Prelude for The Twilight Peak 2nd
「黄昏の峰へ」の前奏曲 第2章
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3, Metasequia

 

 

 

 

 

 
 



 
 
 
 
 
 

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図11 スピンワードメイン上に存在する、某辺境星系の地上宇宙港

着陸態勢のS型偵察艦はMAG様から、大型ボートと艦載艇は橘様から頂きました。
画面左端、垂直型の偵察艦だけが、山中のオリジナルです。




1.はじめに


 今回もシナリオ「黄昏の峰へ」に関して、考察を行います。

 旅客の募集に影響する乗組員の技能レベルについて、考察を行いました。
 MTルールによる、貿易品の売買を行なった場合の経営収支についても、考察しています。

 MTのルールについて、若干、勘違いがありました。
 前回の考察で私が「貨物」と呼んでいたものは、MTルールで「船荷」と定義されているものです。
 「貨物」 = 船荷、郵便物、貿易品を合わせたもの。
 「船荷」 = 1トン当たりcr1,000の運賃を受け取って運ぶもの。
 「貿易品」= 投機貿易のため、商船によって購入され、運ばれるもの。
 今回の考察から、きちんと言葉を使い分けます。申し訳ありませんでした。





2.自由貿易船の航海

(1)A型自由貿易船

 前回の繰り返しになりますが、この考察ではMTの自由貿易船を用います。
 特等/一等旅客を6人まで、二等旅客を8人まで乗せることができ、貨物の搭載量は82トンでした。

 経済面については、乗組員4名を抱えている場合、旅客の乗船率や貨物の積載率が80%を越えているならば、十分に黒字での運行が可能だと判明しました。
 ですから経営上の指針も、乗船率や積載率80%以上を黒字経営の目安とします。

 具体的な数字としては、ジャンプ1回当たりで9万8千クレジットの収入があれば、自由貿易船の収支はぎりぎり合うでしょう。




(2)乗組員の技能

 CT「豪商」のルールやMTのルールでは、乗組員の技能が旅客や船荷の募集に影響を及ぼします。
 前回は、乗組員のスチュワード技能を1レベル(特等旅客の募集にDM+1)、管理技能も1レベル(一等旅客の募集にDM+1)としました。二等旅客の募集に影響する交渉技能のレベルは0レベルとしましたので、DMはありません。

 しかし前回の投稿を読んだ方からは、掲示板において「プロなのだから、技能レベル3程度を使ってもよいのではないか」という指摘を受けています。
 もっともな話ですので、今回の考察では、スチュワード技能3レベル管理技能3レベル交渉技能3レベルの乗組員で期待値計算を行ないました。
 前回の考察、技能レベル1(交渉は技能レベル0)の場合と結果を比較します。

 貿易品の募集に関しては、中型貿易品の数を決める際、乗組員が接触技能3レベルを持っていると想定してDMを加えます。これも、技能レベル0の場合と比較してみました。

 また、貿易については、1回だけ〈ブローカー−1、3、5〉の3つで技能レベルの影響を比較しましたが、それ以外の部分については〈ブローカー−3〉を用いています。
 〈贈賄〉技能は用いないことにしました。後述しますが〈贈賄〉技能による貿易品の売買は、あまり効率が良くないのです。


 2009.12.17追記。貿易ルールを勘違いしておりました。貿易品を売却する際のDMは、最大値4と決められていたのです。〈ブローカー−5以上〉の技能レベルを持っていても、修正値は4までしか得られません。
 ですから表18の計算で用いた技能レベルを4に下げ、DMも4に減らしました。




(3)貿易品の売買

 CTの貿易品ルールを用いた場合、その期待値計算は困難でした。ですから、前回の考察では貿易品の売買について、一切の計算を行なっておりません。
 しかし今回の考察では、後半でMTの貿易品ルールを用いて、期待値計算を行なってみます。MTの貿易ルールを使うことは初めてですので、何か間違い、勘違いがありましたら、御指摘ください。





3.スピンワード・メインの運行(貿易品なし)

(1)往路 リジャイナからインズに向けて航行する場合

 リジャイナからインズへと到るスピンワードメインの各星系で、旅客と船荷の期待値計算を行ってみました。
 特等旅客、一等旅客、二等旅客、大型船荷のそれぞれについて期待値を計算し、旅客の乗船率と船荷の積載率を求めています。

 星系名の隣にあるUPPが、その星系の宇宙港クラスと人口、テックレベルを抜き出したものです。旅客と貨物を決める際には人口とテックレベルが分かれば十分ですが、海賊船との遭遇率も評価したかったため、追加しておきました。

 A型自由貿易船の経営についても評価しなければなりませんから、乗船率と積載率が80%を越えている場合は緑色で、経営が危うくなりそうな50〜80%の範囲は黄色、赤字確定の50%未満は赤色で示しました。


      表12 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
          旅客乗船率と貨物積載率(リジャイナ⇒インズ間)

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 スチュワード技能3レベルの影響は、特等旅客の人数が航路全体の平均で+0.8人(リジャイナ=レック間で+0.7、レック=テュレデッド間で+0.6、テュレデッド=インズ間で+1.0)という結果になって表れました。
 ジャンプ1回毎の収入が、特等船客0.8人分、cr8,000(維持費を差し引いてもcr6,000)増えている、ということを意味します。
 スチュワードの月給は、CTの場合、基本給cr3,000+技能レベル1毎に+cr300、MTの場合、技能レベル×cr500でした。
 技能レベル1のスチュワードと、技能レベル3のスチュワードでは、月給の差額がcr600(CT)〜1,000(MT)になっている訳です。
 どちらにしても、その給料の差額分以上に自由貿易船の収入が増えていることが分かりました。
 自由貿易船は、出来る限り高い技能レベルのスチュワードを雇うべきなのです。

