The Mineral Resource
in the Traveller space 02
Major Rare Metal
トラベラー宇宙の鉱物資源
その2
主要なレアメタル
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 トラベラー世界の「鉱業」に関する考察、その2です。
 今回は「レアメタル:Rare Metal」について考えてみましょう。

 「希少金属」とも訳される「レアメタル:Rare Metal」は、本来、 地殻中の存在量が少ない金属鉱石への濃縮が少ない金属精錬が困難な金属総称です。
 某極東島国の定義によれば、マンガン(Mn)ニッケル(Ni)クロム(Cr)プラチナ(Pt)パラジウム(Pd) などの30元素に、希土類を加えたものが「レアメタル」になっていました。

 前回の考察「MRT01:トラベラー宇宙の鉱物資源、その1」で取り上げた プラチナ(Pt)パラジウム(Pd)の2つが含まれておりますが、 この2つは「貴金属」であると同時に「レアメタル」でもある金属なのです。

 また、「希土類:Rare Earth Metal」とは、ランタノイド系列の元素15種類に、 スカンジウム(Sc)イットリウム(Y)を加えたものであり、 これら17種類の元素すべてを合わせて「希土類:レアアースメタル」と総称しています。
 「レアメタル」と間違えないように、注意して下さい。



 流石に種類が多過ぎますから、「レアメタル」として数えられている45元素 (プラチナパラジウムの2つは考察済みなので、2つ減っています) このすべてを同時に考察する訳にはいきません。
 今回の考察「トラベラー宇宙の鉱物資源、その2」では、 「主要なレアメタル」として抜き出した7元素と 「消費量の多いレアメタル」と見なした6元素。
 合わせて13元素を考察しました。
 残りの30元素も順番に考察していく予定です。




 目次
    ※2.主要なレアメタルの消費量
    ※3.主要なレアメタルの探索と採掘
       (1)クロムの採掘
       (2)マンガンの採掘
       (3)ニッケルの採掘
       (4)ニッケル鉱石の恒星間取引
       (5)モリブデンの採掘
       (6)バナジウムの採掘
       (7)タングステンの採掘
       (8)コバルトの採掘
       (9)流通形態と流通量
    ※4.消費量の多いレアメタルの探索と採掘
       (1)バリウムの採掘
       (2)ジルコニウムの採掘
       (3)ストロンチウムの採掘
       (4)アンチモンの採掘
       (5)ニオブの採掘
       (6)リチウムの採掘
       (7)流通形態と流通量
    ※5.まとめ





2.主要なレアメタルの消費量


 「主要なレアメタル:Major Rare Metal」というのは、 前述した「レアメタル」の中でも特に消費量の多い7種の金属、
 クロム(Cr)マンガン(Mn)ニッケル(Ni)モリブデン(Mo)バナジウム(V)タングステン(W)コバルト(Co)のことを指します。
 このあたりの定義は曖昧ですし、人によって異なるようですので、上記7種はあくまで私の定義ですが。
 この7種類は、その広い用途や消費量などから戦略的重要物資と認識されており、某極東島国の場合、60日分の消費量が備蓄されていました。


 以下に、主要なレアメタルの消費量を示します。


         表1 世界の金属消費量(主要なレアメタル)

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 今回もデータは、古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを用いています。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口1千人当たり、100万人当たり、10億人当たりの消費量を求めました。

 以下で、主要なレアメタル7種を簡単に説明します。



 クロム(Cr)は特殊合金(主にステンレス鋼)の製造に不可欠な元素であり、 その多く(95%)は特殊合金への添加で消費されます。
 残りの需要はメッキや耐火煉瓦など。

 マンガン(Mn)も製鉄に不可欠な元素であり、同じく95%が製鉄で消費されます。
 残り5%の需要は、乾電池、フェライト(磁性材料)、顔料、陶磁器釉薬など。

 ニッケル(Ni)は、ステンレスの材料として添加されるものが大半ですが、錆び止めのためのニッケルめっき、 フェライト(磁性材料)、電池(一次電池と二次電池)、形状記憶合金などにも使われています。

 モリブデン(Mo)は、ステンレスや特殊鋼への添加材料として用いられます。
 その他、触媒などの産業機器、液晶パネルや放熱板などの電子機器にも利用されているとのこと。

 バナジウム(V)は、鋼や合金に添加されるとその(引っ張り)強度や耐熱性を高める性質があり、 建築構造材、橋梁、工具、航空機、ロケット向けに使用されています。
 また、触媒として石油の脱硫、アルコールの酸化、硫酸製造、プロピレン樹脂合成等にも利用されています。
 最近では、人体内で血糖値を下げる性質が注目されているとのこと。

 タングステン(W)は、優れた切削性と耐摩耗性を有しており、 高速度鋼等の特殊鋼や超硬合金、照明用のフィラメント等に使用されています。

 コバルト(Co)の主な用途は、二次電池。
 電極にリチウム(Li)コバルトの合金が使用されており、 その消費量は全体の50%(2000年)〜70%(2010年)を占めていました。
 その他の用途は、特殊鋼への添加材、超硬工具、磁性材料などになります。



 上記の主要なレアメタル7種は、それなりの工業生産設備を備えた世界、 具体的には人口レベル7以上の世界でなければ需要がなさそうに思えます。
 それはそれとして、主要なレアメタルの価格や採掘についても考えてみました。





3.主要なレアメタルの探索と採掘


 今回も、レアメタルの採掘を生業とする鉱山会社を想定してみました。
 法手続きや従業員の募集は面倒なので、すでに会社が存在して、事業を行っているという想定です。




(1)クロムの採掘

 クロム(Cr)の消費量は、人口10億人当たりで208万トン。
 世界の金属消費量の中で1.35%を占めており、その順位はアルミに次いで、4番目でした。

 主な用途は特殊鋼への添加です。 その中でも最も多い用途はステンレス鋼で、重量比にして13〜18%のクロムを添加していました。 その他、耐熱鋼、構造用合金鋼、工具鋼にも使われています。
 特殊鋼での消費量は、全体の95%を占めていました。

 鉄鋼の耐食性、耐熱性を増すだけではなく、耐熱合金や各種電子機器部品、耐火煉瓦、メッキ用にも欠かせません。
 電極や触媒としての用途も存在します。



 クロムは主に「クロム鉄鉱」と呼ばれる鉱石の中から取り出されます。
 「クロム鉄鉱」は「酸化クロム」を含んだ「鉄鉱石」であり、 「鉄鉱石」と同じように探索され、採掘されていました。
 しかし「クロム鉄鉱」の分布は偏っており、 「鉄鉱石」のように何処でも見つかるという訳ではありません。

 ここでは「クロム鉄鉱」を「クロム鉱石」と呼ぶことにします。
 この「クロム鉱石」の採掘について、考えてみました。



 クロムを採掘するための手順は、の場合とほぼ同様です。

 「クロム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(クロム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 クロム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なクロム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表2 クロム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig02.gif - 5.92KB

 クロム鉱床の探索に投資した金額の大きさは、探索に使用した人員、機材の質と量に反映されます。
 金額が大きければ、経験豊富な研究グループの雇用や大規模な機材(質量探知機を搭載したエアラフトや解析用コンピュータ)の投入が行われますし、 金額が小さければ、少人数の試掘チームと貧弱な機材しか使用できないのです。

 探索の成功は、経済的に採掘できる鉱床を豊富に見つけたことを意味しています。
 どんなに良質な鉱床を発見したとしても、その鉱床が安価に採掘できるのでなければ、見つけた意味がありません。
 この表で示した埋蔵量は、経済的に採掘できる鉱石の量を示しているのです。

 探索に失敗した場合は、鉱床が見つかったものの、経済的に採掘できる状況ではなかったことを意味します。
 「15〜16」の欄に示したクロム鉱床よりも、もう一桁小さい鉄鉱床が見つかったことにしても構いません(レフリーの裁量)。



 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トンの重量は、1重量トンということにしていますが、 納得できない方は埋蔵量の単位を重量トンに変更してください。
 鉱石の密度については、1排水素トン=40重量トンという数値を用いれば良いでしょう。
 埋蔵量だけでなく、以下に述べる採掘量や処理能力などの単位もすべて重量トンに変わることをお忘れなく。



 探索に成功した場合は、そのクロム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「クロム鉱石」の品位としては、便宜上1.0%を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、クロム鉱床は鉄鉱床の中に混在していますので、 高品位の「クロム鉱石」だけを採掘することができません。
 高品位の「クロム鉱石」へ辿り着くために掘り出した、 捨石(クロム分の少ない鉄鉱石)を含めた平均の品位が、1.0%であると考えてください。

 「クロム鉱石」の品位として1.0%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、品位が20%になった「クロム鉱石」を 「クロム精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位1.0%の「クロム鉱石」20トンから、 品位25%の「クロム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。
 「クロム」の品位を高めるため、ほぼ製錬と呼べるような行程を行っていました。


         表3 クロム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。

 週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。
 従業員を2交代制(週5日×16時間、年間250日)にすれば、 処理能力も2倍に上げられます。
 その代り、維持費(人件費や修理費)は2倍に増えますし、 設備の疲労も2倍の早さで進みますから、耐用年数は半分に減ってしまいますが。
 年中無休24時間態勢を取るのであれば処理能力を4倍まで上げられます。
 その場合、維持費は4倍で、耐用年数は2割(5分の1)に減少。
 処理能力4倍で採掘を8年続けた場合、鉱床の2割を残して耐用年数が尽きてしまいます。
 設備の更新費用として、購入費用の25%を費やす(耐用年数が10年増えますが、処理能力4倍で実質2年)か、 1ランク下の設備を2つ購入する(購入費用は20%、ただし採掘に時間が掛かる)ことになるでしょう。



 採掘された「クロム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「クロム精鉱」として取引されます。
 その価格は1排水素トン当たり100cr。

 「クロム精鉱」は取引価格が低く、そのままでは製錬所までの運賃を賄うことが困難です。
 そのため多くの鉱山では、「クロム精鉱」を「フェロクロム:FeCr」に加工し、 付加価値を高めて取引していました。



