Prelude for The Twilight Peak
「黄昏の峰へ」の前奏曲
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3, Metasequia

 

 

 

 

 

 
 



 
 
 
 
 
 

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図1 辺境航路を航行する、100トン級連絡船



1.はじめに


 今回は、クラシック・トラベラーの名作シナリオ「黄昏の峰へ」に関して、考察を行いました。
 このシナリオは、リジャイナから銀河辺境/回転尾方向へ伸びている、1パーセクの星系連鎖、スピンワード・メインの旅を楽しむシナリオです。

 「黄昏の峰へ」が大好きである私は、プレイする相手も居ないのに、星系の設定や、星系で待ち受けている事件(ショートシナリオ)をせっせと作り込んでいました。メガトラのルールは良く分からなかったので、その大部分はCT設定でしたが。
 それらの設定が溜まったので、テストプレイと称して、自由貿易船のソロプレイを始めたのですが、なぜか毎回破産してしまいます。
 リジャイナを発ってテュレデッドを経由、インズへ到る7ヶ月間の航海ですが、20回のプレイを行なって破産は19回。黒字でインズへ辿り着いたことは、たったの1回しかありません。
 航海の成功率は、わずか5%ということです。破産する確立が95%もある原因は、一体何なのでしょうか。それを突き止めたいと思う気持ちが、今回の考察の動機です。

 破産が頻発する原因のひとつは、明らかに「海賊」でした。
 破産した19回の内6回の原因は、海賊船に遭遇し、ドライブ装置を破壊されたことにあります。ドライブを修理しなければ航海を再開できませんが、貿易で儲けた現金も貨物(船荷と貿易品)もすべてが奪われたため、修理費を捻出できなかったのです。
 それ以上、航海を続けられませんから、自由貿易船はその星系を離れることが出来ません。自動的に破産しました。
 今思うに、海賊船に遭遇した際に逃亡を試みなければ、ドライブ装置は無事だったのかも知れません。貨物は奪われますが、とりあえず航海は続けられたでしょう。

 しかし残りの破産13回は海賊船に襲われずとも、しっかり破産していました。この原因は何なのでしょう。
 スピンワード・メインは、旅客数が少ないのでしょうか。あるいは、貨物量が少ないのでしょうか。
 自分のサイコロ運が悪いのだとは考えたくありません。そこで、それらの期待値計算を行なってみました。


 2009.12.10追記。海賊船について考察し、掲示板にて情報を募ったところ、多くの海賊は貨物を奪うだけであり、商船を破壊したり、乗組員を誘拐したりしないということが分かりました。私のキャラクターが抵抗しなければ、破産回数はもう少し減っていたかも知れません。





2.自由貿易船の航海

(1)A型自由貿易船

 CT基本ルールブックに掲載されているA型自由貿易船は、特等/一等旅客を6人、二等旅客を20人まで乗せることが出来ます。貨物の搭載量は82トン。

 一方、メガトラ(MT)の帝国百科に掲載されたA型自由貿易船は、専用室が減らされていましたが、(乗組員に2人部屋を適用することで)特等/一等旅客を6人まで、二等旅客を8人まで乗せることが出来ました。貨物の搭載量は82トンで、CTと変わりません。

 今回の考察では、MTの自由貿易船を用いることにします。
 特等/一等旅客の人数と船倉容積は同じ数値ですから、どちらのデータを用いても、問題にはなりません。
 唯一の相違点である二等船客の人数も、8人程度が妥当だと考えたました。そもそも200トンの自由貿易船で、20台の二等寝台は過剰なのです。

 経済面については、乗組員4名を抱えている場合、旅客の乗船率や貨物の積載率が80%を越えているならば、十分に黒字での運行が可能だと判明しました(例の如く、松永様の宇宙船設計シートを利用させて頂きました)。
 ですから経営上の指針も、乗船率や積載率80%以上を黒字経営の目安とします。




(2)乗組員の技能

 CT「豪商」のルールやMTのルールでは、乗組員の技能が旅客や船荷の募集に影響を及ぼします。
 今回の考察では、A型自由貿易船がスチュワードを乗船させていることから、乗組員の1人が〈スチュワード−1〉の技能を持っていることにしました。特等旅客の募集にDM+1を得られます。
 また同様に、船長が〈管理−1〉を持っていると考えました。一等旅客の募集にも、DM+1が得られます。
 二等旅客の募集に有利な〈交渉〉技能や中型貨物に役立つ〈接触〉技能については、不確定な要素ですので、乗組員の誰もそれらの技能を持っていないとしました。二等旅客についてのDMはありません。


