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救出ロボットの、普段の「お仕事」は? 番外 Vol.06



 101ロボットのNo46〜47に、テックレベル15で作られた「惑星救出ロボット」というロボットが掲載されています。
 レスキュー車輌と、救急車を兼ねたようなロボットなのですが、反重力ユニットで飛行し、陸上でも海中でも、どんな災害現場にも駆けつけることが出来るとのことでした。

 それを読んでいて、ふと思ったのですが、専門の救出ロボットというものは、果たして経済的に引き合うものなのでしょうか?


 テックレベルの低い世界ならば、救出ロボットは存在しませんから、人間が救出活動の主役になります。
 レスキュー隊員となった人間は、毎日、訓練に訓練を重ね、災害時の出動に備えていることでしょう。
 災害時の救出活動には特殊な技術が必要ですから、訓練を受けていない人間は、現場ではほとんど役に立たないのです。


 その一方、テックレベルの高い世界では、救出ロボットの利用が可能になりました。
 人間と異なり、ロボットに毎日の訓練は不要です。
 あらかじめ与えられた技能プログラムによって、いつでも、ベテランのレスキュー隊員と同じレベルで救出活動を行なえること。
 それが、ロボットの大きな利点の筈でした(もちろん、不測の事態に備えて、人間の指揮官は外せませんが)。
 ならば、救出活動の要請がない時に、救出ロボットが待機しているだけという状況は、非常にもったいないのではないでしょうか?

 ハード面での制約はありますが、どんなロボットでも、救出ロボットには成りえます。
 「救出」や「医学」の応用プログラムを、頭脳に組み込むだけで良いのですから。
 素人の人間を動員する場合とは、明らかに違います。
 そのロボットのハードを活かす「救出」プログラムを組み込む必要はありますが、極端な話、工場から出荷された直後のロボットであっても、一人前の救出ロボットとしての活動が可能なのですから。

 そんな状況で、高価であり、つぶしの利かない専門的な救出ロボットというものは普及できるのでしょうか?
 倒壊した建物や横転した輸送機器を持ち上げるならば、貨物操作ロボット建設ロボット試掘ロボットでも十分に対応できます。
 レーザー溶接機を装備しているロボットも多いですから、穴あけも容易でしょう。
 応急処置ならば、従者ロボット看護ロボットの方が適任だと思います。

 また、救出した患者の移送も、ロボットの腕に抱えて飛行するよりは、エアラフトなどの輸送機関に寝かせて運んだ方が、はるかに安全な筈です。
 せめて、担架に寝かせるぐらいのことはして欲しいのですが、惑星救出ロボットに仮設寝台などの設備は見当たりません。
 ショック状態にある筈の患者を腕に抱えて、つまり、露出した状態で、病院まで送り届けるという発想には、大きな疑問を感じました。


 上で述べたような、貨物操作ロボット建設ロボット試掘ロボット従者ロボットなどに「救出」プログラムを組み込んでおき、いざという時に、これらのロボットを救出ロボットとして活用したら、どうなるでしょう。

 宇宙港や建設現場での事故には、即時の対応が可能です。
 数も用意できます。
 貨物操作ロボットや、建設ロボットは、すでに現場にいるのですから。
 目の前で事故が起きているのに、それまでの貨物操作や建設作業を続ける監督官は、まずいないでしょう。
 それまで行なわせていたロボットの作業を一時中断して、救出活動を行なうことに問題はありません。

 街中や屋内での事故も同様です。
 テックレベルの高い世界ならば、街中を歩いているロボットや、商店などで働いているロボットも多いことでしょう。
 救急車を呼ぶよりも、はるかに短い時間で、上記のロボットは現場へ駆けつけることが出来ます。

 高度なレスキュー作業のように、特殊な装備が必要な場合に備えて、専門の救出ロボットは確かに存在するでしょうが、そのロボットに頭脳を搭載する必要はないと考えます。
 「救出」プログラムを備えた主部ロボットが、近くに存在すれば、十分なのですから。




