The Economy of The Pirates 2
海賊の経済2
  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3, Metasequia

 

 

 

 

 

 
 



 
 
 
 
 
 
PIRATE03_FIG01.JPG - 68,407BYTES

図1 M型政府指定客船からコンテナを略奪する、海賊達

荷役設備が備えられていない場合、略奪品の移し替えは、
とても時間のかかる、とても危険な行為となります。
海賊を始める場合は、荷役設備を忘れずに。




1.はじめに


 スピンワードマーチの帝国領には、150〜250隻の海賊船が活動しており、 それらの海賊船は、2週間当たり1隻〜2隻程度の商船を襲撃しているようです。

 今回の考察は、海賊や海賊船からの立場ではなく、星系政府や荷主の立場から考えてみました。



2012.02.19 加筆

 貨物損害保険に関する考察を追加しました。
 変更点だけを御覧になりたい方は、右のリンクをクリックしてください。
                         ※5.海賊限定の貨物損害保険





2.海賊が活動している星系の経済力


 考察の1回目「海賊との遭遇」において、海賊船が活動できる星系は、惑星海軍が存在せず、 帝国海軍/星域海軍の基地も偵察局基地も無く、Xボート連絡網上にも位置していない星系であると考えました。
 そのような星系は、スピンワードマーチ宙域の帝国領内に109星系あり、帝国領の40%を占めています。
 また、これらの星系で活動していると思われる海賊船の数も求めました。


      表2  治安維持がなされていない109星系の宇宙港規模
           および、それらの星系で活動する海賊船の数

PIRATE03_FIG02.GIF - 12,545BYTES

 「海賊との遭遇」でも同じ表を掲載しましたが、考察の都合上、同じことを書かせていただきます。

 海軍に守られていない星系の中で、最も宇宙港規模が大きい星系は、アラミス星域のアラマンクスです。 宇宙港規模は7。宇宙港クラスB、人口レベル9の高人口世界ですが、テックレベルが7未満であるため、惑星海軍を持つことができません。

 次に宇宙港規模が大きい星系は、リジャイナ星域のヒーヤとライラナー星域のヴェインジャン。 どちらも宇宙港規模6+の富裕世界になっています。
 その次は、リジャイナ星域のイノープ、ライラナー星域のキパトウィー、 トリンズ・ベール星域のアラミストラルサ。この4星系は、宇宙港規模6です。

 数が多くなりましたので詳細は省きますが、宇宙港規模5+と5の星系を合わせて32星系あります。
 宇宙港規模4+と4の星系は、57星系。
 宇宙港規模3以下の星系は13星系でした。

 「海賊との遭遇」の考察においては漠然と、 「宇宙港規模が6以上の星系は、帝国/星域海軍によって星系内の治安維持が行なわれている」 と考えていましたが、実際のところはどうなのでしょうか。
 今回はそのあたりを考察してみます。





3.貿易量(宇宙港規模)と経済力の関係

 帝国政府が、その星系の治安に関心を持つ最大の理由は、その星系の経済力にあると私は考えました。 要するに「その星系から搾り取れる税収額」が帝国政府の示す関心のバロメータになっている、ということです。
 星系の経済力を決定するルールは、CTにもMTにも存在しません。
 ですが、CT「1兆クレジット艦隊」に掲載されている海軍予算のルールが、 星系の経済力を表していると考えても良いのではないでしょうか。 海軍予算が大きいならば、経済力も大きくて豊富な税収を見込める星系であり、 反対に海軍予算が小さい星系ならば、経済力は小さく少額の税収しか見込めない星系である、と考えてみます。

 前述した109星系の惑星海軍予算を計算し、経済力のレベルに合わせて分類した結果が、下記の表3です。
 テックレベルの制限によって惑星海軍が存在しない星系であっても、ルールに応じて海軍予算を求めました。

 分類は、海軍予算が100万MCr以上、10万〜100万MCr、1万〜10万MCr、1千〜1万MCr、100〜1千MCr、100MCr未満の、6段階です。

      表3 海賊が活動している星系の経済力(海軍予算の大きさ)
PIRATE03_FIG03.GIF - 6,593BYTES

 大まかですが、宇宙港規模と海軍予算との間に、比例関係が見えてきませんか。
 表3の右端に、計算で求められた海賊船の活動数も併記しました。
 予想通り、海賊が活動している(活動できる)星系は、経済力の小さい(海軍予算の少ない)星系に集中しています。
 と言うよりも、経済力(税収)の大きな星系は、人口が大きくてテックレベルも高く惑星海軍も強力なため、 海賊船が活動できない、と表現すべきなのかも知れません。



 海軍予算が100万MCr以上の星系は1つ。
 海軍予算が10万〜100万MCrの範囲にある星系は2つ、 1万〜10万MCrの範囲にある星系は8つありました。
 トリンズ・ベール星域のトラルサを除けば、表2で示した宇宙港規模6以上の7星系は上記の11星系で網羅されています。 宇宙港規模はある程度経済力を反映している、ということなのでしょう。
 宇宙港規模が5であっても、海軍予算が1万MCr以上の星系は5つありました。 星系の経済力は大きいのに、恒星間貿易には消極的な星系です。 その筆頭がグリッスン星域のカリアですが、一体どのような世界なのか気になりました。

 海軍予算が1千〜1万MCrの星系は6つ、100〜1千MCrの星系は9つです。
 ここまでの26星系は全て、テックレベルが7未満であるため、惑星海軍を保有できなかった星系でした。 経済力があるにも関わらず、テックレベルの制限から惑星海軍を持てない星系は非常に多いのです。

 海軍予算が100MCr未満の星系は83星系でした。 これらの星系は経済力が弱過ぎるため、テックレベルの必要条件を満たしていても、十分な規模の惑星海軍を持つことが出来ません。

 これらの星系について、個別に考察を進めていきます。




(1)宇宙港規模6以上の7星系

 まず最初に、貿易量の多い(宇宙港規模の大きい)7星系について考えてみました。

      表4 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模6以上)

PIRATE03_FIG04.GIF - 6,615BYTES

 上記の海軍予算は、宇宙港とテックレベルによって決まる貨幣価値、政治形態による税率など、必要な補正の済んでいる海軍予算です。



 海軍予算が100万MCr以上の星系は、たった1つ。 リジャイナ星域のイノープ星系しかありません。 宇宙港クラスC、人口60億、テックレベル6の工業世界です。 宇宙港規模は6ですから貿易量もそれなりに大きいのですが、取り立てて重要な世界という訳ではないようです。
 気になる海軍予算は、年間148万MCr。 イノープ星系からの税収によって、毎年、巡洋艦の1個戦隊を新規購入して、 さらに40個の巡洋艦隊を維持できます。 巡洋艦だけでも320隻の大所帯になりましたが、当然、護衛駆逐艦や大型戦闘艇などの補助艦艇も付けられるでしょう。
 イノープは造船所を持ちませんから全て輸入頼みですが、 毎年1兆クレジット艦隊を1つずつ作れるほどの経済力なのです。

 こんな重要な世界(収入源)を、帝国海軍が放っておく筈はありません。 ですから、最寄りの海軍基地から、帝国海軍の戦闘艦艇が派遣されていることにします。
 とは言うものの、4パーセク以内の海軍基地はピクシーしかありませんでした。 5パーセクの距離まで拡大しても、イフェイトとペイヤの基地しか増えません。 6パーセクの距離になればリジャイナとインズの海軍基地が存在しますが、これらの基地はちょっと遠すぎるようです。
 何か、別の解釈を考えるべきかも知れませんね。

