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Emigrant Ship
スピンワードマーチ宙域の移民船
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3 & Metasequia
other softs: Heaven & Earth 

 

 

 

 

 









 
 

 ES20K_FIG01A.JPG - 22,884BYTES

Fig.1 20kt級帝国標準型移民船




1.はじめに


 今回の考察は、移民船です。

 1万トン級の商船は、様々な商品(旅客や物品)を運びます。
 それこそ、10万トン級貨物船の投稿で紹介した、冷凍船バラ積み船タンカー、もちろんコンテナ船も、考えられるでしょう。

 それらの商船を試作しているうちに、移民船に関する考察をしてみたら面白そうだと気付きましたので、今回は、移民船を考察します。

 スピンワードマーチ宙域は、そもそも移民によって開発された宙域です。
 移民船に関する考察は、また、新たな視点を確立できるように思えました。



 
2.移民に関する公式設定

 帝国内における、植民活動の公式設定を探してみました。


フォーボールドン計画 (シナリオ「キンニール」ライブラリ・データより) 

 リジャイナ星域最大の植民計画で、植民者は1,110年から1,120年に到着する予定で、帝国の中心から旅立ちました。


アラマンクスの植民  (シナリオ「トラベラー・アドベンチャー」より)

 帝国暦400年代に、ジュニディから植民されました。


 色々とページをめくってみたのですが、この程度の記述しか見つかりませんでした。
 シナリオ「ブロードソード」に記載されていた、ヴィリスとガーダ・ヴィリスの関係も宗主国と植民地の関係なのでしょうが、わずか1パーセクの距離なので、例外として除外します。


 これほど、移民に関する記述が少ないとは、意外でした。
 アメリカ人によって作られたゲームですから、記述する必然性を認めないほど、移民で国が作られるのは当たり前だ、という考えがあるのかも知れません。


 話は変わって、移民について辞書(大辞林)で調べたところ、移民とは、

労働に従事する目的で、外国に移り住むこと。またはそれらの人

 を意味するのだそうです。

 移民船と聞くと、どうしても、無人の惑星に降り立って、何も無い所に牧場や農場、町を建設する「開拓者」のイメージが先走ってしまいますが、未開発の、無人の荒野を切り開く行為は、あくまで開拓であって、移民の一部でしかありません。
 人口の少ない国へ移動するタイプの移民もありますし、人口の多い豊かな国への移民もまたあり得るのです。

 すでに都市インフラが存在する土地へ移民する場合、必ずしも、開拓用の装備は要りません。
 移民が歓迎される世界では、そもそも労働力が不足している訳ですから、移民自身が貴重な商品となります。
 移民船に貨物を運ぶスペースは不要です。
 貨物を運ぶくらいならば、1人でも多くの移民を運べるようにすべきでしょう。


 そこで勝手ながら、2万トンの商船を、帝国標準の移民船サイズと設定します。
 当初は1万トンの船体サイズで考えていたのですが、「反乱軍ソースブック」の中に掲載されている「帝国標準型輸送艦」は2万トンの大きさでした。

 後述しますが、帝国中央で建造された移民船が、スピンワードマーチなどの辺境宙域において、貨物船として再活用されている可能性も、考えられます。
 帝国中央で建造された標準型移民船が、辺境宙域まで移民を届けた後、売却されて、標準型貨物船に(軍用ならば輸送艦に)改装されている可能性が高いということです。
 そのため、移民船の設計も極力「標準型輸送艦」に近いデータへと変更しました。


 船体サイズを10万トンや50万トンなど、さらに巨大なサイズにしなかったことにも、きちんと理由があります。

 2万トン級移民船ならば、ジャンプ4(あるいは2パーセクの2連続ジャンプ)の移動性能を備えながら、約1万人の移民を二等寝台で輸送することが出来ます。
 1週間当たりで1万人の移民を受け入れることならば、大半の移民先には容易なことではないでしょうか。

 これが、50万トン級移民船同じジャンプ性能で、25万人の移民)になると、一度に25万人の移民が押し寄せることになってしまいます。
 移民先の世界にとって、わずか1週間で人口が25万も増えることは、とても大変なことでしょう(人口10億以上の高人口世界ならば、大丈夫かも知れませんが)。
 これが2万トン移民船ならば、増える人口は1万人
 移民先の世界に与える影響は、25分の1で済むのです。

 移民船の停泊期間を伸ばす(例えば、停泊期間を25週間に伸ばし、毎週1万人ずつを下船させる)方法も考えましたが、トラベラー世界の宇宙船は、とても高価です。
 固定経費(建造費ローン)の支払いが大きいので、停泊期間を半年まで延ばすことは経済的に命取りだと判明しました。
 停泊期間を延ばすよりも、小さな移民船を使って、移民を小分けにして運んだ方が、経済的には有利なのです。
 遭難事故が起きた場合も、50万トン級1隻より2万トン級1隻の方が、対処は容易でしょう。

