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 頑張れ! 「萌え」ロボット!

 近年、ソロマニ・リム宙域では、DKロボテック社の「アダリー」、「萌え」コンパニオン・シリーズの大ヒットにあやかったものか、擬生物型ロボット、特に美少女型ロボットの新規発売が、続出しています。
 今回は、そんな新興ロボット会社の中でも特にユニークなロボットの販売を開始した「センタ・マウント社」を紹介しましょう。 

 

 ナアシルカ Z−16デスクボット(101ロボットのNo05を参照して下さい)は、パワープラントも、移動装置もない設計ですが、わずかな人間の助けで、簡単な管理作業をこなしています。
 トラベラー協会施設の多くで使われており、人間よりも有能で、感情表現のおかげで、丁寧な挨拶が出来るので、お客様にも好評です。
 オフィスでの使用においては、特に、まだ書類を使って事務処理を行なう場面で、3本の軽量腕が威力を発揮します。
 また、上級管理職は機械へのデータ入力が下手なことが多いため、コストは高くても、デスクボットを速記者として、使っているようです。
                              以上、ナアシルカ社のウェブ広告より引用


 スター・サーヴァンツ社の机上ロボットH2−X(同じく、101ロボットのNo22を参照して下さい)は、特にホテル業務に優れています。
 トラベラー協会のホステルのうち、約20%がフロント係、および、通信オペレータとして、このロボットを使っているのです。
 …中略…
 この机上ロボットは、オフィスやホテル、博物館、学校などの受付に置かれています。
 通常、通信システムと連動しているので、訪問客を告げたり、保安要員を呼んだりすることも出来ます。
 自分の仕事に関しては十分な知識を持っていますし、建物の別の場所にあるコンピューターから、さらなる情報を得ることも可能です。
                         以上、スター・サーヴァンツ社のウェブ広告より引用

 

「アンジェラ」が作られることになった、その背景

 公式な場では一切語られていませんが、上記2種の机上ロボットは、実際にこれらのロボットを使っているオフィスの管理職や、トラベラー協会の従業員には、とても不評です。
 なぜなら、移動装置を持たない設計であるため、ロボットの手が届かない場所にある品物を取ることが出来なかったからでした。
 以下で、その具体例を説明します。

サンプル、その1  N課長(48)の憂鬱な毎日

 ある証券取引会社に勤める「N課長(48歳)」は、こう語ります。

 「私の部署は、企業秘密の流出や、社員によるインサイダー取引を未然に防止するために、ナアシルカ社のデスクボットを導入しました。
 ロボットならば、企業秘密を社外に持ち出して売りさばいたりしませんし、利益に目が眩んで、インサイダー取引に手を出すリスクも有りませんから。
 私の会社は、部下の不祥事が起こった場合、上司にも管理者としての連帯責任を取らせるという厳しい社則が存在するのです。
 ですから、デスクボットの導入以前は、部下の言動が気になって、気になって仕方ありませんでした。」

 デスクボットの導入によって、部下の不正に巻き込まれる心配から開放され、楽になった筈のN課長だが、なぜか顔色は冴えない。
 その原因を尋ねると、彼は以下のように答えてくれた。

 「デスクボットに仕事をさせるためには、あらかじめ、デスクボットの手の届く範囲に、必要な資料や書類を置いておかなければならないのですよ。

 デスクボット3台が1日に片付ける書類の量といったら、それはもう、相当なものです。
 私の部署は、機密保持の観点から、私以外の人間が入れません。
 他の部署の社員は、部屋の入り口までならば書類を揃えて届けてくれますが、部屋の入り口からデスクボットの前へ書類を運ぶのは、私の仕事なのです。
 その逆も同じでした。
 処理が終わった書類の片付けも、全て、私がしなければなりません。

 時には、書類の山が崩れて、床に落ちることもあります。
 デスクボットが、ペンを落すこともあります。
 私はその都度、書類やペンを床から拾い上げて、デスクボットに渡します。
 そうしなければ、デスクボットの仕事が止まってしまうからです。

 私は今まで25年間、ひたすら会社に忠誠を尽くしてきました。
 不正も横領も、悪いことは何ひとつしていません。
 それなのにどうして、この歳になってから、ロボットの下働きをしなければならないのでしょう」