 また、星系防衛艦隊の目を掻い潜ってイノープの地表へ着陸できたとしても、 3,000個大隊(=150個師団)の防衛大隊が住民を守っています。地表襲撃は成功を望めそうにありません。
 私がボードゲーム「第五次辺境戦争」をプレイした際に、 イノープは真空世界として扱われており、 星系内にヴァルグル戦艦が出現しただけで「降伏」してしまいました。 「真空世界は軌道からの爆撃に弱い」、というルールなのです。その事実は忘れておきます。
 とにかく、イノープ星系で海賊船が活動することは難しいでしょう。



 海軍予算が10万〜100万MCrの星系は、アラミス星域のアラマンクスです。 宇宙港クラスB、宇宙港規模7、人口20億を抱えた高人口世界ですが、やはりテックレベルの制限によって惑星海軍を持つことが出来ませんでした。
 アラマンクスも税収の安全を確保するため、 帝国海軍の艦艇によって星系内の治安維持がなされている、と考えるべきでしょう。
 あるいは、Bクラスの軌道宇宙港を建設/維持している某メガコーポレーションが、 私設海軍を編成して、星系の防衛を担当しているのかも知れません。 税収と通商の安全が確保されているならば、帝国海軍が治安維持の「肩代わり」を断る理由もありませんから。
 メガコーポレーションの私設海軍がアラマンクスの治安維持を担当していると考えるならば、 その海軍の年間予算は上記予算の10%=37,500MCrを超えるべきではないでしょう。
 私設海軍の予算については、次の4章でも若干の考察をしています。
 また、防衛大隊の規模はイノープよりも大きく30,000個大隊でした。 小国分裂状態にありますので、彼らの大半は臨戦状態にあるでしょう。 このように警戒厳重な地上を襲撃することは、極めて困難だと思われます。



 海軍予算が1万〜10万MCrの範囲にある星系は、リジャイナ星域のヒーヤ(宇宙港規模6+)、 ライラナー星域のヴェインジャン(6+)とキパトウィー(6)、 トリンズ・ベール星域のアラミス(6)の4星系でした。

 アラマンクスと同様に、宇宙港クラスBという十分な設備を備えていますから、 企業の私設海軍による治安維持が可能だと思います。 宇宙港規模も6以上の世界ですから、通商の安全確保も企業の優先課題です。
 宇宙港規模6+の富裕世界、ライラナー星域のヴェインジャンは、 宇宙港レベルがCで不十分な設備しかありませんが、隣のキパトウィーから星間傭兵を雇うことが可能できるでしょう。
 これらの星系の防衛大隊は、300〜3,000個大隊規模でした。 星系内空間を守る星間傭兵と協調すれば、十分に世界を守ることが出来る筈です。



 意外なことに、海軍予算が100〜1千MCrの星系が1つだけありました。 トリンズ・ベール星域のトラルサです。宇宙港規模が6ということで、ある程度の貿易量はある筈なのに経済力がありません。 Xボートも通っていませんから、貿易上の中継点という訳でもなさそうです。
 ところが、UPPを見ていたところ「遺跡」という注釈が見つかりました。 帝国海軍の防衛艦隊が送り込まれていることは間違いないでしょう。 トラルサ固有の防衛大隊は3個しか存在しませんが、遺跡を防衛する(ついでに都市部や宇宙港を守る)ため、 帝国海兵隊が駐留していると考えられます。



 以上のことから考えて、宇宙港規模6以上の星系における海賊活動は、帝国海軍やその他の組織によって未然に防がれていると考えられました。
 考察「海賊との遭遇」で行なった 「宇宙港規模6未満の星系でなければ海賊船が活動できない」という仮定は、おおよそ正しかったようです。




(2)宇宙港規模5〜5+の32星系

 今度は、貿易量がやや少なめ(宇宙港規模が5〜5+)ということになっている、32星系について考えてみました。

      表5 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模5〜5+)
          ジュエル星域からライラナー星域までの13星系

PIRATE03_FIG05.GIF - 9,617BYTES

    表6 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模5〜5+)
        ソードワールズ星域からトリンズ・ベール星域までの19星系

PIRATE03_FIG06.GIF - 12,981BYTES

 星域名のFSは、ファイブシスターズの略です。
 また、星系名が黄色で書かれている星系は、 その星系がアンバー・ゾーンであることを示しています。
 人口とテックレベルか黄色で書かれている星系は、 地上を守る防衛大隊の規模が1〜5個大隊と小規模な星系です。 32星系中の9星系(28.1%)は、不十分な防衛力しか備えていないことが分かりました。
 人口とテックレベルが赤字で書かれている星系は、防衛大隊を保有していません。 32星系中14星系(43.8%)は、防衛力を全く備えていないのです。
 海軍予算が水色で示されている星系は惑星海軍を保有している星系です。 しかしその大半はT型哨戒艦1隻を保有する分にも足りません。 実質的に、惑星海軍が存在しないものと扱って構わないでしょう。

 宇宙港規模5〜5+の32星系は、その経済力も広い範囲に分散していました。
 海軍予算が10万〜100万MCrの星系は1つ、1万〜10万MCrの星系は4つ、 1千〜1万MCrの星系は5つ、100〜1千MCrの星系も5つ、 100MCr未満の星系は17です。




 宇宙港クラスE、宇宙港規模5、テックレベル6という典型的な辺境世界であるにも関わらず、 8億の人口と海軍予算13万MCr相当の経済力を備える、一風変わった世界が、 グリッスン星域のカリアです。
 星系自体の経済力は十分な規模なのですが、星系政府は恒星間貿易に消極的(宇宙港クラスが低いまま)となれば、 星系内の治安維持にも無関心となるでしょう。そういうことならば、星系内の治安維持の試みを放棄している可能性も、十分に考えられます。

 星系内の治安維持が放棄されている場合、海賊船は活動し放題です。 不定期に訪れる帝国海軍のパトロール以外、海賊船の活動を抑制する力は存在しません。
 しかし地上襲撃を企てる海賊に対しては、3,000個大隊(=150個師団)相当の防衛大隊が立ち向かうことでしょう。




 海軍予算が1万〜10万MCrの範囲にある星系は、4星系ありました。
 具体的な星系名は、リジャイナ星域のケング、ヴィリス星域のアーカディア、 ランス星域のレック、トリンズ・ベール星域のドマラです。
 星系政府がその気になれば、星間傭兵でも何でも雇って、星系内の治安維持を委ねることもできるでしょう。 それだけの経済力はあるのです。しかし、果たして「その気」があるのかどうか、不安になってきました。

 ケングは人口8億、テックレベル3の未開世界でした。 1万個大隊(=500個師団)規模の防衛大隊が存在しますが、彼らの装備はテックレベル3しかありません。 海賊の兵器に対抗は不可能でしょう。
 星系内の宇宙空間も地上も、海賊が自由気ままに振舞う世界となっているようです。 これらの世界に寄港する商人は、自力で防衛するしかありません。

 アーカディアは人口4億、テックレベル6の発展途上世界です。 300個大隊(=15個師団)の防衛大隊が地上を守っていますが、宇宙空間は、やはり海賊の天下になっていることでしょう。 帝国の国境にも近いので、帝国海軍のパトロールが頻繁に行なわれている可能性も高いのですが。

 レックは人口5千万、テックレベル6の農業世界です。 防衛大隊は、30個大隊しかありません。これだけでは、海賊の地上襲撃を抑えることも難しいようです。 治安レベルも10と高レベルですから、密輸品の売買も盛んなのではないでしょうか。