 ちなみに、1万トン以下小さな移民船の場合では、移民1人当たりの輸送コストが、大きく上昇するため、大規模な移民には不経済だと判断しました。


 以上の理由から、私は帝国標準の移民船サイズ2万トン設定しています。
 これから行なう考察も、それを前提として進めました。




3.二等寝台の経済性


 移民船について考える前に、移民を輸送する手段である、二等寝台について、考察してみます。


(1)二等寝台(二等船客)の経済性

 掲示板の方でも、「二等寝台(二等船客)の経済性」というタイトルで投稿させて頂きましたが、ここに再掲載します(若干の加筆、修正をしました)。


 帝国標準型の1千トン級コンテナをベースとして、そのまま貨物を積んだ場合、
二等寝台を載せた場合、専用室を設けた場合で、収支を比較してみます。


貨物を積んだ場合
 トン当たりcr1,000の収入です。
 維持費は必要ありませんので、ジャンプ1回当たりの収入は100万クレジット。
 1年間(25回のジャンプ)で、2,500万クレジットの利益です。


二等寝台を積んだ場合
 二等寝台900(二等船客900名)、専用室22個半(医療要員45名)、船倉10トンで、追加建造費はMCr54×0.8(量産による割引を見込んでいます)=43.2。

 維持費がcr100×900+cr2,000×45=cr180,000。
 医療要員の給料の合計が2週間でcr20,000としておきます。
 支出合計は、20万クレジット。

 収入は二等チケットcr1,000×900枚で、90万クレジット。
 ジャンプ1回当たりの利益は、70万クレジットでした。

 1年間で1,750万クレジットの利益が出る筈ですが、追加建造費によって増えたローンの支払いに216万、その整備費として4万が充てられます。
 手元に残る金額は、1,530万クレジットだけになりました。


専用室だけを積んだ場合
 専用室234(特等船客234名)、乗組員用の専用室16(接客要員30名+医療要員2名)で、追加建造費がMCr100×0.8=80。

 維持費がcr2,000×266=cr532,000。
 乗組員(接客要員と医療要員)の給料合計がcr23,000としておきます。支出合計が55万5千クレジット。

 収入は、特等チケットcr10,000×234枚で、234万クレジット。
 ジャンプ1回当たりの利益は、178万5千クレジットです。

 1年間で4,462万5千クレジットの利益になる筈ですが、ローンに400万、定期整備に8万が必要です。
 差し引き、4,054万5千クレジットとなりました。


 まとめますと、1千トン級コンテナから得られる利益は、以下のようになりました。

 貨物を積んだ場合、  年間2,500万
 二等船客を運んだ場合、年間1,530万(貨物基準の  61%)
 特等船客を運んだ場合、年間4,054万(貨物基準の162%)

 二等寝台が1基0.5トンだったCTのルールでは、それなりに、二等船客も儲かりました。
 しかしMTのルールですと、二等寝台の大きさが1基1トンに増えてしまったので、二等船客の収入は、半減です。
 MTで変更された、医療要員の増加(二等船客20名に付き1名が必要というルール)も、大きな負担になりました。

 乗組員の給料をいくら安く抑えても、船内容積の9%(1人分の専用室2トンのことです。貨物を運べれば、2,000クレジットの収入)を取られ、維持費に2,000クレジット(二等チケットが2枚分です。収入の10%)も掛かる訳ですから、どうしても、儲かりません。
 まともな経営者ならば、自分の商船から二等寝台を撤去してしまい、二等船客を全く乗せなくなるでしょう。

 どうやら二等船客は「政府指定商船(例えば、政府から資金援助を受ける代わりに最低10基の二等寝台を備えるよう指導される)」か、政府主導の「移民船」でもなければ、乗せてもらえないことになりそうです。


 以上の計算結果から、私は移民
の存在(建造)理由を発見できたと考えました。

 一般の商船は、(不経済ですから)二等船客をほとんど乗せません。
 ですが労働力が不足している世界や、逆に過剰な人口を抱えている(労働力が余っている)世界は、商船による移民を必要としています。
 そこで、それらの政府は若干の赤字を覚悟の上で、二等船客を専門に乗せて運ぶ商船(つまり移民船)を建造し、主要な航路に就航させているのはないでしょうか。


 という訳で、移民船とは、二等寝台を使い、安価に旅客を輸送する商船である、と定義します。
 移民船の船主には、政府などの公的機関が多いと思われますが、政府の援助を受けた企業や、きちんと採算を取っている私企業などもある筈ですから、ここでは、特に限定しません。