 「フェロクロム」は、 「クロム精鉱」に「炭素:C」を加え、 電気炉で加熱することによって、酸素を還元して作られます。
 還元のためのコストは、「クロム精鉱」1トン当たり200crでした。
 「クロム精鉱」1.25トン(125cr相当)に還元コスト250crを費やすことで、 「フェロクロム」1.0トンが得られます。
 「フェロクロム」1トンの取引価格は400crですから、鉱山側の手取りは25crしか増えません。
 それでも、取引価格に占める運賃の割合を小さく抑えることができるため、鉱山の経営状態は改善します。
 また、鉱山での「フェロクロム」生産は、現地の雇用を増やすという大きなメリットも備えていました。
 地方世界の経済発展を期待するのであれば、「フェロクロム」の生産は欠かせない要素なのです。



 そして「フェロクロム」は、ステンレス鋼など特殊鋼を製造する際、 「鉄鉱石コークス」と一緒に溶鉱炉に放り込まれます。
 適当な計算ですが、「鉄鉱石」3.3トンと「フェロクロム」1.0トンを一緒に溶解すれば、 「クロム」13%のステンレス鋼が1.9トン強、出来上がってくるでしょう。
 「クロム」を13%添加したステンレス鋼は、ステンレス鋼の中で最も安価なものですが、 それでも一般的な鉄鋼と比べて原材料費がトン当たり210crも増えてしまいました。
 一般的な鉄鋼の取引価格がトン当たり500crで、原材料費以外にコスト増の要因が存在しないとしても このステンレス鋼の取引価格はトン当たり710cr以上になります(実際の価格は3〜4倍以上)。
 ステンレス鋼は設計者の側から見て、とても高価な材料なので、設計者はできる限り使用を避けようとするのです。



 消費される「クロム」の95%は上記の通り、「フェロクロム」の形で消費されていますが、 純粋な「クロム」にも需要がない訳ではありません。
 そうした「クロム」は、製錬所で作られます。
 具体的には「フェロクロム」を濃硫酸の中で溶かして「鉄分」を除去。
 残された「酸化クロム」を再び電気炉で還元して、「クロム」だけを取り出すそうです。

 「フェロクロム」から純粋な「クロム」を製錬するためのコストは、 「フェロクロム」1トン当たり1,800crです。
 純度99.99%以上の「クロム地金」を得るためには、 「フェロクロム」4.0トン(1,600cr相当)と製錬費用の7,200crが必要になりました。
 「クロム地金」の取引価格は1トン当たり10,000crですので、 製錬所の利益は1トン当たり1,200crです。




(2)マンガンの採掘

 マンガン(Mn)は、地殻中の存在率が950ppmと極めて高い鉱物です。
 人口10億人当たりの消費量は年間121万トン。世界の金属消費量の中で0.797%を占めており、その順位は、 クロム亜鉛に次いで、7番目でした。

 マンガンの消費量がこれほど大きいのは、製鉄に不可欠な鉱物だからです。
 実際、消費量の95%は製鉄の過程で消費されていました。
 マンガンを添加した鉄鋼は焼き入れ特性が良くなるため、その強度と硬度が増します。
 また、高温になっても強度を保つという特徴がありますから、機械部品には必須の添加物だと言えるのです。

 製鉄以外の用途に回されるマンガンは、前述した消費量の5%程度。
 乾電池、フェライト(磁性材料)、顔料、陶磁器釉薬などに用いられる訳ですが、逆に考えると、 製鉄所が存在しない世界(人口レベル3〜6以下)であれば、消費量は激減するでしょう。
 人口100万人当たりの消費量は年間60トンまで減ってしまいますから、取引はほとんどありません。
 もっとも、製鉄所の存在しない非工業世界が、 原材料としてのマンガンを必要とすることもないでしょう。
 乾電池もフェライトも顔料も、すでに出来上がったものを星系外から輸入する筈です。



 マンガン資源として採掘されている鉱物は、酸化マンガン鉱炭酸マンガン鉱珪酸マンガン鉱が主体です。
 酸化マンガン鉱は、高品位で最も多く使用されていました。
 炭酸マンガン鉱珪酸マンガン鉱は一般に中・低品位の鉱石であり、 消費量はあまり多くありません。
 深海底にはマンガン、鉄などの金属水酸化物の塊であるマンガン団塊(マンガンノジュール)が存在する という話もありますが、これらについては埋蔵量や採掘コストが未知ですので、ここでは取り上げないことにします。

 これらマンガン資源として採掘されている鉱物を総称して、 「マンガン鉱石」と呼ぶことにしました。
 「マンガン鉱石」の採掘について、考えてみます。



 マンガンを採掘するための手順も、の場合とほぼ同様です。

 「マンガン鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(マンガン鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 マンガン鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なマンガン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表4 マンガン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。



 探索に成功した場合は、そのマンガン鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「マンガン鉱石」の品位としては、便宜上1.0%を用います。
 実際はもっと高い品位なのですが、マンガン鉱床は薄い帯状に広がっていることが多く、 高品位の「マンガン鉱石」だけを採掘することができません。
 坑道を広げるための捨石(品位0.0%)を含めた平均の品位が、1.0%であると考えてください。

 「マンガン鉱石」の品位として1.0%の数値を用いることにしましたが、 「銅鉱石」と同じように、こうした低品位の鉱石が売買されることは有り得ません。
 売買するためには、選鉱によって、その品位を高めなければいけないのです。

 選鉱の後、品位が40%になった「マンガン鉱石」を 「マンガン精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位1%の「マンガン鉱石」40トンから、 品位40%の「マンガン精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


         表5 マンガン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig05.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「マンガン鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「マンガン精鉱」として売却されます。
 その価格は1排水素トン当たり200cr。

 面白いことに、これらの「マンガン精鉱」の多くは、製錬されることがありません。
 品位40%の「マンガン精鉱」として、 「鉄鉱石コークス」と一緒に溶鉱炉に放り込まれ、鉄鋼に加工されるのです。
 高純度の「マンガン地金」は、鉄合金の成分を調整する最後の段階でしか使用されません。

 鉄鋼分野以外のマンガン需要でも、純粋な「マンガン」はあまり用いられません。
 乾電池、フェライト(磁性材料)、顔料なども酸化物「二酸化マンガン」を使いますから、 品位を80%前後まで上げる必要があるものの、必ずしも製錬は必要ないのです。



 参考までに、「マンガン精鉱」を製錬するためのコストは、 「マンガン精鉱」1トン当たり300crです。
 純度99.99%以上の「マンガン地金」を得るためには、 「マンガン精鉱」2.5トン(500cr)と製錬費用の750crが必要になりました。
 「マンガン地金」の取引価格は1トン当たり1,500crですので、 製錬所の利益は1トン当たり250crということです。
 需要がどれだけあるのかは、データがないので分かりませんが。




(3)ニッケルの採掘

 ニッケル(Ni)は、人口10億人当たりの消費量が年間20万8千トン。
 世界の金属消費量の中で0.137%を占め、順位は9番目でした。
 地殻中の存在率は80ppmで、鉄に比べて500分の1しかありません。 宇宙全体で存在率を求めれば鉄に比べて20分の1と比較的多い元素なのですが、 その大半は惑星の核に集中してしまっているため、簡単に手が届く場所(地殻中)には見つかり難いのです。

 ニッケルは、様々な合金の材料として用いられます。
 ステンレスの材料として添加されるものが大半ですが、錆び止めのためのニッケルめっき、フェライト(磁性材料)、 電池(一次電池と二次電池)、形状記憶合金などにも使われています。



 ニッケルを取り出すために採掘される鉱石を、 ここでは「ニッケル鉱石」と呼ぶことにしました。
 この鉱石は、元々ニッケルを多く含んだ岩石が日光や風雨によって風化し、 ニッケルの品位が2%前後まで高まったものを指します。

 本来、地殻中の存在率が80ppmしかなかったものが20,000ppm(=2.0%)まで濃縮されなければならない訳ですから、濃縮率は250倍。
 ニッケル鉱床がなかなか見つからないという話にも納得できますね。
 ちなみに、「ニッケル鉱石」は、ニッケルの豊富な岩石が風化することで生じる鉱石です。 風化作用が不可欠なのでアルミニウム(ボーキサイト)と同様、 「ニッケル鉱石」は、内圏か可住圏に存在する、大気レベル4以上の世界でしか見つかりません。



 それはともかく、ニッケルを採掘するための手順も、の場合とほぼ同様です。
 ニッケル鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なニッケル鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表6 ニッケル鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 上記の埋蔵量は、「ニッケル鉱石」の埋蔵量であって、 「ニッケル」そのものの埋蔵量ではありません。御注意下さい。

 「ニッケル鉱石」の品位は、2.0%としておきます。
 品位1.5%程度の低品位「ニッケル鉱石」を採掘しても、通常の方法では利益を出せません。 採算を合わせるための最低レベルが、品位2.0%なのです。



 探索に成功した場合は、そのニッケル鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 ニッケル鉱床は、その生成メカニズムが示している通り、地表に存在します。
 ですから、安価な露天掘りを選択できる訳です。

 実際の採掘作業は、その鉱床に存在する土壌を10〜20メートルの深さまで、根こそぎ掘り出すことになります。
 それ以上の深さは「ニッケル」が濃縮されていないので掘り出しても意味がありませんし、 同じ理由で風化していない岩石、塊のままの岩石には手を付けません。
 この採掘方法ですと、1億トンの「ニッケル鉱石」を採掘した後には、 12km四方(14,400ha)の荒れ地が残ることになるでしょう。
 耕作地や熱帯雨林には致命的な環境破壊ですね。


         表7 ニッケル鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 今回も、週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。



 採掘された「ニッケル鉱石」は、品位2.0%の場合、トン当たり30crで取引されます。
 品位1.5%のものはトン当たり15crだそうですが、あまり喜ばれません。



 ここから先は、製錬所の話です。

 「ニッケル鉱石」から純粋な「ニッケル」を取り出す際は、 大量の硫酸と石灰石を利用するため、製錬コストが鉱石1トン当たり200crが掛かります。
 「ニッケル鉱石」の品位が2.0%ですから、 高純度の「ニッケル地金」1トンを得るためには、 「ニッケル鉱石」50トンと洗練コスト10,000cr(=200cr×50トン)が必要になる訳です。
 原料となる「ニッケル鉱石」はトン当たり30crなので、50トン分は1,500cr。
 「ニッケル地金」の取引価格はトン当たり15,000crですから、製錬所の取り分は3,500crになるでしょう。
 「ニッケル鉱石」の価格が10%、製錬コストが67%ということです。