 ドマラは人口9千万、テックレベル5の海洋世界です。 300個大隊(=15個師団)の防衛大隊が地上を守っていますが、星系内の宇宙空間は無法地帯の筈です。




 海軍予算が1千〜1万MCrの範囲にある星系は5星系。
 ヴィリス星域のマージシー、ライラナー星域のベリゾー、 モーラ星域のバイレット、グリッスン星域のカレドニア、 トリンズ・ベール星域のヘイズルです。
 バイレットヘイズルの2星系は防衛大隊の規模が30個ありますが、 マージシーベリゾーカレドニアの3星系は 3個大隊しかありません。
 経済力(海軍予算)はそれなりに高いのですが、テックレベルが低いため、防衛力が足りないようです。




 海軍予算が100〜1千MCrの範囲にある星系も、5星系ありました。
 ファイブ・シスターズ星域のペネロープ、グリッスン星域のクロウツァリーナ、トリンズ・ベール星域のレイドラッドプリリッサです。
 ペネロープ星系は100個大隊の防衛大隊を保有していますが、テックレベル4の兵器では、海賊に対抗できないでしょう。 また、クロウは10個大隊ですが、テックレベルがさらに低く3しかありません。 ツァリーナレイドラッドプリリッサの防衛大隊は テックレベルが5〜6ですが、規模はわずかに3個大隊です。 やはり、海賊への対抗は困難だと思われます。




 海軍予算100MCr未満の星系は17星系ですが、それらの星系は最大でも1個大隊の防衛大隊しか保有していません。 大半は防衛大隊を持たない、無防備な星系なのです。
 星間傭兵を雇うだけの経済力もありませんから、星系内空間の治安維持は不可能だと分かりました。

 以上のように、宇宙港規模5の星系は大部分が星間傭兵を雇う経済力もなく、世界を守る防衛大隊も保有していないことが明らかになりました。 これらの世界で海賊の横行を抑える力は、存在しないのです。




(3)宇宙港規模4〜4+の57星系

 次は貿易量が少ない(宇宙港規模が4〜4+の)57星系を考察します。

      表7 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模4〜4+)
          ジュエル星域からアラミス星域までの14星系

PIRATE03_FIG07.GIF - 9,823BYTES

      表8 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模4〜4+)
          ヴィリス星域からライラナー星域までの15星系

PIRATE03_FIG08.GIF - 10,018BYTES

      表9 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模4〜4+)
          ソードワールズ星域からモーラ星域までの12星系

PIRATE03_FIG09.GIF - 8,379BYTES

   表10 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模4〜4+)
       ファイブシスターズ星域からトリンズ・ベール星域までの16星系

PIRATE03_FIG10.GIF - 10,564BYTES

 星系名が黄色で書かれている星系は、その星系がアンバー・ゾーンであることを示しています。 星系名が赤字で書かれている星系は、レッド・ゾーンになります。

 人口とテックレベルが黄色で書かれている星系は、 地上を守る防衛大隊の規模が1〜5個大隊と小規模な星系です。 人口とテックレベルが赤字で書かれている星系は、防衛大隊を保有していません。
 57星系中14星系(24.6%)は、不十分な防衛力しか備えておらず、 57星系中36星系(63.2%)は、防衛力を全く備えていないことが分かりました。 10個大隊以上の防衛力を備えている星系は、わずかに7星系(12.3%)だけです。
 惑星海軍を持たない(持てない)星系は、大半が防衛大隊すら保有できないのです。 海賊が自由に暴れまわっていることは当然と言えるでしょう。




 興味深いデータを備えた星系は、なぜかリジャイナ星域に集中しています。

 富裕世界のノービスは、50個大隊規模の防衛大隊を保有していました。 そのテックレベルは2ですから、海賊に対抗することは出来ません。 しかし特別な理由によって、 ノービスの衛星軌道上には常にキンニール級小型巡洋艦の姿があります(CTシナリオ「キンニール」より)。 この世界に密輸を試みたり、地上襲撃を企てたりすることは、とても危険です。諦めましょう。
 惑星から十分に離れた地点(例えば100倍直径)ならば、海賊船が商船を襲撃することは可能かも知れません。 素早く襲撃して、素早く逃げなければなりませんが。

 フォーボールドンは、帝国の植民計画に基づいて開発が進められています。 海軍予算で240MCr相当の経済力もあるようですから、治安維持を担当する星間傭兵を雇っている可能性も考えられます。

 アルジンは70億の人口を抱えているにも関わらず、 テックレベルが4しかない侵入禁止星系です。 この星系もキンニール級巡洋艦と数隻のガゼル型小型護衛艦が封鎖しているとのこと(これもCTシナリオ「キンニール」からの情報)。 海賊行為は難しそうです。また、地上世界も防衛大隊の規模は50,000個大隊(=2,500個師団)が守っていました。 テックレベルが低くても、この規模は侮れません。

 ユーストは、宇宙港規模4の57星系でもっとも経済力の大きな星系です。 経済力は海軍予算で1,020MCr相当もありました。
 「GURPS Behind The Claw」に拠れば、群小種族が住んでいるようです。

 アラミス星域の宗教独裁世界ピサーディも、防衛大隊を10個大隊保有しています。 海軍予算で225MCr相当の経済力もあるようでした。

 ランス星域の非工業世界ヴリーベフガー。 ライラナー星域の砂漠世界ヒローニ、トリンズ・ベール星域の農業世界ピパーニウム
 この3つの世界は共通して10個大隊規模の防衛大隊を保有していますが、テックレベルは揃って3しかありません。




(4)宇宙港規模3以下の13星系

 最後に、貿易量がほとんどない(宇宙港規模が3以下の)13星系を考察します。

      表11 海賊が活動している星系の経済力(宇宙港規模3以下)

PIRATE03_FIG11.GIF - 9,398BYTES

 宇宙港規模3以下の星系は、13星系中8星系がレッド・ゾーン、 1星系がアンバー・ゾーンでした。

 ランス星域のイレイヴンサンサートは、共に10個大隊の防衛大隊を保有しています。
 しかし、これらの星系は商船の運航がきわめて稀ですから、海賊船も活動が難しいでしょう。海賊船の維持費すら賄えません。




(5)海軍予算が100MCr以上、500MCr未満の17星系

2012.02.12 加筆。

 海賊に関する考察を続けている内に、惑星海軍の予算が年間100MCrではとても足りないという事実を発見してしまいました。
 これらの星系でも海賊が活動しているかも知れないので、これら17星系の惑星海軍予算額、防衛大隊の規模についても調べ、考察を追加しています。


      表12 海賊が活動している(かも知れない)星系の経済力

PIRATE03_FIG12.GIF - 12.0KB

 星系名が黄色で書かれている星系は、 その星系がアンバー・ゾーンであることを示しています。 星系名が赤字で書かれている星系は、レッド・ゾーンになります。

 人口とテックレベルが黄色で書かれている星系は、 地上を守る防衛大隊の規模が1〜5個大隊と小規模な星系です。 人口とテックレベルが赤字で書かれている星系は、防衛大隊を保有していません。

 17星系中7星系は、不十分な防衛力しか備えていませんでした。
 そして、残り10星系は地上の防衛力を全く備えていません。
 惑星海軍の貧弱な防衛網を突破した海賊(地上襲撃者)たちは、ほぼ無抵抗の世界を好きなだけ蹂躙できるようです。




(6)宇宙港規模と防衛大隊

 これまでの調査で明らかになった、109星系に存在する防衛大隊の規模をまとめて、宇宙港規模との関係を比べてみました。

     表13 海賊が活動している星系の、宇宙港規模と防衛大隊の関係

PIRATE03_FIG13.GIF - 7,463BYTES

 宇宙港規模とその世界に存在する防衛大隊の関係は、表12のようになります。

 海軍予算の場合と同じように、宇宙港規模の小さい世界は防衛大隊の規模も小さく、場合によっては持っていない可能性が高いと分かりました。
 そのような世界で活動する海賊船は、宇宙空間で商船を襲撃するだけでなく、地上の居住地を襲撃することも容易なのです。





