Starship Operating Procedures
宇宙船の運航フローチャート
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  MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future


 

 

 

 

 

 







 
1.はじめに


 今回は、「帝国百科、pp.92-94 」に掲載されている 宇宙船の運航フローチャートについて少し考えてみます。



 先日、化夢宇留仁様のリプレイを読み直していました。
 久しぶりに読んだ訳ですが、何度読んでも面白い。
 それに加えて今回は、メガトラベラーのルール理解が深まったおかげでしょうか。
 プレイヤーの行動(行為判定)をルールに従ってどう処理しているのかということが見えてきて、とても勉強になるのです。

 特に面白かったのは「ドンキホーテ商事の冒険 第8回」。
 この部分は、「帝国百科」に掲載されている宇宙船の運航フローチャートに従って、 丁寧にひとつひとつの行為判定を順番通りに行っています。
 宇宙船の出航だけで一話を使い切ってしまう、とても密度の濃いロールプレイですが、 メガトラベラーはこういった手順をきちんとルール化しているところが素晴らしいと思いました。

 リプレイの中では、エンジニアのジャニアス氏とパイロットのマルコ氏が、 自分達に任された行為判定で緊張し、葛藤する様子が詳細に描かれています。
 しかし残念ながらリプレイを初めて読んだ時、私には彼らの苦悩が理解できませんでした。
 何を悩んでいるんだろう。さっさとサイコロを振れば良いのに、などと笑っていたような記憶も有ります。
 当時の私は何と浅はかだったのでしょうか。
 私はメガトラベラーのルールを知らなかったため、彼らの抱えていた責任を理解できなかったのです。

 行為判定のルールを理解することで私にも、ジャニアス氏の抱えていた苦悩、マルコ氏の感じていた恐怖の源が分かるようになりました。
 宇宙船の運航フローチャートに書かれている行為判定とジャニアス氏やマルコ氏の技能レベル等を見比べると、 彼らが何に苦労していたのか、また、何を恐れていたのかが見えてきます。



 今回の考察の目的は、宇宙船の運航フローチャートに掲載されている 行為判定の成功率や所要時間、事故の発生率を求めることです。
 それぞれの手順がどれだけ難しいのか、
 確実に成功させるためにはどれだけの技量が必要なのか、
 成功するまでに掛かる時間はどれだけか、
 事故が起きる可能性はどれだけあるのか、
 などといったことを明らかにしていきましょう。




 目次
    ※2.パワープラントの始動
       (1)行為判定の成功率
       (2)行為判定の所要時間
       (3)“拙速”な行為
       (4)注意力の持続
       (5)事故の発生
       (6)問題点と対策
    ※3.通常ドライブによる移動
       (1)通常ドライブの始動
       (2)軌道への上昇
       (3)10倍点への移動
       (4)100倍点への移動
       (5)移動に関するハウス・ルール
       (6)反重力型宇宙船の移動時間
    ※4.ジャンプの準備と実行
       (1)ジャンプの座標計算
       (2)ジャンプ・ドライブの始動
       (3)ジャンプの実行
       (4)ジャンプの事故
    ※5.通常ドライブによる移動
       (1)100倍点からの移動
       (2)10倍点からの移動
       (3)地上への下降
       (4)燃料補給
    ※6.まとめ





2.パワープラントの始動


 「帝国百科、pp.92-94 」に掲載されている、 宇宙船の運航フローチャートを御覧下さい。

 考察は、このフローチャートの流れに沿って行っていきます。
 化夢宇留仁様のリプレイでも、多分、同じ流れで行為判定を行っていた筈ですし、 プレイヤーが自分のキャラクター(プレイヤー・キャラクター)に宇宙船を運行させる場合も同じようになるでしょう。



 まずは、「1.宇宙船の運航」から。

オーバーホール:

 ここで注意されている通り、1年に1回のオーバーホール(定期整備)を怠っている宇宙船は、事故が発生した場合、 事故表で3Dを振ります(オーバーホールを行っているのであれば2D)。 
 定期整備の重要性を実感させてくれるルールですが、このルールは事故が起きた時、 あるいは、ジャンプを行う時にしか影響しないような気がします。
 実際問題として、オーバーホールをしていない宇宙船がジャンプを行う際は、事故率が急激に跳ね上がりますので、 特に恒星間宇宙船(偵察艦や自由貿易船)を所有しているキャラクターはその部分をしっかり読んで理解して欲しいと思います。



システムの相互チェック:

 フローチャート内で「」が付いている行為判定は、 「慎重」にチェックしながら行うことが前提の行為判定です。
 「慎重」に行わなかった場合は行為が「不確定」になる というペナルティを負ってしまう訳ですが、実例で説明しないと分かり難いので後述することにしました。



 次のステップは、「2.パワープラントの始動」、です。




(1)行為判定の成功率

 この部分のルールを読む限り、高温始動であっても、低温始動であっても、難易度は変わりません。
 行為の所要時間が長くなるだけです。

 具体的な行為判定は以下の通り。

> 宇宙船を高温始動するには:
>  〈並:7+〉*、〈エンジニアリング〉、教育度 30秒。


> 宇宙船を低温始動するには:
>  〈並:7+〉*、〈エンジニアリング〉、教育度 5分。


 高温始動は、宇宙船を係留してから8日以内に始動する場合だそうですから、通常はこちらになるでしょう。

 低温始動は、係留してから9日以上が経過して始動する場合が該当するそうです。
 通常の宇宙船ならば、宇宙船の定期整備(所要時間は2週間)を行った後ぐらいしか低温始動を行う機会がないと思います。



 前述した通り、パワープラントの起動は「慎重(Cautious)」に行なうべき行為だそうで、 「慎重」に行なわなかった場合は「不確定」な行為となってしまいます。

 通常、「慎重」に行う行為判定は、難易度が1つ下がる(易しくなる)代わりに、 行為に要する時間(所要時間)が2倍以上の長さに増える、というルールでした。
 しかし、この宇宙船の運航フローチャートの中で、 行為判定の難易度の右側に「」が付いている行為判定(例えば〈並:7+〉*)は、 「慎重」に行うことが前提です。
 ですから「慎重」に行なわなかったとしても、行為判定の難易度は変わりません(そう解釈しました)。
 その代りに結果が「不確定」な行為となっています。
 行為判定に成功しても、その結果が「部分的成功」であるならば、 しばらくして何らかのトラブルが発生し、警告ランプが点灯することになるでしょう。

 そういったトラブルを避けるためにこそ、「慎重」な行為判定、 慎重にチェックしながら行うことが必要な訳ですが。



 とりあえず「慎重」に行わなかった場合の成功率を求めてみました。
 以下の表1に、その成功率を示します。


         表1 パワープラントの始動成功率(通常)

SOP_Fig01.gif - 7.60KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 「不確定」な行為ですから、 成功の度合い完全成功部分的成功失敗の3つに分かれます。

 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。
 この行為判定においては、キャラクターの持っている〈エンジニアリング〉の技能レベル数教育度ボーナスの合計値がそれに該当していました。



 〈エンジニアリング〉の技能レベルが「1」、教育度のボーナスが「+1(教育度=5〜9)」のエンジニアは、合計のDMが「+2」です。
 もしかしたら、〈エンジニアリング〉の技能レベルが「2」で、教育度のボーナスが「+0(教育度=4以下)」であるかも知れません。
 勤務期数がまだ1期程度の新前か、あるいは、他の職務を兼任しているため技能レベルが低くなっているキャラクターです。

 不確定な行為ですから、同じ成功であっても、その中身は「完全成功」と「部分的成功」の2つに分かれていました。
 表1を見てみると、「完全成功」の確率は69.4%で、「部分的成功」の確率は13.9%
 6分の5(=83.3%)の確率で「成功」できる訳ですが、その「成功」の中には6分の1の確率で「部分成功」が隠れています。
 このリスクは馬鹿に出来ません。
 すぐに何らかの不具合が表面化してくるでしょう。
 こうした+DMの少ない未熟なエンジニアは、「部分的成功」のリスクを未然に抑え込むため、 常に「慎重」な始動を行うべきなのです。

 ちなみに件のジャニアス氏も〈医学〉などの技能を持っているため、肝心の〈エンジニアリング〉は1レベルしか備えていませんでした。
 教育度ボーナスが「+2」ですから合計のDMは「+3」。
 残念ながら、表1には該当する部分がありませんが、敢えて書き加えておくと、 「完全成功」の確率は84.0%で、「部分的成功」の確率が7.6%
 「失敗」の確率は8.3%しかありませんが、「成功」の中には12分の1の確率で「部分成功」が隠れていました。
 ジャニアス氏がパワープラントの始動を「慎重」に行えなかったのであれば (持続判定に失敗するとそうなります)、この行為で緊張するのは至極もっともだと思われます(苦笑)。



 〈エンジニアリング〉の技能レベルが「2」、教育度のボーナスが「+2(教育度=10〜14)」のエンジニアは、合計のDMが「+4」です。
 もし教育度が足りなくても(教育度が5〜9しかなくても)技能レベルをもう1レベル上げれば同じ「+4」となれるでしょう。
 反対に、教育度が15(ボーナスが+3)で、技能が1レベルというキャラクターも有りです。

 再び表1を見ると、「完全成功」の確率は94.5%で、「部分的成功」の確率は2.7%
 「失敗」の確率は2.8%で、致命的失敗(サイコロを振って「2」が出た時)しか有り得ません。
 ほぼ自動的に「成功」と見なしても良いのではないでしょうか。
 つまりDMが「+4」以上のエンジニアであれば、成功率の観点から見て必ずしも、 パワープラントの始動を「慎重」に行わなくても良いです。
 しかし時限爆弾のような「部分的成功」が発生してしまいますから、 それを防ぐためには、きちんと「慎重」な始動を行うべきなのでしょう。
 「失敗=致命的失敗」の際に起こる事故も怖いのですが、その問題はとりあえず棚上げ。



 次は、パワープラントの始動を「慎重」に行った場合の成功率について考えます。

 エンジニアは行為判定に先立って、行為判定を「慎重」に行えるかどうかの判定(持続判定)を行い、 それに成功しなければなりません。
 この持続判定については色々と問題(疑問)がありますので細かいことは保留。
 とりあえず、持続判定には成功したという想定で考察を先に進めます。

 パワープラント始動の難易度は、記されている通りの難易度〈並:7+〉です。
 その成功率を表2に纏めました。
 行為判定は「不確定」ではありませんから、行為判定の結果も単純に「成功」と「失敗」しかありません。


         表2 パワープラントの始動成功率(慎重)

SOP_Fig02.gif - 6.02KB

 表1と同じ形式ですが、「不確定」な行為ではないので、 部分的成功が無くなりました。
 行為判定の「成功」はすべて完全成功であると見なせます。



 DMが「+2」しかないエンジニアであっても、 「成功」の確率は83.3%、「失敗」の確率が16.7%、です。
 「成功」の中に「部分的成功」が隠れているということは有りません。
 これだけ「成功」の確率が高くなれば大丈夫でしょう。
 帝国百科に書かれている通り、パワープラントの始動は「慎重」に行うことが大前提なのだと納得できました。



 DMが「+4以上」になると、「成功」の確率が97.2%まで増えました。
 「失敗」の確率は2.8%しかありません。
 これだけを比較すると表1の場合と変わりませんが、何と言っても「部分的成功」が存在しないという点だけでも評価できるでしょう。
 行為判定のサイコロの目で「2」が出ると必ず「致命的失敗」となりますから、 失敗の確率が2.8%も残っていることはルール上、仕方がないのです。

 〈エンジニアリング〉の技能レベルと教育度ボーナスの合計が「+4」以上あれば、 行為判定がほぼ確実に成功すると明らかになりました。
 それを割り引けば、DM「+4」以上のエンジニアは、確実にパワープラントの始動を成功できると言っても過言ではありません。
 私がDM「+4以上」のエンジニアを「一人前」と見なす理由は、まさしく此処に有ります。




(2)行為判定の所要時間

 今度は、パワープラントの起動に費やす時間を計算してみました。

 パワープラントの始動の行為判定に書かれている時間単位は、高温始動の場合で30秒、低温始動の場合で5分です。
 時間単位が10倍も違っているということに驚きましたが、考えてみれば妥当なところかも知れません。

 それはともかく、通常の行為判定(「慎重」に行わなかった場合)の所要時間は以下の通りとなります。


         表3 パワープラント始動の所要時間(通常)

SOP_Fig03.gif - 7.15KB

 表の縦軸は、高温始動低温始動の2つに大別されています。
 それぞれの始動について、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、3つに分けました。

 高温始動を前提として、所要時間の比較を行ってみました。



 DMが「+2」のエンジニアがパワープラントの始動を試みた場合、それが「成功」であるか「失敗」であるかに関わらず、 表3へ示した通り、最小でも「1.5分」、最大で「8.0分」の時間が掛かります。
 平均の所要時間は「4.3分」でした。

 DMが「+4」のエンジニアならば、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「7.0分」。
 平均時間は「3.3分」でした。

 DMが「+6」になると、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「6.0分」。
平均時間は「2.5分」です。

 DMが「+8」ならば、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「5.0分」。
 平均時間は「2.0分」となっていました。

 最小時間が「1.5分」で一律なのは、少なくとも単位時間の3倍が費やされるというルールになっているからです。
 その代り、DMが大きくなる程、最大時間は短くなっていました。
 平均時間も大きく変わっており、DMが「+8」もあると最小時間の数値とほとんど変わりません。



 今度は、「慎重」に行なった場合の所要時間を求めてみましょう。
 行為判定を「慎重」に行った場合は、レフリーズ・マニュアル、p.14に書かれている通り、 振ったサイコロ(3D6)の目を2倍にしてから、DMを引くことになっています。
 
 計算結果は以下の通りとなりました。


         表4 パワープラント始動の所要時間(慎重)