 低品位の「ニッケル鉱石」が歓迎されない理由は、この製錬コストの高さにありました。
 「ニッケル地金」1トンを得るために、 品位1.5%の「ニッケル鉱石」70トンが必要だとするならば、製錬コストの合計は14,000cr。
 「ニッケル地金」の取引価格はトン当たり15,000crですから、確実に赤字です。
 「ニッケル鉱石」を無料で受け取っても、ほとんど儲けがありません。

 低品位(1.5%)の「ニッケル鉱石」を用いても、製錬所が同レベルの利益(トン当たり3,450cr)を得るためには、 「ニッケル地金」の取引価格が18,500cr以上にならなければなりません。
 資源の枯渇や需要の急増など、様々な事情で「ニッケル地金」の取引価格が高騰した時、 その時点で初めて、低品位「ニッケル鉱石」の採掘が始まることとなるのです。




(4)ニッケル鉱石の恒星間取引

 この項は、トラベラーらしい投機貿易品の紹介です。

 前項で述べた通り、「ニッケル鉱石」は高品位のものでも品位が2.0%しかありません。
 そして製錬コストが高いため、得られる「ニッケル地金」の取引価格は トン当たり15,000crと、必然的に高価なものになってしまいます。
 「ニッケル」をもっと安く手に入れる方法はないものでしょうか?

 ここで、視線を地下ではなく、頭上に向けてみましょう。
 我らがソル星系には、アステロイド・ベルトというものが存在します。
 そこには大小様々なアステロイド(微小惑星)が軌道を巡っておりますが、 それらアステロイドの1割は、鉄/ニッケル質のアステロイドであるとのこと。

 つまり、高純度の鉄とニッケルから成る塊が、アステロイド・ベルトには無数に存在するのです。
 鉄鉱石と同じように、運賃50cr以内でアステロイド・ベルトから鉱石を運んでくるとしたら?



 幾つかのデータから、鉄/ニッケル質アステロイドの成分は、 「鉄(Fe)」が50%以上で、「ニッケル(Ni)」が10%前後だと考えました。
 ものによっては「」80%以上、「ニッケル」15%という数字も有り得るようですが、 この数字が一般的なものなのか特殊な事例なのか、判断できる要素がありません。
 安全を取って、低めの数字を取ることにした訳です。

 こうした鉄/ニッケル質アステロイドは、通常「鉄鉱石」だと見なされます。
 鉱石中の成分で最も多いものは「」ですし、その品位が50%以上なのですから、それ以外の呼び方が有り得ません。
 通常ならば、その通りなのですが、「ニッケル」10%という数字は、 極めて高品位の「ニッケル鉱石」でもあることを意味してしまいました。

 品位10%の「ニッケル鉱石」を用いて製錬する場合、 「ニッケル地金」1トンを得るために必要な「ニッケル鉱石」は10トンです。
 製錬に必要なコストはトン当たり200crなので、その10倍は2,000cr。
ニッケル鉱石」は無料でアステロイド・ベルトから入手できますが、 アステロイド・ベルトから10トンを運んでくる運賃が500cr(=50cr×10トン)。
 「ニッケル地金」1トンを得るために、合計2,500crしか掛かりませんでした。
 「ニッケル」の相場が大混乱です(苦笑)。

 価格安定のため、こうした問題には何らかの対策(特別課税?)が為されていると考えておきましょう。
 面倒なことはあまり考えたくありませんので。



 ところで、皆様は気付かれましたでしょうか?
 「ニッケル地金」の取引価格はトン当たり15,000crで、製錬所の費やすコストが2,500cr。
 その差額は12,500crです。
 これだけの利益が期待できるのであれば、この鉄/ニッケル質アステロイド (=「超高品位のニッケル鉱石」を、恒星間で売買することも可能なのではないでしょうか?

 鉄/ニッケル質アステロイドの「ニッケル品位」による、 「ニッケル」製錬所が得る利益を以下に示しました。


         表8 アステロイドのニッケル品位と製錬所の利益

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 表の左端が「ニッケル」の品位です。
 通常の「ニッケル鉱石」、世界の地表で得られる「ニッケル鉱石」の品位が2.0%に対し、 鉄/ニッケル質アステロイドは「ニッケル」の品位を最低でも10.0%を期待できました。
 また、高温で溶融した鉄とニッケルは、数百万年を掛けて冷える内に、 「ニッケル」の多い部分少ない部分に分離するとのこと。
 ですから、鉄/ニッケル質アステロイドの中には、 「ニッケル」が12.5%、16.7%、20.0%といったものが(それを見つける可能性が稀だとしても)存在するのです。
 10.0%よりも高い品位は、そうした背景から設定しました。
 実際、「ニッケル」の品位が15%以上という代物も見つかっています。

 その次は、「ニッケル地金」1トンを得るために必要な 「ニッケル鉱石」の量(トン数)と製錬コスト(cr)です。
 製錬コストは「ニッケル鉱石」の必要量に比例しているため、 「ニッケル」の品位が高くなる程、小さくなりました。

 恒星間の輸送費も同様です。
 貨物運賃は1トン当たり1,000crで、当然ながら、輸送する「ニッケル鉱石」の量に比例しました。



 表の右端が、製錬所の利益。
 「ニッケル地金」の取引価格トン当たり15,000crから、製錬コストと輸送費を差し引いた残りです。

 「ニッケル」の品位が2.0%の場合は、輸送費が50,000crという高額になってしまうため、 製錬所は−45,000crの大赤字でした。

 「ニッケル」の品位が10.0%、鉄/ニッケル質アステロイドとしては標準的な品位の場合、 製錬コストが2,000cr、輸送費が10,000crで済むようになります。
 差額である製錬所の利益は3,000cr
 この品位ですと、同じ星系内の惑星上から「ニッケル鉱石(品位2.0%)」を調達した方が、製錬所としては儲かります。

 品位が12.5%の場合、製錬コストは1,600cr、輸送費が8,000crに下がりました。
 製錬所の利益は5,400cr
 惑星上から「ニッケル鉱石(品位2.0%)」を調達するより、確実に儲かるでしょう。

 品位が16.7%になると、製錬コストは1,200cr、輸送費は6,000crです。
 製錬所の利益は7,800cr
 ジャンプ1回ならば大儲け。ジャンプ2回の道程を運んでも、ぎりぎり黒字にできました。

 品位20.0%の超高品位アステロイドの場合、製錬コストは1,000cr、輸送費は5,000crです。
 製錬所の利益は9,000cr
 ジャンプ2回分の距離を運んできても、まだ4,000crの利益が出ました。



 以上の結果より、標準より「ニッケル」品位が高い鉄/ニッケル質アステロイドならば、 「ニッケル鉱石」として恒星間を運ばれる価値が発生する、ということが分かりました。
 自由貿易商人は、 ベルターが採掘した「ニッケル」の豊富な鉄/ニッケル質アステロイドを買い取り、 それを「鉄鉱石」として運び、手頃な世界の「ニッケル」製錬所へ売り払うのでしょう。

 「レフリーズ・マニュアル、p.51」の表10a.天然資源11〜13の欄に掲載されている 「鉄鉱石」とは、こうした「ニッケル鉱石」のことかも知れません。
 その中に含まれている「ニッケル」の製錬が目的であるとしても、主成分が「」である以上、 その鉄/ニッケル質アステロイドは「鉄鉱石」として扱われるのです。




(5)モリブデンの採掘

 モリブデン(Mo)は、人口10億人当たりの消費量が年間21,500トン。
 「ニッケル」と比べると消費量は一桁少なくなっており、金属消費量の順位は14番目。
 地殻中の存在率は1.5ppmで、鉄に比べて27,000分の1、宇宙全体での存在率も鉄の5,300分の1でした。 モリブデンは、文字通りのレアメタルなのです。

 モリブデンは、ステンレスや特殊鋼への添加材料として用いられます。
 その他、触媒などの産業機器、液晶パネルや放熱板などの電子機器にも利用されているとのこと。
 私がもっとも慣れ親しんでいる使い方は、潤滑剤でした。 大きな荷重が掛かる摺動面やベアリングに、黒い油状の硫化モリブデンを塗りたくった覚えがあります。



 モリブデンを取り出すために採掘される鉱石は主に「輝水鉛鉱:molybdenite」ですが、 ここでは「モリブデン鉱石」と呼ぶことにしましょう。
 鉱床の品位は1.2%にしておきます。

 地殻中の存在率が1.5ppmしかないモリブデンですが、 熱水鉱床で析出される(濃縮される)といった有り難い性質を持っていました。
 ですから、8,000倍の濃縮率も比較的簡単に達成できる訳です。
 この濃縮メカニズムから考えて、「モリブデン鉱石」は火山活動の存在しないアステロイドでは採掘できません。 水の少ない内圏や真空世界でも採掘が難しいでしょう。
 「モリブデン鉱石」を採掘できる世界は基本的に、可住圏に存在する、規模5以上の中型/大型世界で、 大気レベルが4以上の世界である、という制限を課しておきます。



 モリブデン鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なモリブデン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が2MCrの場合はDM+1、0.2MCrの場合はDM+2、
   0.02MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表9 モリブデン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 上記の埋蔵量は、「モリブデン鉱石」の埋蔵量です。

 モリブデン鉱床は比較的、規模の小さなものが多いため、探索費用を標準の5分の1として設定しました。
 その代り、「モリブデン鉱石」の埋蔵量は100分の1ですが、取引価格の高さがカバーしてくれるでしょう。