 管理技能3レベルの影響は、あまり顕著ではありませんでした。スチュワード技能によって特等旅客の人数が増えた結果、一等旅客を乗せるべき空き船室が少なくなってしまったからです。本来ならば喜ぶべきことなのですが、管理技能3レベルを発揮できませんので、素直に喜べません。
 一等旅客の人数は平均で−0.1人です。わずかながら減っていました。
 しかしその内訳は、リジャイナ=レック間で−0.4、レック=テュレデッド間で+0.5、テュレデッド=インズ間で−0.2なのです。唯一プラスの結果を示しているレック=テュレデッド間といえば、乗船率と積載率が極めて小さい、赤字確定区間ではありませんか。
 つまり、特等旅客を期待できない区間であれば、管理技能3レベルは十分活躍できるということが分かりました。
 多くの特等旅客を期待できる航路ならば、管理技能はあまり役に立ちません。
 しかし辺境航路ならば、高い管理技能は乗船率を上げるため有用だということです。
 そもそも、そんな赤字航路は通らない方が良いのですが。

 交渉技能3レベルは、二等旅客の募集人数に影響しています。二等旅客の人数は、平均で+1.1人(リジャイナ=レック間で+0.5、レック=テュレデッド間で+1.4、テュレデッド=インズ間で+1.2)でした。
 収入の増加は、各区間でcr500〜1,400の範囲に留まります。
 スチュワード技能による収入増加、cr8,000と比べてしまうと見劣りしますが、仕方のないことなのでしょう。そもそも、二等旅客は貨物を運ぶよりも儲かりませんから。
 交渉技能3レベルがあっても、経営状態の改善にはあまり役立たないようです。




(2)復路 インズからリジャイナへ向けて航行する場合

 今度は反対方向です。インズからリジャイナへ到るスピンワードメインの各星系で、旅客と船荷の期待値計算を行ないました。


      表13  スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
           旅客乗船率と貨物積載率(インズ⇒リジャイナ間)

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 復路の場合も、結果は似たものになります。

 スチュワード技能3レベルの効果は、特等旅客の人数が航路全体の平均で+1.0人の増加でした。内訳はインズ=テュレデッド間で+0.7、テュレデッド=レック間で+1.0、レック=リジャイナ間で+1.1。
 ジャンプ1回毎に特等船客1.0人分、cr10,000(維持費を差し引いてcr8,000)の収入が増えている訳です。やはり自由貿易船は、出来る限り高い技能レベルのスチュワードを雇うべきだと確認できました。

 管理技能3レベルの効果は、一等旅客の人数が平均で−0.2人です。復路でも人数が減っていました。その内訳は、インズ=テュレデッド間で+0.5、テュレデッド=レック間で−0.6、レック=リジャイナ間で−0.7です。
 往路と同じように、インズ=テュレデッド間赤字確定区間でのみ、プラスの効果を示していました。やはり、辺境航路でなければ、高い管理技能は活躍できないようです。

 交渉技能3レベルの効果は、二等旅客の人数が平均で+0.8人です。往路と比べると増加幅が小さくなっていました。その内訳は、インズ=テュレデッド間で+0.8、テュレデッド=レック間で+1.0、レック=リジャイナ間で+1.0です。




(3)スピンワードメイン全体の評価

 最後に、区間毎に区切った、往復航路の評価を行ないます。


      表14 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
          旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計)
          スチュワード、管理、交渉技能レベル=3

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 スチュワード技能管理技能交渉技能3レベルのおかげで若干の改善は認められましたが、それによって劇的に経営状態が良くなるということは有り得ません。
 しかし赤字幅は小さくなっていますので、貿易などによる他の収入によって黒字経営にすることも容易になるでしょう。
 リジャイナ=インズ間のスピンワード・メインがそれだけ酷い(利益の少ない)航路なのだと感じましたが。


 比較するため、前回の考察でも用いた表4を再掲載します。

      表4 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計)
       スチュワード、管理技能レベル=1、交渉技能レベル=0

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4.スピンワード・メインの運行(貿易品あり)

(1)MTの貿易品ルール

 MTの貿易品ルールでは、各星系のUPPによる貿易品の仕入れ価格が確定しており、PCの技能が影響したり、レフリーの意思が介入できる余地が全くありません。貿易品によってPCの行動をコントロールしたい私としては、面白くないシステムになっています。
 ナイトフォール・キャンペーンのように貿易品の内容を決めておき、噂を与えることでコントロールすれば良いのかも知れませんが、MTでのレフリー経験が無い私には、何とも言えません。

 それはともかく、スピンワードメインの航路上に存在する各星系で、入手できる貿易品の仕入れ価格と分量を、下記の表15にまとめました。
 仕入れ価格はルール通りの筈です。
 分量については、大型貨物と中型貨物の欄でサイコロを振り、貿易品の数と大きさを決め、自由貿易船の船倉(82トンのスペース)に収まるよう期待値を求めました。
 小型貨物は人口レベル6以上の世界でなければ入手できないため、無視しています。人口レベルが6以上ならば、十分な数の大型/中型貨物が手に入りますので。



2010.11.08追記。
 最新版の英文エラッタ(2010年03月25日版)により、貨物サイズが大型1D6×10トン、中型1D6×5トンに訂正されました。
 大型貨物は10トンの倍数、中型貨物は5トンの倍数ですから、自由貿易船の船倉に積める量は、80トンが最大となります。残り2トンの半端は、1D6トンの小型貨物を載せる以外に使えません。
 そのため、小型貨物を集められる星系、人口レベル6以上の世界でなければ、集められる貨物は、船荷と貿易品を合わせて80トン(積載率98%)が最大となりました。
 人口レベル6以上の世界であれば、小型貨物(1D6トン)を集められますから、82トン(積載率100%)にすることも可能です。以下の考察では、小型貨物の期待値も求め、期待値に加算するように修正しました。