 2009.12.10追記。再投稿の際、中型貨物(船荷)も加算するようにしましたが、中型船荷の数に〈接触〉技能は影響しないため、〈接触〉技能についても考慮していません。〈接触〉技能が+DMとして使えるのは、中型「貿易品」の数を決める場合だけでした。




(3)旅客の乗船率

 CTもMTも、旅客人数を決定するルール関しては全く同じです。どちらのルールを使っても構いません。
 期待値を計算する上で重要な点は、どんなにサイコロの目が良くても、A型自由貿易船が7人以上の特等旅客と9人以上の二等旅客を乗せることが出来ない、という点でした。旅客用の専用室が6つ、二等寝台が8つしか無いのですから当然のことですが、上限が決められていると、期待値の計算がとても面倒になってしまうのです。
 また、旅客の下限は0(ゼロ)です。サイコロの結果がマイナスの数値になっても、マイナスの旅客を運ぶ訳にはいきませんから、下限は0なのです。これも期待値計算を複雑にしてくれました。

 例えば、リジャイナからジェンゲへ運行する場合、特等旅客が6人集まる可能性は、94.6%でした。残り5.4%は5人以下の特等旅客しか集まらず、その代わりに一等旅客を乗せなければなりません。
 平均すると、特等船客の人数は5.90人で、一等旅客の人数は0.10人になります。

 乗船率の基準は、特等船客6人が乗り込む場合の収益(Cr10,000×6人分)を基準としました。以下の表に示されている乗船率は、

 特等/一等の乗船率=(特等旅客の人数+一等旅客の人数×0.8)÷6

ということになります。
 二等旅客の乗船率は、そのまま人数を定員の8で割りました。




(4)貨物の積載率

 貨物量の計算も大変でした。
 船荷の数は1D6で求めますから、数の期待値計算は簡単でしたが、その船荷の大きさも1D6で決めることになっていたのです。大型船荷の大きさは1D6×10トン、中型船荷の大きさは1D6×5トン。船荷の分割は出来ませんから、80トンの船倉にどうすれば無駄なく船荷が収まるのか、複雑な場合分けをして期待値を求めたのです。
 とりあえず、大型船荷1〜4個の場合についてだけ、真面目に期待値を出しました。大型船荷5個以上の場合は、自動的に100%の確率で80トンの船荷を得られたことにしています。
 その隙間を埋める中型船荷については、期待値計算を諦めました。変数が多すぎて、とても計算できません。もし出来る方がいらっしゃいましたら、お願いします。

 A型自由貿易船は、80トンの船倉をすべて船荷輸送に充てると考えました。半端な2トンのスペースは大型船荷も中型船荷も載せられませんから、無視していても構わないでしょう。
 あるいは、貿易品を積んでいるのかも知れませんが、期待値計算が困難のですので、収支計算には含めません。
 積載率は、80トンを基準として、以下のように求めました。

 積載率 = 大型船荷の平均積載トン数 ÷ 80

 中型船荷の期待値計算をしていませんから、船荷の積載率はもう少し高い数値になる筈ですが、勘弁してください。


2009.12.10追記。
 申し訳ありません。貨物(船荷)の大きさを勘違いしておりました。MTのルールで、貨物の大きさは、大型貨物1D6+10トンと中型貨物1D6+5トンだったのです。
 気を取り直して再計算しました。今回は中型船荷の募集も計算に含めていますが、小型船荷は計算していません。
 船倉容積は82トンを基準として積載率を求めました。

2010.11.08追記。
 英文のエラッタ(2010年03月25日版)を翻訳したところ、貨物(船荷、貿易品)の大きさは、CTのルールと同じでした。つまり、大型貨物1D6×10トンと中型貨物1D6×5トンで正しかったのです。
 それ以前のエラッタ(2009年08月版)には無かったと思われます。





3.スピンワード・メインの運行

(1)往路 リジャイナからインズに向けて航行する場合

 リジャイナからインズへと到るスピンワードメインの各星系で、旅客と船荷の期待値計算を行ってみました。
 特等旅客、一等旅客、二等旅客、船荷のそれぞれについて期待値を計算し、旅客の乗船率と船荷の積載率を求めています。