海辺の「ビアトリス」

 暑い夏の日、ディンガーのプライベート・ビーチにて、ひとりの男性が数人の仲間と、数台の「ビアトリスSuper」を連れて、休暇を楽しんでいました。

 ところが、男性の被っていた帽子が風に飛ばされ、海の中へ落ちてしまったのです。
 持ち主の男性は躊躇うことなく、「ビアトリスSuper」へ「帽子の回収」を命じました。
 「ビアトリスSuper」は命令に従い、海中へ足を踏み入れると、波間に漂う帽子に向かって、歩き始めます。

 ところがその時、「ビアトリスSuper」のボディは、浮力によって不安定な状態に陥っていたのでした。
 「ビアトリスSuper」の比重は、わずか1.05。
 ボディの大半が水中に沈めば、浮力によって「ビアトリスSuper」の自重はほぼゼロのレベルまで、軽くなってしまいます。
 屋内プールのように、水が動かない環境ならば、それでも問題はないでしょう。
 しかし、そこは海辺であり、風が強い天候のため、荒い波が打ち寄せていたのでした。

 不安定な足元と押し寄せる波のため、バランスを失った「ビアトリスSuper」は瞬く間に水没。
 無線による遠隔操作が不能になると、あっさりと転倒してしまいました。
 転倒の衝撃で、バッテリーの接続部分から浸水したため、大きな故障も起こしています。


 「ビアトリスSuper」の使用説明書には、「水中では使えません」という記述こそ存在していたものの、「海辺や湖畔」での使用を禁止した文章はありません。
 そのため、今回の事件で故障した「ビアトリスSuper」の修理代と代替ロボットのレンタル代は、すべて「センタ・マウント社」の負担になってしまいました。 

 「センタ・マウント社」の営業部門は、「アンジェラ」「ビアトリス」「ダンテ」シリーズの使用説明書に、海辺や湖畔、水上での使用禁止を追加。
 同時に、これらのロボットの防水設計を再検討するように要請します。

 ところが、タロ・ヤマダ氏が容易した解決策は、社内/社外の者にとって、全く予想外のものだったのでした。
 彼は、水中対応型の人魚ロボットを完成させてしまったのです。



擬生物型ロボット 「シンシア」シリーズ

CALYPSO13.GIF - 5,172BYTES HR003−Cynthia13/Cynthia15

URP 

 26X11-N2-00000-3B00 Cr77,600  42.6kg 44.0L  (TL=13)
 26X31-N2-00000-3D00 Cr85,800  41.7kg 44.0L  (TL=15)

ボディ

 9/22(ジャック) 擬生物型

動力

 蓄電池=3.0kwh 活動時間=10分(節約モードで50分)

尾びれ

 パワー/重量比=59.7 遊泳速度=30km/h

付属装置

 頭部=40%(8L) 超軽量腕×2

胴体

 高感度触覚 動力/頭脳インターフェース 従部ユニット 通信機5km
 浮力調整用の浮き袋=4リットル

頭部

 視覚×2 味覚
 高感度聴覚(水中対応)×2 音声合成装置(水中対応)

主部A
TL=15

主部ロボットとして、HM103−Alicia15を利用した場合
                                     (TL=15)
低自律型 上級命令 知力8 教育度4

応用プログラム
 <感情表現><演芸or狩猟−2><スチュワード−1>
 <従者−1><生存−1><音楽−1><医学−1>

 非常時には、<演芸or狩猟−2>と<従者−1>を抜き取って、
 <救出−2>を組み込むことも、有り得ます。

主部B
TL=13 

主部ロボットとして、RT901−Calypso13を利用した場合
                                     (TL=13)
低自律型 上級命令 知力6 教育度10

応用プログラム
 <感情表現><演芸or狩猟or救出−3><反重力輸送機器−1>
 <生存−1><音楽−4><医学−2><スチュワード−2><従者−1>
 <教官−1><心理学−1><歴史−観光ガイド>