SOP_Fig04.gif - 7.39KB

 表の形式は表3と同じです。



 DM=「+2」のエンジニアが「慎重」にパワープラントの始動を試みた場合は、
最小時間が「2.0分」、最大時間が「17.0分」、そして平均時間は「9.5分」でした。
 サイコロの目を2倍してからDMの「2」を引きますので、サイコロの目が「3」であっても、その目の2倍は「6」。
 DM分の「2」を引いても「4」が残ってしまいます。
 最小時間が、時間単位の4倍になってしまうというちょっと残念な状況が発生してしまいました。
 平均時間は「9.5分」ですから、 表3の平均時間「4.3分」と比べて、ほぼ2倍の所要時間です。
 技能レベルの低いエンジニアが「慎重」に行った場合は、 そうでない場合と比べて所要時間が2倍にしか増えない(実際は2.2倍)という点は有難いことかも知れません。



 DMが「+4」のエンジニアが「慎重」に行うのであれば、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「16.0分」。
 平均時間は「8.5分」でした。
 表3の「3.3分」と比べて、2.6倍です。



 DMが「+6」になると、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「15.0分」。
 平均時間は「7.5分」です。
 表3の「2.5分」と比べて、所要時間がほぼ3倍に増えました。



 DMが「+8」ならば、最小時間は「1.5分」で、最大時間が「14.0分」。
 平均時間は「6.5分」ですから、表3の「2.0分」と比べて3.3倍です。



 エンジニアの技能レベルが高い程(DMが大きい程)、「慎重」に行った場合の時間増加は顕著となるようです。
 こういう数字が出て来ると、腕に自信のある(DMの大きい)エンジニアは、 行為判定を「慎重」に行った結果として、所要時間が増えることを嫌がるのだろうなと思います。

 それでも安全を最優先して「慎重」にパワープラントの始動を行うのが、あるべき姿だとも思いますが。
 敵に追われて少しでも早く宇宙船を離陸させたいとか、少しでも早く艦載レーザー砲を使用したいといった状況では、 確実な成功より早い「成功」を期待してしまうのかも知れません。




(3)“拙速”な行為

 行為判定の所要時間を短くする方法として、「拙速(Hasty)」に行うという選択肢もあります。
 その場合は、難易度がひとつ上がる(〈難:11+〉になる)代わりに、 所要時間を求める際に適用するDMが2倍に増えるとのこと。

 「拙速」に行った場合の成功率は以下の通りです。


         表5 パワープラントの始動成功率(拙速)

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 表の形式は、表1と同じです。
 「慎重」に行っていませんから、行為判定の結果は「不確定」となりました。



 DMが「+2」のエンジニアが「拙速」にパワープラントの始動を試みた場合、 「完全成功」の確率は7.7%で、「部分的成功」の確率は20.1%
 「失敗」の確率は72.2%もありますから、始動の試みは7割以上の確率で失敗することが分かります。
 「成功」したとしても、その多く(7割以上)は「部分的成功」ですから、すぐに何らかの不具合が表面化してくるでしょう。
 技能レベルの低いエンジニアは「拙速」な始動を試みてはいけません。



 DMが「+4」の場合は、「完全成功」の確率が34.0%で、「部分的成功」の確率は24.3%
 「失敗」の確率は41.7%で、ようやく成功の確率が失敗を上回るようになっています。
 しかし「成功」の内4割はまだ「部分的成功」。
 このレベルのエンジニアになっても、パワープラントの始動は「慎重」に行うべきでしょう。 「拙速」に行う始動は危険です。



 DMが「+6」の場合は、 「完全成功」の確率が69.4%で、「部分的成功」の確率が13.9%
 「失敗」の確率は16.7%まで下がりました。
 始動に失敗する確率は6分の1しかないということです。
 「成功」した場合も、その成功が「部分的成功」である確率が6分の1も有ります。油断はできません。



 DMが「+8」の場合になると、 「完全成功」の確率は94.5%で、「部分的成功」の確率は2.7%
 「失敗」の確率は2.8%しかありません。
 これならば、所要時間短縮のメリットと天秤に掛ける価値はあるでしょう。

 パワープラントの始動を「拙速」に行うのであれば、エンジニアのDMは「+6以上」が必要だと思われます。



 そして、「拙速」に行った場合の所要時間は以下の通り。


         表6 パワープラント始動の所要時間(拙速)

SOP_Fig06.gif - 7.22KB

 表の形式は表3と同じです。


 DMが「+2」のエンジニアならば、最小時間は「1.5分」、最大時間が「7.0分」。
 平均時間が「3.3分」でした。
 サイコロの目から引くDMが2倍となるので、DMが「+2」だった場合は、通常に行う場合(表3)の「+4」に相当する訳です。
 表3の「4.3分」と比べて、時間の短縮比率は0.78倍。
 思ったほど、時間短縮の恩恵は得られないようです。
 そもそも「成功」の確率が極めて低いので恩恵も何もありませんが。

 DMが「+4」のエンジニアならば、最小時間が「1.5分」で、最大時間が「5.0分」です。
 平均時間は「2.0分」。
 表3の「3.3分」と比べて、0.60倍の時間短縮でした。

 DMが「+6」のエンジニアは、最小時間が「1.5分」で、最大時間が「3.0分」。
 平均時間は「1.5分」でしたので、 表3の「2.5分」と比べて、所要時間が0.60倍に短縮できます。

 DMが「+8」のエンジニアならば、最小時間が「1.5分」で、最大時間も「1.5分」。
 DMが2倍になるのでサイコロ(3D6)の目から「16」を引くことができ、 その結果、サイコロの目が幾つであっても時間単位の3倍となってしまう訳です。
 平均時間はもちろん「1.5分」で、 表3の「2.0分」と比べて0.76倍の短縮となりました。

 「拙速」に行った結果であっても、それほど極端な時間短縮ができる訳ではないようです。
 通常の場合と比較して0.76倍〜0.60倍の範囲ですから、それなりに有意義だとは思いますが。




(4)注意力の持続

 さて、棚上げしていた持続判定のルールを考察してみましょう。

 これは、パワープラントの起動を「慎重」に行う際、その注意力を持続できるかどうかの行為判定だそうです。
 その難易度は〈難:11+〉。
 DMとして使える特徴ポイントは「決断力(Determination)」で、 これは「耐久力と知力の合計値」として求められます。
 平均的なキャラクターならば「耐久力=7」と「知力=7」で、「決断力=14」。
 DMは「+2」しか得られません。
 難易度が〈難:11+〉でDMが「+2」しかないというのは、かなり難しい行為判定です。
 ほとんど「成功」を期待できないのではないでしょうか。

 この行為判定(持続判定)に成功すれば、パワープラントの起動を「慎重」に行えます。
 もし失敗すれば、「慎重」に行えなくなっただけではなく、難易度がひとつ上がって難しくなるそうです。
 行為判定を「慎重」に行えた場合と比べれば 難易度が一気に2つも(パワープラントの始動については1つ)難しくなる訳で、納得し難いルールだと思いました。

 この持続判定は、日常的に行う「慎重」な行為判定に対して用いるには、 失敗した際のリスク(難易度がひとつ上がること)が大き過ぎて、あまり適切ではないようです。
 作動している時限爆弾を「慎重」に分解する行為判定のような、緊張を強いられる場面ならばともかく、 日常的にチェックリストを見ながらパワープラントを始動するといった行為判定へ適用するには、どうにも不自然です。
 少なくともパワープラント(及び通常ドライブとジャンプドライブ)については、 持続判定なしで「慎重」な始動を行えるとした方が良いのではないでしょうか。

 橘様は「持続判定に失敗しても難易度は上がらない」というハウス・ルールを提案されていますが、 もっともなルールだと思います。



 持続判定の是非はともかく、公式ルール通りに求めた持続判定の成功率は以下の通りでした。


              表7 持続判定の成功率

SOP_Fig07.gif - 6.49KB

 表2と同じ形式です。



 「耐久力=3」で「知力=3」のキャラクターが持続判定を試みた場合、「決断力」のDMは「+1」しかありません。
 「成功」の確率は16.7%で、「失敗」の確率は83.3%です。
 まぁ、妥当ではないでしょうか。

 「耐久力=7」、「知力=7」という平均的なキャラクターの場合は前述の通り、「決断力」のDMは「+2」です。
 「成功」の確率は27.8%で、「失敗」の確率が72.2%でした。
 こんなに成功率が低くて良いのだろうかと心配になります。

 「耐久力=12」、「知力=12」というキャラクターは、 NPC作成ルールの中では得られる中でも最高の特徴ポイントを備えていますが、「決断力」のDMは「+4」です。
 「成功」の確率が58.3%で、「失敗」の確率が41.7%ですから、 かろうじて「成功」の確率が半分を超えました。

 ルール上の最大値、「耐久力=15」、「知力=15」を備えたキャラクターであっても「決断力」のDMは「+6」にしかなりません。
 その結果、「成功」の確率が83.3%と「失敗」の確率が16.7%となりました。



 最低の特徴ポイントを与えられたキャラクター(表の右端、DM=+1の欄)と、 最高の特徴ポイントを与えられたキャラクター(表の左端、DM=+6の欄)を見比べると、 「成功」と「失敗」の確率が綺麗に入れ換わっています。
 持続判定のルールは上手くバランスが取れているということなのでしょう。

 しかし、この成功率を日常的な「慎重」に行う行為判定に取り込むのは問題です。
 前述したように、「失敗」のリスクが大き過ぎるので。

 持続判定の行為判定を難易度〈難:11+〉で行うのであれば、「失敗」のペナルティを無しにする(橘様のハウス・ルール)か、 持続判定なしでも「慎重」な行為判定が行えるようにする(私のハウス・ルール)といった対策が必要となる筈です。
 そうしないと、宇宙船を運航することすら難しくなってしまいますから。

 リプレイではジャニアス氏が何度も始動を躊躇していましたが、 それは持続判定のサイコロを振っては失敗する、ということをロールプレイしていたのかも知れません、
 持続判定の行為判定がこれだけ難しいとすれば、二度も三度も連続して失敗するということは十分に有り得るでしょう。



 掲示板で教えて頂きましたが、雪男様は、
 チェックリスト等を利用することで、「慎重」な行為のための持続判定は難易度がひとつ下がる
 といったルールを採用されているそうです。

 持続判定をきちんと行うのであれば、難易度の修正はバランスを是正するために最善な方法であるかも知れません。
 そのハウス・ルールに従って難易度をひとつ下げ、 持続判定の難易度を〈並:7+〉にして、その成功率を比べてみました。


        表8 持続判定の成功率(難易度〈並:7+〉)

SOP_Fig08.gif - 6.23KB

 表7と同じ形式です。



 「耐久力=3」で「知力=3」、「決断力」のDM「+1」のキャラクターが持続判定を試みた場合、 「成功」の確率は72.2%で、「失敗」の確率は27.8%です。
 かなり高い確率で成功するようになりました。

 「耐久力=7」で「知力=7」、「決断力」のDMが「+2」、平均的キャラクターの場合は、 「成功」の確率が83.3%で、「失敗」の確率が16.7%でした。
 「失敗」の確率が6分の1しかないのであれば、サイコロを振っても良いかという気持ちになれます。。

 そして、「決断力」のDMが「+4以上」のキャラクターになると、 「成功」の確率が97.2%、「失敗」の確率が2.8%で上限に達しました。
 これ以上のDMがあっても、成功率はもう変わりません。
 致命的失敗しか「失敗」が無いのであれば、安心してサイコロを振れると思います。




(5)事故の発生

 今度は、事故の発生について考えてみましょう。

 レフリーズ・マニュアル、pp.12-14に書かれている通りの解釈をするのであれば、 パワープラントの始動を試みた際に致命的失敗を起こせば(サイコロの目で「2」が出れば)、事故が発生します。
 事故表でサイコロ(通常は2D6ですが、オーバーホールを怠っていれば3D6)を振らなければなりません。

 その結果は以下の通りでした。


              表9 事故の確率分布

SOP_Fig09.gif - 10.3KB

 表の左は、サイコロの目と、特定の目が出る確率です。
 比較するため、2D63D6を横に並べてみました。

 その右側は事故の程度事故結果の説明
 メガトラで扱われる事故は4段階に分かれていて、 軽い順に微小(Superficial)小(Minor)大(Major)重大(Destroyed)として定義されています。
 何度か説明していますので、詳細は省略。



 此処ではパワープラント始動の際に発生する事故を取り扱っていますので、 事故は即ち、パワープラントの損傷(故障)を意味することになるかと思われます。
 微小な損傷であれば機能に問題はないので、そのまま運航を続けられますが、 の損傷が起きた場合はそうもいきません。
 パワープラントは機能を停止してしまい、修理費用として 新規購入費用の1〜60%(A型自由貿易船であれば11万cr〜648万crの大金)が必要となってしまいます。

 毎月のローン支払いが軽く見えるほどの修理費ですが、 常にぎりぎりの経営を強いられている自由貿易船が、こんな大金を用意できるものでしょうか?
 できる訳がありません。
 自由貿易商人にとって多くの場合、パワープラントの故障は破産と同義である筈です。



 とても心配になってきたのでパワープラントの故障発生率から、 事故の程度それぞれについて分布を求めてみました。

 パワープラントを始動する際、その行為判定のサイコロで「2」が出た場合は致命的失敗になり、事故が発生するというルールです。
 その確率は2.8%(=36分の1)
 エンジニアの技能レベルが幾つであろうと事故の発生率は変わりません。

 事故発生率(一律で2.8%)に、表9へ示した事故の分布を掛け合わせました。
 その結果が以下の通りとなった訳です。


        表10 パワープラント事故の確率分布(事故率=2.8%)

SOP_Fig10.gif - 10.4KB

 表の左側は事故の程度事故結果の説明で、表9と全く同じです。

 表の右側はパワープラントを始動する際に生じる事故の内訳と分布
 左側はきちんとオーバーホール(定期整備)を行っている(2Dを振る)場合で、 右側はオーバーホール(定期整備)を怠っている(3Dを振る)場合です。



 御覧の通り、極めて高い確率でパワープラントが故障します(事故を起こします)。
 オーバーホール(定期整備)を行っている場合であっても、 の損傷が起こる確率は1.7%
 パワープラントの始動を60回行えば、必ず1回は故障するという事実が明らかになりました。