(2)二等寝台のリスク評価  

 メガトラベラーにおいて、二等寝台を利用する船客は、滅多に死ななくなりました。
 医学−2教育度10以上の船医に処置してもらえば、解凍(蘇生)の成功判定に+4のDMを受けられますから、2D6で「2」を出す以外、まず、失敗の可能性はありません。

 さらに解凍失敗=死亡では、ないのです。
 改めて2D6を振り3〜6は1Dの軽症、7〜10は2D、11以上で3Dの重症というルールになっていました。
 3Dの重症を負って、なおかつ入院治療を受けられないという状況以外では、決して死ななくなったと思います。

 クラシックの場合は、6分の1(16.7%)の高確率、耐久力が高いキャラクターでも12分の1(8.3%)の確率で、ばたばた死んでしまったというのに。


 それはともかく、毎度おなじみの期待値計算をしてみました。
 移民1万
人当たりの、解凍失敗(リスク)を評価します。

 先にも述べたように、医学−2の技能と、教育度10以上を持った船医が解凍処置をしてくれるのならば、失敗の確率はわずかなものです。
 しかし、ゼロではありません。
 以下の表2に、そのリスクを示しました。
 勝手ながら「船医」とは、解凍処置で+4以上のDMを得られる医療要員であると定義しています。

 しかし、医学−2以上の技能を持ち、教育度10以上の船医を、何時でも確保できるとは限りません。
 移民1万人を運ぶために、十分な技能と教育度を備えた船医を500人も集めることなどは、とても困難だと思います。
 そこで、最低限の医学−1技能と並み(5〜9)の教育度を持った、処置係という医療要員を考えてみました。
 日本の資格で言えば、看護士に相当する立場でしょうか。

 処置係の技能と教育度では、解凍処置で+2のDMを得ることしか出来ません。
 解凍処置の失敗率は、大きく跳ね上がることになりました。
 「処置係」が解凍処置を行なった場合のリスクも、以下の表2に並べて示します。


2009.04.06 加筆

 前回の投稿後、掲示板にて、雪男様から色々とアドバイスを頂きました。
 その中のひとつが「解凍処置等の行為判定にコンピュータを使用する。これにより、DM+1を得ることができ、処置係であっても4+(91.7%)の成功率を得られる」ということです。

 私は完全にこのルールを忘れ去っていました。
 再計算した数値を、表2aとして作成し、表2と入れ替えます。
 当然、考察もそれに合わせて書き換えました。


      表2a  二等寝台のリスク(移民1万人当たりの失敗人数)
             コンピュータ使用DM+1を加算

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 船医の処置を受けられた場合、解凍の失敗は、3%未満(278人)です。
 +7以上のDMを得られる「優秀な船医」であっても、失敗の確率はこれ以上下がりません(2Dで2が出た時だけ、失敗するためです)。
 逆に考えるならば、+3以上のDMを持っていならば、失敗確率は変わらないということです。

 <医学−2>技能と教育度5、または、<医学−1>技能と教育度10を持っていれば、+3のDMは得られました(コンピュータ使用のDMを加えて+4になります)。
 これはこれで、面白い発見ですね。

 その大部分に当たる「1Dの致傷」と「2Dの致傷」を受けた移民は、元々のUPPがよほど低くて、1D〜2Dの致傷が重症を招かない限り、自然に治癒します。
 年齢効果でUPPの低下が始まっている34歳以上と、成長期の子ども(18歳未満)は明らかに危険です。

 「3Dの致傷」を受ける移民は、24人でした。
 治療に関するルールには疎いのですが、彼らの治療に、1週間の入院と、1人当たり1万クレジットの治療費がかかると仮定します。
 1万人の二等船客が1人当たり24クレジットずつの寄付をするならば、その治療費は簡単に賄えました。

 あるいは、冷凍睡眠に入る前の段階で、簡易保険「安心のお目覚めコース」に入っておく、などの方法も考えられます。
 1人当たり、25クレジットの払い込み(1クレジットは、胴元の管理手数料)だけで、保険の加入者は「3Dの致傷」を受けた場合、1万クレジットの治療費を受け取ることが出来ます。
 保険に入っていない場合、「3Dの致傷」を受けても、治療費は自腹になる訳です。

 上記の簡易保険「安心のお目覚めコース」は、私が思い付きででっちあげた、架空の保険システムです。
 政府主導の移民計画ならば、移民の不安を解消するために、そのような保険を掛けていても不思議は無いでしょう。

 しかし、ルールブックの何処を探しても見つかりませんので、念のため。


 処置係が解凍処置を行なった場合、解凍の失敗は、8.3%(833人)でした。
 わずか+1のDMで、失敗確率が半減するという効果に驚いています。
 クラシックのルールと比べても、半分でした。