「シンシア」の特徴

 「シンシア」は、人魚の姿をした、擬生物型ロボットです。
 タロ・ヤマダ氏の趣味によって、完全な水中用ロボットとして設計されました。
 従って、波を被って水没しようが、水の中に潜ろうが、不都合は一切ありません。

 しかし足が無い訳ですから、地上に上がっても行動不能です。
 筋力3では、這って進む訳にもいきません。
 そんな事情で、開発の初期段階から、実用性には大きな疑問が持たれていました。

 それでも開発を強行して、商品として完成させてしまうあたり、ヤマダ氏の人格に疑問が感じられます。
 実は、倉庫の奥に未完成の試作品が眠っていて、それを引っ張り出しただけだと言う噂も、社内では流れていたりするのですが。

 水中用の観光ガイド 救出ロボットとして販売が開始されましたが、遊園地のような施設(子供向けアトラクション用)か、一部の好事家が鑑賞用に購入した以外には、全く売れておりません。
 販売台数は、100に達していないのではないでしょうか。
 ある評論家によると、「シンシア」には、あやしい装備が付いていないから、売れなかったのだそうですが。


 それはともかく人魚型の「シンシア」も、「アンジェラ」や「ビアトリス」と同じようなサイズです。
 「シンシア」の場合は特に、下半身(足ひれに相当する魚部分)の容積が大きいため、装備の大半を下半身に詰め込むことができました。
 それゆえ、上半身はより一層、スリムとなっています。

 ボディ重量は42kg前後と、やや重くなってしまいましたが、比重は約0.95。
 まだまだ、水に浮くことが可能です。
 「浮き袋」の浮力によって自重を調整し、潜水することも容易にしました。

 動力源は、例によって、3kwhの容量しか持たない蓄電池です。
 「シンシア」は基本的に、主部ロボットと動力インターフェースを接続し、ケーブルが届く範囲内で行動します。
 具体的には、主部ロボットから半径50メートル程度の範囲内に当たります。
 ですから、これだけの電気容量で十分でしょう。

 装備された2本の超軽量腕は非力ですが、繊細な作業に威力を発揮します。
 指先の感覚だけを頼りに、絡まったロープを解くという困難な作業に成功した経験もあります。
 筋力を必要とする重作業は、何時でも背後に控えている主部ロボット(カリュプソ)に任せますから、問題ありません。

 主部ロボットとの連絡は、常に頭脳インターフェースを用いて行なっていますが、ケーブルが外れた時のような非常事態用として、無線通信機(5km)も装備しています。



特殊な装備−その1 足ひれ

 「シンシア」は、(胴体容積の40%に相当する)大きな「足ひれ」をひとつ。
 「カリュプソ」は、(5%に相当する)小さな「足ひれ」を4つ、装備しています。
 最新の技術で作られた筈のロボットが、どうして、魚のような「ひれ掻き運動」で移動するのか。
 それは、「足ひれ」が最新技術の結晶だからです。

 ロボット用の水中用推進器と聞けば、大抵の方は「スクリュー」や「水流ジェット」を用いた、水中移動パックを連想されると思います。
 水上/水中での高速移動には、「スクリュー」や「水流ジェット」が向いているでしょう。
 それは、水上/水中で見かける輸送機関のほとんどが、それらを装備していることからも、明らかです。

 しかし、「スクリュー」や「水流ジェット」には大きな欠点がありました。
 それは、水上(または水中)で、静止することが出来ないということです。
 「スクリュー」や「水流ジェット」には、低速移動時の安定性や操作性が(やや誇張した言い方ですが)カケラもありません。

 それに比べて「ひれ掻き運動」で移動するならば、水中の何処でも、空中に浮かんだヘリのごとく、自由な静止が可能です。
 「カリュプソ」に至っては、4つの「足ひれ」を備えていますから、任意の地点に静止するだけでなく、位置を動かずに旋回したり、深度を変えること(垂直上昇や下降)も可能になりました。
 不規則に変化する潮流や、波浪の強さに対応して、静止位置を保持することも得意です。
 このような運動は、「スクリュー」や「水流ジェット」では、(不可能とまでは言わないまでも、)とても困難なことでした。