4.オリジナル設定の海賊団(水軍型の海賊)

(1)星間傭兵の契約料

 上記の考察で、惑星海軍を持たない星系が、その経済力を活かして星間傭兵を雇うという可能性が出てきました。
 そうした場合、その星間傭兵に支払われる契約料は、最大でも、存在しない海軍予算と同額。多くの場合、1〜10%程度だと思われます。
 1〜10%と考えた理由は、やはり経済上の問題からです。 必要性の低い大規模軍事組織を雇っておく無駄な予算は何処の社会にもありません。 その世界の経済に負担を掛けず、なおかつ、星系内の治安維持が可能な最低限の予算まで、契約料は抑えられるべきだと思うのです。
 表12で例に挙げるレックの場合、存在しない海軍予算は12,000MCrですが、その1%でも120MCrになりました。 T型哨戒艦数隻を雇う契約料としては、十分な金額でしょう。

 あるいは反対に、失業して徒党を組んだ星間傭兵の集団がこれらの星系に押しかけて来て、 勝手に星系内の治安維持を図ろうとする場合も考えられます。 我々を雇わないと星系内で大規模な略奪を行なうぞ、と脅しを掛けてくるのです。 このような場合、星間傭兵を名乗っていても実質的に海賊団と何も変わりませんが、 これらの星間傭兵(海賊団)が、略奪からの「見逃し料」を徴収するとしたら、やはり海軍予算の1%が適正だと思います。
 これ以上の要求は、その星系が他の星間傭兵を雇って対抗するようになるでしょう。 星間傭兵(海賊団)同士の抗争に巻き込まれてしまった不運(幸運)なPC達の冒険も面白そうですが、過ぎたるは及ばざるが如し。 何事も「適度」が一番なのです。



 惑星海軍を持てない星系が、上記のような定住型の海賊、もとい、星間傭兵を雇っている場合、 その星間傭兵に支払われている契約料は、以下のようになると思われます。

 個人的なルール解釈ですので、あくまで参考資料のレベルに留めておいてください。

     表14 惑星海軍を持たない星系が支払っている(と予想される)
          星間傭兵の契約料(存在しない海軍予算の1〜10%)

PIRATE03_FIG14.GIF - 8,196BYTES

 私の計算ではT型哨戒艦の契約料は年間30MCrC型巡航艦の契約料は60MCrとなっていました。 本来の維持費とローン支払いはその3分の1程度しかありませんが、 様々な場面で支払われるボーナスや戦闘による損傷の修理費が必要ですので、契約料が膨れ上がることは確実だと思うのです。
 これならば、最も経済力の低いレックであってもT型哨戒艦4隻を雇えます。 最大の経済力を持つカリアは、T型哨戒艦を44隻C型巡航艦ならば20隻以上を雇えますので、星系内の治安維持という観点からは、これだけで十分です。

 リジャイナ星域のヒーヤは通商基地を持つ企業により、大規模な星間傭兵が雇われているかも知れません。 その場合、年間134MCrの予算では宇宙港規模6+の交通量に対応できませんので、 予算を10%=1,339MCrまで増額しました。
 数隻のヴァルグル海賊を雇っているという設定にすると、また面白くなるでしょう。 裏切り(転向)のことを考えればヴァルグルは信頼できませんが、 政治的要素(ヴァルグルはヴァルグル同士での取引を好む)を考えると、ヴァルグル傭兵の雇用も不可欠だと思います。

 ライラナー星域のキパトウィーヴェインジャンは隣り合った星系です。 ヴェインジャンの宇宙港はCクラスですが、 キパトウィーのBクラス宇宙港を利用すれば、宇宙船の整備も修理も可能になるでしょう。 私はこれらの2星系をまとめて、1つの傭兵集団(あるいは海賊団)が掌握していると考えました。
 2星系の(存在しない)海軍予算を合わせると、112,250MCrです。 その1%でも年間1,123MCrになりますから、星間傭兵を雇うには十分な額でしょう。 T型哨戒艦ならば37隻を雇えました。

 このような感じで、星間傭兵/海賊団の規模や組織を検討すれば良いと思いますが、いかがでしょうか。




(2)通行料を取る(水軍型の)海賊

 今度は、ちょっと考え方を変えてみます。
 星系政府が関与していない、定住型の海賊団というものはどうでしょうか。掲示板では「水軍型の海賊」と呼ばれていた組織です。
 彼らは、星系政府の意向に関わらず、特定の星系に定住しています。 星系のジャンプポイントへ常に海賊船を1隻以上配置して、通行料を徴収していると考えました。

 彼らの収入はどの程度のものになるでしょうか。
 徴税システムはいくらでも複雑なものが考えられますが、簡単にするため、宇宙船の船体トン数1トン当たりの定額制で考えました。


        表15 水軍型海賊の収入 具体的な通行料(Cr)

PIRATE03_FIG15.GIF - 5,379BYTES

 その星系にジャンプアウトしてきた商船は、ジャンプポイントにおいて直ちに通行料を徴収されることになります。 払わなかったら、ただちに攻撃を受けて、略奪を受けてしまう可能性が高いでしょう。
 その通行料を、船体1トン当たり1cr/10cr/20cr/50cr/100cr/1,000crの6段階で検討してみました。

 通行料が、船体1トン当たり1クレジットという少額の場合、商船の負担はほとんどありません。 輸送コストにも響かないと思われます。

 1トン当たり10クレジットの場合、S型偵察艦で1,000クレジット、 A型自由貿易船で2,000クレジットという通行料になりました。 ちょっと高めの停泊料だと思えば、我慢もできるでしょう。
 もしも、この通行料を旅客や貨物に転嫁する場合、特等/一等旅客は1人当たり40クレジット、貨物運賃はトン当たり20クレジットの割増しになります。 二等旅客は貨物と同じ扱いですので、1人当たり20クレジットです。
 この割増し額はA型自由貿易船の場合を想定していますので、 M型客船のように旅客数が多く、貨物の少ない商船はまた違った数字になると思われます。

 1トンあたり20〜50クレジットになると、若干、通行料の支払いが苦しくなってきました。 通行料分の割増しは、特等/一等旅客1人当たり80〜200クレジット、貨物1トン当たり40〜100クレジットになります。

 1トン当たり100クレジットは、民間商船が支払える限界だと思います。A型自由貿易船で2万クレジットの通行料は、ローン支払いの2割に相当しますので。
 この通行料を転嫁する場合、特等/一等旅客は1人当たり400クレジット、貨物は1トン当たり200クレジットになりました。

 1トン当たり1,000クレジットは非常識な金額として想定しました。 こんな通行料を要求されたら、その星系には商船が1隻も来なくなることは確実です。 その代わりに、(恐らく)帝国海軍の戦闘艦が現れることでしょう。



     表16  水軍型海賊の年収(MCr) 宇宙港規模と通行料の関係

PIRATE03_FIG16.GIF - 7,705BYTES

 星系に寄港する商船の数量による水軍型海賊の年収の変化を、宇宙港規模3〜7の範囲で比べてみました。
 水軍型海賊の収入額を、下記の4色で色分けしてあります。

 緑色は、T型哨戒艦5隻以上の維持費とローンを賄える年収を示しています。
     海賊団の運営を行なうには十分でしょう。

 水色は、T型哨戒艦1〜4隻の維持費とローンを賄える年収。
     小規模ですが、何とか海賊団を存続させることが可能です。

 黄色は、T型哨戒艦1隻の維持費は出せますが、ローンの支払いは賄えない年収額。
     中古の海賊船が手元にあるならば、何とか食べていけます。
     しかし一度でも戦闘をしたら、修理費が出せません。