 その大部分、「1Dの軽症」と「2Dの軽症」を受けた移民は、放っておきます。
 しかし762人も軽症を負っているという状況は、後で少々問題になりそうですが、訴えられる危険はないのでしょうか。

 「3Dの重症」を受ける移民は、71人でした。
 船医が処置した場合と比べて、3倍のリスクです。

 同じように、1週間の入院と、1人当たり1万クレジットの治療費が必要と仮定するならば、1万人の二等船客が1人当たり95クレジットの寄付をしなければならなくなりました。
 簡易保険「安心のお目覚めコース」ですと、10クレジットの払い込みです。
 リスクが3倍ですから、保険料も3倍になりました。

 二等船客が、たまたま乗り合わせただけ者同士の場合、治療のため、わざわざ寄付をしてくれるとは思えません。
 また、簡易保険の制度が存在しない場合、大きな致傷を受けて重症になった二等船客は、(治療費を払えるほど裕福ならば、そもそも二等寝台を利用しないでしょうから)そのまま放っておかれ、死んでしまうのでしょう。


2009.04.06 加筆

 雪男様からは、「治療」や「診断」の行為判定に関する数値も頂きました。
 解凍判定に失敗した24人の命を救うため、手術用のロボットが必要だという文章の説明で、以下は、掲示板に投稿された文章を転載したものです。

 診察については、看護師でも十分(成功率は94.5%)。
 外科医の人数は、若手外科医(医学−3教育度5〜9、敏捷度8以上)でも、平均1時間で手術できますから、1人でも問題ないのですが、成功率が72.2%しかありません。
 診察と合わせて1回失敗するだけで患者の5割以上(55%)、2回失敗すると9割以上(94%)、3回失敗するとほぼ全員(99%)死亡することを考えると、低すぎます。

 最高の成功率を確保するためには+8DMが必要なのですが、これには、医学−5知力10以上又は医学−6知力5以上の外科医が必要です。
 医大の優等卒業生でも2DM足りません。

 一方、安物の手術ロボット医学−3知力4以下、敏捷度8以上)でも、最高の成功率を出します。
 なぜなら、持続判定に失敗しないので難易度が並になるからです(私がマスターなら持続判定そのものを省力する)。
 人間の意志を使いたい気持ちがあっても、死亡率が洒落にならないくらい高いので、仕方ないと思います(DMが1足りないだけで死亡率3倍、2足りないと死亡率6倍)。



(3)解凍処置の所要時間

 また、行為判定の所要時間から、処置係船医優秀な船医による、解凍処置の所要時間を計算してみました。
 1人の解凍処置を終えるまで、次の二等船客の解凍を始められない、と想定しています。
 その結果、20人分の解凍処置を終えるために必要な時間は、

 処置係  (DM+3)   151分(=2時間31分)
 船医   (DM+5)   116分(=1時間56分)
 優秀な船医(DM+7)      89分(=1時間29分)

 思っていたほど、所要時間の差は大きくありませんでした。
 1日の労働時間を「8時間」と想定するならば、処置係は1日当たり63人船医82人優秀な船医107人を解凍できるようです。
 3日間、解凍処置だけに専念すれば、190〜247〜323人の二等船客を解凍できることが分かりました。

 医療要員の9割を技能レベル1の処置係にしておき、医療要員の1割だけ技能レベル3以上の船医を雇うようにしても、解凍処置に3日掛ければ、解凍処理は十分間に合うようです。
 DM+5の船医が解凍処置を行なうのですから、リスクも高くありませんね。

 しかし宇宙を航行している間、彼ら医療要員は、一体何をしているのでしょうか。




4.移民船の経済性


 移民を行なう政府や民間団体は、果たしてどのようにして、経済面の収支バランスを取っているのでしょうか。

 移民は政治的な計画だから採算はどうでも良い、という考えもありますが、採算の取れない計画を無理矢理に推し進めてしまえば、その政府は経済的に破綻してしまいます。

 たとえ赤字確定の航路だったとしても、極力、その赤字を小さくして、政府の負担を抑えながら、航路を維持していこうとするでしょう。

 また、政府に拠らない、民間主導の移民も多く行なわれている筈ですが、それらの移民計画はもちろん、採算が取れていなければいけません。


(1)経済性の評価 コア宙域からの移民船

 帝国においては、最も数の多い移民船だと思われます。
 400年代までは、多数の移民が帝国内部から、デネブ宙域や、スピンワードマーチ宙域を目指して来ていたという記述もありました。
 当然、移民は移民船に乗ってやってくる訳です。
 最近では、フォーボールドン計画という植民計画も存在していました。