 また「ひれ掻き運動」による推進方式は、実はエネルギー効率がとても高いのです。
 余計な水の流れを作らないことから、周囲への影響も少なくて済みます。

 水難者の救助を行なったり、水中の調査を行なっている場合、上記の特徴は極めて重要な意味を持つでしょう。
 「スクリュー」の回転で水難者を傷つけたり、「水流ジェット」の吸水口に、水難者を吸い込んだりする心配もありません。
 救難ロボットの作る水流で、水難者を押し戻すこともありませんし、海底の泥を巻き上げて、視界が無くなったりすることもないのです。

 「足ひれ」は良いことばかりのようですが、やはり、速度性能では劣ります。

 「シンシア」の場合、上半身が人間型をしており、水の抵抗を考慮していないことが最大の原因ですが、下半身(足ひれ)部分が大きいため、その最大速度は30km/h。
 背負い式主部ロボットの「アリシア」を背負った場合、速度はさらに小さくなって、18km/hしか出せなくなります。

 「カリュプソ」の場合は、水中移動を考慮したウミガメ型(生物型)胴体ですが、胴体サイズに比べ、ヒレの駆動出力が小さくなっています。
 水の抵抗が少ないにも関わらず、30km/hの速度を出すことしか出来ません。
 しかし、反重力駆動の推力を合わせることで、50km/hまで加速することも可能です。
 さらに大きな移動速度が必要な場合は、浮上して、水面や空中を反重力駆動で移動すれば良いのですが。

 「足ひれ」ルールは、私(山中)のハウス・ルールです。ご注意ください。

            表1    足ひれを用いたロボットの、水中移動速度

パワー/

4

12

20

30

50

70

90

110

130

150

重量比

最大速度

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

(km/h)




特殊な装備−その2 水中対応/耐水型インターフェース

 非接触型の動力/頭脳インターフェースは、水に弱いことが必然的な端子部分を守るため、昔から利用されてきた技術でした。
 常識で考えれば、パソコンの電源コードやUSB端子などは、水濡れ厳禁です。
 接続部分に水がかかれば、ショートしてしまいますから。

 そのため、センタ・マウント社の「アンジェラ」や「ビアトリス」においても、水気の多い浴室の清掃や、屋外でにわか雨に降られた場合などに備え、生活防水が施されていました。
 しかし、水中での活動が大前提とされている「シンシア」シリーズでは、さらに進んだレベルの防水が必要となったのです。

 「シンシア」に採用された、動力とデータの伝達を1本のケーブルでまとめて行なえる、水中対応/耐水型インターフェースは、動力の伝達に電磁誘導を用いています。
 金属端子を露出させる必要がありませんので、端子同士の間に水があろうと、問題にはなりません。

 また、データ伝達を行なう頭脳インターフェース部分は、ケーブルに光ファイバーを、端子部分に光通信用の送受信装置を用いました。
 光通信ですから、端子同士がきちんと接触していれば、確実に信号を送れます。
 端子の間にゴミが挟まってしまうと困りますが、水に濡れても問題はないのです。
 また、併設された動力インターフェースによるノイズが載る心配もありません。

 水中対応/耐水型インターフェースは、水中での着脱すら可能です。



特殊な装備−その3 水中用の知覚(味覚と聴覚)

 水中の知覚と、大気中の知覚とは、当然ながら異なったものになります。

 例えば、水中において、従来型の(空気中での使用が前提とされている)嗅覚は、何の役にも立ちません。
 匂い分子を運んでくる筈の、空気が存在しないからです。
 水中での活動中、ロボットが装備している嗅覚は、使うことの出来ないデッドウェイトになってしまうのです。
 ですから「シンシア」は、嗅覚を装備していません。

 では、嗅覚の代わりになるセンサーは何でしょうか。
 匂いに相当する分子は、空気の代わりに、水によって運ばれます。
 水に含まれた分子の存在を検知するもの、つまり、味覚センサーによって知覚され、味として認識されることになるでしょう。