 再計算するまで気付きませんでしたが、辺境世界を航行する場合、船荷よりも貿易品の方がより多く集まる、という傾向があるようです。
 まず、船荷を集める場合、目的地(市場世界)の人口レベルが4以下ならば「DM−3」を受けますが、貿易品は目的地の人口に影響を受けません。
 さらに、船荷は出発地(仕入れ世界)と目的地(市場世界)のテックレベル差が影響しますが、このテックレベル差についても、貿易品は影響しないのです(厳密には売買価格に大きく影響する訳ですが、集められる量には影響しません)。

 しかしルール上、低テックレベル世界で仕入れた貿易品は、高テックレベル世界に持ち込んでも安く買い叩かれてしまう訳ですから、せっかく集めた貿易品も売りようが無いように思えます。
 この問題を解決するための追加ルールが「ナイトフォール」掲載の、商品分類によるテックレベル修正なのでしょう。低テックレベル世界の商品(貿易品)でも、天然資源と珍品ならば高く売ることができる筈ですが、これがどの程度有効なのか、また後で考察しなければなりませんね。



 貨物積載率と同じように、入手した貿易品で船倉を80%以上満たせるならば、積載率80%以上ということで緑色50〜80%の範囲ならば黄色50%未満は赤色で示しました。

 各星系の特徴で、低人口世界と書かれている星系は、非工業世界も兼ねています。
 その場合は特徴の欄に表記する量が多くなりすぎるため、非工業の記述は省略し、低人口だけを表記しました。

       表15 航路上の各星系で、入手できる貿易品の価格と量

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 仕入れ価格ですが、辺境航路の場合、宇宙港レベルの影響で仕入価格がのきなみ高くなっています。
 CTルールの場合、仕入れ価格の高いものは高く売ることを期待できたものですが、MTでは期待できません。ダイナムの仕入れ価格cr9,000、ワイポックのcr9,800などの貿易品は、一体どこへ持って行けば売却利益が出るものやら。



2010.11.08加筆修正。
 また、赤字トラップの三連星、カーカ=エキスト=パイリーマも、貿易品の仕入価格はcr8,000以上です。
 意外なことに、人口レベル2〜3の世界であっても、71〜78トンの貿易品を集めることができました。〈接触〉技能3レベルを持っていれば、もう少し増えて78〜80トンに増えますが。貨物の量が「×10」と「×5」に変更されたため、入手できる貿易品の量がずっと大きくなったのです。

 人口レベル1のパイリーマやジャイルドンでは、貿易品26トンを集めることができました。〈接触〉技能3レベルがあれば、2倍の52トンを入手できます。



 これら貿易品の売買を前提にして、もう一度、スピンワードメインの航行を考えてみましょう。




(2)リジャイナで仕入れた貿易品の売却

 まずはリジャイナで貿易品を仕入れます。その貿易品を何処で売り払えば、もっとも多くの利益を得ることができるのでしょうか。

  表16 リジャイナで仕入れた貿易品(A-C、富裕、cr5,200)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−1〉

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 各星系の星系名、UPP(左から宇宙港レベル、人口レベル、テックレベル)、貿易上の分類、売却基準価格を示しました。スピンワードメインに沿って、ジャンプ1を5回繰り返した先の星系まで、表に掲載しています。
 ルー星系は「黄昏の峰へ」のシナリオ内で定義されたスピンワードメインから外れておりますが、PCが目的地として選ぶ可能性が高いため、検討星系に含めました。

 売却基準価格の右に示した数値、「ブローカー−1」と書かれた欄は、自由貿易船の乗組員が〈ブローカー−1〉の技能を用いて貿易品を売却した場合の収入金額になります。
 売却金額の期待値から、貿易品の購入金額を引きました。
 この収入期待値が、さらに右隣の欄に示した「運賃収入」、船荷を運んだ場合の運賃収入よりも大きければ、「貿易品の売買は儲かる」ということになる訳です。
 反対に小さければ、「貿易品の売買をしても儲からず、船荷を運んだ方がマシだ」ということになるでしょう。

 貿易品の売買が儲かる場合は、ブローカー−1の欄を緑色黄色水色で示しました。儲からない場合は赤色です。
 さっと眺めてみたところ、リジャイナで仕入れた貿易品は、次の寄港地ジェンゲ、3つ先のダイナム、5つ先のレックで儲かることが分かります。

 レックで売却した場合の収入はcr5,629です。しかし、最も高い金額だから、ここで売ろう、と考えるのは早計でしょう。
 なぜなら5パーセク先まで貨物を運ぶということは、その間、貿易品を売買することも、船荷を運ぶことも出来ないことになるからです。
 船荷を運んだ場合の運賃収入と比較した数値、「収入比率」を見てください。

 隣の星系ジェンゲで売却した場合の収入期待値はcr2,132。それほど大きな金額ではありませんが、運賃収入cr1,000と比べて213%の収入を期待できるのです。船荷を82トンどころか、179トン運んだ場合の運賃収入に匹敵するということですね。

 3つ先のダイナムで売却した場合の収入期待値はcr3,598。ジェンゲの期待値よりも大きいのですが、3パーセク先までの運賃収入cr3,000に比べたら120%でしかありません。
 5つ先のレックで売却した場合も同様です。収入期待値はcr5,629と最高額ですが、運賃収入cr5,000とくらべたら113%です。

 つまり、収入比率が最も大きいジェンゲで貿易品を売却し、ジェンゲで新たな貿易品を購入するか、ジェンゲからレックまでの航路は普通の船荷を運んだ方が、ずっと儲かるということなのです。
 という訳ですので、収入比率が最も大きい欄を緑色で示し、それ以外の欄を黄色で示して区別しました。