 の事故が1.4%(70回に1回)、の事故が0.2%(420回に1回)ということで、 その事故の大部分はとなりますが、これだけ高頻度では発生する事故は商船の運航に大きな影響を与えるでしょう。
 例えば一般的な商船が2週間に1回のパワープラント始動を行っているとしたら、2年半に1回の頻度で故障する訳です。
 その修理費は、事故の程度がの場合で平均132万cr、 事故の程度がであれば平均378万cr、自由貿易商人が簡単に支払える金額ではありません。
 多額な報酬の伴うシナリオを用意していない限り、自由貿易商人はその場で破産してしまうことでしょう。

 ルール通りに事故表でサイコロを振ると、宇宙船は故障の多発で運航できないということになりそうです。
 日常的なパワープラントの始動で頻繁に「事故」が起こるとは考えたくありません。
 2D6で「2」が出る度に核融合炉の暴走(爆発)や破損が生じていたら、帝国における恒星間通商は、とっくの昔に破綻しています。
 ですから「致命的失敗」が出ても、単にパワープラントの始動に失敗しただけであり、 大した事故は起こらなかったと想定するべきではないでしょうか。



 もちろん、オーバーホール(定期整備)を怠っている場合は、 容赦なく事故表でサイコロを振っても構わないと思います。
 機械屋の1人として、整備不良の宇宙船が平然と飛び回っている状況は許せません。

 オーバーホール(定期整備)を怠っている場合は事故の結果がより酷くなりました。
 重大な損傷が起こる確率は2.5%
 パワープラントの始動を40回行えば、必ず1回は故障しています。
 定期整備を行えないほど貧乏な自由貿易商船や海賊船は、長い時間を活動することなく自滅してしまうのでしょう。




(6)問題点と対策

 「2.パワープラントの始動」だけでずいぶんと文字数を費やしてしまいました。
 しかし、そのおかげで色々な問題と解決策が見出せております。



 まず、パワープラントの始動は部分的成功の発生リスクを抑えるため、 常に「慎重」な姿勢で行わなければなりません。
 「拙速」に行うことは論外ですが、DMを「+6以上」備えているエンジニアが 緊急手段として行う分には許されるでしょう(リスクが潜んでいるので危険であることには変わりありません)。



 「慎重」に行うことが要求されているため、 エンジニアは持続判定を欠かさず行い、それに成功しなければなりません。
 しかしエンジニアが持続判定に成功することは極めて困難ですし、 失敗すれば難易度がひとつ難しくなるというペナルティの影響が大変大きくなっていました。
 日常的な行為判定に適切なルールだとはとても思えません。
 どうしても持続判定を行わなければならないのであれば、 持続判定の難易度をひとつ易しくして難易度〈並:7+〉に変えるか、 難易度がひとつ上がるペナルティを無しにするか(「不確定」な行為としてのペナルティだけしか受けない)、 何らかの対応策が必要となるでしょう。
 私はパワープラントの始動に関しては持続判定なしで「慎重」に行為判定を行える、 というハウス・ルールを作って利用することとしました。
 そうでもしないと「慎重」なパワープラントの始動が行えません。



 もうひとつ明らかになったのは、事故発生率の異様な高さでした。
 パワープラント始動の行為判定でサイコロを振り、「2」の目が出れば致命的失敗となります。
 公式ルールによれば、致命的失敗が起きると事故が発生し、事故表で2Dを振らなければならないとのこと。
 しかし、その通りに事故の程度や修理費を求めたところ、宇宙船の運航に支障が出るほどの高頻度で事故が発生し、 多くの宇宙船が破産してしまうほど高額な修理費用が掛かる、ということが判明しました。
 プレイヤーを借金地獄に陥れることが目的であるとしても、明らかにやりすぎです。
 対策としてはレフリーの権限(裁量)で、致命的失敗になっても事故が起きなかったとするか、 あるいは、事故が起きても運航に支障が出ない微小な事故としたり、修理費がほとんど掛からないような状態にしなければなりません。
 そのあたりはレフリーの裁量ですが、プレイヤーの緊張を無くさないように、そして、運航に支障を出さないようにするのは、難しそうです。



 こうした対策(ハウス・ルールの適用)を行って初めて、 宇宙船は自由に宇宙を飛び回ることができるようになることでしょう。



 パワープラントの始動が無事に終わったら、次は「3.通常ドライブの始動」です。





3.通常ドライブによる移動


 パワープラントの始動が無事に成功したら、次は通常ドライブを始動し、ジャンプ・ポイントを目指して移動しなければなりません。
 それに伴う行為判定は、以下のようになっていました。




(1)通常ドライブの始動

 「3.通常ドライブの始動」です。

> 通常ドライブを始動させるには:
>  〈並:7+〉*、〈エンジニアリング〉、教育度 10秒。


 行為判定は、パワープラントの始動とほとんど変わりません。
 これも「慎重」に行なうべき行為であり、行為判定の成功率もほぼ同じです。



 表2とほぼ同じ内容になりますが、通常ドライブを「慎重」に始動した場合の成功率を表に纏めました。


         表11 通常ドライブの始動成功率(慎重)

SOP_Fig11.gif - 6.05KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。
 DMは、エンジニアの持つ〈エンジニアリング〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計。



 DMが「+2」しかないエンジニアが、通常ドライブの始動に「成功」する確率は83.3%
 「失敗」する確率が16.7%でした。

 ジャニアス氏のDMは「+3」であり、「成功」する確率は91.7%
 「失敗」する確率は8.3%でした。
 不安を感じても仕方のないことでしょう。



 DMが「+4以上」のエンジニアが始動を試みるのであれば、「成功」する確率は97.2%です。
 「失敗」する確率は2.8%
 例によって、サイコロの目で「2」が出ると「致命的失敗」になり、 必ず「失敗」だということになってしまいますがルール的には仕方ありません。
 パワープラントの始動と同じように、〈エンジニアリング〉の技能レベルと教育度ボーナスの合計が「+4」以上あれば、 行為判定がほぼ確実に成功すると考えて良いでしょう。

 パワープラントの始動と同じように、「慎重」に始動するための持続判定は省略して構わないと思います。
 あるいは、持続判定の難易度を下げるか、ペナルティを無しにするか。
 また、始動の行為判定に失敗しても(致命的失敗が起きても)、 「慎重」に始動しているのであれば事故は起こらないというルールにした方が良いでしょう。
 そうしないと事故が頻発し過ぎて宇宙船の運航ができなくなります。



 今度は、通常ドライブの始動に費やす時間を求めました。
 通常ドライブを始動する行為判定の時間単位は、わずか10秒。パワープラントの高温始動と比べても3分の1です。

 通常ドライブの始動を「慎重」に行なった場合の所要時間は以下の通りでした。


         表12 通常ドライブ始動の所要時間(慎重)

SOP_Fig12.gif - 4.76KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間を秒(sec)で示すか分(min)で示すかを悩みましたが、所要時間をパワープラントの始動と比べ易いように、同じ分(min)を用いました。



 DMが「+2」のエンジニアが通常ドライブの始動を試みた場合、それが「成功」であるか「失敗」であるかに関わらず、 表12へ示した通り、最小でも「0.7分」、最大で「5.7分」の時間が掛かります。
 平均の所要時間は「3.2分」でした。

 DMが「+4」のエンジニアならば、最小時間は「0.5分」で、最大時間が「5.3分」。
 平均時間は「2.8分」でした。

 DMが「+6」になると、最小時間は「0.5分」で、最大時間が「5.0分」。
平均時間は「2.5分」です。

 DMが「+8」ならば、最小時間は「0.5分」で、最大時間が「4.7分」。
 平均時間は「2.2分」です。

 パワープラントと比べて、始動に掛かる時間は大幅に短くて済むようです。



 通常ドライブの始動が無事に終わったら、管制塔に離陸許可を求めて下さい。
 遂に、宇宙船は地上を離れます。




(2)軌道への上昇

 今度のステップは「4.地上から軌道へ」です。

 宇宙船が地上宇宙港にあるなら、軌道まで上昇しなければなりません。
 軌道宇宙港に停泊している(あるいは軌道を漂泊している)場合は省略できる行為だと思います。

 原文だと「the world's surface」から軌道への移動となっていますから、 宇宙船が必ずしも地上宇宙港に停泊しているとは限りません。
 宇宙港以外の場所に着陸していても、海洋や氷冠で燃料補給を行っていても、軌道へ上昇するためにはこの行為判定が必要となるようです。

 軌道宇宙港に停泊していたとしても、軌道宇宙港から離れるための時間が必要ではないかと思うのですが、 そのあたりは気にしなくて良いのでしょう。



 それはともかく、必要な行為判定は以下の通りでした。

> 宇宙船を地上から軌道に上昇させるには:
>  〈並:7+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。


 100トン以上の大型宇宙船を操縦している場合は〈パイロット〉技能を、 100トン未満の小艇を操縦している場合は〈大型救命艇〉技能を適用することになっていました。
 〈大型救命艇〉技能を持たないパイロットが小艇を操縦する場合は、 〈パイロット〉技能に「−1」の修正を加えれば〈大型救命艇〉技能として使用することができます。



 計算した成功率は以下の通り。


           表13 地上から軌道への移動成功率

SOP_Fig13.gif - 5.66KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。



 今回、用いるDMはパイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計になります。

 DMが「+2」しかないパイロットが移動を行うのであれば、「成功」する確率は83.3%
 「失敗」する確率が16.7%でした。
 6分の1の確率で「失敗」するとは言え、必ずしも事故が起こる訳ではありません。

 リプレイに登場したマルコ氏は、〈パイロット〉技能のレベルが「1」で、教育度が8(ボーナスが「+1」)でした。
 合計したDMは「+2」しかありませんので、離陸に「失敗」する確率が16.7%も存在します。
 離陸の際に「冷や汗が浮かぶ」のは当然だと言えるでしょう。



 DMが「+4以上」のパイロットが移動する場合は、「成功」の確率が97.2%です。
 「失敗」する確率は2.8%
 サイコロの目で「2」が出ると「致命的失敗」となってしまいますが、仕方ありません。
 これらは外的要因による事故だと考えるべきでしょうか。
 進路上に強大な低気圧が存在するため迂回しなければならない(移動時間が2倍に増える)とか、 航路が混み合っていて離陸の順番を後回しにされた(待機時間も含めて移動時間が増えたことになる)とか、色々と考えられます。
 事故が起こると言っても、衝突事故や墜落事故が必ず起こるとは思えません。

 そんな訳ですから、基本的に〈パイロット〉の技能レベルと教育度ボーナスの合計が「+4」以上あれば、 行為判定がほぼ確実に成功すると考えて良いようです。



 行為判定の移動時間は以下の表へ示された通りに決まっていました。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


             表14 軌道への上昇時間表

SOP_Fig14.gif - 7.66KB

 表の縦軸は、世界の規模です。
 表の横軸は、宇宙船の加速能力

 「帝国百科、p.92 」の表をそのまま転載しましたが、計算してみたところ、 世界の直径と同じだけの距離を移動する(そして軌道上で静止する)、という計算式になっているようでした。
 規模0の世界は直径200キロメートルという想定がなされている模様。

 移動の途中で「宇宙船との遭遇」を行うことになっていますが、この問題は保留しておきます。



 軌道への移動が終了したら、あるいは、最初から軌道上に居たのであれば、次のステップへ移って下さい。




(3)10倍点への移動

 今度は「5.軌道から直径の10倍点へ」の移動を行います。



 この行為判定は難しいものではありません。

> 宇宙船を10倍点まで運ぶには:
>  〈易:3+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。


 難易度が〈易:3+〉になりました。
 +DMがある限り「失敗」することはほぼ有り得ません。
 個人的には、この行為判定は省略してしまっても構わないと思っています。



 念のため、成功率を比べておきましょう。


         表15 軌道から直径の10倍点への移動成功率

SOP_Fig15.gif - 5.94KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。
 今回もDMは、パイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計でした(場合によっては〈大型救命艇〉技能を適用)。

 御覧の通り、DMの大きさに関わらず「成功」する確率が97.2%で、 「失敗」する確率が一律で2.8%となっていました。

 致命的失敗によって事故が起きる確率が2.8%もある訳なのですが、 そんなに頻繁に起きる事故をいちいち考えていたら、すぐにネタが尽きてしまいます。
 行為判定を省略可能にするか、あるいは、どうしても行為判定を行うのであれば、 致命的失敗によって事故が起きるかどうかはレフリー次第ということにすべきでしょう。



 行為判定の移動時間も以下の表へ示された通りに決まっていました。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


          表16 軌道から10倍点への移動時間表

SOP_Fig16.gif - 10.3KB

 再び「帝国百科、p.92 」の表を転載しています。
 表の形は表14と同じですが、小型ガス・ジャイアント(SGG)と大型ガス・ジャイアント(LGG)が追加されました。
 単位のmは「分(min)」で、hは「時間(hour)」です。

 小型ガス・ジャイアントの半径は2万キロメートルで、 大型ガス・ジャイアントの半径は5万キロメートルという大きさで計算が為されているようでした。
 小型ガス・ジャイアントの大きさは問題ないのですが、 大型ガス・ジャイアントの大きさは半径6万キロメートル以上という定義が 「レフリーズ・マニュアル、p.17 」には書かれています。
 果たして、こういう計算をして良いものなのでしょうか。

 此処でも移動途中に「宇宙船との遭遇」を行うことになっていますが、同じく保留。



 10倍点への移動が終了したら、次のステップへ移ります。




(4)100倍点への移動

 今度は「6.10倍点から直径の100倍点へ」の移動を行います。



 この行為判定は、「軌道から直径の10倍点へ」のものと同じでした。
 異なっているのは、移動時間の表だけです。

> 宇宙船を100倍点まで運ぶには:
>  〈易:3+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。