 匂い分子は、空気に運ばれるほど軽くなければならず、味の分子は水に溶けやすい性質である、などの違いはありますが、匂いも味も、それを伝える分子が空気や水に運ばれてきて、初めて知覚されるという点では、同じことです。

 「シンシア」の味覚センサーは、「シンシア」が水中にいる間中、フルタイムで水の味覚情報を収集し、解析します。
 400メートル先で、怪我をして出血した人間に気付いたり、沈没した輸送機関の中で水難者を捜索する場合など、役に立つ場面はいくらでも考えられるでしょう。


 もうひとつ、水中で使えない知覚として、視覚が挙げられます。
 対象物の色や形をはっきりと識別できる視覚は、対象との距離が比較的近距離で、明るい環境ならば、とても有効でした。

 しかし、水の分子は大変効率よく、光を吸収してしまいます。
 どんなに強力なサーチライトで照らしても、どんなに澄んだ海水でも、海中で50メートル先を見通すことは困難なのです。
 ランダムに決定する場合、水中では(2D6−2)×5メートルの視界があるものとします(これもハウス・ルールです)。
 平均すると、25メートルになりました。

 視覚に頼るロボットでは、荒天や夜間、深さ10メートル以上の海で、救難ロボットとしての役目を果たすことが出来ません。
 また、視界不良の場合、時速30kmh(秒速8メートル)で移動することさえ、大きな危険が伴います。


 この問題は、水中用の特殊な改良が施された音声合成装置と、高感度聴覚によって、解決されました。
 「シンシア」に搭載された音声合成装置は、人間に聞こえない高周波の音声(超音波)を、出力することも可能です。
 水中でも超音波を出力可能な音声合成装置は、イルカなど水棲知的種族と会話するため、一般にも市販されていた装備なのですが、ヤマダ氏はさらに改良を重ねて、超音波に指向性を持たせました。
 超音波を受信可能な高感度聴覚と組み合わせることで、簡易ソナー(探信聴音センサー)の出来上がりです。

 より大型で、高出力の探信聴音センサー(5kw、20kg、cr5,000)と比べれば、その有効範囲は100メートル前後と小さな範囲に限られてしまいます。
 分解能も低いため、障害物の多い水中(入り組んだサンゴ礁の中や、浸水で転覆した船の内部)では、10メートルが限度でした。
 それでも、夜間や船内など、暗い水中での活動が可能になっています。
 また、会話用の機器と兼用することで、より小さく、より安く、ソナーの能力を持たせることが出来たという点については、高く評価されているようでした。




バックパック式主部ロボット 「アリシア」

 HM103−Alicia15-UnderWater(水中仕様)

URP 

 320X0-00-MN227-3884 Cr157,500 42.6kg 50.0L  (TL=15)

ボディ

 10/25(メッシュ) 円筒型

動力

 燃料電池0×1 燃料(水素・酸素)=0.9L 活動時間=7時間10分

移動

 なし

付属装置

 なし

胴体

 動力/頭脳インターフェース プログラム・インターフェース
 主部ユニット 通信機5km 医療器具パック

頭脳

低自律型 上級命令 知力8 教育度4

応用プログラム
 <感情表現><演芸or狩猟−2><スチュワード−1>
 <従者−1><生存−1>                   以上、CPU内部

 <音楽−1><医学−1>                 以上、記憶装置内部

 非常時には、<演芸or狩猟−2>と<従者−1>を抜き取って、
 <救出−2>を組み込むことも、有り得ます。


「アリシア」の特徴

 「アリシア」は、背負い式の主部ロボットです。
 その大きさは、50リットル。
 スキューバーダイビングに使われる酸素タンクが、1本で14〜21リットルのサイズですから、酸素タンク2〜3本分の大きさに相当します。
 これでもかなりの大きさなのですが、肝腎の主部ロボットである「カリュプソ」が、その大きさと価格ゆえにほとんど売れなかったため、急遽、簡易型の主部ロボットとして、「アリシア」が開発されたのでした。
 これも、100台未満しか売れていませんが。