 赤色は、T型哨戒艦1隻の維持費を出せない程、低レベルの年収。 
     海賊船1隻を養えないほど、商船の運航が少ない星系です。



 宇宙港規模7の星系は、何度も登場しているアラマンクスが該当します。 この星系は某メガコーポレーションによる私設海軍で守られていると考えましたが、 地上からの徴税が認められず、諸般の事情によって宇宙港使用料も値上げできないとしたら、直接、商船から徴収する以外に収入源がありません。
 この星系の場合、船体1トン当たり1クレジットの通行料を徴収するだけで、 4隻のT型哨戒艦を保有できます(年収41MCr)。
 1トン当たり10クレジットを課すならば、哨戒艦12隻を保有して、 さらに戦闘時の修理代も十分に賄えるでしょう(年収411MCr)。
 1トン当たり100クレジットを課せば、哨戒艦だけでなくC型巡航艦やSDBの保有さえも可能になるでしょう。 流石にここまでやると、他のメガコーポレーションや帝国が文句を言いそうな気がしますが(年収4,108MCr)。
 やはり、10クレジット程度の通行料が無難なように思えます。20〜50クレジットはグレーゾーンということで。



 宇宙港規模6や6+の星系でも海賊船は活動できない筈ですが、 星系内の治安維持を請け負っている星間傭兵が、独自の安定収入を確保しようとする可能性は、常に有り得ます。 そんなことが起きたら帝国海軍が介入してくるような気もしますが、大きな問題にならなければ、黙認するでしょう。
 ヒーヤヴェインジャン(宇宙港規模6+の世界)、 イノープキパトウィーアラミストラルサ(宇宙港規模6の世界)について考えてみました。
 船体1トン当たり1クレジットの通行料を徴収した場合、せいぜい1隻のT型哨戒艦を保有することしかできません (年収14.25.75MCr)。明らかに、星系内の治安維持には力不足です。
 1トン当たり10クレジットを課した場合、4〜2隻のT型哨戒艦を保有して、維持していくこともできそうです (年収14257.5MCr)。 星系内の治安維持には、まだ不安が残りますが。
 宇宙港規模6+の星系は1トン当たり20クレジットの通行料、宇宙港規模6の星系は50クレジットの通行料を徴収して、 ようやく星系内の治安維持が可能になるでしょう(年収283〜287MCr)。 T型哨戒艦を8隻保有し、戦闘時の修理費も出せるようになりましたから。
 100クレジットの通行料は取り過ぎだと思いました。それだけの通行料を払っても利益が出る星系ならば別でしょうが。



 宇宙港規模5+〜5の星系において、通行料の徴収は当然のように、海賊船によって行なわれる可能性があります。 積荷を略奪して売り払うよりも、多数の商船から少額でも通行料を徴収する方が実入りが良いかも知れません。
 通行料が船体1トン当たり1クレジットの場合、とても海賊船を維持できません (年収2.371.07MCr)。 船体1トン当たり1クレジットという通行料は、どうやら現実的ではないようです。
 1トン当たり10クレジットの場合、なんとかT型哨戒艦1隻を保有できるでしょう (年収23.7〜10.7MCr)。 しかし戦闘による損傷(の修理費用)まではカバーできません。
 宇宙港規模5+の星系は1トン当たり20クレジットの通行料、宇宙港規模5の星系は50クレジットの通行料を徴収して、 T型哨戒艦2隻を保有できるようになりました(年収47.3〜53.3MCr)。 戦闘時の修理費も少しならば出せます。
 通行料を1段階上げて、50クレジットと100クレジットにすれば、年収は118〜107MCrになりますから、 T型哨戒艦4隻を保有できるようになります。 しかし各方面からの反発も強いものとなるでしょう。



 宇宙港規模4の星系において、船体1トン当たり10クレジットの通行料徴収も現実的ではありません。 あまりにも収入が少なく、海賊船の維持すら困難だからです。
 通行料が船体1トン当たり50クレジットの場合、年収8.06MCrになりました。 この金額でもT型哨戒艦1隻を維持するだけで精一杯です。ローン支払いも損傷の修理費も捻出できません。
 通行料をトン当たり100クレジットまで上げて、ようやく年収が16MCrに達しました。 T型哨戒艦1隻を運用できるようになりますが、戦闘で生じた損傷の修理費までは賄えません。
 戦闘になるような事態は慎みましょう、と言いたくなりますが、海賊船にそのような態度が許される筈もありません。 どうやら、宇宙港規模4の星系において、通行料の徴収に依存する水軍型の海賊は存在できないようです。



 宇宙港規模3の星系についての考察は省略しました。





5.海賊限定の貨物損害保険

2012.02.19 加筆

 松永様の海賊ルールVer.2 に触発され、私も貨物損害保険のルールを考えてみました。
 どうしても煩雑なものになってしまいましたので、必要になった時だけ御利用ください。

 海賊の存在する辺境航路においてのみ成り立つ保険であり、海賊の襲撃によって生じた貨物の損害を補償します。
 海賊以外の原因による損害は(リスク計算が困難なため)考慮していません。
 あくまで、海賊被害だけに限定された保険です。
 21世紀テラに存在する一般的な貨物損害保険とは全く違ったものになってしまいましたが、世界観の違いということで御了承をお願いします。

 貨物損害保険の保険料は、以下のような想定で計算しました。




(1)基本的な貨物損害保険の保険料

 まず最初に貨物損害保険について、 貨物の荷主が自分の貨物に掛ける保険 であると定義しておきます。

 私も初めて知った時に驚きましたが、商船の船長は貨物を目的地へ無事に送り届けることについて、 常に責任を負うとは限りません。
 貨物が目的地へ届かなかった(不着)、あるいは、輸送途中に破損したとしても、 多くの場合、荷主は船長に損害賠償を請求できないのです。
 このあたりの背景は海上保険(貨物保険)をキーワードに調べて頂けば、 すぐにお分かりになると思いますが、荷主は貨物の不着や破損に備え、自分で損害保険を掛けておく必要が生じました。
 その保険契約が貨物損害保険です。
 宇宙船(商船)自体の損害には適用されませんし、荷主以外の者、貿易船の船長や宇宙港のブローカーが保険契約を結ぶこともできません。
 例外は、船長が購入した貿易品を自身の商船で貨物として運ぶ場合だけでしょうか。

 この保険は、貨物の送り主や受取人(貨物の所有権を持つ個人や法人)が結ぶべき契約であって、直接、商船とは関係ありません。
 なのですが、貨物の荷主にとっては輸送コストに大きく影響する、重要な保険契約になってきます。



 次に貨物損害保険の保険金額については、 貨物1トン当たり一律5,000Crであるとします。

 MT版貿易ルールの貿易品仕入れ価格(基本価格)が、1トン当たり一律4,000Crであること (実際には、仕入れ世界の宇宙港、テックレベル、世界の特徴などで上下します)。 その基本価格に貨物運賃(1トン当たり1,000Cr)を加えた金額として求めました。
 貨物が海賊に奪われた場合、荷主はこれだけの損害を受けていると考えた訳です。
 保険の基本条件として、受けた損害以上の保険金を受け取ることはできません。
 どんなに高額の保険料を支払ったとしても、貨物1トン当たりの損害が5,000Crであれば、5,000Crまでの保険金しか受け取れないのです。
 これは複数の保険会社と契約を結んでも同じことで、それら複数の保険会社が支払う保険金の総額も、5,000Crにしかなりません。