 テックレベル15で作られた、2万トン級の移民船が、8,600〜10,900人の移民を乗せて来た場合のコスト計算をしてみました。
 出発地は、コア宙域のキャピタル。
 到着地は、スピンワードマーチ宙域のリジャイナとしています。


    表3  コア宙域からの移民コスト(移民1千人当たりの輸送コスト)

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 移民のコストは、ジャンプ4の移民船を使った場合がもっとも安くなり、次点が、ジャンプ2、三番目がジャンプ3の移民船でした。
 ジャンプ1の移民船は、コンテナ船と同じように最低です。

 移民船において、ジャンプ2でなく、ジャンプ4がもっとも経済的となった原因は、移民船の建造コストと、維持/運行コスト高騰にあるようです。
 二等寝台1基当たりは安くても、数がまとまれば結構、高価なものですし、二等船客20人当たり1人を必要とする医療要員(の給料と専用室の維持費)も、大変なコスト増でした。
 具体的な数字を出すと、建造コストは、コンテナ船と比べて7〜12%の上昇。
 維持/運行コスト45〜71%も増加します。
 コストが高くなるのですから、回転率(ジャンプ能力)を高めて、利益(移民の輸送人数)を増やさなければ、採算が取れません。

 私が設計した移民船の場合、幹線航路の中で、44%のジャンプが3パーセク以上のジャンプを必要とするならば、ジャンプ2の移民船より、ジャンプ4の方が安上がりだと結論できました。
 そして、帝国の幹線航路は、56〜75%がジャンプ3以上です( Traveller Map を用いた調査結果です)。
 意図的にジャンプ距離を小さくしていると思われるスピンワードマーチ宙域内の幹線航路でさえ、46%のジャンプが3パーセク以上のジャンプを必要としていました。
 ですから、長距離航路ならば、ジャンプ4の移民船がもっとも経済的となることは、必然的なのです。


 移民のコストは、コア宙域からスピンワードマーチ宙域へ移民する場合で、移民1人当たり81,500クレジットでした。

 人口過剰で困っている社会ならば、この程度の負担は安いのかも知れません。
 惑星海軍の予算が、国民1人当たり500クレジットですから、同額の税負担を行なえば、毎年、国民163人中1人を星系外へ送り出すことが出来る訳です。
 下手な生活支援策よりも、安く済むような気がしてきました。
 あるいは、松永様にも指摘されたことですが、優秀な人材ならば移民の受け入れ先が輸送コストを負担してくれる可能性もあります。


 ところで、上記で計算したコストは、移民船をコア宙域からスピンワードマーチ宙域まで送る場合に限った、片道での移民コストでした。
 普通の商船ならば、帰り道は別の貨物を積んで帰れば良いのですから、片道だろうと往復だろうと、輸送コストは変わりません。
 しかし移民船の場合、復路にも二等船客を乗せてしまったら、せっかく連れて行った移民を連れ戻すことになってしまいます。

 船内は二等寝台で一杯ですから、移民以外の貨物を積む余裕もありませんでした。
 しかし、だからといって移民先から二等船客(移民)を連れ帰ったとしたら、一体、何のために移民船を仕立てたのか、分からなくなってしまいます。

 移民船が空荷でコア宙域まで戻るとしたら、回航費用がかさみますので、移民コストは2倍163,000クレジットに増えてしまいます。
 到着先のスピンワードマーチ宙域で移民船を売却できるならば、現金を持ち帰るだけで済むでしょう。
 あるいは、その現金を開拓地の建設費用に充てるなどの用途にも使えます。

 試しに計算してみたところ、建造費4,132MCrJ4移民船(3年の中古船)を、建造費の
64.7
2,673MCr)で売却できれば、回航費用と釣り合うことが分かりました。
 建造費の64.7%よりも安く売ることしかできないならば、コア宙域まで回航した方が、移民費用は安く済むということです。
 ちなみに、建造費3,178MCrJ2移民船の場合は、52.7%が平衡点でした。

 また、移民船を建造費の80%で売却できた場合の移民コストを、下の表4に載せました。
 J4の移民船で3年の中古、J3〜J2の移民船で4年の中古、J1の移民船で6年の中古ということになります。
 売却を前提とした場合、どの移民船でも80%で売却することが出来れば、移民費用はずっと安価になると分かりました。

 回航費込みの移民コストと、売却した場合の移民コストは、移民1人当たりで

 J4移民船 回航費込み 16万3千クレジット → 売却 10万5千クレジット
 J3移民船       18万1千クレジット →    10万4千クレジット
 J2移民船       17万7千クレジット →      9万3千クレジット
 J1移民船       25万7千クレジット →    10万5千クレジット