 〈ブローカー−1〉の期待値計算だけでは面白くありません。そこで、乗組員の中に〈ブローカー−3〉を持つ者が居ると想定して、収入の期待値計算を行なってみました。その結果を下記の表17に示します。

 ジェンゲはCクラスの宇宙港を備えていますので、宇宙港では〈ブローカー−2〉のブローカーを雇えることになっていました。ですから、乗組員に〈ブローカー−1〉の持ち主しか居ないのであれば、宇宙港のブローカーを雇うべきだと思います。
 しかし乗組員ではないブローカーを雇った場合、売却価格の5%をそのブローカーに手数料として支払わなければなりません。その場合の手取り金額は、乗組員の〈ブローカー−1〉技能を用い、手数料を支払わない場合とほぼ同額でした。
 ですから、〈ブローカー−2〉のブローカーを雇った場合の収入期待値は、表16を参照してもらって構いません。

 〈贈賄〉技能を用いた場合、1レベル当たり売却価格の7%が関係者への賄賂として費やされてしまいます。技能レベル1の場合は93%、レベル3の場合は79%、レベル5の場合は65%しか手元には残らないことになりました。
 さらに、〈贈賄〉技能で得られるDMは、技能レベルの半分(端数切捨て)。つまり2レベル毎にDM+1しか得られないのです。
 期待値計算の結果、〈贈賄〉技能を用いて売却金額を増やしても、収入は増えないということが判明しました。
 ですから、〈贈賄〉技能を用いた場合の期待値計算は行ないません。
 私には分かりませんが、エラッタが出ているのではないでしょうか。



2010.11.08追記。
 英文のレフリーズ・マニュアルを見ても、日本語版と同じ記述がされていますし、現時点ではエラッタにも訂正がありません。ちょっと納得できませんが、貿易品の売却で〈贈賄〉技能を使うべきではない、という結論が得られました。



  表17 リジャイナで仕入れた貿易品(A-C、富裕、cr5,200)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 〈ブローカー−3〉の技能レベルを持つことで、どの星系で貿易品を売却しても、運賃収入を上回る状況になりました。
 実に素晴らしいことです。ジェンゲで売却した場合は、収入比率が457%。運賃収入の4倍以上ですから、貿易品の売買はとても儲かるのです。
 ジェンゲとリジャイナの間を往復するだけでも、PCは十分な収入が得られると思うのですが、シナリオの都合上、ここで足を止めてもらっては困ります。何とかして、先へ進ませましょう。



 さらに、乗組員が〈ブローカー−4〉を持つ場合の期待値計算も行ないました。

 2009.12.17追記。ブローカー技能は5レベルを想定していましたが、DMの上限が+4であると分かったため、技能レベルを4に下げ、再計算しました。

   表18 リジャイナで仕入れた貿易品(A-C、富裕、cr5,200)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−4〉

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 ジェンゲでの収入期待値が636%です。こんな数字を見てしまうと、もう馬鹿らしくて旅客(特に、儲からない二等)など運んでいられません。船内の空きスペースすべてを船倉に変え、貿易品を運んでいるだけで十分だと言いたくなってしまいます。



 故意に触れてきませんでしたが、隣接する工業世界ルーで貿易品を売却した場合の収入期待値は、どの技能レベルの場合であっても最高値を示していました。
 ですから貿易ルールを熟知しているPC達は、シナリオが始まった途端、躊躇うことなくルー星系へ船を向けてしまうことになりそうです。シナリオの想定範囲を逸脱してしまいますから、これでは困りますね。
 PC達がルーへ向かわないで済むように、何らかの設定を考えておかなければなりません。

 以前、PC達はルー星系で何らかの犯罪を犯しており、ルー星系に再入国した途端、逮捕される可能性があるという設定も考えました。
 しかし宇宙港の敷地内は治外法権ですから、宇宙港内に留まる限り、現地政府に逮捕される心配はありません。敷地内を出ずに貿易だけ行なう可能性も有りますので、これは却下。

 ルー星系が地元の産業を守るため厳重な保護貿易を行なっており、高いテックレベルの製品は輸入困難である、という設定が有効かもしれません。
 ただ「困難である」だけだと「出国ビザ」のようなシナリオをクリアすれば良いのだと勘違いされてしまいます。PCの1人が以前「ルー星系に貿易品を持ち込んだことがあるものの、輸入の認可が下りなくて大赤字を出した」という経歴を用意しておいたらどうでしょうか。
 実は、ルー星系のような「テックレベルの低い工業世界」は、貿易品の市場として、とても有望なのです。周囲数パーセクの範囲から自由貿易船を呼び寄せてしまいますので、この程度の設定は必要でしょう。
 ルー星系の魅力は、これからも明らかになっていきます。



 それと申し訳ないのですが、図表の数が膨大になってしまったため、〈ブローカー〉の技能レベルは3レベルについてのみ考察させていただきます。
 リジャイナからインズに到る全星系の貿易品について、収入期待値を技能レベル毎の表にしてみたところ、48枚の表になってしまいました。
 流石にそれら全部を載せると、この考察を最後まで読んでもらえそうにありません。




(3)ジェンゲで仕入れた貿易品の売却

 予定通り、PC達がジェンゲへ向かい、貿易品の売却を行なったと仮定して、考察を続けます。
 リジャイナで仕入れた貿易品は、ここジェンゲで売り払ってしまいましたから、船倉は空っぽです。代わりの貿易品を仕入れなければなりません。
 では、ジェンゲで仕入れた貿易品が、どの星系で高く売れそうなのか、期待値計算を行なってみましょう。

  表19 ジェンゲで仕入れた貿易品(C-9、非工業、cr6,900)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 ジェンゲで仕入れた貿易品は、ルー星系を除いたどの星系で売っても儲かりません。残念ながら〈ブローカー−3〉の技能レベルでも足りないようです。
 前項で述べた理由により、PCをルーへ向かわせる訳にはいきません。貿易品の売買を諦めて、平均81トンの船荷を運んだ方が良いでしょう。船荷の方が収入は大きいのですから。