 難易度が〈易:3+〉ですから、「失敗」することはほとんど有り得ないでしょう。
 行為判定自体を省略したいところです。



 行為判定の成功率は全く同じでした。


        表17 10倍点から直径の100倍点への移動成功率

SOP_Fig17.gif - 5.96KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 DMは、パイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計です。

 今回もDMの大きさに関係なく「成功」する確率が97.2%で、 「失敗」する確率が2.8%と、一定の成功率になっていました。

 DMが「+2」しかないマルコ氏も、軌道から10倍点へ、そして、10倍点から100倍点への移動は、緊張せずに行えた筈です。



 行為判定の所要時間(移動時間)は以下の通り。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


         表18 10倍点から100倍点への移動時間表

SOP_Fig18.gif - 10.2KB

 「帝国百科、p.92 」の表を転載しました。
 表の形は表14と同じです。

 10倍点から直径の100倍点への移動で大きく異なる点は、反重力駆動の宇宙船は移動時間が大幅に増えることでしょう。
 反重力駆動の宇宙船は、近くに大きな質量(具体的には惑星やガス・ジャイアント)が存在しない場合、 その性能を十分に発揮できません(具体的には、加速力が半分に減ります)。
 その状態を再現したルールが、 反重力駆動の宇宙船の場合、所用時間は表の値の2倍になる という追記になっている訳ですが、ちょっとおかしいのです。
 この部分については後でまた考察しましょう。

 反重力駆動の宇宙船の問題はさておき、この表には所々、不自然な数値が見つかりました。
 特に気になるのは、規模1の世界の欄でしょうか。
 3G〜6Gの移動時間が、上の規模0の数値と全く同じです。
 英文エラッタ等を見ても修正がないのですが、こんな不自然な数値を放置しておくのは気持ちが悪いので、計算し直しました。
 以下に、作り直した移動時間表を示します。


        表19 10倍点から100倍点への移動時間表(修正)

SOP_Fig19.gif - 11.4KB

 表の形は表14と同じです。

 表18とは数値が異なる点を色分けしました。
 数値が大幅に異なっている箇所(恐らくデザイナーの計算ミス)は水色で、 数値が僅かに異なっている箇所(デザイナーは重力加速度を10.0mで計算しているらしい)は黄色、という具合です。
 規模1の欄だけでなく、規模2の欄と、 大型ガス・ジャイアント(LGG)の一部にも間違いが見つかりました。



 移動途中の「宇宙船との遭遇」は保留。



 100倍点への移動が終了したら、次のステップへ移ります。




(5)移動に関するハウス・ルール

 此処まで、通常ドライブを用いた移動の行為判定を連続して考察してきました。
 皆様も疑問に感じたのではないかと思いますが、

 (3)10倍点への移動(4)100倍点への移動の2つは、 何故2つに区別されてるのでしょうか?

 このフローチャートによれば宇宙船は皆、軌道から10倍点まで移動して10倍点で一旦静止。
 その後、再度の加速を始めて100倍点のジャンプ・ポイントで静止。
 という流れになっているようです。

 その理由が分からなかった最初の内は、世界の10倍直径の位置にはSDBや哨戒艦が多数待機していて、 寄港した商船はその場で臨検等の手続きを済ませるのかと誤解していました。
 しかしルールを読み直してもそんな記述は一切ありません。
 色々と調べたところ、デザイナーは反重力駆動の宇宙船は移動時間が大幅に増えることを表現するため、 すべての宇宙船が10倍点で静止するというフローチャートを作ったようです。
 無駄なことだと思いますが。



 10倍点で静止するという無駄な行為を省くため、 軌道から直径の100倍点まで直行するための行為判定を作りました。
 完全なハウス・ルールですが、問題になるとは思えません。

 賛同される方は、「5.軌道から直径の10倍点へ」と「6.10倍点から直径の100倍点へ」で用いている移動時間表を、 以下の2つ(表20と表21)に差し替えて、移動時間を求めて下さい。
 行為判定の全体の流れや「宇宙船との遭遇」はそのまま変わりません。



 まず、「5.軌道から直径の10倍点へ」で用いる移動時間表ですが、以下のように変わりました。


         表20 軌道から10倍点への移動時間表(通過)

SOP_Fig20.gif - 10.4KB

 表の形は表14と同じですが、此処に示されている時間は10倍点を素通りすることを前提に求めたものです。

 10倍点で静止することは無くなりましたので、10倍点までの移動時間はほぼ7割に短縮されました。

 「宇宙船との遭遇」は通常通り、軌道から10倍点までの移動中に起こして下さい。



 次の「6.10倍点から直径の100倍点へ」で用いる移動時間表は、以下の通りになります。

 これは10倍点から100倍点への移動時間ですが、公式ルールとの相違点は10倍点で静止せず、素通りすることだけです
 御注意下さい。


      表21 10倍点から100倍点への移動時間表(10倍点を通過)

SOP_Fig22.gif - 10.4KB

 表の形は表14と同じです。

 10倍点で静止することはありません。
 10倍点を加速しながら通過し、50倍点で転回して減速開始。
 100倍点で静止する、という流れです。

 軌道から100倍点まで全体の移動時間(表20と表21の合計)は、表16と表18(表19)の合計時間に比べて、79%まで小さくなりました。
 規模が小さい世界ならば気にならないほどの誤差ですが、 ガス・ジャイアントのような巨大惑星から移動している場合は、大きな時間節約となって表れるのです。



 「宇宙船との遭遇」は通常通り、10倍点から100倍点までの移動中に起こせば良いでしょう。




(6)反重力型宇宙船の移動時間

 此処からは余計な考察に入ります。

 フローチャートの「6.10倍点から直径の100倍点へ」に記述されているルールによれば、 世界の10倍直径より遠くに離れると加速度が半減する反重力駆動の宇宙船は、 所用時間は表の値の2倍になる、のだそうです。
 とんでもない話ですね。

 移動時間を求める方程式(Referee's Companionに収録)によれば、 加速力が半減した場合、移動時間は1.41倍(=√2倍)にしか増えないことが明らかになっておりました。
 トラベラー世界の物理法則が捻じ曲がっている訳ではないのです。
 それなのに所用時間は表の値の2倍になるとはどういったことなのでしょう。
 デザイナーは反重力駆動の宇宙船の立場を不当に貶めよう、としているのに違いありません。

 私自身は反重力駆動の宇宙船に対して特に思うところがある訳ではありませんが、不当な扱いには断固として抗議するべきだと思うのです。
 機械屋として、物理法則を馬鹿にしたような計算式(ルール)は許せません。



 と言う訳で、求めた移動時間は以下のようになりました。
 前項と同じように、「5.軌道から直径の10倍点へ」と「6.10倍点から直径の100倍点へ」で用いている移動時間表を、 以下の2つ(表20と表21)に差し替えて、移動時間を求めて下さい。
 行為判定の全体の流れや「宇宙船との遭遇」についての変更点はありません。



 「5.軌道から直径の10倍点へ」で用いる移動時間表は、以下の通りです。


         表22 軌道から10倍点への移動時間表(通過)

SOP_Fig22.gif - 11.0KB

 実は、表20と全く変わりません。
 反重力駆動であっても、世界の10倍直径以内であれば、加速度の減少は起こらないためです。
 10倍点で静止することは無くなりましたので、10倍点までの移動時間が7割に短縮されることも同様。

 「宇宙船との遭遇」は通常通り、軌道から10倍点までの移動中に起こして下さい。



 表21に対応した「6.10倍点から直径の100倍点へ」で用いる移動時間表は、以下の通りになります。


       表23 10倍点から100倍点への移動時間表(反重力駆動)

SOP_Fig23.gif - 10.9KB

 表の形は表14と同じです。

 反重力駆動の宇宙船も10倍点で静止する必要はありません。
 10倍点を加速しながら通過するまでは一緒ですが、転回点は直径の45倍点。
 そこから減速を始めて、100倍点で静止する、ことになります。


 移動時間は、通常の宇宙船(スラスター駆動が前提、表21の移動時間)と比べて1.24倍にしかなりませんでした。
 全体の移動時間(表20と表21の合計)と比べるのであれば1.16倍です。
 10倍直径までは通常の加速能力を発揮できますから、その区間の影響が大きいということが分かりました。
 反重力駆動の宇宙船の場合、所用時間は表の値の2倍になるというルールは、明らかに過剰な修正だったのです。

 この表に書かれていない規模の世界で移動時間を求める場合は、 「通常の半分の加速度で110倍直径まで」の移動時間を求め、 そこから「半分の加速度で20倍直径まで」移動する時間を引いて下さい。
 そうすることで簡単に計算できます。

 「宇宙船との遭遇」も同じように処理して下さい。



 さて、宇宙船は100倍点へ無事に到着しました。
 ジャンプの準備に取り掛かりましょう。





4.ジャンプの準備と実行


 恒星間移動(ジャンプ)を行う前に、宇宙船は2つの準備作業を行わなければなりません。
 それがフローチャートの中に示されている「7.ジャンプの準備」というステップです。

 宇宙船は、ジャンプを実行する前にジャンプ・ドライブを始動し、ジャンプの座標計算を行わなければなりません。
 この2つの行為は、宇宙船のパワープラントが始動すれば、何時行っても構わない、そうです。
 宇宙船が100倍点のジャンプ・ポイントに到着するより少し早目に終わっているくらいが理想ですが、 どのぐらいのタイミングで始めれば良いのでしょうか。
 そのあたりも考えてみます。




(1)ジャンプの座標計算

 ジャンプの座標計算を行うには、次の行為判定に成功することが必要となります。

> ジャンプの座標計算を行うには:
>  〈並:7+〉、〈航法〉、〈パイロット〉、2分。


 この行為判定に必要な技能は〈パイロトT〉と〈航法〉技能です。
 〈航法〉技能の出番はこれが初めてではないでしょうか。

 「慎重」に行いなさいとかいった指示はありませんので、普通に判定すれば良いと思われます。
 その成功率は以下の通り。


           表24 ジャンプの座標計算の成功率

SOP_Fig24.gif - 5.59KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 DMは、パイロットの持つ〈パイロット〉技能と航宙士の持つ〈航法〉技能のレベル数を合計したもの。
 パイロットと航宙士が同一人物であっても構いません。



 DMが「+2」しかない場合、座標計算に「成功」する確率は83.3%
 その一方で「失敗」する確率は16.7%でした。

 リプレイでは、パイロットのマルコ氏が〈パイロット〉技能1レベルを備えております。
 航宙士を務めるロボットのサンチョが〈航法〉技能を幾つ持っているのかは記述が見つかりません。 他の技能とのバランスを考えれば1レベルというところでしょうか。
 そうした仮定に基づいて成功率を求めると、DMは「+2」になります。
 成功率が83.3%
 ちょっと不安ですが、失敗してもやり直せば良いのです。問題はないでしょう。

 DMが「+4以上」あるのであれば、「成功」する確率は97.2%、 「失敗」する確率は2.8%でした。
 相変わらず2.8%の確率で発生する「致命的失敗」の存在が恨めしくなりますが、 「致命的失敗」になっても大した事故は起きないとすれば良いでしょう。
 やり直せばよいのです。



 今度は、ジャンプの座標計算に必要な時間を求めましょう。
 行為判定の時間単位は2分ですから、パワープラントを高温始動する場合の30秒、通常ドライブを始動する場合の10秒と比べて、ちょっと長めです。
 パワープラントの低温始動は5分ですから、それと比べればまだ短いのですが。

 ジャンプの座標計算に必要な時間は、以下の通りでした。


          表25 ジャンプの座標計算に必要な時間

SOP_Fig25.gif - 4.67KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間の単位は分(min)で揃えました。



 DMが「+2」の場合は、「成功」でも「失敗」でも表25へ示した通り、最小で「6分」、最大で「32分」が掛かります。
 所要時間の平均は「17.0分」でした。
 ジャンプを実行する30分前に、ある程度の失敗とやり直しを見込むのであれば1時間前に、座標計算を始めれば良いのではないでしょうか。

 DMが「+4」の場合は最小が「6分」で、最大が「28分」。
 平均は「13.3分」でした。
 成功率が高くなったので、ジャンプの30分前に座標計算を始めれば大丈夫だと思われます。

 DMが「+6」になると、最小が「6分」で、最大が「24分」。
 平均は「10.2分」なので、ジャンプの20分前でも余裕でしょう。

 DMが「+8」ならば、最小は「6分」で、最大時間が「20分」。
 平均は「7.9分」ですから、ジャンプの15分前に始めれば1回の失敗を起こしても大丈夫。



 パワープラントや通常ドライブの起動と比べて、ずいぶんと気楽に行えるようです。




(2)ジャンプ・ドライブの始動

 もうひとつの準備作業であるジャンプ・ドライブの始動ですが、こちらは思った以上に厄介でした。

 行為判定は以下の通り。

> ジャンプ・ドライブを始動するには:
>  〈並:7+〉*、〈エンジニアリング〉、教育度 2分。


 久しぶりに「」の付いた行為判定です。
 基本的な点はパワープラントや通常ドライブの始動と変わりません。
 「慎重」に行なうべき行為判定であり、行為判定の難易度も同じでした。



 ジャンプ・ドライブを「慎重」に始動した場合の成功率は、以下のようになります。


        表26 ジャンプ・ドライブの始動成功率(慎重)

SOP_Fig26.gif - 6.06KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸はキャラクターの持つDMの大きさで、 DMはエンジニアの持つ〈エンジニアリング〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計。



 DMが「+2」しかないエンジニアがジャンプ・ドライブの始動に「成功」する確率は83.3%
 「失敗」する確率が16.7%でした。

 DMが「+4以上」のエンジニアが始動を試みるのであれば、「成功」する確率は97.2%
 「失敗」する確率は2.8%しかないので、ほぼ自動的に「成功」します。
 サイコロの目で「2」が出ると「致命的失敗」になりますが、この問題はすでに考察済みなので触れません。