 売却を前提にした場合、移民コストはジャンプ2の移民船が最も安くなりました。
 とても割高だったジャンプ1の移民コストが、ジャンプ4と並んでしまったことは、とても意外です。

 また、90%で売却することが出来た場合は、

 J4移民船 回航費込み 16万3千クレジット → 売却   6万7千クレジット
 J3移民船       18万1千クレジット →      6万8千クレジット
 J2移民船       17万7千クレジット →      6万2千クレジット
 J1移民船       25万7千クレジット →      7万4千クレジット

 最初に計算した、片道での移民コストを下回るほど、安価な計算結果となりました。

 そう考えると、スピンワードマーチを行き交っている商船の多くは、もともと帝国の中央で建造されながらも、移民を送り届けた後に売却されて、第二の人生を送っている元移民船なのかも知れません。

  表4 移民コストの比較(移民船をコア宙域まで回航した場合の移民コストと、
        移民船をスピンワードマーチで売却した場合の移民コスト)

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 べっきぃ様より、入植地で育てた羊や牛を積んで帰るというアイデアも頂きました。
 これならば、移民用の二等寝台を有効に活用できます。
 しかし、回航費用だけでも1頭当たり81,500クレジットがかかってしまうことに、変わりはありません。

 スピンワードマーチ宙域で仕入れた牛(仕入値は無料だと仮定します
)を、コア宙域で1頭81,500クレジットの値をつけて売っても、ようやくプラスマイナス・ゼロにしかならないのです。
 日本の高級和牛松阪牛でも、せり値の最高額が75,000クレジットだそうですから、羊や牛である限り、これ以上の売値にはできないでしょう。
 収支を黒字にすることはどう考えても無理ですが、赤字を小さくするためには、十分役立つかも知れませんね。
 もう少し近い距離ならば、それなりに採算が取れる可能性もあります。


 移民船の解体も検討してみましたが、解体費用や解体した船体の価値が計算できないため、評価できませんでした。



(2)経済性の評価 スピンワードマーチ宙域内の移民船

 今度は近距離の移民を考察してみます。

 スピンワードマーチ宙域の開発の中心は、モーラだったということですので、モーラからリジャイナ(リジャイナ星域)への移民と、アイデラティ(ファイブ・シスターズ星域)への移民コストを、比べてみました。
 ジャンプ2以下が連続する、特殊な航路でない限り、ジャンプ4の移民船がもっとも経済的な筈です。


      表5   モーラからリジャイナへ向かう、移民のコスト

ES20K_FIG05.GIF - 4,949BYTES

 予想通り、移民のコストは、ジャンプ4の移民船を使った場合が、もっとも経済的でした。
 移民のコストは、1人当たり14,200クレジット
 日本円に直して142万円ですから、それほど無理な金額ではないでしょう。
 決して、小さな費用だとも思いませんが。

・移民先に、広大な手付かずの土地が待っていて、移民を志願するだけで手に入る。

・高額な治療費を必要とする病気を治してもらう(本人でも家族でもOK、それが恋人だったりするとロマンチックかも)代わりに、移民を志願する。

・犯罪を犯したが、刑期の代わりに移民を志願する。あるいは、返せなくなった負債を帳消しにしてもらう代わりに移民する、など。

 というような(「キンニール」のライブラリ・データに記載されていた)政策にも、現実味が出てきました。
 再び、惑星海軍予算を引き合いに出すと、毎年、国民30人中の1人を送り出せる訳ですから。


 ついでに、リジャイナからジュエルまで移民を運ぶ場合も計算してみました。
 この航路は、ジャンプ2の経路が多くなっています(67%を占めています)ので、今回だけは、ジャンプ2の移民船が最も経済的となる筈です。
 
      表6   リジャイナからジュエルへ向かう、移民のコスト

ES20K_FIG06.GIF - 4,979BYTES
 

 予想の通り、ジャンプ2の移民船が、もっとも経済的でした。
 近距離の、特殊な航路であれば、ジャンプ2の移民船も活躍できるということが、分かります。
 しかし特殊な仕様ですから、その航路上にある世界の、Aクラス宇宙港で建造されたものになるでしょう。
 リジャイナ=ジュエル航路ですと、リジャイナジュエルイフェイトの宇宙港が、その候補に挙げられます(テックレベルは12〜13なので、問題はありません)。
 

 最後に、モーラからアイデラティまでの移民航路です。


      表7   モーラからアイデラティへ向かう、移民のコスト

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 アイデラティ行き移民の場合も、ジャンプ4の移民船がもっとも経済的でした。