 更に、商船が辺境航路を航行中、海賊船に遭遇する可能性は、 星系離脱時に2.8%、星系到着時に2.8%だと仮定しました。
 MT版の宇宙船遭遇ルールから考えて、2.8%(=36分の1)という数字は妥当な数字だと思われます。
 遭遇ルールそのままですと、100倍直径だけでなく、10倍直径や衛星軌道上での遭遇も有り得るのですが、 そうした状況は海賊との遭遇に相応しくないと考えました。
 海賊との遭遇は、100倍直径の周辺で起こる2.8%のみです。
 離脱時と到着時に2.8%ずつですから、ジャンプ1回当たりの遭遇率は5.5%です。

 そして、海賊船に遭遇した商船はすべて自動的に略奪されてしまう、と仮定しました。
 個人的には、海賊の横行する辺境航路で無防備なまま航行する商船が居るとは思えませんし、 すべての商船が無条件に降伏することも有り得ないと思うのですが、 保険料の計算を簡略化するため、そういうことにしておきます。
 海賊に略奪される確率は、遭遇率と同じ5.5%になりました。



 最後に、海賊に略奪された商船の運命については、何も考えていません
 解放されて、貨物以外の損害を一切負わずに目的地へ到着するかも知れませんし、反対に、乗組員や旅客ごと爆破されてしまうかも知れません。
 私の価値観では、そのまま解放されることは滅多に有り得ないのですが。



 以上、保険金額5、000Crと、海賊に略奪される確率5.5%より、 貨物損害保険の保険料は最低でも274Crが必要です。 この金額に保険会社の経費として4〜5割を加算して、保険料は500Crになりました。

 この保険料は、ジャンプ1回毎の掛捨てです。
 ジャンプ1回毎に新しく契約をし直さないといけません。




(2)遭遇リスクを加味した貨物損害保険の保険料

 上記では、海賊船に遭遇する可能性は、星系離脱時に2.8%、星系到着時に2.8%だと仮定しましたが、 そうすると辺境航路の航行リスクが高くなり過ぎてしまいますので、もう少しリスクを下げることにしました。
 MAG様の「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」より、宇宙港規模の概念を取り入れます。 具体的には、宇宙港規模4の星系での海賊遭遇率を0.9%、 宇宙港規模3の星系での遭遇率を0.08%にして、再計算しました。
 再計算の結果は以下のようになります。


           表17 貨物損害保険の保険料−宇宙港規模

PIRATE03_FIG17.GIF - 4.13KB

 離脱星系(出発地)と到着星系(目的地)毎に異なる遭遇率を計算に含めるため、 離脱星系と到着星系の保険料を個別に求めて合算することにしました。
 個別の保険料は表17の金額を用いますが、その計算根拠は以下のようになっています。



 宇宙港規模6以上の星系において海賊船と遭遇する可能性(リスク)は有りません。 安全な星系を離脱して、到着する場合は、貨物損害保険の必要がないということです。 ですから保険料の負担は無し=0Crになりました。

 宇宙港規模5の星系を出入りする場合、宇宙船との遭遇は確実(100%)です。 遭遇した宇宙船が海賊船である可能性は、2.8%(=36分の1)。 よって海賊船との遭遇率も2.8%(=36分の1)
 星系を離脱するか、到着した際の遭遇1回だけしか考慮しませんので、保険料は150Crになりました。

 宇宙港規模4の星系では、宇宙船との遭遇率が33.3%(=3分の1)。 遭遇した宇宙船が海賊船である可能性は2.8%(=36分の1)なので、掛け合わせると0.9%(=108分の1)
 この遭遇/被害率で保険料を計算すると、50Crになります。

 宇宙港規模3の星系になると、宇宙船との遭遇率は2.8%(=36分の1)しかありません。 遭遇した宇宙船が海賊船である可能性は2.8%(=36分の1)のままで、掛け合わせると0.08%(=1,296分の1)
 この遭遇/被害率で保険料を計算すると7Cr程度にしかならないのですが、計算を簡略化するため10Crにしておきます。



 上記の数字より、例えば宇宙港規模7+のリジャイナ星系から宇宙港規模5のレック星系へジャンプする場合、 離脱星系の遭遇リスクはゼロなので保険料0Cr、到着星系の遭遇リスクは2.8%なので保険料150Cr。
 この2つを合算して貨物損害保険の保険料は150Crになりました。

 そして更に、宇宙港規模5のレック星系から宇宙港規模4のカーカへジャンプする場合、 離脱星系の遭遇リスクは2.8%なので保険料150Cr、到着星系の遭遇リスクは0.9%なので保険料50Cr。
 合算して貨物損害保険の保険料は200Crになりました。

 海賊の危険が存在する多くの航路において、ジャンプ1回当たりの保険料は100〜300Crになる筈です。




(3)ノンフリート等級を加味した貨物損害保険の保険料

 以前から私が貨物損害保険の保険料に組み込みたかったものは、ノンフリート等級です。
 海賊被害に遭わないよう大金を払って商船を武装し、情報収集に努め、 航行中の警戒を密にするなど必死に対策を講じている商船と、 非武装で、海賊情報を気にせず、海賊が呼び掛けるだけですぐに降伏してしまう商船とが、 一緒にされるような事態は許せません。
 その商船が十分に長い間、海賊被害に遭っていないのであれば、再度の契約を結ぶ際、その実績が考慮されるべきでしょう。

 という訳で、某極東島国の自動車保険で有名なノンフリート等級をちょっとアレンジして適用してみました。



 貨物損害保険の保険料を算出する際、その貨物を運ぶ商船の経歴が調査されます。
 その商船が何の信用情報も持たない場合、貨物損害保険の保険料は 6等級から始まるのです。
 保険料は通常の2倍(200%)になりますが、こうなるのは最初だけ。
 契約1回(ジャンプ1回)を無事に、海賊被害に遭わずに終える度、保険等級は1つずつ上がっていきます。
 ジャンプ1回はほぼ2週間ですから、1ヶ月後には8等級の140%、 2ヶ月後には10等級の120%、3ヶ月後には12等級の100%まで下がります。
 それほど保険料の高さを感じることはないでしょう。

 もし海賊被害に遭って、荷主が保険金を受け取った場合、 保険料の等級3等級だけ下がります。
 ペナルティとしては少し控えめかも知れませんが、連続して海賊被害に遭う不幸な商人が居ないとも限りませんので、 参考にした自動車保険と同じ程度のペナルティに留めました。
 ジャンプ3回を無事に過ごせば、元の保険料=同じ等級に戻れるのですから。
 貨物損害保険を悪用して儲けようとする方々への対処は、保険調査員に任せます。

 当然ながら、過去に何度も海賊被害に遭っている商船と、 滅多に遭わない商船とでは、保険料が変わってくるでしょう。
 以下にその保険料を示します。


        表18 貨物損害保険の保険料−ノンフリート等級

PIRATE03_FIG18.GIF - 11.8KB

 今回も、離脱星系(出発地)と到着星系(目的地)毎で遭遇率が異なる可能性を考慮して、個別に計算しました。
 その2つを合算して、航路全体の保険料にします。



 同じ航路を例に取りますが、リジャイナ星系(宇宙港規模7+)からレック星系(宇宙港規模5)へジャンプする場合、 6等級の商船で貨物を運ぶと保険料が300Crですが、 12等級の商船で運ぶと半額の150Crに変わりました。
 16等級以上になれば、保険料は120Crまで下がります。

 レック星系からカーカ(宇宙港規模4)へジャンプする場合、 6等級の商船で貨物を運ぶと保険料が400Cr12等級の商船で運ぶと200Cr16等級以上では160Crになりました。

 実際のところ、辺境航路を航行している多くの商船の等級は、 12等級から20等級になっていると思われます。
 ノンフリート等級を考慮しても、多くの航路において、 ジャンプ1回当たりの保険料は100〜300Crになるでしょう。




(4)貨物損害保険料の武装割引

 私の考察「Pirate_5 冒険商人の生活」より、 海賊行為に走った自由貿易商人(=冒険商人)は武装した商船を襲撃できない、 正確には、武装した商船を襲撃した冒険商人は高い確率で返り討ちに遭う、ということが判明しました。

 そのあたりの事情を理解した冒険商人は、武装した商船を襲撃しません。
 彼らは、非武装の商船だけを狙うようになるでしょう。

 遭遇する海賊船の半数冒険商人ですから、 商船が武装することによって、海賊との遭遇/被害率を半分に減らすことが可能です。
 それならば、武装した商船は貨物損害保険の保険料も半額に減らせるのではないでしょうか?


