象で地下水が土壌表面へ滲み出してくるという理屈。

 土壌が湿っているので、一見すると灌漑不要の幸せな状態に思えますが、 その土壌は塩分濃度の高い地下水で灌漑されている状態ですので、 水分の蒸発と共に塩類集積が極めて速く進んでしまいます。

 メソポタミア文明における耕作地減少の主要因が、このパターンだったとか。
 唯一の対策は、灌漑を止めて水分供給を断ち、地下水位を下げることなのですけれど。
 灌漑を止めることは即ち、食糧生産を止めることでもありました。
 当時であっても、国民を飢えさせるような対策は打てなかった訳で……。

 最終的には、塩類集積で農耕不可。
 土地が塩分で白くなり、草も生えなくなって砂漠化、ということだそうです。



 最近は、灌漑技術の発達に伴って、 別パターンの塩類集積が発生するようになってきました。
 その原因が、農業生産の合理化=水資源の節約であることについては、苦笑するしかありませんが。

 灌漑された農地は、適切な排水が行われないと、水が蒸発した後の塩分が土壌の表面に残ってしまいます。
 農地へ供給される水は、例えそれが良質の水であっても、その中に200〜500ppmの塩分を含んでいました。
 淡水の定義は、含まれる塩分の濃度が1,000ppm以下であり、飲料水の基準はその半分、500ppm以下です。
 ですから、水に200〜500ppmの塩分しか含まれていないのであれば、それは農業用水としてはかなり良質のものなのですが。

 一般的な灌漑設備は、耕作地1ヘクタール当たり年間2万トンの水を使用する、と想定して下さい。
 米1トンを生産するために必要な水量が3,600トン、小麦1トンに必要な水量が2,000トンであるとすれば、妥当な数値でしょうか。
 この場合、2万トン×200〜500ppmですので、年間2〜5トンの塩分が土壌に蓄積することになりました。

 同じ耕作地で20年間の灌漑を行って来たとすれば、その20倍、40〜200トンの塩分が蓄積しています。
 平方メートル当たりに換算すれば、1メートル四方で4〜20kgの塩が撒かれている、ということに。
 地面が塩で白くなる、という表現にも納得が行きました。
 文字通り、草も生えなくなる、訳ですね。



 この場合の対策は必要以上の水を灌漑することで土壌に溜まった塩分を洗い流すことだそうです。

 例えば、1ヘクタールに2万トンではなく、2倍の4万トンの水を灌漑すれば、 2万トンは農作物の成長に使われたり、普通に土壌表面から蒸発したりする訳ですが、
 残り2万トンは、塩分濃度2倍(400〜1,000ppm)の排水となって下流へ、あるいは地下へ流れてくれる、という理屈。

 でも、それだけの水が存在するのであれば、 2ヘクタールの農地に灌漑をおこなって2倍の収量を得るだろう、 とも思います。
 水資源の枯渇はかなり深刻なものとなっていますので、余計なことに水を使っている余裕はありません。
 メソポタミア文明と同じように、現在の人類は地球丸ごとの深刻な食糧危機を迎えているのです。

 後は天水(降水)による洗い流しを期待するくらいですが、 その農地(灌漑農地)へ定期的に十分な雨が降るようであれば、そもそも塩類集積の問題は発生しないでしょう。
 という訳で灌漑による塩類集積は解決が困難です。
 どうしようもありません。

 解決手段が皆無、という訳でも無いのですが……。



 それはさておき、松永様と「農業移民」のルールを共同制作していた時点で、 この耕作地減少の要因を知っていれば、と悔やまれます。

 不用意に(=土壌流出(浸食)への対策を施さず)、森林や丘陵地の開拓(開墾)をした場合、 その農地は10年後に2D6を振り、6以下の目が出たら(=41.7%の確率で)、水食によって耕作不能になるとか。
 平原であっても、10年後の2D6で6以下の目が出たら、こちらは風食によって耕作不能になるとか。
 水源として井戸を利用している場合は10年毎に2D6を振り、3以下の目が出たら(開墾後10年が経過する毎にDM−1、100年目ならば−10)、 井戸の水が枯れて、水源としては利用できなくなる(地下水が無くなるので、井戸を掘り直しても無駄)とか。
 灌漑農地では10年毎に塩分集積の判定を3D6で行い、その合計値が50を超えたら耕作不能になっているとか。
 色々とそれっぽいルールを追加できたのに。





5.まとめ


 今回は「肥料元素」というグループを設定して、 水素(H)窒素(N)リン(P)硫黄(S)カリウム(K)といった、5元素の考察を行いました。



 まずは、古代テラで消費されている「化学肥料」の量を調べました。

 その成分から、化学肥料は大きく3つに分類されますが、
 その1つは水素窒素を主原料とする「窒素質肥料」、
 2つめはリン硫黄を主原料とする「リン酸質肥料」、
 3つめがカリウムを主原料とする「カリ質肥料」、
 となっています。

 5つの肥料元素の消費量は、 上記3つの化学肥料の消費量から求めました。
 最も消費量が多い元素は窒素で、2番目は何故か硫黄
 3番目以降は一気に消費量が小さくなって、カリウム水素、 最後にリンの順番です。



 次には、肥料元素の製造/採掘について、ハウス・ルールを作成しました。

 水素は、 石炭や石油、天然ガスといった炭化水素と水から製造されます。
 テックレベルが高くなれば(10以上の世界であれば)安価な電力が利用できますので、電気分解でも安く製造できますが、 テックレベル8以下の世界においては、炭化水素を利用した方が安価でした。

 窒素は、その世界の大気から製造(分離)されますが、そのままの形では肥料として利用できません。
 水素と反応させてアンモニアを合成し、 尿素へ加工することで、「窒素質肥料」としての利用が可能になる訳です。

 リンは久しぶりに採掘ルールの出番でした。
 そのままでも利用可能ですが、硫酸(硫黄酸化物)や水と合成した後の 過リン酸石灰リン酸アンモニウムが、 「リン酸質肥料」として利用されています。

 硫黄は主に、石油や銅、亜鉛、鉛採掘の副産物として生産されていました。
 それ以外の生産方法が、提示した鉱山での採掘ルールです。
 硫黄硫酸へ加工され、様々な工業製品に利用されていました。
 上記「リン酸質肥料」も、その用途のひとつ。

 カリウムも、塩化カリウムの形で、普通に採掘されます。
 塩(塩化ナトリウム)と比べて、より深い場所まで掘り進めなければならないようですが。
 カリウムは採掘されたままの状態で、 塩化カリウムのまま「カリ質肥料」として利用されていました。

 恒星間を流通する肥料元素としては、
 尿素リン鉱石過リン酸石灰リン酸アンモニウム硫黄塩化カリウム
 この6つが有り得ます。
 他の形では、恒星間の輸送コストを賄えません。



 最後に「化学肥料」の必要性を検証しています。

 20世紀末から21世紀初頭に掛けて、様々な要因によって、 古代テラの耕作面積は減少を続けている
 人口は増え続けているので、餓死者を出さないためには 食糧の生産性を上げる(1ヘクタール当たりの収量を増やす)しかない
 そのためには、耕作地に必要な栄養を供給しなければならず、そのためには 化学肥料の利用が不可欠である

 という事実が再確認できました。
 世界の耕作面積減少の実態は予想以上に酷かったと思いますが、これが事実なのです。



参考文献

 クライブ・ポンティング、1994、「緑の世界史、朝日選書」、朝日新聞社。
 小西誠一、1994、「地球の破産、ブルーバックス」、講談社。






 2018.05.20 初投稿