 星系名の隣にあるUPPが、その星系の宇宙港クラスと人口、テックレベルを抜き出したものです。旅客と船荷を決める際には人口とテックレベルが分かれば十分ですが、海賊船との遭遇率も評価したかったため、宇宙港クラスも追加しておきました。

 A型自由貿易船の経営についても評価しなければなりませんから、乗船率と積載率が80%を越えている場合は緑色で、経営が危うくなりそうな50〜80%の範囲は黄色、赤字確定の50%未満は赤色で示しました。


      表2 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(リジャイナ⇒インズ間)

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 結果はご覧の通りです。

 リジャイナを出発して農業世界レックまでは順風満帆。乗船率も積載率も、80%超のジャンプが続きました。その平均値は表の下の方に示してあります。非常に安心できる数字ですね。

 ところが、レックを通り過ぎると一気に状況が変わりました。レックからインズまでの間で行うジャンプ10回の内、乗船率と積載率が80%を超えているジャンプは、3回だけしかありません。残りは赤ばかりでした。
 レック=テュレデッド間ジャンプ4回)と、テュレデッド=インズ間ジャンプ6回)の平均値も表の下方に示しましたが、赤字確定の数字です。これでは、よほどサイコロ運が良くなければ、レック=テュレデッド間を航行する2ヶ月で、大抵の自由貿易船は破産してしまうことでしょう。
 エキストからパイリーマへ向かうジャンプだけ、旅客も船荷も豊富に集まるようですが、残り3回のジャンプが大赤字では何の足しにもなりません。

 思い起こしてみれば私のテストプレイでも、テュレデッドに到着した時点で「破産が確定」したという例が多かったように思います。
 何と言うことでしょうか。レック=テュレデッド間に存在する、カーカ、エキスト、パイリーマの3星系は、自由貿易船を破産させるためにGDWが設置した、星域規模の大型トラップだったとは。

 さらに、テュレデッドを発って、ジャイルドン、フューラキンへ向かうジャンプ2回もほとんど旅客なし、船荷なしのジャンプが続きます。
 サイコロ運が良く、テュレデッドまで黒字で辿り着けた自由貿易船も、このジャンプ2回でトドメを刺されてしまうのではないでしょうか。




(2)復路 インズからリジャイナへ向けて航行する場合

 今度は反対方向です。インズからリジャイナへ到るスピンワードメインの各星系で、旅客と船荷の期待値計算を行ないました。


      表3  スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
          旅客乗船率と貨物積載率(インズ⇒リジャイナ間)

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 復路の場合も、結果は似たようなものでした。
 インズへ辿り着いた成功例が1つしか無いため、反対方向の航海は試したことがありませんでしたが、期待値計算の結果は同じような数字が出ています。

 自由貿易船を破産させるためのトラップはインズを出てすぐ、キーノー、キノーブ、メイシーンの3星系間にも存在しました。
 また、フューラキンからジャイルドンへの旅客、船荷は多いのですが、ジャイルドンからテュレデッド向けの旅客や船荷は全くありません。双方を平均すれば50%未満になりますから、ジャイルドンも赤字確定のトラップ星系だと言えるでしょう。
 インズ=テュレデッド間ジャンプ6回)の平均値は、赤字確定です。この航路も、テュレデッドに到着した時点で破産宣告を受ける可能性が高そうですね。

 テュレデッドからレックへの旅は、往路に比べれば少しだけ楽になりました。それでも赤字は確定ですが。

 レックからリジャイナの間(ジャンプ5回)だけが安心できる航路です。

 しかし、旅客や船荷を大量に受け入れておきながら、出てくる旅客や船荷が全く無いパイリーマとジャイルドンは、どんな世界なのでしょう。人口レベル1ですから、生活環境にそれほど余裕があるとも思えません。
 反対に、持ち込まれる旅客や船荷がほとんど無いのに、常に大量の旅客と船荷が湧き出してくるフューラキンとメイシーンも不思議な世界です。




(3)スピンワードメイン全体の評価

 最後に、区間毎に区切った、往復航路の評価を行ないます。


      表4 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計)