 以上の計算結果から、スピンワードマーチ宙域内を行き交っている移民船の大半は、ジャンプ4の能力を持っていると、推測できます。




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Fig.8 20kt級帝国標準型移民船




5.交替要員による移民


 この項は、丸ごと全部が加筆分です。

 色々と調べている内に、MTのルールでは、

 二等船客を乗せる場合、20人に付き1人の医療要員が必要ですが、同じ二等寝台を利用している交代要員の場合は、120人に付き1人の医療要員で良い」

 という事実が判明しました。

 理由は分かりませんが、そういうことになっているのです。


 という訳で、雪男様提案の、安価な移民方法を転載しました(用語を統一するため、部分的に修正しています)。

 移民局:移民船の乗組員(交替要員)を指定。
 移民船:移民を、スチュワードの交代要員として乗船させる。
 移民 :乗船前に手数料を移民局へ支払う。
     現地到着後は、給料相当額の払い戻しを受ける。

 法的には恐らく二等船客である移民に対して、帝国法で定められているであろう医療要員を当てないことに対する、帝国政府への言い訳です。

 私は、乗組員の決定基準は数種類あると思います。

 1.実際に必要である(省けない)。
 2.慣習で要求される(船を建造した後で、乗組員が集まらない等の問題が、生じる
  恐れがある)。
 3.法律で要求される(事前に許可を取れば、省ける)

 移民は仕事がないので、1.には該当しません。
 2.は慣習が分かりませんが、移民本人が慣習に固執するほど場数を踏んでいる筈がありません。
 他の乗組員は特別なことをする必要が無い以上、嫌がらない人を集めれば良いだけです。

 となると、3.が問題となる訳ですが、該当する政府が3種類あります。
 出発地の星系政府目的地の星系政府帝国政府です。

 出発地の星系政府は、事前に許可が取れますし、経費削減は政府の利益にも適います。
 目的地の星系政府が事態に気付くのは、移民船が到着した段階ですし、実際に問題が起きない限りはガタガタ言わないでしょう。
 言ってきたところで、どうなるものでもありません。

 となると、問題になるのは帝国政府の意向です。
 事前に許可が得られるならば、言い訳は必要ありませんが、場合によっては拿捕や懲罰(出発地の星系政府も含む)になりかねません。
 出発地の星系政府の役人は、帝国法に明確に違反する事業に許可を出したりしないでしょう。
 そこで、言い訳が成り立つ必要があるのです。

ええ、軍艦の交代要員と同じ基準で乗せますし、給料も帝国法通りに支払います

 こう言えれば、出発地の星系政府の合意を得ることが出来るでしょう。


 以上、転載はここまで。

 このルール(帝国法の盲点)を突けば、医療要員の人数を6分の1(500人を84人)まで減らせます。
 同時に、空いた居住スペースに800人くらいの移民を追加できそうですね。


 それから、正誤表には「緊急用二等寝台は、長期の冷凍睡眠には向いていません」という記述があるそうです。
 「長期」を指す期間が、「数ヶ月」か「数年」か、あるいは「数世紀」なのかについては分かりませんが(レフリーの裁量ということでしょうか)。




6.帝国標準型−20kt級移民船(TL=15)

 帝国標準型の移民船は、テックレベル15で建造され、ジャンプ4、1G加速の性能を持っています。
 既存航路の(3パーセク以内の近距離航路を除く)大部分で、最も経済的に、大量の移民を運ぶことが出来るでしょう。


 船体サイズは2万トン。
 形状は、安価なコード7の分散構造(非流線型)です。
 実は、船体サイズを2万トンに変更した理由のひとつに、船体の建造コストの問題もありました。
 メガトラの設計ルールに拠ると、1万トン以下の宇宙船は船体の基本価格が1千トン当たりMCr1.34で、ほぼ揃っています。
 ところが、船体サイズ2万トン以上の宇宙船では、船体の基本価格が1千トン当たりMCr0.37〜0.89(28〜66%)と、極めて安価になるのです。
 船体価格は、建造費全体の5〜10%を占めていますので、コストダウンのためには見逃せない要素でした。

 ドライブ機器はジャンプ4と1G加速の性能を持ち、燃料タンクには、4パーセクのジャンプと、14日間の通常航行が可能なだけの燃料を搭載しました。
 航路支援の行き届いた幹線航路のみを航行することが前提ですから、1回のジャンプと7日間の通常航行ができるだけの燃料を持っていれば、十分な筈です。
 軌道宇宙港での燃料補給が前提ですので、燃料スクープも燃料精製装置も、搭載していません。