(4)ダイナムで仕入れた貿易品の売却

 ダイナム向けの旅客と船荷を積んで、PC達がジェンゲから到着したと仮定します。
 貿易品を積んでいませんから、船荷を降ろしてしまえば、自由貿易船の船倉は空っぽです。何か、貿易品を仕入れることはできるでしょうか。
 恒例の期待値計算です。

  表20 ダイナムで仕入れた貿易品(D-A、非工業/真空、cr9,000)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 ダイナム星系の貿易品は、仕入れ価格がcr9,000という高値です。
 そのため、どの星系へ持っていってもなかなか儲からないだろうと思っていましたが予想通りでした。ジェンゲ、リジャイナへ戻ったとしても、貿易品による利益は望めません。
〈ブローカー−3〉の技能レベルを活用できるならば、ルー星系でcr4,677の収入を期待できると分かりました。それ以外の星系では、まだ赤字ですが。
 ということですので今回も船荷(80トン)を積んで、次のダイナムン星系へ向かうことにしましょう。




(5)ダイナムンで仕入れた貿易品の売却

 ダイナムン向けの旅客と船荷を積んで、PC達の自由貿易船がダイナムから到着しました。
 今回も儲かりそうな貿易品を探して、期待値計算をしてみます。

  表21 ダイナムンで仕入れた貿易品(B-9、農業/非工業、cr4,900)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 久しぶりに儲かりそうな貿易品が見つかりました。2パーセク先の農業世界、レック星系で貿易品を売れば、341%の収入が期待できるのです。久しぶりの、貿易らしい高収入になるでしょう。
 貿易品の分量は、平均で81トンが集まります。船荷を運ばないとしても、341%(船荷81トンを運んだ場合の運賃と比較した数値)の収入を期待できました。
 次の寄港地ワイポック星系では、安い貿易品を期待できませんので、ダイナムンからレック星系まで貿易品を運んでしまいます。ワイポック星系では、旅客の乗降のみを行なうことになりますが。

 ルー星系に向かった場合は318%ですから、ルーへ戻るよりも先へ進んだ方が儲かることになりました。シナリオの都合上は、ありがたいことですね。
 しかし復路(ダイナムンからリジャイナへ戻る航路)の場合は、貿易品なしの運行が続きそうです。困ったことになりました。




(6)ワイポックで仕入れた貿易品の売却

 ダイナムンの貿易品を満載して、PC達が到着しました。貿易品は次のレックへ運びますので売却しません。旅客のみを募集します。
 参考のため、このワイポックで仕入れた貿易品がどこで高く売れるのか、期待値計算をしてみましょう。

  表22 ワイポックで仕入れた貿易品(E-8、非工業/非水海洋、cr9,800)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 ダイナムの貿易品と同じような結果になりました。仕入れ価格がcr9,800と高価なことに加え、非工業世界の貿易品ですから、どうにも売りようがありません。珍しいことに、工業世界のルーまで運んでも赤字なのです。
 貿易品を諦め、船荷を運ぶしかないでしょう。
 ダイナムンで貿易品を仕入れている場合は、船荷を募集する必要もありません





(7)レックで仕入れた貿易品の売却

 レックに到着したPC達が、ダイナムンで仕入れた貿易品を売却します。
 新たに仕入れる貿易品がどこで高く売れるのか、期待値計算をしてみました。

  表23 レックで仕入れた貿易品(D-6、農業、cr5,600)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 隣接するカーカ星系(Cr1,614)か、3パーセク先のパイリーマ星系(Cr4,320)ならば、貿易品が高く売れそうです。




(8)カーカで仕入れた貿易品の売却

 さて、PCの自由貿易船は、カーカ=エキスト=パイリーマのトラップ三連星に差し掛かりました。
 貿易品を扱うことによって、この赤字航路を黒字に変えることは可能なのでしょうか。

  表24 カーカで仕入れた貿易品(C-8、低人口/非水海洋、cr8,800)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 カーカで生産される貿易品も、まったく魅力が無いようです。何処の星系へ運んでも高く売れることは期待できません。運ぶだけ無駄でしょう。
 レックの貿易品をカーカで売り払い、空荷でエキストへ向かうか(カーカ⇒エキスト間の船荷はほとんど存在しません)、カーカで貿易品を売らず、旅客だけを募集してエキストへ向かうという、究極の選択を迫られました。
 次のエキストでどんな貿易品を購入できるのか、それを考慮して選ぶべきですが。




(9)エキストで仕入れた貿易品の売却

 レックの貿易品を何処で売却すべきか、どうすれば経営を黒字にできるのか、とても重要な問題です。
 その問題を左右するエキストの貿易品が、どの星へ運べば高く売れるのか、期待値計算をしてみました。

  表25 エキストで仕入れた貿易品(C-A、低人口/海洋、cr8,000)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 エキストの貿易品は、パイリーマで高く売れることが分かりました。高くと言っても102%ですから、「赤字にならない」というレベルでしかありませんが。
 さらに、貿易品の入手できる分量は75トン(船倉の91%)しかありません。貿易品の売買による貨物収入は、102%×91%=93%。
 船倉の残り5トン分に通常の船荷を積めるかどうか分かりませんから、船荷の運賃は計算に含めないことにしましょう。ですから収入期待値は93%です。

 レックの貿易品はカーカで売却していますから、161%の収入。
 カーカからエキストへの区間は貨物がほとんどなく、4%の収入しかありません。
 上記を合計すると、3回のジャンプで258%(平均86%)の貨物収入ということになりました。
 最後に控えているパイリーマからテュレデッドへのジャンプでは、船荷も貿易品も期待できそうにありません。このジャンプの貨物収入が0だとすれば、4回のジャンプの平均収入は65%。赤字確定です。貿易品の売買を行なっても赤字航路を乗り切ることは難しいのでしょうか。