 パワープラントの始動と同じように、「慎重」に始動するための持続判定は省略しても構わないと思います。



 しかし、ジャンプ・ドライブがパワープラントや通常ドライブと大きく異なる点が2つありました。

 ひとつは、低純度燃料の使用がジャンプ・ドライブに大きな負荷を掛けること。
 具体的には、宇宙船が純度の低い燃料を使用しているならば、この行為は「致命的」になる。ということです。
 「致命的」な行為ですから、失敗は自動的に事故が発生すします。
 事故の大きさが「2D」である分だけまだマシのような気がしますが、低純度燃料を用いているのであれば「失敗」を無視する訳にはいきません。
 きちんと事故表でサイコロを振りましょう。

 低純度燃料を使用している場合、エンジニアのDMが「+2」しかない場合は16.7%の確率で事故が起こります。
 エンジニアのDMが「+4以上」であっても、事故の発生率は2.8%
 事故のリスクが高過ぎて、低純度燃料の使用で浮く経費とはバランスが取れません。

 「慎重」な始動を行っていてもこれだけリスクが高いのに、 「拙速」な始動をおこなった場合は更にひどいことになると分かりました。
 DMが「+2」のエンジニアは72.2%の確率で「失敗」しますから、事故の発生率も72.2%
 DMが「+4」であっても「失敗」の確率は41.7%なので、事故の発生率も41.7%
 DMが「+6」の場合は、失敗と事故の発生率が16.7%
 DMが「+8」になってようやく、失敗と事故の発生率が2.8%となります。
 低純度燃料の使用と「拙速」な始動の組み合わせは、悲惨な結果を引き起こすことでしょう。



 もうひとつは、オーバーホールが不可欠であること。
 宇宙船のオーバーホールの時期がすぎてしまっているなら、行為は「致命的」になる。
 しかも、オーバーホールの予定日から1ヶ月すぎるごとに、難易度は1レベル上がる。

 ということですから、恒星間宇宙船のオーバーホールを怠ってはいけないということなのでしょう。
 高純度燃料を使っていても「致命的」になり、事故が多発してしまうとは思いませんでした。
 最初の方にも書かれていましたが、オーバーホールをしていない宇宙船は、事故を起こした際に2Dではなく3Dを振ります。
 事故が頻発して、さらに事故の程度が酷くなる。
 かなり大きなペナルティではないでしょうか。



 オーバーホールの件は普通の商船ならばきちんと済ませていると思われますが、低純度燃料の件はどうしようもありません。
 低純度燃料しか手に入らないという場面は、特に辺境航路において、頻繁に発生するものですから。
 そういった事態に備えて宇宙船の燃料タンクには必ず、燃料精製装置を搭載するべきなのでしょう。
 燃料精製装置を搭載していれば、 辺境星系で低純度の燃料を購入しても(あるいはスクープ等で燃料を確保しても)不要なリスクは避けられます。

 逆に考えれば、低純度の燃料を使用せず、きちんとオーバーホールを済ませている宇宙船ならば、リスクはありません。
 メガトラの宇宙船設計ルールに記載されている燃料精製装置は安価ですから、 どんな宇宙船であってもジャンプを行うのであれば搭載しておくべきなのでしょう。
 小さな商船の場合は船倉容積が圧迫されるのが難点ですが、ジャンプ・ドライブが故障するリスクと比べれば安いものだと思います。



 ジャンプ・ドライブの始動を「慎重」に行なった場合の所要時間は以下の通りでした。


        表27 ジャンプ・ドライブ始動の所要時間(慎重)

SOP_Fig27.gif - 4.80KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間の単位は分(min)で揃えました。
 行為判定の時間単位は、ジャンプの座標計算と同じ2分なのですが、 「慎重」に行っている分、どうしても時間が掛かるのです。



 DMが「+2」の場合は、最小で「8分」、最大で「68分」の時間が掛かります。
 所要時間の平均は「38.0分」。
 規模0の世界だと、100倍点へ到着してもジャンプ・ドライブの始動が終わっていない可能性が高いでしょう。
 ジャンプを実行する1時間から2時間前に、ジャンプ・ドライブの始動を開始する必要がありそうです。

 DMが「+4」の場合は、最小が「6分」で、最大が「64分」でした。
 平均は「34.0分」。
 ジャンプ・ドライブの始動は、ジャンプの1時間から1時間半前に始めるべきでしょう。

 DMが「+6」の場合は、最小が「6分」で、最大が「60分」。
 平均は「30.1分」でした。

 DMが「+8」の場合は、最小が「6分」で、最大が「56分」。
 平均は「26.2分」でした。
 ジャンプ・ドライブの始動はジャンプの1時間前に始めれば大丈夫です。



 今度は、事故の発生率について考えます。

 パワープラントの始動(5)事故の発生で考察した通り、 パワープラントやドライブ装置で頻繁に故障が発生すると、宇宙船の運航に支障が発生することが明らかとなりました。
 その修理費用もかなり大きな金額ですから、宇宙船の船主はあっという間に破産してしまいます。
 ですから「致命的失敗」が出ても、単にパワープラントの始動に失敗しただけであり、 大した事故は起こらなかったと想定するべきでだと考えている訳ですが、同じ解釈をジャンプ・ドライブの始動にも適用しておきましょう。
 年に一度のオーバーホール(定期整備)を怠っていたのであれば、話は別ですが。

 しかし前述した通りジャンプ・ドライブの始動に関しては、 宇宙船が純度の低い燃料を使用しているならば、この行為は「致命的」になる。 といったルールが存在しております。
 低純度の燃料を使用している場合はジャンプ・ドライブの始動に失敗=事故が発生と言うことになる訳で、 そうした事態に備えて事故の分布についても調べておこうと思いました。



 ジャンプ・ドライブの始動に関して、事故の発生率とその程度の分布を以下に纏めています。


     表28 ジャンプ・ドライブ事故の確率分布(低純度燃料を使用)

SOP_Fig28.gif - 8.87KB

 表の縦軸は、事故の程度
 表の横軸は、ジャンプ・ドライブ始動の事故発生率です。
 交差する欄に、それぞれの発生率を示しました。

 きちんとオーバーホールを済ませている宇宙船が、 低純度の燃料を使用してジャンプ・ドライブの始動を試みた場合、 上記のような確率分布で事故を起こします。



 エンジニアのDMが「+2」の場合、始動の失敗率は16.7%でした。
 低純度の燃料を使用していなければ、単なる失敗として扱われ、事故を起こすことはありません。
 ジャンプ・ドライブに関して低純度の燃料はトラブルの塊のような気がしています。

 ジャンプ・ドライブ始動の失敗率は16.7%
 「致命的」な行為ですから、失敗率=事故の発生率、です。
 横軸の事故発生率は、16.7%の欄を見て下さい。

 微小な事故の発生率は6.7%ですが、これについては、あまり気にしなくても良いでしょう。
 とりあえず、ジャンプ・ドライブは機能しています。

 の事故が発生する確率は8.6%、ジャンプ・ドライブの始動を12回行えば1回は発生するという確率でした。
 A型自由貿易船の場合はジャンプ・ドライブの価格は12MCrなので、修理費の平均は1.47MCrです。
 この程度の事故を1回起こすだけ、自由貿易商人は簡単に破産できそうな気がしました。

 の事故が発生する確率は1.4%で、始動70回に対して1回の発生確率です。
 A型自由貿易船の場合、修理費の平均は4.2MCrで、ローン支払いの2年分(24回分)に相当していました。
 自由貿易商人はほぼ確実に破産していることでしょう。

 有難いことに、重大な事故が発生することは有り得ません。



 エンジニアのDMが「+4」以上の場合、事故の発生率は一律になっていました。
 事故の発生率が2.8%の欄を御覧下さい。
 微小な事故の発生率は1.1%(90回に1回)、の事故が1.4%(70回に1回)、 の事故が0.2%(420回に1回)という分布でした。
 低純度の燃料を1回か2回使用する程度ならば大丈夫でしょうが、 10回や20回と使い続けるのであれば事故を起こす可能性があるようです。
 できるだけ低純度の燃料を使わないように心掛けるべきでしょう。



 今度は、
 宇宙船のオーバーホールの時期がすぎてしまっているなら、行為は「致命的」になる。
 しかも、オーバーホールの予定日から1ヶ月すぎるごとに、難易度は1レベル上がる。
 という記述についても考察しておきましょう。

 オーバーホールを怠っている宇宙船は、事故表で3Dを振ります。
 ですから、事故の確率分布も表28とは異なったものになりました。


  表29 ジャンプ・ドライブ事故の確率分布(オーバーホールを怠っている場合)

SOP_Fig29.gif - 9.43KB

 形式は表28と同じです。
 しかし、重大な事故の発生率が増えました。
 また、オーバーホールを怠っている宇宙船が使っている燃料は、 低純度の燃料であっても、そうでなくても関係ないようです。



 エンジニアのDMが「+2」の場合、ジャンプ・ドライブ始動の失敗率は16.7%で、 事故発生率は16.7%の欄を見ます。
 微小な事故の発生率は1.5%(65回に1回)、の事故の発生率が6.8%(15回に1回)、 の事故も6.8%(15回に1回)、重大な事故が1.5%(65回に1回)という分布でした。
 事故の発生率は変わらないのに、その内訳が重大な方向へスライドしているため、厄介なことになっていました。
 から重大な事故が発生する確率は15.1%ですから、 ジャンプ・ドライブの始動を7回行えば、1回は事故が起きるという高確率になっているのです。

 エンジニアのDMが「+4」以上あれば、始動の失敗率は2.8%で、 事故発生率も2.8%の欄を見ます。
 事故の内訳は、微小な事故の発生率は0.3%(389回に1回)、 の事故の発生率が1.1%(89回に1回)、の事故も1.1%(89回に1回)、 重大な事故が0.3%(389回に1回)でした。
 から重大な事故が発生する確率は2.5%であり、 ジャンプ・ドライブの始動を40回に付き1回の事故が起きるようです。



 普通ならば、考察はここで終わっているのですが、ジャンプ・ドライブの始動は、
 しかも、オーバーホールの予定日から1ヶ月すぎるごとに、難易度は1レベル上がる。  という厄介な問題も抱えていました。

 難易度が1つ上がれば、始動の失敗率も大きくなります。
 失敗率が上がれば事故の発生率も増える訳で、結構、大きな問題になるのではないでしょうか。



 オーバーホールの予定日を1ヶ月過ぎると、ジャンプ・ドライブ始動の難易度は、 〈並:7+〉から〈難:11+〉へと変わりました。

 エンジニアのDMが「+2」の場合の失敗率=事故発生率は72.2%
 ジャンプ・ドライブの始動を3回試みれば、その内2回は から重大な事故が起こるでしょう。

 エンジニアのDMが「+4」ならば、失敗率=事故発生率は41.7%
 から重大な事故が起こる確率は、3回中1回となりました。

 エンジニアのDMが「+6」ならば、失敗率=事故発生率は16.7%
 から重大な事故は、7回中1回の頻度で起こります。

 エンジニアのDMが「+8」で、ようやく失敗率=事故発生率は2.8%まで低下。
 から重大な事故は、40回中1度しか起こりません。

 恒星間宇宙船のオーバーホールを怠ったペナルティは、非常に重いようです。



 オーバーホールの予定日から2ヶ月が過ぎると、ジャンプ・ドライブ始動の難易度は〈至難:15+〉になりました。

 エンジニアのDMが「+2」しかない場合、ジャンプ・ドライブの始動には絶対成功しません。
 必ず事故が起きます。
 から重大な事故が起こる確率は90.7%で、 逆に考えると、ジャンプ・ドライブが壊れない確率は9.3%しかないと判明しました。

 エンジニアのDMが「+4」ならば、始動に成功する確率は8.3%だけ存在します。
 しかし、失敗する確率は91.7%で、事故発生率も同じ。
 そして、から重大な事故は6回中5回で、ほぼ確実に発生するでしょう。

 エンジニアのDMが「+6」ならば、失敗率=事故発生率は72.2%
 DMが「+8」でも、失敗率=事故発生率は41.7%

 オーバーホールの予定日から2ヶ月が過ぎた宇宙船は、ジャンプ・ドライブの始動がほとんどできません。
 無理に行おうとすれば、高確率で事故を起こすでしょう。



 あまり考えたくないのですが、オーバーホールの予定日から3ヶ月以上が経った場合、 ジャンプ・ドライブ始動の難易度は〈不可能:19+〉まで上がります。
 難易度がこれ以上難しくなることはゲーム・システム上有り得ませんが、 エンジニアのDMが「+6」以下の場合、絶対に始動できなくなりました。
 DMが「+8」であっても、成功率は8.3%のみ。
 失敗する=事故を起こす確率は91.7%で、 ほぼ確実にから重大な事故が起こるでしょう。

 オーバーホールの予定日から3ヶ月が経った宇宙船は、ジャンプ・ドライブの始動が不可能となります。
 よほど腕利きのベテランが幸運に恵まれない限り、始動に成功することは有り得ません。



 考察の結果、恒星間宇宙船にとってはオーバーホールが大事であるということを思い知らされました。
 オーバーホールはきちんと欠かさず行いましょう。
 定期整備を行えるBクラス以上の宇宙港の存在しない辺境航路を旅する場合は、早めのオーバーホールを心掛けるようにして下さい。
 何らかのトラブルで旅程が遅れた場合、ジャンプ・ドライブにはすぐ影響が現れます。御注意を。




(3)ジャンプの実行

 ジャンプの座標計算ジャンプ・ドライブの始動
 この2つに成功してようやく、ジャンプを実行できるようになりました。
 次のステップ「8.ジャンプの実行」が始まります。

 行為判定は以下の通り。

> ジャンプを実行するには:
>  〈並:7+〉、〈エンジニアリング〉、教育度 2分。


 ジャンプを実行する際も、純度の低い燃料を使用しているならば、この行為は「致命的」になる。とのこと。
 相変わらず低純度の燃料は、ジャンプに関してトラブルの種にしかならないようです。