      表19 貨物損害保険の保険料−ノンフリート等級(武装割引)

PIRATE03_FIG19.GIF - 11.7KB

 表18の保険料を半額にしただけですが、武装した商船はこれだけの割引を受けられると想定しました。
 武装した商船の場合、多くの航路においてジャンプ1回当たりの保険料は50〜150Crになる訳です。

 保険料が半額になっても商船経営にあまり影響しませんが、荷主にとっては大きなメリットとなります。
 保険料の高い非武装商船と、保険料の安い武装付き商船が同じ目的地へ向かうのであれば、 荷主の多くは、保険料の安い武装付き商船を選ぶのではないでしょうか?

 あるいは投機貿易を専らに行っている商船ならば、自分の運ぶ貿易品の保険料が安くなることは、貿易の利益を増やすことに繋がります。
 船倉容積が82排水素トンのA型自由貿易船ならば、保険料半額によって 1ヶ月(ジャンプ2回)当たり8,200〜24,600Crの経費を節約できました。
 200排水素トンのR型商船ならば、1ヶ月20,000〜60,000Crの経費削減です。



 もちろん、武装することはメリットばかりではありません。
 まず何より、艦載兵器は高価です。
 その購入費用を商船全体の購入費に上乗せするとしても、 月々のローン返済額は5,000〜24,000Crも増えてしまうでしょう。
 また、兵器(砲塔)を搭載した分だけ、貨物の積載量が減ってしまいます。
 搭載する砲塔が1基だけであっても、その容積は最低でも1排水素トン。 レーザー兵器を搭載する場合はパワープラントと燃料タンクの容積を含めて3排水素トンが占有されてしまいました。
 1ヶ月の間にジャンプを2回行うことが一般的ですから、 貨物の積載量が1トン減ると収入は月々2,000Crの減少、3トン減ると月々6,000Crの収入減です。

 武装を搭載した場合の経済的デメリットを以下の表にまとめました。


         表20 商船の武装コスト(経済的デメリット)

PIRATE03_FIG20.GIF - 7.24KB

 海賊船ではなく商船の武装として、幾つかの艦載兵器を評価してみました。

 左端は兵器名
 基本は単架砲塔ですが、三連架砲塔も追加してあります。
 混合砲塔は、パルス・レーザー、ミサイル、散乱砂砲1門ずつの砲塔のこと。

 左から2番目は、月々のローン返済の増分(単位はKCr)

 3番目は、その武装に必要な容積(Hton=排水素トン)で、4番目が貨物運賃の減収分(KCr)になります。

 右端が、ローン返済と貨物運賃減収分の合計(KCr)
 武装を搭載した商船は、ここに示した金額だけ、月々の利益が無くなります。



 貨物損害保険の保険料を半額に下げるためには、商船に武装を搭載しなければなりません。
 個人的に、散乱砂砲を武装とは認めたくありません。
 最も安価な武装として、単架ミサイル砲塔1基を考えてみましょう。
 すでに述べましたが、保険料半額によって得られる経済的メリット(経費の削減額)は、 A型自由貿易船で月々8,200〜24,600Cr、 R型商船で20,000〜60,000Crでした。

 ミサイル1門を搭載するだけで商船の貨物容積は1トン減少し、 ミサイル砲塔の購入費用と合わせて月々5,200Crの減益となります。
 A型自由貿易船R型商船も、十分に元が取れました。
 海賊の脅威がない安全な航路を航行する場合、武装は単なるデッド・ウェイトにしかなりませんが、 海賊の跳梁跋扈する危険な辺境航路であれば、十分に採算が合うのです。

 より強力な三連架ミサイル砲塔を搭載した場合、商船の減益は月々11,500Crになりました。
 R型商船は十分に黒字ですが、A型自由貿易船は航路によって引き合いません。
 コストから考えてA型自由貿易船に搭載する武装は ミサイル1門が一般的になるでしょう。

 パワープラントの増設が不可欠であるためパルス・レーザーはたった1門であっても高く付きました。
 単架パルス・レーザー1門を搭載した商船は、月々19,700Crの減益となります。
 それでも、R型商船ならば元が取れるでしょう。
 それに加えて射撃の度に1発20,000Crのミサイルを消費せずに済むという点はとても魅力的です。

 パルス・レーザーとミサイル、散乱砂砲を組み合わせた混合砲塔は、23,900Crの減益をもたらします。
 A型自由貿易船混合砲塔を搭載するのは、少し勿体無いかも知れません。
 私の過去のプレイでは、多くのA型自由貿易船が 武装として混合砲塔1基以上を搭載しておりましたが。
 R型商船の場合、混合砲塔1基の搭載は極めて妥当と言えるでしょう。
 コストは三連架ミサイル砲塔2基とほとんど変わりません。 そのどちらを選ぶかは、船主/船長の趣味によると思われます。

 三連架パルス・レーザーを搭載する商船は、まず存在しないと思われます。
 あまりにもレーザー3門はあまりにも高価であり、また、減益額が大きすぎました。




(5)貨物損害保険による物価上昇

 海賊被害だけに限定された保険、貨物損害保険が辺境世界の物価にに与える影響を考えました。

 とある世界で生産できないもの(例えばハイテク工業製品)を欲しいと思った場合、その商品を輸入する必要が生じます。
 当然ながら、その品物は恒星間宇宙を渡ってくる必要があるでしょう。
 トラベラー世界の恒星間輸送コストは、1排水素トン当たりジャンプ1回1,000Cr。
 1排水素トンは13.5キロリットルですから、詰め物や隙間等の要素を考慮しても10.0キロリットルの商品を運べます。
 商品10リットル当たりの輸送コストが1.0Crという計算になりました。

 つまり、恒星間の輸送コストは10kg当たり1.0Cr(≒100円)になった訳です。
 恒星間を輸送される商品の価格は様々ですが、10kgも重量があれば価格が1.0Crなどということは滅多にありません。
 適当に「帝国百科」を見て調べましたが、p.53機械工具セットは30リットルで1,000Cr。 10リットル当たりの価格は333Crで、輸送コストが加わっても334Crしか変わりません(値上がりは0.3%)。
 汚染大気での必需品、p.64濾過マスクは1リットルで10Cr。 10リットル当たりの価格は100Crになり、輸送コストを加えても101Crです(値上がりは1.0%)。
 調べたサンプルは2つだけですが、輸送コストがそれほど高くなることはなさそうです。

 もっとも、この計算方法は、MT版貿易ルールの貿易品売買価格(基本価格)が、 1トン当たり一律4,000〜5,000Crであることに矛盾してしまうので、不都合があるかも知れません。