 もう1つの選択肢、レックの貿易品をパイリーマまで運んで売却した場合(カーカ、エキストでは貿易品の売買も船荷の募集も行なわない場合)です。
 貿易品の売買による貨物収入は144%。3ジャンプですから3倍して432%。平均はそのまま144%。パイリーマからテュレデッドまでのジャンプ、貨物収入0を加えて平均しても108%。めでたく、黒字になりました。
 レックの貿易品(81トン)を3パーセク運んできて、パイリーマで売り払った方が儲かることが分かりました。エキストで仕入れた貿易品が全く儲からないという点が、大きな違いをもたらしているのでしょう。

 問題は、人口レベルが3(カーカ)や1(パイリーマ)しかない低人口世界で、貿易品を買ってくれる相手が見つかるかどうかということですが、ルール上は、荒野世界(人口レベル0)でなければ構わないようです。
 ナイトフォール・キャンペーンに「購入相手を見つける」難易度判定のルールがありましたが、あれを使うと、辺境世界での貿易はほぼ不可能となってしまいます。
 どちらも極端ですから、2つのルールの中間に当たるルールが欲しいです。




(10)パイリーマで仕入れた貿易品の売却

 滅多に入手できないパイリーマの貿易品(期待値26〜52トン)ですが、それが入手できた場合、何処で売れば儲かるのか、期待値計算をしてみます。

  表26 パイリーマで仕入れた貿易品(D-5、低人口、cr8,500)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 パイリーマの貿易品も、魅力がありません。
 入手できる貿易品の分量は26トン(接触技能3レベルを用いても52トン)ですから、船倉の32%(63%)を満たすことができます。空荷でジャンプするよりは良いだろうと思ったのですが、実際に貿易品を売買して赤字を出すくらいならば、空荷の方がずっと良いですね。
 パイリーマでは貿易品を買わないことにします。
 テュレデッド向けの船荷が見つかる可能性も、ほとんどありません。恐らく、大半の貿易船は空荷でパイリーマを発つことになるでしょう。




(11)テュレデッドで仕入れた貿易品の売却

 PC達の自由貿易船は、赤字航路レック=テュレデッド間を、かろうじて黒字で突破することに成功しました(そのように仮定しておきます)。
 農業世界のテュレデッドならば、貿易でそれなりの儲けを期待できそうです。期待値計算の結果はどうでしょうか。

  表27 テュレデッドで仕入れた貿易品(C-9、農業/非工業、cr5,900)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 テュレデッドの貿易品は、パイリーマで最も高く売れることが分かりました。

 もしテュレデッドからパイリーマへ向かい、貿易品を売った後、空荷でテュレデッドへ戻ってきても、往復の貨物収入を平均すれば462%の半分で231%。意外ですが、帰りが空荷でも黒字経営が可能なように思えます。
 PCが、パイリーマ=テュレデッド間をひたすら往復して金儲けする、という誘惑に駆られないよう、何らかの対応策を練っておく必要があるでしょう。その航路はすでに別の自由貿易商人に押さえられていて、PC達が割り込む余地は、全く無いとか。

 パイリーマを通り過ぎて、レックまで運んでもそれなりの収入が見込めます。エキストの貿易品をレックへ運ぶよりも儲かりました。この点は、リジャイナへ戻る復路で利用できると思います。

 パイリーマと反対方向、ジャイルドンに向かってもかなりの高収入が見込めます。
往路の場合は、ジャイルドンで売却することにしましょう。
 テュレデッドで入手できる貿易品の分量は80トン(船倉の98%)ですから、387%×98%=379%の貨物収入を期待できました。

 計算していませんが、銀河辺境方向のヴリーベフガーに向かっても貿易品の売上げは期待できる筈です。
 シナリオの都合に合わせて、レフリーは上手にPCを誘導してください。




(12)ジャイルドンで仕入れた貿易品の売却

 テュレデッドの貿易品を売り払ったPCは、ジャイルドンで貿易品の購入を試みるでしょう。
 入手できる貿易品の分量は26〜52トンとわずかですが、船荷を全く見込めませんので、貿易品の売買しか頼るものがありません。
 問題は、ジャイルドンの貿易品が売り物になる(利益を出せるかどうか)ということなのですが。

  表28 ジャイルドンで仕入れた貿易品(C-6、低人口、cr7,600)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 ジャイルドンの貿易品は、どの星に運んでも黒字になりませんでした。
 赤字を最小額で抑えるために、自由貿易船はジャイルドンを空荷で飛び発つしかないのです。
 せっかく見つけた貿易品が赤字しかもたらさないのであれば、接触技能も役に立ちません。残念なことですが。




(13)フューラキンで仕入れた貿易品の売却

 フューラキンからメイシーンへ向かう場合も、船荷を期待できません。
 一応、71〜78トンの貿易品が入手可能ということですので、期待値計算をしてみます。

  表29 フューラキンで仕入れた貿易品(A-D、低人口、cr6,300)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 フューラキンの貿易品は、2パーセク先のキノーブ、3パーセク先のキーノーで高く売ることが出来そうです。4パーセク先のインズまで運んでも、そこそこの儲けを出せそうでした。
 しかし実は、隣のメイシーンで貿易品を仕入れた方が、利益がずっと大きいと明らかになっております。フューラキンでは貿易品の仕入を行なわず、船倉を空にしたまま、メイシーンへ向かいましょう。
 運が良ければ、メイシーン向けの船荷が、数トン見つかる筈です。期待値は2.9トンしかありませんけれど。