 観光ガイド 兼 水難救出ロボットとして利用するため、<スチュワード−1>と<従者−1>の技能プログラムが組み込まれています。
 <狩猟−2>のプログラムは、観光客が見たい生き物をリクエストした時、その生き物の居る場所へ案内するためのものです。
 
 また、タロ・ヤマダ氏のごり押しで、<音楽−1>と<演芸−2>も組み込まれました。
 彼は、歌えない人魚に存在価値は無い、とも主張しているそうです。

 しかし、「シンシア」に牽引されて移動することになるため、大きなデッドウェイトになったり(移動速度は、半減します)、活動時間が7時間程度に制限されるなど、どう考えても中途半端な設計でした。




水中救助ロボット主部 「カリュプソ」

 RT901−Calypso13

URP 

 B56XE-56-MR22B-RF6A Cr293,000 1,078g 1,250L (TL=13)

ボディ

 250/625(メッシュ) 生物型

動力

 燃料電池6×2 燃料(水素・酸素)=260.1L 活動時間=9〜36日間

移動

 足ひれ×4 パワー/重量比=52
  遊泳速度=30km/h(+250kg荷重まで:シンシア2台と患者2名を輸送)
 反重力:推力=2,000kg
  飛行速度=900km/h(+80kg荷重まで:シンシア2台を輸送)
        =600km/h(+250kg荷重まで:シンシア2台と患者2名を輸送)

付属装置

 頭部=5%(50L) 重量腕×2 軽量腕×4

胴体

 触覚 磁力/放射能/質量/中性微子センサー
 生命活動センサー 環境センサー・パック スポットライト×2
 動力/頭脳インターフェース×3セット プログラム・インターフェース
 主部ユニット 通信機500km×1 5km×3
 ホロ・レコーダー レーザー溶接機 医療器具パック
 患者移送用寝台(密閉式400L)

頭部

 基本センサー・パック(+高感度聴覚:水中対応) 味覚
 音声合成装置(水中対応) 探信聴音センサー

頭脳

低自律型 上級命令 知力6 教育度10

応用プログラム
 <感情表現><演芸or狩猟or救出−3><反重力輸送機器−1>
 <生存−1>                          以上、CPU内部

 <音楽−4><医学−2><スチュワード−2><従者−1>
 <教官−1><心理学−1><歴史−観光ガイド>    以上、記憶装置内部


「カリュプソ」の特徴

 「カリュプソ」は、円盤型のボディを備えた、巨大な主部ロボットです。
 一応、ウミガメの姿を模したということのようですが、あまり似ていません。
 サンゴ礁などの諸島部や砂浜の観光地における、観光ガイド水難救出ロボットとしての販売を目論んでいました。

 しかし、その大きさと高価格ゆえ、全く売れていません。

 タロ・ヤマダ氏の趣味で組み込まれた、<音楽−4><演芸−3>の技能プログラムも、それほど顧客には魅力がなかったようなのです。
 有名歌手を連れてくるならばともかく、単なる観光ガイド(しかもロボット)が上手に歌を歌ったとしても、ただそれだけのことなのでした。

 <演芸−3>と交換可能な<狩猟−3>プログラムはとても有能ですが、それだけの価値がないと判断されています。
 あらかじめ、何時ごろ、何処に、何の魚がいるかということをデータとして与えておけば、観光案内としては十分です。
 自力で魚のいる場所を見つけるための<狩猟>プログラムは、必ずしも必要ないのでした。

 観光ガイドとしては、極めて優秀です。
 <スチュワード−2><従者−1>の技能で、接客やマナーは十分ですし、<教官−1><心理学−1><歴史−観光ガイド>などの技能は、観光客を飽きさせません。

 非常事態には、<救出−3>技能で、水難救出活動に従事できます。
 <医学−2>の技能は、負傷者に十分な応急手当を施してから、病院などへ移送することが出来ます。




レフリー用情報(プレイヤーの方は、読んではいけません)