 探索に成功した場合は、そのモリブデン鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「モリブデン鉱石」の採掘場所は山岳地帯など地形の険しい場所が多く、鉱床も深い場所にあることが一般的です。
 それに加えて、品位1.2%程度の「鉱石」を選鉱して品位を上げ、 品位60%の「モリブデン精鉱」に加工しなければ売ることもできません。
 そのための設備を含めた採掘コストは、以下のようになります。


         表10 モリブデン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 今回も、週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。



 採掘された「モリブデン鉱石」は、品位60%の「モリブデン精鉱」に加工されます。
 品位が50倍に上がりますから、「モリブデン精鉱」1トンを得るためには、 「モリブデン鉱石」50トンが必要でした。
 その際に発生する「捨石」場合、「モリブデン精鉱」1トン当たり49トン。
 採掘量の少ない鉱山は、年間を通じて数トンの「モリブデン精鉱」しか生産していない、ということも有り得ます。 例えば、年間処理能力が250トンの採掘設備は、年間で「モリブデン精鉱」を5トンしか生産できないのです。
 品位の上がった「モリブデン精鉱」は、1トン当たり5,000crで製錬所に売却できます。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「モリブデン精鉱」の比重4.7より、 1排水素トン=40重量トン、価格は200,000crになるでしょう。



 再び、製錬所の話です。

 「モリブデン精鉱」を製錬するコストは、「モリブデン精鉱」1トン当たり100crでした。
 「モリブデン精鉱」の品位は60%ですから、「モリブデン地金」1トンを得るためには、 「モリブデン精鉱」1.67トン(8,333cr)と、製錬コスト167crが掛かります。
 「モリブデン地金」は1トン当たり10,000crで取引されていますから、 製錬所の利益は「モリブデン地金」1トン当たり1,500crというところでしょうか。




(6)バナジウムの採掘

 バナジウム(V)は、人口10億人当たりの消費量が年間7,170トン。
 「モリブデン」と比べて消費量は更に一桁少なくなっており、金属消費量の順位は17番目。
 地殻中の存在率は150ppmで、鉄に比べて270分の1。かなり高い存在率を示していました。 しかしバナジウム単独で鉱床を作ることは少なく、 その入手性の低さからレアメタルに分類されている訳なのです。

 バナジウムは、鋼や合金に添加されるとその(引っ張り)強度や耐熱性を高める性質があり、 建築構造材、橋梁、工具、航空機、ロケット向けに使用されています。消費量は全体の98%。
 また、触媒として石油の脱硫、アルコールの酸化、硫酸製造、プロピレン樹脂合成等にも利用されています。
 最近では、人体内で血糖値を下げる性質が注目されているとのこと。これらの用途による消費は、全体の2%しかありませんが。

 困った話ですが、バナジウムだけを含んだ鉱石はほとんど見つかりません。
 マンガン(Mn)を取り出すための「酸化マンガン鉱」や、 モリブデン(Mo)を取り出すための「輝水鉛鉱」のような鉱石が存在しないのです。
 全く存在しない訳ではなく、経済的に採掘と精錬を行えるレベルでは存在しないという意味ですが。
 では、どうやってバナジウムを生産しているのか。
 その問題を考察していきます。



 前述の通り、バナジウムが単独で鉱床を作ることは滅多にありません。
 その代り、一部の生物はバナジウムを濃縮するといった特徴を持っており、 そういった生物の死骸である石油や石炭、一部の鉄鉱石からならば、バナジウムを取り出すことが可能なのです。
 そのため、古代テラにおいてバナジウムの多くは、 製鉄の副産物として生産されてきました。
 鉄鉱石や石炭に含まれたバナジウムが製鉄の過程で濃縮され、取り出されるのです。
 具体的に取り出されるバナジウムの量は、 生産される鉄1千トンに対しバナジウム1トン(1,000分の1)であるとしました。

 もちろん、バナジウムを取り出すためには、 製鉄に使われる鉄鉱石や石炭バナジウムが含まれていなければなりません。
 そうした鉄鉱石と石炭は存在が珍しいようで、 何処で掘った鉄鉱石と石炭でもバナジウムが含まれている訳ではないのです。
 ですから、バナジウムが得られる鉄鉱石と石炭は、 36分の1の確率でしか見つからないことにしました。
 2D6を振って12が出た時だけしか、バナジウムが得られないということです。

 鉄以外の主要金属亜鉛からもバナジウムを取り出すことは可能でした。
 その場合は2D6を振って10+、6分の1の確率でバナジウムが得られます。
 取り出されるバナジウムの量は同じ比率で、 生産される主要金属1千トンに対しバナジウム1トン(1,000分の1)、としました。



 取り出される(抽出される)バナジウムの流通形態と品位、価格、量は、以下の通りです。


             表28 バナジウムの抽出と製錬

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 表の左端は、主要金属の量(トン)です。
 バナジウムの他、亜鉛の製錬副産物としても得られるため、こういった形になりました。
 その量は1,000トンで一律です。



 流通形態は、 「フェロバナジウム」と「五酸化バナジウム」、 「バナジウム地金」の3種類。

 バナジウムの多く(70%)は、との化合物である フェロバナジウム(FeV)として流通しています。 その品位は70%に相当しており、価格はトン当たり5,000cr。

 残り25%は、五酸化バナジウム(VO5として流通します。
 こちらの品位は56%相当で、取引価格はトン当たり4,000crでした。

 地金として流通しているバナジウムは、全体のわずか5%のみでした。
 バナジウム地金の価格は、1トン当たり10,000crです。



 その右側が品位(%)価格(Cr)

 表の右端が生産量ですが、その品位に合わせて変動しています。
 バナジウムの純分で比べれば、1トンであることに変わりはありません。

 バナジウムを取り出すコスト(抽出コスト)は、価格の半分を設定しました。
 「フェロバナジウム」の抽出コストは、1トン当たり2,500cr、
 「五酸化バナジウム」の抽出コストは、1トン当たり2,000cr、
 「バナジウム地金」の抽出コストは、1トン当たり5,000crとなります。
 それらのコストを引いた残りが、鉱山や精錬所の利益となるのです。



 バナジウムを取り出す元となる石油と、 主要金属について、その生産量と比率を纏めました。


            表29 バナジウムの生産量と比率

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 表の左端は、バナジウムを取り出す元となる金属名です。
 一番上は石油なので、金属ではありません。
 一番下はバナジウム、あるいは、小計となりました。

 その右側は、人口10億人当たりの主要金属年間生産量(トン)
 一番上の石油ですが、人口10億人当たりの年間生産量(トン)であることは同じです。

 その右側は、人口10億人当たりの年間生産量に対応した バナジウム生産量(トン)
 その右側の比率(%)は、 バナジウムの必要量7,170トンに対して、どれだけ供給できるかを示した数字です。
 御覧の通り、バナジウムの供給は、 石油がその大半、5,283トンを担っており、その比率は73.7%でした。
 次点がで、3,936トンの54.9%。
 亜鉛の3つは、 6分の1という高い確率で存在するものの、絶対的な生産量が少ないため、すべてを合わせても792トン、11.0%しかありません。
 バナジウムの供給は主に 石油の2つに依存しているようです。
 ですが、すべてを合わせると10,011トン、139.6%になりますので、余剰分の2,841トン、39.6%を輸出へ回すことができるでしょう。



 当たり前の話ですが、真空世界や小惑星帯、内圏、外圏を巡る世界には、 バナジウムを濃縮してくれる生物が存在しません。
 自動的に、これらの世界で採掘した鉄鉱石亜鉛には、 バナジウムが含まれていないこととなります。
 57世紀のトラベラー世界であっても、バナジウムが入手困難なレアメタルであることに変わりありません。




(7)タングステンの採掘

 タングステン(W)は、金属消費量の順位が18番目で、人口10億人当たりの消費量が年間6,230トンです。
 地殻中の存在率は1ppmですから、モリブデンと同レベルで 珍しいレアメタルになっていました。

 タングステンは、耐食性、熱伝導性及び電気伝導性に優れ、膨張率が低く、 高温下(温度1,650℃以上)では金属中最高の引張り強度を発揮します。
 また、その合金並びに炭化物は優れた切削性と耐摩耗性を有しており、 これらの性質から高速度鋼等の特殊鋼や超硬合金、照明用のフィラメント等に使用されていました。
 代替のできない必要不可欠な材料として、高硬度、耐摩耗性、耐熱性を発揮させるために添加されているのです。



 タングステンを取り出すために採掘される鉱石は「鉄マンガン重石:wolframite」です。
 現在は「鉄重石」か「マンガン重石」と改名されましたが、 未だ「鉄マンガン重石」と記述した書物が多いようでした。
 例によって、ここでは「タングステン鉱石」と呼ぶことにしましょう。
 鉱床の品位は1.0%です。

 タングステンも熱水鉱床で析出される(濃縮される)といった有り難い性質を持っていました。
 そのため、「タングステン鉱石」は火山活動の存在しないアステロイドでは採掘できません。 水の少ない内圏や真空世界でも採掘が難しいでしょう。
 「タングステン鉱石」を採掘できる世界も、可住圏に存在する、規模5以上の中型/大型世界で、 大気レベルが4以上の世界である、という制限を課しておきます。



 タングステン鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なタングステン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が2MCrの場合はDM+1、0.2MCrの場合はDM+2、
   0.02MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表11 タングステン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

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 上記の埋蔵量は、「タングステン鉱石」の埋蔵量です。
 「モリブデン鉱石」と同じように、探索費用は標準の5分の1、埋蔵量は100分の1にしました。



 探索に成功した場合は、そのタングステン鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「タングステン鉱石」の採掘場所は山岳地帯など地形の険しい場所が多く、鉱床も深い場所にあることが一般的です。
 それに加えて、品位1.0%の「鉱石」を選鉱して品位を上げ、 品位50%の「タングステン精鉱」に加工しなければ売ることもできません。
 そのための設備を含めた採掘コストは、以下のようになります。


         表12 タングステン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

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 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。
 今回も、週5日×8時間(年間250日)の稼働を想定しました。



 採掘された「タングステン鉱石」は、品位10%の「タングステン精鉱」に加工されます。
 品位が10倍に上がりますから、「タングステン精鉱」1トンを得るためには、 「タングステン鉱石」10トンが必要でした。
 その際に発生する「捨石」は、「タングステン精鉱」1トン当たり9トン。
 品位の上がった「タングステン精鉱」は、1トン当たり1,000crで製錬所に売却できます。