 復路の場合は貿易品を仕入れ、すぐ隣のジャイルドンで売れば良いと思います。




(14)メイシーンで仕入れた貿易品の売却

 ジャイルドン、フューラキンと2回のジャンプを空荷で行なってきましたが、ここ、メイシーンでは遠慮なく貿易品を仕入れましょう。
 何処で売れば儲かるのか、期待値計算です。

  表30 メイシーンで仕入れた貿易品(B-E、非工業/小惑星帯、cr5,400)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 メイシーンの貿易品はすぐ隣のキノーブで高く売れます。2パーセク先のキーノー、3パーセク先のインズまで運んでもかまいません。
 貿易品を80トン(接触技能が3レベルでも80トン)入手し、キノーブで売るとしたならば、貨物収入は、362%×98%=355%。355%の高収入を得られます。
 フューラキン=メイシーン間が空荷であっても、2回のジャンプを平均することで、177%の収入になりました。フューラキンで仕入れた貿易品をキノーブまで運んでくるより、ずっと儲かります。




(15)キノーブで仕入れた貿易品の売却

 キノーブでも、80トンの貿易品をほぼ確実に入手できます。
 期待値計算の結果はどうでしょうか。

  表31 キノーブで仕入れた貿易品(C-9、非工業、cr6,900)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 悲しいことに、キノーブの貿易品は何処に持って行っても利益を期待できません。
 諦めて船荷を運ぶか、あるいは、メイシーンの貿易品を抱えたまま、次の目的地へ向かいましょう。

 



(16)キーノーで仕入れた貿易品の売却

 スピンワードメインの縦断も、あと1回のジャンプで終わりです。
 キーノーの貿易品は、どんな利益を期待できるでしょうか。

  表32 キーノーで仕入れた貿易品(C-7、低人口、cr7,700)を
      以下の星系で売却した場合の収入期待値〈ブローカー−3〉

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 ご覧の通り、キーノーの貿易品も魅力がありません。インズ向けの船荷も少ないですから、このままでは貨物収入を見込めなくなってしまいます。

 もしメイシーンの貿易品をジャンプ3回の間ずっと抱えており、インズで売却したらどうでしょうか。
 短期的な損得では、キノーブでの売却が最も利益が大きいと分かっています。
 しかし、その後、インズまで空荷で航行するのでは意味がありません。メイシーンの貿易品をインズへ運んでも、赤字になることはないのですから、インズまで運んだ場合の利益と比較してみましょう。
 貿易品を載せていない船倉の空きスペースには、可能な限り、船荷を積み込んでいきます。

想定1
 メイシーンの貿易品をキノーブで売却。キノーブ=キーノー間は船荷75トン(91%)、キーノー=インズ間は船荷49トン(60%)を運んだ場合。
 (355%+91%+60%)÷3=平均169%の収入

想定2
 メイシーンの貿易品をキーノーで売却。キーノー=インズ間は船荷49トン(60%)を運んだ場合。
 (236%+236%+60%)÷3=平均177%の収入

想定3
 メイシーンの貿易品をインズで売却した場合。
 (192%+192%+192%)÷3=平均192%の収入。

 上記のような結果が得られました。メイシーンの貿易品を、ジャンプ3回の間ずっと抱えておき、インズで売却した場合が最も儲かるのです。




(17)インズでの収支決算

 さて、PC達の自由貿易船は破産することなく、海賊に襲われることもなく、スピンワードメインを渡り終えました。 

    表33 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
       旅客乗船率と貨物積載率(リジャイナ⇒インズ間:貿易品あり)

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 表12とほぼ同じものですが、表の右端、貨物収入の欄を船荷だけの運賃収入から、貿易品の売買も含めた貨物収入に変更しています。
 水色で示した部分が、貿易品を輸送した区間と、その収入(貨物何トンの運賃収入に相当するかという数字)になっている訳です。

 貿易品売買による収入の金額が大きいため、従来の乗船率と積載率による比較では、経営状態を正しく評価できません。そこで、ジャンプ1回当たりの旅客収入と貨物収入をキロクレジット単位に直し、区間ごとの平均収入を求めてみました。
 A型自由貿易船は健全な経営のため、ジャンプ1回当たり9万8千クレジットの収益を上げなければなりません。それより少ない金額しか得られなければ赤字ですし、それ以上の収入を上げれば、その分が利益(黒字)となります。

      表34 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計:貿易品あり)
         スチュワード、管理、交渉、ブローカー技能レベル=3

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 上記は、ジャンプ1回当たりの平均収入を示しています。単位はKCr。
 右端の「合計利益」は、ジャンプ1回当たりの必要経費(ローンや維持費、乗組員の給料など、合わせて98KCr)を引いた後の手取り額です。

 旅客収入の小計と貨物収入の差が、2倍以上に(航路によっては3.4倍まで)開いています。こういう数字を見てしまうと、やはり客用専用室も二等寝台も撤去して、貨物輸送に特化したくなるでしょう。特に、二等旅客の収入の低さが際立っています。二等寝台を撤去して貨物スペースにするだけで、収入が1万クレジット以上増えることは、間違いありません。

 乗組員の技能レベルは、ブローカー技能も含めて3レベルで計算しました。
 貿易品の売買を行なうならば、レック=テュレデッド間の航路も、かろうじて黒字で突破することは可能でした。しかしこの航路での利益期待値は、2万6千クレジットの黒字でしかありません。サイコロ運が悪ければ、赤字に転落する危険性は残ります。