 実は「カリュプソ」は、帝国海軍情報部の依頼を受けて設計されました。
 センタ・マウント社とヤマダ氏が関わっているのは、設計と試作のみであり、その後の量産は、センタ・マウント社と一切関係のない工場で行なわれました。

 ヤマダ氏の設計が、ソロマニ領で使われているロボットによく似ていること。
 ロボットの主要部品がテックレベル13(ソロマニ領のテックレベルは、14以下)で作られていることが、ヤマダ氏抜擢の理由だそうですが、詳しいことは分かっていません。
 1号機の完成から、すでに1,000台以上が情報部へ引き渡されているとのことです。
 もちろん、この事実は公表できることではありませんし、センタ・マウント社の内部でも経営陣と、一部の開発者しか知りません。

 救出ロボットという建前で、豊富なセンサーを揃えていますが、実はこれらのセンサーは偵察用の装備だったのです。
 <狩猟>を<偵察>に置き換えることが基本的な変更で、<通信><航法(測量)><気象学>などのプログラムが、用途に合わせ、組み込まれている筈です(この辺はレフリーの自由裁量)。

 軍事偵察用の「カリュプソ」は、ソロマニ領の(広い海洋を持つ)世界へ送り込まれたり、帝国領内でも、様々な問題を抱えている世界へと、派遣されました。
 その世界の気象データや海洋データを収集したり、海底の地図を作ったり、海底ケーブルや海底要塞(場合によってはSDBの待機基地など)を見つけ出したりしています。
 核融合炉を備えておらず、中性微子探知器には探知されないため、偵察任務にはうってつけのロボットなのでした。


 また「シンシア」も、その小さなボディを活かして、「カリュプソ」が侵入できない場所や、侵入すると目立ってしまう場所などで、活躍をしています。
 動力/頭脳インターフェース用として、長さ3,000メートルの極細ケーブル(断面積が小さいので水の抵抗が少なく、かつ目立ちません)が、特注品として用意されました。

 海底要塞など、偵察対象の手前で「カリュプソ」は着底し、「シンシア」だけが極細ケーブルを引きながら、要塞へと接近するのです。
 擬生物型の「シンシア」ですから、撮影用のカメラや侵入作業用の工具は、問題なく取り扱うことが出来るでしょう。

 一方、海底要塞の探知器に「シンシア」がひっかかったとしても、そのサイズは大きめの魚か、小さいイルカ程度にしか見えません(わずか44リットルですから)。
 熱反応も微弱(電池動力)です。
 スクリュー音さえ無いのですから、偵察用ロボットだとばれる心配はないでしょう。
 金属探知機でチェックされてしまうと、少々、危ういかも知れませんが。


 「カリュプソ&シンシア」とプレイヤー達は、以下のような形で、関わりを持つ可能性が考えられます。

 プレイヤーがサルベージなどのため、海洋の探査を行なっているとしたら、それは、情報部の関心を引いてしまうかも知れません。
 「カリュプソ&シンシア」がこっそりと、プレイヤー達の行動を監視している可能性があります。

 あるいは逆に、プレイヤー達が情報部に雇われて、スパイ任務に就く場合もあるでしょう。
 そんな時は、海洋に不法着水した宇宙船から海岸まで、「カリュプソ」がプレイヤー達を運んでくれたり、潜入場所の事前偵察を手伝ってくれるかも知れません。

 プレイヤー達が、とある惑星の海洋で「釣り(あるいは漁)」を楽しんでいたところ、「釣具(あるいは漁具)」に、意識不明の人魚(ケーブルの切れたシンシア)が引っかかりました。
 偵察任務中に、ケーブルが絡まって動けなくなってしまったのですが、カリュプソが回収するよりも先に、プレイヤー達が吊り上げてしまったという訳なのです。
 プレイヤーの中に、ロボット産業の関係者がいないならば、簡単にはシンシアがロボットだと気付きません。
 新種の知的生物か、作られた人造生物なのか、(動力切れのロボットだとは思わない)プレイヤー達が騒いでいると、そこへ帝国の情報部と、現地政府の警察が現われて……。


2008.11.03 初投稿