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 こういう数字を見てしまうと、自由貿易船はリジャイナとレックの間を往復すべきだと結論するしかありません。レックから先のスピンワードメインを航行することは、高い確率で破産を引き起こしてしまうのです。
 上記の数字を知った(自分で計算した)プレイヤーは、レックからリジャイナ方面に引き返してしまいかねませんが、これではシナリオが成り立ちませんね。困りました。

 このような場合には、レックからパイリーマへの大量移民(二等寝台を満たす大人数の二等旅客)を、運賃先払いで引き受けてしまうとか、カーカで良質の鉱脈が発見されたが、商船の寄港が少ないので運べなくて困っているなどの情報で誘導する以外、方法は無いでしょう。



 私は期間限定、運行1回限りの政府助成金という設定を考えました。レック=テュレデッド=インズ間赤字確定航路を航行する代わりに、航行期間中(ジャンプ10回、5ヶ月分)のローン支払いを、政府が肩代わりしてくれるという制度です。
 A型自由貿易船が政府助成金を受けられるのであれば、乗船率と積載率が25%程度でも採算が合うのです。スピンワードメインの航路であっても、余裕を持った黒字運行が可能になるでしょう。経営難に苦しむ自由貿易商人にとって、一息つくチャンスかも知れません。
 一方、政府にとってもメリットはあります。商船の通わない非採算航路に商船を運行させることが出来ますし、溜まっていた郵便物を運んだり、辺境星系の情報を得ることもできるでしょうから。

 CT「商船と砲艦」を読むと、政府助成金は「600トン以上の商船」でなければ受けられないようなことが書いてありました。しかし、この制限は有名無実としか思えません。
 そもそも「商船と砲艦」に掲載されているR型の政府指定商船は、400トンサイズの商船です。「600トン以上の商船」ではありません。なのに、政府助成金を受け取っているのですから、「600トン以上」という制限に矛盾しています。
 このような状況ですから、200トンの自由貿易船が政府助成金を受け取っても、おかしくないのではないでしょうか。





4.海賊船との遭遇

(1)CTルール 宇宙港クラスによる遭遇率

 CTの遭遇表では、該当星系の宇宙港クラスによって、遭遇する宇宙船の種類と確率が異なります。星系への入港/出港時に1回ずつ遭遇表を使い、サイコロを振って遭遇相手を決めますので、遭遇相手が居ない(遭遇しない)可能性もあります。


         表5 海賊船の種類と遭遇確率(CTルール)

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 CTルールの場合、宇宙港クラスAとBの星系では、海賊船に遭遇する心配がありません。

 宇宙港クラスCの星系では、2D6で10の目が出ると(3/36=8.3%の確率で)、T型哨戒艦に乗り組んだ海賊と遭遇してしまいます。
 その星系に偵察局基地が存在するとDM+1がありますから、2D6で9の目が出れば(4/36=11.1%の確率で)、同じくT型の海賊船と遭遇します。

 宇宙港クラスDの星系では、2D6で9の目が出ると(11.1%の確率で)S型偵察艦に乗り込んだ海賊と遭遇します。

 宇宙港クラスEの星系では、2D6で11の目が出ると(2/36=5.6%の確率で)T型の海賊船、12の目が出ると(1/36=2.8%の確率で)C型巡航艦に乗り込んだ海賊と遭遇します。


   表6 スピンワードメインを航行する商船が、海賊船に遭遇しない確率
        (CTルールによる確率計算:インズ⇒リジャイナ間)

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 スピンワードメインの航路上に、宇宙港クラスAの星系は2つ、Bの星系は3つ、Cの星系は7つ、Dの星系は3つ、Eの星系は1つ存在しました。出発地のリジャイナと到着地のインズを除き、それぞれの星系で入港/出港時に1回ずつの遭遇判定を行いますから、判定数はその2倍。合計30回の遭遇判定を行うことになります。
 その結果、海賊船に遭遇しないで商船がインズへ辿り着ける可能性は、11.5%しかないと判明しました。9隻の内、わずか1隻しか到着できません。スピンワードメインは自由貿易船にとって、非常に危険な航路だったのです。