 リジャイナ=レック間の航路は確実に儲かることが分かりました。船のローンをきちんと払っていても、ジャンプする度に18万クレジットの大金が手元に残ることを意味します。
 ジャンプ5回で90万クレジット、1年(ジャンプ25回)で467万クレジット。
 何のトラブルも無ければ、8年ちょっとで新しい自由貿易船を買えるでしょう(ローン無しの現金払いで)。
 優秀な乗組員が揃っていれば、赤字航路を黒字で渡ることが可能になりますが、それだけの技量を備えた乗組員ならば、リジャイナ周辺の航路でもっと大きく儲けることが可能なのです。
 儲けが少なく、危険に満ちたスピンワードメインへPCの自由貿易船を乗り出させるためには、それなりの理由が必要でしょう。利益が確実な貿易品はすでに大手に買い占められているため、PCは貿易品を入手できないなど、何か考えなければいけません。



 乗組員の技能レベルが低い(1レベルの)場合、収益は以下のようになりました。

      表35 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計:貿易品あり)
         スチュワード、管理、交渉、ブローカー技能レベル=1

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 〈ブローカー〉技能が1レベルでは、全く儲けを出せません。
 リジャイナ⇒インズ間の航路で、貿易品を売買して利益を出せたのは、リジャイナ、テュレデッド、メイシーンの3星系だけです。他の区間では、船荷しか運べませんでした(貿易品を売買しても、赤字が確実だったためです)。

 リジャイナ=レック間の航路のみ、6万4千クレジットの利益を出せましたが、レック=テュレデッド間テュレデッド=インズ間の航路は赤字になりました。航路全体ではぎりぎり1万1千クレジットの利益を出していますが、これはつまり、レックまでの航路で稼いだ利益を食い潰しているに過ぎません。
 スピンワードメインを航行する自由貿易商船は、乗組員の技能レベルが低い場合、半分の確率で破産してしまうことが明らかになりました。

 貿易に手を出すのならば、最低限、〈ブローカー〉技能3レベルを持ってからにするか、あるいは技能レベル3のNPCを雇いましょう。宇宙港で雇うブローカーは、PCの利益を大きく減じてしまいますから、できれば、身内のブローカーを使うべきです。



 ちなみに、貿易品の売買を行なわない場合は、以下のようになりました。

      表36 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
         旅客乗船率と貨物積載率(区間毎の小計:貿易品なし)
         スチュワード、管理、交渉技能レベル=3

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 乗組員の技能レベルは、今回も3レベルで計算しています。
 航路全体を平均すれば、かろうじて8千クレジットの黒字になりますが、レック=テュレデッド間は2万3千クレジットの赤字、テュレデッド=インズ間も5千クレジットの赤字です。

 貿易品の売買なしでスピンワードメインを縦断することは、まず不可能だと確認できました。乗組員の技能レベルが高くても、半分の確率で破産してしまいます。



 乗組員の技能レベルが低い場合は、ずっと悲惨な結果が待っていました。

       表37 スピンワードメインを航行するA型自由貿易船の、
          旅客乗船率と貨物積載率(リジャイナ⇒インズ間)
           (貿易品なし:区間毎の小計:技能レベル=1)

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 リジャイナ=レック間の利益率は大して変わりませんが、レック=テュレデッド間の赤字航路は悲惨です。利益が−3万5千クレジットということは、ジャンプを1回行なう毎に、なけなしの貯金を3万5千クレジットずつ取り崩さなければならないということになるのですから。
 低い技能の乗組員しか居ない自由貿易船は、決して、スピンワードメインのような辺境航路に乗り出してはならないのです。





5.まとめ

 相変わらず、自由貿易船によるスピンワードメインの縦断は難しいのですが、貿易を行なうことで黒字運行が可能だと分かりました。
 ただし、貿易品の価格をうまくコントロールしないと、PCが金儲けばかりに夢中となって、シナリオの目的を見失ってしまう危険が高いでしょう。工業世界のルーに向かってしまうとか、特定の2星系間だけの往復を始めてしまったら、どうしようもありません。
 レフリーの方はしっかりと気を配ってください。



 高レベルの〈ブローカー〉技能は自由貿易船にとって必須です。
 プレイヤーが自由貿易船のオーナー/船長になりたいのであれば、〈ブローカー〉技能を3レベル以上、修得してからにしましょう。
 もっとも〈ブローカー〉技能が3レベル以上あれば、適当なA〜Bクラスの宇宙港でブローカー業を営んだ方が、ずっと儲かりそうな気もします。

 〈スチュワード〉技能は、技能レベルが高いほど有用です。
 前述の通り、技能レベル1が乗り込んだ船と、技能レベル3が乗り込んだ船を比べると、特等旅客の人数が1人増えるのです。これは収入1万クレジット(維持費を差し引いても8千クレジット)の増加を意味しますから、少しぐらい大目の給料を払っても、損にはなりません。
 また、高レベルの技能を持ったスチュワードは、自分が「大勢の特等旅客を集めているのだ」という自覚を持ちましょう。スチュワードの技能レベルは、特等旅客の乗船率に大きく影響します。
 それを考えると、MTの給料、技能レベル×cr500は安すぎると感じました。せめてCTの給料、cr3,000以上を受け取るべきだと思います。



 上記の2技能と対照的ですが、〈管理〉〈交渉〉〈接触〉技能は、それほど有用性が見つかりませんでした。
 〈管理〉技能は一等旅客の募集に、〈交渉〉技能は二等旅客の募集にしか用いていませんから、当然の結果かもしれません。〈接触〉技能に関連する中型貿易品は、それが役立つ世界の貿易品に魅力が無い(儲けを期待できない)ため、役立つ機会が少ないのです。
 貿易品を売買する際、貿易品の買い手を見つけるために〈管理〉〈交渉〉〈接触〉等の技能を用いるようにすれば、これらの技能も〈ブローカー〉技能と並んで活躍できるでしょう。もちろん、PC達がこれらの技能を持っていないのであれば、わざわざそんな判定をしなくても良いのですが。


2009.12.10 初投稿。
2009.12.17 ブローカー技能を5レベルから4レベルに変更。
2010.11.08 エラッタにより、貨物の量を変更して再計算しました。