 最寄りの大質量から直径の100倍以上離れているのであれば、それは通常ジャンプであり、 行為判定の難易度は〈並:7+〉のままです。
 純度の高い燃料を使用し、オーバーホールをきちんと受けていれば、事故が起こることはありません。
 純度の低い燃料を使ったり、オーバーホールを怠ったりしていれば、事故が起こる可能性がある訳ですが。

 最寄りの大質量から直径の10倍よりも離れ、100倍以内でジャンプを行う場合、それは緊急ジャンプと呼ばれます。
 行為判定の難易度は〈難:11+〉に上がり、燃料の純度やオーバーホールの有無に関係なく「致命的」となりました。

 最寄りの大質量から直径の10倍以内で行われるジャンプは絶望的ジャンプです。
 行為判定の難易度は〈至難:15+〉となり、同じく「致命的」でした。



 まずは、最も頻繁に行われるであろう通常ジャンプの成功率を求めます。


          表30 ジャンプの成功率(通常ジャンプ)

SOP_Fig30.gif - 5.25KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸はキャラクターの持つDMの大きさで、 DMはエンジニアの持つ〈エンジニアリング〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計。



 DMが「+2」しかないエンジニアは、「成功」する確率が83.3%、 「失敗」する確率が16.7%、でした。
 「失敗」する確率が6分の1もあります。
 やり直すことが容易なので、6分から30分程度の時間が浪費されたということ以外、実害はほとんどないのですが。

 DMが「+4」以上のエンジニアであれば、「成功」する確率が97.2%まで増え、 「失敗」する確率が2.8%まで下がります。
 ほとんど失敗しないと見なしても良いでしょう。
 ごく稀に(2.8%の確率で)「失敗」しますが、低純度の燃料を使用したり、 オーバーホールを怠ったりしない限り、事故には繋がりません。
 安心して、行為判定をやり直してください。
 しかし、低純度の燃料を使用したり、オーバーホールを怠っていた場合は、事故表でサイコロを振ることとなります。

 「Starship Operator's Manual」によると、 他の宇宙船の存在もジャンプを妨害する質量に成り得るそうです。
 ジャンプの準備中、他の宇宙船が近く(数km以内)に移動して来たり、あるいは近くにジャンプ・アウトしてくれば、 その宇宙船はジャンプを実行できません。
 正確に言えばジャンプの実行は可能ですが、 そのジャンプが緊急ジャンプ絶望的ジャンプに変わってしまうため、 リスクを考えたらジャンプを実行できない、ということです。
 通常ジャンプで「致命的失敗」が起きた場合は、 他の宇宙船の存在といった外的要因によってジャンプができなくなった(慌ててジャンプの実行を中止した)と考えることもできるでしょう。



 今度は、大質量の直径10倍を超え、100倍以内で行われる緊急ジャンプの成功率です。


          表31 ジャンプの成功率(緊急ジャンプ)

SOP_Fig31.gif - 5.41KB

 表の形式は、表30と同じです。



 DMが「+2」しかないエンジニアは、「成功」する確率が27.8%まで下がり、 反対に「失敗」する確率が72.2%まで増えました。
 緊急ジャンプは「致命的」な行為ですので、「失敗」すれば即座に事故が起こります。
 未熟なエンジニアに取って緊急ジャンプは自殺的な行為だと言えるでしょう。

 DMが「+4」のエンジニアは、「成功」する確率が58.3%で、 「失敗」する確率が41.7%でした。
 自殺的な行為だとまでは言いませんが、事故の発生率が4割もあるジャンプはどうかと思います。

 DMが「+6」のエンジニアであれば、「成功」する確率が83.3%、 「失敗」する確率が16.7%になりました。
 事故を起こす確率は6分の1ですが、よほど追い詰められない限り緊急ジャンプを行いたくはないものです。

 DMが「+8」になって、ようやく「成功」する確率が97.2%、 「失敗」する確率が2.8%と落ち着きました。

 以前、掲示板で通商破壊を避けるため、商船が直径の10倍点から緊急ジャンプを行うことは可能か、 そのリスクはどれほどか、という議論をしたことがあります。
 通常、通商破壊艦は100倍点付近で待ち伏せをしていますから、100倍点を経由せずにジャンプしてしまえば、 通商破壊艦からの被害を受けずにジャンプすることが可能になるだろうという論点でした。
 最終的な結論は、通商破壊艦による被害リスクが緊急ジャンプのそれを上回るのであれば、 商船が故意に緊急ジャンプを行う可能性は高いというものだった筈。
 確かに、エンジニアが優秀ならば(DMが「+8」以上であれば)、 緊急ジャンプのリスクは極力、抑えることができるようです。



 最後は、大質量の直径10倍以内で行われる絶望的ジャンプの成功率です。


          表32 ジャンプの成功率(絶望的ジャンプ)

SOP_Fig32.gif - 5.34KB

 表の形式は、表30と同じです。



 難易度が2つも上がったため、成功率は大幅に下がりました。

 DMが「+2」しかないエンジニアは絶対、ジャンプに成功しません。
 必ず事故が起きます。

 DMが「+4」のエンジニアは、「成功」する確率が8.3%、 「失敗」する確率が91.7%でした。

 DMが「+6」のエンジニアであっても、「成功」する確率は27.8%で、 「失敗」する確率は72.2%で、ジャンプは自殺的行為です。

 DMが「+8」のエンジニアを用意しても、「成功」する確率は58.3%で、 「失敗」する確率は41.7%でした。
 一応、「成功」する確率の方が高いのですが、事故発生率が4割もあるのでは怖くてサイコロを振れません。



 緊急ジャンプ絶望的ジャンプを行った場合、 事故発生のリスクが大きく跳ね上がります。
 通商破壊や海賊などの脅威が明確に存在しているのでなければ、そうした危険なジャンプを行うべきではありません。
 止むを得ない場合であっても、エンジニアの熟練度(DMの大きさ)を良く吟味して、どちらのリスクが大きいのかじっくりと比較して下さい。
 個人的には、DMが「+8」のエンジニアを用意できた場合にのみ、 緊急ジャンプを行うかも知れないという程度ですが。



 ジャンプの実行に費やされる時間は、以下の通りでした。


          表33 ジャンプの実行に費やされる時間

SOP_Fig33.gif - 4.54KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間の単位は分(min)で揃えました。



 DMが「+2」の場合は、最小で「6分」、最大で「32分」が掛かります。
 所要時間の平均は「17.0分」でした。

 DMが「+4」の場合は最小が「6分」で、最大が「28分」。
 平均は「13.3分」でした。

 DMが「+6」になると、最小が「6分」で、最大が「24分」。
 平均は「10.2分」です。

 DMが「+8」ならば、最小は「6分」で、最大時間が「20分」。
 平均は「7.9分」でした。



 ジャンプの実行には、最低でも「6分」、最長で「32分」が必要となるようです。
 エンジニアのDMにもよりますが、平均時間は「17.0分〜7.9分」でした。

 通商破壊艦や海賊に襲われた自由貿易船が、ジャンプによって拿捕を逃れるということは十分に有り得ますが、 ジャンプの座標計算やジャンプ・ドライブの始動が終わっているという条件でも、 ジャンプの実行には最低1戦闘ラウンド(〜20分)の時間を費やすようです。
 襲われたから、すぐにジャンプするという訳にはいかない、と分かりました。



 ジャンプに「成功」したのであれば、次のステップ「9.ジャンプ空間」です。

 ジャンプ空間で過ごす時間は1D6を振って、
> 1が出れば、6日間。
> 2〜5が出れば、7日間。
> 6が出れば、8日間。

 になるとのこと。
 それだけの時間が過ぎれば、宇宙船は目的地へと到着する訳です。



 ジャンプに「失敗」した場合は、ステップ「15.ジャンプ・ミス」へ進むことになっていました。
 次項、(4)ジャンプの事故を御覧下さい。




(4)ジャンプの事故

 ジャンプの実行に成功すれば何の問題もないのですが、 緊急ジャンプ絶望的ジャンプを行った場合は、 失敗がそのまま事故の発生を意味します。
 最寄りの大質量から直径の100倍以上離れて行う通常ジャンプであれば基本的に事故は起こりませんが、 低純度の燃料を使用したり、オーバーホールを怠っていたりした場合には、 事故表でサイコロを振ることになっていました。

 ジャンプの事故について、考察を進めない訳にはいかないようです。
 事故の内訳について、考えてみましょう。
 まずはステップ「15.ジャンプ・ミス」を参照し、それに対応する事故表を作ってみました。

 その結果は、以下の通りです。


            表34 ジャンプ事故の確率分布

SOP_Fig34.gif - 9.46KB

 表の左は、サイコロの目と、特定の目が出る確率です。
 事故表では通常、2D6を振りますが、オーバーホールを怠っていたのであれば3D6を振ることになります。
 比較するため、2D63D6を横に並べてみました。

 その右側は事故の程度事故結果の説明
 軽い順に微小(Superficial)小(Minor)大(Major)重大(Destroyed)として定義されています。



 ジャンプ事故の程度が微小だった場合は、 ジャンプのわずかなゆらぎが発生するそうです。
 ジャンプ空間に留まる時間は1D+4日だそうで、最短でも5日、最長で10日となりました。
 平均は7.5日ですから、少し伸びることになるでしょう。
 運が悪いと10日もジャンプ空間の中ですが、運が良ければ5日でジャンプが終わりますので、かえって得をすることもありそうです。

 目的地のずれはありません。
 きちんと計算通りの場所へジャンプ・アウトできます。

 その後、ジャンプ・ドライブを修理せずに使用できるかどうかは、レフリーの判断に任されているようです。
 CT版でプレイしている時は ジャンプ・ミスを起こしたらジャンプ・ドライブは当然壊れている(=修理が必要である)、と考えていたのですが、 ジャンプの原理を調べてみると、ジャンプの事故はソフト面が原因となっていることが多いようです。
 だとすると、一通りの点検(エンジニアの通常業務)を済ませたならば、すぐに再度のジャンプが可能になるのかも知れません。



 ジャンプ事故の程度がだった場合は、 ジャンプの相対的なエラーが発生します。
 原文では、A jump relativity error occurs, but when the ship emerges in the destination system、でした。
 どうやら目的とした星系にはきちんと出現できるのですが、出現する場所が若干ながらずれるようです。
 その距離は、その宇宙船の加速度で1D6×8時間の移動が必要な場所。

 試しに計算してみたところ、1G加速×8時間の203万kmから6G加速×48時間の4億3894万kmまで、様々な距離になりました。
 本来の目的地に戻るための所要時間は上記の通り、最短で8時間、最長で48時間(=2日間)です。
 通常ドライブを持たないXボートのような宇宙船はどうすれば良いのかと悩みましたが、1G加速を前提にして計算すれば良いのではないでしょうか。

 通信は十分に可能な距離(最大でも2.9AU)ですから、問題にはならないでしょう。
 しかし即時の救援は望めない距離ですので、通商破壊艦や海賊に見つかったら大変です。
 こうした事故を起こした場合、トランスポンダを切って、通信も必要最小限に留めるべきなのではないかと思いました。



 ジャンプ事故の程度がだった場合は、ジャンプ・ミスが発生します。
 CT版ではジャンプに「失敗」すると自動的にジャンプ・ミスをしていましたが、 MT版では随分とジャンプ・ミスの発生率が下がりました。

> 1Dをふり、出た目の数と同じだけサイコロをふる(6が出たら6個)。
> その合計が、ジャンプ・ミスによって航行するパーセク数。
> さらに1Dをふり、出発地からどちらの方向に進んだかをランダムに決める。


 ジャンプ・ミスによる移動距離は運が良ければ1パーセク、運が悪ければ36パーセクにも及びます。
 平均は12.25パーセク
 移動する方向もランダムに決まりますので、移動した先が帝国領内ならばともかく、 ゾダーン領やヴァルグル領だった場合は悲惨なことになるでしょう。
 それでも、きちんと移動先に星系があれば良い方で、 ルール的には星系の存在しないヘクスにジャンプ・アウトしてしまうことも十分に有り得ます。

 ジャンプ・アウトにはアンカーが必要であるという概念は、 CT版MT版のルールには存在しておりません。
 スピンワード・マーチ宙域周辺の星系密度から考えると、 星系の存在しないヘクスにジャンプ・アウトする確率は3分の2(=66.7%)もあります。
 こうした事実に対する救済措置がアンカーという概念の導入だったのではないかと思われますが、 私はレフリーの裁量でこっそりと移動距離を増減していましたから、問題になったことは一度もありませんでした。



 ジャンプ事故の程度が重大だった場合は、遂に宇宙船が破壊されます。
 乗組員は全員死亡ということですので、その場には何も残らないのでしょう。



 ジャンプ事故の確率分布について、数字を纏めてみました。
 きちんとオーバーホールを済ませている宇宙船であるならば、ジャンプ事故の分布は以下のようになります。


       表35 ジャンプ事故の分布と内訳(オーバーホール済み)

SOP_Fig35.gif - 8.26KB

 表の縦軸は、事故の程度
 表の横軸は、ジャンプ実行の事故発生率です。
 交差する欄に、それぞれの発生率を示しました。

 きちんとオーバーホールを済ませている宇宙船が、「致命的」なジャンプの実行を試みた場合 (低純度の燃料を使用したか、大質量の100倍直径の内側でジャンプを行った場合)は、 上記のような確率分布で事故を起こします。



 DM「+2」のエンジニアが低純度の燃料を使って通常ジャンプを実行した場合は、 16.7%の確率(6回中1回の頻度)で事故が起こるでしょう。
 その事故が微小で済む確率は6.7%、頻度は15回中1回です。
 事故がになる確率は8.6%、頻度は12回中1回でした。
 事故がになり、ジャンプ・ミスを起こす確率は1.4%。
 70回に1回の頻度で、宇宙船は何処とも分からない場所へ飛ばされてしまうことが分かりました。

 DM「+4」以上のエンジニアであれば、同じ条件の通常ジャンプを実行しても、 事故が起こる確率は2.8%の確率(36回中1回の頻度)しかありません。
 事故が微小で済む確率は1.1%、頻度は90回中1回。
 事故がになる確率は1.4%、頻度は70回中1回。
 事故がになる確率は0.2%、頻度は420回中1回でした。