 重量トン排水素トンを区別する場合、 「タングステン精鉱」の比重7.5より、 1排水素トン=60重量トン、価格は60,000crになるでしょう。



 製錬所の話です。

 「タングステン」は融点が高く、酸化しやすいため、通常の方法では製錬できません。
 そのため、中間生成物「酸化タングステン:WO3」を作り、 そこから「タングステン地金」を作り出します。

 「酸化タングステン」を作るためには、 まず「タングステン精鉱」をソーダ灰と一緒に1,000℃まで加熱して、 「Na2SO4」に変えます。
 それを塩酸で処理して、今度は「H2SO4」に、 更に400℃まで加熱して、ようやく粉末状の「酸化タングステン」が得られるのです。
 この「酸化タングステン」を水素で還元すれば、「タングステン」の粉末が得られ、 それを真空中で溶融すると、高純度の「タングステン地金」になりました。

 「タングステン精鉱」から「酸化タングステン」を取り出すコストは、 「タングステン精鉱」1トン当たり10,000crです。
 「タングステン精鉱」10トン(10,000cr相当)からは、 「酸化タングステン」1.4トンを取り出すことができますが、その製錬コストは100,000cr。
 「酸化タングステン」1.4トンを還元して、 「タングステン地金」1.0トンを作るためには、更に25,000crのコストが掛かります。
 製錬所の費やすコストは135,000crですが、「タングステン地金」の取引価格はトン当たり150,000crですので、 製錬所の得る利益は1トン当たり15,000crになりました。




(8)コバルトの採掘

 コバルト(Co)は、人口10億人当たりの消費量が年間5,550トン。
 金属消費量の順位は20番目。
 地殻中の存在率は20ppmで、ニッケルと比べて見つけ難さが4倍になっていました。
 この金属も単独で鉱床を作ることは滅多に有りません。 必ずニッケル採掘の副産物として採掘されています。
 単独での採掘が不可能な訳ではありませんが単独採掘では採算が合わないため、他の金属採掘の副産物としてのみ、採掘されているということです。

 主な用途は、電池(一次電池と二次電池)。
 電極にリチウム(Li)コバルトの合金が使用されており、 その消費量は全体の50%(2000年)〜70%(2010年)を占めていました。
 その他の用途は、特殊鋼への添加材、超硬工具、磁性材料などで、磁性記憶媒体やスピーカーなどの高性能化には欠かせません。
 触媒としての用途も有るのですが、そのあたりは勉強不足なので割愛します。



 前述の通り、コバルトが単独で採掘されることはありません。
 必ず、ニッケル採掘の副産物として採掘されています。
 レフリーが認めるのであればニッケル鉱山において、 ニッケル採掘量の5%(=20分の1)をコバルトに置き換えてください。
ニッケル鉱石」は、内圏か可住圏に存在する、大気レベル4以上の世界でしか見つからないことに注意。

 ただしアステロイド・ベルトにおいて、 鉄/ニッケル質のアステロイドを採掘する場合は、例外です。
 鉄/ニッケル質のアステロイドに含まれるニッケルの5%(=20分の1)を コバルトに置き換えても構いません。

 鉱山におけるコバルトの採掘量は、資料が見つからなかったので未定。

 コバルト地金の取引価格は、1トン当たり30,000crでした。
 重量トン排水素トンを区別する場合、 「コバルト地金」の比重8.9より、 1排水素トン=100重量トンとして、価格は3,000,000crになります。
 とても高価な投機貿易品ですが、人口10億人の工業世界であっても コバルトの需要が5,550トンしかないことに注意して下さい。




(9)流通形態と流通量

 以上、「クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、バナジウム、タングステン、コバルト」から成る 「主要なレアメタル」7種の採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。


         表13 主要なレアメタルの流通形態と流通量、価格

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 左端は金属名。次が流通形態で、鉱石精鉱化合物などの中間加工品と、最終的な地金などになります。
 流通量は10億人当たりの流通量で、重複しているものもあります。
 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。



 主要なレアメタルであっても、鉱石は基本的に安価です。

 「クロム精鉱」は、品位25%でトン当たり100cr。
 「フェロクロム」に加工して、トン当たり価格が400crに上昇。
 「クロム地金」の価格は1トン当たり10,000crですが、その流通量は20分の1(5%)。

 「マンガン精鉱」は、品位40%でトン当たり200cr。
 「マンガン地金」の価格はトン当たり1,500crですが、まず流通していません。

 「ニッケル鉱石」は、品位2.0%の場合でトン当たり30crですが、 アステロイド・ベルトから鉄/ニッケル質アステロイドを入手するのであれば、 製錬所との距離(輸送コスト)に応じて、値段が変わってきます。
 「ニッケル地金」の価格はトン当たり15,000crで、 「ニッケル」の多くが「地金」の形で流通していました。
 ですから、恒星間の投機貿易品として「ニッケル地金」は最適でしょう。

 「モリブデン精鉱」は、品位60%で1トン当たり5,000cr。
 「モリブデン地金」の価格は1トン当たり10,000cr。
 どちらも高価なので、恒星間の投機貿易品に成り得ます。

 「バナジウム」を得るための専用鉱石は採掘されていませんので、 「鉱石」の取引価格もなし。
 しかし「フェロバナジウム」がトン当たり5,000cr、 「五酸化バナジウム」がトン当たり4,000crで流通しています。
 「地金」として流通している「バナジウム」は、全体のわずか5%のみでした。
 「バナジウム地金」の価格は、1トン当たり10,000crです。
 価格から判断すると、恒星間の投機貿易品としては十分な価格でした。

 「タングステン精鉱」は、品位10%で1トン当たり1,000cr。
 「タングステン地金」の価格は、1トン当たり150,000cr。
 恒星間で取引される「タングステン」は、主に「地金」の形を取るでしょう。

 「コバルト」を得るための専用鉱石も採掘されていませんから、取引価格はなし。
 「コバルト地金」の取引価格は、1トン当たり30,000cr。
 これも専用鉱石が存在しませんので、恒星間で取引される「コバルト」は必ず「地金」です。
 「コバルト」も恒星間の投機貿易品としては十分な価格でした。



 「モリブデン精鉱」の5,000crと「タングステン精鉱」の1,000cr、 この2つだけは、鉱石のままでも恒星間の投機貿易品に使えそうですが、他の鉱石は安過ぎるので惑星間の貿易品にも成り得ません。
 特に「クロム精鉱」と「マンガン精鉱」は激安でした。
 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得ますが、惑星間や恒星間を輸送することは有り得ません。
 とある世界に製鉄所が存在するのであれば、その世界か衛星の何処かに、 必ず「クロム」と「マンガン」の鉱山が存在することになるでしょう。
 「クロム」と「マンガン」を安価に入手できなければ、 その世界での製鉄は行えないからです。

 「バナジウム」については、 中間加工品である「フェロバナジウム」や「五酸化バナジウム」が流通していると判明。
 トラベラー世界においても、この形態で恒星間取引が行われていることでしょう。

 「ニッケル」と「コバルト」は、 どちらも「地金」として流通している筈です。
 ただし、鉄/ニッケル質アステロイドが取引されている場合は例外。



 主要なレアメタルの鉱石も、 その多く(「モリブデン精鉱」と「タングステン精鉱」の2つ以外)は、 「レフリーズ・マニュアル、p.52」の投機貿易品リストの中に明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」には該当しません。

 バナジウムについては、 中間加工品である「フェロバナジウム」や「五酸化バナジウム」の2つを 鉱石として扱うのであれば、「鉄以外の金属鉱石」に含めることができるでしょう。
 この問題については、レフリーの判断にお任せします。





4.消費量の多いレアメタルの探索と採掘


 「消費量の多いレアメタル」というのは、 「主要なレアメタル」7種以外で、消費量の多い「レアメタル」のことです。
 独断で、消費量は6番から25番までの「レアメタル」6種を抜き出しました。
 具体的には、バリウム(Ba)ジルコニウム(Zr)ストロンチウム(Sr)アンチモン(Sb)ニオブ(Nb)リチウム(Li)になります。



 以下に、消費量の多いレアメタル6種の消費量を示しました。


        表14 世界の金属消費量(消費量の多いレアメタル)

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 今回もデータは、古代テラ(西暦2000〜2005年)のものを用いています。
 当時の人口(60〜65億)を分母として、人口1千人当たり、100万人当たり、10億人当たりの消費量を求めました。

 同じ説明を2度繰り返すのは面倒なので、簡単な説明は省略。
 それぞれの採掘について述べます。




(1)バリウムの採掘

 バリウム(Ba)は、地殻中の存在率が500ppmでした。
 人口10億人当たりの消費量は年間131万トン。消費順位は6番目になっています。

 最も多い用途は、意外なことにボーリング調査時の調泥剤(冷却剤)としてのものでした。
 この用途には、後述する重晶石(BaSO4を粉末にしたものが、そのまま使用されているようです。
 専門外であるため、詳細は不明。

 その他の用途は、塗料(表面処理剤)、磁石、ブレーキパッド、ガラスの添加材、レントゲンの造影剤など。
 炎色反応で緑の光を出すため、後述するストロンチウム(Sr)リチウム(Li)と共に、 花火や信号弾に使われることもあります。



 バリウム資源として採掘されている鉱物は、その多くが重晶石でした。
 重晶石の主成分は硫酸バリウム(BaSO4であり、 前述の通りバリウムの多くは硫酸バリウムとして利用されます。
 炭酸バリウム(BaCO3を主成分とする毒晶石も採掘されていますが、 その量は決して多くありません。

 これらバリウム資源として採掘されている鉱物を総称して、 「バリウム鉱石」と呼ぶことにします。
 「バリウム鉱石」の採掘について、考えてみました。

 主要なバリウム資源である重晶石の生成メカニズムより、 「バリウム鉱石」を採掘できる世界は基本的に、 火山活動が存在する、規模5以上の中型/大型世界である、という制限を課しておきます。
 大気レベルや水界度については拘りませんが、異種大気や非水海洋世界であれば比較的、 バリウム資源が見つかりやすいと考えられます。