 その内訳を見てみましょう。

 宇宙港クラスAとBの星系では海賊船に遭遇しませんから、安全率は100%。いくつの星系を経由しても、海賊の心配はありません。

 星系への入港時と出港時に1回ずつの遭遇判定を行ないますから、宇宙港Cクラスの星系では、寄港する商船の7隻に1隻が海賊に遭遇していると判りました。偵察局基地のある星系(キーノー)では、5隻に1隻です。
 寄港する商船の2割が海賊船に遭遇するという事態は、まっとうな状況ではないでしょう。自由貿易船の性能では、T型哨戒艦に立ち向かうことはおろか、逃げることすら望めません。この状況を放置したら、商船の往来が絶えてしまいます。
 ですから、星系内の治安を維持するためにも帝国海軍や惑星海軍のパトロールが頻繁に行なわれており、救難信号を受信したら直ちに救援が駆けつける、という万全の対策がなされているに違いありません。
 海賊船に遭遇したら「自由貿易船は確実に拿捕され、略奪される」という私の当初の想定は、どうやら厳しすぎたようです。

 宇宙港クラスDの星系では、寄港する商船の5隻に1隻が、入港/出港時のどちらかで海賊船に遭遇していると判りました。
 しかし、その海賊船はS型の偵察艦です。加速性能は2Gしかありません。搭載しているコンピュータのモデルは1の新型(戦闘時はモデル1扱い)で、武器設置点の数は1つだけです。
 自由貿易船でも半分の確率で逃げられますし、逃げられなくても、半分の確率で返り討ちにすることが出来ました。S型偵察艦は、それほど危険な海賊船ではないのです。
 私がS型偵察艦を所持する海賊だとしたら、リスクの高い宇宙船襲撃など怖くて出来ません。出来ることといったら密輸か地上施設の襲撃くらいでしょう。宇宙港クラスDの星系で遭遇する海賊船のことを心配する必要は無さそうです。
 この海賊船の危険を無視できる場合、海賊船に遭遇しないでインズに到着できる確率は、23.4%に増加しました。それでも4隻に1隻だけですが。




(2)MTルール 宇宙港クラスに関係ない遭遇率

          表7 海賊船の種類と遭遇確率(MTルール)

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 MTルールの場合、宇宙船との遭遇は宇宙港クラスに関係がありません。
 100倍直径から10倍直径へ移動する間、10倍直径から惑星の軌道上へ移動する間、軌道上から地上宇宙港へ移動する間。3つの区間でそれぞれ、遭遇判定を行なうことになっています。
 遭遇する宇宙船の種類を決めてから、36分の1の確率で宇宙船が海賊のものだった
と決める訳ですから、海賊との遭遇率はとても低いように思えました。
 ところが、遭遇判定を3回も行うものですから(軌道上に留まり、地上宇宙港を利用しないのであれば、2回だけで済みますが)、海賊船の比率は36分の1であっても、入港/出港の度に海賊船と遭遇する確率は、8.1%にもなってしまうのです。

 その結果は、以下のようになりました。


   表8 スピンワードメインを航行する商船が、海賊船に遭遇しない確率
        (MTルールによる確率計算:インズ⇒リジャイナ間)

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 MTルールの遭遇表を用いた場合、海賊船に遭遇しないで商船がインズへ辿り着ける可能性は、7.9%しかありません。13隻に1隻です。CTルールの場合よりも、遥かに危険度が増してしまいました。
 遭遇する海賊船の種類が分からないので、遭遇した後のことについては何とも言えませんが、これはちょっと問題があるのではないでしょうか。この海賊との遭遇確率は、スピンワードメインのような辺境航路だけでなく、リジャイナやインズのように治安が保たれている筈の世界でも同じ数字なのですから。
 海賊に襲われた場合、自力で解決するのではなく、救難信号を発信したら、すぐさま帝国海軍か惑星海軍が駆けつけてくれるものだと期待すべきなのかも知れません。




(3)ハウスルール 宇宙港規模による遭遇率

 最後は、ハウスルールを用いた遭遇率の計算です。
 MAG様の投稿「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」から、該当星系の宇宙港規模に応じた、商船との遭遇率(回数)を利用させて頂きました。
 そして、その遭遇商船の36分の1が海賊船だったと想定してみます(この確率は、MTルールに準拠しています)。


        表9 海賊船の種類と遭遇確率(ハウスルール)