 きちんとオーバーホールを済ませている場合、 宇宙船が破壊される(重大な事故が発生する)ことは有り得ません。
 この点は重要でしょう。



 緊急ジャンプを行った場合、ジャンプ実行の難易度がひとつ難しくなります。

 エンジニアのDMが「+2」であれば、事故が起こる確率は72.2%
 DMが「+4」ならば、事故が起こる確率は41.7%
 DMが「+6」でも、事故が起こる確率は16.7%
 DMが「+8」ならばかろうじて、事故が起こる確率を2.8%まで抑えられました。

 100倍直径の内側で行う緊急ジャンプは極めて危険ですが、 優秀なエンジニアが居れば、そのリスクを最低限まで抑えることができるようです。



 絶望的ジャンプの難易度は、更にひとつ難しくなりました。

 エンジニアのDMが「+2」であれば、事故が起こる確率は100%
 DMが「+4」ならば、事故が起こる確率は91.7%
 DMが「+6」でも、事故が起こる確率は72.2%
 DMが「+8」であっても、事故が起こる確率は41.7%までしか下がりません。

 10倍直径の内側で行う絶望的ジャンプは、文字通り絶望的なほど危険です。
 まともな精神状態ならば、絶対に行えないでしょう。



 その一方でオーバーホールをしていない宇宙船は、ジャンプ事故の分布が以下のように変わりました。


       表36 ジャンプ事故の分布と内訳(オーバーホール無し)

SOP_Fig36.gif - 8.81KB

 表の形式は表35と同じです。

 オーバーホールをしていない宇宙船が「致命的」なジャンプの実行を試みた場合 (低純度の燃料を使用したか、大質量の100倍直径の内側でジャンプを行った場合)は、 上記のような確率分布で事故を起こします。



 エンジニアのDMが「+2」であれば、16.7%の確率(6回中1回の頻度)で事故を起こす訳ですが、 その事故が微小で済む確率は1.5%しかありません。頻度に直せば65回中で1回だけです。
 その代り、の事故が起こる確率がそれぞれ6.8%に上がりました。 頻度は15回中の1回になります。
 ジャンプ・ミスの確率が1.4%から6.8%に跳ね上がったことは、実に恐ろしいことだと思います。
 そして重大な事故が起こる確率は1.5%でした。
 65回に1回の頻度で宇宙船は破壊されてしまうようです。

 DM「+4」以上のエンジニアであれば、事故が起こる確率は2.8%の確率(36回中1回の頻度)まで下がります。
 事故が微小で済む確率は0.3%、頻度は389回中に1回。
 事故がになる確率はそれぞれ1.1%、頻度は88回中の1回。
 事故が重大になる確率は0.3%で、頻度は389回中の1回でした。

 事故が起きた場合、その事故が微小で済む確率はほとんどありません。
 の事故(ジャンプ・ミスの)発生率が4.75倍に増えたことに加え、 重大な事故が有り得るようになったことが、私にとっては大いなる恐怖です。
 オーバーホールの大切さを教えられたような気がしました。



 ジャンプの実行に「成功」しても「失敗」しても、重大な事故で破壊されない限り、宇宙船は目的地へ、 あるいは予定していなかった何処かへ到着します。

 次のステップで再び、通常ドライブによる移動を行って下さい。





5.通常ドライブによる移動


 宇宙船は目的地の星系へ、あるいは、予定していなかった何処かの星系へ到着しました。
 とりあえず、宇宙船の乗組員は現在位置を確認する筈です。

 ところが宇宙船の運航フローチャートはいきなり、 「100倍点から10倍点へ移動する」ための行為判定が始まっておりました。
 ジャンプの実行で事故を起こさなかったから現在位置の確認は必要ないと考えているのか、 それとも現在位置の確認は当たり前のことなので省略されているのか、判断に苦しみます。

 また、ジャンプ空間で過ごしている間、通常ドライブを停止していると思うのですが、それを再始動するための行為判定も存在していません。
 エネルギーの浪費を抑えるため、ジャンプ中は通常ドライブを停止しているのが当然だと思っていましたが、 もしかしたら、ジャンプ中も通常ドライブを動かし続けている(パワープラントはほぼ最大出力で稼働を続けている)のが常識なのでしょうか。
 少し不思議な気持ちです。



 納得がいかないので、「3.通常ドライブの始動」を再び此処へ持ってきました。
 私と同じように公式ルールに納得できない方は、ジャンプが終わった後、通常ドライブの始動を試みて下さい。
 行為判定の内容は(1)通常ドライブの始動と同じです。

> 通常ドライブを始動させるには:
>  〈並:7+〉*、〈エンジニアリング〉、教育度 10秒。


 行為判定は、パワープラントの始動とほとんど変わりません。
 これも「慎重」に行なうべき行為であり、行為判定の成功率もほぼ同じです。



 表11を再掲載しました。
 通常ドライブを「慎重」に始動した場合の成功率です。


         表11 通常ドライブの始動成功率(慎重)

SOP_Fig11.gif - 6.05KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。
 DMは、エンジニアの持つ〈エンジニアリング〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計。



 表12を再掲載しました。
 これは、通常ドライブの始動を「慎重」に行った場合に費やす時間です。


         表12 通常ドライブ始動の所要時間(慎重)

SOP_Fig12.gif - 4.76KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間は分(min)で表しました。

 通常ドライブの再始動に成功したのであれば、次項へ進んで下さい。




(1)100倍点からの移動

 ステップ「10.ジャンプ空間から通常空間へ」です。

 無事にジャンプが終了したのであれば、宇宙船は目的地の重力井戸の端、通常は100倍直径の近くに出現します。

 原文では「at about 100 diameters out」となっておりますので、 宇宙船が常に100倍直径ちょうどでジャンプ・アウトするとは限りません。
 100倍直径以上であれば、どれだけでも問題はないようです。
 多くの宇宙船は移動時間を節約するため、100倍直径ぎりぎりにジャンプ・アウトしている筈ですが。



 パイロットは通常ドライブによって、100倍点から10倍点に船を移動させなければなりません。
 そのための行為判定は以下の通りです。
 ステップ「6.10倍点から直径の100倍点へ」とは、移動方向が異なっているだけでほぼ同じでした。

> 宇宙船を100倍点から10倍点まで運ぶには:
>  〈易:3+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。


 今回も難易度が〈易:3+〉ですから、「失敗」することはほとんど有り得ません。



 行為判定の成功率は、以下の通りです。


        表37 100倍点から直径の10倍点への移動成功率

SOP_Fig37.gif - 5.92KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 今回もDMは、パイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計です(場合によっては〈大型救命艇〉技能を適用)。



 行為判定の所要時間(移動時間)は以下の通りでした。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


         表38 100倍点から10倍点への移動時間表

SOP_Fig38.gif - 10.2KB

 「帝国百科、p.92 」の表を転載しました。
 表の形式は表18とほぼ同じですが、幾つかの数値が異なっております。
 移動する方向が異なるだけで、移動時間は全く同じでなければならないのですが。



 とりあえず、規模1規模2の世界の欄に存在した、 不自然な移動時間は訂正されておりました。
 しかし大型ガス・ジャイアント(LGG)の数字は修正されておりませんでしたので、 今回も作り直した移動時間表を示します。


        表39 100倍点から10倍点への移動時間表(修正)

SOP_Fig39.gif - 11.4KB

 表の形式は表38と同じです。

 今回も表38とは数値が異なる点を色分けしました。
 数値が大幅に異なっている箇所(恐らくデザイナーの計算ミス)は水色で、 数値が僅かに異なっている箇所は黄色で示しています。

 移動途中、「宇宙船との遭遇」を解決する必要がありますが、それについては保留。



 10倍点への移動が終了したら次のステップへと移りますが、今回も10倍点で静止するという無駄を省くため、 直径の100倍点から軌道まで直行するための行為判定を作りました。
 行為判定そのものは同じ手順ですが、移動時間表を以下のものに差し替えて下さい。
 行為判定の全体の流れや「宇宙船との遭遇」はそのまま変わりません。

 「10.ジャンプ空間から通常空間へ」で用いる移動時間表は、以下の通りになります。

 この表は10倍点から100倍点への移動時間ですが、 公式ルールとの相違点は10倍点で静止せず、素通りすることだけですので、御注意下さい。


      表40 100倍点から10倍点への移動時間表(10倍点を通過)

SOP_Fig40.gif - 10.4KB

 表の形は表38と同じですが、此処に示されている時間は10倍点を素通りすることを前提に求めたものです。
 宇宙船が10倍点で静止することはありません。

 100倍点を離れた宇宙船は50倍点まで加速し、その後転回して減速を開始します。
 減速が間に合わないため、物理的に10倍点で静止することは不可能なのです。
 必要がないとも思いますが。



 ついでに、反重力駆動の宇宙船が用いるための移動時間表も掲載しておきましょう。


       表41 100倍点から10倍点への移動時間表(反重力駆動)

SOP_Fig41.gif - 10.9KB

 表の形は表38と同じです。

 反重力駆動の宇宙船も10倍点で静止する必要はありません。
 ですから100倍点から加速を始めた宇宙船は45倍点まで加速を継続。
 そこで転回して減速を開始。
 減速を続けたまま10倍点を通過することになりました。



 静止するにせよ通過するにせよ、 10倍点に到着したら次のステップへと進んで下さい。




(2)10倍点からの移動

 今度は「11.10倍点から目的地へ」の移動を行います。
 「5.軌道から直径の10倍点へ」と対応している移動でした。

 行為判定はほぼ同じものです。

> 宇宙船を10倍点から軌道まで運ぶには:
>  〈易:3+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。


 難易度は〈易:3+〉です。



 行為判定の成功率は以下の通り。


         表42 直径の10倍点から軌道への移動成功率

SOP_Fig42.gif - 5.81KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさです。
 DMは、パイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計でした。



 行為判定の所要時間(移動時間)は以下の通りです。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


          表43 10倍点から軌道への移動時間表

SOP_Fig43.gif - 10.3KB

 表の形は表38と同じ。

 移動途中に「宇宙船との遭遇」を行うことになっていますが、今回も考察は保留。



 10倍点で静止するという無駄を省き、100倍点から軌道まで直行している場合は、 移動時間表を以下のものに差し替えて下さい。
 行為判定の全体の流れや「宇宙船との遭遇」はそのまま変わりません。


      表44 100倍点から10倍点への移動時間表(10倍点を通過)

SOP_Fig44.gif - 10.4KB

 表の形は表38と同じですが、此処に示されている時間は10倍点を素通りすることを前提に求めたものです。
 宇宙船は転回点の50倍点からずっと減速を続けており、10倍点で静止することはありません。
 反重力駆動の宇宙船も同じ表を用います。転回点は45倍点でしたが。



 軌道までの移動が終了したら、次のステップへ移ります。




(3)地上への下降

 今度は「12.軌道から宇宙港へ」の移動を行って下さい。
 この移動は「4.地上から軌道へ」に対応しています。

 その星系(世界)の宇宙港がCクラス以下であれば、基本的に、軌道宇宙港は存在しません。
 旅客の乗降などを行うためには、地上宇宙港を利用する必要があります。
 非流線形の宇宙船は大気が存在する(大気レベル2以上の)世界の地上へ降りることができませんが、 そうした場合は、流線形の積載艇を用いて降りることとなるでしょう。
 また、地上宇宙港を利用するつもりが無くても、海洋での燃料補給を考えているのであれば、この行為判定は不可欠だと思われます。



 地上への下降については、以下の行為判定を行って下さい。

> 宇宙船を軌道から地上に下降させるには:
>  〈並:7+〉、〈パイロット〉または〈大型救命艇〉、教育度。




 計算した成功率は以下の通り。


           表45 軌道から地上への移動成功率

SOP_Fig45.gif - 5.66KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 用いるDMはパイロットの持つ〈パイロット〉技能のレベル数と教育度ボーナスの合計です。



 行為判定の移動時間は、以下の表へ示された通りでした。
 その世界の規模と宇宙船の加速能力から、対応する数値を用いて下さい。


             表46 軌道への上昇時間表

SOP_Fig46.gif - 7.78KB

 表の縦軸は、世界の規模です。
 表の横軸は、宇宙船の加速能力

 移動途中に行う「宇宙船との遭遇」については省略。



 地上宇宙港に着陸したのであれば、宇宙船の運航フローチャートは此処で終了です。
 通常ドライブとパワープラントを停止して、宇宙船を降りて下さい。




(4)燃料補給

 ステップ「13.燃料補給」では、3通りの燃料補給方法を紹介しています。
 公式にはガス・ジャイアント海洋宇宙港の3箇所で燃料補給が可能になっているようでした。
 氷冠はルール的に、海洋の一種として扱われているようです。



 まずは、ガス・ジャイアントからの燃料補給を考察してみましょう。

> ガス・ジャイアントの軌道をまわっている宇宙船が完全流線形または流線形ならば、ガス・ジャイアントからの燃料スクープができる。
 と書かれていました。

 軌道をまわっている宇宙船と書かれているので、 宇宙船がガス・ジャイアントの大気圏へ降下する時間、軌道へ上昇して戻ってくる時間は、行為判定の中に含まれているようです。

 宇宙船の船体は完全流線形または流線形でなければならない訳ですが、 それらの宇宙船は燃料スクープ(Fuel Scoops)を装備している必要もあるでしょう。
 ここでは記述が省略されているようですが「レフリーズ・マニュアル、p.87」には、その必要性が明記されております。
 御注意下さい。



 ガス・ジャイアントからの燃料補給を試みる場合には、以下の行為判定を行って下さい。

> ガス・ジャイアントから宇宙船の燃料をすくいとるには:
>  〈並:7+〉、〈パイロット〉、〈航法〉、1時間(致命的)。


 難易度が〈並:7+〉なので、思ったよりも難しい行為だったようです。
 おまけに「致命的」な行為ですので、失敗すれば必ず「事故が起きる」という仕様。
 燃料代が節約できるという利益だけでは、割に合わないような気がしてきました。