 N課長が涙ながらに語ったところによると、書類やペンが床に落ちる音を聞くだけでも、反射的に飛び上がってしまうほどのストレス状態にあるらしい。
 医師には休養を勧められたが、課の業務が滞ることを考えたら、とても休みを取っては居られないと言う。


サンプル、その2  ホテルマンB君(20)の鬱屈

 また、トラベラー協会のある宿泊施設で働く若いホテルマン、B君はこう語った。

 「僕は、途中入社なんです。
 フロントで働いていたベテラン社員が急病で入院してしまったから、短期間でもいいからということで、雇われた訳です。
 以前は、宙港街のホテルで働いていました。
 このホテルとは、何もかもが全然違う、格下の安ホテルですよ。
 建物は古くて汚くて、仕事はつらくて、おまけに給料も安かったけれど、ロボットは1台もいなかったなぁ。
 そうですね。
 契約期間が終わったら、元のホテルに戻りたいです。」

 このホテル(あえて名前は伏せるが、都心の一等地に建てられた一流ホテルである)に転職したことで、給料も余暇(自由時間)も2倍以上に増えたと白状したB君である。
 何もかも良いことずくめのようだが、一体、それの何処が不満だというのか。

 「フロントに置かれている、あのロボットが大嫌いなんです。」

 人当たりの良さそうなB君が、顔を歪めて吐き捨てるように言った「あのロボット」とは、ホテルの管理業務のために導入された、スター・サーヴァンツ社のH2−Xのことでした。

 「言葉遣いは、いやらしいほど丁寧だし、お客様の名前や部屋番号は絶対に間違えないし、おかげでチップの額は増えましたけど……。
 あれはロボットなんですよ。
 自分じゃ何もしない……こともないですが、全然、体を動かさないじゃないですか。
 そもそも、手だって付いてないし。

 この間なんて、山ほどある伝票の整理と計算をしている最中に、横からいきなり『8324号室のルーム・キーを取ってください』と言われて、切れそうになりました。
 そのぐらい、自分で取って欲しいです。
 こっちだって、忙しいんですから。

 お客様の手荷物も、あれは絶対に、自分じゃ受け取りません。
 それなのに、『246番のロッカーにしまってください』とか言われると、猛烈に腹が立ちます。

 僕は、ロボットに顎でこき使われるなんて、まっぴら御免です。
 2倍の給料をもらったって、割りに合いません。
 そうじゃないですか?
 僕の前にいたベテラン社員の方が入院した原因だって、きっとロボットに指図されたストレスのせいに決まっています。」

 このように、不用意な机上ロボットの導入は、ロボットに接する従業員の、モチベーション低下を引き起こしてしまいます。
 ひいては、企業全体の業績にも、大きな悪影響を及ぼしてしまうことでしょう。


「センタ・マウント社」が提案する、それらの解決策

 社会において、ロボットの活躍場面が増えることは、科学技術の発展と、公共福祉のために必然的なことでしょう。
 しかし、そのロボットの導入過程では、前述のような悲劇が起きてしまう可能性もあります。
 ロボットを導入することで、企業は経費の節約やコストダウンに成功し、従業員はつらい作業から開放されて、より多くの余暇を得ることができる。
 そんな状態が理想的です。
 しかし残念ながら、なかなか、そう上手くはいきません。

 そんな悩みから、経営者と従業員の双方を解き放ってくれる天使が、「アンジェラ」です。
 「アンジェラ」は、新興のロボットメーカー「センタ・マウント社」が開発し、販売を開始した擬生物型ロボットで、なんと1台当たりの価格は5万クレジット
 擬生物型ロボットとしては、非常識すぎる低価格ですが、それもその筈、「アンジェラ」は、ロボットでありながら「頭脳」を備えていないのです

 設計者のタロ・ヤマダ氏は、昨年、DKロボテック社を退社したばかりの技術者です。
 DKロボテック社を創設した「ダニエル・モス博士」の一番弟子を自称するヤマダ氏が、いかなる経緯をもってロボテック社の設計部門を退き、遠く離れたディンガーで新たなロボット会社を設立したのか。
 モス博士もヤマダ氏も、揃って口をつぐんでいるため、その理由は謎のままです。
 しかし、ヤマダ氏がロボット市場に登場させた「アンジェラ」は、DKロボテック社の「アダリー」と同じように、ソロマニ・リム宙域で大きな混乱を引き起こしました。