 バリウムを採掘するための手順も、これまで述べてきたものと同様です。

 「バリウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(バリウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 バリウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なバリウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表15 バリウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig15.gif - 5.99KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。



 探索に成功した場合は、そのバリウム鉱床を開発し、採掘することができます。
 採掘のペースに合わせて、以下の採掘設備を購入して下さい。

 「バリウム鉱石」の品位としては、便宜上4.0%を用います。
 この品位は「鉱石」中に含まれる硫酸バリウム(BaSO4の比率で示されますが、 こういった「鉱石」としては比較的、品位が高い部類に含まれるでしょう。
 もちろん、この品位では売買できませんから、選鉱によって、その品位を高めなければなりません。

 選鉱の後、品位が80%になった「バリウム鉱石」を 「バリウム精鉱」と呼ぶことにします(正式な呼び方ではありません)。
 品位4%の「バリウム鉱石」20トンから、 品位80%の「バリウム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


         表16 バリウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig16.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「バリウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「バリウム精鉱」として売却されます。
 その価格は1排水素トン当たり100cr。

 ちょっと安過ぎます(笑)。
 恒星間で「バリウム精鉱」を取引する場合は、 排水素トン重量トンを区別して、 1排水素トン=40重量トンを用いなければならないかも知れません。
 その場合、1排水素トン=40重量トン当たりの価格は4,000crになり、貿易品らしい価格になるでしょう。



 「バリウム精鉱」の多く(75%)は、そのままの形で利用されています。
 これ以上の選鉱も製錬も行わず、単純に粉末化するだけでした。
 この程度の加工ならば、バリウム鉱山に粉砕設備を導入し、 採掘した鉱山で「ボーリング調査用の調泥剤」を製造することもできるでしょう。
 残念ながら調泥剤の価格は調べられませんでしたが、 製品に加工すればバリウム精鉱の価格は上昇し、恒星間運賃を賄えるようになるかも知れません。

 「バリウム精鉱」の一部(13%)は不純物を取り除かれ、 硫酸バリウムとして消費されています。
 「硫酸バリウム」1トンを得るためには、 品位80%の「バリウム精鉱」1.25トン(125cr相当)と精錬費用300crが必要で、 「硫酸バリウム」は、1トン当たり500crで取引されていました。
 製錬所の利益は「硫酸バリウム」1トン当たり75cr程度でしょう。

 残り(12%)の「バリウム精鉱」は炭酸バリウムなど、 様々な化合物の形で流通しています。 酸素や水分と反応しやすいため、純粋なバリウムとして売買することは危険なのです。




(2)ジルコニウムの採掘

 ジルコニウム(Zr)は、地殻中の存在率が190ppm。
 人口10億人当たりの消費量は年間15万トン。消費順位は10番目になっています。

 ジルコニウムは色々と使い勝手の良い金属です。
 耐熱性と耐食性が高いこと、金属の中でもっとも中性子を吸収しにくいことから、 20世紀テラでは原子力関連の施設で多用されていました。
 トラベラー世界では、核融合炉の重要部品に用いられているかも知れません。
 また、耐熱タイルや刃物、医療機器、各種触媒、センサーなどにも利用されています。



 ジルコニウム資源として採掘されている鉱物は、 その大半がジルコン(ZrSiO4です。 パデライト(ZrO2という鉱石も存在するのですが、 こちらは滅多に見つからず、生産量はわずかしかありません。

 これらジルコニウム資源として採掘されている鉱物を総称して、 「ジルコニウム鉱石」と呼ぶことにします。



 「ジルコニウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(ジルコニウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ジルコニウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なジルコニウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が10MCrの場合はDM+1、1MCrの場合はDM+2、
   0.1MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表17 ジルコニウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig17.gif - 5.96KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=50重量トンを用いて下さい。



 「ジルコニウム鉱石」の品位としては、便宜上2.0%を用います。
 選鉱によって、その品位は50%まで高められます。
 品位2%の「ジルコニウム鉱石」25トンから、 品位50%の「ジルコニウム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表18 ジルコニウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig18.gif - 6.03KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「ジルコニウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「ジルコニウム精鉱」として売却されます。
 その価格は1排水素トン当たり200cr。

 排水素トン重量トンを区別する場合は、 1排水素トン=50重量トンですので、価格は10,000crになるでしょう。



 耐火物(溶鉱炉や焼却炉用の煉瓦やタイル、陶器)に添加されるジルコニウムは、 鉱石(ジルコニウム精鉱)のまま添加されるため、鉱石の形で取引されます。
 その消費量は、全体の85%。
 「ジルコニウム精鉱」の大半(85%)も、鉱石のままで消費されていたのです。

 残り15%の「ジルコニウム精鉱」は、「二酸化ジルコニウム」に製錬されていました。
 「二酸化ジルコニウム」(品位70%)の価格は、1トン当たり3,000cr。
 「ジルコニウム精鉱」1.4トン(700cr相当)から作られますが、 その製錬費用は、「ジルコニウム精鉱」1.0トン当たり1,500cr(1.4トンで2,100cr)。
 製錬所の利益はトン当たり200crのみ。

 上記、「二酸化ジルコニウム」の極一部が還元処理を受け、 純粋な「ジルコニウム地金」として利用されます。
 「ジルコニウム地金」1トン(品位99.99%以上)を作るためには、 「二酸化ジルコニウム」1.4トン(4,200cr相当)と精錬費用15,000cr(1.4トンで21,000cr)が必要。
 どうやら、純粋なジルコニウムの需要が少ないため、製錬の設備投資が高く付いてしまうようです。
 純粋なジルコニウムの需要は、全体の1%前後しかありませんでした。
 「ジルコニウム地金」1トンの取引価格は30,000cr。
 製錬所の利益は1トン当たり4,800cr。

 「ジルコニウム地金」1トンに必要な「ジルコニウム精鉱」の量が 1.96トンになってしまいましたが、これは計算を簡略したための誤差です。実際に必要な量は2.00トンとして扱って下さい。




(3)ストロンチウムの採掘

 ストロンチウム(Sr)は、地殻中の存在率が370ppm。
 人口10億人当たりの消費量は年間86,700トン。消費順位が12番目の金属でした。

 かつての主用途はブラウン管でしたが、現在は液晶やプラズマ・ディスプレイに転用されています。 炎色反応が赤ですから、ブラウン管や液晶パネルで赤色光を出すために使用されてきました。
 その他の用途はフェライト磁石、コンデンサやトランジスタなどの電子機器、添加剤、塗料。



 ストロンチウム資源として採掘されている主要な鉱物は、 セレスタイトと呼ばれる、 硫酸ストロンチウム(SrSO4を豊富に含んだ鉱石です。
 ここでは「ストロンチウム鉱石」と呼ぶことにしましょう。



 「ストロンチウム鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(ストロンチウム鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ストロンチウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なストロンチウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、0.1MCrの場合はDM+2、
   0.01MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



       表19 ストロンチウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig19.gif - 5.83KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。



 「ストロンチウム鉱石」の品位としては、便宜上6%を用います。
 これを選鉱することによって、品位12%の「ストロンチウム精鉱」が出来上がります。
 品位6%の「ストロンチウム鉱石」2トンから、 品位12%の「ストロンチウム精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表20 ストロンチウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig20.gif - 5.66KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘された「ストロンチウム鉱石」は採掘と同時に選鉱され、 「ストロンチウム精鉱」として扱われるようになる訳ですが、 恒星間通商において「ストロンチウム精鉱」の売買は一般的ではありません。
 あまりにも価格が安過ぎるためです。
 その価格は1排水素トン当たり50crでした。

 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=40重量トンより、価格は2,000crになるでしょうが。



 流通するストロンチウム(Sr)の大半は、「ストロンチウム精鉱」ではなく、 「炭酸ストロンチウム(SrCO3」の形に加工されています。

 「炭酸ストロンチウム」の価格は、1トン当たりで500Crでした。
 「ストロンチウム精鉱」の10倍ですから、輸送コストの負担も小さくなります。
 「炭酸ストロンチウム」の品位は60%。
 製錬所で製錬を行う場合、「炭酸ストロンチウム」1トンを得るためには、 「ストロンチウム精鉱」5.0トン(250cr相当)と精錬コスト200cr(40cr×5.0トン)が必要です。
 製錬所の利益は、1トン当たり50crになるでしょう。

 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=40重量トンより、価格は20,000crになります。




(4)アンチモンの採掘

 アンチモン(Sb)は、地殻中の存在率が0.2ppm。
 存在率からすれば非常に珍しい金属の筈なのですが、利用可能な鉱物資源は簡単に見つかるようで、 人口10億人当たりの消費量は年間19,700トンもありました。消費順位は16番目です。

 主な用途は難燃助剤。
 繊維や紙、樹脂類を燃えにくくするため、塗布したり、添加して利用します。
 アンチモンの消費量の9割が難燃助剤でした。

 残り1割は二次電池の電極や特殊合金の添加材、塗料などに使われています。



 アンチモン資源として採掘されている主要な鉱物は輝安鉱であり、 硫化アンチモン(Sb2S3を豊富に含んでいます。
 ここでは「アンチモン鉱石」と呼ぶことにしました。



 「アンチモン鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(アンチモン鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 アンチモン鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なアンチモン鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が2MCrの場合はDM+1、0.2MCrの場合はDM+2、
   0.02MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



        表21 アンチモン鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig21.gif - 5.61KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。



 「アンチモン鉱石」の品位は、便宜上5.0%としておきます。
 これを選鉱することによって、品位20%の「アンチモン精鉱」となりますが、 要するに品位5.0%の「アンチモン鉱石」4トンから、 品位20%の「アンチモン精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


        表22 アンチモン鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig22.gif - 5.78KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 採掘と同時に選鉱された「アンチモン精鉱」は、 1排水素トン当たり400crの価格で取引されますが、やはり価格が安過ぎるため恒星間通商には向いておりません。
 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=40重量トンより、価格が16,000crになる訳ですが、 区別に関わらず、更なる製錬を行って価値を高める必要があります。