 自衛用の武装として、三連架ビーム・レーザー砲塔10基三連架散乱砂砲塔10基を搭載しました。

 設計の参考にした「帝国標準型輸送艦」は、戦時の徴用を前提としたためか、異様に重火力です。
 輸送艦には、三連架ビーム・レーザー砲塔60基三連架ミサイル砲塔60基三連架散乱砂砲塔60基が、搭載されていました。
 しかし、これだけの砲塔を搭載すると、パワープラントの強化などのため、建造費が14%も増加してしまいます。
 そして移民の乗船数は、800名も減少(収入が7%減少します)。
 さらに、砲手を大量に(37名も)乗せなければなりませんから、彼ら分の専用室や人件費も掛かってきます。
 経営面の負担が非常に苦しくなりますので、私の設計した移民船では、軽い武装しか積みませんでした。
 海軍からの補助金が、建造費と維持費の増加に見合うものならば、移民船の重武装化を考慮しても良いのですが。


 コンピュータのモデルは9。
 これだけの大型船になると、高レベルのコンピュータを搭載して、乗組員を削減した方が、運行コストを安くできると分かりました。
 乗組員の必要人数は33人ですが、10,900名の移民(二等船客)の安全を確保するため、545人の医療要員を必要としています。


2009.04.06 加筆

 雪男様から、現代日本(TL8)には、人口1万人当たり、20人の医師と、80人の看護師がいると教えて頂きました。
 これで移民1万人当たり100人の医療要員は確保できましたが、あと400人足りません。
 しかし、交代要員の制度を利用すれば、100人でも十分です。


 積載艇としては、3G加速のシャトル(95トン)1隻と、1G加速の大型ボート(20トン)2隻を搭載しました。
 また、前述の通り、10,900名の二等船客を輸送できます。


Claft Id : Imperial Standard 20k_ton Class Emigrant Ship
 from MASA.Ship's

ID code:

Hull:


Power:

Loco:


Commo:

Sensors:



Off:



Def:




Control:




Accom:



Other:


帝国標準型 2万トン級移民船  TL=15  MCr=5,164.2

18,000/45,000 排水素=20,000トン  形状=7分散構造  装甲=40G
  重量=95,022トン  総重量=102,208トン

189/378  核融合=51,030Mw  航続=16/48日間

900/1,800  ジャンプ=4
360/ 720  通常=1G  移動力=0

電波式=星系内距離*3  レーザー式=遠軌道距離*3

受動EMS=恒星間距離*2  能動EMS=遠軌道距離*2
  能動物体探知          = 並   能動物体追跡         = 並
  受動エネルギー探知 = 並

ビーム・レーザー = x04
  砲塔群                  10
  射撃可能               10

防御DM =+8  装甲DM = 0  致命的命中回数 = 20
  散乱砂砲 = xx4
  砲塔群         10
  射撃可能      10

コンピュータ=モデル9*3(標準型)  パネル=ホロ・リンク型*150
  追加=大型ホロ・ディスプレイ*3
  基本環境、基本生命、高度生命、重力プレート、重力補正器
  エアロック10

乗組員578(艦橋7、エンジニア11、砲術3、艦載6、 指揮4、
 接客1、医学546)
 二等船客=10,900 専用室=291 二等寝台=10,900

船倉=6トン  格納庫=184トン(シャトル95トン*1 大型ボート20トン*2)
   燃料=5,635トン
  目標サイズ = 大  視認レベル = 強
  量産価格MCr = 4,131.4


 乗組員の中でも、医療要員の545人が、大きな運行コストの増大を招いていますので、私は医療要員の99%を、医療ロボットに置き換えた場合も考えてみました。

 上記の移民船の場合、医療要員を7人だけ残して、すべてロボットに置き換えます。
 専用室が269室も減りますし、救命艇代わりのシャトル(95トン)も不要になったので降ろしました。
 二等寝台は、10,900基から1,200人分(11%)も増えて、12,100基です。

 この移民船を用いるならば、コア宙域からスピンワードマーチ宙域への移民コストは、片道で64,600クレジット(79%)に下がります(往復で129,100クレジット)。
 さらに、移民船を到着地で売却した場合は、85,500(80%で売却)51,700クレジット(90%で売却)でした。
 移民コストは、81%(80%で売却)〜77%(90%で売却)の低下です。
 ロボット1台の購入費が40万クレジットより安ければ、片道で使い捨てても採算が取れると分かりました。

 センタ・マウント製の医療/看護用擬生物型ロボット「フローラ」シリーズの場合ですと、主部1台が53万クレジット、従部8台が117万クレジットですから、1台当たりの平均価格は21万クレジット強になりました。
 上記の移民船に75セット(600台の従部)が乗り込むことになりますが、擬生物型ロボットであっても、十分に元が取れるのです。


2009.02.14 初投稿
2009.04.06 雪男様から教えていただいた情報を基に、大幅加筆して再投稿。