擬生物型ロボット 「アンジェラ」シリーズ

ANGELA-STD.GIF - 4,250BYTES HR001−Angela12/Angela13/Angela15

URP 

 26X02-N2-00000-3A00 Cr51,250  36.9kg  44.0L  (TL=12)
 26X12-N2-00000-3B00 Cr52,200  35.9kg  44.0L  (TL=13)
 26X32-N2-00000-3D00 Cr54,960  35.9kg  44.0L  (TL=15)

ボディ

 9/22(ジャック) 擬生物型

動力

 蓄電池=1.0kwh 活動時間=4分(節約モードで10分)

歩行

 パワー/重量比=13 接地圧=4.6 走行速度=60km/h 不整地=42km/h

付属装置

 頭部=40%(8L) 超軽量腕×2

胴体

 高感度触覚 動力インターフェース 従部ユニット 通信機5km

頭部

 視覚×2 聴覚×2 嗅覚 音声合成装置

主部A
TL=12

主部ロボットとして、ナアシルカ製 Z−16デスクボットを利用した場合
                                     (TL=12)
低自律型 上級命令 知力4 教育度5
  (Angela12を、同時に2台までコントロールできます)
応用プログラム
  <管理−2><追加言語−2><従者−2><スチュワード−2>
  <清掃−1><感情表現>

主部B
TL=13 

 主部ロボットとして、スター・サーヴァンツ製机上ロボットH2Xを利用した場合
                                     (TL=13)
低自律型 上級命令 知力5 教育度3
  (Angela13を、同時に2台までコントロールできます)
応用プログラム
  <管理−1><従者−1><スチュワード−1><感情表現>

主部C
TL=15

主部ロボットとして、ナアシルカ製 Z−19デスクボットを利用した場合
                                     (TL=15)
低自律型 上級命令 知力7 教育度5
  (Angela15を、同時に3台までコントロールできます)
応用プログラム
  <管理−2><追加言語−2><従者−2><スチュワード−2>
  <清掃−1><感情表現>  

 

「アンジェラ」の特徴

 「アンジェラ」は、美女美少女の姿をした、擬生物型ロボットです。
 非常にスリムですが、それゆえに、顧客の要望に応じて、どのような形にも「肉付け」が可能でした。
 長身でスレンダーなモデル体形にも、雑誌のグラビアを飾るアイドルのようなグラマラス体形にも、あるいは、小柄なローティーンの少女体形にも、自在に作り変えることが出来るのです。

 そのボディは、わずか37kgと超軽量。
 「抱っこ」できるようにするため、反重力装置を搭載する必要もありません。
 タロ・ヤマダ氏は、「社会に広く普及させるためには、何よりもまずコストダウン。次に軽量化を考えました」と語っています。
 軽量化の努力が反重力装置の搭載を不要にし、その結果、さらなるコストダウンに成功したとも言えるでしょう。

 軽量化をとことん追及した結果、「アンジェラ」は、最小サイズの燃料電池すら、搭載していません。
 「アンジェラ」の動力源は、動力インターフェースと、わずか1kwhの容量しか持たない蓄電池に依存しています。

 これは、燃料電池の搭載による総重量の増加を嫌った結果で(TL15のものですら15kg、TL12ならば30kgも総重量が増えてしまうためです)、「アンジェラ」は、動力インターフェースの動力ケーブルが届く範囲(おおよそ、半径5メートルの円内)でしか、動けなくなりました。
 しかし、一般のオフィス内、ホテルのフロントなどで業務に就く場合には、これで十分でしょう。
 従来の机上ロボットは、全く動けなかったことと比べるならば、その行動範囲は、無限に拡大したと言っても良いほどです。

 どうしても、動力ケーブルが届く範囲の外へ移動する必要に迫られた場合には、動力インターフェースをコンセントから引き抜いて、内蔵した蓄電池で行動することも可能です。
 最大出力で4分、電力を節約しながら行動すれば、10分は活動できました。
 移動した先で新たなコンセントを見つけ、接続するためには十分すぎる時間でしょう。

 テックレベルの上昇に連れて、蓄電池の性能が向上しますので、「アンジェラ」はより軽量化されます。
 コストダウンと軽量化が最優先事項ですから、活動時間の延長は考慮されていません。