 製錬所において、「アンチモン精鉱」は 「三酸化アンチモン(Sb2O3」(品位84%)へ加工されます。
 「アンチモン精鉱」の硫化アンチモン品位が20%ですから、 「三酸化アンチモン」1トンのためには、 「アンチモン精鉱」4トン(1,600cr相当)が必要になりました。
 製錬コストは「アンチモン精鉱」1トン当たり600crが掛かり、4トンですから2,400cr。
 製錬された「三酸化アンチモン」の価格はトン当たり5,000crであり、 製錬所はトン当たり1,000crの利益を上げられるでしょう(少し大目の設定です)。
 消費量の9割は、この「三酸化アンチモン」の形で消費されていました。

 「三酸化アンチモン」の比重は5.2ですから、 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=50重量トンで、価格は250,000crになります。



 残り1割のアンチモンは、金属状の「アンチモン地金」として利用されます。
 製錬所では「三酸化アンチモン」1.2トン(6,000cr相当)から、 「アンチモン地金」1.0トンを得られますが、必要な製錬コストは3,000cr。
 「アンチモン地金」の価格はトン当たり10,000crですので、製錬所はトン当たり1,000crの利益を得られるでしょう。

 「アンチモン地金」の比重は6.7ですから、 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=70重量トンで、価格は700,000crになりました。




(5)ニオブの採掘

 ニオブ(Nb)は、地殻中の存在率が20ppm。コバルト並の存在率でした。
 かなり見つけにくい金属の筈ですが、人口10億人当たりの消費量は年間5,430トン。 やはりコバルト並の消費量です。消費順位は21番目。

 比較的、高温でも超電導体になることで有名なニオブです。
 当然、その主用途は電磁石でありリニアモーターやMRIに使われると思っていたのですが、実態は大きく異なりました。

 ニオブの主な用途は特殊鋼への添加物であり、消費量は全体の95%以上。
 圧倒的な分量が添加物として消費されていたのです。
 ニオブを添加することで、鋼の高温強度が上がり、耐摩耗性も良好になるとのこと。
 残り5%弱が超電導線や圧電素子、SAWフィルタなどの電子機器と、ガラス添加剤として消費されています。



 ニオブ資源として採掘されている鉱物は、 パイロクロアコロンバイト(コルンブ石)です。
 パイロクロアは、ニオブを主体として カリウム、ナトリウム、フッ素を含んだ酸化物です。 テラで消費されるニオブ資源の95%は、このパイロクロアから得られていました。
 一方、コロンバイト鉄、マンガン、チタンから成る化合物のようです。 こちらの採掘量が少ない理由は良く分かりませんが、採掘コストによるものでしょう。
 これらの鉱石を一括して、ここでは「ニオブ鉱石」と呼ぶことにします。



 「ニオブ鉱石」を採掘するためには、新たな鉱床(ニオブ鉱床)を見つけ出さなければなりません。
 ニオブ鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なニオブ鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が2MCrの場合はDM+1、0.2MCrの場合はDM+2、
   0.02MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表23 ニオブ鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig23.gif - 5.66KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=40重量トンを用いて下さい。



 「ニオブ鉱石」の品位としては、便宜上1.0%を用います。
 これを選鉱することで品位40%の「ニオブ精鉱」に変わりました。
 品位1.0%の「ニオブ鉱石」40トンから、 品位40%の「ニオブ精鉱」1トンが得られる訳です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘設備に選鉱のための設備を加えた金額です。


         表24 ニオブ鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig24.gif - 5.78KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 選鉱された「ニオブ精鉱」の価格は 1排水素トン当たり4,000crです。
 久しぶりに鉱石の形で恒星間取引が可能なものが現れました。
 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=40重量トンより、価格が160,000crです。

 実際のところ「ニオブ精鉱」の多くは、採掘された鉱山に付属する製錬所で還元処理を受け、 「フェロニオブ(FeNb)」の形に加工されます。
 その価格は1排水素トン当たり8,000cr。
 「フェロニオブ」の品位は63%ですから、「フェロニオブ」1トンを得るためには、 「ニオブ精鉱」1.5トン(6,000cr相当)と0.4トンが必要。
 製錬コストは鉄(酸化鉄)の購入費用も含めて、1,200crです。
 鉱山の製錬所が得られる利益は、「フェロニオブ」1トン当たり800crになりました。
 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=50重量トンより、価格が400,000crです。



 消費される「ニオブ」の95%は、「フェロニオブ」としてのものですが、 僅かながら、純粋な「ニオブ地金」の需要も存在します。
 その需要に応える為、「ニオブ地金」の作り方も紹介しておきましょう。

 「ニオブ精鉱」は、高度な設備を備えた製錬所で、 高純度の「ニオブ地金」に製錬されます。
 「ニオブ精鉱」の品位は40%ですから、 必要な「ニオブ精鉱」は2.5トン(10,000cr相当)。
 困ったことに製錬コストは高く付きます。 「ニオブ精鉱」1トン当たり10,000crが必要で、2.5トンですから25,000cr。
 製錬された「ニオブ地金」の価格はトン当たり40,000crですから、 製錬所はトン当たり5,000crの利益を上げられることになりますが、やはり需要がほとんどありません。
 人口10億人の工業世界であっても、「ニオブ地金」の需要は年間271トンしか存在しないのです。

 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=80重量トンより、価格が3,200,000crです。




(6)リチウムの採掘

 リチウム(Li)も地殻中の存在率が20ppmです。
 人口10億人当たりの消費量は年間2,330トン。消費順位は25番目でした。

 主な用途は、電池(リチウム電池)です。
 イオン化傾向が強くて、他のどんな金属よりも軽量なリチウムは電源として最適であるためでしょう。
 トラベラー世界においては、さらに強力なコンデンサーやズチェイ・クリスタルといった鉱物資源も存在しますが、 安全に用いることのできる軽量高出力な二次電池として、リチウム電池の需要が無くなることもありません。
 電池の消費量に比べれば僅かな量ですが、合金添加用として消費されることもあります。



 かつて、リチウム資源として採掘されていた鉱物は、リチア輝石など、 酸化リチウムを含んだ鉱物資源でした。
 近年は、より安価にリチウムを採取できる、 塩湖かん水からの採掘(抽出)が主流となっています。
 塩湖かん水は液体なのですが、ここでは「リチウム鉱石」と呼ぶことにしました。



 「リチウム鉱石」を採掘するためには、 豊富な塩湖かん水を貯えた塩湖を見つけ出さなければなりません。
 塩湖は、河川や降水による流入水量よりも、蒸発水量が多い場合に発生します。
 そのメカニズムを考えるのであれば、塩湖かん水を採掘できる世界は基本的に、 可住圏に位置する、大気レベル4以上、水界度3〜8の世界だと思われますので、そういった制限を課しておきましょう。
 内圏や外圏、真空世界などにおいて、塩湖かん水を貯えた塩湖を見つけることはできません。

 可住圏に存在し、大気と海洋を備えた世界において、塩湖を見つけることは簡単です。
 衛星軌道からの測量などによって、存在だけはすぐに確認ができるでしょう。
 しかし、その塩湖の何処に豊富な塩湖かん水が隠されているのか、それを見つけ出すためには詳細な調査が不可欠です。

 リチウム鉱床を見つけるためには、以下の行為判定を行って下さい。

 有望なリチウム鉱床を見つけ出すためには:
   難易度〈至難〉、〈試掘〉、教育度、1ヶ月。

 レフリー:
   〈試掘〉の技能レベルと教育度は、リーダーの値を用いて下さい。
   また、規模の小さな鉱床の探索(低予算の鉱床探索)には、DMが付きます。
   探索費用が1MCrの場合はDM+1、0.1MCrの場合はDM+2、
   0.01MCrの場合はDM+3を追加してください。
   これは、規模の小さな鉱床の「見つけ易さ」を表現しています。

   投資した金額の大きさによって、発見される鉱床の大きさが変わります。
   以下の表を参照してください。



         表25 リチウム鉱床の探索(試掘費用と成功率)

MRT02_Fig25.gif - 5.75KB

 埋蔵量の単位は排水素トン
 1排水素トン重量トンを区別される場合は、 1排水素トン=10重量トンを用いて下さい。



 「リチウム鉱石」とは前述の通り塩湖かん水という液体ですが、 ルール上、ここでは鉱石として扱っています。その品位は0.2%。
 塩湖かん水は液体ですので、塩湖の表面をボーリングしてポンプで汲み上げるだけで済みます。 採掘は容易でしょう。 そのあたりを考慮して、採掘コストを安く設定しておきました。

 鉱山では、汲み上げた「リチウム鉱石(塩湖かん水)」を蒸発池に溜め、 リチウム成分を濃縮させます。 これは選鉱の代わりであり、 30倍に濃縮された「リチウム精鉱」の品位は、6.0%となる訳です。
 この工程に約1年が掛かりますが、時間が掛かっても最も低コストな方法なのでしょう。
 某鉱山において、蒸発池1ヘクタール(100m四方)から蒸発する水分の量は年間3万トン。 仮に年間25万トンの「リチウム鉱石(塩湖かん水)」を処理するのであれば8ヘクタールの蒸発池が必要だということです。 建設費があまり掛かりませんが、結構、広い敷地面積が必要だということですね。

 「鉱石」の採掘から「精鉱」の出荷まで、 1年も掛かる鉱山は「リチウム」鉱山だけだと思われますが、これは止むを得ないことのようです。 最初の1年間、鉱山主は何の利益も得られないまま操業を続けなければなりませんが、我慢してください。。
 品位0.2%の「リチウム鉱石(塩湖かん水)」30トンから、 品位6%の「リチウム精鉱」1トンが得られます。
 「精鉱」と呼んでいますが、やはりこれも液体です。

 以下の表に示した購入価格と維持費は、採掘(汲み上げ)設備に、蒸発池等の設備を加えた金額です。


         表26 リチウム鉱床の採掘(設備投資と維持費)