 記述されていませんが100トン未満の小艇で燃料補給を行う場合、 行為判定に用いる技能は〈パイロット〉ではなく〈大型救命艇〉になる筈です。



 計算した成功率は以下の通りでした。


       表47 ガス・ジャイアントからの燃料補給成功率

SOP_Fig47.gif - 5.75KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 用いるDMはパイロットの持つ〈パイロット〉技能と〈航法〉技能のレベル数合計です。



 DMが「+2」しかないパイロットの場合、「成功」の確率が83.3%で、 「失敗」の確率が16.7%もありました。
 もしも〈航法〉技能を持っていないパイロットが試みるのであれば、 必要技能を持たないペナルティとして難易度がひとつ上がりますので、「成功」はまずます難しくなるでしょう。

 DMが「+4」以上のパイロットならば、「成功」の確率は97.2%で、 「失敗」の確率が2.8%まで下がりました。
 この程度のリスクならば許容範囲でしょうか。

 前述した通り、ガス・ジャイアントからの燃料補給は「致命的」な行為ですので、「失敗」すれば「事故が発生」します。
 その内容は、乱流、多大な放射線被曝、岩石塊との衝突、熱による船体の損傷、台風の渦に巻き込まれる、 ガス・ジャイアントの重力圏に捕らわれる、などとなっているようですが具体的な被害に関する記述はありません。
 レフリーの裁量で決めて下さいということなのでしょう。
 ですので、期待値計算ができませんでした。



 次に、燃料補給に費やす所要時間を求めてみます。


       表48 ガス・ジャイアントからの燃料補給に必要な時間

SOP_Fig48.gif - 4.77KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間の単位は時間(hour)。



 DMが「+2」の場合、最小で「3時間」、最大で「16時間」の時間が必要となりました。
 平均の所要時間は「8.5時間」です。
 かなり長いですね。

 DMが「+4」の場合は最小が「3時間」で、最大が「14時間」。
 平均は「6.7時間」でした。

 DMが「+6」の場合は最小が「3時間」で、最大が「12時間」。
 平均は「5.1時間」でした。

 DMが「+8」の場合は最小は「3時間」で、最大時間が「10時間」。
 平均は「4.0時間」でした。



 燃料補給の商用時間について、同じ「帝国百科」のp.88には、 約8時間を要し、うまくいけば燃料タンクは純度の低い燃料で満たされます。 と記されていました。
 所要時間のサイコロ(3D)を振るのが面倒な場合には、一律8時間だと考えて良いのかも知れません。

 その一方で「レフリーズ・マニュアル、p.87」には、 1時間あたり船体の20%の容積の水素を燃料タンクにすくいとることができる(燃料タンクが一杯になるまで)。 という記述もありました。
 一般的な宇宙船の燃料タンクは船体容積の20%〜40%しかありません(小艇を除けば、最小値はR型商船の20%、最大値はT型哨戒艦の43%です)。
 ですから、実際の燃料補給には1時間か2時間しか掛からないのではないでしょうか。
 それ以外の時間に宇宙船が何をしているのか謎ですが、 燃料補給に最適な場所(気流が安定して岩石塊が浮遊していない場所)を探して彷徨っている可能性もあります。



 今度は、海洋からの燃料補給を考察してみました。

> 水界度が0以外の世界に着陸できた宇宙船は、海洋から燃料補給を行うことができる。
 という記述がありますから、軌道から地表への降下、地表から軌道への上昇は、この行為判定に含まれておりません。
 海洋で燃料補給を済ませた後に地上宇宙港を利用する可能性があるのですから、個別の判定にしておいた方が都合良いのでしょう。

 意外なことに、海洋からの燃料補給燃料スクープを必要としておりません。
 そうした設備が無くても燃料補給には問題がないのです。
 また、氷冠世界(大気レベルが0か1で、水界度が1以上の世界)における燃料補給も、同じルールが適用されている模様でした。



 海洋からの燃料補給についての行為判定は、以下の通りになっています。

> 海洋から海水燃料を補給するには:
>  〈並:7+〉、〈パイロット〉、〈探知機〉、30分。


 難易度が〈並:7+〉である点は、ガス・ジャイアントからの燃料補給と同じ
 しかし「致命的」な行為ではないので、失敗しても「事故は起きません」。
 具体的な描写が無いので推測ですが、海辺や湖沼の岸に着陸して、ホースを伸ばして水を吸い取るという情景なのか、 あるいは、水面に浮かんで海水を吸い込む形になるのか、とても興味があります。



 成功率は以下の通り。


          表49 海洋からの燃料補給成功率

SOP_Fig49.gif - 5.86KB

 表の左端は、行為判定の成功の度合い
 表の横軸は、キャラクターの持つDMの大きさ
 用いるDMはパイロットの持つ〈パイロット〉技能と〈探知機〉技能のレベル数合計です。



 行為判定の難易度は同じ〈並:7+〉なので、成功率もガス・ジャイアントからの燃料補給と変わりません。
 しかし、行為判定に用いる〈探知機〉技能は何のためのものなのか、悩みます。
 飛行艇のように水面に着水して燃料を吸い込むというのであれば、着水面の下に暗礁があるかどうかを見極めるためだとか、 水面の荒れ具合(風の強さや方向、波の高さ)を調べるためだ、という解釈もできるのですが良く分かりません。



 今度は、所要時間です。


          表50 海洋からの燃料補給に必要な時間

SOP_Fig50.gif - 4.82KB

 表の縦軸は、最大の所要時間と最小の所要時間、平均の所要時間、の3つです。
 時間の単位は時間(hour)。



 DMが「+2」の場合、最小で「1.5時間」、最大で「8時間」の時間が必要となります。
 平均の所要時間は「4.3時間」です。
 当たり前の話ですが、ガス・ジャイアントからの燃料補給と比べて半分の時間で済みました。

 DMが「+4」の場合は最小が「1.5時間」で、最大が「7時間」。
 平均は「3.3時間」でした。

 DMが「+6」の場合は最小が「1.5時間」で、最大が「6時間」。
 平均は「2.5時間」でした。

 DMが「+8」の場合は最小は「1.5時間」で、最大時間が「5時間」。
 平均は「2.0時間」でした。



 「帝国百科、p.88」の記述ですが、海水燃料を補給するために必要な許可は、 サイコロ2個で治安レベル以上を出せば、得られる筈です。
 ルールには治安レベル以下と書かれているのですが、 これは治安レベルの主旨から考えると不自然極まりないことですのでデザイナーの勘違いでしょう。
 治安レベルが高い世界ほど、許可を得ることは難しく、
 治安レベルが低い世界ほど、許可を得ることが易しい。
 というのが、あるべき姿だと思います。

 所要時間は、作業には約4時間を要し、うまくいけば燃料タンクは純度の低い燃料で満たされます。、 という記述があるので、ガス・ジャイアントからの燃料補給と比べて半分だということで良いのでしょう。
 サイコロ(3D)を振るのが面倒な場合には、一律4時間にして下さい。

 事故が発生した場合には、タンクの水漏れ、塩水による腐食、座礁、浸水、台風との遭遇などが発生します。とのこと。



 最後は、宇宙港での燃料補給、です。

> 宇宙港では燃料を購入することができる。
> 純度の高い燃料(AまたはBタイプの宇宙港で入手できる)は1キロリットルあたりcr500、
> 純度の低い燃料(A〜Dタイプの宇宙港で入手できる)は1キロリットルあたりcr100。


 再び、デザイナーの勘違い(誤植?)を発見しました。
 燃料の価格は1キロリットルあたりではなく1排水素トンあたりが正解。



 別の資料で知ったのですが、宇宙港は海軍の活動に備えて燃料供給能力を保証する必要があるそうです。
 海軍の艦隊が寄港しても、一定量の燃料は何時でも補給できますよ、ということが補助金を得る条件らしい。
 戦略的にはそうなるでしょう。
 帝国海軍の艦隊の中には、非流線形船体を持った大型艦が多数存在するので、 迅速な移動には宇宙港での燃料補給が不可欠だということなのだと思われます。

 具体的にどれだけの燃料が必要かというと、Aクラス宇宙港で200万トン、Bクラスで150万トン、Cクラスで100万トン、Dクラスで50万トンだとか。
 何処かで見た数字だと思ったら、「CT版:1兆クレジット艦隊」のルールですね。
 ボードゲームの「CT版:第五次辺境戦争」の場合は Aクラス宇宙港で4個小艦隊、Bクラスで3個小艦隊、Cクラスで2個小艦隊、Dクラスで1個小艦隊となっていたので、 小艦隊1個当たり50万トンの燃料を補給する、という仮定が成り立ちそうですが、あまり信用できる数字ではありません。
 あくまでも目安に留めるべきでしょう。



 MT版の公式ルールには書かれていませんが、「CT版:宇宙海軍」から流用した、 他の宇宙船からの燃料補給についても書いておきます。

 燃料は他の宇宙船から補給することもできます。
 もちろん、補給する側の宇宙船の燃料タンクには、十分な量の燃料が残っていなければなりません。
 燃料の純度は、補給する側が搭載している燃料の純度と、補給される側の燃料タンクに残っている燃料の純度を比べて、 低い方になります(混ざり合って純度が落ちるという意味です。両方が高純度であれば高純度のまま)。

 戦闘中に燃料補給を行うことはできません。
 移動は可能ですが、2隻の宇宙船が並走することになるので、加速度は遅い方の加速度に合わせなければなりません。
 地表から軌道への上昇、軌道から地表への降下、ガス・ジャイアントでのすくい取りなども、同時には行えません。

 燃料補給には、燃料タンクの大きさに関わらず、2ターン(40分間)が必要です。
 補給する側の燃料タンクが小さければ2ターンで空になりますし、補給される側の燃料タンクが小さければ2ターンで一杯になるのです。
 燃料タンクが大きければ、それに見合ったポンプや移送装置を備えているため、なのでしょう。

 非流線形船体の宇宙船がガス・ジャイアントや海洋からの燃料補給を必要としている場合は、 流線形の積載艇を何度も燃料補給へ送り出し、その積載艇から燃料補給を受けることで、自身の燃料タンクを満たすことができるでしょう。

 それ以外にも、ガス・ジャイアントや海洋、宇宙港まで移動する時間がない場合、宇宙港での燃料補給に不都合がある場合などは、 他の宇宙船からの燃料補給が役に立つ筈です。





6.まとめ


 今回は、「帝国百科、pp.92-94 」に掲載されている 宇宙船の運航フローチャートについて色々と考えてみました。



 まずはパワープラントの始動ですが、 これは常に「慎重」な行為判定が要求されていました。
 「慎重」に行わない限り、部分的成功の発生リスクを抑えられません。

 「慎重」に行うことが要求されているため、 エンジニアは持続判定を欠かさず行い、それに成功しなければなりません。
 しかしエンジニアが持続判定に成功することは極めて困難ですし、 失敗すれば難易度がひとつ難しくなるというペナルティの影響が大変大きくなっていました。
 持続判定が日常的な行為判定に適切なルールだとはとても思えませんので、そのあたりは上手く解決する必要があるでしょう。
 私はパワープラントの始動に関しては持続判定なしで「慎重」に行為判定を行える、 というハウス・ルールを作って対応しました。

 もうひとつ明らかになったのは、宇宙船の運航に支障が出るほどの高頻度で事故が発生し、 多くの宇宙船が破産してしまうほど高額な修理費用が掛かるということです。
 対策としてはレフリーの権限(裁量)で、致命的失敗になっても事故が起きなかったとするか、 あるいは、事故が起きても運航に支障が出ない微小な事故としたり、修理費がほとんど掛からないようにするべきでしょう。



 次に、通常ドライブの始動通常ドライブによる移動を考察しました。

 通常ドライブの始動はパワープラントの始動とほぼ同じ行為判定でしたから、 ルールをそのまま適用すると同じように事故が多発して修理費で破産してしまうことでしょう。
 対策としては、持続判定や事故の発生にハウス・ルールを適用すべきだと思われます。

 通常ドライブによる移動は、 地上から軌道へ、軌道から10倍点へ、10倍点から100倍点への3段階に分かれていました。
 地上から上昇してくる場合は少しリスクがありますが、それ以外はサイコロを振る必要もないくらい安全です。
 移動時間表に間違い、もしくは、勘違いが見つかったので、不自然な部分を直しました。



 3番目にジャンプ・ドライブの始動ジャンプの実行を考察しています。
 ジャンプ・ドライブに関して低純度の燃料はトラブルの塊であるということが良く分かりました。
 低純度の燃料を使用すると、始動の行為判定だけでも故障が頻発します。
 ジャンプの実行も同様で、ジャンプに低純度の燃料を使うべきではありません。

 緊急ジャンプ絶望的ジャンプについても考察しましたが、 その中で現実味がありそうなジャンプは緊急ジャンプだけでした。
 もちろん、その緊急ジャンプを行う際にはDM「+8」以上のエンジニアが使えるという条件で。
 通商破壊戦のように、100倍直径まで移動すると通商破壊艦に襲われることが明らかである場合は、 故意に緊急ジャンプを行ということも有り得るでしょう。
 そうした危険が存在しない場合、優秀なエンジニアが使えない場合、緊急ジャンプをするべきでありません。

 ジャンプ事故の詳細についても考察しました。
 きちんとオーバーホールを行っている宇宙船が、高純度の燃料を使っているのであれば、 事故は起こりませんが、低純度の燃料を使った場合には悲惨なことが起こるでしょう。
 具体的にはどんなに腕の良いエンジニアを使っても、420回中1回の頻度でジャンプ・ミスが起こるのです。
 エンジニアの腕が悪い(DMが少ない)と、70回中1回になったりするようですが。
 低純度の燃料を使うことだけは慎みましょう。



 最後は燃料補給について考察しました。
 こちらのルールは、それほど詳しくありません。
 行為判定として最低限のことは書いてあるのですが、事故の発生と内容について、どうすれば良いのか悩みます。






 2014.11.30 初投稿