 装備された2本の超軽量腕は、繊細な作業に威力を発揮します。
 その力は弱く(筋力3に相当しています)、重量物の運搬には向いていませんが、オフィス内での書類運搬や、整理作業には十分な能力です。

 従部ユニットと通信機(5km)は、オフィス内での使用を前提としています。
 通信距離は短く、建物内では50mがせいぜいですが、その代わり、高速なデータ通信を可能としました。
 「アンジェラ」搭載の通信機は、ノイズに強い特性を持っています。

 ロボットの命とも言える頭脳部を外部に依存するため、「アンジェラ」の使用には主部ロボットの所有(あるいは購入)が、不可欠です。
 主部となるロボットは、どんなロボットでも、「低自律型」以上の基礎論理プログラムと、「上級命令」の基礎命令プログラムを備えていれば大丈夫……の筈なのですが、帝国で販売されているロボットのバリエーションは無数に存在するため、主部ロボットとの組み合わせをすべてで保障することはできませんでした。
 現在までのところ、「センタ・マウント社」は、下記に記した、ナアシルカ製 Z−16/19デスクボットと、スター・サーヴァンツ製机上ロボットH2X、2機種の互換性のみを保障しています。

 それでは、「アンジェラ」の導入によって、前述した証券取引会社のN課長や、ホテルマンB君の職場環境がどのように変わったのか、見てみることにしましょう。

 

サンプル、その1  N課長(48)の充実した毎日

 N課長の部署には、社外秘の機密資料が大量に置かれているため、本来ならば、社内の者でさえ立ち入ることが許されておりません。
 しかし今回に限り、取材のためということで特別に便宜を図っていただき、N課長の職場に、お邪魔させて頂きました。
 流石に、カメラやレコーダーの類を持ち込むことは出来なかったため、写真もスケッチもないのですが。

 結論を先に言ってしまうと、N課長は大変、お元気でした。
 顔色も良く、デスクボット導入以前の体調に戻ったどころか、まるで若返ったかのようにも見えます(これは、N課長を入社の時から知っている、元上司の発言です)。

 課長の机の前には6つの机が置かれ、新たに導入された6台の「アンジェラ」が黙々と事務仕事をこなしていました。
 主部のデスクボットは何処にあるのかと探したら、部屋の隅、衝立に仕切られた狭い区画へ押し込められて、こちらも黙々と作業をこなしています(向けられたデスクボットの背中に、哀愁を感じました)。
 「アンジェラ」を追加購入する際の条件として、N課長の(正確にはロボットに与えられる)業務量は2倍に増やされました。
 しかし、従部ロボットの「アンジェラ」が6台増えたおかげで、業務時間はかえって短縮できたとのことです。

 帰り際、N課長がこっそりと教えてくれたことによると、最近は、書類やペンを落すことが楽しくてたまらないそうです。
 毎日、わざと10回以上落しては、「アンジェラ」を呼びつけて、拾わせているとのこと。


 N課長が勤める証券取引会社の女子用制服(当然のこと、「アンジェラ」も同じ物を着用しています)は、ミニスカートでした。

 

サンプル、その2  ホテルマンB君(20)の幸せ

 ホテルマンのB君は、短期の契約期間が終了したにも関わらず、その契約を更新して、同じホテルのフロントとして働いていました。
 彼が働くその隣には、いつでも「アンジェラ」の姿が見えます。

 「今の仕事ですか、ええ、面白いですよ。
 もしも2倍の給料をもらえるとしたって、この職場を変えたくはないですね。
 え? 以前と言っていることが違う?
 いや、まぁ、その……(横目で「アンジェラ」の様子を窺いながら)状況が変わりましたから」

 後日、彼が語ってくれたところによれば、同じ言葉を使われたにしても、机上ロボットから命令される場合と、綺麗な女性から頼まれた場合では、全く気分が違うというのである。
 このホテルに購入された「アンジェラ」は、事務員風の容姿をしているタイプが多かったが、その中の1台は、B君が尊敬している先輩社員にそっくりなのだと言う。
 その女性社員はすでに退職してしまっているが、彼女からの指示ならば、彼はどんなことでも躊躇なく実行できるのだそうである。

 センタ・マウント社の開発した擬生物型ロボット「アンジェラ」は、間違いなく、少なくとも2人の人間を幸せにすることができました。
 そして、今後もたくさんの人々を幸せにすることでしょう。