MRT02_Fig26.gif - 5.81KB

 採掘設備は、その処理能力(採掘能力)の大きさによって区別されています。



 蒸発池濃縮された「リチウム精鉱」の価格は 1排水素トン当たり600crです。
 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=10重量トンより、価格が6,000crです。



 「リチウム精鉱」の8割以上は、 近隣の製錬所で「炭酸リチウム(Li2CO3」に加工されます。
 その際に必要な「リチウム精鉱」は3.3トン(2,000cr相当)で、製錬コスト500crです。
 「炭酸リチウム」(品位18.8%)の価格はトン当たり3,000crですから、 恒星間の投機貿易品として用いることもできるでしょう。
 製錬所の利益はトン当たり500crでした。
 小さな設備投資で大きな利益増加が期待できるため、「リチウム精鉱」のまま売買されることは有り得ません。
 ちなみに排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=20重量トンより、価格は60,000crです。



 「リチウム精鉱」の残り2割弱は、「水酸化リチウム(LiOH)」に加工されます。
 その際に必要な「リチウム精鉱」は5.0トン(3,000cr相当)で、製錬コスト1,500crも必要です。
 「水酸化リチウム」(品位29%)の価格はトン当たり5,000crで、製錬所の利益はトン当たり500crでした。
 製錬の手間が増える割には、あまり儲かりません。
 排水素トン重量トンを区別するのであれば、 1排水素トン=15重量トンより、価格は75,000crです。




(7)流通形態と流通量

 以上、「バリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、アンチモン、ニオブ、リチウム」から成る 「消費量の多いレアメタル」6種の採掘について考察しました。

 その流通形態と流通量、価格について、まとめます。


       表27 消費量の多いレアメタルの流通形態と流通量、価格

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 左端は金属名。次が流通形態で、鉱石精鉱化合物などの中間加工品と、最終的な地金などになります。
 流通量は10億人当たりの流通量で、重複しているものもあります。
 価格は、1トン当たりの取引価格(cr)。



 相変わらず、鉱石の多くは安価です。

 「バリウム精鉱」の価格は、品位80%でトン当たり100cr。
 「硫酸バリウム」は、トン当たり500cr。
 「バリウム地金」として流通する「バリウム」は存在しません。 ですから、「バリウム地金」の価格も分かりませんでした。

 「ジルコニウム精鉱」の価格は、品位50%でトン当たり200cr。
 製錬された「二酸化ジルコニウム」の価格は、品位70%でトン当たり3,000crですが、流通量は6分の1(15%)でした。
 ほとんど流通していませんが、「ジルコニウム地金」の価格は、トン当たり30,000crです。

 「ストロンチウム精鉱」の価格は、品位12%でトン当たり50cr。
 「炭酸ストロンチウム」の価格は、1トン当たりで500Crです。
 「ストロンチウム地金」も流通しておらず、その価格は不明。

 「アンチモン精鉱」の価格は、品位20%でトン当たり400cr。
 製錬された「三酸化アンチモン」の価格は、トン当たり5,000crになりました。
 「アンチモン地金」の価格はトン当たり10,000cr。流通量は全体の1割程度でした。

 「ニオブ精鉱」の価格は、品位40%でトン当たり4,000cr。
 製錬された「フェロニオブ」の価格は、トン当たり8,000crでした。
 「ニオブ地金」の価格はトン当たり40,000crですが、流通量は全体の5%で極僅かです。

 「リチウム精鉱」の価格は、品位6%でトン当たり600cr。
 「炭酸リチウム」の価格は、トン当たり3,000cr。
 「水酸化リチウム」の価格は、トン当たり5,000crでした。
 「リチウム地金」もほとんど流通していません。



 「二酸化ジルコニウム」の3,000crと「三酸化アンチモン」の5,000cr、 「ニオブ精鉱」の4,000crと「フェロニオブ」の8,000cr、 「炭酸リチウム」の3,000crと「水酸化リチウム」の5,000cr。
 上記の6つは恒星間の投機貿易品に使えそうでした。
 「ジルコニウム、アンチモン、ニオブ、リチウム」の4つは、 「レフリーズ・マニュアル、p.52」の投機貿易品リストの中に明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」として扱うことができそうです。

 しかし「バリウム」と「ストロンチウム」の2つだけは、 恒星間の輸送に見合う流通形態を見つけられませんでした。
 鉱石精鉱化合物地金、 どの形態であっても、恒星間輸送に見合う価格と流通量が存在しないのです。
 この問題を解決するためには、「マンガン」や「クロム」と同じように、 その世界か衛星の何処かに、必ず「バリウム」と「ストロンチウム」の鉱山が存在する、 という設定にすることが最善でしょう。
 「バリウム」と「ストロンチウム」の価格を変更してしまうと、 それらの元素を含んだ全ての製品価格に大きな影響が生じてしまいますので、できる限り避けるべきです。
 人口レベル7以上の世界は必ず、「バリウム」と「ストロンチウム」を世界上、 あるいは同じ衛星系で自給していることにしてください。

 この条件は、「バリウム鉱石」を採掘できる世界は基本的に、 火山活動が存在する、規模5以上の中型/大型世界である、という制限と矛盾してしまいますが、仕方ありません。
 もっとも「バリウム精鉱」の主用途である調泥剤は、 「珪素(シリコン)」の化合物であるシリコンオイルで代用できるでしょう。
 代用品が入手可能であるならば、無理に「バリウム鉱石」を採掘する必要もありません。
 その世界には、「バリウム鉱石」の需要がほとんど存在しない可能性もあるのです。

 一方、人口レベル6以下の非工業世界ならば、この2つを採掘できなくても、それほど困りません。
 人口が少なければ消費量もそれほど大きくありませんし、鉱石化合物を輸入するより、 最終製品を輸入した方が、全体として安く付く筈だからです。





5.まとめ


 今回の考察「トラベラー宇宙の考察資源、その2」では、 「主要なレアメタル」として抜き出した7元素。
消費量の多いレアメタル」と見なした6元素。
 合わせて13元素を考察しました。



 まずは「主要なレアメタル」の7元素ですが、 基本的に鉱石の形では安過ぎるため、惑星間の貿易品にも成り得ません。

 特に「クロム精鉱」と「マンガン精鉱」は激安でした。
 かろうじて、衛星間の貿易品には成り得ますが、惑星間や恒星間を輸送することは有り得ません。
 とある世界に製鉄所が存在するのであれば、その世界か衛星の何処かに、 必ず「クロム」と「マンガン」の鉱山が存在することになるでしょう。
 「クロム」と「マンガン」を安価に入手できなければ、 その世界での製鉄は行えないからです。

 例外は「モリブデン精鉱」の5,000crと「タングステン精鉱」の1,000cr、 この2つだけは、鉱石のままでも恒星間の投機貿易品に使えそうでした。

 「バナジウム」については、 中間加工品である「フェロバナジウム」や「五酸化バナジウム」が流通していると判明。
 トラベラー世界においても、この形態で恒星間取引が行われていることでしょう。

 「ニッケル」と「コバルト」は、 どちらも「地金」として流通している筈です。
 ただし、鉄/ニッケル質アステロイドが取引されている場合は例外。



 主要なレアメタルの鉱石は、 その多く(「モリブデン精鉱」と「タングステン精鉱」の2つ以外)は、 「レフリーズ・マニュアル」p.52の投機貿易品リストの中には明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」には該当しません。

 バナジウムについては、 中間加工品である「フェロバナジウム」や「五酸化バナジウム」の2つを 鉱石として扱うのであれば、「鉄以外の金属鉱石」に含めることができるます。



 次は「消費量の多いレアメタル」と見なした6元素ですが、 これらの鉱石も安価です。

 「二酸化ジルコニウム」の3,000crと「三酸化アンチモン」の5,000cr、 「ニオブ精鉱」の4,000crと「フェロニオブ」の8,000cr、 「炭酸リチウム」の3,000crと「水酸化リチウム」の5,000cr。
 上記の6つは恒星間の投機貿易品に使えそうでした。
 「ジルコニウム、アンチモン、ニオブ、リチウム」の4つは、 「レフリーズ・マニュアル、p.52」の投機貿易品リストの中に明記されている、 「鉄以外の金属鉱石:Nonferrous Ore」として扱うことができそうです。

 しかし「バリウム」と「ストロンチウム」の2つだけは、 恒星間の輸送に見合う流通形態を見つけられませんでした。
 鉱石精鉱化合物地金、 どの形態であっても、恒星間輸送に見合う価格と流通量が存在しないのです。
 この問題を解決するためには、「マンガン」や「クロム」と同じように、 その世界か衛星の何処かに、必ず「バリウム」と「ストロンチウム」の鉱山が存在する、 という設定にすることが最善でしょう。
 「バリウム」と「ストロンチウム」の価格を変更してしまうと、 それらの元素を含んだ全ての製品価格に大きな影響が生じてしまいますので、できる限り避けるべきです。
 人口レベル7以上の世界は必ず、「バリウム」と「ストロンチウム」を世界上、 あるいは同じ衛星系で自給していることにしてください。
 一方、人口レベル6以下の非工業世界ならば、この2つを採掘できなくても、それほど困りません。
 人口が少なければ消費量もそれほど大きくありませんし、鉱石化合物よりも 最終製品を輸入した方が安く付く筈だからです。



 今回、考察対象として取り上げた「レアメタル」13元素の内、 3元素(モリブデン、タングステン、ニオブ)が、 鉱石として恒星間の投機貿易品として扱われていることを明らかにできました。
 中間加工品である化合物を含めるのであれば、 4元素(バナジウム、ジルコニウム、アンチモン、リチウム)が追加できます。
 ニッケルコバルトの2元素は、 基本的にどちらも「地金」として流通している筈ですが、 鉄/ニッケル質アステロイドが取引されている場合は例外で、 鉱石としての恒星間輸送が有り得ます。
 残念ながら、4元素(マンガン、クロム、バリウム、ストロンチウム)は、 その低価格故、恒星間の投機貿易品には成り得ませんでした。






 2012.09.09 初投稿
 2014.05.04 加筆修正して再投稿
 2016.01.24 化石燃料(炭化水素)の投稿に合わせて、
        バナジウムの部分を大きく変更