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 このハウスルールですと、宇宙港規模7+(リジャイナ)の場合、商船との遭遇数が25回もありますから、海賊船と遭遇する確率も高いものになりました。宇宙港規模7+の世界に入港/出港する度に、半分の確率で海賊船と遭遇してしまうのです。
 リジャイナが危険な世界になってしまいましたが、その周囲は常に数隻の商船が航行している筈ですし、惑星海軍の規模も大きく、警戒が厳重な筈ですから、海賊船が襲撃を行なっている余裕はないでしょう。
 ですから、リジャイナ星系で「海賊船に遭遇することは有り得ない」ことにします。
 判定数は「1回」から「0回」に減りました。

 宇宙港規模6と5の星系において、海賊船との遭遇確率は2.8%です。これらの星系においても、帝国海軍や惑星海軍が治安を保っていると考えるべきでしょう。
 しかも宇宙港規模6の星系は、ジェンゲ、ダイナムン、インズなど、Xボート連絡網の上に存在する世界です。惑星海軍の規模が足りなければ、帝国海軍や星域海軍が派遣されていることは間違いありません。
 これらの世界でも「海賊船に遭遇することはない」と考えました。判定数は「5回」から「0回」に激減です。

 宇宙港規模5の星系の場合はやや問題がありました。ダイナム、レック、テュレデッド、フューラキン、メイシーンの5星系が宇宙港規模5に該当するのですが、どの星系も人口やテックレベルが足りないため、惑星海軍を持てません。
 これらの星系ではルール通りに海賊船と遭遇し、略奪されてしまうような気がします。
 しかしメイシーン星系には帝国の海軍基地が置かれていますので、ここでも「海賊船に遭遇することはない」としましょう。
 判定数は「10回」から「8回」に減ります。

 宇宙港規模4の星系において、他の商船と遭遇する確率が3分の1しかありません。ワイポック、カーカ、エキスト、パイリーマ、ジャイルドン、フューラキン、キノーブの各星系では、海賊船との遭遇確率も3分の1に減り、0.9%となっています。
 キーノー星系だけは偵察局基地が設けられていますので、偵察局の哨戒活動により、海賊船の活動が未然に防がれているとしましょう。キーノー星系でも「海賊船に遭遇することは有りません」。
 判定数は「14回」の筈でしたが、偵察局基地のおかげで「12回」に減りました。

 上記の遭遇確率を用いて、インズへ到着できる確率を計算したところ、以下のようになります。


   表10 スピンワードメインを航行する商船が、海賊船に遭遇しない確率
       (ハウスルールによる確率計算:リジャイナ⇒インズ間の7ヶ月)


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 ハウスルールを用いた場合、海賊船に遭遇せず、商船がインズへ辿り着ける確率は、28.5%しかありませんでした。
 しかし前述したように、リジャイナやジェンゲ、ダイナム、ダイナムン、テュレデッド、メイシーン、インズなどで「海賊船に遭遇しない」とするならば、71.4%になります。
 逆に考えると、スピンワードメインを横断する商船の3割弱は、航路上で1回以上「海賊船に遭遇している」ことになる訳ですが。

 何となく、妥当な数字になってきたと思うのですが、いかがでしょうか。





5.まとめ

 予想以上に、スピンワードメインの運行は難しいことが分かりました。
 まともな経営感覚の持ち主ならば、自由貿易船でレック=テュレデッド=インズ間の航路には乗り出すことはないでしょう。

 おまけに海賊に襲われる危険が山盛りです。
 宇宙港クラスCの星系でも、寄港した商船5隻の内1隻が海賊に遭遇してしまうという状況は前述の通りに大問題ですから、何らかの対策が打たれているに違い有りませんが、CTやMTのルールには、その問題に関する記述が全くありません。

 しかし、その辺りはレフリー次第。情報や設定次第で、いくらでもプレイヤーを誘導することは出来ます。
 「黄昏の峰へ」をプレイする前に、レフリーはそれらの設定をしっかりと用意しておいた方が良いでしょう。

 プレイヤーの方は、そんなレフリーの努力にしっかり応え、スピンワードメインへと乗り出してください(笑)。



2009.10.21 初投稿。
2009.12.10 貨物(船荷の大きさ)ルールに関する勘違いを訂正して、再投稿。
2010.11.08 英文エラッタを解読して、
        貨物(船荷の大きさ)ルールが、CTと同じであると確認されました。
        再度、数値を訂正しての再投稿です。