 今度はMT版貿易ルールの価格に準拠して、貿易品1トンの仕入れ価格が1トン当たり一律4,000Cr、 貨物運賃(輸送コスト)が1トン当たり1,000Crであると考え、計算してみます。
 難しく考えるまでもなく、貿易品1トンの販売価格は1トン当たり一律5,000Crが必要となり、 恒星間輸送される商品の価格は、ジャンプ1回当たりで25.0%の価格上昇になりました。
 ジャンプ2回で50.0%、3回で75.0%です。
 ちょっと暴利のような気もしますが、MTの貿易ルールから推測する限り、妥当な数字ですね。

 納得しがたいでしょうが、貿易ルールの価格(1トン当たり一律4,000〜5,000Cr)を変えようとするのであれば、 トラベラー経済の基本概念である宇宙船のローン返済額や旅客/貨物運賃など、あらゆる価格を見直す必要が出てくるでしょう。 物凄く大変な作業となりますので私はあまりお勧めしません。できることならば納得してください。



 ここで、貨物損害保険の保険料を加えてみます。
 (1)〜(4)の各パターンより、 商品1トンの保険料はジャンプ1回で50〜500Cr
 仕入れ価格4,000Crの商品に掛かる保険料ですから、輸送コストは1.25〜12.5%の範囲で増えました。

 従来は4,000crで仕入れた商品を5,000Crで売っていましたが、 貨物損害保険の保険料を加えたことで売値が5,050〜5,500Crに値上がりした、ということになります。
 予想に反して、あまり変わりませんでした。
 どこかの公式設定で、辺境星系は海賊相手の保険料が加算されることで輸入品の物価がとても高くなる、 という記述を読んだ記憶があるのですが、そういう状況にはなりそうもありません。





6.富の集中

 これまでの考察で、何度か 「海賊の活動を帝国やメガコーポレーションが黙認しているならば」 という表現を用いてきました。
 その発言の根拠をこれから説明させて頂きます。

 スピンワードマーチ宙域の帝国領において、どれだけの世界がどのレベルで、恒星間通商に参加しているか実際に調べてみました。 下記の表21をご覧下さい。

        表21 帝国領内272星系の年間貿易量(宇宙港規模)

PIRATE03_FIG21.GIF - 11,725BYTES

 スピンワードマーチ宙域の帝国領内における、貿易量の大半(63.4%)は、 わずか4つの星系によって占められています。 この4星系だけが宇宙港規模8以上の貿易量を持っているのです。 周辺星系の貿易事情を考えると、ちょっと納得できない点もあるのですが、そのあたりはご容赦ください。
 モーラフォーニスグリッスントリンの4星系で貿易量の大半が占められていますから、 大型商船の過半数もこれらの星系間で運行していることになります。

 次に貿易量の大きい星系、宇宙港規模7〜7+の星系は29個ありました。 ですが、これらの星系の貿易量は、合計しても28.5%。前述した4星系の貿易量の半分以下です。 これらの星系間で運行している商船の数も半分以下になるでしょう。

 下記の宙域図は、スピンワードマーチ宙域図の中から宇宙港規模7以上の星系を抜き出して色を付けたものです。 これらの33星系(帝国外の世界を含めれば41星系)だけで、恒星間貿易の92%を独占していることが分かりました。
 星系数にして12%しかない一部の星系が、恒星間貿易の92%を独占している訳です。 不公平だと思いませんか?

 赤色が宇宙港規模7+〜8+、オレンジが宇宙港規模7の星系です。

PIRATE03_FIG22.JPG - 212,994BYTES

      図22  宇宙港規模7以上の星系だけを抜き出した宙域図


 差別は良くない。帝国領内の残り239星系は貿易量の8%を支えているではないか。と思われるかも知れません。

 では次の段階として、宇宙港規模6以上の星系を抜き出してみましょう。
 宇宙港規模6〜6+の星系は92個です。 これらの星系の貿易量合計は7.6%
 上記の数字と合わせて、宇宙港規模6以上の星系数は125星系で、 貿易量の合計は99.5%でした。
 星系数にして46%の世界が、恒星間貿易の99.5%を占めているのです。

 緑色が宇宙港規模6+、水色が宇宙港規模6の世界です。

PIRATE03_FIG23.JPG - 215,232BYTES

      図23  宇宙港規模6以上の星系だけを抜き出した宙域図


 色を付けていない星系は、宇宙港規模6未満の星系ということになりました。
 反対に考えると、宇宙港規模6未満の星系数は147星系。 星系数の半分以上を占めていながら、貿易量の合計はわずか0.5%しかありません。
 帝国領内の貿易が、いかに偏って行なわれているかが分かるでしょう。 宇宙港規模6未満の147星系は、ほとんど恒星間貿易に関わっていない、そう断言しても良い程なのです。
 メガコーポレーションなどの大手企業が、その活動を宇宙港規模6以上の星系に限定していても問題になりません。 彼らは帝国経済の99.5%をすでに抑えているのです。 経済力の弱い辺境世界に進出しても、得られるものはほとんどないでしょう。



 宇宙港規模5未満を見ると、その傾向はさらに極端になりました。 宇宙港規模5未満の星系数は85星系(全体の31.3%)もあるのですが、 その貿易量合計は、わずか0.05%しかないのです。

 帝国政府や海軍関係者が公に認めることはできませんが、 宇宙港規模5以下の星系で活躍している海賊船の存在は、無視しても構わないのではないでしょうか。
 ほとんどの帝国市民(及び帝国企業)は、海賊船の活動から何の被害も被っていないのです。
 そんなものより、宇宙港規模の大きな星系、帝国への納税額が大きい世界でしばしば発生する、 ハイジャックやテロ活動を取り締まる方がずっと重要でしょう。





7.まとめ

 海賊船が活動している109星系について、経済状態や地上の防衛体制について考察しました。

 宇宙港規模が6以上の7星系は、 1つの例外(トリンズ・ベール星域のトラルサ)を除いて十分な経済力を備えていました。 それ故、大規模な星間傭兵を雇うか、あるいは帝国海軍の庇護を受けることができます。
 例外となっているトラルサは星系内に大規模な「遺跡」を有していましたから、 帝国海軍と海兵隊によって守られているでしょう。
 という訳で、宇宙港規模6以上の星系で、海賊船は活動することが出来ません。

 宇宙港規模5〜5+の32星系で、星間傭兵を雇うだけの経済力を備えている星系はわずかです。 経済力を備えている星系でも、星系内の治安維持に予算を割くかどうかは分かりませんが。
 宇宙港規模4の57星系、3以下の13星系で経済力の高い星系はありません。
 宇宙港規模5以下の星系では、帝国海軍のパトロールを除けば、海賊船の活動を抑える力は存在しないようです。

 地上を守る防衛大隊の規模についても調べましたが、地上襲撃型の海賊を撃退できるだけの規模と装備(テックレベル)を兼ね備えた防衛大隊は、 上記109星系の中に、ほとんど存在しません。
 宇宙港規模6以上の7星系と、宇宙港規模5の一部の星系だけが、海賊を撃退可能な防衛大隊を保有しています。 それ以外の星系は、海賊の襲撃に対して無防備だと分かりました。

 特定の星系に定住する海賊の派生型として、略奪しない海賊船を検討してみました。 「星間傭兵」として星系政府に雇用されたり、あるいは通行料を徴収することで生計を立てる海賊です。
 これらの海賊も宇宙港規模5以上の星系でなければ存在できません。 しかも、大規模な海賊団を形成するためには、宇宙港規模6以上の経済力が必要なのです。




2010.03.14 初投稿。
2012.02.19 5.海賊限定の貨物損害保険を加筆して、再投稿。